問題の確認
基本レベル問題演習力学70各設問の思考プロセス
(1) 8.0 秒間の平均の速さはいくらか。
- 平均の速さの定義の確認: 平均の速さは、物体の変位を経過時間で割ったものです。\(x-t\)グラフでは、指定された時間区間の始点と終点を結ぶ直線の傾きに相当します。
- 必要情報の読み取り: グラフから、時刻 \(t=0\) s と \(t=8.0\) s における物体の位置 \(x\) を読み取ります。
- 計算の実行: 読み取った値を用いて、変位 \(\displaystyle \Delta x\) と経過時間 \(\Delta t\) を求め、平均の速さ \(\displaystyle \bar{v} = \frac{\Delta x}{\Delta t}\) を計算します。
(2) 時刻 4.0 秒における瞬間の速さはいくらか。
- 瞬間の速さの定義の確認: 瞬間の速さは、ある特定の時刻における物体の速さです。\(x-t\)グラフでは、指定された時刻の点における接線の傾きに相当します。
- 接線の特定: 問題の指示および図の補助線(細い実線)を時刻 \(t=4.0\) s における接線と解釈します。
- 必要情報の読み取り: 特定した接線が通る2つの点の座標をグラフから読み取ります。点 (0 s, 4.0 m) と点 (6.0 s, 12 m) を使用します。
- 計算の実行: 読み取った2点の座標を用いて、接線の傾きを計算します。これが瞬間の速さとなります。
各設問の具体的な解説と解答
(1) 8.0 秒間の平均の速さはいくらか。
問われている内容の明確化:
時刻 \(t=0\) s から \(t=8.0\) s までの8.0秒間における物体の平均の速さを求めます。
具体的な解説と計算手順:
平均の速さを求めるには、まず時刻 \(t_1 = 0\) s のときの物体の位置 \(x_1\) と、時刻 \(t_2 = 8.0\) s のときの物体の位置 \(x_2\) をグラフから読み取ります。
- グラフより、時刻 \(t_1 = 0\) s のとき、物体の位置は \(x_1 = 0\) m です。
- グラフより、時刻 \(t_2 = 8.0\) s のとき、物体の位置は \(x_2 = 12\) m です。 (グラフの太い実線上の点線ガイド (8,12) より)
経過時間 \(\Delta t\) は、\(\Delta t = t_2 – t_1 = 8.0 \text{ s} – 0 \text{ s} = 8.0\) s です。
この間の変位 \(\Delta x\) は、\(\Delta x = x_2 – x_1 = 12 \text{ m} – 0 \text{ m} = 12\) m です。
平均の速さ \(\bar{v}\) は、次のように計算されます。
$$\bar{v} = \frac{\Delta x}{\Delta t}$$
値を代入すると、
$$\bar{v} = \frac{12 \text{ m}}{8.0 \text{ s}} = 1.5 \text{ m/s}$$
使用した物理公式: 平均の速さ
$$\bar{v} = \frac{x_2 – x_1}{t_2 – t_1} = \frac{\Delta x}{\Delta t}$$
ここで、\(x_1\) は時刻 \(t_1\) での位置、\(x_2\) は時刻 \(t_2\) での位置です。
計算方法の平易な説明:
平均の速さとは、「ならしてみると、1秒あたりにどれくらい進んだか」ということです。
グラフのスタート地点(時刻0秒、位置0m)とゴール地点(時刻8.0秒、位置12m)を見ます。
8.0秒間で12m進んだので、1秒あたりに進んだ距離は 12m を 8.0秒 で割って求めます。
12 ÷ 8.0 = 1.5 なので、平均の速さは 1.5 m/s となります。
この設問における重要なポイント:
- \(x-t\)グラフから、指定された時刻の物体の位置を正確に読み取ること。
- 平均の速さの定義式 \(\displaystyle \bar{v} = \frac{\Delta x}{\Delta t}\) を正しく適用すること。
8.0 秒間の平均の速さは \(1.5\) m/s です。
(2) 時刻 4.0 秒における瞬間の速さはいくらか。
問われている内容の明確化:
時刻 \(t=4.0\) s における物体の瞬間の速さを求めます。これは、\(x-t\)グラフ上の時刻 \(t=4.0\) s の点における接線の傾きに等しくなります。
具体的な解説と計算手順:
時刻 \(t=4.0\) s における瞬間の速さを求めるにあたり、図中に描かれている細い実線が、\(t=4.0\) s における接線を示しているものと解釈します。
この細い直線が通る2つの点をグラフから読み取ります。
- 点A: 時刻 \(t_A = 0\) s のとき、位置 \(x_A = 4.0\) m
- 点B: 時刻 \(t_B = 6.0\) s のとき、位置 \(x_B = 12\) m
これらの2点を通る直線の傾きが、時刻 \(t=4.0\) s における瞬間の速さ \(v\) となります。
$$v = \frac{x_B – x_A}{t_B – t_A}$$
値を代入すると、
$$v = \frac{12 \text{ m} – 4.0 \text{ m}}{6.0 \text{ s} – 0 \text{ s}} = \frac{8.0 \text{ m}}{6.0 \text{ s}} = \frac{8}{6} \text{ m/s} = \frac{4}{3} \text{ m/s}$$
小数で表すと、\(\frac{4}{3} \text{ m/s} \approx 1.333…\) m/s となります。問題で与えられている数値の有効数字(例: 4.0s は2桁)を考慮すると、瞬間の速さは \(1.3 \text{ m/s}\) と表すのが適切です。
