問題43 電磁誘導 (東京大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 問(1)〜(3)の別解: ビオ・サバールの法則と積分を用いたソレノイド磁場の体系的導出
- 模範解答は公式 \(H=nI\) や対称性、重ね合わせの原理を用いて解いていますが、別解では電磁気学の基礎原理であるビオ・サバールの法則から出発し、積分を用いて軸上の磁場分布の一般式を導出します。その上で、各設問の条件を適用して解を導きます。
- 問(1)〜(3)の別解: ビオ・サバールの法則と積分を用いたソレノイド磁場の体系的導出
- 上記の別解が有益である理由
- 公式 \(H=nI\) が「無限に長いソレノイド」でしか厳密には成り立たないことや、ソレノイドの端点での磁場がなぜ内部の半分になるのかを、数理的な根拠を持って深く理解できるためです。
- ソレノイドの形状や観測点の位置が変わっても対応できる、物理的な応用力を養うためです。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ソレノイドコイルの電流・磁場と電磁誘導・電磁力」です。
回路の接続変更による電流分布の変化、それに伴う磁場の変化、そして過渡現象における誘導電流と導体が受ける力を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- オームの法則と合成抵抗: 回路の接続状態(直列・並列)を見抜き、電流を計算します。
- ソレノイドがつくる磁場: 単位長さあたりの巻数 \(n\)、電流 \(I\) のとき、無限長ソレノイドの内部磁場は \(H = nI\) です。
- 磁場の重ね合わせの原理: 複数の電流源がある場合、それぞれの磁場をベクトルとして合成します。
- レンツの法則: 誘導電流は、磁束の変化を妨げる向きに流れます。
- 電流間に働く力: 平行電流において、同方向は引力、逆方向は斥力が働きます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)〜(3)では、回路図を正確に読み取り、抵抗値と電圧から電流を求めます。次に、コイルの幾何学的条件(巻数密度や長さ)と電流値から磁場の強さを計算します。
- (4)では、スイッチを閉じた瞬間の磁束変化を考え、レンツの法則から誘導電流の向きを決定します。
- (5)では、コイルの電流と誘導電流の相互作用(反発・吸引)から、リングが受ける力の向きを判断します。
問(1)
思考の道筋とポイント
まず、問題文の条件変更を図a(初期状態)と比較しながら整理します。
初期状態では、長さ \(2l\) のコイル全体(抵抗 \(R\))に電圧 \(V_0\) がかかり、電流 \(I_0\) が流れています。
問(1)では「正の端子をB、負の端子をAとCに接続」します。これは、B点が高電位、A点とC点が低電位(接地電位)になることを意味します。
回路的には、コイルの左半分(AB間)と右半分(BC間)が、電源に対して「並列」に接続された状態となります。
この設問における重要なポイント
- 抵抗の分割: コイルは一様に巻かれているため、長さが半分になれば抵抗値も半分になります。
- 電流の向き: 電流は高電位(B)から低電位(AおよびC)へ流れます。つまり、AB間では左向き、BC間では右向きに流れます。
- 磁場の打ち消し: ソレノイドの磁場の向きは電流の向き(右ねじの法則)で決まります。左右で電流の向きが逆になるため、磁場も逆向きになります。
具体的な解説と立式
1. 電流の倍率
コイル全体の抵抗を \(R\) とします。
AB間、BC間の抵抗 \(R_{\text{左}}, R_{\text{右}}\) は、長さが全体の半分なので以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{左}} &= \frac{R}{2} \\[2.0ex]
R_{\text{右}} &= \frac{R}{2}
\end{aligned}
$$
これらが電源 \(V_0\) に対して並列に接続されています。
回路全体の合成抵抗 \(R_{\text{合成}}\) を求める式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{R_{\text{合成}}} &= \frac{1}{R_{\text{左}}} + \frac{1}{R_{\text{右}}}
\end{aligned}
$$
電源から流れる全電流 \(I_1\) は、オームの法則より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
I_1 &= \frac{V_0}{R_{\text{合成}}}
\end{aligned}
$$
初期電流 \(I_0\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
I_0 &= \frac{V_0}{R}
\end{aligned}
$$
2. 磁場の倍率
