「物理のエッセンス(力学・波動)」徹底解説(波動6〜10問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

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波動範囲 06~10

6 波の反射

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「自由端反射における反射波と合成波の作図」です。壁で反射した波がどのように振る舞うか、特に入射波と反射波が重なり合ってできる合成波を、時間の経過とともに正しく作図できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 自由端反射の法則: 自由端で波が反射するとき、反射波は入射波の上下を反転させずに、そのまま折り返した形になります。これは、壁の向こう側から同じ形の波(同位相の波)がやってくるのと等価です。作図上は、入射波を壁Rで線対称に折り返したものが反射波の「もと」になります。
  2. 波の伝播: 入射波は\(+x\)方向に、反射波は\(-x\)方向に、それぞれ一定の速さで進みます。ある時刻の波形を描くには、\(t=0\)の波形を(距離)\( = \)(速さ)\( \times \)(時間) (\(x=vt\)) だけ平行移動させます。
  3. 波の重ね合わせの原理: 複数の波が同じ場所に来たとき、その点の変位は、各波の変位を単純に足し合わせたものになります。合成波は、入射波と反射波の\(y\)座標を各点で足し合わせることで作図できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

設問ごとに、以下の3ステップを順に実行します。

  1. 入射波の作図: \(t=0\)の入射波を、\(x=vt\)だけ\(+x\)方向に平行移動させ、指定された時刻の入射波を描きます。
  2. 反射波の作図: 1.で描いた入射波を、壁Rを基準に線対称に折り返して「仮想的な波源」の波形を作ります。これが指定された時刻の反射波の形になります。
  3. 合成波の作図: 1.の入射波と2.の反射波の\(y\)座標を、各\(x\)点で足し合わせ、合成波を描きます。特に、変位が0の点や、山・谷が重なる点に注目すると効率的に作図できます。

問(1) \(t=0 \, \text{s}\)

思考の道筋とポイント
\(t=0\)の瞬間における反射波と合成波を描きます。まず、自由端反射の法則に従って、\(t=0\)の入射波から\(t=0\)の反射波を作図します。次に、波の重ね合わせの原理に従い、この2つの波を合成して合成波を描きます。
この設問における重要なポイント

  • 自由端反射では、入射波を壁Rでそのまま線対称に折り返したものが反射波となる。
  • 合成波は、入射波と反射波の各点の\(y\)座標の和。

具体的な解説と立式
1. 反射波の作図 (\(t=0\))
自由端反射における反射波は、壁Rの向こう側から、入射波と線対称な波が進んでくると考えることができます。作図の手順は以下の通りです。

  1. まず、\(t=0\)の入射波(問題の図の実線)が、もし壁Rがなければそのまま右側に進んでいくと仮定し、その波形を壁の右側に延長して描きます(模範解答の1つ目の図の点線部分)。これを「仮想的な波」と呼びます。\(t=0\)の入射波は波長が\(8 \, \text{cm}\)(8目盛り)なので、壁Rから2目盛り左に山、2目盛り右に谷、6目盛り右に山…と続く波形になります。
  2. 次に、この「仮想的な波」を含めた入射波全体を、壁Rを対称軸として線対称に折り返します(左右反転させます)。
  3. この折り返された波形が、壁の左側で観測される反射波となります。

\(t=0\)の入射波を延長した「仮想的な波」は、壁Rから2目盛り右に、6目盛り右にを持ちます。
これを壁Rで折り返すと、反射波は壁Rから2目盛り、6目盛りを持つ波形となります。

2. 合成波の作図 (\(t=0\))
\(t=0\)の入射波と、上で描いた反射波を重ね合わせます。

  • 壁Rの位置では、入射波の変位と反射波の変位は常に等しくなります。この瞬間、入射波の変位は正の値なので、合成波の変位はその2倍の高さになります。自由端は定常波の「腹」になります。
  • 壁から2目盛り左の位置では、入射波の山と反射波の谷が重なるため、合成波の変位は0になります。
  • 壁から6目盛り左の位置では、入射波の谷と反射波の山が重なり、合成波の変位は0になります。これらの点は定常波の「節」となります。

