基本問題
349 薄膜による光の干渉
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(4)の別解: 光路差を用いて干渉条件を考える解法
- 模範解答が経路差と位相変化を別々に考慮して条件式を立てるのに対し、別解では光が媒質中を進む効果を波長の短縮ではなく光路長の伸びとして捉える「光路差」の考え方を用いて、より統一的に干渉条件を導出します。
- 設問(4)の別解: 光路差を用いて干渉条件を考える解法
- 上記の別解が有益である理由
- 思考の統一性: 「光路差 = (強め合い/弱め合いの条件)」という形で、ヤングの実験や回折格子など他の干渉問題と同じ枠組みで問題を捉えることができ、思考が整理しやすくなります。
- 物理概念の深化: なぜ媒質中では波長が短くなるのか、それが光路長という概念とどう等価なのか、という物理的理解が深まります。
- 解法の効率化: 位相変化を「光路差が\(\lambda/2\)ずれる」と機械的に処理できるため、特に複雑な問題において、より迅速かつ間違いなく立式できる強力な手法となります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「薄膜による光の干渉」です。シャボン玉や水面に浮いた油膜が色づいて見える現象の原理を扱います。膜の上面で反射する光と、下面で反射する光の2つが干渉し合うことで、特定の波長の光が強められたり弱められたりします。この問題では、経路差の計算と、反射における「位相の変化」が大きなポイントとなります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 光の屈折の法則: 光が異なる媒質の境界面に入射するとき、その一部は反射し、一部は屈折して進むこと。入射角と屈折角の関係を理解していること。
- 経路差の幾何学的計算: 干渉する2つの光が、それぞれ進む経路の長さの差を、図形と三角関数を用いて正しく計算できること。
- 媒質中の波長: 屈折率\(n\)の媒質中では、光の波長が真空中の\(1/n\)倍に短くなること。
- 反射における位相の変化: 光が屈折率の小さい媒質から大きい媒質へ向かって進み、その境界面で反射するとき、位相がπ(半波長分)ずれる(逆になる)こと。逆に、大きい方から小さい方へ向かう際の反射では位相は変化しないこと。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、図を注意深く読み取り、2つの光の経路差を、膜の厚さ\(d\)と屈折角\(r\)を用いて幾何学的に表現します。
- (2)では、屈折率\(n\)の媒質中における波長\(\lambda’\)と、真空中(空気中)の波長\(\lambda\)の関係式を答えます。
- (3)では、光Iと光IIがそれぞれどの境界面で反射しているかに着目し、屈折率の大小関係から位相が変化するかどうかを判断します。
- (4)では、(1)で求めた経路差、(2)で考えた油膜中の波長、(3)で判断した位相変化の3つの要素をすべて考慮して、2つの光が強め合う条件を立式します。
- (5)では、(1)で求めた経路差の式が、入射角\(i\)(とそれに伴う屈折角\(r\))の変化によってどのように変わるかを分析します。
問(1)
思考の道筋とポイント
光Iと光IIの経路差を求める問題です。問題文で「経路差\(l = CD + DC’\)」と与えられています。この長さを、図中の幾何学的な関係、特に直角三角形\(\triangle C’CE\)に着目して、\(d\)と\(r\)で表すことを目指します。
この設問における重要なポイント
- 経路差は、光IIが余分に進む経路 \(l = CD + DC’\) である。
- 図の対称性から、\(DC’ = DE\) であるため、経路差は \(l = CD + DE = CE\) となる。
- 直角三角形 \(\triangle C’CE\) に着目する。この三角形の辺の長さと角度の関係を正しく把握することが鍵。
- 辺 \(C’E\) の長さは、膜の厚さ\(d\)の2倍、すなわち \(2d\) である。
- 図の平行線の錯角の関係から、\(\angle EC’C = r\) となる。
具体的な解説と立式
問題文より、経路差 \(l\) は \(CD + DC’\) です。
図において、点Eは点C’を下面について対称移動した点であるため、\(DC’ = DE\) となります。
よって、経路差 \(l\) は、
$$ l = CD + DE = CE $$
次に、線分CEの長さを求めます。
点C’から下面に垂線C’Fを下ろすと、その長さは膜の厚さ\(d\)に等しくなります。
また、点Eは点C’の対称点なので、FEの長さも\(d\)に等しくなります。
したがって、C’Eの長さは \(C’F + FE = d+d = 2d\) となります。
ここで、直角三角形 \(\triangle C’CE\) を考えます。
光線BCとC’Eは平行であり、直線CC’がそれらと交わっているため、錯角は等しくなります。よって、\(\angle BC C’ = \angle EC’C\) です。
さらに、\(\triangle BCC’\)において、入射面と反射面が平行であることから、屈折角と\(\angle BCC’\)は等しく \(r\) となります。
したがって、\(\angle EC’C = r\) です。
この直角三角形 \(\triangle C’CE\) において、斜辺がC’E、隣辺がCEなので、三角比(コサイン)の関係は次のようになります。
$$ \cos r = \frac{\text{隣辺}}{\text{斜辺}} = \frac{CE}{C’E} $$
この式を、求めたい経路差 \(l = CE\) について解きます。
使用した物理公式
- 三角比の定義: \(\cos\theta = \frac{\text{隣辺}}{\text{斜辺}}\)
$$
\begin{aligned}
\cos r &= \frac{CE}{C’E}
\end{aligned}
$$
上の式を変形すると、
$$
\begin{aligned}
CE &= C’E \cos r
\end{aligned}
$$
\(C’E = 2d\) を代入すると、
$$
\begin{aligned}
l = CE = 2d \cos r
\end{aligned}
$$
光IIが光Iよりも長く進む距離(経路差)を計算します。図をよく見ると、この経路差はCEという線分の長さに等しいことがわかります。次に、C、C’、Eの3点を結んでできる大きな直角三角形\(\triangle C’CE\)に注目します。この三角形の辺の長さは、膜の厚さ\(d\)を使って \(C’E = 2d\) と表せます。また、角度の関係を調べると、角C’の部分が屈折角\(r\)と等しいことがわかります。三角比の「コサイン」を使えば、辺CEの長さは「\(CE = C’E \times \cos r\)」と計算できるので、最終的に経路差は \(2d\cos r\) となります。
経路差は \(l = 2d\cos r\) と求められました。これは薄膜干渉における経路差の公式として広く知られているものであり、図の幾何学的な関係から正しく導出できました。
問(2)
思考の道筋とポイント
屈折率\(n\)の媒質中での光の波長\(\lambda’\)が、空気中(屈折率1)での波長\(\lambda\)とどう関係するかを問う問題です。これは光の波動性に関する基本的な知識です。
この設問における重要なポイント
- 光の速さは、屈折率\(n\)の媒質中では空気中の\(1/n\)倍になる (\(v = c/n\))。
- 光の振動数\(f\)は、媒質が変わっても変化しない。
- 波の基本式 \(v = f\lambda\) を用いる。
具体的な解説と立式
空気中での光の速さを\(c\)、波長を\(\lambda\)、振動数を\(f\)とすると、\(c = f\lambda\) が成り立ちます。
油膜中での光の速さを\(v\)、波長を\(\lambda’\)とすると、振動数\(f\)は変わらないので、\(v = f\lambda’\) が成り立ちます。
また、屈折率の定義より \(v = \displaystyle\frac{c}{n}\) です。
これらの式から\(\lambda’\)を求めます。
$$ \lambda’ = \frac{v}{f} $$
上の式に \(v=c/n\) を代入すると、
$$ \lambda’ = \frac{c/n}{f} = \frac{1}{n} \frac{c}{f} $$
ここで \(\displaystyle\frac{c}{f} = \lambda\) なので、
$$ \lambda’ = \frac{\lambda}{n} $$
使用した物理公式
- 波の基本式: \(v=f\lambda\)
- 屈折率と光速の関係: \(v=c/n\)
立式したものがそのまま答えとなります。
光が油膜のような物質の中に入ると、スピードが遅くなります。屈折率\(n\)の物質の中では、スピードは\(1/n\)倍になります。光の振動(1秒間にブルブル震える回数)は変わらないので、スピードが落ちた分だけ、波のひとつの長さ(波長)が縮んでしまいます。具体的には、波長も\(1/n\)倍になります。
油膜中での波長は \(\lambda’ = \displaystyle\frac{\lambda}{n}\) となります。これは物理的に正しい関係です。
問(3)
思考の道筋とポイント
光が媒質の境界面で反射するときの「位相の変化」についての問題です。位相が変化するかどうかは、光が進んできた媒質の屈折率と、反射する相手の媒質の屈折率の大小関係で決まります。
この設問における重要なポイント
- 位相が逆になる(πずれる)条件: 屈折率が「小 → 大」の境界面で反射するとき。
- 位相が変わらない条件: 屈折率が「大 → 小」の境界面で反射するとき。
- 空気(屈折率1)、油(屈折率\(n\))、水(屈折率1.3)の大小関係は \(1 < 1.3 < n\)。
具体的な解説と立式
光Iの反射:
光Iは、点C’で反射します。これは、屈折率の小さい「空気」(屈折率1)から、屈折率の大きい「油」(屈折率\(n>1.3\))へ向かう光が、その境界面で反射するケースです。
これは「小 → 大」の反射なので、位相は逆になります(πずれます)。
光IIの反射:
光IIは、点Dで反射します。これは、屈折率の大きい「油」(屈折率\(n\))から、屈折率の小さい「水」(屈折率1.3)へ向かう光が、その境界面で反射するケースです(問題文より \(n>1.3\))。
これは「大 → 小」の反射なので、位相は変わりません。
光の反射には2種類あります。壁にボールをぶつけるように、硬いもの(屈折率が大きい)に当たって跳ね返るときは、ボールが潰れて元に戻るように「逆向き」になって跳ね返ります(位相が逆になる)。一方、柔らかいもの(屈折率が小さい)に当たって跳ね返るときは、向きはそのままです(位相は変わらない)。
光Iは「空気→油」なので「小→大」の反射、つまり位相は逆になります。
光IIは「油→水」なので「大→小」の反射、つまり位相は変わりません。
光Iの位相は逆になり、光IIの位相は変わらない。これは反射の法則に則った正しい結論です。
問(4)
思考の道筋とポイント
これまでの結果を総動員して、光Iと光IIが強め合う条件を立式します。強め合い・弱め合いは「経路差」と「位相の変化」の両方を考慮して決まります。
この設問における重要なポイント
- 経路差 \(l = 2d\cos r\)。
- 油膜中での波長は \(\lambda’ = \lambda/n\)。
- 光Iのみ位相が逆になる(πずれる)。これは、経路差が半波長分 \(\lambda’/2\) だけずれたことと等価。
具体的な解説と立式
2つの光が干渉して強め合う(または弱め合う)条件は、2つの光の「山」と「山」(または「谷」と「谷」)が一致するかどうかで決まります。
もし位相の変化がなければ、強め合いの条件は「経路差 = 波長の整数倍」です。
$$ l = m\lambda’ \quad (\text{もし位相変化がなければ}) $$
しかし、この問題では光Iだけが反射で位相が逆になっています。これは、光Iの山と谷が入れ替わったことを意味し、光IIに対して半波長分(\(\lambda’/2\))だけ位相がずれたのと同じ効果をもたらします。
したがって、もともと山と山が重なるはずだった条件(経路差が\(m\lambda’\))では、光Iの山が谷に変わってしまうため、弱め合ってしまいます。
逆に、もともと弱め合うはずだった条件、すなわち「経路差 = 波長の半整数倍」のときに、光Iの位相がずれることで山と谷がひっくり返り、結果として山と山が重なって強め合います。
よって、強め合いの条件は、
$$ l = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda’ $$
となります。ここに、(1)で求めた \(l=2d\cos r\) と、(2)で求めた \(\lambda’ = \lambda/n\) を代入します。
$$ 2d\cos r = \left(m + \frac{1}{2}\right)\frac{\lambda}{n} $$
ここで \(m=0, 1, 2, \dots\) です。
使用した物理公式
- (1), (2), (3)の結果
立式したものがそのまま答えとなります。
光を強め合わせるには、普通は「経路の差」が「膜の中での波長\(\lambda’\)」のちょうど整数倍になればOKです。しかし今回は、光Iだけが反射のときに「裏返って(位相が逆になって)」しまいました。この「裏返り」は、波が半分だけズレるのと同じ効果です。
