問題67
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、弦の基本振動と、その振動によって生じる音波が気柱(最初は水面の位置を変えられる閉管、後に開管)と共鳴する現象を扱っています。弦の振動と気柱の振動の連携、特に振動数が一致する点がポイントです。開口端補正も考慮に入れる必要があります。
- 弦: 線密度 \(\rho\) [kg/m], 長さ \(l\) [m], 張力 \(S\) [N]。中央をはじき基本振動。
- 気柱: 管口Aの下に水を入れた管。
- 1回目の共鳴: 水面Bの位置 (AB = \(d_1\) [m])
- 2回目の共鳴: 水面Cの位置 (AC = \(d_2\) [m])
- 開口端補正: 一定とする(値を \(x\) [m] とおく)。
- 音速は明示されていないが、\(V\) [m/s] とおくことになる。
- (1) 弦を伝わる波の波長 \(\lambda_s\) と振動数 \(f\) を求めよ。
- (2) 音波の波長 \(\lambda\) と音速 \(V\) を求めよ。また、開口端補正 \(x\) を求めよ。
- (3) さらに水面を下げて3度目の共鳴が起こったとき、管内において空気の密度が激しく変化している所(節の位置)を管口からの距離で答えよ。
- (4) 水面をさらに下げても共鳴せず管下端に達した後、水をなくし開管にすると共鳴した。管の全長を求めよ。
- (5) 水面をCの位置に戻し、弦の張力を \(S\) [N] から徐々に増していくと、共鳴は止み、やがて再び共鳴した。このときの弦の張力 \(S’\) を求めよ。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは、弦の振動と気柱の共鳴の連携です。弦が振動すると音波が発生し、その音波が気柱内で定常波を形成して共鳴すると、特定の高さの音が大きく聞こえます。このとき、弦の振動数と気柱の固有振動数が一致していることが重要な条件となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 弦の固有振動: 長さ \(l\) の弦が基本振動するとき、両端が節となり、弦の長さが半波長に等しくなります (\(l = \lambda_s/2\))。振動数 \(f\) は、弦を伝わる波の速さ \(v_s = \sqrt{S/\rho}\) と波長 \(\lambda_s\) から \(f = v_s/\lambda_s\) で求められます。
- 気柱の共鳴(閉管): 一端(水面)が節、他端(管口付近)が腹となる定常波。開口端補正 \(x\) を考慮すると、管口から \(x\) だけ外側に腹ができるとみなします。共鳴条件は、(管口から水面までの長さ \(d\)) \(+ x = (2m-1)\lambda/4\) (\(m=1, 2, 3, \ldots\))。
- 気柱の共鳴(開管): 両端(管口付近)が腹となる定常波。開口端補正 \(x\) を考慮すると、両管口から \(x\) だけ外側に腹ができるとみなします。実効的な管長 \(L’ = L+2x\) (\(L\)は管の実際の長さ)に対して、\(L’ = m\lambda/2\) (\(m=1, 2, 3, \ldots\))。
- 波の基本式: 音速 \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(V = f\lambda\) の関係があります。弦の波についても同様に \(v_s = f\lambda_s\)。
- 共鳴の条件: 弦の振動によって気柱が共鳴するとき、弦の振動数と気柱の固有振動数(音波の振動数)は一致します。
これらの法則を丁寧に適用していくことが求められます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) 弦の振動: まず、弦の基本振動の条件から、弦を伝わる波の波長 \(\lambda_s\) と振動数 \(f\) を、与えられた記号(\(l, S, \rho\))を用いて表します。
- (2) 気柱の共鳴(閉管): 弦の振動数 \(f\) が音波の振動数となります。1回目と2回目の共鳴の条件(水面の位置 \(d_1, d_2\))と開口端補正 \(x\) を用いて、音波の波長 \(\lambda\) と開口端補正 \(x\) を求めます。その後、音速 \(V = f\lambda\) を計算します。
- (3) 3度目の共鳴と密度変化: 閉管での3度目の共鳴位置を特定し、密度変化が最大となる場所(節)の位置を答えます。
- (4) 開管での共鳴: 水をなくした管(全長が(3)で求めた3度目の共鳴位置までの長さ)が開管として共鳴する条件を考え、管の全長を求めます。
- (5) 張力変化による再共鳴: 水面をC (\(d_2\)) に戻し、弦の張力を \(S\) から \(S’\) に変えたときの再共鳴を考えます。気柱の条件(長さ \(d_2\)、閉管)は変わらないので、次に共鳴するときの固有振動数(5倍振動)を特定します。弦の振動数がこれに一致するように張力 \(S’\) を調整するので、その値を求めます。
問 (1)
思考の道筋とポイント
弦は長さ \(l\) で基本振動をしています。弦の基本振動では、両端が節となり、中央に腹が1つできます。このとき、弦の長さ \(l\) は、弦を伝わる波の波長 \(\lambda_s\) の半分に相当します。
弦を伝わる波の速さ \(v_s\) は、張力 \(S\) と線密度 \(\rho\) を用いて \(v_s = \sqrt{S/\rho}\) と表されます。
振動数 \(f\) は、波の基本式 \(v_s = f\lambda_s\) から求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 弦の基本振動では、弦長 \(l = \lambda_s/2\)。
- 弦を伝わる波の速さ \(v_s = \sqrt{S/\rho}\)。
- 波の基本式 \(v_s = f\lambda_s\)。
具体的な解説と立式
弦の長さが \(l\) で基本振動しているので、弦には両端を節とする半波長分の定常波ができています。弦を伝わる波の波長を \(\lambda_s\) とすると、
$$l = \frac{\lambda_s}{2} \quad \cdots ①$$
弦を伝わる波の速さ \(v_s\) は、張力 \(S\) と線密度 \(\rho\) を用いて、
$$v_s = \sqrt{\frac{S}{\rho}} \quad \cdots ②$$
弦の基本振動数を \(f\) とすると、波の基本式より、
$$v_s = f \lambda_s \quad \cdots ③$$
式①から \(\lambda_s\) を求め、次に式②と③から \(f\) を求めます。
使用した物理公式
- 弦の基本振動の波長: \(l = \lambda_s/2\)
- 弦を伝わる波の速さ: \(v_s = \sqrt{S/\rho}\)
- 波の基本式: \(v_s = f\lambda_s\)
式①から、弦を伝わる波の波長 \(\lambda_s\) は、
$$\lambda_s = 2l \text{ [m]}$$
次に、振動数 \(f\) を求めます。式③を変形して \(f = v_s/\lambda_s\)。これに式②で与えられる \(v_s\) と上記で求めた \(\lambda_s = 2l\) を代入します。
$$f = \frac{\sqrt{\frac{S}{\rho}}}{2l}$$
整理すると、
$$f = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \text{ [Hz]}$$
弦が「ドレミ」の「ド」の音(基本の音)で鳴っているときを考えます。このとき、弦の長さは、できる波の「半分の長さ」にちょうど等しくなります。だから、波全体の長さ(波長)は弦の長さの2倍です。
次に、この弦の振動の回数(振動数)は、弦の波の速さを波長で割ると求まります。弦の波の速さは、弦の張り具合(張力)と重さ(線密度)で決まる公式で計算できます。
弦を伝わる波の波長は \(\lambda_s = 2l \text{ [m]}\) で、振動数は \(f = \displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \text{ [Hz]}\) です。
これらは弦の基本振動に関する標準的な結果です。
問 (2)
思考の道筋とポイント
弦の振動によって発生する音波が気柱と共鳴します。このとき、弦の振動数 \(f\) と音波の振動数 \(f_{\text{音}}\) は等しくなります。つまり、\(f_{\text{音}} = f = \displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}}\)。
気柱は閉管として機能し、開口端補正を \(x\) とします。
1回目の共鳴(水面B、AB=\(d_1\))では、管口から \(x\) だけ外側の腹と水面(節)までの距離が \(\lambda/4\) になります。
つまり、\(d_1 + x = \lambda/4\)。
2回目の共鳴(水面C、AC=\(d_2\))では、同様に \(d_2 + x = 3\lambda/4\) となります(閉管の次の共鳴は3倍振動に相当)。
これら2つの式を連立させて、音波の波長 \(\lambda\) と開口端補正 \(x\) を求めます。
音速 \(V\) は、波の基本式 \(V = f_{\text{音}}\lambda = f\lambda\) から計算できます。
この設問における重要なポイント
- 弦の振動数と音波の振動数が一致する (\(f_{\text{音}} = f\))。
- 閉管の共鳴条件(開口端補正 \(x\) を考慮):
- 1回目 (基本振動, \(m=1\)): \(d_1 + x = \lambda/4\)
- 2回目 (3倍振動, \(m=2\)): \(d_2 + x = 3\lambda/4\)
- 波の基本式 \(V = f\lambda\)。
具体的な解説と立式
音波の振動数は弦の振動数 \(f\) に等しいです。開口端補正を \(x\) とします。
1回目の共鳴が水面の深さ \(d_1\) で起こったとき、管口の腹から水面の節までの距離は \(\lambda/4\) なので、
$$d_1 + x = \frac{\lambda}{4} \quad \cdots ④$$
2回目の共鳴が水面の深さ \(d_2\) で起こったとき、これは閉管の次の共鳴モード(基本振動の次は3倍振動)なので、管口の腹から水面の節までの距離は \(3\lambda/4\) となります。
$$d_2 + x = \frac{3\lambda}{4} \quad \cdots ⑤$$
これらの式④と⑤を連立させて、音波の波長 \(\lambda\) と開口端補正 \(x\) を求めます。
音速 \(V\) は、(1)で求めた弦の振動数 \(f\) と、ここで求める音波の波長 \(\lambda\) を用いて、波の基本式から計算します。
$$V = f\lambda \quad \cdots ⑥$$
使用した物理公式
- 閉管の共鳴条件 (開口端補正 \(x\) 考慮): \(d+x = (2m-1)\lambda/4\)
- 波の基本式: \(V = f\lambda\)
まず、音波の波長 \(\lambda\) を求めます。式⑤から式④を辺々引くと、
$$(d_2 + x) – (d_1 + x) = \frac{3\lambda}{4} – \frac{\lambda}{4}$$
左辺の \(x\) は消去され、
$$d_2 – d_1 = \frac{2\lambda}{4}$$
$$d_2 – d_1 = \frac{\lambda}{2}$$
これを \(\lambda\) について解くと、
$$\lambda = 2(d_2 – d_1) \text{ [m]}$$
次に、開口端補正 \(x\) を求めます。式④を変形して \(x = \displaystyle\frac{\lambda}{4} – d_1\)。
この式に上記で求めた \(\lambda = 2(d_2-d_1)\) を代入します。
$$x = \frac{2(d_2-d_1)}{4} – d_1$$
$$x = \frac{d_2-d_1}{2} – d_1$$
通分して計算します。
$$x = \frac{d_2-d_1 – 2d_1}{2}$$
$$x = \frac{d_2-3d_1}{2} \text{ [m]}$$
最後に、音速 \(V\) を求めます。式⑥に、(1)で求めた \(f = \displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}}\) と、上記で求めた \(\lambda = 2(d_2-d_1)\) を代入します。
$$V = \left(\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}}\right) \cdot 2(d_2-d_1)$$
整理すると、
$$V = \frac{d_2-d_1}{l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \text{ [m/s]}$$
管が共鳴するとき、音の波は管の口の少し外側で「腹」を作ります。この「管の口からのズレ」が開口端補正です。
1回目の共鳴(水面が\(d_1\))と2回目の共鳴(水面が\(d_2\))のときの管の有効な長さ(水面から腹までの距離)を考えます。1回目は波長の\(1/4\)、2回目は波長の\(3/4\)です。
この2つの共鳴の差 (\(d_2-d_1\)) が、ちょうど音波の半波長 (\(\lambda/2\)) に相当します。ここから音波の波長が求まります。
波長が分かれば、1回目の共鳴条件から開口端補正も計算できます。
音の速さは、弦の振動数(音波の振動数と同じ)に、今求めた音波の波長を掛ければ出てきます。
音波の波長は \(\lambda = 2(d_2 – d_1) \text{ [m]}\)、音速は \(V = \displaystyle\frac{d_2-d_1}{l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \text{ [m/s]}\)、開口端補正は \(x = \displaystyle\frac{d_2-3d_1}{2} \text{ [m]}\) です。
これらの結果は、共鳴の条件と物理量間の関係から導かれており、矛盾はありません。特に \(d_2-d_1 = \lambda/2\) は、連続する共鳴間の距離が半波長であるという重要な関係を示しています。
問 (3)
思考の道筋とポイント
閉管の共鳴では、水面の位置が節となります。1回目、2回目の共鳴に続き、3回目の共鳴も水面が節の位置に来たときに起こります。節と節の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。
2回目の共鳴は水面の深さ \(d_2\) で起こりました。3回目の共鳴は、そこからさらに \(\lambda/2\) だけ水面を下げた位置で起こります。
空気の密度が激しく変化する場所は、定常波の「節」の位置です。腹の位置では媒質の変位(動き)は最大ですが、密度変化(圧力変化)は最小(ほぼゼロ)となります。
したがって、3度目の共鳴が起こったときの管内の節の位置を答えればよいことになります。これには、開口端近くの腹の位置から数えて \(\lambda/4, 3\lambda/4, 5\lambda/4, \dots\) の距離にある実際の空気柱の部分(管口から水面まで)を考える必要があります。
具体的には、管口からの距離で、\(d_1\)(1回目の節)、\(d_2\)(2回目の節)、そして3回目の節の位置を求めます。
この設問における重要なポイント
- 閉管の共鳴では、水面が節となる。
- 連続する共鳴(節の位置)の間隔は \(\lambda/2\)。
- 密度変化(または圧力変化)が最大となるのは定常波の節の位置。
- 変位が最大(腹の位置)では密度変化は最小。
具体的な解説と立式
音波の波長は \(\lambda = 2(d_2-d_1)\) です((2)より)。したがって半波長は \(\lambda/2 = d_2-d_1\)。
1回目の共鳴は管口からの深さ \(d_1\) の水面(節)で起こりました。
2回目の共鳴は管口からの深さ \(d_2\) の水面(節)で起こりました。
3回目の共鳴が起こる水面の深さを \(d_3\) とすると、これは \(d_2\) からさらに \(\lambda/2\) だけ深い位置になります。
$$d_3 = d_2 + \frac{\lambda}{2} \quad \cdots ⑦$$
密度が激しく変化する場所は節の位置です。3度目の共鳴状態のとき、管口Aから水面(3番目の節)までの間に存在する節の位置は、水面 \(d_1\)、水面 \(d_2\)、そして水面 \(d_3\) の3箇所です。これらを管口からの距離で答えます。
使用した物理公式
- 定常波の節と腹の性質(密度変化について)
- 節と節の間隔: \(\lambda/2\)
3度目の共鳴が起こる水面の深さ \(d_3\) を計算します。
式⑦に \(\lambda = 2(d_2-d_1)\) を代入すると、\(\lambda/2 = d_2-d_1\) となります。
$$d_3 = d_2 + (d_2-d_1)$$
$$d_3 = 2d_2 – d_1$$
したがって、3度目の共鳴が起こったとき、管内で密度が激しく変化している所(節の位置)は、管口からの距離で、
1番目の節: \(d_1\) [m]2番目の節: \(d_2\) [m]3番目の節: \(d_3 = 2d_2 – d_1\) [m]となります。
音が管の中で共鳴すると、定常波ができます。この定常波には、空気がほとんど動かない「節」と、空気が激しく動く「腹」があります。空気の密度(濃さや薄さ)が最も大きく変わるのは「節」の場所です。
水面の位置は、この「節」にあたります。1回目、2回目の共鳴に続いて、3回目の共鳴も水面が「節」の位置に来たときに起こります。
「節」と「節」の間の距離は、音の波の「半分の長さ」です。(2)で計算したように、半波長は \(d_2-d_1\) なので、3回目の共鳴が起こる水面の深さ(管口から)は、2回目の深さ \(d_2\) に \(d_2-d_1\) を加えたものになります。
よって、密度が激しく変わる場所は、1回目の水面の深さ \(d_1\)、2回目の水面の深さ \(d_2\)、そして3回目の水面の深さ \(2d_2-d_1\) の3箇所です。
3度目の共鳴が起こったとき、管内において空気の密度が激しく変化している所(節の位置)は、管口からの距離で \(d_1 \text{ [m]}\), \(d_2 \text{ [m]}\), \(2d_2 – d_1 \text{ [m]}\) の3箇所です。
開口端近くの腹の位置では密度変化は最小になることにも注意が必要です。
問 (4)
思考の道筋とポイント
「3度目の共鳴が起こった位置D(深さ \(d_3 = 2d_2-d_1\))より下には節の位置がないまま管の下端に達した」という記述があります。
その後「水をなくし開管にすると、管は共鳴した」とあります。この「管」とは、今まで水を入れていた管のことです。
模範解答の解釈では、この管の全長が \(2d_2\) であり、この長さの開管が元の音波(波長 \(\lambda\))に対して3倍振動 (\(m=3\)) で共鳴した、としています。この解釈に基づいて進めます。
開管の共鳴条件は、管の両端に開口端補正 \(x\) があるので、実効長 \(L_{\text{管}}+2x\) が半波長 \(\lambda/2\) の整数倍になるときです。
\(L_{\text{管}}+2x = m \lambda/2\)。
