今回の問題
wave#18【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「波の干渉(クインケ管)」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の干渉条件: 2つの波が重なり合うとき、経路差によって強め合ったり弱め合ったりします。音が最も小さくなるのは、2つの波が逆位相で重なり、弱め合うときです。
- 波の基本公式: 音の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間には、\(v = f\lambda\)という関係が成り立ちます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- クインケ管のD部分を引き出すことによって、2つの経路の経路差がどれだけ変化するかを考えます。
- 「音が最も小さくなった」状態から「ふたたび音が最も小さくなった」という条件が、経路差の変化量と波長\(\lambda\)の間にどのような関係をもたらすかを導き出します。
- 導いた関係式から音の波長\(\lambda\)を計算します。
- 波の基本公式 \(v = f\lambda\) を用いて、音の振動数\(f\)を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
Aから出た音は、固定された経路Cと、長さを変えられる経路Dの2つに分かれて進み、Bで再び合流して干渉します。音が最も小さくなるのは、2つの経路から来た波が互いに打ち消し合う「弱め合い」の干渉を起こすときです。
この問題の鍵は、「音が最小の状態」からD管を8.5 cm引き出すと「再び最小になった」という点です。これは、D管を引き出したことで経路差が変化し、干渉の条件が隣の弱め合いの条件に移ったことを意味します。この経路差の変化量がちょうど1波長\(\lambda\)に相当することを利用して、波長を求め、最終的に振動数を計算します。
この設問における重要なポイント
- 音が最も小さくなるのは、弱め合いの干渉条件が満たされるとき。弱め合いの条件は、経路差が波長の半整数倍、つまり \((m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) (\(m\)は0以上の整数)となることです。
- クインケ管のD部分を距離\(l\)だけ引き出すと、Dを通る音の経路長は往復分である\(2l\)だけ長くなります。これが経路差の変化量となります。
- 隣り合う弱め合いの条件の間では、経路差がちょうど1波長\(\lambda\)だけ異なっています。
具体的な解説と立式
AからCを通ってBに至る経路の長さを\(L_C\)、AからDを通ってBに至る経路の長さを\(L_D\)とします。
音が最も小さくなるとき、弱め合いの干渉条件が成り立ちます。
最初の音が最も小さい状態での経路差を\(\Delta L_1 = |L_D – L_C|\)とすると、ある整数\(m\)を用いて、
$$ \Delta L_1 = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad \cdots ① $$
と表せます。ここで\(\lambda\)は音の波長です。
次に、D管を距離\(l\)だけ引き出します。すると、D側の経路長は往復で\(2l\)だけ長くなるので、新しい経路差\(\Delta L_2\)は、
$$ \Delta L_2 = \Delta L_1 + 2l $$
となります。
このとき「ふたたび音が最も小さくなった」ので、\(\Delta L_2\)も弱め合いの条件を満たします。これは、整数\(m\)が1だけ大きい、隣の弱め合いの条件に対応します。
$$ \Delta L_2 = \left((m+1) + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad \cdots ② $$
式①と②から、経路差の変化量\(2l\)と波長\(\lambda\)の関係を導きます。
使用した物理公式
- 波の干渉条件(弱め合い): 経路差 \(= \left(m + \displaystyle\frac{1}{2}\right)\lambda\)
- 波の基本公式: \(v = f\lambda\)
式②から式①を引くと、
$$ \Delta L_2 – \Delta L_1 = \left((m+1) + \frac{1}{2}\right)\lambda – \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda $$
左辺は\(2l\)なので、
$$ 2l = \lambda $$
という関係が導かれます。
問題文より、引き出した距離は \(l = 8.5\) cm、音の速さは \(v = 340\) m/s です。計算には単位をmに統一する必要があるため、\(l = 0.085\) m とします。
まず、波長\(\lambda\)を計算します。
$$ \lambda = 2l = 2 \times 0.085 = 0.17 \text{ [m]} $$