そのため、強め合う条件も、普通の条件から半分だけズレた「(整数+半分)倍」という条件に変わってしまいます。このルールに、(1)と(2)で求めた式を代入すれば、答えの式が出来上がります。
強め合いの条件式は \(2d\cos r = (m+1/2)\lambda/n\) となり、経路差、膜中での波長、位相変化のすべてが正しく反映された式となっています。
思考の道筋とポイント
経路差と媒質中の波長を別々に考える代わりに、「光路差」という統一的な概念で干渉を考えます。光路差は、経路長に屈折率を掛けたもので、真空中を進んだとした場合の実効的な長さを表します。
この設問における重要なポイント
- 光路差 = (光IIの光路長) – (光Iの光路長)
- 光路差は \(2nd\cos r\) となる。(これは薄膜干渉における標準的な結果)
- 光Iのみ位相がπずれる。これは、光路差が\(\lambda/2\)ずれることと等価。
具体的な解説と立式
光Iと光IIの光路差を考えます。これは、幾何的な経路差 \(2d\cos r\) に油膜の屈折率\(n\)を掛けたものに相当し、\(2nd\cos r\) となります。
一方、(3)で確認したように、光I(空気→油の反射)のみ位相がπ(半波長分)ずれます。
干渉条件は、この光路差と位相のずれを合わせて考えます。
強め合いの条件は、本来なら「光路差 = \(m\lambda\)」ですが、片方だけ位相がπずれているため、条件が逆転し、「光路差 = \((m+1/2)\lambda\)」となります。
したがって、
$$ 2nd\cos r = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda $$
ここで \(m=0, 1, 2, \dots\) です。
使用した物理公式
- 薄膜の光路差: \(2nd\cos r\)
- 干渉条件(片側のみ位相がπずれる場合)
立式したものがそのまま答えとなります。この式は、主たる解法で得られた \(2d\cos r = (m+1/2)\lambda/n\) の両辺に\(n\)を掛けたものと全く同じです。
別の考え方として、「光路差」という便利なものさしを使います。油膜の中を進む距離は、空気中に換算すると\(n\)倍長く感じられます。この「空気中換算の距離の差」が光路差で、\(2nd\cos r\) と計算できます。
あとは同じで、光Iだけが裏返っているので、強め合いの条件は「光路差 = (整数+半分)× 波長」となります。このルールに光路差の式を当てはめれば、答えの式が作れます。
主たる解法と全く同じ条件式が得られました。光路差を用いることで、より多くの干渉問題に共通する考え方で解くことができ、非常に汎用性が高いです。
問(5)
思考の道筋とポイント
入射角\(i\)を大きくしたときに、経路差\(l=2d\cos r\)がどう変化するかを問う問題です。入射角\(i\)と屈折角\(r\)の関係、そして屈折角\(r\)と\(\cos r\)の関係を順に考えます。
この設問における重要なポイント
- 屈折の法則 \(\sin i = n\sin r\) より、\(i\)が大きくなれば\(r\)も大きくなる。
- \(r\)が大きくなると(\(0^\circ \to 90^\circ\))、\(\cos r\)の値は小さくなる(\(1 \to 0\))。
- 経路差の式 \(l=2d\cos r\) にこの変化を適用する。
具体的な解説と立式
経路差は \(l = 2d\cos r\) です。この式の中で、\(2d\)は定数なので、経路差\(l\)の変化は\(\cos r\)の変化によって決まります。
入射角\(i\)と屈折角\(r\)の間には、屈折の法則 \(\sin i = n\sin r\) (\(n>1\)) が成り立ちます。
この式から、入射角\(i\)が大きくなると、\(\sin i\)も大きくなります。それに伴い、\(\sin r\)も大きくならなければならないため、屈折角\(r\)も大きくなります。
角度\(r\)は \(0 \le r < 90^\circ\) の範囲で考えられます。この範囲で、角度\(r\)が大きくなると、\(\cos r\)の値は小さくなります。(例: \(\cos 0^\circ = 1\), \(\cos 60^\circ = 0.5\), \(\cos 90^\circ = 0\))
したがって、\(i\)が大きくなる → \(r\)が大きくなる → \(\cos r\)が小さくなる、という連鎖が起こります。
この結果、経路差 \(l = 2d\cos r\) も小さくなります。
光をより斜めから(入射角\(i\)を大きく)当てると、油膜の中を進む光もより斜めになります(屈折角\(r\)が大きくなる)。光が斜めに進むほど、油膜の厚さ方向に進む成分は減ってしまいます。経路差は、この厚さ方向の往復距離に関係しているので、光が斜めになるほど経路差は小さくなります。数式で言うと、\(r\)が大きくなると\(\cos r\)が小さくなるので、経路差\(2d\cos r\)も小さくなる、ということです。
入射角\(i\)が大きくなると、経路差は小さくなる。これは物理的な直感とも一致する妥当な結論です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 経路差と位相変化を総合した干渉条件
- 核心: 薄膜の干渉を理解する上で最も重要なのは、「幾何学的な経路の差」と「反射による位相の変化」という2つの要素を正しく組み合わせて、最終的な干渉条件(強め合い or 弱め合い)を判断することです。
- 理解のポイント:
- 経路差 \(2d\cos r\): 光が膜に斜めに入射するため、単純な往復距離\(2d\)ではなく、角度を考慮した\(2d\cos r\)が実質的な経路差になることを幾何学的に理解する必要があります。
- 位相変化のルール: 屈折率が「小→大」の境界面での反射でのみ位相がπずれる(逆になる)というルールを正確に記憶し、適用することが不可欠です。
- 条件の逆転: 片方の光だけ位相がπずれる(半波長ずれる)と、強め合いと弱め合いの条件が通常(位相のずれがない場合)と逆転します。つまり、「経路差 = 半整数波長」で強め合い、「経路差 = 整数波長」で弱め合いとなります。
- 光路差という統一的な視点
- 核心: 媒質中の経路長に屈折率を掛けた「光路長」という概念を用いると、様々な干渉現象をより統一的に扱うことができます。
- 理解のポイント:
- 光路差 \(2nd\cos r\): 媒質中の経路差\(2d\cos r\)に屈折率\(n\)を掛けることで、真空中を進んだ場合の等価な長さに換算します。これが光路差です。
- 条件式 \(光路差 = (m+1/2)\lambda\): 光路差で考えた場合、比較対象となる波長は真空中(空気中)の波長\(\lambda\)そのものになります。位相のずれを光路差\(\lambda/2\)のずれとして扱えば、すべての干渉問題を「光路差と\(\lambda\)の関係」という一つの枠組みで考えることができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ニュートンリング: 平面ガラスの上に凸レンズを置いたときに生じる干渉縞です。レンズとガラスの間の「空気層」が薄膜の役割を果たします。この場合、下面(ガラス面)での反射で位相がπずれます。中心(接触点)では膜厚が0なので、位相のずれだけで弱め合い(暗く)なります。
- くさび形空気層: 2枚のガラス板を重ね、一端に薄い紙などを挟んでくさび形の隙間を作ったときの干渉です。これも空気層が薄膜となり、場所によって厚さが変わるため、等間隔の干渉縞が見られます。
- 無反射コーティング: カメラのレンズなどに応用されています。特定の波長の光(例えば可視光の中心である緑色光)に対して、膜の厚さを調整し、反射光がちょうど弱め合うように設計します。これにより、不要な反射を抑えて透過する光を増やすことができます。
- 初見の問題での着眼点:
- 干渉する2つの光を特定する: どの境界面で反射した光同士が干渉しているのかをまず図で確認します。
- 屈折率の大小関係を整理する: 関与するすべての媒質(空気、膜、下の媒質)の屈折率の大小関係を書き出し、不等号で明確にします(例: \(n_{\text{空気}} < n_{\text{水}} < n_{\text{油}}\))。
- 位相変化をチェックする: 2つの反射がそれぞれ「小→大」か「大→小」かを判定し、位相がπずれる反射に印をつけます。両方ずれるか、両方ずれない場合は条件は逆転せず、片方だけずれる場合に条件が逆転します。
- 経路差(または光路差)を計算する: 膜の厚さ、入射角、屈折角から、幾何学的に経路差(\(2d\cos r\))または光路差(\(2nd\cos r\))を計算します。垂直入射(\(i=0, r=0\))の場合は、最も簡単な\(2d\)(または\(2nd\))となります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 位相変化のルールの混同:
- 誤解: どちらの反射で位相がずれるのかを曖昧に記憶している。または、すべての反射で位相がずれると勘違いする。
- 対策: 「硬い壁からの跳ね返りは逆向き」というイメージで、「屈折率が小さい媒質(柔らかい)から大きい媒質(硬い)へ向かう境界面での反射」でのみ位相がπずれる、と正確に覚え直しましょう。
- 経路差と光路差の混同:
- 誤解: 経路差(\(2d\cos r\))と光路差(\(2nd\cos r\))をごちゃ混ぜにしてしまい、比較する波長を間違える(例: 光路差を膜中の波長\(\lambda/n\)と比較してしまう)。
- 対策: 「経路差(幾何学的な長さの差)を使うなら、比較対象は膜の中の波長\(\lambda/n\)」「光路差(空気中換算の長さの差)を使うなら、比較対象は空気中の波長\(\lambda\)」という対応関係をセットで明確に区別して覚えることが重要です。
- cos r の変化の勘違い:
- 誤解: (5)で「入射角\(i\)が大きくなると屈折角\(r\)も大きくなる」までは分かっても、焦って「だから\(\cos r\)も大きくなる」と勘違いしてしまう。
- 対策: 単位円を思い浮かべる癖をつけましょう。角度\(\theta\)が0°から90°に増加するとき、y座標である\(\sin\theta\)は増加しますが、x座標である\(\cos\theta\)は減少します。この基本的な三角関数の性質を常に意識することがミスを防ぎます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 経路差 \(l = 2d\cos r\):
- 選定理由: 干渉の条件を考える上で、2つの波がどれだけ違う道のりを進んだかを知ることは全ての基本です。この式は、その幾何学的な差を、測定可能な量(膜厚\(d\))と、入射角から決まる物理量(屈折角\(r\))で表現するための、最も直接的な幾何学的ツールです。
- 適用根拠: 問題の図に描かれた幾何学的な関係(対称性や三角比)を正しく適用することで、この式が導出されます。物理法則というよりは、数学的な図形問題としてこの式を導いています。
- 強め合いの条件 \(l = (m+1/2)\lambda’\):
- 選定理由: (4)では、光Iと光IIが強め合う条件を問われています。通常なら\(l=m\lambda’\)ですが、(3)で「片方の光だけ位相がπずれる」という重要な事実が判明したため、条件が逆転したこちらの式を選択する必要があります。
- 適用根拠: 位相がπずれるということは、波の山と谷が入れ替わることを意味します。その結果、本来なら山と谷が重なって弱め合うはずの「経路差が半整数波長」の状況で、片方の谷が山に入れ替わるために「山と山」が重なり、強め合うことになります。この物理的な現象の理解が、この公式を選択する論理的な根拠です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 図を丁寧に描く・読み取る: (1)の経路差の計算は、図の幾何学的な関係を正確に読み取れるかにかかっています。特に角度の関係(錯角など)は間違いやすいポイントです。自分でフリーハンドでも図を描き、どこが\(r\)に等しいのか、どの三角形に着目すべきかを視覚的に確認する作業が非常に有効です。
- 条件を箇条書きで整理する: (4)のように複数の要素(経路差、膜中波長、位相変化)を組み合わせる問題では、計算を始める前に、
- 経路差: \(l = 2d\cos r\)
- 膜中波長: \(\lambda’ = \lambda/n\)
- 位相変化: 光Iのみπずれる → 条件逆転
のように、使う道具を箇条書きにして整理する習慣をつけましょう。これにより、考慮漏れを防ぎ、思考の道筋が明確になります。
- 言葉と数式を一致させる: 「入射角が大きくなる」→ \(i \uparrow\)、「屈折角が大きくなる」→ \(r \uparrow\)、「\(\cos r\)が小さくなる」→ \(\cos r \downarrow\)、「経路差が小さくなる」→ \(l \downarrow\) のように、(5)の思考プロセスを言葉だけでなく、矢印などを使って数式的にメモしながら進めると、論理の飛躍や勘違いを防ぐことができます。
350 薄膜による光の干渉
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(ア)および(イ)(ウ)の別解: 光路差を用いて干渉条件を考える解法
- 模範解答が「経路差」と「膜中の波長」を用いて条件式を立てるのに対し、別解では「光路差」と「空気中の波長」を用いて、より統一的な視点から条件式を立てます。
