「名問の森」徹底解説(16〜18問):未来の得点力へ!完全マスター講座【波動Ⅱ・電磁気・原子】

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問題16

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、平行平板コンデンサーに対する様々な操作(スイッチの開閉、金属板の挿入、極板の移動、誘電体の挿入)が、コンデンサー内部の電場、電位、蓄えられる電荷量、そして電気容量にどのような影響を与えるかを考察する総合問題です。特に、電場と電位の分布をグラフで表現する能力も問われています。

与えられた条件
  • 初期状態: 極板A, Bからなる平行平板コンデンサー。極板間隔 \(4d\)。スイッチS、起電力 \(V_0\) の電池。
  • 操作シーケンス:
    1. Sを閉じて充電した後、Sを開く。
    2. 金属板M(厚さ \(d\)、帯電なし)をBから \(d\) の位置に挿入する。
    3. Sを閉じる。
    4. Sを開き、Aを \(d\) 下げ、AB間を \(3d\) にする。
    5. Mを取り除き、誘電体D(同形、比誘電率2)を同じ位置に置く。
  • Mがないときの初期の電気容量を \(C\) とする。
  • 空気の比誘電率は1(真空扱いと見なす)。
  • 平行平板コンデンサーの極板間の電場は一様と考える。
問われていること
  • (1) 初期充電後(S開)の電場 \(E(x)\) と電位 \(V(x)\) のグラフ。
  • (2) 金属板M挿入後(S開)の \(E(x)\) と \(V(x)\) のグラフ。
  • (3) さらにSを閉じた後の \(E(x)\) と \(V(x)\) のグラフ、およびSを移動した正の電気量とその向き。
  • (4) Sを開きAを下げた後のAB間の電位差。その後Mを誘電体Dに置き換えた後の \(E(x)\) と \(V(x)\) のグラフ。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、平行平板コンデンサーの基本的な性質を深く理解しているかを試すものです。スイッチの操作、導体や誘電体の挿入といった各ステップで、コンデンサーの内部状態(電場、電位、電荷、容量)がどのように変化するかを、物理法則に基づいて丁寧に追跡していくことが求められます。特に、電場と電位の関係をグラフで視覚的に表現する能力は重要です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 一様な電場と電位差: 平行平板コンデンサーの極板間では、電場は(理想的には)一様です。この電場の強さを \(E\)、極板間の電位差を \(V\)、極板間の距離を \(D\) とすると、\(V=ED\) という関係が成り立ちます。
  2. 電位の考え方: 電位は、基準点(この問題では極板Bを \(0 \, \text{V}\) とします)からの電気的な「高さ」を表します。電場の向きに沿って進むと電位は下がり、電場の向きと逆向きに進むと電位は上がります。電位 \(V(x)\) のグラフにおいて、その傾きは電場の強さのマイナス値(より正確には \(E_x = -dV/dx\))に対応します。
  3. コンデンサーの基本式: コンデンサーが蓄える電気量 \(Q\)、コンデンサーの電気容量 \(C\)、そして極板間の電位差 \(V\) の間には、\(Q=CV\) という基本的な関係があります。
  4. 平行平板コンデンサーの電気容量: 極板の面積を \(S\)、極板間の距離を \(d\)、極板間を満たす物質の誘電率を \(\varepsilon\) とすると、電気容量 \(C\) は \(C = \displaystyle\frac{\varepsilon S}{d}\) で与えられます。 真空の誘電率を \(\varepsilon_0\)、物質の比誘電率を \(\varepsilon_r\) とすると、\(\varepsilon = \varepsilon_r \varepsilon_0\) となります。空気の比誘電率は1とされているので、空気の場合は \(\varepsilon = \varepsilon_0\) として扱います。
  5. 導体の性質(静電平衡時): 導体の内部では電場は常に0(ゼロ)です。また、導体全体はどの部分も同じ電位(等電位)になります。
  6. 静電誘導: 導体を電場の中に置くと、導体内部の自由電子が電場から力を受けて移動し、その結果、導体の表面に電荷の偏りが生じる現象です。
  7. 誘電分極: 誘電体を電場の中に置くと、誘電体を構成する分子が電気的に偏る(分極する)現象です。これにより、誘電体内部の電場は、外部からかけられた電場よりも弱められる効果が生じます。
  8. 電気量保存則: 電気的に孤立した導体系(例えば、スイッチが開いている状態のコンデンサーの極板や、それに接続された回路部分)では、その部分系が持つ総電荷量は変化しません(保存されます)。

この問題は複数のステップから構成されており、それぞれの操作がコンデンサーの状態をどのように変化させるかを正確に把握することが重要です。以下の点を特に意識しながら、各段階でのコンデンサーの状態(蓄えられている電荷、極板間の電位差、内部の電場、電気容量)を丁寧に考察していきましょう。

  • スイッチSが開いているか閉じているか
    • Sが開いている間:コンデンサーの極板A(およびそれに接続された導線部分)は電気的に孤立しているため、そこに蓄えられた電荷 \(Q\) は保存されます。
    • Sが閉じている間:コンデンサーは電池に接続されているため、極板AとBの間の電位差が電池の起電力 \(V_0\) に等しくなるように、電荷が電池との間で移動します。
  • 金属板の挿入
    • 帯電していない金属板を電場の中に挿入すると、静電誘導によって金属板の表面に電荷が現れ、その結果、金属板内部の電場は0(ゼロ)になります。
    • 金属板の厚さの分だけ、実質的に電場が存在する空間が減少したと見なすことができ、これが電気容量の変化に繋がります。
  • 誘電体の挿入
    • 誘電体を電場の中に挿入すると、誘電分極が起こります。これにより、同じ極板間電位差であればより多くの電荷を蓄えることができるようになり、電気容量が増加します。あるいは、同じ電荷量であれば極板間の電場が弱まり、電位差が減少する効果があります。
  • 電場と電位のグラフの描き方
    • 電場 \(E(x)\) のグラフ:各領域(空気層、金属板内部、誘電体内部など)における電場の強さを計算し、その値を横軸 \(x\) に対してプロットします。平行平板コンデンサー内の電場は基本的に一様ですが、金属板や誘電体の挿入によって領域ごとに強さが変化します。特に、導体内部の電場は0になることを忘れないようにしましょう。
    • 電位 \(V(x)\) のグラフ:電位の基準点(この問題では極板Bの電位を \(0 \, \text{V}\) とします)から出発し、各領域の電場 \(E\) を用いて \(V(x) = V_{\text{基準}} – \int_0^x E_x dx’\) (あるいは一様な電場の場合は \(V=Ed\) の関係)から電位を計算し、プロットします。電場のグラフで \(x\) 軸とグラフ線で囲まれる部分の面積が電位差に対応すること、また電位のグラフの各点における傾きが電場の強さのマイナス値(\(E_x = -dV/dx\))に対応することを意識すると、グラフの形状を理解しやすくなります。導体部分は等電位なので、電位のグラフでは水平な線になります。電位は空間的に連続的に変化します(グラフが途切れることはありません)。

問 (1)

思考の道筋とポイント
まず、スイッチSを閉じてコンデンサーを起電力 \(V_0\) の電池で十分に充電します。その後、スイッチSを開きます。この最終状態における極板間の電場 \(E(x)\) と電位 \(V(x)\) のグラフを描くことが求められています。

  1. 充電完了時の状態: スイッチSを閉じている間、コンデンサーの極板AとBの間の電位差は、電池の起電力 \(V_0\) に等しくなるまで充電が進みます。
  2. スイッチSを開いた後の状態: スイッチSを開くと、コンデンサーは電池から電気的に切り離されます。このとき、極板Aに蓄えられていた電荷 \(Q\) は逃げ場を失い、保存されます。この蓄えられた電荷 \(Q\) によって、極板間には電場が形成され、電位差が維持されます。スイッチを開いた直後では、この電位差は充電完了時の \(V_0\) のままです。
  3. 電場の強さ \(E_1\) の計算: 極板間の初期の間隔は \(4d\) です。 平行平板コンデンサーの極板間の電場は一様であると考えられるため、電場の強さを \(E_1\) とすると、電位差 \(V_0\) と極板間隔 \(4d\) の間には \(V_0 = E_1 \cdot (4d)\) という関係が成り立ちます。この式から \(E_1\) を求めることができます。
  4. 電位 \(V(x)\) の計算: 極板Bの電位を \(0 \, \text{[V]}\) とし、極板Bからの距離を \(x\) とします。 一様な電場 \(E_1\) の中では、電位は \(V(x) = E_1 x\) という形で、距離 \(x\) に比例して直線的に増加します(電場の向きをBからAへ、つまり \(x\) の増加方向へ電位が上がるように仮定した場合)。

この設問における重要なポイント

  • 平行平板コンデンサーの内部電場は、理想的には一様である(端の部分での乱れは無視する)という近似を理解していること。
  • 一様な電場 \(E\) と、その方向に測った距離 \(d\)、そしてその間の電位差 \(V\) との間に成り立つ関係式 \(V=Ed\) を正しく適用できること。
  • 電位の基準点の取り方と、その基準点から出発して各点の電位をどのように計算していくか(特に一様な電場の場合の直線的な変化)を把握していること。

具体的な解説と立式
スイッチSを閉じ、コンデンサーが十分に充電されたとき、その極板AB間の電位差は電池の起電力に等しくなり、\(V_0\) となります。
その後スイッチSを開いても、コンデンサーに蓄えられた電荷は保存されるため、極板間の電位差は(他の操作が加わるまでは)\(V_0\) のままです。
このときの極板間隔は \(4d\) です。極板間の電場は一様であると考えられるため、その強さを \(E_1\) とすると、電位差 \(V_0\) との間に以下の関係が成り立ちます。
$$V_0 = E_1 \cdot (4d) \quad \cdots ①$$
極板B (\(x=0\)) の電位を基準の \(0 \, \text{[V]}\) とします。極板Bからの距離が \(x\) である点の電位を \(V(x)\) とすると、電場 \(E_1\) が一様であるため、電位は \(x\) に比例して直線的に増加し、次のように表されます。
$$V(x) = E_1 x \quad (\text{ただし、} 0 \le x \le 4d) \quad \cdots ②$$

使用した物理原理/公式

  • 一様な電場と電位差の関係: \(V = Ed\)
  • 電位の計算(一様な電場の場合): \(V(x) = Ex\) (基準点 \(x=0\) で \(V=0\) とした場合)
計算過程
  1. 式①から、電場の強さ \(E_1\) を \(V_0\) と \(d\) を用いて表します。
    両辺を \(4d\) で割ると、
    $$E_1 = \frac{V_0}{4d}$$
    この電場の強さは、極板間 (\(0 \le x \le 4d\)) のどの場所でも一定です。
  2. 次に、式②に上で求めた \(E_1\) の具体的な表現を代入して、電位 \(V(x)\) の式を完成させます。
    $$V(x) = \left(\frac{V_0}{4d}\right) x = \frac{V_0}{4d}x$$
    この式から、電位 \(V(x)\) のグラフがどのような形状になるかがわかります。

    • \(x=0\) (極板Bの位置)のとき: \(V(0) = \displaystyle\frac{V_0}{4d} \cdot 0 = 0 \, \text{[V]}\) (これは基準点の取り方と一致します)
    • \(x=4d\) (極板Aの位置)のとき: \(V(4d) = \displaystyle\frac{V_0}{4d} \cdot (4d) = V_0 \, \text{[V]}\) (これは極板AB間の電位差が \(V_0\) であることと一致します)
計算方法の平易な説明

まず、コンデンサーを電池につないで電気をいっぱいにし(充電し)、その後スイッチを切ります。このとき、コンデンサーの両端の電気的な「高さの差」(電位差)は、電池の電圧 \(V_0\) と同じになっています。コンデンサーの2枚の板(極板AとB)の間の距離は \(4d\) です。
この2枚の板の間には、電気的な「坂道」のようなもの(電場 \(E_1\))ができています。この坂道はどこでも同じ傾き(一様な電場)になっています。全体の高さの差 \(V_0\) と、坂道の全長 \(4d\)、そして坂道の傾き \(E_1\) の間には、\(V_0 = E_1 \times 4d\) という関係があります。だから、坂道の傾き \(E_1\) は \(V_0 \div (4d)\) で計算できます。
次に、電気的な「高さ」(電位 \(V(x)\))を考えます。板B(\(x=0\) の場所)の高さを基準の \(0 \, \text{V}\) とすると、そこから距離 \(x\) だけ離れた場所の高さは、傾き \(E_1\) の坂道を \(x\) だけ登ったことになるので、\(V(x) = E_1 \times x = (V_0 / (4d)) \times x\) となります。これは、距離 \(x\) が大きくなるにつれて、高さがまっすぐ(直線的に)高くなっていくことを意味します。そして、板A(\(x=4d\) の場所)では、ちょうど高さ \(V_0\) に到達します。

結論と吟味

(問題で提供されている図や模範解答の図aおよび図bの実線部分を参照し、それに基づいてグラフを描いてください。)

  • 電場 \(E(x)\) のグラフ:横軸を \(x\)(極板Bからの距離、\(0\) から \(4d\) まで)、縦軸を電場の強さ \(E\) とすると、\(E\) は \(x\) の値によらず一定値 \(E_1 = \displaystyle\frac{V_0}{4d}\) をとります。したがって、グラフは \(E = \displaystyle\frac{V_0}{4d}\) の高さで \(x\) 軸に平行な水平な直線となります。
  • 電位 \(V(x)\) のグラフ:横軸を \(x\)、縦軸を電位 \(V\) とすると、\(x=0\) で \(V=0\) (極板B)、\(x=4d\) で \(V=V_0\) (極板A)となり、この2点を結ぶ直線(傾き \(\displaystyle\frac{V_0}{4d}\))となります。

これらは、充電された平行平板コンデンサー内部の理想的な電場(一様)と電位(直線的に変化)の分布を正しく示しており、物理的に妥当な結果です。

解答 (1) (模範解答の図a、図bの実線にならってグラフを描いてください。)電場の強さは \(E_1 = \displaystyle\frac{V_0}{4d}\) で \(0 \le x \le 4d\) の範囲で一定です。電位は \(V(x) = \displaystyle\frac{V_0}{4d}x\) で、\(x=0\) で \(0 \, \text{V}\)、\(x=4d\) で \(V_0 \, \text{V}\) となり、その間を直線的に増加します。

問 (2)

思考の道筋とポイント
設問(1)の操作の後(スイッチSは開いたままの状態)、極板Bから \(d\) の距離に、厚さが \(d\) の帯電していない金属板Mを挿入します。このときの電場 \(E(x)\) と電位 \(V(x)\) のグラフを、設問(1)と同じグラフ用紙に点線で描くことが求められています。

  1. 電荷の保存の法則: スイッチSは開いたままなので、極板Aに蓄えられている電荷 \(Q\) は変化しません(保存されます)。この電荷 \(Q\) は、設問(1)の初期状態で \(Q = C_0 V_0\) と書けます(ここで \(C_0\) は金属板Mがない、極板間隔が \(4d\) のときの電気容量です)。
  2. 空気層における電場の強さ: コンデンサーの極板上の電荷 \(Q\) が保存されているため、極板間の電気力線の総本数も変わりません。金属板Mが挿入されていない空気層の部分では、電場の強さは設問(1)で求めた \(E_1 = \displaystyle\frac{V_0}{4d}\) のまま変化しません。これは、電場の強さが実質的に極板の面電荷密度(単位面積あたりの電荷)に比例するためです。
  3. 静電誘導の発生: 帯電していない金属板Mを電場 \(E_1\) の中に置くと、金属板Mの内部で静電誘導が起こります。具体的には、Mの上面(極板Aに近い側)には負の電荷が、Mの下面(極板Bに近い側)には正の電荷が誘導されます。この誘導される電荷の面密度は、外部電場 \(E_1\) を打ち消すのに十分な量となります。
  4. 金属板内部の電場: 静電誘導の結果、金属板Mの内部では、誘導電荷が作る逆向きの電場と外部電場 \(E_1\) が完全に打ち消し合い、電場は \(0\)(ゼロ)になります。これは導体の基本的な性質です。
  5. 各領域の電場のまとめ:
    • BM間(極板Bと金属板Mの間、\(0 \le x < d\)):電場の強さは \(E_1\)。
    • M内部(金属板Mの中、\(d \le x \le 2d\)):電場の強さは \(0\)。
    • MA間(金属板Mと極板Aの間、\(2d < x \le 4d\)):電場の強さは \(E_1\)。
  6. 電位 \(V(x)\) の計算: 各領域の電場の情報をもとに、極板B(\(V(0)=0\))を基準として電位を計算していきます。
    • BM間:電位は傾き \(E_1\) で直線的に上昇します。\(x=d\)(Mの下面)での電位は \(V(d) = E_1 d = \left(\displaystyle\frac{V_0}{4d}\right) d = \displaystyle\frac{1}{4}V_0\)。
    • M内部:電場が \(0\) なので、この領域は等電位です。したがって、M内部のどの点でも電位は \(V(d)\) と同じく \(\displaystyle\frac{1}{4}V_0\) となります。
    • MA間:Mの上面(\(x=2d\))での電位はM内部と同じく \(\displaystyle\frac{1}{4}V_0\) です。ここから極板Aに向かって、電位は再び傾き \(E_1\) で直線的に上昇します。\(V(x) = V(2d) + E_1(x-2d) = \displaystyle\frac{1}{4}V_0 + E_1(x-2d)\)。
    • 極板A(\(x=4d\))の電位:\(V_A = V(4d) = \displaystyle\frac{1}{4}V_0 + E_1(4d-2d) = \displaystyle\frac{1}{4}V_0 + 2E_1d = \displaystyle\frac{1}{4}V_0 + 2 \left(\displaystyle\frac{V_0}{4d}\right) d = \displaystyle\frac{1}{4}V_0 + \displaystyle\frac{1}{2}V_0 = \displaystyle\frac{3}{4}V_0\)。

この設問における重要なポイント

  • スイッチが開いている(回路が開放されている)場合には、コンデンサーの極板に蓄えられた電荷量が保存される、という電気量保存則の適用。
  • 電荷量が保存されている場合、極板間の空気層部分(または真空部分)における電場の強さは、金属板の挿入前後で変化しない(より正確には、極板の面電荷密度が変わらないため、それが作る電場の強さも変わらない)。
  • 金属板(導体)を電場中に置くと静電誘導が起こり、その結果として金属板内部の電場は必ず \(0\) になること。
  • 金属板(導体)は全体が等電位になること。

具体的な解説と立式
スイッチSが開いているため、極板Aに蓄えられている電荷 \(Q\) は、設問(1)の初期状態から変化しません。
設問(1)における初期の極板間の電場の強さは \(E_1 = \displaystyle\frac{V_0}{4d}\) でした。
金属板Mを挿入すると、Mの内部(\(d \le x \le 2d\) の領域)では、静電誘導によって電場が \(0\) になります。
金属板Mが挿入されていない空間(BM間の \(0 \le x < d\) および MA間の \(2d < x \le 4d\) の領域)では、極板Aの電荷 \(Q\) が変化していないため、電気力線の密度も変化せず、電場の強さは設問(1)と同じ \(E_1 = \displaystyle\frac{V_0}{4d}\) のままです。

次に、電位 \(V(x)\) を計算します(極板Bの電位を \(V(0)=0\) とします)。

  • 領域 \(0 \le x \le d\) (BM間):
    この領域の電場の強さは \(E_1\) なので、電位は次のように表せます。
    $$V(x) = E_1 x = \frac{V_0}{4d} x \quad \cdots ③$$
    特に、金属板Mの下面 (\(x=d\)) における電位は、
    $$V(d) = E_1 d = \frac{V_0}{4d} d = \frac{1}{4}V_0$$
    となります。
  • 領域 \(d \le x \le 2d\) (M内部):
    金属板Mの内部では電場が \(0\) であるため、この領域は等電位です。したがって、M全体の電位はMの下面の電位に等しくなります。
    $$V(x) = V(d) = \frac{1}{4}V_0 \quad \cdots ④$$
  • 領域 \(2d \le x \le 4d\) (MA間):
    この領域の電場の強さも \(E_1\) です。金属板Mの上面 (\(x=2d\)) の電位は \(V(2d) = \displaystyle\frac{1}{4}V_0\) です。ここを基準として、\(x\) (\( \ge 2d\)) まで進むと、電位は次のように表せます。
    $$V(x) = V(2d) + E_1 (x-2d) = \frac{1}{4}V_0 + \frac{V_0}{4d}(x-2d) \quad \cdots ⑤$$
    特に、極板A (\(x=4d\)) における電位 \(V_A\) は、
    $$V_A = V(4d) = \frac{1}{4}V_0 + \frac{V_0}{4d}(4d-2d) = \frac{1}{4}V_0 + \frac{V_0}{4d}(2d) = \frac{1}{4}V_0 + \frac{2V_0}{4} = \frac{1}{4}V_0 + \frac{1}{2}V_0 = \frac{3}{4}V_0 \quad \cdots ⑥$$
    となります。

使用した物理原理/公式

  • 電気量保存則(スイッチが開いているため、極板の電荷は孤立し保存される)
  • 静電誘導
  • 導体内部の電場は0(ゼロ)、導体は等電位
  • 一様な電場と電位差の関係: \(V = Ed\)
  • 電位の計算(基準点からの積み上げ)
計算過程
  1. 電場 \(E(x)\) の決定:
    • 領域 \(0 \le x < d\) (BM間): スイッチが開いており極板Aの電荷が不変なため、この空間の電場の強さは(1)と同じ \(E(x) = E_1 = \displaystyle\frac{V_0}{4d}\)。
    • 領域 \(d \le x \le 2d\) (金属板M内部): 導体内部なので電場は \(E(x) = 0\)。
    • 領域 \(2d < x \le 4d\) (MA間): BM間と同様の理由で、電場の強さは \(E(x) = E_1 = \displaystyle\frac{V_0}{4d}\)。
  2. 電位 \(V(x)\) の計算: (極板Bの電位を \(V(0)=0\) とする)
    • 領域 \(0 \le x \le d\) (BM間): \(V(x) = \int_0^x E_1 dx’ = E_1 x = \displaystyle\frac{V_0}{4d}x\)。
      この結果、\(V(d) = E_1 d = \displaystyle\frac{V_0}{4d} \cdot d = \displaystyle\frac{1}{4}V_0\)。
    • 領域 \(d \le x \le 2d\) (M内部): M内部は等電位なので、\(V(x) = V(d) = \displaystyle\frac{1}{4}V_0\)。
    • 領域 \(2d \le x \le 4d\) (MA間): \(V(x) = V(2d) + \int_{2d}^x E_1 dx’ = \displaystyle\frac{1}{4}V_0 + E_1(x-2d) = \displaystyle\frac{1}{4}V_0 + \displaystyle\frac{V_0}{4d}(x-2d)\)。
      この結果、極板A (\(x=4d\)) での電位は \(V(4d) = \displaystyle\frac{1}{4}V_0 + E_1(4d-2d) = \displaystyle\frac{1}{4}V_0 + E_1(2d) = \displaystyle\frac{1}{4}V_0 + \left(\displaystyle\frac{V_0}{4d}\right)(2d) = \displaystyle\frac{1}{4}V_0 + \displaystyle\frac{2V_0}{4} = \displaystyle\frac{3}{4}V_0\)。
計算方法の平易な説明

スイッチSが開いているので、コンデンサーの極板Aに蓄えられた電気の量(電荷)は、金属板Mを入れても変わりません。電気の量が変わらなければ、電気の矢印(電気力線)の全体の数も変わらないので、金属板Mがない空気の部分の電気の強さ(電場 \(E_1\))は、Mを入れる前と同じ \(E_1 = V_0 / (4d)\) のままです。
金属板Mは導体なので、その内部では静電誘導という現象が起きて、電場はゼロになってしまいます。
さて、電気の高さ(電位)はどうなるでしょう。極板B(\(x=0\))の高さを \(0 \, \text{V}\) とすると、

  • BからMの下の面まで(\(0 \le x \le d\))は、傾き \(E_1\) の坂道を登るので、Mの下の面の高さは \(E_1 \times d = (V_0/(4d)) \times d = (1/4)V_0\) になります。
  • Mの中(\(d \le x \le 2d\))は、電場がゼロなので坂道はなく平らです。だから、高さはずっと \((1/4)V_0\) のままです。
  • Mの上の面から極板Aまで(\(2d \le x \le 4d\))は、また傾き \(E_1\) の坂道を登ります。Mの上の面の高さは \((1/4)V_0\) で、そこからさらに \(E_1 \times (4d-2d) = E_1 \times 2d = (V_0/(4d)) \times 2d = (1/2)V_0\) だけ高くなるので、極板Aの高さは \((1/4)V_0 + (1/2)V_0 = (3/4)V_0\) になります。
結論と吟味

(問題で提供されている図や模範解答の図aおよび図bの点線部分を参照し、それに基づいてグラフを描いてください。)

  • 電場 \(E(x)\) のグラフ:領域BM間(\(0 \le x < d\))とMA間(\(2d < x \le 4d\))では、電場の強さは \(E_1 = \displaystyle\frac{V_0}{4d}\) で一定です。金属板Mの内部(\(d \le x \le 2d\))では、電場の強さは \(E=0\) となります。
  • 電位 \(V(x)\) のグラフ:\(x=0\) で \(V=0\)。領域 \(0 \le x \le d\) では傾き \(E_1\) の直線で \(V(d)=\displaystyle\frac{1}{4}V_0\) まで上昇します。領域 \(d \le x \le 2d\) では電位は \(V=\displaystyle\frac{1}{4}V_0\) の水平な直線(等電位)となります。領域 \(2d \le x \le 4d\) では再び傾き \(E_1\) の直線で、\(x=2d\) で \(V=\displaystyle\frac{1}{4}V_0\) から出発し、\(x=4d\) で \(V=\displaystyle\frac{3}{4}V_0\)(極板Aの電位)まで上昇します。グラフ全体は連続的につながります。

金属板を挿入したことにより、同じ電荷 \(Q\) でも極板AB間の電位差が \(V_0\) から \(\displaystyle\frac{3}{4}V_0\) に減少しました。これは、金属板の厚さ \(d\) の分だけ実質的な極板間隔が \(4d\) から \(4d-d=3d\) に短縮され、コンデンサーの電気容量が増加した(\(C = Q/V\) なので \(V\) が減少)と解釈できます。この結果は物理的に妥当です。

解答 (2) (模範解答の図a、図bの点線にならってグラフを描いてください。)電場は、BM間 (\(0 \le x < d\)) とMA間 (\(2d < x \le 4d\)) で \(E_1 = \displaystyle\frac{V_0}{4d}\) であり、M内部 (\(d \le x \le 2d\)) では \(0\) です。電位は、\(x=0\) で \(0 \, \text{V}\)、\(x=d\) で \(\displaystyle\frac{1}{4}V_0\)、\(x=2d\) でも \(\displaystyle\frac{1}{4}V_0\)(M内部は等電位)、そして \(x=4d\) で \(\displaystyle\frac{3}{4}V_0\) となり、各区間を直線で結んだ折れ線グラフになります。

問 (3)

思考の道筋とポイント
設問(2)の状態(金属板Mが挿入されており、スイッチSは開いている)から、ここでスイッチSを閉じます。この操作後の電場 \(E(x)\) と電位 \(V(x)\) のグラフ、およびスイッチSを移動した正の電気量とその向きを求めることが要求されています。金属板Mがないときの初期のコンデンサーの電気容量は \(C \, \text{[F]}\) と与えられています。

  1. 電位差の確定: スイッチSを閉じると、コンデンサーは再び電池に接続されるため、極板AとBの間の電位差は、電池の起電力である \(V_0\) になります。
  2. 各領域の電場の計算 (\(E_2\)): 金属板Mの内部(\(d \le x \le 2d\))における電場は、導体の性質から \(0\) です。Mが挿入されていない空間(BM間:\(0 \le x < d\)、MA間:\(2d < x \le 4d\))では、電場の強さは対称性から等しくなると考えられ、これを \(E_2\) とします。
    BM間の距離は \(d\)、MA間の空間の距離は \(4d-2d=2d\) です。これらの電場が存在する区間の合計の長さは \(d+2d=3d\) となります。
    この合計 \(3d\) の区間で、全体の電位差 \(V_0\) が生じる(M内部では電位差がないため)ので、\(V_0 = E_2 \cdot d (\text{BM間}) + 0 \cdot d (\text{M内部}) + E_2 \cdot (2d) (\text{MA間}) = E_2 \cdot (3d)\) という関係が成り立ちます。この式から、新しい電場の強さ \(E_2\) を求めることができます。
  3. 電位 \(V(x)\) の計算: 各領域の電場 \(E_2\) (または0)を用いて、極板B(\(V(0)=0\))を基準として電位を計算していきます。
  4. 移動した電気量の計算:
    • まず、金属板Mがないときの初期の電気容量が \(C\) であることから、\(C = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S}{4d}\) と表せます(ここで \(S\) は極板の面積、\(\varepsilon_0\) は真空の誘電率)。
    • 金属板M(厚さ \(d\))を挿入した状態でのコンデンサーの新しい電気容量を \(C’\) とします。金属板を挿入すると、その厚さの分だけ実質的な極板間隔が減少したと見なせます。つまり、電場が存在する空間の合計の長さは \(4d-d = 3d\) となるため、\(C’ = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S}{3d}\) となります。これと元の容量 \(C\) との関係を求めます。
    • 設問(1)でSを開いたときに蓄えられていた電荷 \(Q_1\) は \(Q_1 = CV_0\) です(Mがない状態での容量 \(C\) を使っています)。
    • 設問(3)でSを閉じた後にコンデンサーに蓄えられる新しい電荷 \(Q_3\) は、新しい容量 \(C’\) と電位差 \(V_0\) を用いて \(Q_3 = C’V_0\) と計算できます。
    • スイッチSを閉じることによって電池から供給された(あるいは電池へ流れ出た)正の電気量は、\(Q_3 – Q_1\) として計算できます。この値の符号から、電荷の移動方向(左向きか右向きか)がわかります。

