「名問の森」徹底解説(70〜72問):未来の得点力へ!完全マスター講座【力学・熱・波動Ⅰ】

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問題70 (福井大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、運動する音源Sと反射体R、そして静止した観測者Aと音源S上に乗っている観測者Bが関わるドップラー効果の問題です。波の基本的な性質(波長、振動数、音速の関係)から始まり、反射体を含む場合のドップラー効果、さらには音波の伝播時間と距離の関係まで、多岐にわたる内容を扱います。

与えられた条件
  • 音源S: 振動数 \(f_0 \text{ [Hz]}\) の音を出す。観測者Bが乗っている。
  • 反射体R
  • 観測者A: 静止している。
  • Sの速度: \(u \text{ [m/s]}\) でAに近づく(図ではSはAの左側におり、右向きに \(u\) でAに近づく)。
  • Rの速度: \(v \text{ [m/s]}\) でAに近づく(図ではRはAの右側におり、左向きに \(v\) でAに近づく)。
  • \(u, v\) は音速 \(V \text{ [m/s]}\) より小さいものとする。
  • 音速: \(V \text{ [m/s]}\)
問われていること

問題文中の空欄(1)から(11)を適切な物理量や式で埋める。

  1. 音源Sが前方に1秒間に出した \(f_0\) 個の波が広がっている範囲 [m]。
  2. (1)で求めた範囲に広がる波の波長 [m]。
  3. 観測者Aが測定する、(2)で求めた音波の振動数 [Hz]。
  4. 反射体Rが1秒間に反射する波の個数。
  5. (4)で反射された波が1秒後に広がっている範囲 [m]。
  6. (5)で求めた範囲に広がる反射波の波長 [m]。
  7. 観測者Aが測定する、(6)で求めた反射波の振動数 [Hz]。
  8. 観測者B(音源S上にいる)が測定する反射波の振動数 \(f_B\) [Hz]。
  9. 観測者Bが \(f_B\) を測定することで求められる反射体の速さ \(v\) [m/s]。
  10. 音波を出した時点のBと反射体Rとの距離 [m](\(V, u, v, t_0\) を用いる)。
  11. 反射音がBに帰ってきた時点のBとRとの距離 [m](\(V, u, v, t_0\) を用いる)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、ドップラー効果の原理的な理解を問う形式になっています。単に公式を暗記しているだけでなく、なぜ振動数や波長が変化するのか、その物理的な過程を追っていく必要があります。音源が1秒間に出す波の個数 (\(f_0\) 個) が、音源の運動によってどのような空間範囲に「圧縮」または「伸長」されて分布するのか、そしてそれを観測者がどのように受け取るのか、という点が鍵となります。反射体が登場する場面では、反射体を一旦「観測者」として捉え、次に「新たな音源」として捉える2段階のアプローチが有効です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本性質: 振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\)、波の速さ \(V\) の間には \(V = f\lambda\) の関係があります。
  2. 音速の不変性: 音速 \(V\) は媒質によって決まり、音源や観測者の速度にはよりません(風がない場合)。
  3. ドップラー効果の原理:
    • 音源が動くと、進行方向の波長が変化します(近づくと短く、遠ざかると長くなる)。
    • 観測者が動くと、単位時間に受け取る波の数が変化します(音源に向かうと多く、遠ざかると少なくなる)。
  4. 反射の扱い: 反射体は、受けた波をそのまま(あるいは特定のルールで)再放射する新しい波源と考えることができます。

速度の向きと大きさ、音の進行方向を正確に把握し、図を描きながら状況を整理することが重要です。

空欄 (1)

思考の道筋とポイント
音源Sは振動数 \(f_0\) で音を出しているので、1秒間に \(f_0\) 個の波を出します。
この1秒間に、波の先頭は音速 \(V\) で \(V \times 1 = V\) [m] だけ進みます。
一方、音源S自身も前方(Aの方向、図では右向き)に速さ \(u\) で \(u \times 1 = u\) [m] だけ進みます。
したがって、1秒後には、最初に発せられた波の先頭はSの初期位置から \(V\) の位置にあり、最後に発せられた波(音源Sの1秒後の位置)はSの初期位置から \(u\) の位置にあります。
よって、この \(f_0\) 個の波は、これらの位置の差である \(V-u\) の長さの範囲に分布することになります。

この設問における重要なポイント

  • 音速 \(V\) は音源の速度に依らない。
  • 1秒間に波の先頭が進む距離は \(V\)。
  • 1秒間に音源Sが進む距離は \(u\)。
  • 音源が波の進行方向に動く場合、波は短い範囲に押し込められる。

具体的な解説と立式
時刻 \(t=0\) で音源Sが先頭の波を出し始め、\(t=1\) 秒で最後の波を出し終えたとします。Sの初期位置を \(x=0\) とします。
この1秒間に、Sは \(u \times 1 = u\) [m] だけ前進し、\(x=u\) の位置に到達します。
一方、\(t=0\) で \(x=0\) から出された波の先頭は、\(t=1\) 秒後には \(x=V \times 1 = V\) [m] の位置まで進んでいます。
音源Sは \(t=1\) 秒後には \(x=u\) の位置におり、ここから最後の波が出されます。
したがって、1秒間に出された \(f_0\) 個の波は、先頭が \(x=V\) の位置、最後尾が \(x=u\) の位置にあるので、その間の \(V-u\) [m] の範囲に広がっています。
よって、(1) の答えは \(V-u\) です。

使用した物理公式

  • 距離 = 速さ × 時間
計算過程

上記「具体的な解説と立式」の通り、求める範囲の長さは、波の先頭が進んだ距離 \(V \times 1\text{s}\) から音源Sが進んだ距離 \(u \times 1\text{s}\) を引いたものです。
範囲の長さ = \(V – u\) [m]

