「物理のエッセンス(力学・波動)」徹底解説(力学11〜15問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

問題11 斜方投射と滑らかな床との衝突

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 別解1: 軌道の対称性と最高点までの時間を利用した解法
      • 模範解答が変位の式(\(y=0\))から飛行時間を求めるのに対し、別解1では放物運動の対称性に着目し、最高点に達するまでの時間を求めてからそれを2倍することで飛行時間を導きます。
    • 別解2: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分)
      • 公式を暗記して適用するのではなく、運動方程式から速度と位置を導出し、境界条件(\(y=0\))を適用して飛距離を数学的に導き出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 対称性を利用した解法: 2次方程式を解く手間が省け、1次方程式で処理できるため計算ミスが減ります。また、放物運動の幾何学的な性質への理解が深まります。
    • 微積分の解法: 公式が適用できない複雑な状況(例えば空気抵抗がある場合など)にも対応できる、物理学の最も根本的なアプローチを学ぶことができます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「斜方投射と床との衝突(バウンド)」です。放物運動を水平方向と鉛直方向に分解し、衝突による速度変化を考慮して再び放物運動を追跡します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 運動の独立性: 斜方投射は、水平方向の「等速直線運動」と、鉛直方向の「鉛直投げ上げ運動(等加速度直線運動)」に完全に分けて考えることができます。
  • 滑らかな面での衝突: 「滑らかな」水平面とは、摩擦力が働かないことを意味します。したがって、衝突時に水平方向には力が働かず、水平方向の速度成分は変化しません。
  • 反発係数(はねかえり係数): 鉛直方向については、床からの垂直抗力(撃力)を受けるため速度が変化します。衝突直後の鉛直速度の大きさは、直前の鉛直速度の大きさの \(e\) 倍になります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • まず、点Aから点Bへの運動の対称性を利用し、点Bに衝突する直前の速度成分を求めます。
  • 次に、衝突の法則(水平は不変、鉛直は \(e\) 倍)を適用し、点Bでの衝突直後の速度成分を求めます。
  • 最後に、その初速度で点Bから点Cへ斜方投射されたと考え、飛行時間と水平到達距離を計算します。

BC間の距離

思考の道筋とポイント
点Aから打ち出された物体は、放物線を描いて点Bに落下します。
空気抵抗がないため、点Bに衝突する直前の速さは、点Aで打ち出されたときの速さと同じになります。
衝突によって鉛直方向の速度だけが \(e\) 倍になり、上向きに跳ね返ります。
この新しい初速度で再び放物運動を行い、点Cに落下するまでの時間を求め、その時間内に水平方向にどれだけ進むかを計算します。

この設問における重要なポイント

  • 水平方向の速度保存: 滑らかな床との衝突では、水平方向の速度 \(v_0 \cos\theta\) は衝突の前後で一切変化しません。
  • 鉛直方向の速度変化: 衝突直前の鉛直下向きの速度の大きさが \(v_0 \sin\theta\) であるため、衝突直後の鉛直上向きの速度の大きさは \(ev_0 \sin\theta\) となります。

具体的な解説と立式
水平右向きを \(x\) 軸の正の向き、鉛直上向きを \(y\) 軸の正の向きとします。

点Bに衝突する直前の速度の \(x\) 成分を \(v_{x1}\)、\(y\) 成分を \(v_{y1}\) とします。
点Aから点Bへの運動の対称性より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
v_{x1} &= v_0 \cos\theta \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v_{y1} &= -v_0 \sin\theta \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

点Bでの衝突直後の速度の \(x\) 成分を \(v_{x2}\)、\(y\) 成分を \(v_{y2}\) とします。
水平方向は力が働かないため速度は不変であり、鉛直方向は反発係数 \(e\) の衝突をするため、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
v_{x2} &= v_{x1} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v_{y2} &= -e \cdot v_{y1} \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

点Bから点Cまでの飛行時間を \(t\) とします。
点Cでは再び床(\(y=0\))に戻るため、鉛直方向の変位は \(0\) です。等加速度直線運動の公式より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
0 &= v_{y2} t – \frac{1}{2}gt^2 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

この時間 \(t\) の間に水平方向に進んだ距離が、求めるBC間の距離(これを \(L\) とします)です。水平方向は等速直線運動なので、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
L &= v_{x2} t \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の変位: \(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)
  • 等速直線運動の変位: \(x = vt\)
  • 反発係数の式: \(v’ = -ev\)
  • 三角関数の倍角の公式: \(\sin 2\theta = 2\sin\theta\cos\theta\)
計算過程

式①、②を式③、④に代入し、点B直後の速度成分を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_{x2} &= v_0 \cos\theta
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v_{y2} &= -e(-v_0 \sin\theta) \\[2.0ex]
&= ev_0 \sin\theta
\end{aligned}
$$

これらを式⑤に代入し、飛行時間 \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
0 &= (ev_0 \sin\theta) t – \frac{1}{2}gt^2 \\[2.0ex]
\frac{1}{2}gt^2 – (ev_0 \sin\theta) t &= 0 \\[2.0ex]
t \left( \frac{1}{2}gt – ev_0 \sin\theta \right) &= 0
\end{aligned}
$$
点Cに到達するのは \(t > 0\) のときなので、括弧の中が \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}gt &= ev_0 \sin\theta \\[2.0ex]
t &= \frac{2ev_0 \sin\theta}{g}
\end{aligned}
$$

