「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第17章】基本問題302~310

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基本問題

302 弦の振動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 別解: 固有振動の一般式を用いる解法
      • 模範解答が基本振動、2倍振動、3倍振動のそれぞれについて図から個別に波長を求めるのに対し、別解ではまず両端固定弦の固有振動の波長と振動数の一般式を導出し、それに整数を代入して体系的に解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: なぜ固有振動が特定の値しかとれないのか、その根拠となる「境界条件」から一般式を導出するプロセスを通じて、定在波の物理的本質への理解が深まります。
    • 思考の汎用性向上: この一般式を導出する考え方は、開管や閉管の気柱の共鳴など、他の定在波の問題にも直接応用できるため、汎用的な問題解決能力が身につきます。
    • 解法の効率化: 一度一般式を立ててしまえば、あとは整数を代入するだけでよく、高次の振動についても素早く計算できるため、見通しが良く計算ミスも減らせます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「弦の固有振動」です。両端が固定された弦に生じる定在波の性質を正しく理解し、弦の長さ、波長、振動数の関係を導き出せるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 定在波の形成条件: 両端が固定された弦では、その両端が常に振動しない点、すなわち定在波の「節」になるという境界条件が最も重要です。
  2. 弦の長さと波長の関係: 上記の境界条件を満たすためには、弦の長さ \(L\) の中に、波長の半分 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) がちょうど整数個だけ含まれている必要があります。これを式で表すと \(L = m \displaystyle\frac{\lambda_m}{2}\) (\(m=1, 2, 3, \dots\)) となります。
  3. 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(v=f\lambda\) という関係が成り立ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題の指示に従い、基本振動(腹が1つ)、2倍振動(腹が2つ)、3倍振動(腹が3つ)の定在波の様子を図示します。
  2. 描いた図から、それぞれの振動モードにおける弦の長さ \(L\) と波長 \(\lambda\) の関係を読み取り、波長 \(\lambda_1, \lambda_2, \lambda_3\) を計算します。
  3. 波の基本式 \(v=f\lambda\) を変形した \(f = \displaystyle\frac{v}{\lambda}\) を用いて、それぞれの波長に対応する固有振動数 \(f_1, f_2, f_3\) を計算します。

(波長と固有振動数の計算)

思考の道筋とポイント
この問題は、両端が固定された弦に生じる定在波の基本的な性質を問うものです。最大のポイントは、「両端が節になる」という物理的な制約条件から、弦の長さ \(L\) と波長 \(\lambda\) の関係を導き出すことです。基本振動、2倍振動、3倍振動が、それぞれ定在波の腹の数が1個、2個、3個の場合に対応することを理解し、図を描いて視覚的に関係を捉えることが確実な解法につながります。波長が求まれば、波の速さ \(v\) は与えられているので、基本公式 \(v=f\lambda\) を使って振動数を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 両端固定弦では、両端は必ず定在波の「節」となる。
  • \(m\)倍振動では、弦の上に \(m\) 個の腹ができる。
  • 弦の長さ \(L\) と \(m\) 倍振動の波長 \(\lambda_m\) の関係は、\(L = m \times \displaystyle\frac{\lambda_m}{2}\) となる。
  • 波の基本式 \(v=f\lambda\) を用いて振動数を求める。
  • 問題文で与えられた数値の有効数字は2桁なので、答えも2桁で表記する。

具体的な解説と立式
まず、問題の指示に従い、基本振動、2倍振動、3倍振動のときの弦のようすを図示します。弦の長さを \(L=0.48 \, \text{m}\) とします。

1. 波長の計算
それぞれの振動について、図から弦の長さ \(L\) と波長 \(\lambda\) の関係式を立てます。

  • 基本振動(腹が1個)
    図から、弦の長さは半波長 \(\displaystyle\frac{1}{2}\lambda_1\) に等しいことがわかります。
    $$ L = \frac{1}{2}\lambda_1 \quad \cdots ① $$
  • 2倍振動(腹が2個)
    図から、弦の長さは1波長 \(\lambda_2\) に等しいことがわかります。
    $$ L = \lambda_2 \quad \cdots ② $$
  • 3倍振動(腹が3個)
    図から、弦の長さは1.5波長 \(\displaystyle\frac{3}{2}\lambda_3\) に等しいことがわかります。
    $$ L = \frac{3}{2}\lambda_3 \quad \cdots ③ $$

2. 固有振動数の計算
波の基本式 \(v=f\lambda\) を \(f\) について解くと \(f = \displaystyle\frac{v}{\lambda}\) となります。これを用いて、各振動数を求めます。
$$ f_1 = \frac{v}{\lambda_1} \quad \cdots ④ $$
$$ f_2 = \frac{v}{\lambda_2} \quad \cdots ⑤ $$
$$ f_3 = \frac{v}{\lambda_3} \quad \cdots ⑥ $$

使用した物理公式

  • 両端固定弦の定在波の条件: \(L = m \displaystyle\frac{\lambda_m}{2}\) (\(m=1, 2, 3, \dots\))
  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

1. 波長の計算
①, ②, ③の式をそれぞれ \(\lambda\) について解き、\(L=0.48 \, \text{m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_1 &= 2L = 2 \times 0.48 = 0.96 \, \text{m} \\[2.0ex]
\lambda_2 &= L = 0.48 \, \text{m} \\[2.0ex]
\lambda_3 &= \frac{2}{3}L = \frac{2}{3} \times 0.48 = 2 \times 0.16 = 0.32 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

2. 固有振動数の計算
④, ⑤, ⑥の式に、上で求めた各波長と、問題で与えられた波の速さ \(v=96 \, \text{m/s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_1 &= \frac{v}{\lambda_1} = \frac{96}{0.96} = 100 = 1.0 \times 10^2 \, \text{Hz} \\[2.0ex]
f_2 &= \frac{v}{\lambda_2} = \frac{96}{0.48} = 200 = 2.0 \times 10^2 \, \text{Hz} \\[2.0ex]
f_3 &= \frac{v}{\lambda_3} = \frac{96}{0.32} = 300 = 3.0 \times 10^2 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$
計算結果は有効数字2桁で表します。

計算方法の平易な説明

この問題は、弦の振動の様子を絵に描いてみるのが一番の近道です。
まず、弦の両端は固定されているので動きません(節)。
1. 基本振動は、弦全体が大きく1つの山(腹)になって振動する最もシンプルな形です。このとき、弦の長さは「波の形」のちょうど半分になっています。なので、波全体の長さ(波長)は、弦の長さの2倍になります。
2. 2倍振動は、弦の上に2つの山(腹)ができる形です。このとき、弦の長さと「波の形」1つ分の長さ(波長)がぴったり一致します。
3. 3倍振動は、弦の上に3つの山(腹)ができる形です。このとき、弦の長さは「波の形」1.5個分の長さになっています。
このようにして、それぞれの波長がわかります。
振動数は、「速さ=振動数×波長」という波の万能公式を使って計算します。速さは問題に書かれているので、今わかった波長で割り算すれば、振動数が求められます。

結論と吟味
  • : 解答に示す図の通り。
  • 波長: 基本振動の波長は \(\lambda_1 = 0.96 \, \text{m}\)、2倍振動の波長は \(\lambda_2 = 0.48 \, \text{m}\)、3倍振動の波長は \(\lambda_3 = 0.32 \, \text{m}\)。
  • 固有振動数: 基本振動数は \(f_1 = 1.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\)、2倍振動数は \(f_2 = 2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\)、3倍振動数は \(f_3 = 3.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\)。

得られた振動数は \(100 \, \text{Hz}, 200 \, \text{Hz}, 300 \, \text{Hz}\) となり、基本振動数 \(f_1\) のちょうど1倍、2倍、3倍になっています。これは両端固定弦の固有振動数にみられる特徴であり、結果は物理的に妥当であると言えます。