- 設問(ア)および(イ)(ウ)の別解: 光路差を用いて干渉条件を考える解法
- 上記の別解が有益である理由
- 思考の統一性: 「光路差 = (条件) × \(\lambda\)」という形式は、ヤングの実験や回折格子など、他の多くの干渉問題と共通の枠組みです。これにより、問題ごとに考え方を変える必要がなくなり、応用力が向上します。
- 計算の簡略化: 模範解答のように分数の中に分数が現れる(\(\lambda/n\))計算を避けられるため、式変形がシンプルになり、計算ミスを減らすことができます。
- 物理概念の深化: なぜ経路差に屈折率を掛けると(光路差)、空気中の波長と直接比較できるようになるのか、という物理的な意味の理解が深まります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「薄膜による光の干渉の具体的な計算」です。白色光を垂直に油膜へ入射させたときに、どの波長の光が強められたり弱められたりするかを定量的に求めます。前問(349番)で学んだ、経路差、位相変化、膜中波長の知識を総動員して、具体的な数値を計算する応用問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 薄膜干渉の条件式: 経路差と位相変化を考慮して、強め合い・弱め合いの条件式を正しく立てられること。特に、垂直入射(\(\cos r = 1\))の場合の式を理解しているか。
- 反射における位相変化の判定: 空気(屈折率1.0)、油(1.5)、水(1.3)の3つの媒質の屈折率の大小関係から、上面反射(空気→油)と下面反射(油→水)で位相がどうなるかを正確に判断できること。
- 整数\(m\)の絞り込み: 干渉の条件式から導いた波長\(\lambda\)が、問題で与えられた「可視光の波長範囲」に収まるように、次数\(m\)の値を整数の中から見つけ出すことができるか。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (ア)では、まず反射光が「強め合う」条件式を立てます。このとき、垂直入射であることと、位相変化の有無を正しく反映させます。
- 次に、その条件式を空気中の波長\(\lambda\)について解き、与えられた数値を代入して\(\lambda\)を次数\(m\)の関数として表します。
- 最後に、その\(\lambda\)が可視光の範囲内にあるという条件から、不等式を解いて整数\(m\)の値を特定し、対応する波長\(\lambda\)を計算します。
- (イ)(ウ)では、反射光が「弱め合う」条件式を同様に立て、同じ手順で計算を進め、条件を満たす波長をすべて求めます。
問(ア) 反射光が強められる波長
思考の道筋とポイント
白色光の中から、反射したときに強められる可視光の波長を求めます。まず、強め合いの干渉条件を立式し、それを波長\(\lambda\)について解きます。そして、その波長が可視光の範囲内にあるという条件から、次数\(m\)を特定します。
この設問における重要なポイント
- 入射角: 「上から垂直に入射」なので、入射角 \(i=0\)、屈折角 \(r=0\) となり、\(\cos r = 1\) です。
- 経路差: 経路差は \(2d\cos r\) なので、垂直入射の場合は単純な往復距離 \(2d\) となります。
- 位相変化:
- 上面(空気1.0 → 油1.5): 「小→大」の反射なので、位相がπずれる(逆になる)。
- 下面(油1.5 → 水1.3): 「大→小」の反射なので、位相は変わらない。
- 強め合いの条件: 片方の光だけ位相がπずれるため、条件が逆転し、「経路差 = 半整数 × 膜中波長」となります。
具体的な解説と立式
光が強め合う条件を考えます。
垂直入射なので、経路差は \(l = 2d\) です。
上面の反射でのみ位相がπずれるため、強め合いの条件は、
$$ (\text{経路差}) = \left(m + \frac{1}{2}\right) \times (\text{膜中の波長}) $$
となります。膜中の波長は \(\lambda’ = \lambda/n\) なので、
$$ 2d = \left(m + \frac{1}{2}\right) \frac{\lambda}{n} $$
ここで \(m=0, 1, 2, \dots\) です。
この式を、求めたい空気中の波長\(\lambda\)について解きます。
$$ \lambda = \frac{2dn}{m + 1/2} = \frac{4dn}{2m+1} $$
この\(\lambda\)が、可視光の波長範囲 \(3.8 \times 10^{-7} \text{ m} \le \lambda \le 7.7 \times 10^{-7} \text{ m}\) に収まる条件を考えます。
使用した物理公式
- 薄膜干渉の強め合いの条件(片側のみ位相がπずれる場合)
まず、\(\lambda\)を\(m\)の式として、数値を代入して計算します。
\(d = 4.0 \times 10^{-7}\) m, \(n = 1.5\)
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{4 \times 1.5 \times (4.0 \times 10^{-7})}{2m+1} \\[2.0ex]
&= \frac{6.0 \times (4.0 \times 10^{-7})}{2m+1} \\[2.0ex]
&= \frac{24 \times 10^{-7}}{2m+1}
\end{aligned}
$$
この\(\lambda\)が可視光の範囲にあるという不等式を立てます。
$$ 3.8 \times 10^{-7} \le \frac{24 \times 10^{-7}}{2m+1} \le 7.7 \times 10^{-7} $$
両辺を \(10^{-7}\) で割ります。
$$ 3.8 \le \frac{24}{2m+1} \le 7.7 $$
この不等式を \(2m+1\) について解きます。
左側の不等式 \(3.8 \le \displaystyle\frac{24}{2m+1}\) から、\(3.8(2m+1) \le 24\)、よって \(2m+1 \le \displaystyle\frac{24}{3.8} \approx 6.31\)。
右側の不等式 \(\displaystyle\frac{24}{2m+1} \le 7.7\) から、\(24 \le 7.7(2m+1)\)、よって \(2m+1 \ge \displaystyle\frac{24}{7.7} \approx 3.11\)。
したがって、\(2m+1\) の範囲は \(3.11 \le 2m+1 \le 6.31\) となります。
\(m\) は \(0, 1, 2, \dots\) の整数なので、\(2m+1\) は \(1, 3, 5, 7, \dots\) という奇数をとります。
この範囲にある奇数は \(2m+1=5\) のみです。
このとき \(m=2\) となります。
\(2m+1=5\) を\(\lambda\)の式に代入して、強められる波長を求めます。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{24 \times 10^{-7}}{5} \\[2.0ex]
&= 4.8 \times 10^{-7} \quad [\text{m}]
\end{aligned}
$$
油膜で反射した光が強められてキラキラ見える色(波長)を求める問題です。
1. ルール作り: まず、光が強め合うための条件式を作ります。今回は垂直に光が当たるので、経路の差は単純に油膜の往復距離\(2d\)です。ただし、上面の反射で光が「裏返る」ので、強め合いのルールは「経路差 = (整数+0.5) × 膜の中の波長」となります。
2. 式変形: このルールを、求めたい「空気中の波長\(\lambda\)」が主役になるように変形します。
3. 犯人捜し: 式には\(m\)という未知の整数が残っています。ここで「光は可視光、つまり波長が3.8〜7.7の範囲のやつしかいない」というヒントを使います。この条件に合う整数\(m\)を探すと、\(m=2\)しか当てはまらないことがわかります。
4. 解決: \(m=2\)を式に戻して計算すると、強められる光の波長が特定できます。
強められる可視光の波長は \(4.8 \times 10^{-7}\) m と求められました。これは可視光の範囲内にあり、物理的に妥当な結果です。この波長は青緑色に相当するため、油膜はその色に見えます。
問(イ), (ウ) 反射光が弱められる波長
思考の道筋とポイント
次に、反射光が弱められる(見えなくなる)可視光の波長を求めます。手順は(ア)と全く同じですが、最初に立てる干渉条件が「弱め合い」の条件に変わります。
この設問における重要なポイント
- 弱め合いの条件: 片方の光だけ位相がπずれるため、通常の強め合いの条件が弱め合いの条件になります。すなわち、「経路差 = 整数 × 膜中波長」。
- 弱め合いの条件では、\(m=0\)は経路差が0を意味し物理的に意味がないため、\(m=1, 2, 3, \dots\) となります。
具体的な解説と立式
光が弱め合う条件を考えます。
経路差は \(l = 2d\) で、上面反射でのみ位相がπずれます。
この場合、弱め合いの条件は、
$$ (\text{経路差}) = m \times (\text{膜中の波長}) $$
となります。膜中の波長は \(\lambda’ = \lambda/n\) なので、
$$ 2d = m \frac{\lambda}{n} $$
ここで \(m=1, 2, 3, \dots\) です。(\(m=0\)は経路差が0となり、膜厚が0の場合にしか成立しないため除外します)
この式を、空気中の波長\(\lambda\)について解きます。
$$ \lambda = \frac{2dn}{m} $$
この\(\lambda\)が、可視光の波長範囲 \(3.8 \times 10^{-7} \text{ m} \le \lambda \le 7.7 \times 10^{-7} \text{ m}\) に収まる条件を考えます。
使用した物理公式
- 薄膜干渉の弱め合いの条件(片側のみ位相がπずれる場合)
まず、\(\lambda\)を\(m\)の式として、数値を代入して計算します。
\(d = 4.0 \times 10^{-7}\) m, \(n = 1.5\)
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{2 \times 1.5 \times (4.0 \times 10^{-7})}{m} \\[2.0ex]
&= \frac{3.0 \times (4.0 \times 10^{-7})}{m} \\[2.0ex]
&= \frac{12 \times 10^{-7}}{m}
\end{aligned}
$$
この\(\lambda\)が可視光の範囲にあるという不等式を立てます。
$$ 3.8 \times 10^{-7} \le \frac{12 \times 10^{-7}}{m} \le 7.7 \times 10^{-7} $$
両辺を \(10^{-7}\) で割ります。
$$ 3.8 \le \frac{12}{m} \le 7.7 $$
この不等式を \(m\) について解きます。
左側の不等式 \(3.8 \le \displaystyle\frac{12}{m}\) から、\(3.8m \le 12\)、よって \(m \le \displaystyle\frac{12}{3.8} \approx 3.15\)。
右側の不等式 \(\displaystyle\frac{12}{m} \le 7.7\) から、\(12 \le 7.7m\)、よって \(m \ge \displaystyle\frac{12}{7.7} \approx 1.55\)。
したがって、\(m\) の範囲は \(1.55 \le m \le 3.15\) となります。
\(m\) は \(1, 2, 3, \dots\) の整数なので、この範囲を満たす整数は \(m=2\) と \(m=3\) の2つです。
それぞれの\(m\)に対応する波長\(\lambda\)を計算します。
\(m=2\) のとき:
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{12 \times 10^{-7}}{2} \\[2.0ex]
&= 6.0 \times 10^{-7} \quad [\text{m}]
\end{aligned}
$$
\(m=3\) のとき:
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{12 \times 10^{-7}}{3} \\[2.0ex]
&= 4.0 \times 10^{-7} \quad [\text{m}]
\end{aligned}
$$
これらの波長が弱められます。
今度は、反射した光が打ち消し合って「見えなくなる」色(波長)を探します。
手順は(ア)とほぼ同じですが、最初のルールが「弱め合い」の条件に変わります。光Iだけが裏返っているので、弱め合いのルールは「経路差 = 整数 × 膜の中の波長」という、通常なら強め合うはずの条件になります。
このルールで(ア)と同じように計算を進めると、条件に合う整数\(m\)が \(m=2\) と \(m=3\) の2つ見つかります。そのため、弱められる波長も2つ存在することになります。
