「物理のエッセンス(熱・電磁気・原子)」徹底解説(電磁気86〜90問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

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電磁気範囲 86~90

86 交流のまとめ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「変圧器の動作原理」です。交流電圧を自在に高くしたり低くしたりできる変圧器の基本的な関係式が、なぜ成り立つのかを物理法則に基づいて説明する問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ファラデーの電磁誘導の法則: コイルを貫く磁束が時間変化すると、その変化率と巻数に比例した誘導起電力が生じる (\(V = -N \displaystyle\frac{d\phi}{dt}\))。
  2. 自己誘導と相互誘導: 1次コイルに交流電流を流すと、時間変化する磁束が発生し(自己誘導)、その磁束が鉄心を通じて2次コイルに伝わることで、2次コイルにも誘導起電力が生じる(相互誘導)。
  3. 鉄心の役割: 1次コイルで発生した磁束を、外部に漏らすことなく効率的に2次コイルに伝える。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 1次コイルに交流電圧\(V_1\)がかかっている状況を、ファラデーの電磁誘導の法則を用いて数式で表現します。
  2. 2次コイルに生じる誘導起電力\(V_2\)を、同様にファラデーの電磁誘導の法則を用いて数式で表現します。
  3. 問題の仮定「鉄心を通る磁束は同じ」を使い、両方の式に共通の磁束変化率が含まれることを利用して、2つの式から電圧比と巻数比の関係を導きます。

変圧器の電圧比と巻数比の関係が成り立つ理由

思考の道筋とポイント
この問題は、変圧器の公式 \(\displaystyle\frac{V_1}{V_2} = \frac{N_1}{N_2}\) を、電磁気学の根本原理である「ファラデーの電磁誘導の法則」から導出するプロセスを説明するものです。
ポイントは、1次コイルと2次コイルが、鉄心という共通の媒体を通じて「同じ磁束の変化」を経験することです。

  1. まず、1次コイルに交流電圧\(V_1\)をかけると、コイルには時間的に変化する電流が流れ、それによって時間的に変化する磁束\(\phi\)が鉄心の中に発生します。このとき、1次コイル自身にも逆起電力が生じ、理想的にはこれが電源電圧\(V_1\)とつり合っています。この関係をファラデーの法則で表します。
  2. 次に、鉄心によって運ばれた磁束の変化は、そのまま2次コイルを貫きます。2次コイルもこの磁束の変化を感じ取り、ファラデーの法則に従って誘導起電力\(V_2\)を発生させます。
  3. 1次コイルと2次コイルでは、1巻きあたりのコイルを貫く磁束の変化率 \(\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\) が全く同じです。したがって、各コイルに生じる電圧は、純粋にそのコイルの「巻数」だけで決まることになります。この比例関係から、電圧比が巻数比に等しいという結論が導かれます。

この設問における重要なポイント

  • 基本法則はファラデーの電磁誘導の法則 (\(V = -N \displaystyle\frac{d\phi}{dt}\)) である。
  • 鉄心の働きにより、1次コイルと2次コイルを貫く1巻きあたりの磁束\(\phi\)が等しい。
  • 交流電圧をかけるため、磁束\(\phi\)は時間的に変化し、その変化率 \(\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\) も両コイルで等しい。
  • 各コイルに生じる誘導起電力は、この共通の変化率 \(\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\) と、それぞれの巻数 \(N_1, N_2\) の積で決まる。

具体的な解説と立式
理想的な変圧器を考えます。1次コイルに交流電圧\(V_1\)をかけると、自己誘導によって逆起電力が生じ、これが電源電圧とつりあいます。1次コイルを貫く磁束を\(\phi\)、巻数を\(N_1\)とすると、ファラデーの電磁誘導の法則より、
$$
\begin{aligned}
V_1 &= -N_1 \frac{d\phi}{dt}
\end{aligned}
$$
が成り立ちます。

この時間変化する磁束\(\phi\)は、鉄心を通って2次コイルに伝わります。問題の仮定より、2次コイルを貫く磁束も同じ\(\phi\)です。これにより、巻数\(N_2\)の2次コイルには誘導起電力\(V_2\)が発生します。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= -N_2 \frac{d\phi}{dt}
\end{aligned}
$$
ここで、\(V_1, V_2\) は電圧の大きさ(実効値や最大値)を表すので、両式の絶対値をとって比を計算します。
$$
\begin{aligned}
|V_1| &= N_1 \left| \frac{d\phi}{dt} \right| \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
|V_2| &= N_2 \left| \frac{d\phi}{dt} \right| \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
①式を②式で割ると、共通項である磁束の時間変化率 \(\left| \displaystyle\frac{d\phi}{dt} \right|\) が消去されます。