求めた \(t\) と \(v_{x2}\) を式⑥に代入し、距離 \(L\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
L &= (v_0 \cos\theta) \left( \frac{2ev_0 \sin\theta}{g} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{ev_0^2}{g} \cdot 2\sin\theta\cos\theta
\end{aligned}
$$

ここで、倍角の公式 \(2\sin\theta\cos\theta = \sin 2\theta\) を用いて整理します。
$$
\begin{aligned}
L &= \frac{ev_0^2}{g} \sin 2\theta
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ボールが飛んでいく動きを、「横の動き」と「縦の動き」に完全に分けて考えます。
横の動きは、摩擦がないツルツルの床なので、バウンドしてもスピードは落ちず、ずっと一定のペースで進み続けます。
縦の動きは、床にぶつかるたびに反発係数 \(e\) の分だけ勢いが弱まり、跳ね上がるスピードが遅くなります。
「どれくらいの時間、空中に浮いているか」は縦の動きだけで決まります。その浮いている時間を計算し、「その時間の間に横にどれだけ進むか」を掛け算すれば、次のバウンドまでの距離が分かります。

結論と吟味

答えは \(\frac{ev_0^2}{g} \sin 2\theta\) となりました。
次元(単位)を確認すると、\(v_0^2/g\) は \((\text{m}/\text{s})^2 / (\text{m}/\text{s}^2) = \text{m}\) となり、距離の次元として正しいです。
もし \(e=1\)(弾性衝突)であれば、距離は \(\frac{v_0^2}{g} \sin 2\theta\) となり、これは点Aから点Bまでの飛距離と全く同じになります。エネルギーが失われないなら同じ距離だけ飛ぶはずであり、物理的直感と一致します。
また、\(\theta = 45^\circ\) のとき \(\sin 2\theta = 1\) となり、飛距離が最大になることも確認できます。

解答 \(\displaystyle \frac{ev_0^2}{g} \sin 2\theta\)
別解: 軌道の対称性と最高点までの時間を利用した解法

思考の道筋とポイント
点Bから点Cへの放物運動も、最高点を境にして左右対称な軌道を描きます。
したがって、点Bから最高点に達するまでの時間を求め、それを2倍すれば、点Cに落下するまでの全飛行時間 \(t\) になります。
最高点では鉛直方向の速度が瞬間的に \(0\) になるという条件を使えば、2次方程式を解くことなく時間を求められます。

この設問における重要なポイント

  • 放物運動の対称性: (打ち上げから最高点までの時間)=(最高点から落下するまでの時間)が成り立ちます。

具体的な解説と立式
点Bでの衝突直後の速度成分は、メイン解法と同様に以下のように表せます。
$$
\begin{aligned}
v_{x2} &= v_0 \cos\theta
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v_{y2} &= ev_0 \sin\theta
\end{aligned}
$$

点Bから最高点に達するまでの時間を \(t_{\text{最高}}\) とします。
最高点では鉛直方向の速度が \(0\) になるため、等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) より以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
0 &= v_{y2} – g t_{\text{最高}} \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

点Bから点Cまでの全飛行時間 \(t\) は、対称性より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
t &= 2 t_{\text{最高}} \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$

BC間の距離 \(L\) は、水平方向の等速直線運動より以下の式で求まります。
$$
\begin{aligned}
L &= v_{x2} t \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等加速度直線運動の速度: \(v = v_0 + at\)
  • 等速直線運動の変位: \(x = vt\)
計算過程

式⑦より、\(t_{\text{最高}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
g t_{\text{最高}} &= v_{y2} \\[2.0ex]
t_{\text{最高}} &= \frac{v_{y2}}{g} \\[2.0ex]
&= \frac{ev_0 \sin\theta}{g}
\end{aligned}
$$

これを式⑧に代入し、全飛行時間 \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
t &= 2 \left( \frac{ev_0 \sin\theta}{g} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{2ev_0 \sin\theta}{g}
\end{aligned}
$$

これを式⑨に代入し、距離 \(L\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
L &= (v_0 \cos\theta) \left( \frac{2ev_0 \sin\theta}{g} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{2ev_0^2 \sin\theta\cos\theta}{g} \\[2.0ex]
&= \frac{ev_0^2}{g} \sin 2\theta
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ボールが一番高く上がるまでの時間を計算します。一番高いところでは、縦方向の動きがピタッと止まるので、計算が簡単です。
上がって下りるまでの時間は、上がるまでの時間のちょうど2倍になります。
その2倍の時間の間に、横方向にどれだけ進むかを計算すれば答えが出ます。

結論と吟味

メイン解法と全く同じ結果が得られました。
変位の式(2次方程式)を使わず、速度の式(1次方程式)だけで時間を求められるため、計算の見通しが良くなります。

解答 \(\displaystyle \frac{ev_0^2}{g} \sin 2\theta\)
別解: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
公式を前提とせず、ニュートンの運動方程式から出発します。
物体に働く力を水平方向と鉛直方向に分けて運動方程式を立て、それを時間で積分することで速度と位置の式を導き出します。
点Bを原点とし、点Cに到達する条件(\(y=0\))を数学的に解くことで飛距離を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 運動方程式の立式: 飛行中の物体には、鉛直下向きの重力 \(mg\) のみが働きます。水平方向には力が働きません。
  • 初期条件の設定: 積分定数を決定するために、点Bでの衝突直後(\(t=0\))の速度と位置を正しく設定します。