これらの点を滑らかに結ぶことで、合成波が描けます。

使用した物理公式

  • 自由端反射の法則
  • 波の重ね合わせの原理
計算過程

作図が主であるため、計算は不要です。

この設問の平易な説明

\(t=0\)の瞬間の反射波と合成波を描きます。
反射波: 自由端反射は、鏡に映すような反射です。まず、壁の向こう側に入射波の続き(点線部分)があると想像します。次に、壁を鏡として、この波全体をパタンと折り返したものが反射波になります。
合成波: 入射波と反射波の「足し算」をします。グラフの各縦線で、入射波の高さと反射波の高さを足し合わせます。例えば、山と山が重なれば2倍の高さの山に、山と谷が重なれば高さが打ち消し合います。この足し算をすべての点で行い、つなぎ合わせると合成波が完成します。

結論と吟味

自由端反射の正しい作図法と重ね合わせの原理を用いて、\(t=0\)における反射波と合成波の形を正しく作図するプロセスを確認しました。

解答 (1) (模範解答の図を参照)

問(2) \(t=1 \, \text{s}\)

思考の道筋とポイント
\(t=1\)秒後の入射波、反射波、合成波を描きます。\(t=0\)の状態から、入射波と反射波がそれぞれどれだけ進むかを計算し、移動後の波形を描いてから重ね合わせます。
この設問における重要なポイント

  • 波の移動距離は \(x = vt\) で計算する。
  • 入射波は\(+x\)方向、反射波は\(-x\)方向に進む。
  • 移動後の入射波と反射波を重ね合わせて合成波を作る。

具体的な解説と立式
1. 入射波と反射波の移動距離の計算
問題文より、波の速さは \(v=2 \, \text{cm/s}\) です。\(t=1\)秒後までに波が進む距離\(x\)は、
$$ x = vt = 2 \, \text{[cm/s]} \times 1 \, \text{[s]} = 2 \, \text{cm} $$
問題の図の1目盛は\(1 \, \text{cm}\)なので、これは2目盛り分に相当します。

2. 入射波の作図 (\(t=1\))
\(t=0\)の入射波(問題の図の実線)を、\(+x\)方向(右向き)に\(2 \, \text{cm}\)(2目盛り)だけ平行移動させます。これが\(t=1\)秒後の入射波です。このとき、\(t=0\)で壁から2目盛り左にあった山は、壁Rの位置に到達します。

3. 反射波の作図 (\(t=1\))
\(t=0\)の反射波((1)で作図したもの)を、\(-x\)方向(左向き)に\(2 \, \text{cm}\)(2目盛り)だけ平行移動させます。これが\(t=1\)秒後の反射波です。
(別法:2.で描いた\(t=1\)の入射波を、(1)と同様の手順で壁Rに関して折り返しても、同じ反射波が描けます。)

4. 合成波の作図 (\(t=1\))
2.で描いた入射波と3.で描いた反射波を、(1)と同様に重ね合わせの原理に従って足し合わせ、合成波を描きます。この時刻では、壁Rの位置で入射波の山と反射波の山が重なるため、合成波の変位は振幅の2倍の高さになります。また、壁から2目盛り左の位置では、入射波と反射波が常に変位0となり、合成波も変位0の「節」となります。

使用した物理公式

  • 等速直線運動: \(x = vt\)
  • 自由端反射の法則
  • 波の重ね合わせの原理
計算過程

移動距離の計算: \(x = 2 \times 1 = 2 \, \text{cm}\)。

この設問の平易な説明

1秒後の世界を描きます。
波は秒速\(2 \, \text{cm}\)で進むので、1秒間で\(2 \, \text{cm}\)(2目盛り)進みます。
入射波: \(t=0\)の入射波を、そのまま右に2目盛りずらします。
反射波: \(t=0\)の反射波((1)で描いたもの)を、左に2目盛りずらします。
合成波: このずらした後の入射波と反射波を足し算して、合成波を描きます。

結論と吟味

波の伝播の計算と作図、重ね合わせの原理を正しく適用することで、\(t=1\)秒後の波形を描くことができます。

解答 (2) (模範解答の図を参照)

問(3) \(t=2.5 \, \text{s}\)

思考の道筋とポイント
\(t=2.5\)秒後の入射波、反射波、合成波を描きます。(2)と同様に、\(t=0\)の状態から波がどれだけ進むかを計算し、移動後の波形を描いて重ね合わせます。
この設問における重要なポイント

