基本例題
基本例題1 平均の速さと瞬間の速さ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「\(x-t\)グラフの物理的解釈」です。グラフから平均の速さと瞬間の速さを読み取るための基本的な知識が試されます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- \(x-t\)グラフと速度の関係: \(x-t\)グラフの傾きは、物体の速度を表します。
- 平均の速さ: ある時間区間における速さのことで、\(x-t\)グラフ上の区間の始点と終点を結ぶ「直線(割線)」の傾きに等しくなります。
- 瞬間の速さ: ある時刻における速さのことで、\(x-t\)グラフ上のその点における「接線」の傾きに等しくなります。
- グラフの座標の読み取り: グラフから計算に必要な点の座標を正確に読み取る能力が求められます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、平均の速さを求めるために、時間区間の始点と終点の座標をグラフから読み取り、その2点を結ぶ直線の傾きを計算します。
- (2)では、瞬間の速さを求めるために、指定された時刻の点における接線の傾きを計算します。接線が通る2点の座標をグラフから正確に読み取ることが重要です。
問(1)
思考の道筋とポイント
「\(8.0\)秒間の平均の速さ \(\bar{v}\)」を求める問題です。この問題は、「平均の速さ」の定義と、それが\(x-t\)グラフ上で何を意味するのかを正確に理解しているかが鍵となります。平均の速さは、運動の始点と終点を結ぶ直線の傾きとして求められます。
この設問における重要なポイント
- 平均の速さは、グラフ上の2点を結ぶ直線(割線)の傾きに等しい。
- 平均の速さ \(\bar{v}\) は、位置の変化 \(\Delta x\) を経過時間 \(\Delta t\) で割ることで計算できる。
具体的な解説と立式
平均の速さ \(\bar{v}\) は、定義より、位置の変化量 \(\Delta x\) を経過時間 \(\Delta t\) で割ったものです。
$$ \bar{v} = \frac{\Delta x}{\Delta t} $$
問題では「\(8.0\)秒間」の平均の速さが問われているので、時刻 \(t_1 = 0 \text{ s}\) から \(t_2 = 8.0 \text{ s}\) の区間を考えます。
グラフから、それぞれの時刻における位置を読み取ります。
時刻 \(t_1 = 0 \text{ s}\) のとき、位置は \(x_1 = 0 \text{ m}\) です。
時刻 \(t_2 = 8.0 \text{ s}\) のとき、位置は \(x_2 = 36 \text{ m}\) です。
したがって、平均の速さ \(\bar{v}\) は次のように立式できます。
$$ \bar{v} = \frac{x_2 – x_1}{t_2 – t_1} $$
使用した物理公式
- 平均の速さ: \(\bar{v} = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\) (\(x-t\)グラフの2点を結ぶ直線の傾き)
立式した式に、グラフから読み取った値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
\bar{v} &= \frac{36 – 0}{8.0 – 0} \\[2.0ex]
&= \frac{36}{8.0} \\[2.0ex]
&= 4.5 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
「平均の速さ」とは、ある区間全体での「合計の移動距離 ÷ 合計のかかった時間」のことです。グラフを見ると、スタート(\(0\)秒)から\(8.0\)秒後までに、\(36 \text{ m}\) の位置まで移動していることがわかります。したがって、平均の速さは「\(36 \text{ m}\) ÷ \(8.0 \text{ s}\)」という計算で求められ、答えは \(4.5 \text{ m/s}\) となります。
\(8.0\)秒間の平均の速さは \(4.5 \text{ m/s}\) です。これは、グラフの原点(\(0 \text{ s}, 0 \text{ m}\))と点(\(8.0 \text{ s}, 36 \text{ m}\))を結ぶ直線の傾きを計算したものであり、定義に沿った正しい計算です。
問(2)
思考の道筋とポイント
「時刻 \(4.0\)秒における瞬間の速さ \(v\)」を求める問題です。この問題は、「瞬間の速さ」の定義と、それが\(x-t\)グラフ上で何を意味するのかを理解しているかが鍵となります。瞬間の速さは、その時刻の点におけるグラフの「接線」の傾きとして求められます。
この設問における重要なポイント
- 瞬間の速さは、グラフ上の点における接線の傾きに等しい。
- 接線の傾きは、その接線が通ることが読み取れる2点の座標を使って計算する。
具体的な解説と立式
瞬間の速さ \(v\) は、\(x-t\)グラフ上の特定の点における接線の傾きに等しくなります。
なぜなら、瞬間の速さとは「ごくごく短い時間での平均の速さ」のことだからです。例えば、\(3.999\)秒から\(4.001\)秒のような非常に短い区間で平均の速さを考えると、その2点を結ぶ直線は、点Pにおける接線とほぼ同じになります。そのため、接線の傾きがその瞬間の速さを表す、と考えることができます。
問題では、時刻 \(t = 4.0 \text{ s}\) の点Pにおける接線がすでに描かれています。この直線の傾きを求めれば、それが瞬間の速さ \(v\) となります。