具体的な解説と立式
点Bを原点 \((0, 0)\) とし、水平右向きを \(x\) 軸、鉛直上向きを \(y\) 軸とします。
物体の質量を \(m\) とします。
物体に働く力は鉛直下向きの重力 \(mg\) のみなので、運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
m a_x &= 0 \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
m a_y &= -mg \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$

点Bでの衝突直後の時刻を \(t=0\) とします。
初期条件(\(t=0\) における速度と位置)は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
v_x(0) &= v_0 \cos\theta
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v_y(0) &= ev_0 \sin\theta
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
x(0) &= 0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
y(0) &= 0
\end{aligned}
$$

運動方程式を積分して、任意の時刻 \(t\) における位置 \(x(t), y(t)\) を求めます。
点Cに到達する時刻 \(t_{\text{C}}\) は、\(y(t_{\text{C}}) = 0\) かつ \(t_{\text{C}} > 0\) を満たす時刻です。
求めるBC間の距離 \(L\) は、その時刻における水平位置 \(x(t_{\text{C}})\) となります。

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 速度と位置の定義: \(v = \frac{dx}{dt}\), \(a = \frac{dv}{dt}\)
計算過程

式⑩より \(a_x = 0\) です。これを積分して速度 \(v_x(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_x(t) &= \int 0 dt \\[2.0ex]
&= C_1 \quad (C_1 \text{は積分定数})
\end{aligned}
$$
初期条件 \(v_x(0) = v_0 \cos\theta\) より、
$$
\begin{aligned}
C_1 &= v_0 \cos\theta
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v_x(t) &= v_0 \cos\theta
\end{aligned}
$$
さらに積分して位置 \(x(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= \int (v_0 \cos\theta) dt \\[2.0ex]
&= (v_0 \cos\theta) t + C_2 \quad (C_2 \text{は積分定数})
\end{aligned}
$$
初期条件 \(x(0) = 0\) より、
$$
\begin{aligned}
C_2 &= 0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
x(t) &= (v_0 \cos\theta) t
\end{aligned}
$$

同様に、式⑪より \(a_y = -g\) です。これを積分して速度 \(v_y(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_y(t) &= \int (-g) dt \\[2.0ex]
&= -gt + C_3 \quad (C_3 \text{は積分定数})
\end{aligned}
$$
初期条件 \(v_y(0) = ev_0 \sin\theta\) より、
$$
\begin{aligned}
C_3 &= ev_0 \sin\theta
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v_y(t) &= ev_0 \sin\theta – gt
\end{aligned}
$$
さらに積分して位置 \(y(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
y(t) &= \int (ev_0 \sin\theta – gt) dt \\[2.0ex]
&= (ev_0 \sin\theta) t – \frac{1}{2}gt^2 + C_4 \quad (C_4 \text{は積分定数})
\end{aligned}
$$
初期条件 \(y(0) = 0\) より、
$$
\begin{aligned}
C_4 &= 0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
y(t) &= (ev_0 \sin\theta) t – \frac{1}{2}gt^2
\end{aligned}
$$

点Cに到達する時刻 \(t_{\text{C}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
y(t_{\text{C}}) &= 0 \\[2.0ex]
(ev_0 \sin\theta) t_{\text{C}} – \frac{1}{2}gt_{\text{C}}^2 &= 0 \\[2.0ex]
t_{\text{C}} \left( ev_0 \sin\theta – \frac{1}{2}gt_{\text{C}} \right) &= 0
\end{aligned}
$$
\(t_{\text{C}} > 0\) より、
$$
\begin{aligned}
ev_0 \sin\theta – \frac{1}{2}gt_{\text{C}} &= 0 \\[2.0ex]
\frac{1}{2}gt_{\text{C}} &= ev_0 \sin\theta \\[2.0ex]
t_{\text{C}} &= \frac{2ev_0 \sin\theta}{g}
\end{aligned}
$$

距離 \(L\) は \(x(t_{\text{C}})\) なので、代入して求めます。
$$
\begin{aligned}
L &= x(t_{\text{C}}) \\[2.0ex]
&= (v_0 \cos\theta) \left( \frac{2ev_0 \sin\theta}{g} \right) \\[2.0ex]
&= \frac{ev_0^2}{g} \cdot 2\sin\theta\cos\theta \\[2.0ex]
&= \frac{ev_0^2}{g} \sin 2\theta
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「力」という一番根本的な原因からスタートして、ボールの動きを数学的に組み立てました。
横方向には力が働かないので、加速度は \(0\)、つまり速度はずっと一定です。
縦方向には重力が働くので、加速度は \(-g\) となり、速度がだんだん減っていきます。
これらを積分という計算で「位置の式」に変換し、「高さが \(0\) になるのはいつか?」を計算して、その時の横の位置を求めました。

結論と吟味

原理的なアプローチからも、全く同じ結果が得られました。
公式を忘れてしまっても、運動方程式さえ立てられれば、積分によって確実に答えにたどり着けることが確認できます。

