Step 2
241 波の干渉
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「2つの波源による波の干渉」です。2つの波源から出た波が、ある点で重なり合うときに強め合うか弱め合うかを、波源からの距離の差(経路差)を用いて判断する、波の干渉における最も基本的な問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の干渉条件: 2つの波源からの距離の差(経路差)と波長の関係によって、波が強め合うか弱め合うかが決まります。
- 同位相と逆位相: 波源の振動の仕方が同じ(同位相)か逆(逆位相)かで、干渉の条件が完全に逆転します。
- 強め合い(腹)と弱め合い(節): 強め合う点では振幅がもとの波の振幅の2倍になり、弱め合う点では振幅が0になります。
- 経路差の計算: 観測点までの2つの波源からの距離をそれぞれ求め、その差の絶対値を取ります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)と(2)では、まず各点までの経路差を計算します。次に、同位相の干渉条件と照らし合わせ、強め合い(腹)か弱め合い(節)かを判断し、合成波の振幅を求めます。
- (3)では、波源が逆位相になることで干渉条件が逆転することを利用します。(1)と(2)で求めた経路差を、逆位相の条件に当てはめて考えます。
問(1)
思考の道筋とポイント
点Cでの合成波の振幅を求めるには、まず点Cが強め合う点(腹)なのか、弱め合う点(節)なのかを判断する必要があります。そのためには、2つの波源A, Bから点Cまでの「経路差」を計算し、それが波長の整数倍か、半波長の奇数倍(\( (m+\frac{1}{2}) \)倍)かを調べます。波源は同位相なので、経路差が半波長の奇数倍なら弱め合います。
この設問における重要なポイント
- 経路差: \(\Delta L = |L_A – L_B|\)
- 同位相の波源の干渉条件:
- 強め合い(腹): \(\Delta L = m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 弱め合い(節): \(\Delta L = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 弱め合う点の振幅は、各波の振幅の差(今回は0)になります。
具体的な解説と立式
波源A, Bから点Cまでの距離は、それぞれ \(L_{AC} = 30.0 \text{ cm}\)、\(L_{BC} = 37.5 \text{ cm}\) です。これらの経路差 \(\Delta L_C\) を求めます。
$$ \Delta L_C = |L_{AC} – L_{BC}| $$
問題で与えられた波長は \(\lambda = 5.0 \text{ cm}\) です。この経路差 \(\Delta L_C\) と波長 \(\lambda\) の関係を、同位相の干渉条件と比較します。
点Cが弱め合う点(節)である場合、その点での合成波の振幅 \(A_C\) は、各波の振幅 \(A_0 = 0.40 \text{ cm}\) を用いて、
$$ A_C = A_0 – A_0 = 0 $$
となります。
使用した物理公式
- 波の干渉条件(弱め合い): \(\Delta L = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
まず、点Cまでの経路差 \(\Delta L_C\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L_C &= |30.0 – 37.5| \\[2.0ex]
&= |-7.5| \\[2.0ex]
&= 7.5 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
波長 \(\lambda = 5.0 \text{ cm}\) と比較します。
$$ \frac{\Delta L_C}{\lambda} = \frac{7.5}{5.0} = 1.5 = 1 + \frac{1}{2} $$
これは、\(m=1\) の場合の弱め合いの条件 \(\Delta L_C = (1 + \frac{1}{2})\lambda\) を満たしています。
したがって、点Cは弱め合って節となり、合成波の振幅は \(0 \text{ cm}\) です。
点Cまでの2つの道のりの差は \(7.5 \text{ cm}\) です。波長は \(5.0 \text{ cm}\) なので、この道のりの差は波長のちょうど1.5個分です。このように、道のりの差が波長の「半端な数(0.5, 1.5, 2.5…)」倍になると、片方の波の山がもう片方の波の谷と重なり、お互いを打ち消し合います。その結果、点Cは全く振動しなくなり、振幅は0になります。
