「物理のエッセンス(熱・電磁気・原子)」徹底解説(電磁気91〜95問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

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電磁気範囲 91~95

91 電場中の荷電粒子の運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法(時間\(t\)を媒介変数として運動方程式を解く方法)を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 別解: 軌跡の式を直接用いる解法
      • 主たる解法が、粒子が終点に到達する「時刻」を計算し、その時刻から初速を逆算するのに対し、別解ではまず粒子の運動の軌跡そのものを表す \(y(x)\) の関係式を導出し、その軌跡が終点を通過するという空間的な条件から初速を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 荷電粒子の運動が放物線軌道を描くことを数式レベルで明確に理解でき、重力下での物体の運動との類似性をより強く認識できます。
    • 思考の柔軟性向上: 時間を媒介変数として考える方法と、時間を消去して空間的な軌跡そのもので考える方法という、2つの異なる視点から問題にアプローチする経験が得られます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「一様な電場中での斜方投射」です。重力場における物体の斜方投射と全く同じ物理モデルで解析できる、力学の知識が応用される典型的な問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 運動の分解: 荷電粒子の運動を、電場に平行な方向と垂直な方向に分解して考えること。
    • 電場に垂直な方向(\(x\)軸方向): 力が働かないため、等速直線運動。
    • 電場に平行な方向(\(y\)軸方向): 一定の静電気力を受けるため、等加速度直線運動。
  2. 一様な電場の性質: 平行平板コンデンサーの内部には、強さ \(E=V/d\) の一様な電場が形成されること。
  3. 運動方程式: 荷電粒子が受ける静電気力 \(F=qE\) を求め、運動方程式 \(ma=F\) を立てて加速度を計算できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 粒子の運動を\(x\)方向と\(y\)方向に分解し、それぞれの運動を記述する式を立てます。
  2. 粒子が点Oから点Aまで移動するのにかかる時間を \(t\) とします。
  3. \(x\)方向の移動距離が \(l\)、\(y\)方向の変位が \(0\) であることから、\(t\) と \(v_0\) に関する2つの連立方程式を立てます。
  4. この連立方程式から時間 \(t\) を消去し、初速 \(v_0\) を求めます。

Aを通り抜けるための初速 \(v_0\)

思考の道筋とポイント
この問題は、力学における「斜方投射された物体が、水平距離 \(l\) だけ離れた同じ高さの地点に戻ってくるための初速」を求める問題と全く同じ構造をしています。
粒子は\(x\)方向に一定の速さで進みながら、\(y\)方向には電場から下向きの力を受けて、上昇した後に下降する放物運動をします。
求める条件は、「粒子が\(x\)方向に距離 \(l\) だけ進んだとき、ちょうど\(y\)方向の変位が \(0\) になっている」ことです。この条件を、\(x\)方向の運動の式と\(y\)方向の運動の式を連立させることで解いていきます。
この設問における重要なポイント

  • 運動の分解: \(x\)方向は等速直線運動、\(y\)方向は初速 \(v_0 \sin 45^\circ\) の等加速度直線運動として扱う。
  • \(y\)方向の加速度: 粒子(電荷 \(+q\))が受ける静電気力 \(F=qE\) と運動方程式 \(ma=F\) から求める。電場の向きに注意して加速度の符号を決定する。
  • 終点Aの座標: \(x=l, y=0\)。

具体的な解説と立式
座標軸を、小穴Oを原点とし、水平右向きに\(x\)軸、鉛直上向きに\(y\)軸をとります。
初速度 \(v_0\) の\(x\)成分、\(y\)成分はそれぞれ、
$$
\begin{aligned}
v_{0x} &= v_0 \cos 45^\circ
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v_{0y} &= v_0 \sin 45^\circ
\end{aligned}
$$
となります。

\(y\)方向の運動(等加速度直線運動):

極板間の電場の強さ \(E\) は \(E = V/d\) で、向きは\(y\)軸負方向です。
粒子(電荷 \(+q\))が受ける静電気力 \(F_y\) は、
$$
\begin{aligned}
F_y &= q(-E) \\[2.0ex]
&= -q\frac{V}{d}
\end{aligned}
$$
となり、向きは\(y\)軸負方向です。
粒子の質量を \(m\) とすると、\(y\)方向の運動方程式は \(ma_y = F_y\) なので、加速度 \(a_y\) は、
$$
\begin{aligned}
a_y &= \frac{F_y}{m} \\[2.0ex]
&= -\frac{qV}{md}
\end{aligned}
$$
となります。時刻 \(t\) における\(y\)座標は、
$$
\begin{aligned}
y(t) &= v_{0y} t + \frac{1}{2}a_y t^2 \\[2.0ex]
&= (v_0 \sin 45^\circ) t – \frac{1}{2}\frac{qV}{md}t^2
\end{aligned}
$$