  • 波の移動距離は \(x = vt\) で計算する。
  • \(2.5\)目盛りという半端な移動量を正確に作図する。

具体的な解説と立式
1. 入射波と反射波の移動距離の計算
\(t=2.5\)秒後までに波が進む距離\(x\)は、
$$ x = vt = 2 \, \text{[cm/s]} \times 2.5 \, \text{[s]} = 5 \, \text{cm} $$
これは5目盛り分に相当します。

2. 入射波の作図 (\(t=2.5\))
\(t=0\)の入射波(問題の図の実線)を、\(+x\)方向(右向き)に\(5 \, \text{cm}\)(5目盛り)だけ平行移動させます。

3. 反射波の作図 (\(t=2.5\))
\(t=0\)の反射波((1)で作図したもの)を、\(-x\)方向(左向き)に\(5 \, \text{cm}\)(5目盛り)だけ平行移動させます。
(別法:2.で描いた\(t=2.5\)の入射波を、壁Rで線対称に折り返しても同じ反射波が描けます。)

4. 合成波の作図 (\(t=2.5\))
2.で描いた入射波と3.で描いた反射波を重ね合わせ、合成波を描きます。

使用した物理公式

  • 等速直線運動: \(x = vt\)
  • 自由端反射の法則
  • 波の重ね合わせの原理
計算過程

移動距離の計算: \(x = 2 \times 2.5 = 5 \, \text{cm}\)。

この設問の平易な説明

2.5秒後の世界を描きます。
波は秒速\(2 \, \text{cm}\)で進むので、2.5秒間で \(2 \times 2.5 = 5 \, \text{cm}\)(5目盛り)進みます。
入射波: \(t=0\)の入射波を、右に5目盛りずらします。
反射波: \(t=0\)の反射波を、左に5目盛りずらします。
合成波: この2つの波を足し算して、合成波を描きます。