グラフを詳細に見ると、この接線は2つの点、(\(t_1=0 \text{ s}, x_1=12 \text{ m}\)) と (\(t_2=6.0 \text{ s}, x_2=36 \text{ m}\)) を通っていることが読み取れます。
したがって、瞬間の速さ \(v\) は、この2点間の傾きとして次のように立式できます。
$$ v = \frac{x_2 – x_1}{t_2 – t_1} $$
使用した物理公式
- 瞬間の速さ: \(x-t\)グラフのある点における接線の傾き。
立式した式に、グラフから読み取った接線上の2点の座標を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{36 – 12}{6.0 – 0} \\[2.0ex]
&= \frac{24}{6.0} \\[2.0ex]
&= 4.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
「瞬間の速さ」とは、スピードメーターが指しているような、その一瞬だけの速さのことです。\(x-t\)グラフでは、その点の「傾き具合」が瞬間の速さを表します。この傾き具合を調べるために、問題のグラフには点Pに接する直線(接線)が描かれています。この接線の傾きを計算すればよいのです。グラフの目盛りから、この接線は「横に \(6.0\) 秒進む間に、縦に \(36-12=24 \text{ m}\)進む」ような傾きになっていることがわかります。したがって、傾きは「\(24 \text{ m}\) ÷ \(6.0 \text{ s}\)」で \(4.0 \text{ m/s}\) となります。
時刻 \(4.0 \text{ s}\) における瞬間の速さは \(4.0 \text{ m/s}\) です。グラフの曲線は下に凸(傾きが徐々に大きくなる)なので、物体は加速していることがわかります。時刻 \(4.0 \text{ s}\) の瞬間の速さ \(4.0 \text{ m/s}\) が、\(0 \text{ s}\) から \(8.0 \text{ s}\) までの平均の速さ \(4.5 \text{ m/s}\) よりも小さいという結果は、加速運動している物体の特徴と一致しており、物理的に妥当な結果です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- \(x-t\)グラフの傾きと速度の関係:
- 核心: \(x-t\)グラフの「傾き」が物体の「速度」を意味するという、運動学の最も基本的な関係を理解することが全てです。
- 理解のポイント:
- 平均の速さ: グラフ上の2点を結ぶ「直線(割線)」の傾き。ある時間区間全体をならした速度を表します。
- 瞬間の速さ: グラフ上の特定の点における「接線」の傾き。その一瞬一瞬の速度を表します。
- グラフの形状と運動の種類:
- 核心: \(x-t\)グラフの形状から、物体がどのような運動(等速、加速、減速)をしているかを即座に判断できる能力。
- 理解のポイント:
- 直線: 傾きが一定なので「等速直線運動」。
- 曲線(下に凸): 接線の傾きが時間とともに増加するので「加速運動」。この問題のグラフが該当します。
- 曲線(上に凸): 接線の傾きが時間とともに減少するので「減速運動」。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- \(v-t\)グラフからの情報読み取り: 逆に\(v-t\)グラフが与えられ、加速度(グラフの傾き)や移動距離(グラフと軸で囲まれた面積)を求める問題。
- 2物体のすれ違い・追い越し: 2つの物体の\(x-t\)グラフを同一の座標軸に描き、グラフの交点が「すれ違う」または「追いつく」時刻と位置を表すことを利用する問題。
- 初見の問題での着眼点:
- グラフの軸を確認: まず、縦軸が位置\(x\)なのか、速度\(v\)なのか、加速度\(a\)なのかを絶対に確認する。これを間違えると全てが崩れます。
- 「平均」か「瞬間」か: 問題文が「\(t_1\)から\(t_2\)の間の〜」を問うているのか、「時刻\(t\)における〜」を問うているのかを区別し、それぞれ「2点を結ぶ直線」と「接線」のどちらを考えるべきかを判断します。
- 座標の読み取り: 傾きを計算するために、グラフからどの点の座標を読み取ればよいかを見極めます。特に接線の場合は、計算しやすい格子点(目盛りの線が交差する点)を通る箇所を探すのがコツです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 瞬間の速さと平均の速さの混同:
- 誤解: (2)で、時刻\(4.0\) sでの瞬間の速さを求めるときに、原点と点Pを結ぶ直線の傾きを計算してしまう。
- 対策: 「平均」という言葉は「区間の両端を結ぶ直線」、「瞬間」という言葉は「その点での接線」と機械的に結びつけて覚える。加速・減速運動では、この2つは一致しないことを常に意識する。
- 接線の傾きの計算ミス:
- 誤解: (2)の接線の傾きを計算する際、点Pの座標(\(4.0\), 約\(26\))を使ってしまう。点Pの座標は正確に読み取れない場合が多く、計算には使えません。
- 対策: 接線の傾きは、必ずその接線が通る「読み取りやすい2点」を使って計算する。この問題では(\(0, 12\))と(\(6.0, 36\))がそれに当たります。
- \(x-t\)グラフと\(v-t\)グラフの解釈の混同:
- 誤解: \(x-t\)グラフが水平な直線になっている部分を「静止」ではなく「等速運動」と勘違いする。(\(v-t\)グラフなら等速運動)