\(x\)方向の運動(等速直線運動):

\(x\)方向には力が働かないため、粒子は初速 \(v_{0x}\) のまま等速直線運動をします。時刻 \(t\) における\(x\)座標は、
$$
\begin{aligned}
x(t) &= v_{0x} t \\[2.0ex]
&= (v_0 \cos 45^\circ) t
\end{aligned}
$$

Aを通り抜ける条件:

粒子が点A(\(x=l, y=0\))を通り抜ける時刻を \(t_A\) とすると、以下の2式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
l &= (v_0 \cos 45^\circ) t_A \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
0 &= (v_0 \sin 45^\circ) t_A – \frac{1}{2} \frac{qV}{md} t_A^2 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
この2つの式から \(t_A\) を消去して \(v_0\) を求めます。

使用した物理公式

  • 等速直線運動: \(x = v_x t\)
  • 等加速度直線運動: \(y = v_{0y} t + \displaystyle\frac{1}{2}at^2\)
  • 運動方程式: \(ma=F\)
  • 静電気力: \(F=qE\)
  • 一様な電場の強さ: \(E=V/d\)
計算過程

まず、②式を解きます。\(t_A \neq 0\) なので、両辺を \(t_A\) で割ることができます。
$$
\begin{aligned}
0 &= v_0 \sin 45^\circ – \frac{1}{2} \frac{qV}{md} t_A \\[2.0ex]
\frac{1}{2} \frac{qV}{md} t_A &= v_0 \sin 45^\circ \\[2.0ex]
t_A &= \frac{2md v_0 \sin 45^\circ}{qV}
\end{aligned}
$$
次に、この \(t_A\) を①式に代入します。
$$
\begin{aligned}
l &= (v_0 \cos 45^\circ) \left( \frac{2md v_0 \sin 45^\circ}{qV} \right) \\[2.0ex]
l &= \frac{2md v_0^2 \cos 45^\circ \sin 45^\circ}{qV}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\cos 45^\circ = \sin 45^\circ = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{2md v_0^2 (\frac{1}{\sqrt{2}})(\frac{1}{\sqrt{2}})}{qV} \\[2.0ex]
l &= \frac{2md v_0^2 (\frac{1}{2})}{qV} \\[2.0ex]
l &= \frac{md v_0^2}{qV}
\end{aligned}
$$
この式を \(v_0\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
v_0^2 &= \frac{qVl}{md} \\[2.0ex]
v_0 &= \sqrt{\frac{qVl}{md}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ボールを45°の角度で投げ上げて、ちょうど \(l\) メートル先にいるキャッチャーのグラブに、投げたのと同じ高さでストンと収まるための初速を求める問題です。ボールは重力で下に引っ張られますが、この問題の粒子は電場で下に引っ張られます。
水平方向には一定の速さで飛び、垂直方向には上がって下がる運動をします。
「\(l\) メートル飛ぶのにかかる時間」と「元の高さに戻ってくるまでの時間」がちょうど同じになるような、絶妙な初速 \(v_0\) を計算で求めているのです。

結論と吟味

初速 \(v_0\) は \(\sqrt{\displaystyle\frac{qVl}{md}}\) と求められました。
この式が物理的に妥当か吟味してみましょう。

  • 遠くまで飛ばす必要がある(\(l\) が大きい)ほど、大きな \(v_0\) が必要 \(\rightarrow\) 妥当。
  • 下向きの力が強い(\(q, V\) が大きい、または \(d\) が小さい)ほど、高く打ち上げるために大きな \(v_0\) が必要 \(\rightarrow\) 妥当。
  • 粒子が重い(\(m\) が大きい)ほど、同じ初速でも高く上がらないため、より大きな \(v_0\) が必要 \(\rightarrow\) 妥当。

導出された式は物理的な直感と一致しており、正しい結果であると確認できます。

解答 \(\sqrt{\displaystyle\frac{qVl}{md}}\)
別解: 軌跡の式を直接用いる解法

思考の道筋とポイント
主たる解法が時間 \(t\) を媒介変数として考えたのに対し、この別解ではまず粒子の運動の軌跡を表す \(y(x)\) の関係式を導出します。その軌跡が、点A(\(l, 0\))を通過するという空間的な条件から、初速 \(v_0\) を直接求めます。
この設問における重要なポイント

  • 時間 \(t\) を \(t=x/v_{0x}\) で消去することで、軌跡の式が得られる。
  • 軌跡の式は \(y = Ax – Bx^2\) の形になり、放物線を描くことがわかる。