計算方法の平易な説明

1秒間で、音の戦闘部隊(波の先頭)は \(V\) メートル進みます。同じ1秒間で、音を発射している大砲(音源S)自体も \(u\) メートル前進します。
その結果、1秒間に出されたすべての音の弾(\(f_0\)個の波)は、先頭 \(V\) メートル地点と、最後尾(今まさに発射された場所)\(u\) メートル地点の間の、長さ \(V-u\) メートルの区間にぎゅっと詰まっていることになります。

結論と吟味

\(f_0\) 個の波が広がっている範囲は \(V-u\) [m] です。
音源が音の進行方向に動くため、波が「圧縮」される様子が正しく捉えられています。

解答 (1) \(V-u\)

空欄 (2)

思考の道筋とポイント
(1)で、1秒間に出された \(f_0\) 個の波が \(V-u\) [m] の範囲に広がっていることがわかりました。
波長とは、1つの波の長さのことです。したがって、全体の範囲の長さを波の個数で割れば、1個あたりの長さ、つまり波長が求まります。

この設問における重要なポイント

  • 波長 \(\lambda\) = (波が存在する範囲の長さ) / (その範囲に存在する波の個数)。

具体的な解説と立式
1秒間に出される波の数は \(f_0\) 個です。これらの波が \(V-u\) [m] の範囲に存在します。
このときの波長を \(\lambda_1\) とすると、
$$\lambda_1 = \frac{\text{範囲の長さ}}{\text{波の個数}} \quad \cdots ①$$
よって、(2) の答えを導き出します。

使用した物理公式

  • 波長の定義
計算過程

式①に、範囲の長さとして(1)の結果 \(V-u\)、波の個数として \(f_0\) を代入します。
$$\lambda_1 = \frac{V-u}{f_0} \text{ [m]}$$

計算方法の平易な説明

(1)で、\(f_0\) 個の波が全部で \(V-u\) メートルの長さに詰まっていることがわかりました。波長というのは、その \(f_0\) 個ある波の「1個分の長さ」のことです。
だから、全体の長さ \(V-u\) を、そこに含まれる波の数 \(f_0\) で割れば、1個分の長さ(波長)が出てきます。

結論と吟味

波長は \(\lambda_1 = \displaystyle\frac{V-u}{f_0}\) [m] です。
音源Sが速度 \(u\) で音の進行方向に動くと、静止している場合の波長 \(\lambda_0 = V/f_0\) に比べて、波長が \((V-u)/V\) 倍に短くなることが示されています。これはドップラー効果による波長変化の基本的な結果です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{V-u}{f_0}\)

空欄 (3)

思考の道筋とポイント
観測者Aは静止しています。Aが観測する音波の速さは \(V\) です。
(2)で求めた波長 \(\lambda_1\) の音波が、速さ \(V\) でAを通過していくと考えます。
観測される振動数 \(f_1\) は、波の基本式 \(V = f_1 \lambda_1\) から求めることができます。

この設問における重要なポイント

  • 観測者Aは静止しているので、音速は \(V\) のまま。
  • Aが観測する波長は \(\lambda_1\)。
  • 波の基本式 \(V = f\lambda\) を用いる。

具体的な解説と立式
観測者Aが測定する音波の振動数を \(f_1\) とします。音波の速さは \(V\)、波長は(2)で求めた \(\lambda_1 = \displaystyle\frac{V-u}{f_0}\) です。
波の基本式 \(V = f_1 \lambda_1\) より、
$$f_1 = \frac{V}{\lambda_1} \quad \cdots ②$$
この式に \(\lambda_1\) を代入して \(f_1\) を求めます。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

式②に \(\lambda_1 = \displaystyle\frac{V-u}{f_0}\) を代入します。
$$f_1 = \frac{V}{\frac{V-u}{f_0}}$$
$$f_1 = V \cdot \frac{f_0}{V-u}$$
$$f_1 = \frac{V}{V-u}f_0 \text{ [Hz]}$$

計算方法の平易な説明

観測者Aが聞く音の振動数は、音の速さ \(V\) を、(2)で求めた波の長さ(波長 \(\lambda_1\))で割れば求まります。
波長が短くなっているので(音源Sが近づいてきているため)、静止しているAさんには、元の振動数 \(f_0\) よりも高い振動数の音が聞こえるはずです。

結論と吟味

観測者Aが測定する音波の振動数は \(f_1 = \displaystyle\frac{V}{V-u}f_0\) [Hz] です。
これは、音源が速度 \(u\) で静止観測者に近づく場合のドップラー効果の公式と一致しています。分母が \(V-u\) となり \(V\) より小さくなるため、\(f_1 > f_0\) となり、振動数が高くなることが確認できます。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{V}{V-u}f_0\)

空欄 (4)

思考の道筋とポイント
反射体Rが1秒間に反射する波の個数は、Rが1秒間に受け取る波の個数に等しいです。
Rは観測者として、音源Sから発せられた波長 \(\lambda_1 = (V-u)/f_0\) の音波を受け取ります。
音源SはAに(つまりRの方向に)速さ \(u\) で近づいています。反射体RもAに(つまりSの方向に)速さ \(v\) で近づいています(図からRは左向きに \(v\)、Sは右向きに \(u\) で、互いに近づく)。
音波はSからRへ右向きに進みます。この向きを正とします。
音源Sの速度は \(+u\)。観測者Rの速度は \(-v\)(Rは左向きに \(v\) なので、右向き正に対して \(-v\))。
Rが受け取る振動数を \(f_R\) とすると、ドップラー効果の公式から求められます。これが1秒間に反射する波の個数です。
あるいは、Rに対する音波の相対速度の大きさが \(V+v\) であることを利用し、1秒間にRに到達する波の数を (相対速度) / (波長) で計算します。

この設問における重要なポイント

  • 反射する波の数は、反射体が受け取る波の数と同じ。
  • 動いている観測者(反射体R)が受け取る波の数を考える。
  • 方法1: ドップラー効果の公式を使う(音源S、観測者R)。
  • 方法2: 反射体Rに対する波の相対速度を考え、それで波長 \(\lambda_1\) を割る。

