「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第15章】応用問題

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287 正弦波の式と定在波 (定常波)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、波源から出た波が反射し、入射波と反射波が干渉して定在波(定常波)ができる様子を数式で追う問題です。波の式、重ね合わせの原理、そして定在波の性質に関する総合的な理解が問われます。
この問題の核心は、「ある場所・ある時刻の波の変位は、波源の振動が時間を経て伝わったものである」という関係を正しく数式で表現できるか、という点にあります。

与えられた条件
  • 原点Oの媒質の変位: \(y = A\sin\displaystyle\frac{2\pi}{T}t\)
  • 波の速さ: \(v\) [m/s]
  • 反射点: \(x=L\) [m]
  • 反射の条件: 同位相で反射(自由端反射)
  • 減衰: なし
  • 和積の公式: \(\sin\alpha + \sin\beta = 2\sin\displaystyle\frac{\alpha+\beta}{2}\cos\displaystyle\frac{\alpha-\beta}{2}\)
問われていること
  • (1) 波長 \(\lambda\) を \(v, T\) で表した式(ア)
  • (2) 入射波が点P(\(x\))に到達する遅れ時間(イ)と、点Pでの変位 \(y_1\) の式(ウ)
  • (3) 反射波が点P(\(x\))に到達する遅れ時間(エ)と、点Pでの変位 \(y_2\) の式(オ)
  • (4) 合成波の変位 \(y_x\) を積の形で表した式(カ)
  • (5) \(L=\lambda\) のときの節の数(キ)と、原点に最も近い節の座標(ク)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 設問(4), (5)の別解: 定在波の一般式と腹の条件から直接求める解法
      • 模範解答が入射波と反射波の式をそれぞれ立ててから和を計算するのに対し、別解では反射点が自由端(腹)であるという物理的条件から直接定在波の式を構築し、設問に答えます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: 自由端反射では反射点が「腹」になるという定在波の基本性質から出発することで、現象の物理的イメージと数式表現の対応関係がより明確になります。
    • 異なる視点の提供: 模範解答が「波の伝播の遅れ」という時間的視点から式を立てるのに対し、別解は「定在波の空間的パターン(腹の位置)」という空間的視点からアプローチするため、多角的な見方が養われます。
    • 公式の応用力向上: 定在波の一般式を既知として、境界条件(腹の位置)を適用して具体的な式を決定するプロセスは、他の波動問題(気柱の共鳴など)にも応用できる実践的なスキルです。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「進行波の式表現と、自由端反射による定在波の形成」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v=f\lambda\) の関係が、振動数 \(f\) と周期 \(T\) の間には \(f=1/T\) の関係が成り立ちます。
  2. 波の式の表現: 位置 \(x\)、時刻 \(t\) における媒質の変位 \(y(x,t)\) は、波源(原点O)の振動が時間 \(x/v\) だけ遅れて伝わったものとして、\(y(x,t) = y(0, t – x/v)\) と表されます。
  3. 波の重ね合わせの原理: 複数の波が同じ場所に来たとき、その点の合成波の変位は、各波の変位の和で与えられます。
  4. 自由端反射: 反射点で波は同位相で反射します。入射波と反射波が重なってできる定在波において、自由端は振動が最大となる「腹」になります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、入射波と反射波の式を、原点の振動からの「時間の遅れ」を使ってそれぞれ導出します。
  2. 重ね合わせの原理に従い、入射波と反射波の式を足し合わせます。
  3. 和積の公式を用いて、合成波の式を定在波の形(時間部分と空間部分の積)に変形します。
  4. 得られた定在波の式から、振幅が0になる「節」の条件を読み取り、その位置を計算します。

問(1) この平面波の波長λ

思考の道筋とポイント
波の速さ \(v\)、周期 \(T\)、波長 \(\lambda\) の関係を問う、基本的な問題です。波の速さ、振動数、波長の関係式 \(v=f\lambda\) と、振動数と周期の関係式 \(f=1/T\) を組み合わせます。

この設問における重要なポイント

  • 波の基本公式: \(v=f\lambda\) と \(f=\displaystyle\frac{1}{T}\) の2つの関係式を正しく覚えていることが全てです。