具体的な解説と立式
主たる解法と同様に、時刻 \(t\) における粒子の座標は、
$$
\begin{aligned}
x(t) &= (v_0 \cos 45^\circ) t \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
y(t) &= (v_0 \sin 45^\circ) t – \frac{1}{2}a t^2 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
と表せます。ここで \(a = \displaystyle\frac{qV}{md}\) は加速度の大きさです。
①式から \(t = \displaystyle\frac{x}{v_0 \cos 45^\circ}\) として、これを②式に代入することで、時間 \(t\) を消去し、軌跡の式 \(y(x)\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
y(x) &= (v_0 \sin 45^\circ) \left( \frac{x}{v_0 \cos 45^\circ} \right) – \frac{1}{2}a \left( \frac{x}{v_0 \cos 45^\circ} \right)^2 \\[2.0ex]
&= (\tan 45^\circ) x – \frac{a}{2v_0^2 \cos^2 45^\circ} x^2
\end{aligned}
$$
この軌跡が点A(\(x=l, y=0\))を通過することが条件です。

使用した物理公式

  • (主たる解法と同じ)
計算過程

軌跡の式に \(x=l, y=0\) を代入します。また、\(\tan 45^\circ = 1\), \(\cos 45^\circ = 1/\sqrt{2}\) を用います。
$$
\begin{aligned}
0 &= (1) \cdot l – \frac{a}{2v_0^2 (1/\sqrt{2})^2} l^2 \\[2.0ex]
0 &= l – \frac{a}{2v_0^2 (1/2)} l^2 \\[2.0ex]
0 &= l – \frac{a l^2}{v_0^2}
\end{aligned}
$$
\(l \neq 0\) なので、両辺を \(l\) で割ることができます。
$$
\begin{aligned}
0 &= 1 – \frac{al}{v_0^2} \\[2.0ex]
\frac{al}{v_0^2} &= 1 \\[2.0ex]
v_0^2 &= al
\end{aligned}
$$
この式に加速度の大きさ \(a = \displaystyle\frac{qV}{md}\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
v_0^2 &= \frac{qV}{md} l \\[2.0ex]
v_0 &= \sqrt{\frac{qVl}{md}}
\end{aligned}
$$
が得られます。

この設問の平易な説明

この解き方は、粒子の進む道筋(軌跡)を、数学の放物線のグラフの式として先に求めてしまう方法です。
まず、粒子の軌道が \(y = x – (\text{定数}) \times x^2\) という形の、下に凸の放物線になることを計算で示します。
次に、この放物線のグラフが、ちょうど点(\(l, 0\))を通過するような「定数」の値、すなわち初速 \(v_0\) を逆算します。結果は、主たる解法と当然同じになります。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果が得られました。このアプローチは、運動を時間軸から切り離し、空間的な軌道そのものとして捉える視点を提供します。力学の斜方投射で軌跡の式を学ぶのは、このように時間によらない条件を扱う際に便利だからです。