解答 \(\displaystyle \frac{ev_0^2}{g} \sin 2\theta\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動の独立性(水平方向と鉛直方向の分離)
    • 核心: 斜方投射された物体の運動は、水平方向の「等速直線運動」と鉛直方向の「等加速度直線運動(鉛直投げ上げ)」に完全に分けて考えることができます。
    • 理解のポイント:
      • 重力は鉛直方向にしか働かないため、水平方向の速度成分は常に一定に保たれます。
      • 飛行時間や最高点の高さは、鉛直方向の運動だけで決まります。
  • 滑らかな面での衝突と反発係数
    • 核心: 摩擦のない滑らかな床との衝突では、床に平行な方向(水平方向)の速度成分は変化せず、床に垂直な方向(鉛直方向)の速度成分のみが反発係数 \(e\) 倍になって跳ね返ります。
    • 理解のポイント:
      • 衝突直前の速度ベクトルを水平成分と鉛直成分に分解し、それぞれ独立に衝突後の成分を求めることが重要です。
      • 「滑らかな」という条件が、水平方向の速度保存を保証しています。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 壁との斜め衝突: 床ではなく鉛直な壁に斜めに衝突する問題でも、考え方は全く同じです。壁に平行な方向(鉛直方向)の速度は保存され、壁に垂直な方向(水平方向)の速度が \(e\) 倍になって跳ね返ります。
    • 無限回のバウンドと総移動距離: バウンドを無限に繰り返すまでに物体が移動した総水平距離を求める問題では、各バウンドでの飛距離が等比数列になることを利用し、無限等比級数の和の公式を用いて計算します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 速度ベクトルの分解: 斜めに飛んでいる物体の速度は、必ず水平成分(\(\cos\theta\))と鉛直成分(\(\sin\theta\))に分解してから考え始めます。
    2. 衝突前後の成分の追跡: 衝突の瞬間、どの方向の成分が保存され、どの方向の成分が \(e\) 倍になるのかを、面に対して平行か垂直かで判断します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 水平方向の速度まで \(e\) 倍にしてしまう:
    • 誤解: 「衝突すると速さが \(e\) 倍になる」と丸暗記していると、水平方向の速度成分まで \(ev_0 \cos\theta\) にしてしまう。
    • 対策: 反発係数 \(e\) が適用されるのは、あくまで「面に対して垂直な方向の相対速度」だけです。滑らかな面との衝突では、面に平行な方向の速度は絶対に変化しないことを強く意識しましょう。
  • 三角関数の倍角公式の忘れ:
    • 誤解: 答えが \(2\sin\theta\cos\theta\) の形になったとき、そこで計算を止めてしまうか、無理に変形しようとして間違える。
    • 対策: 物理の斜方投射の問題では、飛距離の式に \(2\sin\theta\cos\theta\) が頻出します。これは必ず \(\sin 2\theta\) にまとめるのが標準的な解答形式なので、倍角の公式はセットで覚えておきましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 等加速度直線運動の変位の公式(メイン解法):
    • 選定理由: 「床から打ち出されて再び床に戻る」という状況は、鉛直方向の変位 \(y\) が \(0\) になることを意味します。変位と時間を結びつける公式 \(y = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) を用いることで、飛行時間 \(t\) を直接求めることができるため。
    • 適用根拠: 飛行中の物体は、鉛直方向には常に一定の重力加速度 \(-g\) を受けているため。
  • 軌道の対称性を利用した解法(別解1):
    • 選定理由: 2次方程式を解く手間を省き、最高点での速度が \(0\) になるという条件から1次方程式で時間を求められるため、計算ミスを減らすことができます。
    • 適用根拠: 空気抵抗がない放物運動は、最高点を軸として左右対称な軌道を描くため、「打ち上げから最高点までの時間」と「最高点から落下するまでの時間」が等しくなります。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
    • 意識: 最終的な答えの単位が、求められている物理量の単位と一致しているかを確認します。
    • 実践: 答えが \(\frac{ev_0^2}{g} \sin 2\theta\) の場合、\(e\) と \(\sin 2\theta\) は無次元(単位なし)、\(v_0^2/g\) は \((\text{m}/\text{s})^2 / (\text{m}/\text{s}^2) = \text{m}\) となり、全体として長さの次元を持つため、距離を表す式として妥当であることが確認できます。
  • 極限的なケースでの検算:
    • 意識: 得られた式が、極端な条件下でも物理的な常識と一致するかをテストします。
    • 実践: \(\theta = 90^\circ\)(真上に打ち上げ)を代入すると \(\sin 180^\circ = 0\) となり、水平飛距離が \(0\) になることが確認できます。また、\(e=1\)(弾性衝突)を代入すると、最初の飛距離(AからB)と同じ式になることが確認できます。

