「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第27章】基礎CHECK

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基礎CHECK

1 交流電圧

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「交流発電の基本原理と、回転数が電圧と周波数に与える影響」です。磁場中でコイルを回転させて交流電圧を発生させるとき、回転の速さ(角速度)を変えると、発生する電圧の大きさと、電圧が変化する周期(周波数)がどのように変わるかを理解します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ファラデーの電磁誘導の法則: コイルを貫く磁束が変化すると、その変化の速さに比例した誘導起電力(電圧)が生じる。
  2. 交流電圧の最大値の公式: 交流電圧の最大値 \(V_{\text{最大}}\) は、コイルの巻数 \(N\)、磁束密度 \(B\)、コイルの面積 \(S\)、角速度 \(\omega\) を用いて \(V_{\text{最大}} = NBS\omega\) と表される。
  3. 角速度と周波数の関係: 角速度 \(\omega\) と周波数 \(f\) の間には、\(\omega = 2\pi f\) という関係がある。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、交流電圧の最大値が角速度 \(\omega\) とどのような関係にあるかを公式から確認します。
  2. 次に、周波数 \(f\) が角速度 \(\omega\) とどのような関係にあるかを公式から確認します。
  3. 角速度 \(\omega\) が2倍になったとき、これらの比例関係に基づいて電圧の最大値と周波数がそれぞれ何倍になるかを求めます。

 

思考の道筋とポイント
交流発電機は、磁場の中でコイルを回転させることで、コイルを貫く磁束を周期的に変化させ、電磁誘導によって電圧を発生させる装置です。このとき、回転の「速さ」である角速度 \(\omega\) が、発生する電圧の「大きさ」(最大値)と、電圧が変化する「速さ」(周波数)の両方に直接影響を与えることを理解するのが鍵となります。
電圧の最大値は、磁束の変化の速さに比例します。角速度が大きいほど磁束は速く変化するため、電圧の最大値も大きくなります。
また、周波数は1秒あたりの回転数に相当します。角速度が大きいほど1秒間にたくさん回転するので、電圧のプラス・マイナスが入れ替わる回数も増え、周波数が高くなります。

この設問における重要なポイント

  • 交流電圧の最大値 \(V_{\text{最大}}\): コイルの巻数 \(N\)、磁束密度 \(B\)、コイルの面積 \(S\)、そして角速度 \(\omega\) に比例します。公式は \(V_{\text{最大}} = NBS\omega\) です。
  • 周波数 \(f\): 1秒間に何回、電圧の波が繰り返されるかを示す量です。単位はヘルツ(\(\text{Hz}\))です。
  • 角速度 \(\omega\): 1秒間に何ラジアン回転するかを示す量です。単位はラジアン毎秒(\(\text{rad/s}\))です。
  • 関係式 \(\omega = 2\pi f\): 1回転は \(2\pi\) ラジアンなので、1秒間に \(f\) 回転することは、1秒間に \(2\pi f\) ラジアン進むことに等しいです。この式から、\(\omega\) と \(f\) は常に比例関係にあることがわかります。

具体的な解説と立式
この問題では、「交流電圧の最大値」と「周波数」が、それぞれ角速度 \(\omega\) とどのような関係にあるかを公式に基づいて考えます。

1. 交流電圧の最大値について
交流発電機で生じる誘導起電力(電圧)の瞬時値 \(V\) は、\(V = NBS\omega\sin(\omega t)\) と表されます。この式の最大値は \(\sin(\omega t)=1\) のときであり、その値 \(V_{\text{最大}}\) は次式で与えられます。
$$ V_{\text{最大}} = NBS\omega $$
ここで \(N, B, S\) は発電機の構造で決まる定数なので、電圧の最大値 \(V_{\text{最大}}\) は角速度 \(\omega\) に正比例します。

2. 周波数について
角速度 \(\omega\) と周波数 \(f\) の間には、常に以下の関係が成り立ちます。
$$ \omega = 2\pi f $$
この式を変形すると \(f = \displaystyle\frac{\omega}{2\pi}\) となり、周波数 \(f\) は角速度 \(\omega\) に正比例することがわかります。

使用した物理公式

  • 交流電圧の最大値: \(V_{\text{最大}} = NBS\omega\)
  • 角速度と周波数の関係: \(\omega = 2\pi f\)
計算過程

電圧の最大値の変化
\(V_{\text{最大}}\) は \(\omega\) に比例するため、角速度 \(\omega\) が2倍になると、電圧の最大値も2倍になります。
元の角速度を \(\omega\)、電圧の最大値を \(V_{\text{最大}}\) とし、変化後の角速度を \(\omega’ = 2\omega\)、電圧の最大値を \(V’_{\text{最大}}\) とすると、
$$
\begin{aligned}
\frac{V’_{\text{最大}}}{V_{\text{最大}}} &= \frac{NBS\omega’}{NBS\omega} \\[2.0ex]&= \frac{NBS(2\omega)}{NBS\omega} \\[2.0ex]&= 2
\end{aligned}
$$
よって、電圧の最大値は2倍になります。

周波数の変化
\(f\) は \(\omega\) に比例するため、角速度 \(\omega\) が2倍になると、周波数も2倍になります。
元の周波数を \(f\)、変化後の周波数を \(f’\) とすると、
$$
\begin{aligned}
\frac{f’}{f} &= \frac{\omega’/(2\pi)}{\omega/(2\pi)} \\[2.0ex]&= \frac{\omega’}{\omega} \\[2.0ex]&= \frac{2\omega}{\omega} \\[2.0ex]&= 2
\end{aligned}
$$
よって、周波数は2倍になります。

この設問の平易な説明

交流発電機は、自転車のライトを点けるための発電機と似ています。

  • 電圧の最大値: 自転車のペダルを速くこぐ(=コイルの回転を速くする)と、ライトがより明るくなりますよね。これは、回転が速いほど大きな電圧が発生するからです。問題では「角速度(回転の速さ)を2倍にした」ので、発生する電圧の最大値も2倍になります。
  • 周波数: 周波数は、電気のプラスとマイナスが1秒間に何回入れ替わるか、という回数のことです。ペダルを速くこぐと、この入れ替わりのペースも速くなります。角速度(回転の速さ)を2倍にすると、入れ替わりの回数である周波数も2倍になります。
解答 交流電圧の最大値:2倍, 周波数:2倍