解答 \(\sqrt{\displaystyle\frac{qVl}{md}}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 運動の独立性(重ね合わせの原理)の斜方投射への応用:
    • 核心: この問題の根幹は、前問90と同様に「運動の独立性」ですが、今回は初速度が\(y\)成分を持つ「斜方投射」である点が異なります。\(x\)方向の等速直線運動と、\(y\)方向の(初速度ありの)等加速度直線運動という2つの独立した運動を正しく立式し、それらを連立させて解くことが核心となります。
    • 理解のポイント:
      • \(x\)方向(等速直線運動): 水平方向には力が働かないため、速度は常に \(v_{0x} = v_0 \cos 45^\circ\) で一定です。水平距離 \(l\) を進むのにかかる時間は、この運動だけで決まります (\(t = l/v_{0x}\))。
      • \(y\)方向(等加速度直線運動): 鉛直方向には、上向きの初速度 \(v_{0y} = v_0 \sin 45^\circ\) と、下向きの一定の加速度 \(a_y\) が存在します。この運動は、まるで真上にボールを投げ上げたときの運動と同じです。
      • 時間 \(t\) の共有: \(x\)方向の運動と\(y\)方向の運動は、時間 \(t\) という共通のパラメータで結びついています。\(x\)方向に \(l\) 進むのと、\(y\)方向に運動して元の高さに戻ってくるのが、全く同じ時刻に起こる、という条件が問題を解く鍵です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 最高点に関する問題: 「粒子の軌道の最高点の\(y\)座標を求めよ」といった問題。\(y\)方向の運動に着目し、速度がゼロになる条件 (\(v_y = v_{0y} + a_y t = 0\)) から、最高点に達する時間や高さを計算します。
    • 上の極板に衝突する条件: 「初速\(v_0\)がどのような範囲にあれば、粒子は上の極板に衝突するか」といった問題。最高点の\(y\)座標が \(d\) より大きいという条件から求められます。
    • 入射角・出射角が異なる問題: 入射角が45°以外の場合や、出射する点Aの\(y\)座標が0でない場合など。基本的な運動方程式は同じですが、代入する数値や条件式が変わります。
    • 重力との比較: 「電場による加速度と重力加速度のどちらが大きいか」を比較させる問題や、両方を同時に考慮させる問題。通常、ミクロな素粒子の世界では電場による力は重力に比べて圧倒的に大きいため、重力は無視できることが多いです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 運動の種類を判断: 荷電粒子が力を受ける向きと初速度の向きの関係から、運動の種類を判断します。初速度が力と垂直なら「水平投射型」、斜めなら「斜方投射型」となります。
    2. 座標軸と初速度の分解: 運動を解析しやすいように座標軸を設定し(通常は初速度の始点を原点)、初速度ベクトルを\(x\)成分と\(y\)成分に分解します。
    3. 加速度の計算: 粒子が受ける力の向きと大きさを計算し、運動方程式から加速度ベクトル(の成分)を求めます。特に、座標軸の向きと力の向きを照らし合わせ、加速度の符号を間違えないように注意します。
    4. \(x, y\)の運動方程式を立式: \(x\)方向と\(y\)方向それぞれについて、等速直線運動または等加速度直線運動の公式を用いて、位置と時間の関係式を立てます。
    5. 終点の条件を代入: 粒子が通過する点の座標(この問題では \(x=l, y=0\))を、(4)で立てた式に代入し、連立方程式を解きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 加速度の向き(符号)のミス:
    • 誤解: 加速度の式を立てる際に、力の向きを考慮せず、常に正として計算してしまう。
    • 対策: 座標軸の向きを最初に明確に定義することが重要です。この問題では、\(y\)軸を上向きに設定した場合、電場による力は下向きに働くため、加速度 \(a_y\) は負の値 (\(a_y = -qV/md\)) となります。運動方程式を立てる際には、必ず力の向きと座標軸の向きを確認し、符号を正しく反映させる癖をつけましょう。
  • 三角関数の計算ミス:
    • 誤解: \(\cos 45^\circ\) や \(\sin 45^\circ\) の値を間違える、あるいは計算の途中で混同してしまう。
    • 対策: \(45^\circ\) の場合は \(\cos\) と \(\sin\) の値が同じ (\(1/\sqrt{2}\)) なので間違いにくいですが、\(30^\circ\) や \(60^\circ\) の場合は注意が必要です。基本的な三角比の値を正確に覚えておくことが不可欠です。また、計算過程で \(\cos 45^\circ \sin 45^\circ = (1/\sqrt{2})^2 = 1/2\) のように、単純化できる部分は早めに計算すると、式がすっきりしてミスが減ります。
  • 連立方程式の処理ミス:
    • 誤解: 2つの式から時間\(t\)を消去する際に、計算を間違える。
    • 対策:
      1. まず、より簡単な式(この場合は\(x\)方向の式)から \(t\) について解く (\(t = \dots\))。
      2. 次に、それをもう一方の複雑な式に代入する。
      3. 代入した後は、求めたい変数(この場合は\(v_0\))について、焦らず丁寧に式を整理する。

      この手順を確実に踏むことが重要です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 運動の分解と各方向の運動法則:
    • 選定理由: 前問と同様、2次元の放物運動を、単純な1次元の運動(等速直線運動と等加速度直線運動)の組み合わせとして扱うための、力学における最も基本的かつ強力なアプローチです。
    • 適用根拠: 重ね合わせの原理に基づいています。\(x\)方向の運動と\(y\)方向の運動は、共通の時間\(t\)で進行しますが、互いに干渉することなく独立して記述できます。したがって、それぞれの方向に最も基本的な運動法則(等速直線運動の式、等加速度直線運動の式)を適用することが正当化されます。
  • 軌跡の式(別解):
    • 選定理由: 運動の時間的な経過ではなく、空間的な経路そのものに関心がある場合に有効なアプローチです。特に、「ある点を通過する」という条件は、その点の座標を軌跡の式に代入するだけで済むため、非常に見通しが良くなります。
    • 適用根拠: 時間\(t\)を媒介変数として消去するという数学的な操作に基づいています。物理的には、時間という情報を捨てて、空間内での位置関係だけに注目した表現方法と言えます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 三角関数の積の処理: 計算過程で \(v_0^2 \cos 45^\circ \sin 45^\circ\) という項が出てきます。ここで、2倍角の公式 \( \sin(2\theta) = 2\sin\theta\cos\theta \) を思い出すと、\(\cos 45^\circ \sin 45^\circ = \displaystyle\frac{1}{2}\sin 90^\circ = \frac{1}{2}\) と、よりスマートに計算することもできます。
  • 単位や次元の確認(ディメンションチェック): 最終的に得られた答え \(v_0 = \sqrt{\displaystyle\frac{qVl}{md}}\) の次元が、速度の次元 [m/s] になっているかを確認するのも良い検算方法です。
    • \(qV\) はエネルギーの次元 [\(\text{kg} \cdot \text{m}^2/\text{s}^2\)]。
    • \(l\) は長さの次元 [m]。
    • \(m\) は質量の次元 [kg]。
    • \(d\) は長さの次元 [m]。
    • ルートの中身は \(\displaystyle\frac{[\text{kg} \cdot \text{m}^2/\text{s}^2] \cdot [\text{m}]}{[\text{kg}] \cdot [\text{m}]} = [\text{m}^2/\text{s}^2]\)。
    • その平方根なので、次元は [m/s] となり、確かに速度の次元と一致します。
  • 物理的な意味からの検算: 答えの式を見て、各物理量を大きくしたり小さくしたりした場合に、\(v_0\) がどう変化するかを考え、それが直感と一致するかを確認します(結論と吟味の項で実施済み)。これは、式の形が正しいかどうかを判断する上で非常に有効です。