解答 図は模範解答の図を参照。
波長: \(\lambda_1 = 0.96 \, \text{m}\), \(\lambda_2 = 0.48 \, \text{m}\), \(\lambda_3 = 0.32 \, \text{m}\)
固有振動数: \(f_1 = 1.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\), \(f_2 = 2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\), \(f_3 = 3.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\)
別解: 固有振動の一般式を用いる解法

思考の道筋とポイント
各振動モードを個別に考えるのではなく、まず両端が固定された弦に生じる定在波の条件を一般式で表現します。弦の長さ \(L\) の中に半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) が整数個入る、という条件から波長 \(\lambda_m\) の一般式を導きます。次に、波の基本式 \(v=f\lambda\) を用いて振動数 \(f_m\) の一般式を導出します。最後に、これらの一般式に腹の数に対応する整数 \(m=1, 2, 3\) を代入して、それぞれの波長と振動数を体系的に求めます。

この設問における重要なポイント

  • 両端固定弦の定在波の一般条件は \(L = m \displaystyle\frac{\lambda_m}{2}\) (\(m\) は自然数)。
  • この一般条件から、波長と振動数の一般式 \(\lambda_m = \displaystyle\frac{2L}{m}\) と \(f_m = m \displaystyle\frac{v}{2L}\) を導出できる。
  • 導出した一般式を用いることで、計算の見通しが良くなり、高次の振動についても容易に計算できる。

具体的な解説と立式
弦の長さを \(L\)、弦を伝わる波の速さを \(v\) とします。
両端が固定されているため、弦の両端は定在波の節となる必要があります。この物理的条件を満たすためには、弦の長さ \(L\) が、半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) の整数倍でなければなりません。腹の数を \(m\) (\(m=1, 2, 3, \dots\)) とすると、波長 \(\lambda_m\) と弦の長さ \(L\) の関係は、以下の一般式で表されます。
$$ L = m \frac{\lambda_m}{2} \quad \cdots (A) $$
この式から波長 \(\lambda_m\) の一般式を導きます。
次に、波の基本式 \(v = f_m \lambda_m\) を用いて、固有振動数 \(f_m\) の一般式を導きます。
$$ f_m = \frac{v}{\lambda_m} \quad \cdots (B) $$

使用した物理公式

  • 両端固定弦の定在波の条件: \(L = m \displaystyle\frac{\lambda_m}{2}\) (\(m=1, 2, 3, \dots\))
  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

1. 波長の一般式と具体的な計算
式(A)を \(\lambda_m\) について解くと、波長の一般式が得られます。
$$ \lambda_m = \frac{2L}{m} $$
この式に \(L=0.48 \, \text{m}\) を代入し、\(m=1, 2, 3\) の場合の各波長を計算します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_1 &= \frac{2 \times 0.48}{1} = 0.96 \, \text{m} \\[2.0ex]
\lambda_2 &= \frac{2 \times 0.48}{2} = 0.48 \, \text{m} \\[2.0ex]
\lambda_3 &= \frac{2 \times 0.48}{3} = 2 \times 0.16 = 0.32 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

2. 固有振動数の一般式と具体的な計算
式(B)に、上で求めた \(\lambda_m = \displaystyle\frac{2L}{m}\) を代入すると、振動数の一般式が得られます。
$$ f_m = \frac{v}{\lambda_m} = \frac{v}{2L/m} = m \cdot \frac{v}{2L} $$
この式は、固有振動数 \(f_m\) が基本振動数 \(f_1 = \displaystyle\frac{v}{2L}\) の整数 \(m\) 倍になること (\(f_m = m f_1\)) を示しています。
まず基本振動数 \(f_1\) を計算します。
$$ f_1 = 1 \cdot \frac{v}{2L} = \frac{96}{2 \times 0.48} = \frac{96}{0.96} = 100 \, \text{Hz} $$
これを用いて、\(f_2, f_3\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
f_1 &= 1.0 \times 10^2 \, \text{Hz} \\[2.0ex]
f_2 &= 2 f_1 = 2 \times 100 = 200 = 2.0 \times 10^2 \, \text{Hz} \\[2.0ex]
f_3 &= 3 f_1 = 3 \times 100 = 300 = 3.0 \times 10^2 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

弦の振動には決まった「ルール」があります。それは、弦の長さの中に「波の半分の長さ」がぴったり1個、2個、3個…と入るときだけ、きれいな定在波ができるというものです。
このルールを数式にすると、波長の公式「\(\lambda = (2 \times \text{弦の長さ}) \div m\)」と、振動数の公式「\(f = m \times (\text{速さ} \div (2 \times \text{弦の長さ}))\)」を作ることができます。ここで \(m\) は腹の数(1, 2, 3…)です。
この便利な公式さえあれば、あとは \(m\) に1, 2, 3を順番に代入していくだけで、すべての波長と振動数を一気に計算できてしまいます。特に振動数は、まず \(m=1\) の基本の振動数を計算してしまえば、あとはそれを2倍、3倍するだけで求められます。

結論と吟味
  • : 解答に示す図の通り。
  • 波長: \(\lambda_1 = 0.96 \, \text{m}\), \(\lambda_2 = 0.48 \, \text{m}\), \(\lambda_3 = 0.32 \, \text{m}\)
  • 固有振動数: \(f_1 = 1.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\), \(f_2 = 2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\), \(f_3 = 3.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\)

主たる解法と完全に同じ結果が得られました。一般式を立てるアプローチは、物理的な条件から体系的に解を導くことができ、特に振動数が基本振動数の整数倍になるという関係性が式の上で明確に理解できるという利点があります。