P点(コイルの中心B点)における磁場を考えます。
右向きを磁場の正の向きとします。
AB部分を流れる電流 \(I_{\text{左}}\) は B \(\to\) A(左向き)に流れます。
BC部分を流れる電流 \(I_{\text{右}}\) は B \(\to\) C(右向き)に流れます。
それぞれの電流の大きさは以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{左}} &= \frac{V_0}{R_{\text{左}}} \\[2.0ex]
I_{\text{右}} &= \frac{V_0}{R_{\text{右}}}
\end{aligned}
$$
ソレノイドがつくる磁場の強さは電流に比例します。
右向き電流が正の磁場、左向き電流が負の磁場をつくるとすると、P点における合成磁場 \(H_P\) は、左半分が作る磁場 \(H_{\text{左コイル}}\) と右半分が作る磁場 \(H_{\text{右コイル}}\) の和になります。
対称性より、電流の大きさが等しければ、それぞれのコイルが端点(P点)につくる磁場の強さ(絶対値)は等しくなります。
$$
\begin{aligned}
H_P &= H_{\text{右コイル}} + H_{\text{左コイル}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則: \(V = RI\)
- 並列抵抗の合成: \(\displaystyle \frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
- ソレノイドの磁場(比例関係): \(H \propto I\)
まず、合成抵抗を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{R_{\text{合成}}} &= \frac{1}{R/2} + \frac{1}{R/2} \\[2.0ex]
&= \frac{2}{R} + \frac{2}{R} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{R}
\end{aligned}
$$
逆数をとって \(R_{\text{合成}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{合成}} &= \frac{R}{4}
\end{aligned}
$$
全電流 \(I_1\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
I_1 &= \frac{V_0}{R/4} \\[2.0ex]
&= \frac{4V_0}{R} \\[2.0ex]
&= 4 \left( \frac{V_0}{R} \right) \\[2.0ex]
&= 4 I_0
\end{aligned}
$$
よって、電流は \(4\) 倍です。
次に、磁場を計算します。
各部分を流れる電流は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{左}} &= \frac{V_0}{R/2} \\[2.0ex]
&= \frac{2V_0}{R} \\[2.0ex]
&= 2I_0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I_{\text{右}} &= \frac{V_0}{R/2} \\[2.0ex]
&= \frac{2V_0}{R} \\[2.0ex]
&= 2I_0
\end{aligned}
$$
大きさは共に \(2I_0\) で等しいですが、向きが逆です。
対称性より、左半分と右半分が中心Pにつくる磁場の大きさ \(h\) は等しくなります。
右半分(電流右向き)がつくる磁場を \(+h\)、左半分(電流左向き)がつくる磁場を \(-h\) とすると、合成磁場は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
H_P &= (+h) + (-h) \\[2.0ex]
&= 0
\end{aligned}
$$
初期磁場 \(H_0\) に対する倍率は \(0\) 倍です。
電池のつなぎ方を変えたことで、コイルの左半分と右半分が「並列」につながった状態になりました。
並列にすると抵抗が小さくなるため、全体として流れる電流は元の4倍にもなります。
しかし、磁場については事情が異なります。真ん中のB点から左右に電流が分かれて流れるため、左側のコイルと右側のコイルで電流の向きが逆になります。
「右向きの電流が作る磁場」と「左向きの電流が作る磁場」が、ちょうど真ん中のP点で正面衝突して打ち消し合ってしまうため、磁場はゼロになります。
電流は \(4\) 倍、磁場は \(0\) 倍。
抵抗が \(1/4\) になるため電流が4倍になるのはオームの法則通りです。
磁場に関しては、逆向きの等大電流による打ち消し合いであり、対称性から考えて物理的に妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