具体的な解説と立式
反射体Rが1秒間に反射する波の数 \(f_R\) を求めます。
SからRへ向かう音波の波長は、(2)で求めた \(\lambda_1 = \displaystyle\frac{V-u}{f_0}\) です。
反射体Rは速さ \(v\) で音源Sの方向に(つまり波源から来る波に向かって、図では左向きに)進んでいます。音波はSからRへ(右向きに)速さ \(V\) で進みます。
したがって、Rに対する音波の相対的な速さ(接近する速さ)は \(V+v\) です。
1秒間にRを通過する(Rに到達する)波の長さは \(V+v\) [m] となります。この長さに含まれる波の数が、Rが1秒間に受け取る(反射する)波の数 \(f_R\) です。
$$f_R = \frac{\text{Rに対する波の相対速度}}{\text{波長}} = \frac{V+v}{\lambda_1} \quad \cdots ③’$$
ここに \(\lambda_1\) を代入して \(f_R\) を求めます。

使用した物理公式

  • 振動数 = 相対速度 / 波長
  • ドップラー効果の公式 (別解として適用可能)
計算過程

式③’ に \(\lambda_1 = \displaystyle\frac{V-u}{f_0}\) を代入します。
$$f_R = \frac{V+v}{\frac{V-u}{f_0}}$$
$$f_R = (V+v) \frac{f_0}{V-u}$$
$$f_R = \frac{V+v}{V-u}f_0$$
これがRが1秒間に反射する波の個数です。

計算方法の平易な説明

反射体Rは、自分に向かってくる音波をキャッチして跳ね返します。R自身も音波に向かって速さ \(v\) で進んでおり、音波も速さ \(V\) でRに向かってくるので、Rから見ると音波は \(V+v\) の速さで迫ってきます。
1秒間に \(V+v\) メートル分の波をRは受け取ることになります。(2)で計算した波1個の長さ(波長 \(\lambda_1\))でこの \(V+v\) を割れば、1秒間にRが受け取る(そして反射する)波の個数がわかります。

結論と吟味

反射体Rは1秒間に \(f_R = \displaystyle\frac{V+v}{V-u}f_0\) 個の波を反射します。
これは、音源S(速度 \(u\) でRに接近)と観測者R(速度 \(v\) でSに接近、音の進行方向に対しては速度 \(-v\))の間のドップラー効果でRが観測する振動数に一致します。
音の進行方向をSからRへの向き(右向き)を正とすると、音源Sの速度 \(v_s = +u\)、観測者Rの速度 \(v_o = -v\)。よって \(f_R = \displaystyle\frac{V-(-v)}{V-u}f_0 = \frac{V+v}{V-u}f_0\)。

解答 (4) \(\displaystyle\frac{V+v}{V-u}f_0\)

空欄 (5) および (6)

思考の道筋とポイント
(4)で求めた \(f_R\) 個の波は、反射体Rから1秒間かけて放射されます。これらの反射波はAの方向(図では左向き)へ進みます。
この1秒間に、反射波の先頭(時刻0でRから反射された波)は音速 \(V\) で \(V \times 1 = V\) [m] だけ進みます。
一方、反射体R自身もAの方向(図では左向き)に速さ \(v\) で \(v \times 1 = v\) [m] だけ進みます。
反射波はRから放射され、Rも同じ左向きに動いているので、Rは自身が出す波を「追いかける」形になります。
したがって、1秒後には、最初に反射された波の先頭はRの初期位置から左へ \(V\) の位置にあり、最後に反射された波(Rの1秒後の位置から出される)はRの初期位置から左へ \(v\) の位置から出始めます。
よって、この \(f_R\) 個の波は、\(V-v\) の長さの範囲に分布することになります。これが(5)の答えです。
この範囲に \(f_R\) 個の波があるので、反射波の波長 \(\lambda_2\) は (範囲の長さ) / (波の個数) で求まります。これが(6)の答えです。

この設問における重要なポイント

  • 反射体Rを新たな音源とみなす。この音源は振動数 \(f_R\) で波を出し、速度 \(v\) でAの方向に(反射波の進行方向と同じ方向に)動く。
  • 動く音源から出る波が広がる範囲を考える。音源が波の進行方向に動く場合は \(V-v\)。
  • 波長 \(\lambda_2\) = (範囲の長さ) / (波の個数 \(f_R\))。

具体的な解説と立式
反射体Rは、1秒間に \(f_R\) 個の波をAの方向(左向き)に反射します。
この1秒間に、反射波の先頭(時刻0でRの初期位置から反射された波)は、音速 \(V\) で左へ \(V\) [m] 進みます。
反射体R自身も、同じ左向きに速さ \(v\) で \(v\) [m] 進みます。時刻1秒後にはRは初期位置から左へ \(v\) の位置にいます。
したがって、1秒間かけて放射された \(f_R\) 個の波は、Rの動きによって進行方向に圧縮され、\(V-v\) [m] の範囲に広がります。
よって、(5) の答えは \(V-v\) です。

この \(V-v\) [m] の範囲に \(f_R\) 個の波が存在するので、反射波の波長 \(\lambda_2\) は、
$$\lambda_2 = \frac{V-v}{f_R} \quad \cdots ④’$$
(4)で求めた \(f_R = \displaystyle\frac{V+v}{V-u}f_0\) を代入して \(\lambda_2\) を求めます。

使用した物理公式

  • 波の広がる範囲(動く音源の場合)
  • 波長 = 範囲の長さ / 波の数
計算過程

(5) 範囲の長さ:
上記「具体的な解説と立式」の通り、範囲の長さは \(V-v\) [m] です。

(6) 波長 \(\lambda_2\):
式④’ に \(f_R = \displaystyle\frac{V+v}{V-u}f_0\) を代入します。
$$\lambda_2 = \frac{V-v}{\frac{V+v}{V-u}f_0}$$
整理すると、
$$\lambda_2 = (V-v) \frac{V-u}{(V+v)f_0}$$
$$\lambda_2 = \frac{(V-v)(V-u)}{(V+v)f_0} \text{ [m]}$$