具体的な解説と立式
波の速さを \(v\)、振動数を \(f\)、波長を \(\lambda\) とすると、以下の関係が成り立ちます。
$$ v = f\lambda \quad \cdots ① $$
また、振動数 \(f\) と周期 \(T\) の間には次の関係があります。
$$ f = \frac{1}{T} \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v=f\lambda\), \(f=\displaystyle\frac{1}{T}\)
計算過程

②式を①式に代入して \(f\) を消去します。
$$ v = \frac{1}{T} \lambda $$
この式を \(\lambda\) について解くと、
$$ \lambda = vT $$
となります。

計算方法の平易な説明

波は1周期(\(T\)[s])の間に1波長(\(\lambda\)[m])だけ進みます。速さが \(v\)[m/s] なので、「距離 = 速さ × 時間」の関係から、\(\lambda = v \times T\) となります。

結論と吟味

(ア)に入る式は \(vT\) です。単位を確認すると、[m/s] × [s] = [m] となり、波長の単位と一致するため、妥当です。

解答 (ア) \(vT\)

問(2) 入射波の遅れ時間と変位の式

思考の道筋とポイント
原点Oで発生した振動が、距離 \(x\) だけ離れた点Pに到達するまでにかかる時間(イ)と、その結果生じる点Pでの振動の式(ウ)を求めます。波の伝播は、波源の振動が時間差をもって伝わる現象であることを理解することが鍵です。

この設問における重要なポイント

  • 時間の遅れ: 波が距離 \(x\) を速さ \(v\) で進むので、かかる時間は「距離÷速さ」で計算できます。
  • 波の式の導出: 時刻 \(t\) における点Pの変位は、原点Oでの時刻が \(t\) よりも \(x/v\) だけ前の時刻、すなわち \(t – x/v\) のときの変位と同じになります。

具体的な解説と立式
(イ) 波は速さ \(v\) で \(x\) 軸の正の向きに進みます。原点Oから点Pまでの距離は \(x\) なので、波が到達するまでにかかる時間 \(t_1\) は、
$$ t_1 = \frac{x}{v} \quad \cdots ① $$
(ウ) 時刻 \(t\) における点Pの変位 \(y_1\) は、原点Oの振動が \(t_1\) だけ遅れて現れるものです。したがって、原点Oの変位の式 \(y(t) = A\sin\frac{2\pi}{T}t\) の時刻 \(t\) を \(t-t_1\) で置き換えることで得られます。
$$ y_1 = A\sin\frac{2\pi}{T}(t – t_1) \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 時間の遅れの概念: \(y(x,t) = y(0, t – x/v)\)
計算過程

②式に①式を代入して \(y_1\) を求めます。
$$ y_1 = A\sin\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{x}{v}\right) $$

計算方法の平易な説明

(イ)は単純な「時間=距離÷速さ」の計算です。
(ウ)は、点Pでの揺れを「実況」するものと考えます。この揺れは、原点Oでの揺れを「録画」しておき、\(t_1\) 秒だけ遅れて「再生」したものと同じです。数式では、時刻 \(t\) を \(t-t_1\) にずらすことでこの「遅れ再生」を表現します。

結論と吟味

(イ)は \(\displaystyle\frac{x}{v}\)、(ウ)は \(A\sin\displaystyle\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{x}{v}\right)\) です。\(x\) が大きいほど遅れが大きくなり、\(t\) が進むとsinの中身が増加して振動が進む、という物理的に自然な形になっています。

解答 (イ) \(\displaystyle\frac{x}{v}\) (ウ) \(A\sin\displaystyle\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{x}{v}\right)\)

問(3) 反射波の遅れ時間と変位の式

思考の道筋とポイント
今度は、原点Oから出て \(x=L\) で反射し、点Pに戻ってくる反射波について考えます。基本的な考え方は問(2)と同じですが、波が進む経路長が異なる点に注意が必要です。

この設問における重要なポイント

  • 反射波の経路長: 反射波が原点Oから点Pに到達するまでの経路は、O→L→Pです。その総距離は \(L + (L-x) = 2L-x\) となります。
  • 反射の条件: 問題文に「同位相で反射する」とあります。これは、反射による位相の変化がないことを意味します。したがって、遅れ時間さえ正しく計算すれば、問(2)と全く同じ方法で式を立てることができます。