2 交流電圧の最大値

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「交流電圧の実効値と最大値の関係」です。常に大きさが変動する交流電圧の「平均的な能力」を示す実効値と、瞬間的に到達するピークの値である最大値との間の、基本的な関係式を理解し、計算に適用します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 交流電圧: 時間と共に大きさと向きが周期的に変化する電圧。
  2. 最大値 (\(V_{\text{最大}}\)): 交流電圧がとりうる最大の電圧値。電圧の振幅に相当します。
  3. 実効値 (\(V_{\text{実効}}\)): 交流が、ある抵抗で消費する平均電力が、同じ抵抗で同じ電力を消費する直流電圧の値に等しくなるように定義された値。交流の能力を示す代表値として用いられます。
  4. 実効値と最大値の関係式: 正弦波交流において、\(V_{\text{実効}} = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}V_{\text{最大}}\) という関係が常に成り立ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 交流電圧の実効値と最大値の関係式を立てます。
  2. 求めたいのは最大値なので、式を最大値について解きます。
  3. 与えられた実効値と、\(\sqrt{2}\) の近似値を代入して最大値を計算します。

 

思考の道筋とポイント
家庭用のコンセントは「\(100 \, \text{V}\)」ですが、これは常に \(100 \, \text{V}\) の電圧がかかっているわけではありません。実際には電圧は \(0 \, \text{V}\) からある最大値までの間を周期的に変動しています。この「\(100 \, \text{V}\)」という値が「実効値」と呼ばれるもので、その交流が持つ仕事の能力を、もし直流だったら何\(\text{V}\)に相当するかで表したものです。
一方、電圧が瞬間的に到達する最も高い値が「最大値」です。この実効値と最大値の間には、正弦波交流であれば常に「最大値 \(=\) \(\sqrt{2}\) \( \times \) 実効値」というシンプルな関係があります。この関係を理解していれば、どちらか一方が分かればもう一方を計算することができます。

この設問における重要なポイント

  • 最大値 (\(V_{\text{最大}}\)): 正弦波交流電圧 \(V = V_{\text{最大}}\sin(\omega t)\) における振幅 \(V_{\text{最大}}\) のことです。問題文では \(V_0\) と表記されています。
  • 実効値 (\(V_{\text{実効}}\)): 交流の大きさを表すための指標で、電力の計算などに用いられます。家庭用コンセントの電圧表示(\(100 \, \text{V}\)など)は実効値です。
  • 関係式: \(V_{\text{実効}} = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}V_{\text{最大}}\) または、これを変形した \(V_{\text{最大}} = \sqrt{2}V_{\text{実効}}\) を使います。この関係は電圧だけでなく、電流 (\(I_{\text{実効}} = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}I_{\text{最大}}\)) についても同様に成り立ちます。
  • \(\sqrt{2}\) の近似値: 計算には、\(\sqrt{2} \approx 1.41\) を用います。

具体的な解説と立式
交流電圧の実効値を \(V_{\text{実効}}\)、最大値を \(V_{\text{最大}}\)(問題文では \(V_0\))とすると、これらの間には次の関係が成り立ちます。
$$ V_{\text{実効}} = \frac{1}{\sqrt{2}}V_{\text{最大}} $$
この問題では最大値 \(V_{\text{最大}}\) を求めたいので、この式を \(V_{\text{最大}}\) について解きます。
$$ V_{\text{最大}} = \sqrt{2} V_{\text{実効}} $$
問題文で与えられている値は、実効値 \(V_{\text{実効}} = 20 \, \text{V}\) です。また、\(\sqrt{2}\) の近似値として \(1.41\) を用いて計算します。

使用した物理公式

  • 交流電圧の実効値と最大値の関係: \(V_{\text{実効}} = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}V_{\text{最大}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{最大}} &= \sqrt{2} V_{\text{実効}} \\[2.0ex]&\approx 1.41 \times 20 \\[2.0ex]&= 28.2 \, (\text{V})
\end{aligned}
$$
問題文で与えられている実効値「\(20 \, \text{V}\)」は有効数字\(2\)桁と考えられるため、計算結果も有効数字\(2\)桁に丸めます。したがって、\(28.2 \, \text{V}\) を四捨五入して \(28 \, \text{V}\) とします。

この設問の平易な説明

家庭のコンセントに来ている「\(100 \, \text{V}\)」という電気は、実は常に電圧が変化している交流です。この「\(100 \, \text{V}\)」は「実効値」という、いわば平均的な強さを表す値です。
しかし、電圧は瞬間的にはもっと高い値に達しています。このピークの値が「最大値」です。
実効値と最大値の間には簡単な関係があって、「最大値 \(=\) \(\sqrt{2}\) \( \times \) 実効値」となります。(\(\sqrt{2}\) はおよそ \(1.41\) です)
この問題では実効値が \(20 \, \text{V}\) なので、最大値は \(1.41 \times 20 = 28.2 \, \text{V}\)。これを四捨五入して約 \(28 \, \text{V}\) となります。
つまり、普段「\(20 \, \text{V}\)」として使っている交流電源は、瞬間的には約\(28 \, \text{V}\)まで電圧が上がっている、ということです。

解答 \(28 \, \text{V}\)

3 抵抗を流れる交流

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「抵抗のみを含む交流回路の計算」です。交流電源に抵抗を接続した最も基本的な回路について、電流の最大値や平均消費電力を、実効値の概念を用いて計算します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 交流におけるオームの法則: 交流回路でも、電圧・電流の実効値を用いれば、直流と同様にオームの法則が成り立ちます。
  2. 実効値と最大値の関係: 交流の電圧・電流には、平均的な能力を示す「実効値」と、瞬間的なピーク値である「最大値」があり、両者は \(V_{\text{最大}} = \sqrt{2}V_{\text{実効}}\) の関係にあります。
  3. 交流回路の消費電力: 交流回路で抵抗が消費する電力の時間平均は、電圧と電流の「実効値」の積で与えられます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、与えられた電圧の実効値と抵抗値から、オームの法則を用いて回路を流れる電流の「実効値」を求めます。
  2. (ア) 電流の実効値と最大値の関係式を用いて、電流の「最大値」を計算します。
  3. (イ) 電圧と電流の「実効値」を用いて、抵抗での平均消費電力を計算します。

 