- 対策: 常に「このグラフの傾きは何を意味するか?」と自問自答する習慣をつける。\(x-t\)グラフでは傾きが速度、という基本を徹底する。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 速度の定義式 (\(v = \displaystyle\frac{\Delta x}{\Delta t}\)):
- 選定理由: (1)と(2)で、グラフの傾きから具体的な速度の値を計算するために使用します。これは速度の定義そのものです。
- 適用根拠:
- 平均の速さの場合: ある有限の時間区間 \(\Delta t\) での位置の変化 \(\Delta x\) を用いて計算します。これは2点を結ぶ直線の傾きに直接対応します。
- 瞬間の速さの場合: 物理的には、時間区間\(\Delta t\)を限りなく0に近づけたときの平均の速さが瞬間の速さです。高校物理のグラフ問題では、その極限操作の代わりに「接線の傾き」を計算することで求められる、と理解します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 座標の読み取り: グラフから座標を読み取る際は、必ずx軸、y軸の目盛り単位を確認する。特に、切片が0でない場合や、目盛りが1, 2, 3…と単純でない場合に注意が必要です。
- 引き算の順序: \(\Delta x = x_{\text{後}} – x_{\text{前}}\), \(\Delta t = t_{\text{後}} – t_{\text{前}}\) の順序を徹底する。今回は速さ(スカラー)を問われているので問題になりにくいですが、速度(ベクトル)を問われた場合に符号ミスを防ぐために重要です。
- 分数の計算: (1)の \(36/8.0\) や (2)の \(24/6.0\) のような簡単な割り算でも、焦るとミスをします。筆算するか、暗算でも慎重に行う。有効数字にも注意を払う癖をつける。
基本例題2 速度の合成
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「速度の合成」です。特に、川を移動する船のように、動いている媒質中の運動を扱う問題は典型例です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 速度の合成: 岸から見た船の速度(合成速度)は、船の静水上での速度と、川の流れの速度のベクトル和で表されます。
- ベクトルの分解と合成: 速度はベクトル量(大きさと向きを持つ量)であるため、その足し算(合成)や引き算は、ベクトル図や成分計算を用いて行います。
- 三平方の定理と三角比: 速度ベクトルが作る三角形(特に直角三角形)の辺の長さや角度を求める際に、これらの数学的ツールが非常に有効です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、船の運動方向と川の流れの方向が平行(または反平行)であるため、速度の大きさの単純な足し算・引き算で岸に対する速度を求め、時間=距離÷速さの公式を適用します。
- (2)では、「川を直角に横切る」という条件から、合成速度の向きを定め、それを実現するために船がどの向きに進むべきか(へさきの向き)をベクトル図を用いて考えます。
- (3)では、(2)で求めた合成速度の大きさを計算し、川幅をその速さで進む時間を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
川岸に沿って上流と下流に往復する運動を考えます。岸から見た船の実際の速さ(合成速度)は、船自身の速さ(静水上の速さ)と川の流れの速さの影響を受けます。上り(上流へ向かう)場合は川の流れに逆らうため遅くなり、下り(下流へ向かう)場合は川の流れに乗るため速くなります。
この設問における重要なポイント
- 合成速度 \(\vec{v}_{\text{合成}} = \vec{v}_{\text{静水}} + \vec{v}_{\text{川}}\) の関係を理解する。
- 上り(逆向き)のとき、合成速度の大きさは速度の引き算になる。
- 下り(同じ向き)のとき、合成速度の大きさは速度の足し算になる。
具体的な解説と立式
静水上での船の速さを \(v_{\text{静水}} = 4.0 \text{ m/s}\)、川の流れの速さを \(v_{\text{川}} = 2.0 \text{ m/s}\) とします。移動距離は \(d = 72 \text{ m}\) です。
上り(B→A)の運動
船は上流に向かって進もうとしますが、川の流れによって下流に押し戻されます。したがって、岸から見た船の速さ \(v_{\text{上り}}\) は、2つの速さの差となります。
$$ v_{\text{上り}} = v_{\text{静水}} – v_{\text{川}} $$
この速さで距離 \(d\) を進むのにかかる時間 \(t_1\) は、
$$ t_1 = \frac{d}{v_{\text{上り}}} $$
下り(A→B)の運動
船は下流に向かって進み、川の流れも同じ向きです。したがって、岸から見た船の速さ \(v_{\text{下り}}\) は、2つの速さの和となります。
$$ v_{\text{下り}} = v_{\text{静水}} + v_{\text{川}} $$
この速さで距離 \(d\) を進むのにかかる時間 \(t_2\) は、
$$ t_2 = \frac{d}{v_{\text{下り}}} $$
使用した物理公式
- 合成速度: \(v_{\text{合成}} = v_1 + v_2\) (同じ向き)、\(v_{\text{合成}} = |v_1 – v_2|\) (逆向き)
- 等速直線運動: \(t = \displaystyle\frac{d}{v}\)
上りの時間 \(t_1\) の計算:
$$
\begin{aligned}
v_{\text{上り}} &= 4.0 – 2.0 = 2.0 \text{ [m/s]} \\[2.0ex]