点Cまでの経路差は \(7.5 \text{ cm}\) であり、これは半波長 \( \lambda/2 = 2.5 \text{ cm} \) の3倍(奇数倍)です。同位相の波源なので、この条件は弱め合い(節)を示します。したがって、合成波の振幅は0cmとなります。
問(2)
思考の道筋とポイント
設問(1)と同様に、点Dでの合成波の振幅を求めるため、まずは点Dまでの経路差を計算します。そして、その経路差が同位相の干渉条件のどちらを満たすかを調べます。経路差が波長の整数倍であれば、波は強め合います。
この設問における重要なポイント
- 経路差: \(\Delta L = |L_A – L_B|\)
- 同位相の波源の干渉条件:
- 強め合い(腹): \(\Delta L = m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 弱め合い(節): \(\Delta L = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 強め合う点の振幅は、各波の振幅の和になります。
具体的な解説と立式
波源A, Bから点Dまでの距離は、それぞれ \(L_{AD} = 25.0 \text{ cm}\)、\(L_{BD} = 30.0 \text{ cm}\) です。これらの経路差 \(\Delta L_D\) を求めます。
$$ \Delta L_D = |L_{AD} – L_{BD}| $$
この経路差 \(\Delta L_D\) と波長 \(\lambda = 5.0 \text{ cm}\) の関係を、同位相の干渉条件と比較します。
点Dが強め合う点(腹)である場合、その点での合成波の振幅 \(A_D\) は、各波の振幅 \(A_0 = 0.40 \text{ cm}\) を用いて、
$$ A_D = A_0 + A_0 = 2A_0 $$
となります。
使用した物理公式
- 波の干渉条件(強め合い): \(\Delta L = m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
まず、点Dまでの経路差 \(\Delta L_D\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L_D &= |25.0 – 30.0| \\[2.0ex]
&= |-5.0| \\[2.0ex]
&= 5.0 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
波長 \(\lambda = 5.0 \text{ cm}\) と比較します。
$$ \frac{\Delta L_D}{\lambda} = \frac{5.0}{5.0} = 1 $$
これは、\(m=1\) の場合の強め合いの条件 \(\Delta L_D = 1 \times \lambda\) を満たしています。
したがって、点Dは強め合って腹となり、合成波の振幅は
$$
\begin{aligned}
A_D &= 0.40 + 0.40 \\[2.0ex]
&= 0.80 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
となります。
点Dまでの2つの道のりの差は \(5.0 \text{ cm}\) です。波長も \(5.0 \text{ cm}\) なので、道のりの差は波長のちょうど1個分です。このように、道のりの差が波長の「ちょうど整数(0, 1, 2…)」倍になると、片方の波の山がもう片方の波の山と重なり、お互いを強め合います。その結果、点Dは大きく振動し、振幅はもとの波の2倍である \(0.80 \text{ cm}\) になります。
点Dまでの経路差は \(5.0 \text{ cm}\) であり、これは波長 \(\lambda = 5.0 \text{ cm}\) の1倍(整数倍)です。同位相の波源なので、この条件は強め合い(腹)を示します。したがって、合成波の振幅は \(0.40 \text{ cm} \times 2 = 0.80 \text{ cm}\) となります。
問(3)
思考の道筋とポイント
波源A, Bが「逆位相」で振動する場合を考えます。逆位相とは、片方の波源が山の波を出す瞬間に、もう片方の波源は谷の波を出す、というように振動のタイミングが正反対であることを意味します。これにより、干渉の条件が同位相の場合とすべて逆転します。この新しい条件を、(1)と(2)で求めた経路差に適用します。
この設問における重要なポイント
- 逆位相の波源の干渉条件(同位相と逆になる):
- 強め合い(腹): \(\Delta L = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- 弱め合い(節): \(\Delta L = m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