計算方法の平易な説明

(5) 反射体Rが1秒間に跳ね返した \(f_R\) 個の波が、どのくらいの長さに広がっているかを考えます。Rは音を跳ね返しながら自身も速さ \(v\) でAの方向(左向き)に進みます。音の先頭は速さ \(V\) で進むので、1秒後にはRの出発点から \(V\) メートル先にいます。一方、最後の波はRの1秒後の位置(出発点から \(v\) メートル左)から出始めます。結果として、\(f_R\) 個の波は \(V-v\) メートルの範囲に広がります。
(6) この \(V-v\) メートルの範囲に \(f_R\) 個の波があるので、1個あたりの長さ(波長)は、(範囲の長さ)を(波の数)で割れば求まります。

結論と吟味

(5) 反射波が1秒後に広がっている範囲は \(V-v\) [m] です。
(6) 反射波の波長は \(\lambda_2 = \displaystyle\frac{(V-v)(V-u)}{(V+v)f_0}\) [m] です。
反射体Rが反射波の進行方向と同じ向きに動くため、波長が圧縮される (\(V-v < V\)) 効果が現れています。

解答 (5) \(V-v\)
解答 (6) \(\displaystyle\frac{(V-v)(V-u)}{(V+v)f_0}\)

空欄 (7)

思考の道筋とポイント
観測者Aは静止しています。Aが観測する反射波の速さは \(V\) です。
(6)で求めた反射波の波長 \(\lambda_2\) の音波が、速さ \(V\) でAを通過していくと考えます。
観測される振動数 \(f_2\) は、波の基本式 \(V = f_2 \lambda_2\) から求めることができます。

この設問における重要なポイント

  • 観測者Aは静止。
  • Aが観測する反射波の波長は \(\lambda_2\)、速さは \(V\)。
  • 波の基本式 \(V = f\lambda\) を用いる。

具体的な解説と立式
観測者Aが測定する反射波の振動数を \(f_2\) とします。反射波の速さは \(V\)、波長は(6)で求めた \(\lambda_2 = \displaystyle\frac{(V-v)(V-u)}{(V+v)f_0}\) です。
波の基本式 \(V = f_2 \lambda_2\) より、
$$f_2 = \frac{V}{\lambda_2} \quad \cdots ⑤’$$
この式に \(\lambda_2\) を代入して \(f_2\) を求めます。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

式⑤’ に \(\lambda_2 = \displaystyle\frac{(V-v)(V-u)}{(V+v)f_0}\) を代入します。
$$f_2 = \frac{V}{\frac{(V-v)(V-u)}{(V+v)f_0}}$$
整理すると、
$$f_2 = V \cdot \frac{(V+v)f_0}{(V-v)(V-u)}$$
$$f_2 = \frac{V(V+v)}{(V-v)(V-u)}f_0 \text{ [Hz]}$$

計算方法の平易な説明

静止しているAさんが聞く反射音の振動数は、音の速さ \(V\) を、(6)で求めた反射波の波長 \(\lambda_2\) で割れば求まります。
反射体RがAさんに向かって動きながら音を反射しているので、波長は短くなり、Aさんには元の音源の振動数 \(f_0\) や、Sから直接Aさんに届く音の振動数 \(f_1\) とは異なる、さらに高い振動数の音が聞こえることが予想されます。

結論と吟味

観測者Aが測定する反射波の振動数は \(f_2 = \displaystyle\frac{V(V+v)}{(V-v)(V-u)}f_0\) [Hz] です。
これは、音源Sが速度 \(u\) でRに近づき(分母 \(V-u\))、Rが速度 \(v\) でSに近づいて波を受け(分子 \(V+v\))、さらにRが速度 \(v\) でAに近づきながら波を出す(分母 \(V-v\))、という効果が複合的に現れた結果と解釈できます。

解答 (7) \(\displaystyle\frac{V(V+v)}{(V-v)(V-u)}f_0\)

空欄 (8)

思考の道筋とポイント
観測者Bは音源S上に乗っており、速さ \(u\) でAの方向に(図では右向き。Rから来る反射波は左向きに進むので、Bは反射波に向かって)進んでいます。
反射波の波長は(6)で求めた \(\lambda_2\) であり、音速は \(V\) です。
Bに対する反射波の相対速度の大きさは \(V+u\) です(Bが反射波に向かって進むため)。
1秒間にBを通過する波の長さは \(V+u\) [m] となります。この長さに含まれる波の数が、Bが測定する振動数 \(f_B\) です。
したがって、\(f_B = (\text{相対速度}) / (\text{波長}) = (V+u)/\lambda_2\) で計算できます。

この設問における重要なポイント

  • 観測者Bは速さ \(u\) で反射波に向かって運動している。
  • Bに対する反射波の相対速度は \(V+u\)。
  • 振動数 \(f_B = (\text{相対速度}) / \lambda_2\)。

具体的な解説と立式
観測者Bが測定する反射波の振動数を \(f_B\) とします。
Bは速さ \(u\) で反射波(速さ \(V\)、左向きに進む)に向かって右向きに進んでいるので、Bに対する波の相対速度の大きさは \(V+u\) です。
反射波の波長は \(\lambda_2 = \displaystyle\frac{(V-v)(V-u)}{(V+v)f_0}\) です。
したがって、Bが測定する振動数 \(f_B\) は、
$$f_B = \frac{V+u}{\lambda_2} \quad \cdots ⑥’$$
この式に \(\lambda_2\) を代入して \(f_B\) を求めます。

使用した物理公式

  • 振動数 = 相対速度 / 波長
  • ドップラー効果の公式 (別解として適用可能)
計算過程

式⑥’ に \(\lambda_2 = \displaystyle\frac{(V-v)(V-u)}{(V+v)f_0}\) を代入します。
$$f_B = \frac{V+u}{\frac{(V-v)(V-u)}{(V+v)f_0}}$$
整理すると、
$$f_B = (V+u) \frac{(V+v)f_0}{(V-v)(V-u)}$$
$$f_B = \frac{(V+u)(V+v)}{(V-u)(V-v)}f_0 \text{ [Hz]}$$

