「名問の森」徹底解説(67〜69問):未来の得点力へ!完全マスター講座【力学・熱・波動Ⅰ】

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問題67 弦と気柱の共鳴

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、弦の基本振動と、その振動によって生じる音波が気柱(最初は水面の位置を変えられる閉管、後に開管)と共鳴する現象を扱っています。弦の振動と気柱の振動の連携、特に振動数が一致する点がポイントです。開口端補正も考慮に入れる必要があります。

与えられた条件
  • 弦: 線密度 \(\rho\) [kg/m], 長さ \(l\) [m], 張力 \(S\) [N]。中央をはじき基本振動。
  • 気柱: 管口Aの下に水を入れた管。
    • 1回目の共鳴: 水面Bの位置 (AB = \(d_1\) [m])
    • 2回目の共鳴: 水面Cの位置 (AC = \(d_2\) [m])
  • 開口端補正: 一定とする(値を \(x\) [m] とおく)。
  • 音速は明示されていないが、\(V\) [m/s] とおくことになる。
問われていること
  • (1) 弦を伝わる波の波長 \(\lambda_s\) と振動数 \(f\) を求めよ。
  • (2) 音波の波長 \(\lambda\) と音速 \(V\) を求めよ。また、開口端補正 \(x\) を求めよ。
  • (3) さらに水面を下げて3度目の共鳴が起こったとき、管内において空気の密度が激しく変化している所(節の位置)を管口からの距離で答えよ。
  • (4) 水面をさらに下げても共鳴せず管下端に達した後、水をなくし開管にすると共鳴した。管の全長を求めよ。
  • (5) 水面をCの位置に戻し、弦の張力を \(S\) [N] から徐々に増していくと、共鳴は止み、やがて再び共鳴した。このときの弦の張力 \(S’\) を求めよ。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 問(5)の別解1: 波長と共鳴条件から直接アプローチする解法
      • 主たる解法が、まず気柱の共鳴条件から新しい「振動数」を求め、それを弦の振動数と結びつけるのに対し、この別解では、まず気柱の共鳴条件から新しい「音波の波長」を求め、それを弦の振動条件(速さと波長の関係)に直接結びつけて張力を計算します。
    • 問(5)の別解2: 閉管の固有振動数の性質を利用する解法
      • 主たる解法や別解1が、共鳴条件をその都度立式するのに対し、この別解では「閉管の固有振動数は基本振動数の奇数倍である」という一般化された性質を直接利用し、3倍振動から5倍振動への変化として捉えることで、計算を簡略化します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理モデルの深化: 別解1は、「振動数の一致」という共鳴条件を、波の基本式を用いて「速さと波長の関係」に翻訳する良い訓練となり、物理法則の相互関係への理解が深まります。別解2は、個別の現象から一般法則(奇数倍振動)を適用する思考プロセスを学ぶ良い機会となります。
    • 思考の多角化: 同じ問題に対して、「振動数」を軸に考える方法、「波長」を軸に考える方法、そして「一般化された法則」を軸に考える方法という、3つの異なる視点を提供し、思考の柔軟性を養います。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは、弦の振動と気柱の共鳴の連携です。弦が振動すると音波が発生し、その音波が気柱内で定常波を形成して共鳴すると、特定の高さの音が大きく聞こえます。このとき、弦の振動数と気柱の固有振動数が一致していることが重要な条件となります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 弦の固有振動: 長さ \(l\) の弦が基本振動するとき、両端が節となり、弦の長さが半波長に等しくなります (\(l = \lambda_s/2\))。振動数 \(f\) は、弦を伝わる波の速さ \(v_s = \sqrt{S/\rho}\) と波長 \(\lambda_s\) から \(f = v_s/\lambda_s\) で求められます。
  2. 気柱の共鳴(閉管): 一端(水面)が節、他端(管口付近)が腹となる定常波。開口端補正 \(x\) を考慮すると、管口から \(x\) だけ外側に腹ができるとみなします。共鳴条件は、(管口から水面までの長さ \(d\)) \(+ x = (2m-1)\lambda/4\) (\(m=1, 2, 3, \ldots\))。
  3. 気柱の共鳴(開管): 両端(管口付近)が腹となる定常波。開口端補正 \(x\) を考慮すると、両管口から \(x\) だけ外側に腹ができるとみなします。実効的な管長 \(L’ = L+2x\) (\(L\)は管の実際の長さ)に対して、\(L’ = m\lambda/2\) (\(m=1, 2, 3, \ldots\))。
  4. 波の基本式: 音速 \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(V = f\lambda\) の関係があります。弦の波についても同様に \(v_s = f\lambda_s\)。
  5. 共鳴の条件: 弦の振動によって気柱が共鳴するとき、弦の振動数と気柱の固有振動数(音波の振動数)は一致します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) 弦の振動: まず、弦の基本振動の条件から、弦を伝わる波の波長 \(\lambda_s\) と振動数 \(f\) を、与えられた記号(\(l, S, \rho\))を用いて表します。
  2. (2) 気柱の共鳴(閉管): 弦の振動数 \(f\) が音波の振動数となります。1回目と2回目の共鳴の条件(水面の位置 \(d_1, d_2\))と開口端補正 \(x\) を用いて、音波の波長 \(\lambda\) と開口端補正 \(x\) を求めます。その後、音速 \(V = f\lambda\) を計算します。
  3. (3) 3度目の共鳴と密度変化: 閉管での3度目の共鳴位置を特定し、密度変化が最大となる場所(節)の位置を答えます。
  4. (4) 開管での共鳴: 水をなくした管が開管として共鳴する条件を考え、管の全長を求めます。
  5. (5) 張力変化による再共鳴: 水面をC (\(d_2\)) に戻し、弦の張力を \(S\) から \(S’\) に変えたときの再共鳴を考えます。気柱の条件は変わらないので、次に共鳴するときの固有振動数(5倍振動)を特定し、弦の振動数がこれに一致するように張力 \(S’\) を調整します。