t_1 &= \frac{72}{2.0} = 36 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
下りの時間 \(t_2\) の計算:
$$
\begin{aligned}
v_{\text{下り}} &= 4.0 + 2.0 = 6.0 \text{ [m/s]} \\[2.0ex]
t_2 &= \frac{72}{6.0} = 12 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
上りは、船が一生懸命進む力(速さ\(4.0\))が川の流れ(速さ\(2.0\))に邪魔されるので、実際の速さは \(4.0 – 2.0 = 2.0 \text{ m/s}\) になります。\(72 \text{ m}\) をこの速さで進むので、かかる時間は \(72 \div 2.0 = 36\) 秒です。
下りは、船が進む力(速さ\(4.0\))を川の流れ(速さ\(2.0\))が後押ししてくれるので、実際の速さは \(4.0 + 2.0 = 6.0 \text{ m/s}\) になります。\(72 \text{ m}\) をこの速さで進むので、かかる時間は \(72 \div 6.0 = 12\) 秒です。
上りに要する時間 \(t_1\) は \(36\) s、下りに要する時間 \(t_2\) は \(12\) s となります。上りの方が時間がかかるという結果は、物理的な直感と一致しており妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
「川を直角に横切りたい」という条件が最も重要です。これは、岸から見た船の進む向き(合成速度の向き)が、川の流れに対して垂直になることを意味します。船のへさきは、川の流れに流される分を見越して、少し上流側に向ける必要があります。この関係を速度のベクトル図で考えます。
この設問における重要なポイント
- 合成速度 \(\vec{v}_{\text{合成}}\) は、静水上の船の速度 \(\vec{v}_{\text{静水}}\) と川の流れの速度 \(\vec{v}_{\text{川}}\) のベクトル和である。(\(\vec{v}_{\text{合成}} = \vec{v}_{\text{静水}} + \vec{v}_{\text{川}}\))
- ベクトル図を描くと、\(\vec{v}_{\text{静水}}\) を斜辺とし、\(\vec{v}_{\text{川}}\) と \(\vec{v}_{\text{合成}}\) を他の2辺とする直角三角形ができる。
- この直角三角形の辺の長さの比から、三角比を用いて角度を求める。
具体的な解説と立式
合成速度 \(\vec{v}_{\text{合成}}\) が川の流れ \(\vec{v}_{\text{川}}\) と垂直になるように、速度のベクトル図を描きます。ベクトルの和の関係 \(\vec{v}_{\text{合成}} = \vec{v}_{\text{静水}} + \vec{v}_{\text{川}}\) を変形すると \(\vec{v}_{\text{静水}} = \vec{v}_{\text{合成}} – \vec{v}_{\text{川}}\) となりますが、図で考えるのが直感的です。
- 川の流れの速度 \(\vec{v}_{\text{川}}\)(大きさ \(2.0 \text{ m/s}\))を描きます。
- 最終的に進みたい向きである合成速度 \(\vec{v}_{\text{合成}}\) を、\(\vec{v}_{\text{川}}\) と直角に描きます。
- \(\vec{v}_{\text{静水}}\) は、この2つのベクトルをつなぐ形で、\(\vec{v}_{\text{合成}}\) の矢印の先端に向かって描かれます。これにより、\(\vec{v}_{\text{静水}}\)(大きさ \(4.0 \text{ m/s}\))を斜辺とする直角三角形が完成します。
この直角三角形において、問題で問われている角度 \(\theta\) は、岸とへさきの向き(\(\vec{v}_{\text{静水}}\)の向き)のなす角です。これは、直角三角形において、\(\vec{v}_{\text{合成}}\) と斜辺 \(\vec{v}_{\text{静水}}\) がなす角に相当します。この角について、
$$ \cos \theta = \frac{\text{隣辺}}{\text{斜辺}} $$
ではなく、
$$ \sin \theta = \frac{\text{対辺}}{\text{斜辺}} = \frac{v_{\text{川}}}{v_{\text{静水}}} $$
の関係が成り立ちます。
(※模範解答の図のように、\(\vec{v}_{\text{川}}\)と\(\vec{v}_{\text{静水}}\)のなす角を\(\theta\)と定義すると\(\cos\theta\)になりますが、ここでは岸とへさきのなす角を\(\theta\)として立式します。)
模範解答の図に合わせると、\(\theta\)は\(\vec{v}_{\text{合成}}\)と\(\vec{v}_{\text{静水}}\)の間の角ではなく、\(\vec{v}_{\text{川}}\)と\(\vec{v}_{\text{静水}}\)の間の角の補角(\(180^\circ – \alpha\))の一部です。模範解答の図の三角形で考えると、\(\theta\)は\(\vec{v}_{\text{合成}}\)と\(\vec{v}_{\text{静水}}\)の間の角です。この角を\(\theta\)とすると、
$$ \cos \theta = \frac{v_{\text{合成}}}{v_{\text{静水}}} $$