92 電場による荷電粒子の加速・減速

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されているエネルギー保存則(仕事とエネルギーの関係)を用いる解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 別解: 運動方程式と等加速度直線運動の公式を用いる力学的解法
      • 主たる解法が、電位差とエネルギーの関係から直接速さを求めるのに対し、別解ではまず電場から力を、次に運動方程式から加速度を求め、等加速度直線運動の公式を用いて速さを導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: エネルギーというスカラー量で考える視点と、力や加速度というベクトル量で考える力学的な視点の両方からアプローチすることで、物理現象への理解が多角的になります。
    • 思考の柔軟性向上: 電位(エネルギー)と電場(力)という、電磁気学における2つの重要な概念が、最終的に同じ結果を導くことを確認でき、思考の幅が広がります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「一様な電場による荷電粒子の加速」です。電位差のある空間で、静止した荷電粒子が静電気力を受けて加速される、という最も基本的な状況設定の問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 仕事と運動エネルギーの関係(またはエネルギー保存則): 荷電粒子が電場からされた仕事の分だけ、その運動エネルギーが増加するという関係を理解していること。
  2. 静電気力がする仕事: 電荷\(q\)の粒子が電位差\(V\)の区間を移動するときにされる仕事が \(W=qV\) と計算できること。
  3. (別解用) 運動方程式と等加速度直線運動の公式: 電場から受ける力をもとに加速度を計算し、力学の公式を用いて速度を求めることができること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 静電気力が電子にした仕事が、電子の運動エネルギーの増加分に等しい、という「仕事とエネルギーの関係」を立式します。
  2. 初速度が\(0\)であること、および電子がされた仕事の量を電圧\(V\)を用いて表現し、最終的な速さ\(v\)を求めます。

Bに達したときの電子の速さ

思考の道筋とポイント
この問題は、エネルギーの観点から解くのが最も簡潔で本質的です。
電子は、電位差\(V\)によって作られる電場から力を受け、仕事をされます。非保存力である外力や摩擦力は働かないため、この「静電気力がした仕事」が、そのまま電子の「運動エネルギーの増加分」に変換されます。
このエネルギーの変換関係を数式で表現し、求めたい速さ\(v\)について解く、という流れになります。
この設問における重要なポイント

  • 仕事と運動エネルギーの関係: \((\text{後の運動エネルギー}) – (\text{前の運動エネルギー}) = (\text{された仕事})\)。
  • 静電気力が電荷\(q\)の粒子にする仕事: \(W = q \times (\text{始点と終点の電位差})\)。
  • 電子の電荷は\(-e\) (\(e\)は電気素量で正の値)。
  • 電子は電位が低いA点から電位が高いB点へ移動するので、された仕事は正の値になる。

具体的な解説と立式
電子の質量を\(m\)、電気素量を\(e\) (\(e>0\))とします。したがって、電子の電荷は\(-e\)です。
電子は、初速\(v_0=0\)で極板Aを出発し、速さ\(v\)で極板Bに到達します。
この間の運動エネルギーの変化量 \(\Delta K\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta K &= \frac{1}{2}mv^2 – \frac{1}{2}m(0)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}mv^2
\end{aligned}
$$
一方、電子は電位の低い極板Aから、電位が\(V\)だけ高い極板Bへと移動します。このとき、静電気力が電子にする仕事\(W\)は、
$$
\begin{aligned}
W &= (\text{電荷}) \times (\text{始点} – \text{終点}) \text{の電位} \\[2.0ex]
&= (-e) \times (V_A – V_B)
\end{aligned}
$$
ここで、\(V_B – V_A = V\) なので、\(V_A – V_B = -V\) となります。したがって、
$$
\begin{aligned}
W &= (-e)(-V) \\[2.0ex]
&= eV
\end{aligned}
$$
仕事と運動エネルギーの関係 \(W = \Delta K\) より、
$$
\begin{aligned}
eV &= \frac{1}{2}mv^2
\end{aligned}
$$
この式を\(v\)について解くことで、速さを求めます。

