「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅳ 章 16】発展例題~発展問題425

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

発展例題

発展例題33 組みあわせレンズ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問の別解: ニュートンの公式を用いる解法
      • 模範解答がレンズの中心からの距離を用いる写像公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を使用しているのに対し、別解では焦点からの距離を用いるニュートンの公式 \(xx’ = f^2\) を利用して解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 計算の効率化: 分数の足し引きが必要な写像公式に比べ、ニュートンの公式は掛け算と割り算が主体となるため、計算が素早く行える場合があります。
    • 物理的直感の養成: 焦点位置を基準に物体の位置と像の位置関係を捉えることで、レンズの結像作用に対する理解が深まります。
  3. 結果への影響
    • どちらの公式を用いても、最終的に得られる像の位置や大きさは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「組み合わせレンズによる像の形成」です。2枚のレンズが並んでいる場合でも、光は順番にレンズを通過していくため、1枚ずつ順を追って考えるのが基本です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. レンズの公式(写像公式): 物体距離 \(a\)、像距離 \(b\)、焦点距離 \(f\) の間に成り立つ関係式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を正しく使えること。
  2. 組み合わせレンズの考え方: 「1枚目のレンズによってできる像を、2枚目のレンズにとっての物体(光源)とみなす」という手順を理解していること。
  3. 倍率の公式: 各レンズでの倍率 \(m = \left| \frac{b}{a} \right|\) を求め、それらの積が全体の倍率になることを理解していること。
  4. 実像と虚像の区別: \(b > 0\) ならばレンズの後方に実像ができ、\(b < 0\) ならばレンズの前方に虚像ができるという符号のルールを把握していること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、レンズAについてレンズの公式を立て、Aによってできる像の位置を求めます。
  2. 次に、その像の位置とレンズBの位置関係から、レンズBにとっての物体距離を求めます。
  3. レンズBについて再びレンズの公式を立て、最終的な像の位置を求めます。
  4. 最後に、各段階での倍率を掛け合わせて全体の倍率を求め、像の大きさを計算します。

像の位置と大きさ

思考の道筋とポイント
この問題は2段階のステップで解きます。
第1ステップでは、物体から出た光がレンズAを通過してどこに像を結ぶかを計算します。
第2ステップでは、その「Aによる像」を新たな光源(物体)とみなして、レンズBによって最終的にどこに像ができるかを計算します。
特に重要なのは、Aによる像からレンズBまでの距離を正確に読み取ることです。
この設問における重要なポイント

  • レンズAの前方にある物体距離 \(a_1 = 16\,\text{cm}\)。
  • レンズAの焦点距離 \(f_A = 12\,\text{cm}\)。
  • レンズAとBの間隔 \(d = 63\,\text{cm}\)。
  • レンズBの焦点距離 \(f_B = 10\,\text{cm}\)。
  • Aによる像が実像の場合、その位置からレンズBまでの距離が、Bにとっての物体距離 \(a_2\) となる。

具体的な解説と立式
ステップ1:レンズAによる結像
レンズAに関して、物体までの距離を \(a_1\)、像までの距離を \(b_1\)、焦点距離を \(f_A\) とします。
写像公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{16} + \frac{1}{b_1} &= \frac{1}{12} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

ステップ2:レンズBにとっての物体距離の設定
レンズAによって作られる像の位置 \(b_1\) が求まると、レンズBにとっての物体距離 \(a_2\) が決まります。レンズ間の距離は \(63\,\text{cm}\) なので、幾何学的な関係から以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
a_2 &= 63 – b_1 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

ステップ3:レンズBによる結像
レンズBに関して、物体(Aの像)までの距離を \(a_2\)、最終的な像までの距離を \(b_2\)、焦点距離を \(f_B\) とします。
写像公式より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{a_2} + \frac{1}{b_2} &= \frac{1}{10} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

ステップ4:倍率と像の大きさ
レンズAによる倍率を \(m_A\)、レンズBによる倍率を \(m_B\) とすると、それぞれの倍率は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
m_A &= \left| \frac{b_1}{a_1} \right| \\[2.0ex]
m_B &= \left| \frac{b_2}{a_2} \right|
\end{aligned}
$$
全体の倍率 \(m\) はこれらの積となります。
$$
\begin{aligned}
m &= m_A \times m_B
\end{aligned}
$$
求める像の大きさ \(H’\) は、元の物体の大きさ \(H = 2.0\,\text{cm}\) に倍率を掛けたものです。
$$
\begin{aligned}
H’ &= H \times m
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • レンズの公式(写像公式): \(\displaystyle \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率の公式: \(m = \displaystyle \left| \frac{b}{a} \right|\)
計算過程

まず、式①を用いて \(b_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{b_1} &= \frac{1}{12} – \frac{1}{16} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{48} – \frac{3}{48} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{48}
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
b_1 &= 48\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
\(b_1 > 0\) なので、レンズAの後方 \(48\,\text{cm}\) の位置に実像ができます。