ではなく、
$$ \sin \theta = \frac{v_{\text{川}}}{v_{\text{静水}}} $$
でもなく、模範解答の図の角度の取り方では、\(\vec{v}_{\text{川}}\)のベクトルと\(\vec{v}_{\text{静水}}\)のベクトルのなす角が\(90^\circ+\theta\)となり、\(\vec{v}_{\text{合成}}\)と\(\vec{v}_{\text{静水}}\)のなす角が\(\theta\)となります。この直角三角形において、
$$ \cos \theta = \frac{v_{\text{川}}}{v_{\text{静水}}} $$
が成り立ちます。(模範解答の図のPQRの三角形で、角Pが\(\theta\)に対応します)
$$ \cos \theta = \frac{2.0}{4.0} $$
使用した物理公式
- 速度の合成: \(\vec{v}_{\text{合成}} = \vec{v}_{\text{静水}} + \vec{v}_{\text{川}}\)
- 三角比: \(\cos\theta = \displaystyle\frac{\text{隣辺}}{\text{斜辺}}\)
ベクトル図が示す直角三角形において、斜辺が \(v_{\text{静水}}=4.0\)、隣接する辺が \(v_{\text{川}}=2.0\) です。
$$
\begin{aligned}
\cos \theta &= \frac{2.0}{4.0} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2}
\end{aligned}
$$
\(\cos \theta = 1/2\) となる鋭角は \(\theta = 60^\circ\) です。
船がまっすぐ対岸に渡るためには、川で流される分(速さ\(2.0\))を打ち消すように、へさきを上流に向ける必要があります。このとき、「船の本来の速さ(\(4.0\))」、「川の流れの速さ(\(2.0\))」、「実際に進む速さ」の3つの速度の関係は、直角三角形で表せます。船の速さ\(4.0\)が斜辺、川の速さ\(2.0\)が底辺になります。この直角三角形の角度を考えると、辺の比が \(2:1\) なので、有名な \(1:2:\sqrt{3}\) の三角形だとわかります。岸とへさきのなす角 \(\theta\) は、この三角形の \(60^\circ\) の角に相当します。
へさきを岸に対して \(60^\circ\) の角度で上流に向ける必要があります。これにより、川に流される速度成分と船の上流へ向かう速度成分がちょうど打ち消しあい、結果として岸に垂直な方向に進むことができます。
問(3)
思考の道筋とポイント
(2)の状況で、川を横切るのにかかる時間を求めます。そのためには、川を横切る方向の実際の速さ、すなわち合成速度 \(\vec{v}_{\text{合成}}\) の大きさを計算する必要があります。これは(2)で考えた直角三角形の高さに相当し、三平方の定理を使って求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 川を横切る時間は、川を横切る方向の距離(川幅)を、川を横切る方向の速さ(合成速度の大きさ)で割ることで求まる。
- 合成速度の大きさは、ベクトル図の直角三角形に三平方の定理を適用して求める。
具体的な解説と立式
(2)で考えた速度ベクトルの直角三角形において、
- 斜辺: \(v_{\text{静水}} = 4.0 \text{ m/s}\)
- 底辺: \(v_{\text{川}} = 2.0 \text{ m/s}\)
- 高さ: \(v_{\text{合成}}\)
の関係があります。三平方の定理を適用すると、
$$ (v_{\text{合成}})^2 + (v_{\text{川}})^2 = (v_{\text{静水}})^2 $$
この式から \(v_{\text{合成}}\) を求めます。
川幅は \(d_{\text{幅}} = 60 \text{ m}\) なので、横切るのにかかる時間 \(t\) は、
$$ t = \frac{d_{\text{幅}}}{v_{\text{合成}}} $$
使用した物理公式
- 三平方の定理: \(a^2 + b^2 = c^2\)
- 等速直線運動: \(t = \displaystyle\frac{d}{v}\)
まず、合成速度の大きさ \(v_{\text{合成}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
(v_{\text{合成}})^2 + (2.0)^2 &= (4.0)^2 \\[2.0ex]
(v_{\text{合成}})^2 + 4.0 &= 16 \\[2.0ex]
(v_{\text{合成}})^2 &= 12 \\[2.0ex]
v_{\text{合成}} &= \sqrt{12} = 2\sqrt{3} \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
次に、この速さで川幅 \(60 \text{ m}\) を横切る時間 \(t\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{60}{2\sqrt{3}} \\[2.0ex]
&= \frac{30}{\sqrt{3}} \\[2.0ex]
&= \frac{30\sqrt{3}}{3} \\[2.0ex]
&= 10\sqrt{3} \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
問題の指示に従い、\(\sqrt{3} \approx 1.73\) として近似値を求めます。
$$
\begin{aligned}