解答 図は模範解答の図を参照。
波長: \(\lambda_1 = 0.96 \, \text{m}\), \(\lambda_2 = 0.48 \, \text{m}\), \(\lambda_3 = 0.32 \, \text{m}\)
固有振動数: \(f_1 = 1.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\), \(f_2 = 2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\), \(f_3 = 3.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 定在波の境界条件:
    • 核心: この問題の根幹は、「両端が固定されている」という物理的な制約(境界条件)が、弦の上に存在できる波の形(波長)を限定し、その結果として特定の振動数(固有振動数)しか許されなくなる、という原理を理解することにあります。
    • 理解のポイント:
      • 境界条件: 弦の両端は動けないため、必ず定在波の「節」になります。
      • 波長の量子化: この条件を満たすためには、弦の長さ \(L\) の中に、半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) がちょうど整数個収まらなければなりません。(\(L = m \displaystyle\frac{\lambda_m}{2}\))
      • 固有振動数: 許される波長がとびとびの値になるため、波の基本式 \(v=f\lambda\) を通じて、振動数も \(f_m = m \displaystyle\frac{v}{2L}\) というとびとびの値(固有振動数)しか取れなくなります。これを「振動数の量子化」と呼びます。
  • 倍振動の関係性:
    • 核心: 両端固定弦の固有振動数は、最も低い振動数である基本振動数 \(f_1\) の整数倍 (\(f_m = m f_1\)) になるという、単純で美しい関係性を理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 基本振動数: \(m=1\) のとき、\(f_1 = \displaystyle\frac{v}{2L}\) がその弦で可能な最も低い振動数となります。
      • 倍音: 音楽でいう「倍音」は、この物理現象に対応します。基本振動数が音の「高さ」を決め、倍振動の含まれ方が音の「音色」を決定します。この問題は、楽器の物理の基礎とも言えます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 開管の気柱の共鳴: 管の両端が開いている場合、両端は定在波の「腹」になります。この境界条件は「両端が節」の場合と数学的に同じ形になり、固有振動数は \(f_m = m \displaystyle\frac{v}{2L}\) となって、弦の振動と全く同じ公式で解くことができます。
    • 閉管の気柱の共鳴: 管の一端が閉じ、他端が開いている場合、閉じている端が「節」、開いている端が「腹」になります。この場合、弦の長さ \(L\) には1/4波長が奇数個入るという条件 (\(L = (2m-1)\displaystyle\frac{\lambda}{4}\)) に変わります。その結果、固有振動数は基本振動数の奇数倍 (\(f_m = (2m-1)f_1\)) となり、偶数倍の振動は存在しません。
    • 弦の途中を指で押さえる問題: ギターのように弦の途中を指で軽く触れて特定の倍振動を発生させる問題では、触れた点が「節」になるという新しい境界条件が加わります。この条件から可能な振動モードを絞り込みます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 境界条件の確認: まず、波が存在する空間の両端(弦の端、管の端)が「固定端(節)」なのか「自由端(腹)」なのかを確定させます。これが最も重要な第一歩です。
    2. 腹の数を数える: 問題で指定された振動が何倍振動なのか、あるいは図から腹の数がいくつ読み取れるかを確認します。この腹の数が一般式の整数 \(m\) に対応します。
    3. 一般式を立てる: 境界条件から、弦長(管長)\(L\) と波長 \(\lambda\) の関係式を立てます。慣れていれば、両端が節/腹なら \(L=m\displaystyle\frac{\lambda}{2}\)、片方が節で片方が腹なら \(L=(2m-1)\displaystyle\frac{\lambda}{4}\) と即座に立式できます。
    4. 波の基本式と組み合わせる: 立てた関係式と波の基本式 \(v=f\lambda\) を連立させて、未知の量を求めます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 波長と弦の長さの混同:
    • 誤解: 基本振動のときに、弦の長さ \(L\) が波長 \(\lambda_1\) に等しいと勘違いしてしまう。
    • 対策: 必ず図を描く癖をつけましょう。基本振動の図を描けば、弦の長さは波長の「半分」であることが一目瞭然です。波長とは「波1つ分の長さ」であり、基本振動の形は「波半個分」であると視覚的に覚えましょう。
  • 開管と閉管の公式の混同:
    • 誤解: 弦の振動の問題なのに、閉管の公式(奇数倍の振動数)を適用してしまう。
    • 対策: 公式を丸暗記するのではなく、「なぜその公式になるのか」という物理的な理由(境界条件)とセットで理解することが重要です。「両端が同じ条件(節-節 or 腹-腹)なら整数倍」、「両端が異なる条件(節-腹)なら奇数倍」という大原則で覚えておくと、混同を防げます。
  • 腹の数と整数 \(m\) の対応ミス:
    • 誤解: 腹が3つの3倍振動なのに、\(m=2\) を代入してしまうなど、単純な数え間違いをする。
    • 対策: 「\(m\)倍振動」という言葉は「腹の数が\(m\)個の振動」であり、かつ「基本振動数の\(m\)倍の振動数を持つ振動」であると、2つの意味を関連付けて覚えておきましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 定在波の条件式 \(L = m \displaystyle\frac{\lambda_m}{2}\) の選定:
    • 選定理由: この問題は、単なる進行波ではなく、両端で反射した波が干渉してできる「定在波」を扱っています。したがって、定在波が安定して存在するための条件式を用いる必要があります。
    • 適用根拠: 物理的な制約である「両端が固定されている(=節)」という事実が、この条件式を選択する直接的な根拠となります。もし境界条件が異なれば(例えば閉管)、選ぶべき式も変わります。つまり、公式の選択は物理的状況の正しい認識から始まります。
  • 波の基本式 \(v=f\lambda\) の適用:
    • 選定理由: 波長と振動数という、異なる物理量を結びつけるためにこの公式を選びます。問題では波長を求めた後に振動数を計算する必要があり、両者をつなぐ関係式はこれしかありません。
    • 適用根拠: この公式は、波の種類(横波、縦波)や媒質によらず、あらゆる波に共通して成り立つ普遍的な関係式です。したがって、弦を伝わる横波の定在波に対しても無条件で適用することができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 図を描くことの徹底: 弦や気柱の振動の問題では、計算を始める前に必ず定在波の概略図を描くことを習慣にしましょう。図を描くことで、弦長と波長の関係が一目瞭然となり、立式ミスを劇的に減らすことができます。
  • 一般式からのアプローチ: 別解で示したように、まず一般式 \(\lambda_m = \displaystyle\frac{2L}{m}\) や \(f_m = m \displaystyle\frac{v}{2L}\) を導出してから具体的な数値を代入する癖をつけると、見通しが良くなります。特に、\(f_m = m f_1\) の関係を使えば、\(f_1\) を一度計算するだけで、あとは掛け算だけで \(f_2, f_3\) が求まるため、割り算を何度も行うよりも計算が楽になり、ミスも減ります。
  • 分数の計算を丁寧に行う: \(f_3 = \displaystyle\frac{96}{0.32}\) のような計算では、焦って筆算をすると間違いやすいです。\(0.32 = \displaystyle\frac{32}{100}\) のように分数に直して、\(f_3 = 96 \div \displaystyle\frac{32}{100} = 96 \times \displaystyle\frac{100}{32} = 3 \times 100 = 300\) のように、約分を利用して暗算できる形に持ち込むと、計算が正確かつ迅速になります。
  • 有効数字の確認: 計算を始める前に、問題文で与えられている数値の有効数字(この問題では \(0.48\) と \(96\) なので2桁)を確認し、最終的な答えをそれに合わせることを意識しましょう。計算の途中で四捨五入せず、最後の答えを出す段階で有効数字を揃えるのが基本です。

303 弦の振動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 固有振動数の関係性を用いる解法
      • 模範解答が(1)で求めた波の速さ \(v\) と(2)の波長 \(\lambda_2\) を用いて計算するのに対し、別解では「\(m\)倍振動の振動数は基本振動数の\(m\)倍になる」という関係性から直接答えを導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 弦の固有振動数がとびとびの値しかとらず、それらが基本振動数の整数倍になるという、定在波の根幹的な性質への理解が深まります。
    • 思考の柔軟性向上: 一つの問題を、波の基本式から攻める方法と、振動数間の関係性から攻める方法という、二つの視点から見ることができます。
    • 解法の効率化: (1)で求めた波の速さ \(v\) を使う必要がなく、単純な掛け算だけで答えにたどり着けるため、計算が大幅に簡略化され、計算ミスも防げます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「弦の固有振動とその応用」です。支点によって両端が固定された弦に生じる定在波の基本法則を理解し、与えられた条件から未知の物理量(波長、速さ、振動数)を計算する能力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 定在波の基本: 支点A, Bの間は両端が節となる定在波が生じます。腹が\(m\)個の定在波は「\(m\)倍振動」と呼ばれます。
  2. 弦の長さと波長の関係: 弦の長さ\(L\)と\(m\)倍振動の波長\(\lambda_m\)の間には、\(L = m \times \displaystyle\frac{\lambda_m}{2}\)という関係が成り立ちます。
  3. 波の基本式: 波の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間には、常に\(v=f\lambda\)という関係が成り立ちます。
  4. 固有振動数の関係性: 弦を伝わる波の速さ\(v\)が一定であれば、\(m\)倍振動の振動数\(f_m\)は、基本振動数\(f_1\)の\(m\)倍になります (\(f_m = m f_1\))。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、腹が1個の定在波(基本振動)の図から、弦の長さと波長の関係を読み取り、波長\(\lambda_1\)を求めます。次に、与えられた振動数\(f_1\)と求めた波長\(\lambda_1\)を波の基本式に代入し、波の速さ\(v\)を計算します。
  2. (2)では、腹が2個の定在波(2倍振動)の図から、波長\(\lambda_2\)を求めます。弦の材質やおもりが変わらない限り波の速さ\(v\)は一定なので、(1)で求めた\(v\)と\(\lambda_2\)を波の基本式に代入し、振動数\(f_2\)を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
腹が1個の定在波は、最も単純な振動モードである「基本振動」です。このとき、弦の長さ\(L\)と波長\(\lambda_1\)の関係がどうなるかを、定在波の形から正確に読み取ることが第一歩です。弦の長さは、ちょうど半波長分に相当します。波長\(\lambda_1\)が求まれば、問題で与えられている振動数\(f_1\)と組み合わせて、波の基本式\(v=f\lambda\)から波の速さ\(v\)を求めることができます。

