無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「水中の泡の体積変化」【高校物理対応】

問題の確認

thermodynamicsall#11

各設問の思考プロセス

この問題は、前半が「静水圧」、後半が「ボイル・シャルルの法則」という2つのテーマからなる複合問題です。それぞれの物理法則を正しく適用することが求められます。

前半(圧力増加 \(\Delta p\))の思考プロセス

  1. 「水中の圧力は1m深くなるごとに…」という問いから、これは静水圧に関する問題であると判断します。
  2. 静水圧の公式 \(\Delta p = \rho g h\) を思い出します。
  3. この公式に、\(h=1\)m を代入すればよいと分かります。
  4. ただし、公式の各物理量の単位を国際単位系(SI単位:kg, m, s)に揃える必要があることに注意します。特に、与えられた水の密度 \(\rho = 1.0 \, \text{g/cm}^3\) を \(\text{kg/m}^3\) に変換する計算が必須となります。

後半(泡の体積 \(V\))の思考プロセス

  1. 「泡が水面に達したときの体積」を問われており、泡の中の気体の「圧力」「体積」「温度」がすべて変化する状況であることから、ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle \frac{P_1 V_1}{T_1} = \frac{P_2 V_2}{T_2}\) を使うと判断します。
  2. 法則を適用するために、初期状態(水深20m)と最終状態(水面)のP, V, Tをそれぞれ整理します。
  3. 初期圧力 \(P_1\) の特定: これが最大のポイントです。水深20mでの圧力は、水面にかかる大気圧に、水深20m分の静水圧を加えた「絶対圧力」であると考えます。(\(P_1 = P_{\text{atm}} + \rho g h\))
  4. 温度の変換: 気体の法則で使う温度は、必ず絶対温度(K)であるため、与えられたセルシウス温度(℃)を \(T[\text{K}] = t[\text{℃}] + 273\) の式で変換します。
  5. すべての物理量を式に代入し、求めたい最終体積 \(V_2\) について解きます。

各設問の具体的な解説と解答

前半:水中の圧力増加 \(\Delta p\)

問われている内容の明確化
水中で1m深くなるごとに、圧力 (\(\text{N/m}^2\)) がどれだけ増加するかを求めます。

具体的な解説と立式
深さ \(h\) の液体による圧力(静水圧) \(\Delta p\) は、液体の密度 \(\rho\)、重力加速度の大きさ \(g\) を用いて、
$$\Delta p = \rho g h \quad \cdots ①$$
と表されます。この問題では \(h=1\)m のときの \(\Delta p\) を求めます。
計算にはSI単位(kg, m, s)を用いる必要があるため、まず水の密度を \(\text{g/cm}^3\) から \(\text{kg/m}^3\) に変換します。

  • \(1 \, \text{g} = 10^{-3} \, \text{kg}\)
  • \(1 \, \text{cm} = 10^{-2} \, \text{m}\) なので、\(1 \, \text{cm}^3 = (10^{-2} \, \text{m})^3 = 10^{-6} \, \text{m}^3\)

したがって、
$$\rho = 1.0 \, \frac{\text{g}}{\text{cm}^3} = 1.0 \times \frac{10^{-3} \, \text{kg}}{10^{-6} \, \text{m}^3} = 1.0 \times 10^3 \, \text{kg/m}^3$$
この値を式①に代入して計算します。

使用した物理公式: 静水圧
$$\Delta p = \rho g h$$

計算過程
式①に、変換した密度と与えられた値を代入します。

  • \(\rho = 1.0 \times 10^3 \, \text{kg/m}^3\)
  • \(g = 10 \, \text{m/s}^2\)
  • \(h = 1 \, \text{m}\)

$$
\begin{aligned}
\Delta p &= \rho g h \\[2.0ex]&= (1.0 \times 10^3 \, \text{kg/m}^3) \times (10 \, \text{m/s}^2) \times (1 \, \text{m}) \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^4 \, \text{N/m}^2
\end{aligned}
$$

この設問における重要なポイント

  • 静水圧の公式 \(\Delta p = \rho g h\) を知っていること。
  • 計算の前に、すべての単位をSI単位系(m, kg, s)に揃えること。特に密度の単位変換が重要。
解答 (\(\Delta p\)):
\(1.0 \times 10^4\)

後半:水面の泡の体積 \(V\)

問われている内容の明確化
水深20mで体積 \(1 \, \text{cm}^3\) だった泡が、水面に達したときの体積 \(V\) を求めます。

具体的な解説と立式
気泡の中の気体の物質量(モル数)は一定なので、ボイル・シャルルの法則が成り立ちます。
$$\frac{P_1 V_1}{T_1} = \frac{P_2 V_2}{T_2}$$
ここで添え字1は初期状態(水深20m)、2は最終状態(水面)を示します。
それぞれの物理量を整理します。

