「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第14章】基本例題~基本問題270

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基本例題

基本例題49 波の要素

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 本解説が提示する別解
    • 本解説では、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、物理的な理解を多角的に深めるために、以下の別解を提示します。
      • 設問(1)の別解: 媒質の単振動に着目した解法
        • 模範解答が波形の平行移動から波の速さ\(v\)を求めるのに対し、別解では特定の位置(\(x=0\))の媒質の単振動の時間経過から周期\(T\)を直接求めます。
      • 設問(3)の別解: \(y-x\)グラフの傾きを利用した解法
        • 模範解答が「少し後の波形」を描いて定性的に速度の向きを判断するのに対し、別解では「媒質の速度 \(v_y = -v \times (y-x \text{グラフの傾き})\)」という関係を用いて、より数学的に解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 設問(1)の別解は、波を「空間を伝わる波形」として捉える視点と、「各点の媒質がその場で単振動している」という視点の両方を結びつけて理解するのに役立ちます。
    • 設問(3)の別解は、直感的な波形移動法に加えて、より厳密で応用範囲の広い解析的な手法を学ぶ良い機会となります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「正弦波のグラフの解釈と基本要素の算出」です。波のグラフから物理量を読み取り、媒質の運動状態を理解する能力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. y-xグラフからの読み取り: 波の瞬間的な形を示す\(y-x\)グラフから、波長\(\lambda\)と振幅\(A\)を直接読み取ることができます。
  2. 波の速さ・周期・振動数の関係: 波の基本式 \(v = f\lambda\) と、振動数と周期の関係 \(T = \displaystyle\frac{1}{f}\) は、これらの量を互いに変換する上で必須です。
  3. 波の伝播と媒質の振動: 波は形(位相)を保ったまま進みますが、各点の媒質はその場で単振動を繰り返します。この2つの運動を区別して理解することが重要です。
  4. 媒質の振動速度: 媒質の振動速度は、単振動の変位が0(振動の中心)のときに最大となり、変位が最大(山や谷)のときに0となります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず\(y-x\)グラフから直接読み取れる波長\(\lambda\)と振幅\(A\)を求めます。次に、与えられた2つの時刻の波形を比較して波の速さ\(v\)を計算し、基本公式を用いて周期\(T\)を導出します。
  2. (2)では、媒質の単振動における速度が0になる条件(変位が最大)を考え、\(t=0\)のグラフ上で該当する点を探します。
  3. (3)では、媒質の速度が最大になる条件(変位が0)を満たす点の中から、速度の向きが\(y\)軸正方向となる点を特定します。これには「少し後の波形を描く」方法が有効です。

問(1)

思考の道筋とポイント
正弦波の基本量である波長\(\lambda\)、振幅\(A\)、周期\(T\)、速さ\(v\)を求める問題です。まず、\(t=0\)の\(y-x\)グラフから\(\lambda\)と\(A\)を読み取ります。次に、\(t=0\)から\(t=1.5 \text{ s}\)への波形の移動を考えることで速さ\(v\)を求め、最後に公式 \(v = \lambda / T\) を使って周期\(T\)を計算します。

この設問における重要なポイント

  • \(y-x\)グラフの1波長分の長さが波長\(\lambda\)、y軸方向の最大変位が振幅\(A\)である。
  • 波の速さ\(v\)は、波形が単位時間あたりに進む距離で定義される。\(v = \Delta x / \Delta t\)。
  • 波の基本公式 \(v = f\lambda\) と \(T=1/f\) を組み合わせた \(v = \lambda / T\) を用いる。

具体的な解説と立式
波長\(\lambda\)と振幅\(A\)の決定
\(t=0\)の波形(実線)を見ると、1つの波の繰り返しパターンが \(x=0\) から \(x=12 \text{ m}\) まで続いていることがわかります。これが1波長です。
$$ \lambda = 12 \text{ [m]} $$
また、媒質の変位\(y\)の最大値はグラフから \(0.2 \text{ m}\) と読み取れます。これが振幅です。
$$ A = 0.2 \text{ [m]} $$

波の速さ\(v\)の決定
実線(\(t=0\))と破線(\(t=1.5 \text{ s}\))の波形を比較します。波は\(x\)軸の正の向きに進むので、例えば実線上で \(x=9 \text{ m}\) にあった山が、破線上では \(x=12 \text{ m}\) に移動したように見えます。しかし、問題文の「\(x=0 \text{ m}\)での媒質の変位が単調に\(0 \text{ m}\)から\(0.2 \text{ m}\)に変化」という条件から、波の移動距離は1波長未満であると判断できます。
実線上で \(x=0\) の点(位相が同じ点)は、破線上では \(x=3 \text{ m}\) に対応します。つまり、波形は \(\Delta t = 1.5 \text{ s}\) の間に \(\Delta x = 3.0 \text{ m}\) だけ進んでいます。
したがって、波の速さ\(v\)は次のように計算できます。
$$ v = \frac{\Delta x}{\Delta t} $$

周期\(T\)の決定
波の速さ\(v\)、波長\(\lambda\)、周期\(T\)の間には \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) の関係があります。この式を\(T\)について解きます。
$$ T = \frac{\lambda}{v} $$

使用した物理公式

  • 波の速さ: \(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)
  • 波の基本式: \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\)
計算過程

波の速さ\(v\)の計算:
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{3.0}{1.5} \\[2.0ex]
&= 2.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
周期\(T\)の計算:
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{12}{2.0} \\[2.0ex]
&= 6.0 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まずグラフを見て、波の「形」の情報を読み取ります。波一つ分の長さ(波長)は \(12 \text{ m}\)、波の高さ(振幅)は \(0.2 \text{ m}\) です。次に、波の「動き」を見ます。実線の波が \(1.5\) 秒後に破線の波になったので、波がどれだけ進んだかを見ます。例えば、\(x=0\) の場所にあった波の先頭が、\(1.5\) 秒後には \(x=3 \text{ m}\) の場所に来ています。つまり、速さは「距離 \(3.0 \text{ m}\) ÷ 時間 \(1.5 \text{ s}\)」で \(2.0 \text{ m/s}\) と計算できます。最後に、周期(波が1回振動するのにかかる時間)は、「波長 \(12 \text{ m}\) ÷ 速さ \(2.0 \text{ m/s}\)」で \(6.0 \text{ s}\) と求められます。

結論と吟味

波長\(\lambda = 12 \text{ m}\)、振幅\(A = 0.2 \text{ m}\)、速さ\(v = 2.0 \text{ m/s}\)、周期\(T = 6.0 \text{ s}\) となります。
ここで、問題文の「\(x=0\)での媒質が\(t=0\)から\(t=1.5 \text{ s}\)の間に\(y=0\)から\(y=0.2 \text{ m}\)に単調に変化」という条件を確認します。\(x=0\)の媒質は\(t=0\)で\(y=0\)であり、波が右に進むため、この後\(y\)軸正の向きに動きます。山(\(y=A\))に達するまでの時間は \(T/4\) です。計算した周期 \(T=6.0 \text{ s}\) を使うと、\(T/4 = 6.0/4 = 1.5 \text{ s}\) となり、問題文の記述と完全に一致します。したがって、計算結果は妥当であると確認できます。

解答 (1) \(\lambda = 12 \text{ m}\), \(A = 0.2 \text{ m}\), \(T = 6.0 \text{ s}\), \(v = 2.0 \text{ m/s}\)
別解: (1) 媒質の単振動から周期を求める

思考の道筋とポイント
設問(1)を、波の伝播ではなく、特定の位置の媒質の単振動という観点から解く別解です。問題文の「\(t=0 \text{ s}\)から\(t=1.5 \text{ s}\)の間に、\(x=0 \text{ m}\)での媒質の変位\(y\)は単調に\(0 \text{ m}\)から\(0.2 \text{ m}\)に変化している」という情報が鍵となります。

この設問における重要なポイント

  • 波の各媒質は、その場で単振動を行っている。
  • 媒質が振動の中心(\(y=0\))から変位の最大点(\(y=A\))まで移動するのにかかる時間は、周期の\(1/4\)、すなわち\(T/4\)である。

具体的な解説と立式
周期\(T\)の決定
\(t=0\)のとき、\(x=0\)の媒質は変位\(y=0\)の位置にあります。波が\(x\)軸正の向きに進むため、この媒質は次に\(y\)軸正の向きに動き始めます。
問題文より、\(t=1.5 \text{ s}\)後には、この媒質の変位は\(y=0.2 \text{ m}\)になっています。これは振幅\(A\)に等しい値です。
つまり、\(x=0\)の媒質は、振動の中心(\(y=0\))から正の向きの変位の最大点(\(y=A\))まで移動したことになります。この移動にかかる時間は、単振動の周期\(T\)の\(1/4\)です。
したがって、以下の関係が成り立ちます。
$$ \frac{T}{4} = 1.5 \text{ [s]} $$

波の速さ\(v\)の決定
波長\(\lambda\)はグラフから\(12 \text{ m}\)と読み取れます。周期\(T\)が分かったので、波の基本式 \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) を用いて速さ\(v\)を計算します。
$$ v = \frac{\lambda}{T} $$

使用した物理公式

  • 単振動の時間と周期の関係
  • 波の基本式: \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\)
計算過程

周期\(T\)の計算:
$$
\begin{aligned}
T &= 1.5 \times 4 \\[2.0ex]
&= 6.0 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
波の速さ\(v\)の計算:
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{12}{6.0} \\[2.0ex]
&= 2.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
振幅\(A\)と波長\(\lambda\)は、主たる解法と同様にグラフから読み取ります。

計算方法の平易な説明

波の動きを追いかける代わりに、一点(\(x=0\))の「浮き沈み」に注目します。問題文から、\(x=0\)の点は\(1.5\)秒かけて、一番下の位置(\(y=0\))から一番上の位置(\(y=0.2\))まで上がったことがわかります。これは単振動のちょうど4分の1の動きです。したがって、1周分の時間(周期)は \(1.5 \text{ s} \times 4 = 6.0 \text{ s}\) となります。周期がわかれば、速さは「波長 \(12 \text{ m}\) ÷ 周期 \(6.0 \text{ s}\)」で \(2.0 \text{ m/s}\) と計算できます。

結論と吟味

この方法でも、周期\(T = 6.0 \text{ s}\)、速さ\(v = 2.0 \text{ m/s}\)という、主たる解法と完全に一致する結果が得られました。波を「波形の移動」と「媒質の単振動」の2つの側面から考察できることを示しており、理解を深める上で非常に有効なアプローチです。

解答 (1) \(\lambda = 12 \text{ m}\), \(A = 0.2 \text{ m}\), \(T = 6.0 \text{ s}\), \(v = 2.0 \text{ m/s}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
\(t=0\)の瞬間に、媒質の振動速度が\(0 \text{ m/s}\)となる位置を特定する問題です。媒質の運動は単振動であり、単振動において速度が0になるのは、運動の「折り返し点」です。これを波の形で考えれば、変位が最大または最小となる点、すなわち「山」と「谷」に相当します。