使用した物理公式

  • ファラデーの電磁誘導の法則: \(V = -N \displaystyle\frac{d\phi}{dt}\)
計算過程

①式 \(\div\) ②式より、
$$
\begin{aligned}
\frac{|V_1|}{|V_2|} &= \frac{N_1 \left| \frac{d\phi}{dt} \right|}{N_2 \left| \frac{d\phi}{dt} \right|} \\[2.0ex]
\frac{V_1}{V_2} &= \frac{N_1}{N_2}
\end{aligned}
$$
(電圧の大きさを考えているので、絶対値記号は省略)

この設問の平易な説明

変圧器は、1次コイルと2次コイルが1つの鉄心を共有しています。
1次コイルに交流電圧をかけると、鉄心の中に時間と共に変化する「磁気の波」が発生します。この磁気の波は、鉄心というレールの上を伝わって、2次コイルにも全く同じように伝わります。
ファラデーの法則によれば、コイルは「磁気の波の変化の激しさ」に応じて電圧を発生させます。1巻きのコイルが発生させる電圧は、この波が同じなので、1次側でも2次側でも同じです。
したがって、コイル全体の電圧は、単純に巻数に比例することになります。例えば、2次コイルの巻数が1次コイルの半分なら、発生する電圧も半分になる、というわけです。

結論と吟味

導出された関係式 \(\displaystyle\frac{V_1}{V_2} = \frac{N_1}{N_2}\) は、変圧器の基本原理を示しています。この式により、コイルの巻数比を調整するだけで、交流電圧を自由に昇圧・降圧できることがわかります。これは、前問で学んだ高電圧送電を実現するための根幹技術であり、現代の電力システムに不可欠なものです。
理由を60字以内でまとめると、以下のようになります。

