今回の問題
electromagnetic05【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「ガウスの法則と電気力線」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 電気力線: 電場の様子を視覚的に表すための仮想的な線です。正電荷から出て、負電荷に入ります。
- ガウスの法則(電気力線の本数): 点電荷 \(Q\) [C] から出る(または入る)電気力線の総数 \(N\) は、クーロンの法則の比例定数を \(k\) として、\(N = 4 \pi k |Q|\) という式で定義されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 電気力線の総数を求める公式 \(N = 4 \pi k |Q|\) を用います。
- 公式に必要な物理定数(クーロン定数 \(k\))と、問題で与えられた値(電荷 \(Q\)、円周率 \(\pi\))を代入して計算します。
- 計算結果を、問題文の有効数字に合わせて整理します。
\(2.0 \times 10^{-8}\) C の電荷から出る電気力線の総数は何本か。
思考の道筋とポイント
点電荷から出る電気力線の総数を求める問題です。これは、ガウスの法則に基づく公式 \(N = 4 \pi k |Q|\) を知っているか、そして正しく適用できるかを問う、知識と思考の融合問題です。公式に必要な定数や変数の値を正確に代入し、指数を含む計算を丁寧に行うことが求められます。
この設問における重要なポイント
- 電気力線の総数を求める公式 \(N = 4 \pi k |Q|\) を正しく覚えていること。
- クーロンの法則の比例定数 \(k = 9.0 \times 10^9 \, \text{N} \cdot \text{m}^2/\text{C}^2\) を用いること。
- 与えられた数値を正確に代入し、計算を丁寧に行うこと。特に指数計算に注意する。
- 最終的な答えの有効数字は、問題文中の数値の有効数字に合わせること。
具体的な解説と立式
点電荷 \(Q\) [C] から出る電気力線の総数 \(N\) は、クーロンの法則の比例定数を \(k \, [\text{N} \cdot \text{m}^2/\text{C}^2]\) とすると、次の式で与えられます。
$$N = 4 \pi k |Q|$$
この公式は、ガウスの法則の考え方に基づいています。
問題で与えられた値は以下の通りです。
- 電荷: \(Q = 2.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\)
- 円周率: \(\pi = 3.14\)
- クーロン定数: \(k = 9.0 \times 10^9 \, \text{N} \cdot \text{m}^2/\text{C}^2\) (物理定数)
これらの値を上記の公式に代入して \(N\) を計算します。
使用した物理公式
- 電気力線の総数: \(N = 4 \pi k |Q|\)
$$
\begin{aligned}
N &= 4 \times 3.14 \times (9.0 \times 10^9) \times |2.0 \times 10^{-8}| \\[2.0ex]&= (4 \times 3.14 \times 9.0 \times 2.0) \times (10^9 \times 10^{-8})
\end{aligned}
$$
まず、数値部分と指数部分を分けて計算します。
数値部分:
$$ 4 \times 3.14 \times 9.0 \times 2.0 = 12.56 \times 18.0 = 226.08 $$
指数部分:
$$ 10^9 \times 10^{-8} = 10^{9+(-8)} = 10^1 = 10 $$
したがって、
$$ N = 226.08 \times 10 = 2260.8 $$
問題で与えられている電荷 \(Q\) の値が有効数字2桁 (\(2.0 \times 10^{-8}\)) であるため、計算結果も有効数字2桁で表すのが適切です。2260.8を有効数字2桁にするには、上から3桁目を四捨五入します。
$$ N \approx 2300 = 2.3 \times 10^3 \, \text{本} $$
電気力線の本数を数えるには、特別な公式 \(N = 4 \pi k Q\) を使います。
- この式の \(\pi\) (パイ) には、問題に書いてある \(3.14\) を使います。
- \(k\) というのは「クーロンの法則の比例定数」で、決まった値 \(9.0 \times 10^9\) です。
- \(Q\) は電気の量(電荷)で、問題では \(2.0 \times 10^{-8}\) です。
- これらの数を全部掛け算します: \(N = 4 \times 3.14 \times (9.0 \times 10^9) \times (2.0 \times 10^{-8})\)
- 計算すると、\(N = 2260.8\) となります。
- 問題の数字が「\(2.0 \times 10^{-8}\)」のように2桁で表されているので、答えも2桁にそろえます。\(2260.8\) をおよそ \(2300\) 本、つまり \(2.3 \times 10^3\) 本とします。
\(2.0 \times 10^{-8}\) C の電荷から出る電気力線の総数は \(2.3 \times 10^3\) 本です。計算過程、有効数字の扱いともに適切です。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- ガウスの法則(電気力線の本数に関する表現):
- 核心: この問題のすべては、点電荷 \(Q\) から出る(または入る)電気力線の総数 \(N\) が、\(N = 4 \pi k |Q|\) という式で与えられることを知っているかどうかにかかっています。これは、電場の源である電荷の量と、その電場を視覚化した電気力線の本数を結びつける、ガウスの法則の基本的な考え方です。