この設問における重要なポイント

  • 媒質の単振動において、速度は変位が最大・最小の点(折り返し点)で0になる。
  • 波において、変位が最大・最小となるのは「山」と「谷」の位置である。

具体的な解説と立式
媒質は各位置で\(y\)軸方向に単振動しています。単振動する物体の速度は、変位が最大となる点(最も高い点と最も低い点)で一瞬だけ0になります。
\(t=0\)の波形(実線)において、

  • 変位が正で最大となる「山」の位置は、点R (\(x=9 \text{ m}\)) です。
  • 変位が負で最大となる「谷」の位置は、点P (\(x=3 \text{ m}\)) です。

したがって、これらの点で媒質の振動速度は \(0 \text{ m/s}\) となります。

使用した物理公式

  • 単振動における速度と変位の関係(定性的な理解)
計算過程

この設問はグラフの読み取りと物理法則の理解を問うものであり、具体的な計算は不要です。

計算方法の平易な説明

媒質の動きは、上下に揺れるブランコのようなものです。ブランコが一番高いところまで上がった瞬間と、一番低いところまで下がった瞬間に、一瞬だけ動きが止まります。波の場合、この「一番高いところ」が「山」、「一番低いところ」が「谷」にあたります。グラフ上で山と谷になっている点を探すと、PとRが該当します。

結論と吟味

\(t=0\)で媒質の振動速度が0になるのは、山(R)と谷(P)の位置です。これは単振動の基本的な性質と一致しており、妥当な結論です。

解答 (2) P, R

問(3)

思考の道筋とポイント
\(t=0\)の瞬間に、媒質の速度が「\(y\)軸の正の向き」に「最大」となる位置を特定する問題です。まず「速度が最大」になる条件を考え、次にその中で「向きが正」となるものを選び出します。

  1. 速度が最大になる位置: 単振動では、振動の中心(変位\(y=0\))を通過するときに速さが最大になります。
  2. 速度の向き: 速度の向きを判断するには、「少し後の波形」を描き、各点がどちらに動くかを見るのが直感的で分かりやすい方法です。

この設問における重要なポイント

  • 媒質の単振動において、速さは変位が0(振動の中心)の点で最大になる。
  • 波の進行方向が分かっている場合、「少し後の波形」を描くことで、各媒質の次の瞬間の変位の向き(=速度の向き)を判断できる。

具体的な解説と立式
速度が最大となる位置の特定
媒質の速さは、単振動の中心である変位\(y=0\)の位置で最大となります。\(t=0\)のグラフ(実線)で\(y=0\)となっている点は、O(\(x=0\))、Q(\(x=6 \text{ m}\))、S(\(x=12 \text{ m}\))の3点です。

速度の向きの判断
次に、これら3点での速度の向きを調べます。波は\(x\)軸の正の向きに進むので、\(t=0\)の波形(実線)より少しだけ時間が経った後の波形は、実線を少しだけ右にずらした形になります(問題の図にある「少し後の波形」を参照)。
この「少し後の波形」と元の位置(\(x=0, 6, 12\))を比較します。

  • 点O (\(x=0\)): 少し後の波形では、\(x=0\)の位置の変位は正になっています。つまり、点Oの媒質は\(y\)軸正の向きに動きます。
  • 点Q (\(x=6 \text{ m}\)): 少し後の波形では、\(x=6 \text{ m}\)の位置の変位は負になっています。つまり、点Qの媒質は\(y\)軸負の向きに動きます。
  • 点S (\(x=12 \text{ m}\)): 少し後の波形では、\(x=12 \text{ m}\)の位置の変位は正になっています。つまり、点Sの媒質は\(y\)軸正の向きに動きます。

以上から、速度が\(y\)軸の正の向きに最大となるのは、点Oと点Sです。

使用した物理公式

  • 単振動における速度と変位の関係(定性的な理解)
計算過程

この設問はグラフの解釈に基づくものであり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

まず、媒質の速さが一番速くなるのはどこか考えます。これは、ブランコが一番低い位置(真ん中)を通過するときに最も速くなるのと同じで、波の振動の真ん中、つまり\(y=0\)の点です。グラフを見ると、O, Q, Sが該当します。
次に、これらの点でどちら向きに動いているかを知るために、波が少し進んだ後の形を想像します(問題の図の破線のような波)。

  • OとSの場所では、波が少し進むと上にずれるので、速度は「上向き(正の向き)」です。
  • Qの場所では、波が少し進むと下にずれるので、速度は「下向き(負の向き)」です。

したがって、「上向き(正の向き)」で「速さが最大」なのはOとSです。

結論と吟味

\(t=0\)で\(y\)軸正の向きに最大の速度をもつのは、変位が0で、かつ次の瞬間に変位が正になる点OとSです。波形移動法による判断は直感的で分かりやすく、物理的にも正しい結果を与えています。

解答 (3) O, S
別解: (3) y-xグラフの傾きを利用する

思考の道筋とポイント
媒質の振動速度\(v_y\)と、その瞬間の\(y-x\)グラフの傾きとの間には、\(v_y = -v \times (\text{傾き})\) という関係があります(ただし\(v\)は波の速さ)。この関係式を利用して、速度が正で最大になる条件を数学的に求めます。

この設問における重要なポイント

  • \(x\)軸正の向きに進む波において、媒質の速度\(v_y\)と\(y-x\)グラフの傾き \(\frac{dy}{dx}\) の間には \(v_y = -v \frac{dy}{dx}\) の関係が成り立つ。
  • \(v_y\)が正で最大 \(\iff\) \(\frac{dy}{dx}\)が負で最小(傾きが負で最も急)。

具体的な解説と立式
波が\(x\)軸正の向きに速さ\(v\)で進むとき、ある位置\(x\)の媒質の時刻\(t\)における速度\(v_y\)は、その瞬間の\(y-x\)グラフの傾き \(\frac{dy}{dx}\) を用いて次のように表されます。
$$ v_y = -v \frac{dy}{dx} $$
ここで、\(v\)は(1)で求めた波の速さで、\(v=2.0 \text{ m/s} > 0\) です。
問題は「\(v_y\)が正の向きに最大」となる位置を求めることです。
上の関係式から、\(v_y\)が正で最大になるのは、\(-v \frac{dy}{dx}\)が正で最大になるとき、すなわち \(\frac{dy}{dx}\) が「負で、その絶対値が最大」になるときです。言い換えると、\(y-x\)グラフの傾きが、負で最も急になる点を探せばよいことになります。

\(t=0\)のグラフ(実線)の傾きを各点について見てみましょう。

  • 点O (\(x=0\)): グラフはここから下向きに描かれているので、傾きは負です。
  • 点P (\(x=3 \text{ m}\)): 谷の底なので、接線の傾きは0です。
  • 点Q (\(x=6 \text{ m}\)): グラフはここから上向きに描かれているので、傾きは正です。
  • 点R (\(x=9 \text{ m}\)): 山の頂上なので、接線の傾きは0です。
  • 点S (\(x=12 \text{ m}\)): グラフの形は点Oと同じ周期的な位置にあるため、傾きは点Oと同じで負です。

傾きが負になるのはOとSです。正弦波の性質から、変位が0の点(O, Q, S)で傾きの絶対値が最大になります。したがって、傾きが負で最も急になるのは点Oと点Sです。
これらの点で、媒質の速度\(v_y\)は正で最大となります。

使用した物理公式

  • 媒質の速度とy-xグラフの傾きの関係: \(v_y = -v \frac{dy}{dx}\)
計算過程

この設問はグラフの傾きを定性的に評価するもので、具体的な計算は不要です。

計算方法の平易な説明

「媒質の速度は、グラフの傾きと反対向きで、傾きが急なほど速い」という法則を使います。(正確には、媒質の速度 = – (波の速さ) × (グラフの傾き) です)。
私たちが探しているのは「上向き(正)の速度が最大」の点です。
この法則によれば、そのためには「グラフの傾きが下向き(負)で、最も急」な点を見つければよいことになります。
グラフを眺めると、OとSの点で、坂道が最も急な下り坂になっていることがわかります。したがって、答えはOとSです。

結論と吟味

\(y-x\)グラフの傾きから媒質の速度を判断する方法は、波形移動法よりも数学的で厳密なアプローチです。この方法によっても、主たる解法と同じくO, Sという結論が得られ、解の正しさが裏付けられました。