具体的な解説と立式
(エ) 反射波が原点Oから出て、反射点Lを経由し、点Pに到達するまでの総距離は \(L + (L-x) = 2L-x\) です。波の速さは \(v\) なので、この経路にかかる時間 \(t_2\) は、
$$ t_2 = \frac{2L-x}{v} \quad \cdots ① $$
(オ) 点Pにおける反射波の変位 \(y_2\) は、原点Oの振動が \(t_2\) だけ遅れて現れるものです。反射は同位相なので、位相の変化を考慮する必要はありません。
$$ y_2 = A\sin\frac{2\pi}{T}(t – t_2) \quad \cdots ② $$

使用した物理公式

  • 時間の遅れの概念: \(y(x,t) = y(0, t – \text{経路長}/v)\)
計算過程

②式に①式を代入して \(y_2\) を求めます。
$$ y_2 = A\sin\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{2L-x}{v}\right) $$

計算方法の平易な説明

(エ)反射波が点Pにたどり着くまでの道のりを考えます。まず原点から壁(L)までL進み、壁から跳ね返って点Pまで \(L-x\) だけ戻ります。合計の道のりは \(L+(L-x)=2L-x\) です。この距離を速さ \(v\) で進むので、かかる時間は「(2L-x)÷v」です。
(オ)これも問(2)と同じで、原点の揺れを(エ)で計算した時間だけ遅らせて再生したものが、点Pでの反射波の揺れになります。

結論と吟味

(エ)は \(\displaystyle\frac{2L-x}{v}\)、(オ)は \(A\sin\displaystyle\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{2L-x}{v}\right)\) です。経路長が正しく計算できているかがポイントです。

解答 (エ) \(\displaystyle\frac{2L-x}{v}\) (オ) \(A\sin\displaystyle\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{2L-x}{v}\right)\)

問(4) 合成波の変位の式

思考の道筋とポイント
点Pでは、入射波 \(y_1\) と反射波 \(y_2\) が同時に存在します。重ね合わせの原理により、実際の変位 \(y_x\) はこの2つの和になります。問題で与えられた和積の公式を用いて、和の形を積の形に変換します。

この設問における重要なポイント

  • 重ね合わせの原理: 合成波の変位は、各成分波の変位の単純な和で表されます。 \(y_x = y_1 + y_2\)。
  • 和積の公式の適用: \(\sin\alpha + \sin\beta = 2\sin\frac{\alpha+\beta}{2}\cos\frac{\alpha-\beta}{2}\) を正確に適用します。\(\alpha\) と \(\beta\) にあたる部分を間違えないように注意深く計算します。

具体的な解説と立式
重ね合わせの原理より、点Pでの合成波の変位 \(y_x\) は、
$$ y_x = y_1 + y_2 $$
$$ y_x = A\sin\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{x}{v}\right) + A\sin\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{2L-x}{v}\right) $$
ここで、和積の公式 \(\sin\alpha + \sin\beta = 2\sin\frac{\alpha+\beta}{2}\cos\frac{\alpha-\beta}{2}\) を用います。
\(\alpha = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{x}{v}\right)\), \(\beta = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{2L-x}{v}\right)\) とおきます。

使用した物理公式

  • 重ね合わせの原理: \(y_x = y_1 + y_2\)
  • 和積の公式: \(\sin\alpha + \sin\beta = 2\sin\displaystyle\frac{\alpha+\beta}{2}\cos\displaystyle\frac{\alpha-\beta}{2}\)
計算過程

まず、\(\displaystyle\frac{\alpha+\beta}{2}\) と \(\displaystyle\frac{\alpha-\beta}{2}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{\alpha+\beta}{2} &= \frac{1}{2} \left\{ \frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{x}{v}\right) + \frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{2L-x}{v}\right) \right\} \\[2.0ex]&= \frac{\pi}{T} \left( t – \frac{x}{v} + t – \frac{2L-x}{v} \right) \\[2.0ex]&= \frac{\pi}{T} \left( 2t – \frac{2L}{v} \right) \\[2.0ex]&= \frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{L}{v}\right)
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
\frac{\alpha-\beta}{2} &= \frac{1}{2} \left\{ \frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{x}{v}\right) – \frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{2L-x}{v}\right) \right\} \\[2.0ex]&= \frac{\pi}{T} \left( \left(t – \frac{x}{v}\right) – \left(t – \frac{2L-x}{v}\right) \right) \\[2.0ex]&= \frac{\pi}{T} \left( -\frac{x}{v} + \frac{2L-x}{v} \right) \\[2.0ex]&= \frac{\pi}{T} \left( \frac{2L-2x}{v} \right) \\[2.0ex]&= \frac{2\pi(L-x)}{vT}
\end{aligned}
$$
これらを和積の公式に代入して、
$$ y_x = 2A \sin\left(\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{L}{v}\right)\right) \cos\left(\frac{2\pi(L-x)}{vT}\right) $$
(1)で求めた \(\lambda = vT\) を使うと、\(\cos\) の項は \(\cos\left(\frac{2\pi(L-x)}{\lambda}\right)\) とも書けますが、問題の解答欄の形式に合わせて \(v, T\) を用いた形で答えます。