ここで、\(L_{\text{管}} = 2d_2\)、\(m=3\)、そして(2)で求めた \(\lambda\) と \(x\) を用いると、この関係が成り立つことを確認します。
この設問における重要なポイント
- 開管の共鳴条件(両端に開口端補正 \(x\) を考慮): (管長 \(L_{\text{管}}\)) \(+ 2x = m\lambda/2\) (\(m=1, 2, 3, \dots\))。
- 元の音波の波長 \(\lambda\) と開口端補正 \(x\) の値は(2)で求めたものを使用する。
- 問題文の条件と模範解答の解釈から、管の全長と共鳴モードを特定する。
具体的な解説と立式
管の全長を \(L_{\text{管}}\) とします。この管を開管として用いたとき、弦から発せられる音波(振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\))と共鳴したとあります。
模範解答の解釈に従い、管の全長 \(L_{\text{管}} = 2d_2\) であり、このとき \(m=3\) のモードで共鳴するとします。
開管の共鳴条件は、両端に開口端補正 \(x\) があるため、実効的な管の長さは \(L_{\text{管}} + 2x\) となります。
$$L_{\text{管}} + 2x = m \frac{\lambda}{2} \quad \cdots ⑧$$
この式に \(L_{\text{管}} = 2d_2\) と \(m=3\) を代入し、(2)で求めた \(\lambda = 2(d_2-d_1)\) と \(x = \displaystyle\frac{d_2-3d_1}{2}\) を用いて等式が成立することを確認し、管の全長を \(2d_2\) と結論付けます。
つまり、証明すべき(あるいは確認すべき)式は、
$$2d_2 + 2x = \frac{3\lambda}{2} \quad \cdots ⑨$$
使用した物理公式
- 開管の共鳴条件 (開口端補正 \(x\) 考慮): \(L_{\text{管}}+2x = m\lambda/2\)
式⑨の左辺に \(x = \displaystyle\frac{d_2-3d_1}{2}\) を代入します。
左辺 \(= 2d_2 + 2 \left( \displaystyle\frac{d_2-3d_1}{2} \right) = 2d_2 + (d_2-3d_1) = 3d_2 – 3d_1\)。
式⑨の右辺に \(\lambda = 2(d_2-d_1)\) を代入します。
右辺 \(= \displaystyle\frac{3}{2} \cdot 2(d_2-d_1) = 3(d_2-d_1) = 3d_2 – 3d_1\)。
左辺と右辺が一致することが確認できました。
このことから、管の全長が \(2d_2\) のときに \(m=3\) のモードで共鳴するという模範解答の解釈は、これまでの結果と整合性があります。
したがって、管の全長は \(2d_2\) [m] となります。
水をなくして管全体を開いた管として使ったところ、弦の音と共鳴しました。模範解答の図やヒントによると、このときの管の全長は、2回目の共鳴が起きたときの水深 \(d_2\) のちょうど2倍、つまり \(2d_2\) であると解釈できます。そして、この長さの開管が、弦の音に対して3つの「ふくらみ」を持つ形で共鳴したと考えられます。この条件が、(2)で求めた音の波長や開口端補正の値と矛盾しないことを数式で確認すると、確かに成り立つことがわかります。
管の全長は \(2d_2 \text{ [m]}\) です。
これは、全長 \(2d_2\) の開管が、波長 \(\lambda=2(d_2-d_1)\) の音波、開口端補正 \(x=(d_2-3d_1)/2\) のもとで、3倍振動 (\(m=3\)) で共鳴するという解釈に基づきます。
問 (5)
思考の道筋とポイント
水面をCの位置(深さ \(d_2\))に戻したので、気柱は長さ \(d_2\) の閉管として機能します。開口端補正は \(x\) です。
元の張力 \(S\)、元の弦の振動数 \(f\) のとき、この長さ \(d_2\) の閉管は2度目の共鳴(3倍振動に相当)をしていました。
つまり、\(d_2 + x = 3\lambda/4 = 3V/(4f)\)。
弦の張力を \(S\) から \(S’\) に徐々に増していくと、弦を伝わる波の速さ \(v_s’ = \sqrt{S’/\rho}\) が増加します。弦の長さ \(l\) は一定で基本振動なので、弦の波長 \(\lambda_s = 2l\) も一定です。したがって、弦の振動数 \(f’ = v_s’/\lambda_s = (1/2l)\sqrt{S’/\rho}\) も増加します。
気柱の長さ \(d_2\) と開口端補正 \(x\)、音速 \(V\) は変わらないので、この気柱が次に共鳴するのは、より高い固有振動数、すなわち3倍振動の次の5倍振動のときです。
このときの気柱の固有振動数を \(f”_{\text{気柱}}\) とすると、\(d_2 + x = 5\lambda”/4 = 5V/(4f”_{\text{気柱}})\)。
弦の振動数 \(f’\) がこの \(f”_{\text{気柱}}\) に一致したときに再び共鳴します。
元の共鳴では \(d_2+x = 3V/(4f)\)、新しい共鳴では \(d_2+x = 5V/(4f’)\)。
よって、\(3V/(4f) = 5V/(4f’)\) という関係から \(f’ = (5/3)f\)。
弦の振動数が元の \(5/3\) 倍になったときに再び共鳴します。
弦の振動数は \(f \propto \sqrt{S}\) なので、振動数が \(5/3\) 倍になるためには、張力 \(S\) は \((5/3)^2 = 25/9\) 倍になる必要があります。
この設問における重要なポイント
- 気柱の条件(閉管、長さ \(d_2\)、開口端補正 \(x\)、音速 \(V\))は一定。
- 張力 \(S\) を増すと弦の振動数 \(f\) が増す (\(f \propto \sqrt{S}\))。
- 閉管の固有振動数は基本振動数の奇数倍。現在の共鳴(3倍振動相当)より高い次の共鳴は5倍振動相当。
- 新しい弦の振動数が、気柱の5倍振動の固有振動数と一致するときに再共鳴する。
具体的な解説と立式
水面がCの位置にあるとき、気柱の有効長は \(d_2+x\)。
元の張力 \(S\)、振動数 \(f\) のとき、これは3倍振動に相当する共鳴でした。
$$d_2+x = \frac{3\lambda}{4} = \frac{3V}{4f} \quad \cdots ⑩$$
弦の張力を \(S’\) に変えたときの弦の振動数を \(f’\) とします。弦の基本振動なので、
$$f = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \quad \text{および} \quad f’ = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S’}{\rho}} \quad \cdots ⑪$$
張力を増して振動数 \(f’\) が増加し、気柱が次に共鳴するのは5倍振動のときです。このときの気柱の固有振動数を \(f’_{\text{気柱}}\) とすると、
$$d_2+x = \frac{5\lambda’}{4} = \frac{5V}{4f’_{\text{気柱}}} \quad \cdots ⑫$$
再共鳴するので、弦の新しい振動数 \(f’\) が \(f’_{\text{気柱}}\) と一致します。つまり \(f’ = f’_{\text{気柱}}\)。
式⑩と式⑫の左辺は等しいので、
$$\frac{3V}{4f} = \frac{5V}{4f’}$$
この式から \(f’\) と \(f\) の関係を求め、それを使って \(S’\) と \(S\) の関係を式⑪から導きます。
使用した物理公式
- 閉管の共鳴条件 (開口端補正 \(x\) 考慮): \(d+x = (2m-1)\lambda/4 = (2m-1)V/(4f)\)
- 弦の基本振動数: \(f = (1/2l)\sqrt{S/\rho}\)
式⑩と式⑫の左辺が等しいことから、
$$\frac{3V}{4f} = \frac{5V}{4f’}$$
両辺の共通因子 \(V/4\) を消去すると、
$$\frac{3}{f} = \frac{5}{f’}$$
これを \(f’\) について解くと、
$$f’ = \frac{5}{3}f$$
次に、この関係を弦の振動数の式⑪に適用します。
$$f = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}}$$
$$f’ = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S’}{\rho}}$$
これらの式の比をとると、
$$\frac{f’}{f} = \frac{\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S’}{\rho}}}{\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}}} = \sqrt{\frac{S’}{S}}$$
\(f’/f = 5/3\) を代入すると、
$$\frac{5}{3} = \sqrt{\frac{S’}{S}}$$
両辺を2乗すると、
$$\left(\frac{5}{3}\right)^2 = \frac{S’}{S}$$
$$\frac{25}{9} = \frac{S’}{S}$$
よって、新しい張力 \(S’\) は、
$$S’ = \frac{25}{9}S$$
別解
思考の道筋とポイント
張力 \(S\) を増すと弦の振動数 \(f\) が増します。音速 \(V\) は一定なので、気柱内で共鳴する音波の波長 \(\lambda\) は \(f\) の増加に伴い減少します (\(\lambda = V/f\))。
水面がC (\(d_2\)) のとき、閉管としての有効長 \(d_2+x\) は一定です。
最初は3倍振動で共鳴していました: \(d_2+x = 3\lambda/4\)。
次に共鳴するのは5倍振動のときで、そのときの音波の波長を \(\lambda”\) とすると \(d_2+x = 5\lambda”/4\)。
ここから新しい波長 \(\lambda”\) を元の波長 \(\lambda\) で表し、新しい振動数 \(f’ = V/\lambda”\) を求めます。
そして、弦の振動数 \(f’ = (1/2l)\sqrt{S’/\rho}\) との関係から \(S’\) を求めます。
具体的な解説と立式
最初の共鳴(3倍振動)では、音波の波長を \(\lambda\) とすると、
$$d_2+x = \frac{3\lambda}{4} \quad \cdots (ア)$$
次の共鳴(5倍振動)では、音波の波長を \(\lambda”\) とすると、
$$d_2+x = \frac{5\lambda”}{4} \quad \cdots (イ)$$
式(ア)と(イ)の左辺は等しいので、
$$\frac{3\lambda}{4} = \frac{5\lambda”}{4}$$
これから、\(\lambda” = \displaystyle\frac{3}{5}\lambda\) という関係が得られます。
元の振動数を \(f\)、新しい振動数を \(f’\) とすると、\(f=V/\lambda\) および \(f’=V/\lambda”\)。
よって、
$$f’ = \frac{V}{\lambda”} = \frac{V}{(3/5)\lambda} = \frac{5}{3} \frac{V}{\lambda} = \frac{5}{3}f$$
弦の振動数と張力の関係は \(f \propto \sqrt{S}\) なので、\(f’/f = \sqrt{S’/S}\) です。
したがって、
$$\sqrt{\frac{S’}{S}} = \frac{5}{3}$$
ここから \(S’\) を求めます。
上記「具体的な解説と立式」の最後の式 \(\sqrt{\displaystyle\frac{S’}{S}} = \displaystyle\frac{5}{3}\) の両辺を2乗します。
$$\frac{S’}{S} = \left(\frac{5}{3}\right)^2$$
$$\frac{S’}{S} = \frac{25}{9}$$
よって、
$$S’ = \frac{25}{9}S$$
これは本解と同じ結果です。
弦の張り具合を強くすると、弦が出す音の高さ(振動数)が上がります。
一方、管の長さは変わらないので、この管が次に共鳴するのは、もっと高い特定の振動数(3倍振動の次は5倍振動)になったときです。
つまり、弦の振動数が元の \(5/3\) 倍になったときに、管は再び共鳴します。
弦の振動数は、張力の平方根に比例するので、振動数を \(5/3\) 倍にするには、張力を \((5/3)^2 = 25/9\) 倍にする必要があります。
再び共鳴したときの弦の張力は \(\displaystyle\frac{25}{9}S \text{ [N]}\) です。
張力を増すと弦の振動数が上がり、気柱のより高い次数の固有振動数と一致して再び共鳴するという現象を正しく捉えられています。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 弦の基本振動の条件: 長さ \(l\) の弦が基本振動するときの波長 \(\lambda_s=2l\) と、振動数 \(f = (1/2l)\sqrt{S/\rho}\)。
- 閉管の共鳴条件(開口端補正 \(x\) あり): 管口からの実効長 \(d+x\) に対して、\(d+x = (2m-1)\lambda/4\) (\(m=1,2,3,\dots\))。連続する共鳴点の距離の差が \(\lambda/2\) であること (\(d_2-d_1 = \lambda/2\)) も重要。
- 開管の共鳴条件(開口端補正 \(x\) あり): 管長 \(L\) に対して、実効長 \(L+2x = m\lambda/2\) (\(m=1,2,3,\dots\))。
- 波の基本式: \(V=f\lambda\)(音波)、\(v_s=f\lambda_s\)(弦の波)。
- 共鳴の基本原理: 弦の振動数と気柱の固有振動数(音波の振動数)が一致するときに共鳴が起こる。
- 定常波の性質: 節では媒質の変位はゼロだが密度・圧力変化は最大。腹では変位は最大だが密度・圧力変化はゼロ。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 複数の共鳴状態からの情報抽出: 問(2)のように、複数の共鳴点(\(d_1, d_2\))が与えられた場合、それらの差から波長を求めたり、連立方程式を立てて開口端補正や波長を決定したりする。
- 条件変化への対応: 問(5)のように、弦の張力や気柱の長さを変えた場合に、振動数、波長、波の速さ、共鳴次数などがどのように変化するかを、基本法則に基づいて順を追って考察する。何が一定で何が変化するかを見極める。
- 閉管と開管の条件の使い分け: 問題設定に応じて、正しい共鳴条件と固有振動数の系列(閉管は奇数倍、開管は整数倍)を適用する。
- 図の活用: 定常波の腹と節の様子を図示することで、波長と管長(または水深+開口端補正)の関係を視覚的に理解し、立式ミスを防ぐ。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 開口端補正の扱い忘れ・誤り:
- 現象: 開口端補正を考慮しない、あるいは閉管で片方だけ、開管で両端に考慮すべきところを間違える。
- 対策: 問題文に指示があれば必ず従う。指示がなくても、より精密な議論では必要となることを知っておく。閉管では \(d+x\)、開管では \(L+2x\) が実効的な長さとなることを図と共に理解する。
- 弦の振動と音波の振動数の関係の誤解:
- 現象: 共鳴時に両者の振動数が一致することを見落とす、または弦の波のパラメータ(速さ、波長)と音波のパラメータを混同する。
- 対策: 「共鳴=振動数の一致」を常に意識する。弦の波と音波は別物であり、速さも波長も異なるが、共鳴時には振動数だけが共通となる。
- 密度変化が最大なのは腹と誤解する:
- 現象: 媒質の変位が最大な腹で密度変化も最大だと考えてしまう。
- 対策: 定常波において、変位の節が密度(圧力)の腹、変位の腹が密度(圧力)の節に対応することを正確に理解する。
- 倍振動の次数の数え方:
- 現象: 閉管の「2度目の共鳴」を2倍振動と数える(正しくは3倍振動)。
- 対策: 基本振動を1番目(\(m=1\))として、閉管では \(2m-1\) 倍振動、開管では \(m\) 倍振動となることを確認する。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- 弦の基本振動のイメージ: 両端が固定され、中央が大きく膨らむ形。この長さ \(l\) が \(\lambda_s/2\) であることを視覚的に捉える。
- 閉管内の定常波のイメージ:
- 1回目の共鳴 (\(d_1\)): 管口付近に腹、水面(節)までが \(\lambda/4\)。
- 2回目の共鳴 (\(d_2\)): 管口付近に腹、水面(節)までが \(3\lambda/4\)。\(d_1\) の状態に半波長 (\(\lambda/2\)) が加わった形。\(d_2-d_1 = \lambda/2\)。
- 図を描くときは、開口端補正 \(x\) を管口の外側に描き、そこを腹の端とする。
- 開管内の定常波のイメージ: 両端の管口付近に腹ができる。問(4)の模範解答の図は3倍振動 (\(m=3\)) を示しており、管の実長 \(L_{\text{管}}\) の両外側に \(x\) があり、腹と節が交互に現れる。
- 密度変化が最大なのは節、最小なのは腹、という対応関係を、定常波の図と重ねて理解する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(l = \lambda_s/2\) (弦の基本振動): 弦の両端が固定端(節)であるという境界条件から、最も単純な定常波の形として適用。
- \(v_s = \sqrt{S/\rho}\): 弦の物理的性質(張力、線密度)から波の速さを求めるための基本公式。
- \(d+x = (2m-1)\lambda/4\) (閉管の共鳴): 一端が節(水面)、他端の開口部実効位置が腹となる境界条件から導かれる。\(m\) は共鳴の次数。
- \(L+2x = m\lambda/2\) (開管の共鳴): 両端の開口部実効位置が腹となる境界条件から導かれる。
- 常に、現象(弦の振動、気柱の共鳴)、境界条件(固定端、自由端、節、腹)、そしてそれらを満たす定常波の形を意識することで、適切な公式選択が可能になる。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- 初期状態の分析: 弦の振動数 \(f\) を \(l, S, \rho\) で表す。
- 閉管共鳴の利用: 2つの共鳴点 \(d_1, d_2\) から、\(\lambda\) と \(x\) を \(d_1, d_2\) で表す。 ( \(d_2-d_1 = \lambda/2\) が鍵)
- 音速の導出: \(V=f\lambda\) に1.と2.の結果を代入。
- 高次共鳴点の予測: \(d_3 = d_2 + \lambda/2\)。密度変化最大点=節の位置。
- 開管共鳴への移行: 管の全長と共鳴モードを問題文や図から解釈し、開管の共鳴条件を適用。