この設問における重要なポイント

  • スイッチを閉じると、コンデンサーの極板間の電位差が電池の電圧 \(V_0\) に固定されること。
  • 金属板(導体)の内部では電場が \(0\) になること。
  • 金属板を挿入すると、その厚さの分だけ実質的な極板間隔が減少し、その結果として電気容量が増加すること。
  • 電池に接続された状態でコンデンサーの電気容量が変化すると、蓄えられる電荷量が変化し、その差分の電荷が電池との間で移動すること。

具体的な解説と立式
スイッチSを閉じると、極板AB間の電位差は再び電池の起電力 \(V_0\) になります。
金属板Mの内部(\(d \le x \le 2d\) の領域)の電場は、導体の性質により \(0\) です。
BM間(\(0 \le x < d\) の領域)および MA間(\(2d < x \le 4d\) の領域)の空間における電場の強さを \(E_2\) とします。これらの空間では、電場は一様で、かつ同じ強さ \(E_2\) になると考えられます。
BM間の距離は \(d\)、MA間の空間部分の距離は \(4d-2d=2d\) です。
全体の電位差 \(V_0\) は、電場が存在する区間における電位降下の合計として表せるので(M内部では電位降下は0)、
$$V_0 = E_2 \cdot d + 0 \cdot d + E_2 \cdot (2d) = E_2 (d+2d) = 3E_2 d \quad \cdots ⑦$$
この式から、電場の強さ \(E_2\) が決まります。

次に、電位 \(V(x)\) を計算します(極板Bの電位を \(V(0)=0\) とします)。

  • 領域 \(0 \le x \le d\) (BM間): \(V(x) = E_2 x\)。この結果、\(V(d) = E_2 d\)。
  • 領域 \(d \le x \le 2d\) (M内部): M内部は等電位なので、\(V(x) = V(d) = E_2 d\)。
  • 領域 \(2d \le x \le 4d\) (MA間): \(V(x) = V(2d) + E_2 (x-2d) = E_2 d + E_2 (x-2d)\)。
    この結果、極板A (\(x=4d\)) での電位は \(V(4d) = E_2 d + E_2 (2d) = 3E_2 d\)。式⑦よりこれは \(V_0\) に等しくなります。

最後に、移動した電気量を計算します。
金属板Mがないときの初期のコンデンサーの電気容量を \(C\) とすると、\(C = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S}{4d}\) と書けます(ここで \(S\) は極板の面積、\(\varepsilon_0\) は真空の誘電率です)。
設問(1)でスイッチSを開いたときにコンデンサーに蓄えられていた電荷 \(Q_1\) は、
$$Q_1 = CV_0 \quad \cdots ⑧$$
です。
金属板M(厚さ \(d\))を挿入した状態でのコンデンサーの電気容量 \(C’\) を考えます。金属板を挿入すると、その厚さの分だけ実質的な極板間隔が減少したと見なせます。電場が存在する空間の合計の長さは \(4d-d = 3d\) となるため、新しい電気容量 \(C’\) は、
$$C’ = \frac{\varepsilon_0 S}{3d} \quad \cdots ⑨$$
と表せます。ここで、元の容量 \(C = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S}{4d}\) と \(C’\) の関係を見ると、\(\displaystyle\frac{C’}{C} = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S / (3d)}{\varepsilon_0 S / (4d)} = \displaystyle\frac{4d}{3d} = \displaystyle\frac{4}{3}\) となるので、\(C’ = \displaystyle\frac{4}{3}C\) です。
設問(3)でスイッチSを閉じた後、コンデンサーに蓄えられる新しい電荷 \(Q_3\) は、この新しい容量 \(C’\) と電位差 \(V_0\) を用いて、
$$Q_3 = C’V_0 = \frac{4}{3}CV_0 \quad \cdots ⑩$$
と計算できます。
スイッチSを閉じる直前(設問(2)の終了時点)では、極板Aの電荷は \(Q_1 = CV_0\) のままでした。スイッチSを閉じることによって、電池からコンデンサーへ(あるいはコンデンサーから電池へ)電荷が移動し、極板Aの電荷が \(Q_1\) から \(Q_3\) に変化します。この間にスイッチSを移動した正の電気量を \(\Delta Q\) とすると、
$$\Delta Q = Q_3 – Q_1 \quad \cdots ⑪$$
として計算できます。

使用した物理原理/公式

  • 一様な電場と電位差の関係: \(V = Ed\)
  • 導体内部の電場は0(ゼロ)、導体は等電位
  • 平行平板コンデンサーの電気容量の公式: \(C = \displaystyle\frac{\varepsilon S}{d}\)
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
  • 電荷の移動量の計算(変化後の電荷量 - 変化前の電荷量)
計算過程
  1. 電場の強さ \(E_2\) の計算:
    式⑦ (\(V_0 = 3E_2 d\)) の両辺を \(3d\) で割ると、
    $$E_2 = \frac{V_0}{3d}$$
  2. 電位 \(V(x)\) の具体的な式の導出:
    上で求めた \(E_2\) を用いると、

    • 領域 \(0 \le x \le d\) (BM間): \(V(x) = E_2 x = \displaystyle\frac{V_0}{3d}x\)。
      これにより、\(V(d) = E_2 d = \displaystyle\frac{V_0}{3d} \cdot d = \displaystyle\frac{1}{3}V_0\)。
    • 領域 \(d \le x \le 2d\) (M内部): \(V(x) = V(d) = \displaystyle\frac{1}{3}V_0\)。
    • 領域 \(2d \le x \le 4d\) (MA間): \(V(x) = V(2d) + E_2 (x-2d) = \displaystyle\frac{1}{3}V_0 + \displaystyle\frac{V_0}{3d}(x-2d)\)。
      これにより、極板A (\(x=4d\)) での電位は \(V(4d) = \displaystyle\frac{1}{3}V_0 + E_2(2d) = \displaystyle\frac{1}{3}V_0 + \left(\displaystyle\frac{V_0}{3d}\right)(2d) = \displaystyle\frac{1}{3}V_0 + \displaystyle\frac{2}{3}V_0 = V_0\)。これは電池の電圧と一致します。
  3. 移動した正の電気量 \(\Delta Q\) の計算:
    式⑪に、式⑧ (\(Q_1 = CV_0\)) と式⑩ (\(Q_3 = \displaystyle\frac{4}{3}CV_0\)) を代入すると、
    $$\Delta Q = \frac{4}{3}CV_0 – CV_0 = \left(\frac{4}{3}-1\right)CV_0 = \frac{1}{3}CV_0$$
    \(\Delta Q\) が正の値であるということは、正の電荷が極板Aに増加したことを意味します。これは、電池の正極からスイッチSを通って左向きに(極板Aの方向へ)正の電荷が流れ込んだことに対応します。
計算方法の平易な説明

スイッチSを閉じると、コンデンサーの両端の電気的な高さの差(電位差)は、再び電池の電圧 \(V_0\) になります。
金属板Mの中は電場がゼロなので、電気的な坂道はありません。M以外の空気の部分(BM間とMA間、合計の長さは \(3d\))にだけ電気的な坂道(電場 \(E_2\))ができると考えます。この全長 \(3d\) の坂道で全体の高さの差 \(V_0\) が生じるので、坂道の傾き \(E_2\) は \(V_0 \div (3d)\) となります。
電気の高さ(電位)は、板B(高さ \(0 \, \text{V}\))からMの下の面までは傾き \(E_2\) で上がり、Mの中は高さが一定(平ら)、Mの上の面から板Aまではまた傾き \(E_2\) で上がって、最終的に板Aで高さ \(V_0\) になります。
次に、移動した電気の量について考えましょう。金属板Mがないときのコンデンサーの電気を蓄える能力(電気容量)を \(C\) とすると、スイッチSを開く前の電気の量は \(CV_0\) でした。金属板Mを入れると、コンデンサーの隙間が実質的に \(3d\) になったのと同じ効果があり、電気容量は元の \(4/3\) 倍の \(\frac{4}{3}C\) にパワーアップします。スイッチSを閉じたので、このパワーアップしたコンデンサーに蓄えられる新しい電気の量は \(Q’ = (\frac{4}{3}C)V_0 = \frac{4}{3}CV_0\) です。
したがって、スイッチSを閉じることによって増えた(移動した)電気の量は、新しい電気の量から元の電気の量を引いて、\(\frac{4}{3}CV_0 – CV_0 = \frac{1}{3}CV_0\) となります。このプラスの電気が、電池からスイッチSを通って「左向き」に(つまり、極板Aに向かって)流れ込んだことになります。

結論と吟味

(問題で提供されている図や模範解答の図eおよび図fを参照し、それに基づいてグラフを描いてください。)

  • 電場 \(E(x)\) のグラフ:領域BM間(\(0 \le x < d\))とMA間(\(2d < x \le 4d\))では、電場の強さは \(E_2 = \displaystyle\frac{V_0}{3d}\) で一定です。金属板Mの内部(\(d \le x \le 2d\))では、電場の強さは \(E=0\) となります。
  • 電位 \(V(x)\) のグラフ:\(x=0\) で \(V=0\)。領域 \(0 \le x \le d\) では傾き \(E_2\) の直線で \(V(d)=\displaystyle\frac{1}{3}V_0\) まで上昇します。領域 \(d \le x \le 2d\) では電位は \(V=\displaystyle\frac{1}{3}V_0\) の水平な直線(等電位)となります。領域 \(2d \le x \le 4d\) では再び傾き \(E_2\) の直線で、\(x=2d\) で \(V=\displaystyle\frac{1}{3}V_0\) から出発し、\(x=4d\) で \(V=V_0\)(極板Aの電位)まで上昇します。

移動した正の電気量は \(\displaystyle\frac{1}{3}CV_0 \, \text{[C]}\) であり、スイッチSを左向き(電池の正極から極板Aの方向へ)に移動しました。これは、金属板を挿入したことでコンデンサーの電気容量が増加したため、同じ電圧 \(V_0\) でより多くの電荷が蓄えられるようになった結果であり、物理的に妥当です。

解答 (3) (グラフは模範解答の図e、図fにならって描いてください。)電場は、BM間 (\(0 \le x < d\)) とMA間 (\(2d < x \le 4d\)) で \(E_2 = \displaystyle\frac{V_0}{3d}\)、M内部 (\(d \le x \le 2d\)) では \(0\) です。電位は、\(x=0\) で \(0 \, \text{V}\)、\(x=d\) で \(\displaystyle\frac{1}{3}V_0\)、\(x=2d\) でも \(\displaystyle\frac{1}{3}V_0\)、そして \(x=4d\) で \(V_0\) となり、各区間を直線で結んだ折れ線グラフになります。移動した正の電気量は \(\displaystyle\frac{1}{3}CV_0 \, \text{[C]}\) で、Sを左向きに移動しました。

問 (4)

思考の道筋とポイント
設問(3)の後、スイッチSを再び開き、極板Aを下へ \(d\) だけ下げてAB間の間隔を \(3d\) にします(金属板Mはそのままの位置にあるとします)。このときのAB間の電位差を求めます。次に、金属板Mを取り除き、同じ形状で同じ位置(Bから \(d\) の位置に厚さ \(d\))に比誘電率が2の誘電体Dを置きます。この最終状態での電場 \(E(x)\) と電位 \(V(x)\) のグラフを描くことが求められています。

  1. Sを開いた後の電荷保存: スイッチSを開いたので、極板Aに蓄えられている電荷 \(Q’_3 = \displaystyle\frac{4}{3}CV_0\) は、この後の操作(Aを下げる、MをDに置き換える)の間、変化せずに保存されます。
  2. Aを下げた後の電位差(金属板Mあり):
    • AB間の全体の間隔は \(3d\) になります。金属板Mは、設問(2)(3)と同様にBから \(d\) の位置に厚さ \(d\) で存在すると考えます。
    • したがって、極板の配置は、B – (空気層 \(d\)) – M (金属 \(d\)) – (空気層 \(d\)) – A となります。
    • 極板Aの電荷 \(Q’_3\) が保存されているため、空気層部分(BM間とMA間)の電場の強さは、設問(3)で計算した \(E_2 = \displaystyle\frac{V_0}{3d}\) のまま変わりません(極板の面積 \(S\) が同じで電荷密度が変わらないため)。
    • 金属板M内部の電場は \(0\) です。
    • このときのAB間の電位差は、BM間の電位差 (\(E_2 \cdot d\)) と MA間の電位差 (\(E_2 \cdot d\)) の合計となります(M内部の電位差は0)。
  3. Mを取り除き誘電体Dを挿入後(Sは開いたまま)の電場と電位:
    • 極板Aの電荷 \(Q’_3\) は依然として保存されています。AB間の全体の間隔も \(3d\) のままです。
    • 誘電体Dは、元のMと同じ位置(Bから \(d\) の位置に厚さ \(d\))に置かれます。
    • 電荷 \(Q’_3\) が保存されているため、この電荷が作る電気力線の総本数も不変です。これにより、コンデンサー内の空気層部分(BD間:\(0 \le x < d\)、DA間:\(2d < x \le 3d\))の電場の強さは、金属板Mがあったときの空気層の電場の強さ \(E_2 = \displaystyle\frac{V_0}{3d}\) と同じになります。
    • 誘電体Dの内部(\(d \le x \le 2d\))の電場の強さ \(E_D\) は、空気中での電場の強さ \(E_2\) を誘電体Dの比誘電率 \(\varepsilon_r=2\) で割ったもの、つまり \(E_D = E_2 / \varepsilon_r = E_2 / 2\) となります。
    • これらの各領域の電場を用いて、電位 \(V(x)\) のグラフを描きます(極板Bで \(V(0)=0\) を基準)。

この設問における重要なポイント

  • スイッチが開いている(回路が開放されている)間は、コンデンサーの極板に蓄えられた電荷量が常に保存されるという電気量保存則の徹底した適用。
  • 電荷量が保存されている場合、空気層(または真空層)部分における電場の強さは、極板の面積が変わらなければ、基本的には変化しない(より正確には、電束密度が保存されることから導かれる)。
  • 誘電体を電場中に挿入すると、その内部の電場の強さが、同じ電束密度(またはそれに相当する外部電場)に対して \(1/\varepsilon_r\) 倍に弱められる(\(\varepsilon_r\) は比誘電率)という効果。
  • AB間の全体の距離が変化することに注意し、各部分の厚み(空気層、金属板、誘電体)を正確に把握すること。

具体的な解説と立式
スイッチSを開いたとき、極板Aの電荷は \(Q’_3 = \displaystyle\frac{4}{3}CV_0\) であり、この値は以降の操作で保存されます。

Aを \(d\) 下げた後のAB間の電位差(金属板Mあり)
極板AB間の新しい間隔は \(3d\) です。金属板MはBから \(d\) の位置に厚さ \(d\) で存在するので、各部分の構成は以下のようになります。

  • BM間(空気層):距離 \(d\)
  • M内部(金属):距離 \(d\)
  • MA間(空気層):距離 \(3d – (d+d) = d\)

極板Aの電荷 \(Q’_3\) が保存されているため、極板の面電荷密度は変化しません。したがって、空気層部分(BM間およびMA間)における電場の強さは、設問(3)のときの \(E_2 = \displaystyle\frac{V_0}{3d}\) のままです。
金属板M内部の電場は \(0\) です。
よって、このときの極板AB間の電位差 \(V_{\text{AB(Mあり)}}\) は、
$$V_{\text{AB(Mあり)}} = E_2 \cdot d (\text{BM間}) + 0 \cdot d (\text{M内部}) + E_2 \cdot d (\text{MA間})$$
$$V_{\text{AB(Mあり)}} = E_2 d + E_2 d = 2E_2 d \quad \cdots ⑫$$
これに \(E_2 = \displaystyle\frac{V_0}{3d}\) を代入すると、
$$V_{\text{AB(Mあり)}} = 2 \left(\frac{V_0}{3d}\right) d = \frac{2}{3}V_0 \quad \cdots ⑬$$
となります。

Mを取り除き、誘電体Dを挿入した後の電場 \(E(x)\) と電位 \(V(x)\)
極板Aの電荷 \(Q’_3 = \displaystyle\frac{4}{3}CV_0\) は依然として保存されています。AB間の間隔も \(3d\) のままです。
誘電体D(厚さ \(d\)、比誘電率 \(\varepsilon_r=2\))は、元の金属板Mと同じ位置(Bから \(d\) の位置、つまり \(d \le x \le 2d\) の範囲)に置かれます。
極板Aの電荷 \(Q’_3\) が保存されているため、この電荷が作る電気力線の総本数も不変です。このため、コンデンサー内の空気層部分(BD間:\(0 \le x < d\)、およびDA間:\(2d < x \le 3d\))における電場の強さは、金属板Mがあったときの空気層の電場の強さ \(E_2 = \displaystyle\frac{V_0}{3d}\) と同じになります。
誘電体Dの内部(\(d \le x \le 2d\) の範囲)の電場の強さ \(E_D\) は、空気中での電場の強さ \(E_2\) を誘電体Dの比誘電率 \(\varepsilon_r\) で割ったものになります。
$$E_D = \frac{E_2}{\varepsilon_r} = \frac{E_2}{2} = \frac{1}{2} \left(\frac{V_0}{3d}\right) = \frac{V_0}{6d} \quad \cdots ⑭$$
次に、電位 \(V(x)\) を計算します(極板Bの電位を \(V(0)=0\) とします)。

  • 領域 \(0 \le x \le d\) (BD間、空気層): 電場の強さは \(E_2\)。
    \(V(x) = E_2 x\)。
    したがって、\(V(d) = E_2 d = \left(\displaystyle\frac{V_0}{3d}\right) d = \displaystyle\frac{1}{3}V_0\)。
  • 領域 \(d \le x \le 2d\) (誘電体D内部): 電場の強さは \(E_D = \displaystyle\frac{V_0}{6d}\)。
    この区間の電位差は \(E_D \cdot d = \left(\displaystyle\frac{V_0}{6d}\right) d = \displaystyle\frac{1}{6}V_0\)。
    誘電体Dの上面 (\(x=2d\)) における電位は、\(V(2d) = V(d) + E_D d = \displaystyle\frac{1}{3}V_0 + \displaystyle\frac{1}{6}V_0 = \displaystyle\frac{2V_0+V_0}{6} = \displaystyle\frac{3V_0}{6} = \displaystyle\frac{1}{2}V_0\)。
  • 領域 \(2d \le x \le 3d\) (DA間、空気層): 電場の強さは \(E_2\)。
    極板A (\(x=3d\)) における電位 \(V_A\) は、\(V_A = V(2d) + E_2 (3d-2d) = \displaystyle\frac{1}{2}V_0 + E_2 d = \displaystyle\frac{1}{2}V_0 + \left(\displaystyle\frac{V_0}{3d}\right) d = \displaystyle\frac{1}{2}V_0 + \displaystyle\frac{1}{3}V_0 = \displaystyle\frac{3V_0+2V_0}{6} = \displaystyle\frac{5}{6}V_0\)。

使用した物理原理/公式

  • 電気量保存則(スイッチが開いているため)
  • 一様な電場と電位差の関係: \(V=Ed\)
  • 導体内部の電場は0(ゼロ)
  • 誘電体内部の電場の低減効果: \(E_{\text{誘電体}} = E_{\text{空気}} / \varepsilon_r\)
計算過程
  1. Aを \(d\) 下げた後のAB間の電位差 \(V_{\text{AB(Mあり)}}\) の計算
    スイッチSを開いた後の極板Aの電荷は \(Q’_3 = \displaystyle\frac{4}{3}CV_0\) で保存されます。
    極板AB間の新しい間隔は \(3d\) です。金属板Mの配置を考慮すると、空気層の部分はBM間(距離 \(d\))とMA間(距離 \(d\))になります。
    空気層部分の電場の強さは、設問(3)と同じ \(E_2 = \displaystyle\frac{V_0}{3d}\) です。
    金属板M内部の電場は \(0\) です。
    したがって、AB間の電位差は、\(V_{\text{AB(Mあり)}} = E_2 \cdot d (\text{BM間}) + 0 \cdot d (\text{M内部}) + E_2 \cdot d (\text{MA間}) = 2E_2 d\)。
    これに \(E_2 = \displaystyle\frac{V_0}{3d}\) を代入すると、\(V_{\text{AB(Mあり)}} = 2 \left(\displaystyle\frac{V_0}{3d}\right) d = \displaystyle\frac{2}{3}V_0\)。
  2. Mを取り除き、誘電体Dを挿入した後の電場 \(E(x)\) と電位 \(V(x)\) の計算
    極板Aの電荷 \(Q’_3\) は引き続き保存されます。AB間の間隔も \(3d\) のままです。
    誘電体Dは元のMと同じ位置(\(d \le x \le 2d\))に置かれます。

    • 空気層部分(BD間:\(0 \le x < d\)、およびDA間:\(2d < x \le 3d\))の電場の強さは、上記の \(E_2 = \displaystyle\frac{V_0}{3d}\) のままです。
    • 誘電体Dの内部(\(d \le x \le 2d\))の電場の強さ \(E_D\) は、\(E_D = \displaystyle\frac{E_2}{\varepsilon_r} = \displaystyle\frac{E_2}{2} = \displaystyle\frac{1}{2} \left(\displaystyle\frac{V_0}{3d}\right) = \displaystyle\frac{V_0}{6d}\)。

    電位 \(V(x)\) を極板B (\(V(0)=0\)) を基準として計算します。

    • \(V(d) = E_2 \cdot d = \left(\displaystyle\frac{V_0}{3d}\right) d = \displaystyle\frac{1}{3}V_0\)。
    • \(V(2d) = V(d) + E_D \cdot d = \displaystyle\frac{1}{3}V_0 + \left(\displaystyle\frac{V_0}{6d}\right) d = \displaystyle\frac{1}{3}V_0 + \displaystyle\frac{1}{6}V_0 = \displaystyle\frac{2V_0 + V_0}{6} = \displaystyle\frac{3V_0}{6} = \displaystyle\frac{1}{2}V_0\)。
    • 極板Aの電位 \(V_A = V(3d) = V(2d) + E_2 \cdot (3d-2d) = \displaystyle\frac{1}{2}V_0 + E_2 \cdot d = \displaystyle\frac{1}{2}V_0 + \left(\displaystyle\frac{V_0}{3d}\right) d = \displaystyle\frac{1}{2}V_0 + \displaystyle\frac{1}{3}V_0 = \displaystyle\frac{3V_0 + 2V_0}{6} = \displaystyle\frac{5}{6}V_0\)。
計算方法の平易な説明

スイッチSを開いているので、極板Aの電気の量(電荷 \(Q’_3\))はずっと変わりません。
まず、Aの板を下に \(d\) だけずらすと、AとBの間の全体の距離は \(3d\) になります。金属板Mは元の位置にあるので、空気の部分はMの上と下にそれぞれ \(d\) ずつの厚さになります。Aの電気の量が変わらないので、空気の部分の電気の強さ(電場 \(E_2\))も変わりません(設問(3)と同じ \(E_2 = V_0/(3d)\) です)。金属板Mの中は電場がゼロなので、AとBの電気的な高さの差(電位差)は、空気の部分の高さの差だけを合計して、\(E_2 \times d + E_2 \times d = 2E_2 d = \frac{2}{3}V_0\) になります。

次に、この金属板Mを取り出して、代わりに誘電体D(電気を弱める効果が通常の空気の2倍ある特別な物質)を同じ場所に入れます。Aの電気の量 \(Q’_3\) はやっぱり変わりませんから、空気の部分の電気の強さ \(E_2\) も変わりません。しかし、誘電体Dの中では電気が \(1/2\) に弱められて \(E_D = E_2/2 = V_0/(6d)\) になります。
電気の高さ(電位)をBから順に見ていくと、

  • BからDの下の面まで(距離 \(d\)、空気)は、傾き \(E_2\) で高さが \(E_2 d = (1/3)V_0\) になります。
  • Dの中(厚さ \(d\)、誘電体)は、傾きが半分の \(E_D\) で高さが \(E_D d = (1/6)V_0\) だけ上がります。なので、Dの上の面の高さは \((1/3)V_0 + (1/6)V_0 = (1/2)V_0\) です。
  • Dの上の面からAまで(距離 \(d\)、空気)は、また傾き \(E_2\) で高さが \(E_2 d = (1/3)V_0\) だけ上がります。なので、Aの高さは \((1/2)V_0 + (1/3)V_0 = (5/6)V_0\) になります。
結論と吟味

極板Aを下げた後のAB間の電位差は \(\displaystyle\frac{2}{3}V_0 \, \text{[V]}\) です。
(金属板Mを誘電体Dに置き換えた後の電場と電位のグラフは、問題で提供されている図や模範解答の図iおよび図jを参照し、それに基づいてグラフを描いてください。)

  • 電場 \(E(x)\) のグラフ:領域BD間(\(0 \le x < d\)) とDA間(\(2d < x \le 3d\)) では、電場の強さは \(E_2 = \displaystyle\frac{V_0}{3d}\) で一定です。誘電体Dの内部(\(d \le x \le 2d\)) では、電場の強さは \(E_D = \displaystyle\frac{V_0}{6d}\) となります。
  • 電位 \(V(x)\) のグラフ:\(x=0\) で \(V=0\)。領域 \(0 \le x \le d\) では傾き \(E_2\) の直線で \(V(d)=\displaystyle\frac{1}{3}V_0\) まで上昇。領域 \(d \le x \le 2d\) では傾き \(E_D\) の直線で \(V(2d)=\displaystyle\frac{1}{2}V_0\) まで上昇。領域 \(2d \le x \le 3d\) では傾き \(E_2\) の直線で \(V(3d)=\displaystyle\frac{5}{6}V_0\)(極板Aの電位)まで上昇します。

スイッチが開いている(電荷量一定)の状態で誘電体を挿入すると、誘電体内部の電場が弱められ、結果として全体の電位差(この場合は \(V_A = (5/6)V_0\))が、もし誘電体がなくすべて空気層だった場合(その場合の電位差は電荷一定なので \(E_2 \times 3d = V_0\) とはならない点に注意が必要ですが、Mがあったときの \((2/3)V_0 = (4/6)V_0\) と比較して)変化しています。この変化は誘電体の分極効果を反映しており、物理的に妥当です。