この設問における重要なポイント

  • 腹が1個の定在波は「基本振動」(\(m=1\))である。
  • 基本振動では、弦の長さ\(L\)は半波長\(\displaystyle\frac{\lambda_1}{2}\)に等しい。
  • 波の速さ、振動数、波長の関係式 \(v=f\lambda\) を正しく適用する。

具体的な解説と立式
問題文より、支点A, B間の弦の長さは \(L=0.80 \, \text{m}\) です。
腹が1個の定在波(基本振動)が生じているとき、その波長を \(\lambda_1\) とします。
このとき、弦の長さ \(L\) は半波長 \(\displaystyle\frac{\lambda_1}{2}\) に等しくなります。
$$ L = \frac{\lambda_1}{2} \quad \cdots ① $$
この式から波長 \(\lambda_1\) を求めます。

次に、波の速さ \(v\) を求めます。波の基本式に、問題で与えられた振動数 \(f_1 = 2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\) と、式①から求まる波長 \(\lambda_1\) を代入します。
$$ v = f_1 \lambda_1 \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 基本振動の条件: \(L = \displaystyle\frac{\lambda_1}{2}\)
  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

式①を \(\lambda_1\) について解き、\(L=0.80 \, \text{m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_1 &= 2L \\[2.0ex]
&= 2 \times 0.80 \\[2.0ex]
&= 1.6 \, \text{m}
\end{aligned}
$$
次に、式②に \(f_1 = 2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\) と求めた \(\lambda_1 = 1.6 \, \text{m}\) を代入して、速さ \(v\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= f_1 \lambda_1 \\[2.0ex]
&= (2.0 \times 10^2) \times 1.6 \\[2.0ex]
&= 3.2 \times 10^2 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(1)では、まず波の「形」に注目します。腹が1つの定在波は、弦全体が1つの大きな弓形のようにしなる状態です。この形は、波1つ分の長さ(波長)のちょうど半分にあたります。弦の長さが \(0.80 \, \text{m}\) なので、波長はその2倍の \(1.6 \, \text{m}\) とわかります。
次に、波の速さを計算します。波の世界の基本ルール「速さ = 振動数 × 波長」を使います。振動数は問題に \(2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\) と書かれており、波長は今計算した \(1.6 \, \text{m}\) なので、この2つを掛け算して速さを求めます。

結論と吟味

弦を伝わる波の波長は \(\lambda_1 = 1.6 \, \text{m}\)、速さは \(v = 3.2 \times 10^2 \, \text{m/s}\) となります。与えられた数値は有効数字2桁なので、計算結果もそれに合わせて表記しており、妥当な結果です。

解答 (1) \(\lambda_1 = 1.6 \, \text{m}\), \(v = 3.2 \times 10^2 \, \text{m/s}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
次に、腹が2個の定在波(2倍振動)を考えます。このときの振動数 \(f_2\) を求めるのが目標です。
まず、(1)と同様に、腹が2個のときの波長 \(\lambda_2\) と弦の長さ \(L\) の関係を図から読み取ります。この場合、弦の長さはちょうど1波長分に相当します。
重要なのは、「弦の物理的な条件(張力、線密度)が変わらない限り、弦を伝わる波の速さ \(v\) は一定である」という点です。したがって、(1)で求めた速さ \(v\) をそのまま使うことができます。
最後に、波の基本式 \(v=f_2\lambda_2\) を \(f_2\) について解き、値を代入して計算します。

この設問における重要なポイント

  • 腹が2個の定在波は「2倍振動」(\(m=2\))である。
  • 2倍振動では、弦の長さ\(L\)は1波長\(\lambda_2\)に等しい。
  • 弦の条件が同じなら、波の速さ\(v\)は振動モードによらず一定である。

具体的な解説と立式
腹が2個の定在波が生じているとき、その波長を \(\lambda_2\) とします。
このとき、弦の長さ \(L\) は1波長 \(\lambda_2\) に等しくなります。
$$ L = \lambda_2 \quad \cdots ③ $$
この式から波長 \(\lambda_2\) を求めます。

弦の張力や線密度は変わらないため、波の速さ \(v\) は(1)で求めた値と同じです。
波の基本式 \(v=f\lambda\) に、速さ \(v\) と式③から求まる波長 \(\lambda_2\) を代入して、振動数 \(f_2\) を求めます。
$$ v = f_2 \lambda_2 \quad \cdots ④ $$

使用した物理公式

  • 2倍振動の条件: \(L = \lambda_2\)
  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

式③より、波長 \(\lambda_2\) を求めます。
$$ \lambda_2 = L = 0.80 \, \text{m} $$
次に、式④を \(f_2\) について解き、(1)で求めた \(v = 3.2 \times 10^2 \, \text{m/s}\) と \(\lambda_2 = 0.80 \, \text{m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_2 &= \frac{v}{\lambda_2} \\[2.0ex]
&= \frac{3.2 \times 10^2}{0.80} \\[2.0ex]
&= \frac{320}{0.80} \\[2.0ex]
&= 400 \\[2.0ex]
&= 4.0 \times 10^2 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(2)では、腹が2つの波を考えます。このとき、弦の上には波の形がちょうど1つ分すっぽり収まっています。つまり、弦の長さ \(0.80 \, \text{m}\) がそのまま波長になります。
弦の性質は変わっていないので、波の速さは(1)で計算した \(3.2 \times 10^2 \, \text{m/s}\) のままです。
「振動数 = 速さ ÷ 波長」の公式に、この速さと波長を当てはめて割り算をすれば、新しい振動数が計算できます。

結論と吟味

腹が2個のときの振動数は \(f_2 = 4.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\) となります。
この値は、(1)の基本振動数 \(f_1 = 2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\) のちょうど2倍になっています。これは、\(m\)倍振動の振動数は基本振動数の\(m\)倍になるという弦の固有振動の性質と一致しており、物理的に妥当な結果です。

解答 (2) \(4.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\)
別解: 固有振動数の関係性を用いる解法

思考の道筋とポイント
(1)で求めた速さ\(v\)や、(2)の波長\(\lambda_2\)を具体的に計算せずに、より本質的な物理法則から答えを導くアプローチです。
両端が固定された弦の固有振動数には、\(f_m = m \times f_1\) という関係があります。ここで \(f_1\) は基本振動数(腹が1個のときの振動数)、\(f_m\) は\(m\)倍振動(腹が\(m\)個のときの振動数)です。
問題では、腹が1個のときの振動数 \(f_1\) が与えられており、腹が2個のときの振動数 \(f_2\) を求めたいので、\(m=2\) としてこの関係式を直接適用します。

この設問における重要なポイント

  • 弦の固有振動数は、基本振動数の整数倍になる (\(f_m = m f_1\))。
  • 腹の数が \(m\) 個の振動は、\(m\)倍振動である。
  • この関係を使えば、波長や速さを経由せずに直接振動数を計算できる。

具体的な解説と立式
両端が固定された弦では、腹の数が \(m\) 個のときの固有振動数 \(f_m\) は、腹が1個のときの基本振動数 \(f_1\) の \(m\) 倍になるという関係が成り立ちます。
$$ f_m = m f_1 $$
今回は、腹が2個のときの振動数 \(f_2\) を求めたいので、\(m=2\) を代入します。
$$ f_2 = 2 f_1 \quad \cdots ⑤ $$