コイルを引き伸ばして長さを2倍(\(4l\))にします。
このとき、導線の全長や材質は変わらないため、電気抵抗 \(R\) は変化しません。
一方で、コイルの形状が変わるため、「単位長さあたりの巻数 \(n\)」が変化します。これが磁場の強さに影響します。
この設問における重要なポイント
- 抵抗の不変性: コイルを引き伸ばしても、導線の長さが変わらなければ抵抗値は一定です。
- 巻数密度の変化: 長さが2倍になると、単位長さあたりの巻数は半分になります。
- 磁場の公式: ソレノイドの磁場 \(H = nI\) において、\(n\) が変化します。
具体的な解説と立式
1. 電流の倍率
引き伸ばし後の抵抗を \(R_2\) とします。導線の状態は変わらないため、以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
R_2 &= R
\end{aligned}
$$
電流 \(I_2\) はオームの法則より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
I_2 &= \frac{V_0}{R_2}
\end{aligned}
$$
2. 磁場の倍率
コイルの総巻数を \(N\) とします。
初期状態(長さ \(2l\))での単位長さあたりの巻数 \(n_0\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
n_0 &= \frac{N}{2l}
\end{aligned}
$$
引き伸ばし後(長さ \(4l\))での単位長さあたりの巻数 \(n_2\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
n_2 &= \frac{N}{4l}
\end{aligned}
$$
磁場の強さ \(H\) は \(H = nI\) で表されます。
初期磁場 \(H_0\) と引き伸ばし後の磁場 \(H_2\) の関係式は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
H_0 &= n_0 I_0 \\[2.0ex]
H_2 &= n_2 I_2
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則: \(I = V/R\)
- ソレノイドの磁場: \(H = nI\)
電流について計算します。
$$
\begin{aligned}
I_2 &= \frac{V_0}{R} \\[2.0ex]
&= I_0
\end{aligned}
$$
よって、電流は \(1\) 倍です。
磁場について計算します。
単位長さあたりの巻数の関係は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
n_2 &= \frac{N}{4l} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \cdot \frac{N}{2l} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} n_0
\end{aligned}
$$
これを用いて \(H_2\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
H_2 &= n_2 I_2 \\[2.0ex]
&= \left( \frac{1}{2} n_0 \right) \cdot I_0 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} (n_0 I_0) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} H_0
\end{aligned}
$$
よって、磁場は \(1/2\) 倍です。
バネのようにコイルをびよーんと2倍の長さに伸ばしました。
導線そのものは変わっていないので、電気の流れにくさ(抵抗)は変わらず、流れる電流も同じままです。
しかし、コイルがスカスカになった(巻きの密度が半分になった)ため、磁場を作る能力が落ちてしまいました。電流が同じでも、協力してくれるコイルの巻き数が単位長さあたりで半分になったので、できる磁場も半分になります。
電流は \(1\) 倍、磁場は \(1/2\) 倍。
直感的に、コイルを疎(まばら)にすれば磁場が弱まることは明らかであり、妥当な結果です。
問(3)
思考の道筋とポイント
接続条件は「正の端子をA、負の端子をBとC」です。
電位で考えると、\(V_A = V_0\)、\(V_B = 0\)、\(V_C = 0\) となります。
ここで重要なのは、B点とC点が同じ電位(\(0\,\text{V}\))であることです。
電位差がないBC間には電流が流れません。つまり、電流が流れるのはAB間だけです。
この設問における重要なポイント