解答 ファラデーの電磁誘導の法則より、両コイルを貫く磁束の時間変化率が同じで、誘導起電力が巻数に比例するから。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ファラデーの電磁誘導の法則と鉄心の役割:
    • 核心: この問題の根幹は、変圧器の動作原理が「ファラデーの電磁誘導の法則」という単一の物理法則で説明できることを理解する点にあります。そして、その法則を1次コイルと2次コイルに適用する上で、「鉄心によって1巻きあたりの磁束の変化が共有される」という理想的な状況設定が決定的な役割を果たします。
    • 理解のポイント:
      • 原因(1次側): 1次コイルにかけられた交流電圧 \(V_1\) が、自己誘導によって時間変化する磁束 \(\phi(t)\) を鉄心内に生み出します。この関係は \(V_1 \approx N_1 \displaystyle\frac{d\phi}{dt}\) と表せます。
      • 伝達(鉄心): 鉄心は、この磁束 \(\phi(t)\) を漏らすことなく、そのまま2次コイルへと導きます。これにより、2次コイルの1巻きあたりを貫く磁束の変化率も、1次側と全く同じ \(\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\) となります。
      • 結果(2次側): 2次コイルは、共通の磁束変化 \(\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\) を感じ取り、相互誘導によって電圧 \(V_2\) を発生させます。この関係は \(V_2 = N_2 \displaystyle\frac{d\phi}{dt}\) と表せます。
      • 結論: \(V_1\) も \(V_2\) も、共通の \(\displaystyle\frac{d\phi}{dt}\) に、それぞれの巻数を掛けたものにすぎません。したがって、電圧の比は単純に巻数の比と等しくなります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 電流と巻数比の関係: 理想的な変圧器ではエネルギーは保存されるため、1次側の電力と2次側の電力は等しくなります (\(P_1 = P_2\))。電力は \(P=VI\) なので、\(V_1 I_1 = V_2 I_2\) が成り立ちます。これと電圧比の公式を組み合わせると、電流と巻数比の関係 \(\displaystyle\frac{I_1}{I_2} = \frac{N_2}{N_1}\) が導かれます。電圧を上げると電流は下がり、電圧を下げると電流は上がるという、反比例の関係になります。
    • インピーダンス整合: 2次側に抵抗 \(R\) を接続した場合、1次側から見ると、回路にはあたかも \(R’ = (\displaystyle\frac{N_1}{N_2})^2 R\) という異なる大きさの抵抗が接続されているように見えます。この性質を利用して、回路間で効率よくエネルギーを伝達させる「インピーダンス整合」という技術に応用されます。
    • 直流電圧をかけた場合: 変圧器の1次側に直流電圧をかけるとどうなるか、という問題。直流では電流が一定なので磁束が時間変化しません (\(\displaystyle\frac{d\phi}{dt}=0\))。そのため、2次側には誘導起電力が発生せず、電圧は \(0\) V となります。変圧器が交流専用である理由を問う問題です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「変圧器」というキーワード: この言葉が出てきたら、電圧比と巻数比の公式 \(\displaystyle\frac{V_1}{V_2} = \frac{N_1}{N_2}\) と、電流比と巻数比の公式 \(\displaystyle\frac{I_1}{I_2} = \frac{N_2}{N_1}\) をすぐに連想します。
    2. 共通の物理量を探す: 変圧器の原理を説明する際には、「何が1次側と2次側で共通なのか?」を考えます。それが「1巻きあたりの磁束(およびその時間変化)」です。
    3. 基本法則に立ち返る: なぜ電圧が発生するのか、という根源的な問いに答えるには、必ず「ファラデーの電磁誘導の法則」に言及する必要があります。
    4. 理想的な条件を確認する: 問題文に「鉄心を通る磁束は同じ」「エネルギー損失は無視できる」といった、理想的な変圧器としての仮定があるかを確認します。これらの仮定があるからこそ、単純な比例式が成り立ちます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 電圧と電流の関係の混同:
    • 誤解: 電圧が巻数に比例する (\(V \propto N\)) のだから、電流も比例するだろうと勘違いし、\(\displaystyle\frac{I_1}{I_2} = \frac{N_1}{N_2}\) という間違った式を立ててしまう。
    • 対策: エネルギー保存則 (\(P_1=P_2\)) を常に念頭に置きます。\(V_1 I_1 = V_2 I_2\) という関係から、電圧比と電流比は逆数の関係になることを導き出す癖をつけましょう。「電圧を上げると(昇圧)、その分だけ電流は小さくなる」と物理的なイメージで覚えるのも有効です。
  • ファラデーの法則のマイナス符号の解釈:
    • 誤解: \(V_1 = -N_1 \displaystyle\frac{d\phi}{dt}\) のマイナス符号の意味が分からず、説明が混乱する。
    • 対策: このマイナス符号はレンツの法則を表し、誘導起電力が磁束の変化を「妨げる」向きに生じることを示しています。1次側では、この起電力が電源電圧とつりあう「逆起電力」として働きます。しかし、変圧器の電圧比を考える上では、電圧の「大きさ」の関係が重要なので、絶対値をとって \(|V| = N |\displaystyle\frac{d\phi}{dt}|\) として考えれば十分です。
  • 説明問題でのキーワード不足:
    • 誤解: 「巻数が多いと電圧が高いから」のように、結論だけを述べて理由を説明したつもりになってしまう。
    • 対策: 説明問題では、結論に至る論理的な連鎖を示すことが重要です。この問題では、「(1) ファラデーの電磁誘導の法則により」「(2) 磁束の時間変化が共通で」「(3) 誘導起電力が巻数に比例する」という3つのキーワードが不可欠です。これらの要素を因果関係でつなげて文章を構成する練習をしましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • ファラデーの電磁誘導の法則 \(V = -N \displaystyle\frac{d\phi}{dt}\):
    • 選定理由: この問題は「なぜ電圧が発生し、その大きさがどう決まるのか」という、電磁誘導現象の根源を問うています。この問いに直接答えることができる唯一の基本法則が、ファラデーの電磁誘導の法則です。
    • 適用根拠: これは実験的に確立された電磁気学の基本法則です。変圧器は、この法則を巧みに利用した装置であり、その動作原理を説明する上で避けて通ることはできません。1次コイル(自己誘導)と2次コイル(相互誘導)の両方の現象が、この単一の法則によって統一的に説明されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • この問題は計算問題ではありませんが、論理を数式で表現する能力が問われます。
  • 因果関係を矢印で整理する:
    • \(V_1\)印加 \(\rightarrow\) \(I_1\)が流れる \(\rightarrow\) 磁束\(\phi(t)\)が発生 \(\rightarrow\) 鉄心で\(\phi(t)\)が伝達 \(\rightarrow\) 2次コイルで\(\phi(t)\)を感じる \(\rightarrow\) \(V_2\)が発生
    • この流れを数式で表現すると:
    • \(V_1 \propto N_1 \displaystyle\frac{d\phi}{dt}\)
    • \(V_2 \propto N_2 \displaystyle\frac{d\phi}{dt}\)
    • \(\rightarrow \displaystyle\frac{V_1}{V_2} = \frac{N_1}{N_2}\)

    このように、物理現象の因果関係と数式の対応を意識することで、論理的な説明が組み立てやすくなります。

  • 簡潔な言葉を選ぶ: 記述問題では、物理用語を正確に使いつつ、冗長な表現を避けることが求められます。「磁束の時間変化率が同じ」といったキーフレーズを効果的に使う練習をしましょう。