t &= 10 \times 1.73 \\[2.0ex]
&= 17.3 \text{ [s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、四捨五入して \(17 \text{ s}\) とします。
(2)で考えた直角三角形の、残りの辺の長さ(実際に川を横切る速さ)を計算します。三平方の定理(ピタゴラスの定理)を使うと、この速さは \(2\sqrt{3} \text{ m/s}\) と求まります。川幅は \(60 \text{ m}\) なので、かかる時間は「距離 \(60 \text{ m}\) ÷ 速さ \(2\sqrt{3} \text{ m/s}\)」で計算できます。これを計算すると \(10\sqrt{3}\) 秒となり、\(\sqrt{3}\) をおよそ \(1.73\) として計算すると、\(17.3\) 秒、約 \(17\) 秒となります。
川幅 \(60 \text{ m}\) を横切るのに要する時間は \(17\) s です。計算過程は物理法則と数学の定理に正しく基づいており、妥当な結果です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 速度の合成(ベクトル和)
- 核心: 岸から見た船の速度(\(\vec{v}_{\text{岸}}\))は、船の静水上での速度(\(\vec{v}_{\text{静水}}\))と川の流れの速度(\(\vec{v}_{\text{川}}\))のベクトルとしての和で与えられる、という関係式 \(\vec{v}_{\text{岸}} = \vec{v}_{\text{静水}} + \vec{v}_{\text{川}}\) が全ての基本です。
- 理解のポイント:
- 岸から見た速度: 観測者(岸にいる人)から見た、最終的な物体の運動。
- 静水上の速度: 物体(船)が、動く媒質(川)に対して発揮できる本来の速度。へさきの向きを向きます。
- 川の流れの速度: 媒質(川)自体の速度。
- ベクトル図による可視化
- 核心: 速度の合成は、矢印(ベクトル)の足し算で考えると視覚的に理解しやすくなります。特に、(2)のように運動が2次元的になる場合は、ベクトル図を描くことが問題解決の第一歩となります。
- 理解のポイント:
- (1)のような1次元の運動では、ベクトルの向きが同じなら大きさの足し算、逆なら引き算になります。
- (2)のような2次元の運動では、ベクトルを辺とする三角形(この問題では直角三角形)を描き、三平方の定理や三角比を使って未知の辺(速さ)や角度を求めます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 風の中を飛ぶ飛行機: 「川の流れ」を「風」、「船」を「飛行機」に置き換えた問題。地面に対する速度、無風状態での速度、風の速度の関係は、この問題と全く同じです。
- 最短時間で横切る問題: (2)は「最短距離で横切る」問題ですが、「最短時間で横切る」問題も頻出です。この場合、川を横切る方向の速度成分を最大にする必要があるので、へさきをまっすぐ対岸に向けるのが正解となります。(その結果、下流に流されます)
- 相対速度: 「船Aから見た船Bの速度は?」といった問題。これは \(\vec{v}_{\text{A→B}} = \vec{v}_{\text{B}} – \vec{v}_{\text{A}}\) というベクトルの引き算で考えます。
- 初見の問題での着眼点:
- 3つの速度を特定する: 問題文から「岸に対する速度」「静水(無風)での速度」「流れ(風)の速度」のどれが与えられ、どれを求めるのかを明確に区別します。
- ベクトル図を描く: \(\vec{v}_{\text{岸}} = \vec{v}_{\text{静水}} + \vec{v}_{\text{川}}\) の関係が成り立つように、3つの速度ベクトルで三角形を描きます。どのベクトルが斜辺になるかを見極めるのが重要です。(\(\vec{v}_{\text{静水}}\)が斜辺になることが多い)
- 条件をベクトル図に反映させる: 「直角に横切る」「最短時間で」といった問題の条件を、ベクトル図の上で「\(\vec{v}_{\text{岸}}\)が岸と垂直」「\(\vec{v}_{\text{静水}}\)が岸と垂直」といった幾何学的な条件に翻訳します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- へさきの向きと進む向きの混同:
- 誤解: (2)で「川を直角に横切りたい」からといって、へさきを真向かいの岸に向けてしまう。
- 対策: へさきの向きは\(\vec{v}_{\text{静水}}\)の向き、実際に進む向きは\(\vec{v}_{\text{岸}}\)の向きであり、川の流れがある限りこれらは一致しない、と肝に銘じる。「流される分を考慮して、少し上流を向く」というイメージを常に持つことが重要です。
- どの速度が斜辺になるかの勘違い:
- 誤解: 速度のベクトル図を描く際に、合成速度(岸から見た速度)を常に斜辺だと考えてしまう。
- 対策: \(\vec{v}_{\text{岸}} = \vec{v}_{\text{静水}} + \vec{v}_{\text{川}}\) のベクトル和の関係を正しく作図すれば、どの辺が斜辺になるかは自ずと決まります。この問題のように直角三角形ができる場合、直角と向かい合う辺が斜辺です。図では\(\vec{v}_{\text{静水}}\)が斜辺になります。
- 角度の定義の勘違い:
- 誤解: (2)で求めた直角三角形の内角\(60^\circ\)が、どの角度に対応するのかを問題図と照らし合わせる際に間違える。