思考の道筋とポイント
交流回路の計算では、常に変動する電圧や電流を直接扱うのは複雑なため、「実効値」という便利な指標を用います。実効値を使えば、直流回路で慣れ親しんだオームの法則や電力の公式を、ほぼ同じ形で適用できるのが大きな利点です。
この問題では、まず「実効値の世界」でオームの法則を使って電流の実効値を求め、次に「最大値の世界」に変換して(ア)の答えを出し、再び「実効値の世界」で電力計算をして(イ)の答えを出す、という流れになります。2つの値(実効値と最大値)を混同しないことが重要です。

この設問における重要なポイント

  • 計算の出発点: 交流回路の計算は、特に指定がない限り「実効値」で行うのが基本です。
  • オームの法則: \(V_{\text{実効}} = R I_{\text{実効}}\) が成り立ちます。
  • 実効値と最大値の変換: \(I_{\text{最大}} = \sqrt{2} I_{\text{実効}}\) という関係を正しく使います。
  • 平均消費電力: \(\bar{P} = V_{\text{実効}} I_{\text{実効}}\) で計算します。最大値を使って \(\bar{P} = \displaystyle\frac{1}{2}V_{\text{最大}}I_{\text{最大}}\) と計算することも可能ですが、実効値を用いる方が一般的で計算も簡潔です。
  • 周波数の役割: この問題では、周波数 \(f = 50 \, \text{Hz}\) という値は、電流の最大値や平均消費電力の計算には直接使用しません。

具体的な解説と立式
この問題は2つのパートに分かれていますが、どちらを解くにもまず「電流の実効値」を求める必要があります。
電圧の実効値を \(V_{\text{実効}}\)、電流の実効値を \(I_{\text{実効}}\)、抵抗を \(R\) とすると、オームの法則は次のように表せます。
$$ V_{\text{実効}} = R I_{\text{実効}} $$
問題文より \(V_{\text{実効}} = 100 \, \text{V}\)、\(R = 50 \, \Omega\) なので、電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) は、
$$ I_{\text{実効}} = \frac{V_{\text{実効}}}{R} $$
となります。

(ア) 電流の瞬間最大値 \(I_0\)
電流の最大値を \(I_0\)、実効値を \(I_{\text{実効}}\) とすると、関係式は次のようになります。
$$ I_0 = \sqrt{2} I_{\text{実効}} $$
まず \(I_{\text{実効}}\) を計算し、その結果をこの式に代入します。

(イ) 抵抗の消費電力の時間平均 \(\bar{P}\)
抵抗で消費される電力の時間平均 \(\bar{P}\) は、電圧と電流の実効値を用いて次のように計算できます。
$$ \bar{P} = V_{\text{実効}} I_{\text{実効}} $$
この式に、与えられた \(V_{\text{実効}}\) と、先に計算した \(I_{\text{実効}}\) を代入します。

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V_{\text{実効}} = R I_{\text{実効}}\)
  • 実効値と最大値の関係: \(I_0 = \sqrt{2} I_{\text{実効}}\)
  • 交流の平均消費電力: \(\bar{P} = V_{\text{実効}} I_{\text{実効}}\)
計算過程

まず、全計算の基礎となる電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{実効}} &= \frac{V_{\text{実効}}}{R} \\[2.0ex]&= \frac{100}{50} \\[2.0ex]&= 2.0 \, (\text{A})
\end{aligned}
$$
(ア)の計算
この \(I_{\text{実効}}\) の値を使って、最大値 \(I_0\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
I_0 &= \sqrt{2} I_{\text{実効}} \\[2.0ex]&\approx 1.41 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 2.82 \, (\text{A})
\end{aligned}
$$
有効数字\(2\)桁に丸めて、\(I_0 \approx 2.8 \, \text{A}\) となります。

(イ)の計算
電圧と電流の実効値を使って、平均消費電力 \(\bar{P}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\bar{P} &= V_{\text{実効}} I_{\text{実効}} \\[2.0ex]&= 100 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 200 \, (\text{W})
\end{aligned}
$$
有効数字\(2\)桁で表現すると、\(\bar{P} = 2.0 \times 10^2 \, \text{W}\) となります。

この設問の平易な説明

(ア) 電流の最大値

  1. まず、直流と同じようにオームの法則で電流を計算します。ただし、使うのは「実効値」です。電圧が \(100 \, \text{V}\)、抵抗が \(50 \, \Omega\) なので、電流の実効値は \(100 \div 50 = 2.0 \, \text{A}\) です。
  2. これはあくまで平均的な電流の強さです。瞬間的なピークである「最大値」は、実効値の約 \(1.41\) 倍 (\(\sqrt{2}\) 倍) になります。
  3. したがって、電流の最大値は \(2.0 \, \text{A} \times 1.41 = 2.82 \, \text{A}\)、およそ \(2.8 \, \text{A}\) となります。

(イ) 消費電力

  1. 電気製品のカタログに載っている「消費電力」は、この時間平均の電力のことです。
  2. 計算は直流のときと同じで、「電圧 \( \times \) 電流」で求められます。ここでも「実効値」同士をかけ算します。
  3. 電圧の実効値は \(100 \, \text{V}\)、電流の実効値は \(2.0 \, \text{A}\) なので、消費電力は \(100 \, \text{V} \times 2.0 \, \text{A} = 200 \, \text{W}\) となります。
解答 (ア) \(2.8 \, \text{A}\) (イ) \(2.0 \times 10^2 \, \text{W}\)

4 コイルを流れる交流

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「コイルのみを含む交流回路の計算」です。交流電源にコイルを接続した回路について、コイルの交流に対する抵抗の役割を果たす「リアクタンス」を計算し、電流の実効値や平均消費電力を求めます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 誘導リアクタンス (\(X_L\)): 交流回路において、コイルが電流の流れを妨げる度合いを示す量。抵抗(\(\Omega\))と同じ単位を持つ。
  2. 交流におけるオームの法則: 電圧の実効値をリアクタンスで割ると、電流の実効値が求まります。
  3. コイルの消費電力: 理想的なコイルは、エネルギーを消費せず、磁気エネルギーとして蓄えたり放出したりするだけです。
  4. 角速度と周波数の関係: \(\omega = 2\pi f\)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (ア) まず、コイルの自己インダクタンス \(L\) と電源の周波数 \(f\) から、誘導リアクタンス \(X_L\) を計算します。次に、オームの法則を用いて、電圧の実効値 \(V_{\text{実効}}\) とリアクタンス \(X_L\) から電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) を求めます。
  2. (イ) コイルという回路素子の物理的な性質(エネルギーを消費しない)を理解し、平均消費電力を決定します。