結論と吟味

(2)と同様の手順で、\(t=2.5\)秒後の波形を描くことができます。移動距離が整数でなくても、手順は全く同じです。

解答 (3) (模範解答の図を参照)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 反射の作図法(仮想波源の利用):
    • 核心: この問題の根幹は、反射波を「壁の向こう側にある仮想的な波源からやってくる波」として捉え、作図するテクニックをマスターすることにあります。
    • 理解のポイント:
      • ステップ1(透過): まず、壁が存在しないかのように、入射波をそのまま壁の向こう側へ延長して描きます。これが仮想的な波の「種」になります。
      • ステップ2(変換): 次に、反射の種類に応じて、この仮想的な波を変換します。
        • 自由端反射: 仮想的な波を、壁を対称軸として線対称に折り返し(左右反転)ます。
        • 固定端反射: 仮想的な波を、壁を対称軸として線対称に折り返し、さらに上下反転させます。(点対称移動と同じ)
      • ステップ3(完成): 変換後の波のうち、壁のこちら側(媒質が存在する領域)に描かれている部分が、観測される「反射波」となります。
  • 波の独立性と重ね合わせの原理:
    • 核心: 入射波と反射波は、互いに干渉することなく、それぞれの速さと向きで独立して進み続けると考えることができます。そして、ある点での実際の媒質の変位は、その点に同時に存在する入射波と反射波の変位を単純に足し合わせたものになります。
    • 理解のポイント:
      • 独立性: 合成波の形が複雑に見えても、その中を入射波と反射波がすり抜けて進んでいるイメージを持つことが重要です。
      • 重ね合わせ: 作図の際は、各\(x\)座標で「入射波の\(y\)座標+反射波の\(y\)座標」を機械的に計算します。特に、山と山、谷と谷、山と谷、変位0の点など、計算しやすい点からプロットしていくのがコツです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 固定端反射の問題: 反射の法則が変わるだけで、作図のプロセスは全く同じです。仮想波を「線対称+上下反転」させる操作に注意すれば解くことができます。固定端では、常に変位が0の「節」ができます。
    • 定常波(定在波)の問題: 本問のように、同じ振幅・波長の波が逆向きに進むと定常波ができます。「腹」(大きく振動する点)と「節」(全く振動しない点)の位置を特定する問題に応用できます。自由端は腹、固定端は節になるという性質は重要です。
    • パルス波の反射: 正弦波だけでなく、三角形や四角形のパルス波の反射問題も考え方は同じです。パルス波の「角」の部分の動きを時間追跡することで、より作図のプロセスが明確に理解できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 反射端の種類を確認: まず問題文で「自由端」か「固定端」かを真っ先に確認します。これにより、仮想波の変換ルールが決まります。
    2. 時刻を確認し、移動距離を計算: \(t=0\)以外の時刻が問われている場合、必ず \(x=vt\) を計算し、波を何目盛り移動させる必要があるのかを把握します。
    3. 作図は3段階で: どんな問題でも「①入射波を描く」→「②反射波を描く」→「③合成波を描く」という3ステップを順番に、丁寧に行います。焦っていきなり合成波を描こうとすると、ほぼ間違いなく失敗します。
    4. 特徴的な点に注目: 合成波を描く際は、節(変位が常に0になる点)や腹(振幅が最大になる点)に注目すると、全体の形を捉えやすくなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 反射波の作図ミス:
    • 誤解: 入射波そのものを、壁を軸にして折り返してしまう。あるいは、自由端と固定端のルールを混同する。
    • 対策: 必ず「①壁の向こうに延長して描く → ②ルールに従って変換(折り返し等)する」という2ステップを厳守します。「自由=そのまま折り返し」「固定=上下反転して折り返し」と、ルールを明確に記憶します。
  • 波の移動方向の間違い:
    • 誤解: 反射波も入射波と同じ方向に進むと考えてしまう。
    • 対策: 「入射波は壁に向かって進み、反射波は壁から遠ざかる」という物理現象をイメージします。\(+x\)方向に入射したら、反射波は必ず\(-x\)方向に進みます。
  • 合成波の足し算ミス:
    • 誤解: 山と谷が重なったときに、どちらか一方の波形をそのまま描いてしまう。あるいは、足し算の符号(プラスとマイナス)を間違える。
    • 対策: \(x\)軸上のいくつかの代表点(最低でも4〜5点)を選び、それぞれの点で「入射波の\(y\)座標」と「反射波の\(y\)座標」を具体的に読み取り、その和をプロットします。面倒でも、この地道な作業が最も確実です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 仮想波源法による作図:
    • 選定理由: 反射という物理現象は、数学的には「境界条件」の問題として扱われます。自由端では「壁での変位の傾きが常に0」、固定端では「壁での変位が常に0」という条件を満たすように、反射波が生成されます。この境界条件を満たす解を簡単に見つけるための、極めて優れた幾何学的な方法が「仮想波源法」です。
    • 適用根拠: 壁の向こう側に適切な仮想波源を置くことで、入射波と仮想波源からの波の重ね合わせが、壁の位置で上記の境界条件を自動的に満たすことが数学的に示されています。したがって、この作図法は単なるテクニックではなく、波動方程式の解の性質に深く根差した、物理的にも数学的にも正しい方法です。
  • 重ね合わせの原理:
    • 選定理由: 複数の波が共存する状況を扱う際の、最も基本的な大原則です。この原理がなければ、波の干渉や反射といった現象を説明することができません。
    • 適用根拠: 多くの波を記述する波動方程式は「線形」です。線形な方程式では、複数の解(個々の波)が見つかった場合、それらの和(重ね合わせた波)もまた、その方程式の正しい解となります。この数学的な性質が、重ね合わせの原理を物理的に保証しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 色分けや線の種類を使い分ける: 自分で作図する際には、シャープペン(入射波)、青ペン(反射波)、赤ペン(合成波)のように色を使い分けたり、実線と点線を使い分けたりすると、混乱を防ぎ、ミスを大幅に減らすことができます。
  • 移動距離を矢印で明記する: \(t=0\)の波形の山や谷から、移動後の山や谷の位置まで、\(x=vt\)の距離を示す矢印を書き込むと、「何目盛り動かすのか」が明確になり、移動させ忘れや移動させすぎを防げます。
  • 定規を使って足し算する: 合成波を描く際、各\(x\)座標で、入射波の変位の長さを定規で測り、それを反射波の波形の上に加える(あるいは引く)ようにすると、フリーハンドで描くよりも正確な合成波を描くことができます。特に、山と谷が中途半端に重なる部分で有効です。