弱められる可視光の波長は \(4.0 \times 10^{-7}\) m(紫色)と \(6.0 \times 10^{-7}\) m(橙色)の2つであると求められました。これらの値は可視光の範囲内にあり、物理的に妥当な結果です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 干渉条件と物理的制約による解の特定
- 核心: この問題の根幹は、単に干渉の条件式を立てるだけでなく、その結果を「可視光の波長範囲」という物理的な制約条件(不等式)と組み合わせることで、無数にあり得る解の中から現実に観測されうる唯一(または複数)の解を特定する、という思考プロセスにあります。
- 理解のポイント:
- 条件式の立式: まず、物理法則(経路差、位相変化)に基づいて、強め合い・弱め合いの条件を次数\(m\)を含む数式として正しく表現します。これが全ての出発点です。
- 波長の一般式の導出: 条件式を波長\(\lambda\)について解き、「\(\lambda = (m\text{の式})\)」という形にします。これは、干渉が起こりうる全ての波長の候補を表す一般式です。
- 不等式による絞り込み: この一般式を、問題文で与えられた物理的制約(可視光の波長範囲)の不等式に代入します。これにより、未知の整数だった次数\(m\)の範囲が定まります。
- 解の確定: 絞り込まれた範囲に含まれる整数\(m\)をすべて見つけ出し、それらを波長の一般式に代入することで、最終的な答えを確定させます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 可聴音の干渉: 2つのスピーカーから同じ音を出すとき、特定の場所で音が大きく聞こえたり(強め合い)、小さく聞こえたりします。このとき、「可聴音の周波数(または波長)の範囲」が与えられていれば、本問と同様に、特定の場所で強められる(または弱められる)音の周波数を求める問題に応用できます。
- 原子物理学(ボーアの量子条件): 電子の物質波が原子核の周りを一周したときに定常波を作る条件(\(2\pi r = n\lambda\))と、ド・ブロイ波長(\(\lambda = h/p\))を組み合わせることで、電子がとりうるエネルギー準位が飛び飛びの値になることが導かれます。これも、物理法則と制約条件から解を特定する点で共通の思考法です。
- 設計問題: 「特定の色の光(例: \(\lambda = 5.5 \times 10^{-7}\) m)を最も強く反射させるには、膜の厚さ\(d\)をいくらにすればよいか」といった設計問題も頻出します。この場合は、強め合いの条件式に\(\lambda\)の値を代入し、\(d\)を\(m\)の式で表し、「最も薄い膜」などの条件から\(m\)を決定して\(d\)を求めます。
- 初見の問題での着眼点:
- 「強め合い」か「弱め合い」か: 問題文がどちらの条件を問うているのかを最初に確認します。
- 位相変化の有無: 屈折率の大小関係を調べ、位相変化のルールを適用します。これにより、強め合い・弱め合いの条件式が「通常通り」か「逆転」するかが決まります。
- 経路差の計算: 垂直入射か斜め入射かを確認し、経路差を計算します(垂直なら\(2d\)、斜めなら\(2d\cos r\))。
- 制約条件を探す: 「可視光の範囲」「〇〇Hzから△△Hzの音」といった、解を絞り込むための不等式として使える条件が問題文にないか探します。
- 未知の整数\(m\)を疑う: 条件式を立てたときに、未知数が求めたい物理量(\(\lambda\)や\(d\))と次数\(m\)の2つになる場合、必ず制約条件を使って\(m\)を特定するプロセスが必要になると予測します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 強め合い・弱め合いの条件の暗記ミス:
- 誤解: 位相が1回ずれると強め合いは「\(m+1/2\)」、弱め合いは「\(m\)」と機械的に暗記し、なぜそうなるかを理解していないため、少し設定が変わると対応できない。
- 対策: 「位相がずれないなら、経路差が波長の整数倍で強め合う」という大原則をまず覚えます。その上で、「片方だけ位相がπずれる=波が裏返る」→「だから強め合いと弱め合いの条件がそっくり入れ替わる」と論理的に導く癖をつけましょう。これにより、応用が効くようになります。
- 次数\(m\)の開始値:
- 誤解: 強め合いの条件 \(2d = (m+1/2)\lambda/n\) では\(m=0\)から始まるのに、弱め合いの条件 \(2d = m\lambda/n\) でも\(m=0\)から計算しようとしてしまう。
- 対策: \(m=0\)が物理的に意味を持つか常に考えましょう。弱め合いの条件で\(m=0\)とすると、\(2d=0\)、つまり膜厚が0になってしまいます。これは物理的に意味がない(膜がない)ので、弱め合いの次数は\(m=1, 2, 3, \dots\)から始まると理解することが重要です。
- 不等式の計算ミス:
- 誤解: \(3.8 \le 24/(2m+1)\) のような分数の不等式を解く際に、分母を払う方向や不等号の向きを間違える。
- 対策: 不等式は焦らず、一つずつ丁寧に解くのが鉄則です。特に分数の場合は、両辺に正の数である分母を掛けてから整理する、という手順を踏むと安全です。また、求めた範囲に当てはまる整数を探す際には、\(m\)そのものではなく、\(2m+1\)(奇数)や\(m\)(整数)といった、探すべき数の性質を意識すると、間違いが減ります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 強め合いの条件式 \(2d = (m+1/2)\lambda/n\):
- 選定理由: (ア)では反射光が「強め合う」波長を求めることが目的です。この問題設定(垂直入射、空気・油・水)では、経路差が\(2d\)であり、上面反射でのみ位相がπずれるため、通常の強め合い条件が逆転します。したがって、経路差が膜中波長の半整数倍になるという、この式を選択する必要があります。
- 適用根拠: 物理現象(経路差と位相変化)を分析した結果、強め合いが起こるためにはこの数式が満たされる必要がある、という論理的な結論に基づいています。
- 弱め合いの条件式 \(2d = m\lambda/n\):
- 選定理由: (イ)(ウ)では「弱め合う」波長を求めます。強め合いの場合と同様の物理分析から、弱め合いの条件は通常の強め合い条件と同じ「経路差が膜中波長の整数倍」になると判断し、この式を選択します。
- 適用根拠: 強め合いの条件が半整数倍になったので、論理的に、弱め合いの条件は整数倍になるはずだ、という物理的推論に基づいています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 最初に物理条件を整理する: 計算を始める前に、問題文から読み取れる物理条件を箇条書きにするのが有効です。
- 膜厚: \(d = 4.0 \times 10^{-7}\) m
- 屈折率: \(n_{\text{空気}}=1.0, n_{\text{油}}=1.5, n_{\text{水}}=1.3\)
- 入射: 垂直 (\(r=0\))
- 位相: 上面(空気→油)はπずれる、下面(油→水)はずれず → 条件逆転
- 波長範囲: \(3.8 \times 10^{-7} \le \lambda \le 7.7 \times 10^{-7}\)
この「下ごしらえ」をすることで、その後の立式や計算で迷うことがなくなります。
- \(m\)の一般式から解く: \(\lambda = (\text{定数}) / (m\text{の式})\) という形をまず作り、そこに数値を代入して \(\lambda = (\text{数値}) / (m\text{の式})\) とします。この一般式を不等式に代入して\(m\)を特定し、最後に\(m\)を一般式に戻して\(\lambda\)を計算する、という流れを徹底すると、思考が整理され、計算ミスが減ります。
- 分数の不等式は逆数をとる: \(A \le C/x \le B\) のような不等式は、各辺の逆数をとると \(1/B \le x/C \le 1/A\) となり、不等号の向きが逆になることを利用すると、見通しよく解ける場合があります。ただし、すべての項が正の数であることを確認する必要があります。慣れないうちは、左右に分けて解く方が安全です。
351 くさび形空気層による光の干渉
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(5)の別解: 光路差を用いて干渉条件を考える解法
- 模範解答が、水で満たした状況を「水中の波長\(\lambda/n\)を用いる」ことで扱うのに対し、別解では「光路差\(2nd\)を用いる」というアプローチで解きます。
- 設問(5)の別解: 光路差を用いて干渉条件を考える解法
- 上記の別解が有益である理由
- 思考の統一性: 「光路差」という概念を用いることで、媒質が変わっても干渉条件式の基本構造(光路差と空気中波長\(\lambda\)の関係)を変えずに済み、様々な干渉問題を一貫した考え方で解くことができます。
- 物理概念の深化: なぜ媒質で満たすと明線間隔が\(1/n\)倍になるのかを、「実質的な経路の長さ(光路差)が\(n\)倍になり、同じ干渉を起こすのにより小さな厚さ\(d\)、つまりより小さな\(x\)で済む」という物理的描像から理解できます。
- 解法の拡張性: 複数の媒質が絡むより複雑な問題において、各区間の光路長を足し合わせるという光路差の考え方は非常に強力な武器となります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「くさび形空気層による光の干渉」です。2枚のガラス板の間にできる、くさび形の薄い空気の層によって光が干渉する現象を扱います。場所によって空気層の厚さ\(d\)が変化するため、干渉縞が観察されます。薄膜干渉の知識を、具体的な幾何学的状況に応用する力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 薄膜干渉の基本原理: 空気層の上面で反射する光と、下面で反射する光が干渉することを理解していること。
- 位相変化の判定: 反射が屈折率の「小→大」の境界面で起こるか、「大→小」で起こるかを判断し、位相がπずれるかどうかを正しく判定できること。
- 経路差の計算: 垂直入射とみなせるため、経路差が空気層の厚さ\(d\)の往復分、\(2d\)となることを理解していること。
- 図形の相似: くさび形の幾何学的形状から、三角形の相似を用いて、位置\(x\)と空気層の厚さ\(d\)の関係を式で表せること。
- 媒質で満たした場合の変化: 干渉が起こる空間を屈折率\(n\)の媒質(水)で満たすと、光の波長が\(1/n\)倍になる(または光路差が\(n\)倍になる)ことを理解していること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず位相変化の有無を判断し、明線が見えるための干渉条件(経路差と波長の関係)を立式します。
- (2)では、ガラスの交点O(\(x=0\))での空気層の厚さ\(d=0\)を干渉条件式に当てはめ、強め合うか弱め合うかを判断します。
- (3)では、(1)で立てた条件式に、図形の相似から導かれる\(x\)と\(d\)の関係式を代入し、\(x\)を他の文字で表します。
- (4)では、(3)で求めた式から隣り合う明線の間隔\(\Delta x\)を計算し、与えられた数値からアルミ箔の厚さ\(D\)を逆算します。
- (5)では、空気層を水で満たした場合に波長がどう変わるかを考え、(4)で導いた明線間隔の式に適用して何倍になるかを求めます。
- (6)では、下のガラス板を動かしたときに、同じ厚さ\(d\)の場所がどう移動するか、また明線間隔の式がどう変化するかを考察します。
問(1)
思考の道筋とポイント
位置Pでの空気層の厚さを\(d\)とし、反射光が強め合って明線になる条件を考えます。垂直に入射するため、経路差は\(2d\)です。次に、空気層の上面と下面での反射における位相変化を調べ、それらを総合して干渉条件を立式します。
この設問における重要なポイント
- 経路差: 垂直入射なので、経路差は空気層の往復距離\(2d\)。
- 位相変化:
- 上面(ガラス→空気): 「大→小」の反射なので、位相は変化しない。
- 下面(空気→ガラス): 「小→大」の反射なので、位相がπずれる(逆になる)。
- 強め合いの条件: 片方の光(下面反射)だけ位相がπずれるため、条件が逆転し、「経路差 = 半整数 × 波長」となります。
具体的な解説と立式
光が強め合う条件を考えます。
光はガラス板の間にある空気層の上面と下面で反射します。
- 上面の反射: ガラス(屈折率大)から空気(屈折率小)へ向かう境界面での反射です。これは「大→小」の反射なので、位相は変化しません。
- 下面の反射: 空気(屈折率小)から下のガラス(屈折率大)へ向かう境界面での反射です。これは「小→大」の反射なので、位相はπずれて逆になります。
このように、下面の反射光だけ位相が逆になるため、強め合いの条件は通常の干渉とは逆転します。
真上から光を当てて観察するので、経路差は空気層の厚さ\(d\)の往復分である\(2d\)です。
強め合いの条件は、「経路差が波長の半整数倍」となるので、
$$ 2d = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda $$
ここで \(m=0, 1, 2, \dots\) です。
使用した物理公式
- 薄膜干渉の強め合いの条件(片側のみ位相がπずれる場合)
立式したものがそのまま答えとなります。