解答 (4) AB間の電位差: \(\displaystyle\frac{2}{3}V_0 \, \text{[V]}\)。EとVのグラフ: (模範解答の図i、図jにならってグラフを描いてください。)電場は、BD間 (\(0 \le x < d\)) とDA間 (\(2d < x \le 3d\)) で \(E_2=\displaystyle\frac{V_0}{3d}\)、誘電体D内部 (\(d \le x \le 2d\)) で \(E_D=\displaystyle\frac{V_0}{6d}\)。電位は、\(x=0\) で \(0 \, \text{V}\)、\(x=d\) で \(\displaystyle\frac{1}{3}V_0\)、\(x=2d\) で \(\displaystyle\frac{1}{2}V_0\)、そして \(x=3d\) で \(\displaystyle\frac{5}{6}V_0\) となり、各区間を直線で結んだ折れ線グラフになります。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • コンデンサーの基本関係式と性質:
    • 核心:コンデンサーに蓄えられる電荷 \(Q\)、極板間の電位差 \(V\)、そして電気容量 \(C\) の間には、常に \(Q=CV\) という関係が成り立ちます。 また、平行平板コンデンサーの電気容量は、極板の面積 \(S\)、極板間の距離 \(d\)、そして極板間を満たす物質の誘電率 \(\varepsilon\) を用いて \(C = \varepsilon S/d\) と表されます。
    • 理解のポイント:これらの関係式はコンデンサーを扱う上での出発点です。問題の条件(スイッチが開いているか閉じているか、何が挿入されているかなど)に応じて、これらの量がどのように変化し、あるいは保存されるのかを見極めることが重要です。
  • 一様な電場と電位の関係:
    • 核心:理想的な平行平板コンデンサーの極板間には、一様な電場(どこでも同じ強さと向きの電場)が形成されます。この電場の強さを \(E\)、極板間の距離を \(d\) とすると、極板間の電位差 \(V\) は \(V=Ed\) となります。
    • 理解のポイント:電位は、電場の強さに距離を掛けたものとして理解でき、電位のグラフの傾きは電場の強さ(のマイナス符号をつけたもの)に対応します。電場が一様であれば電位は直線的に変化し、電場が0(ゼロ)であれば電位は一定(等電位)になります。
  • 導体の性質(静電平衡時):
    • 核心:導体の内部では電場は常に0(ゼロ)であり、その結果、導体全体(表面も内部も)は等電位となります。
    • 理解のポイント:この問題で金属板Mを挿入した場合、Mの内部の電場は0になり、M全体が同じ電位になるという点が、電場と電位のグラフを描く上で非常に重要でした。これは静電誘導によって導体表面に電荷が再配置され、内部の電場を打ち消すためです。
  • 静電誘導と誘電分極:
    • 核心:導体を電場中に置くと静電誘導により表面に電荷が現れ内部電場を0にします。誘電体を電場中に置くと誘電分極により内部の電場を弱めます。
    • 理解のポイント:金属板の挿入は静電誘導の結果として内部電場が0になるのに対し、誘電体の挿入は誘電分極の結果として内部電場が \(1/\varepsilon_r\) 倍(\(\varepsilon_r\) は比誘電率)に弱められるという違いを明確に区別することが大切です。
  • 電気量保存則:
    • 核心:電気的に孤立した導体系(例えば、電源から切り離されたコンデンサーの極板)では、その部分系が持つ総電荷量は変化せずに保存されます。
    • 理解のポイント:この問題では、スイッチSが開いている状態でコンデンサーに何らかの操作(金属板の挿入、極板の移動、誘電体の挿入など)を加えた場合、極板Aに蓄えられている電荷 \(Q\) は一定に保たれる、という条件が繰り返し用いられました。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • 複数の異なる誘電体や金属板が層状に挿入された、より複雑な複合コンデンサーの電気容量、内部の電場や電位分布を計算する問題。
    • コンデンサーと抵抗、コイルなどを含む直流回路や交流回路において、スイッチ操作によって過渡現象や定常状態が変化する問題(特に電荷や電位の時間変化)。
    • コンデンサーに蓄えられる静電エネルギー(\(U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2}QV = \frac{Q^2}{2C}\))が、様々な操作によってどのように変化するか、あるいは外部からされた仕事との関係を問う問題。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 回路の状態(スイッチの開閉)の確認: まず、コンデンサーが電源に接続されている(スイッチが閉じている)のか、それとも電源から切り離されて孤立している(スイッチが開いている)のかを真っ先に確認します。これにより、電位差が一定なのか、それとも電荷量が一定なのか、という考察の出発点が決まります。
    2. 挿入されている物質の種類の特定: コンデンサーの極板間に挿入されているものが、金属板(導体)なのか、それとも誘電体なのかを正確に見分けます。それぞれで内部の電場の扱いや電気容量への影響の仕方が大きく異なります。
    3. 幾何学的パラメータの変化の把握: 極板間の距離や極板の面積が操作によって変化する場合、電気容量の基本式 \(C=\varepsilon S/d\) に立ち返り、容量がどのように変わるかをまず評価します。
    4. 電位の基準点の確認: 電位について考察する際には、問題文中でどこが電位の基準(\(0 \, \text{V}\))として設定されているか(あるいは自分で設定する必要があるか)を必ず確認します。これによって、各点の電位の具体的な値が決まります。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
    • 電場と電位のグラフを描く問題では、両者は密接に関連していることを常に意識しましょう。電場のグラフで \(x\) 軸とグラフ線で囲まれる面積がその区間の電位差を表し、電位のグラフの各点での傾きがその点での電場の強さ(のマイナス符号をつけたもの)を表します。
    • 金属板を挿入した場合、その金属板の厚さの分だけ、実質的な「電場が存在する空間」が減少したと考えることができる場合があります。これが電気容量の変化に繋がります。
    • 誘電率や比誘電率の扱いは正確に行いましょう。特に、空気(または真空)の比誘電率は1であることを基本とします。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • スイッチが開いている(電荷量一定)のに、電位差も一定だと誤解してしまう:
    • 現象:コンデンサーが充電された後にスイッチが開かれ、電気的に孤立した状態で、極板間隔を変えたり誘電体を挿入したりした場合に、極板間の電位差も元の電池の電圧のまま変わらない、と勘違いしてしまう。
    • 対策:スイッチが開いているときは、コンデンサーの極板上の電荷 \(Q\) が一定に保たれます。このとき、電位差 \(V\) は \(V=Q/C\) という関係で決まるため、電気容量 \(C\) が操作によって変化すれば、電位差 \(V\) もそれに応じて変化することを理解しましょう。電位差が一定に保たれるのは、スイッチが閉じていて電池に接続されている場合です。
  • 金属板(導体)と誘電体の電気的な効果の混同:
    • 現象:金属板を挿入した場合の内部の電場の扱いを、誘電体を挿入した場合と同じように考えてしまう(例えば、金属板内部の電場も \(E/\varepsilon_r\) のように扱ってしまう)、あるいは逆に、誘電体内部の電場を \(0\)(ゼロ)としてしまう。
    • 対策:金属板(導体)の内部では、静電誘導によって外部電場が完全に打ち消されるため、電場は常に \(0\) です。一方、誘電体の内部では、誘電分極によって電場は弱められますが、完全に \(0\) になるわけではなく、元の電場の \(1/\varepsilon_r\) 倍(\(\varepsilon_r\) はその誘電体の比誘電率)になります。この違いを明確に区別しましょう。
  • 「電位」と「電位差」の区別があいまいなことによる混乱:
    • 現象:ある特定の点の「電位」(基準点からの電気的な高さ)を求められているのに、2つの異なる点の間の「電位差」(電気的な高さの差)を答えてしまう、またはその逆の誤りをしてしまう。
    • 対策:「電位」は、ある基準点(例えば接地された点や無限遠点)を \(0 \, \text{V}\) としたときの、各点の相対的な電気的な高さを表すスカラー量です。一方、「電位差」は、2つの特定の点の間の電位の差を指します。コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) における \(V\) は、2つの極板間の「電位差」であることに注意が必要です。問題で何が問われているのかを正確に把握し、これらの用語を正しく使い分けることが重要です。
  • 比誘電率の適用方法の誤り(特に電気容量や電場の計算において):
    • 現象:誘電体を挿入した際に、誘電体内部の電場を誤って \(\varepsilon_r E\)(\(\varepsilon_r\) 倍してしまう)と計算したり、電気容量の式で比誘電率 \(\varepsilon_r\) を分母にかけてしまったりする(容量を小さく見積もってしまう)。
    • 対策:誘電体を電場中に置くと、その内部の電場は元の電場の \(1/\varepsilon_r\) 倍に「弱められ」ます。また、コンデンサーの極板間を一様に誘電体で満たした場合、その電気容量は真空中の場合の \(\varepsilon_r\) 倍に「増加」します。誘電体は電場を弱める効果があり、それによって同じ電位差でもより多くの電荷を蓄えられるようになる(つまり容量が増える)と理解しましょう。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 電場線(電気力線)のイメージ:平行平板コンデンサーの極板間には、一方の極板からもう一方の極板へ向かう一様な電場線(電気力線)が分布しているとイメージします。金属板を挿入すれば、その金属板の内部では電場線が途切れて存在しなくなり(内部電場0)、誘電体を挿入すれば、その誘電体の内部では電場線の密度が薄くなる(電場が弱まる)といった具体的なイメージを持つことが有効です。
    • 等電位線(または等電位面)のイメージ:電場線に常に垂直な方向に等電位線(3次元的には等電位面)が存在することをイメージします。導体は全体がひとつの等電位面を形成します。電位のグラフは、この等電位線の「高さ」を表現したものと解釈できます。
    • 電荷分布のイメージ:静電誘導によって金属板の表面にどのような符号の電荷が現れるか、あるいは誘電分極によって誘電体の表面(や内部)にどのような分極電荷が現れるかを具体的にイメージすることで、電場の変化の理由がより明確になります。
    • 電位のグラフの物理的解釈:\(x\)軸に沿って電位がどのように変化していくかを、文字通り「電気的な坂道」に例えてイメージします。電場が強い場所は急な坂道、電場が0(ゼロ)の場所は平坦な道(高さが変わらない)と考えると、グラフの形状が直感的に理解しやすくなります。
  • 図(特にグラフ)を描く際に注意すべき点は何か:
    • 電場グラフ(\(E-x\)グラフ):各領域で電場の強さが一定値(一様電場なので水平線)になるか、あるいは0(ゼロ)になるかを明確に区別して描きます。異なる領域の境界で電場の強さが不連続に変化することも許容されます。
    • 電位グラフ(\(V-x\)グラフ):電位のグラフは必ず連続的につながるように描きます(電位が空間的に突然ジャンプすることはありません)。導体部分は等電位なので、グラフ上では水平な線になります。電位グラフの各点における傾きが、その点での電場の強さ(のマイナス符号をつけたもの)と対応していることを意識して、傾きの変化を描き分けましょう。
    • \(x\)軸上の重要な点の位置と、それに対応する電場・電位の値を正確にプロットする:例えば、金属板や誘電体の境界 (\(x=d, 2d\) など)や、極板の位置 (\(x=0, 3d, 4d\) など)で、電場や電位がどのような値を取るのかを計算し、それらの点を正確にグラフ上に示すことが、正しいグラフを描く上で不可欠です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(V=Ed\) (一様な電場における電位差):
    • 選定理由:平行平板コンデンサーの極板間のように、電場が空間的に一様であると見なせる区間における電位差を求めるための、最も基本的かつ簡単な公式であるため選びました。
    • 適用根拠:この公式は、電場 \(E\) がその区間内で一定の強さと向きを持ち(つまり一様であり)、かつ距離 \(d\) がその電場の方向に沿って測られたものである場合に限り適用できます。
  • \(Q=CV\) (コンデンサーの基本定義式):
    • 選定理由:コンデンサーに蓄えられる電荷 \(Q\)、そのコンデンサーの電気容量 \(C\)、そして極板間の電位差 \(V\) の間の普遍的な関係を表す、コンデンサーの最も基本的な定義式であるため選びました。
    • 適用根拠:どのような形状のコンデンサーであっても、この関係式は成り立ちます。ただし、式中の \(V\) は2つの極板の「間」の電位差を指すことに注意が必要です。
  • \(C = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S}{d_{\text{eff}}}\) (金属板挿入時の実効的な電気容量の考え方):
    • 選定理由:金属板をコンデンサーの極板間に挿入した場合の電気容量を、あたかも極板間隔が変化したかのように見なして計算するために、この考え方(または類似の導出)を用いました。
    • 適用根拠:金属板の厚さの分だけ、電場が存在する空間が実質的に減少し、あたかも真空部分の極板間隔が \(d_{\text{eff}}\)(元の間隔から金属板の厚さを引いたもの)になったかのように振る舞うため、このような類推が成り立ちます。
  • \(C’ = \varepsilon_r C_0\) (誘電体を一様に満たした場合の電気容量)または \(E’ = E_0/\varepsilon_r\) (誘電体内部の電場):
    • 選定理由:誘電体をコンデンサーの極板間に挿入した際に、電気容量や内部の電場がどのように変化するかを定量的に扱うために、これらの関係式を用いました。
    • 適用根拠:これらの関係は、誘電体を極板間に一様に満たした場合に厳密に成り立ちます。誘電体を部分的に挿入した場合は、より複雑な計算が必要になることもありますが、基本的な効果(容量増加、電場減少)の方向性は同じです。この問題では、誘電体Dが極板間の一部を一様に満たすケースとして扱われています。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 初期状態の物理量の確定: まず、最初の充電操作が完了しスイッチSが開かれた直後の状態について、コンデンサーに蓄えられている電荷 \(Q\)、極板間の電位差 \(V\)、内部の電場 \(E\)、そして電気容量 \(C\) の関係を明確に整理します。
  2. 各操作の分析と不変量の特定: 次に、問題文中で指示される各操作(スイッチの開閉、金属板や誘電体の挿入・移動など)が何であるかを正確に把握し、その操作の結果として、どの物理量(例えば電荷 \(Q\) なのか、電位差 \(V\) なのか)が保存されるのか(あるいは一定に保たれるのか)を明確にします。これが考察の最も重要な分岐点となります。
  3. 電場の計算: 特定された不変量(または固定された量)と、コンデンサーの幾何学的条件(極板間隔、挿入物の位置や厚さなど)に基づいて、関係式 \(V=Ed\) やガウスの法則(あるいはそれから導かれる電荷と電場の関係)を用いて、各領域における電場の強さを求めます。特に、導体内部の電場は \(0\) になることを常に念頭に置きます。
  4. 電位の計算: 電位の基準点(この問題では極板B)から出発し、各領域の電場の強さを用いて、電位を空間的に積分する形で(あるいは \(V=Ed\) の関係を区間ごとに適用して)各点の電位を順次求めていきます。導体部分は等電位であることに注意し、電位のグラフが連続的につながるようにします。
  5. 電気容量の計算(必要な場合): もし電気容量そのものが問われているか、あるいは計算の途中で必要になる場合は、コンデンサーの形状(極板面積 \(S\)、実効的な極板間隔 \(d\)、挿入された物質の誘電率 \(\varepsilon\))から \(C=\varepsilon S/d\) の公式を用いて計算するか、あるいは電荷 \(Q\) と電位差 \(V\) を個別に求めてから定義式 \(C=Q/V\) を用いて導出します。
  6. 電荷の移動量の計算(必要な場合): スイッチを閉じてコンデンサーが電池に再接続された場合など、コンデンサーの状態が変化し、それに伴って蓄えられる電荷量が変わるときには、変化後の電荷量から変化前の電荷量を引くことで、電池との間で移動した電荷の量を計算します。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 比率の扱いの正確性: この問題では、電気容量が元の \(4/3\) 倍になったり、電位が元の \(V_0\) の \(3/4\) 倍になったりといった、比率を用いた表現や計算が多く登場します。これらの比率を扱う際に、逆数を取ってしまったり、掛け算と割り算を混同したりしないように、慎重に計算を進めましょう。
  • 分数計算の習熟: 電気容量や電位の具体的な式は、分数を含む形になることがよくあります。通分や約分といった基本的な分数計算を迅速かつ正確に行えるようにしておくことが、計算ミスを減らす上で重要です。
  • 文字記号と添え字の明確な区別: \(E_1, E_2, V_0, C, C’\) など、コンデンサーの状態や考察している対象によって、異なる記号や添え字が用いられます。これらを混同してしまうと、誤った式を立てたり、間違った値を代入したりする原因になるため、それぞれの記号が何を表しているのかを常に明確に意識するようにしましょう。
  • グラフの軸とスケール(目盛り)の確認: 電場や電位のグラフを描く際には、横軸と縦軸がそれぞれどの物理量を表しているのか、そして各軸の目盛りの値が物理的に正しい値(計算結果と一致しているか)を示しているのかを、常に確認する習慣をつけましょう。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な直感や既知の傾向との照合:
    • 例えば、金属板をコンデンサーに挿入した場合、実質的な極板間隔が減少するので、電気容量は増加するはずです。もし電荷量が一定なら、\(V=Q/C\) の関係から電位差は減少するはず、といった直感的な予測と計算結果が一致するかどうかを確認します。
    • 誘電体を挿入した場合も同様に、電気容量は増加するはずです。電荷量が一定なら電位差は減少し、内部の電場も弱まるはずです。
    • スイッチを閉じて電池に再接続すれば、極板間の電位差は電池の電圧に戻るはずです。
  • 極端な条件や単純なケースを想定して結果を検証する:
    • もし挿入した金属板の厚さが \(0\)(ゼロ)であったなら、それは何も挿入していないのと同じ状態に戻るはずなので、計算結果もそのようになるかを確認します。
    • もし挿入した誘電体の比誘電率が \(1\)(つまり空気や真空と同じ)であったなら、それも何も挿入していないのと同じ状態になるはずなので、結果が一致するかどうかを確認します。
  • グラフの連続性や傾きの物理的意味の確認:
    • 電位のグラフは、物理的にあり得ない不連続なジャンプをしていないか(必ず連続的につながっているか)を確認します。
    • 電位のグラフの傾きが急なところ(絶対値が大きいところ)は電場が強く、傾きが緩やかなところや平坦なところ(傾きが \(0\))は電場が弱いか \(0\) である、という基本的な関係がグラフ上で成り立っているかを確認します。

問題17 (名古屋大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、まず平行平板コンデンサーの極板間に働く引力の大きさを静電エネルギーと仕事の関係から導出し(パートI)、次にその結果を利用して、ばねで支えられた極板と導線で吊り下げられた極板からなるコンデンサー系における力のつり合いや、導線が切れる条件、さらには導線が切れた後の極板の運動について考察する(パートII)、電磁気学と力学が融合した問題です。

与えられた条件
  • パートI:
    • 平行平板コンデンサー: 極板面積 \(S\)、初期の極板間隔 \(d\)、極板の電荷 \(\pm Q\)。
    • 操作: 一方の極板を固定し、他方を外力で静かに微小距離 \(\Delta d\) だけ間隔を増加させる。
    • 空気の誘電率: \(\varepsilon_0\)。
  • パートII:
    • 極板A: 面積 \(S\)、質量 \(m\)、絶縁体の縁付き、定点Pから細い導線で吊り下げ。
    • 極板B: 面積 \(S\)、質量 \(m\)、金属製のばね(自然長 \(l_0\))で支持。
    • 導線: 質量 \(5m\) 以上の物体を吊り下げると切れる。
    • 支持台D: Aの落下を支える。
    • 初期状態(電圧計の読みが0のとき): ばねの長さ \(0.99l_0\)、AとBとの距離 \(1.01l_0\)。これから、初期のAと床との間の距離は \(0.99l_0 + 1.01l_0 = 2l_0\) と計算できます。
    • 電圧 \(V_0\) 時: ばねの長さ \(l_0\)(自然長)、AB間距離も \(l_0\)。
    • 電圧 \(V_1\)、ばねの長さ \(l_1\) 時: 導線が切れる。
    • 導線切断後: Aは \(0.5l_0\) 落下して支持台Dに支えられて停止。
問われていること
  • I-(1) 極板間引力の大きさ \(F\) を、電荷 \(Q\) の関数として、また電位差 \(V\) の関数として表す。
  • II-(2) ばね定数 \(k\) を \(m, g, l_0\) で表す。電圧 \(V_0\) を \(m, g, l_0, \varepsilon_0, S\) で表す。ばねの長さ \(l_1\) を \(l_0\) で表す。電圧 \(V_1\) を \(V_0\) で表す。
  • II-(3) 導線が切れた後、AがDで止まったときのばねの長さ。
  • (コラムQ) II-(3)の後、Bを少し押し下げて放したときのBの振動の周期 \(T\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、コンデンサーの基本的な性質である静電エネルギーと極板間引力についての理解を深めるとともに、それらの力が関わる力学的な現象(力のつり合いや振動)を解析する能力を試すものです。パートIで得られる極板間引力の表現が、パートIIの力学的な考察の基礎となります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 平行平板コンデンサーの電気容量: 極板の面積を \(S\)、極板間の距離を \(d\)、極板間を満たす物質の誘電率を \(\varepsilon\)(この問題の空気中では \(\varepsilon_0\))とすると、電気容量 \(C\) は \(C = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S}{d}\) で与えられます。
  2. コンデンサーの静電エネルギー: コンデンサーに電荷 \(Q\) が蓄えられ、極板間の電位差が \(V\)、電気容量が \(C\) のとき、蓄えられる静電エネルギー \(U\) は、\(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \displaystyle\frac{1}{2}QV = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) のいずれの形でも表せます。問題の状況に応じて最も使いやすい形を選びます。
  3. 仕事とエネルギーの関係(エネルギー保存則): 外力が物体にした仕事は、その物体のエネルギーの変化に等しいという関係です。この問題では、極板を動かす外力の仕事がコンデンサーの静電エネルギーの変化となると考えます。
  4. 極板間引力: 対面するコンデンサーの極板は、互いに反対符号の電荷を帯びているため、静電気的な引力が働きます。この力の大きさを正しく求めることがパートIの主題です。
  5. 力のつり合い: 物体が静止している状態、または等速直線運動をしている状態では、その物体に働く力のベクトル和は0(ゼロ)になります。この原理を、極板Aおよび極板Bそれぞれに適用します。
  6. フックの法則: ばねが自然の長さから \(x\) だけ変形したとき、ばねが及ぼす弾性力の大きさは \(F_{\text{弾性}} = kx\) となります(\(k\) はばね定数)。力の向きは、ばねが自然長に戻ろうとする向きです。
  7. ガウスの法則(間接的な利用): 極板間の電場の強さが \(E = Q/(\varepsilon_0 S)\) と表されることの背景にはガウスの法則があります。

この問題の基本的なアプローチは、以下のようになります。

  • パートIでは、エネルギー保存則に注目します。極板を微小距離動かす際に外力がする仕事と、それによるコンデンサーの静電エネルギーの変化を結びつけることで、極板間に働く力を導き出します。
  • パートIIでは、各設問で記述される特定の状況において、極板Aおよび極板Bにかかる力をすべて正確にリストアップし、それぞれの力のつり合いの式を立てます。この際、パートIで求めた極板間引力の表現が重要な役割を果たします。複数の未知数を含む連立方程式を解く場面も出てきます。導線が切れるという条件は、張力が特定の限界値に達することとして扱います。導線が切れた後は、極板Aの電荷が保存されるという点に注意が必要です。

問 I (1)

思考の道筋とポイント
平行平板コンデンサーの極板間に働く引力の大きさを求める問題です。ここでは、一方の極板を固定し、もう一方の極板を微小な距離 \(\Delta d\) だけゆっくりと引き離す作業を考えます。この過程で外力がする仕事と、コンデンサーの静電エネルギーの変化量との関係に着目します。

  1. 初期状態の静電エネルギー \(U\) の設定: 極板間隔が \(d\)、蓄えられている電荷の大きさが \(Q\) であるときのコンデンサーの電気容量 \(C\) をまず求めます。次に、この \(C\) と \(Q\) を用いて、初期の静電エネルギー \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) を計算します。
  2. 変化後の静電エネルギー \(U’\) の設定: 次に、極板間隔が \(d+\Delta d\) になったときのコンデンサーの新しい電気容量 \(C’\) を求めます。極板を「静かに」動かす間、電荷の供給や流出がないと仮定すると、電荷 \(Q\) は一定のままです。この条件のもとで、変化後の静電エネルギー \(U’ = \displaystyle\frac{Q^2}{2C’}\) を計算します。
  3. エネルギー保存則(仕事とエネルギーの関係)の適用: 極板を「静かに」動かすとは、極板が加速せず、常に力のつり合いが保たれた状態でゆっくり動かすことを意味します。このとき、外力の大きさ \(F_{\text{外}}\) は、極板間に働く引力の大きさ \(F\) とほぼ等しくなります (\(F_{\text{外}} \approx F\))。この外力が極板を距離 \(\Delta d\) だけ動かすためにした仕事 \(W_{\text{外}} = F \Delta d\) が、コンデンサーの静電エネルギーの増加量 \(\Delta U = U’ – U\) に等しくなると考えます(エネルギー保存則)。
  4. 極板間引力 \(F\) を電荷 \(Q\) の関数として表す: 上記の \(F \Delta d = U’ – U\) という関係式から、\(F\) を \(Q, \varepsilon_0, S\) を用いて表します。
  5. 極板間引力 \(F\) を電位差 \(V\) の関数として表す: コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) および電気容量の式 \(C=\varepsilon_0 S/d\) の関係を用いて、上記で得られた \(F\) の式中の電荷 \(Q\) を、極板間隔が \(d\) のときの電位差 \(V\) で置き換えます。

この設問における重要なポイント

  • コンデンサーの静電エネルギーの公式(特に電荷 \(Q\) が一定の場合の表現 \(U=Q^2/(2C)\))を正しく理解し、適用できること。
  • 仕事とエネルギーの関係、すなわち、保存力以外の外力が系にした仕事が、その系のエネルギー変化に等しいという原理を理解していること。
  • 「静かに動かす」という記述から、動かす間に極板が加速せず、外力の大きさが極板間引力の大きさにほぼ等しいと見なせることを読み取ること。

具体的な解説と立式
初期状態で、極板間隔が \(d\) のときのコンデンサーの電気容量 \(C\) は、極板の面積を \(S\)、空気の誘電率を \(\varepsilon_0\) とすると、
$$C = \frac{\varepsilon_0 S}{d} \quad \cdots ①$$
このとき、コンデンサーに蓄えられている電荷の大きさを \(Q\) とすると、その静電エネルギー \(U\) は、
$$U = \frac{Q^2}{2C} = \frac{Q^2}{2\left(\frac{\varepsilon_0 S}{d}\right)} = \frac{Q^2 d}{2\varepsilon_0 S} \quad \cdots ②$$
と表されます。
次に、一方の極板を固定したまま、他方の極板に外力を加えて、静かにその間隔を微小距離 \(\Delta d\) だけ増加させ、新しい間隔を \(d+\Delta d\) にしたとします。この操作の間、コンデンサーの電荷 \(Q\) は一定に保たれると考えると、新しい電気容量 \(C’\) は、
$$C’ = \frac{\varepsilon_0 S}{d+\Delta d} \quad \cdots ③$$
となり、このときの新しい静電エネルギー \(U’\) は、
$$U’ = \frac{Q^2}{2C’} = \frac{Q^2}{2\left(\frac{\varepsilon_0 S}{d+\Delta d}\right)} = \frac{Q^2 (d+\Delta d)}{2\varepsilon_0 S} \quad \cdots ④$$
と表されます。
極板を静かに距離 \(\Delta d\) だけ動かすために外力がした仕事 \(W_{\text{外}}\) は、極板間に働く引力の大きさを \(F\) とすると、\(W_{\text{外}} = F \Delta d\) と書けます。この外力の仕事は、コンデンサーの静電エネルギーの増加量 \(\Delta U = U’ – U\) に等しくなるというエネルギー保存則を適用すると、
$$F \Delta d = U’ – U \quad \cdots ⑤$$
という関係式が成り立ちます。この式を用いて、まず \(F\) を \(Q\) の関数として求めます。

その後、\(F\) を電位差 \(V\) の関数として表すためには、電荷 \(Q\) と、極板間隔が \(d\) のときの電位差 \(V\)、そしてそのときの電気容量 \(C\) の間に成り立つ関係式 \(Q=CV\) を用います。具体的には、
$$Q = CV = \left(\frac{\varepsilon_0 S}{d}\right) V \quad \cdots ⑥$$
という関係を使って、\(F\) の式に含まれる \(Q\) を \(V\) で置き換えます。

使用した物理公式

  • 平行平板コンデンサーの電気容量: \(C = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S}{d}\)
  • コンデンサーの静電エネルギー: \(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\)
  • 仕事とエネルギーの関係(エネルギー保存則): \(W_{\text{外力}} = \Delta U_{\text{静電}}\) (電荷が一定の場合)
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
計算過程

まず、極板間引力 \(F\) を電荷 \(Q\) の関数として表します。
式⑤に、式②と式④で表された静電エネルギー \(U\) と \(U’\) を代入します。
$$F \Delta d = \frac{Q^2 (d+\Delta d)}{2\varepsilon_0 S} – \frac{Q^2 d}{2\varepsilon_0 S}$$
右辺の共通因子 \(\displaystyle\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) でくくりだすと、
$$F \Delta d = \frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S} \left( (d+\Delta d) – d \right) = \frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S} \Delta d$$
両辺を \(\Delta d\) で割ると(\(\Delta d \neq 0\) なので可)、極板間引力 \(F\) は、
$$F = \frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S} \quad \cdots ⑦$$
と求まります。これが \(F\) を \(Q\) の関数として表したものです。

次に、この \(F\) を電位差 \(V\) (極板間隔が \(d\) のときの電位差)の関数として表します。
式⑥で表される関係 \(Q = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S}{d} V\) を、式⑦の \(Q\) に代入します。
$$F = \frac{1}{2\varepsilon_0 S} \left(\frac{\varepsilon_0 S}{d} V\right)^2 = \frac{1}{2\varepsilon_0 S} \cdot \frac{(\varepsilon_0 S)^2 V^2}{d^2}$$
ここで、\(\varepsilon_0 S\) の一つが分子と分母で約分されるので、
$$F = \frac{\varepsilon_0 S V^2}{2d^2} \quad \cdots ⑧$$
と求まります。これが \(F\) を \(V\) の関数として表したものです。

計算方法の平易な説明

コンデンサーの2枚の金属板(極板)は、お互いに電気の力で引き合っています。この引き合う力の大きさを \(F\) とします。この力の大きさを知るために、ちょっとした思考実験をします。
もし、一方の板を固定して、もう一方の板をゆっくりと、ほんの少しだけ(距離 \(\Delta d\) だけ)引き離したとします。このとき、外から力を加えて引っ張る必要がありますね。この外から加えた力がした「仕事」は、\(F \times \Delta d\) と書けます。
一方、コンデンサーに蓄えられている電気のエネルギー(静電エネルギー)も、板の距離が変わると変化します。板の距離が広がると、もし電気の量 \(Q\) が同じままだとすると、エネルギーは少しだけ増えます。
物理の法則(エネルギー保存則)によると、外から加えた仕事 \(F \Delta d\) は、この電気エネルギーの増加分とちょうど等しくなります。
この関係を使って計算を進めると、まず、引き合う力 \(F\) は、電気の量 \(Q\) と板の面積 \(S\)、そして空気の性質を表す \(\varepsilon_0\) を使って、\(F = Q^2 / (2\varepsilon_0 S)\) と表せることがわかります。
さらに、電気の量 \(Q\) は、板の間の電圧 \(V\) と板の距離 \(d\) を使って書き換えることができるので、それを使うと、引き合う力 \(F\) は電圧 \(V\) を使って \(F = (\varepsilon_0 S V^2) / (2d^2)\) とも表せるのです。

