無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「複雑な回路の合成抵抗」【高校物理対応】

今回の問題

electromagnetic#30

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「直列・並列が組み合わさった回路の合成抵抗」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 直列接続の合成抵抗: 抵抗を直列に接続した場合、全体の抵抗は各抵抗の和になります。 \(R = R_1 + R_2 + \dots\)
  • 並列接続の合成抵抗: 抵抗を並列に接続した場合、全体の抵抗の逆数は、各抵抗の逆数の和になります。 \(\displaystyle\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2} + \dots\)
  • 回路の単純化: 複雑な回路も、部分的に見れば単純な直列接続や並列接続の組み合わせです。計算しやすいブロックに分けて考え、段階的に単純化していくことが重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 与えられた複雑な回路を、単純な「直列ブロック」と「並列ブロック」に分解します。
  2. まず、各ブロック内部の合成抵抗を計算します。
  3. 計算したブロックをそれぞれ一つの抵抗と見なして、最後に回路全体の合成抵抗を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
この回路は、2つの枝が並列に接続された形をしています。

  • 上の枝:\(20 \, \Omega\) の抵抗と \(30 \, \Omega\) の抵抗が直列に接続されています。
  • 下の枝:\(20 \, \Omega\) の抵抗と \(30 \, \Omega\) の抵抗が直列に接続されています。

まず、それぞれの枝の合成抵抗を計算し、その後、2つの枝が並列に接続されていると考えて全体の合成抵抗を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 回路を「上下の枝の並列接続」と見抜くこと。
  • 各枝の内部が「直列接続」であることを見抜くこと。

具体的な解説と立式
まず、上の枝の合成抵抗を \(R_{\text{上}}\) とします。これは \(20 \, \Omega\) と \(30 \, \Omega\) の直列接続なので、
$$ R_{\text{上}} = 20 + 30 \quad \cdots ① $$
同様に、下の枝の合成抵抗を \(R_{\text{下}}\) とします。これも \(20 \, \Omega\) と \(30 \, \Omega\) の直列接続なので、
$$ R_{\text{下}} = 20 + 30 \quad \cdots ② $$
回路全体は、抵抗 \(R_{\text{上}}\) と \(R_{\text{下}}\) の並列接続と見なせます。全体の合成抵抗を \(R_1\) とすると、
$$ \frac{1}{R_1} = \frac{1}{R_{\text{上}}} + \frac{1}{R_{\text{下}}} \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • 直列接続の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2\)
  • 並列接続の合成抵抗: \(\displaystyle\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
計算過程

式①、②より、各枝の抵抗を計算します。
$$ R_{\text{上}} = 50 \, [\Omega] $$
$$ R_{\text{下}} = 50 \, [\Omega] $$
次に、式③を用いて全体の合成抵抗 \(R_1\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{R_1} &= \frac{1}{50} + \frac{1}{50} \\[2.0ex]&= \frac{2}{50} \\[2.0ex]&= \frac{1}{25}
\end{aligned}
$$
したがって、\(R_1\) はこの逆数をとって、
$$ R_1 = 25 \, [\Omega] $$

計算方法の平易な説明

まず、上の道の抵抗を計算します。直列なので足し算して \(20+30=50 \, \Omega\) です。下の道も同じく \(50 \, \Omega\) です。すると、この回路は「\(50 \, \Omega\) の抵抗が2本並列につながっている」のと同じことになります。同じ抵抗を2本並列にすると抵抗は半分になるので、\(50 \div 2 = 25 \, \Omega\) が答えです。

結論と吟味

回路(1)の全体の抵抗は \(25 \, \Omega\) です。各部分の計算も正しく、妥当な値です。

解答 (1) \(25 \, \Omega\)

問(2)

思考の道筋とポイント
この回路は、2つのブロックが直列に接続された形をしています。

  • 左のブロック:\(20 \, \Omega\) の抵抗と \(30 \, \Omega\) の抵抗が並列に接続されています。
  • 右のブロック:\(20 \, \Omega\) の抵抗と \(30 \, \Omega\) の抵抗が並列に接続されています。

まず、それぞれのブロックの合成抵抗を計算し、その後、2つのブロックが直列に接続されていると考えて全体の合成抵抗を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 回路を「左右のブロックの直列接続」と見抜くこと。
  • 各ブロックの内部が「並列接続」であることを見抜くこと。