7 波の反射

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「固定端反射における反射波と合成波の作図」です。前問の自由端反射との違いを明確に理解し、固定端反射の法則に従って正しく作図できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 固定端反射の法則: 固定端で波が反射するとき、反射波は入射波の上下を反転させ、さらに折り返した形になります。これは、壁の向こう側から逆位相の波がやってくるのと等価です。作図上は、入射波を壁Rで線対称に折り返し、さらに上下反転させたものが反射波の「もと」になります。
  2. 波の伝播: 入射波は\(+x\)方向に、反射波は\(-x\)方向に、それぞれ一定の速さで進みます。ある時刻の波形を描くには、\(t=0\)の波形を(距離)\( = \)(速さ)\( \times \)(時間) (\(x=vt\)) だけ平行移動させます。
  3. 波の重ね合わせの原理: 複数の波が同じ場所に来たとき、その点の変位は、各波の変位を単純に足し合わせたものになります。合成波は、入射波と反射波の\(y\)座標を各点で足し合わせることで作図できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

前問と同様に、設問ごとに以下の3ステップを順に実行します。反射波の作図法が自由端の場合と異なる点に注意します。

  1. 入射波の作図: \(t=0\)の入射波を、\(x=vt\)だけ\(+x\)方向に平行移動させ、指定された時刻の入射波を描きます。
  2. 反射波の作図: 1.で描いた入射波を壁の向こう側に延長し(仮想的な波)、それを上下反転させます。さらに、その上下反転させた波を壁Rを基準に線対称に折り返します。これが指定された時刻の反射波です。
  3. 合成波の作図: 1.の入射波と2.の反射波の\(y\)座標を、各\(x\)点で足し合わせ、合成波を描きます。

問(1) \(t=0 \, \text{s}\)

思考の道筋とポイント
\(t=0\)の瞬間における反射波と合成波を描きます。固定端反射の法則に従って、\(t=0\)の入射波から\(t=0\)の反射波を作図し、それらを重ね合わせて合成波を描きます。
この設問における重要なポイント

  • 固定端反射では、入射波を上下反転し、さらに壁Rで線対称に折り返したものが反射波となる。
  • 合成波は、入射波と反射波の各点の\(y\)座標の和。

具体的な解説と立式
1. 反射波の作図 (\(t=0\))
固定端反射における反射波は、壁Rの向こう側から、入射波を上下反転させた波が、線対称に進んでくると考えることができます。作図の手順は以下の通りです。

  1. まず、\(t=0\)の入射波が、もし壁Rがなければそのまま右側に進んでいくと仮定し、その波形を壁の右側に延長して描きます(模範解答の図の点線1)。
  2. 次に、この延長した部分を含めた入射波全体を上下反転させます(模範解答の図の点線2)。
  3. 最後に、この上下反転させた波を、壁Rを対称軸として線対称に折り返します(左右反転させます)(模範解答の図の矢印3)。この折り返された波形が、壁の左側で観測される反射波です。

\(t=0\)の入射波は、壁Rから2目盛り左に山、6目盛り左に谷があります。

  1. 延長した波は、壁Rから2目盛り右に谷、6目盛り右に山を持ちます。
  2. これを上下反転させると、壁Rの右側に、2目盛り右に、6目盛り右にを持つ波形ができます。
  3. これを壁Rで折り返すと、反射波は壁Rから2目盛り、6目盛りを持つ波形となります。

2. 合成波の作図 (\(t=0\))
\(t=0\)の入射波と、上で描いた反射波を重ね合わせます。

  • 壁Rの位置では、入射波の変位と反射波の変位は常に符号が逆で大きさが等しくなります。そのため、合成波の変位は常に\(0\)になります。固定端は定常波の「節」になります。
  • 壁から2目盛り左の位置では、入射波の山と反射波の山が重なるため、合成波の山は振幅が2倍になります。
  • 壁から6目盛り左の位置では、入射波の谷と反射波の谷が重なり、合成波の谷は振幅が2倍の深さになります。