- 条件変化への対応: 張力変更の結果、弦の振動数変化 (\(f \propto \sqrt{S}\))。気柱側は次の共鳴モード (3倍振動から5倍振動へ)。振動数一致条件から新しい張力を求める。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 連立方程式の処理: 特に問(2)で \(\lambda\) と \(x\) を求める際の、式同士の引き算や代入を正確に行う。
- 分数や平方根の扱い: 問(1)や(5)での \( \sqrt{S/\rho} \) や、問(5)での \((5/3)^2\) の計算。
- 文字式の整理: 多くの記号 (\(l, d_1, d_2, S, \rho, V, f, \lambda, x\)) が登場するため、どの記号が何を表すか、どの式で関連付けられているかを常に意識し、丁寧に式変形する。
- 代入の正確性: あるステップで求めた結果を次のステップの式に代入する際に、値を間違えたり、符号を誤ったりしないように注意する。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 開口端補正 \(x\) の物理的意味: \(x = (d_2-3d_1)/2\) が正の値をとるか?(通常 \(d_2 > 3d_1\) は成り立ちにくい。\(\lambda/4 > d_1\) から \(2(d_2-d_1)/4 > d_1\) であり、これは \(d_2-d_1 > 2d_1\) 、つまり \(d_2 > 3d_1\) を意味します。これが \(x>0\) の条件です。もし \(d_2 \le 3d_1\) ならば \(x \le 0\) となり物理的に不自然ですが、問題設定として受け入れます)。模範解答は \(x=(d_2-3d_1)/2\) であり、これは \(d_2-d_1 = \lambda/2\) と \(d_1+x=\lambda/4\) から導かれる \(x = \lambda/4 – d_1 = (d_2-d_1)/2 – d_1 = (d_2-3d_1)/2\) と一致します。
- 波長や振動数のオーダー: 求めた値が極端に大きすぎたり小さすぎたりしないか、おおよその感覚と照らし合わせる。
- 条件変更時の変化の方向性: 問(5)で張力を増したら振動数が増加し、それに応じて気柱がより高い次数のモードで共鳴する、という変化の方向性が物理的に正しいか確認する。
- 単位の確認: 最終的な答えの単位が、問われている物理量の単位として適切か確認する。
問題68 (東京理科大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、波源から左右に出る波、壁での固定端反射、そして波の重ね合わせ(定常波や進行波の合成)について、波の式を用いて考察するものです。特に、入射波と反射波の式を立て、それらを合成することで生じる現象を分析します。後半の「Q」では、反射が自由端反射だった場合について同様の考察を求められます。
- 波源S: \(x=0\) の位置にあり、左右に波を出す。
- 波の特性: 振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\)。
- 波源Sにおける変位: \(y = A\sin(2\pi ft)\) (時刻 \(t\) に対して)。
- 壁R: Sから右に距離 \(L\) の位置 (\(x=L\)) にあり、波は振幅を変えずに固定端反射される。
- (1) Sから壁に向かう入射波の式 \(y_1\) を \(x, t\) の関数として表せ (\(0 \le x \le L\))。
- (2) 壁からの反射波の式 \(y_2\) を \(x, t\) の関数として表せ (\(x \le L\))。
- (3) SR間 (\(0 \le x \le L\)) での合成波の変位 \(y_I = y_1+y_2\) が \(y_I = 2A\sin(\text{ア})\cos(\text{イ})\) と表される。(ア), (イ)を埋めよ。また、常に \(y_I=0\) となる位置 \(x\) を整数 \(n(=0, 1, 2, \dots)\) を用いて表せ。
- (4) Sの左側 (\(x \le 0\)) に生じる波(合成波)の振幅を求めよ。また、振幅が最大となるときの \(L\) を \(\lambda, n\) で表せ。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは、波の表現、反射、重ね合わせです。波の変位を位置 \(x\) と時刻 \(t\) の関数で表す「波の式」の立て方、固定端および自由端での反射の性質(位相変化の有無)、そして複数の波が同じ空間に存在するときの「重ね合わせの原理」が中心となります。特にSR間では定常波が、Sの左側では進行波同士の干渉(強め合い・弱め合い)が生じることを見ていきます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 進行波の式: 原点での振動が \(y(0,t) = A\sin(2\pi ft)\) で、正のx方向に速さ \(v\) で進む波の式は \(y(x,t) = A\sin(2\pi f(t-x/v))\) と表されます。\(v=f\lambda\) を用いると \(y(x,t) = A\sin(2\pi (ft-x/\lambda))\) とも書けます。負のx方向に進む場合は \(y(x,t) = A\sin(2\pi (ft+x/\lambda))\) となります。
- 固定端反射: 波が固定端で反射するとき、反射波の位相は入射波に対して \(\pi\) (180°) ずれます。これは、反射波の変位が入射波の変位と逆符号になることを意味します。
- 自由端反射: 波が自由端で反射するとき、反射波の位相は入射波と同じです(ずれなし)。
- 重ね合わせの原理: 複数の波が同じ場所に来たとき、その点の変位は各波の変位のベクトル和(ここではスカラー和)になります。
- 三角関数の和積公式: \( \sin\alpha + \sin\beta = 2\sin\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)\cos\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right) \) や \( \sin\alpha – \sin\beta = 2\cos\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)\sin\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right) \) など。これらは波の重ね合わせの結果を分析する際に非常に有効です。
これらの知識を駆使して、各設問に答えていきます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) 入射波の式の導出: 波源Sでの振動の様子と、波がx方向に伝播する時間差を考慮して、位置 \(x\) における時刻 \(t\) での変位を表す式を立てます。
- (2) 反射波の式の導出:
- 壁R (\(x=L\)) での入射波の変位を求めます。
- 固定端反射の条件(位相が \(\pi\) ずれる、または変位が逆符号)を適用して、壁Rでの反射波の変位の形を決定します。
- その反射波が壁Rから位置 \(x\) まで伝播する時間差を考慮して、反射波の式を立てます。
- 別解として、波が \(x=L\) で反射されることを、あたかも \(x=2L\) の位置にある逆位相の波源から波がきていると見なす「鏡像法」的な考え方も有効です。
- (3) SR間での合成波(定常波): 重ね合わせの原理に従い \(y_I = y_1 + y_2\) を計算します。和積公式を用いて、指定された形に変形し、(ア)と(イ)を特定します。常に変位が0となる「節」の位置の条件を導きます。
- (4) Sの左側での合成波: Sから直接左へ向かう波 \(y_3\) と、壁Rで反射してSを通過し左へ向かう波 \(y_2\) の重ね合わせ \(y_{II} = y_2 + y_3\) を考えます。この合成波の振幅を求め、それが最大になる条件を分析します。
各段階で、波の進行方向、位相、反射の条件を正確に把握することが重要です。
問 (1)
思考の道筋とポイント
波源S (\(x=0\)) での変位は \(y(0,t) = A\sin(2\pi ft)\) と与えられています。この波が正のx方向に速さ \(v\) で進む場合を考えます。位置 \(x\) での時刻 \(t\) における変位は、波源Sを時刻 \(t – x/v\) に出発した波の変位と同じになります(波が \(x\) だけ進むのに \(x/v\) の時間がかかるため)。波の速さ \(v\) は \(v=f\lambda\) と表せるので、\(x/v = x/(f\lambda)\) となります。
この設問における重要なポイント
- 波の伝播による時間遅れを考慮する。
- 波の基本式 \(v=f\lambda\) を用いて時間遅れを \(x, f, \lambda\) で表す。
- 進行波の式の一般的な形を理解している。
具体的な解説と立式
波源S (\(x=0\)) における時刻 \(t_0\) での変位は \(y(0, t_0) = A\sin(2\pi ft_0)\) です。
この波が正のx方向に速さ \(v\) で進むとき、位置 \(x\) にこの振動が到達するまでにかかる時間は \(\Delta t = x/v\) です。
したがって、位置 \(x\) における時刻 \(t\) での変位 \(y_1(x,t)\) は、波源Sを時刻 \(t – \Delta t = t – x/v\) に出た波の変位に等しくなります。
よって、
$$y_1(x,t) = A\sin(2\pi f(t – x/v))$$
ここで、波の速さ \(v\) は振動数 \(f\) と波長 \(\lambda\) を用いて \(v=f\lambda\) と書けるので、\(x/v = x/(f\lambda)\)。
これを代入すると、求める入射波の式 \(y_1\) は、
$$y_1(x,t) = A\sin\left(2\pi f\left(t – \frac{x}{f\lambda}\right)\right) \quad \cdots ①$$
となります。
使用した物理公式
- 進行波の変位の一般形: \(y(x,t) = y(0, t-x/v)\) (x方向正に進む波)
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)
式①の括弧内を展開すると、
$$y_1(x,t) = A\sin\left(2\pi ft – \frac{2\pi fx}{f\lambda}\right)$$
整理して、
$$y_1(x,t) = A\sin\left(2\pi ft – \frac{2\pi x}{\lambda}\right)$$
これは、\(y_1(x,t) = A\sin\left(2\pi \left(ft – \displaystyle\frac{x}{\lambda}\right)\right)\) とも書けます。
波源Sから出た波が、少し離れた場所 \(x\) に届くまでには時間がかかります。その時間は(距離 \(x\))÷(波の速さ \(v\))です。波の速さ \(v\) は(振動数 \(f\))×(波長 \(\lambda\))なので、時間は \(x/(f\lambda)\) とも書けます。
場所 \(x\) で、ある時刻 \(t\) に観測される波の形は、波源Sを \(x/(f\lambda)\) だけ過去の時刻に出発した波の形と同じです。
波源Sでの波の形は \(A\sin(2\pi f \times \text{時刻})\) なので、この「時刻」の部分を \(t – x/(f\lambda)\) に置き換えれば、求める波の式になります。
Sから壁に向かう入射波の式 \(y_1\) は \(y_1 = A\sin\left(2\pi (ft – \displaystyle\frac{x}{\lambda})\right)\) です。
これは、振幅 \(A\)、角振動数 \(\omega = 2\pi f\)、波数 \(k = 2\pi/\lambda\) を用いると \(A\sin(\omega t – kx)\) とも書ける、正のx方向に進む正弦波の標準的な形です。
問 (2)
思考の道筋とポイント
まず、入射波 \(y_1\) が壁R (\(x=L\)) に到達したときの変位を考えます。
壁Rは固定端なので、反射する際に波の位相が \(\pi\) ずれます(あるいは、変位の符号が反転します)。つまり、壁Rにおける反射波の変位は、もし固定端でなければ入射波と同じ形になるはずの波の変位の符号を反転させたものになります。
この壁Rで生じた反射波が、今度は負のx方向に進んで位置 \(x\) に到達するときの式を立てます。壁Rから位置 \(x\) までの距離は \(L-x\) なので、この距離を伝播するのにかかる時間を考慮します。
この設問における重要なポイント
- 固定端反射では位相が \(\pi\) ずれる(変位の符号が反転する)。
- 反射点は新たな波源と考えることができる。
- 反射波は壁から負のx方向に進む。
具体的な解説と立式
入射波 \(y_1(x,t) = A\sin\left(2\pi (ft – \displaystyle\frac{x}{\lambda})\right)\) が壁R (\(x=L\)) に到達したときの変位は、
$$y_1(L,t) = A\sin\left(2\pi \left(ft – \frac{L}{\lambda}\right)\right)$$
固定端反射なので、壁Rにおける反射波の変位 \(y_{\text{R,反射}}(t)\) は、入射波の変位の符号を反転させたものになります。
$$y_{\text{R,反射}}(t) = -y_1(L,t) = -A\sin\left(2\pi \left(ft – \frac{L}{\lambda}\right)\right)$$
この \(y_{\text{R,反射}}(t)\) を、\(x=L\) の位置にある波源から時刻 \(t\) に生じる波と見なします。この波が負のx方向に速さ \(v\) で進み、位置 \(x\) (\(x \le L\)) に到達するときの変位が \(y_2(x,t)\) です。
壁R (\(x=L\)) から位置 \(x\) まで波が進むのにかかる時間は \(\Delta t’ = (L-x)/v = (L-x)/(f\lambda)\) です。
したがって、位置 \(x\) における時刻 \(t\) での反射波の変位 \(y_2(x,t)\) は、壁Rを時刻 \(t – \Delta t’ = t – (L-x)/(f\lambda)\) に出発した波の変位に等しくなります。
$$y_2(x,t) = -A\sin\left(2\pi \left(f\left(t – \frac{L-x}{f\lambda}\right) – \frac{L}{\lambda}\right)\right)$$
整理すると、
$$y_2(x,t) = -A\sin\left(2\pi \left(ft – \frac{L-x}{\lambda} – \frac{L}{\lambda}\right)\right)$$$$y_2(x,t) = -A\sin\left(2\pi \left(ft – \frac{2L-x}{\lambda}\right)\right) \quad \cdots ②$$
使用した物理公式
- 固定端反射: 位相が \(\pi\) ずれる (変位が逆符号)。
- 進行波の式: \(y(x,t) = y(x_0, t – (x-x_0)/v)\) (基準点 \(x_0\) から \(x\) へ進む場合) または \(y(x,t) = y(x_0, t – (x_0-x)/v)\) (基準点 \(x_0\) から \(x\) へ逆方向に進む場合)
式②のままでも良いですが、模範解答の形式に合わせるため、\(\sin\) 関数の引数内の \( -(2L-x) \) を \( x-2L \) とするために、\( \sin(-\theta) = -\sin\theta \) の関係を用いると、
$$- \sin\left(2\pi \left(ft – \frac{2L-x}{\lambda}\right)\right) = \sin\left(-2\pi \left(ft – \frac{2L-x}{\lambda}\right)\right) = \sin\left(2\pi \left(-ft + \frac{2L-x}{\lambda}\right)\right)$$
これに \(A\) を掛けるので、\(y_2(x,t) = A\sin\left(2\pi \left(-ft + \frac{2L-x}{\lambda}\right)\right)\)。
模範解答の \(y_2 = -A\sin\left(2\pi(ft+\frac{x-2L}{\lambda})\right)\) と比較します。
式②は \(y_2(x,t) = -A\sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x-2L}{\lambda}\right)\right)\) と変形できます。これは、引数の中の \( -(2L-x) \) を \( +(x-2L) \) としているためです。
したがって、
$$y_2(x,t) = -A\sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x-2L}{\lambda}\right)\right)$$
別解: 鏡像法的な考え方
思考の道筋とポイント
波源Sから出た波が壁Rで反射し、位置 \(x\) に到達する波を考えます。波が実際に進む総距離は \(L\) (SからRまで) \( + (L-x) \) (Rから \(x\) まで) \( = 2L-x \) です。この距離を進むのにかかる時間は \((2L-x)/v\) です。固定端反射で位相が \(\pi\) ずれるので、波源Sの振動 \(A\sin(2\pi ft)\) を元に、時間遅れと位相ずれを考慮します。
具体的な解説と立式
波がSからRを経由して位置 \(x\) に到達するまでの全経路長は \(L + (L-x) = 2L-x\)。
この経路を伝播するのに要する時間は \(\Delta t_{\text{total}} = \displaystyle\frac{2L-x}{v} = \frac{2L-x}{f\lambda}\)。
固定端反射による位相のずれ \(\pi\) を考慮すると、反射波の式は、
$$y_2(x,t) = A\sin\left(2\pi f\left(t – \frac{2L-x}{f\lambda}\right) + \pi\right) \quad \cdots ②_{\text{別}}$$
となります。
式②別 において、三角関数の性質 \(\sin(\theta+\pi) = -\sin\theta\) を用います。
$$y_2(x,t) = -A\sin\left(2\pi f\left(t – \frac{2L-x}{f\lambda}\right)\right)$$
括弧内を展開し、整理すると、
$$y_2(x,t) = -A\sin\left(2\pi ft – \frac{2\pi (2L-x)}{\lambda}\right)$$
$$y_2(x,t) = -A\sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x-2L}{\lambda}\right)\right)$$
これは本解の結果と一致します。
壁Rで反射した波を考えます。壁Rは固定端なので、波がぶつかると「ひっくり返って」反射します(形は同じで向きが上下逆になるイメージ、これを位相が\(\pi\)ずれると言います)。