- 電流経路の特定: 電位差があるAB間のみ電流が流れ、BC間は電流 \(0\) となります。
- 端点の磁場: P点(B点)は、電流が流れているコイルABの「端っこ」にあたります。
- 半無限ソレノイドの磁場: 長いソレノイドの端点における磁場は、内部磁場のちょうど半分になるという性質(あるいは対称性)を利用します。
具体的な解説と立式
1. 電流の倍率
電流が流れるのは抵抗 \(R_{\text{左}} = R/2\) の部分のみです。
電圧は \(V_0\) です。
電流 \(I_3\) はオームの法則より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
I_3 &= \frac{V_0}{R_{\text{左}}}
\end{aligned}
$$
2. 磁場の倍率
P点(B点)における磁場 \(H_3\) を求めます。
電流が流れているのは左半分のコイルABのみです。
このコイルABの単位長さあたりの巻数は、初期状態と同じ \(n_0\) です。
もし、このコイルABが無限に長ければ(あるいはP点が内部にあれば)、磁場は \(n_0 I_3\) となります。
しかし、P点はコイルABの「端」に位置しています。
ソレノイドの端点の磁場は、内部磁場の \(1/2\) であることを利用します。
$$
\begin{aligned}
H_3 &= \frac{1}{2} \times (\text{コイルABの内部磁場}) \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} (n_0 I_3)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則: \(I = V/R\)
- ソレノイド端点の磁場: \(H_{\text{端}} = \frac{1}{2} nI\)
電流について計算します。
$$
\begin{aligned}
I_3 &= \frac{V_0}{R/2} \\[2.0ex]
&= \frac{2V_0}{R} \\[2.0ex]
&= 2 I_0
\end{aligned}
$$
よって、電流は \(2\) 倍です。
磁場について計算します。
$$
\begin{aligned}
H_3 &= \frac{1}{2} n_0 I_3 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} n_0 (2I_0) \\[2.0ex]
&= n_0 I_0 \\[2.0ex]
&= H_0
\end{aligned}
$$
よって、磁場は \(1\) 倍です。
配線を変えた結果、電気はAからBへ流れますが、BとCは同じ高さ(電位)なのでBからCへは流れません。
使うコイルが半分(ABのみ)になったので抵抗も半分になり、電流は2倍の勢いで流れます。
磁場については、「電流が2倍になったから磁場も2倍!」と思いきや、P点がコイルの「端っこ」になってしまったのがポイントです。
コイルの中身(内部)に比べて、端っこは磁場が半分になるという性質があります。「電流2倍」の効果と「端っこだから半分」の効果が打ち消し合って、結局磁場の強さは最初と同じになります。
電流は \(2\) 倍、磁場は \(1\) 倍。
電流が増えた分だけ磁場が強くなりそうですが、観測点がソレノイドの端になったことで幾何学的な係数 \(1/2\) がかかり、結果として相殺されるという興味深い結果です。
思考の道筋とポイント
問(1)〜(3)の磁場の計算において、公式 \(H=nI\) や「端点は半分の磁場」という知識を前提とせず、電流が作る磁場の基本法則(ビオ・サバールの法則)から出発して、軸上の磁場分布を数学的に導出します。
この設問における重要なポイント
- ビオ・サバールの法則: 微小電流要素が作る磁場を積分して、全体の磁場を求めます。
- 円形電流の磁場: ソレノイドを多数の円形電流の集合体とみなします。
具体的な解説と立式
まず、半径 \(a\)、電流 \(I\) の円形電流が、中心軸上の距離 \(x\) の点に作る磁場 \(dH\) を考えます。ビオ・サバールの法則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
dH(x) &= \frac{I a^2}{2(a^2 + x^2)^{3/2}}
\end{aligned}
$$
単位長さあたりの巻数 \(n\) のソレノイドを考えます。幅 \(dx\) の微小部分には \(n dx\) 回の巻き数があり、電流 \(I\) が流れているので、等価的な円形電流の大きさは \(nI dx\) です。
ソレノイドが \(x_1\) から \(x_2\) の範囲にあるとき、原点(観測点)における全磁場 \(H\) はこれを積分して求まります。
$$
\begin{aligned}
H &= \int_{x_1}^{x_2} \frac{(nI dx) a^2}{2(a^2 + x^2)^{3/2}}
\end{aligned}
$$