2枚のガラスに挟まれた空気の薄い層で、光が干渉する問題です。空気層の上面(上のガラスの下面)と下面(下のガラスの上面)で反射した2つの光が干渉します。
- 上面反射:ガラス(硬い)→空気(柔らかい)なので、位相はそのまま。
- 下面反射:空気(柔らかい)→ガラス(硬い)なので、位相は裏返る(逆になる)。
片方だけが裏返るので、強め合う条件は普通と逆になり、「経路の差 = (整数+0.5) × 波長」となります。光は真上から当たるので、経路の差は単純に空気層の厚さ\(d\)の往復分、\(2d\)です。これらを組み合わせて式を立てます。
明線の条件は \(2d = (m+1/2)\lambda\) となります。位相変化の判定を正しく行い、条件が逆転することを見抜くことが重要です。
問(2)
思考の道筋とポイント
ガラスの交点O(\(x=0\))付近で見える干渉縞が明線か暗線かを判断します。交点では空気層の厚さ\(d\)が0であることを利用し、(1)で考えた干渉のメカニズムを当てはめます。
この設問における重要なポイント
- 交点Oでは、空気層の厚さ \(d=0\)。
- 経路差は \(2d=0\)。
- 経路差が0でも、下面反射光は位相がπずれている。
具体的な解説と立式
交点Oでは、空気層の厚さが \(d=0\) です。したがって、2つの反射光の経路差は \(2d=0\) となります。
もし位相の変化がなければ、経路差が0なので2つの光は完全に同位相で重なり、強め合って明線になるはずです。
しかし、(1)で確認したように、下面で反射する光だけ位相がπ(半波長分)ずれます。
そのため、経路差が0であっても、2つの光はちょうど逆位相(山と谷)で重なり合うことになります。
結果として、光は打ち消し合い、弱め合って暗線となります。
ガラスが接している一番端っこ(点O)では、空気層の厚さがゼロなので、2つの反射光が進む距離の差もゼロです。普通なら、距離の差がゼロなら強め合って明るくなるはずです。しかし、下のガラスで反射した光だけが「裏返って」しまうので、結局、山と谷が重なることになり、打ち消し合って暗くなります。
交点Oでは暗線が見えます。これは、くさび形空気層の干渉で必ず見られる特徴です。
問(3)
思考の道筋とポイント
(1)で立てた明線の条件式 \(2d = (m+1/2)\lambda\) に含まれる空気層の厚さ\(d\)を、測定可能な量である \(x, L, D\) を用いて表現し、最終的に\(x\)を求める問題です。図形の相似関係を利用します。
この設問における重要なポイント
- 図2の2つの直角三角形(小さい方と大きい方)が相似であることを見抜く。
- 相似比から、\(d:x = D:L\) という関係式を立てる。
- この関係式を(1)の条件式に代入する。
具体的な解説と立式
図2において、頂点Oを共通の角とし、辺がそれぞれ対応する2つの直角三角形があります。
- 小さい三角形: 底辺が\(x\)、高さが\(d\)。
- 大きい三角形: 底辺が\(L\)、高さが\(D\)。
これらの三角形は相似なので、対応する辺の比は等しくなります。
$$ d : x = D : L $$
内項の積と外項の積は等しいので、
$$ Ld = xD $$
これを\(d\)について解くと、
$$ d = \frac{D}{L}x $$
この関係式を、(1)で求めた明線の条件式 \(2d = (m+1/2)\lambda\) に代入します。
$$ 2\left(\frac{D}{L}x\right) = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda $$
この式を、求めたい\(x\)について解きます。
使用した物理公式
- 三角形の相似
$$
\begin{aligned}
2\frac{D}{L}x &= \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda \\[2.0ex]
x &= \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda \cdot \frac{L}{2D} \\[2.0ex]
x &= \left(m + \frac{1}{2}\right)\frac{L\lambda}{2D}
\end{aligned}
$$
明線ができる場所\(x\)を求める問題です。そのためには、まず空気層の厚さ\(d\)と場所\(x\)の関係を知る必要があります。図を見ると、大きな直角三角形(底辺\(L\)、高さ\(D\))の中に、小さな直角三角形(底辺\(x\)、高さ\(d\))がすっぽり入った「相似」の形になっています。この相似の関係から「\(d = (D/L)x\)」という式が作れます。この\(d\)を(1)で作ったルールに代入すれば、\(x\)を求める式が完成します。
m番目の明線が現れる位置\(x\)は、\(x = (m+1/2)\frac{L\lambda}{2D}\) と表せます。これは物理的に妥当な結果です。
問(4)
思考の道筋とポイント
(3)で求めた明線の位置を表す式を使って、隣り合う明線の間隔\(\Delta x\)を計算します。その結果と、問題で与えられた\(\Delta x = 2.0\) mmという値を用いて、アルミ箔の厚さ\(D\)を逆算します。
この設問における重要なポイント
- 隣り合う明線の間隔\(\Delta x\)は、(m+1)番目の明線の位置とm番目の明線の位置の差で求められる。
- 計算結果の単位をSI基本単位(m)に統一する。\(2.0 \text{ mm} = 2.0 \times 10^{-3} \text{ m}\)。
具体的な解説と立式
(3)の結果より、m番目の明線の位置 \(x_m\) は、
$$ x_m = \left(m + \frac{1}{2}\right)\frac{L\lambda}{2D} $$
隣り合う(m+1)番目の明線の位置 \(x_{m+1}\) は、
$$ x_{m+1} = \left\{(m+1) + \frac{1}{2}\right\}\frac{L\lambda}{2D} $$
明線の間隔 \(\Delta x\) は、これらの差をとることで求められます。
$$ \Delta x = x_{m+1} – x_m $$
この式を計算し、得られた結果を\(D\)について解きます。
使用した物理公式
- (3)で導出した明線の位置の式
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= x_{m+1} – x_m \\[2.0ex]
&= \left\{(m+1) + \frac{1}{2}\right\}\frac{L\lambda}{2D} – \left(m + \frac{1}{2}\right)\frac{L\lambda}{2D} \\[2.0ex]
&= \left\{ (m+1+\frac{1}{2}) – (m+\frac{1}{2}) \right\} \frac{L\lambda}{2D} \\[2.0ex]
&= (1) \cdot \frac{L\lambda}{2D} \\[2.0ex]
&= \frac{L\lambda}{2D}
\end{aligned}
$$
この式を\(D\)について解くと、
$$ D = \frac{L\lambda}{2\Delta x} $$
与えられた数値を代入します。
\(L=0.10\) m, \(\lambda = 6.0 \times 10^{-7}\) m, \(\Delta x = 2.0 \text{ mm} = 2.0 \times 10^{-3}\) m
$$
\begin{aligned}
D &= \frac{0.10 \times (6.0 \times 10^{-7})}{2 \times (2.0 \times 10^{-3})} \\[2.0ex]
&= \frac{6.0 \times 10^{-8}}{4.0 \times 10^{-3}} \\[2.0ex]
&= 1.5 \times 10^{-5} \quad [\text{m}]
\end{aligned}
$$
まず、明線の「間隔」を計算します。(3)でm番目の明線の場所がわかる式を作ったので、「(m+1)番目の場所」から「m番目の場所」を引き算すれば、間隔がわかります。計算すると、間隔は\(\Delta x = L\lambda / (2D)\)というシンプルな式になります。問題文で、この間隔が「2.0 mm」だと教えてくれているので、この式をアルミ箔の厚さ\(D\)について解き、数値を代入すれば答えが出ます。
アルミ箔の厚さ\(D\)は \(1.5 \times 10^{-5}\) m と求められました。これは約0.015mmであり、箔の厚さとして妥当な値です。
問(5)
思考の道筋とポイント
ガラス板の間を空気の代わりに水(屈折率\(n\))で満たした場合、明線の間隔がどう変わるかを考えます。媒質が変わることによる波長の変化に着目します。
この設問における重要なポイント
- 屈折率\(n\)の媒質中では、光の波長は\(\lambda’ = \lambda/n\)に短縮される。
- 明線間隔の式 \(\Delta x = \frac{L\lambda}{2D}\) に、この変化を適用する。
具体的な解説と立式
空気中での明線の間隔は、(4)で導出したように、
$$ \Delta x = \frac{L\lambda}{2D} $$
です。ここで\(\lambda\)は空気中での波長です。
ガラス板の間を水(屈折率\(n\))で満たすと、干渉が起こる空間での光の波長が\(\lambda’ = \lambda/n\)に変わります。
したがって、水で満たしたときの明線間隔\(\Delta x’\)は、上の式の\(\lambda\)を\(\lambda’\)で置き換えることで求められます。
$$ \Delta x’ = \frac{L\lambda’}{2D} $$
上の式に \(\lambda’ = \lambda/n\) を代入すると、
$$ \Delta x’ = \frac{L(\lambda/n)}{2D} $$
空気中の間隔\(\Delta x\)との比を考えます。
$$ \frac{\Delta x’}{\Delta x} = \frac{L\lambda/(2Dn)}{L\lambda/(2D)} $$
計算すると、
$$ \frac{\Delta x’}{\Delta x} = \frac{1}{n} $$
よって、明線間隔は\(1/n\)倍になります。
使用した物理公式
- 媒質中の波長: \(\lambda’ = \lambda/n\)
- (4)で導出した明線間隔の式
立式したものがそのまま答えとなります。
ガラスの間を水で満たすと、光は水の中を進むことになります。水の中では光の波長が空気中の\(1/n\)倍に縮みます。明線の間隔を決める式 \(\Delta x = L\lambda / (2D)\) を見ると、間隔\(\Delta x\)は波長\(\lambda\)に比例しています。したがって、波長が\(1/n\)倍になれば、明線の間隔も\(1/n\)倍になります。
明線間隔は\(1/n\)倍になります。媒質で満たすと干渉縞が密になるというのは、一般的な性質であり、妥当な結論です。
思考の道筋とポイント
水で満たした場合の干渉を、光路差の考え方で解きます。
この設問における重要なポイント
- 屈折率\(n\)の媒質中では、経路差\(2d\)に対する光路差は\(2nd\)となる。
- 干渉条件は「光路差 = 半整数 × 空気中波長\(\lambda\)」となる。
具体的な解説と立式
水で満たした場合、経路差\(2d\)に対する光路差は\(2nd\)となります。
位相変化の有無は変わらないため、強め合いの条件は、
$$ (\text{光路差}) = \left(m + \frac{1}{2}\right) \times (\text{空気中の波長}) $$
$$ 2nd = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda $$
ここに、図形の相似から得られる関係 \(d = (D/L)x’\) を代入します(\(x’\)は水で満たしたときの明線の位置)。
$$ 2n\left(\frac{D}{L}x’\right) = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda $$
これを\(x’\)について解くと、
$$ x’ = \left(m + \frac{1}{2}\right)\frac{L\lambda}{2nD} $$
この式から、水で満たしたときの明線間隔\(\Delta x’\)を計算すると、
$$ \Delta x’ = \frac{L\lambda}{2nD} $$
空気中の間隔 \(\Delta x = \frac{L\lambda}{2D}\) と比較すると、
$$ \Delta x’ = \frac{1}{n} \Delta x $$
となり、やはり\(1/n\)倍になることがわかります。
問(6)
思考の道筋とポイント
下のガラス板を鉛直下方に\(\Delta d\)だけ下降させたときの干渉縞の変化を考えます。(a)では縞の移動方向、(b)では縞の間隔の変化を問います。模範解答のアプローチは、この操作を「くさび形空気層の厚さが全体的に\(\Delta d\)だけ増加した」と解釈し、数式でその影響を追跡するものです。
この設問における重要なポイント
- (a) 移動方向の考え方: 下のガラス板が下降すると、ある特定の厚さ\(d\)を持つ場所は、よりガラスの接点Oに近い側(左側)に移動します。干渉縞は厚さ\(d\)に依存するため、縞も同じく左へ移動します。
- (b) 間隔の考え方:
- 下のガラス板を\(\Delta d\)だけ下降させることは、空気層の厚さが全体的に\(\Delta d\)だけ増加したと考えることができます。
- したがって、位置\(x\)での新しい空気層の厚さは、元の厚さ\(d\)に\(\Delta d\)を加えた \(d+\Delta d\) となります。
- この新しい厚さを、明線の条件式に代入し、新しい明線の位置\(x\)の式を導出します。
- 最後に、新しい式から明線の間隔\(\Delta x\)を計算し、元の間隔と比較します。
具体的な解説と立式
**(a) 干渉縞の移動方向**
干渉縞の明線は、空気層の厚さ\(d\)が \(2d = (m+1/2)\lambda\) を満たす場所で生じます。
下のガラス板を下降させると、図3のように、くさび形の傾きは変わらないまま、空気層の厚さが全体に\(\Delta d\)だけ増えます。その結果、以前と同じ厚さ\(d\)になる場所は、より交点Oに近い側、すなわち図の左側に移動します。
したがって、干渉縞は全体として左向きに移動します。
**(b) 干渉縞の間隔**
下のガラス板を\(\Delta d\)だけ下降させたとします。
位置\(x\)における元の空気層の厚さは \(d\) でした。下のガラス板が\(\Delta d\)下降したことにより、この位置での新しい空気層の厚さは \(d+\Delta d\) となります。
この新しい厚さで明線ができる条件は、(1)の条件式 \(2 \times (\text{厚さ}) = (m+1/2)\lambda\) より、
$$ 2(d+\Delta d) = \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda $$
となります。
ここで、元のくさび形の関係式 \(d = \displaystyle\frac{D}{L}x\) を代入します。
$$ 2\left(\frac{D}{L}x + \Delta d\right) = \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda $$
この式を、新しい明線の位置\(x\)について解きます。
使用した物理公式
- (1)で導出した明線の条件式
- (3)で用いた図形の相似の関係
$$
\begin{aligned}
2\left(\frac{D}{L}x + \Delta d\right) &= \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda \\[2.0ex]
\frac{2D}{L}x + 2\Delta d &= \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda \\[2.0ex]
\frac{2D}{L}x &= \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda – 2\Delta d \\[2.0ex]
x &= \left\{ \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda – 2\Delta d \right\} \frac{L}{2D} \\[2.0ex]
x &= \left(m+\frac{1}{2}\right)\frac{L\lambda}{2D} – \frac{2\Delta d \cdot L}{2D} \\[2.0ex]
x &= \left(m+\frac{1}{2}\right)\frac{L\lambda}{2D} – \frac{L\Delta d}{D}
\end{aligned}
$$
これが、下降後のm番目の明線の位置を表す式です。
この式を使って、新しい明線の間隔 \(\Delta x\) を計算します。間隔は、(m+1)番目の位置とm番目の位置の差で求められます。
下降後のm番目の明線の位置を \(x_m\)、(m+1)番目の明線の位置を \(x_{m+1}\) とすると、
$$ x_m = \left(m+\frac{1}{2}\right)\frac{L\lambda}{2D} – \frac{L\Delta d}{D} $$
$$ x_{m+1} = \left\{(m+1)+\frac{1}{2}\right\}\frac{L\lambda}{2D} – \frac{L\Delta d}{D} $$
これらの差をとって、明線の間隔 \(\Delta x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\Delta x &= x_{m+1} – x_m \\[2.0ex]
&= \left[ \left\{(m+1)+\frac{1}{2}\right\}\frac{L\lambda}{2D} – \frac{L\Delta d}{D} \right] – \left[ \left(m+\frac{1}{2}\right)\frac{L\lambda}{2D} – \frac{L\Delta d}{D} \right] \\[2.0ex]
&= \left\{(m+1)+\frac{1}{2} – \left(m+\frac{1}{2}\right) \right\}\frac{L\lambda}{2D} \\[2.0ex]
&= (1) \cdot \frac{L\lambda}{2D} \\[2.0ex]
&= \frac{L\lambda}{2D}
\end{aligned}
$$
この結果は、(4)で求めた下降させる前の明線間隔の式と全く同じです。
したがって、干渉縞の間隔は変わりません。
(a) 下のガラス板を下にずらすと、くさび形の隙間が全体的に広がります。今までと同じ厚さだった場所は、もっと左側の、ガラスの接点に近い方に移ります。干渉縞は厚さで決まるので、縞模様も全体的に左にずれていきます。
(b) 下のガラス板を\(\Delta d\)だけ下にずらすと、すべての場所で空気層の厚さが一律に\(\Delta d\)だけ増えます。この影響で、明線ができる場所\(x\)の位置は、数式の上では全体的に同じ量だけずれることになります。\(m\)番目の明線も、\(m+1\)番目の明線も、同じだけ平行移動するようなものです。そのため、明線と明線の「間隔」自体は、この操作を行っても変化しません。
(a) 干渉縞は左向きに移動する。 (b) 干渉縞の間隔は変わらない。
数式による丁寧な追跡によって、明線の位置は移動するものの、その間隔は変化しないという、直感とは少し異なるかもしれないが物理的に正しい結論が導かれました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- くさび形空気層における干渉条件の応用
- 核心: この問題は、薄膜干渉の基本原理(経路差\(2d\)、位相変化)を、場所によって厚さ\(d\)が直線的に変化する「くさび形」という具体的な幾何学的状況に適用し、分析する能力を問うています。
- 理解のポイント:
- 位相変化の判定: 干渉の条件を決定する最初のステップとして、空気層の上面(ガラス→空気)と下面(空気→ガラス)での反射が、それぞれ屈折率の「大→小」と「小→大」のどちらに当たるかを判断し、下面でのみ位相がπずれることを見抜くことが不可欠です。
- 経路差と位置の関係: 空気層の厚さ\(d\)が、交点からの距離\(x\)に比例する(\(d = (D/L)x\))という図形の相似関係を、物理的な干渉条件と結びつけることが、問題を解く鍵となります。
- 物理的操作と数式の対応
- 核心: (5)や(6)のように、「媒質を水で満たす」「ガラス板を下降させる」といった物理的な操作が、干渉の条件式の中のどの変数(\(\lambda\), \(d\)など)にどう影響を与えるのかを、正しく数式に反映させる能力が重要です。
- 理解のポイント:
- (5) 水で満たす: この操作は、干渉が起こる空間の「波長」が\(\lambda \to \lambda/n\)に変わる(または「光路差」が\(2d \to 2nd\)に変わる)と解釈します。
- (6) 下の板を下降させる: この操作は、位置\(x\)における空気層の厚さが「\(d \to d+\Delta d\)」に変わると解釈します。この巧妙な置き換えにより、縞の間隔は変わらないという結論を数式で導くことができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ニュートンリング: 平面ガラスの上に凸レンズを置くことで、中心からの距離\(r\)に応じて厚さ\(d\)が変化する「レンズ状」の空気層ができます。\(d\)と\(r\)の関係を三平方の定理(または球面の近似式)で求め、干渉条件と組み合わせることで、同心円状の縞模様の間隔などを計算できます。考え方の構造は本問と全く同じです。
- 膜厚の精密測定: くさび形空気層の干渉は、非常に薄い物体の厚さ(本問のアルミ箔\(D\)など)を、光の波長を基準として精密に測定する手法に応用されます。干渉縞の間隔\(\Delta x\)を測定することで、μmオーダーの厚さを求めることができます。
- 平面度の検査: 工業製品の表面がどれだけ平らかを検査するのに使われます。基準となる完全に平らなガラス(オプティカルフラット)を検査対象の表面に重ね、生じる干渉縞の様子を観察します。縞がまっすぐで等間隔なら表面は平ら、縞が曲がっていれば表面に凹凸があると判断できます。
- 初見の問題での着眼点:
- 厚さ\(d\)と位置\(x\)の関係式を立てる: まず、干渉が起きている薄膜(または空気層)の形状(くさび形、レンズ状など)を把握し、図形の性質(相似、三平方の定理など)を使って、厚さ\(d\)を位置座標(\(x\)や\(r\))の関数として表すことを目指します。
- 干渉条件を\(x\)の式で表す: (1)で立てた干渉条件(\(2d = …\))に、上で求めた\(d(x)\)の関係式を代入します。これにより、明線(または暗線)が現れる位置\(x\)を、次数\(m\)の関数として表すことができます。
- 間隔\(\Delta x\)を計算する: \(x_m\)の式がわかれば、\(\Delta x = x_{m+1} – x_m\) を計算することで、縞の間隔が求められます。多くの場合、\(\Delta x\)は\(m\)に依存しない定数になります。
- 物理的操作の影響を考える: 「媒質を変える」「光源を変える」「形状を変える」などの操作が、条件式のどのパラメータ(\(n, \lambda, d, D, L\)など)を変化させるのかを一つずつ特定し、数式に反映させます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 交点Oが明線か暗線かの判断ミス:
- 誤解: 経路差が0だから強め合って明線だろう、と早合点してしまう。
- 対策: 必ず位相変化まで考慮する癖をつけましょう。くさび形空気層では、経路差0に加えて下面反射での位相のπのずれがあるため、結果として逆位相となり弱め合って「暗線」になります。これは非常に重要な特徴です。
- 相似の関係式の立て間違い:
- 誤解: \(d:x = L:D\) のように、比の関係を取り違えてしまう。
- 対策: 「小さい三角形の高さ:小さい三角形の底辺 = 大きい三角形の高さ:大きい三角形の底辺」のように、言葉で対応関係を確認しながら式を立てるとミスが減ります。\(d/x = D/L\) という「傾きが等しい」という形で覚えるのも有効です。
- (6)の縞の間隔の直感的誤解:
- 誤解: 下の板を下降させると、くさび形の傾きが緩やかになると思い込み、縞の間隔は広がるはずだ、と直感で判断してしまう(実際には板を平行に下げるだけなので、傾きは変わらない)。
- 対策: 直感に頼らず、数式で丁寧に追跡することが重要です。(6)(b)の模範解答のアプローチのように、物理的操作を「厚さが \(d \to d+\Delta d\) に変化」と正しく数式に翻訳し、計算することで、間隔は変わらないという結論に至ります。物理では、直感が外れることも多々あるため、数式による裏付けを重視しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 明線の条件式 \(2d = (m+1/2)\lambda\):
- 選定理由: (1)では明線ができる条件を問われています。この問題の物理設定(空気層の上下での反射)を分析すると、下面反射でのみ位相がπずれることがわかります。この「片側だけの位相のずれ」が、強め合いの条件を通常の「整数倍」から「半整数倍」へと変化させるため、この式が選択されます。
- 適用根拠: 物理現象(経路差と位相変化)の丁寧な分析が、この公式を選択する唯一の根拠です。状況が変われば(例えば、空気層ではなく、ガラスより屈折率の大きい液体で満たした場合など)、この条件式も変わる可能性があります。
- 相似の関係式 \(d/x = D/L\):
- 選定理由: (3)では、物理量である厚さ\(d\)を、測定可能な位置\(x\)に関係づける必要がありました。問題のくさび形のセットアップは、幾何学的に見て相似な三角形を作り出しており、この関係式が\(d\)と\(x\)を結びつける最も直接的なツールとなります。
- 適用根拠: 図形が持つ数学的な性質(相似)を、物理問題の解析に応用しています。物理は、このように数学を道具として現象を記述する学問です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式のまま計算を進める: (4)で\(D\)を求める際も、いきなり数値を代入するのではなく、まず\(\Delta x = L\lambda/(2D)\)という関係式を導き、それを\(D\)について解いてから(\(D=L\lambda/(2\Delta x)\))、最後に数値を代入するのが鉄則です。これにより、計算の見通しが良くなり、単位換算などのミスも発見しやすくなります。