次に、波の基本公式 \(v = f\lambda\) を用いて、振動数\(f\)を求めます。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{v}{\lambda} \\[2.0ex]
&= \frac{340}{0.17} \\[2.0ex]
&= \frac{34000}{17} \\[2.0ex]
&= 2000 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
問題で与えられた数値 8.5 cm は有効数字2桁なので、答えも有効数字2桁で表します。
$$ f = 2.0 \times 10^3 \text{ [Hz]} $$
音が弱め合って聞こえなくなるのは、2つの経路から来た波がちょうど山と谷で出会い、打ち消し合うときです。Dの管を動かすと、片方の波が旅する距離が変わります。音が最小の状態から、管を動かして再び最小になるのは、経路の長さの差がちょうど「波1個分(1波長)」だけ変化したときです。Dを 8.5 cm 引き出すと、音はU字管を行って帰ってくるので、合計で \(2 \times 8.5 = 17\) cm 余分に走ります。この 17 cm が、波1個の長さ(波長\(\lambda\))に相当します。波長が 0.17 m とわかったので、あとは「速さ ÷ 波長」で振動数を計算すると、\(340 \div 0.17 = 2000\) Hz となります。有効数字を考えて、\(2.0 \times 10^3\) Hz が答えです。
送り込んだ音の振動数は \(2.0 \times 10^3\) Hz です。問題で与えられた数値の有効数字が2桁であるため、計算結果を有効数字2桁で表しました。計算過程で単位の換算(cmからmへ)を正しく行い、物理法則を適用して得られた妥当な値です。
思考の道筋とポイント
D管を連続的に引き出していくと、Bで聞こえる音は「最小→最大→最小→最大…」と周期的に変化します。この現象を直感的に捉え、「隣り合う最小点の間隔」が何に対応するかを考えることで、よりシンプルに解を導きます。このアプローチは、干渉条件の整数\(m\)を陽に扱わずに済みます。
この設問における重要なポイント
- 隣り合う弱め合いの点(音が最小になる点)の間では、経路差がちょうど1波長\(\lambda\)だけ変化している。
- D管を\(l\)引き出すと、経路差は\(2l\)変化する。この2つの事実を結びつける。
具体的な解説と立式
Bで聞こえる音が最小の状態から、D管を距離\(l\)だけ引き出して、ふたたび音が最小になった、という状況を考えます。
音が最小になる状態から、次に音が最小になる状態へ変化するということは、2つの経路を通る音波の経路差が、ちょうど1波長\(\lambda\)だけ変化したことを意味します。
一方、D管を\(l\)だけ引き出すと、D側の経路は往復するため、経路長は\(2l\)だけ長くなります。これがそのまま経路差の変化量となります。
したがって、経路差の変化量と波長の関係から、以下の式が直接成り立ちます。
$$ 2l = \lambda \quad \cdots ① $$
この式と、波の基本公式 \(v = f\lambda\) を使って、振動数\(f\)を求めます。
使用した物理公式
- 波の基本公式: \(v = f\lambda\)
問題で与えられた値を代入します。単位をmに変換することを忘れないようにします。
\(l = 8.5 \text{ cm} = 0.085 \text{ m}\)
\(v = 340 \text{ m/s}\)
まず、式①を用いて波長\(\lambda\)を求めます。
$$ \lambda = 2 \times 0.085 = 0.17 \text{ [m]} $$
次に、波の基本公式 \(v = f\lambda\) を\(f\)について解き、値を代入します。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{v}{\lambda} \\[2.0ex]
&= \frac{340}{0.17} \\[2.0ex]
&= 2000 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
有効数字を2桁にすると、\(f = 2.0 \times 10^3\) Hz となります。
Dの管をスライドさせると、音が大きくなったり小さくなったりを繰り返します。音が「最小」の状態から、次に「最小」になるまでの変化は、波1個分のズレが経路の差に生まれたことを意味します。Dを 8.5 cm 動かすと、音は行きと帰りでその2倍、つまり 17 cm ズレます。この 17 cm が波1個の長さ(波長)です。あとは、音の速さ(340 m/s)をこの波長(0.17 m)で割れば、1秒間に何個の波が来るか(振動数)がわかります。計算すると2000 Hzとなり、有効数字を考慮して \(2.0 \times 10^3\) Hz が答えです。
メインの解法と同じく、振動数は \(2.0 \times 10^3\) Hz という結果が得られました。このアプローチは、干渉条件の整数\(m\)を考えずに済むため、現象を直観的に理解している場合には、より迅速に解答にたどり着くことができます。
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