「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅰ 章 2】プロセス

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

プロセス

1 自由落下

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「自由落下運動」です。物体が重力だけを受けて初速度ゼロの状態から落下する、最も基本的な鉛直方向の運動について、特定の時間後の速さと落下距離を計算します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 自由落下の定義: 物体を静かに手放した(初速度 \(v_0=0\))ときの落下運動。
  2. 重力加速度: 地球が物体を引きつける力によって生じる加速度。向きは常に鉛直下向きで、大きさは \(g\) で表される(この問題では \(g=9.8 \, \text{m/s}^2\))。
  3. 等加速度直線運動として扱う: 自由落下は、初速度 \(v_0=0\)、加速度 \(a=g\) の等加速度直線運動の一種である。
  4. 自由落下の公式: 等加速度直線運動の公式を、自由落下の条件に合わせて簡単にしたもの(\(v=gt\), \(y = \frac{1}{2}gt^2\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 「自由落下」という言葉から、初速度 \(v_0=0\) であることを読み取る。
  2. 鉛直下向きを正の向きと定め、加速度を \(a = +g = +9.8 \, \text{m/s}^2\) とする。
  3. \(1.0 \, \text{s}\) 後の速さを求めるために、自由落下の速度の公式 \(v=gt\) に値を代入する。
  4. \(1.0 \, \text{s}\) 間の落下距離を求めるために、自由落下の距離の公式 \(y = \frac{1}{2}gt^2\) に値を代入する。

 

速さの計算

思考の道筋とポイント
「自由落下」とは、物体を静かに(初速度ゼロで)落とす運動のことです。この運動は、重力加速度 \(g\) で加速し続ける「等加速度直線運動」の特別な場合と考えることができます。

重力加速度の大きさ \(g=9.8 \, \text{m/s}^2\) とは、「\(1\) 秒間あたりに速さが \(9.8 \, \text{m/s}\) ずつ増加する」ことを意味します。

初速度がゼロなので、\(1.0 \, \text{s}\) 後には、速さはちょうど \(9.8 \, \text{m/s}\) になっているはずです。この直感的な理解を、公式を使って確認します。

この設問における重要なポイント

  • 座標軸の設定: 鉛直方向の運動を扱う場合、まずどちらの向きを正とするかを決めます。通常、落下運動では鉛直下向きを正とすると計算が簡単になります。
  • 自由落下の条件: 初速度 \(v_0=0\)、加速度 \(a=g\)。
  • 速度の公式: 自由落下の速度を求める公式は \(v=gt\) です。これは、等加速度直線運動の一般公式 \(v = v_0 + at\) に上記の条件を代入したものです。

具体的な解説と立式
鉛直下向きを正の向きと定めます。

  • 初速度: 自由落下なので \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\)
  • 加速度: 鉛直下向き(正の向き)に重力加速度が働くので \(a = +g = +9.8 \, \text{m/s}^2\)
  • 経過時間: \(t = 1.0 \, \text{s}\)

\(1.0 \, \text{s}\) 後の速さを \(v\) とすると、自由落下の公式より、
$$
v = gt
$$

使用した物理公式

  • 自由落下の速度の式: \(v = gt\)
計算過程

上記で立てた式に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= 9.8 \, \text{m/s}^2 \times 1.0 \, \text{s} \\[2.0ex]
&= 9.8 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$

計算に用いた数値(\(9.8\) と \(1.0\))はどちらも有効数字2桁なので、結果も有効数字2桁で適切です。

この設問の平易な説明

地球上では、落とした物は \(1\) 秒経つごとに \(9.8 \, \text{m/s}\) ずつスピードアップしていきます。今回は、止まっている状態から手を離して \(1.0\) 秒後の速さを聞かれているので、答えはそのまま \(9.8 \, \text{m/s}\) となります。もし \(2.0\) 秒後なら、\(9.8 \times 2.0 = 19.6 \, \text{m/s}\) になります。

解答 \(9.8 \, \text{m/s}\)

 

落下距離の計算

思考の道筋とポイント
次に、\(1.0 \, \text{s}\) の間に落下した距離を求めます。自由落下運動では、物体の速さは時間とともに増加していきます(一定ではありません)。したがって、単純に「速さ \(\times\) 時間」で距離を求めることはできません。

このような、速度が一定の割合で変化する運動の移動距離を求めるには、等加速度直線運動の変位の公式を用いる必要があります。自由落下の場合、専用の公式 \(y = \frac{1}{2}gt^2\) を使うのが最も簡単です。