次に、式②を用いて \(a_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
a_2 &= 63 – 48 \\[2.0ex]
&= 15\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
これは、レンズAによる実像が、レンズBの前方 \(15\,\text{cm}\) の位置にあることを意味します。これをレンズBにとっての物体とみなします。

続いて、式③に \(a_2 = 15\) を代入して \(b_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{15} + \frac{1}{b_2} &= \frac{1}{10} \\[2.0ex]
\frac{1}{b_2} &= \frac{1}{10} – \frac{1}{15} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{30} – \frac{2}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{30}
\end{aligned}
$$
したがって、
$$
\begin{aligned}
b_2 &= 30\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
\(b_2 > 0\) なので、レンズBの後方 \(30\,\text{cm}\) の位置に実像ができます。

最後に、倍率と像の大きさを計算します。
$$
\begin{aligned}
m &= \left| \frac{48}{16} \right| \times \left| \frac{30}{15} \right| \\[2.0ex]
&= 3.0 \times 2.0 \\[2.0ex]
&= 6.0\,\text{倍}
\end{aligned}
$$
像の大きさ \(H’\) は、
$$
\begin{aligned}
H’ &= 2.0 \times 6.0 \\[2.0ex]
&= 12\,\text{cm}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

2枚のレンズがあるときは、リレーのように考えます。
まず、1枚目のレンズAが光を集めて像を作ります。計算の結果、Aの後ろ \(48\,\text{cm}\) のところに像ができることがわかりました。
次に、2枚目のレンズBは、この「Aが作った像」を自分の目の前にある物体だと思って、さらに光を屈折させます。レンズAとBの間は \(63\,\text{cm}\) 離れているので、Aの後ろ \(48\,\text{cm}\) にある像は、Bから見ると \(63 – 48 = 15\,\text{cm}\) 前にあることになります。
この「\(15\,\text{cm}\) 前にある物体」に対してBがどこに像を作るかを計算すると、Bの後ろ \(30\,\text{cm}\) であることがわかります。
大きさについては、Aで3倍に拡大され、さらにBで2倍に拡大されるので、トータルで \(3 \times 2 = 6\) 倍になります。

結論と吟味

最終的な像の位置はレンズBの後方 \(30\,\text{cm}\)、大きさは \(12\,\text{cm}\) です。
\(b_2\) が正の値であることから、最終的にできる像は実像です。また、倍率が正の積(倒立 \(\times\) 倒立 = 正立)となるため、元の物体に対して正立の実像となります(※注:通常、実像は倒立ですが、2回倒立すると元に戻って正立になります)。

解答 像の位置: レンズBの後方 \(30\,\text{cm}\), 像の大きさ: \(12\,\text{cm}\)
別解: ニュートンの公式を用いる解法

思考の道筋とポイント
レンズの公式には、レンズの中心からの距離 \(a, b\) を使う写像公式のほかに、焦点からの距離 \(x, x’\) を使う「ニュートンの公式」があります。
$$
\begin{aligned}
xx’ &= f^2
\end{aligned}
$$
ここで、\(x\) は「物体側の焦点から物体までの距離」、\(x’\) は「像側の焦点から像までの距離」です。この公式を使うと、分数の計算を避けて素早く解ける場合があります。
この設問における重要なポイント

  • レンズAの前方焦点位置と後方焦点位置を確認する。
  • レンズBの前方焦点位置と後方焦点位置を確認する。
  • 距離 \(x, x’\) は焦点から外側に向かう方向を正とすることが多いですが、ここでは大きさ(絶対値)に着目して計算し、位置関係を図で判断します。

具体的な解説と立式
ステップ1:レンズAによる結像
レンズAの焦点距離は \(f_A = 12\,\text{cm}\) です。
物体はレンズAの前方 \(16\,\text{cm}\) にあります。レンズAの前方焦点はレンズ前方 \(12\,\text{cm}\) にあるので、物体は前方焦点からさらに \(x_1\) だけ前方にあります。
$$
\begin{aligned}
x_1 &= 16 – 12 \\[2.0ex]
&= 4\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
ニュートンの公式 \(x_1 x’_1 = f_A^2\) より、像側の焦点からの距離 \(x’_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
4 \times x’_1 &= 12^2 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

ステップ2:レンズBにとっての物体位置
求めた \(x’_1\) は、レンズAの後方焦点(レンズAから後ろへ \(12\,\text{cm}\))からの距離です。
したがって、レンズAの中心から像までの距離 \(b_1\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
b_1 &= 12 + x’_1
\end{aligned}
$$
次に、この像がレンズBの前方焦点(レンズBから前へ \(10\,\text{cm}\))からどれくらい離れているか(\(x_2\))を考えます。
レンズ間距離は \(63\,\text{cm}\) なので、レンズAの後方焦点とレンズBの前方焦点の間の距離 \(D\) は、
$$
\begin{aligned}
D &= 63 – (12 + 10) \\[2.0ex]
&= 41\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
Aによる像はAの後方焦点から \(x’_1\) の位置にあるので、Bの前方焦点までの距離 \(x_2\) は、
$$
\begin{aligned}
x_2 &= D – x’_1 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
(※Aの像がBの前方焦点より手前にあると仮定しています)