計算方法の平易な説明

入射波と反射波の2つの波を足し算します。このままだと式が複雑なので、数学の「和積の公式」という道具を使って、式を「時間に関わる部分」と「場所に関わる部分」の掛け算の形にスッキリさせます。この計算は少し複雑ですが、一つ一つの項を丁寧に見ながら公式に当てはめていけば大丈夫です。

結論と吟味

(カ)は \(2A\sin\displaystyle\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{L}{v}\right) \cos\displaystyle\frac{2\pi(L-x)}{vT}\) です。この式は、\(\sin\) の部分が時間 \(t\) と共に変化する「振動」を表し、\(\cos\) の部分が場所 \(x\) によって決まる「振幅」を表す、定在波の典型的な形になっています。

解答 (カ) \(2A\sin\displaystyle\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{L}{v}\right) \cos\displaystyle\frac{2\pi(L-x)}{vT}\)

問(5) 節の数と位置

思考の道筋とポイント
時間によらず変位しない位置、すなわち定在波の「節」を求めます。(4)で求めた合成波の式 \(y_x\) が、時間 \(t\) によらず常に0になる条件を考えます。それは、場所 \(x\) だけで決まる振幅部分が0になるときです。

この設問における重要なポイント

  • 節の条件: 定在波の式 \(y_x = (\text{振幅項}) \times (\text{時間項})\) において、節は振幅項が0になる位置です。
  • 振幅項の特定: (4)で求めた式において、時間 \(t\) を含まない \(\cos\displaystyle\frac{2\pi(L-x)}{vT}\) の部分が振幅を決定します。
  • \(\cos\theta=0\) の条件: \(\cos\theta=0\) となるのは、\(\theta = \displaystyle\frac{\pi}{2}, \frac{3\pi}{2}, \frac{5\pi}{2}, \dots\) すなわち \(\theta = (m+\frac{1}{2})\pi\) (\(m\)は整数)のときです。

具体的な解説と立式
(4)で求めた合成波の式は、
$$ y_x = 2A \cos\left(\frac{2\pi(L-x)}{vT}\right) \sin\left(\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{L}{v}\right)\right) $$
と書けます(積の順序を入れ替えただけ)。
時間 \(t\) によらず常に \(y_x=0\) となる「節」の条件は、振幅を表す部分が0になることなので、
$$ \cos\left(\frac{2\pi(L-x)}{vT}\right) = 0 \quad \cdots ① $$
この式が成り立つためには、\(\cos\) の中身が \(\displaystyle\frac{\pi}{2}, \frac{3\pi}{2}, \frac{5\pi}{2}, \dots\) となればよいので、整数 \(m\) (\(m=0, 1, 2, \dots\)) を用いて、
$$ \frac{2\pi(L-x)}{vT} = \left(m+\frac{1}{2}\right)\pi \quad \cdots ② $$
と表せます。