具体的な解説と立式
まず、左のブロックの合成抵抗を \(R_{\text{左}}\) とします。これは \(20 \, \Omega\) と \(30 \, \Omega\) の並列接続なので、
$$ \frac{1}{R_{\text{左}}} = \frac{1}{20} + \frac{1}{30} \quad \cdots ④ $$
右のブロックの合成抵抗 \(R_{\text{右}}\) も、同様に \(20 \, \Omega\) と \(30 \, \Omega\) の並列接続なので、
$$ \frac{1}{R_{\text{右}}} = \frac{1}{20} + \frac{1}{30} \quad \cdots ⑤ $$
回路全体は、抵抗 \(R_{\text{左}}\) と \(R_{\text{右}}\) の直列接続と見なせます。全体の合成抵抗を \(R_2\) とすると、
$$ R_2 = R_{\text{左}} + R_{\text{右}} \quad \cdots ⑥ $$

使用した物理公式

  • 並列接続の合成抵抗: \(\displaystyle\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
  • 直列接続の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2\)
計算過程

式④より、左のブロックの抵抗 \(R_{\text{左}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{R_{\text{左}}} &= \frac{3 + 2}{60} \\[2.0ex]&= \frac{5}{60} \\[2.0ex]&= \frac{1}{12}
\end{aligned}
$$
したがって、\(R_{\text{左}}\) はこの逆数をとって、
$$ R_{\text{左}} = 12 \, [\Omega] $$
右のブロックも同じ構成なので、\(R_{\text{右}} = 12 \, [\Omega]\) です。
最後に、式⑥を用いて全体の合成抵抗 \(R_2\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
R_2 &= 12 + 12 \\[2.0ex]&= 24 \, [\Omega]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、左側のかたまりの抵抗を計算します。並列なので、\(\frac{1}{20} + \frac{1}{30} = \frac{1}{12}\) となり、ひっくり返して \(12 \, \Omega\) です。右側のかたまりも同じ計算で \(12 \, \Omega\) です。この \(12 \, \Omega\) のかたまりが2つ直列につながっているので、最後に足し算して \(12 + 12 = 24 \, \Omega\) が答えです。

結論と吟味

回路(2)の全体の抵抗は \(24 \, \Omega\) です。回路の構造を正しく分解し、計算できています。

解答 (2) \(24 \, \Omega\)

問(3)

思考の道筋とポイント
この回路は、2つの異なるブロックが直列に接続された形をしています。

  • 左のブロック:\(20 \, \Omega\) の抵抗と \(30 \, \Omega\) の抵抗が並列に接続されています。
  • 右のブロック:\(20 \, \Omega\) の抵抗と \(30 \, \Omega\) の抵抗が直列に接続されています。

それぞれのブロックの合成抵抗を別々に計算し、最後にそれらを足し合わせることで全体の合成抵抗を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 並列部分と直列部分が混在した回路を正しくブロック分けすること。

具体的な解説と立式
まず、左のブロックの合成抵抗を \(R_{\text{左}}\) とします。これは \(20 \, \Omega\) と \(30 \, \Omega\) の並列接続なので、
$$ \frac{1}{R_{\text{左}}} = \frac{1}{20} + \frac{1}{30} \quad \cdots ⑦ $$
次に、右のブロックの合成抵抗を \(R_{\text{右}}\) とします。これは \(20 \, \Omega\) と \(30 \, \Omega\) の直列接続なので、
$$ R_{\text{右}} = 20 + 30 \quad \cdots ⑧ $$
回路全体は、抵抗 \(R_{\text{左}}\) と \(R_{\text{右}}\) の直列接続と見なせます。全体の合成抵抗を \(R_3\) とすると、
$$ R_3 = R_{\text{左}} + R_{\text{右}} \quad \cdots ⑨ $$

使用した物理公式

  • 並列接続の合成抵抗: \(\displaystyle\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
  • 直列接続の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2\)
計算過程

式⑦より、左のブロックの抵抗 \(R_{\text{左}}\) を計算します。これは問(2)と同じ計算です。
$$ R_{\text{左}} = 12 \, [\Omega] $$
式⑧より、右のブロックの抵抗 \(R_{\text{右}}\) を計算します。
$$ R_{\text{右}} = 50 \, [\Omega] $$
最後に、式⑨を用いて全体の合成抵抗 \(R_3\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
R_3 &= 12 + 50 \\[2.0ex]&= 62 \, [\Omega]\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

この回路を、左の「並列部分」と右の「直列部分」の2つのかたまりに分けます。左の並列部分は、問(2)と同じ計算で \(12 \, \Omega\) です。右の直列部分は、単純な足し算で \(20 + 30 = 50 \, \Omega\) です。この2つのかたまりが直列につながっているので、最後に足し算して \(12 + 50 = 62 \, \Omega\) が答えです。

結論と吟味

回路(3)の全体の抵抗は \(62 \, \Omega\) です。段階的な計算が正しく行われています。

解答 (3) \(62 \, \Omega\)