計算方法の平易な説明

音源Sに乗っているBさんは、速さ \(u\) で反射してくる音波に向かって進んでいます。音波自体も速さ \(V\) でBさんに向かってくるので、Bさんから見ると音波は \(V+u\) という猛スピードでやってきます。
1秒間に \(V+u\) メートル分の波がBさんを通り過ぎます。(6)で計算した反射波1個の長さ(波長 \(\lambda_2\))でこの \(V+u\) を割れば、1秒間にBさんが受け取る波の個数、つまりBさんが聞く振動数がわかります。

結論と吟味

観測者Bが測定する反射波の振動数は \(f_B = \displaystyle\frac{(V+u)(V+v)}{(V-u)(V-v)}f_0\) [Hz] です。
これは、反射体Rを音源(振動数 \(f_R = \frac{V+v}{V-u}f_0\)、速度 \(v\) で左向きに運動)とし、観測者B(速度 \(u\) で右向きに運動)が聞く振動数をドップラー効果の公式で計算した結果と一致します。音の進行方向(左向き)を正とすると、音源Rの速度 \(v_s = v\)、観測者Bの速度 \(v_o = -u\)。よって \(f_B = \frac{V-(-u)}{V-v}f_R = \frac{V+u}{V-v} \left(\frac{V+v}{V-u}f_0\right) = \frac{(V+u)(V+v)}{(V-v)(V-u)}f_0\)。

解答 (8) \(\displaystyle\frac{(V+u)(V+v)}{(V-u)(V-v)}f_0\)

空欄 (9)

思考の道筋とポイント
(8)で求めた \(f_B\) の式を、\(v\) について解きます。これは代数的な計算になります。
\(f_B = \displaystyle\frac{(V+u)(V+v)}{(V-u)(V-v)}f_0\)
この式を変形して \(v=\dots\) の形にします。

この設問における重要なポイント

  • (8)の式を \(v\) について正確に解く代数計算能力。

具体的な解説と立式
(8)で得られた式は、
$$f_B = \frac{(V+u)(V+v)}{(V-u)(V-v)}f_0 \quad \cdots ⑦’$$
この式を \(v\) について整理します。
$$\frac{f_B (V-u)}{f_0 (V+u)} = \frac{V+v}{V-v}$$
左辺を \(K = \displaystyle\frac{f_B (V-u)}{f_0 (V+u)}\) とおくと、
$$K = \frac{V+v}{V-v}$$
この式を \(v\) について解きます。
$$K(V-v) = V+v$$
$$KV – Kv = V+v$$
$$KV – V = Kv + v$$
$$V(K-1) = v(K+1)$$
$$v = V \frac{K-1}{K+1} \quad \cdots ⑧’$$
ここに \(K\) を戻して \(v\) を \(f_0, f_B, V, u\) で表します。

使用した物理公式

  • 代数計算(方程式の変形)
計算過程

式⑧’ に \(K = \displaystyle\frac{f_B (V-u)}{f_0 (V+u)}\) を代入します。
まず \(K-1\) と \(K+1\) を計算します。
$$K-1 = \frac{f_B (V-u)}{f_0 (V+u)} – 1 = \frac{f_B (V-u) – f_0 (V+u)}{f_0 (V+u)}$$
$$K+1 = \frac{f_B (V-u)}{f_0 (V+u)} + 1 = \frac{f_B (V-u) + f_0 (V+u)}{f_0 (V+u)}$$
したがって、
$$\frac{K-1}{K+1} = \frac{f_B (V-u) – f_0 (V+u)}{f_B (V-u) + f_0 (V+u)}$$
これを式⑧’ に代入して \(v\) を得ます。
$$v = V \frac{f_B (V-u) – f_0 (V+u)}{f_B (V-u) + f_0 (V+u)}$$

計算方法の平易な説明

(8)でBさんが聞く反射音の振動数 \(f_B\) が、元の振動数 \(f_0\)、音速 \(V\)、Sの速さ \(u\)、Rの速さ \(v\) を使って表されました。今度は逆に、\(f_B, f_0, V, u\) が分かっているとして、この式を \(v\) について解きなさい、という数学の計算問題です。少し複雑ですが、丁寧に式を変形していけば \(v\) を求めることができます。

結論と吟味

反射体の速さ \(v\) は \(v = V \displaystyle\frac{f_B (V-u) – f_0 (V+u)}{f_B (V-u) + f_0 (V+u)}\) [m/s] と表されます。
この式により、観測者Bは自身が観測する反射音の振動数 \(f_B\) と、既知の \(f_0, V, u\) から、未知の反射体Rの速さ \(v\) を算出できることがわかります。

解答 (9) \(V \displaystyle\frac{f_B (V-u) – f_0 (V+u)}{f_B (V-u) + f_0 (V+u)}\)

空欄 (10) および (11)

思考の道筋とポイント
音源S(観測者Bが乗っている)が時刻 \(t=0\) で音波を発射し、この音波が反射体Rで反射され、時刻 \(t=t_0\) で再びBに戻ってくる状況を考えます。
(10) 音波を発射した時刻 \(t=0\) でのS(B)とRの間の距離を \(l\) とします。
音波がSから出てRに到達するまでの時間を \(t_1\) とします。この間にRは \(vt_1\) だけSに近づき、Sは \(ut_1\) だけRに近づきます。音波が進む距離は \(Vt_1\)。
このときの距離の関係から \(t_1\) を \(l\) で表し、次に反射音がRからBに到達する時間 \(t_2 = t_0 – t_1\) を考え、同様に距離の関係式を立てて \(l\) を \(t_0, V, u, v\) で表します。
模範解答の図と式では、SからRへの音の到達時間を \(t\) とし、\(l = Vt+vt\) という関係と、全体の状況を表す \(l = vt + V(t_0-t) + ut_0\) という関係から \(l\) を導いています。この解法に従います。