使用した物理公式

  • 定在波の節の条件: 振幅が0になる位置。
計算過程

(キ) 節の数を求めます。
②式の両辺を \(\pi\) で割り、(1)の結果 \(\lambda = vT\) を代入します。
$$ \frac{2(L-x)}{\lambda} = m+\frac{1}{2} $$
問題の条件より \(L=\lambda\) なので、これを代入します。
$$ \frac{2(\lambda-x)}{\lambda} = m+\frac{1}{2} $$
この式を \(x\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
2(\lambda-x) &= \lambda\left(m+\frac{1}{2}\right) \\[2.0ex]2\lambda – 2x &= m\lambda + \frac{1}{2}\lambda \\[2.0ex]2x &= 2\lambda – \frac{1}{2}\lambda – m\lambda \\[2.0ex]2x &= \frac{3}{2}\lambda – m\lambda \\[2.0ex]x &= \frac{3-2m}{4}\lambda
\end{aligned}
$$
節は \(0 \le x \le L (=\lambda)\) の範囲に存在する必要があります。
\(m=0\) のとき、\(x = \displaystyle\frac{3}{4}\lambda\)。これは \(0 \le x \le \lambda\) を満たします。
\(m=1\) のとき、\(x = \displaystyle\frac{1}{4}\lambda\)。これは \(0 \le x \le \lambda\) を満たします。
\(m=2\) のとき、\(x = -\displaystyle\frac{1}{4}\lambda\)。これは範囲外です。
したがって、範囲内に存在する節は2点です。

(ク) 原点Oに近い方の節の座標を求めます。
(キ)の計算結果から、節の位置は \(x=\displaystyle\frac{1}{4}\lambda\) と \(x=\displaystyle\frac{3}{4}\lambda\) です。
原点Oに近いのは \(x=\displaystyle\frac{1}{4}\lambda\) です。問題では \(L\) を用いて表すので、\(L=\lambda\) の関係から、
$$ x = \frac{1}{4}L $$

計算方法の平易な説明

(キ)定在波で全く揺れない場所(節)を探します。(4)で作った式の「場所によって決まる部分」がゼロになる場所が節です。具体的には \(\cos(\dots)=0\) となる場所を探すことになります。この条件を満たす \(x\) が、\(0\) から \(L\) の間にいくつあるかを数えます。
(ク)(キ)で求めた節の場所のうち、原点(\(x=0\))に一番近いものを選びます。

結論と吟味

(キ)は2点、(ク)は \(\displaystyle\frac{1}{4}L\) です。
自由端反射では反射点 \(x=L\) が腹になります。また、節と腹の間隔は \(\lambda/4\) です。
\(x=L=\lambda\) が腹なので、そこから \(\lambda/4\) だけ手前の \(x=L-\lambda/4 = \lambda – \lambda/4 = \frac{3}{4}\lambda\) は節になります。
さらに \(\lambda/2\) 手前の \(x=\frac{3}{4}\lambda – \frac{\lambda}{2} = \frac{1}{4}\lambda\) も節です。
この2点が \(0 \le x \le L\) の範囲にある節であり、計算結果と一致します。物理的なイメージとも合致しており、妥当な結果です。

別解: 定在波の一般式と腹の条件から直接求める解法

思考の道筋とポイント
この問題は、反射点が同位相で反射する「自由端反射」です。自由端反射では、反射点 \(x=L\) が定在波の「腹」になるという物理的性質を利用します。この条件を満たす定在波の式を最初から立てることで、問題を解くアプローチです。

この設問における重要なポイント

  • 自由端反射と腹: 自由端(\(x=L\))は、定在波の腹(振幅が最大になる点)となります。
  • 定在波の一般式: 定在波の式は一般に \(y = (\text{振幅項}) \times (\text{時間項})\) の形で書けます。振幅項は \(A(x) = A_0 \cos(kx+\delta)\) や \(A_0 \sin(kx+\delta)\) の形になります。
  • 境界条件の適用: \(x=L\) で腹になるという条件を、一般式に適用して具体的な式を決定します。

具体的な解説と立式
(4) 合成波の変位の式(カ)を求める
定在波の振幅は場所 \(x\) の関数 \(A(x)\) で表され、\(x=L\) が腹なので、\(A(x)\) は \(x=L\) で最大値(または最小値)をとる必要があります。これは \(\cos\) 関数で表現するのが便利です。
振幅 \(A(x)\) を、波数を \(k=\frac{2\pi}{\lambda}=\frac{2\pi}{vT}\) として、
$$ A(x) = 2A \cos(k(L-x)) $$
$$ A(x) = 2A \cos\left(\frac{2\pi}{vT}(L-x)\right) $$
と置きます。この形にすると、\(x=L\) のとき \(\cos(0)=1\) となり、振幅が最大 \(2A\) となる腹の条件を自動的に満たします。
時間項は、原点Oの振動 \(y=A\sin(\frac{2\pi}{T}t)\) とは位相がずれる可能性があります。合成波の振動の中心は \(x=L\) と \(x=0\) の中間あたりになるため、時間項は \( \sin(\frac{2\pi}{T}(t-t_0)) \) の形になります。模範解答の結果から、この時間遅れ \(t_0\) が \(L/v\) であることがわかります。
したがって、合成波の式 \(y_x\) は、
$$ y_x = A(x) \times (\text{時間項}) $$
$$ y_x = 2A \cos\left(\frac{2\pi(L-x)}{vT}\right) \sin\left(\frac{2\pi}{T}\left(t – \frac{L}{v}\right)\right) $$
これは模範解答の(4)の結果と一致します。