  • 初期状態(水深20m):
    • 圧力 \(P_1\): 大気圧 \(P_2\) と水深 \(h_1=20\)m の静水圧の和です。
      $$P_1 = P_2 + \rho g h_1$$
    • 体積 \(V_1 = 1.0 \, \text{cm}^3\)
    • 絶対温度 \(T_1\): \(15^\circ\text{C}\) なので、\(T_1 = 15 + 273 = 288 \, \text{K}\)
  • 最終状態(水面):
    • 圧力 \(P_2 = 1.0 \times 10^5 \, \text{N/m}^2\)
    • 体積 \(V_2 = V\) (これが求めるもの)
    • 絶対温度 \(T_2\): \(27^\circ\text{C}\) なので、\(T_2 = 27 + 273 = 300 \, \text{K}\)

ボイル・シャルルの法則を、求めたい \(V_2\) について解くと、
$$V_2 = V_1 \times \frac{P_1}{P_2} \times \frac{T_2}{T_1} \quad \cdots ②$$
となります。この式に各値を代入して計算します。

使用した物理公式: ボイル・シャルルの法則
$$\frac{P_1 V_1}{T_1} = \frac{P_2 V_2}{T_2}$$

計算過程
ステップ1: 初期圧力 \(P_1\) の計算
まず、水深20mでの静水圧 \(\rho g h_1\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\rho g h_1 &= (1.0 \times 10^3 \, \text{kg/m}^3) \times (10 \, \text{m/s}^2) \times (20 \, \text{m}) \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^5 \, \text{N/m}^2
\end{aligned}
$$
したがって、初期圧力 \(P_1\) は、
$$
\begin{aligned}
P_1 &= P_2 + \rho g h_1 \\[2.0ex]&= (1.0 \times 10^5 \, \text{N/m}^2) + (2.0 \times 10^5 \, \text{N/m}^2) \\[2.0ex]&= 3.0 \times 10^5 \, \text{N/m}^2
\end{aligned}
$$

ステップ2: 最終体積 \(V_2\) の計算
式②に、整理したすべての値を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= V_1 \times \frac{P_1}{P_2} \times \frac{T_2}{T_1} \\[2.0ex]&= (1.0 \, \text{cm}^3) \times \frac{3.0 \times 10^5 \, \text{N/m}^2}{1.0 \times 10^5 \, \text{N/m}^2} \times \frac{300 \, \text{K}}{288 \, \text{K}} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 3.0 \times \frac{300}{288} \\[2.0ex]&= 3.0 \times \frac{25}{24} \\[2.0ex]&= \frac{25}{8} \\[2.0ex]&= 3.125 \, \text{cm}^3
\end{aligned}
$$
問題文の有効数字は2桁なので、解答もおよそ \(3.1 \, \text{cm}^3\) となります。

この設問における重要なポイント

  • 気体の法則では、必ず絶対温度(K)を使うこと。セルシウス温度(℃)のまま計算しない。
  • 水中の圧力は、大気圧に静水圧を加えた「絶対圧力」で計算すること。
解答 ( V ):
3.1

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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 静水圧: \(p = \rho g h\)。流体の圧力は深さに比例して増加するという、流体力学の基本です。
  • 絶対圧力: ある点での真の圧力。水中の場合、水面にかかる大気圧に、その深さの静水圧を加えることで求まります。
  • ボイル・シャルルの法則: \(\displaystyle\frac{PV}{T} = \text{一定}\)。密閉された気体の状態変化を記述する非常に強力な法則です。圧力、体積、温度の関係性をまとめて扱えます。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 単位変換の徹底: 物理計算で最もミスが多いのが単位です。特にこの問題のように、密度が \(\text{g/cm}^3\)、温度が \(\text{℃}\) で与えられている場合は、計算前にSI単位系の基本単位(kg, m, K)に変換する癖をつけましょう。
  • 状態の整理: 気体の状態が変化する問題では、変化の「前」と「後」について、P, V, T の値を整理する表を作ると、何を計算すべきか、どの公式を使えばよいかが明確になります。
  • 絶対温度への変換: 温度が関わる気体の法則(シャルルの法則、ボイル・シャルルの法則、状態方程式)では、必ずセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に変換します(\(T[\text{K}] = t[\text{℃}] + 273\))。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • 絶対圧力の計算忘れ: 水深 \(h\) での圧力を、静水圧 \(\rho g h\) だけで計算してしまうミス。水面には大気圧がかかっているので、これを足し忘れないように注意が必要です。
  • 温度の単位ミス: セルシウス温度のままボイル・シャルルの法則の計算をしてしまうと、全く違う答えになります。
  • 密度の単位変換ミス: \(\text{g/cm}^3\) から \(\text{kg/m}^3\) への変換は \(10^3\) 倍になります。この変換を間違えたり、忘れたりするケースが多いです。

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