結論と吟味

平行平板コンデンサーの極板間に働く引力の大きさ \(F\) は、極板の電荷を \(Q\)、極板面積を \(S\)、空気の誘電率を \(\varepsilon_0\) とすると、\(F = \displaystyle\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) と表されます。また、極板間の電位差を \(V\)、極板間隔を \(d\) とすると、\(F = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S V^2}{2d^2}\) とも表されます。
これらの式は、極板間引力が電荷 \(Q\) の2乗に比例し、極板面積 \(S\) や誘電率 \(\varepsilon_0\) に反比例することを示しています。また、電圧 \(V\) で表した式からは、引力が \(V\) の2乗に比例し、間隔 \(d\) の2乗に反比例することがわかります。
特に \(F = \displaystyle\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) の形は、電荷 \(Q\) が一定ならば極板間隔 \(d\) に依存しないという重要な性質を示しています。これは後の設問(II-3)で効いてきます。
また、模範解答の補足にあるように、極板間の電場の強さ \(E = Q/(\varepsilon_0 S)\) (これはガウスの法則から導かれます)を用いると、\(F = \displaystyle\frac{1}{2}QE\) とも書けます。これは、電場 \(E\) の中に置かれた電荷 \(Q\) が受ける力 \(QE\) のちょうど半分になっていることを意味し、興味深い関係です。この「1/2」の因子は、一方の極板自身が作る電場が \(E/2\) であり、もう一方の極板の電荷 \(Q\) がその電場から力を受けると考えることで説明できます。

解答 (1) \(Q\) の関数として: \(F = \displaystyle\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) 、 \(V\) の関数として: \(F = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S V^2}{2d^2}\)

問 II (2)

思考の道筋とポイント
実験装置IIに関する設問です。ばね定数 \(k\)、特定の条件下での電圧 \(V_0\)、導線が切れるときのばねの長さ \(l_1\) とそのときの電圧 \(V_1\) を、与えられた物理量で表すことが求められています。各状態で極板Bまたは極板Aに働く力のつり合いを丁寧に立式し、連立して解いていくことが基本方針となります。

  1. ばね定数 \(k\) の決定: 電圧が0(つまり極板間引力が働かない)のときの極板Bの力のつり合いを考えます。このとき、ばねの長さは \(0.99l_0\) と与えられているので、ばねは自然長 \(l_0\) から \(l_0 – 0.99l_0 = 0.01l_0\) だけ縮んでいることがわかります。極板Bには下向きの重力 \(mg\) と、ばねが縮んでいることによる上向きの弾性力 \(k \times (0.01l_0)\) が働いており、これらがつり合っています。このつり合いの式からばね定数 \(k\) を求めます。
  2. 電圧 \(V_0\) の式の導出: 電圧が \(V_0\) のとき、ばねの長さは \(l_0\)(つまり自然長)であり、AB間の距離も \(l_0\) であると与えられています。このときの極板Bに働く力のつり合いを考えます。極板Bには下向きの重力 \(mg\) と、極板Aから受ける上向きの極板間引力 \(F_0\) が働いています(ばねは自然長なので弾性力は0です)。極板間引力 \(F_0\) は、設問I(1)で求めた \(F\) を \(V\) の関数として表した式に、電位差 \(V_0\) と極板間隔 \(l_0\) を代入することで表せます。これらの力がつり合っているという式から、電圧 \(V_0\) を他の物理量で表します。
  3. ばねの長さ \(l_1\) の導出: 電圧が \(V_1\) で、ばねの長さが \(l_1\) のときに導線が切れるとされています。導線が切れるときの張力は \(T=5mg\) です。まず、極板Aの力のつり合いを考えます。極板Aには、上向きに導線の張力 \(T=5mg\)、下向きに重力 \(mg\)、そして極板Bから受ける下向きの極板間引力 \(F_1\) が働いており、これらがつり合っています。この式から、極板間引力 \(F_1\) の大きさが \(4mg\) であることがわかります。次に、極板Bの力のつり合いを考えます。極板Bには、下向きの重力 \(mg\)、ばねの弾性力(ばねの長さが \(l_1\) なので、自然長 \(l_0\) からの変形量は \(|l_1-l_0|\))、そして極板Aから受ける上向きの極板間引力 \(F_1 (=4mg)\) が働いています。これらの力のつり合いの式と、先に求めたばね定数 \(k\) を用いて、ばねの長さ \(l_1\) を求めます。(ここで、ばねが伸びているのか縮んでいるのかを仮定し、力の向きを正しく設定する必要があります。通常、引力が強くなるとばねは伸びると考えられます。)
  4. 電圧 \(V_1\) の式の導出: 導線が切れる瞬間の極板間引力 \(F_1 = 4mg\) は、そのときの電圧 \(V_1\) と極板AB間の距離 \(d_1\) を用いて、設問I(1)の公式 \(F = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S V^2}{2d^2}\) から表すこともできます。ここで、極板AB間の距離 \(d_1\) は、初期のAと床との間の距離(\(2l_0\) と計算される)と、そのときのばねの長さ(床からのBの高さでもある) \(l_1\) を用いて、\(d_1 = 2l_0 – l_1\) と表されます。この関係式と \(F_1=4mg\) という条件、そして設問で求めた \(V_0\) と \(mg\) の関係式を用いて、\(V_1\) を \(V_0\) で表します。

この設問における重要なポイント

  • 各物体(この場合は極板Aと極板B)について、それぞれの状況でどのような力が働いているかを正確に把握し、力のつり合いの式を正しく立てること。
  • 設問I(1)で導出した極板間引力の公式を、状況に応じて適切に適用すること。特に、極板間の距離が変化することに注意が必要です。
  • 幾何学的な関係から、極板間の距離を他の変数(ばねの長さなど)を用いて正しく表現すること。
  • 複数の未知数を含む連立方程式を解くための、基本的な代数計算の能力。

具体的な解説と立式
重力加速度の大きさを \(g\) とします。

1. ばね定数 \(k\) の導出
電圧が0のとき、ばねの長さは \(0.99l_0\) です。ばねの自然長は \(l_0\) なので、このときばねは \(l_0 – 0.99l_0 = 0.01l_0\) だけ縮んでいます。
この状態での極板Bの力のつり合いを考えます。極板Bに働く力は、下向きの重力 \(mg\) と、ばねが縮んでいることによる上向きの弾性力 \(F_{\text{ばね}} = k \times (0.01l_0)\) です。これらがつり合っているので、次式が成り立ちます。
$$mg = k(0.01l_0) \quad \cdots ⑨$$

2. 電圧 \(V_0\) の導出
電圧が \(V_0\) のとき、ばねの長さは \(l_0\)(つまり自然長)であり、極板AとBの間の距離も \(l_0\) です。
このときの極板Bに働く力のつり合いを考えます。極板Bに働く力は、下向きの重力 \(mg\) と、極板Aから受ける上向きの極板間引力 \(F_0\) です(ばねは自然長なので、弾性力は \(0\) です)。したがって、
$$mg = F_0 \quad \cdots ⑩$$
ここで、極板間引力 \(F_0\) は、設問I(1)で求めた \(F = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S V^2}{2d^2}\) の公式において、電位差を \(V_0\)、極板間隔を \(l_0\) とすることで、
$$F_0 = \frac{\varepsilon_0 S V_0^2}{2l_0^2} \quad \cdots ⑪$$
と表されます。

3. ばねの長さ \(l_1\) の導出
電圧が \(V_1\) で、ばねの長さが \(l_1\) のときに、導線が切れます。導線が切れるときの張力は \(T=5mg\) です。
まず、極板Aの力のつり合いを考えます。極板Aに働く力は、上向きの張力 \(T=5mg\)、下向きの重力 \(mg\)、そして極板Bから受ける(AがBを引くので、BもAを引く。作用反作用)下向きの極板間引力 \(F_1\) です。これらがつり合っているので、
$$5mg = mg + F_1 \quad \cdots ⑫$$
次に、極板Bの力のつり合いを考えます。極板Bに働く力は、下向きの重力 \(mg\)、そして極板Aから受ける上向きの極板間引力 \(F_1\) です。さらに、ばねの長さが \(l_1\) なので、ばねの弾性力が働きます。ここでは、ばねが自然長 \(l_0\) から伸びている(\(l_1 > l_0\))と仮定し、弾性力は \(k(l_1-l_0)\) で下向きに働くとします(ばねが元に戻ろうとする力)。模範解答の力のつり合いの式 \(F_1 = mg + k(l_1-l_0)\) は、この状況(\(F_1\) が上向き、\(mg\) が下向き、\(k(l_1-l_0)\) が下向き)に対応します。
$$F_1 = mg + k(l_1-l_0) \quad \cdots ⑬$$

4. 電圧 \(V_1\) の導出
導線が切れる瞬間の極板間引力 \(F_1\) は、そのときの電圧 \(V_1\) と極板AB間の距離 \(d_1\) を用いて、設問I(1)の公式から次のように表すこともできます。
$$F_1 = \frac{\varepsilon_0 S V_1^2}{2d_1^2} \quad \cdots ⑭$$
ここで、極板AB間の距離 \(d_1\) を求める必要があります。初期状態において、極板Bの床からの高さ(ばねの支点からの高さ)は \(0.99l_0\)、AB間距離は \(1.01l_0\) なので、極板Aの床からの高さ(またはPからの距離と床からのPの高さの和)は、これらの和 \(0.99l_0 + 1.01l_0 = 2l_0\) に対応する一定値であると考えられます(P点が固定で導線の長さが変わらないと仮定)。導線が切れる瞬間のばねの長さが \(l_1\) であるとき、極板Bの床からの高さは \(l_1\) となります。したがって、極板AB間の距離 \(d_1\) は、\(d_1 = (\text{Aの高さ}) – (\text{Bの高さ}) = 2l_0 – l_1\) と表せます。
この \(d_1\) と、上で求めた \(F_1=4mg\) という関係、そして \(V_0\) と \(mg\) の関係式(式⑩と⑪から導かれる)を用いて、電圧 \(V_1\) を \(V_0\) で表します。

使用した物理公式

  • 力のつり合いの式(各極板について)
  • フックの法則: \(F_{\text{ばね}}=k \times (\text{変位})\)
  • 極板間引力の公式: \(F = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S V^2}{2d^2}\)
計算過程

1. ばね定数 \(k\) の計算
式⑨ (\(mg = k(0.01l_0)\)) の両辺を \(0.01l_0\) で割ると、
$$k = \frac{mg}{0.01l_0} = \frac{100mg}{l_0}$$

2. 電圧 \(V_0\) の計算
式⑩ (\(mg = F_0\)) と式⑪ (\(F_0 = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S V_0^2}{2l_0^2}\)) より、
$$mg = \frac{\varepsilon_0 S V_0^2}{2l_0^2}$$
この式を \(V_0^2\) について解くと、
$$V_0^2 = \frac{2mg l_0^2}{\varepsilon_0 S}$$
\(V_0 > 0\) であると考えられるため、
$$V_0 = \sqrt{\frac{2mg l_0^2}{\varepsilon_0 S}} = l_0 \sqrt{\frac{2mg}{\varepsilon_0 S}}$$

3. ばねの長さ \(l_1\) の計算
式⑫ (\(5mg = mg + F_1\)) より、極板間引力 \(F_1\) は、
$$F_1 = 5mg – mg = 4mg$$
これを式⑬ (\(F_1 = mg + k(l_1-l_0)\)) に代入し、さらに \(k = \displaystyle\frac{100mg}{l_0}\) も用いると、
$$4mg = mg + \frac{100mg}{l_0}(l_1-l_0)$$
両辺を \(mg\) で割ります(\(mg \neq 0\) と仮定)。
$$4 = 1 + \frac{100}{l_0}(l_1-l_0)$$
移項して整理すると、
$$3 = \frac{100}{l_0}(l_1-l_0)$$
$$0.03l_0 = l_1-l_0$$
したがって、
$$l_1 = l_0 + 0.03l_0 = 1.03l_0$$

4. 電圧 \(V_1\) の計算
導線が切れる瞬間の極板AB間の距離 \(d_1\) は、\(d_1 = 2l_0 – l_1 = 2l_0 – 1.03l_0 = 0.97l_0\) です。
式⑭ (\(F_1 = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S V_1^2}{2d_1^2}\)) に、\(F_1=4mg\) と \(d_1=0.97l_0\) を代入すると、
$$4mg = \frac{\varepsilon_0 S V_1^2}{2(0.97l_0)^2} \quad \cdots ⑮$$
ここで、電圧 \(V_0\) の計算から得られた関係式 \(mg = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S V_0^2}{2l_0^2}\) を用います。この式を変形すると、\(\varepsilon_0 S = \displaystyle\frac{2mg l_0^2}{V_0^2}\) となります。
これを式⑮の \(\varepsilon_0 S\) に代入します。
$$4mg = \frac{\left(\frac{2mg l_0^2}{V_0^2}\right) V_1^2}{2(0.97l_0)^2} = \frac{2mg l_0^2 V_1^2}{2(0.97l_0)^2 V_0^2} = \frac{mg l_0^2 V_1^2}{(0.97l_0)^2 V_0^2}$$
両辺を \(mg\) で割り(\(mg \neq 0\))、\(l_0^2\) も約分すると、
$$4 = \frac{V_1^2}{(0.97)^2 V_0^2} = \frac{1}{(0.97)^2} \left(\frac{V_1}{V_0}\right)^2$$
$$\left(\frac{V_1}{V_0}\right)^2 = 4 \times (0.97)^2 = (2 \times 0.97)^2 = (1.94)^2$$
電圧 \(V_1\) と \(V_0\) は共に正であると考えられるため、
$$\frac{V_1}{V_0} = 1.94$$
したがって、
$$V_1 = 1.94 V_0$$
となります。

計算方法の平易な説明

この設問では、いくつかのステップに分けて物理量を求めていきます。
ばねの硬さ(ばね定数 \(k\)):まず、コンデンサーに電圧がかかっていない最初の状態を考えます。板Bは自分の重さ(\(mg\))で下に引っ張られていますが、ばねが \(0.01l_0\) だけ縮むことで発生する力で支えられています。この力のつり合いから、ばねの硬さ \(k\) を \(m, g, l_0\) を使って表すことができます。
電圧 \(V_0\):次に、コンデンサーに電圧 \(V_0\) をかけたときを考えます。このとき、ばねは自然の長さ \(l_0\) になり(つまり、ばねの力はゼロ)、板と板の間の距離も \(l_0\) です。板Bは、自分の重さ \(mg\) と、コンデンサーの板同士が電気の力で引き合う力 \(F_0\) がちょうどつり合っています。この引き合う力 \(F_0\) は、電圧 \(V_0\) と距離 \(l_0\) で表すことができるので、力のつり合いの式を使って \(V_0\) を \(m, g, l_0, \varepsilon_0, S\) を使って表します。
ばねの長さ \(l_1\) と 電圧 \(V_1\):最後に、電圧をさらに上げていって \(V_1\) になり、ばねの長さが \(l_1\) になったときに、板Aを吊るしていた導線がちょうど切れかかった状態を考えます。導線が耐えられる最大の力(張力)は \(5mg\) と与えられています。まず、板Aについて力のつり合いを考えます。板Aには、この最大の張力 \(5mg\)、自分の重さ \(mg\)、そして板Bとの間に働く電気的な引力 \(F_1\) が作用しており、これらがつり合っています。この式から、引力 \(F_1\) が \(4mg\) であることがわかります。次に、板Bについて力のつり合いを考えます。板Bには、この引力 \(F_1(=4mg)\)、自分の重さ \(mg\)、そしてばねの力(ばねの硬さ \(k\) と自然長からの変形量 \(l_1-l_0\) で決まる)が作用し、つり合っています。この式と先ほど求めた \(k\) を使うと、ばねの長さ \(l_1\) が \(l_0\) で表せます。最後に、このときの板と板の間の距離(これはAとBの高さの位置関係と \(l_1\) から計算できます)と、引き合う力 \(F_1=4mg\) の関係から、電圧 \(V_1\) が \(V_0\) の何倍になるかを計算することができます。

結論と吟味

計算の結果、ばね定数は \(k = \displaystyle\frac{100mg}{l_0}\)、電圧 \(V_0\) は \(V_0 = l_0 \sqrt{\displaystyle\frac{2mg}{\varepsilon_0 S}}\)、導線が切れるときのばねの長さ \(l_1\) は \(1.03l_0\)、そのときの電圧 \(V_1\) は \(1.94 V_0\) と求められました。
これらの結果は、与えられた物理量を用いて正しく表現されています。各ステップで力のつり合いの法則を正確に適用し、極板間引力の公式を適切に用いることが解答の鍵となります。特に、極板間の距離が状況によって変化すること、そしてそれが引力の大きさに影響を与える(電圧が一定の場合)か、あるいは引力が一定でも電圧に影響を与える(電荷が一定の場合ではないが、ここでは電圧を上げている)という相互作用を理解することが重要です。

解答 (2) ばね定数: \(k = \displaystyle\frac{100mg}{l_0}\)、電圧 \(V_0\): \(V_0 = l_0 \sqrt{\displaystyle\frac{2mg}{\varepsilon_0 S}}\)、ばねの長さ \(l_1\): \(l_1 = 1.03l_0\)、電圧 \(V_1\): \(V_1 = 1.94V_0\)

問 II (3)

思考の道筋とポイント
設問II(2)の最後で、電圧が \(V_1\)、ばねの長さが \(l_1\) のときに導線が切れました。その後、極板Aは \(0.5l_0\) だけ落下して支持台Dに支えられて静止しました。この最終状態におけるばねの長さ(これは極板Bの位置、ひいてはばねの変形状態を示します)を求めることが目的です。

  1. 導線が切れた瞬間の極板Aの電荷の保存: 導線が切れると、極板Aは電源(電圧計と可変電源を含む回路)から電気的に切り離され、孤立した状態になります。したがって、導線が切れた瞬間に極板Aに蓄えられていた電荷 \(Q_1\) は、その後Aが落下しても変化せずに保存されます。
  2. 電荷が一定の場合の極板間引力の特徴: 設問I(1)で導出したように、極板間引力の大きさ \(F\) は、電荷 \(Q\) を用いて \(F = \displaystyle\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) と表されます。この式には極板間隔 \(d\) が含まれていません。これは、コンデンサーの電荷 \(Q\) が一定であるならば、極板間引力の大きさは極板間隔によらず一定であるという非常に重要な性質を示しています。
  3. 導線切断後の極板間引力: 導線が切れる直前の極板間引力の大きさは \(F_1 = 4mg\) でした(設問II(2)の計算過程より)。導線が切れて極板Aの電荷 \(Q_1\) が保存されるため、Aが落下して極板AB間の距離が変わったとしても、BがAから受ける(上向きの)引力の大きさは、この \(F_1 = 4mg\) のまま一定です。
  4. 極板Bの力のつり合い: 極板Aが支持台Dに支えられて静止した後、極板Bも新しいつり合いの位置で静止していると考えられます。このとき、極板Bに働く力は、下向きの重力 \(mg\)、上向きの極板間引力 \(F_1=4mg\)、そしてばねの弾性力です。これらの力がつり合っているという条件から、ばねの変形量を計算し、最終的にばねの長さを求めます。

模範解答では、「Bに働く力は変わらないから、Bは動かない。ばねの長さは \(l_1=1.03l_0\) のままになっている」と簡潔に結論付けています。これは、極板Bに働く重力(下向き \(mg\))と極板間引力(上向き \(4mg\))が、導線が切れる前後で変化しないため、これらの力とつり合うべきばねの弾性力も変化せず、結果としてばねの長さ(つまりBの位置)も変わらない、という論理に基づいています。

この設問における重要なポイント

  • 導線が切れることによって、コンデンサーの極板Aが電気的に孤立し、その結果として極板Aの電荷量が保存されるという点を正確に理解すること。
  • 電荷量が一定の場合、平行平板コンデンサーの極板間に働く引力の大きさは、極板間の距離によらず一定である (\(F = Q^2/(2\varepsilon_0 S)\)) という重要な物理的性質を適用すること。
  • 極板Bに働く力のつり合いを再度考え、保存された引力の効果を考慮に入れること。

具体的な解説と立式
導線が切れた瞬間、極板Aは電源から電気的に切り離されます。このため、その瞬間に極板Aが蓄えていた電荷 \(Q_1\)(導線が切れる直前の電荷)は、これ以降変化せずに保存されます。
設問I(1)で導出した極板間引力の公式 \(F = \displaystyle\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) によれば、電荷 \(Q\) が一定であれば、引力の大きさ \(F\) は極板間隔 \(d\) には依存しません。
導線が切れる直前、極板間引力の大きさは \(F_1 = 4mg\) でした(設問II(2)の計算過程より)。導線が切れて極板Aの電荷 \(Q_1\) が保存されるため、極板Aが落下して極板AB間の距離が変化したとしても、極板Bが極板Aから受ける(上向きの)引力の大きさは、この \(F_1 = 4mg\) のまま一定値を保ちます。

さて、極板Aが支持台Dで静止した後、極板Bも新たな力のつり合いの位置で静止すると考えられます。このときのばねの長さを \(l_2\) とします。
極板Bに働く力は以下の通りです。

  • 下向きの力:重力 \(mg\)。
  • 上向きの力:極板間引力 \(F_1 = 4mg\)。
  • ばねの弾性力:ばねの自然長を \(l_0\)、ばね定数を \(k = \displaystyle\frac{100mg}{l_0}\) (設問II(2)で計算済み)とすると、ばねの変位は \((l_2-l_0)\) です。この弾性力の向きは、つり合いの位置によって決まります。

模範解答の解説「導線が切れると電気量Qが一定になるから、③[\(F=Q^2/(2\varepsilon_0 S)\)]より極板間引力は一定と分かる。したがって、Bに働く力は変わらないから、Bは動かない。ばねの長さは \(l_1=1.03l_0\) のままになっている。」という記述に従って考察を進めます。
この解説の根拠は、極板Bに作用する鉛直方向の力が、導線が切れる前後で変化しないという点にあります。
導線が切れる直前、極板Bは力のつり合いの状態にありました。このときのばねの長さは \(l_1 = 1.03l_0\) でした。この状態でのBの力のつり合いは、上向きの力(極板間引力 \(F_1=4mg\))と、下向きの力(重力 \(mg\) とばねの弾性力 \(k(l_1-l_0)\))が等しい、すなわち \(4mg = mg + k(l_1-l_0)\) でした(ここで弾性力はばねの伸び \(l_1-l_0\) によるもので、下向きに作用すると解釈しています。これは(2)の模範解答の式の解釈に合わせる形です)。
導線が切れた後も、Bに働く重力 \(mg\) は変わりません。また、上で述べたように、BがAから受ける極板間引力 \(F_1\) も \(4mg\) のまま変わりません。したがって、これらの力とつり合うべきばねの弾性力も変わらないはずです。ばねの弾性力が変わらないということは、ばねの自然長からの変位量も変わらないことを意味します。
よって、ばねの長さは、導線が切れたときの長さ \(l_1\) のままであると結論付けられます。

使用した物理原理/公式

  • 電気量保存則(孤立した導体系において)
  • 極板間引力の性質(電荷が一定の場合、間隔によらず一定): \(F = \displaystyle\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\)
  • 力のつり合いの法則
  • フックの法則(間接的に、ばねの変位が変わらないという結論に繋がる)
計算過程
  1. 導線が切れると、極板Aの電荷 \(Q\) が、その瞬間の値 \(Q_1\)(導線が切れる直前に極板Aが蓄えていた電荷)で一定に保たれます。
  2. 極板間引力の大きさの公式 \(F = \displaystyle\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) によれば、電荷 \(Q\) が一定であれば、引力 \(F\) の大きさは極板間の距離には依存しません。
  3. 導線が切れる直前の極板間引力の大きさは \(F_1 = 4mg\) でした(設問II(2)より)。したがって、導線が切れた後、極板Aが落下して極板AB間の距離が変わったとしても、極板Bが極板Aから受ける上向きの引力の大きさは、この \(F_1 = 4mg\) のまま一定です。
  4. 極板Bに働く鉛直方向の力は、上向きの引力 \(F_1 = 4mg\) と、下向きの重力 \(mg\)、そしてばねの弾性力です。導線が切れる前後で、この \(F_1\) と \(mg\) の大きさが変化しないため、これらの力とつり合うべきばねの弾性力も変化しません。
  5. ばねの弾性力が変化しないということは、ばねの自然長からの変位量も変化しないことを意味します。したがって、ばねの長さは、導線が切れたときの長さ \(l_1\) のままです。
  6. 設問II(2)の結果より、\(l_1 = 1.03l_0\) でしたので、求めるばねの長さは \(1.03l_0\) となります。
計算方法の平易な説明

板Aを吊るしていた導線がプチッと切れると、板Aは電池から切り離されてしまうので、Aがその瞬間に持っていた電気の量(電荷)はもう変わることができません。コンデンサーの板と板が引き合う力は、この電気の量と板の面積だけで決まり、板の間の距離には関係ないという性質があります(設問I(1)で \(Q\) を使って表した式を見るとわかります)。導線が切れる瞬間の引き合う力の大きさは \(4mg\) でしたから、Aが下に落ちて板Bとの距離が変わったとしても、この \(4mg\) という力の大きさはずっと変わりません。
さて、板Bの立場になって考えてみましょう。板Bは、常に上向きに \(4mg\) の力でAから引っ張られ、常に下向きに自分の重さ \(mg\) で地球から引っ張られ、そしてばねにつながれています。導線が切れる前と切れた後で、Aから引っ張られる力(\(4mg\))も、B自身の重さ(\(mg\))も全く変わっていませんね。ということは、これらの力とちょうどつり合うためには、ばねがBを支える力(弾性力)も変わる必要がないはずです。ばねの力が変わらないということは、ばねの伸び縮みの量も変わらないということ。だから、ばねの長さは、導線が切れたときの長さ \(l_1\)(これは設問(2)で \(1.03l_0\) と求めました)のままで変わらない、ということになるのです。

結論と吟味

導線が切れた後、極板Aが支持台Dに支えられて静止したときのばねの長さは、導線が切れたときのばねの長さ \(l_1\) と変わらず、\(1.03l_0\) です。これは、極板Aの電荷が保存されるために極板間引力が一定の値(\(4mg\))に保たれ、その結果として極板Bの力のつり合いの状態が変化しないためです。この論理は物理的に整合性が取れています。

解答 (3) \(1.03l_0\)

【コラム】Q. 問(3)の後 Bを少し押し下げて放すと、Bは振動した。その周期T はいくらか。(★)

思考の道筋とポイント
設問II(3)の状態(導線が切れ、極板Aは支持台Dに固定され、極板Bは力のつり合いの位置にある)から、極板Bをそのつり合いの位置から少しだけ押し下げて静かに放したときに、Bがどのような振動をするか、特にその振動の周期 \(T\) を求める問題です。

  1. 復元力の確認(単振動の条件): まず、極板Bを元のつり合いの位置から微小な距離だけ変位させたときに、Bに働く合力がその変位に比例し、かつ向きが常に変位と反対向き(つまり、つり合いの位置に戻そうとする向き)になるかどうかを確認します。この条件が満たされれば、極板Bは単振動を行います。
  2. 働く力の分析: 極板Bに働く力は、常に一定である下向きの重力 \(mg\)、常に一定である上向きの極板間引力 \(F_1 = 4mg\)、そしてばねの変形量に応じて変化するばねの弾性力 \(k(l-l_0)\)(ここで \(l\) はその時々のばねの長さ、\(k\) はばね定数)です。
  3. 運動方程式の立式: 極板Bの質量は \(m\) です。つり合いの位置からの変位を \(x\) として、Bの運動方程式(\(ma = F_{\text{合力}}\))を立てます。
  4. 単振動の周期の公式の適用: もし運動方程式が \(m\ddot{x} = -Kx\) (ここで \(K\) は正の比例定数、\(\ddot{x}\) は加速度)という形に書くことができれば、その運動は角振動数 \(\omega = \sqrt{K/m}\) の単振動であり、周期 \(T\) は \(T = 2\pi/\omega = 2\pi\sqrt{m/K}\) で与えられます。
  5. ばね定数 \(k\) の利用: 設問II(2)で求めたばね定数 \(k = \displaystyle\frac{100mg}{l_0}\) を使用します。
  6. 一定力が単振動の周期に与える影響の理解: ばね振り子において、弾性力以外に一定の力(この問題では重力と一定の極板間引力の合力)が加わっていても、振動の周期はばね定数 \(k\) と質量 \(m\) のみによって決まり、その一定力は振動の中心の位置をずらすだけで周期そのものには影響しない、という重要な性質があります。

この設問における重要なポイント

  • 単振動が起こるための条件(復元力が変位に比例し、その向きが変位と常に反対であること)を正しく理解していること。
  • ばね振り子の周期を求める基本公式 \(T=2\pi\sqrt{m/k}\) を知っており、適用できること。
  • 重力やその他の一定の外力が存在する場合でも、ばね振り子の周期の式自体は変わらない(ただし振動の中心は移動する)という重要な物理的性質を理解していること。

具体的な解説と立式
設問II(3)の状態で、極板Bは力のつり合いの位置にあります。このときのばねの長さを \(l_1 = 1.03l_0\) としました。
極板Bに働く力は以下の通りです。

  • 重力:\(mg\) (鉛直下向き)
  • 極板間引力:\(F_1 = 4mg\) (鉛直上向き、一定)
  • ばねの弾性力:ばねの自然長を \(l_0\)、ばね定数を \(k\) とします。ばねの長さが \(l\) のとき、ばねの伸びは \(x’ = l – l_0\) (もし \(l > l_0\) なら伸び、\(l < l_0\) なら縮みで \(x’\) は負)となり、弾性力の大きさは \(|kx’|\) で、向きは自然長に戻ろうとする向きです。