- (1), (2)で計算した経路差の値はそのまま使えます。
具体的な解説と立式
波源が逆位相なので、干渉条件が同位相の場合と逆になります。
点Cについて:
(1)で計算した経路差は \(\Delta L_C = 7.5 \text{ cm}\) でした。これは \(\Delta L_C = (1 + \frac{1}{2})\lambda\) を満たします。
逆位相の場合、この条件は「強め合い」を意味します。したがって、合成波の振幅 \(A_C’\) は、
$$ A_C’ = A_0 + A_0 = 2A_0 $$
となります。
点Dについて:
(2)で計算した経路差は \(\Delta L_D = 5.0 \text{ cm}\) でした。これは \(\Delta L_D = 1 \times \lambda\) を満たします。
逆位相の場合、この条件は「弱め合い」を意味します。したがって、合成波の振幅 \(A_D’\) は、
$$ A_D’ = A_0 – A_0 = 0 $$
となります。
使用した物理公式
- 逆位相の干渉条件:
- 強め合い: \(\Delta L = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\)
- 弱め合い: \(\Delta L = m\lambda\)
点Cの振幅の計算:
経路差 \(\Delta L_C = 7.5 \text{ cm}\) は、逆位相の強め合いの条件を満たします。
$$
\begin{aligned}
A_C’ &= 0.40 + 0.40 \\[2.0ex]
&= 0.80 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
点Dの振幅の計算:
経路差 \(\Delta L_D = 5.0 \text{ cm}\) は、逆位相の弱め合いの条件を満たします。
$$
\begin{aligned}
A_D’ &= 0.40 – 0.40 \\[2.0ex]
&= 0 \text{ [cm]}
\end{aligned}
$$
波源の振動のタイミングが正反対(逆位相)になると、強め合いと弱め合いのルールがそっくり入れ替わります。
- (1)の点Cは、同位相では弱め合いましたが、逆位相では強め合います。振幅は \(0.80 \text{ cm}\) になります。
- (2)の点Dは、同位相では強め合いましたが、逆位相では弱め合います。振幅は \(0 \text{ cm}\) になります。
つまり、(1)と(2)の答えが入れ替わった結果になります。
波源が逆位相になると、干渉条件が逆転する。したがって、同位相で節だった点Cは腹に、腹だった点Dは節になる。
- 点Cの振幅は \(0.80 \text{ cm}\)
- 点Dの振幅は \(0 \text{ cm}\)
となり、物理的に妥当な結果です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の干渉条件(経路差と位相):
- 核心: 2つの波が重なり合う点での合成波の振幅は、2つの波源からの「経路差 \(\Delta L\))」と「波長 \(\lambda\))」の比、そして波源自体の「位相(同位相か逆位相か)」という3つの要素で決まる、という干渉の基本原理を理解することが全てです。
- 理解のポイント:
- 経路差 \(\Delta L = |L_A – L_B|\): 2つの波が観測点に到達するまでに生じる「ズレ」を表します。
- 同位相: 波源が同じタイミングで振動。経路差が波長の整数倍 (\(m\lambda\)) で強め合い、半整数倍 (\((m+\frac{1}{2})\lambda\)) で弱め合います。
- 逆位相: 波源が逆のタイミングで振動。最初から半波長分のズレがあるので、干渉条件が同位相と完全に逆転します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 定在波: 2つの波源を結ぶ線分上での干渉を考える問題。中点が腹になるか節になるかを判断し、そこから腹・節の数を数え上げます。
- ヤングの実験(光の干渉): 2つのスリットを波源とする光の干渉。スクリーン上にできる明線(強め合い)と暗線(弱め合い)の間隔を求める問題など。原理は全く同じです。
- 薄膜による干渉: シャボン玉や油膜の色。膜の表と裏で反射した光の干渉を考えます。経路差に加えて、反射による位相の変化も考慮する必要があります。
- 初見の問題での着眼点:
- 位相の確認: 問題文の冒頭で「同位相」か「逆位相」かを絶対に確認し、丸をつける。これが全ての判断の基準になります。
- 波長 \(\lambda\) の値を確認: 経路差を波長と比較するため、\(\lambda\) の値は必須です。
- 経路差 \(\Delta L\) の計算: 各観測点について、2つの波源からの距離の差を正確に計算します。引き算の順序は問わない(絶対値をとるため)ですが、計算ミスに注意します。
