無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「一様な電場中の電子:電位・仕事・エネルギーの関係」【高校物理対応】

今回の問題

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【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「一様な電場における電位、仕事、エネルギー」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 電場と電位の関係: 電場は電位の高い方から低い方へ向かいます。一様な電場では、電位は距離に比例して直線的に変化します。
  • 仕事とポテンシャルエネルギー: 外力が保存力(静電気力)に逆らってする仕事は、ポテンシャルエネルギーの増加量に等しいです。(\(W_{\text{外力}} = \Delta U = q\Delta V\))
  • エネルギー保存則: 保存力のみが仕事をする系では、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和は常に一定に保たれます。(\(K + U = \text{一定}\))

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、「一様な電場」という性質から、電位が距離に比例することを利用して中点の電位を求め、電位の高低から電場の向きを判断します。
  2. (2)では、「外力がする仕事」が「ポテンシャルエネルギーの変化」に等しいという関係式 \(W = q(V_{\text{後}} – V_{\text{初}})\) を用いて計算します。
  3. (3)では、静電気力のみがはたらく状況なので、エネルギー保存則 \(K_{\text{初}} + U_{\text{初}} = K_{\text{後}} + U_{\text{後}}\) を適用して、運動エネルギーと速さを求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
AとBの中間地点であるC点の電位 \(V_C\) と、その点での電場の向きを求めます。「一様な電場」というキーワードが最大のヒントです。
この設問における重要なポイント

  • 一様な電場では、電位が距離に比例して変化する。
  • 電場は電位の高い方から低い方へ向かう。

具体的な解説と立式
中点Cの電位 \(V_C\)
電場が一様であるため、電位はAからBへの距離に対して直線的に(一定の割合で)変化します。点Aの電位が \(V_A=0\)、点Bの電位が \(V_B=V\) なので、AとBのちょうど中間に位置する点Cの電位 \(V_C\) は、AとBの電位の平均値となります。
$$V_C = \frac{V_A + V_B}{2}$$

電場の向き
電場は、電位の高い点から低い点に向かって生じます。問題の条件より、点Bの電位 \(V\) は点Aの電位 0 よりも高い (\(V > 0\)) です。したがって、電場の向きはBからAの向きとなります。電場は一様なので、C点を含むAB間のどの点でも電場の向きは同じです。

使用した物理公式

  • 一様な電場中の電位の性質
計算過程

与えられた値 \(V_A = 0\)、\(V_B = V\) を代入します。
$$V_C = \frac{0 + V}{2} = \frac{V}{2}$$
問題は「Aに対していくらか」と問うていますが、Aの電位が0なので、C点の電位そのものである \(\displaystyle\frac{V}{2}\) が答えとなります。

計算方法の平易な説明

A地点が標高0m、B地点が標高V[m]のまっすぐな坂道(一様な電場)を想像してください。ちょうど中間地点Cの標高は、0mとV[m]の平均である \(\frac{V}{2}\)[m]になります。また、坂は標高の高いBから低いAに向かって下っているので、電場の向きは「BからAの向き」です。

結論と吟味

中点Cの電位は \(\displaystyle\frac{V}{2}\)、電場の向きはBからAの向きです。

解答 (1) 電位: \(\displaystyle\frac{V}{2}\), 電場の向き: BからAの向き

問(2)

思考の道筋とポイント
電子をBからAへ、電場の力に逆らって運ぶときの「外力」がする仕事 \(W\) と、その仕事によって電子がたくわえるエネルギーの種類を答えます。外力がする仕事は、ポテンシャルエネルギーの変化量に等しいという関係を用います。
この設問における重要なポイント

  • 外力がする仕事はポテンシャルエネルギーの増加分に等しい (\(W_{\text{外力}} = \Delta U\))。
  • ポテンシャルエネルギーの変化は \(\Delta U = q(V_{\text{後}} – V_{\text{初}})\) で計算される。
  • 電子の電荷が \(-e\) であることを計算に正しく反映させること。

具体的な解説と立式
外力がする仕事 \(W\)
外力がする仕事 \(W\) は、ポテンシャルエネルギーの変化量 \(\Delta U\) に等しくなります。
$$W = \Delta U = U_A – U_B$$
ポテンシャルエネルギー \(U\) は \(U=qV\) と表せるので、
$$W = qV_A – qV_B = q(V_A – V_B)$$
この問題では、電荷は電子なので \(q = -e\)、始点がBで終点がAなので \(V_A = 0\), \(V_B = V\) です。
$$W = (-e)(0 – V)$$

たくわえられるエネルギー
保存力である静電気力に逆らって外力がした仕事は、その分だけ物体のポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)として蓄積されます。