使用した物理公式

  • 仕事と運動エネルギーの関係: \(W = \Delta K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2 – \frac{1}{2}mv_0^2\)
  • 静電気力がする仕事: \(W = qV\)
計算過程

立式した \(eV = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) の両辺に\(2/m\)を掛けます。
$$
\begin{aligned}
v^2 &= \frac{2eV}{m}
\end{aligned}
$$
\(v>0\)なので、両辺の正の平方根をとると、
$$
\begin{aligned}
v &= \sqrt{\frac{2eV}{m}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電子はマイナスの電気を持っているので、プラスの極板Bに引き寄せられます。この引き寄せられる力によって、電子はどんどん加速していきます。
このとき、電場が電子にした「仕事」の分だけ、電子の「運動エネルギー」が増えます。
電圧\(V\)の電場が、電気量\(e\)の粒子にする仕事は\(eV\)と計算できます。
スタート時の運動エネルギーはゼロなので、この仕事\(eV\)が、ゴール地点での運動エネルギー\(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)にまるまる変わった、というエネルギーの保存則のような式を立てて、速さ\(v\)を求めます。

結論と吟味

電子の速さは \(v = \sqrt{\displaystyle\frac{2eV}{m}}\) と求められました。
この結果は、加速電圧\(V\)が大きいほど、また粒子の質量\(m\)が小さいほど、最終的な速さが大きくなることを示しており、物理的に妥当です。この関係式は、電子銃や粒子加速器の基本原理を表す、電磁気学において非常に重要な式の一つです。

解答 \(\sqrt{\displaystyle\frac{2eV}{m}}\)
別解: 運動方程式と等加速度直線運動の公式を用いる力学的解法

思考の道筋とポイント
エネルギーの代わりに、力学の基本に立ち返って解くアプローチです。まず、電子が受ける「力」を計算し、運動方程式から「加速度」を求めます。電子の運動は等加速度直線運動になるため、力学の公式を用いて最終的な速さを計算します。
この設問における重要なポイント

  • 電子が受ける力の大きさ: \(F=eE\)。
  • 一様な電場の強さ: \(E=V/d\) (dは極板間距離)。
  • 運動方程式: \(ma=F\)。
  • 等加速度直線運動の公式: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)。

具体的な解説と立式
極板間の距離を\(d\)とします。極板間には、強さ\(E = V/d\)の一様な電場が、BからAの向き(図では左向き)に生じています。
電子(電荷\(-e\))は、電場と逆向き、すなわちAからBの向き(図では右向き)に、大きさ\(F\)の静電気力を受けます。
$$
\begin{aligned}
F &= |-e|E \\[2.0ex]
&= eE \\[2.0ex]
&= e\frac{V}{d}
\end{aligned}
$$
運動方程式 \(ma=F\) より、電子の加速度\(a\)は、
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{F}{m} \\[2.0ex]
&= \frac{eV}{md}
\end{aligned}
$$
となります。
電子は、この一定の加速度\(a\)で、初速\(v_0=0\)で距離\(d\)だけ進みます。このときの最終的な速さ\(v\)を、等加速度直線運動の公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を用いて求めます。

使用した物理公式

  • 運動方程式: \(ma=F\)
  • 静電気力: \(F=eE\)
  • 一様な電場: \(E=V/d\)
  • 等加速度直線運動の公式: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
計算過程

公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) に、\(v_0=0\), \(x=d\), \(a = \displaystyle\frac{eV}{md}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v^2 – 0^2 &= 2 \left( \frac{eV}{md} \right) d \\[2.0ex]
v^2 &= \frac{2eV}{m}
\end{aligned}
$$
\(v>0\)なので、両辺の正の平方根をとると、
$$
\begin{aligned}
v &= \sqrt{\frac{2eV}{m}}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