この反射波が場所 \(x\) に届くには、まずSからRまで \(L\) 進み、次にRから \(x\) まで \(L-x\) だけ戻ってくるので、合計 \(L+(L-x)=2L-x\) の距離を進んできたことになります。
波源Sの波の形 \(A\sin(2\pi f \times \text{時刻})\) の「時刻」の部分を、この \(2L-x\) の距離を進む時間だけ過去にし、さらに「ひっくり返る」効果(マイナスをつけるか、位相に\(\pi\)を加える)を考慮すれば、反射波の式が得られます。
壁からの反射波の式 \(y_2\) は \(y_2 = -A\sin\left(2\pi (ft + \displaystyle\frac{x-2L}{\lambda})\right)\) です。
これは、振幅が \(A\) で、時間 \(t\) と位置 \(x\) の位相部分の符号が \(x\) について正であることから、負のx方向に進む波であることがわかります(ただし、位相の基準点がずれています)。\( \sin \) の前にマイナスがついているのは固定端反射によるものです。
問 (3)
思考の道筋とポイント
SR間 (\(0 \le x \le L\)) では、入射波 \(y_1\) と反射波 \(y_2\) が重ね合わさります。合成波の変位 \(y_I\) は \(y_I = y_1 + y_2\) で計算できます。
ここで三角関数の和積公式 \( \sin\alpha + \sin\beta = 2\sin\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)\cos\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right) \) を利用します。\(y_2\) のマイナス符号を考慮すると、\(y_I = y_1 – (-y_2)\) の形ではなく、\(y_I = A\sin P – A\sin Q\) の形になるため、和積公式 \( \sin P – \sin Q = 2\cos\left(\displaystyle\frac{P+Q}{2}\right)\sin\left(\displaystyle\frac{P-Q}{2}\right) \) を使います。
常に \(y_I=0\) となる位置は、合成波が定常波であることを示しており、その「節」の位置を求めることになります。そのためには、\(x\) のみを含む因子が0になる条件を探します。
この設問における重要なポイント
- 重ね合わせの原理 \(y_I = y_1 + y_2\)。
- 三角関数の和積公式の適用。
- 定常波の節の条件: 時間 \(t\) に依存しない部分が0になる位置。
具体的な解説と立式
入射波 \(y_1 = A\sin\left(2\pi (ft – \displaystyle\frac{x}{\lambda})\right)\)
反射波 \(y_2 = -A\sin\left(2\pi (ft + \displaystyle\frac{x-2L}{\lambda})\right)\)
合成波 \(y_I = y_1 + y_2\) を計算します。
$$y_I = A\sin\left(2\pi \left(ft – \frac{x}{\lambda}\right)\right) – A\sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x-2L}{\lambda}\right)\right)$$
ここで、\(P = 2\pi \left(ft – \displaystyle\frac{x}{\lambda}\right)\) と \(Q = 2\pi \left(ft + \displaystyle\frac{x-2L}{\lambda}\right)\) とおくと、\(y_I = A(\sin P – \sin Q)\)。
和積公式 \( \sin P – \sin Q = 2\cos\left(\displaystyle\frac{P+Q}{2}\right)\sin\left(\displaystyle\frac{P-Q}{2}\right) \) を用います。
まず、\(\displaystyle\frac{P+Q}{2}\) と \(\displaystyle\frac{P-Q}{2}\) を計算します。
$$\frac{P+Q}{2} = \frac{1}{2} \left[ 2\pi \left(ft – \frac{x}{\lambda}\right) + 2\pi \left(ft + \frac{x-2L}{\lambda}\right) \right]$$
$$= \pi \left( ft – \frac{x}{\lambda} + ft + \frac{x-2L}{\lambda} \right) = \pi \left( 2ft – \frac{2L}{\lambda} \right) = 2\pi \left( ft – \frac{L}{\lambda} \right)$$
$$\frac{P-Q}{2} = \frac{1}{2} \left[ 2\pi \left(ft – \frac{x}{\lambda}\right) – 2\pi \left(ft + \frac{x-2L}{\lambda}\right) \right]$$
$$= \pi \left( ft – \frac{x}{\lambda} – ft – \frac{x-2L}{\lambda} \right) = \pi \left( -\frac{x}{\lambda} – \frac{x-2L}{\lambda} \right)$$
$$= \pi \left( \frac{-x – (x-2L)}{\lambda} \right) = \pi \left( \frac{-2x+2L}{\lambda} \right) = \frac{2\pi(L-x)}{\lambda}$$
これらを代入すると、
$$y_I = A \cdot 2\cos\left(2\pi \left(ft – \frac{L}{\lambda}\right)\right) \sin\left(\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right)$$
問題の形式 \(y_I = 2A\sin(\text{ア})\cos(\text{イ})\) に合わせるため、\(\sin\) と \(\cos\) の順序を入れ替えます。
$$y_I = 2A \sin\left(\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right) \cos\left(2\pi \left(ft – \frac{L}{\lambda}\right)\right) \quad \cdots ③$$
常に \(y_I=0\) となるのは、\(\sin\left(\displaystyle\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right)\) の部分が0になるときです。
$$\sin\left(\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right) = 0 \quad \cdots ④$$
使用した物理公式
- 重ね合わせの原理: \(y = y_1+y_2\)
- 三角関数の和積公式: \(\sin P – \sin Q = 2\cos\left(\frac{P+Q}{2}\right)\sin\left(\frac{P-Q}{2}\right)\)
- 定常波の節の条件
式③より、(ア) と (イ) は、
(ア): \(\displaystyle\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\)
(イ): \(2\pi \left(ft – \displaystyle\frac{L}{\lambda}\right)\)
となります。
次に、常に \(y_I=0\) となる条件式④を解きます。
\(\sin\theta = 0\) となるのは \(\theta = n\pi\) (\(n\) は整数)のときなので、
$$\frac{2\pi(L-x)}{\lambda} = n\pi$$
両辺を \(\pi\) で割ります。
$$\frac{2(L-x)}{\lambda} = n$$
\(L-x\) について解くと、
$$L-x = \frac{n\lambda}{2}$$
よって、\(x\) について解くと、
$$x = L – \frac{n\lambda}{2}$$
ここで、SR間なので \(0 \le x \le L\) です。
\(0 \le L – \displaystyle\frac{n\lambda}{2}\) より \(\displaystyle\frac{n\lambda}{2} \le L\)、すなわち \(n \le \displaystyle\frac{2L}{\lambda}\)。
\(L – \displaystyle\frac{n\lambda}{2} \le L\) より \(-\displaystyle\frac{n\lambda}{2} \le 0\)。\(\lambda > 0\) なので \(n \ge 0\)。
問題文で \(n=0, 1, 2, \dots\) と指定されているので、\(n\) は0以上の整数であり、上限は \(n \le 2L/\lambda\) となります。
入射する波 \(y_1\) と反射してくる波 \(y_2\) を足し合わせます (\(y_I = y_1+y_2\))。この計算には三角関数の公式(和を積の形にする公式)を使うと、問題で指定された形 \(2A\sin(\text{ア})\cos(\text{イ})\) になります。
「ア」と「イ」には、\(x\) や \(t\) を含む式が入ります。
常に変位が0 (\(y_I=0\)) になる場所は、この合成波の「節」と呼ばれます。これは、\(\sin(\text{ア})\) の部分が0になるときに起こります。\(\sin(\text{ア})=0\) という式を \(x\) について解けば、節の位置が求まります。
(ア) は \(\displaystyle\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\)、(イ) は \(2\pi \left(ft – \displaystyle\frac{L}{\lambda}\right)\) です。
常に \(y_I=0\) となる位置 \(x\) は \(x = L – \displaystyle\frac{n\lambda}{2}\) (ただし、\(n\) は \(0 \le n \le 2L/\lambda\) を満たす0以上の整数)です。
この結果は、壁R (\(x=L\)) が節 (\(n=0\) のとき \(x=L\)) となり、そこから半波長 (\(\lambda/2\)) ごとに節が現れるという定常波の性質と一致しています。
問 (4)
思考の道筋とポイント
Sの左側 (\(x \le 0\)) には、2つの波が存在します。
1. 波源Sから直接左向き(負のx方向)に進む波 \(y_3\)。
2. 波源Sから右向きに進み、壁Rで反射され、再びSを通過して左向きに進む波 \(y_2\)。
波 \(y_3\) の式は、Sでの振動 \(A\sin(2\pi ft)\) が負のx方向に進むので、\(y_3(x,t) = A\sin(2\pi(ft + x/\lambda))\) となります(\(x\) は負の値をとることに注意)。
波 \(y_2\) の式は(2)で求めたものです。
Sの左側での合成波 \(y_{II}\) は \(y_{II} = y_2 + y_3\) となります。この合成波も進行波となり、その振幅を求めます。振幅が最大になる条件は、干渉における強め合いの条件と関連します。
この設問における重要なポイント
- Sから直接左へ進む波の式を立てる。
- 反射波の式 ( \(y_2\) ) は(2)の結果を利用。
- 重ね合わせの原理 \(y_{II} = y_2 + y_3\)。
- 和積公式を用いて合成波の振幅を特定する。
- 振幅が最大になる条件(三角関数の絶対値が1)。
具体的な解説と立式
波源Sから直接左向き (\(x \le 0\)) に進む波 \(y_3\) の式は、
$$y_3(x,t) = A\sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x}{\lambda}\right)\right) \quad \cdots ⑤$$
壁からの反射波 \(y_2\) の式は(2)より、
$$y_2(x,t) = -A\sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x-2L}{\lambda}\right)\right) \quad \cdots ⑥$$
Sの左側での合成波 \(y_{II} = y_2 + y_3\) は、
$$y_{II}(x,t) = -A\sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x-2L}{\lambda}\right)\right) + A\sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x}{\lambda}\right)\right)$$
$$y_{II}(x,t) = A \left[ \sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x}{\lambda}\right)\right) – \sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x-2L}{\lambda}\right)\right) \right]$$
ここで \(P = 2\pi \left(ft + \displaystyle\frac{x}{\lambda}\right)\), \(Q = 2\pi \left(ft + \displaystyle\frac{x-2L}{\lambda}\right)\) とおくと、\(y_{II} = A(\sin P – \sin Q)\)。
和積公式 \( \sin P – \sin Q = 2\cos\left(\displaystyle\frac{P+Q}{2}\right)\sin\left(\displaystyle\frac{P-Q}{2}\right) \) を用います。
$$\frac{P+Q}{2} = \pi \left( ft + \frac{x}{\lambda} + ft + \frac{x-2L}{\lambda} \right) = \pi \left( 2ft + \frac{2x-2L}{\lambda} \right) = 2\pi \left( ft + \frac{x-L}{\lambda} \right)$$
$$\frac{P-Q}{2} = \pi \left( ft + \frac{x}{\lambda} – ft – \frac{x-2L}{\lambda} \right) = \pi \left( \frac{x – (x-2L)}{\lambda} \right) = \pi \frac{2L}{\lambda} = \frac{2\pi L}{\lambda}$$
よって、
$$y_{II}(x,t) = A \cdot 2\cos\left(2\pi \left(ft + \frac{x-L}{\lambda}\right)\right) \sin\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right)$$
$$y_{II}(x,t) = 2A\sin\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) \cos\left(2\pi \left(ft + \frac{x-L}{\lambda}\right)\right) \quad \cdots ⑦$$
これは、\(x\) と \(t\) が \(\cos\) の中に同じ形で入っているので、左向き(\(x\) の係数が正で \(t\) の係数も正なら \(ft+kx\) の形は \(x\) 負方向)の進行波を表します。
この進行波の振幅 \(A’\) は、
$$A’ = \left| 2A\sin\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) \right| \quad \cdots ⑧$$
この振幅 \(A’\) が最大になる条件を求めます。
使用した物理公式
- 進行波の式
- 重ね合わせの原理
- 三角関数の和積公式: \(\sin P – \sin Q = 2\cos\left(\frac{P+Q}{2}\right)\sin\left(\frac{P-Q}{2}\right)\)
合成波の振幅は式⑧で与えられます。
$$A’ = \left| 2A\sin\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) \right|$$
この振幅 \(A’\) が最大になるのは、\( \left|\sin\left(\displaystyle\frac{2\pi L}{\lambda}\right)\right| \) が最大値1をとるときです。
すなわち、
$$\sin\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) = \pm 1$$
この条件は、
$$\frac{2\pi L}{\lambda} = \frac{\pi}{2} + n\pi = \frac{(2n+1)\pi}{2}$$
(\(n\) は整数。\(n=0, 1, 2, \dots\) と問題文にあるので、ここでは \(n\) を0以上の整数とするのが自然です。)
両辺を \(\pi\) で割ります。
$$\frac{2L}{\lambda} = \frac{2n+1}{2}$$
\(L\) について解くと、
$$L = \frac{2n+1}{4}\lambda$$
ここで \(n=0, 1, 2, \dots\) です。
Sの左側では、Sから直接左へ向かう波と、Sから右へ出て壁Rで反射して戻ってきた波が重なり合います。この2つの波を足し合わせると、やはり左へ進む1つの波になります。
この新しい波の「揺れの大きさ(振幅)」は、元の波の振幅 \(A\) と、壁までの距離 \(L\) と波長 \(\lambda\) の関係で決まるある三角関数(\(\sin(2\pi L/\lambda)\))の積で表されます。
この振幅が一番大きくなるのは、この三角関数の部分が +1 または -1 になるときです。その条件を \(L\) について解けば、振幅が最大になる \(L\) の値が、波長 \(\lambda\) と整数 \(n\) を使って表されます。
Sの左側に生じる波(合成波)の振幅は \(A’ = \left| 2A\sin\left(\displaystyle\frac{2\pi L}{\lambda}\right) \right|\) です。
振幅が最大 (\(2A\)) となるときの \(L\) は \(L = \displaystyle\frac{2n+1}{4}\lambda\) (\(n=0, 1, 2, \dots\))です。
これは、Sから出てRで反射してSに戻ってくる波と、Sから直接左へ出る波がSの位置で強め合う条件に対応します。経路差 \(2L\) を考え、固定端反射による位相の\(\pi\)ずれを考慮すると、強め合いの条件は \(2L = (m+1/2)\lambda\) (\(m=0,1,2,\dots\)) となり、\(L = (m+1/2)\lambda/2 = (2m+1)\lambda/4\) と一致します。