問題12 水平投射と鉛直な壁との衝突

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 別解1: 鏡像法(折り返し)を用いた幾何学的解法
      • 模範解答が時間を分割して水平距離を計算するのに対し、別解1では壁の向こう側に仮想的な空間を考え、壁がない場合の軌道を折り返すことで、より直感的に落下点の位置を導きます。
    • 別解2: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式の積分と区分的定義)
      • 公式を暗記して適用するのではなく、運動方程式から速度と位置を導出し、壁との衝突時刻を境界として関数を切り替えることで、物体の軌跡を数学的に厳密に記述します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 鏡像法: 衝突による速度の反転を「空間の折り返し」として視覚的に捉えることで、複雑な計算を回避し、図形的な直感力を養うことができます。
    • 微積分の解法: 衝突という不連続な現象を数学的にどう扱うか(区分的に定義された関数)を学ぶことができ、より高度な物理学への橋渡しとなります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「水平投射と鉛直な壁との衝突」です。放物運動を水平方向と鉛直方向に分解し、壁との衝突がそれぞれの方向にどのような影響を与えるかを分析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 運動の独立性: 水平投射は、水平方向の「等速直線運動」と、鉛直方向の「自由落下運動」に完全に分けて考えることができます。
  • 滑らかな壁との衝突: 「滑らかな」壁とは、摩擦力が働かないことを意味します。したがって、衝突時に鉛直方向には力が働かず、鉛直方向の速度成分は変化しません。
  • 反発係数(はねかえり係数): 水平方向については、壁からの垂直抗力(撃力)を受けるため速度が変化します。衝突直後の水平速度の大きさは、直前の水平速度の大きさの \(e\) 倍になり、向きが反転します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • まず、鉛直方向の運動に注目し、床に達するまでの全飛行時間 \(t\) を求めます。
  • 次に、水平方向の運動に注目し、壁にぶつかるまでの時間 \(t_1\) を求めます。
  • 最後に、衝突後の残りの時間 \((t – t_1)\) で、新しい水平速度でどれだけ壁から離れるかを計算します。

※重力加速度の大きさを \(g\) とします。

床に達するまでの時間 \(t\) と落下点の壁からの距離 \(x\)

思考の道筋とポイント
まず、鉛直方向の運動を考えます。
壁は滑らかであるため、衝突時に鉛直方向の力は働きません。つまり、壁にぶつかってもぶつからなくても、鉛直方向の運動はただの「自由落下」のままです。したがって、高さ \(h\) を自由落下する時間を求めれば、それが全飛行時間 \(t\) になります。
次に、水平方向の運動を考えます。
壁にぶつかるまでは初速 \(v_0\) の等速直線運動です。壁までの距離 \(d\) を進む時間 \(t_1\) を求めます。
壁に衝突すると、水平方向の速度は向きが逆になり、大きさが \(e\) 倍(\(ev_0\))になります。
全飛行時間 \(t\) から壁にぶつかるまでの時間 \(t_1\) を引いた残りの時間、この新しい速度 \(ev_0\) で壁から遠ざかるように等速直線運動をします。この間に進んだ距離が、求める距離 \(x\) になります。

この設問における重要なポイント

  • 鉛直方向の運動の連続性: 滑らかな壁との衝突は、鉛直方向の運動(自由落下)に一切影響を与えません。
  • 水平方向の速度変化: 衝突直後の水平方向の速さは \(ev_0\) となります。

具体的な解説と立式
まず、鉛直方向について立式します。
鉛直下向きを正の向きとします。
初速度 \(0\)、加速度 \(g\)、変位 \(h\) の等加速度直線運動(自由落下)です。
床に達するまでの時間 \(t\) は、以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
h &= \frac{1}{2}gt^2 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

次に、水平方向について立式します。
壁に向かう向きを正の向きとします。
壁にぶつかるまでの時間 \(t_1\) は、距離 \(d\) を速さ \(v_0\) で進む時間なので、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
d &= v_0 t_1 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

壁に衝突した後の水平方向の速さを \(v’\) とすると、反発係数の定義より以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
v’ &= ev_0 \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

衝突後、床に落ちるまでの残り時間は \(t – t_1\) です。
この時間内に、速さ \(v’\) で壁から遠ざかる方向に進んだ距離が \(x\) なので、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
x &= v’ (t – t_1) \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 自由落下の変位: \(y = \frac{1}{2}gt^2\)
  • 等速直線運動の変位: \(x = vt\)
  • 反発係数の式: \(v’ = ev\)
計算過程

式①より、全飛行時間 \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}gt^2 &= h \\[2.0ex]
t^2 &= \frac{2h}{g} \\[2.0ex]
t &= \sqrt{\frac{2h}{g}} \quad (t > 0)
\end{aligned}
$$

式②より、壁にぶつかるまでの時間 \(t_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
t_1 &= \frac{d}{v_0}
\end{aligned}
$$

式③、および求めた \(t, t_1\) を式④に代入し、距離 \(x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x &= (ev_0) \left( \sqrt{\frac{2h}{g}} – \frac{d}{v_0} \right) \\[2.0ex]
&= ev_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – e \cdot d \\[2.0ex]
&= e \left( v_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – d \right)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ボールの動きを「縦」と「横」に分けます。
縦の動きは、壁がツルツルなので、壁にぶつかっても全く邪魔されません。ただ普通に高さ \(h\) から落としたのと同じように、どんどん加速しながら落ちていきます。この落ちるのにかかる時間が \(t\) です。
横の動きは、最初はスピード \(v_0\) で壁に向かいます。壁までの距離 \(d\) を進むのにかかる時間が \(t_1\) です。
壁にぶつかると、横のスピードは \(e\) 倍に遅くなり、向きが逆になります。
ボールが空中にいられる時間は全部で \(t\) です。そのうち \(t_1\) だけ壁に向かって飛んだので、残りの時間は \(t – t_1\) です。
この残りの時間だけ、遅くなったスピードで壁から離れていくので、その掛け算が壁からの距離 \(x\) になります。