使用した物理公式

  • 外力の仕事とポテンシャルエネルギー: \(W_{\text{外力}} = \Delta U = q(V_{\text{後}} – V_{\text{初}})\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
W &= (-e)(0 – V) \\[2.0ex]&= (-e)(-V) \\[2.0ex]&= eV
\end{aligned}
$$
たくわえられるエネルギーは、「(静電)ポテンシャルエネルギー」です。

計算方法の平易な説明

電子(マイナス)は、電位の高いB点から低いA点へは自然には行きたがりません。それに逆らって無理やり運ぶので、外から仕事をする必要があります。その仕事量は「電荷の大きさ \(e\) × 電位差 \(V\)」で計算でき、\(eV\) となります。無理やり坂を上るように運んだ物体が「位置エネルギー」をたくわえるのと同じで、この仕事は電子の「(静電)ポテンシャルエネルギー」としてたくわえられます。

結論と吟味

仕事は \(eV\)、たくわえられるエネルギーは(静電)ポテンシャルエネルギーです。

解答 (2) 仕事: \(eV\), エネルギーの種類: (静電)ポテンシャルエネルギー

問(3)

思考の道筋とポイント
Aに静止していた電子が、電場の力だけでBまで移動したときの、B点での運動エネルギー \(K\) と速さ \(v\) を求めます。静電気力(保存力)のみが仕事をするため、エネルギー保存則が成り立ちます。
この設問における重要なポイント

  • エネルギー保存則 \(K_{\text{初}} + U_{\text{初}} = K_{\text{後}} + U_{\text{後}}\) を正しく立式・適用できること。
  • 運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの初期値と最終値を、問題条件から正確に読み取ること。
  • 運動エネルギーの定義式 \(K = \frac{1}{2}mv^2\) を使って、エネルギーから速さを計算できること。

具体的な解説と立式
運動エネルギー \(K\)
静電気力のみが仕事をする場合、系の全エネルギー(運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和)は保存されます。
$$K_A + U_A = K_B + U_B$$
ここで、\(K_A, K_B\) はそれぞれA, Bでの運動エネルギー、\(U_A, U_B\) はポテンシャルエネルギーです。
問題の条件より、

  • Aで静止していたので、初めの運動エネルギーは \(K_A = 0\)。
  • Aの電位は \(V_A = 0\) なので、初めのポテンシャルエネルギーは \(U_A = (-e)V_A = 0\)。
  • Bでの運動エネルギーは求める \(K\) なので \(K_B = K\)。
  • Bの電位は \(V_B = V\) なので、後のポテンシャルエネルギーは \(U_B = (-e)V_B = -eV\)。

これらをエネルギー保存則の式に代入すると、
$$0 + 0 = K + (-eV)$$

速さ \(v\)
運動エネルギー \(K\) と速さ \(v\) の関係は、\(K = \frac{1}{2}mv^2\) です。

使用した物理公式

  • エネルギー保存則: \(K_{\text{初}} + U_{\text{初}} = K_{\text{後}} + U_{\text{後}}\)
  • 運動エネルギーの定義: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
計算過程

運動エネルギー \(K\)
$$
\begin{aligned}
0 &= K – eV \\[2.0ex]K &= eV
\end{aligned}
$$

速さ \(v\)
上で求めた \(K=eV\) を、\(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) に代入します。
$$ eV = \frac{1}{2}mv^2 $$
この式を \(v\) について解きます。
$$ v^2 = \frac{2eV}{m} $$
速さ \(v\) は正なので、
$$ v = \sqrt{\frac{2eV}{m}} $$

計算方法の平易な説明

A点では電子はエネルギーを全く持っていません(運動もしておらず、電気的な高さも0)。電子(マイナス)は電位の高いB点(プラス側)に自然に引き寄せられます。これは、電気的な坂道を下るようなものです。このとき、位置エネルギーが \(eV\) だけ減少します。エネルギー保存の法則により、失われた位置エネルギーはすべて運動エネルギーに変わります。したがって、B点での運動エネルギーは \(eV\) となります。この運動エネルギーから、速さを逆算することができます。

結論と吟味

Bに達したときの電子の運動エネルギーは \(eV\)、速さは \(\sqrt{\displaystyle\frac{2eV}{m}}\) です。

解答 (3) 運動エネルギー: \(eV\), 速さ: \(\sqrt{\displaystyle\frac{2eV}{m}}\)