- \(\Delta L\) と \(\lambda\) の比較: 計算した経路差 \(\Delta L\) が、波長 \(\lambda\) の「何倍」になっているか、あるいは半波長 \(\lambda/2\) の「何倍」になっているかを調べます。
- \(\Delta L = m \lambda\) (半波長の偶数倍) → 同位相で強め合い、逆位相で弱め合い
- \(\Delta L = (m+\frac{1}{2})\lambda\) (半波長の奇数倍) → 同位相で弱め合い、逆位相で強め合い
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 同位相と逆位相の条件の混同:
- 誤解: (3)で逆位相になっても、同位相の条件をそのまま使ってしまい、答えが変わらないと判断してしまう。
- 対策: 問題を解き始める前に、使うべき干渉条件のペアを余白に書き出す。「同位相:\(\Delta L=m\lambda\)→腹」「逆位相:\(\Delta L=m\lambda\)→節」のように、セットで記憶し、問題に応じて切り替える練習をする。
- 振幅の計算ミス:
- 誤解: 強め合うときの振幅を、もとの振幅のまま \(0.40 \text{ cm}\) と答えてしまう。
- 対策: 「強め合い=振幅は和」「弱め合い=振幅は差」と明確に覚える。この問題では振幅が等しいので、強め合いで2倍、弱め合いで0になると機械的に処理できます。
- 経路差の計算ミス:
- 誤解: \(|30.0 – 37.5|\) のような簡単な引き算で符号を間違えたり、計算を焦って間違えたりする。
- 対策: 距離は必ず正の値なので、大きい方から小さい方を引く癖をつける (\(37.5 – 30.0\))。計算は必ず筆算するか、暗算でも見直しを行う。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 干渉条件式 (\(\Delta L = m\lambda\) など):
- 選定理由: この問題は、観測点での波の重ね合わせの結果(振幅)を問うており、その結果を決定づけるのが経路差と波長の関係だからです。
- 適用根拠:
- 2つの波が観測点で重なるときの位相差は、波源での位相差と、経路差による位相差の和で決まります。
- 経路差 \(\Delta L\) は、位相差 \(2\pi \frac{\Delta L}{\lambda}\) に相当します。
- 同位相(波源の位相差0)の場合:
- 強め合い(位相差が \(2\pi\) の整数倍) \(\iff 2\pi \frac{\Delta L}{\lambda} = 2m\pi \iff \Delta L = m\lambda\)
- 弱め合い(位相差が \(2\pi\) の半整数倍) \(\iff 2\pi \frac{\Delta L}{\lambda} = (2m+1)\pi \iff \Delta L = (m+\frac{1}{2})\lambda\)
- 逆位相(波源の位相差\(\pi\))の場合:
- この初期位相差\(\pi\)が加わるため、上記の条件がすべて逆転します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 半波長を基準にする: 波長 \(\lambda = 5.0 \text{ cm}\) なので、半波長は \(\lambda/2 = 2.5 \text{ cm}\) です。この値を最初に計算しておくと便利です。
- (1) 経路差 \(7.5 \text{ cm}\) は、半波長 \(2.5 \text{ cm}\) の「3倍(奇数倍)」。
- (2) 経路差 \(5.0 \text{ cm}\) は、半波長 \(2.5 \text{ cm}\) の「2倍(偶数倍)」。
- このように「半波長の偶数倍か奇数倍か」で判断すると、\(\lambda\) と直接比較するよりも直感的で速い場合があります。
- 表を作成して整理する: 特に(3)のように条件が変わる場合、以下のような簡単な表を作ると頭が整理され、ミスが減ります。
点C (\(\Delta L=7.5\)) 点D (\(\Delta L=5.0\)) 経路差 \(\frac{\lambda}{2}\times 3\) (奇数倍) \(\frac{\lambda}{2}\times 2\) (偶数倍) (1,2)同位相 弱め合い(節) 強め合い(腹) (3)逆位相 強め合い(腹) 弱め合い(節)
242 定在波の節の数
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「2つの波源間にできる定在波の腹と節の数」です。2つの波源を結ぶ線分上では、逆向きに進む波が重なり合うことで定在波が形成されます。波源の位相(同位相か逆位相か)によって定在波の腹と節のパターンがどう変わるかを理解することが重要です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 定在波: 逆向きに進む同じ種類の波が重なり合うことで生じる、振動しない点(節)と大きく振動する点(腹)が空間的に固定された波。
