無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「ストロボ写真の解析:追い抜きの判定と平均の速さの比較」

問題の確認

mevhanical#02

各設問の思考プロセス

(1) 物体Bが物体Aを追い抜くのは何番目と何番目のフラッシュ光の間か。

  1. 位置データの確認: 問題で与えられた、各フラッシュ光の瞬間における物体Aと物体Bの精密な位置データ(\(x_A(n)\), \(x_B(n)\))を使用します。
  2. 位置比較: 各フラッシュの番号 \(n=1\) から \(n=8\) まで、物体Aの位置 \(x_A(n)\) と物体Bの位置 \(x_B(n)\) を比較します。
  3. 追い抜き区間の特定: 物体Bが物体Aより後方(または同じ位置)にいた状態から、次のフラッシュで物体Aより前方に位置が変化する区間を探します。具体的には、\(x_A(n) \ge x_B(n)\) であったものが、次のフラッシュ \(n+1\) で \(x_A(n+1) < x_B(n+1)\) となる \(n\) 番目と \(n+1\) 番目の間が追い抜く区間です。

(2) 1番目と8番目のフラッシュ光の間における物体の平均の速さについて考える。物体Aの平均の速さは、物体Bの平均の速さのおよそ何倍か。

  1. 総移動距離の計算:
    • 物体Aについて、1番目のフラッシュ光の瞬間の位置 \(x_A(1)\) と8番目のフラッシュ光の瞬間の位置 \(x_A(8)\) を用いて、総移動距離 \(\Delta x_A = x_A(8) – x_A(1)\) を計算します。
    • 物体Bについて、同様に \(x_B(1)\) と \(x_B(8)\) を用いて、総移動距離 \(\Delta x_B = x_B(8) – x_B(1)\) を計算します。
  2. 総経過時間の確認: 1番目と8番目のフラッシュ光の間には、\(8-1=7\) 回のフラッシュ間隔があります。各間隔の時間を \(\Delta t\) とすると、総経過時間は \(T = 7\Delta t\) であり、これは物体Aと物体Bで共通です。
  3. 平均の速さの比の導出:
    • 物体Aの平均の速さは \(\displaystyle v_A = \frac{\Delta x_A}{T}\)、物体Bの平均の速さは \(\displaystyle v_B = \frac{\Delta x_B}{T}\) です。
    • 求めるのは \(\displaystyle \frac{v_A}{v_B}\) の値なので、\(\displaystyle \frac{v_A}{v_B} = \frac{\Delta x_A/T}{\Delta x_B/T} = \frac{\Delta x_A}{\Delta x_B}\) となり、総移動距離の比を計算すればよいことになります。
  4. 数値計算と有効数字: 計算した移動距離の比を数値で求め、与えられたデータの有効数字を考慮して適切な桁数で答えます。

各設問の具体的な解説と解答

ご提示いただいた各フラッシュ光の瞬間における物体Aと物体Bの位置データは以下の通りです。

物体Aの位置 \(x_A\):

  • \(x_A(1) = 1\)
  • \(x_A(2) = 5.1\)
  • \(x_A(3) = 8.8\)
  • \(x_A(4) = 11.5\)
  • \(x_A(5) = 14\)
  • \(x_A(6) = 15.9\)
  • \(x_A(7) = 17\)
  • \(x_A(8) = 17.6\)

物体Bの位置 \(x_B\):

  • \(x_B(1) = 0\)
  • \(x_B(2) = 3.2\)
  • \(x_B(3) = 6.2\)
  • \(x_B(4) = 9.2\)
  • \(x_B(5) = 12.1\)
  • \(x_B(6) = 14.8\)
  • \(x_B(7) = 17.5\)
  • \(x_B(8) = 20.1\)

(1) 物体Bが物体Aを追い抜くのは何番目と何番目のフラッシュ光の間か。

問われている内容の明確化:

物体Bが物体Aの位置を追い越す、つまり物体Bの位置が物体Aの位置よりも右側に出るのが、何番目のフラッシュ光と何番目のフラッシュ光の間(区間)であるかを特定します。

具体的な解説と計算手順:

各フラッシュ光の瞬間における物体Aと物体Bの位置を比較します。

  • 1番目: \(x_A(1) = 1\), \(x_B(1) = 0\)。 \(x_A > x_B\) (物体Aが前)
  • 2番目: \(x_A(2) = 5.1\), \(x_B(2) = 3.2\)。 \(x_A > x_B\) (物体Aが前)
  • 3番目: \(x_A(3) = 8.8\), \(x_B(3) = 6.2\)。 \(x_A > x_B\) (物体Aが前)
  • 4番目: \(x_A(4) = 11.5\), \(x_B(4) = 9.2\)。 \(x_A > x_B\) (物体Aが前)
  • 5番目: \(x_A(5) = 14\), \(x_B(5) = 12.1\)。 \(x_A > x_B\) (物体Aが前)
  • 6番目: \(x_A(6) = 15.9\), \(x_B(6) = 14.8\)。 \(x_A > x_B\) (物体Aが前)
  • 7番目: \(x_A(7) = 17\), \(x_B(7) = 17.5\)。 \(x_A < x_B\) (物体Bが前)
  • 8番目: \(x_A(8) = 17.6\), \(x_B(8) = 20.1\)。 \(x_A < x_B\) (物体Bが前)

6番目のフラッシュ光の瞬間では、物体A(\(15.9\))は物体B(\(14.8\))よりも前方にいます。
7番目のフラッシュ光の瞬間では、物体B(\(17.5\))が物体A(\(17\))よりも前方にいます。
このことから、物体Bが物体Aを追い抜くのは、6番目のフラッシュ光と7番目のフラッシュ光の間です。

計算方法の平易な説明:

A君とB君の競争を、コマ送りの写真で見てみましょう。それぞれのコマでの位置が記録されています。
1コマ目から6コマ目までは、A君がB君より前にいます。
ところが、7コマ目を見ると、今度はB君がA君よりも前に出ています。
つまり、B君がA君を追い抜いたのは、6コマ目と7コマ目の間ということになります。

この設問における重要なポイント:

  • 「追い抜く」とは、位置関係が逆転すること。一方の物体がもう一方の物体より後ろから前に出る区間を特定する。
  • 提供された各点の位置データを正確に比較する。
解答 (1):
物体Bが物体Aを追い抜くのは、6番目と7番目のフラッシュ光の間である。

(2) 1番目と8番目のフラッシュ光の間における物体の平均の速さについて考える。物体Aの平均の速さは、物体Bの平均の速さのおよそ何倍か。

問われている内容の明確化:

1番目のフラッシュ光から8番目のフラッシュ光までの期間における、物体Aの平均の速さと物体Bの平均の速さを比較し、\(v_A\) が \(v_B\) のおよそ何倍になるかを求めます。

具体的な解説と計算手順:

1番目から8番目までのフラッシュ光の間は、フラッシュ間隔が \(8-1=7\)回あります。
1回のフラッシュの時間間隔を \(\Delta t\) とすると、1番目から8番目までの総経過時間は \(T = 7\Delta t\) です。

物体Aの総移動距離 \(\Delta x_A\):
物体Aの1番目の位置は \(x_A(1) = 1\)、8番目の位置は \(x_A(8) = 17.6\) です。
よって、総移動距離は、
$$\Delta x_A = x_A(8) – x_A(1) = 17.6 – 1 = 16.6$$

物体Bの総移動距離 \(\Delta x_B\):
物体Bの1番目の位置は \(x_B(1) = 0\)、8番目の位置は \(x_B(8) = 20.1\) です。
よって、総移動距離は、
$$\Delta x_B = x_B(8) – x_B(1) = 20.1 – 0 = 20.1$$

物体Aの平均の速さ \(v_A\):
$$v_A = \frac{\Delta x_A}{T} = \frac{16.6}{7\Delta t}$$

物体Bの平均の速さ \(v_B\):
$$v_B = \frac{\Delta x_B}{T} = \frac{20.1}{7\Delta t}$$

平均の速さの比:
物体Aの平均の速さが物体Bの平均の速さの何倍かを求めるので、\(\frac{v_A}{v_B}\) を計算します。
$$\frac{v_A}{v_B} = \frac{\left(\frac{16.6}{7\Delta t}\right)}{\left(\frac{20.1}{7\Delta t}\right)} = \frac{16.6}{20.1}$$
これを小数で表すと、
$$\frac{16.6}{20.1} \approx 0.8258706467…$$
問題では「およそ何倍か」と聞かれているので、有効数字2桁で答えておきます。
よって、\(0.826\) 倍となります。