変数変換 \(x = a / \tan\theta\) (または図形的に見込む角 \(\theta\) を導入)を行うと、以下の一般式が得られます。
$$
\begin{aligned}
H &= \frac{nI}{2} (\cos\theta_1 – \cos\theta_2) \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
ここで \(\theta_1, \theta_2\) は、観測点からソレノイドの両端を見込む角度(軸とのなす角)です。
使用した物理公式
- ビオ・サバールの法則(円形電流の軸上磁場)
- 積分の置換法
式①を用いて各問を検証します。
無限長ソレノイドの場合、\(\theta_1 \to 0, \theta_2 \to \pi\) なので、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
H_{\infty} &= \frac{nI}{2} (1 – (-1)) \\[2.0ex]
&= nI
\end{aligned}
$$
となり、公式と一致します。
問(1)の場合:
P点は中心なので、左半分(\(-\infty\)〜\(0\))と右半分(\(0\)〜\(+\infty\))からの寄与を考えます。(十分長いと仮定)
左半分(電流左向き \(2I_0\)): \(\theta_{\text{始}} \to \pi, \theta_{\text{終}} = \pi/2\)。向きは負。
右半分(電流右向き \(2I_0\)): \(\theta_{\text{始}} = \pi/2, \theta_{\text{終}} \to 0\)。向きは正。
$$
\begin{aligned}
H_{\text{左}} &= -\frac{n(2I_0)}{2} (\cos(\pi/2) – \cos\pi) \\[2.0ex]
&= -nI_0 (0 – (-1)) \\[2.0ex]
&= -nI_0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
H_{\text{右}} &= +\frac{n(2I_0)}{2} (\cos 0 – \cos(\pi/2)) \\[2.0ex]
&= +nI_0 (1 – 0) \\[2.0ex]
&= +nI_0
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
H_{\text{合計}} &= H_{\text{左}} + H_{\text{右}} \\[2.0ex]
&= -nI_0 + nI_0 \\[2.0ex]
&= 0
\end{aligned}
$$
問(3)の場合:
電流 \(2I_0\) のコイルABのみが存在します。P点は端点Bです。
コイルは片側(例えば左側)にのみ存在します。
範囲は無限遠から直前までとみなすと、\(\theta_1 \to \pi, \theta_2 = \pi/2\)(あるいは逆)。
$$
\begin{aligned}
H &= \frac{n(2I_0)}{2} | \cos 0 – \cos(\pi/2) | \\[2.0ex]
&= nI_0 (1 – 0) \\[2.0ex]
&= nI_0
\end{aligned}
$$
これは \(H_0 = nI_0\) と一致します。
数式を使って厳密に計算しても、同じ結果が得られました。
特に問(3)で使った「端っこだと磁場は半分」というルールが、積分計算の結果(\(\cos 0 – \cos \pi = 2\) と \(\cos 0 – \cos (\pi/2) = 1\) の比)から自然に導かれることがわかります。
微積分を用いたアプローチにより、ソレノイドの磁場公式の適用限界や端点効果の物理的背景が明確になりました。結果は模範解答と完全に一致します。
問(4)
思考の道筋とポイント
スイッチSを閉じた直後の過渡現象を考えます。
スイッチを閉じると、コイルに電流 \(I_0\) が流れ始め、コイル内部に磁場が発生します。
この磁場の変化(磁束の増加)が、近くにあるリング \(R_1, R_2\) に電磁誘導を引き起こします。
この設問における重要なポイント
- 右ねじの法則: コイルの電流の向きから、発生する磁場の向きを特定します。
- レンツの法則: 誘導電流は「磁束の変化を妨げる向き」に流れます。
具体的な解説と立式
1. コイルが作る磁場の向き
図2を見ると、電源の正極は左側です。スイッチSを閉じると、電流は左から右へ向かってコイルに供給されます。
コイルの巻き方(図2や図c参照)に従って右ねじの法則を適用すると、コイル内部には「左から右」への磁場が発生します。
2. 誘導電流の向き
リング \(R_1\)(左端)と \(R_2\)(中央)のどちらにおいても、スイッチオンにより「右向きの磁束」が急激に増加します。
レンツの法則より、リングにはこの増加を打ち消す方向、つまり「左向きの磁場」を作るような誘導電流が流れます。