この設問における重要なポイント

  • 落下距離の公式: 自由落下の落下距離を求める公式は \(y = \frac{1}{2}gt^2\) です。
  • 公式の由来: この式は、等加速度直線運動の一般公式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) に、自由落下の条件(\(v_0=0, a=g, x=y\))を代入したものです。

具体的な解説と立式
鉛直下向きを正とします。

  • 重力加速度: \(g = 9.8 \, \text{m/s}^2\)
  • 経過時間: \(t = 1.0 \, \text{s}\)

\(1.0 \, \text{s}\) 間の落下距離を \(y\) とすると、自由落下の公式より、
$$
y = \frac{1}{2}gt^2
$$

使用した物理公式

  • 自由落下の落下距離の式: \(y = \displaystyle\frac{1}{2}gt^2\)
計算過程

上記で立てた式に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
y &= \frac{1}{2} \times 9.8 \, \text{m/s}^2 \times (1.0 \, \text{s})^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \times 9.8 \times 1.0 \\[2.0ex]
&= 4.9 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

計算結果は有効数字2桁で適切です。

この設問の平易な説明

だんだん速くなりながら落ちていく物が、\(1.0\) 秒間でどれくらいの距離を進むかを考えます。このような運動の距離を計算するための便利な公式が \(y = \frac{1}{2}gt^2\) です。これに \(g=9.8\)、\(t=1.0\) を当てはめて計算すると、\(\frac{1}{2} \times 9.8 \times 1.0^2 = 4.9\) となります。つまり、落下距離は \(4.9\) メートルです。これは、だいたいマンションの2階の床くらいの高さに相当します。

解答 \(4.9 \, \text{m}\)

 

別解: 等加速度直線運動の一般公式から解く方法

思考の道筋とポイント
「自由落下」を特別な運動として専用の公式を覚えるのではなく、より普遍的な「等加速度直線運動」の一例として捉えるアプローチです。この方法では、等加速度直線運動の基本公式に、自由落下の条件(初速度 \(v_0=0\)、加速度 \(a=g\))をその都度代入して計算します。これにより、覚えるべき公式の数を減らし、物理現象をより統一的に理解することができます。

この設問における重要なポイント

  • 統一的な視点: 自由落下、投げ上げ、投げ下ろしは、すべて等加速度直線運動という一つの枠組みで説明できます。
  • 基本公式の適用: \(v = v_0 + at\) と \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) という2つの基本公式に、問題の条件を当てはめます。

具体的な解説と立式
鉛直下向きを正(\(+\))と定めます。この運動は、初速度 \(v_0=0\)、加速度 \(a=+g\) の等加速度直線運動です。

  • 初速度: \(v_0 = 0 \, \text{m/s}\)
  • 加速度: \(a = +g = +9.8 \, \text{m/s}^2\)
  • 経過時間: \(t = 1.0 \, \text{s}\)

速度の計算:

\(1.0 \, \text{s}\) 後の速度 \(v\) は、公式 \(v = v_0 + at\) より、
$$
v = 0 + gt
$$

落下距離の計算:

\(1.0 \, \text{s}\) 間の落下距離 \(y\) は、公式 \(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) より、
$$
y = (0 \times t) + \frac{1}{2}gt^2
$$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
  • 等加速度直線運動の変位の式: \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
計算過程

速度の計算:
$$
\begin{aligned}
v &= 9.8 \, \text{m/s}^2 \times 1.0 \, \text{s} \\[2.0ex]
&= 9.8 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$

落下距離の計算:
$$
\begin{aligned}
y &= \frac{1}{2} \times 9.8 \, \text{m/s}^2 \times (1.0 \, \text{s})^2 \\[2.0ex]
&= 4.9 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「自由落下」という名前がついていますが、その正体は単に「初速度がゼロの等加速度直線運動」です。なので、以前に習った等加速度直線運動の公式に、初速度 \(v_0=0\)、加速度 \(a=9.8\) を入れるだけで、同じように答えを出すことができます。

  • 速さ: \(v = 0 + 9.8 \times 1.0 = 9.8 \, \text{m/s}\)
  • 距離: \(y = (0 \times 1.0) + \frac{1}{2} \times 9.8 \times 1.0^2 = 4.9 \, \text{m}\)

このように、基本の公式さえしっかり理解していれば、色々な問題に応用できます。

解答 速さ \(9.8 \, \text{m/s}\), 落下距離 \(4.9 \, \text{m}\)