これらの点を滑らかに結ぶことで、合成波が描けます。

使用した物理公式

  • 固定端反射の法則
  • 波の重ね合わせの原理
計算過程

作図が主であるため、計算は不要です。

この設問の平易な説明

\(t=0\)の瞬間の反射波と合成波を描きます。
反射波: 固定端反射は、自由端反射の「鏡」に「上下反転」のルールが加わったものです。まず、壁の向こう側に入射波の続きがあると想像します。次に、その波を上下ひっくり返します。最後に、そのひっくり返した波を壁を鏡としてパタンと折り返したものが反射波になります。
合成波: 入射波と反射波の「足し算」をします。山と山が重なれば2倍の高さの山に、山と谷が重なれば高さが打ち消し合います。

結論と吟味

固定端反射の正しい作図法と重ね合わせの原理を用いて、\(t=0\)における反射波と合成波の形を正しく作図するプロセスを確認しました。

解答 (1) (模範解答の図を参照)

問(2) \(t=1 \, \text{s}\)

思考の道筋とポイント
\(t=1\)秒後の入射波、反射波、合成波を描きます。前問と同様に、\(t=0\)の状態から波がどれだけ進むかを計算し、移動後の波形を描いて重ね合わせます。
この設問における重要なポイント

  • 波の移動距離は \(x = vt\) で計算する。
  • 入射波は\(+x\)方向、反射波は\(-x\)方向に進む。
  • 固定端反射のルールに従って反射波を描く。

具体的な解説と立式
1. 入射波と反射波の移動距離の計算
前問より、\(t=1\)秒で波が進む距離は\(2 \, \text{cm}\)(2目盛り)です。

2. 入射波の作図 (\(t=1\))
\(t=0\)の入射波を、\(+x\)方向(右向き)に\(2 \, \text{cm}\)(2目盛り)だけ平行移動させます。\(t=0\)で壁から2目盛り左にあった山は、壁Rの位置に到達します。

3. 反射波の作図 (\(t=1\))
\(t=0\)の反射波((1)で作図したもの)を、\(-x\)方向(左向き)に\(2 \, \text{cm}\)(2目盛り)だけ平行移動させます。
(別法:2.で描いた\(t=1\)の入射波に、固定端反射の作図法を適用しても同じ反射波が描けます。)

4. 合成波の作図 (\(t=1\))
2.で描いた入射波と3.で描いた反射波を重ね合わせます。この時刻では、入射波と反射波が完全に重なり、すべての点で互いに打ち消し合います。
したがって、合成波の変位は、すべての点で\(0\)になります。

使用した物理公式

  • 等速直線運動: \(x = vt\)
  • 固定端反射の法則
  • 波の重ね合わせの原理
計算過程

移動距離の計算: \(x = 2 \times 1 = 2 \, \text{cm}\)。

この設問の平易な説明

1秒後の世界を描きます。波は1秒間で\(2 \, \text{cm}\)(2目盛り)進みます。
入射波: \(t=0\)の入射波を、右に2目盛りずらします。
反射波: \(t=0\)の反射波を、左に2目盛りずらします。
合成波: この2つの波を足し算します。すると、驚くことに、すべての場所で山と谷がぴったり重なり、波が完全に消えて平らな線になります。

結論と吟味

波の伝播と固定端反射のルールを正しく適用すると、\(t=1\)秒後には合成波の変位がいたるところで0になることがわかります。

解答 (2) (模範解答の図を参照)

問(3) \(t=2.5 \, \text{s}\)

思考の道筋とポイント
\(t=2.5\)秒後の入射波、反射波、合成波を描きます。これまでと同様に、\(t=0\)の状態から波がどれだけ進むかを計算し、移動後の波形を描いて重ね合わせます。
この設問における重要なポイント

  • 波の移動距離は \(x = vt\) で計算する。
  • \(2.5\)目盛りという半端な移動量を正確に作図する。

具体的な解説と立式
1. 入射波と反射波の移動距離の計算
前問より、\(t=2.5\)秒で波が進む距離は\(5 \, \text{cm}\)(5目盛り)です。

2. 入射波の作図 (\(t=2.5\))
\(t=0\)の入射波を、\(+x\)方向(右向き)に\(5 \, \text{cm}\)(5目盛り)だけ平行移動させます。

3. 反射波の作図 (\(t=2.5\))
\(t=0\)の反射波を、\(-x\)方向(左向き)に\(5 \, \text{cm}\)(5目盛り)だけ平行移動させます。
(別法:2.で描いた\(t=2.5\)の入射波に、固定端反射の作図法を適用しても同じ反射波が描けます。)