- 干渉条件と位相: 波源が同位相か逆位相かによって、2つの波源の中点が腹になるか節になるかが決まります。
- 腹と節の間隔: 定在波において、隣り合う腹と節の間隔は波長の4分の1 (\(\lambda/4\))、同じ種類のもの同士(腹と腹、または節と節)の間隔は波長の2分の1 (\(\lambda/2\)) です。
- 数式による解法: 線分上の点の経路差を求め、干渉の条件式と照らし合わせることで、腹や節の位置を代数的に特定することも可能です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 同位相の場合: 中点が強め合って「腹」になることを基点とし、そこから \(\lambda/4\) と \(\lambda/2\) の間隔の関係を使って、線分AB上に存在する節の数を数え上げます。
- 逆位相の場合: 中点が弱め合って「節」になることを基点とし、そこから \(\lambda/2\) の間隔の関係を使って、線分AB上に存在する節の数を数え上げます。
同位相の場合
思考の道筋とポイント
2つの波源A, Bが同位相で振動している場合を考えます。線分AB上には、Aからの波とBからの波が重なり合って定在波ができます。同位相の波源の場合、その中点は常に強め合って「腹」になります。この腹を基準点として、定在波の腹と節が交互に並ぶ性質を利用して、節の数を数えます。
この設問における重要なポイント
- 2つの波源を結ぶ線分上には定在波ができます。
- 同位相の波源の場合、中点は経路差が0なので強め合い、腹になります。
- 定在波の腹と隣の節の間隔は \(\lambda/4\) です。
- 定在波の節と隣の節の間隔は \(\lambda/2\) です。
具体的な解説と立式
波長は \(\lambda = 4.0 \text{ cm}\) です。したがって、半波長は \(\lambda/2 = 2.0 \text{ cm}\)、四分の一波長は \(\lambda/4 = 1.0 \text{ cm}\) となります。
波源A, B間の距離は \(7.0 \text{ cm}\) なので、その中点MはA, Bからそれぞれ \(3.5 \text{ cm}\) の位置にあります。
波源が同位相なので、中点Mは強め合って腹になります。
定在波では、腹から最も近い節までの距離は \(\lambda/4\) であり、その後、節は \(\lambda/2\) の間隔で並びます。この関係を用いて、中点MからA側、B側にそれぞれ節がいくつ存在するかを数えます。
使用した物理公式
- 定在波の腹と節の間隔: 腹-節間 \(\lambda/4\), 節-節間 \(\lambda/2\)
- 中点M(Aから \(3.5 \text{ cm}\) の位置)は腹です。
- Mから両側に \(\lambda/4 = 1.0 \text{ cm}\) の位置に最初の節ができます。
- Aからの距離で考えると、\(3.5 – 1.0 = 2.5 \text{ cm}\) と \(3.5 + 1.0 = 4.5 \text{ cm}\) の位置です。
- さらにそこから両側に \(\lambda/2 = 2.0 \text{ cm}\) ごとに次の節ができます。
- Aからの距離で考えると、\(2.5 – 2.0 = 0.5 \text{ cm}\) と \(4.5 + 2.0 = 6.5 \text{ cm}\) の位置です。
- さらに次の節を考えると、\(0.5 – 2.0 = -1.5 \text{ cm}\) と \(6.5 + 2.0 = 8.5 \text{ cm}\) となり、どちらも線分AB(Aから0cm〜7.0cm)の範囲外です。
- したがって、線分AB上にある節は、Aから \(0.5, 2.5, 4.5, 6.5 \text{ cm}\) の4箇所です。
よって、節の数は4個となります。
波源が同じタイミングで振動しているので、ちょうど真ん中の点(Aから3.5cm)は強め合って大きく揺れる「腹」になります。定在波では、腹と節は交互に並びます。腹から一番近い節までは、波長の4分の1(1.0cm)離れています。なので、真ん中から左右に1.0cm離れた場所(Aから2.5cmと4.5cm)に節ができます。節と節の間隔は波長の半分(2.0cm)なので、さらに外側に2.0cmずつ離れた場所(Aから0.5cmと6.5cm)にも節ができます。これらを合計すると、節は全部で4個になります。
同位相の波源の場合、中点Mは腹となる。その両側に、Mから \(1.0 \text{ cm}\) と \(3.0 \text{ cm}\) の位置に節が存在する。したがって、線分AB上には合計4個の節が存在します。