つり合いの位置 \(l=l_1\) から、極板Bをさらに下向きに微小な距離 \(\delta x\) だけ動かしたときの、Bの変位をつり合いの位置を原点として下向きを正に取り、\(x\) とします。
このとき、ばねの全長は \(l_1+x\) となります。したがって、ばねの自然長からの伸びは \((l_1+x)-l_0\) です。
ばねの弾性力は、フックの法則により、その大きさが \(k((l_1+x)-l_0)\) であり、向きは上向き(ばねが伸びているので縮もうとする向き)です。
このときの極板Bに働く合力 \(F_{\text{合力}}\)(鉛直下向きを正とする)は、
$$F_{\text{合力}} = (\text{下向きの力}) – (\text{上向きの力})$$
$$F_{\text{合力}} = mg – F_1 – k((l_1+x)-l_0) \quad \cdots (\text{コQ}-①)$$
ここで、つり合いの状態(\(x=0\)、すなわちばねの長さ \(l_1\))では \(F_{\text{合力}}=0\) であったはずなので、
$$mg – F_1 – k(l_1-l_0) = 0 \quad \cdots (\text{コQ}-②)$$
が成り立っています。
式(\text{コQ}-①)にこのつり合いの条件(式(\text{コQ}-②))を代入すると、
$$F_{\text{合力}} = (mg – F_1 – k(l_1-l_0)) – kx = 0 – kx = -kx \quad \cdots (\text{コQ}-③)$$
この結果は、極板Bに働く合力が、つり合いの位置からの変位 \(x\) に比例し、かつその向きが変位と反対向き(復元力)であることを示しています。したがって、極板Bはこのつり合いの位置を中心として単振動を行います。
このときの運動方程式は、極板Bの質量を \(m\)、加速度を \(\ddot{x}\) として、\(m\ddot{x} = F_{\text{合力}}\) なので、
$$m\ddot{x} = -kx$$
と書けます。これは単振動の標準形です。
単振動の周期 \(T\) は、この運動方程式の比例定数(この場合はばね定数 \(k\) そのもの)を用いて、
$$T = 2\pi \sqrt{\frac{m}{k}} \quad \cdots (\text{コQ}-④)$$
で与えられます。
設問II(2)で求めたばね定数 \(k = \displaystyle\frac{100mg}{l_0}\) をこの式に代入することで、周期 \(T\) を計算できます。

使用した物理原理/公式

  • 単振動の条件(復元力が変位に比例し、向きが反対であること: \(F=-Kx\))
  • 単振動の周期の公式: \(T = 2\pi\sqrt{m/K}\) (\(K\) は復元力の比例定数)
  • フックの法則: \(F_{\text{弾性}} = k \times (\text{自然長からの変位})\)
  • 力のつり合いの条件
計算過程
  1. 設問II(3)の状態で、極板Bは力のつり合いの位置にあります。この位置が、ここでの単振動の中心となります。
  2. つり合いの位置からの極板Bの変位を \(x\)(鉛直下向きを正とする)とすると、Bに働く合力が \(F_{\text{合力}} = -kx\) の形で表されることを式(\text{コQ}-③)で確認しました。ここで \(k\) はばね定数です。
  3. これは単振動の復元力の形なので、極板Bは角振動数 \(\omega = \sqrt{k/m}\) の単振動を行います。その周期 \(T\) は \(T = 2\pi/\omega = 2\pi\sqrt{m/k}\) です。
  4. 設問II(2)で計算したばね定数 \(k = \displaystyle\frac{100mg}{l_0}\) を、この周期の公式に代入します。
    $$T = 2\pi \sqrt{\frac{m}{\frac{100mg}{l_0}}} = 2\pi \sqrt{\frac{m l_0}{100mg}}$$
    ここで、分子と分母にある質量 \(m\) が約分され、\(100\) は平方根の外に出すと \(10\) になります。
    $$T = 2\pi \sqrt{\frac{l_0}{100g}} = 2\pi \frac{1}{10} \sqrt{\frac{l_0}{g}} = \frac{2\pi}{10} \sqrt{\frac{l_0}{g}} = \frac{\pi}{5} \sqrt{\frac{l_0}{g}}$$
計算方法の平易な説明

設問(3)の後、板Bは電気の力や重力、そしてばねの力がちょうどつり合って静止しています。この状態から、板Bをほんの少しだけ下に押し下げてから手を放すと、板Bは上下にブルブルと震え始めます。これは「単振動」とよばれる特別な種類の振動です。
この振動の周期(1回振動するのにかかる時間)を求めたいのですが、実は、板Bに働いている力のうち、重力(地球が引く力)とコンデンサーの板同士が引き合う電気の力は、板Bが振動している間もずっと一定の大きさです。ばねの力だけが、板Bの位置によって伸び縮みして変化します。
物理学では、ばね振り子にこのような「一定の力」が余分に加わっていても、振動の周期そのものは変わらない、という大切な性質があります。振動の中心の位置はズレるのですが、振動の速さ(周期)は、純粋にばねの硬さ(ばね定数 \(k\))と板Bのおもりとしての重さ(質量 \(m\))だけで決まります。
周期を求める公式は \(T = 2\pi \sqrt{m/k}\) です。設問(2)で、このばねのばね定数 \(k\) は \(100mg/l_0\) であることがわかっていますので、この値を公式に代入して計算すると、周期 \(T\) が \(l_0\) と \(g\)(重力加速度)を使って表されます。

結論と吟味

極板Bを少し押し下げて放したときのBの振動の周期 \(T\) は、\(\displaystyle\frac{\pi}{5}\sqrt{\frac{l_0}{g}}\) です。
この結果は、ばね振り子の周期の公式に、設問で得られたばね定数と質量を正しく代入することで得られます。重要なのは、重力や一定の大きさで働く極板間引力のような「一定の外力」は、単振動の周期には影響を与えず、振動の中心の位置を移動させる効果しかないという点です。この理解は、単振動の問題を解く上で非常に役立ちます。

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • コンデンサーの静電エネルギーと仕事の関係:
    • 核心:コンデンサーの極板を動かす際に、外部から加えられた力がする仕事は、コンデンサーの静電エネルギーの変化量に等しい(ただし、電荷が保存されるような準静的な過程を考える場合)。この関係から、極板間に働く力を導出することができます。
    • 理解のポイント:静電エネルギーの表現には \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)、\(U = \displaystyle\frac{1}{2}QV\)、\(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) の3つの形があり、問題の条件(何が一定で何が変化するか)に応じて最も扱いやすい形を選択することが重要です。この問題のパートIでは、電荷 \(Q\) が一定のまま極板間隔(つまり電気容量 \(C\))が変化する状況を考えたため、\(U = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) の形が特に有効でした。
  • 平行平板コンデンサーの極板間に働く引力:
    • 核心:帯電した平行平板コンデンサーの2枚の極板は、互いに反対符号の電荷を帯びているため、静電気的な引力が働きます。その力の大きさ \(F\) は、\(F = \displaystyle\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S} = \displaystyle\frac{1}{2}QE = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S V^2}{2d^2}\) といった複数の形で表すことができます。
    • 理解のポイント:よくある間違いとして、極板間に電場 \(E\) があるからといって、一方の極板の電荷 \(Q\) が受ける力を単純に \(F=QE\) としてしまうことがありますが、これは正しくありません。正しくは \(F=(1/2)QE\) となるのは、一方の極板が作る電場(これは極板間の電場 \(E\) の半分、つまり \(E/2\) になる)から、もう一方の極板上の電荷 \(Q\) が力を受ける、と考えるためです。また、電荷 \(Q\) が一定に保たれる場合、引力の大きさ \(F = Q^2/(2\varepsilon_0 S)\) は極板間隔 \(d\) に依存しないという点は、この問題のパートII(3)を解く上で非常に重要な鍵となりました。
  • 力のつり合いの法則:
    • 核心:物体が静止している状態、あるいは等速直線運動をしている状態では、その物体に作用するすべての力のベクトル和(合力)は0(ゼロ)になります。
    • 理解のポイント:この問題のパートIIでは、極板Aおよび極板Bが様々な状況で静止しているため、それぞれの極板について、働く力をすべて正確に特定し(重力、ばねの弾性力、導線の張力、極板間引力など)、適切な座標軸を設定した上で、各方向成分について力のつり合いの式を立てることが基本となります。
  • フックの法則とばね定数:
    • 核心:ばねの弾性力の大きさは、ばねの自然の長さからの変位(伸びまたは縮み)の大きさに比例し、その向きはばねが自然長に戻ろうとする向きです(\(F_{\text{弾性}} = -kx\)、力の大きさは \(|kx|\))。
    • 理解のポイント:ばね定数 \(k\) はそのばねの硬さ(変形しにくさ)を表す比例定数です。問題中で未知の場合でも、特定の状況における力のつり合いの関係から決定できることがあります(この問題のパートII(2)など)。
  • 単振動の条件と周期(コラムQ):
    • 核心:物体がそのつり合いの位置からの変位に比例し、かつ変位と常に反対向きの復元力を受けるとき、その物体は単振動を行います。その運動方程式は \(m\ddot{x} = -Kx\) (\(K\) は復元力の比例定数)の形に書け、周期 \(T\) は \(T=2\pi\sqrt{m/K}\) で与えられます。
    • 理解のポイント:重力やこの問題の極板間引力のような「一定の力」がばね振り子に加わっていても、ばねによる復元力の部分(変位に比例する項)が変わらなければ、単振動の周期そのものは変化しません。一定の力は、振動の中心の位置を元のつり合いの位置からずらす効果を持つだけです。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • 電磁気的な力(クーロン力、ローレンツ力など)と、力学的な要素(ばね、重力、張力、摩擦力など)が複雑に絡み合う、いわゆる電磁気と力学の融合問題全般。
    • コンデンサーの極板を動かしたり、極板間に誘電体を挿入したりする際の、静電エネルギーの変化、外部からされた仕事、あるいは極板間に働く力の計算問題。
    • 電気回路中のスイッチ操作によって、コンデンサーの電荷が保存される条件と、コンデンサーの電位差が一定に保たれる条件とが切り替わるような問題。
    • 電気的な力が復元力の一部として関与するような、荷電粒子や帯電物体の単振動(あるいはより複雑な振動)に関する問題。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 系の状態変化の正確な把握: まず、問題文中で電圧をかける、スイッチを開閉する、物体を動かす、物質を挿入するなど、どのような操作が行われているのか、そしてそれによって系のどの物理量が変化し、どの物理量が保存される(あるいは一定に保たれる)のかを最初に明確にすることが極めて重要です。
    2. 働く力の徹底的な図示とつり合いの検討: 問題に関係する各物体(この問題では極板Aや極板B)について、その物体に働いているすべての力(重力、弾性力、電気的な力、張力など)をもれなく特定し、フリーボディダイアグラム(力の図示)を描くことから始めます。そして、物体が静止している、あるいは特定の運動状態にあるという条件から、力のつり合いの式、あるいは運動方程式を立てます。特に、目に見えない電気的な力(この問題では極板間引力)を忘れずに考慮することが肝要です。
    3. エネルギー収支や保存則の適用の検討: 系全体のエネルギーが保存されるのか、あるいは外力が仕事をすることでエネルギーが変化するのか、といったエネルギーの観点からのアプローチが有効な場合があります。特に「静かに動かす」といった記述がある場合は、仕事とエネルギーの関係(または力のつり合いを保ちながらの微小仕事)を考えると、力が求められることがあります。
    4. 関連する物理公式の的確な想起と適用条件の吟味: 問題の状況に応じて、コンデンサーの基本的な公式(電気容量、静電エネルギー、電荷と電圧の関係など)、ばねに関するフックの法則、力のつり合いの条件、運動方程式、単振動の公式など、関連する物理法則や公式を正確に思い出し、それぞれの公式がどのような条件下で適用できるのかを吟味しながら用いることが求められます。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
    • 平行平板コンデンサーの極板間引力の公式にはいくつかの異なる表現形がありますが(電荷 \(Q\) を用いた形、電圧 \(V\) と間隔 \(d\) を用いた形など)、問題の状況(電荷が一定なのか、電圧が一定なのかなど)に応じて最も扱いやすい形を選択することが重要です。
    • 力のつり合いを考える際には、力の向きを正確に作図し、設定した座標軸の正の向きと力の各成分の符号の関係に細心の注意を払うことが、立式の誤りを防ぐ上で不可欠です。
    • 複数の物体が相互に力を及ぼし合っている場合や、複数の条件式が関わる場合には、それぞれの物体に対するつり合いの式や運動方程式をすべて書き出し、それらを連立方程式として解く必要があることを覚悟しましょう。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 極板間引力の公式に関する誤解や誤用:
    • 現象:極板間に電場 \(E\) があるからといって、一方の極板の電荷 \(Q\) が受ける力を単純に \(F=QE\) と誤解してしまう(正しくは \(F=(1/2)QE\) や、電荷が一定の場合の \(F = Q^2/(2\varepsilon_0 S)\)、電圧が一定の場合の \(F = (\varepsilon_0 S V^2)/(2d^2)\) など、状況に応じた正しい形を用いる必要があります)。あるいは、電荷が一定の場合に適用すべき公式を電圧が一定の場合に誤って適用してしまう(またはその逆)。
    • 対策:極板間引力の公式の導出過程(例えば、静電エネルギーを極板間隔で微分する方法や、外力がする仕事とエネルギー変化の関係を用いる方法など)を一度は自分で追ってみることで、なぜ「1/2」の係数がつくのか、そして各公式がどのような条件下で成り立つのかを深く理解することが重要です。また、電荷 \(Q\) が一定に保たれるのか、それとも電圧 \(V\) が一定に保たれるのかを問題の状況から正確に判断し、それに応じた適切な公式を選択する訓練を積みましょう。
  • 「電荷保存」の条件と「電圧一定」の条件の混同:
    • 現象:コンデンサーが電源から切り離されてスイッチが開いている(つまり電気的に孤立している)のに、極板間の電圧が一定のままだと考えてしまったり、逆に、コンデンサーが電源に接続されていてスイッチが閉じているのに、極板上の電荷が保存されると考えてしまったりする。
    • 対策:スイッチが開いていてコンデンサーが電気的に孤立している場合は、そのコンデンサーの極板上の電荷 \(Q\) が保存されます(電気量保存則)。一方、スイッチが閉じていてコンデンサーが電池などの定電圧電源に接続されている場合は、コンデンサーの極板間の電位差 \(V\) がその電源の電圧に等しく保たれます。この2つの基本的な状況の違いを常に明確に意識し、問題の条件に応じて正しく判断することが不可欠です。
  • 力のつり合いを考える際の「力の向き」の誤認や作図ミス:
    • 現象:極板間に働く引力やばねの弾性力の向きを間違って作図したり、立式したりしてしまう。特に、複数の力が複雑に絡み合う状況では混乱しやすい。
    • 対策:必ず、力を受けている物体(着目物体)を明確にし、その物体が他のどの物体からどのような種類の力(重力、接触力、電気的な力、磁気的な力など)を、どちらの向きに受けているのかを一つ一つ丁寧に確認しながら、フリーボディダイアグラム(力の図示)を正確に描く習慣をつけましょう。ばねの弾性力は、ばねが自然長から伸びていれば縮もうとする向きに、縮んでいれば伸びようとする向きに働くことを常に意識します。
  • ばねの「伸び」や「縮み」の基準点の取り方の誤り:
    • 現象:ばねの弾性力を計算する際に、力のつり合いの位置を基準として変位を考えてしまうなど、ばねの「自然長」からの変位を正しく取ることができず、弾性力の大きさを間違える。
    • 対策:フックの法則における変位 \(x\) は、常に「ばねの自然長からの変化量(伸びまたは縮み)」であることを厳守しましょう。力のつり合いの位置は、あくまで力がつり合っている点であり、ばねの変位の基準点ではありません。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 力のつり合い図の作成:模範解答に示されている図aや図bのように、考察の対象となる各極板(AおよびB)に働いているすべての力(重力、ばねの弾性力、導線の張力、極板間引力)を、作用点と向きを明確にしたベクトルとして図示することが、力のつり合いの式を正しく立てる上で非常に有効でした。
    • 静電エネルギー変化のプロセスのイメージング:パートIで極板間引力を求める際に、一方の極板を微小距離だけ動かすという操作を考えましたが、このときに外力が仕事をし、それがコンデンサーの静電エネルギーの変化になるという一連のエネルギー変換のプロセスを頭の中で具体的に追うことが、立式の助けになりました。
    • ばねの伸縮状態の明確な把握:ばねが自然長の状態なのか、それとも自然長からどれだけ伸びたり縮んだりしているのかを、問題の各状況において正確に把握し、必要であれば簡単な図で模式的に示すことが、弾性力の正しい計算に繋がりました。
    • 極板Aと極板Bの位置関係の把握:特にパートIIでは、極板Aと極板Bの絶対的な位置(例えば床からの高さなど)だけでなく、それらの間の相対的な距離(極板間隔)が、極板間引力や電位差に直接関わってくるため、初期の配置から各状態での極板間隔を正確に求めることが重要でした。
  • 図を描く際に注意すべき点は何か:
    • 力のベクトルを図示する際には、その力がどの物体に働いているのか(作用点)、どちらの向きに働いているのか、そして可能であれば相対的な力の大きさも意識して(例えば、長い矢印は大きな力を、短い矢印は小さな力を表すなど)描くと、状況がより明確になります。
    • 座標軸を設定して力の成分を考える場合には、その座標軸の向き(どちらを正の向きとするか)を必ず図中に明示するようにしましょう。
    • 問題の状況が複数の段階に変化していく場合は、それぞれの段階に対応する図を描き、何が同じで何が異なっているのか(例えば、力の大きさや向き、物体の位置など)を図の上で比較対照できるようにすると、考察が進めやすくなります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • コンデンサーの静電エネルギーの公式 \(U=\displaystyle\frac{Q^2}{2C}\):
    • 選定理由:この問題のパートI(1)では、極板を動かす際にコンデンサーに蓄えられた電荷 \(Q\) が一定であるという条件下で静電エネルギーの変化を考えたため、\(Q\) と \(C\) を用いたこの表現が最も計算に適していました。
    • 適用根拠:コンデンサーに電荷 \(Q\) が蓄えられ、そのコンデンサーの電気容量が \(C\) である場合には、この公式は常に成り立ちます。
  • 極板間引力の公式 \(F = \displaystyle\frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) または \(F = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S V^2}{2d^2}\):
    • 選定理由:コンデンサーの極板間に働く静電気的な引力の大きさを直接計算するために、これらの公式を用いました。
    • 適用根拠:これらの公式は、平行平板コンデンサーについて成り立つものであり、前者は電荷 \(Q\) が既知または一定の場合に、後者は極板間の電位差 \(V\) と間隔 \(d\) が既知または一定の場合に、それぞれ用いると便利です。これらの公式は、静電エネルギーを極板間隔で微分するなどの方法で導出できます。
  • 力のつり合いの条件式 \(\sum \vec{F} = \vec{0}\):
    • 選定理由:問題のパートIIにおいて、極板Aおよび極板Bが様々な状況で静止している(つり合っている)状態を記述するために、この基本法則を選びました。
    • 適用根拠:ニュートンの運動の法則によれば、物体が静止しているか、あるいは等速直線運動をしている(つまり加速度が0である)場合には、その物体に働くすべての力のベクトル和は0(ゼロ)になります。この問題では、各極板が静止している状況を扱っているため、この法則が適用できます。
  • フックの法則(弾性力の大きさ \(F_{\text{弾性}} = kx\)):
    • 選定理由:極板Bを支えるばねによる弾性力の大きさを計算するために、この法則を選びました。
    • 適用根拠:この法則は、ばねの変形がその弾性限界を超えていない場合に、ばねの弾性力が自然長からの変位の大きさに比例するという実験的な事実に基づいています。式中の \(x\) は、あくまで「自然長からの」変位であることに注意が必要です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 問題の構成と各パートの目的の分離・把握: まず、問題がパートI(極板間引力の導出)とパートII(力学的なつり合いと運動の考察)、そしてコラムQ(単振動)に分かれていることを認識し、それぞれのパートで何が問われているのか、どのような物理法則が中心になるのかを大まかに把握します。
  2. パートI(極板間引力の導出)の論理展開: 静電エネルギーの定義式から出発し、極板間隔を微小変化させたときのエネルギー変化と、その変化を引き起こすために外力がした仕事とを結びつける(仕事とエネルギーの関係)という論理で、極板間引力の式を導出します。
  3. パートII(力学的な考察)のステップごとの分析:
    • まず、関与する各物体(極板A、極板B)について、どのような力が働いているのかを特定し、正確に図示します。
    • 次に、それぞれの物体が静止している(力のつり合いが成り立っている)という条件から、力のつり合いの式を、設定した座標軸の方向に沿って成分ごとに立てます。
    • 問題文で与えられている各状況(電圧が0のとき、\(V_0\) のとき、\(V_1\) で導線が切れるとき、導線が切れた後など)に応じて、どの物理量が既知で、どの物理量が未知数なのかを整理し、必要であれば複数のつり合いの式を連立方程式として解いて、未知数を決定していきます。
    • 導線が切れるという条件は、張力が特定の限界値(この問題では \(5mg\))に達したとして扱います。
    • 導線が切れた後の状況では、極板Aの電荷 \(Q\) が保存されるという新たな条件が加わることに注意し、それによって極板間引力がどのように影響を受けるか(この場合は間隔によらず一定になる)を考慮します。
  4. コラムQ(単振動の考察)の論理展開: つり合いの位置からの変位に対して復元力が働くことを確認し、その復元力の比例定数を求めて、単振動の周期の公式に適用するという標準的な手順で解きます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字計算の正確性と整理整頓: この問題では、質量 \(m\)、重力加速度 \(g\)、自然長 \(l_0\)、極板面積 \(S\)、空気の誘電率 \(\varepsilon_0\)、電圧 \(V_0, V_1\)、ばねの長さ \(l_1\)、ばね定数 \(k\)、電荷 \(Q\)、力 \(F\) など、非常に多くの文字記号が登場します。代入や式変形の過程で、これらの文字を混同したり、書き間違えたりしないように、細心の注意を払い、式を整理しながら計算を進めることが重要です。
  • 連立方程式の丁寧な処理: 特にパートIIでは、複数の物体に関する力のつり合いの式を連立させて解く場面が多くあります。未知数を消去していく過程で計算ミスが起こりやすいため、一つ一つの計算ステップを省略せずに丁寧に行い、必要であれば途中で検算するなどの工夫も有効です。
  • 単位系の意識と最終確認: 基本的には文字式で計算を進めるため、途中で具体的な単位を気にする必要は少ないですが、最終的に得られた答えや、計算途中で出てくる重要な物理量の次元が物理的に正しいものであるか(例えば、力が質量×加速度の次元になっているか、エネルギーが力×距離の次元になっているかなど)を時折意識することは、大きな誤りを防ぐ上で役立ちます。
  • 数値や条件の代入タイミングの考慮: 具体的な数値(例えば、張力が \(5mg\) や、ばねの縮みが \(0.01l_0\) など)を数式に代入するタイミングを適切に選ぶことが、計算の見通しを良くする上で重要です。一般的には、できる限り計算の最後の段階まで文字式のまま扱っておき、最終的な形になってから具体的な値や条件を代入する方が、計算の全体像を把握しやすく、ミスも発見しやすくなる場合があります。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた結果の物理的な妥当性の確認:
    • 例えば、計算で求めたばね定数 \(k\) が正の値になっているか、電圧 \(V_0\) や \(V_1\) が物理的に意味のある値(通常は正の値)になっているかなどを確認します。
    • ばねの長さ \(l_1\) が、元の自然長 \(l_0\) よりも大きい(つまり、ばねが伸びている)という結果は、コンデンサーの極板間に働く引力が増加したという物理的な状況と整合しているかどうかを考えます。
    • 導線が切れた後に極板Bが動かないという結論は、極板Bに働く力の合力が、導線が切れる前後で変化しないという考察と一致しているかどうかを確認します。
  • 極端な場合や単純化した場合との比較検討:
    • もし重力が存在しなかったら、あるいはもし極板間引力が働かなかったら、各物理量はどのようになるだろうか、といった仮定のもとで、導出した式がどのように単純化されるか、あるいは既知の簡単な結果と一致するかどうかなどを考えてみることも有効です。
  • 単位の一貫性の再確認: 計算過程全体を通じて、使用している単位系が一貫しているかどうか(この問題の場合は、基本的にMKSA単位系を想定した文字式として扱っています)を再度確認します。

問題18

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、複数のコンデンサー、抵抗、スイッチ、電池を含む直流回路に関するものです。スイッチの操作によって回路の接続状態が変化し、それに伴い各コンデンサーの電荷や電圧、さらには回路で消費されるジュール熱などが変化する様子を考察します。最終的には、コンデンサーに誘電体を挿入した際の影響についても問われます。「十分に時間がたったとき」という条件は、コンデンサーの充電または放電が完了し、回路に定常的な電流が流れなくなった状態(直流回路においては電流0)を指します。

与えられた条件
  • 電源: 起電力 \(V_0\) の内部抵抗のない電池。
  • コンデンサー: \(C_1 = C\), \(C_2 = 2C\), \(C_3 = 3C\)。初期状態では、各コンデンサーに電荷はない。
  • 抵抗: \(R_1, R_2\)。
  • スイッチ: \(S_1, S_2\)。初期状態では開いている。
  • 接地点: G (電位 \(0 \, \text{V}\))。
  • 空気の比誘電率は1とする(真空と同様に扱ってよい)。
問われていること
  1. スイッチ\(S_1\)だけを閉じて十分に時間がたったときの、コンデンサー\(C_1\)の電気量と電圧。
  2. (1)の状態における、コンデンサー\(C_1\)と\(C_2\)の静電エネルギーの和。
  3. (1)の操作の間に抵抗\(R_1\)で発生したジュール熱。
  4. スイッチ\(S_1\)を開き、次にスイッチ\(S_2\)を閉じて十分に時間がたったときの、点Aと点Bの電位(接地点Gの電位を0とする)。
  5. (4)の操作の間に抵抗\(R_2\)で発生したジュール熱。
  6. スイッチ\(S_2\)を開き、コンデンサー\(C_3\)の極板間に、極板と同じ形で極板間隔の半分の厚さをもつ誘電体を挿入した結果、\(C_3\)の電圧が挿入前の \(\frac{2}{3}\) 倍になったときの、この誘電体の比誘電率 \(\varepsilon_r\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、コンデンサーを含む直流回路の挙動を、スイッチ操作や誘電体の挿入といった条件変化に応じて段階的に解析する能力を試すものです。コンデンサーの基本的な性質(電荷と電圧の関係、エネルギーの蓄積)、接続方法(直列・並列)、そしてエネルギー保存則や電気量保存則といった物理法則を的確に適用することが求められます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. コンデンサーの基本式: コンデンサーに蓄えられる電気量を \(Q\)、電気容量を \(C\)、極板間の電位差を \(V\) とすると、\(Q=CV\) という関係が成り立ちます。
  2. コンデンサーの合成容量:
    • 直列接続: 複数のコンデンサーが直列に接続されている場合、各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しくなります。合成容量 \(C_{\text{直列}}\) は、\(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \frac{1}{C_a} + \frac{1}{C_b} + \cdots\) で与えられます。各コンデンサーにかかる電圧は、電気容量の逆比に分配されます。
    • 並列接続: 複数のコンデンサーが並列に接続されている場合、各コンデンサーにかかる電圧は等しくなります。合成容量 \(C_{\text{並列}}\) は、\(C_{\text{並列}} = C_a + C_b + \cdots\) で与えられます。全体の電気量は、各コンデンサーの電気量の和になります。
  3. コンデンサーの静電エネルギー: コンデンサーに蓄えられる静電エネルギー \(U\) は、\(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \displaystyle\frac{1}{2}QV = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\) のいずれの形で表すことができます。
  4. エネルギー保存則: 回路におけるエネルギーの変換や移動を考える際に重要な法則です。
    • 電池がする仕事: 電池が回路に供給するエネルギーは、電池を通過した総電気量を \(Q_{\text{通}}\)、電池の起電力を \(V_0\) とすると、\(W_{\text{電池}} = Q_{\text{通}}V_0\) と計算されます。
    • ジュール熱: 抵抗で消費されるエネルギーです。多くの場合、エネルギー保存則(例えば、電池がした仕事 = 静電エネルギーの増加分 + ジュール熱)や、孤立系での静電エネルギーの減少分として求められます。
  5. 電気量保存則: 回路の中で電気的に孤立した部分(例えば、スイッチによって他の部分から切り離された導線やコンデンサーの極板の集まり)では、その部分の電荷の総和は操作の前後で保存されます。
  6. 誘電体の効果: 誘電体をコンデンサーの極板間に挿入すると、そのコンデンサーの電気容量は増加します(同じ形状であれば、比誘電率 \(\varepsilon_r\) 倍になります)。同じ電荷量であれば、誘電体内部の電場や極板間の電位差は \(1/\varepsilon_r\) 倍に弱められます。