87 電気振動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されているエネルギー保存則を用いる解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 電流が \(\displaystyle\frac{1}{2}I_0\) のときのコイルの電圧の別解: 電気振動の一般式を用いる解法
      • 模範解答がエネルギーの保存関係から電圧を求めるのに対し、別解では電気振動における電圧と電流がそれぞれ単振動(余弦・正弦関数)で表されることを利用し、三角関数の関係式から電圧を導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: LC回路の電気振動が、力学における単振動と数学的に全く同じ構造を持つことを明確に理解できます。エネルギー保存則と単振動の運動方程式が等価な内容を表していることへの洞察が深まります。
    • 思考の柔軟性向上: エネルギーという「状態量」からアプローチする方法と、時間変化を記述する「関数」からアプローチする方法の両方を学ぶことで、問題解決の選択肢が広がります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「LC回路の電気振動におけるエネルギー保存」です。EX問題で設定された、コンデンサーに蓄えられた静電エネルギーとコイルに蓄えられる磁気エネルギーが相互に変換される過程(電気振動)において、特定の瞬間のコイルの電圧を求める問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. キルヒホッフの第2法則(電圧則): 抵抗のないLC閉回路では、任意の時刻でコンデンサーの電圧とコイルの電圧の和はゼロである。すなわち、両者の電圧の大きさは常に等しい。
  2. コイルの性質: スイッチを入れた直後、コイルは電流の変化を妨げるため、電流はゼロである(電流の連続性)。
  3. LC回路におけるエネルギー保存則: 回路に抵抗がないため、静電エネルギーと磁気エネルギーの和は常に一定に保たれる。
  4. 電流の最大値\(I_0\): コンデンサーの静電エネルギーがすべてコイルの磁気エネルギーに変換されたときの電流値であり、\(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}LI_0^2\) の関係を満たす。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 「スイッチを閉じた直後」については、キルヒホッフの第2法則と、その瞬間のコンデンサーの電圧を考えることで、コイルの電圧を求めます。
  2. 「電流が\(\displaystyle\frac{1}{2}I_0\)のとき」については、LC回路のエネルギー保存則を立式し、その瞬間のコンデンサーのエネルギーを計算することで、コンデンサーの電圧、ひいてはコイルの電圧を求めます。

スイッチを閉じた直後のコイルの電圧

思考の道筋とポイント
コイルの電圧 \(V_L\) は、自己インダクタンス \(L\) と電流の時間変化率 \(\displaystyle\frac{dI}{dt}\) を用いて \(V_L = -L\displaystyle\frac{dI}{dt}\) と表されますが、この問題では \(\displaystyle\frac{dI}{dt}\) が未知です。
しかし、この回路はコイルとコンデンサーが直接接続されただけの単純な閉回路です。したがって、キルヒホッフの第2法則を適用すれば、コイルの電圧とコンデンサーの電圧の関係がわかります。
スイッチを閉じた直後のコンデンサーの電圧は、充電された初期電圧 \(V\) そのものであることを利用します。
この設問における重要なポイント

  • LC閉回路では、常にコイルの電圧の大きさとコンデンサーの電圧の大きさは等しい (\(|V_L| = |V_C|\))。
  • スイッチを閉じる直前、コンデンサーは電圧 \(V\) で充電されている。
  • コンデンサーの電圧(蓄えられた電荷)は瞬時に変化できないため、スイッチを閉じた直後のコンデンサーの電圧も \(V\) である。

具体的な解説と立式
コイルとコンデンサーからなる閉回路に、キルヒホッフの第2法則を適用すると、コイルの電圧 \(V_L\) とコンデンサーの電圧 \(V_C\) の間には、
$$
\begin{aligned}
V_L + V_C &= 0
\end{aligned}
$$
という関係が常に成り立ちます。これは、両者の電圧の大きさ(|V_L|と|V_C|)が常に等しいことを意味します。
$$
\begin{aligned}
|V_L| &= |V_C|
\end{aligned}
$$
スイッチを閉じた直後 (\(t=0\))、コンデンサーはまだ放電を開始しておらず、その電圧は初期電圧 \(V\) のままです。
$$
\begin{aligned}
|V_C|_{t=0} &= V
\end{aligned}
$$
したがって、この瞬間のコイルの電圧の大きさも \(V\) となります。

使用した物理公式

  • キルヒホッフの第2法則: \(V_L + V_C = 0\)
計算過程

上記立式より、計算は不要です。

この設問の平易な説明

スイッチを入れた瞬間、回路は「電圧\(V\)を持つコンデンサー」と「コイル」が向かい合っている状態です。このとき、電流はまだ流れ始めていません。コンデンサーが持つ電圧 \(V\) が、そのまま向かいにいるコイルの両端にかかることになります。したがって、コイルの電圧は \(V\) です。

結論と吟味

スイッチを閉じた直後は、電流は \(0\) ですが、その変化率は最大となり、コイルには最大の電圧 \(V\) が発生します。これはコイルの「電流の変化を妨げようとする」性質をよく表しており、物理的に妥当な結果です。