使用した物理公式

  • 固有振動数の関係式: \(f_m = m f_1\)
計算過程

式⑤に、問題で与えられている基本振動数 \(f_1 = 2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f_2 &= 2 \times f_1 \\[2.0ex]
&= 2 \times (2.0 \times 10^2) \\[2.0ex]
&= 4.0 \times 10^2 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

弦の振動には「基本の振動数(腹が1個のとき)を基準にすると、腹が2個のときは振動数が2倍、腹が3個のときは3倍…」という非常にシンプルなルールがあります。
この問題では、基本の振動数が \(2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\) だとわかっています。求めたいのは腹が2個のときの振動数なので、このルールに従って、基本の振動数を単純に2倍するだけで答えが出てきます。速さや波長の計算は一切不要です。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ \(f_2 = 4.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\) という結果が得られました。この別解は、弦の固有振動に関する本質的な法則を利用しており、計算ステップが少なく、非常に見通しの良いエレガントな解法です。

解答 (2) \(4.0 \times 10^2 \, \text{Hz}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波の速さの不変性:
    • 核心: 弦の材質(線密度)と張力が変わらない限り、その弦を伝わる波の速さ \(v\) は一定である、という点がこの問題の根幹をなす隠れた大前提です。
    • 理解のポイント:
      • 波の速さ \(v\) は、波を生み出す振動数 \(f\) や、その結果決まる波長 \(\lambda\) には依存しません。速さは、波が伝わる「媒質」の性質だけで決まります。弦の場合、速さは張力 \(S\) と線密度 \(\rho\) を用いて \(v = \sqrt{\displaystyle\frac{S}{\rho}}\) と表されます。
      • (1)と(2)では、振動数を変えていますが、弦自体(おもりも同じ)は何も変わっていません。したがって、波の速さ \(v\) は(1)と(2)で共通の値として使える、と判断することが重要です。
  • 固有振動の構造:
    • 核心: 両端が固定された弦に生じる定在波(固有振動)は、腹の数 \(m\) によってその形(波長)と振動数が決まり、それらには単純な整数比の関係があることを理解することが重要です。
    • 理解のポイント:
      • 波長: 腹が \(m\) 個のとき、波長は \(\lambda_m = \displaystyle\frac{2L}{m}\) となり、基本振動の波長 \(\lambda_1\) の \(\displaystyle\frac{1}{m}\) になります。
      • 振動数: 腹が \(m\) 個のとき、振動数は \(f_m = m \displaystyle\frac{v}{2L}\) となり、基本振動数 \(f_1\) の \(m\) 倍になります。この \(f_m = m f_1\) という関係は、計算を大幅に簡略化する強力なツールです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 弦の張力や長さを変える問題: 「おもりを重く(張力 \(S\) を大きく)したら、同じ基本振動の振動数はどうなるか?」といった問題。この場合、\(v = \sqrt{\displaystyle\frac{S}{\rho}}\) と \(f_1 = \displaystyle\frac{v}{2L}\) を組み合わせ、\(f_1 \propto \sqrt{S}\) の関係から変化を考えます。
    • 弦の線密度を変える問題: 「太い弦(線密度 \(\rho\) が大きい)に張り替えたら、振動数はどうなるか?」といった問題。\(f_1 \propto \displaystyle\frac{1}{\sqrt{\rho}}\) の関係から、振動数が低くなることを導きます。
    • うなりを組み合わせた問題: 2本のわずかに異なる弦を同時に鳴らしたときの「うなりの振動数」を問う問題。それぞれの弦の固有振動数を計算し、その差 \(|f_A – f_B|\) を求めることで解くことができます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 不変量と変数の特定: 問題文を読み、何が一定で(不変量)、何が変化するのか(変数)を明確に区別します。この問題では、\(L\) と \(v\) が不変量で、\(f\) と \(\lambda\) (そして腹の数 \(m\)) が変数です。
    2. 状態の比較: (1)の状態と(2)の状態で、何が同じで何が違うのかを整理します。
      • 共通点: 弦の長さ \(L\), 波の速さ \(v\)
      • 相違点: 腹の数 \(m\), 波長 \(\lambda\), 振動数 \(f\)
    3. 適切な関係式の選択: 状態間の関係を結びつける式を選びます。
      • (2)の主たる解法のように、不変量である \(v\) を介して計算するルート (\(f_2 = v / \lambda_2\))。
      • (2)の別解のように、変数間の比例関係 (\(f_m \propto m\)) を利用して計算するルート。後者の方が多くの場合、計算が簡単です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 波の速さ \(v\) が変わると誤解する:
    • 誤解: (2)で振動数を変えたのだから、波の速さ \(v\) も変わるだろうと勘違いしてしまう。
    • 対策: 「波の速さは媒質で決まる」という大原則を徹底的に頭に叩き込みましょう。振動数や波長は「波の現象」の側面であり、速さは「波が伝わる場所」の性質です。この2つを明確に区別することが重要です。
  • 比例関係の誤用:
    • 誤解: 振動数 \(f\) は波長 \(\lambda\) に比例する (\(f \propto \lambda\)) と間違える。
    • 対策: 波の基本式 \(v=f\lambda\) を常に思い浮かべましょう。速さ \(v\) が一定のとき、この式は \(f = \displaystyle\frac{v}{\lambda}\) と変形できます。したがって、\(f\) と \(\lambda\) は「反比例」の関係 (\(f \propto \displaystyle\frac{1}{\lambda}\)) にあります。式を正しく変形して比例関係を判断する癖をつけましょう。
  • 基本振動数の特定ミス:
    • 誤解: 問題で最初に与えられた振動数が、必ずしも基本振動数 \(f_1\) ではない場合があるのに、常に \(f_1\) だと思い込んでしまう。(例:「腹が3個のとき振動数は300Hzだった」という設定の問題)
    • 対策: 問題文をよく読み、「腹が何個のとき」の振動数なのかを正確に把握しましょう。もし腹が3個のときの振動数 \(f_3\) が与えられたなら、まず \(f_1 = f_3 / 3\) として基本振動数を計算し、それを基準に他の振動数を求める、という手順を踏む必要があります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • (1)での \(L = \lambda_1/2\) と \(v=f_1\lambda_1\) の選択:
    • 選定理由: (1)では、未知数が \(\lambda_1\) と \(v\) の2つです。これを解くには、独立した2つの関係式が必要です。
    • 適用根拠:
      1. 1つ目の式は、物理的な状況(腹が1個の定在波)から導かれる幾何学的な条件式 \(L = \lambda_1/2\) です。
      2. 2つ目の式は、波に共通する普遍的な運動学的関係式 \(v=f_1\lambda_1\) です。