(11) 時刻 \(t_0\) で反射音がBに帰ってきたときの、BとRの間の距離を求めます。
時刻 \(t=0\) でSは \(x=0\)、Rは \(x=l\) にいたとします。
時刻 \(t_0\) では、Bの位置は \(x_B = ut_0\)(右向きを正とした場合。図ではSが右に進むのでBも右に \(ut_0\))、Rの位置は \(x_R = l – vt_0\)(Rは左に進むので、初期位置 \(l\) から左に \(vt_0\))。
求める距離は \(|(l-vt_0) – ut_0|\) です。ここに(10)で求めた \(l\) を代入します。

この設問における重要なポイント

  • 音の伝播時間と距離の関係を正確に追跡する。
  • 音源、反射体、観測者の運動を考慮に入れる。
  • 図を描いて状況を整理すると分かりやすい。

具体的な解説と立式
(10) 音波を出した時点のBとRとの距離 \(l\):
時刻 \(t=0\) でS(B)が音波を発射し、そのときのS(B)とRの距離を \(l\) とします。
音波がSからRに到達するのに時間 \(t\) を要したとします。
この間に音波が進む距離は \(Vt\)。Rは速さ \(v\) でSに近づく(左へ進む)ので、Rが進む距離は \(vt\)。Sは速さ \(u\) でRに近づく(右へ進む)ので、Sが進む距離は \(ut\)。
模範解答の図と式に基づくと、音波がRに到達するまでに、最初の距離 \(l\) は、音波が進んだ距離 \(Vt\) とRが進んだ距離 \(vt\) の和でカバーされると解釈できます(音波とRが出会うまでの時間)。
$$l = Vt + vt \quad \cdots (\text{式ア})$$
ここから \(t = \displaystyle\frac{l}{V+v}\)。
次に、反射音がRから出てBに到達するまでの時間は \(t_0-t\) です。
模範解答の図から、音波を出した時点の距離 \(l\) は、
(Rが \(t\) 時間でS側に進んだ距離 \(vt\))
+ (反射音がRからBに \(t_0-t\) 時間で進んだ距離 \(V(t_0-t)\))
+ (S(B)が全体時間 \(t_0\) でR側に進んだ距離 \(ut_0\))
の和に等しいとしています。
$$l = vt + V(t_0-t) + ut_0 \quad \cdots (\text{式イ})$$
式アを \(t\) について解いたものを式イに代入して \(l\) を求めます。

(11) 反射音がBに帰ってきた時点のBとRとの距離 \(x\):
時刻 \(t_0\) において、
S(B)の初期位置を原点 \(0\) とすると、時刻 \(t_0\) でのBの位置は \(x_B = ut_0\) (右向き)。
Rの初期位置を \(l\) とすると、時刻 \(t_0\) でのRの位置は \(x_R = l – vt_0\) (初期位置 \(l\) から左向きに \(vt_0\) 進む)。
よって、BとRの間の距離 \(x\) は、
$$x = |x_R – x_B| = |(l-vt_0) – ut_0| = |l – (u+v)t_0| \quad \cdots (\text{式ウ})$$
図から明らかに \(l > (u+v)t_0\) という状況ではないため、絶対値は重要です。ただし、模範解答では単純に \(l-(u+v)t_0\) としているので、Rの方がBより右にある状況を想定していると考えられます。
(10)で求めた \(l\) をここに代入します。

使用した物理公式

  • 距離 = 速さ × 時間
計算過程

(10) 距離 \(l\):
式アより \(t = \displaystyle\frac{l}{V+v}\)。これを式イに代入します。
$$l = v\left(\frac{l}{V+v}\right) + V\left(t_0-\frac{l}{V+v}\right) + ut_0$$
両辺に \((V+v)\) を掛けて分母を払います。
$$l(V+v) = vl + V(t_0(V+v)-l) + ut_0(V+v)$$
$$lV + lv = vl + Vt_0(V+v) – Vl + ut_0(V+v)$$
\(lv\) と \(vl\) は消去されます。
$$lV = Vt_0(V+v) – Vl + ut_0(V+v)$$
\(lV\) の項を左辺に集めます。
$$lV + Vl = Vt_0(V+v) + ut_0(V+v)$$
$$2Vl = t_0(V+v)(V+u)$$
\(l\) について解くと、
$$l = \frac{t_0(V+u)(V+v)}{2V}$$

(11) 距離 \(x\):
\(x = l – (u+v)t_0\) (模範解答の図から、このときの \(x\) は \(l\) より小さい正の値と想定)に、(10)で求めた \(l\) を代入します。
$$x = \frac{t_0(V+u)(V+v)}{2V} – (u+v)t_0$$
共通因子 \(t_0\) でくくり、通分します。
$$x = \frac{t_0}{2V} [(V+u)(V+v) – 2V(u+v)]$$
角括弧内を展開します。
$$ (V+u)(V+v) – 2V(u+v) = (V^2 + Vv + Vu + uv) – (2Vu + 2Vv) $$
$$ = V^2 + Vv + Vu + uv – 2Vu – 2Vv = V^2 – Vu – Vv + uv $$
この式は \(V(V-u) – v(V-u) = (V-u)(V-v)\) と因数分解できます。
よって、
$$x = \frac{t_0(V-u)(V-v)}{2V}$$

計算方法の平易な説明

(10) 音が出た瞬間のS(B)とRの間の距離を \(l\) とします。音がSから出てRにぶつかり、反射してBに戻ってくるまでの総時間が \(t_0\) です。この間にS(B)もRも動いています。これらの動きと音の速さを考慮して、最初の距離 \(l\) を \(t_0\) や各速度で表すことができます。少し複雑な追いかけ問題のようなものです。模範解答で示された2つの関係式を連立して解きます。
(11) 音がBに戻ってきた瞬間 (\(t_0\) 秒後) に、BとRはそれぞれ最初の位置からどれだけ動いたかを計算し、その時点での2点間の距離を求めます。(10)で求めた \(l\) の式を使います。