- 指数の計算: (4)の計算では、\(10^{-7}\)や\(10^{-3}\)などの指数計算が出てきます。分数の計算では、係数部分(例: \(0.10 \times 6.0 / (2 \times 2.0)\))と指数部分(例: \(10^{-7} / 10^{-3}\))を分けて計算すると、桁の間違いを防げます。
- 差分の計算の工夫: (4)や(6)で明線間隔\(\Delta x = x_{m+1} – x_m\)を計算する際、\(x_m\)の式が「\(A \cdot m + B\)」のような形(\(A, B\)は定数)になっていれば、差分は必ず\(A\)になります。この問題では\(x_m = \frac{L\lambda}{2D}m + \frac{L\lambda}{4D}\)なので、差分は係数である\(\frac{L\lambda}{2D}\)になります。このことを知っていると、計算を大幅にショートカットできます。
352 ニュートンリング
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(4)の別解: 光路差を用いて干渉条件を考える解法
- 模範解答が、液体で満たした状況を「液体中の波長\(\lambda/n\)を用いる」ことで扱うのに対し、別解では「光路差\(2nd\)を用いる」というアプローチで解きます。
- 設問(4)の別解: 光路差を用いて干渉条件を考える解法
- 上記の別解が有益である理由
- 思考の統一性: 「光路差」という概念を用いることで、媒質が変わっても干渉条件式の基本構造(光路差と空気中波長\(\lambda\)の関係)を変えずに済み、様々な干渉問題を一貫した考え方で解くことができます。
- 物理概念の深化: なぜ媒質で満たすと暗環の半径が小さくなるのかを、「実質的な経路の長さ(光路差)が\(n\)倍になり、同じ干渉を起こすのにより小さな厚さ\(d\)、つまりより中心に近い半径\(r\)で済む」という物理的描像から理解できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「ニュートンリング」です。平面ガラスの上に平凸レンズを置いたときに現れる、同心円状の干渉縞の原理を扱います。レンズの球面と平面ガラスの間にできる、厚さが連続的に変化する「空気層」が薄膜として働き、光の干渉を引き起こします。くさび形空気層の応用問題と位置づけられます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 薄膜干渉の基本原理: 空気層の上面(レンズ下面)と下面(平面ガラス上面)で反射した光が干渉することを理解していること。
- 位相変化の判定: 反射面の屈折率の大小関係から、位相がπずれる反射を正しく特定できること。
- 経路差の計算: 垂直入射のため、経路差が空気層の厚さ\(d\)の往復分、\(2d\)となること。
- 幾何学的関係と近似: 中心からの距離\(r\)と空気層の厚さ\(d\)の関係を、三平方の定理を用いて導出できること。また、その際に\(d\)がレンズの曲率半径\(R\)に比べて非常に小さいとして、\(d^2\)の項を無視する近似計算ができること。
- 透過光の干渉: 反射光だけでなく、透過してきた光どうしが干渉する現象も考えることができるか。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず位相変化の有無を判断し、反射光が弱め合って「暗く」見えるための干渉条件を立式します。
- (2)では、レンズとガラスの接点O(\(r=0\))での空気層の厚さ\(d=0\)を干渉条件に当てはめ、明るくなるか暗くなるかを判断します。
- (3)では、三平方の定理と近似を用いて、空気層の厚さ\(d\)と中心からの距離\(r\)の関係式を導出します。これを(1)で立てた暗環の条件式に代入し、\(r\)を他の文字で表します。
- (4)では、空気層を屈折率\(n\)の液体で満たした場合に波長がどう変わるかを考え、(3)で導いた半径の式に適用して何倍になるかを求めます。
- (5)では、下から透過光を観察する場合を考えます。干渉する2つの光の経路と、それぞれの反射における位相変化を分析し、反射光の場合との違いを考察します。
問(1)
思考の道筋とポイント
中心から距離\(r\)の位置Pで、反射光が弱め合って「暗環」になる条件を考えます。垂直に入射するため、経路差は空気層の厚さ\(d\)の往復分\(2d\)です。次に、空気層の上面と下面での反射における位相変化を調べ、弱め合いの条件式を立てます。
この設問における重要なポイント
- 経路差: 垂直入射なので、経路差は空気層の往復距離\(2d\)。
- 位相変化:
- 上面(レンズ下面:ガラス→空気): 「大→小」の反射なので、位相は変化しない。
- 下面(平面ガラス上面:空気→ガラス): 「小→大」の反射なので、位相がπずれる(逆になる)。
- 弱め合いの条件: 片方の光(下面反射)だけ位相がπずれるため、通常の強め合いの条件が弱め合いの条件になります。すなわち、「経路差 = 整数の波長倍」。
具体的な解説と立式
光が弱め合って暗く見える条件を考えます。
光は、レンズと平面ガラスの間にある空気層の上面(レンズの球面)と下面(平面ガラスの上面)で反射します。
- 上面の反射: レンズ(ガラス:屈折率大)から空気(屈折率小)へ向かう境界面での反射です。これは「大→小」の反射なので、位相は変化しません。
- 下面の反射: 空気(屈折率小)から平面ガラス(屈折率大)へ向かう境界面での反射です。これは「小→大」の反射なので、位相はπずれて逆になります。
このように、下面で反射した光だけ位相が逆になるため、干渉の条件は通常と逆転します。
真上から光を当てて観察するので、経路差は空気層の厚さ\(d\)の往復分である\(2d\)です。
弱め合いの条件は、通常の強め合いの条件と同じ「経路差が波長の整数倍」となるので、
$$ 2d = m\lambda $$
ここで \(m=0, 1, 2, \dots\) です。
使用した物理公式
- 薄膜干渉の弱め合いの条件(片側のみ位相がπずれる場合)
立式したものがそのまま答えとなります。
レンズとガラスに挟まれた三日月形の空気層で光が干渉します。
- 上面反射:レンズ(硬い)→空気(柔らかい)なので、位相はそのまま。
- 下面反射:空気(柔らかい)→ガラス(硬い)なので、位相は裏返る(逆になる)。
片方だけが裏返るので、光が打ち消し合って「暗く」なる条件は、普通なら強め合うはずの「経路の差 = 整数 × 波長」という条件になります。光は真上から当たるので、経路の差は空気層の厚さ\(d\)の往復分、\(2d\)です。これらを組み合わせて式を立てます。
暗環の条件は \(2d = m\lambda\) となります。位相変化の判定を正しく行い、条件が逆転することを見抜くことが重要です。
問(2)
思考の道筋とポイント
レンズとガラスの接点O(\(r=0\))付近で見える干渉縞が明るいか暗いかを判断します。接点では空気層の厚さ\(d\)が0であることを利用し、(1)で考えた干渉のメカニズムを当てはめます。
この設問における重要なポイント
- 接点Oでは、空気層の厚さ \(d=0\)。
- 経路差は \(2d=0\)。
- 経路差が0でも、下面反射光は位相がπずれている。
具体的な解説と立式
接点Oでは、空気層の厚さが \(d=0\) です。したがって、2つの反射光の経路差は \(2d=0\) となります。
これは、(1)で求めた暗環の条件式 \(2d = m\lambda\) において、\(m=0\) の場合に相当します。
$$ 2 \times 0 = 0 \times \lambda $$
この式は成立します。したがって、接点Oは\(m=0\)の暗環(中心暗点)となります。
物理的に解釈すると、経路差が0であっても、下面で反射する光だけ位相がπずれるため、2つの光は逆位相で重なり合い、打ち消し合って暗くなります。
レンズとガラスが接している中心点Oでは、空気層の厚さがゼロなので、2つの反射光が進む距離の差もゼロです。しかし、下のガラスで反射した光だけが「裏返って」しまうので、結局、山と谷が重なることになり、打ち消し合って暗くなります。(1)で作った暗くなる条件式に\(d=0\)を入れると、\(m=0\)の場合としてちゃんと成り立っています。
接点Oでは暗く見えます。これはニュートンリングの最も顕著な特徴です。
問(3)
思考の道筋とポイント
(1)で立てた暗環の条件式 \(2d = m\lambda\) に含まれる空気層の厚さ\(d\)を、レンズの曲率半径\(R\)と中心からの距離\(r\)を用いて表現し、最終的に\(r\)を求める問題です。図2の幾何学的関係から三平方の定理を適用し、近似計算を行います。
この設問における重要なポイント
- 図2の直角三角形\(\triangle ABC\)に三平方の定理を適用する。
- 辺の長さをそれぞれ \(R, R-d, r\) で表す。
- \(d\)が\(R\)に比べて非常に小さい(\(d \ll R\))という条件から、\(d^2\)の項を無視して近似する。
具体的な解説と立式
図2の直角三角形\(\triangle ABC\)に着目します。三平方の定理より、
$$ (AC)^2 = (AB)^2 + (BC)^2 $$
各辺の長さを \(R, d, r\) で表すと、
- \(AC = R\) (球面の半径)
- \(AB = R-d\)
- \(BC = r\)
となるので、
$$ R^2 = (R-d)^2 + r^2 $$
この式を展開し、\(d\)と\(r\)の関係を求めます。
$$ R^2 = R^2 – 2Rd + d^2 + r^2 $$
$$ 0 = -2Rd + d^2 + r^2 $$
ここで、問題文のただし書きより、空気層の厚さ\(d\)はレンズの曲率半径\(R\)に比べて非常に小さいので、\(d^2\)の項は他の項に比べて無視できるほど小さいと考え、\(d^2 \approx 0\) と近似します。
$$ 0 \approx -2Rd + r^2 $$
この近似式を\(d\)について解くと、
$$ d \approx \frac{r^2}{2R} $$
この関係式を、(1)で求めた暗環の条件式 \(2d = m\lambda\) に代入します。
使用した物理公式
- 三平方の定理
- 近似計算 (\(d^2 \approx 0\))
$$
\begin{aligned}
2d &= m\lambda \\[2.0ex]
2\left(\frac{r^2}{2R}\right) &= m\lambda \\[2.0ex]
\frac{r^2}{R} &= m\lambda \\[2.0ex]
r^2 &= mR\lambda \\[2.0ex]
r &= \sqrt{mR\lambda}
\end{aligned}
$$
\(r>0\)なので、正の平方根をとります。
暗いリングができる場所(半径\(r\))を求める問題です。そのためには、まず空気層の厚さ\(d\)と半径\(r\)の関係を知る必要があります。図2の直角三角形で三平方の定理を使うと、\(R^2 = (R-d)^2 + r^2\)という式が作れます。ここで、「レンズは非常に緩やかにカーブしている(\(d\)は\(R\)に比べてすごく小さい)」という事実を使って、計算を簡単にするための近似(\(d^2\)をゼロとみなす)を行います。すると、「\(d \approx r^2/(2R)\)」というシンプルな関係式が得られます。この\(d\)を(1)で作った暗くなる条件式に代入すれば、半径\(r\)を求める式が完成します。
m番目の暗環の半径\(r\)は、\(r = \sqrt{mR\lambda}\) と表せます。\(m\)が大きいほど半径が大きくなる、同心円状の縞模様が形成されることを示しており、物理的に妥当な結果です。
問(4)
思考の道筋とポイント
ガラスとレンズの間を空気の代わりに屈折率\(n\)の液体で満たした場合、m番目の暗環の半径\(r’\)が、空気の場合の半径\(r\)の何倍になるかを考えます。媒質が変わることによる波長の変化に着目します。
この設問における重要なポイント
- 屈折率\(n\)の液体中では、光の波長は\(\lambda’ = \lambda/n\)に短縮される。
- 反射の位相変化のルールは変わらない(液体\(n\) < ガラス)。
- (3)で導いた半径の式 \(r = \sqrt{mR\lambda}\) に、この波長の変化を適用する。
具体的な解説と立式
空気中でのm番目の暗環の半径は、(3)で導出したように、
$$ r = \sqrt{mR\lambda} $$
です。ここで\(\lambda\)は空気中での波長です。
ガラスとレンズの間を屈折率\(n\)の液体で満たすと、干渉が起こる空間での光の波長が\(\lambda’ = \lambda/n\)に変わります。
問題文より、液体の屈折率\(n\)はガラスの屈折率より小さいので、反射における位相変化の条件(上面は変化なし、下面はπずれる)は変わりません。
したがって、液体で満たしたときの暗環の半径\(r’\)は、上の式の\(\lambda\)を\(\lambda’\)で置き換えることで求められます。
$$ r’ = \sqrt{mR\lambda’} $$
上の式に \(\lambda’ = \lambda/n\) を代入すると、
$$ r’ = \sqrt{mR\frac{\lambda}{n}} $$
空気中の半径\(r\)との比を考えます。
$$ \frac{r’}{r} = \frac{\sqrt{mR\lambda/n}}{\sqrt{mR\lambda}} $$