解答 スイッチを閉じた直後: \(V\)

電流が \(\displaystyle\frac{1}{2}I_0\) のときのコイルの電圧

思考の道筋とポイント
この問も、コイルの電圧を直接求めるのではなく、キルヒホッフの法則 (\(|V_L| = |V_C|\)) を利用して、コンデンサーの電圧を求める方針で解きます。
任意の時刻におけるコンデンサーの電圧を求めるには、エネルギー保存則が極めて有効です。回路全体のエネルギー(初期状態のコンデンサーのエネルギー)が、途中の状態におけるコンデンサーのエネルギーとコイルのエネルギーの和に等しい、という式を立てます。
この設問における重要なポイント

  • LC回路では、(静電エネルギー) + (磁気エネルギー) = 一定。
  • 初期エネルギー(すべて静電エネルギー): \(E_{\text{全}} = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)。
  • 途中のエネルギー: \(E_{\text{全}} = \displaystyle\frac{1}{2}CV_C^2 + \frac{1}{2}LI^2\)。
  • 電流の最大値 \(I_0\) は、\(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}LI_0^2\) の関係から \(LI_0^2 = CV^2\) となることを利用する。

具体的な解説と立式
このLC回路には抵抗がないため、エネルギーは保存されます。スイッチを閉じた直後のエネルギーは、すべてコンデンサーの静電エネルギーとして蓄えられています。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{初期}} &= \frac{1}{2}CV^2
\end{aligned}
$$
電流が \(I\) のときのコンデンサーの電圧を \(V_C\) とすると、そのときの全エネルギーは静電エネルギーと磁気エネルギーの和で表されます。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{途中}} &= \frac{1}{2}CV_C^2 + \frac{1}{2}LI^2
\end{aligned}
$$
エネルギー保存則より \(E_{\text{初期}} = E_{\text{途中}}\) なので、
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2}CV^2 &= \frac{1}{2}CV_C^2 + \frac{1}{2}LI^2
\end{aligned}
$$
この式に、問題の条件である \(I = \displaystyle\frac{1}{2}I_0\) を代入します。

使用した物理公式

  • LC回路のエネルギー保存則: \(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}CV_C^2 + \frac{1}{2}LI^2\)
  • 電流の最大値の関係: \(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}LI_0^2\)
計算過程

エネルギー保存則の式の両辺を2倍します。
$$
\begin{aligned}
CV^2 &= CV_C^2 + LI^2
\end{aligned}
$$
この式に \(I = \displaystyle\frac{1}{2}I_0\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
CV^2 &= CV_C^2 + L\left(\frac{1}{2}I_0\right)^2 \\[2.0ex]
&= CV_C^2 + \frac{1}{4}LI_0^2
\end{aligned}
$$
ここで、電流が最大になるときのエネルギー保存則 \(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}LI_0^2\) より、\(LI_0^2 = CV^2\) の関係が成り立ちます。これを上式に代入すると、
$$
\begin{aligned}
CV^2 &= CV_C^2 + \frac{1}{4}(CV^2) \\[2.0ex]
CV_C^2 &= CV^2 – \frac{1}{4}CV^2 \\[2.0ex]
CV_C^2 &= \frac{3}{4}CV^2 \\[2.0ex]
V_C^2 &= \frac{3}{4}V^2
\end{aligned}
$$
電圧の大きさは正なので、
$$
\begin{aligned}
V_C &= \sqrt{\frac{3}{4}V^2} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{3}}{2}V
\end{aligned}
$$
キルヒホッフの法則より、コイルの電圧の大きさはコンデンサーの電圧の大きさに等しいので、求めるコイルの電圧は \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}V\) となります。

この設問の平易な説明

この回路は、エネルギーの総量が常に一定のシーソーのようなものです。最初はコンデンサーがエネルギーを100%持っています。電流が流れると、コンデンサーのエネルギーが減って、その分コイルのエネルギーが増えます。
電流が最大値の半分 (\(I_0/2\)) のとき、コイルが持つエネルギーは、最大エネルギーの \((\displaystyle\frac{1}{2})^2 = \frac{1}{4}\) になります。
全体のエネルギーは100%で一定なので、残りの \(1 – \displaystyle\frac{1}{4} = \frac{3}{4}\) はコンデンサーが持っているはずです。
コンデンサーのエネルギーは電圧の2乗に比例するので、エネルギーが \(\displaystyle\frac{3}{4}\) 倍なら、電圧は \(\sqrt{3/4} = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\) 倍になります。コイルの電圧もこれと同じ大きさです。