この問題の各設問に取り組む際の基本的な戦略は以下の通りです。

  1. 各操作後の回路の状態を正確に図示またはイメージする: スイッチの開閉によって、どのコンデンサーがどのように接続されているのか(直列か、並列か、あるいは孤立しているのか)、そして電源に接続されているのかどうかを明確に把握します。
  2. 「十分に時間がたった」という状態の意味を理解する: 直流回路においてコンデンサーを含む場合、この状態はコンデンサーへの充電または放電が完全に完了し、回路に定常的な電流が流れなくなった状態(つまり電流が0になった状態)を指します。このとき、抵抗には電流が流れないため、抵抗の両端の電位差は0となり、抵抗部分は単なる導線(等電位)と見なすことができます。
  3. コンデンサーに関する基本法則を適用する:
    • コンデンサーが電源に接続されている(スイッチが閉じている)場合は、最終的にそのコンデンサーの電位差は電源の電圧や他の回路要素との接続関係によって決まります。
    • スイッチが開いてコンデンサー(またはその一部)が電気的に孤立した場合は、その孤立部分の電気量は保存されます。
    • 直列接続や並列接続の性質(電荷や電圧の分配)を正しく適用します。
  4. エネルギーに関する考察を行う:
    • 各コンデンサーの静電エネルギーは、\(U = \frac{1}{2}CV^2\) などの公式を用いて計算します。
    • 抵抗で発生するジュール熱は、多くの場合、エネルギー保存則を用いて間接的に求めます。具体的には、(電池がした仕事) = (回路全体の静電エネルギーの変化量) + (発生したジュール熱の総和) という関係や、電源が関与しない孤立した部分での電荷の再配分においては、(初期の静電エネルギーの和) – (最終的な静電エネルギーの和) = (発生したジュール熱) といった関係を利用します。
  5. 誘電体の挿入の影響を考慮する: 誘電体を挿入すると電気容量が変化します。これに伴い、電荷が保存されていれば電圧が変化し、電圧が一定に保たれていれば電荷が変化するという相互作用を理解しておく必要があります。

問 (1)

思考の道筋とポイント
スイッチ \(S_1\) だけを閉じ、十分に時間が経過したときのコンデンサー \(C_1\) に蓄えられた電気量と、\(C_1\) の両端の電圧(電位差)を求めます。

  1. 回路の構成の確認: スイッチ \(S_1\) を閉じると、電池 \(V_0\)、抵抗 \(R_1\)、コンデンサー \(C_1\)(電気容量 \(C\))、コンデンサー \(C_2\)(電気容量 \(2C\))がこの順で直列に接続された閉回路が形成されます。スイッチ \(S_2\) は開いたままなので、コンデンサー \(C_3\) および抵抗 \(R_2\) はこの時点では回路から切り離されており、影響を与えません。
  2. 「十分に時間が経過した」状態の解釈: コンデンサーの充電が完全に完了すると、回路にはもはや電流が流れなくなります。直流回路において電流が \(0\) になると、抵抗 \(R_1\) の両端の電位差はオームの法則 (\(V=IR\)) から \(0 \, \text{V}\) となります。これは、抵抗 \(R_1\) が単なる導線と同じように振る舞い、電位を降下させないことを意味します。
  3. コンデンサーの接続状態の特定: 上記の状態では、コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) は実質的に電池 \(V_0\) に対して直列に接続されていると考えることができます。
  4. 合成容量の計算: 直列に接続された2つのコンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) の合成容量 \(C_{12}\) を計算します。直列接続の合成容量の公式 \(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \frac{1}{C_a} + \frac{1}{C_b}\) を用います。
  5. 回路全体で蓄えられる総電気量の計算: 合成容量 \(C_{12}\) のコンデンサーが、電池の電圧 \(V_0\) で充電されたと考えると、回路全体で蓄えられる総電気量 \(Q\) は、コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) から \(Q = C_{12}V_0\) として計算できます。
  6. 直列接続における電気量の特徴: 直列に接続されたコンデンサーには、それぞれ等しい量の電気量 \(Q\) が蓄えられます。したがって、コンデンサー \(C_1\) に蓄えられる電気量もこの \(Q\) に等しくなります。
  7. コンデンサー \(C_1\) の電圧の計算: コンデンサー \(C_1\) に蓄えられた電気量が \(Q\) であり、その電気容量が \(C_1=C\) であることから、\(C_1\) の両端の電圧 \(V_1\) は、再びコンデンサーの基本式 \(Q=CV\) を用いて \(Q = C_1 V_1\) から求めることができます。

この設問における重要なポイント

  • 「十分に時間がたった」という条件の解釈:直流回路でコンデンサーが充電完了すると電流は \(0\) になり、抵抗での電圧降下も \(0\) になることを理解していること。
  • コンデンサーの直列接続の基本的な性質を正しく把握していること。具体的には、各コンデンサーに蓄えられる電気量が等しいこと、そして全体にかかる電圧が各コンデンサーの電気容量の逆比に分配されること。
  • 直列接続されたコンデンサーの合成容量を計算する公式を正しく使えること。

具体的な解説と立式
スイッチ \(S_1\) のみを閉じた状態を考えます。このとき、電池 \(V_0\)、抵抗 \(R_1\)、コンデンサー \(C_1\)(電気容量 \(C\))、コンデンサー \(C_2\)(電気容量 \(2C\))がこの順で直列に接続された回路が形成されます。十分に時間が経過すると、コンデンサーの充電が完了し、回路に電流は流れなくなります。この定常状態では、抵抗 \(R_1\) での電圧降下は \(I R_1 = 0 \times R_1 = 0 \, \text{V}\) となります。
したがって、コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) の直列接続全体には、電池の電圧 \(V_0\) がかかることになります。

コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) は直列に接続されているため、その合成容量を \(C_{12}\) とすると、次の関係式が成り立ちます。
$$\frac{1}{C_{12}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} = \frac{1}{C} + \frac{1}{2C} \quad \cdots ①$$
この直列コンデンサー全体にかかる電圧は \(V_0\) なので、回路全体で蓄えられる総電気量(これは \(C_1\) および \(C_2\) のそれぞれに蓄えられる電気量に等しい)を \(Q\) とすると、コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) より、
$$Q = C_{12}V_0 \quad \cdots ②$$
となります。これがコンデンサー \(C_1\) に蓄えられる電気量です。
また、コンデンサー \(C_1\) の両端の電圧を \(V_1\) とすると、再びコンデンサーの基本式より、
$$Q = C_1 V_1 = C V_1 \quad \cdots ③$$
この式から、電圧 \(V_1\) を求めることができます。

使用した物理公式

  • コンデンサーの直列接続における合成容量の公式: \(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \sum_i \frac{1}{C_i}\)
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
計算過程

まず、合成容量 \(C_{12}\) を式①から計算します。
$$\frac{1}{C_{12}} = \frac{1}{C} + \frac{1}{2C} = \frac{2}{2C} + \frac{1}{2C} = \frac{2+1}{2C} = \frac{3}{2C}$$
よって、合成容量 \(C_{12}\) は、この逆数をとって、
$$C_{12} = \frac{2C}{3}$$
次に、回路全体で蓄えられる総電気量 \(Q\) を式②から計算します。
$$Q = C_{12}V_0 = \left(\frac{2C}{3}\right)V_0 = \frac{2}{3}CV_0$$
これが、コンデンサー \(C_1\) に蓄えられる電気量となります。
最後に、コンデンサー \(C_1\) の両端の電圧 \(V_1\) を式③ (\(Q = CV_1\)) を変形して求めます。
$$V_1 = \frac{Q}{C} = \frac{\frac{2}{3}CV_0}{C}$$
ここで、分子と分母の \(C\) が約分されるので、
$$V_1 = \frac{2}{3}V_0$$
別解1: 電圧の逆比による \(V_1\) の導出
具体的な解説と立式
直列に接続されたコンデンサーでは、全体にかかる電圧 \(V_0\) は、各コンデンサーの電気容量の逆数の比に応じて分配されます。すなわち、\(C_1\) の電圧 \(V_1\) と \(C_2\) の電圧 \(V_2\) の比は、\(V_1 : V_2 = \displaystyle\frac{1}{C_1} : \displaystyle\frac{1}{C_2}\) となります。
この性質を用いると、コンデンサー \(C_1\) の電圧 \(V_1\) は、全体電圧 \(V_0\) を用いて次のように直接計算できます。
$$V_1 = \frac{\frac{1}{C_1}}{\frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}} V_0 = \frac{C_2}{C_1+C_2} V_0 \quad \cdots ④$$

使用した物理公式

  • 直列コンデンサーにおける電圧分配の法則(電圧は電気容量の逆比に分配される)
計算過程

式④に \(C_1=C\) および \(C_2=2C\) を代入します。
$$V_1 = \frac{2C}{C+2C} V_0 = \frac{2C}{3C} V_0$$
ここで、分子と分母の \(C\) が約分されるので、
$$V_1 = \frac{2}{3}V_0$$
この \(V_1\) を用いてコンデンサー \(C_1\) の電気量 \(Q_1\) を計算すると、\(Q_1 = C_1 V_1 = C \cdot \left(\displaystyle\frac{2}{3}V_0\right) = \displaystyle\frac{2}{3}CV_0\) となり、主たる解法で得られた電気量の結果と一致します。

計算方法の平易な説明

スイッチ \(S_1\) だけを閉じると、電池、抵抗 \(R_1\)、コンデンサー \(C_1\)、コンデンサー \(C_2\) が一つの輪っか(直列回路)でつながります。十分に時間が経つと、コンデンサーは電気でいっぱいになり(充電完了)、回路に電気は流れなくなります。そうなると、抵抗 \(R_1\) はただの電線と同じになり、電気的な高さ(電位)を下げたり上げたりする働きはしません。
このとき、コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) は直列につながっているので、まず、この2つを合体させた一つのコンデンサーと考えたときの能力(合成容量 \(C_{12}\))を計算します。直列の場合の合成容量の公式を使うと、\(C_{12} = (2/3)C\) となります(\(C\) は \(C_1\) の能力)。
次に、この \(C_{12}\) という能力を持った合成コンデンサーに、電池の電圧 \(V_0\) が全部かかっていると考えることができます。なので、全体で蓄えられる電気の量 \(Q\) は、\(Q = (\text{能力}) \times (\text{電圧}) = C_{12}V_0 = (2/3)CV_0\) となります。直列につながったコンデンサーでは、それぞれのコンデンサーに蓄えられる電気の量は同じになるという性質があるので、コンデンサー \(C_1\) に蓄えられる電気の量もこの \(Q = (2/3)CV_0\) です。
最後に、コンデンサー \(C_1\) の両端の電圧 \(V_1\) を求めます。電気の量 \(Q\)、能力 \(C_1=C\)、電圧 \(V_1\) の間には \(Q = C_1 V_1\) という関係があるので、\(V_1 = Q/C_1 = ((2/3)CV_0) / C = (2/3)V_0\) と計算できます。

【別解での考え方】直列につながったコンデンサーでは、全体にかかる電圧(この場合は \(V_0\))は、それぞれのコンデンサーの電気を蓄える能力(電気容量)の「逆の比」に応じて分けられます。\(C_1\) の能力は \(C\)、\(C_2\) の能力は \(2C\) ですから、能力の比は \(C_1:C_2 = C:2C = 1:2\) です。電圧はその逆比、つまり \(1/C : 1/(2C) = 2:1\) に分けられます。したがって、全体の電圧 \(V_0\) を \(2+1=3\) つの区画に分けて、\(C_1\) にはそのうちの \(2\) 区画分の電圧がかかるので、\(V_1 = V_0 \times (2/3)\) となります。

結論と吟味

コンデンサー \(C_1\) の電気量は \(\displaystyle\frac{2}{3}CV_0 \, \text{[C]}\)、電圧は \(\displaystyle\frac{2}{3}V_0 \, \text{[V]}\) です。
この結果は、直列コンデンサーにおける重要な性質(各コンデンサーに蓄えられる電荷量が等しいこと、そして各コンデンサーにかかる電圧がその電気容量の逆比に分配されること)とよく整合しています。実際に、\(C_1\) の容量は \(C\) で \(C_2\) の容量は \(2C\) なので、その比は \(1:2\) です。したがって、かかる電圧の比は \(2:1\) となり、全体電圧 \(V_0\) をこの比で分配すると、\(C_1\) には \(V_0 \times \frac{2}{2+1} = \frac{2}{3}V_0\)、\(C_2\) には \(V_0 \times \frac{1}{2+1} = \frac{1}{3}V_0\) の電圧がかかることが確認できます。そして、それぞれの電荷を計算すると \(Q_1 = C_1 V_1 = C \cdot \frac{2}{3}V_0 = \frac{2}{3}CV_0\) および \(Q_2 = C_2 V_2 = (2C) \cdot \frac{1}{3}V_0 = \frac{2}{3}CV_0\) となり、電荷が等しいことも確かめられます。

解答 (1) 電気量: \(\displaystyle\frac{2}{3}CV_0 \, \text{[C]}\)、電圧: \(\displaystyle\frac{2}{3}V_0 \, \text{[V]}\)

問 (2)

思考の道筋とポイント
設問(1)で求めた状態(\(S_1\) のみを閉じ、十分に時間が経過した後)において、コンデンサー \(C_1\) とコンデンサー \(C_2\) に蓄えられている静電エネルギーの和を計算します。

  1. 各コンデンサーの電圧の確認: 設問(1)で、コンデンサー \(C_1\) の電圧 \(V_1 = \displaystyle\frac{2}{3}V_0\) を求めました。コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) は直列に接続されており、全体で \(V_0\) の電圧がかかっているので、コンデンサー \(C_2\) の電圧 \(V_2\) は \(V_2 = V_0 – V_1\) として計算できます。
  2. 静電エネルギーの公式の適用: 各コンデンサーの静電エネルギーは、\(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\) という公式(あるいは \(U = \frac{1}{2}QV\) や \(U = \frac{Q^2}{2C}\) も使えますが、ここでは電圧が分かっているので \(U = \frac{1}{2}CV^2\) が便利でしょう)を用いて計算できます。
  3. エネルギーの和の計算: コンデンサー \(C_1\) の静電エネルギー \(U_1\) とコンデンサー \(C_2\) の静電エネルギー \(U_2\) をそれぞれ計算し、その合計 \(U_{\text{合計}} = U_1 + U_2\) を求めます。

別解の思考の道筋とポイント (合成容量の利用)
設問(1)で計算した \(C_1\) と \(C_2\) の直列合成容量 \(C_{12}\) と、この合成コンデンサー全体にかかる電圧 \(V_0\) を用いて、系全体の静電エネルギーを \(U_{\text{合計}} = \displaystyle\frac{1}{2}C_{12}V_0^2\) として直接計算することも可能です。この方が計算が簡潔になる場合があります。

この設問における重要なポイント

  • コンデンサーの静電エネルギーを計算する公式(\(U = \frac{1}{2}CV^2\)、\(U = \frac{1}{2}QV\)、\(U = \frac{Q^2}{2C}\) のいずれか)を正しく記憶し、適用できること。
  • 直列接続の場合における各コンデンサーの電圧の値を正確に把握していること(設問(1)の結果を利用)。
  • (別解の場合)合成容量の概念を理解し、それを用いて全体のエネルギーを計算できること。

具体的な解説と立式
コンデンサー \(C_1\) の電圧 \(V_1\) は、設問(1)の結果から \(V_1 = \displaystyle\frac{2}{3}V_0\) です。
コンデンサー \(C_2\) の電圧を \(V_2\) とすると、\(C_1\) と \(C_2\) は直列に接続されており、全体で \(V_0\) の電圧がかかっているので、電圧の和の関係から、
$$V_2 = V_0 – V_1 \quad \cdots ⑤$$
コンデンサー \(C_1\)(電気容量 \(C\))に蓄えられる静電エネルギー \(U_1\) は、
$$U_1 = \frac{1}{2}C_1 V_1^2 = \frac{1}{2}C V_1^2 \quad \cdots ⑥$$
コンデンサー \(C_2\)(電気容量 \(2C\))に蓄えられる静電エネルギー \(U_2\) は、
$$U_2 = \frac{1}{2}C_2 V_2^2 = \frac{1}{2}(2C) V_2^2 = C V_2^2 \quad \cdots ⑦$$
したがって、求める静電エネルギーの和 \(U_{\text{合計}}\) は、
$$U_{\text{合計}} = U_1 + U_2 \quad \cdots ⑧$$
となります。

使用した物理公式

  • コンデンサーの静電エネルギーの公式: \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)
  • 直列回路における電圧の和の法則: \(V_{\text{全体}} = V_a + V_b + \cdots\)
計算過程

まず、コンデンサー \(C_2\) の電圧 \(V_2\) を式⑤から計算します。設問(1)より \(V_1 = \displaystyle\frac{2}{3}V_0\) なので、
$$V_2 = V_0 – \frac{2}{3}V_0 = \frac{3V_0 – 2V_0}{3} = \frac{1}{3}V_0$$
次に、コンデンサー \(C_1\) の静電エネルギー \(U_1\) を式⑥から計算します。
$$U_1 = \frac{1}{2}C \left(\frac{2}{3}V_0\right)^2 = \frac{1}{2}C \cdot \frac{4V_0^2}{9} = \frac{4CV_0^2}{18} = \frac{2}{9}CV_0^2$$
続いて、コンデンサー \(C_2\) の静電エネルギー \(U_2\) を式⑦から計算します。
$$U_2 = C \left(\frac{1}{3}V_0\right)^2 = C \cdot \frac{V_0^2}{9} = \frac{1}{9}CV_0^2$$
最後に、これらの静電エネルギーの和 \(U_{\text{合計}}\) を式⑧から求めます。
$$U_{\text{合計}} = U_1 + U_2 = \frac{2}{9}CV_0^2 + \frac{1}{9}CV_0^2 = \frac{2CV_0^2 + CV_0^2}{9} = \frac{3CV_0^2}{9} = \frac{1}{3}CV_0^2$$
別解1: 合成容量を用いた計算
具体的な解説と立式
設問(1)で計算したように、コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) の直列合成容量は \(C_{12} = \displaystyle\frac{2}{3}C\) でした。
この合成コンデンサー \(C_{12}\) が、電圧 \(V_0\) で充電されていると見なすことができるので、蓄えられている全体の静電エネルギー \(U_{\text{合計}}\) は、次のように直接計算できます。
$$U_{\text{合計}} = \frac{1}{2}C_{12}V_0^2 \quad \cdots ⑨$$

使用した物理公式

  • コンデンサーの静電エネルギーの公式: \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)
  • 直列接続されたコンデンサーの合成容量
計算過程

式⑨に、設問(1)で求めた合成容量 \(C_{12} = \displaystyle\frac{2}{3}C\) を代入します。
$$U_{\text{合計}} = \frac{1}{2}\left(\frac{2}{3}C\right)V_0^2 = \frac{1}{3}CV_0^2$$
この結果は、主たる解法で得られた結果と完全に一致します。

計算方法の平易な説明

設問(1)の状態で、コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) が蓄えている電気のエネルギーの合計を求めます。
まず、それぞれのコンデンサーにかかっている電気的な高さの差(電圧)を確認しましょう。\(C_1\) の電圧 \(V_1\) は、設問(1)で \((2/3)V_0\) とわかりましたね。\(C_1\) と \(C_2\) は直列につながっていて、全体で \(V_0\) の電圧がかかっているので、\(C_2\) にかかる電圧 \(V_2\) は、残りの \(V_0 – (2/3)V_0 = (1/3)V_0\) となります。
コンデンサーが蓄えることができるエネルギーの量は、「\((1/2) \times (\text{コンデンサーの能力(電気容量)}) \times (\text{電圧})^2\)」という式で計算できます。
なので、\(C_1\) が蓄えるエネルギーは \((1/2) \times C \times ((2/3)V_0)^2\) です。
そして、\(C_2\) が蓄えるエネルギーは \((1/2) \times (2C) \times ((1/3)V_0)^2\) です(\(C_2\) の能力は \(2C\) であることに注意してください)。
これらをそれぞれ計算して、最後に2つのエネルギーを足し合わせれば、求めたい合計のエネルギーが得られます。

【もう一つの考え方】\(C_1\) と \(C_2\) を合体させた一つの大きなコンデンサー(合成コンデンサー)が、電圧 \(V_0\) で充電されていると考えても、全体のエネルギーを計算できます。この合成コンデンサーの能力(合成容量 \(C_{12}\))は、設問(1)で \((2/3)C\) とわかっています。なので、全体のエネルギーは \((1/2) \times C_{12} \times V_0^2 = (1/2) \times ((2/3)C) \times V_0^2\) としても計算でき、同じ結果になります。

結論と吟味

コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) に蓄えられた静電エネルギーの和は、\(\displaystyle\frac{1}{3}CV_0^2 \, \text{[J]}\) です。
別解で示したように、直列合成容量 \(C_{12}\) を用いて全体の静電エネルギーを計算した結果とも一致しており、計算の妥当性が確認できます。エネルギーは常に正の値(または0)をとる物理量であり、今回の計算結果も \(C > 0\) および \(V_0^2 \ge 0\) であることから、物理的に意味のある正の値(または0)となっています。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{1}{3}CV_0^2 \, \text{[J]}\)

問 (3)

思考の道筋とポイント
設問(1)の操作(スイッチ \(S_1\) を閉じてコンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) を充電する)の間に、抵抗 \(R_1\) で発生したジュール熱を求めます。

  1. エネルギー保存則の利用: このようなコンデンサーの充電過程において抵抗で発生するジュール熱は、エネルギー保存則を考えることで効率的に求めることができます。
  2. 関与するエネルギーの種類とその計算:
    • 電池がした仕事 \(W_{\text{電池}}\): これは、電池が回路全体に供給したエネルギーに相当します。電池を通過した総電気量を \(Q_{\text{通}}\)、電池の起電力を \(V_0\) とすると、\(W_{\text{電池}} = Q_{\text{通}}V_0\) として計算できます。
    • コンデンサーに蓄えられた静電エネルギー \(U_{\text{コンデンサー}}\): 設問(2)で、充電完了後のコンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) の静電エネルギーの和を既に計算しています。
    • 抵抗で発生したジュール熱 \(H\): これが今回求めたい量です。
  3. エネルギー保存則の具体的な式:
    エネルギー保存則をこの状況に適用すると、次の関係式が成り立ちます。
    \((\text{電池のした仕事}) = (\text{コンデンサーの静電エネルギーの増加量}) + (\text{抵抗で発生したジュール熱})\)
    初期状態では、各コンデンサーに電荷がなかったので、蓄えられていた静電エネルギーは \(0\) です。したがって、この場合の「コンデンサーの静電エネルギーの増加量」は、充電が完了した後の「コンデンサーに蓄えられた静電エネルギーの総和」そのものになります。
  4. 各物理量の計算と代入によるジュール熱の導出: 設問(1)で求めた回路全体で蓄えられた総電気量 \(Q\) が、この充電過程で電池を通過した総電気量 \(Q_{\text{通}}\) に相当します。また、設問(2)で \(C_1\) と \(C_2\) の静電エネルギーの和を計算済みです。これらの値を上記のエネルギー保存則の式に代入することで、ジュール熱 \(H\) を求めることができます。

この設問における重要なポイント

  • コンデンサーの充電過程におけるエネルギー保存則を正しく理解し、適用できること。
  • 電池が回路に対してする仕事の計算方法 (\(W_{\text{電池}} = Q_{\text{通}}V_0\)) を知っていること。
  • 抵抗で発生するジュール熱を、直接 \(RI^2t\) などの形で計算しようとすると、充電中の電流 \(I\) が時間的に変化するため困難です。そのため、エネルギー保存則から間接的に求めるのが定石であることを理解しておくこと。

具体的な解説と立式
抵抗 \(R_1\) で発生したジュール熱を \(H\) とします。スイッチ \(S_1\) を閉じてからコンデンサー \(C_1\) および \(C_2\) の充電が完了するまでの間に成り立つエネルギー保存則を考えます。
この過程において、

  • 電池がした仕事(回路全体に供給したエネルギー)を \(W_{\text{電池}}\)
  • コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) に最終的に蓄えられた静電エネルギーの合計を \(U_{\text{静電}}\)(初期の静電エネルギーは0なので、これが静電エネルギーの増加量となります)
  • 抵抗 \(R_1\) で発生したジュール熱を \(H\)

とすると、エネルギー保存則より次の関係式が成り立ちます。
$$W_{\text{電池}} = U_{\text{静電}} + H \quad \cdots ⑪$$
電池を通過した総電気量は、設問(1)で求めたコンデンサー \(C_1\)(および \(C_2\))に蓄えられた総電気量 \(Q\) に等しく、\(Q = \displaystyle\frac{2}{3}CV_0\) でした。
よって、電池がした仕事 \(W_{\text{電池}}\) は、起電力 \(V_0\) を用いて、
$$W_{\text{電池}} = Q V_0 = \left(\frac{2}{3}CV_0\right) V_0 = \frac{2}{3}CV_0^2 \quad \cdots ⑫$$また、コンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) に蓄えられた静電エネルギーの和 \(U_{\text{静電}}\) は、設問(2)で求めたように、$$U_{\text{静電}} = \frac{1}{3}CV_0^2 \quad \cdots ⑬$$
です。
これらの値をエネルギー保存則の式⑪に代入することで、ジュール熱 \(H\) を求めることができます。

使用した物理公式

  • エネルギー保存則(コンデンサーの充電過程において): \(W_{\text{電池}} = \Delta U_{\text{静電}} + H\)
  • 電池がする仕事の公式: \(W_{\text{電池}} = (\text{電池を通過した総電気量}) \times (\text{電池の起電力})\)
  • コンデンサーの静電エネルギー (設問(2)の結果を利用)
計算過程

エネルギー保存則の式⑪ \(W_{\text{電池}} = U_{\text{静電}} + H\) に、
式⑫で計算した電池の仕事 \(W_{\text{電池}} = \displaystyle\frac{2}{3}CV_0^2\) と、
式⑬で計算した(あるいは設問(2)で得られた)コンデンサーの総静電エネルギー \(U_{\text{静電}} = \displaystyle\frac{1}{3}CV_0^2\) を代入します。
$$\frac{2}{3}CV_0^2 = \frac{1}{3}CV_0^2 + H$$この式をジュール熱 \(H\) について解くと、$$H = \frac{2}{3}CV_0^2 – \frac{1}{3}CV_0^2 = \left(\frac{2}{3} – \frac{1}{3}\right)CV_0^2 = \frac{1}{3}CV_0^2$$
したがって、この間に抵抗 \(R_1\) で発生したジュール熱は \(\displaystyle\frac{1}{3}CV_0^2 \, \text{[J]}\) となります。

計算方法の平易な説明

コンデンサーを充電するとき、電池は電気を送り出すために「仕事」をします。この電池がした仕事によって供給されたエネルギーは、一部はコンデンサーの中に電気のエネルギー(静電エネルギー)として蓄えられ、そして残りの一部は、電流が抵抗 \(R_1\) を流れるときに熱(ジュール熱)となって消費されてしまいます。エネルギーは勝手になくなったりはしないので、「電池がした仕事の総量」は、「コンデンサーに蓄えられたエネルギーの総量」と「抵抗で発生した熱の総量」を足したものと等しくなります。
設問(1)で、電池を通過した電気の総量は \((2/3)CV_0\) であることがわかりました。電池の電圧は \(V_0\) ですから、電池がした仕事は \((2/3)CV_0 \times V_0 = (2/3)CV_0^2\) と計算できます。
また、設問(2)で、充電が終わった後にコンデンサー \(C_1\) と \(C_2\) に蓄えられた静電エネルギーの合計は \((1/3)CV_0^2\) であることがわかりました。
したがって、これらの値を使うと、抵抗 \(R_1\) で発生したジュール熱 \(H\) は、
\((\text{電池がした仕事}) – (\text{コンデンサーに蓄えられたエネルギー}) = H\)
\((2/3)CV_0^2 – (1/3)CV_0^2 = (1/3)CV_0^2\)
と計算することができます。

結論と吟味

この間に抵抗 \(R_1\) で発生したジュール熱は \(\displaystyle\frac{1}{3}CV_0^2 \, \text{[J]}\) です。
興味深いことに、この充電過程において、電池が供給したエネルギー (\(\frac{2}{3}CV_0^2\)) のうち、半分(つまり \(\frac{1}{3}CV_0^2\))がコンデンサーの静電エネルギーとして蓄えられ、残りの半分(同じく \(\frac{1}{3}CV_0^2\))がジュール熱として抵抗で消費されています。これは、抵抗を含む回路でコンデンサーを定電圧源で充電した場合に一般的に見られる現象であり(最も単純なRC直列回路では、最終的に電池の仕事のちょうど半分がジュール熱になります)、今回の結果もその傾向と一致しており妥当です。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{1}{3}CV_0^2 \, \text{[J]}\)

問 (4)

思考の道筋とポイント
次に、スイッチ \(S_1\) を開き、その後スイッチ \(S_2\) を閉じます。十分に時間が経過したときの点Aと点Bの電位を求めることが要求されています。接地点Gの電位は \(0 \, \text{V}\) であることを基準とします。