問(1)

思考の道筋とポイント
弦は長さ \(l\) で基本振動をしています。弦の基本振動では、両端が節となり、中央に腹が1つできます。このとき、弦の長さ \(l\) は、弦を伝わる波の波長 \(\lambda_s\) の半分に相当します。
弦を伝わる波の速さ \(v_s\) は、張力 \(S\) と線密度 \(\rho\) を用いて \(v_s = \sqrt{S/\rho}\) と表されます。
振動数 \(f\) は、波の基本式 \(v_s = f\lambda_s\) から求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 弦の基本振動では、弦長 \(l = \lambda_s/2\)。
  • 弦を伝わる波の速さ \(v_s = \sqrt{S/\rho}\)。
  • 波の基本式 \(v_s = f\lambda_s\)。

具体的な解説と立式
弦の長さが \(l\) で基本振動しているので、弦には両端を節とする半波長分の定常波ができています。弦を伝わる波の波長を \(\lambda_s\) とすると、
$$
\begin{aligned}
l &= \frac{\lambda_s}{2} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
弦を伝わる波の速さ \(v_s\) は、張力 \(S\) と線密度 \(\rho\) を用いて、
$$
\begin{aligned}
v_s &= \sqrt{\frac{S}{\rho}} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
弦の基本振動数を \(f\) とすると、波の基本式より、
$$
\begin{aligned}
v_s &= f \lambda_s \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
式①から \(\lambda_s\) を求め、次に式②と③から \(f\) を求めます。

使用した物理公式

  • 弦の基本振動の波長: \(l = \lambda_s/2\)
  • 弦を伝わる波の速さ: \(v_s = \sqrt{S/\rho}\)
  • 波の基本式: \(v_s = f\lambda_s\)
計算過程

式①から、弦を伝わる波の波長 \(\lambda_s\) は、
$$
\begin{aligned}
\lambda_s &= 2l \, \text{[m]}
\end{aligned}
$$
次に、振動数 \(f\) を求めます。式③を変形して \(f = v_s/\lambda_s\)。これに式②で与えられる \(v_s\) と上記で求めた \(\lambda_s = 2l\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{\sqrt{\frac{S}{\rho}}}{2l}
\end{aligned}
$$
整理すると、
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \, \text{[Hz]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

弦が「ドレミ」の「ド」の音(基本の音)で鳴っているときを考えます。このとき、弦の長さは、できる波の「半分の長さ」にちょうど等しくなります。だから、波全体の長さ(波長)は弦の長さの2倍です。
次に、この弦の振動の回数(振動数)は、弦の波の速さを波長で割ると求まります。弦の波の速さは、弦の張り具合(張力)と重さ(線密度)で決まる公式で計算できます。

結論と吟味

弦を伝わる波の波長は \(\lambda_s = 2l \text{ [m]}\) で、振動数は \(f = \displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \text{ [Hz]}\) です。
これらは弦の基本振動に関する標準的な結果です。

解答 (1) 波長: \(2l \, \text{[m]}\)、振動数: \(\displaystyle\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \, \text{[Hz]}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
弦の振動によって発生する音波が気柱と共鳴します。このとき、弦の振動数 \(f\) と音波の振動数 \(f_{\text{音}}\) は等しくなります。
気柱は閉管として機能し、開口端補正を \(x\) とします。
1回目の共鳴(水面B、AB=\(d_1\))では、管口から \(x\) だけ外側の腹と水面(節)までの距離が \(\lambda/4\) になります。
2回目の共鳴(水面C、AC=\(d_2\))では、同様に \(d_2 + x = 3\lambda/4\) となります。
これら2つの式を連立させて、音波の波長 \(\lambda\) と開口端補正 \(x\) を求めます。
音速 \(V\) は、波の基本式 \(V = f\lambda\) から計算できます。
この設問における重要なポイント

  • 弦の振動数と音波の振動数が一致する (\(f_{\text{音}} = f\))。
  • 閉管の共鳴条件(開口端補正 \(x\) を考慮):
    • 1回目: \(d_1 + x = \lambda/4\)
    • 2回目: \(d_2 + x = 3\lambda/4\)
  • 波の基本式 \(V = f\lambda\)。

具体的な解説と立式
音波の振動数は弦の振動数 \(f\) に等しいです。開口端補正を \(x\) とします。
1回目の共鳴が水面の深さ \(d_1\) で起こったとき、
$$
\begin{aligned}
d_1 + x &= \frac{\lambda}{4} \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
2回目の共鳴が水面の深さ \(d_2\) で起こったとき、
$$
\begin{aligned}
d_2 + x &= \frac{3\lambda}{4} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
これらの式④と⑤を連立させて、音波の波長 \(\lambda\) と開口端補正 \(x\) を求めます。
音速 \(V\) は、(1)で求めた弦の振動数 \(f\) と、ここで求める音波の波長 \(\lambda\) を用いて、波の基本式から計算します。
$$
\begin{aligned}
V &= f\lambda \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 閉管の共鳴条件 (開口端補正 \(x\) 考慮): \(d+x = (2m-1)\lambda/4\)
  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
計算過程