【コラム】Q. 波が壁Rで自由端反射される場合について、問 (2) 以下を解いてみよ。
思考の道筋とポイント
反射条件が固定端から自由端に変わります。自由端反射では、位相の変化はありません(位相のずれは0)。
この変更点が、反射波の式 \(y_2\)、SR間の合成波 \(y_I\)、Sの左側の合成波 \(y_{II}\) にどのように影響するかを順に見ていきます。
問 (2) のQ
思考の道筋とポイント
入射波 \(y_1(L,t) = A\sin(2\pi (ft – L/\lambda))\)。
自由端反射なので、壁Rにおける反射波の変位 \(y_{\text{R,反射}}(t)\) は入射波の変位と同じ。
\(y_{\text{R,反射}}(t) = y_1(L,t) = A\sin(2\pi (ft – L/\lambda))\)。
この波が負のx方向に進むので、(2)の解説と同様に、\(t\) を \(t – (L-x)/(f\lambda)\) で置き換えます。
具体的な解説と立式
入射波の壁R (\(x=L\)) における変位は \(y_1(L,t) = A\sin\left(2\pi (ft – \displaystyle\frac{L}{\lambda})\right)\)。
自由端反射なので、壁Rにおける反射波の変位はこれと同じです。
$$y_{\text{R,反射}}(t) = A\sin\left(2\pi \left(ft – \frac{L}{\lambda}\right)\right)$$
この波が壁Rから位置 \(x\) まで距離 \(L-x\) を進むのにかかる時間は \((L-x)/(f\lambda)\)。
よって、反射波の式 \(y_2(x,t)\) は、
$$y_2(x,t) = A\sin\left(2\pi \left(f\left(t – \frac{L-x}{f\lambda}\right) – \frac{L}{\lambda}\right)\right)$$$$y_2(x,t) = A\sin\left(2\pi \left(ft – \frac{L-x+L}{\lambda}\right)\right)$$$$y_2(x,t) = A\sin\left(2\pi \left(ft – \frac{2L-x}{\lambda}\right)\right) \quad \cdots (\text{Q}2-①)$$
これは、\(y_2(x,t) = A\sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x-2L}{\lambda}\right)\right)\) とも書けます。
上記「具体的な解説と立式」の式(Q2-①)がそのまま解答の形となります。
$$y_2(x,t) = A\sin\left(2\pi \left(ft – \frac{2L-x}{\lambda}\right)\right)$$
または、模範解答のQの解答に合わせて、
$$y_2(x,t) = A\sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x-2L}{\lambda}\right)\right)$$
問 (3) のQ
思考の道筋とポイント
\(y_I = y_1 + y_2\)。今度の \(y_2\) は自由端反射のものです。和積公式 \( \sin P + \sin Q = 2\sin\left(\frac{P+Q}{2}\right)\cos\left(\frac{P-Q}{2}\right) \) を使います。
節の位置は、\(x\) のみを含む因子が0になる条件から求めます。自由端である壁R (\(x=L\)) は腹になるはずです。
具体的な解説と立式
入射波 \(y_1 = A\sin\left(2\pi (ft – \displaystyle\frac{x}{\lambda})\right)\)。
反射波 \(y_2 = A\sin\left(2\pi (ft – \displaystyle\frac{2L-x}{\lambda})\right)\)。
合成波 \(y_I = y_1 + y_2\)。和積公式 \( \sin P + \sin Q = 2\sin\left(\displaystyle\frac{P+Q}{2}\right)\cos\left(\displaystyle\frac{P-Q}{2}\right) \) を用います。
\(P = 2\pi (ft – x/\lambda)\), \(Q = 2\pi (ft – (2L-x)/\lambda)\)。
\(\displaystyle\frac{P+Q}{2} = 2\pi \left(ft – \frac{L}{\lambda}\right)\) (これは(3)の本編と同じ)。
\(\displaystyle\frac{P-Q}{2} = \frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\) (これも(3)の本編と同じ)。
よって、
$$y_I = 2A\sin\left(2\pi \left(ft – \frac{L}{\lambda}\right)\right) \cos\left(\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right) \quad \cdots (\text{Q}3-①)$$
常に \(y_I=0\) となるのは、\(\cos\left(\displaystyle\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right)\) の部分が0になるときです。
$$\cos\left(\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right) = 0 \quad \cdots (\text{Q}3-②)$$
合成波の式は式(Q3-①)です。
$$y_I = 2A\sin\left(2\pi \left(ft – \frac{L}{\lambda}\right)\right) \cos\left(\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right)$$
節の条件式(Q3-②) \(\cos\left(\displaystyle\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right) = 0\) を解きます。
\(\cos\theta = 0\) となるのは \(\theta = \displaystyle\frac{\pi}{2} + n\pi = \frac{(2n+1)\pi}{2}\) (\(n\) は整数)のときなので、
$$\frac{2\pi(L-x)}{\lambda} = \frac{(2n+1)\pi}{2}$$
両辺を \(\pi\) で割り、整理すると、
$$\frac{2(L-x)}{\lambda} = \frac{2n+1}{2}$$
$$L-x = \frac{(2n+1)\lambda}{4}$$
よって、\(x\) について解くと、
$$x = L – \frac{(2n+1)\lambda}{4}$$
ここで \(n=0, 1, 2, \dots\) であり、\(0 \le x \le L\) を満たす範囲を考えます。
\(x=L\) (壁) は \( (2n+1)\lambda/4 = 0 \) となる \(n\) がないので節にはならず、腹になります(\(\cos(0)=1\))。
問 (4) のQ
思考の道筋とポイント
Sから直接左へ進む波 \(y_3(x,t) = A\sin\left(2\pi (ft + \displaystyle\frac{x}{\lambda})\right)\)。
自由端反射の反射波 \(y_2(x,t) = A\sin\left(2\pi (ft + \displaystyle\frac{x-2L}{\lambda})\right)\)。
合成波 \(y_{II} = y_2 + y_3\)。和積公式 \( \sin P + \sin Q \) を用います。
振幅を求め、最大条件を導きます。
具体的な解説と立式
\(y_3(x,t) = A\sin\left(2\pi (ft + \displaystyle\frac{x}{\lambda})\right)\)
\(y_2(x,t) = A\sin\left(2\pi (ft + \displaystyle\frac{x-2L}{\lambda})\right)\)
合成波 \(y_{II} = y_2 + y_3\)。
\(P = 2\pi (ft + (x-2L)/\lambda)\), \(Q = 2\pi (ft + x/\lambda)\)。
\(\displaystyle\frac{P+Q}{2} = 2\pi \left( ft + \frac{x-L}{\lambda} \right)\) (これは(4)の本編と同じ)。
\(\displaystyle\frac{P-Q}{2} = \pi \left( \frac{x-2L – x}{\lambda} \right) = -\frac{2\pi L}{\lambda}\) (これも(4)の本編と同じ)。
$$y_{II}(x,t) = 2A\sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x-L}{\lambda}\right)\right) \cos\left(-\frac{2\pi L}{\lambda}\right)$$
\(\cos(-\theta) = \cos\theta\) なので、
$$y_{II}(x,t) = 2A\cos\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) \sin\left(2\pi \left(ft + \frac{x-L}{\lambda}\right)\right) \quad \cdots (\text{Q}4-①)$$
この進行波の振幅 \(A”\) は、
$$A” = \left| 2A\cos\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) \right| \quad \cdots (\text{Q}4-②)$$
この振幅 \(A”\) が最大になる条件を求めます。
合成波の振幅は式(Q4-②)で与えられます。
$$A” = \left| 2A\cos\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) \right|$$
この振幅 \(A”\) が最大になるのは、\( \left|\cos\left(\displaystyle\frac{2\pi L}{\lambda}\right)\right| \) が最大値1をとるときです。
すなわち、
$$\cos\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right) = \pm 1$$
この条件は、
$$\frac{2\pi L}{\lambda} = n\pi$$
(\(n\) は整数。\(n=0, 1, 2, \dots\) とするのが自然。)
両辺を \(\pi\) で割り、\(2/\lambda\) で割ると、
$$L = \frac{n\lambda}{2}$$
ここで \(n=0, 1, 2, \dots\) です。(\(L>0\) を考えると \(n \ge 1\))。
(Q2) 反射波: 自由端反射では、波は「ひっくり返らずに」そのまま反射します。計算方法は固定端のときと似ていますが、最後にマイナスをつけたり位相に\(\pi\)を加えたりしません。
(Q3) SR間の波と節: 入射波と自由端反射波を足し合わせます。今度は壁R(\(x=L\))が「腹」(よく振動する場所)になります。節(全く振動しない場所)は、壁から \(\lambda/4, 3\lambda/4, 5\lambda/4, \dots\) の距離にできます。
(Q4) Sの左側の波の振幅: Sから直接左へ行く波と、壁で自由端反射して戻ってきた波を足し合わせます。このときの振幅が最大になるのは、2つの波がSの位置で同位相で重なるときで、壁までの距離 \(L\) が半波長の整数倍のときです。
(Q2) 反射波の式は \(y_2 = A\sin\left(2\pi (ft + \displaystyle\frac{x-2L}{\lambda})\right)\) です。
(Q3) 合成波 \(y_I = 2A\sin\left(2\pi (ft – \displaystyle\frac{L}{\lambda})\right) \cos\left(\displaystyle\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right)\)。節の位置は \(x = L – \displaystyle\frac{(2n+1)\lambda}{4}\) (\(n=0, 1, 2, \dots\) で \(0 \le x < L\) を満たすもの)。
(Q4) Sの左側の合成波の振幅は \(A” = \left| 2A\cos\left(\displaystyle\frac{2\pi L}{\lambda}\right) \right|\)。振幅が最大となるときの \(L\) は \(L = \displaystyle\frac{n\lambda}{2}\) (\(n=1, 2, 3, \dots\))。
自由端反射では、壁 (\(x=L\)) が腹となり、固定端反射とは節と腹の位置が \(\lambda/4\) ずれる結果となります。Sの左側の波の強め合いの条件も、反射の際の位相変化がないため、固定端の場合と異なります。
(2) \(y_2 = A\sin\left(2\pi \left(ft + \displaystyle\frac{x-2L}{\lambda}\right)\right)\)
(3) \(y_I = 2A\sin\left(2\pi \left(ft – \displaystyle\frac{L}{\lambda}\right)\right) \cos\left(\displaystyle\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right)\)。節の位置: \(x = L – \displaystyle\frac{(2n+1)\lambda}{4}\) (\(n=0, 1, 2, \dots\) で \(0 \le x < L\) を満たすもの)
(4) 振幅: \(\left| 2A\cos\left(\displaystyle\frac{2\pi L}{\lambda}\right) \right|\)。振幅が最大となるときのL: \(L = \displaystyle\frac{n\lambda}{2}\) (\(n=1, 2, 3, \dots\))
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の式の表現: 正弦波の位置 \(x\) と時刻 \(t\) における変位を \(y(x,t) = A\sin(2\pi(ft \pm x/\lambda) + \phi)\) の形で記述できること。特に、進行方向(式の \(x/\lambda\) の項の前の \(\pm\) 符号)と初期位相 \(\phi\) の扱いに習熟する。
- 反射の法則:
- 固定端反射: 位相が \(\pi\) (180°) ずれる(逆になる)。変位の式では、振幅の符号を反転させるか、位相に \(\pi\) を加えることで表現する。
- 自由端反射: 位相は変化しない(同位相で反射)。
- 重ね合わせの原理: 複数の波が存在するとき、ある点の変位は各波の変位の和で与えられる。本問ではこれを用いて合成波の式を導出した。
- 定常波の形成: 同一媒質中を逆向きに進む同じ振幅・同じ振動数(波長)の波が重なると定常波ができる。本問のSR間では、入射波と固定端(または自由端)反射波によって定常波が形成された。定常波の式は、位置に関する項と時間に関する項の積で表される (\(y = (\text{振幅項 involving } x) \times (\text{振動項 involving } t)\))。
- 波の干渉: Sの左側では、直接波と反射波(Sを通過)という2つの進行波が重なり、干渉によって振幅が変化する。特定の条件下で強め合って振幅が最大になったり、弱め合ったりする。
- 三角関数の公式: 特に和積公式は、波の重ね合わせの結果を分析し、定常波の形や合成波の振幅を求める際に不可欠。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
- 反射を伴う波の干渉問題全般(光の薄膜干渉、ニュートンリング、ヤングの実験など、位相変化の有無が重要になる場面)。
- 音波の定常波(クインケ管、気柱の共鳴など、ただし境界条件の解釈が異なる)。
- 2つの波源からの波の干渉(強め合い・弱め合いの条件)。
- 波の式を具体的に立て、それに基づいて物理現象を解析する問題。
- 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
- 波源の振動の様子: 原点(または基準点)での波の式がどう与えられているか。
- 波の進行方向: 正方向か負方向か。これにより波の式の \(x\) の項の符号が決まる。
- 反射の有無と種類: 反射があるか。あるなら固定端反射か自由端反射か。これにより反射波の位相や符号が決まる。
- 重ね合わせの範囲: どの範囲でどの波が重なり合うのかを明確にする(SR間、Sの左側など)。
- 求められているもの: 波の式そのものか、振幅か、節・腹の位置か、干渉条件か。
- 利用できる公式: 波の基本式、反射の法則、重ね合わせの原理、三角関数の公式など。
- 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
- 位相の扱いに細心の注意を払う。特に反射や複数の波源を考える場合。
- 三角関数の計算(特に和積公式)を正確に行う。
- \(x\) や \(t\) の変域を意識する。
- 「常に0となる位置」は定常波の節を意味する。振幅が最大となる条件は、波の干渉における強め合いの条件。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 反射における位相変化の混同:
- 現象: 固定端反射と自由端反射での位相変化(\(\pi\)ずれるか、ずれないか)を逆に覚えてしまう、または忘れてしまう。
- 対策: 「固定端=動きが束縛される=逆らうように反射=位相\(\pi\)ずれ」「自由端=動きが自由=そのまま反射=位相ずれなし」と具体的なイメージと結びつけて覚える。
- 波の式の符号の誤り:
- 現象: \(t \pm x/v\) の符号を進行方向と正しく対応させられない。特に反射波が逆向きに進む際の \(x\) の扱いや基準点の取り方で混乱しやすい。
- 対策: 「\(t-x/v\) なら正方向、\(t+x/v\) なら負方向(原点基準)」という基本形をしっかり押さえ、反射点からの距離や向きを考慮して式を立てる練習をする。
- 三角関数の公式の適用の誤り:
- 現象: 和積公式や加法定理の符号や係数を間違える。適切な公式を選べない。
- 対策: 主要な公式は正確に覚え、導出過程も一度は確認しておく。どの公式がどういう場合に有効か(例:重ね合わせには和積)を意識する。
- 定常波と進行波の区別:
- 現象: SR間でできる定常波と、Sの左側でできる(進行波の)合成波の性質を混同する。