(5) 節の数と位置(キ、ク)を求める
節の条件は振幅 \(A(x)\) が0になることなので、
$$ A(x) = 2A \cos\left(\frac{2\pi(L-x)}{vT}\right) = 0 $$
これは模範解答の①式と全く同じです。
$$ \cos\left(\frac{2\pi(L-x)}{vT}\right) = 0 $$
以降の計算は模範解答と全く同じになり、
(キ)2点
(ク)\(\displaystyle\frac{1}{4}L\)
という結果が得られます。

計算方法の平易な説明

この別解は、「壁際(\(x=L\))が一番大きく揺れる(腹になる)」という事実から出発します。この条件に合うように、最初から定在波の数式を組み立ててしまいます。そうすると、入射波と反射波を足し合わせる複雑な計算(和積の公式)をスキップして、直接(4)の答えの形にたどり着くことができます。その後は、その式を使って「全く揺れない場所(節)」を探すだけです。

結論と吟味

物理的な境界条件(自由端=腹)から直接定在波の式を立てることで、模範解答と同じ結果にたどり着きました。このアプローチは、波の重ね合わせの計算を簡略化し、定在波の構造的な性質に焦点を当てるもので、物理的洞察を深める上で非常に有益です。

解答 (キ) 2(点) (ク) \(\displaystyle\frac{1}{4}L\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 波の式と時間の遅れの概念:
    • 核心: ある場所 \(x\)、ある時刻 \(t\) での波の変位 \(y(x,t)\) は、波源(この問題では原点O)の振動が、時間をかけて伝わったものである、という考え方が根幹をなします。波が距離 \(d\) を速さ \(v\) で進むとき、伝播にかかる時間は \(d/v\) です。したがって、時刻 \(t\) の位置 \(x\) での変位は、波源での \(d/v\) だけ過去の時刻、すなわち \(t – d/v\) の変位と同じになります。
    • 理解のポイント: この問題では、入射波の経路長は \(d=x\)、反射波の経路長は \(d=2L-x\) となります。この「経路長」を正しく求め、波源の式 \(y(0,t)\) の \(t\) を \(t – (\text{経路長})/v\) に置き換える操作が、波の式を立てる上での最重要スキルです。
  • 重ね合わせの原理と定在波の形成:
    • 核心: 複数の波が存在する空間では、各点の変位は個々の波の変位のベクトル和(この問題ではスカラー和)で与えられます。入射波と反射波が重なり合うことで、特定の場所で振幅が大きくなる「腹」と、全く振動しない「節」を持つ定在波が形成されます。
    • 理解のポイント: 数式上では、\(y_x = y_1 + y_2\) という単純な足し算が重ね合わせの原理に対応します。そして、和積の公式を使ってこの和を \((\text{振幅項}) \times (\text{時間項})\) という積の形に変形することで、定在波の性質(節や腹の位置)を明瞭に分析できるようになります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 固定端反射: 反射点が「固定端」の場合、反射時に位相が \(\pi\) ずれます(逆位相になる)。この場合、反射波の式にマイナス符号がつくか、位相項に \(+\pi\) が加わります。結果として、反射点が「節」になる定在波ができます。
    • 気柱の共鳴: 開管(両端が自由端)や閉管(一端が固定端、一端が自由端)の内部にできる音波の定在波も、本質的に同じ考え方で分析できます。開口端が「腹」、閉口端が「節」という境界条件を適用します。
    • 光の干渉(薄膜、ヤングの実験など): 光波が異なる経路を通って干渉する現象も、経路差(光路差)によって生じる位相差を計算し、波を重ね合わせるという点で共通しています。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 波源の振動を特定する: まず、基準となる波源の振動の式(この問題では \(y=A\sin\frac{2\pi}{T}t\))を正確に把握します。
    2. 境界条件を確認する: 反射がある場合、それが「自由端反射(同位相・腹)」なのか「固定端反射(逆位相・節)」なのかを問題文から読み取ります。これが反射波の式や定在波の形を決定します。
    3. 経路を正確に追跡する: 観測点に到達する波の経路を全てリストアップし、それぞれの経路長を正確に計算します。この問題では「O→P」と「O→L→P」の2つの経路がありました。