まず、音波の波長 \(\lambda\) を求めます。式⑤から式④を辺々引くと、
$$
\begin{aligned}
(d_2 + x) – (d_1 + x) &= \frac{3\lambda}{4} – \frac{\lambda}{4} \\[2.0ex]
d_2 – d_1 &= \frac{2\lambda}{4} \\[2.0ex]
d_2 – d_1 &= \frac{\lambda}{2}
\end{aligned}
$$
これを \(\lambda\) について解くと、
$$
\begin{aligned}
\lambda &= 2(d_2 – d_1) \, \text{[m]}
\end{aligned}
$$
次に、開口端補正 \(x\) を求めます。式④を変形して \(x = \displaystyle\frac{\lambda}{4} – d_1\)。
この式に上記で求めた \(\lambda = 2(d_2-d_1)\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{2(d_2-d_1)}{4} – d_1 \\[2.0ex]
&= \frac{d_2-d_1}{2} – d_1 \\[2.0ex]
&= \frac{d_2-d_1 – 2d_1}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{d_2-3d_1}{2} \, \text{[m]}
\end{aligned}
$$
最後に、音速 \(V\) を求めます。式⑥に、(1)で求めた \(f\) と、上記で求めた \(\lambda\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V &= \left(\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}}\right) \cdot 2(d_2-d_1)
\end{aligned}
$$
整理すると、
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{d_2-d_1}{l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \, \text{[m/s]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

管が共鳴するとき、音の波は管の口の少し外側で「腹」を作ります。この「管の口からのズレ」が開口端補正です。
1回目の共鳴(水面が\(d_1\))と2回目の共鳴(水面が\(d_2\))のときの管の有効な長さ(水面から腹までの距離)を考えます。1回目は波長の\(1/4\)、2回目は波長の\(3/4\)です。
この2つの共鳴の差 (\(d_2-d_1\)) が、ちょうど音波の半波長 (\(\lambda/2\)) に相当します。ここから音波の波長が求まります。
波長が分かれば、1回目の共鳴条件から開口端補正も計算できます。
音の速さは、弦の振動数(音波の振動数と同じ)に、今求めた音波の波長を掛ければ出てきます。

結論と吟味

音波の波長は \(\lambda = 2(d_2 – d_1) \text{ [m]}\)、音速は \(V = \displaystyle\frac{d_2-d_1}{l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \text{ [m/s]}\)、開口端補正は \(x = \displaystyle\frac{d_2-3d_1}{2} \text{ [m]}\) です。
これらの結果は、共鳴の条件と物理量間の関係から導かれており、矛盾はありません。

解答 (2) 音波の波長: \(2(d_2-d_1) \, \text{[m]}\)、音速: \(\displaystyle\frac{d_2-d_1}{l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \, \text{[m/s]}\)、開口端補正: \(\displaystyle\frac{d_2-3d_1}{2} \, \text{[m]}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
閉管の共鳴では、水面の位置が節となります。1回目、2回目の共鳴に続き、3回目の共鳴も水面が節の位置に来たときに起こります。節と節の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。
2回目の共鳴は水面の深さ \(d_2\) で起こりました。3回目の共鳴は、そこからさらに \(\lambda/2\) だけ水面を下げた位置で起こります。
空気の密度が激しく変化する場所は、定常波の「節」の位置です。腹の位置では媒質の変位(動き)は最大ですが、密度変化(圧力変化)は最小(ほぼゼロ)となります。
したがって、3度目の共鳴が起こったときの管内の節の位置を答えればよいことになります。
この設問における重要なポイント

  • 閉管の共鳴では、水面が節となる。
  • 連続する共鳴(節の位置)の間隔は \(\lambda/2\)。
  • 密度変化(または圧力変化)が最大となるのは定常波の節の位置。

具体的な解説と立式
音波の波長は \(\lambda = 2(d_2-d_1)\) です((2)より)。したがって半波長は \(\lambda/2 = d_2-d_1\)。
1回目の共鳴は管口からの深さ \(d_1\) の水面(節)で起こりました。
2回目の共鳴は管口からの深さ \(d_2\) の水面(節)で起こりました。
3回目の共鳴が起こる水面の深さを \(d_3\) とすると、これは \(d_2\) からさらに \(\lambda/2\) だけ深い位置になります。
$$
\begin{aligned}
d_3 &= d_2 + \frac{\lambda}{2} \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
密度が激しく変化する場所は節の位置です。3度目の共鳴状態のとき、管口Aから水面(3番目の節)までの間に存在する節の位置は、水面 \(d_1\)、水面 \(d_2\)、そして水面 \(d_3\) の3箇所です。

使用した物理公式

  • 定常波の節と腹の性質(密度変化について)
  • 節と節の間隔: \(\lambda/2\)
計算過程

3度目の共鳴が起こる水面の深さ \(d_3\) を計算します。
式⑦に \(\lambda/2 = d_2-d_1\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
d_3 &= d_2 + (d_2-d_1) \\[2.0ex]
&= 2d_2 – d_1
\end{aligned}
$$
したがって、3度目の共鳴が起こったとき、管内で密度が激しく変化している所(節の位置)は、管口からの距離で、
1番目の節: \(d_1\) [m]
2番目の節: \(d_2\) [m]
3番目の節: \(d_3 = 2d_2 – d_1\) [m]
となります。