      この2つを連立させることで、未知数を求めることができます。

  • (2)の別解での \(f_2 = 2f_1\) の選択:
    • 選定理由: (2)で求めたいのは \(f_2\) であり、(1)で \(f_1\) が与えられています。この2つの物理量を直接結びつける関係式があれば、計算が最も効率的になります。
    • 適用根拠: 弦の固有振動数 \(f_m = m \displaystyle\frac{v}{2L}\) という一般式から、\(f_1 = \displaystyle\frac{v}{2L}\) と \(f_2 = 2 \displaystyle\frac{v}{2L}\) が導かれます。この2式から、速さ \(v\) や長さ \(L\) を知らなくても \(f_2 = 2f_1\) という関係が常に成り立つことがわかります。この法則の適用条件は「同じ弦(同じ \(v, L\)) での異なる振動モードを比較している」ことであり、この問題の状況に完全に合致しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位を意識した立式: 計算式を立てるとき、\(v = (2.0 \times 10^2 \, \text{Hz}) \times (1.6 \, \text{m})\) のように、数値だけでなく単位も意識すると、物理的な意味を考えながら計算を進めることができます。
  • 指数計算のルール徹底: \(2.0 \times 10^2\) のような指数表記の計算に慣れましょう。特に割り算 \(\displaystyle\frac{3.2 \times 10^2}{0.80}\) では、まず係数部分 (\(3.2 \div 0.80 = 4\)) を計算し、指数部分はそのまま、というように分離して考えるとミスが減ります。
  • 比例関係の活用: (2)の別解のように、比例関係を見抜くことは、計算を劇的に簡略化し、ミスを減らすための最強のテクニックです。常に「Aが2倍になったらBはどうなるか?」という視点で物理法則を見る癖をつけましょう。この問題では「腹の数 \(m\) が2倍になったから、振動数 \(f\) も2倍になる」と瞬時に判断できます。
  • 検算の習慣: (2)を主たる解法で解いた後、別解の \(f_2 = 2f_1\) の関係が成り立っているか(\(4.0 \times 10^2\) は \(2.0 \times 10^2\) の2倍か)を確認することで、計算ミスがないかをチェックできます。異なるアプローチで同じ結論に至ることを確認するのは、最も効果的な検算方法の一つです。

304 弦の振動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: 固有振動の一般式を用いる解法
      • 模範解答が図から直接、弦の長さと波長の関係を読み取るのに対し、別解ではまず両端固定弦の波長の一般式 \( \lambda_m = \displaystyle\frac{2L}{m} \) を用い、それに \(m=3\) を代入して計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の汎用性向上: 図を正確に描くのが難しい場合や、より高次の振動(例:10倍振動)を考える場合でも、一般式を使えば機械的かつ正確に波長を求めることができます。定在波の問題全般に応用できる汎用的な思考法が身につきます。
    • 物理的構造の理解: なぜその波長になるのかを、「弦長に半波長が\(m\)個入る」という定在波の基本構造から論理的に導出する経験を通じて、物理現象への理解が深まります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「弦の固有振動と波の速さを決める要因」です。定在波の基本的な性質(波長と弦長の関係)に加え、弦を伝わる波の速さが、弦の物理的性質(張力と線密度)によってどのように決まるかを理解し、計算できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 定在波の波長: 両端が節となる定在波では、弦の長さ\(L\)と腹の数\(m\)によって波長\(\lambda\)が決まります。(\(L = m \displaystyle\frac{\lambda}{2}\))
  2. 弦を伝わる波の速さ: 波の速さ\(v\)は、弦の張力\(S\)と線密度\(\rho\)によって決まり、\(v = \sqrt{\displaystyle\frac{S}{\rho}}\)という式で与えられます。
  3. 張力の計算: この実験装置では、弦の張力\(S\)は、つるされたおもりの重力\(Mg\)に等しくなります。
  4. 波の基本式: 波の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間には、常に\(v=f\lambda\)という関係が成り立ちます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、腹が3個の定在波の図を描き、弦の長さ\(L\)と波長\(\lambda\)の関係を読み取って\(\lambda\)を計算します。
  2. (2)では、まずおもりの質量から弦の張力\(S\)を計算します。次に、与えられている線密度\(\rho\)と計算した張力\(S\)を、波の速さの公式\(v = \sqrt{\displaystyle\frac{S}{\rho}}\)に代入して\(v\)を求めます。
  3. (3)では、(1)で求めた波長\(\lambda\)と(2)で求めた速さ\(v\)を、波の基本式\(v=f\lambda\)に代入し、振動数\(f\)を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
問題文に「弦には3個の腹をもつ定在波が生じた」とあります。これは3倍振動に対応します。PとQの位置は節となるため、弦長\(L=1.2 \, \text{m}\)の区間に、腹が3つある定在波が形成されています。この定在波の様子を図に描き、弦の長さ\(L\)と波長\(\lambda\)の関係を視覚的に捉えることが、この設問を解く鍵となります。

この設問における重要なポイント

  • 腹が3個の定在波は「3倍振動」(\(m=3\))である。
  • 3倍振動では、弦の長さ\(L\)は1.5波長(\(\displaystyle\frac{3}{2}\lambda\))に等しい。
  • 図を描いて、弦長と波長の関係を視覚的に確認する。

具体的な解説と立式
弦の振動部分の長さは \(L=1.2 \, \text{m}\) です。
この区間に腹が3個の定在波が生じているので、弦の長さ\(L\)は、半波長(\(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\))の3倍に相当します。
$$ L = 3 \times \frac{\lambda}{2} $$
この関係式を、波長\(\lambda\)について解きます。

使用した物理公式

  • 3倍振動の条件: \(L = \displaystyle\frac{3}{2}\lambda\)
計算過程

上記で立式した \(L = \displaystyle\frac{3}{2}\lambda\) を\(\lambda\)について解き、\(L=1.2 \, \text{m}\)を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \frac{2}{3}L \\[2.0ex]
&= \frac{2}{3} \times 1.2 \\[2.0ex]
&= 2 \times 0.40 \\[2.0ex]
&= 0.80 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

弦の上に、波の山(腹)が3つできている状態を想像します。このとき、波の形は「S」の字を横にして、さらにもう半回転させたような形になります。この全体の長さが弦の長さ\(1.2 \, \text{m}\)です。
波1つ分の長さ(波長)は、この「S」字1つ分に相当します。図をよく見ると、弦の長さ\(1.2 \, \text{m}\)の中に、波長が1.5個分入っていることがわかります。
したがって、波長は \(1.2 \, \text{m} \div 1.5 = 0.80 \, \text{m}\) と計算できます。

結論と吟味

弦を伝わる波の波長は \(\lambda = 0.80 \, \text{m}\) となります。これは、弦の長さ\(1.2 \, \text{m}\)より短い妥当な値です。

解答 (1) \(0.80 \, \text{m}\)
別解: 固有振動の一般式を用いる解法

思考の道筋とポイント
図から個別に考えるのではなく、まず両端が固定された弦の波長の一般式を立てます。弦の長さ\(L\)に半波長が\(m\)個(\(m\)は腹の数)入るという条件から、\(\lambda_m = \displaystyle\frac{2L}{m}\) という一般式を導きます。
この問題では腹が3個なので、\(m=3\) をこの一般式に代入して波長を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 両端固定弦の波長の一般式は \(\lambda_m = \displaystyle\frac{2L}{m}\) である。
  • 腹の数が3個なので、\(m=3\) を代入する。

具体的な解説と立式
両端が節となる長さ\(L\)の弦に、腹が\(m\)個の定在波が生じるとき、その波長\(\lambda_m\)は一般に次の式で与えられます。
$$ \lambda_m = \frac{2L}{m} $$
問題では腹が3個なので、\(m=3\) の場合を考えます。
$$ \lambda_3 = \frac{2L}{3} $$

使用した物理公式

  • 固有振動の波長の一般式: \(\lambda_m = \displaystyle\frac{2L}{m}\)
計算過程

上記の式に \(L=1.2 \, \text{m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\lambda_3 &= \frac{2 \times 1.2}{3} \\[2.0ex]
&= \frac{2.4}{3} \\[2.0ex]
&= 0.80 \, \text{m}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

弦の定在波の波長には、「波長 = (2 × 弦の長さ) ÷ (腹の数)」という便利な公式があります。
この問題では、弦の長さが\(1.2 \, \text{m}\)、腹の数が3個なので、この公式に当てはめるだけで、波長 = (2 × 1.2) ÷ 3 = 0.80 m と簡単に計算できます。

結論と吟味

主たる解法と全く同じ \(\lambda = 0.80 \, \text{m}\) という結果が得られました。一般式を用いることで、図を詳細に解釈する手間が省け、より機械的かつ迅速に答えを導くことができます。