「左向きの磁場」を作る電流の向きは、コイルに流れる電流(右向き磁場を作る)とは「逆向き」になります。
使用した物理公式
- 右ねじの法則
- レンツの法則
(定性的な判断のため計算なし)
スイッチを入れると、コイルが電磁石になり、右向きの磁力線がドッと飛び出します。
そばにあるリングたちは、急に磁力線が増えるのを嫌がります(変化を嫌う性質=慣性のようなもの)。
そこでリングたちは、「右向きの磁力線あっちいけ!」と対抗するために、自分たちで左向きの磁力線を出そうとします。
コイルと同じ向きに電流を流すと協力して右向きの磁力線を出してしまうので、リングにはコイルとは「逆向き」の電流が流れます。
磁束が増加する局面なので、それを妨げる逆向きの電流が流れるのは物理的に妥当です。
問(5)
思考の道筋とポイント
リングに誘導電流が流れると、リング自体も磁石(あるいは電流回路)としての性質を持ち、コイルとの間に力が働きます。
問(4)で求めた通り、リングの電流はコイルの電流と「逆向き」です。
この設問における重要なポイント
- 平行電流間の力: 同じ向きの電流は引き合い、逆向きの電流は反発し合います。
- 対称性: \(R_2\) はコイルの中央に位置するため、左右からの力の影響を対称的に受けます。
具体的な解説と立式
1. \(R_1\)(左端)の動き
\(R_1\) に流れる電流は、コイルの電流と逆向きです。
コイルの導線とリングの導線は、微視的に見れば平行に近い状態で隣接しています。
逆向きの平行電流の間には「斥力(反発力)」が働きます。
したがって、\(R_1\) はコイルから遠ざかる方向、つまり「左」へ力を受け、動き出します。
2. \(R_2\)(中央)の動き
\(R_2\) もコイルと逆向きの電流が流れるため、コイルの導線から反発力を受けます。
しかし、\(R_2\) はコイルの中央にあります。
\(R_2\) の左側にあるコイル部分からは「左へ押される力」を受け、右側にあるコイル部分からは「右へ押される力」を受けます。
コイルの構造および電流分布は左右対称であるため、これらの反発力は大きさ等しく逆向きとなり、互いに打ち消し合います。
したがって、合力は \(0\) となり、\(R_2\) は動きません。
使用した物理公式
- 電流間に働く力(定性的): 逆向きは斥力
- 力のつりあい(対称性)
(定性的な判断のため計算なし)
\(R_1\) について:
コイルとリングには逆向きの電流が流れています。逆向きの電流同士は仲が悪く、反発し合います。だから端っこにある \(R_1\) は、コイルから弾き飛ばされるように左へ動きます。
\(R_2\) について:
\(R_2\) もコイルと反発します。しかし、\(R_2\) は真ん中にいるので、左側のコイルからは「あっち行け(右へ)」、右側のコイルからは「こっち来るな(左へ)」と、両側から同じ力で挟み撃ちにされます。
結果として、その場から動くことができません。
端にあるリングは漏れ磁場の影響(磁場の勾配)を受けて力を受けますが、中央の一様磁場中にあるリングは並進力を受けない、という解釈とも整合します。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- ソレノイドがつくる磁場と重ね合わせの原理
- 核心: ソレノイドの磁場は電流に比例し、複数の電流源がある場合はそれぞれの磁場をベクトルとして足し合わせることで合成磁場が求まる。
- 理解のポイント:
- 電流の向きと磁場の向き: 右ねじの法則により、電流の向きが逆になれば磁場の向きも逆になる。
- 端点効果: ソレノイドの端点における磁場は、内部の一様磁場のちょうど半分になる(対称性またはビオ・サバールの法則より)。
- 電磁誘導とレンツの法則
- 核心: 磁束が変化すると、その変化を妨げる向きに磁場を作るような誘導電流が発生する。
- 理解のポイント:
- 変化への抵抗: 磁束が増えるときは減らす向きに、減るときは増やす向きに電流が流れる。
- 相互作用: 誘導電流と元の電流の間には、その相対運動や変化を妨げるような力(斥力や引力)が働く。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- コイルの分割・接続変更: コイルを途中で切ったり、端子を変えて接続したりする問題。抵抗値の変化(長さとの比例関係)と電流の向き(電位差)を回路図から正確に読み取ることが第一歩。
- 相互誘導と反発力: リング飛ばしやリニアモーターカーの原理など、誘導電流による力を問う問題。「逆向き電流は反発」という定性的な理解が即答の鍵となる。
- 初見の問題での着眼点:
- 回路の等価変換: 複雑な接続に見えても、「どこが高電位でどこが低電位か」を整理し、単純な直列・並列回路に書き直す。
- 対称性の利用: 構造が対称であれば、磁場や力も対称になる。計算する前に「打ち消し合ってゼロにならないか?」と予測を立てる。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 磁場の合成における符号ミス:
- 誤解: 電流の大きさだけを見て、向き(符号)を考慮せずに足し算してしまう。