- 対策: ベクトル図を描く際に、問題で問われている角度\(\theta\)が図のどこにあたるのかを明確に書き込む。例えば「岸(川の流れの向き)とへさきの向きのなす角」といった定義を正確に図に反映させることが大切です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 速度の合成則 (\(\vec{v}_{\text{岸}} = \vec{v}_{\text{静水}} + \vec{v}_{\text{川}}\)):
- 選定理由: この問題の根幹をなす物理法則です。「岸から見た船の動き」は、「船が自力で動く効果」と「川が全体を運ぶ効果」の重ね合わせで決まる、というガリレイの相対性原理に基づいています。
- 適用根拠: 2つの異なる座標系(岸に固定された座標系と、川の流れと共に動く座標系)の間での速度の変換を表す式として適用します。
- 三平方の定理・三角比:
- 選定理由: 速度ベクトルが直角三角形をなす場合、その辺の長さ(速さの大きさ)や角度の関係を調べるための最も強力な数学的ツールだからです。
- 適用根拠: (2)で「直角に横切る」という条件から、速度ベクトルが直角三角形をなすことが確定します。これにより、辺の長さの関係を三平方の定理で、辺と角度の関係を三角比で立式することが可能になります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- ベクトル図の丁寧な作図: フリーハンドでも良いので、ベクトルの向きと大きさの関係がある程度正確にわかるような図を描く。特に、どのベクトルがどの物理量に対応するのかを必ず明記する。
- 平方根の計算: (3)の \(\sqrt{12}\) を \(2\sqrt{3}\) に変形したり、分母の有理化(\(\frac{30}{\sqrt{3}} = 10\sqrt{3}\))を素早く正確に行う練習をしておく。
- 近似値の扱い: \(\sqrt{2} \approx 1.41\), \(\sqrt{3} \approx 1.73\) は物理の問題で頻出するので覚えておく。また、最終的な答えを出す際に、問題で指定された有効数字に合わせて適切に四捨五入する。\(17.3 \rightarrow 17\) のような処理を忘れないようにする。
基本例題3 相対速度
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「相対速度」です。動いている観測者から見た他の物体の運動を扱います。1次元の直線運動と2次元の平面運動の両方が含まれており、相対速度の基本的な考え方が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 相対速度の定義: 「観測者Aに対する物体Bの相対速度 \(\vec{v}_{AB}\)」は、物体Bの速度 \(\vec{v}_B\) から観測者Aの速度 \(\vec{v}_A\) を引いたもの、すなわち \(\vec{v}_{AB} = \vec{v}_B – \vec{v}_A\) で定義されます。
- 1次元の相対速度: 運動が一直線上の場合、向きを正負の符号で表すことで、単純な数の引き算として計算できます。
- 2次元の相対速度: 運動が平面上の場合、ベクトルの引き算として扱う必要があります。
- ベクトルの引き算の計算方法: ベクトルの引き算 \(\vec{v}_B – \vec{v}_A\) は、\(\vec{v}_B + (-\vec{v}_A)\) というベクトルの足し算(合成)として考えると、作図や計算がしやすくなります。ここで \(-\vec{v}_A\) は、\(\vec{v}_A\) と大きさが同じで向きが正反対のベクトルです。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、自動車AとBの運動が一直線上なので、東向きを正として各速度を符号付きの数値で表し、相対速度の公式に代入して計算します。
- (2)では、自動車AとモーターボートCの運動が平面上(直交)なので、相対速度をベクトルの引き算 \(\vec{v}_{AC} = \vec{v}_C – \vec{v}_A\) として捉えます。これを \(\vec{v}_C + (-\vec{v}_A)\) の合成としてベクトル図を描き、三平方の定理を用いて大きさを、図から向きを判断します。
問(1)
思考の道筋とポイント
「Aに対するBの相対速度」を求めます。これは、「もし自分が自動車Aに乗っていたら、自動車Bはどの向きにどれくらいの速さで動いて見えるか」ということです。AとBは一直線上を互いに逆向きに運動しているため、その相対速度は単純な速度の計算で求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 相対速度の公式: \(v_{AB} = v_B – v_A\)
- 基準となる向き(例: 東向き)を正と定め、逆向きの速度は負の符号で表す。
具体的な解説と立式
まず、一直線上の運動なので、向きを正負の符号で表します。ここでは、東向きを正の向きとします。
- 自動車Aの速度 \(v_A\) は、東向きに \(10 \text{ m/s}\) なので、\(v_A = +10 \text{ m/s}\) となります。
- 自動車Bの速度 \(v_B\) は、西向きに \(15 \text{ m/s}\) なので、\(v_B = -15 \text{ m/s}\) となります。
Aに対するBの相対速度 \(v_{AB}\) は、公式 \(v_{AB} = v_B – v_A\) を用いて立式します。
$$ v_{AB} = v_B – v_A $$
使用した物理公式
- 相対速度(1次元): \(v_{AB} = v_B – v_A\)