 

問(ア) 流れる電流の実効値 \(I_{Le}\) [A]

思考の道筋とポイント
コイルは、自己誘導の働きにより、内部を流れる電流の変化を妨げようとします。交流は常に電流の向きと大きさが変化しているため、コイルは常に電流の流れを妨げるように振る舞います。この「妨げの度合い」が誘導リアクタンス \(X_L\) であり、直流回路における抵抗 \(R\) と同じような役割を果たします。ただし、リアクタンスの大きさは電源の周波数に依存し、周波数が高い(=電流変化が激しい)ほど、リアクタンスは大きくなります。

この設問における重要なポイント

  • 誘導リアクタンスの公式: \(X_L = \omega L = 2\pi fL\)。リアクタンス \(X_L\) は角速度 \(\omega\)(または周波数 \(f\))と自己インダクタンス \(L\) に比例します。
  • 交流におけるオームの法則: コイルにかかる電圧の実効値を \(V_{\text{実効}}\)、流れる電流の実効値を \(I_{\text{実効}}\) とすると、\(V_{\text{実効}} = X_L I_{\text{実効}}\) が成り立ちます。
  • 計算は実効値で: 問題で与えられている電圧は実効値なので、計算で求まる電流も実効値となります。

具体的な解説と立式
コイルの誘導リアクタンスを \(X_L\) とすると、その大きさは次式で与えられます。
$$ X_L = \omega L = 2\pi fL $$
このリアクタンス \(X_L\) を用いて、オームの法則から電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\)(問題文では \(I_{Le}\))を求めます。
$$ I_{\text{実効}} = \frac{V_{\text{実効}}}{X_L} = \frac{V_{\text{実効}}}{2\pi fL} $$
問題文より、\(L = 1.0 \, \text{H}\)、\(f = 50 \, \text{Hz}\)、\(V_{\text{実効}} = 100 \, \text{V}\)、円周率 \(\pi \approx 3.14\) です。

問(イ) 消費電力の時間平均 \(\bar{P}_L\) [W]

思考の道筋とポイント
抵抗は、電流が流れるとジュール熱を発生させ、電気エネルギーを熱エネルギーとして消費します。一方、理想的なコイルはエネルギーを消費しません。コイルは、電流が増加する期間に電源からエネルギーを受け取って磁気エネルギーとして蓄え、電流が減少する期間には蓄えたエネルギーを完全に電源に返します。したがって、1周期全体で見ると、エネルギーのやり取りはあっても、消費(損失)はゼロとなります。

この設問における重要なポイント

  • 理想コイルの性質: 理想的なコイル(内部抵抗が \(0 \, \Omega\) のコイル)では、電力は消費されません。
  • エネルギーの保存: コイルはエネルギーを「消費」するのではなく、「一時的に保存」する素子です。
  • 平均消費電力: 1周期にわたって平均すると、コイルの消費電力は \(0 \, \text{W}\) となります。

具体的な解説と立式
理想的なコイルでは、電圧と電流の位相が \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\)(\(90^\circ\))ずれているため、電力の瞬時値は正負に振動し、時間平均をとると \(0\) になります。したがって、平均消費電力 \(\bar{P}_L\) は、
$$ \bar{P}_L = 0 \, (\text{W}) $$
となります。

使用した物理公式

  • 誘導リアクタンス: \(X_L = 2\pi fL\)
  • 交流におけるオームの法則: \(V_{\text{実効}} = X_L I_{\text{実効}}\)
  • コイルの平均消費電力: \(\bar{P}_L = 0\)
計算過程

(ア)の計算
まず、誘導リアクタンス \(X_L\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
X_L &= 2\pi fL \\[2.0ex]&\approx 2 \times 3.14 \times 50 \times 1.0 \\[2.0ex]&= 314 \, (\Omega)
\end{aligned}
$$
次に、この \(X_L\) を用いて電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{実効}} &= \frac{V_{\text{実効}}}{X_L} \\[2.0ex]&\approx \frac{100}{314} \\[2.0ex]&= 0.318… \, (\text{A})
\end{aligned}
$$
与えられている値の有効数字は\(2\)桁(\(1.0 \, \text{H}\), \(50 \, \text{Hz}\))なので、結果を有効数字\(2\)桁に丸めて、\(I_{\text{実効}} \approx 0.32 \, \text{A}\) となります。

(イ)の計算
理想コイルの平均消費電力は \(0 \, \text{W}\) であるため、計算は不要です。

この設問の平易な説明

(ア) 電流の実効値

  1. コイルは交流にとって「通りにくさ」のようなもの(リアクタンス)を持っています。この通りにくさは、周波数が高いほど大きくなります。まず、この「通りにくさ」を計算します。計算すると約 \(314 \, \Omega\) になります。
  2. あとはオームの法則と同じです。電圧 \(100 \, \text{V}\) を「通りにくさ」\(314 \, \Omega\) で割ると、電流が求まります。\(100 \div 314 \approx 0.32 \, \text{A}\) となります。

(イ) 消費電力

  • 抵抗がお金を使う「消費者」だとすると、コイルは「銀行」のようなものです。
  • コイルは、電源からエネルギー(お金)を預かって磁気(預金)として蓄え、次の瞬間にはそれを電源に返します。
  • 長い目で見れば(時間平均)、コイルはエネルギーを全く使っていない(消費していない)ことになります。そのため、消費電力は \(0 \, \text{W}\) です。
解答 (ア) \(0.32 \, \text{A}\) (イ) \(0 \, \text{W}\)

5 コンデンサーを流れる交流

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「コンデンサーのみを含む交流回路の計算」です。交流電源にコンデンサーを接続した回路について、コンデンサーの交流に対する抵抗の役割を果たす「リアクタンス」を計算し、電流の実効値や平均消費電力を求めます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 容量リアクタンス (\(X_C\)): 交流回路において、コンデンサーが電流の流れを妨げる度合いを示す量。抵抗(\(\Omega\))と同じ単位を持つ。
  2. 交流におけるオームの法則: 電圧の実効値をリアクタンスで割ると、電流の実効値が求まります。
  3. コンデンサーの消費電力: 理想的なコンデンサーは、エネルギーを消費せず、静電エネルギーとして蓄えたり放出したりするだけです。
  4. 角速度と周波数の関係: \(\omega = 2\pi f\)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (ア) まず、コンデンサーの電気容量 \(C\) と電源の周波数 \(f\) から、容量リアクタンス \(X_C\) を計算します。次に、オームの法則を用いて、電圧の実効値 \(V_{\text{実効}}\) とリアクタンス \(X_C\) から電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) を求めます。
  2. (イ) コンデンサーという回路素子の物理的な性質(エネルギーを消費しない)を理解し、平均消費電力を決定します。