ステップ3:レンズBによる結像
ニュートンの公式 \(x_2 x’_2 = f_B^2\) より、Bの像側の焦点からの距離 \(x’_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x_2 \times x’_2 &= 10^2 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
最終的な像の位置(レンズBの中心からの距離)\(b_2\) は、
$$
\begin{aligned}
b_2 &= 10 + x’_2
\end{aligned}
$$

ステップ4:倍率
ニュートンの公式を用いた場合の倍率 \(m\) は \(m = \frac{f}{x} = \frac{x’}{f}\) で表されます。
$$
\begin{aligned}
m &= \frac{f_A}{x_1} \times \frac{f_B}{x_2}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ニュートンの公式: \(xx’ = f^2\)
  • 倍率の公式(ニュートン形式): \(m = \displaystyle \frac{f}{x} = \frac{x’}{f}\)
計算過程

まず、式④より \(x’_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
4 \times x’_1 &= 144 \\[2.0ex]
x’_1 &= 36\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
これは、レンズAの後方焦点から \(36\,\text{cm}\) 後ろに像ができることを意味します。
レンズAの中心からの距離は \(b_1 = 12 + 36 = 48\,\text{cm}\) となり、主たる解法と一致します。

次に、式⑤より \(x_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x_2 &= 41 – 36 \\[2.0ex]
&= 5\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
これは、Aによる像(Bにとっての物体)が、レンズBの前方焦点から \(5\,\text{cm}\) 手前(レンズから遠い側)にあることを意味します。
(確認: レンズBの前方焦点はBから \(10\,\text{cm}\) 前。そこから \(5\,\text{cm}\) 手前なので、Bからの距離は \(10 + 5 = 15\,\text{cm}\)。これも主たる解法と一致します。)

式⑥より \(x’_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
5 \times x’_2 &= 100 \\[2.0ex]
x’_2 &= 20\,\text{cm}
\end{aligned}
$$
これは、レンズBの後方焦点から \(20\,\text{cm}\) 後ろに像ができることを意味します。
レンズBの中心からの距離は、
$$
\begin{aligned}
b_2 &= 10 + 20 \\[2.0ex]
&= 30\,\text{cm}
\end{aligned}
$$

最後に倍率と大きさを求めます。
$$
\begin{aligned}
m &= \frac{12}{4} \times \frac{10}{5} \\[2.0ex]
&= 3.0 \times 2.0 \\[2.0ex]
&= 6.0\,\text{倍}
\end{aligned}
$$
像の大きさ \(H’\) は、
$$
\begin{aligned}
H’ &= 2.0 \times 6.0 \\[2.0ex]
&= 12\,\text{cm}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

レンズの「焦点」を基準にして距離を測る方法です。
レンズAの焦点距離は \(12\,\text{cm}\) ですが、物体はそこから \(4\,\text{cm}\) だけ外側にあります。すると、像は反対側の焦点から「\(12 \times 12 \div 4 = 36\,\text{cm}\)」の位置にできます。
次にレンズBです。レンズAで作られた像は、レンズBの手前の焦点(Bから \(10\,\text{cm}\))よりも \(5\,\text{cm}\) だけ外側にあります。すると、最終的な像はBの後ろの焦点から「\(10 \times 10 \div 5 = 20\,\text{cm}\)」の位置にできます。
焦点からの距離を使うと、分数の足し算をしなくて済むので、計算が少し楽になります。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果が得られました。
レンズBの中心からの距離は \(10\,\text{cm} (\text{焦点距離}) + 20\,\text{cm} = 30\,\text{cm}\) です。
ニュートンの公式は、焦点位置が明確で、物体が焦点の外側にある場合に特に威力を発揮します。