解答 (3) O, S

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波の二重性(伝播と振動)の理解:
    • 核心: 波は「波形(位相)が空間を伝播する現象」であると同時に、「各点の媒質がその場で単振動する現象」でもある。この2つの視点を自在に切り替えられることが最重要です。
    • 理解のポイント:
      • 波形の伝播: \(y-x\)グラフ(波形グラフ)が時間とともに平行移動すると考える。速さ\(v\)は波形が進む速さです。
      • 媒質の単振動: 特定の位置\(x\)に注目したときの\(y-t\)グラフを想像します。媒質の速度\(v_y\)は、この単振動の速度です。
  • 媒質の単振動における速度と変位の関係:
    • 核心: 媒質の振動速度\(v_y\)は、変位\(y\)に依存して変化します。
    • 理解のポイント:
      • 速度最大: 変位\(y=0\)(振動の中心)のとき。
      • 速度ゼロ: 変位が最大(\(y=\pm A\)、山と谷)のとき。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • \(y-t\)グラフが与えられる問題: 特定の位置\(x\)での媒質の変位の時間変化グラフ。このグラフから周期\(T\)と振幅\(A\)を直接読み取れます。\(y-x\)グラフと組み合わせることで、波長\(\lambda\)や速さ\(v\)を求める問題。
    • 波の式を扱う問題: \(y(x, t) = A \sin(2\pi (\displaystyle\frac{t}{T} – \displaystyle\frac{x}{\lambda}))\) のような式が与えられ、物理量を読み取ったり、特定の\(x, t\)での\(y\)や\(v_y\)を計算したりする問題。
    • 波の進行方向が逆の問題: 波が\(x\)軸負の向きに進む場合。媒質の速度の向きの判断が逆になります(「少し後の波形」は左にずらす)。別解で用いた公式は \(v_y = +v \displaystyle\frac{dy}{dx}\) に変わります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの種類を確認: 与えられたグラフが\(y-x\)グラフ(ある瞬間のスナップショット)なのか、\(y-t\)グラフ(ある点の定点観測)なのかを最初に確認します。
    2. 波の進行方向を確認: 問題文で「正の向き」か「負の向き」かを必ずチェックします。これが媒質の速度の向きを決定します。
    3. 「波の速さ\(v\)」と「媒質の速度\(v_y\)」を区別: 問題がどちらの速度について尋ねているかを明確に意識します。\(v\)は定数(正弦波の場合)、\(v_y\)は時間変化します。
    4. 問題文の付加条件に注目: (1)の「\(x=0\)での媒質の変位が単調に…」のような条件は、波の移動距離が1波長未満であることを特定したり、周期を直接求めたりするための重要なヒントになります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 波の速さ\(v\)と媒質の速度\(v_y\)の混同:
    • 誤解: (2)や(3)で問われている「振動の速度」を、(1)で求めた波の速さ\(v=2.0 \text{ m/s}\)と勘違いしてしまう。
    • 対策: 「波の速さ\(v\)」は波形全体が移動する速さで、一定値。「媒質の速度\(v_y\)」は各点が上下(または左右)に振動する速さで、場所と時間によって変わる、と明確に区別して覚えます。
  • 媒質の速度の向きの判断ミス:
    • 誤解: (3)で、点Qはグラフが上り坂だから速度も上向き(正)だろう、と直感で判断してしまう。
    • 対策: 必ず「少し後の波形」を描く癖をつけます。波が右に進むなら、自分のいる位置の「少し右側」の波の高さが、次の瞬間の自分の高さになる、と考えます。「山が近づいてくる点(O, S)は上に動き、谷が近づいてくる点(Q)は下に動く」とイメージするのも有効です。
  • 波の移動距離の誤解:
    • 誤解: (1)で、\(t=0\)の山の位置(\(x=9\))と\(t=1.5\)の山の位置(\(x=12\))を見て、移動距離を\(3 \text{ m}\)と即断する。今回は正しいですが、もし\(1.5 \text{ s}\)で\(1.25\)周期進むような場合(移動距離が\(12+3=15 \text{ m}\))、この考え方では間違う可能性があります。
    • 対策: 問題文の「\(x=0\)での媒質が単調に変化」という条件を必ず確認します。この条件が、移動が1波長未満であることを保証しています。このような条件がない場合は、複数の可能性を検討する必要があります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 波の基本式 (\(v = f\lambda\), \(T=1/f\)):
    • 選定理由: 波の3大要素である速さ\(v\)、振動数\(f\)(または周期\(T\))、波長\(\lambda\)のうち、2つが分かれば残りの1つを計算できる、最も基本的な関係式だからです。
    • 適用根拠:
      • (1)では、グラフから\(\lambda\)を、波形の移動から\(v\)を求めた後、残る\(T\)を求めるために、これらの関係式を組み合わせた \(T = \displaystyle\frac{\lambda}{v}\) を適用しました。
      • 別解(1)では、媒質の振動から\(T\)を、グラフから\(\lambda\)を求めた後、残る\(v\)を求めるために \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) を適用しました。
  • 媒質の速度とグラフの傾きの関係式 (\(v_y = -v \displaystyle\frac{dy}{dx}\)):
    • 選定理由: (3)の別解で、直感的な「波形移動法」に代わる、より数学的で厳密な解法を提供するために使用しました。
    • 適用根拠: この公式は、波の式 \(y(x,t) = f(x-vt)\) を\(t\)で偏微分(媒質速度を求める)し、\(x\)で偏微分(傾きを求める)することで導出される関係です。高校範囲を超える導出ですが、結果を知っていると検算や別解として非常に強力です。\(v_y\)が\(y\)の時間変化率、\(\displaystyle\frac{dy}{dx}\)が\(y\)の空間変化率であり、その関係を結びつけています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • グラフの読み取り:
    • 横軸と縦軸の単位([m], [s]など)を必ず確認します。
    • 1目盛りがいくらかを正確に把握します。この問題では\(x\)軸の目盛りが3mごとになっている点に注意が必要です。
  • 分数の計算:
    • (1)の周期の計算 \(T = 12 / 2.0\) や、速さの計算 \(v = 3.0 / 1.5\) は、小数を含む割り算です。暗算に頼らず、\(3.0/1.5 = 30/15 = 2\) のように、一度整数に直してから計算するとミスが減ります。
  • 単位の確認:
    • 計算の最終結果に正しい単位(\(\lambda\)は[m], \(A\)は[m], \(T\)は[s], \(v\)は[m/s])がついているかを確認します。単位を意識することで、物理的にありえない式(例:距離÷時間で周期を求める)を立てていないかチェックできます。
  • 条件の再確認(吟味):
    • (1)の主たる解法の最後に示したように、計算結果(\(T=6.0 \text{ s}\))が、問題文の条件(「\(1.5 \text{ s}\)で\(y=0\)から\(y=0.2\)へ」)と矛盾しないかを確認します(\(T/4 = 6.0/4 = 1.5 \text{ s}\)で一致)。この一手間が、計算ミスや解釈の間違いを発見するのに役立ちます。

基本例題50 \(y – x\) 図と \(y – t\) 図

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 本解説が提示する別解
    • 本解説では、模範解答で採用されている直感的で分かりやすい解法を主たる解説としつつ、より解析的なアプローチに慣れるため、以下の別解を提示します。
      • 波の一般式を用いた解析的な解法
        • 模範解答が「少し後の波形」を描いて定性的に媒質の初動(速度の向き)を判断するのに対し、別解では与えられた\(y-x\)図から波の一般式\(y(x,t)\)を立式し、それに\(x=8.0 \text{ m}\)を代入することで、その点の振動を表す\(y-t\)関係式を直接導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 直感的な波形移動法に加え、数式を用いて厳密に振動の様子を記述する方法を学ぶことで、\(y-x\)図と\(y-t\)図の関係をより深く、定量的に理解できるようになります。また、より複雑な波の問題に対応する応用力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に描かれる\(y-t\)図は模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「\(y-x\)グラフから特定の点の\(y-t\)グラフへの変換」です。波の空間的な情報(波形)と時間的な情報(振動)を結びつける、波の理解度を測る上で非常に重要な問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. \(y-x\)図と\(y-t\)図の役割: \(y-x\)図は「ある瞬間の波全体の形(空間分布)」を、\(y-t\)図は「ある一点の媒質の時間変化(単振動の記録)」を表します。両者は振幅\(A\)を共有します。
  2. 波の基本要素の関係: 波の速さ\(v\)、波長\(\lambda\)、周期\(T\)の間には、\(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\)という基本的な関係が成り立ちます。
  3. 媒質の初動の判断: \(y-t\)グラフの\(t=0\)以降の形を決めるには、その点の媒質の「初動の向き(速度の向き)」を知る必要があります。これは「少し後の波形」を描くことで視覚的に判断できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. \(y-x\)図から、グラフの形状に関わる物理量である「振幅\(A\)」と「波長\(\lambda\)」を読み取ります。
  2. 与えられた波の速さ\(v\)と、読み取った波長\(\lambda\)を用いて、振動の時間を特徴づける「周期\(T\)」を計算します。
  3. \(y-t\)図を描きたい点(今回は\(x=8.0 \text{ m}\))の\(t=0\)における変位(初期変位)と、その直後の運動の向き(初動)を\(y-x\)図から調べます。
  4. これら4つの情報(振幅\(A\)、周期\(T\)、初期変位、初動)を基に、正しい形の\(y-t\)図を作成します。

思考の道筋とポイント
\(y-x\)図(空間情報)を\(y-t\)図(時間情報)に変換する問題です。そのためには、\(y-t\)図の基本形状を決める「振幅\(A\)」と「周期\(T\)」、そして\(t=0\)の瞬間の状態を決める「初期変位」と「初期速度の向き(初動)」の4つの情報が必要です。これらを元の\(y-x\)図と与えられた条件から一つずつ特定していきます。

この設問における重要なポイント

  • \(y-x\)図から読み取れるのは波長\(\lambda\)と振幅\(A\)。
  • 周期\(T\)は、波の基本式 \(v = \lambda / T\) を変形した \(T=\lambda/v\) で計算する。
  • 媒質の初動(速度の向き)は、波の進行方向に「少し後の波形」を描いて判断する。

具体的な解説と立式
1. 振幅\(A\)と波長\(\lambda\)の読み取り
与えられた\(y-x\)図から、波の最大の変位である振幅\(A\)と、1波長分の長さである波長\(\lambda\)を読み取ります。

  • グラフのy軸の最大値から、振幅は \(A = 1.5 \text{ m}\)。
  • グラフが1回振動して元の変位に戻るまでのx軸上の長さから、波長は \(\lambda = 8.0 \text{ m}\)。

2. 周期\(T\)の計算
問題文より、波の速さは \(v=2.0 \text{ m/s}\) と与えられています。波の基本式 \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) を用いて、周期\(T\)を求めます。
$$ T = \frac{\lambda}{v} $$

3. 初期条件の確認(\(t=0, x=8.0 \text{ m}\))
\(y-t\)図を描くために、\(x=8.0 \text{ m}\) の点の\(t=0\)における状態を調べます。

  • 初期変位: \(y-x\)図において、\(x=8.0 \text{ m}\) の点の変位は \(y=0 \text{ m}\) です。
  • 初期速度の向き(初動): 波は\(x\)軸の正の向きに進むので、「少し後の波形」は、\(t=0\)の波形(実線)を少しだけ右にずらした形(点線)になります。
    このとき、\(x=8.0 \text{ m}\) という定点に注目すると、波形が下にずれていることがわかります。これは、\(x=8.0 \text{ m}\) の媒質が\(t=0\)の直後に\(y\)軸負の向きに動き出すことを意味します。

4. \(y-t\)図の作成
以上の情報から、\(x=8.0 \text{ m}\) の媒質の\(y-t\)図を描きます。

  • 振幅は \(A=1.5 \text{ m}\)。
  • 周期は \(T=4.0 \text{ s}\)。
  • \(t=0\) のとき \(y=0\)。
  • \(t=0\) の直後、\(y\)は負の値をとる(下向きに動く)。

これらを満たすグラフは、振幅\(1.5\)、周期\(4.0\)の「マイナスサインカーブ」になります。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\)
計算過程

周期\(T\)を計算します。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{8.0}{2.0} \\[2.0ex]
&= 4.0 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

まず、\(x=8.0 \text{ m}\) という場所の「振動の様子」を記録する\(y-t\)グラフを描くための部品を集めます。

  1. 振動の幅(振幅): これは波の高さと同じなので、\(y-x\)グラフから \(1.5 \text{ m}\) とわかります。
  2. 1回の振動にかかる時間(周期): これは「波1つ分の長さ(波長 \(8.0 \text{ m}\))を波が進むのにかかる時間」です。「時間 = 距離 ÷ 速さ」なので、周期は \(8.0 \text{ m} \div 2.0 \text{ m/s} = 4.0 \text{ s}\) と計算できます。
  3. スタートの様子: \(t=0\) の瞬間の\(x=8.0 \text{ m}\)の点の様子を\(y-x\)グラフで見ると、高さは \(y=0\) です。この後どちらに動くかを知るために、波全体が少し右に進んだ絵を想像します。すると、\(x=8.0 \text{ m}\)の場所の波は下にずれます。つまり、スタート直後は「下向き」に動きます。