この設問の平易な説明

音が管の中で共鳴すると、定常波ができます。この定常波には、空気がほとんど動かない「節」と、空気が激しく動く「腹」があります。空気の密度(濃さや薄さ)が最も大きく変わるのは「節」の場所です。
水面の位置は、この「節」にあたります。1回目、2回目の共鳴に続いて、3回目の共鳴も水面が「節」の位置に来たときに起こります。
「節」と「節」の間の距離は、音の波の「半分の長さ」です。(2)で計算したように、半波長は \(d_2-d_1\) なので、3回目の共鳴が起こる水面の深さ(管口から)は、2回目の深さ \(d_2\) に \(d_2-d_1\) を加えたものになります。
よって、密度が激しく変わる場所は、1回目の水面の深さ \(d_1\)、2回目の水面の深さ \(d_2\)、そして3回目の水面の深さ \(2d_2-d_1\) の3箇所です。

結論と吟味

3度目の共鳴が起こったとき、管内において空気の密度が激しく変化している所(節の位置)は、管口からの距離で \(d_1 \text{ [m]}\), \(d_2 \text{ [m]}\), \(2d_2 – d_1 \text{ [m]}\) の3箇所です。

解答 (3) \(d_1 \, \text{[m]}\), \(d_2 \, \text{[m]}\), \(2d_2 – d_1 \, \text{[m]}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
「3度目の共鳴が起こった位置より下には節の位置がないまま管の下端に達した」後、「水をなくし開管にすると、管は共鳴した」とあります。
この記述から、管の全長を特定します。模範解答の解釈では、この管の全長が \(2d_2\) であり、この長さの開管が元の音波(波長 \(\lambda\))に対して3倍振動 (\(m=3\)) で共鳴した、としています。この解釈が、これまでの結果と矛盾しないかを確認します。
開管の共鳴条件は、管の両端に開口端補正 \(x\) があるので、実効長 \(L_{\text{管}}+2x\) が半波長 \(\lambda/2\) の整数倍になるときです。
この設問における重要なポイント

  • 開管の共鳴条件(両端に開口端補正 \(x\) を考慮): (管長 \(L_{\text{管}}\)) \(+ 2x = m\lambda/2\) (\(m=1, 2, 3, \dots\))。
  • 元の音波の波長 \(\lambda\) と開口端補正 \(x\) の値は(2)で求めたものを使用する。

具体的な解説と立式
管の全長を \(L_{\text{管}}\) とします。この管を開管として用いたとき、弦から発せられる音波(振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\))と共鳴したとあります。
模範解答の解釈に従い、管の全長 \(L_{\text{管}} = 2d_2\) であり、このとき \(m=3\) のモードで共鳴するとします。
開管の共鳴条件は、
$$
\begin{aligned}
L_{\text{管}} + 2x &= m \frac{\lambda}{2} \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
この式が、\(L_{\text{管}} = 2d_2\), \(m=3\), \(\lambda = 2(d_2-d_1)\), \(x = \displaystyle\frac{d_2-3d_1}{2}\) の下で成立するかを確認します。

使用した物理公式

  • 開管の共鳴条件 (開口端補正 \(x\) 考慮): \(L_{\text{管}}+2x = m\lambda/2\)
計算過程

式⑧の左辺に \(L_{\text{管}} = 2d_2\) と \(x = \displaystyle\frac{d_2-3d_1}{2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\text{左辺} &= 2d_2 + 2 \left( \frac{d_2-3d_1}{2} \right) \\[2.0ex]
&= 2d_2 + (d_2-3d_1) \\[2.0ex]
&= 3d_2 – 3d_1
\end{aligned}
$$
式⑧の右辺に \(m=3\) と \(\lambda = 2(d_2-d_1)\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\text{右辺} &= 3 \times \frac{2(d_2-d_1)}{2} \\[2.0ex]
&= 3(d_2-d_1) \\[2.0ex]
&= 3d_2 – 3d_1
\end{aligned}
$$
左辺と右辺が一致することが確認できました。
したがって、管の全長は \(2d_2\) [m] となります。

この設問の平易な説明

水をなくして管全体を開いた管として使ったところ、弦の音と共鳴しました。模範解答の図やヒントによると、このときの管の全長は、2回目の共鳴が起きたときの水深 \(d_2\) のちょうど2倍、つまり \(2d_2\) であると解釈できます。そして、この長さの開管が、弦の音に対して3つの「ふくらみ」を持つ形で共鳴したと考えられます。この条件が、(2)で求めた音の波長や開口端補正の値と矛盾しないことを数式で確認すると、確かに成り立つことがわかります。

結論と吟味

管の全長は \(2d_2 \text{ [m]}\) です。
これは、全長 \(2d_2\) の開管が、波長 \(\lambda=2(d_2-d_1)\) の音波、開口端補正 \(x=(d_2-3d_1)/2\) のもとで、3倍振動 (\(m=3\)) で共鳴するという解釈に基づきます。

解答 (4) \(2d_2 \, \text{[m]}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
水面をCの位置(深さ \(d_2\))に戻したので、気柱は長さ \(d_2\) の閉管として機能します。
元の張力 \(S\)、元の弦の振動数 \(f\) のとき、この長さ \(d_2\) の閉管は2度目の共鳴(3倍振動に相当)をしていました。
弦の張力を \(S\) から \(S’\) に徐々に増していくと、弦の振動数 \(f’ = (1/2l)\sqrt{S’/\rho}\) も増加します。
気柱の長さは変わらないので、この気柱が次に共鳴するのは、より高い固有振動数、すなわち3倍振動の次の5倍振動のときです。
弦の新しい振動数 \(f’\) が、気柱の5倍振動の固有振動数と一致したときに再び共鳴します。
元の共鳴では \(d_2+x = 3V/(4f)\)、新しい共鳴では \(d_2+x = 5V/(4f’)\)。
よって、\(3/f = 5/f’\) という関係から \(f’ = (5/3)f\)。
弦の振動数は \(f \propto \sqrt{S}\) なので、振動数が \(5/3\) 倍になるためには、張力 \(S\) は \((5/3)^2 = 25/9\) 倍になる必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 気柱の条件(閉管、長さ \(d_2\))は一定。
  • 張力 \(S\) を増すと弦の振動数 \(f\) が増す (\(f \propto \sqrt{S}\))。
  • 閉管の固有振動数は基本振動数の奇数倍。現在の共鳴(3倍振動)より高い次の共鳴は5倍振動。