まず、電子を引っ張る「力」の大きさを計算します。次に、運動方程式(ニュートンの第2法則)を使って、その力によって電子にどれくらいの「加速度」が生じるかを計算します。
あとは、高校の力学で習った等加速度直線運動の公式を使えば、一定の加速度で距離\(d\)だけ加速された電子が、ゴール地点Bに到達したときの速さを求めることができます。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ結果が得られました。このことは、エネルギーを用いたアプローチと、力と加速度を用いた力学的なアプローチが、同じ物理現象を矛盾なく説明することを示しています。エネルギーを用いた解法では、途中の距離\(d\)や加速度\(a\)を具体的に計算する必要がなく、より簡潔に解にたどり着けることがわかります。

解答 \(\sqrt{\displaystyle\frac{2eV}{m}}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 仕事と運動エネルギーの関係(エネルギー保存則):
    • 核心: この問題の根幹は、保存力である静電気力が荷電粒子にする仕事が、そのまま粒子の運動エネルギーに変換されるという、エネルギー保存の考え方を適用することです。
    • 理解のポイント:
      • 仕事の主体: 電場(電位差)が電子に仕事をする。
      • 仕事の量: 電荷 \(q\) が電位差 \(V\) を移動するとき、される仕事は \(W=qV\)。電子の場合、電荷は \(-e\) で、電位が \(V\) 高くなる場所へ移動するので、される仕事は \(W=(-e)(-V)=eV\) となります。「電位の坂を転がり落ちる」イメージで、位置エネルギー \(eV\) が運動エネルギーに変わると考えても同じです。
      • エネルギーの変換: された仕事 \(eV\) が、すべて運動エネルギーの増加 \(\Delta K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2 – 0\) に等しくなります。
      • 結論: \(eV = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) という、途中の経路や時間、加速度などを一切考慮しない、始点と終点の状態だけで成り立つ非常に強力な関係式が導かれます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 初速がある場合: 電子が初速 \(v_0\) を持って入射する場合。仕事とエネルギーの関係は \(eV = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2 – \frac{1}{2}mv_0^2\) となります。
    • 減速される場合: 電場の向きが逆で、電子が減速される場合。電位差 \(V\) の電場に逆らって運動すると、運動エネルギーが \(eV\) だけ減少します。もし初めの運動エネルギーが \(eV\) より小さい場合、電子は途中で押し戻されます。
    • 異なる荷電粒子: 電子ではなく、陽子(電荷 \(+e\))やα粒子(電荷 \(+2e\))を加速させる問題。基本的な考え方は同じですが、電荷 \(q\) と質量 \(m\) にそれぞれの粒子の値を用いる必要があります。
    • 電子ボルト(eV)の単位: この問題の結果 \(K=eV\) は、エネルギーの単位「電子ボルト」の定義そのものです。「1Vの電位差で電子を加速したときに得るエネルギーが1eV」です。この単位を使ったエネルギー計算問題に応用されます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 始点と終点の状態を把握: 粒子の初速と、加速(または減速)される区間の電位差 \(V\) を確認します。
    2. エネルギー変化を考える: 粒子が電場から仕事を「される」のか(加速)、あるいは「する」のか(減速)を判断します。正電荷なら電位が下がる向き、負電荷なら電位が上がる向きに力を受けて加速されます。
    3. エネルギー保存則(仕事とエネルギーの関係)を立式: 「運動エネルギーの変化 = 静電気力がした仕事」という関係式を立てます。(\(\Delta K = qV\))
    4. 未知数について解く: 立てた式を、求めたい物理量(速さ \(v\) や運動エネルギー \(K\) など)について解きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 電荷の符号の扱い:
    • 誤解: 電子の電荷を \(+e\) としてしまい、仕事の符号などを間違える。
    • 対策: 電子の電荷は \(-e\) であることを常に意識します。仕事の計算 \(W=qV\) では、\(q=-e\) と、電位差 \(V\) の符号(電位が上がったか下がったか)の両方を正しく考慮する必要があります。ただし、最終的にエネルギーが増える(加速される)ことは明らかなので、大きさだけに着目して \(|W|=|qV|=eV\) と計算し、それが運動エネルギーの増加分に等しい、と考えるのが最もシンプルで間違いが少ないです。
  • 電圧 \(V\) と速さ \(v\) の混同:
    • 誤解: 式を立てたり変形したりする際に、大文字の \(V\)(電圧)と小文字の \(v\)(速さ)を混同して書き間違えてしまう。
    • 対策: 物理量を書く際には、意識して明確に書き分ける癖をつけましょう。特に、\(v^2\) のように添字が付くと形が似てくるため注意が必要です。
  • エネルギーの公式の混同:
    • 誤解: 運動エネルギーを \(\displaystyle\frac{1}{2}mv\) や \(mv^2\) と間違える。静電気力による位置エネルギーを \(qE\)(これは力)や \(qEd\) と混同する。
    • 対策: 基本的な公式は正確に暗記することが大前提です。特に、エネルギーの次元を持つのは \(qV\) や \(qEd\) であり、力の次元を持つのは \(qE\) である、という次元の違いを意識すると混同しにくくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 仕事とエネルギーの関係 (\(eV = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)):
    • 選定理由: この問題は、始状態(速さ0)と終状態(速さv)の関係を問うており、途中の時間や加速度といった過程は問われていません。このような「過程を問わないビフォーアフター問題」に対しては、エネルギー保存則や仕事とエネルギーの関係が最も強力かつ簡潔な解法を与えてくれます。
    • 適用根拠: この関係式は、運動方程式 \(ma=F\) を積分することによって導出されます。運動方程式 \(m\displaystyle\frac{dv}{dt} = F\) の両辺に \(v = \displaystyle\frac{dx}{dt}\) を掛けて \(m v \displaystyle\frac{dv}{dt} = F \frac{dx}{dt}\) とし、時間で積分すると \(\int mv dv = \int F dx\) となります。左辺は運動エネルギーの変化 \(\Delta(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2)\)、右辺は仕事 \(W\) を表し、\(W=\Delta K\) が導かれます。つまり、この公式は運動方程式と等価であり、それをエネルギーという別の視点から表現したものに他なりません。
  • 運動方程式と等加速度直線運動の公式(別解):
    • 選定理由: エネルギーの考え方が思い浮かばない場合や、力学的なアプローチに慣れている場合に有効な、もう一つの基本的な解法です。問題の状況が「一定の力による直線運動」であるため、高校力学で最も習熟しているであろう等加速度直線運動の公式が直接適用できます。
    • 適用根拠: 運動の基本法則である運動方程式 \(ma=F\) と、それを積分した結果である等加速度直線運動の公式に基づいています。エネルギー保存則が積分形の法則であるのに対し、こちらは微分形の法則から出発するアプローチと言えます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の変形: \(eV = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) から \(v\) を求める計算は、物理の問題で頻出する基本的な変形です。
    1. まず \(v^2\) について解く: \(v^2 = \displaystyle\frac{2eV}{m}\)
    2. 次に平方根をとる: \(v = \sqrt{\displaystyle\frac{2eV}{m}}\)