逆位相の場合
思考の道筋とポイント
次に、波源A, Bが「逆位相」で振動する場合を考えます。逆位相の場合、同位相の場合と干渉の条件がすべて逆転します。したがって、2つの波源の中点は弱め合って「節」になります。この中点の節を基準として、他の節の数を数えます。
この設問における重要なポイント
- 逆位相の波源の場合、中点は経路差が0ですが、波源の位相が\(\pi\)ずれているため弱め合い、節になります。
- 定在波の節と隣の節の間隔は \(\lambda/2\) です。
具体的な解説と立式
波長 \(\lambda = 4.0 \text{ cm}\)、半波長 \(\lambda/2 = 2.0 \text{ cm}\) は先ほどと同じです。
波源が逆位相なので、中点M(Aから \(3.5 \text{ cm}\) の位置)は弱め合って節になります。
定在波では、節は \(\lambda/2\) の間隔で並びます。この関係を用いて、中点MからA側、B側にそれぞれ節がいくつ存在するかを数えます。
使用した物理公式
- 定在波の節と節の間隔: \(\lambda/2\)
- 中点M(Aから \(3.5 \text{ cm}\) の位置)は節です。これが1つ目の節です。
- Mから両側に \(\lambda/2 = 2.0 \text{ cm}\) の位置に次の節ができます。
- Aからの距離で考えると、\(3.5 – 2.0 = 1.5 \text{ cm}\) と \(3.5 + 2.0 = 5.5 \text{ cm}\) の位置です。
- さらに次の節を考えると、\(1.5 – 2.0 = -0.5 \text{ cm}\) と \(5.5 + 2.0 = 7.5 \text{ cm}\) となり、どちらも線分AB(Aから0cm〜7.0cm)の範囲外です。
- したがって、線分AB上にある節は、Aから \(1.5, 3.5, 5.5 \text{ cm}\) の3箇所です。
よって、節の数は3個となります。
今度は波源が逆のタイミングで振動するので、真ん中の点(Aから3.5cm)は打ち消し合って全く揺れない「節」になります。これが1つ目の節です。定在波では、節と節は波長の半分(2.0cm)の間隔で並びます。なので、真ん中の節から左右に2.0cm離れた場所(Aから1.5cmと5.5cm)にも節ができます。これらを合計すると、節は全部で3個になります。
逆位相の波源の場合、中点Mは節となる。その両側に、Mから \(2.0 \text{ cm}\) の位置に節が存在する。したがって、線分AB上には合計3個の節が存在します。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 定在波の形成と性質:
- 核心: 2つの波源を結ぶ線分上では、逆向きに進む波が干渉し、空間に固定された腹と節のパターンを持つ「定在波」が形成されることを理解するのが第一歩です。
- 理解のポイント:
- 腹と節の間隔: 腹と節は交互に並び、その間隔は \(\lambda/4\)。同じもの同士(腹-腹、節-節)の間隔は \(\lambda/2\) であるという幾何学的な規則性が、この種の問題を解く鍵となります。
- 波源の位相と中点の関係:
- 核心: 定在波のパターン全体を決定づけるのは、波源の位相関係です。これにより、2つの波源の中点が腹になるか節になるかが決まり、それが全ての腹・節の位置の基準点となります。
- 理解のポイント:
- 同位相: 中点では経路差が0なので、波は強め合い「腹」になります。
- 逆位相: 中点では経路差が0ですが、波源の位相が\(\pi\)ずれているため、波は弱め合い「節」になります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 開管・閉管の気柱の共鳴: 管の中で音が反射して定在波ができる現象。開口端が腹、閉口端が節になるという境界条件を使って、共鳴する波長や振動数を求めます。考え方はこの問題と非常によく似ています。
- 弦の振動: ギターやピアノの弦も、両端が固定されているため、両端が節となる定在波ができます。基本振動、2倍振動、3倍振動…と、可能な定在波のパターンを考えます。
- 腹の数を数える問題: この問題では節の数を問われましたが、腹の数を問われることもあります。考え方は全く同じで、中点が腹か節かを判断し、\(\lambda/4\)と\(\lambda/2\)の間隔で数え上げるだけです。
- 初見の問題での着眼点:
- 位相の確認: まず「同位相」か「逆位相」かを確認し、中点が「腹」か「節」かを確定させます。これが全ての基準です。
- \(\lambda/2\) と \(\lambda/4\) の計算: 問題で与えられた波長 \(\lambda\) から、計算に使う \(\lambda/2\) と \(\lambda/4\) の値を最初に計算してメモしておきます。
- 数直線で可視化: 波源A, Bを結ぶ数直線を書き、中点の位置をマークします。そこに腹(◯)か節(×)かを書き込みます。