結論と吟味

(10) 音波を出した時点のBとRとの距離は \(l = \displaystyle\frac{t_0(V+u)(V+v)}{2V}\) [m] です。
(11) 反射音がBに帰ってきた時点のBとRとの距離は \(x = \displaystyle\frac{t_0(V-u)(V-v)}{2V}\) [m] です。
これらの式は、音の往復運動と、音源・反射体の運動を組み合わせた結果として導かれます。\(V>u, V>v\) の条件から、分母の \(2V\) は正であり、分子も状況により正の値を取ります。(11)の \(x\) は距離なので正であるべきですが、式の形から \(u,v\) が \(V\) に近いと \(x\) が非常に小さくなる(あるいは負になる)可能性もあり、その場合は絶対値をとるか、初期の仮定(例:\(l > (u+v)t_0\))が成り立たない状況を意味するかもしれません。ただし、通常このような問題では正の距離として解釈します。

解答 (10) \(\displaystyle\frac{t_0(V+u)(V+v)}{2V}\)
解答 (11) \(\displaystyle\frac{t_0(V-u)(V-v)}{2V}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • ドップラー効果の原理的理解: 音源が動くことによる波長の伸縮、観測者が動くことによる単位時間あたりの波の受信数の変化を正しく把握すること。単に公式を適用するだけでなく、(1)-(3)のように波の広がる範囲や波長をステップを追って考えることが重要。
  • 音速の不変性: 音速 \(V\) は媒質によって決まり、音源や観測者の速度にはよらない(風がない場合)。
  • 反射体の扱い(ドップラー効果の2段階適用): 反射体を一度「観測者」として入射音の振動数を求め、次にその振動数で音を出す「(動く)音源」として観測者への音の振動数を求める。
  • 相対速度の概念: 音波と観測者/反射体、あるいは音源と反射体の間の相対的な速度を正しく捉えることが、ドップラー効果や出会いの問題を解く鍵。
  • 距離・時間・速さの関係: 複雑な運動と波の伝播の問題では、各区間や各物体についてこの基本関係を繰り返し適用し、連立方程式を立てる。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • 複雑な相対運動を伴うドップラー効果の問題。
    • 波の伝播時間と距離が絡む問題(例:やまびこ、レーダー)。
    • 複数の観測者や反射体が関与する状況。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 基準となる「静止系」と「音の伝わる向き」の明確化: 速度の正負を決定する上で最も重要。
    2. 各物体の速度ベクトルを図示する: 音の伝播方向と各物体の速度の関係を視覚的に捉える。
    3. ドップラー効果の公式を適用する各段階を明確に区別する: (S\(\to\)A)、(S\(\to\)R)、(R\(\to\)A)、(R\(\to\)B)など、どの間の現象を考えているのかをはっきりさせる。
    4. 1秒間あたりの現象として考える: (1)や(4)のように、「1秒間に音源が出す波」「1秒間に反射体が受け取る波」「1秒間に波が広がる範囲」といった基準で考えると、波長や振動数の定義に立ち返りやすい。
    5. 未知数は何か、既知数は何かを整理する: (9)や(10),(11)のように、複数の物理量の関係式から特定の量を求める場合、どの式をどのように組み合わせるかの戦略を立てる。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
    • 音速 \(V\) は常に一定(風がない場合)。
    • 音源の振動数 \(f_0\) は音源固有の値。
    • ドップラー効果は、音源と観測者の間の「相対的な速度の、音の進行方向成分」によって生じる。
    • 複雑な問題では、時間を追って各物体の位置関係がどう変化するかを図で追うと良い。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • ドップラー効果の公式の \(v_s, v_o\) の符号の混乱:
    • 現象: 音の進行方向を正としたときの速度成分として符号を割り当てるルールを間違える。
    • 対策: 常に図を描き、音の進行方向、音源の運動方向、観測者の運動方向を矢印で明示し、それぞれの速度成分の符号を機械的に決定する訓練をする。「近づく=振動数大、遠ざかる=振動数小」という定性的な結果と照らし合わせる。
  • 反射体を単なる鏡として扱い、ドップラー効果を1回しか考慮しない:
    • 現象: 音源Sから反射体Rまでのドップラー効果のみを考え、反射体Rから観測者Oへの第2のドップラー効果(特にRが動く場合)を見落とす。
    • 対策: 反射は「受信」と「再放射」の2ステップであると常に意識する。Rが音波を受けるときの振動数と、Rが音波を出すときの振動数(これはRが受けた振動数と同じだが、R自身が動く音源となる)を区別する。
  • 波長の変化と振動数の変化の関係の誤解:
    • 現象: 音源が動いて波長が変わった後、静止した観測者がその波を観測するときの振動数を \(f=V/\lambda\) で求める際、\(V\) を音源や観測者の相対速度で置き換えてしまうなど。
    • 対策: 波長は一度決まれば観測者の運動状態によらない(媒質が同じなら)。観測者が聞く振動数は、その波長の波が観測者に対してどれだけの速さで通過していくか(\(V \pm v_o\))、あるいは音源が波を送り出す間隔がどう変わるかで決まる。
  • 複雑な距離と時間の計算での混乱:
    • 現象: (10)(11)のように、複数の物体が運動し、音波が往復するような状況で、各区間の時間や距離の関係を正しく立式できない。
    • 対策: 時間軸に沿って、各瞬間の各物体の位置、音波の先端の位置などを丁寧に図示し、区間ごとの「距離=速さ×時間」の関係を積み重ねていく。未知数を適切に設定し、連立方程式を解く。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 波の圧縮・伸長: (1)(2)では、音源Sが動くことで、進行方向の波が「押し縮められる」様子をイメージする。1秒間に \(f_0\) 個の波が、本来なら \(V\) の長さに広がるところを \(V-u\) に圧縮される。