解答 像の位置: レンズBの後方 \(30\,\text{cm}\), 像の大きさ: \(12\,\text{cm}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 組み合わせレンズにおける「像の連鎖」の理解
    • 核心: 複数のレンズが並んでいる場合、「前のレンズによって作られた像が、次のレンズにとっての物体(光源)として振る舞う」という原理が全てです。光はレンズAを通過した後、あたかもその像の位置から光が出ている(あるいはそこへ向かっている)かのように進み、レンズBに入射します。
    • 理解のポイント:
      • 段階的な思考: 一気に答えを出そうとせず、レンズ1枚ごとの結像プロセスを独立した問題として解き、それをリレーのようにつなぐ思考力が問われます。
      • 座標のリセット: レンズAの計算が終わったら、一度座標系をリセットし、レンズBを中心に新たな物体距離 \(a_2\) と像距離 \(b_2\) を定義し直す柔軟性が必要です。
  • レンズの公式(写像公式)と符号規約の正確な運用
    • 核心: \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) という単純な式の中に、実像・虚像、凸レンズ・凹レンズの区別が符号(プラス・マイナス)として凝縮されています。
    • 理解のポイント:
      • 実像と虚像: \(b > 0\) ならばレンズの後方に光が集まる「実像」、\(b < 0\) ならばレンズの前方から光が出ているように見える「虚像」です。この符号の意味を幾何学的な光の経路と結びつけて理解していることが不可欠です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 顕微鏡や望遠鏡の原理: これらは組み合わせレンズの典型例です。対物レンズで実像を作り、その実像を接眼レンズ(虫眼鏡の役割)の焦点距離の内側に配置して、拡大された虚像を見る仕組みです。本問と同じく「像を物体とみなす」アプローチで解けます。
    • 凹レンズを含む組み合わせ: 凸レンズと凹レンズの組み合わせでも手順は同じです。凹レンズの場合、焦点距離 \(f\) を負の値(例: \(f = -10\))として公式に代入する点だけが異なります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 必ず光路図の概略を描く: 計算を始める前に、平行光線が焦点を通る様子や、レンズの中心を通る光線をフリーハンドで描き、像がどのあたり(レンズの間なのか、後ろなのか)にできそうか予測を立てます。
    2. レンズ間の距離 \(d\) に注目する: 1枚目の像がどこにできるか(\(b_1\))と、レンズ間距離 \(d\) の大小関係が重要です。
      • \(b_1 < d\) の場合: 1枚目の像(実像)は2枚目のレンズの手前にできます(本問のケース)。2枚目の物体距離は \(a_2 = d – b_1\) となります。
      • \(b_1 > d\) の場合: 1枚目の像が2枚目のレンズを飛び越えて後ろにできる場合(虚物体)もあります。この場合、\(a_2\) を負の値として扱うなど高度な処理が必要になりますが、まずは「位置関係を数直線上で整理する」ことが第一歩です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 2枚目の物体距離 \(a_2\) の計算ミス
    • 誤解: 何も考えずに「物体距離は常に正」と思い込み、位置関係を確認せずに計算してしまう。あるいは、\(a_2 = b_1 – d\) なのか \(d – b_1\) なのか混乱する。
    • 対策: 必ず図を描き、レンズA、レンズB、そして「Aの像」の位置を数直線上にプロットしましょう。「レンズBから見て、Aの像は前方(光が入ってくる側)何 \(\text{cm}\) にあるか?」を視覚的に確認すれば、\(a_2 = 63 – 48 = 15\) という式が自然に出てきます。
  • 倍率の計算に関する誤解
    • 誤解: 全体の倍率を、各レンズの倍率の「和」だと勘違いしてしまう(\(m = m_A + m_B\))。
    • 対策: 倍率は「掛け算」です。Aで3倍に拡大され、その拡大されたものをBがさらに2倍にするなら、全体では \(3 \times 2 = 6\) 倍になります。拡大コピーを2回繰り返す状況をイメージしましょう。
  • 逆数の取り忘れ
    • 誤解: \(\frac{1}{b} = \frac{1}{30}\) まで計算して、安心して答えを \(\frac{1}{30}\,\text{cm}\) と書いてしまうケアレスミス。
    • 対策: 求めるのは \(b\) です。計算の最後に必ず「逆数を取る」というステップがあることを意識し、単位(\(\text{cm}\))をつける前に数値の妥当性(\(0.03\,\text{cm}\) なのか \(30\,\text{cm}\) なのか)を直感的にチェックしましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • (1)での公式選択(写像公式 vs ニュートンの公式)
    • 選定理由: 模範解答では写像公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を採用しています。これは、レンズの中心を基準(原点)とする座標系が直感的で、レンズ間距離 \(d\) との足し引き(\(a_2 = d – b_1\))がしやすいからです。
    • 適用根拠: 物体や像の位置がレンズの中心から測った距離として与えられている場合、この公式が最もスタンダードで汎用性が高いです。
  • 別解でのアプローチ選択(ニュートンの公式)
    • 選定理由: 別解では \(xx’ = f^2\) を用いました。これは、焦点位置が明確で、物体が焦点の外側にある場合に計算が非常に速くなるからです。
    • 適用根拠: 分数の足し算・引き算(通分)が苦手な場合や、検算を行いたい場合に強力な武器になります。特に「倍率」を求める際、\(m = \frac{f}{x}\) と単純な割り算で求まるのが利点です。状況に応じて使い分けることで、計算ミスを減らせます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 分数計算を最後まで維持する
    • 途中で \(1/16 = 0.0625\) のように小数に直すと、計算が煩雑になり誤差やミスのもとになります。\(\frac{1}{b} = \frac{1}{12} – \frac{1}{16} = \frac{4}{48} – \frac{3}{48} = \frac{1}{48}\) のように、分数のまま通分して計算し、最後に逆数を取るのが鉄則です。
  • 符号の確認による自己検算
    • 計算結果の \(b\) が正なら実像、負なら虚像です。
    • 凸レンズの場合、「焦点より外側に物体があれば実像(\(b>0\))」「焦点より内側なら虚像(\(b<0\))」という定性的な性質と、計算結果の符号が一致しているか必ず確認しましょう。例えば、本問のレンズBでは物体距離 \(15\,\text{cm}\) が焦点距離 \(10\,\text{cm}\) より大きいので、必ず実像(\(b>0\))になるはずです。もし計算結果がマイナスになったら、どこかで間違えています。
  • 作図による大まかなチェック
    • 正確な定規がなくても、フリーハンドで光路図を描いてみましょう。「Aの像はAとBの間くらいにできそうだ」「Bの像はBの少し後ろにできそうだ」という直感と、計算結果(\(b_1=48\), \(b_2=30\))が大きく矛盾していないか確認することで、桁違いのミスを防げます。