計算すると、
$$ \frac{r’}{r} = \sqrt{\frac{1}{n}} = \frac{1}{\sqrt{n}} $$
よって、半径は\(1/\sqrt{n}\)倍になります。
使用した物理公式
- 媒質中の波長: \(\lambda’ = \lambda/n\)
- (3)で導出した暗環の半径の式
立式したものがそのまま答えとなります。
レンズとガラスの間を液体で満たすと、光は液体の中を進むことになります。屈折率\(n\)の液体の中では光の波長が空気中の\(1/n\)倍に縮みます。暗いリングの半径を決める式 \(r = \sqrt{mR\lambda}\) を見ると、半径\(r\)は波長\(\lambda\)の平方根(ルート)に比例しています。したがって、波長が\(1/n\)倍になれば、半径は\(\sqrt{1/n}\)倍、つまり\(1/\sqrt{n}\)倍になります。
暗環の半径は\(1/\sqrt{n}\)倍になります。媒質で満たすと干渉縞が密になるというのは、一般的な性質であり、妥当な結論です。
思考の道筋とポイント
液体で満たした場合の干渉を、光路差の考え方で解きます。
この設問における重要なポイント
- 屈折率\(n\)の液体中では、経路差\(2d\)に対する光路差は\(2nd\)となる。
- 干渉条件は「光路差 = 整数の空気中波長\(\lambda\)倍」となる。
具体的な解説と立式
液体で満たした場合、経路差\(2d\)に対する光路差は\(2nd\)となります。
位相変化のルールは変わらないため、暗環の条件は、
$$ (\text{光路差}) = m \times (\text{空気中の波長}) $$
$$ 2nd = m\lambda $$
ここに、幾何学的関係 \(d \approx r’^2/(2R)\) を代入します(\(r’\)は液体で満たしたときの半径)。
$$ 2n\left(\frac{r’^2}{2R}\right) = m\lambda $$
これを\(r’\)について解くと、
$$
\begin{aligned}
\frac{nr’^2}{R} &= m\lambda \\[2.0ex]
r’^2 &= \frac{mR\lambda}{n} \\[2.0ex]
r’ &= \sqrt{\frac{mR\lambda}{n}}
\end{aligned}
$$
空気中の半径 \(r = \sqrt{mR\lambda}\) と比較すると、
$$ r’ = \frac{1}{\sqrt{n}} r $$
となり、やはり\(1/\sqrt{n}\)倍になることがわかります。
問(5)
思考の道筋とポイント
下から透過光を観察した場合、干渉縞が反射光の場合とどう違うかを考えます。干渉する2つの光の経路と、それぞれの反射における位相変化を分析することが鍵となります。
この設問における重要なポイント
- 干渉する光: (A)まっすぐ透過する光と、(B)空気層を1往復してから透過する光。
- 経路差: (B)の光は(A)の光より空気層を1往復する分だけ長く進むので、経路差は\(2d\)。
- 位相変化: (B)の光は、空気層の下面と上面で合計2回反射する。2回とも「小→大」の反射なので、合計で2回位相がπずれる。これは位相がずれないのと同じ。
- 条件の比較: 位相のずれの状況が反射光の場合と異なるため、明暗の条件が逆転する。
具体的な解説と立式
下から透過光を観察する場合、干渉するのは主に以下の2つの光です。
- 光(A): 上から入射し、レンズと平面ガラスをそのまままっすぐ透過していく光。
- 光(B): 上から入射し、レンズを透過した後、空気層の下面(平面ガラス)で反射し、さらに空気層の上面(レンズ下面)で反射してから、下へ透過していく光。
経路差:
光(B)は光(A)に比べて、空気層を1往復する分だけ余分な経路を進みます。したがって、経路差は\(2d\)です。これは反射光の場合と同じです。
位相変化:
光(B)が経る2回の反射について考えます。
- 1回目の反射(下面): 空気(小)から平面ガラス(大)への反射なので、位相がπずれます。
- 2回目の反射(上面): 空気(小)からレンズ(大)への反射なので、位相がπずれます。
合計で2回、位相がπずれます。合計2πの位相のずれは、位相が全くずれなかったことと同じです。
一方、光(A)は反射を経験しないので、位相のずれはありません。
したがって、透過光の干渉では、2つの光の間に実質的な位相のずれは生じません。
干渉条件:
実質的な位相のずれがないので、干渉条件は通常通りです。
- 強め合い(明環): 経路差 = \(m\lambda\) → \(2d = m\lambda\)
- 弱め合い(暗環): 経路差 = \((m+1/2)\lambda\) → \(2d = (m+1/2)\lambda\)
反射光との比較:
- 反射光の場合: 暗環の条件は \(2d = m\lambda\)、明環の条件は \(2d = (m+1/2)\lambda\)。
- 透過光の場合: 明環の条件は \(2d = m\lambda\)、暗環の条件は \(2d = (m+1/2)\lambda\)。
両者を比べると、同じ厚さ\(d\)の場所で、明暗がちょうど逆転していることがわかります。
今度は下から、ガラスを通り抜けてくる光を見ます。干渉するのは「まっすぐ通り抜ける光」と「空気層で2回反射して、少し遠回りしてから通り抜ける光」です。遠回りする光は、下のガラスで反射するとき(裏返る)と、上のレンズで反射するとき(裏返る)の2回、位相が裏返ります。2回裏返ると、結局元通りになります。
そのため、反射光の場合とは違って、位相のずれによる「条件の逆転」が起こりません。
結果として、反射光で暗く見えた場所は、透過光では明るく見え、反射光で明るく見えた場所は、透過光では暗く見える、というように、明暗のパターンがそっくり入れ替わります。
透過光を観察した場合、反射光を観察した場合と比べて、明暗の環の位置が逆になります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 幾何学的条件と物理法則の融合
- 核心: ニュートンリングの問題は、レンズの曲率半径\(R\)と中心からの距離\(r\)から空気層の厚さ\(d\)を求める「幾何学(三平方の定理と近似)」と、その厚さ\(d\)で決まる光の「物理(薄膜干渉の条件)」という、2つの異なる分野の知識を融合させて解く点に最大の特徴があります。
- 理解のポイント:
- 幾何学パート: \(d \approx r^2/(2R)\) という関係式を導出するプロセス。これは純粋に数学的な図形問題です。三平方の定理から出発し、\(d \ll R\) という物理的状況を \(d^2 \approx 0\) という数学的近似に置き換える点が重要です。
- 物理パート: \(2d = m\lambda\)(暗環)や \(2d = (m+1/2)\lambda\)(明環)といった干渉条件を、位相変化のルールに基づいて正しく立てること。
- 融合: これら2つのパートで得られた式を連立させ、測定可能な量(\(r, R, \lambda\))と次数\(m\)の関係式(例: \(r = \sqrt{mR\lambda}\))を導き出すことが最終目標となります。
- 観察方法による干渉条件の変化
- 核心: (5)で問われているように、同じ物理的セットアップでも、観察方法(上から反射光を見るか、下から透過光を見るか)によって、干渉する光の組み合わせや位相変化の回数が変わり、結果として明暗のパターンが逆転することを理解することが重要です。
- 理解のポイント:
- 反射光: 干渉するのは「上面反射光」と「下面反射光」。下面反射でのみ位相がπずれるため、条件が逆転する。
- 透過光: 干渉するのは「直接透過光」と「2回反射後の透過光」。2回反射(下面と上面)でそれぞれ位相がπずれ、合計2π(=ずれなし)となるため、条件は逆転しない。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- レンズの曲率半径の測定: ニュートンリングは、既知の波長\(\lambda\)の光を使い、暗環の半径\(r\)を測定することで、未知のレンズの曲率半径\(R\)を非常に精密に求める手法として実際に利用されます。\(R = r^2/(m\lambda)\) の式を応用します。
- 光の波長の測定: 既知の曲率半径\(R\)のレンズを使い、特定の暗環の半径\(r\)を測定すれば、逆に光源の光の波長\(\lambda\)を求めることができます。
- 液体を満たした場合の屈折率の測定: (4)の応用で、空気の場合の半径\(r\)と、未知の液体で満たした場合の半径\(r’\)を測定すれば、\(n = (r/r’)^2\) の関係から、液体の屈折率\(n\)を求めることができます。
- 初見の問題での着眼点:
- まず位相変化を確認する: ニュートンリングや薄膜干渉の問題では、最初にどの反射で位相がπずれるかを確定させます。これにより、強め合い・弱め合いの条件が「通常」か「逆転」するかが決まります。
- 厚さ\(d\)と位置\(r\)の関係式を立てる: 次に、問題の幾何学的形状から、三平方の定理などを用いて\(d\)と\(r\)の関係式を導きます。近似計算が必要になることが多いです。
- 2つの式を連立させる: 「物理(干渉条件)」と「幾何学(dとrの関係)」の2つの式を連立させ、求めたい量(\(r\), \(\lambda\), \(R\)など)を導出します。
- 観察方法に注意する: 「反射光」か「透過光」かによって、位相変化のルールが変わるため、明暗の条件が逆転する可能性を常に念頭に置きます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- \(d^2 \approx 0\) の近似の仕方を間違える:
- 誤解: \(R^2 = (R-d)^2 + r^2\) を展開した \(0 = -2Rd + d^2 + r^2\) の式で、\(d\)の1次の項まで消してしまい、\(r=0\)という無意味な結論に至る。
- 対策: 近似は、他の項に比べて「十分に小さい」項を無視する操作です。この式では、\(d\)は\(R\)に比べて非常に小さいので、\(d^2\)は\(2Rd\)に比べてさらに小さくなります。したがって、無視するのは\(d^2\)の項だけである、と正しく理解することが重要です。
- 中心が明るいか暗いかの丸暗記:
- 誤解: ニュートンリングは中心が暗い、と結果だけを暗記してしまい、なぜそうなるかを説明できない。
- 対策: 「接点O → \(d=0\) → 経路差0 → しかし下面反射で位相がπずれる → 逆位相で弱め合う → 暗い」という論理の流れを自分で再現できるようにしておくことが、応用力を高める上で不可欠です。
- (4)で半径の倍率を間違える:
- 誤解: 波長が\(1/n\)倍になるので、半径も\(1/n\)倍になると勘違いする。
- 対策: 半径の式 \(r = \sqrt{mR\lambda}\) をよく見ましょう。\(r\)は\(\lambda\)ではなく、\(\sqrt{\lambda}\)に比例します。したがって、\(\lambda\)が\(1/n\)倍になれば、\(r\)は\(\sqrt{1/n} = 1/\sqrt{n}\)倍になります。比例関係を見る際には、ルートや2乗の関係を見落とさないように注意が必要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 三平方の定理:
- 選定理由: (3)で空気層の厚さ\(d\)と半径\(r\)の関係を求めるために、最も基本的な幾何学のツールとして三平方の定理が選ばれます。図2に描かれた直角三角形は、この定理を適用するために用意されたものです。
- 適用根拠: 図形が直角三角形であり、その3辺の長さを\(R, d, r\)で表現できるという、純粋に数学的な事実に基づいています。
- 暗環の条件式 \(2d = m\lambda\):
- 選定理由: (1)では暗環の条件を問われています。物理的な分析(経路差\(2d\)、下面反射のみ位相がπずれる)の結果、弱め合いの条件は通常の強め合いの条件と同じ形になる、と判断されるため、この式が選択されます。
- 適用根拠: 光の波動性と反射の法則という、物理学の基本原理に基づいています。この原理を正しく適用することで、この条件式が論理的に導かれます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 近似計算を恐れない: \(d^2 \approx 0\) のような近似は、物理では頻繁に使われる強力なツールです。「\(d\)が\(R\)に比べて十分小さい」といった物理的な条件が、近似計算を正当化します。どの項が他の項に比べて無視できるほど小さいのかを、位数のスケール感で判断する練習をしましょう。
- ルートの扱い: (3)や(4)では、最終的な答えに平方根(ルート)が含まれます。計算の最終段階まで\(r^2\)のまま計算を進め、最後に平方根をとるようにすると、式がシンプルに保ててミスが減ります。
- 比の計算を有効活用する: (4)で「何倍になるか」を問われた場合、液体で満たしたときの半径\(r’\)の式と、空気の場合の半径\(r\)の式をそれぞれ書き出し、割り算をして比(\(r’/r\))を計算するのが最も確実で、計算も楽になります。共通の因子(\(m, R\)など)が約分で消えるため、計算が非常にシンプルになります。
PREMIUM
この問題の「なぜそう解くのか」も
全て言語化されています。
問題集の解答が省略する思考プロセスを、現役講師が1人で書き続けています。650問超の「なぜ」を、1週間無料で読めます。
波動を最短で攻略するなら