具体的な解説と立式
水面がCの位置にあるとき、気柱の有効長は \(d_2+x\)。
元の張力 \(S\)、振動数 \(f\) のとき、これは3倍振動に相当する共鳴でした。
$$
\begin{aligned}
d_2+x &= \frac{3V}{4f} \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
弦の張力を \(S’\) に変えたときの弦の振動数を \(f’\) とします。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \quad \text{および} \quad f’ = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S’}{\rho}} \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
張力を増して振動数 \(f’\) が増加し、気柱が次に共鳴するのは5倍振動のときです。
$$
\begin{aligned}
d_2+x &= \frac{5V}{4f’} \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$
式⑩と式⑫の左辺は等しいので、
$$
\begin{aligned}
\frac{3V}{4f} &= \frac{5V}{4f’}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 閉管の共鳴条件 (開口端補正 \(x\) 考慮): \(d+x = (2m-1)V/(4f)\)
  • 弦の基本振動数: \(f = (1/2l)\sqrt{S/\rho}\)
計算過程

上の式から \(f’\) と \(f\) の関係を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{3}{f} &= \frac{5}{f’} \\[2.0ex]
f’ &= \frac{5}{3}f
\end{aligned}
$$
次に、この関係を弦の振動数の式⑪に適用します。式の比をとると、
$$
\begin{aligned}
\frac{f’}{f} &= \frac{\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S’}{\rho}}}{\frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{S’}{S}}
\end{aligned}
$$
\(f’/f = 5/3\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{5}{3} &= \sqrt{\frac{S’}{S}}
\end{aligned}
$$
両辺を2乗すると、
$$
\begin{aligned}
\left(\frac{5}{3}\right)^2 &= \frac{S’}{S} \\[2.0ex]
\frac{25}{9} &= \frac{S’}{S}
\end{aligned}
$$
よって、新しい張力 \(S’\) は、
$$
\begin{aligned}
S’ &= \frac{25}{9}S
\end{aligned}
$$

別解1: 波長と共鳴条件から直接アプローチする解法

思考の道筋とポイント
「振動数」ではなく「波長」を中心に思考を進めます。気柱の有効長 \(d_2+x\) は一定です。

  1. 最初の共鳴(3倍振動)では \(d_2+x = 3\lambda/4\)。
  2. 次の共鳴(5倍振動)での音波の波長を \(\lambda”\) とすると、\(d_2+x = 5\lambda”/4\)。
  3. 上記2式から、\(\lambda”\) を \(\lambda\) で表します。
  4. 共鳴条件 \(f’=f”_{\text{気柱}}\) を、波の基本式を用いて速さと波長の関係式に変換します: \(v_s’/\lambda_s = V/\lambda”\)。
  5. この関係式から \(v_s’\) を求め、\(v_s’ \propto \sqrt{S’}\) の関係を用いて \(S’\) を求めます。

具体的な解説と立式
最初の共鳴(3倍振動)では、音波の波長を \(\lambda\) とすると、
$$
\begin{aligned}
d_2+x &= \frac{3\lambda}{4} \quad \cdots (ア)
\end{aligned}
$$
次の共鳴(5倍振動)では、音波の波長を \(\lambda”\) とすると、
$$
\begin{aligned}
d_2+x &= \frac{5\lambda”}{4} \quad \cdots (イ)
\end{aligned}
$$
式(ア)と(イ)より、
$$
\begin{aligned}
\frac{3\lambda}{4} &= \frac{5\lambda”}{4} \\[2.0ex]
\lambda” &= \frac{3}{5}\lambda
\end{aligned}
$$
新しい張力 \(S’\) のときの弦の速さを \(v_s’\)、振動数を \(f’\) とします。弦の波長 \(\lambda_s=2l\) は不変です。
$$
\begin{aligned}
f’ &= \frac{v_s’}{\lambda_s} = \frac{v_s’}{2l}
\end{aligned}
$$
気柱の5倍振動の振動数 \(f”_{\text{気柱}}\) は、
$$
\begin{aligned}
f”_{\text{気柱}} &= \frac{V}{\lambda”}
\end{aligned}
$$
共鳴条件 \(f’ = f”_{\text{気柱}}\) より、
$$
\begin{aligned}
\frac{v_s’}{2l} &= \frac{V}{\lambda”}
\end{aligned}
$$
この式に \(\lambda” = (3/5)\lambda\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\frac{v_s’}{2l} &= \frac{V}{(3/5)\lambda} = \frac{5V}{3\lambda}
\end{aligned}
$$
ここで、元の共鳴条件 \(f=V/\lambda\) と \(f=v_s/\lambda_s=v_s/(2l)\) より、\(V/\lambda = v_s/(2l)\) の関係があります。これを代入すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{v_s’}{2l} &= \frac{5}{3} \left( \frac{v_s}{2l} \right) \\[2.0ex]
v_s’ &= \frac{5}{3}v_s
\end{aligned}
$$
弦の速さは \(v_s \propto \sqrt{S}\) なので、\(v_s’/v_s = \sqrt{S’/S}\) です。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{\frac{S’}{S}} &= \frac{5}{3}
\end{aligned}
$$
両辺を2乗して、
$$
\begin{aligned}
S’ &= \frac{25}{9}S
\end{aligned}
$$