結論と吟味

時間 \(t = \sqrt{\frac{2h}{g}}\) は、通常の自由落下の時間と一致しており妥当です。
距離 \(x = e \left( v_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – d \right)\) について吟味します。
もし壁がなかった場合、水平到達距離は \(v_0 t = v_0 \sqrt{\frac{2h}{g}}\) となります。
括弧の中身 \(v_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – d\) は、「もし壁がなかったら、壁の位置からさらにどれだけ奥へ飛んでいたか」という仮想的な距離を表しています。
実際の距離 \(x\) は、その仮想的な距離が反発係数 \(e\) 倍になって手前に折り返されたものと解釈でき、物理的に非常に理にかなっています。

解答 時間 \(t\): \(\displaystyle \sqrt{\frac{2h}{g}}\), 距離 \(x\): \(\displaystyle e \left( v_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – d \right)\)

 

別解: 鏡像法(折り返し)を用いた幾何学的解法

思考の道筋とポイント
壁との衝突を「空間の折り返し」として捉えます。
もし壁が存在しなかった場合、物体はそのまま放物線を描いて床のどこか(仮想的な落下点)に落ちます。
壁がある場合、壁を通り過ぎた後の仮想的な軌道を、壁を鏡として手前側に折り返したものが実際の軌道になります。
ただし、反発係数が \(e\) であるため、折り返された後の水平距離は、仮想的な水平距離の \(e\) 倍に縮小されます。

この設問における重要なポイント

  • 仮想的な到達距離: 壁がない場合の水平到達距離を計算し、壁の位置を基準にして考えます。

具体的な解説と立式
全飛行時間 \(t\) はメイン解法と同じく、自由落下の時間として求まります。
$$
\begin{aligned}
t &= \sqrt{\frac{2h}{g}} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

もし壁がなかった場合の、点Aの真下からの水平到達距離を \(L_{\text{仮想}}\) とします。
水平方向は速さ \(v_0\) の等速直線運動なので、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
L_{\text{仮想}} &= v_0 t \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

壁の位置は点Aの真下から距離 \(d\) の場所にあります。
したがって、壁がない場合に「壁の位置からさらに奥へ進むはずだった距離」を \(\Delta x\) とすると、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= L_{\text{仮想}} – d \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

実際の運動では、この \(\Delta x\) の部分が壁で跳ね返されます。
反発係数が \(e\) であるため、跳ね返った後の実際の距離 \(x\) は、仮想的な距離 \(\Delta x\) の \(e\) 倍になります。
$$
\begin{aligned}
x &= e \cdot \Delta x \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 等速直線運動の変位: \(x = vt\)
計算過程

式⑤を式⑥に代入し、\(L_{\text{仮想}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
L_{\text{仮想}} &= v_0 \sqrt{\frac{2h}{g}}
\end{aligned}
$$

これを式⑦に代入し、\(\Delta x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= v_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – d
\end{aligned}
$$

これを式⑧に代入し、距離 \(x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x &= e \left( v_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – d \right)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

壁がない透明な世界を想像します。ボールはそのまま飛んでいき、遠くの床に落ちます。
その「透明な世界での落下点」が、壁からどれくらい奥にあるかを計算します。
実際のボールは壁で跳ね返るので、その「奥にあるはずだった距離」が手前側に折り返されます。
ただし、壁にぶつかると勢いが \(e\) 倍に減ってしまうので、折り返される距離も \(e\) 倍に縮みます。

結論と吟味

メイン解法と全く同じ結果が得られました。
時間を分割して計算する手間が省け、「壁がなかったらどうなるか」という全体像から一気に答えを導き出せるため、非常に見通しの良い解法です。

解答 時間 \(t\): \(\displaystyle \sqrt{\frac{2h}{g}}\), 距離 \(x\): \(\displaystyle e \left( v_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – d \right)\)

 

別解: 微積分を用いた体系的解法

思考の道筋とポイント
ニュートンの運動方程式から出発し、速度と位置を時間の関数として導出します。
壁との衝突時刻 \(t_1\) を境にして、水平方向の速度関数が不連続に変化する(\(v_0 \rightarrow -ev_0\))ことを数式で表現します。
この区分的に定義された速度関数を積分することで、衝突後の位置を厳密に求めます。

この設問における重要なポイント

  • 運動方程式の立式: 飛行中の物体には、鉛直下向きの重力 \(mg\) のみが働きます。
  • 区分的な積分: 衝突時刻 \(t_1\) を境界として、積分区間を分けて計算します。

具体的な解説と立式
投射点を原点 \((0, 0)\) とし、水平右向き(壁に向かう向き)を \(x\) 軸、鉛直下向きを \(y\) 軸とします。
物体の質量を \(m\) とします。
飛行中の運動方程式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
m a_x &= 0 \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
m a_y &= mg \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$

初期条件(\(t=0\))は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
v_x(0) &= v_0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v_y(0) &= 0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
x(0) &= 0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
y(0) &= 0
\end{aligned}
$$

壁の位置は \(x = d\) です。壁に衝突する時刻を \(t_1\) とします。
衝突直後(\(t = t_1 + 0\))の水平速度は、反発係数 \(e\) より \(-ev_0\) となります。
床の位置は \(y = h\) です。床に到達する時刻を \(t\) とします。
求める距離 \(x\) は、壁の位置 \(d\) から最終的な水平位置 \(x(t)\) を引いた値、すなわち \(d – x(t)\) となります。

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 速度と位置の定義: \(v = \frac{dx}{dt}\), \(a = \frac{dv}{dt}\)
計算過程