結論と吟味

電流が0から最大値に向かう途中なので、コイル(およびコンデンサー)の電圧は初期値\(V\)から0に向かって減少しているはずです。\(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2} \approx 0.866\) なので、\(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}V\) は \(V\) より小さい値であり、物理的に妥当な結果です。

解答 電流が \(\displaystyle\frac{1}{2}I_0\) のとき: \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}V\)
別解: 電気振動の一般式を用いる解法(電流が \(\displaystyle\frac{1}{2}I_0\) のとき)

思考の道筋とポイント
LC回路の電気振動は単振動であり、コンデンサーの電圧と回路を流れる電流は、初期条件に合わせて余弦関数と正弦関数で表すことができます。この2つの関数の間には常に \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\) の関係が成り立つことを利用して、特定の電流値に対応する電圧値を代数的に求めます。
この設問における重要なポイント

  • \(t=0\)でコンデンサーの電圧が最大(\(V\))、電流がゼロ(\(0\))なので、電圧と電流の瞬時値は以下のように表せる。
    • コンデンサーの電圧: \(v_C(t) = V \cos(\omega t)\)
    • 回路の電流: \(i(t) = I_0 \sin(\omega t)\) (ただし \(\omega = 1/\sqrt{LC}\))
  • 三角関数の基本的な関係式 \(\sin^2(\omega t) + \cos^2(\omega t) = 1\) を利用する。

具体的な解説と立式
LC回路におけるコンデンサーの電圧 \(v_C\) と電流 \(i\) は、
$$
\begin{aligned}
v_C &= V \cos(\omega t)
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
i &= I_0 \sin(\omega t)
\end{aligned}
$$
と表せます。これらの式から、
$$
\begin{aligned}
\frac{v_C}{V} &= \cos(\omega t)
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\frac{i}{I_0} &= \sin(\omega t)
\end{aligned}
$$
となります。三角関数の公式 \(\cos^2(\omega t) + \sin^2(\omega t) = 1\) にこれらを代入すると、
$$
\begin{aligned}
\left(\frac{v_C}{V}\right)^2 + \left(\frac{i}{I_0}\right)^2 &= 1
\end{aligned}
$$
という、時刻\(t\)を含まない関係式が得られます。これはエネルギー保存則と等価な式です。
この式に、問題の条件である \(i = \displaystyle\frac{1}{2}I_0\) を代入して、そのときの電圧 \(v_C\) を求めます。

使用した物理公式

  • 単振動の一般式
  • 三角関数の公式: \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\left(\frac{v_C}{V}\right)^2 + \left(\frac{\frac{1}{2}I_0}{I_0}\right)^2 &= 1 \\[2.0ex]
\left(\frac{v_C}{V}\right)^2 + \left(\frac{1}{2}\right)^2 &= 1 \\[2.0ex]
\frac{v_C^2}{V^2} + \frac{1}{4} &= 1 \\[2.0ex]
\frac{v_C^2}{V^2} &= \frac{3}{4} \\[2.0ex]
v_C^2 &= \frac{3}{4}V^2
\end{aligned}
$$
電圧の大きさは正なので、
$$
\begin{aligned}
v_C &= \frac{\sqrt{3}}{2}V
\end{aligned}
$$
コイルの電圧の大きさはコンデンサーの電圧の大きさに等しいので、求める答えは \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}V\) となります。

この設問の平易な説明

電気振動の電流と電圧の変化は、きれいなサインカーブとコサインカーブを描きます。この2つのカーブには「それぞれの最大値で割ったものを2乗して足すと、常に1になる」という美しい関係があります。この関係式を使えば、時刻を気にすることなく、電流の値が分かっているときに、対応する電圧の値を計算することができます。

結論と吟味

エネルギー保存則から導いた主たる解法の結果と完全に一致します。この別解は、電気振動を「単振動」として捉える視点を提供し、エネルギー保存則が三角関数の公式に姿を変えて現れていることを示唆しています。物理現象への理解を深める上で非常に有益なアプローチです。