発展例題34 ヤングの実験

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問の別解: 干渉条件式(光路差の一般式)を用いる解法
      • 模範解答が「中央明線=光路差が0となる点」という条件を直接的に立式して解いているのに対し、別解ではスクリーン上の任意の位置における光路差の関数を立て、一般的な干渉条件式 \(\Delta = m\lambda\) からアプローチします。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 応用力の向上: 中央明線(\(m=0\))だけでなく、1次、2次の明線がどのように移動するか、あるいは明線間隔が変化するかどうかといった、より広範な問いに対応できる力が身につきます。
    • 物理的構造の理解: 「幾何学的な距離の差」と「媒質による光路の伸び」がどのように組み合わさって全体の光路差を構成しているかを数式上で明確に捉えることができます。
  3. 結果への影響
    • どちらのアプローチを用いても、最終的に得られる中央明線のずれの量は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「薄膜が挿入されたヤングの実験」です。光の干渉において最も重要な概念の一つである「光路長(光学距離)」の理解を問う良問です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 光路長(光学距離): 屈折率 \(n\) の媒質中を距離 \(L\) だけ進むのにかかる時間は、真空中を距離 \(nL\) 進む時間と等しいという概念。光路長 \( = n \times (\text{幾何学的距離})\) で表されます。
  2. 光の干渉条件: 2つの光の光路差が波長の整数倍(\(m\lambda\))のとき強め合い(明線)、半整数倍(\((m+1/2)\lambda\))のとき弱め合う(暗線)こと。
  3. ヤングの実験の幾何学的近似: スリット間隔 \(d\) がスクリーンまでの距離 \(L\) に比べて十分に小さいとき、スクリーン中心から距離 \(x\) の点における2つのスリットからの距離の差は \(\frac{dx}{L}\) と近似できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、薄膜があることによって、スリットBを通る光の光路長がどれだけ変化するか(伸びるか)を計算します。
  2. 次に、中央明線ができる条件「2つの光の光路長が等しくなる(光路差が0になる)」を満たす位置を探します。
  3. 薄膜による光路長の「伸び」を打ち消すために、幾何学的な距離の差がどのように生じる必要があるかを考え、明線のずれる方向と大きさを求めます。

中央の明線のずれ

思考の道筋とポイント
中央明線とは、スリットAを出た光とスリットBを出た光が「同時に到着する点」、つまり「光路差が0になる点」のことです。
通常(何も置いていないとき)は、幾何学的に等距離にあるスクリーン中央Oがその点になります。
しかし、今回はスリットBの直後に屈折率 \(n > 1\) の薄膜があります。光は屈折率が大きい物質中では進む速さが遅くなるため、同じ距離を進むのにより多くの時間がかかります。これを「光路長が伸びる」と表現します。
B側の光路長が伸びてしまったので、バランスを取って光路差を0にするためには、幾何学的な距離を調整して「B側の距離を短く(A側の距離を長く)」してあげる必要があります。
したがって、明線はBに近い側(下側)にずれると予測できます。これを数式で定量的に求めます。
この設問における重要なポイント

  • 屈折率 \(n\) の媒質中での厚さ \(a\) の光路長は \(na\) である。
  • 薄膜があることによる光路長の増加分は \(na – a = (n-1)a\) である。
  • スクリーン上の位置 \(x’\) における幾何学的な経路差は \(\frac{dx’}{L}\) で表される。
  • 中央明線の条件は \((\text{Aからの光路長}) = (\text{Bからの光路長})\) である。

具体的な解説と立式
まず、中央明線ができる位置を \(O’\) とし、スクリーン中央 \(O\) から下向きに距離 \(x’\) だけずれた位置にあると仮定します。
この点 \(O’\) において、スリットAからの光とスリットBからの光の光路長が等しくなるという式(等光路長の原理)を立てます。