2 鉛直投げ下ろし

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「鉛直投げ下ろし運動」です。物体が重力の影響を受けながら、初速度を持って鉛直下向きに運動する場合について、特定の時間後の速さと落下距離を計算します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 鉛直投げ下ろしの定義: 物体を鉛直下向きに初速度 \(v_0\) を与えて放す運動。
  2. 重力加速度: 運動中、物体には常に鉛直下向きに大きさ \(g\) の重力加速度が働いている。
  3. 等加速度直線運動として扱う: 鉛直投げ下ろしは、初速度 \(v_0\)、加速度 \(a=g\) の等加速度直線運動である。
  4. 鉛直投げ下ろしの公式: 等加速度直線運動の公式を、投げ下ろしの条件に合わせて簡単にしたもの(\(v=v_0+gt\), \(y = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 「鉛直下向きに投げおろし」という記述から、初速度 \(v_0=10 \, \text{m/s}\) であることを読み取る。
  2. 鉛直下向きを正の向きと定め、加速度を \(a = +g = +9.8 \, \text{m/s}^2\) とする。
  3. \(2.0 \, \text{s}\) 後の速さを求めるために、公式 \(v=v_0+gt\) に値を代入する。
  4. \(2.0 \, \text{s}\) 間の落下距離を求めるために、公式 \(y = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2\) に値を代入する。
  5. 計算結果を適切な有効数字で処理する。

 

速さの計算

思考の道筋とポイント
「鉛直投げ下ろし」は、自由落下に下向きの初速度が加わった運動です。これも、加速度が重力加速度 \(g\) で一定の「等加速度直線運動」の一種です。

\(2.0 \, \text{s}\) 後の速さは、もともと持っていた初速度 \(v_0\) に、重力によって \(2.0\) 秒間加速された分の速度 \(gt\) が加わったものになります。この考え方を数式にしたものが、\(v = v_0 + gt\) です。

この設問における重要なポイント

  • 座標軸の設定: 鉛直下向きを正とすると、初速度 \(v_0\) も加速度 \(g\) も正の値となり、計算が直感的で分かりやすくなります。
  • 鉛直投げ下ろしの条件: 初速度 \(v_0 > 0\)、加速度 \(a=g\)。
  • 有効数字の和の計算: 和や差を計算する場合、結果の末位は、計算に用いた数値の中で最も末位が高い(粗い)ものに合わせます。

具体的な解説と立式
鉛直下向きを正の向きと定めます。

  • 初速度: \(v_0 = +10 \, \text{m/s}\)
  • 加速度: \(a = +g = +9.8 \, \text{m/s}^2\)
  • 経過時間: \(t = 2.0 \, \text{s}\)

\(2.0 \, \text{s}\) 後の速さを \(v\) とすると、鉛直投げ下ろしの公式より、
$$
v = v_0 + gt
$$

使用した物理公式

  • 鉛直投げ下ろしの速度の式: \(v = v_0 + gt\)
計算過程

上記で立てた式に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= 10 \, \text{m/s} + (9.8 \, \text{m/s}^2 \times 2.0 \, \text{s}) \\[2.0ex]
&= 10 + 19.6 \\[2.0ex]
&= 29.6 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$

ここで有効数字を考えます。\(10\) の末位は整数第一位、\(19.6\) の末位は小数第一位です。和の計算では、より粗い「整数第一位」に合わせるため、小数第一位を四捨五入します。
$$
v \approx 30 \, \text{m/s}
$$

この設問の平易な説明

物体は最初から下向きに秒速 \(10\) メートルの速さを持っています。そこからさらに、重力によって \(1\) 秒あたり \(9.8\) メートルずつスピードアップしていきます。\(2.0\) 秒間では、\(9.8 \times 2.0 = 19.6\) メートルだけ速くなります。したがって、最終的な速さは、もともとの速さ \(10\) に、スピードアップした分 \(19.6\) を足して、\(10 + 19.6 = 29.6\)。およそ \(30 \, \text{m/s}\) となります。

解答 \(30 \, \text{m/s}\)

 

落下距離の計算

思考の道筋とポイント
次に、\(2.0 \, \text{s}\) の間に落下した距離を求めます。この運動は速度が一定ではないため、等加速度直線運動の変位の公式を使います。

公式 \(y = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2\) は、この運動の落下距離を計算するためのものです。\(v_0 t\) の項は「もし重力がなく、初速度のまま等速で進んだ場合の距離」を、\(\frac{1}{2}gt^2\) の項は「重力によって加速されたことで、追加で落下した距離」を表しています。