式⑩より \(a_y = g\) です。これを積分し、初期条件を用いて \(y\) 方向の運動を求めます。
$$
\begin{aligned}
v_y(t) &= \int g dt \\[2.0ex]
&= gt + C_1
\end{aligned}
$$
\(v_y(0) = 0\) より \(C_1 = 0\)。
$$
\begin{aligned}
v_y(t) &= gt
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
y(t) &= \int gt dt \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}gt^2 + C_2
\end{aligned}
$$
\(y(0) = 0\) より \(C_2 = 0\)。
$$
\begin{aligned}
y(t) &= \frac{1}{2}gt^2
\end{aligned}
$$
床に到達する時刻 \(t\) は \(y(t) = h\) より求まります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}gt^2 &= h \\[2.0ex]
t^2 &= \frac{2h}{g} \\[2.0ex]
t &= \sqrt{\frac{2h}{g}}
\end{aligned}
$$

次に \(x\) 方向の運動を求めます。式⑨より \(a_x = 0\) です。
衝突前(\(0 \le t \le t_1\))の速度は \(v_x(t) = v_0\) です。
位置 \(x(t)\) はこれを積分して求まります。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= \int v_0 dt \\[2.0ex]
&= v_0 t + C_3
\end{aligned}
$$
\(x(0) = 0\) より \(C_3 = 0\)。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= v_0 t \quad (0 \le t \le t_1)
\end{aligned}
$$
衝突時刻 \(t_1\) は \(x(t_1) = d\) より求まります。
$$
\begin{aligned}
v_0 t_1 &= d \\[2.0ex]
t_1 &= \frac{d}{v_0}
\end{aligned}
$$

衝突後(\(t_1 < t \le t\))の速度は \(v_x(t) = -ev_0\) です。
位置 \(x(t)\) はこれを積分して求まります。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= \int (-ev_0) dt \\[2.0ex]
&= -ev_0 t + C_4
\end{aligned}
$$
境界条件として、\(t = t_1\) のとき \(x(t_1) = d\) であることを用いて積分定数 \(C_4\) を決定します。
$$
\begin{aligned}
-ev_0 t_1 + C_4 &= d \\[2.0ex]
C_4 &= d + ev_0 t_1
\end{aligned}
$$
ここで \(t_1 = d/v_0\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
C_4 &= d + ev_0 \left( \frac{d}{v_0} \right) \\[2.0ex]
&= d + ed
\end{aligned}
$$
したがって、衝突後の位置関数は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= -ev_0 t + d + ed
\end{aligned}
$$

床に到達した時刻 \(t = \sqrt{2h/g}\) における水平位置 \(x(t)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= -ev_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} + d + ed
\end{aligned}
$$

求める距離 \(x\) は、壁の位置 \(d\) からの距離なので、\(d – x(t)\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
x &= d – \left( -ev_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} + d + ed \right) \\[2.0ex]
&= d + ev_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – d – ed \\[2.0ex]
&= ev_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – ed \\[2.0ex]
&= e \left( v_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – d \right)
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ボールの横方向の動きを、時間を追って数式で表しました。
最初はスピード \(v_0\) で進みますが、壁にぶつかった瞬間からスピードが \(-ev_0\)(逆向きに \(e\) 倍)に切り替わります。
この「途中でルールが変わる」動きを、積分を使って正確に繋ぎ合わせました。
最後に、ボールが床に落ちた瞬間の横の位置を計算し、それが壁からどれくらい離れているかを引き算で求めました。