    この2ステップをスムーズかつ正確に行えるように練習しておきましょう。

  • ルートの扱い: 答えが平方根を含む場合、ルートの中のどの文字が分子でどれが分母かを明確に書くことが重要です。分数の横線はルートの屋根の下にしっかり収まるように書きましょう。
  • 物理的な意味の確認: 最終的な答え \(v = \sqrt{\displaystyle\frac{2eV}{m}}\) を見て、「電圧\(V\)を4倍にしたら、速さ\(v\)は何倍になるか?」と考えてみます。\(v\)は\(\sqrt{V}\)に比例するので、速さは\(\sqrt{4}=2\)倍になります。このように、具体的な数値を想定して比例関係を確認する練習は、式の意味を深く理解するのに役立ちます。
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93 電場による荷電粒子の加速・減速

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されているエネルギー保存則(仕事とエネルギーの関係)を用いる解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 別解: 運動方程式と等加速度直線運動の公式を用いる力学的解法
      • 主たる解法が、電位差とエネルギーの関係から直接速さを求めるのに対し、別解ではまず電場から力を、次に運動方程式から加速度を求め、等加速度直線運動の公式を用いて速さを導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: エネルギーというスカラー量で考える視点と、力や加速度というベクトル量で考える力学的な視点の両方からアプローチすることで、物理現象への理解が多角的になります。
    • 思考の柔軟性向上: 電位(エネルギー)と電場(力)という、電磁気学における2つの重要な概念が、最終的に同じ結果を導くことを確認でき、思考の幅が広がります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「一様な電場による荷電粒子の減速」です。初速を持って電場に進入した荷電粒子が、静電気力を受けて減速される状況を、エネルギーの観点から解析する問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 仕事と運動エネルギーの関係(またはエネルギー保存則): 荷電粒子が電場からされた仕事(この場合は負の仕事)の分だけ、その運動エネルギーが減少するという関係を理解していること。
  2. 静電気力がする仕事: 電荷\(q\)の粒子が電位差\(V\)の区間を移動するときにされる仕事が \(W=qV\) と計算できること。
  3. (別解用) 運動方程式と等加速度直線運動の公式: 電場から受ける力をもとに加速度を計算し、力学の公式を用いて速度を求めることができること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 電子の運動エネルギーの減少分が、電場に逆らってした仕事(静電気力による位置エネルギーの増加分)に等しい、というエネルギー保存則を立式します。
  2. 初速が\(v_0\)、終速が\(0\)であるという条件を代入し、電圧\(V\)を求めます。

極板Bで電子の速さを0にするための電圧 \(V\)

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