  1. コンデンサー \(C_1\) の状態の確認: スイッチ \(S_1\) が開かれると、コンデンサー \(C_1\) は回路の他の部分から電気的に孤立します。したがって、\(S_1\) を開く直前に \(C_1\) に蓄えられていた電気量 \(Q = \displaystyle\frac{2}{3}CV_0\) およびその両端の電圧 \(V_1 = \displaystyle\frac{2}{3}V_0\) は、この \(S_1\) を開く操作の直後ではそのまま保持されます。
  2. 点Aの電位の計算: 点Aは、コンデンサー \(C_1\) の一方の極板に接続されています。接地点G(電位 \(0 \, \text{V}\))から出発し、電池の負極から正極へたどると電位は \(V_0\) だけ上昇します。この点は抵抗 \(R_1\) を経てコンデンサー \(C_1\) の(元々電池の正極側に接続されていた方の)極板に繋がっています。十分に時間が経った後では \(R_1\) に電流は流れないため、\(R_1\) の両端の電位差は0です。したがって、\(C_1\) の正極側の電位は \(V_0\) (G基準) となります。コンデンサー \(C_1\) の電圧が \(V_1 = \displaystyle\frac{2}{3}V_0\) であり、電池の正極側が高電位、点A側が低電位であったことを考慮すると、点Aの電位 \(V_A\) は、\(V_0 – V_1\) として計算できます。
  3. コンデンサー \(C_2\) と \(C_3\) の状態の確認: スイッチ \(S_2\) を閉じると、コンデンサー \(C_2\)(電気容量 \(2C\))とコンデンサー \(C_3\)(電気容量 \(3C\))は並列に接続されることになります。この並列接続部分が抵抗 \(R_2\) を介して接地点Gにつながります。十分に時間が経過すると、抵抗 \(R_2\) には電流が流れなくなるため、\(R_2\) は等電位となり、点BとGの間の電位差は、\(C_2\) および \(C_3\) の並列部分にかかる共通の電圧 \(V\) に等しくなります。つまり、点Bの電位 \(V_B\) はこの共通電圧 \(V\) となります。
  4. 並列部分における電気量保存則の適用: スイッチ \(S_1\) が開かれたことにより、コンデンサー \(C_2\) の上側極板(\(S_1\) と \(S_2\) の間の導線に接続されている部分)とコンデンサー \(C_3\) の上側極板(点B)およびそれらを結ぶ導線部分は、外部(特に電池や \(C_1\))から電気的に孤立した部分を形成します。\(S_2\) を閉じる直前の状態を考えると、\(C_2\) の上側極板には \(+Q = +\displaystyle\frac{2}{3}CV_0\) の電荷があり(下側極板には \(-Q\))、\(C_3\) には電荷が蓄えられていませんでした(初期電荷0で、\(S_2\) が開いていたため)。したがって、\(S_2\) を閉じて電荷が再配分された後も、この孤立部分(\(C_2\) の上側極板と \(C_3\) の上側極板の合計)の総電荷は保存されます。
  5. 点Bの電位(共通電圧 \(V\))の計算: \(C_2\) と \(C_3\) は並列接続なので、両端にかかる電圧は等しく \(V\) です。このとき、\(C_2\) に蓄えられる電荷は \(Q’_{C2} = C_2 V = 2CV\)、\(C_3\) に蓄えられる電荷は \(Q’_{C3} = C_3 V = 3CV\) となります。電気量保存則(ステップ4で述べた孤立部分の総電荷が保存されること)から、\(Q’_{C2} + Q’_{C3} = (\text{初期の}C_2\text{の上側極板の電荷})\) という式を立て、共通電圧 \(V\)(これが点Bの電位 \(V_B\) になります)を求めます。

この設問における重要なポイント

  • スイッチ操作によって回路の接続状態がどのように変化し、どの部分が電気的に孤立するのかを正確に把握すること。
  • 電気的に孤立した導体部分については、電気量保存則が適用できることを理解し、正しく利用すること。
  • コンデンサーの並列接続の基本的な性質(各コンデンサーにかかる電圧が等しいこと、全体の電気量が各コンデンサーの電気量の和になること)を適用すること。
  • 接地点を基準(電位 \(0 \, \text{V}\))として、回路中の各点の電位を計算していく方法を理解していること。特に、十分に時間が経過した後の抵抗は電流が流れないため、その両端は等電位になる(つまり単なる導線と見なせる)点に注意すること。

具体的な解説と立式
スイッチ \(S_1\) を開くと、コンデンサー \(C_1\) はそれまで蓄えていた電気量 \(Q = \displaystyle\frac{2}{3}CV_0\) と、その両端の電圧 \(V_1 = \displaystyle\frac{2}{3}V_0\) を保持したまま、回路の他の部分から電気的に孤立します。

点Aの電位 \(V_A\) の計算:
接地点Gの電位を \(0 \, \text{V}\) とします。Gから電池の負極を経て正極へたどると、電位は \(V_0\) だけ上昇します。この点は抵抗 \(R_1\) を経由してコンデンサー \(C_1\) の(元々電池の正極側に接続されていた方の)極板に接続されています。十分に時間が経過した後では \(R_1\) に電流は流れないため、\(R_1\) の両端の電位差は \(0\) です。したがって、\(C_1\) の正極側の電位は \(V_0\) (G基準) となります。
コンデンサー \(C_1\) の電圧は \(V_1 = \displaystyle\frac{2}{3}V_0\) であり、電池の正極側が高電位、点A側が低電位でした(電流が流れて充電された際の極性、あるいは電荷の符号から判断できます。\(C_1\) の上側極板には \(-Q\)、下側極板には \(+Q\) が蓄えられていたので、下側が高電位)。
したがって、点Aの電位 \(V_A\) は、\(C_1\) の下側極板(電池の正極側、電位 \(V_0\))から電圧 \(V_1\) だけ低い電位となるので、
$$V_A = V_0 – V_1 \quad \cdots ⑭$$
と表せます。(模範解答の図aでは \(C_1\) の上が-、下が+で描かれており、Aが上側の極板に接続されているためこの計算が妥当です。)

点Bの電位 \(V_B\) の計算:
次に、スイッチ \(S_2\) を閉じると、コンデンサー \(C_2\)(電気容量 \(2C\))とコンデンサー \(C_3\)(電気容量 \(3C\))は並列に接続されることになります。この並列接続部分の両端にかかる共通の電圧を \(V\) とすると、点Bの電位は \(V_B = V\) となります(接地点Gの電位が \(0 \, \text{V}\) であり、十分に時間が経った後では抵抗 \(R_2\) に電流が流れないため、\(R_2\) は等電位となり、Gと \(C_2, C_3\) の下側極板は同電位 \(0 \, \text{V}\) となるため)。
スイッチ \(S_1\) が開かれた後、スイッチ \(S_2\) を閉じる直前の状態を考えます。このとき、コンデンサー \(C_2\) の上側極板(\(S_1\) と \(S_2\) の間の導線に接続されている部分)には、設問(1)で \(C_1\) と \(C_2\) が直列だった際に蓄えられた電荷のうち、\(+Q = +\displaystyle\frac{2}{3}CV_0\) の電荷が存在していました(\(C_2\) の下側極板には \(-Q\))。一方、コンデンサー \(C_3\) には電荷が蓄えられていませんでした(初期電荷0で、\(S_2\) が開いていたため)。
スイッチ \(S_2\) を閉じると、\(C_2\) の上側極板と \(C_3\) の上側極板(点B)は導線で結ばれ、この部分は外部(特に電池や \(C_1\))から電気的に孤立した一つの導体グループを形成します。したがって、これらの極板が持つ電荷の総和は保存されます。
\(S_2\) を閉じる前の、この孤立部分の総電荷(上側極板の電荷の和)は、
$$Q_{\text{上,前}} = Q_{C2\text{上,前}} + Q_{C3\text{上,前}} = \frac{2}{3}CV_0 + 0 = \frac{2}{3}CV_0$$
スイッチ \(S_2\) を閉じて十分に時間が経過した後、コンデンサー \(C_2\) の上側極板に蓄えられる電荷を \(Q’_{C2}\)、コンデンサー \(C_3\) の上側極板に蓄えられる電荷を \(Q’_{C3}\) とすると、電気量保存則より、
$$Q’_{C2} + Q’_{C3} = \frac{2}{3}CV_0 \quad \cdots ⑮$$
また、\(C_2\) と \(C_3\) は並列接続なので、両端にかかる電圧は等しく \(V\)(これが点Bの電位 \(V_B\))です。したがって、
$$Q’_{C2} = C_2 V = (2C)V \quad \cdots ⑯$$
$$Q’_{C3} = C_3 V = (3C)V \quad \cdots ⑰$$
これらの関係式を式⑮に代入して、共通電圧 \(V\) を求めます。

使用した物理公式

  • 電気量保存則(孤立した導体部分において)
  • コンデンサーの並列接続の性質(各コンデンサーにかかる電圧が等しい)
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
  • 電位の考え方(基準点からの電位差、直列回路での電位降下)
計算過程

点Aの電位 \(V_A\) の計算:
式⑭に、設問(1)で求めた \(V_1 = \displaystyle\frac{2}{3}V_0\) を代入します。
$$V_A = V_0 – \frac{2}{3}V_0 = \frac{3V_0 – 2V_0}{3} = \frac{1}{3}V_0$$

点Bの電位 \(V_B\) の計算:
式⑯ (\(Q’_{C2} = 2CV\)) と式⑰ (\(Q’_{C3} = 3CV\)) を、電気量保存の式⑮ (\(Q’_{C2} + Q’_{C3} = \displaystyle\frac{2}{3}CV_0\)) に代入すると、
$$2CV + 3CV = \frac{2}{3}CV_0$$
$$(2C+3C)V = \frac{2}{3}CV_0$$
$$5CV = \frac{2}{3}CV_0$$
両辺を \(5C\) で割ります(\(C \neq 0\) と仮定)。
$$V = \frac{1}{5C} \cdot \frac{2}{3}CV_0 = \frac{2CV_0}{15C}$$
ここで \(C\) が約分されるので、
$$V = \frac{2}{15}V_0$$
点Bの電位 \(V_B\) は、この共通電圧 \(V\) に等しいので、
$$V_B = \frac{2}{15}V_0$$

計算方法の平易な説明

まず、点Aの電気的な高さ(電位)を考えましょう。地面Gの高さを \(0 \, \text{V}\) とします。Gから電池を通ってプラス側に進むと、高さは \(V_0\) になります。この点は抵抗 \(R_1\) を経てコンデンサー \(C_1\) の下の板につながっています(\(R_1\) にはもう電気が流れていないので、高さは変わりません)。コンデンサー \(C_1\) には、設問(1)で \((2/3)V_0\) の電圧(高さの差)があり、下の板が高く、上の板(点A)が低い状態でした。なので、点Aの高さは、\(C_1\) の下の板の高さ \(V_0\) から \(C_1\) の電圧 \((2/3)V_0\) を引いたもの、つまり \(V_A = V_0 – (2/3)V_0 = (1/3)V_0\) となります。

次に、点Bの電位を考えます。スイッチ \(S_1\) が開いて \(S_2\) が閉じられると、コンデンサー \(C_2\) と \(C_3\) が並列につながります。ここで大切なのは、\(C_2\) の上の板と \(C_3\) の上の板(B点)が、\(S_1\) が開いているために外部から電気的に孤立した一つのグループになるということです。スイッチ \(S_2\) を閉じる直前、\(C_2\) の上の板には \((2/3)CV_0\) のプラスの電気があり、\(C_3\) には電気がありませんでした。したがって、このグループが持つ電気の合計量は \((2/3)CV_0\) のまま変わりません(電気量保存の法則)。
スイッチ \(S_2\) を閉じた後、\(C_2\) と \(C_3\) は並列なので、両方にかかる電圧は同じ値 \(V\) になります。この \(V\) が、求めたい点Bの電位 \(V_B\) です。このとき、\(C_2\) には \(2CV\) の電気が、\(C_3\) には \(3CV\) の電気が蓄えられます。これらの電気の合計が、保存されている \((2/3)CV_0\) に等しいので、\(2CV + 3CV = (2/3)CV_0\) という式が成り立ちます。この式を \(V\) について解くと、\(V = (2/15)V_0\) となり、これが点Bの電位 \(V_B\) です。

結論と吟味

点Aの電位は \(\displaystyle\frac{1}{3}V_0 \, \text{[V]}\)、点Bの電位は \(\displaystyle\frac{2}{15}V_0 \, \text{[V]}\) です。
コンデンサー \(C_1\) はスイッチ \(S_1\) が開かれたことで電気的に孤立し、その両端の電圧を保持しているため、それによって点Aの電位が決まります。一方、コンデンサー \(C_2\) と \(C_3\) はスイッチ \(S_2\) が閉じられたことで並列接続となり、\(S_2\) を閉じる前にコンデンサー \(C_2\) の上側極板が持っていた電荷が、\(C_2\) と \(C_3\) の間で再配分されることによって、共通の電圧(これが点Bの電位となります)が決まります。各点の電位の値は、元の電池の電圧 \(V_0\) よりも小さくなっており、これは物理的に妥当な範囲と考えられます。

解答 (4) 点Aの電位: \(\displaystyle\frac{1}{3}V_0 \, \text{[V]}\)、点Bの電位: \(\displaystyle\frac{2}{15}V_0 \, \text{[V]}\)

問 (5)

思考の道筋とポイント
設問(4)の操作(スイッチ \(S_1\) を開き、次にスイッチ \(S_2\) を閉じる)の間に、抵抗 \(R_2\) で発生したジュール熱を求めます。

  1. エネルギー保存則の適用の検討: この過程では、電池は回路から完全に切り離されています(スイッチ \(S_1\) が開いているため、電池はコンデンサー \(C_1\) 側には関与せず、また、スイッチ \(S_2\) を閉じる操作は \(C_2\)、\(C_3\)、\(R_2\) からなる部分回路で起こり、ここにも電池は直接接続されていません)。したがって、この部分系(コンデンサー \(C_2\)、\(C_3\)、および抵抗 \(R_2\) からなる、電気的に孤立した系と見なせる。ただし、初期のエネルギー源は \(C_2\) に蓄えられていた電荷です)におけるエネルギー変化を考えることができます。
  2. 初期状態の静電エネルギーの計算: スイッチ \(S_2\) を閉じる直前の状態を考えます。このとき、コンデンサー \(C_2\) には、設問(1)および(2)で考察したように、電気量 \(Q=\displaystyle\frac{2}{3}CV_0\) が蓄えられており、その両端の電圧は \(V_2=\displaystyle\frac{1}{3}V_0\) でした。コンデンサー \(C_3\) には電荷が蓄えられていなかったので、その静電エネルギーは0でした。このときのコンデンサー \(C_2\) と \(C_3\) の静電エネルギーの合計を \(U_{\text{前}}\) とします。
  3. 最終状態の静電エネルギーの計算: スイッチ \(S_2\) を閉じて十分に時間が経過した後、コンデンサー \(C_2\) と \(C_3\) は並列接続され、両端の共通の電圧は \(V = \displaystyle\frac{2}{15}V_0\) になりました(設問(4)の結果より)。このときのコンデンサー \(C_2\) と \(C_3\) の静電エネルギーの合計を \(U_{\text{後}}\) とします。
  4. ジュール熱の計算: エネルギー保存則より、この電荷の再配分過程で抵抗 \(R_2\) で発生したジュール熱 \(H’\) は、系全体の静電エネルギーの減少分に等しくなると考えられます。つまり、\(H’ = U_{\text{前}} – U_{\text{後}}\) として計算できます。

この設問における重要なポイント

  • 電源が直接関与しない、コンデンサー間の電荷の再配分においては、系全体の静電エネルギーは一般に減少し、その減少分が抵抗におけるジュール熱として消費されるというエネルギー保存の考え方を適用すること。
  • 操作の前後における各コンデンサーの電圧と電気容量から、それぞれの静電エネルギーを正しく計算すること。

具体的な解説と立式
スイッチ \(S_1\) を開き、次にスイッチ \(S_2\) を閉じるという操作の間(特に \(S_2\) を閉じてから十分に時間が経過するまで)に抵抗 \(R_2\) で発生するジュール熱を \(H’\) とします。
この操作は、電池が直接的には関与していない、コンデンサー \(C_2\) と \(C_3\) の間での電荷の移動(再配分)です。このような場合、エネルギー保存則は次の形で適用することができます。
\((\text{操作前の } C_2 \text{ と } C_3 \text{ の合計静電エネルギー}) = (\text{操作後の } C_2 \text{ と } C_3 \text{ の合計静電エネルギー}) + (\text{抵抗 } R_2 \text{ で発生したジュール熱 } H’)\)
これを変形すると、ジュール熱 \(H’\) は、
$$H’ = (\text{操作前の } C_2 \text{ と } C_3 \text{ の合計静電エネルギー}) – (\text{操作後の } C_2 \text{ と } C_3 \text{ の合計静電エネルギー}) \quad \cdots ⑱$$
と表せます。

まず、操作前(スイッチ \(S_2\) を閉じる直前)のエネルギーを計算します。
このとき、コンデンサー \(C_2\) の電圧は \(V_2 = \displaystyle\frac{1}{3}V_0\) でした(設問(2)の計算過程より)。したがって、\(C_2\) の静電エネルギー \(U_{C2,\text{前}}\) は、
$$U_{C2,\text{前}} = \frac{1}{2}C_2 V_2^2 = \frac{1}{2}(2C)\left(\frac{1}{3}V_0\right)^2 \quad \cdots ⑲$$
一方、コンデンサー \(C_3\) はこの時点では電荷を持っていなかったので、その静電エネルギー \(U_{C3,\text{前}} = 0\) です。
よって、操作前の \(C_2\) と \(C_3\) の合計静電エネルギー \(U_{\text{前}}\) は、\(U_{\text{前}} = U_{C2,\text{前}} + U_{C3,\text{前}} = U_{C2,\text{前}}\) となります。

次に、操作後(スイッチ \(S_2\) を閉じて十分に時間が経過した後)のエネルギーを計算します。
このとき、コンデンサー \(C_2\) と \(C_3\) は並列に接続され、両端の共通の電圧は \(V = \displaystyle\frac{2}{15}V_0\) になります(設問(4)の結果より)。
このときの \(C_2\) と \(C_3\) の合計の静電エネルギー \(U_{\text{後}}\) は、並列接続の合成容量 \(C_{23} = C_2+C_3 = 2C+3C = 5C\) を用いて、
$$U_{\text{後}} = \frac{1}{2}C_{23}V^2 = \frac{1}{2}(5C)V^2 \quad \cdots ⑳$$
と計算できます。
これらの \(U_{\text{前}}\) と \(U_{\text{後}}\) を式⑱に代入して、ジュール熱 \(H’\) を求めます。

使用した物理公式

  • コンデンサーの静電エネルギーの公式: \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2\)
  • エネルギー保存則(電気的に孤立した系での電荷再配分時): \(H = U_{\text{初期状態の総エネルギー}} – U_{\text{最終状態の総エネルギー}}\)
  • コンデンサーの並列接続における合成容量の公式: \(C_{\text{並列}} = C_a + C_b\)
計算過程
  1. まず、操作前(スイッチ \(S_2\) を閉じる直前)のコンデンサー \(C_2\) の静電エネルギー \(U_{C2,\text{前}}\) を式⑲から具体的に計算します。
    $$U_{C2,\text{前}} = \frac{1}{2}(2C)\left(\frac{1}{3}V_0\right)^2 = C \cdot \frac{1}{9}V_0^2 = \frac{1}{9}CV_0^2$$
    コンデンサー \(C_3\) のエネルギーは \(0\) なので、操作前の合計静電エネルギーは \(U_{\text{前}} = \displaystyle\frac{1}{9}CV_0^2\) です。
  2. 次に、操作後(スイッチ \(S_2\) を閉じて十分に時間が経過した後)のコンデンサー \(C_2\) と \(C_3\) の合計静電エネルギー \(U_{\text{後}}\) を式⑳から具体的に計算します。設問(4)より共通電圧は \(V = \displaystyle\frac{2}{15}V_0\) なので、
    $$U_{\text{後}} = \frac{1}{2}(5C)\left(\frac{2}{15}V_0\right)^2 = \frac{5}{2}C \cdot \frac{4V_0^2}{225} = \frac{20CV_0^2}{450} = \frac{2CV_0^2}{45}$$
  3. 最後に、抵抗 \(R_2\) で発生したジュール熱 \(H’\) を、式⑱の関係 \(H’ = U_{\text{前}} – U_{\text{後}}\) を用いて求めます。
    $$H’ = \frac{1}{9}CV_0^2 – \frac{2}{45}CV_0^2$$
    通分するために、第1項の分母と分子を5倍します(\(\frac{1}{9} = \frac{5}{45}\))。
    $$H’ = \frac{5}{45}CV_0^2 – \frac{2}{45}CV_0^2 = \frac{5CV_0^2 – 2CV_0^2}{45} = \frac{3CV_0^2}{45} = \frac{1}{15}CV_0^2$$

したがって、この間に抵抗 \(R_2\) で発生したジュール熱は \(\displaystyle\frac{1}{15}CV_0^2 \, \text{[J]}\) です。

計算方法の平易な説明

スイッチ \(S_1\) が開かれた後、今度はスイッチ \(S_2\) を閉じます。この操作の間、電池は回路から切り離されているので、エネルギーの供給はありません。このとき、もともとコンデンサー \(C_2\) が持っていた電気エネルギーの一部が、抵抗 \(R_2\) を電気が流れる際に熱(ジュール熱)として使われ、残りのエネルギーが最終的にコンデンサー \(C_2\) と \(C_3\) に分けられて蓄えられることになります。
エネルギーはなくならない(ただし熱に変わることはある)ので、「抵抗 \(R_2\) で発生した熱エネルギー」は、「操作が始まる直前の \(C_2\) のエネルギー(\(C_3\) は空っぽでした)」から「操作が終わった後の \(C_2\) と \(C_3\) のエネルギーの合計」を引いたものと等しくなります。
操作が始まる直前の \(C_2\) のエネルギーは、設問(2)の結果からわかります(具体的には、\(C_2\) の電圧が \((1/3)V_0\) だったので、エネルギーは \((1/2)(2C)((1/3)V_0)^2 = (1/9)CV_0^2\) でした)。\(C_3\) は電荷を持っていなかったので、そのエネルギーは \(0\) です。なので、操作前の合計エネルギーは \((1/9)CV_0^2\) です。
操作が終わった後、\(C_2\) と \(C_3\) は並列につながり、両方にかかる共通の電圧は設問(4)で \((2/15)V_0\) とわかりました。このときの \(C_2\) と \(C_3\) を合わせた全体の能力(合成容量)は \(2C+3C=5C\) です。なので、操作後の合計エネルギーは \((1/2)(5C)((2/15)V_0)^2 = (2/45)CV_0^2\) となります。
したがって、抵抗 \(R_2\) で発生したジュール熱は、これらのエネルギーの差をとって、\((1/9)CV_0^2 – (2/45)CV_0^2\) を計算すると、\((1/15)CV_0^2\) と求められます。

結論と吟味

この間に抵抗 \(R_2\) で発生したジュール熱は \(\displaystyle\frac{1}{15}CV_0^2 \, \text{[J]}\) です。
コンデンサー間で電荷が抵抗を通じて再配分される際には、一般にエネルギーの一部がジュール熱として失われます。今回の計算結果が正の値であるということは、実際にエネルギーが熱として消費されたことを示しており、物理的に妥当です。また、その量は初期に \(C_2\) が蓄えていたエネルギーよりも小さい値であり、これも整合性があります。

解答 (5) \(\displaystyle\frac{1}{15}CV_0^2 \, \text{[J]}\)

問 (6)

思考の道筋とポイント
続いて、スイッチ \(S_2\) を開き、コンデンサー \(C_3\) の極板間に、極板と同じ形で極板間隔の半分の厚さをもつ誘電体を挿入します。その結果、コンデンサー \(C_3\) の両端の電圧が、誘電体を挿入する前の電圧の \(\frac{2}{3}\) 倍になったとあります。この情報から、挿入した誘電体の比誘電率 \(\varepsilon_r\) を求めます。

  1. コンデンサー \(C_3\) の状態 (誘電体挿入前): スイッチ \(S_2\) を開いた直後、コンデンサー \(C_3\) は、設問(4)の状態で蓄えられていた電気量 \(Q_3\) と、そのときの電圧 \(V = \displaystyle\frac{2}{15}V_0\) を保持しています。この電気量 \(Q_3\) は、\(Q_3 = C_3 V = (3C) \left(\displaystyle\frac{2}{15}V_0\right) = \displaystyle\frac{2}{5}CV_0\) と計算できます。
  2. 電気量保存の法則: スイッチ \(S_2\) を開いた後に誘電体を挿入するので、コンデンサー \(C_3\) の極板上の電気量 \(Q_3\) は、この操作の間も保存されます(変化しません)。
  3. 誘電体挿入後の \(C_3\) の構造と新しい電気容量の計算: コンデンサー \(C_3\) の元の極板間隔を \(d_3\) とすると、その元の電気容量は \(3C = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S_{C3}}{d_3}\) と表せます(\(S_{C3}\) は \(C_3\) の極板面積)。ここに、厚さが \(d_3/2\) の誘電体(比誘電率 \(\varepsilon_r\))を挿入すると、このコンデンサー \(C_3\) は、厚さが \(d_3/2\) の空気層(または真空層)からなるコンデンサー \(C_I\) と、厚さが \(d_3/2\) で比誘電率が \(\varepsilon_r\) の誘電体層からなるコンデンサー \(C_{II}\) が、直列に接続されたものと等価であると見なすことができます。
  4. 各部分コンデンサーの電気容量の表現: \(C_I\) と \(C_{II}\) の電気容量を、元の容量 \(3C\) や比誘電率 \(\varepsilon_r\) を用いて表します。
  5. 誘電体挿入後の \(C_3\) の合成容量 \(C’_3\) の計算: \(C_I\) と \(C_{II}\) の直列合成容量 \(C’_3\) を計算します。
  6. 電圧の関係の利用: 問題文の条件から、誘電体を挿入した後のコンデンサー \(C_3\) の電圧 \(V’_3\) は、挿入前の電圧 \(V\) の \(\displaystyle\frac{2}{3}\) 倍なので、\(V’_3 = \displaystyle\frac{2}{3}V\) となります。
  7. コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) の適用と \(\varepsilon_r\) の導出: 電気量 \(Q_3\) が保存されるので、誘電体挿入後も \(Q_3 = C’_3 V’_3\) という関係が成り立ちます。この式に、これまで計算してきた各物理量の値を代入し、未知数である比誘電率 \(\varepsilon_r\) についての方程式を立てて解きます。

別解の思考の道筋とポイント (電場と電位差の関係を利用)
誘電体を挿入する前後でコンデンサー \(C_3\) の電気量 \(Q_3\) が保存されるため、極板の面電荷密度も変わりません。したがって、コンデンサー内部の空気層部分の電場の強さは、誘電体を挿入する前後で変化しないと考えられます。一方、誘電体内部の電場の強さは、同じ面電荷密度(あるいは同じ電束密度)に対して、空気層の場合の \(1/\varepsilon_r\) 倍になります。各層(空気層と誘電体層)における電場の強さとそれぞれの厚さから、全体の電位差(コンデンサーの電圧)を計算し、それが誘電体挿入前の電圧の \(\displaystyle\frac{2}{3}\) 倍になるという条件を用いることで、比誘電率 \(\varepsilon_r\) を求めることも可能です。

この設問における重要なポイント

  • スイッチが開いている(回路が開放されている)ため、コンデンサーの極板に蓄えられた電気量が保存されるという電気量保存則の適用。
  • 誘電体をコンデンサーの極板間に部分的に挿入した場合の等価的な電気容量の計算方法(この場合は、空気層のコンデンサーと誘電体層のコンデンサーの直列接続と見なす)。
  • 誘電体中の電場の強さが、同じ電束密度(またはそれに相当する空気中での電場の強さ)に対して \(1/\varepsilon_r\) 倍に弱められるという誘電体の基本的な性質。
  • 問題文で与えられた電圧が変化するという条件を、正しく立式に反映させること。

具体的な解説と立式
スイッチ \(S_2\) を開いたとき、コンデンサー \(C_3\) には電気量 \(Q_3\) が蓄えられており、その大きさは設問(4)の結果から、
$$Q_3 = C_3 V = (3C) \left(\frac{2}{15}V_0\right) = \frac{6C V_0}{15} = \frac{2}{5}CV_0$$
です。この電気量 \(Q_3\) は、誘電体を挿入する過程で保存されます。
誘電体を挿入する前のコンデンサー \(C_3\) の電圧は \(V = \displaystyle\frac{2}{15}V_0\) でした。
誘電体を挿入した後、\(C_3\) の電圧は \(V’_3\) になったとし、問題文の条件から \(V’_3 = \displaystyle\frac{2}{3}V\) です。具体的には、
$$V’_3 = \frac{2}{3} \left(\frac{2}{15}V_0\right) = \frac{4}{45}V_0$$
となります。

コンデンサー \(C_3\) の元の極板面積を \(S_{C3}\)(これは他のコンデンサーの \(S\) とは一般に異なりますが、問題文に「極板と同じ形」とあるので、面積は共通の \(S\) と考えてよいでしょう)、元の極板間隔を \(d_{C3}\) とすると、元の電気容量は \(3C = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S}{d_{C3}}\) と表せます。
厚さが \(d_{C3}/2\) の誘電体(比誘電率 \(\varepsilon_r\))を挿入すると、このコンデンサーは、厚さが \(d_{C3}/2\) の空気層(真空層)からなるコンデンサー \(C_I\) と、厚さが \(d_{C3}/2\) で比誘電率が \(\varepsilon_r\) の誘電体層からなるコンデンサー \(C_{II}\) が、直列に接続されたものと等価であると見なすことができます。
それぞれの電気容量は、
$$C_I = \frac{\varepsilon_0 S}{d_{C3}/2} = 2 \frac{\varepsilon_0 S}{d_{C3}} = 2(3C) = 6C \quad \cdots ㉑$$
$$C_{II} = \frac{\varepsilon_r \varepsilon_0 S}{d_{C3}/2} = 2\varepsilon_r \frac{\varepsilon_0 S}{d_{C3}} = 2\varepsilon_r (3C) = 6\varepsilon_r C \quad \cdots ㉒$$
これらのコンデンサー \(C_I\) と \(C_{II}\) が直列に接続されているので、誘電体挿入後の \(C_3\) の合成容量を \(C’_3\) とすると、
$$\frac{1}{C’_3} = \frac{1}{C_I} + \frac{1}{C_{II}} = \frac{1}{6C} + \frac{1}{6\varepsilon_r C} = \frac{\varepsilon_r + 1}{6\varepsilon_r C} \quad \cdots ㉓$$
したがって、
$$C’_3 = \frac{6\varepsilon_r C}{\varepsilon_r+1} \quad \cdots ㉔$$
となります。
コンデンサーの電気量 \(Q_3\) が保存されるので、誘電体挿入後も \(Q_3 = C’_3 V’_3\) という関係が成り立ちます。この式に、\(Q_3 = \displaystyle\frac{2}{5}CV_0\)、\(C’_3 = \displaystyle\frac{6\varepsilon_r C}{\varepsilon_r+1}\)、そして \(V’_3 = \displaystyle\frac{4}{45}V_0\) を代入すると、
$$\frac{2}{5}CV_0 = \left(\frac{6\varepsilon_r C}{\varepsilon_r+1}\right) \left(\frac{4}{45}V_0\right) \quad \cdots ㉕$$
この方程式を、未知数である比誘電率 \(\varepsilon_r\) について解きます。