解答 電流が \(\displaystyle\frac{1}{2}I_0\) のとき: \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}V\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • LC回路におけるエネルギー保存則:
    • 核心: この問題の根幹は、抵抗を含まない理想的なLC回路において、コンデンサーに蓄えられた静電エネルギーとコイルに蓄えられた磁気エネルギーの総和が、常に一定に保たれるという「エネルギー保存則」を理解し、適用することにあります。
    • 理解のポイント:
      • エネルギーの形態変換: この回路では、エネルギーが2つの形態(静電エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) と磁気エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}LI^2\))の間を行き来します。これは、力学における振り子の運動で、位置エネルギーと運動エネルギーが相互に変換されるのと全く同じ現象です。
      • 初期状態: スイッチON直後 (\(t=0\)) は、コンデンサーの電圧が最大(\(V\))で電流がゼロ(\(0\))なので、全エネルギーは静電エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) のみです。これがこの系の保存されるべき総エネルギーとなります。
      • 中間状態: 回路が振動している途中では、エネルギーはコンデンサーとコイルに分散して存在します。その合計は、常に初期エネルギーと等しくなります (\(\displaystyle\frac{1}{2}CV_C^2 + \frac{1}{2}LI^2 = \frac{1}{2}CV^2\))。
      • 電流最大時: 電流が最大値 \(I_0\) になるとき、コンデンサーの電圧はゼロになり、すべてのエネルギーが磁気エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}LI_0^2\) になります。この関係 \(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}LI_0^2\) は、エネルギー保存則から導かれる重要な帰結です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 特定の電圧のときの電流を求める問題: 本問とは逆に、「コンデンサーの電圧が \(\displaystyle\frac{1}{2}V\) になったときの電流はいくらか」といった問題。同じくエネルギー保存則の式に \(V_C = \displaystyle\frac{1}{2}V\) を代入して \(I\) について解くことで求められます。
    • 静電エネルギーと磁気エネルギーが等しくなる瞬間を問う問題: \(\displaystyle\frac{1}{2}CV_C^2 = \frac{1}{2}LI^2\) となる瞬間を考える問題。エネルギー保存則と組み合わせることで、そのときの電圧や電流を求めることができます(\(V_C = V/\sqrt{2}\), \(I = I_0/\sqrt{2}\) となります)。
    • 電気振動の周期を求める問題: 電気振動の角周波数が \(\omega = 1/\sqrt{LC}\) で与えられることから、周期 \(T = 2\pi/\omega = 2\pi\sqrt{LC}\) を計算させる問題。これは力学の単振動における \(T=2\pi\sqrt{m/k}\) と同じ形をしており、\(L\)が質量(慣性)、\(1/C\)がばね定数(復元力)に対応します。
    • RLC回路の減衰振動: 回路に抵抗\(R\)が含まれる場合。エネルギーはジュール熱として消費されていくため、全体のエネルギーは保存されず、振動は時間と共に減衰します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 回路に抵抗がないことを確認: 問題の回路がLとCだけで構成されている(または抵抗が無視できる)ことを確認します。これがエネルギー保存則を適用できる大前提です。
    2. 初期状態のエネルギーを計算: スイッチを入れる直前の状態から、回路全体の初期エネルギーを計算します。通常は、充電されたコンデンサーの静電エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) です。
    3. 問われている瞬間の状態を整理: 問題が問うている瞬間(例: \(I = \displaystyle\frac{1}{2}I_0\) のとき)の、分かっている物理量と未知の物理量を整理します。
    4. エネルギー保存則を立式: 「初期エネルギー = 注目する瞬間の静電エネルギー + 注目する瞬間の磁気エネルギー」という形でエネルギー保存則の式を立てます。
    5. 未知数について解く: 立てた方程式を、求めたい物理量(この問題では\(V_C\))について解きます。必要に応じて、\(LI_0^2 = CV^2\) の関係式を利用して文字を消去します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • スイッチON直後のコイルの電圧を0と考えてしまう:
    • 誤解: スイッチを入れた直後は電流が \(I=0\) なので、オームの法則のような感覚でコイルの電圧も \(0\) だと勘違いしてしまう。
    • 対策: コイルの電圧は \(V_L = -L\displaystyle\frac{dI}{dt}\) で決まり、電流\(I\)そのものではなく、電流の「変化率」に比例することを思い出します。\(t=0\) では電流は \(0\) ですが、これから増えようとする変化率は最大なので、電圧も最大になります。キルヒホッフの法則から、向かいにあるコンデンサーの電圧と等しくなる、と考えるのが最も確実です。
  • エネルギーの式で2乗を忘れる:
    • 誤解: エネルギー保存則を立てる際に、\(\displaystyle\frac{1}{2}CV_C + \frac{1}{2}LI = \text{一定}\) のように、電圧や電流の2乗を忘れてしまう。
    • 対策: エネルギーの公式 \(\displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) と \(\displaystyle\frac{1}{2}LI^2\) を正確に記憶することが基本です。力学の運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) との類似性で覚えると、2乗を忘れにくくなります。
  • \(I = \displaystyle\frac{1}{2}I_0\) のときの磁気エネルギーを \(\displaystyle\frac{1}{2} \times (\text{最大エネルギー})\) と勘違いする:
    • 誤解: 電流が最大値の半分だから、磁気エネルギーも最大値の半分だろうと直感的に考えてしまう。
    • 対策: 磁気エネルギーは電流の「2乗」に比例する (\(\displaystyle\frac{1}{2}LI^2\)) ことを常に意識します。したがって、電流が \(\displaystyle\frac{1}{2}\) 倍になれば、エネルギーは \((\displaystyle\frac{1}{2})^2 = \frac{1}{4}\) 倍になります。この2乗の関係は、単振動における運動エネルギーと速度の関係と同じです。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • キルヒホッフの第2法則 \(V_L + V_C = 0\):
    • 選定理由: 回路内の各素子間の電圧の関係を記述する最も基本的な法則です。特に、スイッチON直後のように、エネルギー保存則を立てるのが難しい(または不要な)場合に、瞬時の電圧関係を直接求めるのに有効です。
    • 適用根拠: 電位の考え方に基づいています。回路を一周して元の点に戻ってくると、電位も元の値に戻るはずです。したがって、回路を一周したときの電位の変化(起電力と電圧降下の総和)はゼロにならなければなりません。
  • エネルギー保存則 \(\displaystyle\frac{1}{2}CV_C^2 + \frac{1}{2}LI^2 = \text{一定}\):
    • 選定理由: 時間が経過した後の、特定の状態(電流や電圧が特定の値をとる瞬間)を解析する場合に非常に強力なツールです。時間\(t\)を陽に含まず、状態量(\(V_C, I\))だけで関係式を立てられるため、微分方程式を解く必要がありません。
    • 適用根拠: この法則は、キルヒホッフの第2法則 \(L\displaystyle\frac{dI}{dt} + \frac{Q}{C} = 0\) の両辺に電流 \(I = \displaystyle\frac{dQ}{dt}\) を掛けて時間で積分することで導出できます。つまり、電圧則(力のつりあい)とエネルギー保存則は、数学的に等価な表現です。抵抗がないため、エネルギーの散逸(ジュール熱)が起こらないことが、この法則が成り立つ根拠です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式の整理を丁寧に行う: エネルギー保存則の式 \(CV^2 = CV_C^2 + \displaystyle\frac{1}{4}LI_0^2\) から \(V_C\) を求める際に、\(LI_0^2 = CV^2\) の代入を正確に行うことが鍵です。
    1. まず、求めたい \(V_C^2\) について式を整理する: \(CV_C^2 = CV^2 – \displaystyle\frac{1}{4}LI_0^2\)
    2. 不要な文字 (\(I_0\)) を消去するために代入する: \(CV_C^2 = CV^2 – \displaystyle\frac{1}{4}(CV^2)\)
    3. 同類項をまとめる: \(CV_C^2 = \displaystyle\frac{3}{4}CV^2\)
    4. 最後に両辺を \(C\) で割り、平方根をとる: \(V_C = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}V\)