これらの部品を組み立てると、「振幅\(1.5 \text{ m}\)、周期\(4.0 \text{ s}\)で、原点から下向きにスタートする波のグラフ」が描けます。

結論と吟味

\(x=8.0 \text{ m}\)における媒質の振動は、振幅\(1.5 \text{ m}\)、周期\(4.0 \text{ s}\)で、\(t=0\)で変位0の位置から負の向きに動き始める単振動となる。したがって、\(y-t\)図は解答の図のようなマイナスサインカーブを描く。これは物理的な考察と一致しており、妥当な結果です。

解答 \(y-t\)図は、縦軸を\(y \text{ [m]}\)、横軸を\(t \text{ [s]}\)とし、振幅が\(1.5 \text{ m}\)、周期が\(4.0 \text{ s}\)で、\(t=0\)で\(y=0\)から負の向きに始まる正弦曲線(解答の図b)となる。

別解: 波の一般式を用いた解析的解法

思考の道筋とポイント
波の動きを一般式 \(y(x,t)\) で表現し、それに特定の場所 \(x=8.0 \text{ m}\) を代入することで、その場所の時間の関数 \(y(t)\) を直接導き出す解析的なアプローチです。これにより、グラフを直感的に解釈するだけでなく、数式で厳密に振動の様子を記述します。

この設問における重要なポイント

  • \(t=0\)の\(y-x\)図が \(y=A\sin(kx)\) の形であることを見抜く。
  • \(x\)軸正方向に速さ\(v\)で進む波の式は \(y(x,t) = A\sin(k(x-vt))\) と表せる。
  • 波数 \(k=\displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}\) の関係を理解している。

具体的な解説と立式
1. 波の式の立式
\(t=0\)の\(y-x\)図は、原点(\(x=0, y=0\))を通り、\(x\)の増加とともに\(y\)が増加する正弦曲線なので、その形は \(y(x,0) = A\sin(kx)\) と表せます。
ここで、振幅\(A\)と波数\(k\)を求めます。

  • 振幅: \(A = 1.5 \text{ m}\)
  • 波長: \(\lambda = 8.0 \text{ m}\)
  • 波数: \(k = \displaystyle\frac{2\pi}{\lambda} = \frac{2\pi}{8.0} = \frac{\pi}{4} \text{ [rad/m]}\)

したがって、\(t=0\)の波形は \(y(x,0) = 1.5 \sin(\frac{\pi}{4}x)\) です。
この波が\(x\)軸正の向きに速さ \(v=2.0 \text{ m/s}\) で進むので、時刻\(t\)における波の一般式 \(y(x,t)\) は、\(x\)を\(x-vt\)で置き換えて得られます。
$$ y(x,t) = 1.5 \sin\left(\frac{\pi}{4}(x – 2.0t)\right) $$

2. 特定の点の振動の式を導出
この一般式に、振動の様子を知りたい位置 \(x=8.0 \text{ m}\) を代入します。
$$ y(8.0, t) = 1.5 \sin\left(\frac{\pi}{4}(8.0 – 2.0t)\right) $$
この式を整理することで、\(x=8.0 \text{ m}\)における\(y-t\)関係式が得られます。

使用した物理公式

  • 正弦波の一般式: \(y(x,t) = A\sin(k(x-vt))\)
  • 波数と波長の関係: \(k = \displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}\)
計算過程

\(y(8.0, t)\)の式を計算します。
$$
\begin{aligned}
y(8.0, t) &= 1.5 \sin\left(\frac{\pi}{4}(8.0 – 2.0t)\right) \\[2.0ex]
&= 1.5 \sin\left(2\pi – \frac{\pi}{2}t\right) \\[2.0ex]
&= 1.5 \sin\left(-\frac{\pi}{2}t\right) \\[2.0ex]
&= -1.5 \sin\left(\frac{\pi}{2}t\right)
\end{aligned}
$$
最後の2行では、三角関数の性質 \(\sin(\theta+2n\pi)=\sin\theta\) (nは整数) と \(\sin(-\theta)=-\sin\theta\) を用いました。

計算方法の平易な説明

まず、この波の動き全体を表す「万能の設計図」のような数式を作ります。\(y-x\)グラフの形と進む速さから、設計図は \(y = 1.5 \sin(\frac{\pi}{4}(x – 2.0t))\) となります。この式を使えば、いつでもどこでも波の高さを計算できます。
次に、この設計図に、私たちが特に知りたい場所である \(x=8.0 \text{ m}\) を代入します。
すると、\(x=8.0 \text{ m}\) 地点専用の時間の関数 \(y = -1.5 \sin(\frac{\pi}{2}t)\) が得られます。
この数式が表すグラフは、普通のサインカーブを上下ひっくり返した形(マイナスサインカーブ)で、高さが\(1.5\)、1回の振動に\(4.0\)秒かかるグラフになります。

結論と吟味

得られた式 \(y(t) = -1.5 \sin(\frac{\pi}{2}t)\) は、振幅が\(1.5 \text{ m}\)、角振動数が \(\omega = \pi/2\) なので周期は \(T = 2\pi/\omega = 4.0 \text{ s}\) となります。また、\(t=0\)で\(y=0\)から負の向きに始まる振動を表しており、主たる解法で得られた結論と完全に一致します。

解答 \(y-t\)図は、縦軸を\(y \text{ [m]}\)、横軸を\(t \text{ [s]}\)とし、振幅が\(1.5 \text{ m}\)、周期が\(4.0 \text{ s}\)で、\(t=0\)で\(y=0\)から負の向きに始まる正弦曲線(解答の図b)となる。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • \(y-x\)図と\(y-t\)図の変換ロジック:
    • 核心: 波の空間情報(\(y-x\)図)と時間情報(\(y-t\)図)を自在に結びつける能力が全てです。\(y-x\)図は波の「形」(\(\lambda, A\))を、\(y-t\)図は点の「振動」(\(T, A\))を表すという役割の違いを明確に理解することが出発点です。
    • 理解のポイント: 変換には、振幅\(A\)、周期\(T\)、初期変位、初動の4要素が必要です。\(A\)は共通、\(T\)は\(v=\lambda/T\)で計算、初期変位と初動は\(y-x\)図から読み取ります。
  • 媒質の初動の決定法:
    • 核心: \(y-t\)グラフの\(t=0\)以降の形を決定づけるのは「初動の向き」です。これを「少し後の波形」を描くことで視覚的に判断するスキルが極めて重要です。
    • 理解のポイント: 波が\(x\)軸正の向きに進むなら、波形全体を少し右にずらして描きます。そして、注目している\(x\)座標で、ずらした波形(未来の波形)が元の波形より上にあるか下にあるかを見ます。上なら初動は正、下なら初動は負です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • \(y-t\)図から\(y-x\)図を作成する逆問題: \(y-t\)図から\(A, T\)を読み取り、\(v\)を使って\(\lambda\)を計算。\(t=0\)の各点の変位をプロットして波形を描きます。
    • 特定の変位になる時刻や位置を求める問題: 別解で示した波の式\(y(x,t)\)を立て、与えられた\(y\)の値を代入して\(x\)や\(t\)について解きます。
    • 負の向きに進む波の問題: 初動の判断で「少し後の波形」を左にずらして考えます。波の式を立てる場合は \(y(x,t) = f(x+vt)\) となります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. グラフの軸を確認: まず、与えられた図が\(y-x\)図(空間)か\(y-t\)図(時間)かを絶対に確認します。
    2. 変換に必要な4要素をリストアップ: 頭の中で「振幅A、周期T、初期変位、初動」の4つの空欄を用意します。
    3. 情報を一つずつ集める: グラフと問題文から、これらの空欄を埋めていきます。\(A\)と\(\lambda\)(または\(T\))はグラフから、\(v\)は問題文から、残りの\(T\)(または\(\lambda\))は\(v=\lambda/T\)で計算。初期変位と初動はグラフを読み解いて判断します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • \(y-x\)図と\(y-t\)図の混同:
    • 誤解: \(y-x\)図の横軸を時間だと勘違いして周期を読み取ったり、その逆をしてしまう。
    • 対策: グラフを見たら、まず「縦軸は変位\(y\)、横軸は…位置\(x\)か!時間\(t\)か!」と声に出して確認する習慣をつけます。
  • 初動の向きの間違い:
    • 誤解: \(x=8.0 \text{ m}\)の点で、グラフの接線が上り坂だから初動も上向き(正)だろう、と勘違いする。(これは波が負の向きに進む場合の話)
    • 対策: 初動の判断は必ず「少し後の波形」を描く方法に統一するのが安全です。波の進行方向(右か左か)を確認し、その方向に波形全体を少しずらして、点の上下動を見る、という手順を機械的に実行します。
  • サインとコサインの選択ミス(別解):
    • 誤解: 波の式を立てる際に、\(t=0, x=0\)での変位と傾きを考慮せず、安易に\(y=A\sin(k(x-vt))\)と決めてしまう。
    • 対策: 必ず\(t=0\)の波形\(y(x,0)\)が、\(\sin(kx)\), \(\cos(kx)\), \(-\sin(kx)\), \(-\cos(kx)\) のどれに相当するかを確認してから、波の進行方向を考慮して\(y(x,t)\)の式を立てます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 波の基本式 (\(T = \lambda/v\)):
    • 選定理由: この問題は空間情報(\(\lambda\))から時間情報(\(T\))への変換が鍵です。この2つを、波の運動特性である速さ\(v\)で結びつけるのがこの公式の役割です。
    • 適用根拠: 「1周期\(T\)という時間で、波は1波長\(\lambda\)という距離を進む」という波の定義そのものです。速さ=距離÷時間なので、\(v = \lambda/T\)となります。
  • 波の一般式 (\(y(x,t) = f(x-vt)\)):
    • 選定理由: 別解で用いたこの式は、波の現象を一つの数式で完全に記述する、より強力なツールです。直感的な解法だけでなく、解析的な裏付けを得たい場合や、より複雑な問いに答える場合に選択します。
    • 適用根拠: この式は「波形が形を保ったまま平行移動する」という現象を数学的に表現したものです。\(t=0\)での波形が\(y=f(x)\)で表されるとき、時間\(t\)後には波形全体が\(x\)軸正方向に\(vt\)だけ移動します。これは、グラフの平行移動の考え方から\(y=f(x-vt)\)と表せます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • グラフの読み取り精度: 振幅、波長、周期の値を読み間違えないことが大前提です。特に、1波長がどこからどこまでか(例:山から次の山まで、原点から次の同位相の点まで)を正確に把握します。
  • 単位の確認: 問題で与えられる単位(m, cm, sなど)が混在していないか、計算結果の単位は正しいか(周期なら[s])を常に確認します。
  • 三角関数の習熟(別解): 別解のアプローチを取る場合、\(\sin(A-B)\)の展開や、\(\sin(-\theta)=-\sin\theta\), \(\sin(\theta+2\pi)=\sin\theta\)などの公式を正確に、かつ素早く使いこなす練習が不可欠です。特に符号のミスに注意が必要です。