 

思考の道筋とポイント
コンデンサーは、電極板に電荷を溜めたり放出したりすることで電流が流れます。交流では電圧の向きが絶えず変わるため、充電と放電が繰り返され、結果として電流が流れ続けます。しかし、コンデンサーは電流の流れをある程度妨げます。この「妨げの度合い」が容量リアクタンス \(X_C\) です。コイルとは逆に、周波数が高い(=電圧変化が激しく、頻繁に充放電が起こる)ほど、コンデンサーは電流を通しやすくなり、リアクタンスは小さくなります。
また、エネルギー消費の観点では、コンデンサーはコイルと同様に理想的にはエネルギーを消費しない素子です。電源からエネルギーを受け取って蓄え、次の瞬間には電源に返すというやり取りを繰り返すだけです。

この設問における重要なポイント

  • 容量リアクタンスの公式: \(X_C = \displaystyle\frac{1}{\omega C} = \frac{1}{2\pi fC}\)。リアクタンス \(X_C\) は角速度 \(\omega\)(または周波数 \(f\))と電気容量 \(C\) に反比例します。
  • 交流におけるオームの法則: コンデンサーにかかる電圧の実効値を \(V_{\text{実効}}\)、流れる電流の実効値を \(I_{\text{実効}}\) とすると、\(V_{\text{実効}} = X_C I_{\text{実効}}\) が成り立ちます。
  • 単位の変換: 電気容量の単位 \(\mu\text{F}\) (マイクロファラド) を \(\text{F}\) (ファラド) に変換して計算する必要があります。\(1 \, \mu\text{F} = 10^{-6} \, \text{F}\) です。
  • 平均消費電力: 理想コンデンサーでは \(0 \, \text{W}\) となります。

具体的な解説と立式
(ア) 流れる電流の実効値 \(I_{Ce}\)
コンデンサーの容量リアクタンスを \(X_C\) とすると、その大きさは次式で与えられます。
$$ X_C = \frac{1}{\omega C} = \frac{1}{2\pi fC} $$
このリアクタンス \(X_C\) を用いて、オームの法則から電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\)(問題文では \(I_{Ce}\))を求めます。
$$ I_{\text{実効}} = \frac{V_{\text{実効}}}{X_C} = \frac{V_{\text{実効}}}{1/(2\pi fC)} = 2\pi fC V_{\text{実効}} $$
問題文より、\(C = 4.0 \, \mu\text{F} = 4.0 \times 10^{-6} \, \text{F}\)、\(f = 50 \, \text{Hz}\)、\(V_{\text{実効}} = 12 \, \text{V}\)、円周率 \(\pi \approx 3.14\) です。

(イ) 消費電力の時間平均 \(\bar{P}_C\)
理想的なコンデンサーでは、電圧と電流の位相が \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\)(\(90^\circ\))ずれているため、電力の瞬時値は正負に振動し、時間平均をとると \(0\) になります。したがって、平均消費電力 \(\bar{P}_C\) は、
$$ \bar{P}_C = 0 \, (\text{W}) $$
となります。

使用した物理公式

  • 容量リアクタンス: \(X_C = \displaystyle\frac{1}{2\pi fC}\)
  • 交流におけるオームの法則: \(V_{\text{実効}} = X_C I_{\text{実効}}\)
  • コンデンサーの平均消費電力: \(\bar{P}_C = 0\)
計算過程

(ア)の計算
電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) を公式 \(I_{\text{実効}} = 2\pi fC V_{\text{実効}}\) を用いて計算します。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{実効}} &= 2\pi f C V_{\text{実効}} \\[2.0ex]&\approx 2 \times 3.14 \times 50 \times (4.0 \times 10^{-6}) \times 12 \\[2.0ex]&= (6.28 \times 50) \times (4.0 \times 10^{-6}) \times 12 \\[2.0ex]&= 314 \times (4.0 \times 10^{-6}) \times 12 \\[2.0ex]&= 1256 \times 10^{-6} \times 12 \\[2.0ex]&= 15072 \times 10^{-6} \\[2.0ex]&\approx 0.015072 \, (\text{A})
\end{aligned}
$$
与えられている値の有効数字は\(2\)桁(\(4.0 \, \mu\text{F}\), \(50 \, \text{Hz}\), \(12 \, \text{V}\))なので、結果を有効数字\(2\)桁に丸めて、\(I_{\text{実効}} = 1.5 \times 10^{-2} \, \text{A}\) となります。

(イ)の計算
理想コンデンサーの平均消費電力は \(0 \, \text{W}\) であるため、計算は不要です。

この設問の平易な説明

(ア) 電流の実効値

  1. コンデンサーも交流にとっての「通りにくさ」(リアクタンス)を持っています。コイルとは逆で、周波数が高いほど通りやすくなります。
  2. この「通りにくさ」を計算し、オームの法則を使って電流を求めます。電圧 \(12 \, \text{V}\) を「通りにくさ」で割ることで、電流の実効値が約 \(1.5 \times 10^{-2} \, \text{A}\) と計算できます。

(イ) 消費電力

  • コンデンサーもコイルと同じく「銀行」のようなものです。
  • 電源からエネルギー(お金)を預かって電気(預金)として蓄え、次の瞬間にはそれを電源に返します。
  • 長い目で見れば(時間平均)、コンデンサーはエネルギーを全く使っていない(消費していない)ことになります。そのため、消費電力は \(0 \, \text{W}\) です。
解答 (ア) \(1.5 \times 10^{-2} \, \text{A}\) (イ) \(0 \, \text{W}\)