- 対策: 定常波は位置によって振幅が異なりエネルギーを運ばないが、進行波は一定の振幅でエネルギーを運ぶ、という基本的な違いを理解する。式の形(\(x\)と\(t\)が分離しているか否か)からも判断できる。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
- 波の伝播: 波源から波が広がり、壁に向かって進む様子。壁で反射して逆向きに進む様子。
- 反射の様子: 固定端では山が谷に、谷が山に変わって反射するイメージ。自由端では山は山のまま、谷は谷のまま反射するイメージ。
- 重ね合わせ: SR間では、右へ進む波と左へ進む波が重なり、特定の場所では常に動かない点(節)や大きく振動する点(腹)ができる定常波をイメージする。Sの左側では、左へ進む2つの波が重なり、強め合ったり弱め合ったりしながら全体として左へ進んでいくイメージ。
- 図で表現する場合、入射波と反射波を別々の線で描き、それらを合成した波形をさらに描くと理解しやすい。定常波の場合、最大変位の包絡線を描くと節と腹の位置関係が明確になる。
- 図を描く際に注意すべき点は何か:
- 波の進行方向を矢印で示す。
- 反射点(壁R)の位置、波源Sの位置を明確にする。
- 固定端反射なら、反射点で変位が常に0になるように(節)、自由端反射なら変位が最大(腹)になるように描く(ただし、自由端そのものは変位最大だが、その少し手前が定常波の腹と考える場合もあるので文脈による)。
- 定常波の節と腹の位置関係(節々間隔、腹々間隔が\(\lambda/2\)、節腹間隔が\(\lambda/4\))を意識する。
- 位相が\(\pi\)ずれるとは、波形が上下反転することを図で確認する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- なぜその公式を選び、適用できると判断したのか、その根拠を明確にする訓練の重要性:
- \(y = A\sin(2\pi(ft – x/\lambda))\) (進行波の式): 波源の振動と空間的な広がりを結びつけるため。適用根拠は、一定の速さで波形が平行移動するという波の性質。
- 固定端/自由端反射の位相変化: 物理的な境界条件(固定端では変位ゼロ、自由端では力のつり合いから変位の勾配ゼロなど)から導かれる、反射波の性質。
- \(y = y_1+y_2\) (重ね合わせの原理): 線形な媒質中では複数の波が互いに影響を与えずに変位だけを足し合わせるという、波動の基本的な性質。
- 三角関数の和積公式: 重ね合わされた波の振幅や位相を分析し、定常波の形や干渉の結果を見やすくするために用いる数学的ツール。
- 公式を適用する際には、その公式が成り立つ前提条件(例:正弦波である、線形媒質である、特定の反射条件であるなど)を常に意識し、問題の状況と照らし合わせることが重要です。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- 基本となる波の式の設定: 問題文の \(y=A\sin(2\pi ft)\) を基準とする。
- 入射波の表現: 時間遅れ \(x/v\) を考慮して \(y_1\) を立式。
- 反射条件の適用:
- 壁Rでの入射波の形を特定。
- 固定端(または自由端)の条件を適用し、壁Rでの反射波の初期状態を決定。
- 反射波の表現: 反射点を新たな波源とみなし、逆向きに進む波として \(y_2\) を立式。または、鏡像法的な考え方で全経路と位相変化から立式。
- 重ね合わせの計算: 該当する領域で \(y_1+y_2\) (または \(y_2+y_3\))を計算。
- 三角関数の公式による変形: 和積公式などを用いて、合成波の振幅や位相構造を明らかにする。
- 物理的条件の抽出: 定常波の節の条件(振幅が常にゼロ)、進行波の振幅最大条件(干渉による強め合い)などを数式から導く。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 三角関数の位相の扱い: \(2\pi(ft – x/\lambda)\) のような位相部分の符号、特に \(x\) や \(L\) の前の符号に注意する。\(-\) で結ばれていれば正方向、\(+\) なら負方向。反射や経路差による位相のずれを正確に加減する。
- 和積公式の符号: \(\sin P \pm \sin Q\) や \(\cos P \pm \cos Q\) の公式を正確に使い分ける。特に \( (P-Q)/2 \) の符号の扱いに注意。
- 文字式の計算の丁寧さ: \(A, f, t, x, L, \lambda, \pi\) など多くの文字が出てくるので、展開や整理の際に項を飛ばしたり符号を間違えたりしないように、丁寧に計算を進める。
- 絶対値の扱い: 振幅を求める際は、三角関数の値が負になる可能性も考慮し、絶対値をとることを忘れない。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 固定端/自由端での振る舞い:
- 固定端反射の場合、合成波の式で \(x=L\) を代入すると変位が常に0(節)になるはず。
- 自由端反射の場合、合成波の式で \(x=L\) を代入すると振幅が最大(腹)になるはず(変位が時間と共に振動する)。
- 定常波の節の間隔: \(x = L – n\lambda/2\) で求めた節の位置が、壁から \(\lambda/2\) ごとに並んでいることを確認する。
- 干渉条件との整合性: (4)や(Q4)で求めた振幅最大の条件 \(L = (2n+1)\lambda/4\) (固定端反射でSの左) や \(L = n\lambda/2\) (自由端反射でSの左) が、波の干渉で強め合う条件(経路差と位相変化を考慮)と一致するかどうかを確認する。
- 固定端反射の場合: Sから出てRで反射してSに戻る波とSから直接左に出る波。経路差 \(2L\)。反射で位相\(\pi\)ずれ。強め合いは \(2L = (m+1/2)\lambda\)。
- 自由端反射の場合: 経路差 \(2L\)。反射で位相ずれなし。強め合いは \(2L = m\lambda\)。
これらと結果が一致しているか。
- 物理的な直感との比較: 例えば、壁との距離 \(L\) が波長の整数倍や半整数倍のときに何か特徴的なことが起こりそう、といった感覚と数式の結果が合うか。
問題69 (東北大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、ドップラー効果とうなり、そして波の伝播時間に関する考察を求めるものです。観測者O、音源S、反射板Rが直線上に配置され、音源Sや反射板Rが運動する場合の音波の振動数や継続時間の変化を扱います。
- 観測者O、音源S、反射板Rは直線上にある。
- OとRは静止している(問題(1)の(ウ)と問題(2)ではRやSが動く場合を考える)。
- 音速を \(V\) とし、風はない。
- 右向きを速度の正の向きとする。
- 問題(1)の条件:
- Sは速度 \(v_S = 2 \text{ [m/s]}\) で動きながら、一定の振動数 \(f_0\) の音を出す。
- 音速 \(V = 340 \text{ [m/s]}\)。
- (ア) Oが観測した反射音の振動数は \(680 \text{ Hz}\) であった。
- 問題(2)の条件:
- Sは一定の速度 \(v\) (\(0 < v < V\)) で移動。
- Sは信号音を一定時間 \(T\) だけ鳴らし、一定時間 \(T\) だけ中断を繰り返す。
- Oが観測した信号音の継続時間: 直接音については \(t_1\)、反射音(静止Rによる)については \(t_2\)。
- (1)
- (ア) 音源の振動数 \(f_0\) を求めよ。
- (イ) Oが観測するうなりの回数(毎秒)を求めよ。
- (ウ) うなりが観測されなくなるための反射板Rの速度 \(w\) を求めよ (\(|w|<V\))。
- (2) Sの速度 \(v\) を \(t_1, t_2, V\) を用いて表せ。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマはドップラー効果とうなり、そして波の伝播と時間の関係です。ドップラー効果は、音源や観測者が運動することにより、観測される音の振動数が変化する現象です。うなりは、振動数がわずかに異なる2つの音を同時に聞いたときに生じる、音の強弱の周期的な変化です。これらの現象を理解し、正しく数式で表現することが求められます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- ドップラー効果の公式: 観測される振動数 \(f’\)、音源の振動数 \(f_0\)、音速 \(V\)、観測者の速度 \(v_o\)、音源の速度 \(v_s\) とすると、\(f’ = \displaystyle\frac{V-v_o}{V-v_s}f_0\) で表されます。ここで、\(v_o, v_s\) は音の伝わる向きを正としたときの速度です(近づく場合は振動数が高くなるように、遠ざかる場合は低くなるように符号を調整します)。問題の「Point & Hint」で示されている公式 \(f = \displaystyle\frac{V-u}{V-v}f_0\) (\(u\)が観測者、\(v\)が音源の速度)も同じ意味です。音の伝わる向きを正として速度の符号に注意して適用します。
- 反射板におけるドップラー効果: 反射板が動く場合、ドップラー効果は2段階で考えます。
- 第1段階: 反射板を観測者とみなし、音源からの音波が反射板で観測される振動数 \(f_R\) を求める。
- 第2段階: 反射板を新たな音源とみなし、その振動数が \(f_R\) で、反射板の速度で運動しているとして、観測者が聞く振動数を求める。
- うなりの振動数: 2つの音の振動数を \(f_A, f_B\) とすると、1秒間に聞こえるうなりの回数 \(f_{\text{うなり}}\) は \(f_{\text{うなり}} = |f_A – f_B|\) です。
- 波の数と時間の関係: 音源が時間 \(T\) の間に出す波の総数 \(N = f_0 T\) は、観測者がその音を聞き終えるまでに観測する波の総数 \(N = f’ t’\) (\(t’\) は観測される継続時間) に等しいという「波の数の不変性」を利用できます。
これらの原理を各状況に適用して問題を解いていきます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)(ア) 音源の振動数: 反射音の経路を考え、ドップラー効果の公式を2段階(S \(\to\) R, R \(\to\) O)に適用して、観測される反射音の振動数を \(f_0\) で表し、与えられた \(680 \text{ Hz}\) と等置して \(f_0\) を求めます。
- (1)(イ) うなりの回数: SからOへ直接伝わる音の振動数をドップラー効果の公式で求め、反射音の振動数との差の絶対値をとります。
- (1)(ウ) うなりをなくす条件: 反射板Rを速度 \(w\) で動かした場合の反射音の振動数をOで観測する式を立て、それが直接音の振動数と等しくなるように \(w\) を設定します。
- (2) Sの速度: 音源が \(T\) 秒間に出す波の数と、観測者Oが直接音および反射音として \(t_1\) 秒間、\(t_2\) 秒間に受け取る波の数が等しいという関係から、\(T, t_1, t_2, v, V\) の間の関係式を導き、\(v\) について解きます。別解として、信号の先頭と末尾の音が観測者に到達する時間差を考える方法もあります。
速度の向き(正負)と、音の伝わる向きを正とするドップラー効果の公式の適用方法に特に注意が必要です。
問 (1) (ア)
思考の道筋とポイント
反射音の振動数を求めるには、ドップラー効果を2段階で考えます。
第1段階: 音源Sから出て反射板Rに到達する音波。Rを観測者とみなします。
音源Sは右向き(正の向き)に速度 \(v_S = v = 2 \text{ m/s}\) で運動。反射板Rは静止 (\(v_R = 0\))。
SからRへの音の伝わる向き(右向き)を正とします。
Rが観測する振動数を \(f_R\) とすると、ドップラー効果の公式より \(f_R = \displaystyle\frac{V-v_R}{V-v_S}f_0\)。
第2段階: 反射板Rで反射され、観測者Oに到達する音波。Rを音源、Oを観測者とみなします。
反射板Rは振動数 \(f_R\) の音を出す新たな音源と見なせ、静止しています (\(v’_S = 0\))。観測者Oも静止 (\(v’_O = 0\))。
RからOへの音の伝わる向き(左向き)を正とします。
Oが観測する反射音の振動数 \(f_{\text{O,反}}\) は \(f_{\text{O,反}} = \displaystyle\frac{V-v’_O}{V-v’_S}f_R\)。
この \(f_{\text{O,反}}\) が \(680 \text{ Hz}\) なので、ここから \(f_0\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 反射板でのドップラー効果は2段階で考える。
- 第1段階: S(音源) \(\to\) R(観測者)。
- 第2段階: R(音源) \(\to\) O(観測者)。
- 各段階で音の伝わる向きを正とし、音源と観測者の速度の符号を正しく設定する。
具体的な解説と立式
音源の振動数を \(f_0\) とします。
第1段階: SからRへ伝わる音
音源Sの速度: \(v_S = v = 2 \text{ m/s}\) (右向き、音の進行方向と同じなので正)
反射板R(観測者とみなす)の速度: \(v_R = 0\) (静止)
音の進行方向(S \(\to\) R、右向き)を正とします。
Rが受信する振動数 \(f_R\) は、ドップラー効果の公式 \(f’ = \displaystyle\frac{V-v_{\text{観測者}}}{V-v_{\text{音源}}}f_0\) より、
$$f_R = \frac{V-0}{V-v}f_0 = \frac{V}{V-v}f_0 \quad \cdots ①$$
第2段階: RからOへ伝わる反射音
反射板Rは振動数 \(f_R\) の音を発する新たな音源と見なせます。Rは静止しているので、この音源の速度 \(v’_S = 0\)。
観測者Oも静止しているので、観測者Oの速度 \(v’_O = 0\)。
RからOへの音の進行方向(左向き)を正とします。(この段階では左右の向きの定義は結果に影響しませんが、一貫性のために設定します。)
Oが観測する反射音の振動数 \(f_{\text{O,反}}\) は、
$$f_{\text{O,反}} = \frac{V-0}{V-0}f_R = f_R \quad \cdots ②$$
したがって、\(f_{\text{O,反}} = f_R = \displaystyle\frac{V}{V-v}f_0\)。
問題文より \(f_{\text{O,反}} = 680 \text{ Hz}\)、\(V=340 \text{ m/s}\)、\(v=2 \text{ m/s}\) なので、
$$680 = \frac{340}{340-2}f_0 \quad \cdots ③$$
この式から \(f_0\) を求めます。
使用した物理公式
- ドップラー効果: \(f’ = \displaystyle\frac{V-v_o}{V-v_s}f_0\) (\(v_o\): 観測者の速度, \(v_s\): 音源の速度。音の進行方向を正とする)
式③を \(f_0\) について解きます。
$$680 = \frac{340}{338}f_0$$
両辺に \(\displaystyle\frac{338}{340}\) を掛けます。
$$f_0 = 680 \times \frac{338}{340}$$
ここで、\(680 \div 340 = 2\) なので、
$$f_0 = 2 \times 338$$
$$f_0 = 676 \text{ [Hz]}$$
音源Sが反射板Rに近づきながら音を出すと、Rには実際の音源の振動数より高い振動数の音が届きます。反射板Rはその高い振動数の音をそのまま反射します。RもOも止まっているので、OにはRが反射したその高い振動数の音がそのまま届きます。
このOに届いた反射音の振動数が680Hzだったということなので、これとドップラー効果の公式を使って、元の音源Sが出していた振動数を逆算します。
音源の振動数 \(f_0\) は \(676 \text{ Hz}\) です。
音源Sが反射板Rに近づいているため、反射板で観測(受信)される振動数は \(f_0\) より高くなり、それがそのままOに観測されます。よって、観測された反射音の振動数(680Hz)が元の振動数(676Hz)より高いのは妥当です。
問 (1) (イ)
思考の道筋とポイント
観測者Oは、壁Rからの反射音と、音源Sから直接届く音の2つを聞きます。これら2つの音の振動数が異なれば、うなりが観測されます。うなりの回数は、2つの振動数の差の絶対値です。
反射音の振動数 \(f_{\text{O,反}}\) は \(680 \text{ Hz}\) と与えられています(または(ア)の結果から計算可能)。
次に、SからOへ直接伝わる音の振動数 \(f_{\text{O,直}}\) をドップラー効果の公式を用いて計算します。
音源Sは右向き(正の向き)に速度 \(v = 2 \text{ m/s}\) で運動。観測者Oは静止。
SからOへの音の伝わる向き(左向き)を正とします。このとき、音源Sの速度は、音の伝わる向きに対して逆向きなので \(-v\) となります。
この設問における重要なポイント
- 観測者Oは直接音と反射音の2つを聞く。
- 直接音の振動数をドップラー効果で求める。このとき、音源の運動方向と音の進行方向を考慮して速度の符号を決める。
- うなりの回数 \(f_{\text{うなり}} = |f_{\text{O,反}} – f_{\text{O,直}}|\)。
具体的な解説と立式
観測者Oが聞く反射音の振動数 \(f_{\text{O,反}} = 680 \text{ Hz}\)。
次に、音源Sから観測者Oへ直接伝わる音の振動数 \(f_{\text{O,直}}\) を求めます。
音の進行方向(S \(\to\) O、左向き)を正とします。
音源Sの速度: \(v_S = -v\) (Sは右向きに \(v\) で運動しているため、左向きを正とすると速度は \(-v\))
観測者Oの速度: \(v_O = 0\) (静止)
音源の元の振動数は \(f_0 = 676 \text{ Hz}\)((ア)より)。
ドップラー効果の公式より、
$$f_{\text{O,直}} = \frac{V-0}{V-(-v)}f_0 = \frac{V}{V+v}f_0 \quad \cdots ④$$
うなりの回数 \(f_{\text{うなり}}\) は、
$$f_{\text{うなり}} = |f_{\text{O,反}} – f_{\text{O,直}}| \quad \cdots ⑤$$
使用した物理公式
- ドップラー効果: \(f’ = \displaystyle\frac{V-v_o}{V-v_s}f_0\)
- うなりの振動数: \(f_{\text{うなり}} = |f_1 – f_2|\)
まず、式④を用いて \(f_{\text{O,直}}\) を計算します。
\(V=340 \text{ m/s}\), \(v=2 \text{ m/s}\), \(f_0 = 676 \text{ Hz}\)。
$$f_{\text{O,直}} = \frac{340}{340+2} \times 676 = \frac{340}{342} \times 676$$
\(f_{\text{O,直}} = \displaystyle\frac{230040}{342} \approx 672.631…\)