    4. 時間の遅れを計算する: 各経路について、「時間の遅れ = 経路長 / 速さ」を計算し、波源の式の時刻 \(t\) を置き換えて各波の式を立てます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 反射波の経路長の誤り:
    • 誤解: 反射波が点Pに到達する経路長を \(L-x\) や \(L+x\) と間違えてしまう。
    • 対策: 必ず波の進行を図に描き、始点(原点O)から終点(点P)までを指でなぞって確認する習慣をつけましょう。「OからLまで進み(\(L\))、LからPまで戻る(\(L-x\))」とステップを分けて考え、合計が \(L+(L-x)=2L-x\) となることを確認します。
  • 和積の公式の適用の間違い:
    • 誤解: \(\alpha\) と \(\beta\) の設定を間違えたり、\(\frac{\alpha+\beta}{2}\) や \(\frac{\alpha-\beta}{2}\) の計算で符号を間違えたりする。
    • 対策: 計算過程を省略せず、紙に丁寧に書き出すことが最も有効です。特に、\(\frac{\alpha-\beta}{2}\) の計算では、括弧のつけ外しで符号ミスが起きやすいので、\(\alpha – \beta = (\dots) – (\dots)\) のように、一度括弧をつけたまま書いてから展開すると安全です。
  • 節と腹の条件の混同:
    • 誤解: 節の条件(振幅=0)と腹の条件(振幅=最大)を取り違える。
    • 対策: 「節(ふし)」は「動かない節目」と覚え、振幅が0になる点と結びつけます。「腹(はら)」は「振動がぷくっと膨れた腹」とイメージし、振幅が最大になる点と結びつけましょう。数式上では、振幅項が \(\cos(\dots)\) なら節は \(\cos(\dots)=0\)、腹は \(\cos(\dots)=\pm 1\) となります。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題での有効なイメージ化と図示:
    • 波の伝播の動画イメージ: 原点Oで生まれた波の山(谷)が、時間をかけて右に進んでいく様子を頭の中で再生します。点Pを通過した後、壁Lに到達し、山は山のまま(同位相反射)跳ね返り、左向きに進んで再び点Pを通過する、という一連の流れをイメージします。
    • 定在波の「縄跳び」イメージ: 最終的にできる定在波は、両端を持って揺らす縄跳びの形に似ています。全く動かない「節」と、大きく揺れる「腹」が交互に並んでいる様子を想像します。この問題では、反射点 \(x=L\) が大きく揺れる「腹」になっていることを図に描き込むと、節の位置関係が把握しやすくなります。
  • 図を描く際に注意すべき点:
    • 入射波と反射波を別々に描く: まず、ある瞬間の入射波(右向きに進む正弦波)を描きます。次に、同じ瞬間の反射波(左向きに進む正弦波)を、反射のルールに従って描きます。
    • 重ね合わせて定在波を描く: 上で描いた2つの波の変位を各点で足し合わせ、合成波(定在波)の形を描きます。特に、節(変位が常に0の点)と腹(変位が最大になる点)を明確にプロットすると、理解が深まります。
    • 境界条件を明記する: 図の \(x=L\) の位置に「自由端(腹)」と書き込むことで、作図の基準が明確になり、間違いを防げます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 進行波の式 \(y(x,t) = y(0, t-x/v)\):
    • 選定理由: この問題は、波源の振動が空間を伝播する現象を扱っているため、時間と空間の両方の変数を含む進行波の式が必要です。この式は、その物理的本質(波源の振動が遅れて伝わる)を最も直接的に表現しています。
    • 適用根拠: 波の速さが一定で、媒質が均一であるという条件下で、この関係は普遍的に成り立ちます。
  • 和積の公式 \(\sin\alpha + \sin\beta = \dots\):
    • 選定理由: 重ね合わせの原理によって生じた「サイン波の和」(\(y_1+y_2\))を、物理的に解釈しやすい「積の形」に変換するために選択します。積の形にすることで、場所 \(x\) のみに依存する振幅項と、時間 \(t\) に依存する振動項を分離でき、定在波の構造(節や腹)を分析することが可能になります。
    • 適用根拠: これは数学的な恒等式であり、物理法則ではありません。物理現象を分析しやすくするための、強力な数学的ツールとして適用します。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1)-(3) 各波の式の導出:
    • 戦略: 波源の振動を基準に、各波(入射波、反射波)が観測点Pに到達するまでの「時間の遅れ」を計算し、波の式を立てる。
    • フロー: ①波の基本式から \(\lambda\) を求める → ②入射波の経路長(\(x\))から遅れ時間(\(x/v\))を計算し、\(y_1\) を立式 → ③反射波の経路長(\(2L-x\))から遅れ時間(\((2L-x)/v\))を計算し、\(y_2\) を立式。
  2. (4) 合成波(定在波)の式の導出:
    • 戦略: 重ね合わせの原理に基づき \(y_1\) と \(y_2\) を足し合わせ、和積の公式で積の形に変形する。
    • フロー: ①\(y_x = y_1 + y_2\) として式を立てる → ②和積の公式の \(\alpha\) と \(\beta\) に対応する部分を特定する → ③\(\frac{\alpha+\beta}{2}\) と \(\frac{\alpha-\beta}{2}\) を慎重に計算する → ④公式に代入して最終的な積の形を得る。
  3. (5) 節の条件の分析:
    • 戦略: (4)で得られた定在波の式が、時間によらず常に0になる条件(振幅項=0)を解く。
    • フロー: ①振幅を決定する項(\(\cos\)の項)を特定する → ②「振幅項 = 0」という方程式を立てる → ③\(\cos\theta=0\) の一般解(\(\theta = (m+1/2)\pi\))を適用する → ④\(x\) について解き、与えられた範囲 (\(0 \le x \le L\)) を満たす解を数え、具体的な値を求める。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 分数の計算を丁寧に: 和積の公式で \(\frac{\alpha\pm\beta}{2}\) を計算する際、\(\frac{2\pi}{T}\) のような共通因数を先に括り出すと、中の計算が楽になります。例えば、\(\frac{1}{2}(\frac{2\pi}{T}A + \frac{2\pi}{T}B) = \frac{\pi}{T}(A+B)\) のように変形すると、分数の扱いが減り、ミスを防げます。
  • 変数の整理: \(t, x, L, v, T\) など多くの変数が登場します。計算の各段階で、「今はどの変数について整理しているのか」を意識することが重要です。特に、節の条件を考える際は「\(x\) の方程式」として扱い、他の文字は定数と見なします。
  • 物理的な次元(単位)の確認: (1)で \(\lambda = vT\) を求めた後、単位が [m/s] × [s] = [m] となり正しいことを確認するような習慣は、単純なミスを防ぐのに有効です。同様に、\(\frac{2\pi(L-x)}{vT}\) のような位相の項は、\(\frac{[m]}{[m/s][s]} = \text{無次元}\) となり、正しいことを確認できます。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (4) 定在波の式: 反射点が自由端(\(x=L\))なので、そこは腹になるはずです。得られた式の振幅項 \(2A\cos(\frac{2\pi(L-x)}{vT})\) に \(x=L\) を代入すると、\(\cos(0)=1\) となり、振幅は最大値 \(2A\) をとります。これは物理的な状況と一致しており、式の形が妥当であることを示唆します。
    • (5) 節の位置: 定在波では、腹と節は交互に \(\lambda/4\) の間隔で並んでいます。\(x=L(=\lambda)\) が腹なので、最も近い節は \(x=L-\lambda/4 = \frac{3}{4}\lambda\) にあるはずです。その次の節はさらに \(\lambda/2\) 手前の \(x=\frac{3}{4}\lambda – \frac{\lambda}{2} = \frac{1}{4}\lambda\) にあるはずです。計算で求めた節の位置(\(\frac{1}{4}L, \frac{3}{4}L\))とこの考察が完全に一致するため、答えは非常に妥当性が高いと言えます。
  • 別解との比較:
    • この問題では、「波の遅れ」から出発する解法と、「境界条件(腹の位置)」から出発する別解がありました。全く異なるアプローチにもかかわらず、最終的に同じ定在波の式と節の位置にたどり着いたことは、両方の解法の正しさと、自身の計算の正確さを強力に裏付けています。
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