6 変圧器

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「変圧器の原理と電圧の変換」です。相互誘導を利用して交流電圧の大きさを変える変圧器(トランス)について、コイルの巻数比と電圧比の関係式を用いて、2次コイルに生じる電圧を計算します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 相互誘導: 1次コイルを流れる交流電流が作る磁束の変化が、鉄心を通じて2次コイルに伝わり、2次コイルに誘導起電力を生じさせる現象。
  2. 変圧器の電圧と巻数比の関係: 理想的な変圧器では、1次コイルと2次コイルの電圧の比は、それぞれのコイルの巻数の比に等しくなります。
  3. エネルギー保存則: 理想的な変圧器ではエネルギーの損失がないため、1次コイル側の電力と2次コイル側の電力は等しくなります。
  4. 実効値: 交流電圧や電流の大きさを示す代表値。特に断りがない場合、交流の電圧・電流の値は実効値を指します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から、1次コイルの巻数 \(N_1\)、2次コイルの巻数 \(N_2\)、1次コイルに加える電圧 \(V_{1e}\) を読み取ります。
  2. 変圧器の電圧と巻数比の関係式を立てます。
  3. その式に数値を代入して、2次コイルの電圧 \(V_{2e}\) を計算します。

 

思考の道筋とポイント
変圧器の基本原理は、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいています。1次コイルに交流電圧をかけると、変化する磁束が鉄心内に生じます。この磁束が2次コイルを貫くことで、2次コイルにも電圧が誘導されます。
理想的な変圧器では、1巻きあたりのコイルを貫く磁束の変化の速さが1次側と2次側で等しいと考えられます。誘導起電力は磁束の変化の速さと巻数に比例するため、結果として「電圧は巻数に比例する」という非常にシンプルな関係が成り立ちます。この関係式を正しく適用することが、この問題を解く鍵となります。

この設問における重要なポイント

  • 電圧と巻数比の公式: 1次側と2次側の電圧をそれぞれ \(V_1\), \(V_2\)、巻数を \(N_1\), \(N_2\) とすると、\(\displaystyle\frac{V_2}{V_1} = \frac{N_2}{N_1}\) という関係が成り立ちます。
  • 電流と巻数比の公式: 電流は電圧とは逆に、巻数比の逆比になります。\(\displaystyle\frac{I_2}{I_1} = \frac{N_1}{N_2}\)。
  • 電力の関係: 上記の2つの式から、理想的な変圧器では電力について \(V_1 I_1 = V_2 I_2\) が成り立ち、エネルギーが保存されることがわかります。
  • 実効値での計算: 問題に与えられている電圧 \(100 \, \text{V}\) は実効値です。変圧器の公式は実効値でも最大値でも成り立ちますが、通常は実効値で計算します。

具体的な解説と立式
1次コイルの巻数を \(N_1\)、2次コイルの巻数を \(N_2\) とします。
同様に、1次コイルの電圧(実効値)を \(V_{1e}\)、2次コイルの電圧(実効値)を \(V_{2e}\) とします。
理想的な変圧器において、電圧と巻数の間には次の比例関係が成り立ちます。
$$ V_{1e} : V_{2e} = N_1 : N_2 $$
これを分数で表すと、
$$ \frac{V_{2e}}{V_{1e}} = \frac{N_2}{N_1} $$
となります。この問題では2次コイルの電圧 \(V_{2e}\) を求めたいので、式を \(V_{2e}\) について解きます。
$$ V_{2e} = \frac{N_2}{N_1} V_{1e} $$
問題文より、\(N_1 = 200\)、\(N_2 = 50\)、\(V_{1e} = 100 \, \text{V}\) です。

使用した物理公式

  • 変圧器の電圧と巻数比の関係: \(\displaystyle\frac{V_{2e}}{V_{1e}} = \frac{N_2}{N_1}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
V_{2e} &= \frac{N_2}{N_1} V_{1e} \\[2.0ex]&= \frac{50}{200} \times 100 \\[2.0ex]&= \frac{1}{4} \times 100 \\[2.0ex]&= 25 \, (\text{V})
\end{aligned}
$$
したがって、2次コイルの電圧は \(25 \, \text{V}\) となります。

この設問の平易な説明

変圧器は、コイルの「巻き数」を変えることで、電圧を自由に変えることができる便利な装置です。
原理はとてもシンプルで、「電圧の比は、巻き数の比と等しい」という関係になっています。
今回は、入力側(1次コイル)が \(200\) 回巻きで、出力側(2次コイル)が \(50\) 回巻きです。巻き数が \(\displaystyle\frac{50}{200} = \frac{1}{4}\) になっています。
したがって、電圧も同じ比率で変化し、\(\displaystyle\frac{1}{4}\) になります。
入力が \(100 \, \text{V}\) なので、出力される電圧は \(100 \, \text{V} \times \displaystyle\frac{1}{4} = 25 \, \text{V}\) となります。

解答 \(25 \, \text{V}\)

7 交流回路のインピーダンス

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「交流回路のインピーダンスの定義」です。抵抗やコイルなどの素子を組み合わせた交流回路全体が持つ「電流の流れにくさ」であるインピーダンスを、回路全体の電圧と電流の関係から求めます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. インピーダンス (\(Z\)): 交流回路における電圧と電流の比で定義される、回路全体の「抵抗」に相当する量。
  2. 交流におけるオームの法則: 直流回路のオームの法則 \(V=RI\) と同様に、交流回路では電圧と電流の実効値を用いて \(V_{\text{実効}} = Z I_{\text{実効}}\) という関係が成り立つ。
  3. 実効値: 交流の電圧や電流の大きさを表す代表値。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 交流回路におけるオームの法則 \(V_{\text{実効}} = Z I_{\text{実効}}\) をインピーダンス \(Z\) についての式に変形します。
  2. 問題文で与えられた電圧の実効値と電流の実効値を式に代入し、インピーダンス \(Z\) を計算します。

 

思考の道筋とポイント
直流回路では、電流の流れにくさを表すのは「抵抗 \(R\)」だけでした。しかし、交流回路では、コイルやコンデンサーも電流の流れを妨げる働き(リアクタンス)をします。この回路全体の抵抗やリアクタンスをすべてひっくるめて、回路全体の「交流に対する流れにくさ」を表したものが「インピーダンス \(Z\)」です。
インピーダンスは、直流の抵抗と同じように、回路全体の電圧と電流の比で定義されます。つまり、直流で \(R = V/I\) であったのと全く同じ形で、交流では \(Z = V_{\text{実効}}/I_{\text{実効}}\) という関係が成り立ちます。この問題では、抵抗やコイルの個別の値は分からなくても、回路全体の電圧と電流が分かっていれば、インピーダンスを求めることができる、という点がポイントです。