スリットAから \(O’\) までの光路長は、すべて空気中(屈折率1)を通るので、幾何学的な距離 \(AO’\) そのままです。
$$
\begin{aligned}
\text{Aの光路長} &= AO’
\end{aligned}
$$
スリットBから \(O’\) までの光路長は、厚さ \(a\) の薄膜部分と、それ以外の空気中の部分 \((BO’ – a)\) の和になります。薄膜部分の光路長は \(na\) となるので、
$$
\begin{aligned}
\text{Bの光路長} &= (BO’ – a) + na
\end{aligned}
$$
中央明線ではこれらが等しいので、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
AO’ &= (BO’ – a) + na \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
また、ヤングの実験における幾何学的な経路差の公式より、\(O\) から距離 \(x’\) 離れた点での経路差 \(AO’ – BO’\) は以下のように近似されます(\(O’\) が下側にあるため \(AO’ > BO’\))。
$$
\begin{aligned}
AO’ – BO’ &= \frac{dx’}{L} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 光路長: \(L_{\text{opt}} = nL\)
  • ヤングの実験の経路差: \(\Delta L = \displaystyle \frac{dx}{L}\)
計算過程

式①を変形して、幾何学的な距離の差 \(AO’ – BO’\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
AO’ &= BO’ – a + na \\[2.0ex]
AO’ – BO’ &= na – a \\[2.0ex]
AO’ – BO’ &= (n-1)a
\end{aligned}
$$
この式の左辺に、式②の幾何学的近似を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{dx’}{L} &= (n-1)a
\end{aligned}
$$
この方程式を \(x’\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
dx’ &= L(n-1)a \\[2.0ex]
x’ &= \frac{(n-1)aL}{d}
\end{aligned}
$$
ここで、\(n > 1\) より \(n-1 > 0\)、また \(a, L, d\) はすべて正の値なので、\(x’ > 0\) となります。
最初に \(x’\) を「下向きのずれ」と仮定して計算し、結果が正の値となったため、仮定通り下側にずれることがわかります。

この設問の平易な説明

スリットBの前にガラスのような薄い膜を置くと、そこを通る光はスピードダウンしてしまいます。つまり、Bを通る光はAを通る光に比べて「遅刻」してしまうのです。
中央の明るい線(明線)は、Aからの光とBからの光が「よーいドン」でスタートして、同時にゴールできる場所です。
Bが遅刻する分、Bにとって有利な場所、つまりBに近い場所(ゴールまでの距離が短い場所)でないと、同時には着けません。
だから、中央の明線はBに近い方、つまり「下側」にずれることになります。
計算では、「Bが遅刻した時間(距離換算)」と「場所をずらしてBの距離を短くした分」がちょうど釣り合う場所を探しています。

結論と吟味

中央の明線は、下側に \(\frac{(n-1)aL}{d}\) だけずれます。
結果の式を見ると、膜が厚いほど(\(a\) が大きいほど)、あるいは屈折率が大きいほど(\(n\) が大きいほど)、ずれ \(x’\) は大きくなります。これは、遅れが大きくなるほど、よりBに近い位置で補正しなければならないという直感と一致します。

解答 下側に \(\displaystyle \frac{(n-1)aL}{d}\)
別解: 干渉条件式(光路差の一般式)を用いる解法

思考の道筋とポイント
模範解答では「中央明線」に限定して等式を立てましたが、ここではスクリーン上の任意の位置 \(x\) における「光路差」の式を作り、一般的な干渉条件 \(\Delta = m\lambda\) に当てはめる方法をとります。
この方法なら、中央明線(\(m=0\))だけでなく、隣の明線(\(m=1\))がどこにできるかも同じ式から求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • スクリーン中央 \(O\) を原点とし、下向きを正とする座標 \(x\) を設定する。
  • 位置 \(x\) における全光路差 \(\Delta\) を、「幾何学的な差」と「薄膜による差」の組み合わせで表現する。
  • 中央明線は、干渉の次数 \(m=0\) に対応する。

具体的な解説と立式
スクリーン上の位置 \(x\)(下向き正)における、スリットAからの光路長を \(l_A\)、スリットBからの光路長を \(l_B\) とします。
全光路差 \(\Delta\) を \(l_A – l_B\) と定義します。

まず、薄膜がない状態での幾何学的な距離の差は、\(x\) が小さいとき以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
(\text{幾何学的距離A}) – (\text{幾何学的距離B}) &= \frac{dx}{L}
\end{aligned}
$$
(※ \(x > 0\) の下側ではAの方が遠いので、この値は正になります)

次に、薄膜による光路長の変化を考えます。スリットBを通る光だけが、薄膜によって余分に \((n-1)a\) だけ光路長が長くなります。
したがって、全光路差 \(\Delta\) は次のように表せます。
$$
\begin{aligned}
\Delta &= l_A – l_B \\[2.0ex]
&= (\text{幾何学的距離A}) – \{ (\text{幾何学的距離B}) + (n-1)a \} \\[2.0ex]
&= \{ (\text{幾何学的距離A}) – (\text{幾何学的距離B}) \} – (n-1)a \\[2.0ex]
&= \frac{dx}{L} – (n-1)a
\end{aligned}
$$
明線ができる条件は、この光路差が波長の整数倍になることです(\(m = 0, \pm 1, \pm 2, \dots\))。
$$
\begin{aligned}
\frac{dx}{L} – (n-1)a &= m\lambda \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
中央明線は、光路差が0、つまり \(m=0\) のときに生じます。
$$
\begin{aligned}
\frac{dx}{L} – (n-1)a &= 0 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 干渉条件(明線): \(\Delta = m\lambda\)
  • 全光路差の合成: \(\Delta = \Delta_{\text{幾何}} + \Delta_{\text{媒質}}\)
計算過程