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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 回路の構造を見抜く力と段階的な単純化:
    • 核心: この問題の核心は、一見複雑に見える回路を、単純な「直列接続」と「並列接続」のブロックに分解し、計算しやすい部分から段階的に単純化していく能力にあります。どの抵抗とどの抵抗が直列または並列の関係にあるのかを正確に見抜くことが、すべての出発点となります。
    • 理解のポイント: どんなに複雑な回路でも、その基本要素は直列と並列の2種類だけです。「まずどこから計算できるか?」という視点で回路を眺め、小さなブロックの合成抵抗を求めて一つの抵抗に置き換えていくことで、最終的に回路全体を一本の抵抗にすることができます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 対称性のある回路: (1)や(2)のように、回路が左右対称や上下対称な構造を持つ場合、計算が簡略化できることがあります。例えば(1)では、上下の枝の抵抗が同じになるため、並列計算が楽になります。
    • ブリッジ回路: 抵抗がひし形に配置されたホイートストンブリッジ回路は頻出です。特に、ブリッジが平衡している(中央の抵抗に電流が流れない)条件を見抜くと、計算が劇的に簡単になります。
    • 無限ラダー回路: 同じ回路パターンが無限に続くような問題もあります。これは、全体の合成抵抗をRと置くと、一部分を切り取っても残りの部分の合成抵抗が同じRになる、という性質を利用して方程式を立てて解きます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路の分岐点と合流点を探す: 電流が分かれる点と再び合流する点を見つけることで、どこからどこまでが並列部分なのかを特定できます。
    2. 一本道の部分を探す: 電流が分岐せずに流れる部分は直列接続です。
    3. 回路図を自分で書き直す: 与えられた回路図が見にくい場合、接続関係を保ったまま、自分にとって分かりやすい形(例えば、直列部分は直線的に、並列部分は分岐が明確になるように)に書き直すことは非常に有効なテクニックです。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 並列抵抗の計算で逆数を忘れる:
    • 誤解: \(\displaystyle\frac{1}{R} = \frac{1}{12}\) と計算した後、答えを \(\displaystyle\frac{1}{12} \, \Omega\) としてしまう。
    • 対策: 並列抵抗の計算では、求めているのは \(R\) であって \(\frac{1}{R}\) ではない、と常に意識しましょう。計算の最後に「逆数を取る!」と指差し確認するくらいの慎重さが必要です。
  • 直列と並列の見間違い:
    • 誤解: 回路図の見た目の配置に惑わされて、電気的な接続関係を誤解する。例えば、隣り合っていても分岐点があれば並列、離れていても一本道で繋がっていれば直列です。
    • 対策: 電流の気持ちになって、回路をたどってみましょう。「道が分かれたら並列」「一本道なら直列」と、電流の流れをシミュレーションすることで、接続関係を正確に把握できます。
  • 計算の順序を間違える:
    • 誤解: (3)の回路で、まず左端の20Ωと右端の30Ωを計算しようとするなど、接続関係を無視して計算してしまう。
    • 対策: 必ず隣り合う抵抗同士の関係(直列か並列か)から処理を始め、計算できるブロックから手をつけるという原則を守りましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 直列接続 \(R = R_1 + R_2\)**:
    • 選定理由: 電流が同じ一本の道を通過する部分の合成抵抗を求めるため。
    • 適用根拠: 抵抗体をまっすぐ長く繋ぐイメージです。電子が通過しなければならない障害物が増えるため、全体の通りにくさ(抵抗)は単純な足し算で増加します。
  • 並列接続 \(\displaystyle\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)**:
    • 選定理由: 電流が複数の道に分かれて進む部分の合成抵抗を求めるため。
    • 適用根拠: 電流の通り道の断面積を広げるイメージです。電流は流れやすい方に多く流れるため、全体の通りやすさ(コンダクタンス \(G=1/R\))は各々の通りやすさの和で表されます。そのため、抵抗の逆数であるコンダクタンスで足し算が行われます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • ブロックごとに計算結果をメモ: 回路図の各ブロックの横に、計算した合成抵抗の値を書き込んでいきましょう。例えば(2)では、左の並列ブロックの横に「\(12 \, \Omega\)」、右の並列ブロックの横に「\(12 \, \Omega\)」と書くことで、最後の直列計算(\(12+12\))が明確になり、ミスを防げます。
  • 分数の計算を丁寧に: 並列抵抗の計算は分数の通分が基本です。最小公倍数を素早く見つけ、計算ミスをしないように注意しましょう。例えば \(\frac{1}{20} + \frac{1}{30}\) では、分母を60に揃えるのが最も効率的です。
  • 和分の積の公式(2つの抵抗の並列): 2つの抵抗 \(R_1, R_2\) の並列接続の場合、合成抵抗は \(R = \displaystyle\frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2}\) (和分の積)と計算できます。これを覚えておくと、計算が速くなります。例えば(2)のブロックは \(\frac{20 \times 30}{20 + 30} = \frac{600}{50} = 12 \, \Omega\) と暗算レベルで計算できます。

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