基本例題51 縦波

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 本解説が提示する別解
    • 本解説では、模範解答で採用されている直感的で分かりやすい解法を主たる解説としつつ、物理現象とグラフの数学的性質を結びつけて理解を深めるため、以下の別解を提示します。
      • 設問(1), (2)の別解: 横波表示グラフの「傾き」で密・疎を判断する解法
        • 模範解答が変位の矢印を90度回転させて視覚的に判断するのに対し、別解では媒質の密度の変化がグラフの傾きに関係することを利用し、より解析的に解きます。
      • 設問(4)の別解: 横波表示グラフの「傾き」で速度を判断する解法
        • 模範解答が「少し後の波形」を描いて速度の向きを判断するのに対し、別解では媒質の速度とグラフの傾きの関係式を用いて、数学的に解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 設問(1),(2)の別解は、「密・疎」という物理現象が、変位グラフのどのような数学的特徴(傾き)に対応するのかを論理的に理解する助けとなります。
    • 設問(4)の別解は、前問でも扱った「速度と傾きの関係式」を縦波に応用する良い練習となり、様々な問題に対応できる応用力を養います。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「縦波の横波表示の解釈」です。縦波の媒質の変位や密度の変化、速度といった物理的状態を、横波表示のグラフから正しく読み取る能力が問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 縦波の横波表示: 縦波の変位(波の進行方向と同じ向きの変位)を、グラフのy軸の変位に置き換えて表現したものです。\(y>0\)はx軸正方向への変位、\(y<0\)はx軸負方向への変位を意味します。
  2. 縦波の密・疎: 媒質が集まってきて密度が高くなる点が「密」、媒質が遠ざかって密度が低くなる点が「疎」です。
  3. 媒質の振動速度: 縦波でも横波と同様に、媒質の振動速度は変位が0の点(振動の中心)で最大、変位が最大の点(振動の端)で0になります。
  4. 速度の向きの判断: 横波表示のグラフで「少し後の波形」を描き、y軸方向の動きを調べることで、実際のx軸方向の速度の向きを判断できます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1), (2)では、横波表示のy軸の変位をx軸方向の変位に読み替え、各点の媒質がどちらにずれているかを図示することで、媒質が集まる「密」な点と、媒質が離れる「疎」な点を特定します。
  2. (3)では、媒質の速度が0になるのは振動の折り返し点であることから、横波表示の「山」と「谷」に相当する点を探します。
  3. (4)では、まず速度が最大になる点(変位が0の点)を絞り込みます。次に、「少し後の波形」を描いて各点のy軸方向の動きを調べ、それが「左向き(x軸負向き)」に対応する点を選びます。

問(1), (2)

思考の道筋とポイント
縦波の「密」と「疎」を判断する問題です。横波表示はあくまで便宜的な表現なので、これを実際の縦波の変位(x軸方向のズレ)に翻訳して考える必要があります。各点の媒質が、その左右から集まってくるのか、それとも離れていくのかを調べることで、密・疎がわかります。

この設問における重要なポイント

  • 横波表示の\(y\)座標は、縦波の\(x\)方向の変位を表す。\(y>0\)なら右向きの変位、\(y<0\)なら左向きの変位。
  • 密な点:左右の媒質がその点に向かってくる場所。
  • 疎な点:左右の媒質がその点から遠ざかっていく場所。

具体的な解説と立式
横波表示のグラフの各点における変位の矢印を、時計回りに90度回転させると、実際の媒質の変位の向き(x軸方向)になります。

  • \(y>0\)の領域(O〜A, C〜E)では、媒質は正の向き(右向き)に変位します。
  • \(y<0\)の領域(A〜C)では、媒質は負の向き(左向き)に変位します。
  • \(y=0\)の点(A, C, E)は、変位が0ですが、その周辺の媒質の動きを考えます。

(1) 最も密な点
媒質が集まってきて密度が最大になる点を探します。

  • 点A: Aの少し左側の媒質は右向きに(Aに近づく)、Aの少し右側の媒質は左向きに(Aに近づく)変位します。したがって、Aには媒質が集まり「密」になります。
  • 点C: Cの少し左側の媒質は左向きに(Cから遠ざかる)、Cの少し右側の媒質は右向きに(Cから遠ざかる)変位します。したがって、Cでは媒質が離れていき「疎」になります。
  • 点E: 点Aと同様の状況であり、Eには媒質が集まり「密」になります。

よって、最も密な点はAとEです。

(2) 最も疎な点
媒質が離れていき密度が最小になる点を探します。
上記の考察から、最も疎な点はCです。

使用した物理公式

  • 縦波の横波表示の定義
計算過程

この設問はグラフの解釈に基づくものであり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

横波グラフを、媒質の「ズレ」の大きさを表すものだと考えます。グラフの縦軸は、プラスなら「右へのズレ」、マイナスなら「左へのズレ」を意味します。
(1) 密な場所を探します。点Aを見てみましょう。Aの左隣の点はプラスなので右にズレ、Aの右隣の点はマイナスなので左にズレます。両側からAに向かって集まってくるので、Aは混み合って「密」になります。Eも同じです。
(2) 疎な場所を探します。点Cを見てみましょう。Cの左隣の点はマイナスなので左にズレ、Cの右隣の点はプラスなので右にズレます。両側がCから離れていくので、Cはスカスカになって「疎」になります。

結論と吟味

横波表示を縦波の実際の変位に正しく変換することで、最も密な点はA, E、最も疎な点はCであると判断できました。

解答 (1) A, E
解答 (2) C
別解: (1), (2) グラフの傾きで判断する

思考の道筋とポイント
媒質の密度の変化は、変位の空間的な変化率、つまり横波表示グラフの傾きと密接な関係があります。この関係性を利用して、密・疎を数学的に判断します。

この設問における重要なポイント

  • 媒質の密度の変化は、横波表示グラフの傾き \(\frac{dy}{dx}\) に比例する(正確には \(\propto -\frac{dy}{dx}\))。
  • 最も密な点 \(\iff\) 傾きが負で最も急な点。
  • 最も疎な点 \(\iff\) 傾きが正で最も急な点。

具体的な解説と立式
縦波における媒質の体積変化率(1次元なので長さの変化率)は、変位\(y(x)\)を用いて \(-\frac{dy}{dx}\) に比例します。

  • 密になる条件: 体積が最も圧縮されるとき、つまり \(-\frac{dy}{dx}\) が最大になるときです。これは、グラフの傾き \(\frac{dy}{dx}\) が負で最小(傾きが負で最も急)になることを意味します。
  • 疎になる条件: 体積が最も膨張されるとき、つまり \(-\frac{dy}{dx}\) が最小になるときです。これは、グラフの傾き \(\frac{dy}{dx}\) が正で最大(傾きが正で最も急)になることを意味します。

グラフの傾きを各点について見てみましょう。

  • 点A, E: 変位が0で、グラフは下り坂になっています。傾きは負で、その急さは最大です。
  • 点C: 変位が0で、グラフは上り坂になっています。傾きは正で、その急さは最大です。
  • 点O, B, D: 山や谷の頂点であり、接線の傾きは0です。

したがって、
(1) 最も密な点(傾きが負で最小)は A, E。
(2) 最も疎な点(傾きが正で最大)は C。
となります。

使用した物理公式

  • 縦波の密度変化と変位グラフの傾きの関係
計算過程

この設問はグラフの傾きを定性的に評価するもので、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

「密」や「疎」は、グラフの「坂道の傾き」で判断できます。
(1) 「密」になるのは、グラフが「最も急な下り坂」になっている場所です。グラフを見ると、AとEが最も急な下り坂になっています。
(2) 「疎」になるのは、グラフが「最も急な上り坂」になっている場所です。グラフを見ると、Cが最も急な上り坂になっています。

結論と吟味

グラフの傾きという数学的な特徴から、主たる解法と完全に一致する結果が得られました。この方法は、なぜその点が密・疎になるのかをより深く理解するのに役立ちます。

解答 (1) A, E
解答 (2) C

問(3)

思考の道筋とポイント
媒質の振動速度が0になる点を問う問題です。縦波であっても、媒質の各点はその場で単振動(この場合はx軸方向の往復運動)をしています。単振動において速度が0になるのは、運動の「折り返し点」、つまり変位が最大または最小になる点です。

この設問における重要なポイント

  • 媒質の振動速度が0になるのは、振動の端、すなわち変位が最大・最小の点である。
  • これは、横波表示における「山」と「谷」の頂点に相当する。

具体的な解説と立式
媒質の振動速度が0になるのは、振動のエネルギーがすべて位置エネルギー(弾性エネルギー)になり、運動エネルギーが0になるときです。これは、媒質が最も大きく変位した、振動の折り返し点で起こります。
横波表示のグラフにおいて、

  • 変位が正で最大(山の頂点)なのは、点OとDです。
  • 変位が負で最大(谷の底)なのは、点Bです。

これらの点では、媒質の振動速度は一瞬0になります。

使用した物理公式

  • 単振動における速度と変位の関係(定性的な理解)
計算過程

この設問はグラフの読み取りと物理法則の理解を問うものであり、具体的な計算は不要です。

計算方法の平易な説明

媒質の動きは、左右に揺れるバネのようなものです。バネが一番伸びきった点と、一番縮んだ点で、一瞬動きが止まります。この「一番端っこ」が、横波表示のグラフでは「山」と「谷」のてっぺんにあたります。グラフ上で山と谷になっている点を探すと、O, B, Dが該当します。

結論と吟味

縦波でも媒質の運動は単振動であるという基本に立ち返れば、速度が0になるのは変位が最大の点であると正しく判断できます。

解答 (3) O, B, D

問(4)

思考の道筋とポイント
媒質の速度が「左向き」に「最大」となる点を特定する問題です。まず「速度が最大」になる条件を考え、次にその中で「向きが左」となるものを選び出します。

  1. 速度が最大になる位置: 単振動では、振動の中心(変位\(y=0\))を通過するときに速さが最大になります。
  2. 速度の向き: 縦波の「左向き」の速度は、横波表示における「y軸負の向き」の速度に対応します。向きを判断するには、「少し後の波形」を描くのが有効です。

この設問における重要なポイント

  • 媒質の速さが最大になるのは、変位が0の点(A, C, E)。
  • 縦波の左向きの速度 \(\iff\) 横波表示でのy軸負向きの速度。
  • 「少し後の波形」を描くことで、各点のy軸方向の動き(=速度の向き)を判断できる。