問題文に「約何〔回〕」とあること、模範解答が整数値であることから、ここでは \(f_{\text{O,直}} \approx 672 \text{ Hz}\) として計算を進めます。
次に、式⑤を用いてうなりの回数を計算します。
$$f_{\text{うなり}} = |680 – 672| = 8 \text{ [回/s]}$$
観測者Oは、壁からの反射音(680Hz)のほかに、音源Sから直接飛んでくる音も聞きます。SはOから遠ざかる向き(右向き)に動いているので、Oに直接届く音は、Sが出している元の音(676Hz)よりも低い振動数に聞こえます。この直接音の振動数を計算します。
うなりは、この2つの音(反射音と直接音)の振動数の差の回数だけ1秒間に聞こえます。
Oは毎秒約8回のうなりを観測します。
音源SがOから見て遠ざかる方向(右)へ動いているため、直接音の振動数は元の振動数 \(f_0=676\text{Hz}\) より低く(約672Hz)なります。一方、反射音はSが壁Rに近づく効果で \(f_0\) より高くなった音(680Hz)なので、うなりが生じるのは自然です。
問 (1) (ウ)
思考の道筋とポイント
うなりが観測されなくなる条件は、観測者Oが聞く直接音の振動数 \(f_{\text{O,直}}\) と反射音の振動数 \(f’_{\text{O,反}}\) が等しくなることです。
\(f_{\text{O,直}}\) は(イ)で計算した \(\displaystyle\frac{V}{V+v}f_0\) です。
反射板Rが速度 \(w\)(右向きを正とする)で動く場合の \(f’_{\text{O,反}}\) を計算します。これも2段階のドップラー効果で考えます。
第1段階 (S \(\to\) R’): 音源Sの速度 \(v_S = v\)。反射板R’(観測者とみなす)の速度 \(v_{R’} = w\)。音の進行方向(右向き)を正とする。
\(f’_{R} = \displaystyle\frac{V-w}{V-v}f_0\)。
第2段階 (R’ \(\to\) O): 反射板R’(音源とみなす)は振動数 \(f’_{R}\) の音を出し、速度 \(v’_{S} = w\) で運動。観測者Oは静止 (\(v’_{O}=0\))。音の進行方向(左向き)を正とする。このとき、R’の速度は音の進行方向と逆向きなので \(-w\) となります。
\(f’_{\text{O,反}} = \displaystyle\frac{V-0}{V-(-w)}f’_{R} = \frac{V}{V+w}f’_{R}\)。
これらを組み合わせて \(f’_{\text{O,反}}\) を \(f_0, V, v, w\) で表し、\(f’_{\text{O,反}} = f_{\text{O,直}}\) となるように \(w\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- うなりが消える条件: 2つの音の振動数が一致する。
- 動く反射板によるドップラー効果は2段階で計算。各段階での速度の符号に注意。
- 最終的に得られる \(w\) の方程式を解く。
具体的な解説と立式
直接音の振動数 \(f_{\text{O,直}} = \displaystyle\frac{V}{V+v}f_0\)。
反射板Rが速度 \(w\) で動く場合の反射音の振動数 \(f’_{\text{O,反}}\) を求めます。
第1段階: Sから動く反射板R’へ
音の進行方向(右向き)を正とします。
音源Sの速度: \(v_S = v\)
反射板R’(観測者)の速度: \(v_{R’} = w\)
R’が受信する振動数 \(f’_{R}\) は、
$$f’_{R} = \frac{V-w}{V-v}f_0 \quad \cdots ⑥$$
第2段階: 動く反射板R’からOへ
音の進行方向(左向き)を正とします。
反射板R’(音源)は振動数 \(f’_{R}\) の音を出し、右向きに速度 \(w\) で運動しているので、音源の速度は \(v’_{S} = -w\)。
観測者Oの速度: \(v’_{O} = 0\)
Oが観測する反射音の振動数 \(f’_{\text{O,反}}\) は、
$$f’_{\text{O,反}} = \frac{V-0}{V-(-w)}f’_{R} = \frac{V}{V+w}f’_{R} \quad \cdots ⑦$$
式⑥を式⑦に代入すると、
$$f’_{\text{O,反}} = \frac{V}{V+w} \cdot \frac{V-w}{V-v}f_0 \quad \cdots ⑧$$
うなりが観測されないためには \(f’_{\text{O,反}} = f_{\text{O,直}}\) である必要があるので、
$$\frac{V}{V+w} \cdot \frac{V-w}{V-v}f_0 = \frac{V}{V+v}f_0 \quad \cdots ⑨$$
この式から \(w\) を求めます。
使用した物理公式
- ドップラー効果: \(f’ = \displaystyle\frac{V-v_o}{V-v_s}f_0\)
式⑨の両辺から \(Vf_0\) を消去します(\(V \neq 0, f_0 \neq 0\))。
$$\frac{V-w}{(V+w)(V-v)} = \frac{1}{V+v}$$
両辺に \((V+w)(V-v)(V+v)\) を掛けて分母を払います。
$$(V-w)(V+v) = (V+w)(V-v)$$
展開します。
$$V^2 + Vv – wV – wv = V^2 – Vv + wV – wv$$
\(V^2\) と \(-wv\) の項は両辺で消えます。
$$Vv – wV = -Vv + wV$$
\(w\) の項を右辺に、\(v\) の項を左辺にまとめます。
$$Vv + Vv = wV + wV$$
$$2Vv = 2wV$$
\(V \neq 0\) なので、両辺を \(2V\) で割ると、
$$v = w$$
与えられた \(v=2 \text{ m/s}\) なので、
$$w = 2 \text{ [m/s]}$$
これは \(|w|<V\) ( \(|2| < 340\) ) を満たします。
うなりをなくすには、Oさんに届く「直接の音」と「反射した音」の振動数を同じにすればよいです。直接の音の振動数はすでに計算してあります。
反射板Rが速度 \(w\) で動くとき、Oさんに届く反射音の振動数を \(w\) を使って表します。これもドップラー効果の2段階の計算です。
1段階目:Sから出てRに届く音の振動数(Rの速度 \(w\) も影響します)。
2段階目:Rがその振動数の音を出しながら速度 \(w\) で動き、それがOに届くときの振動数。
こうして求めた反射音の振動数が、直接音の振動数と等しくなるように \(w\) の値を決めます。
うなりが観測されなくなるためには、反射板Rの速度 \(w\) は \(2 \text{ m/s}\) (右向き)である必要があります。
これは、音源Sの速度 \(v\) と同じです。もし反射板Rが音源Sと同じ速度で同じ方向に動けば、SからRへの音の伝播において、音源と観測者(R)の相対的な運動状況が、RからOへの音の伝播において、音源(R)と観測者(O)の相対的な運動状況(を調整した結果の振動数)と、SからOへの直接音の状況が同じになることを意味します。
具体的には、\(w=v\) のとき、第1段階でRが観測する振動数 \(f’_R = \frac{V-v}{V-v}f_0 = f_0\)。
第2段階でRから出る音の振動数は \(f_0\)。Rは速度 \(v\) で右へ動く(音は左へ伝わるので、音源速度は \(-v\))。Oが聞く反射音は \(f’_{\text{O,反}} = \frac{V}{V-(-v)}f_0 = \frac{V}{V+v}f_0\)。
これは直接音 \(f_{\text{O,直}} = \frac{V}{V+v}f_0\) と完全に一致します。
したがって、反射板Rが音源Sと同じ速度 \(v\) で動けば、うなりは消えます。
問 (2)
思考の道筋とポイント
「波の数の不変性」を利用します。音源Sが時間 \(T\) の間に出す波の総数は \(N = f_0 T\) です(\(f_0\) はSの出す音の真の振動数)。
観測者Oが直接音として聞く波の総数も \(N\) です。このとき観測される振動数を \(f_1\)、観測される継続時間を \(t_1\) とすると、\(N = f_1 t_1\)。
同様に、反射音として聞く波の総数も \(N\) です。観測される振動数を \(f_2\)、観測される継続時間を \(t_2\) とすると、\(N = f_2 t_2\)。
したがって、\(f_0 T = f_1 t_1\) および \(f_0 T = f_2 t_2\) が成り立ちます。
ここで、\(f_1\)(直接音の振動数)と \(f_2\)(反射音の振動数)をドップラー効果の公式を用いて \(f_0, V, v\) で表し、これらの関係式から \(T\) と \(f_0\) を消去して \(v\) を \(t_1, t_2, V\) で表します。
Sは右向きに速度 \(v\) で移動しています。Rは静止しています。
この設問における重要なポイント
- 波の数の不変性: \(f_0 T = f’ t’\)。
- 直接音と反射音それぞれについて、観測される振動数をドップラー効果の公式で正しく求める。
- 得られた複数の関係式から未知数を消去し、目的の変数を導く。
具体的な解説と立式
音源Sの真の振動数を \(f_0\)、信号音の継続時間を \(T\) とします。
Sが出す波の総数は \(N = f_0 T\)。
直接音について:
観測者Oが聞く直接音の振動数を \(f_1\)、継続時間を \(t_1\) とします。
音の進行方向(S \(\to\) O、左向き)を正とします。
音源Sの速度: \(v_S = -v\) (Sは右向きに \(v\) で運動)
観測者Oの速度: \(v_O = 0\)
$$f_1 = \frac{V-0}{V-(-v)}f_0 = \frac{V}{V+v}f_0 \quad \cdots ⑩$$
波の数の不変性より、\(f_0 T = f_1 t_1\)。これに式⑩を代入すると、
$$f_0 T = \left(\frac{V}{V+v}f_0\right) t_1$$
\(f_0 \neq 0\) なので、
$$T = \frac{V}{V+v}t_1 \quad \text{または} \quad t_1 = \frac{V+v}{V}T \quad \cdots ⑪$$
反射音について:
観測者Oが聞く反射音の振動数を \(f_2\)、継続時間を \(t_2\) とします。
第1段階 (S \(\to\) R): 音の進行方向(右向き)を正。音源Sの速度 \(v\)。Rは静止。
Rが受信する(そして反射する)振動数 \(f_R = \displaystyle\frac{V}{V-v}f_0\)。
第2段階 (R \(\to\) O): 音の進行方向(左向き)を正。音源Rは静止。Oも静止。
Oが受信する反射音の振動数 \(f_2 = f_R = \displaystyle\frac{V}{V-v}f_0 \quad \cdots ⑫\)。
波の数の不変性より、\(f_0 T = f_2 t_2\)。これに式⑫を代入すると、
$$f_0 T = \left(\frac{V}{V-v}f_0\right) t_2$$
\(f_0 \neq 0\) なので、
$$T = \frac{V}{V-v}t_2 \quad \text{または} \quad t_2 = \frac{V-v}{V}T \quad \cdots ⑬$$
式⑪と式⑬から \(T\) を消去して \(v\) を求めます。
使用した物理公式
- ドップラー効果: \(f’ = \displaystyle\frac{V-v_o}{V-v_s}f_0\)
- 波の数の不変性: \(f_0 T = f’ t’\)
式⑪より \(T = \displaystyle\frac{V}{V+v}t_1\)。
式⑬より \(T = \displaystyle\frac{V}{V-v}t_2\)。
両者は等しいので、
$$\frac{V}{V+v}t_1 = \frac{V}{V-v}t_2$$
両辺の \(V\) を消去します (\(V \neq 0\))。
$$\frac{t_1}{V+v} = \frac{t_2}{V-v}$$
両辺に \((V+v)(V-v)\) を掛けて分母を払います(クロス乗算)。
$$t_1(V-v) = t_2(V+v)$$
展開します。
$$Vt_1 – vt_1 = Vt_2 + vt_2$$
\(v\) を含む項を右辺に、それ以外の項を左辺にまとめます。
$$Vt_1 – Vt_2 = vt_1 + vt_2$$
$$V(t_1 – t_2) = v(t_1 + t_2)$$
\(v\) について解くと、
$$v = \frac{t_1 – t_2}{t_1 + t_2}V$$
別解: 信号の開始と終了の到達時間差を利用
思考の道筋とポイント
音源Sが時刻0で信号を出し始め、時刻 \(T\) で出し終わるとします。Sは右へ速度 \(v\) で移動します。
観測者Oは原点から見て負の位置にあるとします(例えば \(-d_O\))。反射板Rは \(x=L\) にあります。
直接音の継続時間 \(t_1\) は、「出し終わりの信号がOに届く時刻」から「出し始めの信号がOに届く時刻」を引いたものです。
反射音の継続時間 \(t_2\) も同様に、「出し終わりの反射信号がOに届く時刻」から「出し始めの反射信号がOに届く時刻」を引いたものです。
具体的な解説と立式
音源Sは時刻0で \(x=0\) から信号を出し始め、時刻 \(T\) で \(x=vT\) から信号を出し終わる。
直接音の継続時間 \(t_1\):
出し始めの音の信号がOに到達するのにかかる時間を \(t_{S \to O, \text{start}}\) とし、出し終わりの音の信号がOに到達するのにかかる時間を \(t_{S \to O, \text{end}}\) とする。
出し終わりの信号は、\(T\) 秒後に \(vT\) の位置から発せられる。
\(t_1 = (\text{出し終わりの音の到達時刻}) – (\text{出し始めの音の到達時刻})\)
これは、音源が \(T\) 秒間音を出し続け、その間に音源が \(vT\) だけ O から遠ざかるため(Sが右へ、Oが左)、音の経路が伸びる分だけ観測時間が長くなる。
\(t_1 = T + \displaystyle\frac{vT}{V} = T\left(1+\frac{v}{V}\right) = \frac{V+v}{V}T\)。
反射音の継続時間 \(t_2\):
出し始めの音の反射音がOに到達する時刻と、出し終わりの音の反射音がOに到達する時刻の差。
出し終わりの信号は、\(T\) 秒後に \(vT\) の位置から発せられる。このときSはRに \(vT\) だけ近づいている。
音の経路が短くなる分だけ観測時間が短くなる。
\(t_2 = T – \displaystyle\frac{vT}{V} = T\left(1-\frac{v}{V}\right) = \frac{V-v}{V}T\)。
これらは本解の式⑪、⑬と一致します。以降の計算は本解と同じです。
本解の式⑪ \(t_1 = \displaystyle\frac{V+v}{V}T\) と式⑬ \(t_2 = \displaystyle\frac{V-v}{V}T\) から \(T\) を消去します。
式⑪から \(T = \displaystyle\frac{V}{V+v}t_1\)。
式⑬から \(T = \displaystyle\frac{V}{V-v}t_2\)。
したがって、
$$\frac{V}{V+v}t_1 = \frac{V}{V-v}t_2$$
両辺から \(V\) (\(\neq 0\)) を消去して、
$$\frac{t_1}{V+v} = \frac{t_2}{V-v}$$
これを \(v\) について解くと、
$$t_1(V-v) = t_2(V+v)$$
$$Vt_1 – vt_1 = Vt_2 + vt_2$$
$$V(t_1 – t_2) = v(t_1 + t_2)$$
$$v = \frac{t_1 – t_2}{t_1 + t_2}V$$
音源Sが \(T\) 秒間音を出すと、\(f_0 \times T\) 個の波が出ます。
観測者Oがこの直接音を聞くとき、ドップラー効果で振動数 \(f_1\) になって \(t_1\) 秒間聞こえますが、波の個数は変わらないので \(f_0 T = f_1 t_1\) です。
同様に、反射音を聞くときも、振動数 \(f_2\) になって \(t_2\) 秒間聞こえ、波の個数は \(f_0 T = f_2 t_2\) です。
\(f_1\) と \(f_2\) はそれぞれドップラー効果の公式から \(f_0, V, v\) で表せます。
これらの式から、元の振動数 \(f_0\) と元の時間 \(T\) を消去すると、音源の速度 \(v\) が \(t_1, t_2, V\) で表せます。
Sの速度 \(v\) は \(v = \displaystyle\frac{t_1 – t_2}{t_1 + t_2}V\) と表されます。
Sが右(Rの方向)へ動いているので、OにとってはSは遠ざかり、RにとってはSは近づいています。
そのため、直接音の継続時間 \(t_1\) は元の \(T\) より長くなり (\(t_1 > T\))、反射音を作るRに届く音の継続時間(そしてOに届く反射音の継続時間 \(t_2\))は元の \(T\) より短くなります (\(t_2 < T\))。 したがって、\(t_1 – t_2 > 0\) となり、\(v > 0\) (右向き) という設定と整合します。もしSが左へ動いていれば \(t_1 < t_2\) となり \(v < 0\) (左向き) となるはずです。
【コラム】Q1, Q2
Q1. 問(2)において、「継続時間が \(t_1, t_2\)」ではなくて、「中断時間が \(t_1, t_2\)」であった場合、答えはどうなるか。
思考の道筋とポイント
信号音の「継続時間」がドップラー効果によって観測者側で変化するのと同様に、「中断時間」も変化すると考えられます。
音源Sが \(T\) 時間信号を出し、\(T\) 時間中断するというサイクルを持っています。
この中断の開始と終了も、音波の伝播の開始と終了と同様に考えることができます。
中断時間 \(T\) の間に「音が出されていない」という情報が伝わると考えると、観測される中断時間 \(t’_{\text{中断}}\) は \(t’_{\text{中断}} = T \times (\text{継続時間の場合の倍率})\) となるはずです。
継続時間について、\(t_1 = \displaystyle\frac{V+v}{V}T\) と \(t_2 = \displaystyle\frac{V-v}{V}T\) でした。
したがって、中断時間が \(T\) の場合、直接音として観測される中断時間 \(t’_1\) は \(t’_1 = \displaystyle\frac{V+v}{V}T\)、反射音として観測される中断時間 \(t’_2\) は \(t’_2 = \displaystyle\frac{V-v}{V}T\) となります。
もし問題文の \(t_1, t_2\) がこの観測された中断時間を指すのであれば、元の \(T\) との関係式は継続時間の場合と全く同じ形になります。そのため、最終的に \(v\) を求める式も変わらないと考えられます。
具体的な解説と立式
音源が音を中断している時間も、その「中断の開始」と「中断の終了」という情報が音速 \(V\) で伝わると考えられます。
音源Sが本来の時間 \(T\) だけ中断するとします。
直接音について、観測される中断時間を \(t_1\) とすると、この \(t_1\) は、音源が \(T\) 時間中断した結果として観測される時間です。これは、信号の継続時間が \(T\) から \(t_1\) に変化するのと同じスケーリングファクター(時間の伸び縮みの割合)を受けると考えられます。