4. 合成波の作図 (\(t=2.5\))
2.で描いた入射波と3.で描いた反射波を重ね合わせ、合成波を描きます。

使用した物理公式

  • 等速直線運動: \(x = vt\)
  • 固定端反射の法則
  • 波の重ね合わせの原理
計算過程

移動距離の計算: \(x = 2 \times 2.5 = 5 \, \text{cm}\)。

この設問の平易な説明

2.5秒後の世界を描きます。
波は2.5秒間で \(5 \, \text{cm}\)(5目盛り)進みます。
入射波: \(t=0\)の入射波を、右に5目盛りずらします。
反射波: \(t=0\)の反射波を、左に5目盛りずらします。
合成波: この2つの波を足し算して、合成波を描きます。

結論と吟味

これまでと同様の手順で、\(t=2.5\)秒後の波形を描くことができます。

解答 (3) (模範解答の図を参照)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 反射の法則(自由端と固定端の違い):
    • 核心: この問題と前問を通じて最も重要なのは、「自由端反射」と「固定端反射」の物理的な違いを、作図上の操作の違いとして正確に理解することです。
    • 理解のポイント:
      • 自由端反射: 壁が自由に動けるため、波の力をそのまま跳ね返すイメージ。位相は変わらず(山は山のまま)、左右だけが反転します。作図では線対称移動に対応します。壁の位置は振動が最も激しいになります。
      • 固定端反射: 壁が動かないため、波が壁を上に押し上げようとすると、壁は逆に波を下に引き下げる力(反作用)を及ぼします。このため、波の位相が反転します(山は谷に、谷は山に)。作図では線対称移動+上下反転(=点対称移動)に対応します。壁の位置は全く動かないになります。
  • 重ね合わせの原理と定常波の形成:
    • 核心: 逆向きに進む同じ波(入射波と反射波)が重なると、波形が進んでいくように見えない「定常波」が生まれるという現象を理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 節と腹: 定常波には、全く振動しない「節」と、最も大きく振動する「腹」が交互に現れます。
      • エネルギーの移動: 進行波がエネルギーを一定方向に運ぶのに対し、定常波はその場にエネルギーを蓄え、運動エネルギーと位置エネルギーの交換を繰り返すだけで、エネルギーを運びません。
      • 作図への応用: 節や腹の位置を特定すると、合成波全体の形を把握しやすくなります。例えば、固定端では壁が必ず節になるため、合成波は必ず壁の位置で変位0になります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 弦の振動: ギターの弦のように両端が固定された弦を伝わる波は、両端で固定端反射を繰り返します。弦の長さに合う特定の波長(固有振動)の波だけが定常波として存在でき、これが音の高さ(音階)を決めます。
    • 気柱の共鳴: 開管(両端が自由端)や閉管(一端が固定端、一端が自由端)の中の空気の振動も、波の反射と定常波で説明されます。管の長さに合う定常波ができるときに「共鳴」が起こります。
    • 光の干渉(薄膜など): ガラスの薄膜などで光が反射する際、屈折率が大きい媒質との境界で反射するときは固定端反射(位相が反転)、小さい媒質との境界では自由端反射(位相はそのまま)として扱われます。この位相の変化が、光の干渉の条件に影響します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 反射端の種類の特定: まず問題文で「自由端」か「固定端」かを最優先で確認します。これが作図のルールを決定します。
    2. 仮想波源法のステップを厳守:
      • ① 入射波を壁の向こうへ延長する。
      • 固定端なら上下反転する。(自由端なら何もしない)
      • ③ 壁を軸に左右反転(線対称移動)する。