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • エネルギー保存則の電磁気学への適用:
    • 核心: この問題は、力学で学んだエネルギー保存則が、静電気力という保存力がはたらく電磁気学の世界でも全く同じように成り立つことを理解しているかを問うています。特に、「運動エネルギー(\(K\))」と「静電ポテンシャルエネルギー(\(U=qV\))」の和が一定に保たれる、という考え方がすべての設問を貫く核心です。
    • 理解のポイント: (2)の外力がする仕事はポテンシャルエネルギーの増加に、(3)の静電気力がする仕事は運動エネルギーの増加に、それぞれ対応します。これらはすべて、エネルギーという統一的な視点から説明できる現象です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 仕事と運動エネルギーの関係: (3)は「静電気力がした仕事 = 運動エネルギーの変化」という関係でも解けます。AからBへ移動する間に静電気力がする仕事は \(W = – \Delta U = -(U_B – U_A) = -(-eV – 0) = eV\) です。初めの運動エネルギーは0なので、後の運動エネルギーは \(K = W = eV\) となります。
    • 斜めに入射する荷電粒子: 一様な電場に斜めに入射した荷電粒子は放物運動をします。この場合、電場に平行な方向の運動はエネルギー保存則で、垂直な方向の運動は等速直線運動として、別々に考えると解きやすくなります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「一様な電場」というキーワード: この言葉を見たら、「電位は距離に比例する」「電場と電位の関係は \(V=Ed\)」「エネルギー保存則が使いやすい」といった知識を連想します。
    2. 仕事の主体を特定する: 問題が「外力がする仕事」を問うているのか、「電場(静電気力)がする仕事」を問うているのかを明確に区別します。
      • 外力がする仕事 \(\rightarrow W = \Delta U = q(V_{\text{後}} – V_{\text{初}})\)
      • 電場がする仕事 \(\rightarrow W = -\Delta U = -q(V_{\text{後}} – V_{\text{初}})\)
    3. エネルギー保存則の立式: 荷電粒子が電場の力だけで運動する場合は、迷わずエネルギー保存則 \(K_{\text{初}} + qV_{\text{初}} = K_{\text{後}} + qV_{\text{後}}\) を立てることを考えます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電子の電荷の符号:
    • 誤解: ポテンシャルエネルギーを \(U=eV\) と、正の値で計算してしまう。
    • 対策: 電子の電荷は負 (\(-e\)) です。したがって、ポテンシャルエネルギーは \(U = qV = (-e)V = -eV\) となります。このマイナス符号は非常に重要で、計算結果全体に影響します。常に「電子の電荷は-e」と意識しましょう。
  • 仕事の符号:
    • 誤解: (2)で外力がする仕事を \(-eV\) と答えてしまう。
    • 対策: 仕事の符号は、エネルギーの増減で判断するのが確実です。(2)では、電子を電位の低いA点(\(U_A=0\))から電位の高いB点(\(U_B=-eV\))の逆、つまりポテンシャルエネルギーが高いA点(\(U_A=0\))へ運ぶので、ポテンシャルエネルギーは増加します。したがって、外力がする仕事は正の値になります。
  • (2)と(3)の状況の混同:
    • 誤解: (2)はB→A、(3)はA→Bと、運動の向きが逆であることを見落とす。
    • 対策: 問題文を丁寧に読み、始点と終点を各設問で明確に区別しましょう。エネルギー保存則や仕事の式を立てる際に、\(V_{\text{初}}\) と \(V_{\text{後}}\) を正しく設定することが不可欠です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • なぜ(1)で電位は距離に比例するのか?:
    • 選定理由: 電場が「一様」だからです。
    • 適用根拠: 電位と電場の関係は \(E = -\frac{dV}{dx}\) で与えられます。電場 \(E\) が一定(一様)の場合、これを積分すると \(V = -Ex + C\) となり、電位 \(V\) は距離 \(x\) の一次関数(直線)になります。したがって、中点の電位は両端の平均値となります。
  • なぜ(3)はエネルギー保存則で解くのが良いのか?:
    • 選定理由: 運動の途中経過(時間や加速度)を問わず、始状態と終状態のエネルギー(速さ)の関係だけを問うているからです。
    • 適用根拠: 静電気力は保存力なので、その力がする仕事は経路によらず、始点と終点のポテンシャルエネルギーの差だけで決まります。この性質により、運動の全過程で(運動エネルギー+ポテンシャルエネルギー)の和が保存されることが保証されています。この法則を使えば、運動方程式を立てて解くよりもはるかにシンプルに問題を解くことができます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 符号の扱いに集中する: この問題では、電子の電荷 \(-e\)、電位差、仕事の正負など、マイナス符号が頻出します。立式した際に、各項の符号が物理的に正しいか(例:(3)で運動エネルギーKが正になるか)を一度立ち止まって確認する癖をつけましょう。
  • エネルギーの収支を明確にする:
    • (2) B \(\rightarrow\) A: 外力が \(eV\) の仕事をし、ポテンシャルエネルギーが \(eV\) 増加。
    • (3) A \(\rightarrow\) B: ポテンシャルエネルギーが \(eV\) 減少し、運動エネルギーが \(eV\) 増加。

    このように、エネルギーが「どこから来てどこへ行くのか」を明確に意識することで、立式のミスを防げます。

  • 平方根の計算: 速さを求める最後のステップで、\(v^2 = \dots\) の形にしてから平方根をとる、という手順を確実に守りましょう。焦って途中でルートをつけてしまうと、計算ミスのもとになります。

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