    このように、段階的に式を変形することで、計算ミスを防ぎます。

  • 比の考え方を利用する: エネルギーの比から電圧や電流の比を考えるのも有効です。
    • 「磁気エネルギー : 全エネルギー = \(\displaystyle\frac{1}{4} : 1\)」
    • 「静電エネルギー : 全エネルギー = \(\displaystyle\frac{3}{4} : 1\)」
    • 静電エネルギーは電圧の2乗に比例するので、「\(V_C^2 : V^2 = \displaystyle\frac{3}{4} : 1\)」
    • よって、「\(V_C : V = \sqrt{\displaystyle\frac{3}{4}} : 1 = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2} : 1\)」

    この思考法は、計算をより直感的にし、検算にも役立ちます。

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88 電気振動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「LC回路の電気振動の開始条件とエネルギー保存」です。まず、スイッチが閉じられた定常状態を解析し、次にスイッチを切った瞬間に始まる電気振動について、エネルギー保存則を用いて解析する問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 直流定常状態におけるコイルとコンデンサーの振る舞い: 十分に時間が経過した直流回路では、コイルは「導線」、コンデンサーは「断線」とみなせること。また、導線によって素子が「短絡」される現象を理解していること。
  2. コイルの電流連続性: スイッチを切り替える直前と直後で、コイルを流れる電流は大きさと向きを変えないという性質。
  3. LC回路におけるエネルギー保存則: 抵抗がない理想的なLC回路では、静電エネルギーと磁気エネルギーの和は常に一定に保たれること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、「スイッチSが閉じられている」状態、すなわち直流回路の定常状態を考えます。コイルを「導線」とみなすことで、コンデンサーにかかる電圧を求め、電気量を計算します。また、このときのコイルを流れる電流を求めます。
  2. 次に、「Sを切る」瞬間に着目します。コイルの電流連続性から、Sを切った直後にLC閉回路を流れ始める電流の初期値がわかります。
  3. Sを切った後のLC閉回路でエネルギー保存則を立てます。振動開始時の全エネルギー(コイルの磁気エネルギー)が、すべてコンデンサーの静電エネルギーに変換されたとき、コンデンサーの電圧が最大になるという関係式から、その最大値を求めます。

コンデンサーの電気量

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