使用した物理公式: 平均の速さ

$$v_{平均} = \frac{\text{総移動距離}}{\text{総経過時間}}$$

計算方法の平易な説明:

A君とB君が、最初のコマから最後のコマまでに、それぞれどれだけ進んだかを比べます。
時間はどちらも「フラッシュ7回分の時間」で同じです。
A君は、(17.6 – 1) = 16.6 だけ進みました(目盛りの数で)。
B君は、(20.1 – 0) = 20.1 だけ進みました(目盛りの数で)。
同じ時間で進んだ距離の比が、そのまま平均の速さの比になります。
だから、A君の速さ ÷ B君の速さ = A君の進んだ距離 ÷ B君の進んだ距離 = 16.6 ÷ 20.1 です。
16.6 ÷ 20.1 を計算すると、約0.83になります。
つまり、A君の平均の速さは、B君の平均の速さのおよそ0.83倍です。

この設問における重要なポイント:

  • 平均の速さを比較する際、時間間隔が同じであれば、移動距離の比がそのまま速さの比となる。
  • 1番目からN番目のフラッシュまでの時間間隔は \((N-1)\Delta t\) であること。
  • 「およそ」と問われた場合の答え方(有効数字の考慮)。提供されたデータの精度に合わせて結果の有効数字を決定する。
解答 (2):
物体Aの平均の速さは、物体Bの平均の速さのおよそ \(0.83\) 倍である。

問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • ストロボ写真の読解: 一定時間間隔ごとの物体の位置を示し、運動の様子(速度の変化など)を分析するのに使われます。隣り合う点の間隔がその区間の平均の速さに比例します。
  • 位置・変位・移動距離:
    • 位置: 基準点からの物体の場所。
    • 変位: 位置の変化。向きも含むベクトル量(この問題では直線運動なので、始点から終点への向きと大きさ)。
    • 移動距離: 物体が実際に動いた道のりの総延長。直線運動で向きが変わらなければ変位の大きさと一致。
  • 平均の速さ (\(v_{平均}\)): 総移動距離を総経過時間で割った値。向きは考えないスカラー量。
  • 速度と時間と距離の関係: これらの基本的な関係を理解していることが、運動の問題を解く上での基礎となります。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 基準点の明確化: ストロボ写真から位置を読み取る際には、必ず基準点(原点)を明確に定め、そこからの距離として各点の位置を測定しましょう。
  • データの正確な利用: 問題文で具体的な数値データが与えられた場合は、その数値を正確に用いて計算することが求められます。読み取り誤差を考慮する必要がある場合と、与えられたデータをそのまま使う場合を区別しましょう。
  • 「間」と「瞬間」の区別: 設問が「何番目と何番目の間か」と問うているのか、「何番目の瞬間か」と問うているのかを区別することが重要です。
  • 単位の扱い: この問題のように具体的な単位が明示されていない場合でも、比を求める問題では設定した仮の単位(例えば目盛りの数)が約分されて消えることが多いです。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • 追い越しの判定ミス: 物体が同じ位置になった瞬間(追いついた瞬間)を「追い抜いた」と誤解しやすいですが、追い抜くのはその後に位置関係が逆転した場合です。
  • 時間間隔の誤算: N個の点があるストロボ写真で、最初の点から最後の点までの時間間隔は、点の数から1を引いたもの(N-1)に基本時間間隔 \(\Delta t\) を掛けたものになります。
  • 平均の速さの計算対象: 平均の速さを求める際には、指定された全区間の総移動距離と総経過時間を用います。
  • 比の計算の誤り: 「AはBの何倍か」という問いに対して、\(\frac{B}{A}\) を計算してしまうなど、比の取り方を間違えないように注意が必要です。
  • 有効数字の処理: 計算結果の有効数字は、計算に用いた数値データの有効数字に基づいて決定します。通常は、最も有効数字の桁数が少ないものに合わせますが、問題の指示や慣例に従うことも重要です。

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