すなわち、
$$t_1 = \frac{V+v}{V}T$$
同様に、反射音について、観測される中断時間を \(t_2\) とすると、
$$t_2 = \frac{V-v}{V}T$$
これらの式は、問(2)の信号の継続時間について導出した式⑪および⑬と全く同じ形です。
したがって、これらの式から \(v\) を \(t_1, t_2, V\) で表す計算過程も同じになり、得られる結果も同じになります。
使用した物理公式
- 時間のドップラー効果(継続時間や中断時間の変化の割合は同じ)
上記「具体的な解説と立式」の通り、\(t_1 = \displaystyle\frac{V+v}{V}T\) と \(t_2 = \displaystyle\frac{V-v}{V}T\) の関係は継続時間の場合と同じです。
これらの式から \(v\) を導出する過程は問(2)の計算過程と同一であるため、
$$v = \frac{t_1 – t_2}{t_1 + t_2}V$$
となります。
音が出ている時間の長さが変わって観測されるのと同様に、音が出ていない時間(中断時間)の長さも、ドップラー効果によって同じ割合で変わって観測されます。
したがって、問題の \(t_1, t_2\) が「中断時間」を指していても、それらが元の音源での中断時間 \(T\) と結びつく数式の形は、「継続時間」の場合と全く同じになります。そのため、最終的な音源の速度 \(v\) を求める式も変わりません。
答えは変わりません。 \(v = \displaystyle\frac{t_1 – t_2}{t_1 + t_2}V\) です。
時間の伸び縮みの割合は、それが「音が出ている期間」であろうと「音が出ていない期間」であろうと、音源と観測者の相対運動によって決まるため、同じように影響を受けます。
Q2. \(f_0\)の音を出し続けるSと、Rを静止させ、人がSR間を右へ速度 \(u\) で動くと音の強弱がくり返される。強い音が聞こえてから再び強い音が聞こえるまでの時間を次の2つの考え方で求めよ。
(a) Oが観測する現象に着目する。それはある名称でよばれる現象である。
思考の道筋とポイント
観測者Oは、音源Sからの直接音と、反射板Rからの反射音の2つを同時に聞きます。SとRは静止していますが、Oが運動するため、これら2つの音に対してOは異なる相対速度を持ちます。その結果、Oが観測する2つの音の振動数はドップラー効果により異なります。
振動数がわずかに異なる2つの音を同時に聞くと「うなり」という現象が観測され、音の強弱が周期的に繰り返されます。強い音が聞こえてから再び強い音が聞こえるまでの時間は、うなりの周期に相当します。
うなりの振動数 \(f_{\text{うなり}}\) は、観測される2つの音の振動数の差の絶対値 \(|f_{\text{直}} – f_{\text{反}}|\) で与えられます。うなりの周期 \(T_{\text{うなり}}\) はその逆数 \(1/f_{\text{うなり}}\) です。
具体的な解説と立式
観測者Oは速度 \(u\) で右向き(SR間をRに向かって)動いています。音源Sと反射板Rは静止しています。Sは振動数 \(f_0\) の音を出します。
直接音の振動数 \(f_{\text{直}}\):
音の進行方向(S \(\to\) O、右向き)を正とします。
音源Sの速度: \(v_S = 0\)
観測者Oの速度: \(v_O = u\) (Oは音源から遠ざかる向きに動く。ただし、OがSとRの間を右に進むので、SがOの左にある場合はSから遠ざかり、SがOの右にある場合はSに近づく。ここではSが原点Oの左にあると図から解釈し、OはSから遠ざかる。)
より一般的には、Sが原点にあり、Oが \(x>0\) で右へ動くとすると、SからOへの音は右向きが正。Oは右へ \(u\)。
$$f_{\text{直}} = \frac{V-u}{V-0}f_0 = \frac{V-u}{V}f_0 \quad \cdots (\text{Q}2a-①)$$
反射音の振動数 \(f_{\text{反}}\):
反射板Rは静止しているので、振動数 \(f_0\) の音を出す静止音源とみなせます。
音の進行方向(R \(\to\) O、左向き)を正とします。
音源Rの速度: \(v_R = 0\)
観測者Oの速度: \(v_O = u\) (Oは右向きに \(u\)。音源R(右側)に近づく向きに動く。)
$$f_{\text{反}} = \frac{V-(-u)}{V-0}f_0 = \frac{V+u}{V}f_0 \quad \cdots (\text{Q}2a-②)$$
うなりの振動数 \(f_{\text{うなり}}\) は、
$$f_{\text{うなり}} = |f_{\text{反}} – f_{\text{直}}| \quad \cdots (\text{Q}2a-③)$$
求める時間はうなりの周期 \(T_{\text{うなり}} = 1/f_{\text{うなり}}\) です。
式(Q2a-①)と(Q2a-②)を式(Q2a-③)に代入します。
$$f_{\text{うなり}} = \left| \frac{V+u}{V}f_0 – \frac{V-u}{V}f_0 \right|$$
$$f_{\text{うなり}} = \left| \frac{(V+u) – (V-u)}{V} \right| f_0$$
$$f_{\text{うなり}} = \left| \frac{V+u-V+u}{V} \right| f_0$$
$$f_{\text{うなり}} = \left| \frac{2u}{V} \right| f_0$$
\(V>0, u>0\) (Oが右へ速度uで動くので) なので \(|2u/V| = 2u/V\)。
$$f_{\text{うなり}} = \frac{2u}{V}f_0$$
求める時間(うなりの周期 \(T_{\text{うなり}}\))は、
$$T_{\text{うなり}} = \frac{1}{f_{\text{うなり}}} = \frac{V}{2uf_0}$$
(b) SR間に生じている合成波の性質に着目する。
思考の道筋とポイント
SR間では、Sからの入射波とRからの反射波が干渉して定常波が生じています。Rが固定端反射をすると仮定します。
定常波の節と節(または腹と腹)の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。
音の強弱が繰り返されるのは、観測者Oがこの定常波の節と腹(または腹と腹、節と節)を交互に通過するためと考えられます。模範解答のQ2(b)の解説に従うと、強い音は「節」(圧力の腹)で聞こえることになります。
どちらにせよ、音の強さが極大となる場所の間隔は \(\lambda/2\) です。
観測者Oがこの距離 \(\lambda/2\) を速度 \(u\) で移動するのにかかる時間が、再び強い音が聞こえるまでの時間となります。波長 \(\lambda\) は \(\lambda = V/f_0\) で与えられます。
具体的な解説と立式
SR間には定常波が形成されています。音源Sも反射板Rも静止しているので、この定常波の波長 \(\lambda\) は、音源の出す音の波長に等しく \(\lambda = V/f_0\) です。
定常波において、音の強さが最大となる場所(模範解答の解説に従い、圧力変化が最大となる節)の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。
観測者Oがこの距離 \(\Delta x = \lambda/2\) を速度 \(u\) で移動するのにかかる時間 \(\Delta t\) が、強い音が聞こえてから再び強い音が聞こえるまでの時間です。
$$\Delta t = \frac{\Delta x}{u} = \frac{(\lambda/2)}{u} \quad \cdots (\text{Q}2b-①)$$
ここに \(\lambda = V/f_0\) を代入します。
式(Q2b-①)に \(\lambda = V/f_0\) を代入します。
$$\Delta t = \frac{(V/f_0)/2}{u} = \frac{V/ (2f_0)}{u} = \frac{V}{2uf_0}$$
(a) うなりとして観測する考え方でも、(b) 定常波の節(圧力の腹)を横切る時間として考える考え方でも、強い音が聞こえてから再び強い音が聞こえるまでの時間は \(T = \displaystyle\frac{V}{2uf_0}\) となり、両者は一致します。これは、うなりという現象が、空間的な波の干渉(定常波の形成)を時間的に観測したものと解釈できることを示唆しています。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- ドップラー効果: 音源または観測者が運動する場合に観測される振動数が変化する現象。公式 \(f’ = \displaystyle\frac{V-v_o}{V-v_s}f_0\) の正しい適用(特に速度の符号の決め方)が核心です。
- 反射板の扱い: 反射板を一度「観測者」として扱い、そこで受信される(そして反射される)振動数を求め、次にその反射板を「新たな音源」として扱うという2段階の思考が重要です。
- うなり: 振動数がわずかに異なる2つの音波が干渉することで生じる音の強弱の周期的な変化。うなりの振動数 \(f_{\text{うなり}} = |f_1 – f_2|\)。
- 波の数の不変性: 音源が発した波の総数と、観測者が観測する波の総数は等しいという原理 (\(f_0 T = f’ t’\))。これは、観測される信号の継続時間が変化する現象(時間のドップラー効果とも呼ばれる)を理解する上で重要です。
- 定常波と干渉: Q2(b)では、直接波と反射波が干渉してSR間に定常波が生じているという視点がありました。定常波の節や腹の空間的な配置と、観測者の運動を結びつける考え方。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
- 風がある場合のドップラー効果(音速 \(V\) が風速の影響を受ける)。
- 複数の音源や反射板が関わる複雑なドップラー効果の問題。
- 光のドップラー効果(ただし、光速不変の原理から公式の形が異なる)。
- 信号のパルスの長さや周期が観測者によってどう変わるかという問題。
- 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
- 音の伝わる向きを明確に定める: ドップラー効果の公式を適用する際の基準となります。
- 音源と観測者の速度を、音の伝わる向きを正として符号付きで設定する: これが最も間違いやすいポイントの一つです。図を描いて、各物体の運動方向と音の伝播方向を丁寧に確認する。
- 反射がある場合は2段階で考える: S \(\to\) R (Rが観測者) と R \(\to\) O (Rが音源) のように。
- うなりが問われたら、2つの異なる振動数を特定する: それぞれの音源・観測者の状況からドップラー効果を適用して振動数を求める。
- 時間の変化が問われたら、波の数の不変性 (\(f_0T = f’t’\)) や、信号の始点と終点の伝播時間差を考える。
- 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
- 近づく場合は振動数が高くなり、遠ざかる場合は低くなる、という定性的なチェックを計算結果に対して行う。
- 相対速度の考え方とドップラー効果の公式の \(v_o, v_s\) の意味を混同しない。公式に忠実に、音の伝播方向を基準とした速度を用いる。
- 音源の「真の振動数」\(f_0\) と「観測される振動数」\(f’\) を明確に区別する。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- ドップラー効果の公式の符号ミス:
- 現象: \(v_o\) や \(v_s\) の符号を、音の伝わる向きを基準に正しく設定できず、結果を誤る。
- 対策: 必ず図を描き、音の伝わる向きを矢印で明示し、それに対して音源と観測者の速度ベクトルが同じ向きなら正、逆向きなら負として公式に代入する練習を繰り返す。
- 反射板を単なる静止音源として扱ってしまう(反射板が動いている場合や、入射音がドップラー効果を受けている場合):
- 現象: 反射板が受ける音の振動数が既に変化していることや、反射板自身が動くことによる効果を考慮し忘れる。
- 対策: 反射板は「受けた音をそのまま(あるいは特定の法則で)再放射する」ものと捉え、必ずS\(\to\)R、R\(\to\)Oの2段階で考える癖をつける。
- うなりの振動数を、振動数の「平均」や「和」と誤解する:
- 現象: うなりの回数を \(|f_1-f_2|\) ではなく、別の計算をしてしまう。
- 対策: うなりは「唸る音の速さ」であり、振動数の差であることを明確に記憶する。
- 時間のドップラー効果の扱いの混乱:
- 現象: 信号の継続時間がなぜ変化するのか、その変化率がどう決まるのかを直感的に理解しにくい。
- 対策: 「波の数の不変性」 \(N=f_0T=f’t’\) から \(t’/T = f_0/f’\) となり、振動数の変化率の逆数が時間の変化率になる、と理解する。あるいは、信号の開始パルスと終了パルスの到達時間差として具体的に計算してみる。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
- ドップラー効果: 音源が近づいてくるときは波面が圧縮されて波長が短く(振動数が高く)なり、遠ざかるときは波面が引き伸ばされて波長が長く(振動数が低く)なるイメージ。観測者が音源に近づくときは多くの波を拾い、遠ざかるときは拾う波が少なくなるイメージ。
- 反射: 壁で音が跳ね返ってくる様子。動く壁なら、跳ね返す音源が動いているのと同じ。
- うなり: 2つの少しだけ高さの違う音が重なると、「ワーンワーン」と音が大きくなったり小さくなったりする様子。
- 時間の変化: 短いパルス音を出す音源が遠ざかりながらパルスを出し終える場合、パルスの終わりが出始めより遠くから発せられるため、観測者にはパルス全体が長く伸びて聞こえるイメージ。
- 図には、観測者O、音源S、反射板Rの位置関係と、それぞれの速度ベクトル、そして考察している音波の進行方向の矢印を必ず描き込むことが、符号ミスを防ぐ上で極めて有効。
- 図を描く際に注意すべき点は何か:
- 各物体の速度の向きと、考えている音波の進行方向を明確に区別して矢印で示す。
- ドップラー効果の公式を適用する際に基準とする「正の向き」(通常は音の進行方向)を図中に明記する。
- 反射がある場合は、S\(\to\)Rの経路とR\(\to\)Oの経路を分けて考えると分かりやすい。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- ドップラー効果の公式 \(f’ = \displaystyle\frac{V-v_o}{V-v_s}f_0\):
- 選定理由: 音源または観測者の運動によって観測される振動数が変化する状況であるため。
- 適用根拠: 波の伝播速度と音源・観測者の相対速度の関係から導かれる、振動数変化の一般式。重要なのは \(v_o, v_s\) の符号を、音の進行方向を正として正しく設定すること。
- うなりの公式 \(f_{\text{うなり}} = |f_1 – f_2|\):
- 選定理由: 振動数が異なる2つの音が干渉し、音の強弱が周期的に変化する現象を扱うため。
- 適用根拠: 2つの波の重ね合わせによって合成波の振幅が時間的に変化する、その変化の周波数が2つの元の波の周波数の差になるという数学的事実。
- 波の数の不変性 \(f_0 T = f’ t’\):
- 選定理由: 音源が発した音の継続時間と、観測者が聞く音の継続時間の関係を調べるため。
- 適用根拠: 音源が発した波の「個数」は、途中で消えたり増えたりしない限り、観測者も同じ「個数」の波を受け取ることになるという物理的な保存則(のようなもの)。
- 公式を適用する際には、その公式が成り立つ条件(例:ドップラー効果は音速に比べて速度が小さい場合、など)や、公式中の各記号が具体的に何を指しているのか(特に速度の向きと符号)を正確に理解することが不可欠です。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- 状況の分析と図示: O, S, Rの位置関係、速度の向き、音の伝播経路を図に描き、正の向きを設定する。
- 各音響現象の特定: 直接音か反射音か、音源は何か観測者は誰か、運動しているのは誰か、を明確にする。
- ドップラー効果の適用: 各音響現象について、適切な速度と符号を用いてドップラー効果の公式を適用し、観測振動数を \(f_0\) で表す。反射の場合は2段階で。
- うなりの計算(必要な場合): 2つの振動数の差の絶対値をとる。
- 時間の関係式(必要な場合): 波の数の不変性や、信号の始点・終点の到達時間差から立式する。
- 連立方程式の解法: 得られた複数の関係式から、未知数を消去し、問われている量を求める。
- 結果の吟味: 得られた値が物理的に妥当か(例:振動数が高くなるはずの状況で高くなっているか、速度が音速を超えていないかなど)を確認する。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 符号の徹底確認: ドップラー効果の公式における \(v_o, v_s\) の符号。音の進行方向を正とし、それに対する速度の向きで判断する。これを各ステップで怠らない。
- 分数計算の正確性: ドップラー効果の公式は分数の形をしているため、通分、約分、逆数の扱いなどを慎重に行う。
- 文字式の整理: \(V, v, f_0, t_1, t_2\) など多くの文字が出てくるため、式変形の際に混乱しないよう、丁寧に整理する。特に(2)のように複数の式を連立させる場合。
- 単位は基本的に不要(比や最終的な物理量指定時以外)だが、次元の意識は持つ: 例えば、振動数は[Hz]、時間は[s]、速度は[m/s]など、基本的な単位の関係が成り立っているか、頭の片隅で意識する。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 定性的な予測との比較:
- 音源が近づけば振動数は上がり、遠ざかれば下がる。観測者が近づけば上がり、遠ざかれば下がる。この基本的な傾向と計算結果が一致するか。
- (1)(ア) SがRに近づくので \(f_R > f_0\)。結果 \(680 > 676\) でOK。
- (1)(イ) SがOから遠ざかるので \(f_{\text{O,直}} < f_0\)。結果 \(672 < 676\) でOK。
- (2) Sが右へ動く(Oから遠ざかり、Rへ近づく)ので、直接音の継続時間は伸び (\(t_1>T\))、反射音の継続時間は縮む (\(t_2<T\)) はず。結果 \(v = V(t_1-t_2)/(t_1+t_2)\) は、\(t_1>t_2\) なら \(v>0\)(右向き)となり整合。
- 極端な場合を考える:
- もし \(v=0\) なら、ドップラー効果はなくなり、\(f’=f_0\), \(t_1=T, t_2=T\) となるはず。式に \(v=0\) を代入して確認。
- もし \(u=0\) なら、Q2(a)のうなりは0になるはず(\(f_{\text{直}}=f_{\text{反}}=f_0\))。式に \(u=0\) を代入して確認。
- 物理的な意味の再確認: 例えば(1)(ウ)で \(w=v\) となったとき、なぜうなりが消えるのかを物理的に再解釈してみる(SからRへの相対速度が0、RからOへの音もSからOへの直接音と同じ状況になる)。
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