この設問における重要なポイント

  • インピーダンス (\(Z\)): 交流回路全体の電圧の実効値 \(V_{\text{実効}}\) と電流の実効値 \(I_{\text{実効}}\) の比で定義されます。単位は抵抗と同じオーム(\(\Omega\))です。
  • 交流におけるオームの法則: \(V_{\text{実効}} = Z I_{\text{実効}}\) という関係式が、あらゆる交流回路で成り立ちます。この式は非常に重要なので必ず覚えましょう。
  • 計算は実効値で: 問題で与えられている電圧と電流はどちらも実効値です。したがって、計算も実効値を用いて行います。

具体的な解説と立式
交流回路におけるインピーダンス \(Z\) は、その回路にかかる電圧の実効値を \(V_{\text{実効}}\)、回路を流れる電流の実効値を \(I_{\text{実効}}\) とすると、次の式で定義されます。
$$ Z = \frac{V_{\text{実効}}}{I_{\text{実効}}} $$
これは、交流回路におけるオームの法則 \(V_{\text{実効}} = Z I_{\text{実効}}\) を \(Z\) について解いた形です。
問題文より、与えられている値は以下の通りです。

  • 電圧の実効値: \(V_{\text{実効}} = 15 \, \text{V}\)
  • 電流の実効値: \(I_{\text{実効}} = 0.50 \, \text{A}\)

これらの値を上記の式に代入して、インピーダンス \(Z\) を計算します。

使用した物理公式

  • 交流回路のインピーダンス(オームの法則): \(Z = \displaystyle\frac{V_{\text{実効}}}{I_{\text{実効}}}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた数値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
Z &= \frac{V_{\text{実効}}}{I_{\text{実効}}} \\[2.0ex]&= \frac{15}{0.50} \\[2.0ex]&= \frac{15 \times 2}{0.50 \times 2} \\[2.0ex]&= 30 \, (\Omega)
\end{aligned}
$$
したがって、この回路のインピーダンスは \(30 \, \Omega\) となります。

この設問の平易な説明

直流回路での「抵抗」の親玉が、交流回路での「インピーダンス」だと考えてみましょう。
直流回路のオームの法則は「電圧 \(=\) 抵抗 \( \times \) 電流」でした。これを変形すると「抵抗 \(=\) 電圧 \( \div \) 電流」となります。
交流回路でもこれは全く同じで、「インピーダンス \(=\) 電圧 \( \div \) 電流」という関係が成り立ちます。
この問題では、電圧が \(15 \, \text{V}\)、電流が \(0.50 \, \text{A}\) なので、インピーダンスは \(15 \div 0.50 = 30 \, \Omega\) と、単純な割り算で計算できます。

解答 \(30 \, \Omega\)

8 振動電流の周波数

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「LC回路で起こる電気振動の固有周波数」です。コンデンサーに蓄えられた静電エネルギーと、コイルに蓄えられる磁気エネルギーが互いに移り変わることで生じる、電気振動の周波数を公式を用いて計算します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. LC電気振動: 抵抗を含まないコイルとコンデンサーだけの回路で、エネルギーが静電エネルギーと磁気エネルギーの間を行き来する現象。
  2. 固有周波数: 回路の \(L\) と \(C\) の値だけで決まる、その回路固有の振動数。
  3. 単振動とのアナロジー: LC回路の電気振動は、力学における「ばね振り子」の単振動と数学的に同じ形で記述できる。
  4. 固有周波数の公式: \(f = \displaystyle\frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から自己インダクタンス \(L\) と電気容量 \(C\) の値を読み取ります。
  2. 電気容量の単位を基本単位である \(\text{F}\) (ファラド) に変換します。
  3. LC回路の固有周波数の公式に、これらの値を代入して周波数 \(f\) を計算します。

 

思考の道筋とポイント
コイルとコンデンサーを接続したLC回路は、力学における「ばねとおもり」の系(単振動)と非常によく似た振る舞いをします。

  1. まず、充電されたコンデンサーが放電を始め、コイルに電流が流れます。(おもりが最も伸びた位置から動き出すイメージ)
  2. 電流が流れるとコイルに磁気エネルギーが蓄えられ、コンデンサーの電荷はゼロになります。(おもりが振動中心を最大速度で通過するイメージ)
  3. コイルは電流を流し続けようとする性質があるため、逆向きにコンデンサーを充電します。(おもりが慣性で最も縮んだ位置まで動くイメージ)
  4. コンデンサーが逆向きに最大まで充電されると、今度は逆向きに放電が始まります。

このエネルギーのやり取りが繰り返される現象が「電気振動」です。この振動の速さ(周波数)は、コイルの性質 \(L\) とコンデンサーの性質 \(C\) だけで決まり、これを「固有周波数」と呼びます。

この設問における重要なポイント

  • 固有周波数の公式: \(f = \displaystyle\frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\) を正しく覚えて適用することが最も重要です。
  • 単位の変換: 電気容量の単位 \(\mu\text{F}\) (マイクロファラド) を \(\text{F}\) (ファラド) に変換することを忘れないようにします。\(1 \, \mu\text{F} = 10^{-6} \, \text{F}\) です。
  • LC積と周波数の関係: \(L\) や \(C\) の値が大きいほど、エネルギーのやり取りが「ゆっくり」になるため、周波数は低く(周期は長く)なります。公式の分母に \(\sqrt{LC}\) があることと、この物理的イメージが一致していることを確認すると理解が深まります。
  • ルートの計算: 指数を含む平方根の計算を正確に行うことが求められます。

具体的な解説と立式
LC回路で生じる電気振動の固有周波数を \(f\) とすると、自己インダクタンス \(L\) と電気容量 \(C\) を用いて次の式で与えられます。
$$ f = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}} $$
問題文より、与えられている値は以下の通りです。

  • 自己インダクタンス: \(L = 10 \, \text{H}\)
  • 電気容量: \(C = 10 \, \mu\text{F} = 10 \times 10^{-6} \, \text{F}\)

これらの値を上記の公式に代入して、周波数 \(f\) を計算します。円周率 \(\pi\) は \(3.14\) として計算します。

使用した物理公式

  • LC回路の固有周波数: \(f = \displaystyle\frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\)
計算過程