この解釈の場合、接線の式は \(x – 4.0 = \frac{4}{3}(t – 0)\)、すなわち \(x = \frac{4}{3}t + 4.0\) と表されます。
この接線において、時刻 \(t=4.0\) s のときの物体の位置(接点)は \(x = \frac{4}{3} \times 4.0 + 4.0 = \frac{16}{3} + \frac{12}{3} = \frac{28}{3} \approx 9.33\) m となります。
これは、物体の運動を表す太い実線上の点線ガイドで示唆される \(t=4.0\) s で \(x=8.0\) m の点とは異なりますが、ここでは図中の細い実線を \(t=4.0\) s の接線として解釈し、その傾きを求めています。
使用した物理公式: 瞬間の速さ
\(x-t\)グラフの特定の点における接線の傾き。
傾き \(m\) は、接線が2点 \((t_1, x_1)\), \((t_2, x_2)\) を通るとき、
$$m = \frac{x_2 – x_1}{t_2 – t_1}$$
計算方法の平易な説明:
瞬間の速さとは、「その瞬間の勢い」のようなものです。車のスピードメーターが示す速さがこれにあたります。
\(x-t\)グラフでは、ある時刻のグラフの傾き具合が、その瞬間の速さを表します。
時刻 4.0 秒の瞬間の速さを知るために、この時刻におけるグラフの接線を考えます。図に描かれている細い線が、ちょうどこの接線を表していると考えましょう。
この細い線は、グラフの点 (0秒, 4.0m) と点 (6.0秒, 12m) を通っているように読み取れます。
この2点を使って傾きを計算すると、横に (6.0秒 – 0秒) = 6.0秒進む間に、縦に (12m – 4.0m) = 8.0m進んでいることがわかります。
なので、傾きは 8.0m ÷ 6.0秒 = \(\frac{8}{6}\) m/s = \(\frac{4}{3}\) m/s となります。小数で表すと約 1.3 m/s です。これが時刻 4.0 秒の瞬間の速さです。
この設問における重要なポイント:
- 瞬間の速さは、\(x-t\)グラフの接線の傾きであることを理解していること。
- 問題の指示や図中の補助線(ここでは細い直線)が接線を示していると解釈し、その傾きを計算するために適切な2点を読み取ること。
時刻 4.0 秒における瞬間の速さは \(\displaystyle \frac{4}{3}\) m/s (約 \(1.3\) m/s) です。
問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則
- \(x-t\)グラフ(位置-時間グラフ): 物体の運動の様子を視覚的に表すグラフであり、縦軸に位置 \(x\)、横軸に時刻 \(t\) をとります。
- 平均の速さ: ある時間区間における全体の変位をその時間区間で割ったもので、\(x-t\)グラフ上の2点を結ぶ直線の傾きに相当します。向きも考慮する場合は平均の速度となります。
- 瞬間の速さ: ある特定の時刻における速さのことで、\(x-t\)グラフ上のその時刻の点における接線の傾きに相当します。向きも考慮する場合は瞬間の速度となります。速さは速度の大きさを指します。
- グラフの傾きの物理的意味: \(x-t\)グラフの傾きは速度(速さ)を表します。傾きが正であれば正の向きに、負であれば負の向きに運動していることを意味します。傾きが急であるほど速さが大きいことを示します。
類似の問題を解く上でのヒントや注意点
- グラフの読み取り: グラフの軸の単位([m] や [s] など)を必ず確認しましょう。また、格子点を正確に読み取ることが重要です。
- 接線の解釈: 瞬間の速さを求めるために接線を考える際、接線はその点においてグラフの曲線に「触れる」ように引きます。問題によっては、図中の補助線が接線を示していると解釈する場合があるので、問題設定をよく理解しましょう。接線の傾きを計算する際は、接線が通る、できるだけ離れた2つの格子点を選ぶと、計算誤差を小さくできます。
- 平均と瞬間の区別: 「平均の速さ」を問われているのか、「瞬間の速さ」を問われているのかを明確に区別しましょう。計算方法が異なります。
- 有効数字: 問題で与えられた数値の有効数字に合わせて、解答の有効数字も適切に処理しましょう。この問題では、時刻が「4.0秒」のように小数点以下1桁まで与えられているため、結果も有効数字2桁程度で示すのが一般的です。割り切れない場合は、指示がなければ分数で答えるか、適切な桁数で四捨五入します。
よくある誤解や間違いやすいポイント
- \(x-t\)グラフと \(v-t\)グラフの混同: \(x-t\)グラフの傾きが速度であるのに対し、\(v-t\)グラフではグラフの縦軸の値そのものが速度を表し、傾きは加速度を表します。グラフの種類をしっかり確認しましょう。
- 接線の傾きの誤算: 接線の傾きを求める際に、\(x\)の変化量と\(t\)の変化量の比を逆にしてしまう(例: \(\frac{\Delta t}{\Delta x}\)としてしまう)間違いに注意しましょう。正しくは \(\frac{\Delta x}{\Delta t}\) です。
- 図の補助線の解釈: 図中に複数の線がある場合、どの線が物体の運動そのものを表すグラフ(この問題では太い実線)で、どの線が接線などの補助的な情報(この問題では細い実線と解釈)なのかを区別することが重要です。問題の意図を読み取り、適切に情報を利用しましょう。
- 瞬間の速さと平均の速さの誤用: 特定の時刻について聞かれているのに平均の速さを計算したり、ある区間について聞かれているのに特定の点の瞬間の速さを答えたりしないように注意が必要です。