- 対策: 必ず「右向きを正」などの座標軸を設定し、電流の向きに応じて磁場にプラス・マイナスの符号をつけてから和をとる。
- ソレノイドの端点磁場の見落とし:
- 誤解: コイルの端っこでも、内部と同じ公式 \(H=nI\) を使って計算してしまう。
- 対策: 観測点がコイルの「内部」なのか「端」なのかを必ず確認する。端点であれば係数 \(1/2\) を忘れない。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- ビオ・サバールの法則(別解):
- 選定理由: 公式 \(H=nI\) の適用範囲(無限長)や端点での係数 \(1/2\) の根拠を、原理から導出できるため。応用問題でコイルの形状が変わった場合にも対応できる汎用性がある。
- 適用根拠: 電流が作る磁場の最も基礎的な法則であり、あらゆる形状の電流分布に対して厳密に成立する。
- オームの法則と合成抵抗:
- 選定理由: 回路の電流分布を決定するための最も基本的かつ確実な方法であるため。
- 適用根拠: 定常電流回路において、電圧、電流、抵抗の関係は一意に定まる。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 比の計算の活用:
- 意識: 具体的な数値を代入する前に、文字式のまま比率(倍率)を計算する。
- 実践: \(I_1 = 4I_0\) のように、基準となる量(\(I_0, H_0\))をくくり出し、係数部分だけの計算に集中することでミスを減らす。
- 極限的なケースでの検算:
- 意識: 求めた式が、極端な条件でも物理的に意味をなすか確認する。
- 実践: 例えば問(1)で、もし左右の電流が同じ向きなら磁場は2倍になるはず。逆向きなら0になるはず。計算結果がこの直感と一致するか確認する。
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問題44 電磁誘導 (京都工繊大+名古屋大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 問(2)(3)の別解: 微積分を用いた電磁誘導の法則の適用
- 模範解答では変化量 \(\Delta\) を用いて平均の起電力を求めていますが、別解では時間微分 \(d/dt\) を用いて、瞬時の誘導起電力を定義から厳密に導出します。これにより、物理量の時間変化と起電力の関係がより明確になります。
- 問(4)の別解: 関数表現と回路方程式によるグラフの導出
- 模範解答ではグラフの傾きから各区間の値を計算していますが、別解では電流 \(I(t)\) を時間の関数として数式化し、回路方程式(微分方程式)に代入することで、電圧 \(V(t)\) や電源電圧 \(E(t)\) の関数形を直接導きます。
- 問(2)(3)の別解: 微積分を用いた電磁誘導の法則の適用
- 上記の別解が有益である理由
- 物理現象を数式(関数)として捉えることで、グラフの形状(直線か定数か)や不連続性がなぜ生じるのかを論理的に理解できるためです。
- 複雑な時間変化をする電流や、過渡現象を扱う応用問題への対応力を養うためです。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ソレノイドコイルにおける自己誘導と相互誘導」です。
電流の変化によって生じる磁場の変化が、自身のコイル(自己誘導)や隣接するコイル(相互誘導)に起電力を生じさせる現象を扱います。また、その現象を含む回路の電圧変動をグラフ化する実践的な解析能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ソレノイドの磁場: 単位長さあたりの巻数 \(n\) のソレノイドに電流 \(I\) が流れるとき、内部には一様な磁場 \(H = nI\) が生じます。
- ファラデーの電磁誘導の法則: 誘導起電力は、コイルを貫く磁束の時間変化率に比例します。\(V = -N \frac{\Delta \phi}{\Delta t}\)。
- レンツの法則: 誘導起電力は、磁束の変化を妨げる向きに生じます。
- キルヒホッフの法則: 回路内の任意の閉路において、起電力の和と電圧降下の和は等しくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、ソレノイドの公式を用いて磁束密度を求め、右ねじの法則で向きを決定します。
- (2)(3)では、磁束の変化量から誘導起電力を計算し、係数比較によって自己インダクタンス \(L\) と相互インダクタンス \(M\) を導出します。
- (4)では、与えられた \(I-t\) グラフの傾き(時間変化率)を読み取り、回路方程式を用いて各区間の電圧を計算してグラフを描きます。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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