まず、公式の分母にある \(\sqrt{LC}\) の部分を計算します。
$$
\begin{aligned}
LC &= 10 \times (10 \times 10^{-6}) \\[2.0ex]&= 100 \times 10^{-6} \\[2.0ex]&= 10^2 \times 10^{-6} \\[2.0ex]&= 10^{-4}
\end{aligned}
$$
次に、この値の平方根をとります。
$$ \sqrt{LC} = \sqrt{10^{-4}} = (10^{-4})^{\frac{1}{2}} = 10^{-2} $$
最後に、これらの結果を周波数の公式に代入します。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2\pi \times 10^{-2}} \\[2.0ex]&\approx \frac{1}{2 \times 3.14 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]&= \frac{1}{6.28 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]&= \frac{100}{6.28} \\[2.0ex]&\approx 15.92… \, (\text{Hz})
\end{aligned}
$$
問題文で与えられている値の有効数字は\(2\)桁(\(10 \, \mu\text{F}\), \(10 \, \text{H}\))なので、結果を有効数字\(2\)桁に丸めて、\(f \approx 16 \, \text{Hz}\) となります。

この設問の平易な説明

コンデンサー(電気を溜めるタンク)とコイル(電流を流し続けようとする水車)をつなぐと、電気が行ったり来たりする「電気のブランコ」のような現象が起こります。
このブランコが\(1\)秒間に何回往復するか(周波数)は、タンクの容量(\(C\))と水車の勢い(\(L\))だけで決まっています。この周波数は「固有周波数」と呼ばれ、専用の公式で計算できます。
その公式が \(f = \displaystyle\frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\) です。
この公式に、問題で与えられた \(L=10 \, \text{H}\)、\(C=10 \, \mu\text{F}\) を代入して計算すると、約 \(16 \, \text{Hz}\) となります。これは、\(1\)秒間に約\(16\)回、電気が往復振動することを意味します。

解答 \(16 \, \text{Hz}\)

9 電磁波の位相

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「電磁波の基本的な構造と性質」です。空間を伝わる電磁波について、その構成要素である電場と磁場の振動の関係性、特に位相差についての理解を問います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電磁波が横波であること: 電場と磁場の振動方向は、電磁波の進行方向に対して垂直です。
  2. 電場(\(E\))と磁場(\(B\))の振動方向の関係: 電場の振動方向と磁場の振動方向は、互いに垂直です。
  3. 電場(\(E\))と磁場(\(B\))の位相の関係: 電場と磁場の振動は、タイミングがずれることなく、常に同位相で起こります。
  4. 電磁波の進行方向と電場・磁場の関係: 電磁波の進行方向は、電場(\(E\))から磁場(\(B\))へ右ねじを回したときにねじが進む向きと一致します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 電磁波の構造をイメージします。
  2. 電場と磁場の振動が、時間的・空間的にどのような関係にあるかを確認します。
  3. 特に、振動のタイミング(位相)に着目し、その差がいくらになるかを答えます。

 

思考の道筋とポイント
電磁波は、電場と磁場がお互いを生成し合いながら空間を伝播していく波です。これは、ジェームズ・クラーク・マクスウェルが理論的にその存在を予言し、後にハインリヒ・ヘルツが実験で確認しました。この電磁波の性質を理解する上で、電場と磁場の振動の様子を視覚的に捉えることが非常に重要です。特に「位相が同じ」とは、ある場所で電場の振動の山が来たとき、同時に磁場の振動の山も来る、というように、2つの波のタイミングが完全に一致している状態を指します。

この設問における重要なポイント

  • 横波: 電磁波の進行方向に対して、電場と磁場の振動方向はどちらも垂直です。
  • 直交性: 電場の振動方向と磁場の振動方向も互いに垂直です。
  • 同位相: 電場と磁場の振動は、タイミングが全く同じです。つまり、ある場所と時刻で電場が最大値をとるならば、その場所・その時刻で磁場も最大値となります。同様に、電場がゼロになる瞬間に磁場もゼロになります。したがって、位相差は \(0\) です。
  • 進行方向: 電磁波の進行方向は、電場(\(\vec{E}\))の向きから磁場(\(\vec{B}\))の向きへ右ねじを回したときにねじが進む向き(ベクトル\(\vec{E} \times \vec{B}\)の向き)と一致します。

具体的な解説と立式
この問題は、電磁波の基本的な性質に関する知識を問うものであり、計算式を立てる必要はありません。
電磁波は、空間を伝わる電場と磁場の波です。マクスウェルの方程式によれば、電場の時間変化が磁場を生み、磁場の時間変化が電場を生むという相互作用によって、波として空間を伝播していきます。

このとき、電場ベクトル \(\vec{E}\) と磁場ベクトル \(\vec{B}\) は、以下の重要な性質を持ちます。

  1. \(\vec{E}\) と \(\vec{B}\) は、どちらも進行方向に対して垂直な平面内で振動します(横波)。
  2. \(\vec{E}\) と \(\vec{B}\) は、互いに常に直交しています。
  3. \(\vec{E}\) と \(\vec{B}\) の振動は「同位相」です。

「同位相」とは、2つの波の振動のタイミングが完全に一致していることを意味します。例えば、電場の振動が \(E = E_0 \sin(\omega t – kx)\) と表されるとき、磁場の振動は \(B = B_0 \sin(\omega t – kx)\) と、同じ \(\sin\) 関数で表されます。位相のずれを表す項がないため、位相差は \(0\) となります。

使用した物理公式
この問題では、数式ではなく、以下の電磁波の概念的な性質を用います。

  • 電場と磁場は進行方向に垂直(横波)。
  • 電場と磁場は互いに垂直。
  • 電場と磁場は同位相。
計算過程

この問題に計算過程はありません。上記の「具体的な解説と立式」で述べた電磁波の性質の確認そのものが解答プロセスとなります。電場と磁場は同位相で変動するため、位相差は \(0\) です。

この設問の平易な説明

電磁波を「二人三脚で進む波」に例えてみましょう。このペアは「電場くん」と「磁場くん」です。

  • 彼らは前に進むとき、真横にジャンプしながら進みます(横波)。
  • 電場くんが上下にジャンプするなら、磁場くんは左右にジャンプするように、お互いのジャンプの方向は常に直角になっています。
  • そして一番大事なのが、二人のジャンプのタイミングが「ピッタリ同じ」ということです。電場くんが一番高くジャンプした瞬間に、磁場くんも一番遠くにジャンプします。電場くんが地面にいるとき、磁場くんも真ん中にいます。

このように、二人の動きのタイミングには全くズレがありません。この「タイミングのズレ」を物理では「位相差」と呼びます。ズレがないので、位相差は \(0\) ということになります。

解答 \(0\)
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