- 数え上げ: 中点から左右に、\(\lambda/2\) や \(\lambda/4\) の間隔で腹や節をプロットしていき、波源AとBの間に収まるものの個数を数えます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 中点の位置の勘違い:
- 誤解: 波源間の距離が \(7.0 \text{ cm}\) なので、中点は \(3.5 \text{ cm}\) の位置。ここから \(\lambda/2 = 2.0 \text{ cm}\) ずつずらして、\(1.5, 3.5, 5.5\) と数えるのは逆位相の場合。同位相の場合、中点は腹なので、そこから \(\lambda/4 = 1.0 \text{ cm}\) ずれた位置が最初の節になることを見落とす。
- 対策: 「中点が腹か節か」をまず確定し、「腹から数え始めるのか、節から数え始めるのか」を明確に意識する。
- 中点が腹なら、次の節は \(\pm \lambda/4\) の位置。
- 中点が節なら、次の節は \(\pm \lambda/2\) の位置。
- 波源の位置を含めてしまう:
- 誤解: 波源A, Bそのものが腹や節になると勘違いして、数に含めてしまう。
- 対策: 腹や節ができるのは、あくまで2つの波が重なり合う波源の「間」です。波源自体は振動の源であり、定在波のパターンの一部ではありません。
- 計算ミス:
- 誤解: \(\lambda/4\) と \(\lambda/2\) の値を間違える。\(7.0/2=3.5\) のような簡単な割り算を間違える。
- 対策: 計算は焦らず慎重に行う。特に、数直線上に \(0, 1.0, 2.0, … , 7.0\) と目盛りを振って、求めた節の位置(例: 0.5, 2.5, 4.5, 6.5)が確かに範囲内にあることを視覚的に確認すると、大きなミスを防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 数式による別解(干渉条件式の利用):
- 選定理由: 図で数え上げる方法が直感的で速いですが、数式で解くことでより厳密に位置を特定し、検算することもできます。
- 適用根拠: 線分AB上の点P(Aからの距離を \(x\) とする)を考えます。
- Aからの距離: \(L_A = x\)
- Bからの距離: \(L_B = 7.0 – x\)
- 経路差: \(\Delta L = |L_A – L_B| = |x – (7.0 – x)| = |2x – 7.0|\)
- 同位相で節になる条件: \(\Delta L = (m + \frac{1}{2})\lambda\)
- \(|2x – 7.0| = (m + \frac{1}{2}) \times 4.0 = 4m + 2.0\)
- \(0 < x < 7.0\) の範囲でこの方程式を満たす \(x\) がいくつあるかを、整数 \(m=0, 1, 2, \dots\) を代入して調べます。
- \(m=0\) のとき: \(|2x-7.0|=2.0\)。よって \(2x-7.0=\pm 2.0\) となり、\(x=4.5, 2.5\)。
- \(m=1\) のとき: \(|2x-7.0|=6.0\)。よって \(2x-7.0=\pm 6.0\) となり、\(x=6.5, 0.5\)。
- \(m=2\) のとき: \(|2x-7.0|=10.0\)。よって \(2x-7.0=\pm 10.0\) となり、\(x=8.5, -1.5\) (範囲外)。
- よって、\(x=0.5, 2.5, 4.5, 6.5\) の4個。作図の結果と一致します。逆位相の場合も同様に計算できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 図示の徹底: この種の問題は、簡単な数直線や波形図を描くことが最も有効なミス防止策です。頭の中だけで処理しようとすると、基準点や間隔を間違いやすくなります。
- 左右対称性の利用: 中点を基準に考えれば、片側(例えばAとMの間)の節の数を数え、それを2倍し、中点自身が節であれば最後に1を足す、という方法も使えます。
- 同位相: MとBの間に節は2個。よって全体で \(2 \times 2 = 4\)個。
- 逆位相: MとBの間に節は1個。よって全体で \(1 \times 2 + 1(\text{中点}) = 3\)個。
- 言葉で確認: 「同位相だから中点は腹。腹から数えるから、最初は\(\lambda/4\)ずれたところが節。次は\(\lambda/2\)…」のように、自分の思考プロセスを言葉に出して確認しながら解くと、勘違いや手順の飛ばしを防げます。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。【引用】https://makoto-physics-school.com[…]