この設問における重要なポイント

  • 落下距離の公式: 鉛直投げ下ろしの落下距離を求める公式は \(y = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2\) です。
  • 物理的意味の分解: 落下距離は「等速で進んだ分」と「加速で伸びた分」の合計であると理解すると、公式が覚えやすくなります。

具体的な解説と立式
鉛直下向きを正とします。

  • 初速度: \(v_0 = 10 \, \text{m/s}\)
  • 重力加速度: \(g = 9.8 \, \text{m/s}^2\)
  • 経過時間: \(t = 2.0 \, \text{s}\)

\(2.0 \, \text{s}\) 間の落下距離を \(y\) とすると、鉛直投げ下ろしの公式より、
$$
y = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2
$$

使用した物理公式

  • 鉛直投げ下ろしの落下距離の式: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}gt^2\)
計算過程

上記で立てた式に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
y &= (10 \, \text{m/s} \times 2.0 \, \text{s}) + \frac{1}{2} \times 9.8 \, \text{m/s}^2 \times (2.0 \, \text{s})^2 \\[2.0ex]
&= 20 + \frac{1}{2} \times 9.8 \times 4.0 \\[2.0ex]
&= 20 + 19.6 \\[2.0ex]
&= 39.6 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

有効数字を考えます。\(20\) の末位は整数第一位、\(19.6\) の末位は小数第一位です。和の計算なので、より粗い「整数第一位」に合わせるため、小数第一位を四捨五入します。
$$
y \approx 40 \, \text{m}
$$

この設問の平易な説明

物体が \(2.0\) 秒間でどれだけ落ちるかを考えましょう。まず、もし重力がなく、最初の速さ(秒速 \(10\) メートル)のままで進んだとしたら、落下距離は \(10 \times 2.0 = 20\) メートルです。しかし、実際には重力でどんどん加速しているので、これよりもっと長い距離を落ちます。この「重力によっておまけで落ちた距離」は、自由落下と同じ計算で \(\frac{1}{2} \times 9.8 \times 2.0^2 = 19.6\) メートルとなります。したがって、最終的な落下距離は、最初の \(20\) メートルとおまけの \(19.6\) メートルを足し合わせて、\(39.6\)。およそ \(40\) メートルとなります。

解答 \(40 \, \text{m}\)

 

別解: 等加速度直線運動の一般公式から解く方法

思考の道筋とポイント
「鉛直投げ下ろし」を特別な運動としてではなく、より一般的な「等加速度直線運動」の一種として捉えるアプローチです。これにより、覚える公式を基本形に絞り、様々な問題に同じ考え方で対応することができます。

この設問における重要なポイント

  • 統一的な視点: 自由落下も鉛直投げ下ろしも、等加速度直線運動という一つの枠組みで説明できます。
  • 基本公式への代入: \(v = v_0 + at\) と \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) という基本公式に、問題の条件(\(a=+g\))を当てはめます。

具体的な解説と立式
鉛直下向きを正(\(+\))と定めます。この運動は、初速度 \(v_0=10 \, \text{m/s}\)、加速度 \(a=+g\) の等加速度直線運動です。

  • 初速度: \(v_0 = +10 \, \text{m/s}\)
  • 加速度: \(a = +g = +9.8 \, \text{m/s}^2\)
  • 経過時間: \(t = 2.0 \, \text{s}\)

速度の計算:

\(2.0 \, \text{s}\) 後の速度 \(v\) は、公式 \(v = v_0 + at\) より、
$$
v = v_0 + gt
$$

落下距離の計算:

\(2.0 \, \text{s}\) 間の落下距離 \(y\) は、公式 \(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) より、
$$
y = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2
$$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
  • 等加速度直線運動の変位の式: \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
計算過程

計算はメインの解法と全く同じになります。

速度の計算:
$$
\begin{aligned}
v &= 10 + 9.8 \times 2.0 \\[2.0ex]
&= 29.6 \approx 30 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$

落下距離の計算:
$$
\begin{aligned}
y &= 10 \times 2.0 + \frac{1}{2} \times 9.8 \times (2.0)^2 \\[2.0ex]
&= 20 + 19.6 \\[2.0ex]
&= 39.6 \approx 40 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「鉛直投げ下ろし」という名前がついていますが、これも単なる「等加速度直線運動」です。なので、基本の公式に、初速度 \(v_0=10\)、加速度 \(a=9.8\) を入れるだけで、同じように答えを出すことができます。基本の公式さえしっかり理解していれば、どんな問題にも応用できるという良い例です。