式④を \(x\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{dx}{L} &= (n-1)a \\[2.0ex]
dx &= L(n-1)a \\[2.0ex]
x &= \frac{(n-1)aL}{d}
\end{aligned}
$$
\(x\) は下向きを正として設定したので、正の値が得られたことは下側へのずれを意味します。

この設問の平易な説明

「光の道のりの差(光路差)」を関数として作ってしまう方法です。
「場所 \(x\) による距離の差」から「薄膜による距離のハンデ」を引き算したものが、トータルの光路差になります。
このトータルの差がゼロになる場所(\(m=0\))が中央の明線です。
この式を作っておけば、例えば「\(m=1\) とすれば1つ隣の明線の場所」もすぐに計算できるので、より応用が利く考え方です。

結論と吟味

模範解答と全く同じ結果が得られました。
この解法から、明線の間隔 \(\Delta x\) も確認できます。式③において \(m\) が1増えたときの \(x\) の変化量を考えると、
$$
\begin{aligned}
\frac{d(x_{m+1} – x_m)}{L} &= \lambda \quad \rightarrow \quad \Delta x = \frac{L\lambda}{d}
\end{aligned}
$$
となり、薄膜があっても明線の間隔自体は変わらず、縞模様全体が平行移動しただけであることがわかります。

解答 下側に \(\displaystyle \frac{(n-1)aL}{d}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 光路長(光学距離)の概念と計算
    • 核心: 光の干渉を考える際、単純な「幾何学的な距離(定規で測った長さ)」ではなく、「光路長(屈折率 \(n \times\) 距離)」を用いなければならないという点です。これは、媒質中では光の速さが \(1/n\) になり、同じ距離を進むのにより多くの時間がかかる(位相が遅れる)ことを距離に換算して表現するためです。
    • 理解のポイント:
      • 真空換算: 光路長とは「その媒質中を進む時間と同じ時間で、真空中ならどれだけ進めるか」という換算距離です。
      • 差分計算: 屈折率 \(n\) の物質を厚さ \(a\) だけ通ると、空気中(\(n=1\))を通る場合に比べて、光路長は \(na – 1 \times a = (n-1)a\) だけ「伸びる」という計算が瞬時にできることが重要です。
  • 干渉条件の一般化(光路差の合成)
    • 核心: 干渉現象の本質は「2つの波の位相差(光路差)」です。この光路差は、「幾何学的な経路差(\(\frac{dx}{L}\))」と「媒質による光路差(\((n-1)a\))」の和(または差)で構成されることを理解し、それらを統合して条件式を立てる能力が問われます。
    • 理解のポイント:
      • 独立性: 幾何学的な要因と媒質の要因は独立しており、それぞれ計算して足し合わせることができます。
      • 符号の管理: どちらの経路が長くなるのか(遅れるのか)を常に意識し、引き算の順序を間違えないようにすることが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • くさび形空気層(薄膜)の干渉: ガラス板の間に薄いフィルムを挟む問題などでも、「厚さ \(d\) の部分を往復するときの光路差 \(2nd\)」や「反射による位相のずれ」を考慮する点で、光路長の考え方は共通しています。
    • マイケルソン干渉計: 片方の光路にガラス板を挿入して干渉縞の移動を観察する実験は、本問と全く同じ原理(光路長の増加による位相差の変化)に基づいています。
    • 容器内の気体の屈折率測定: スリットの片側に気体を入れた容器を置き、気圧を変えて干渉縞の移動数を数える問題も、本問の \(n\) が変化するバージョンと言えます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「何が」光路差を生んでいるか特定する: 経路の長さが違うのか、途中に何か物質があるのか、あるいは反射による位相の反転があるのか。要因をリストアップします。
    2. 基準点(光路差0の点)の移動方向を予測する: 「障害物(屈折率の高いもの)がある側は遅れる」→「遅れを取り戻すために距離を短くする必要がある」→「障害物がある側に縞がずれる」というロジックで、計算前に答えの当たりをつけます。
    3. 近似式の適用可否を確認する: \(d \ll L\) や \(x \ll L\) といった条件がある場合、\(\sqrt{L^2+x^2} – L \approx \frac{x^2}{2L}\) や \(\frac{dx}{L}\) といった近似式が使える準備をしておきます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 光路長の「伸び」の計算ミス
    • 誤解: 薄膜部分の光路長 \(na\) だけを足してしまい、元々あった空気の分 \(a\) を引き忘れる(光路差を \(na\) としてしまう)。
    • 対策: 「変化分」に着目しましょう。薄膜を置くことで「空気 \(a\) がガラス \(na\) に置き換わった」と考えれば、変化量は \(na – a = (n-1)a\) であることが明確になります。
  • 符号(ずれる方向)の混乱
    • 誤解: 式変形の途中でプラスマイナスが分からなくなり、結局どちらにずれるのか逆にしてしまう。
    • 対策: 数式だけに頼らず、必ず定性的な予測(「遅れる側にずれる」)とセットで考えましょう。また、座標軸(上向き正か下向き正か)を最初に明確に定義し、図に矢印で書き込むことでミスを防げます。
  • 屈折率 \(n\) の大小関係の無視
    • 誤解: \(n < 1\) の場合(例えば真空中の実験で一部に気体がある場合など)でも、機械的に同じ方向にずれると思い込む。
    • 対策: \(n-1\) の符号が重要です。もし \(n < 1\) ならば光路長は「縮む」ので、逆に遠ざかる方向にずれます。常に \((n-1)\) の正負を確認する癖をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • (1)での公式選択(光路長の定義式)
    • 選定理由: 問題文に「屈折率 \(n\)」「厚さ \(a\)」というキーワードがあり、これらが光の進み方に与える影響を定量化する必要があります。これを扱うツールは「光路長 \(L_{\text{opt}} = nL\)」しかありません。
    • 適用根拠: 幾何学的な距離だけでは、媒質による光速の違いを反映できないため、すべての距離を「真空中の距離」に換算して統一的に扱うためにこの公式を選択します。
  • 別解でのアプローチ選択(干渉条件の一般式)
    • 選定理由: 「中央の明線」という特定の点だけでなく、干渉縞全体の様子(明線間隔など)を理解したい場合や、\(m\) 次の明線の位置を問われる可能性がある場合に有効です。
    • 適用根拠: 干渉現象はすべて \(\Delta = m\lambda\)(または \((m+1/2)\lambda\))という一つの式に帰着します。個別の状況(薄膜挿入)をこの一般式の中に「項」として組み込むことで、物理現象を統一的な視点で捉えることができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の次元確認(単位チェック)
    • 答えとして出た \(\frac{(n-1)aL}{d}\) の次元を確認しましょう。
    • \(n-1\) は無次元、\(a\) は長さ \([L]\)、\(L\) は長さ \([L]\)、\(d\) は長さ \([L]\) です。
    • 全体では \(\frac{[L] \times [L]}{[L]} = [L]\) となり、長さの次元を持っています。もし \(L\) が分母に来ていたりすると次元がおかしくなるので、ミスに気づけます。
  • 極端な場合の想定
    • \(n=1\) (薄膜がない、ただの空気)としてみましょう。答えは \(0\) になり、ずれないという当たり前の結果と一致します。
    • \(a=0\) (薄膜がない)としても、答えは \(0\) になります。
    • このような簡単なチェックで、式の形が正しいかどうかの確信度を上げることができます。
  • 近似式の導出練習
    • \(\frac{dx}{L}\) という近似式は暗記するだけでなく、三平方の定理とマクローリン展開(\((1+x)^\alpha \approx 1+\alpha x\))を使って自力で導出できるようにしておきましょう。これにより、近似が使える条件(\(x \ll L\))を深く理解でき、適用ミスを防げます。
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発展問題