別解2: 閉管の固有振動数の性質を利用する解法

思考の道筋とポイント
主たる解法や別解1が、共鳴条件をその都度立式するのに対し、この別解では「閉管の固有振動数は基本振動数の奇数倍である」という一般化された性質を直接利用し、3倍振動から5倍振動への変化として捉えることで、計算を簡略化します。
具体的な解説と立式
水面がCの位置にあるとき、気柱の固有振動数は、その基本振動数を \(f_{\text{C,基本}}\) として、
$$
\begin{aligned}
f_{\text{C,n}} &= (2n-1)f_{\text{C,基本}} \quad (n=1, 2, 3, \dots)
\end{aligned}
$$
と表せます。
最初の共鳴は \(n=2\) のモード(3倍振動)で、弦の振動数 \(f\) と一致していました。
$$
\begin{aligned}
f &= 3 f_{\text{C,基本}}
\end{aligned}
$$
張力を上げて弦の振動数 \(f’\) を増加させ、次に共鳴するのは \(n=3\) のモード(5倍振動)です。
$$
\begin{aligned}
f’ &= 5 f_{\text{C,基本}}
\end{aligned}
$$
上記2式の比をとると、
$$
\begin{aligned}
\frac{f’}{f} &= \frac{5 f_{\text{C,基本}}}{3 f_{\text{C,基本}}} \\[2.0ex]
&= \frac{5}{3}
\end{aligned}
$$
弦の振動数と張力の関係は \(f \propto \sqrt{S}\) なので、\(f’/f = \sqrt{S’/S}\) です。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{\frac{S’}{S}} &= \frac{5}{3}
\end{aligned}
$$
両辺を2乗して、
$$
\begin{aligned}
S’ &= \frac{25}{9}S
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

弦の張り具合を強くすると、弦が出す音の高さ(振動数)が上がります。
一方、管の長さは変わらないので、この管が次に共鳴するのは、もっと高い特定の振動数(3倍振動の次は5倍振動)になったときです。
つまり、弦の振動数が元の \(5/3\) 倍になったときに、管は再び共鳴します。
弦の振動数は、張力の平方根に比例するので、振動数を \(5/3\) 倍にするには、張力を \((5/3)^2 = 25/9\) 倍にする必要があります。

結論と吟味

再び共鳴したときの弦の張力は \(\displaystyle\frac{25}{9}S \text{ [N]}\) です。
張力を増すと弦の振動数が上がり、気柱のより高い次数の固有振動数と一致して再び共鳴するという現象を正しく捉えられています。