- 理解のポイント: なぜ \(4\pi\) がつくのかというと、点電荷から出る電気力線は空間全体(全方位)に放射状に広がっており、その全方位を表すのが立体角 \(4\pi\) [sr] だからです。この式は「電荷が作る電場の影響力の総量は、電荷の大きさに比例する」という物理的な意味を持っています。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 負電荷の場合: もし電荷が \(-2.0 \times 10^{-8}\) C であった場合、電気力線は電荷に「入る」ことになりますが、その総数(本数)を問われた場合は、電荷の絶対値 \(|Q|\) を使って計算するため、答えは同じ \(2.3 \times 10^3\) 本になります。
- 複数の電荷がある場合: 閉曲面内に複数の電荷 \(Q_1, Q_2, \dots\) がある場合、その閉曲面を貫く電気力線の正味の本数は、内部の電荷の代数和 \(Q_{\text{内部}} = Q_1 + Q_2 + \dots\) を使って \(N = 4 \pi k |Q_{\text{内部}}|\) で計算できます。
- 真空の誘電率 \(\epsilon_0\) を使う場合: 大学物理では、クーロン定数 \(k\) は真空の誘電率 \(\epsilon_0\) を用いて \(k = \frac{1}{4\pi\epsilon_0}\) と表されます。これを \(N = 4 \pi k |Q|\) に代入すると、\(N = 4 \pi (\frac{1}{4\pi\epsilon_0}) |Q| = \frac{|Q|}{\epsilon_0}\) となり、よりシンプルな形で表せます。この形を問われることもあります。
- 初見の問題での着眼点:
- 「電気力線の総数」というキーワード: この言葉を見たら、即座に公式 \(N = 4 \pi k |Q|\) を思い出します。
- 必要な値を確認: 公式に必要な \(k\), \(Q\), \(\pi\) の値が問題文で与えられているか、あるいは物理定数として知っている必要があるかを確認します。
- 有効数字の確認: 問題文で与えられている数値の有効数字をチェックし、答えの桁数をあらかじめ想定しておきます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 公式の混同:
- 誤解: 電場の強さの公式 \(E = k \frac{|Q|}{r^2}\) や、クーロン力の公式 \(F = k \frac{|q_1 q_2|}{r^2}\) と混同してしまう。
- 対策: 「電気力線の総数」は、ある点での強さではなく、電荷から出る全体の量を表すものです。\(4\pi\) がつく特徴的な形をしているので、他の公式としっかり区別して覚えましょう。
- \(4\pi\) の計算忘れ:
- 誤解: 公式の \(4\pi\) を忘れて、\(N=k|Q|\) として計算してしまう。
- 対策: 電気力線が空間全体に広がるイメージを持つことで、立体角 \(4\pi\) が必要であることを連想しやすくなります。
- 有効数字の扱い:
- 誤解: 計算結果の 2260.8 をそのまま答えにしたり、不適切な桁数で丸めたりする。
- 対策: 物理の計算問題では、有効数字の扱いは採点基準になることが多いです。計算に用いた値の中で最も桁数が少ないもの(この場合は \(2.0 \times 10^{-8}\) と \(9.0 \times 10^9\) の2桁)に合わせるのが原則です。\(2.3 \times 10^3\) のように、指数形式で表現すると桁数が明確になります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- なぜ \(N = 4 \pi k |Q|\) なのか?:
- 選定理由: これは、電場の強さと電気力線の密度を結びつけるための「定義」または「約束事」です。
- 適用根拠: 電場の強さ \(E\) は、その点での電気力線の密度(単位面積あたりの本数)に比例するように描く、というルールがあります。点電荷 \(Q\) から距離 \(r\) の点の電場の強さは \(E = k \frac{|Q|}{r^2}\) です。一方、この点を囲む半径 \(r\) の球の表面積は \(S = 4\pi r^2\) です。もし、この球面全体を貫く電気力線の本数が \(N\) 本だとすると、密度は \(N/S = \frac{N}{4\pi r^2}\) となります。ここで、「電場の強さ = 電気力線の密度」という約束事を適用すると、\(k \frac{|Q|}{r^2} = \frac{N}{4\pi r^2}\) となります。この式の両辺の \(r^2\) を消去すると、\(k|Q| = \frac{N}{4\pi}\) となり、最終的に \(N = 4 \pi k |Q|\) という関係式が導かれます。このように、この公式は物理法則と視覚的表現を結びつけるための合理的な約束事なのです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 計算しやすい順序を考える: \(4 \times 3.14 \times 9.0 \times 2.0\) の計算では、先に \(9.0 \times 2.0 = 18.0\) を計算し、次に \(4 \times 18.0 = 72.0\)、最後に \(72.0 \times 3.14\) を計算するなど、自分がやりやすい順序で進めるとミスが減ります。
- 指数計算を先に行う: \(10^9 \times 10^{-8} = 10^1\) のように、指数計算を先に済ませておくと、後の係数計算に集中できます。
- 概算で桁数を確認する: \(4\pi k \approx 4 \times 3 \times 9 \times 10^9 \approx 108 \times 10^9 \approx 1 \times 10^{11}\) です。これに \(Q = 2 \times 10^{-8}\) を掛けると、\(2 \times 10^{11-8} = 2 \times 10^3\) となり、答えの桁数が \(10^3\) のオーダーになることが予測できます。計算結果が大きくずれていたら、どこかで計算ミスをした可能性が高いと判断できます。
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