解答 速さ \(30 \, \text{m/s}\), 落下距離 \(40 \, \text{m}\)

3 鉛直投げ上げ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「鉛直投げ上げ運動」です。物体を鉛直上向きに投げ上げた後、重力によって減速し、最高点に達するまでの時間と高さを計算します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 鉛直投げ上げの定義: 物体を鉛直上向きに初速度 \(v_0\) を与えて放す運動。
  2. 重力加速度: 運動中、物体には常に鉛直下向きに大きさ \(g\) の重力加速度が働いている。
  3. 最高点の物理的条件: 投げ上げられた物体が最も高い位置に達した瞬間、その速度は一瞬だけゼロになる (\(v=0\))。
  4. 等加速度直線運動として扱う: 鉛直投げ上げは、初速度 \(v_0\) とは逆向きの加速度 \(a=-g\) を持つ等加速度直線運動である。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 鉛直上向きを正の向きと定め、初速度 \(v_0\) と加速度 \(a\) を符号付きで表す。
  2. 最高点では速度が \(v=0\) になるという条件を、速度の公式 \(v = v_0 + at\) に代入して、最高点に達するまでの時間 \(t\) を求める。
  3. 求めた時間 \(t\) を、変位の公式 \(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) に代入して、最高点の高さ \(y\) を求める。

最高点に達する時間

思考の道筋とポイント
物体を真上に投げ上げると、地球の重力によって上向きの速度がだんだん失われていきます。そして、最も高い点(最高点)に達したとき、物体は一瞬だけ静止し、その後、下向きに落ち始めます。この「最高点では速度がゼロになる」という物理的な事実が、問題を解くための最大の鍵です。

この条件を、等加速度直線運動の速度の公式 \(v = v_0 + at\) に当てはめることで、最高点に達するまでの時間を計算できます。

この設問における重要なポイント

  • 座標軸の設定: 鉛直上向きを正(\(+\))の向きとします。これは投げ上げ運動を扱う際の標準的な設定です。
  • 加速度の符号: 重力は常に鉛直下向きに働くため、上向きを正とすると、重力加速度は負の値、すなわち \(a = -g = -9.8 \, \text{m/s}^2\) となります。
  • 最高点の条件: \(v=0\)。この条件を見抜けるかが重要です。

具体的な解説と立式
鉛直上向きを正の向きと定めます。

  • 初速度: \(v_0 = +9.8 \, \text{m/s}\)
  • 加速度: \(a = -g = -9.8 \, \text{m/s}^2\)
  • 最高点での速度: \(v = 0 \, \text{m/s}\)

最高点に達するまでの時間を \(t\) とすると、等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) より、
$$
0 = 9.8 + (-9.8) \times t
$$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度の式: \(v = v_0 + at\)
計算過程

上記で立てた方程式を、時間 \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
0 &= 9.8 – 9.8t \\[2.0ex]
9.8t &= 9.8 \\[2.0ex]
t &= \frac{9.8}{9.8} \\[2.0ex]
t &= 1.0 \, \text{s}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ボールを真上に投げ上げる状況を考えましょう。ボールは最初、上向きに秒速 \(9.8\) メートルの速さを持っています。一方、地球の重力は、このボールの速さを \(1\) 秒あたり \(9.8\) メートルずつ減らそうとします(ブレーキをかけます)。もともとの速さが \(9.8\) で、\(1\) 秒あたり \(9.8\) ずつ遅くなるのですから、ちょうど \(1.0\) 秒後に速さがゼロになって一瞬止まることがわかりますね。

解答 \(1.0 \, \text{s}\) 後

最高点の高さ

思考の道筋とポイント
次に、最高点の高さを求めます。これは、先ほど計算した「最高点に達するまでの時間(\(t=1.0 \, \text{s}\))」の間に、物体がどれだけの距離を上昇したか、ということです。

等加速度直線運動の変位の公式 \(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) に、初速度 \(v_0\)、加速度 \(a\)、そして時間 \(t\) の値を代入することで、高さを計算できます。

この設問における重要なポイント

  • 時間の値の利用: 前の設問で求めた時間 \(t=1.0 \, \text{s}\) を正確に用います。
  • 加速度の符号: ここでも加速度 \(a\) は負の値(\(-9.8 \, \text{m/s}^2\))であることに注意が必要です。