解答 (1) \(0.80 \, \text{m}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
弦を伝わる波の速さ\(v\)を求める問題です。問題文で、速さを計算するための公式 \(v = \sqrt{\displaystyle\frac{S}{\rho}}\) が与えられています。この式を使うためには、弦の張力\(S\)と線密度\(\rho\)の値を求める必要があります。
線密度\(\rho\)は問題文で与えられています。張力\(S\)は、図からおもりが静止していることから、おもりにはたらく重力と張力がつり合っていると考え、おもりの質量から計算します。
これらの値を公式に代入すれば、速さ\(v\)が求まります。

この設問における重要なポイント

  • 波の速さの公式 \(v = \sqrt{\displaystyle\frac{S}{\rho}}\) を利用する。
  • 弦の張力\(S\)は、おもりの重さ\(Mg\)に等しい。
  • ルートの中の計算、特に指数計算を正確に行う。

具体的な解説と立式
まず、弦の張力\(S\)を求めます。張力\(S\)は、質量\(M=2.0 \, \text{kg}\)のおもりにはたらく重力の大きさに等しいので、重力加速度の大きさを\(g=9.8 \, \text{m/s}^2\)として、
$$ S = Mg \quad \cdots ① $$
次に、この\(S\)と、問題文で与えられた線密度\(\rho = 4.9 \times 10^{-4} \, \text{kg/m}\)を、速さの公式に代入します。
$$ v = \sqrt{\frac{S}{\rho}} \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 張力と重力のつりあい: \(S=Mg\)
  • 弦を伝わる波の速さ: \(v = \sqrt{\displaystyle\frac{S}{\rho}}\)
計算過程

式①を用いて張力\(S\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
S &= 2.0 \times 9.8 \\[2.0ex]
&= 19.6 \, \text{N}
\end{aligned}
$$
この結果と\(\rho\)の値を式②に代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= \sqrt{\frac{19.6}{4.9 \times 10^{-4}}} \\[2.0ex]
&= \sqrt{\frac{19.6}{4.9} \times 10^4} \\[2.0ex]
&= \sqrt{4.0 \times 10^4} \\[2.0ex]
&= \sqrt{4.0} \times \sqrt{10^4} \\[2.0ex]
&= 2.0 \times 10^2 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

波の速さは、弦の「張り具合(張力)」と「太さ(線密度)」で決まります。その計算式が \(v = \sqrt{S/\rho}\) です。
まず「張り具合」\(S\)を求めます。これは、ぶら下がっているおもりの重さと同じです。質量\(2.0 \, \text{kg}\)なので、重さは \(2.0 \times 9.8 = 19.6 \, \text{N}\) です。
「太さ」\(\rho\)は問題に \(4.9 \times 10^{-4}\) と書かれています。
この2つの値を公式に代入して、ルートの計算をします。分数の計算と指数の計算を間違えないように注意すれば、速さが求まります。

結論と吟味

弦を伝わる波の速さは \(v = 2.0 \times 10^2 \, \text{m/s}\) となります。有効数字2桁で計算されており、物理的に妥当な値です。

解答 (2) \(2.0 \times 10^2 \, \text{m/s}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
振動数\(f\)を求める問題です。ここまでで、波長\(\lambda\)(問1)と速さ\(v\)(問2)がわかっています。これら3つの物理量(\(v, f, \lambda\))を結びつけるのは、波の基本式\(v=f\lambda\)です。この式を\(f\)について解き、(1)と(2)で求めた値を代入すれば、答えが得られます。

この設問における重要なポイント

  • 波の基本式 \(v=f\lambda\) を利用する。
  • (1), (2)で求めた値を正確に代入する。

具体的な解説と立式
波の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の関係は、波の基本式で与えられます。
$$ v = f\lambda $$
この式を、求めたい振動数\(f\)について解きます。
$$ f = \frac{v}{\lambda} $$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v=f\lambda\)
計算過程

上記で変形した式に、(1)で求めた \(\lambda = 0.80 \, \text{m}\) と、(2)で求めた \(v = 2.0 \times 10^2 \, \text{m/s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{2.0 \times 10^2}{0.80} \\[2.0ex]
&= \frac{200}{0.80} \\[2.0ex]
&= 250 \\[2.0ex]
&= 2.5 \times 10^2 \, \text{Hz}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

振動数を求めるには、波の万能公式「速さ = 振動数 × 波長」を使います。
これを変形すると「振動数 = 速さ ÷ 波長」となります。
(1)で波長は \(0.80 \, \text{m}\)、(2)で速さは \(2.0 \times 10^2 \, \text{m/s}\) とわかっているので、単純に割り算をするだけです。\(200 \div 0.80\) を計算すると、振動数が求まります。

結論と吟味

振動数は \(f = 2.5 \times 10^2 \, \text{Hz}\) となります。これは3倍振動の振動数です。もし基本振動数を求めると \(f_1 = f_3/3 \approx 83 \, \text{Hz}\) となり、物理的に妥当な範囲の値です。

解答 (3) \(2.5 \times 10^2 \, \text{Hz}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波の速さを決定する2つの視点:
    • 核心: この問題の根幹は、弦を伝わる波の速さ\(v\)が、2つの全く異なる側面から記述できることを理解し、それらを統合して考える点にあります。
    • 理解のポイント:
      1. 媒質の性質から決まる速さ(力学的視点): 波の速さは、弦の張力\(S\)と線密度\(\rho\)という、媒質の物理的・力学的な性質によって決まります。これを表すのが \(v = \sqrt{\displaystyle\frac{S}{\rho}}\) です。これは「波がそもそもどれくらいの速さで伝われるか」というポテンシャルを示しています。
      2. 波の現象から決まる速さ(運動学的視点): 実際に波が発生すると、その速さは振動数\(f\)と波長\(\lambda\)という、波の現象としての特徴によっても記述されます。これを表すのが \(v=f\lambda\) です。

      統合: この問題では、(2)で力学的視点から速さを計算し、(1)で求めた波長と組み合わせて(3)で運動学的視点から振動数を求める、という流れになっています。この2つの視点をつなぐのが「速さ\(v\)」という共通の物理量です。

  • 定在波の幾何学的条件:
    • 核心: 弦に定在波が生じるためには、弦の長さ\(L\)と波長\(\lambda\)が特定の関係(\(L=m\displaystyle\frac{\lambda}{2}\))を満たさなければならない、という幾何学的な制約を正しく適用することが不可欠です。
    • 理解のポイント:
      • この条件は、波の速さや振動数とは独立に、空間的な制約だけで決まります。
      • (1)では、この幾何学的条件だけを使って、まず波長を確定させています。このように、問題を解く際には、どの物理法則がどの物理量を決定するのかを切り分けて考えることが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 振動数を変えて腹の数を変える問題: 「この状態から振動数を2倍にしたら、腹の数はいくつになるか?」といった問題。\(f_m = m \displaystyle\frac{v}{2L}\) より、\(f \propto m\) の関係(速さ\(v\)と長さ\(L\)が一定なら)を使って、腹の数も2倍の6個になると予測できます。
    • おもりの質量を変える問題: 「おもりを質量\(M’\)のものに変えたら、同じ3倍振動を起こすための振動数\(f’\)はいくらか?」といった問題。\(f \propto v\) かつ \(v \propto \sqrt{S}\) かつ \(S \propto M\) なので、\(f \propto \sqrt{M}\) の関係が成り立ちます。よって、\(f’ = f \sqrt{\displaystyle\frac{M’}{M}}\) として計算できます。
    • おもりを水中に沈める問題: おもりを水中に沈めると、浮力がはたらくため弦の張力\(S\)が減少します。その結果、波の速さ\(v\)が遅くなり、同じ振動数でも波長が短くなる(腹の数が増える)といった変化を考察する問題に応用できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 物理量のリストアップ: 問題文に出てくる物理量(\(L, \rho, M, g, m=3\))と、求めたい物理量(\(\lambda, v, f\))をすべて書き出します。
    2. 関係式の棚卸し: これらの物理量を結びつける公式(\(L=m\lambda/2\), \(S=Mg\), \(v=\sqrt{S/\rho}\), \(v=f\lambda\))をすべてリストアップします。
    3. 解法の設計(逆算思考): 最終的に求めたいのは(3)の\(f\)です。\(f\)を求めるには\(v\)と\(\lambda\)が必要です。
      • \(v\)を求めるには\(S\)と\(\rho\)が必要で、\(S\)を求めるには\(M\)と\(g\)が必要です。→ (2)の計算ルート
      • \(\lambda\)を求めるには\(L\)と\(m\)が必要です。→ (1)の計算ルート