具体的な解説と立式
速度が最大となる位置の特定
媒質の速さは、振動の中心である変位\(y=0\)の位置で最大となります。横波表示のグラフで\(y=0\)となっている点は、A, C, Eの3点です。

速度の向きの判断
次に、これら3点での速度の向きを調べます。波は\(x\)軸の正の向きに進むので、「少し後の波形」は、\(t=0\)の波形を少しだけ右にずらした形になります。
この「少し後の波形」と元の位置(\(x\)座標)を比較します。

  • 点A, E: 少し後の波形では、これらの\(x\)座標における変位は正になっています。つまり、媒質はy軸正の向きに動きます。これは縦波では「右向き」の速度に対応します。
  • 点C: 少し後の波形では、この\(x\)座標における変位は負になっています。つまり、媒質はy軸負の向きに動きます。これは縦波では「左向き」の速度に対応します。

以上から、速度が左向きに最大となるのは、点Cです。

使用した物理公式

  • 単振動における速度と変位の関係
  • 縦波の横波表示の定義
計算過程

この設問はグラフの解釈に基づくものであり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

まず、速さが最大になるのは、振動の真ん中、つまり横波表示で高さが0の点です。A, C, Eが候補になります。
次に、これらの点でどちら向きに動いているかを知るために、波が少し右に進んだ後の形を想像します。

  • AとEの場所では、波が少し進むと上にずれるので、動きは「上向き」です。横波表示の「上向き」は、実際の縦波では「右向き」を意味します。
  • Cの場所では、波が少し進むと下にずれるので、動きは「下向き」です。横波表示の「下向き」は、実際の縦波では「左向き」を意味します。

したがって、「左向き」に「速さが最大」なのはCです。

結論と吟味

横波表示と実際の縦波の運動の対応関係を正しく理解し、波形移動法を用いることで、正しい答えを導くことができました。

解答 (4) C
別解: (4) グラフの傾きで判断する

思考の道筋とポイント
媒質の振動速度\(v_x\)と、横波表示グラフの傾きとの間には、\(v_x = -v \times (\text{傾き})\) という関係があります(\(v\)は波の速さ)。この関係式を利用して、速度が左向きで最大になる条件を数学的に求めます。

この設問における重要なポイント

  • \(x\)軸正の向きに進む波において、媒質の速度\(v_x\)と横波表示グラフの傾き \(\frac{dy}{dx}\) の間には \(v_x = -v \frac{dy}{dx}\) の関係が成り立つ。
  • 速度が左向きに最大 \(\iff v_x\)が負で最小 \(\iff \frac{dy}{dx}\)が正で最大(傾きが正で最も急)。

具体的な解説と立式
波が\(x\)軸正の向きに速さ\(v\)で進むとき、ある位置\(x\)の媒質の速度\(v_x\)は、その瞬間の横波表示グラフの傾き \(\frac{dy}{dx}\) を用いて次のように表されます。
$$ v_x = -v \frac{dy}{dx} $$
問題は「速度が左向きに最大」となる位置を求めることです。これは、\(v_x\)が負の値をとり、その絶対値が最大になる(つまり\(v_x\)が負で最小になる)点を探すことです。
上の関係式から、\(v_x\)が負で最小になるのは、\(-v \frac{dy}{dx}\)が負で最小になるとき、すなわち \(\frac{dy}{dx}\) が「正で、その値が最大」になるときです。言い換えると、横波表示グラフの傾きが、正で最も急になる点を探せばよいことになります。

グラフの傾きを調べると、

  • 傾きが正で最大(最も急な上り坂)になるのは、点Cです。

したがって、点Cで媒質の速度は左向きに最大となります。

使用した物理公式

  • 媒質の速度と変位グラフの傾きの関係: \(v_x = -v \frac{dy}{dx}\)
計算過程

この設問はグラフの傾きを定性的に評価するもので、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

「媒質の速度の向きは、グラフの傾きの向きと逆」という法則を使います。
私たちは「左向き(負)」の速度が欲しいので、グラフの「傾きが正(上り坂)」の点を探します。
さらに「速度が最大」であってほしいので、「傾きが最も急」な点を探します。
この2つの条件を合わせると、「最も急な上り坂」の点を見つければよいことになります。グラフを見ると、点Cがそれに該当します。

結論と吟味

グラフの傾きから媒質の速度を判断する方法によっても、主たる解法と同じくCという結論が得られました。この方法は、物理現象とグラフの数学的性質を結びつける強力なツールです。

解答 (4) C

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 縦波の横波表示の翻訳能力:
    • 核心: 縦波の物理現象(変位、密疎、速度)と、横波表示グラフの各要素(y座標、傾き、山谷)との対応関係を正確に理解し、自在に翻訳できることが全てです。
    • 理解のポイント:
      • 変位: y座標の正負が、x軸方向の変位の正負に対応する。(\(y>0 \rightarrow\) 右向き変位)
      • 密・疎: グラフの傾きで判断できる。密は「最も急な下り坂」(\(dy/dx < 0\))、疎は「最も急な上り坂」(\(dy/dx > 0\))。
      • 速度: 横波と同様、変位最大の点(山・谷)で速度0、変位0の点で速度最大。
      • 速度の向き: 横波表示でのy軸方向の動きが、実際のx軸方向の速度の向きに対応する。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 縦波の\(y-t\)グラフ: 特定の点の媒質の変位の時間変化グラフ。このグラフから、その点がいつ密になり、いつ疎になるか、速度がどう変化するかを読み取る問題。
    • 定常波(縦波): 開管や閉管内の気柱の振動など。定常波の「腹」と「節」が、それぞれ圧力変化や変位の観点からどうなっているかを問う問題。
    • 波形が与えられていない問題: 「x=x1で密、x=x2で疎」といった情報から、波長や波の形を推測する問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. まず「縦波」であることを確認: 問題文に「縦波」とあったら、すぐに「横波表示の翻訳が必要だ」と意識を切り替えます。
    2. 変位の向きを定義する: 横波表示のy軸の正が、x軸のどちら向きの変位に対応するかを最初に確認します(通常は波の進行方向が正)。
    3. 密・疎を問われたら傾きを見る: 視覚的に矢印を描く方法も良いですが、別解で示したように「密は傾きが負で最大、疎は傾きが正で最大」と覚えておくと、素早く正確に判断できます。
    4. 速度を問われたら横波と同じ手順で: まず「変位0で最大、変位最大で0」というルールで候補を絞り、次に「少し後の波形」で向きを判断します。この手順は横波と全く同じです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 密・疎と変位の混同:
    • 誤解: 変位が最大の点(山・谷)が密や疎の中心だと勘違いする。
    • 対策: 密・疎は「媒質の集まり具合」であり、「変位の大きさ」そのものではないことを明確に区別します。密・疎の中心は、変位が0の点(A, C, E)で起こることを徹底します。
  • 速度の向きの誤解:
    • 誤解: (4)で、点Cはグラフが上り坂だから、速度も正の向き(右向き)だと考えてしまう。
    • 対策: これは横波表示の傾きと速度の向きを混同した典型的なミスです。媒質の速度の向きは、あくまで「少し後の波形」を描いて、点のy座標がどう変化するかで判断します。y座標が減る(下に動く)なら、それはx軸負向き(左向き)の速度を意味します。
  • 横波と縦波のルールの混同:
    • 誤解: 縦波の問題なのに、y軸方向の変位そのものを物理現象だと考えてしまう。
    • 対策: 問題を解き始める前に、ノートの隅に「\(y>0 \rightarrow\) 右向き変位、\(y<0 \rightarrow\) 左向き変位」のように、自分だけのルールをメモしておくと、混乱を防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 縦波の密度変化と傾きの関係 (\(\Delta \rho \propto -dy/dx\)):
    • 選定理由: (1),(2)の別解で、密・疎という物理現象を、グラフの傾きという数学的な量に結びつけるために使用しました。直感的な解法だけでなく、論理的な裏付けを与えます。
    • 適用根拠: 点\(x\)の媒質は\(y(x)\)だけ変位し、点\(x+\Delta x\)の媒質は\(y(x+\Delta x)\)だけ変位します。この2点間の媒質の長さの変化は \(y(x+\Delta x) – y(x)\) です。単位長さあたりの長さの変化率(ひずみ)は \(\frac{y(x+\Delta x) – y(x)}{\Delta x}\) であり、\(\Delta x \to 0\) の極限で \(\frac{dy}{dx}\) となります。密度変化はひずみに比例し、伸びると(ひずみが正)疎に(密度変化が負に)なるため、マイナスの符号がつきます。
  • 媒質速度と傾きの関係 (\(v_x = -v \cdot dy/dx\)):
    • 選定理由: (4)の別解で、速度の向きと大きさを、グラフの傾きから直接判断するために使用しました。
    • 適用根拠: この公式は横波でも縦波でも成り立ちます。波の式が\(y=f(x-vt)\)で表されるとき、媒質の速度は \(v_x = \frac{\partial y}{\partial t}\)、グラフの傾きは \(\frac{\partial y}{\partial x}\) であり、連鎖律(合成関数の微分)を用いるとこの関係が導かれます。高校物理では結果として知っておくと非常に便利です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • グラフの定性的な読み取り: この問題には定量的な計算はありませんが、グラフのどの点が「山」「谷」「変位0」「傾き最大」なのかを正確に読み取る能力が問われます。各点(O, A, B, C, D, E)の特徴を一つずつ指で確認しながら進めると確実です。
  • 左右・上下の対応付け: 「縦波の右向きは、横波表示の上向き」「縦波の左向きは、横波表示の下向き」という対応を、問題の最初に明確にしておきます。この変換でミスをすると、(4)のような問題で間違えてしまいます。
  • 図を描くことをためらわない: 指針や解説にあるように、密・疎の判断や速度の向きの判断で迷ったら、必ず自分で図を描いてみることが最も確実な方法です。特に「少し後の波形」は、頭の中だけでやろうとせず、実際に薄く描き込むことでミスを劇的に減らせます。