解答 (5) \(\displaystyle\frac{25}{9}S \, \text{[N]}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 弦の振動と気柱の共鳴の連携(振動数の一致):
    • 核心: この問題は、2つの異なる物理現象、すなわち「弦の振動」と「気柱の共鳴」が、「共鳴」というキーワードによって結びつけられている点を理解することが核心です。弦が音源となり、その音の高さ(振動数)が、気柱が共鳴できる特定の音の高さ(固有振動数)とぴったり一致したときに、強い共鳴が起こります。したがって、すべての設問の根底には「\(f_{\text{弦}} = f_{\text{気柱}}\)」という条件が流れています。
    • 理解のポイント:
      1. 独立した現象の理解: まず、弦の振動(基本振動、速さの公式)と、気柱の共鳴(閉管・開管の条件、開口端補正)を、それぞれ独立した現象として正確に理解している必要があります。
      2. 振動数による橋渡し: これら2つの現象をつなぐ唯一の架け橋が「振動数」です。弦の物理的条件(長さ、張力、線密度)が弦の振動数を決定し、その振動数が音波として気柱に伝わり、気柱の幾何学的条件(長さ、開閉端)がその振動数で共鳴できるかを決定します。
      3. 条件変化の追跡: 張力を変えるなど、一方の条件を変えると、まず弦の振動数が変化します。その結果、新しい振動数で共鳴できるような気柱の状態(例えば、より高い次数の振動モード)を探す、というように、因果関係を追って考えることが重要です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • スピーカーと気柱の共鳴: 弦の代わりにスピーカーを音源とする問題。スピーカーの振動数を変えていき、共鳴する管の長さを測定する、より標準的な気柱共鳴実験の問題です。
    • ドップラー効果と共鳴: 救急車がサイレンを鳴らしながら気柱に近づく、あるいは遠ざかる問題。観測される振動数がドップラー効果で変化するため、共鳴するタイミングや位置が変わります。
    • うなりと共鳴: わずかに振動数の異なる2つの弦を音源とし、それによって生じる「うなり」と気柱の共鳴を組み合わせた問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 音源は何かを特定する: この問題では弦が音源です。音源の振動数を決定する物理法則(弦の基本振動の公式)をまず適用します。
    2. 共鳴体は何かを特定する: 共鳴するのは気柱です。気柱の共鳴条件(閉管か開管か、開口端補正の有無)を次に確認します。
    3. 不変量と変数を整理する: 各設問で、何が一定で何が変化するのかを明確にします。例えば、問(5)では弦の張力\(S\)が変数で、弦の長さ\(l\)、線密度\(\rho\)、気柱の長さ\(d_2\)、音速\(V\)などが不変量です。この整理が、立式の方向性を決定します。
    4. 連続する共鳴点の間隔に注目する: 問(2)のように、連続する2つの共鳴点の情報が与えられた場合、その間隔が半波長\(\lambda/2\)に等しいという事実は、波長を求める上で非常に強力な手がかりとなります。これは開口端補正の有無によらず成り立ちます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 弦の波と音波の混同:
    • 誤解: 弦を伝わる横波の波長\(\lambda_s\)と、空気中を伝わる音波の縦波の波長\(\lambda\)を同じものとして扱ってしまう。
    • 対策: これらは全くの別物です。速さが異なる(\(v_s\)と\(V\))ため、同じ振動数\(f\)であっても波長は異なります(\(\lambda_s = v_s/f\), \(\lambda = V/f\))。常に「弦の波」と「音波」を区別して考える意識が重要です。
  • 開口端補正の扱い:
    • 誤解: 開口端補正を忘れたり、閉管なのに両端に適用したり、腹の位置を管口ぴったりだと考えてしまう。
    • 対策: 「開口端では、腹は管口の少し外側」と覚え、共鳴条件を立てる際は、必ず管の実際の長さに開口端補正を加えた「実効長」で考える癖をつけましょう。閉管なら\(d+x\)、開管なら\(L+2x\)です。
  • 密度変化と変位の関係の誤解:
    • 誤解: 空気の振動が最も激しい「腹」で、密度変化も最大だと勘違いする。
    • 対策: 逆です。「腹」は媒質の変位(動き)が最大ですが、周りの空気が自由に出入りできるため、圧力や密度の変化は最小(ほぼゼロ)です。「節」は媒質の変位がゼロですが、左右から空気が押し寄せてきたり、逆に引かれていったりするため、圧力や密度の変化が最大になります。
  • 共鳴次数の勘違い:
    • 誤解: 閉管で、1回目の共鳴の次が2倍振動だと考えてしまう。
    • 対策: 閉管は「奇数倍振動」(基本、3倍、5倍…)しか起こらない、というルールを徹底します。したがって、2回目の共鳴は3倍振動、3回目の共鳴は5倍振動に対応します。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 弦の基本振動の公式 \(f = \frac{1}{2l}\sqrt{\frac{S}{\rho}}\):
    • 選定理由: 問題の音源が「弦の基本振動」であると指定されているため。この公式一つで、弦の物理的条件(\(l, S, \rho\))から音源の振動数\(f\)を決定できます。
    • 適用根拠: これは、弦の基本振動の共鳴条件(\(l=\lambda_s/2\))、波の速さの公式(\(v_s=\sqrt{S/\rho}\))、波の基本式(\(v_s=f\lambda_s\))を組み合わせた、弦の基本振動に特化した便利な公式です。
  • 閉管の共鳴条件 \(d+x = (2m-1)\lambda/4\):
    • 選定理由: 問題の前半で、水面で閉じられた管(閉管)の共鳴を扱うため。また、開口端補正を考慮する必要があるため。
    • 適用根拠: 「開口端付近が腹」「水面が節」という境界条件を満たす定常波が、実効長\(d+x\)の気柱内に収まるための幾何学的な条件です。
  • 開管の共鳴条件 \(L+2x = m\lambda/2\):
    • 選定理由: 問(4)で、水をなくした管(開管)の共鳴を扱うため。
    • 適用根拠: 「両端の開口端付近が腹」という境界条件を満たす定常波が、実効長\(L+2x\)の気柱内に収まるための幾何学的な条件です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の整理:
    • 特に注意すべき点: この問題は、最終的な答えが\(d_1, d_2, l, S, \rho\)などの文字式で表されるため、計算過程が複雑になりがちです。特に分数の計算や、式の代入でミスが起こりやすいです。
    • 日頃の練習: 途中式を省略せず、一行一行丁寧に書くことを心がけましょう。特に、問(2)で\(\lambda\)と\(x\)を求める連立方程式のように、複数の式を扱う場合は、式に番号を振り、「式⑤-式④より」のように、どの式をどう操作したかを明記すると、思考が整理され、ミスが減ります。
  • 添え字の活用:
    • 特に注意すべき点: 弦の波と音波、元の状態と変化後の状態など、複数の物理量が登場します。\(\lambda_s\)と\(\lambda\)、\(S\)と\(S’\)のように、添え字を使って明確に区別しないと、計算途中で混同してしまいます。
    • 日頃の練習: 自分で物理量を設定する際に、どの現象のどの状態を表す量なのかが分かるように、積極的に添え字(例: `s` for string, `A` for air)を使う習慣をつけましょう。
  • 比例関係の活用による検算:
    • 特に注意すべき点: 問(5)では、最終的に\(S’ = (25/9)S\)という比の関係が求まります。
    • 日頃の練習: 計算結果が出たら、それが物理的な比例関係と合っているかを確認する癖をつけましょう。例えば、問(5)では「\(f\)を\(5/3\)倍にするには、\(f \propto \sqrt{S}\)だから、\(S\)は\((5/3)^2=25/9\)倍になるはずだ」という見通しを立ててから計算に臨むと、結果の妥当性をすぐに判断できます。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • 問(2) 開口端補正 \(x\): \(x = (d_2-3d_1)/2\)。開口端補正\(x\)は正の値でなければならないので、\(d_2 > 3d_1\)という条件が隠されていることがわかります。また、\(d_2-d_1 = \lambda/2\)と\(d_1+x=\lambda/4\)から、\(d_2-d_1 = 2(d_1+x)\)となり、\(d_2=3d_1+2x\)という関係も導けます。これは\(d_2 > 3d_1\)と整合します。
    • 問(4) 管の全長: \(2d_2\)。これは、C点が管の中央に位置することを意味します。物理的にあり得る設定です。
    • 問(5) 張力: \(S’ = (25/9)S\)。張力を増やす(\(S’ > S\))ことで、より高い振動数で共鳴した、という結果は物理的に妥当です。もし\(S’ < S\)という結果が出たら、どこかで計算ミスを疑うべきです。
  • 極端な場合を考える:
    • もし開口端補正がゼロ(\(x=0\))だったらどうなるか? \(d_2 = 3d_1\)となるはずです。これは、基本振動の気柱長\(d_1\)と3倍振動の気柱長\(d_2\)がちょうど\(1:3\)の比になるという、理想的な閉管の共鳴条件と一致します。
    • もし弦の張力\(S\)を非常に大きくしたら? 弦の振動数\(f\)が非常に高くなります。すると、共鳴する気柱の波長\(\lambda=V/f\)は非常に短くなり、共鳴点の間隔\(\lambda/2\)も非常に狭くなるはずです。これも物理的な直感と一致します。
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問題68 (東京理科大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、波源から左右に出る波、壁での固定端反射、そして波の重ね合わせ(定常波や進行波の合成)について、波の式を用いて考察するものです。特に、入射波と反射波の式を立て、それらを合成することで生じる現象を分析します。後半の「Q」では、反射が自由端反射だった場合について同様の考察を求められます。