別解1: 電場と電位差の関係を用いた方法
具体的な解説と立式
誘電体を挿入する前のコンデンサー \(C_3\) の極板間の電場の強さを \(E_{\text{前}}\) とすると、そのときの電圧 \(V\)(\(= \frac{2}{15}V_0\))と極板間隔 \(d_{C3}\) の間には、\(V = E_{\text{前}}d_{C3}\) という関係があります。
誘電体を挿入した後、コンデンサー \(C_3\) の電気量 \(Q_3\) が保存されるため、極板の面電荷密度も変わりません。したがって、コンデンサー内部の空気層部分(厚さ \(d_{C3}/2\))における電場の強さは、誘電体を挿入する前の電場の強さ \(E_{\text{前}}\) と同じままであると考えられます。一方、誘電体内部(厚さ \(d_{C3}/2\))の電場の強さ \(E_{\text{誘}}\) は、同じ面電荷密度(あるいは同じ電束密度)に対して、空気層の場合の \(1/\varepsilon_r\) 倍になるので、\(E_{\text{誘}} = E_{\text{前}}/\varepsilon_r\) となります。
このときのコンデンサー \(C_3\) 全体の電圧 \(V’_3\) は、各層の電位差の和として表されるので、
$$V’_3 = E_{\text{前}} \cdot \frac{d_{C3}}{2} (\text{空気層の電位差}) + E_{\text{誘}} \cdot \frac{d_{C3}}{2} (\text{誘電体層の電位差})$$
$$V’_3 = E_{\text{前}} \frac{d_{C3}}{2} + \frac{E_{\text{前}}}{\varepsilon_r} \frac{d_{C3}}{2} \quad \cdots ㉖$$
ここで、\(E_{\text{前}}d_{C3} = V\) であることを用いると、
$$V’_3 = (E_{\text{前}}d_{C3}) \frac{1}{2} \left(1 + \frac{1}{\varepsilon_r}\right) = V \cdot \frac{1}{2} \left(1 + \frac{1}{\varepsilon_r}\right) \quad \cdots ㉗$$
問題文の条件から、\(V’_3 = \displaystyle\frac{2}{3}V\) です。これらの関係式を結びつけて \(\varepsilon_r\) を求めます。

使用した物理公式

  • 電気量保存則(孤立したコンデンサーにおいて)
  • コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
  • 誘電体を部分的に挿入したコンデンサーの等価的な電気容量の計算(直列接続と見なすモデル)
  • 空気(真空)中のコンデンサーの電気容量の公式: \(C_0 = \displaystyle\frac{\varepsilon_0 S}{d}\)
  • 誘電体中のコンデンサーの電気容量の公式: \(C = \displaystyle\frac{\varepsilon_r \varepsilon_0 S}{d}\)
  • (別解にて)一様な電場と電位差の関係: \(V=Ed\)
  • (別解にて)誘電体内部の電場の強さの低減効果: \(E_{\text{誘電体}} = E_{\text{空気層}}/\varepsilon_r\)
計算過程

まず、主たる解法に従って、式㉕の両辺から \(CV_0\) を消去します(\(C \neq 0, V_0 \neq 0\) と仮定)。
$$\frac{2}{5} = \frac{6\varepsilon_r}{\varepsilon_r+1} \cdot \frac{4}{45}$$
右辺の係数を整理すると、\(\displaystyle\frac{6 \times 4}{45} = \displaystyle\frac{24}{45} = \displaystyle\frac{8}{15}\) なので、
$$\frac{2}{5} = \frac{8\varepsilon_r}{15(\varepsilon_r+1)}$$
両辺に \(15(\varepsilon_r+1)\) を掛けると、
$$2 \cdot 3(\varepsilon_r+1) = 8\varepsilon_r$$
$$6(\varepsilon_r+1) = 8\varepsilon_r$$
$$6\varepsilon_r + 6 = 8\varepsilon_r$$
移項して整理すると、
$$6 = 8\varepsilon_r – 6\varepsilon_r$$
$$6 = 2\varepsilon_r$$
したがって、
$$\varepsilon_r = \frac{6}{2} = 3$$

別解1の計算過程
式㉗ (\(V’_3 = V \cdot \displaystyle\frac{1}{2} \left(1 + \displaystyle\frac{1}{\varepsilon_r}\right)\)) と、問題文の条件である \(V’_3 = \displaystyle\frac{2}{3}V\) を等しいと置きます。
$$\frac{2}{3}V = V \cdot \frac{1}{2} \left(1 + \frac{1}{\varepsilon_r}\right)$$
両辺の \(V\) を消去し(\(V \neq 0\) と仮定)、両辺に2を掛けると、
$$\frac{4}{3} = 1 + \frac{1}{\varepsilon_r}$$
移項して \(\displaystyle\frac{1}{\varepsilon_r}\) について解くと、
$$\frac{1}{\varepsilon_r} = \frac{4}{3} – 1 = \frac{4-3}{3} = \frac{1}{3}$$
したがって、この逆数をとると、
$$\varepsilon_r = 3$$
両方の解法で同じ結果 (\(\varepsilon_r = 3\)) が得られました。

計算方法の平易な説明

スイッチ \(S_2\) を開くと、コンデンサー \(C_3\) に蓄えられていた電気の量 \(Q_3\) は、もうどこへも行けないので一定のまま変わりません。この電気の量 \(Q_3\) は、設問(4)で計算した値(\((2/5)CV_0\))です。
次に、コンデンサー \(C_3\) の板と板の間に、元の隙間のちょうど半分の厚さを持つ「誘電体」という特別な物質を差し込みます。誘電体を入れると、コンデンサーの電気を蓄える能力(電気容量)が変わります。この新しい状態の電気容量 \(C’_3\) を計算する必要があります。誘電体を部分的に入れたコンデンサーは、ちょうど空気だけが入っている部分の小さなコンデンサーと、誘電体が入っている部分の小さなコンデンサーが、直列につながったものとして考えることができます。それぞれの能力を計算し、直列接続のときの合成の公式を使って、新しい全体の能力 \(C’_3\) を求めます。このとき、誘電体の性質を表す「比誘電率 \(\varepsilon_r\)」という未知の数が入ってきます。
問題文には、「誘電体を入れた後、\(C_3\) の電圧が、入れる前の電圧の \((2/3)\) 倍になった」と書かれています。入れる前の電圧は設問(4)で求めたB点の電位 \(V=(2/15)V_0\) でした。ですから、誘電体を入れた後の \(C_3\) の電圧 \(V’_3\) は、\(V \times (2/3)\) と計算できます。
最後に、コンデンサーの基本ルールである「電気の量 = 能力 × 電圧」(\(Q_3 = C’_3 V’_3\))という関係が、誘電体を入れた後も成り立ちます。この式に、これまでに計算してきた \(Q_3\)、\(C’_3\)(\(\varepsilon_r\) を含む式)、そして \(V’_3\) の値をすべて入れてあげると、未知数 \(\varepsilon_r\) だけの方程式ができるので、これを解けば比誘電率 \(\varepsilon_r\) が求まります。

【もう一つの考え方】電気の量 \(Q_3\) が変わらないので、コンデンサーの板の上の電気の密度も変わりません。したがって、空気の部分の電気の強さ(電場)は、誘電体を入れる前と同じ強さのままです。誘電体の中では、電場の強さが \(1/\varepsilon_r\) に弱められます。コンデンサー全体の電圧(高さの差)は、それぞれの部分の「電場の強さ × 厚さ」を足し合わせたものになります。この新しい全体の電圧が、元の電圧の \((2/3)\) 倍になる、という条件から式を立てて解くことでも、比誘電率 \(\varepsilon_r\) を求めることができます。

結論と吟味

挿入した誘電体の比誘電率 \(\varepsilon_r\) は \(3\) です。
比誘電率は通常1より大きい値を持ち(真空または空気の場合が1)、今回の計算結果も \(3\) という物理的に妥当な値となっています。また、二つの異なるアプローチ(電気容量から攻める方法と、電場と電位差の関係から攻める方法)で同じ結果が得られたことも、計算の正しさを裏付けています。

解答 (6) 3

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • コンデンサーの接続(直列・並列)と合成容量の計算:
    • 核心:複数のコンデンサーが回路に接続されている場合、それらを一つの等価的なコンデンサーとして扱うための合成容量の計算方法を理解し、適用できること。直列接続では各コンデンサーに蓄えられる電気量が等しく、合成容量の逆数が各容量の逆数の和となる。並列接続では各コンデンサーにかかる電圧が等しく、合成容量は各容量の和となる。
    • 理解のポイント:回路図を見て、どのコンデンサーが直列でどのコンデンサーが並列なのかを正確に判断することが第一歩。直列では「電荷共通・電圧分割(容量の逆比)」、並列では「電圧共通・電荷分割(容量の比)」という特徴を掴む。
  • 電気量保存則の適用:
    • 核心:電気回路の中で、外部から電荷の供給も流出もない電気的に孤立した部分においては、その部分が持つ電荷の総和は、操作の前後で変化しないという法則。
    • 理解のポイント:スイッチの開閉によって回路のどの部分が電気的に孤立するのかを正確に見極めることが極めて重要。保存されるのは「電荷の代数和」である点にも注意(符号を考慮する)。
  • エネルギー保存則(ジュール熱を含む回路での適用):
    • 核心:回路全体のエネルギーの流れを追跡し、エネルギーの形態変化(電池の化学エネルギーから電気エネルギーへ、電気エネルギーから静電エネルギーや熱エネルギーへ)を定量的に記述する法則。
    • 理解のポイント:基本形は「供給されたエネルギー(例:電池のした仕事 \(W_{\text{電池}} = QV_0\))」=「蓄えられたエネルギーの変化(例:コンデンサーの静電エネルギー \(\Delta U_{\text{静電}}\))」+「消費されたエネルギー(例:抵抗でのジュール熱 \(H\))」という形。特に、電源が関与しない孤立した回路部分で電荷が再配分される際には、静電エネルギーの減少分がジュール熱として消費されることが多い。
  • 誘電体の電気的な効果:
    • 核心:誘電体をコンデンサーの極板間に挿入すると、誘電分極によりコンデンサーの電気容量が増加する。同じ形状であれば、比誘電率 \(\varepsilon_r\) 倍になる。また、同じ電荷量を保ったまま誘電体を挿入すると、極板間の電場は \(1/\varepsilon_r\) 倍に弱まり、電位差も同様に \(1/\varepsilon_r\) 倍に減少する。
    • 理解のポイント:比誘電率 \(\varepsilon_r\) は、真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) に対するその物質の誘電率 \(\varepsilon\) の比 (\(\varepsilon_r = \varepsilon/\varepsilon_0\)) であり、物質がどれだけ電気的に分極しやすいか(電場を弱める効果が大きいか)を示す指標。誘電体をコンデンサーの極板間の一部に挿入した場合は、空気(真空)部分のコンデンサーと誘電体部分のコンデンサーの組み合わせ(多くは直列接続)として考えることで、全体の電気容量や電圧分布を計算できる。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • 複数のスイッチ操作によって回路の接続状態が段階的に変化し、その都度、コンデンサーの電荷、電圧、エネルギーなどを計算する複雑なコンデンサー回路の問題。
    • 抵抗とコンデンサーを含むRC回路において、充電完了後や放電完了後といった「十分に時間が経過した」定常状態だけでなく、スイッチ操作直後の過渡的な状態における電流や電圧の変化を問う問題(ただし、本問では主に定常状態を扱っています)。
    • コンデンサーの極板間に働く力や、コンデンサーを外部から操作する(極板を動かす、誘電体を出し入れする)際に必要な仕事、あるいはそれによって変化する静電エネルギーを計算する問題。
    • 複数の異なる種類の誘電体が層状に、あるいは並列に組み合わされて挿入されたコンデンサーの電気容量を計算する問題。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. スイッチの状態変化の正確な把握: まず、問題文中で行われるスイッチの開閉操作によって、回路のどの部分がアクティブになり、どの部分が非アクティブになるのか、そしてコンデンサーが電源に接続されるのか、それとも孤立するのか、といった接続状態の変化を正確に把握します。これが全ての考察の出発点です。
    2. 「十分に時間がたった後」という条件の解釈: 直流回路においてコンデンサーが含まれる場合、この条件はコンデンサーへの充電または放電が完全に完了し、回路に定常的な電流が流れなくなった状態(つまり電流が \(0\) になった状態)を指すと解釈します。このとき、抵抗の両端の電位差は \(0\) になる(つまり抵抗は単なる導線と見なせる)という点が重要です。
    3. 電気的に孤立した部分の特定と電気量保存則の適用: スイッチ操作などによって、回路の一部が外部から電気的に切り離されて孤立状態になる場合、その孤立部分が持つ電荷の総和は保存される、という電気量保存則の適用を常に考えます。
    4. エネルギーの流れと保存の追跡: 電池が回路にエネルギーを供給しているのか、あるいはコンデンサー間でエネルギーが移動しているのか、そして抵抗でエネルギーが熱として消費されているのか、といったエネルギーの出入りと変換の全体像を把握し、エネルギー保存則を適切に立式することを考えます。
    5. 等価回路への単純化の試み: 複雑に見えるコンデンサーの接続や、誘電体が部分的に挿入された状況などは、より単純な複数のコンデンサーの直列接続や並列接続の等価回路に置き換えて考えることができないか、を検討します。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
    • 接地点(アース)が回路図中に示されている場合、その点の電位は \(0 \, \text{V}\) であることを基準として、回路中の各点の電位を順を追って計算していくと、電圧(電位差)の関係が明確になります。
    • 抵抗で発生するジュール熱を計算する際、電流 \(I\) が時間的に変化するような過渡的な充電・放電過程では、\(RI^2\) を単純に時間積分するよりも、エネルギー保存則(供給されたエネルギー、蓄えられたエネルギーの変化、消費されたエネルギーの関係)から間接的に求める方がはるかに簡単な場合がほとんどです。
    • 誘電体をコンデンサーに挿入する問題では、電気容量がどのように変化するのか(\(\varepsilon_r\) 倍になる)、そしてその結果として、電荷が一定なら電圧がどうなるか(\(1/\varepsilon_r\) 倍になる)、電圧が一定なら電荷がどうなるか(\(\varepsilon_r\) 倍になる)といった関係を正確に把握しておくことが重要です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • コンデンサーの直列接続と並列接続の判断ミスや計算ミス:
    • 現象:回路図を一見しただけで、実際には直列に接続されている部分を並列と判断してしまったり、その逆の誤りをしたりする。また、合成容量の計算式(特に直列の場合の逆数の和の逆数をとる操作)を間違える。
    • 対策:電流が流れる経路(充電や放電の際に電荷が移動する道筋)や、電位の分岐点・合流点に注意深く着目し、各コンデンサーが物理的にどのように接続されているかを正確に把握する訓練を積むことが重要です。直列接続では、すべてのコンデンサーを同じ(仮想的な)電流が貫通し、電荷が共通になります。並列接続では、すべてのコンデンサーの両端が共通の2点に接続され、電圧が共通になります。
  • 電気量保存則を適用すべき範囲の誤認:
    • 現象:スイッチが閉じていて電池に接続されている部分(つまり電荷の供給や流出が可能な部分)に対しても、誤って電気量保存則を適用しようとしてしまう。
    • 対策:電気量保存則は、あくまで「外部から電荷の出入りがない、電気的に孤立した導体系」についてのみ成り立つ法則であることを肝に銘じましょう。電池に接続されていれば、その部分の電荷量は電池との間でやり取りされるため、一般には保存されません。スイッチの開閉によってどの部分が孤立するのかを正確に見極めることが不可欠です。
  • エネルギー保存則を立式する際の各項の符号や意味の混同:
    • 現象:電池がする仕事、コンデンサーの静電エネルギーの「変化量」(増加したのか減少したのか)、そして抵抗で発生するジュール熱といった各エネルギー項の関係を正しく立式できない。特に、エネルギーの符号の扱いで混乱しやすい。
    • 対策:「エネルギーの出入りと形態変化」という基本的な観点から、電池が外部からエネルギーを回路に「供給」し、その供給されたエネルギーが、コンデンサーの静電エネルギーとして「蓄積」されたり、抵抗でジュール熱として「消費」されたりする、という一連の流れを明確に理解することが重要です。静電エネルギーの変化量を考える際は、必ず「(最終状態のエネルギー)-(初期状態のエネルギー)」として計算し、その符号がエネルギーの増加または減少を正しく表しているかを確認します。
  • 誘電体を挿入した際のコンデンサーの電圧と電場の関係についての誤解:
    • 現象:例えば、コンデンサーの電荷が一定の条件で誘電体を挿入した場合、内部の電場は \(1/\varepsilon_r\) 倍に弱められるが、全体の電圧も単純に \(1/\varepsilon_r\) 倍になると短絡的に考えてしまう(誘電体が部分的に挿入されている場合などでは、空気層の厚さも考慮する必要がある)。
    • 対策:電圧(電位差)は、電場を距離で積分したものです(一様な電場なら \(V=Ed\))。誘電体をコンデンサーの極板間の一部に挿入した場合は、空気層の部分と誘電体層の部分とで電場の強さが異なるため、それぞれの部分における電場の強さとその層の厚さから、各部分の電位差を個別に計算し、それらを合計してコンデンサー全体の電圧を求める必要があります。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 回路図の簡略化・等価回路への置き換え:スイッチの操作によって回路の接続状態が変化するたびに、その時点での有効な回路部分だけを抜き出して簡略化した図(等価回路)を描き直すことで、どのコンデンサーが直列でどのコンデンサーが並列なのか、あるいはどこが孤立しているのかといった回路構成が非常に見えやすくなります。模範解答中に示されている図(例えば(1)や(4)の状況に対応するコンデンサー接続の模式図)は、この点で非常に参考になります。
    • 電荷の移動の具体的なイメージング:スイッチを閉じたり開いたりしたときに、正電荷や負電荷(あるいはよりミクロには自由電子)が、回路のどの部分からどの部分へと実際に移動していくのかを、回路図の上で矢印などを用いてイメージすることは、電気量保存則の適用範囲を考える上でも役立ちます。
    • 電位の空間的な分布のイメージング:接地点Gを電位の基準(高さ \(0 \, \text{V}\))として、電池によって電位が \(V_0\) だけ「持ち上げられ」、コンデンサーの両端で電位が「降下」し、電流が流れていない抵抗部分では電位が「変わらない」といった様子を、回路図に沿ってあたかも「電気的な高さの地図」をたどるようにイメージすることが有効です。
    • 誘電体挿入のモデル化(設問(6)):誘電体をコンデンサーの極板間の一部に挿入した状態を、空気(真空)部分からなるコンデンサーと誘電体部分からなるコンデンサーという、特性の異なる2つの小さなコンデンサーが直列に接続されたものと見なす図(模範解答の図がこれに相当します)は、全体の電気容量を計算する上で非常に強力なモデル化の手法です。
  • 図(特に回路図や等価回路図)を描く際に注意すべき点は何か:
    • スイッチの開閉状態(開いているのか閉じているのか)を、回路図上で明確に、かつ正確に反映させて描くことが基本です。
    • コンデンサーの極板に蓄えられる電荷の符号(どちらの極板が「+」でどちらが「-」か)を、電池の極性や電流の向き(充電時)から判断し、正しく図中に記入するようにしましょう。
    • 電流が実際に流れる経路(特に過渡的な充電・放電の過程)や、電位の基準点(接地点Gなど)を常に意識しながら図を読み解く、あるいは描くことが重要です。
    • 複雑な回路をより単純な等価回路に描き直す際には、元の回路との対応関係が失われないように、各要素(コンデンサー、抵抗、電源など)の接続関係を正確に保つことが不可欠です。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(Q=CV\) (コンデンサーの基本定義式):
    • 選定理由:コンデンサーに関する最も基本的な関係式であり、蓄えられる電気量 \(Q\)、電気容量 \(C\)、そして極板間の電位差 \(V\) のうち、いずれか2つが既知であれば残りの1つを求めることができるため、この問題のあらゆる場面で中心的な役割を果たしました。
    • 適用根拠:この式は、どのような形状や構造のコンデンサーであっても普遍的に成り立つ定義式です。ただし、式中の \(V\) は、必ずコンデンサーの2つの極板の「間」の電位差を指すことに注意が必要です。
  • コンデンサーの合成容量の公式(直列接続・並列接続):
    • 選定理由:複数のコンデンサーが回路に接続されている場合に、それらをまとめて一つの等価的なコンデンサーとして扱い、回路全体の挙動を解析するために不可欠な公式であるため選びました(特に設問(1)や(4),(5)の考察)。
    • 適用根拠:これらの公式は、それぞれコンデンサーが純粋に直列に接続されている場合、あるいは純粋に並列に接続されている場合に適用できます。もし回路が直列部分と並列部分の組み合わせで構成されている場合は、段階的にこれらの公式を適用していくことになります。
  • コンデンサーの静電エネルギーの公式 \(U = \displaystyle\frac{1}{2}CV^2 = \displaystyle\frac{1}{2}QV = \displaystyle\frac{Q^2}{2C}\):
    • 選定理由:コンデンサーに蓄えられる電気的なエネルギーの量を計算するために、これらの公式を用いました(特に設問(2)や(3),(5)のエネルギー収支の考察)。
    • 適用根拠:これらの公式は等価であり、問題の状況(どの物理量、例えば \(V\) が一定なのか、あるいは \(Q\) が一定なのか、などが既知か)に応じて、最も計算がしやすい形を選択して用いることができます。
  • エネルギー保存則(ジュール熱を含む回路での形式 \(W_{\text{電池}} = \Delta U_{\text{静電}} + H_{\text{ジュール}}\) など):
    • 選定理由:抵抗を含む回路でコンデンサーを充電したり、あるいはコンデンサー間で電荷を再配分したりする際に、抵抗で発生するジュール熱を直接計算するのが難しい場合に、エネルギーの全体の収支から間接的にジュール熱を求めるために、この法則を選びました(特に設問(3)や(5))。
    • 適用根拠:エネルギーは勝手に消えたり生まれたりしない、という物理学における最も普遍的かつ基本的な法則の一つです。この法則を回路に適用する際には、電池が供給したエネルギー、コンデンサーの静電エネルギーとして蓄えられたり放出されたりするエネルギー、そして抵抗で熱として消費されるエネルギーといった、関与するすべてのエネルギーの形態とその出入りを正確に考慮する必要があります。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 回路の状態変化の正確な分析: 各設問の冒頭で行われる操作(特定のスイッチを開く、あるいは閉じるなど)によって、回路の接続状態が具体的にどのように変化するのかを、まず正確に把握します。どのコンデンサーがアクティブになり、どのコンデンサーが非アクティブになるのか、あるいはどの部分が電気的に孤立するのか、といった点を明確にします。
  2. 保存される物理量の特定: 上記の回路状態の変化に伴い、どの物理量が保存されるのか(あるいは一定に保たれるのか)を見極めます。例えば、スイッチが開いている孤立した部分については電気量保存則が、スイッチが閉じていて電池に接続されている部分については(十分に時間が経過した後には)電圧が一定になるという条件が考えられます。
  3. コンデンサーに関する基本法則の適用: 特定された保存量や固定された量、そして各コンデンサーの電気容量の値を用いて、コンデンサーの基本式 \(Q=CV\) や、直列・並列接続の場合の合成容量の公式などを適用し、各コンデンサーの電荷、電圧、あるいは全体の電気容量といった必要な物理量を計算するための関係式を立てます。
  4. エネルギーに関する計算(必要な場合): 問題で静電エネルギーやジュール熱が問われている場合には、それらを計算します。静電エネルギーは \(U=\frac{1}{2}CV^2\) などの公式で、電池がする仕事は \(W=QV_0\) で計算できます。ジュール熱は、多くの場合、これらの量を用いたエネルギー保存則から間接的に求めることになります。
  5. 連立方程式の処理(必要な場合): 未知数が複数あり、複数の関係式が立てられた場合には、それらを連立方程式として数学的に解き、各未知数を決定します。
  6. 誘電体の影響の考慮(設問(6)): 誘電体がコンデンサーに挿入された場合には、それによって電気容量がどのように変化するのか(あるいは電場がどのように変化するのか)という誘電体の基本的な効果に関する公式を適用し、他の条件(例えば電荷保存や電圧変化の条件)と組み合わせて未知数を求めます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 合成容量の計算における注意点: 特に複数のコンデンサーが直列に接続されている場合の合成容量を計算する際には、\(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \frac{1}{C_a} + \frac{1}{C_b}\) のように各電気容量の「逆数」の和をまず計算し、その結果の「さらに逆数」を取ることで初めて合成容量が得られる、という手順を絶対に忘れないようにしましょう。単に逆数の和を計算しただけで終わらせてしまうミスが非常に多いです。
  • 静電エネルギーの公式の係数の確認: コンデンサーの静電エネルギーを計算する公式(\(U = \frac{1}{2}CV^2\), \(U = \frac{1}{2}QV\), \(U = \frac{Q^2}{2C}\))には、すべて係数として「1/2」が付きます。これに対して、例えば電池がする仕事の計算(\(W_{\text{電池}} = QV_0\))には「1/2」は付きません。これらの係数の有無を混同しないように、公式を正確に記憶し、適用する際に注意が必要です。
  • 分数計算の正確性と丁寧さ: 電気容量の比率や電圧の分配比などを計算する過程で、分数やその逆数が頻繁に登場します。通分や約分といった基本的な分数計算を、焦らず丁寧に、かつ正確に行うことが、計算ミスを防ぐ上で非常に重要です。
  • 単位の確認と物理的な妥当性の意識: 計算の最終結果だけでなく、途中の計算ステップで得られる物理量の単位が、その物理量として正しいものになっているか(例えば、電気量ならクーロン \([\text{C}]\)、電圧ならボルト \([\text{V}]\)、エネルギーならジュール \([\text{J}]\)、電気容量ならファラド \([\text{F}]\) など)を常に意識することは、計算の誤りを発見するための一つの有効な手段です。
  • 文字記号と添え字の明確な区別と管理: \(C, C_1, C_2, C_{12}, C’\) など、同じ種類の物理量でも状態や対象によって異なる記号や添え字が用いられるため、それぞれの記号が具体的に何を表しているのかを常に明確に意識し、混同しないように注意深く計算を進める必要があります。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な結果の妥当性の検証:
    • 例えば、計算によって求められたジュール熱の値が負の値になっていないかどうかを確認します(エネルギーが消費されることはあっても、何もないところから勝手にエネルギーが生成されることは物理的にあり得ません)。
    • 電池が回路に仕事をした(エネルギーを供給した)場合、その供給されたエネルギーは最終的にどこへ行ったのか(コンデンサーの静電エネルギーとして蓄えられたのか、抵抗でジュール熱として消費されたのか、あるいはその両方か)というエネルギーの流れと収支を考え、計算結果がそれと矛盾していないかを確認します。
    • コンデンサー間で電荷が再配分されるような場合(電源が直接関与しない場合)、系全体の静電エネルギーは一般に減少する(その差がジュール熱として消費される)ことが多いですが、必ずしもそうとは限らないため、状況をよく吟味する必要があります(ただし、抵抗があれば必ずジュール熱は発生します)。
    • 誘電体をコンデンサーに挿入すれば、その電気容量は必ず増加するはずです。また、その結果として計算される比誘電率 \(\varepsilon_r\) は、真空(または空気)の1よりも必ず大きい値(または1)になるはずです。これらの基本的な性質と計算結果が整合しているかを確認します。
  • 極端な条件や単純なケースを想定した比較検討:
    • もし回路中の抵抗が \(0\)(ゼロ)であったと仮定したら、ジュール熱の計算結果はどうなるべきか(理論上は \(0\) になるはずですが、現実の回路では必ず何らかの抵抗成分が存在します)。
    • もし、あるコンデンサーの電気容量が極端に大きい(または小さい)としたら、電荷の分配や電圧の分配の結果が、直感的に予想される傾向と一致するかどうかを考えてみます。
  • 別解による検算の試み(可能な場合): もし問題が複数の異なるアプローチで解けるようであれば(例えば、設問(1)における電圧分配の法則の利用や、設問(2)における合成容量を用いたエネルギー計算など)、それぞれの方法で計算してみて、同じ結果が得られるかどうかを確認することは、計算の誤りを発見するための非常に有効な手段となります。
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