      このように逆算して考えることで、設問がどのような順序で構成されているかの意図を読み解き、スムーズに解き進めることができます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 張力\(S\)の計算ミス:
    • 誤解: 張力\(S\)として、おもりの質量\(M=2.0 \, \text{kg}\)をそのまま代入してしまう。
    • 対策: 張力は「力[N]」であり、質量「[kg]」とは単位が異なります。必ず質量に重力加速度\(g\)を掛けて力の単位[N]に変換することを徹底しましょう。\(S=Mg\)という一手間を絶対に忘れないようにします。
  • ルートの中の指数計算ミス:
    • 誤解: \(\sqrt{\displaystyle\frac{1}{10^{-4}}}\) を \(10^{-2}\) と計算してしまう。
    • 対策: 指数の割り算は「指数の引き算」(\(10^0 \div 10^{-4} = 10^{0-(-4)} = 10^4\))、ルートは「指数を1/2にする」(\(\sqrt{10^4} = (10^4)^{1/2} = 10^2\))という基本ルールを落ち着いて適用しましょう。分母にある指数を分子に持ってくる際に符号が反転することを意識するのがコツです。
  • 物理量の混同:
    • 誤解: 振動子Pの振動数と、弦を伝わる波の振動数が別物だと考えてしまう。
    • 対策: 振動子(波源)が弦を揺らすことで波が発生します。弦の各点は、波源と同じ振動数で振動します。したがって、「振動子の振動数」と「波の振動数」は等しいと考えます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • (2)での \(v = \sqrt{S/\rho}\) の選択:
    • 選定理由: (2)では波の速さ\(v\)を求める必要がありますが、(1)の時点では波長\(\lambda\)しか分かっておらず、振動数\(f\)が未知です。そのため、\(v=f\lambda\)の式は未知数が2つ(\(v, f\))となり使えません。そこで、波の速さを別の視点(媒質の性質)から決定する公式\(v = \sqrt{S/\rho}\)を選択する必要があります。
    • 適用根拠: この公式は、弦の力学的な性質(張力と線密度)から直接的に速さを導出するものであり、問題文で与えられた\(\rho\)と、おもりの質量から計算できる\(S\)を使って、未知数である\(v\)を唯一決定できる式だからです。
  • (3)での \(v=f\lambda\) の選択:
    • 選定理由: (3)で求めたいのは振動数\(f\)です。(1)で波長\(\lambda\)、(2)で速さ\(v\)が既に求まっています。これら3つの量を結びつける最も直接的な関係式が、波の基本式\(v=f\lambda\)です。
    • 適用根拠: この公式は波の普遍的な性質を表しており、(1)と(2)で求めた値が、同じ一つの波の異なる側面に過ぎないため、この式で統合することができます。設問(1)から(3)は、この一連の物理法則を段階的に適用させるように構成されています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位の確認を徹底する: この問題では、線密度\(\rho\)が[kg/m]、質量\(M\)が[kg]、重力加速度\(g\)が[m/s²]と、すべてSI基本単位系で与えられています。計算前に単位が揃っているかを確認するだけで、単位換算ミスを防げます。
  • 計算しやすい形への変形: (2)の\(v = \sqrt{\displaystyle\frac{2.0 \times 9.8}{4.9 \times 10^{-4}}}\)という計算では、いきなり筆算するのではなく、まず約分できないかを探します。\(9.8\)は\(4.9\)のちょうど2倍であることに気づけば、ルートの中は\(\sqrt{\displaystyle\frac{2.0 \times 2}{10^{-4}}} = \sqrt{4.0 \times 10^4}\)と非常にシンプルな形になります。計算前に式をよく観察する癖をつけましょう。
  • 有効数字の管理: 問題文の数値(\(1.2, 2.0, 4.9, 9.8\))はすべて有効数字2桁です。したがって、最終的な答えもすべて有効数字2桁に揃える必要があります。計算途中では3桁程度で計算を進め、最後に四捨五入して2桁にすると精度が保てます。(例: \(S=19.6\)は途中の値なのでそのまま使い、最終的な答えを出すときに調整する)
  • ストーリーとして理解する: 「おもりが弦を引っ張る(→張力S) → 弦の性質(\(\rho\))と相まって速さ\(v\)が決まる → 弦の長さ(\(L\))の制約で波長\(\lambda\)が決まる → 決まった\(v\)と\(\lambda\)から、この状態を実現する振動数\(f\)が逆算される」という一連の因果関係をストーリーとして理解すると、公式の使いどころや計算の順序を間違えにくくなります。
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305 おんさと弦の共振

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 固有振動数の一般式を用いる解法
      • 模範解答が(2)の新しい波長を計算し、それが弦長にいくつ入るかを考えるのに対し、別解では(1)の状態から基本振動数を求め、(2)の振動数がその何倍にあたるかを計算して腹の数を直接導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 「共振は、外部から加える振動数が、その系の固有振動数のいずれかと一致したときに起こる」という、振動・波動における極めて重要な概念の理解が深まります。
    • 解法の効率化: 波の速さ\(v\)や波長\(\lambda’\)の具体的な値を計算する必要がなく、振動数だけの関係から答えを導けるため、計算が大幅に簡略化され、計算ミスも減らせます。
    • 思考の汎用性向上: この考え方は、弦の振動だけでなく、気柱の共鳴や電気振動(LC共振回路)など、様々な共振現象の問題に応用できる汎用的なアプローチです。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「おんさと弦の共振、特に励振方法による振動数の変化」です。定在波の基本法則に加え、おんさの振動の向きによって弦に伝わる振動数がどのように変わるか(メルデの実験)を理解しているかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 定在波の波長と弦長の関係: 弦の長さ\(L\)と腹の数\(m\)によって波長\(\lambda\)が決まります (\(L = m \displaystyle\frac{\lambda}{2}\))。
  2. 波の基本式: 波の速さ\(v\)、振動数\(f\)、波長\(\lambda\)の間には、常に\(v=f\lambda\)という関係が成り立ちます。
  3. 励振方法と弦の振動数の関係:
    • 横励振(図1): おんさの振動と弦の振動は1対1で対応し、振動数は等しくなります (\(f_{\text{糸}} = f_{\text{おんさ}}\))。
    • 縦励振(図2): おんさが1回振動する間に弦は半回しか振動せず、振動数は半分になります (\(f_{\text{糸}} = \displaystyle\frac{1}{2} f_{\text{おんさ}}\))。
  4. 波の速さの不変性: 弦の張力と線密度が同じであれば、弦を伝わる波の速さ\(v\)は一定です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、横励振であることから糸の振動数を特定し、腹が6個という条件から波長\(\lambda\)を求めます。これらを波の基本式に代入して速さ\(v\)を計算します。
  2. (2)では、縦励振であることから糸の新しい振動数\(f’\)を求めます。弦の条件は変わらないため速さ\(v\)は(1)と同じです。\(v\)と\(f’\)から新しい波長\(\lambda’\)を計算し、弦長\(L\)の中に半波長がいくつ入るかを数えて腹の数を求めます。

問(1)

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