与えられた条件
  • 波源S: \(x=0\) の位置にあり、左右に波を出す。
  • 波の特性: 振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\)。
  • 波源Sにおける変位: \(y = A\sin(2\pi ft)\) (時刻 \(t\) に対して)。
  • 壁R: Sから右に距離 \(L\) の位置 (\(x=L\)) にあり、波は振幅を変えずに固定端反射される。
問われていること
  • (1) Sから壁に向かう入射波の式 \(y_1\) を \(x, t\) の関数として表せ (\(0 \le x \le L\))。
  • (2) 壁からの反射波の式 \(y_2\) を \(x, t\) の関数として表せ (\(x \le L\))。
  • (3) SR間 (\(0 \le x \le L\)) での合成波の変位 \(y_I = y_1+y_2\) が \(y_I = 2A\sin(\text{ア})\cos(\text{イ})\) と表される。(ア), (イ)を埋めよ。また、常に \(y_I=0\) となる位置 \(x\) を整数 \(n(=0, 1, 2, \dots)\) を用いて表せ。
  • (4) Sの左側 (\(x \le 0\)) に生じる波(合成波)の振幅を求めよ。また、振幅が最大となるときの \(L\) を \(\lambda, n\) で表せ。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【注記】

本問については、模範解答のアプローチが最も標準的かつ効率的であるため、別解の提示は省略します。

この問題のテーマは、波の表現、反射、重ね合わせです。波の変位を位置 \(x\) と時刻 \(t\) の関数で表す「波の式」の立て方、固定端および自由端での反射の性質(位相変化の有無)、そして複数の波が同じ空間に存在するときの「重ね合わせの原理」が中心となります。特にSR間では定常波が、Sの左側では進行波同士の干渉(強め合い・弱め合い)が生じることを見ていきます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 進行波の式: 原点での振動が \(y(0,t) = A\sin(2\pi ft)\) で、正のx方向に速さ \(v\) で進む波の式は \(y(x,t) = A\sin(2\pi f(t-x/v))\) と表されます。\(v=f\lambda\) を用いると \(y(x,t) = A\sin(2\pi (ft-x/\lambda))\) とも書けます。負のx方向に進む場合は \(y(x,t) = A\sin(2\pi (ft+x/\lambda))\) となります。
  2. 固定端反射: 波が固定端で反射するとき、反射波の位相は入射波に対して \(\pi\) (180°) ずれます。これは、反射波の変位が入射波の変位と逆符号になることを意味します。
  3. 自由端反射: 波が自由端で反射するとき、反射波の位相は入射波と同じです(ずれなし)。
  4. 重ね合わせの原理: 複数の波が同じ場所に来たとき、その点の変位は各波の変位のベクトル和(ここではスカラー和)になります。
  5. 三角関数の和積公式: \( \sin\alpha + \sin\beta = 2\sin\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)\cos\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right) \) など。これらは波の重ね合わせの結果を分析する際に非常に有効です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) 入射波の式の導出: 波源Sでの振動の様子と、波がx方向に伝播する時間差を考慮して、位置 \(x\) における時刻 \(t\) での変位を表す式を立てます。
  2. (2) 反射波の式の導出: 壁R (\(x=L\)) での入射波の変位を求め、固定端反射の条件を適用して、壁Rでの反射波の変位の形を決定します。その反射波が壁Rから位置 \(x\) まで伝播する時間差を考慮して、反射波の式を立てます。
  3. (3) SR間での合成波(定常波): 重ね合わせの原理に従い \(y_I = y_1 + y_2\) を計算します。和積公式を用いて、指定された形に変形し、節の位置の条件を導きます。
  4. (4) Sの左側での合成波: Sから直接左へ向かう波 \(y_3\) と、壁Rで反射してSを通過し左へ向かう波 \(y_2\) の重ね合わせ \(y_{II} = y_2 + y_3\) を考えます。この合成波の振幅を求め、それが最大になる条件を分析します。

問(1)

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