結論と吟味

原理的なアプローチからも、全く同じ結果が得られました。
衝突という不連続な現象を、積分定数を適切に決定することで数学的に矛盾なく処理できることが確認できました。

解答 時間 \(t\): \(\displaystyle \sqrt{\frac{2h}{g}}\), 距離 \(x\): \(\displaystyle e \left( v_0 \sqrt{\frac{2h}{g}} – d \right)\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動の独立性(水平方向と鉛直方向の分離)
    • 核心: 水平投射された物体の運動は、水平方向の「等速直線運動」と鉛直方向の「自由落下運動」に完全に分けて考えることができます。
    • 理解のポイント:
      • 重力は鉛直方向にしか働かないため、水平方向の速度成分は壁に衝突するまで一定に保たれます。
      • 飛行時間(床に達するまでの時間)は、鉛直方向の運動(高さ \(h\) からの自由落下)だけで決まります。
  • 滑らかな壁との衝突と反発係数
    • 核心: 摩擦のない滑らかな鉛直な壁との衝突では、壁に平行な方向(鉛直方向)の速度成分は変化せず、壁に垂直な方向(水平方向)の速度成分のみが反発係数 \(e\) 倍になって跳ね返ります。
    • 理解のポイント:
      • 衝突の前後で、鉛直方向の自由落下運動は全く影響を受けずに継続します。
      • 水平方向の速度は、衝突の瞬間に向きが反転し、大きさが \(ev_0\) になります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 斜方投射と壁の衝突: 初速度が斜め上向き(斜方投射)であっても、考え方は全く同じです。鉛直方向は「鉛直投げ上げ運動」として時間を計算し、水平方向は壁との衝突で速度が \(-e\) 倍になるとして距離を計算します。
    • 2枚の壁の間でのバウンド: 左右に壁がある部屋の中でボールを投げる問題では、壁にぶつかるたびに水平速度が \(e\) 倍、\(e^2\) 倍…と減衰していく等比数列の考え方を適用します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「滑らかな」というキーワード: 壁や床が「滑らか」とあれば、それに平行な方向の速度成分は衝突によって変化しない(保存される)と即座に判断します。
    2. 時間の分割: 全飛行時間 \(t\) を求め、次に壁にぶつかるまでの時間 \(t_1\) を求め、最後に「衝突後の残り時間 \((t – t_1)\)」で何が起こるかを考える、という3ステップで状況を整理します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 鉛直方向の速度まで \(e\) 倍にしてしまう:
    • 誤解: 「衝突すると速さが \(e\) 倍になる」と丸暗記していると、壁との衝突時に鉛直方向の落下速度まで \(e\) 倍にしてしまう。
    • 対策: 反発係数 \(e\) が適用されるのは、あくまで「面に対して垂直な方向の相対速度」だけです。鉛直な壁との衝突では、鉛直方向の速度は絶対に変化しないことを強く意識しましょう。
  • 距離の引き算の順序間違い:
    • 誤解: 衝突後の移動距離を求める際、\(ev_0(t – t_1)\) とすべきところを、\(ev_0 t – d\) のように間違った時間や距離を使って計算してしまう。
    • 対策: 「衝突後の新しい速度 \(ev_0\) で移動できる時間は、全時間 \(t\) から衝突までの時間 \(t_1\) を引いた残り時間だけである」という物理的なストーリーを言葉で確認してから立式しましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 時間を分割して計算する解法(メイン解法):
    • 選定理由: 運動を「衝突前」と「衝突後」に明確に分け、それぞれの区間で等速直線運動の公式 \(x=vt\) を適用する、最も基本的で汎用性の高いアプローチであるため。
    • 適用根拠: 水平方向には力が働かず、衝突の瞬間を除いて常に等速直線運動をしているため。
  • 鏡像法(折り返し)を用いた解法(別解1):
    • 選定理由: 時間 \(t_1\) を求める手間を省き、「壁がなかった場合の仮想的な到達距離」から一気に答えを導き出せるため、計算ミスを減らし、直感的な理解を深めることができるため。
    • 適用根拠: 衝突による速度の反転と減衰(\(e\) 倍)は、空間的な軌道の折り返しと縮小として幾何学的に完全に等価に扱えるため。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
    • 意識: 最終的な答えの単位が、求められている物理量の単位と一致しているかを確認します。
    • 実践: 時間 \(t = \sqrt{2h/g}\) は \(\sqrt{\text{m} / (\text{m}/\text{s}^2)} = \sqrt{\text{s}^2} = \text{s}\) となり時間の次元です。距離 \(x = e(v_0\sqrt{2h/g} – d)\) は、\(v_0 t\) が \((\text{m}/\text{s}) \cdot \text{s} = \text{m}\)、\(d\) も \(\text{m}\) なので、全体として長さの次元を持ち、妥当であることが確認できます。
  • 極限的なケースでの検算:
    • 意識: 得られた式が、極端な条件下でも物理的な常識と一致するかをテストします。
    • 実践: もし壁までの距離 \(d\) が、壁がない場合の飛距離 \(v_0\sqrt{2h/g}\) とちょうど等しい場合、ボールは床と壁の角に同時にぶつかるはずです。このとき式に代入すると \(x = e(d – d) = 0\) となり、壁からの距離が \(0\)(壁の根元に落ちる)という直感と一致します。
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問題13 新幹線と車の相対速度

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 車Aを抜き去るまでの時間の別解1: 地面を基準とした座標系を用いた解法
      • 模範解答が相対速度を用いて1つの物体が静止しているかのように扱うのに対し、別解1では地面に対する絶対的な位置を時間の関数として表し、位置が一致する時刻を方程式から導きます。
    • 別解2: 微積分を用いた体系的解法(一括解説)
      • 公式を暗記して適用するのではなく、速度の定義(位置の時間微分)から出発して各物体の位置関数を積分により厳密に導出し、交差条件から両方の設問の答えを一括して導き出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 絶対座標を用いた解法: 相対速度の概念が直感的に掴みにくい場合でも、それぞれの物体が実際にどれだけ進んだかを図示して方程式を立てることで、確実かつ論理的に解くことができます。
    • 微積分の解法: 「相対速度の公式」がなぜ成り立つのかを数学的な背景から理解でき、加速度が変化するようなより複雑な運動への応用力が養われます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「相対速度と等速直線運動」です。異なる速度で動く複数の物体の位置関係を、一方の物体を基準とした視点(相対速度)から分析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 単位の換算: 物理の計算では単位を統一することが必須です。時速(\(\text{km}/\text{h}\))を秒速(\(\text{m}/\text{s}\))に変換してから計算を行います。
  • 相対速度: 観測者Aから見た物体Bの速度 \(v_{AB}\) は、\(v_{AB} = v_B – v_A\) で定義されます。同じ向きに進む場合は速さの差、逆向きに進む場合は速さの和として直感的に捉えることができます。
  • 等速直線運動: 速度が一定の運動では、移動距離は「速さ \(\times\) 時間」で表されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  • 車Aを抜き去るまでの時間では、新幹線と車Aが同じ向きに進んでいることに着目し、相対速度の大きさを求めてから、新幹線の全長分を移動する時間を計算します。
  • 車Bとすれ違う時間では、新幹線と車Bが逆向きに進んでいることに着目し、相対速度の大きさを求めてから、同様に時間を計算します。

車Aを抜き去るまでの時間

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