      この3ステップを機械的に実行することが、ミスを防ぐ鍵です。

    3. 時刻\(t\)での移動を先に済ませる: \(t>0\) の場合は、まず入射波と(\(t=0\)の)反射波をそれぞれ平行移動させて、その時刻での「素材」を準備してから、重ね合わせの作図に入ります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 固定端反射の作図ミス:
    • 誤解: 上下反転だけして、左右反転(線対称移動)を忘れる。あるいは、入射波そのものを上下反転させてしまう。
    • 対策: 「仮想波源法」のステップを体に覚えさせます。「延長→(固定なら)上下反転→左右反転」という呪文のように唱えながら作図するのも有効です。模範解答の図にある番号①→②→③の操作が、この手順に対応しています。
  • 自由端と固定端の混同:
    • 誤解: どちらが位相が反転するのかを忘れてしまう。
    • 対策: 「定端は、壁がいから、逆向きに押し返されて位相反転」のように、理由付けや語呂合わせで覚えます。「自由端は腹、固定端は節」という結果とセットで記憶するのも効果的です。
  • 合成波が常に動かないと勘違いする:
    • 誤解: 定常波という言葉から、合成波の形が全く変化しないと誤解する。
    • 対策: 定常波は「波形が進まない」だけで、各点はその場で激しく振動しています。節以外の点は、時間とともに変位が変化します。本問の(1)〜(3)のように、異なる時刻では合成波の形は全く異なることを理解しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 仮想波源法による作図:
    • 選定理由: 反射という物理現象は、数学的には「境界条件」の問題として扱われます。固定端では「壁での変位が常に0」という条件を満たすように反射波が生成されます。この境界条件を満たす解を簡単に見つけるための、極めて優れた幾何学的な方法が「仮想波源法」です。
    • 適用根拠: 壁の向こう側に、入射波を点対称に移動させた仮想波源を置くと、入射波と仮想波源からの波の重ね合わせが、壁の位置で常に変位0になる(境界条件を満たす)ことが数学的に示されています。この作図法は、この数学的な背景を視覚的に実行しているものであり、物理的に正しい方法です。
  • 重ね合わせの原理:
    • 選定理由: 複数の波が共存する状況を扱う際の、最も基本的な大原則です。この原理がなければ、波の干渉や反射といった現象を説明することができません。
    • 適用根拠: 多くの波を記述する波動方程式は「線形」です。線形な方程式では、複数の解(個々の波)が見つかった場合、それらの和(重ね合わせた波)もまた、その方程式の正しい解となります。この数学的な性質が、重ね合わせの原理を物理的に保証しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 作図のステップを分ける: 1枚の図にいきなり全部描こうとせず、
    1. \(t\)秒後の入射波を描く図
    2. \(t\)秒後の反射波を描く図
    3. 1と2を重ねて合成波を描く図

    のように、ノートを分けて段階的に作図すると、混乱が少なくなり、ミスを発見しやすくなります。

  • 特徴的な点の動きを追う: 波全体の平行移動を考えるのが難しい場合、入射波の「山」や「谷」の先端が、\(t\)秒後にどこまで移動するかだけをまずプロットします。その点を基準に、波長を考慮して波形全体を復元するという方法も有効です。
  • 境界条件で検算する: 作図が終わった後、必ず境界条件が満たされているかを確認します。
    • 固定端なら: 合成波は壁Rの位置で必ず変位0になっているか?
    • 自由端なら: 合成波は壁Rの位置で傾きが0(水平)になっているか?(腹なので変位は最大または最小付近)

    これが満たされていなければ、作図のどこかで間違えている証拠です。

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8 波の反射

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「波の反射と重ね合わせの原理」です。壁で反射した波が、もとの入射波とどのように干渉して観測される波(合成波)を形成するかを、作図によって理解することが目的です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の独立性と重ね合わせの原理: 複数の波が同じ場所で出会ったとき、その点の変位は、それぞれの波が単独で存在した場合の変位の和になる、という原理。
  2. 自由端反射の性質: 波が自由端(変位が自由な端)で反射するとき、反射波の位相は変わらない。つまり、「山」として入射した波は「山」のまま反射する。
  3. 反射波の作図法(仮想的な波源法): 反射波は、壁の向こう側に仮想的な波源があり、そこから壁を透過してくる波と考えることができる。自由端反射の場合、この仮想的な波は、入射波を壁に対して線対称に折り返したもの(鏡像)となる。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各時刻において、もし壁がなかったとしたら入射波がどこまで進んでいるかを考える。
  2. 壁の向こう側にはみ出した部分を、自由端反射のルール(壁に対して線対称)に従って折り返し、反射波を描く。
  3. 壁の手前側(現実の空間)に存在する入射波と反射波を、重ね合わせの原理に従って足し合わせ、合成波を描く。

問(1) \(t=4 \, \text{s}\)

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