具体的な解説と立式
鉛直上向きを正とします。

  • 初速度: \(v_0 = +9.8 \, \text{m/s}\)
  • 加速度: \(a = -g = -9.8 \, \text{m/s}^2\)
  • 最高点までの時間: \(t = 1.0 \, \text{s}\)

最高点の高さを \(y\) とすると、等加速度直線運動の変位の公式より、
$$
y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2
$$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の変位の式: \(y = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
計算過程

上記で立てた式に、具体的な数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
y &= (9.8 \, \text{m/s} \times 1.0 \, \text{s}) + \frac{1}{2} \times (-9.8 \, \text{m/s}^2) \times (1.0 \, \text{s})^2 \\[2.0ex]
&= 9.8 + \frac{1}{2} \times (-9.8) \times 1.0 \\[2.0ex]
&= 9.8 – 4.9 \\[2.0ex]
&= 4.9 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

物体が \(1.0\) 秒間でどれだけ高く上がるかを計算します。もし重力がなければ、物体は初速度のまま \(9.8 \times 1.0 = 9.8\) メートル上昇するはずです。しかし、実際には重力がブレーキをかけるため、上昇する距離はそれより短くなります。この「ブレーキによって上がれなかった距離」の分を引く必要があります。計算すると、最終的に上昇する高さは \(4.9\) メートルとなります。

解答 \(4.9 \, \text{m}\)
別解: 時間 \(t\) を使わずに高さを求める方法

思考の道筋とポイント
最高点の高さを求める際に、時間 \(t\) の情報を使わない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を利用するアプローチです。この方法の利点は、もし時間を求める設問がなかった場合でも高さを直接計算できること、そして、万が一、時間の計算でミスをしていたとしても、その影響を受けずに高さを正しく求められることです。

この設問における重要なポイント

  • 公式の選択: 時間 \(t\) の情報が不要な公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ay\) を選択します。
  • 条件の適用: 初速度 \(v_0\)、加速度 \(a=-g\)、そして最高点での速度 \(v=0\) という3つの条件を直接代入します。

具体的な解説と立式
鉛直上向きを正とします。

  • 初速度: \(v_0 = +9.8 \, \text{m/s}\)
  • 加速度: \(a = -g = -9.8 \, \text{m/s}^2\)
  • 最高点での速度: \(v = 0 \, \text{m/s}\)

最高点の高さを \(y\) とすると、時間を含まない公式より、
$$
v^2 – v_0^2 = 2ay
$$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の公式: \(v^2 – v_0^2 = 2ay\)
計算過程

上記で立てた式に、具体的な数値を代入し、\(y\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
(0)^2 – (9.8)^2 &= 2 \times (-9.8) \times y \\[2.0ex]
– (9.8)^2 &= -2 \times 9.8 \times y
\end{aligned}
$$

両辺を \(-9.8\) で割ると、
$$
\begin{aligned}
9.8 &= 2y \\[2.0ex]
y &= \frac{9.8}{2} \\[2.0ex]
y &= 4.9 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

時間を計算しなくても、高さを一発で求めることができる便利な公式があります。この公式に「初めの速さ \(9.8\)」「終わりの速さ \(0\)(最高点なので)」「加速度 \(-9.8\)」という情報を入れるだけで、計算すると高さが \(4.9\) メートルであると直接わかります。検算にも使えるので、覚えておくと非常に役立ちます。

解答 最高点に達するのは \(1.0 \, \text{s}\) 後, 最高点の高さは \(4.9 \, \text{m}\)
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4 鉛直投げ上げ(最高点)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「鉛直投げ上げ運動における最高点の物理的状態の理解」です。計算ではなく、鉛直投げ上げ運動の本質的な概念、特に「速度がゼロになる瞬間」と「常に働き続ける加速度」の関係を正しく理解しているかを問う問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 最高点の定義: 上昇運動から下降運動へと切り替わる、速度が一時的にゼロになる瞬間。
  2. 重力加速度の普遍性: 物体が空中にある限り、運動のどの瞬間(上昇中、最高点、下降中)でも、常に鉛直下向きに一定の重力加速度が働いている。
  3. 速度と加速度の関係: 加速度は速度を「変化させる」原因である。速度がゼロであることと、加速度がゼロであることは全く別の概念である。
  4. ニュートンの運動方程式(\(F=ma\)): 物体に力(この場合は重力)が働いている限り、物体には加速度が生じている。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、最高点での「速度」について、運動の向きが反転する点であることから考察する。
  2. 次に、最高点での「加速度」について、その瞬間に物体に働いている力(重力)がどうなっているかを考える。

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