基本例題52 定在波 (定常波)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 本解説が提示する別解
    • 本解説では、模範解答で採用されている視覚的な解法を主たる解説としつつ、物理現象を数式で厳密に追跡する能力を養うため、以下の別解を提示します。
      • 設問(2), (3)の別解: 波の式を用いた解析的な解法
        • 模範解答がグラフの重ね合わせや波形の移動といった視覚的な方法で解くのに対し、別解では2つの進行波の式を立て、それらを重ね合わせた合成波(定在波)の式を導出します。その式を数学的に分析することで、腹の位置や変位が最大になる時刻を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • グラフを用いた直感的な解法に加え、数式で定在波を表現し分析する手法を学ぶことで、定在波の性質(空間的に振動振幅が変化する点、全ての点が同位相で振動する点など)をより深く、定量的に理解できます。また、複雑な設定の問題にも対応できる応用力が身につきます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「定在波(定常波)の性質」です。逆向きに進む2つの同じ波が重なってできる定在波について、その合成波形の作図、腹と節の位置、そして振動の時間変化を理解しているかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の重ね合わせの原理: 複数の波が同じ場所に来たとき、その点の変位は各波の変位のベクトル和になります。
  2. 定在波の腹と節: 定在波において、振幅が最大になる場所を「腹」、全く振動しない場所を「節」と呼びます。腹と節は半波長(\(\lambda/2\))ごとに交互に現れます。
  3. 定在波の振動: 定在波では、節以外の全ての点が同じ周期で振動します。腹の振幅は元の波の振幅の2倍になることがあります。
  4. 波の基本要素: 波長\(\lambda\)、周期\(T\)、速さ\(v\)の関係式 \(T = \lambda/v\) は、時間的な考察をする上で不可欠です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、「波の重ね合わせの原理」に従い、\(t=0\)における波aと波bの変位を、各\(x\)座標で足し合わせて合成波のグラフを描きます。
  2. (2)では、定在波の振幅が最大になる場所、すなわち「腹」の位置を特定します。これは、2つの波が同位相で重なり、最も大きく強めあう位置を考えることで判断します。
  3. (3)では、(2)の考察で考えた「2つの波が最も大きく強めあう」状態になるまでの時間を、波の速さと進む距離から計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
\(t=0\)の瞬間の合成波の波形を描く問題です。「波の重ね合わせの原理」に基づき、グラフ上の各点について、波a(実線)と波b(破線)の\(y\)座標の値を単純に足し算します。特に、格子点など読み取りやすい点の合成後の変位をプロットし、それらを滑らかに結ぶことで波形を作成します。

この設問における重要なポイント

  • 重ね合わせの原理:合成波の変位 \(y = y_a + y_b\)。
  • グラフの各\(x\)座標で、2つの波の\(y\)座標を足し合わせる。

具体的な解説と立式
各\(x\)座標について、波aの変位\(y_a\)と波bの変位\(y_b\)を足し合わせ、合成波の変位\(y\)を求めます。

  • \(x=0 \text{ cm}\): \(y_a=0\), \(y_b=1\). よって \(y=0+1=1\).
  • \(x=1 \text{ cm}\): \(y_a=-1\), \(y_b=0\). よって \(y=-1+0=-1\).
  • \(x=2 \text{ cm}\): \(y_a=0\), \(y_b=-1\). よって \(y=0+(-1)=-1\).
  • \(x=3 \text{ cm}\): \(y_a=1\), \(y_b=0\). よって \(y=1+0=1\).
  • \(x=4 \text{ cm}\): \(y_a=0\), \(y_b=1\). よって \(y=0+1=1\).

これらの点をプロットし、滑らかに結ぶと、解答の図のような波形が得られます。

使用した物理公式

  • 波の重ね合わせの原理
計算過程

この設問はグラフの作図であり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

各場所(x座標)で、実線の波の高さと破線の波の高さを足し算します。例えば、\(x=1\)の場所では、実線が高さ-1、破線が高さ0なので、足して-1の高さになります。\(x=3\)の場所では、実線が高さ1、破線が高さ0なので、足して1の高さになります。このように、いくつかの点で足し算をして点を打ち、それらを滑らかにつなぐと合成波の形がわかります。

結論と吟味

波の重ね合わせの原理に従って作図すると、解答の図に示された合成波の波形が得られます。

解答 (1) 解答の図を参照。

問(2)

思考の道筋とポイント
定在波の「腹」の位置を求める問題です。腹とは、定在波の振幅が最大になる、つまり最も大きく振動する点です。最も大きく振動するのは、2つの波が同位相(山と山、または谷と谷)で重なり、最も強くめあうときです。\(t=0\)の図から、少し時間が経過して2つの波がぴったり重なる瞬間を考え、そのときの山の位置と谷の位置が腹となります。

この設問における重要なポイント

  • 腹:定在波の振幅が最大になる点。
  • 腹の位置では、2つの進行波が同位相で重なり、振幅が元の波の振幅の和になる。

具体的な解説と立式
まず、波a, bの波長\(\lambda\)と周期\(T\)を求めます。
グラフから、波aの波長は \(\lambda = 4.0 \text{ cm}\)。
波の速さは \(v=2.0 \text{ cm/s}\) なので、周期\(T\)は、
$$ T = \frac{\lambda}{v} = \frac{4.0}{2.0} = 2.0 \text{ [s]} $$
次に、腹の位置を探します。腹は、2つの波が強めあって振幅が最大になる点です。
\(t=0\)の図を見て、2つの波がどう動けば山と山、谷と谷が重なるかを考えます。

  • 谷について: \(t=0\)で、波aの谷は\(x=1 \text{ cm}\)に、波bの谷は\(x=2 \text{ cm}\)にあります。波aは右へ、波bは左へ進むので、両者の谷は\(x=1.5 \text{ cm}\)の位置で重なります。
  • 山について: \(t=0\)で、波aの山は\(x=3 \text{ cm}\)に、波bの山は\(x=4 \text{ cm}\)にあります。(波bは\(x=0\)にも山がありますが、\(x>0\)の範囲で考えます)。波aは右へ、波bは左へ進むので、両者の山は\(x=3.5 \text{ cm}\)の位置で重なります。

これらの位置 \(x=1.5 \text{ cm}\) と \(x=3.5 \text{ cm}\) で、2つの波は最も強く強めあうため、ここが定在波の腹となります。

使用した物理公式

  • 定在波の腹の定義
計算過程

この設問はグラフの解釈に基づくものであり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

定在波で一番大きく揺れる場所「腹」を探します。一番大きく揺れるのは、2つの波の「山と山」または「谷と谷」がぴったり重なる場所です。
図を見ると、波aの谷(\(x=1\))と波bの谷(\(x=2\))は、ちょうど真ん中の\(x=1.5\)で出会いそうです。
同様に、波aの山(\(x=3\))と波bの山(\(x=4\))は、ちょうど真ん中の\(x=3.5\)で出会いそうです。
したがって、この\(x=1.5 \text{ cm}\)と\(x=3.5 \text{ cm}\)が腹になります。

結論と吟味

与えられた範囲 \(0 \le x \le 4.0\) cm で、腹の位置は \(x=1.5 \text{ cm}, 3.5 \text{ cm}\) となります。

解答 (2) 1.5 cm, 3.5 cm

問(3)

思考の道筋とポイント
\(t=0\)の後、腹の位置の変位の大きさが初めて最大になる時刻を求める問題です。これは、(2)の考察で考えた「2つの波の山と山、または谷と谷が腹の位置で重なる」までの時間です。\(t=0\)の状態から、波がどれだけ進めばその状態になるかを計算します。

この設問における重要なポイント

  • 腹の変位が最大になるのは、2つの波の山と山、または谷と谷が重なるとき。
  • 波が進む時間と距離の関係 \(t = \text{距離} / \text{速さ}\) を利用する。

具体的な解説と立式
(2)の考察より、腹の位置(例:\(x=1.5 \text{ cm}\))で変位が最大になるのは、波aの谷(\(x=1 \text{ cm}\))と波bの谷(\(x=2 \text{ cm}\))が、それぞれ\(x=1.5 \text{ cm}\)まで移動したときです。

  • 波aが進む距離: \(\Delta x = 1.5 – 1.0 = 0.5 \text{ cm}\)
  • 波bが進む距離: \(\Delta x = 2.0 – 1.5 = 0.5 \text{ cm}\)

どちらの波も同じ距離 \(\Delta x = 0.5 \text{ cm}\) を進む必要があります。
波の速さは \(v=2.0 \text{ cm/s}\) なので、かかる時間 \(t\) は、
$$ t = \frac{\Delta x}{v} $$
この時間は、波が波長\(\lambda=4.0 \text{ cm}\)の\(1/8\) (\(\lambda/8\))だけ進む時間に相当し、周期\(T=2.0 \text{ s}\)の\(1/8\) (\(T/8\))にあたります。

使用した物理公式

  • 時間 = 距離 / 速さ
計算過程

$$
\begin{aligned}
t &= \frac{0.5}{2.0} \\[2.0ex]
&= 0.25 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(2)で考えたように、腹の場所(例えば \(x=1.5 \text{ cm}\))で揺れが最大になるのは、2つの波の谷と谷が出会うときです。
\(t=0\)のとき、波aの谷は \(x=1 \text{ cm}\) にあります。これが \(x=1.5 \text{ cm}\) まで進むには、\(0.5 \text{ cm}\) の距離を移動する必要があります。
波の速さは \(2.0 \text{ cm/s}\) なので、「時間 = 距離 ÷ 速さ」より、かかる時間は \(0.5 \text{ cm} \div 2.0 \text{ cm/s} = 0.25 \text{ s}\) となります。

結論と吟味

\(t=0\)から \(0.25 \text{ s}\) 後に、腹の位置で2つの波が強め合い、変位の大きさは最大となります。この時刻は周期 \(T=2.0 \text{ s}\) の \(1/8\) にあたり、物理的に妥当な結果です。

解答 (3) 0.25 s
別解: (2), (3) 波の式を用いた解析的解法

思考の道筋とポイント
2つの進行波a, bを数式で表し、重ね合わせの原理によって合成波(定在波)の式を導出します。その数式を分析することで、腹の位置や変位が最大になる時刻を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 進行波の式 \(y = A\sin(kx \pm \omega t + \phi)\) を正しく立てる。
  • 和積の公式や加法定理を用いて、2つの波の和を積の形に変形する。
  • 得られた定在波の式から、空間部分(腹・節)と時間部分(振動)を読み取る。

具体的な解説と立式
1. 波の式の立式
波a, bの振幅\(A\)、波長\(\lambda\)、速さ\(v\)から、角振動数\(\omega\)と波数\(k\)を求めます。

  • \(A=1.0 \text{ cm}\)
  • \(\lambda=4.0 \text{ cm} \rightarrow k = \frac{2\pi}{\lambda} = \frac{\pi}{2} \text{ rad/cm}\)
  • \(v=2.0 \text{ cm/s} \rightarrow \omega = vk = 2.0 \times \frac{\pi}{2} = \pi \text{ rad/s}\)

\(t=0\)のグラフから、波aは \(y_a(x,0) = -\sin(kx)\)、波bは \(y_b(x,0) = \cos(kx)\) と表せます。
波aは右向き(\(-\omega t\))、波bは左向き(\(+\omega t\))に進むので、
$$ y_a(x,t) = -\sin(kx-\omega t) $$
$$ y_b(x,t) = \cos(kx+\omega t) $$
合成波 \(y(x,t) = y_a(x,t) + y_b(x,t)\) は、
$$ y(x,t) = \cos(kx+\omega t) – \sin(kx-\omega t) $$
加法定理で展開すると、
\(y = (\cos kx \cos \omega t – \sin kx \sin \omega t) – (\sin kx \cos \omega t – \cos kx \sin \omega t)\)
$$ y(x,t) = (\cos kx – \sin kx)\cos \omega t + (\cos kx – \sin kx)\sin \omega t $$
$$ y(x,t) = (\cos kx – \sin kx)(\cos \omega t + \sin \omega t) $$
三角関数の合成を用いると、
$$ \cos kx – \sin kx = \sqrt{2}\sin(kx + \frac{3\pi}{4}) $$
$$ \cos \omega t + \sin \omega t = \sqrt{2}\sin(\omega t + \frac{\pi}{4}) $$
よって、合成波の式は、
$$ y(x,t) = 2\sin(kx + \frac{3\pi}{4})\sin(\omega t + \frac{\pi}{4}) $$