    • 反射体による「キャッチ&リリース」: (4)では、動いている反射体Rが、自分に向かってくる波を「キャッチ」する(これがRが観測する振動数)。そして、(5)(6)では、キャッチした波を「リリース」するが、R自身も動いているため、リリースされた波の間隔(波長)がさらに変化する。
    • 時間の追跡: (10)(11)では、音波のパルスがSを出発し、Rに到達し、反射してBに戻ってくるまでの各区間でのS、R、音波の先端の位置関係を、時間軸に沿った複数のスナップショットとして図示すると、距離と時間の関係が明確になる(模範解答の図a,b,cがそれに相当)。
  • 図を描く際に注意すべき点は何か:
    • 基準となる座標軸と原点を明確にする。
    • 各物体の速度ベクトル(向きと大きさの概念)を矢印で示す。
    • 音波の進行方向も矢印で示す。
    • 時刻 \(t=0\) での初期配置と、ある時刻 \(t\) での位置関係を区別して描く。
    • 距離を表す線分には、それがどの間の距離なのかを明記する(例:\(l\), \(Vt\), \(ut_0\) など)。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \( \lambda = (\text{範囲長}) / (\text{波数}) \) (波長の定義に基づく導出): (1)(2)や(5)(6)で用いられた、ドップラー効果による波長変化の原理的な導出方法。音速の不変性と音源の運動を組み合わせる。
  • \( f’ = V’ / \lambda \) (観測される振動数): (3)(7)(8)で用いられた。\(V’\) は観測者に対する波の相対速度、\(\lambda\) はその空間に存在する波の波長。この \(\lambda\) 自体がドップラー効果で変化している場合もある。
  • ドップラー効果の一般公式 \(f’ = \frac{V-v_o}{V-v_s}f_0\): 上記の原理的考察を一般化したもの。各速度の符号を「音の進行方向を正」として正確に代入できれば、多くの状況に対応可能。(4)の\(f_R\)の導出などに使える。
  • 距離・時間・速さの関係 (\( \text{距離} = \text{速さ} \times \text{時間} \)): (10)(11)のような複雑な運動と波の伝播の問題では、各区間や各物体についてこの基本関係を繰り返し適用し、連立方程式を立てる。
  • 公式を選ぶ際には、その公式がどのような物理的状況や仮定の下で成り立つのかを理解し、問題の状況と照らし合わせて最も適切なものを選択する。原理から考えるか、一般化された公式を使うか、状況に応じて判断する。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 状況の分析と図示: O, S, Rの位置関係、速度の向き、音の伝播経路を図に描き、正の向きを設定する。
  2. ドップラー効果の段階分け: 直接音か、反射音か。反射音なら、音源→反射体、反射体→観測者の2段階で考える。
  3. 各段階での公式適用準備: 音の進行方向を正とし、音源・観測者の速度に符号を割り当てる。
  4. 振動数または波長の計算: ドップラー効果の公式、または波長変化の原理的考察から、必要な振動数や波長を求める。
  5. うなりや時間変化の計算: 必要に応じて、振動数の差や波の数の不変性、時間と距離の関係式を用いる。
  6. 連立方程式の処理: 複数の未知数や条件がある場合、適切に式を連立させて解を求める。
  7. 最終的な答えの形式への整理: 問われている物理量を、指定された変数で表す。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 符号の確認の徹底: ドップラー効果の速度の符号は最重要。立式ごとに図と照らし合わせて確認する。
  • 分数と文字式の計算: \(V, u, v, f_0\) など多くの文字を含む分数の計算(通分、約分、逆数をとるなど)は丁寧に行う。特に(9)のような複雑な式変形。
  • 段階ごとの結果の確認: 例えば、(4)で求めた \(f_R\) の物理的な意味(Rが受け取る振動数)を理解し、その値が次の(5)(6)でRが音源として出す波の振動数になる、という流れを意識する。
  • 単位の省略と最終確認: 途中計算では単位を省略してもよいが、最終的な答えでは正しい単位をつける。また、次元が合っているか(例:速度を求めているのに時間の次元になっていないか)を意識すると、大きな間違いに気づけることがある。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 定性的な傾向との一致:
    • 音源が観測者に近づけば振動数は上がり、遠ざかれば下がる。観測者が音源に近づけば振動数は上がり、遠ざかれば下がる。この基本原則に計算結果が従っているか。
    • (3) \(f_1 = \frac{V}{V-u}f_0\)。\(V-u < V\) なので \(f_1 > f_0\)。SがAに近づくので妥当。
    • (7) \(f_2 = \frac{V(V+v)}{(V-u)(V-v)}f_0\)。複雑だが、\(V+v > V-v\) と \(V > V-u\) から、全体として \(f_0\) よりかなり大きくなることが予想され、SとRが互いに近づき、RもAに近づく効果を反映している。
  • 極端なケースの代入:
    • もし \(u=0, v=0\) (全て静止)なら、全ての観測振動数は \(f_0\) になるはず。(3) \(f_1=f_0\)。(7) \(f_2=f_0\)。(8) \(f_B=f_0\)。(9) \(v\) は \(f_B=f_0\) を代入すると \(0/0\) の不定形になる場合があるが、\(f_B\) が \(u,v\) に依存することから、\(u=0\) で \(f_B = \frac{V+v}{V-v}f_0\) となり、これを \(f_B=f_0\) とすると \(V+v=V-v\) ということから \(v=0\)。妥当。
    • (10)(11)で \(u=0, v=0\) なら \(l=Vt_0/2\), \(x=Vt_0/2\)。つまり往復で同じ距離。
  • 物理的な意味の再考: (9)の式は複雑だが、Bが測定した反射音の振動数 \(f_B\) からRの速度 \(v\) を逆算できるという、一種のセンサーとしての利用を示唆している。
  • (10)(11)の距離の式も、各項がどの物体のどの運動に対応しているのかを吟味する。
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問題71 (大阪工大)

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