417 光ファイバーの原理

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(4)の別解: 「最も全反射しにくいケース」に着目する物理的考察
      • 模範解答が数式上の不等式条件(\(\sin\theta\) の最大値と比較)として処理しているのに対し、別解では「入射角 \(\theta\) が最大のときに、境界面への入射角が最小となり、最も全反射しにくくなる」という物理的な極限状況に着目して解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的直感の養成: 数式を機械的に解くだけでなく、光の経路がどのように変化するかをイメージし、どの状況が「限界(クリティカル)」なのかを見抜く力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • どちらのアプローチを用いても、最終的な結論は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「光ファイバーの原理(全反射)」です。屈折率の異なる媒質を組み合わせることで、光を内部に閉じ込めて遠くまで伝送する仕組みを数式で解析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) の関係式を、境界面ごとに正しく立てられること。
  2. 全反射の条件: 光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むとき、入射角がある角度(臨界角)を超えると、光がすべて反射される現象。条件式は \(\sin(\text{入射角}) > \frac{n_{\text{小}}}{n_{\text{大}}}\) です。
  3. 幾何学的関係の把握: 入射面での屈折角と、全反射面での入射角が、直角三角形の関係(足して \(90^\circ\))になっていることを見抜くこと。
  4. 三角関数の相互関係: \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\) を用いて、不要な変数を消去する計算力。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、端面A(真空→ガラス)での屈折の法則を立てます。
  2. (2)では、ガラス内部の幾何学的関係から、上下の境界面への入射角を求め、全反射の条件式を立式します。
  3. (3)では、(1)と(2)の式から中間変数である \(\theta’\) を消去し、\(\theta\) と \(n\) の関係式を導きます。
  4. (4)では、あらゆる入射角 \(\theta\) で全反射するための条件を、不等式の性質を用いて求めます。

問(1)

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