(2) 腹の位置
腹は、振幅部分 \(|2\sin(kx + \frac{3\pi}{4})|\) が最大値2になるときです。
\(| \sin(kx + \frac{3\pi}{4}) | = 1\) となればよく、\(kx + \frac{3\pi}{4} = \frac{\pi}{2} + n\pi\) (nは整数)。
\( \frac{\pi}{2}x + \frac{3\pi}{4} = \frac{\pi}{2} + n\pi \)
\( \frac{\pi}{2}x = -\frac{\pi}{4} + n\pi \rightarrow x = -\frac{1}{2} + 2n \)
\(n=1\)のとき \(x=1.5\)、\(n=2\)のとき \(x=3.5\)。
よって、腹の位置は \(x=1.5 \text{ cm}, 3.5 \text{ cm}\) となります。

(3) 変位が最大になる時刻
腹の位置の変位の大きさが最大になるのは、時間部分 \(|\sin(\omega t + \frac{\pi}{4})|\) が初めて1になるときです。
\(\omega t + \frac{\pi}{4} = \frac{\pi}{2}\)
\(\pi t = \frac{\pi}{4}\)
$$ t = \frac{1}{4} = 0.25 \text{ [s]} $$

使用した物理公式

  • 進行波の一般式、定在波の式、三角関数の加法定理・合成公式
計算過程

上記の通り、数式を立てて解くことで、(2) \(x=1.5, 3.5\)、(3) \(t=0.25\) が導かれます。

計算方法の平易な説明

2つの波の動きを数式で表現し、それらを足し合わせることで、定在波全体の動きを表す一つの数式を作ります。その数式は「場所によって決まる揺れの大きさ(振幅)」と「時間によって決まる揺れのタイミング」の掛け算の形になります。
(2) 腹の位置は、「場所によって決まる揺れの大きさ」が最大になる場所を探すことで求まります。
(3) 変位が最大になる時刻は、「時間によって決まる揺れのタイミング」が最大値をとる最初の時刻を計算することで求まります。

結論と吟味

数式を用いた厳密な解析によっても、主たる解法で得られた結果と完全に一致することが確認できました。このアプローチは、なぜその位置が腹になり、なぜその時刻に変位が最大になるのかを論理的に示しています。

解答 (2) 1.5 cm, 3.5 cm
解答 (3) 0.25 s

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 波の重ね合わせの原理と定在波の形成:
    • 核心: 互いに逆向きに進む、性質の等しい2つの波が重なると定在波が生じるという現象の理解が根幹です。各瞬間の波形は、2つの波の変位を単純に足し合わせる(重ね合わせの原理)ことで決まります。
    • 理解のポイント: 定在波は進行波と異なり、波形そのものは移動せず、その場で振幅が大きくなったり小さくなったりする振動です。
  • 定在波の腹と節:
    • 核心: 定在波には、全く振動しない「節」と、最も大きく振動する「腹」が交互に存在するという特徴的な構造があります。
    • 理解のポイント:
      • : 2つの波が常に強めあう(同位相で重なる)場所。振幅は元の波の振幅の2倍になります。
      • : 2つの波が常に弱めあう(逆位相で重なる)場所。振幅は常に0です。
      • 腹と腹(または節と節)の間隔は、元の波の半波長(\(\lambda/2\))です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 自由端・固定端反射による定在波: 弦の片方を固定したり、自由にした状態で波を送り、反射波との干渉で生じる定在波を扱う問題。固定端は節に、自由端は腹になるという境界条件が重要です。
    • 気柱の共鳴: 管の中で音波が定在波を作って共鳴する現象。開口端は腹、閉口端は節になるという条件から、共鳴する波長や振動数を求めます。
    • 異なる時刻の波形を問う問題: (3)のように特定の時刻だけでなく、\(t=T/4, T/2, 3T/4\)など、周期の節目ごとの合成波形を描かせる問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 2つの波の情報を整理: それぞれの波の振幅、波長、速さ、進行方向を把握します。定在波の問題では、これらが等しいことが多いです。
    2. 腹と節の位置をイメージする: まず、どこが節になり、どこが腹になるかを大まかに把握します。2つの波の山と谷の位置関係から、「山と山が出会う場所」や「山と谷が出会う場所」を想像するのが有効です。
    3. 時間変化を追う: ある点(特に腹)の変位が最大になるのはいつか、0になるのはいつかを問われたら、元の進行波がどれだけ進む必要があるかを考えます。波が\(\lambda/4\)進むのにかかる時間は\(T/4\)である、という関係が頻繁に使われます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 合成波の振幅の誤解:
    • 誤解: (1)で描いた\(t=0\)の合成波の山の高さ(例えば\(y=1\))を、定在波の腹の振幅だと勘違いしてしまう。
    • 対策: ある瞬間の合成波の変位と、定在波の「振幅」(振動の最大幅)は別物であることを理解します。腹の振幅は、元の波の振幅の和(この問題では\(1+1=2\))になります。
  • 腹と節の位置の混同:
    • 誤解: 2つの波が打ち消し合って変位が0になる点(\(t=0\)での\(x=1.5, 3.5\)など)を節だと考えてしまう。
    • 対策: 節は「常に」変位が0の点です。ある瞬間に変位が0でも、他の時刻で振動する点は腹やその他の点です。腹か節かの判断は、その点が最も大きく振動するか、全く振動しないかで区別します。
  • 時間の計算ミス:
    • 誤解: (3)で、腹の点が変位0から最大変位まで移動する時間を、周期\(T\)そのものや\(T/2\)だと勘違いする。
    • 対策: 単振動の基本的な運動を思い出します。振動の中心から端までにかかる時間は、周期の\(1/4\)です。定在波の各点の振動も単振動なので、この関係が使えます。(ただし、この問題では\(t=0\)が振動の中心ではないため、単純に\(T/4\)とはなりません)
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 重ね合わせの原理 (\(y = y_a + y_b\)):
    • 選定理由: (1)で合成波の波形を決定するための、最も基本的な法則です。複数の波が共存するときの変位を求める際の普遍的な原理です。
    • 適用根拠: 波の変位はベクトル量(あるいはスカラー量)であり、線形な媒質中では、各波が独立して存在するかのように振る舞い、全体の変位はその単純な和で与えられます。
  • 波の基本式 (\(T = \lambda/v\)):
    • 選定理由: (2)や(3)で時間に関する考察をするために、空間の情報(\(\lambda\))と運動の情報(\(v\))から、時間の基本単位である周期\(T\)を求めるために必須です。
    • 適用根拠: 「1周期\(T\)という時間で、波は1波長\(\lambda\)という距離を進む」という波の定義そのものです。
  • 定在波の式 (\(y = (\text{空間部分}) \times (\text{時間部分})\)):
    • 選定理由: 別解で用いたこの式は、定在波の性質を数学的に明快に表現するツールです。腹や節の位置は「空間部分」が、全体の振動の様子は「時間部分」が決定するという構造を理解するのに役立ちます。
    • 適用根拠: 逆向きに進む2つの進行波の式を、三角関数の和積公式などを用いて足し合わせることで導出されます。この変形によって、\(x\)の項と\(t\)の項が分離され、定在波特有の形が現れます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • グラフの丁寧な読み取り: 波長\(\lambda\)、振幅\(A\)、各点の変位をグラフから正確に読み取ることが全ての出発点です。特に格子点を基準に、1目盛りがいくらかを確認します。
  • 作図は特徴的な点から: (1)の作図では、まず\(x=0, 1, 2, 3, 4\)などのキリの良い点で変位の和を計算し、点をプロットしてから滑らかに結ぶと、きれいで正確なグラフが描けます。
  • 距離と時間の換算: (3)で「波が\(\Delta x\)進む時間」を計算する際、\(t = \Delta x / v\) を使う方法と、\(\Delta x\)が波長\(\lambda\)の何倍かを考えて \(t = (\Delta x / \lambda) \times T\) を使う方法があります。両方で検算するとミスが減ります。例えば、\(\Delta x = 0.5\), \(\lambda=4.0\)なので、\(\Delta x = \lambda/8\)。よって時間は\(T/8\)となり、\(t = 2.0/8 = 0.25\)sと計算できます。
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基本問題

267 波の要素

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 本解説が提示する別解
    • 本解説では、模範解答で採用されている、波形全体の移動に着目した直感的な解法を主たる解説としつつ、物理的な理解を多角的に深めるために、以下の別解を提示します。
      • 設問(2)の別解: 特定の点の媒質の単振動に着目した解法
        • 模範解答が波形全体の平行移動(山の追跡)を追うのに対し、別解は特定の一点(\(x=0.10 \text{ m}\))の媒質の時間変化(単振動)を追跡し、そこから周期を求めて速さを計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 波を「空間を伝わる波形」として見る視点(主たる解法)と、「各点がその場で単振動する現象の伝播」として見る視点(別解)の両方を体験することで、波の本質的な二面性を深く理解するのに役立ちます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的な答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「\(y-x\)グラフからの波の基本要素の読み取りと計算」です。波のグラフの最も基本的な解釈と、速さの定義を正しく理解しているかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. \(y-x\)グラフと波長・振幅の関係: \(y-x\)グラフは、ある瞬間の波の形を写し取ったスナップショットです。このグラフから、波長\(\lambda\)と振幅\(A\)を直接読み取ることができます。
  2. 波の伝播と速さの定義: 波は、その形(位相)を保ったまま一定の速さで進みます。波の速さは、波形上の任意の点が単位時間あたりに進む距離(\(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\))で定義されます。
  3. 波の速さ・波長・周期の関係: 波の速さ\(v\)、波長\(\lambda\)、周期\(T\)の間には、\(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\)という重要な関係があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた\(y-x\)グラフから、波の1サイクルの長さとして波長\(\lambda\)を、振動の中心からの最大の変位として振幅\(A\)を読み取ります。
  2. (2)では、\(t=0 \text{ s}\)の波形(実線)と\(t=0.10 \text{ s}\)の波形(破線)を比較します。波形上の特徴的な点(例えば「山」)が、この時間の間にどれだけの距離を移動したかを読み取り、速さの定義式に当てはめて計算します。

問(1)

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