立式した式に、各速度の値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_{AB} &= (-15) – (+10) \\[2.0ex]
&= -25 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
計算結果の \(-25 \text{ m/s}\) は、大きさが \(25 \text{ m/s}\) で、向きが負の向き(西向き)であることを示しています。
自分が東向きに \(10 \text{ m/s}\) で進んでいるとき、向かいから西向きに \(15 \text{ m/s}\) で走ってくる車とすれ違う場面を想像してみましょう。相手の車は、ものすごい速さで近づいてきて、あっという間に遠ざかっていくように見えます。この「見かけの速さ」は、自分の速さと相手の速さを足し合わせたものになります。つまり、\(10 + 15 = 25 \text{ m/s}\) です。向きは、相手が動いている「西向き」となります。
Aに対するBの相対速度は、西向きに \(25 \text{ m/s}\) です。計算結果と、すれ違う物体は速く見えるという日常的な感覚が一致しており、妥当な結果です。
問(2)
思考の道筋とポイント
「Aに対するCの相対速度」を求めます。自動車Aは東西方向、モーターボートCは南北方向に運動しており、これは平面上の相対速度の問題です。ベクトルの引き算 \(\vec{v}_{AC} = \vec{v}_C – \vec{v}_A\) を計算する必要があります。この計算は、\(\vec{v}_C + (-\vec{v}_A)\) という2つのベクトルの合成として考えると非常に分かりやすくなります。
この設問における重要なポイント
- 相対速度のベクトル公式: \(\vec{v}_{AC} = \vec{v}_C – \vec{v}_A\)
- ベクトルの引き算は、引くベクトルの向きを逆にしたベクトルを足すことと同じ: \(\vec{v}_C – \vec{v}_A = \vec{v}_C + (-\vec{v}_A)\)
- \(-\vec{v}_A\) は、\(\vec{v}_A\) と大きさが同じで向きが正反対のベクトル。
具体的な解説と立式
各物体の速度をベクトルで表します。
- 自動車Aの速度ベクトル \(\vec{v}_A\): 東向きに大きさ \(10 \text{ m/s}\)
- モーターボートCの速度ベクトル \(\vec{v}_C\): 北向きに大きさ \(10 \text{ m/s}\)
Aに対するCの相対速度 \(\vec{v}_{AC}\) は、公式より \(\vec{v}_{AC} = \vec{v}_C – \vec{v}_A\) です。
これをベクトルの合成として考えるため、\(\vec{v}_{AC} = \vec{v}_C + (-\vec{v}_A)\) と変形します。
ここで、\(-\vec{v}_A\) は \(\vec{v}_A\) の逆ベクトルなので、「西向きに大きさ \(10 \text{ m/s}\)」のベクトルとなります。
したがって、求める相対速度 \(\vec{v}_{AC}\) は、「北向きに \(10 \text{ m/s}\) のベクトル」と「西向きに \(10 \text{ m/s}\) のベクトル」を合成(足し算)したものになります。
この2つのベクトルは直角をなしているため、合成ベクトルの大きさ \(v_{AC}\) は、三平方の定理を用いて計算できます。
$$ v_{AC}^2 = v_C^2 + v_A^2 $$
使用した物理公式
- 相対速度(2次元): \(\vec{v}_{AC} = \vec{v}_C – \vec{v}_A\)
- 三平方の定理: \(c^2 = a^2 + b^2\)
まず、相対速度の大きさ \(v_{AC}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
v_{AC}^2 &= (10)^2 + (10)^2 \\[2.0ex]
&= 100 + 100 = 200 \\[2.0ex]
v_{AC} &= \sqrt{200} = 10\sqrt{2} \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{2} \approx 1.41\) を用いて近似値を計算します。
$$
\begin{aligned}
v_{AC} &\approx 10 \times 1.41 \\[2.0ex]
&= 14.1 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めると、\(14 \text{ m/s}\) となります。
次に、向きを考えます。合成するベクトルは「北向き」と「西向き」で、大きさが等しいです。したがって、合成ベクトルの向きはちょうどその中間である「北西」の向きになります。
自分が自動車Aに乗って東に \(10 \text{ m/s}\) で進んでいる状況を考えます。このとき、自分自身を基準にすると、自分は止まっていて、周りの景色全体が逆向き、つまり西向きに \(10 \text{ m/s}\) で動いているように見えます。
モーターボートCは、もともと北向きに \(10 \text{ m/s}\) で進んでいます。この動きに加えて、景色と一緒に西向きに \(10 \text{ m/s}\) で流される動きが合わさって見えます。
結果として、Cは「北」と「西」の動きが合わさった「北西」の方向に進んでくるように見えます。その速さは、直角二等辺三角形の斜辺の長さを求める計算で、\(10\sqrt{2}\)、およそ \(14 \text{ m/s}\) となります。
Aに対するCの相対速度は、北西の向きに \(14 \text{ m/s}\) です。ベクトルの引き算を、逆ベクトルの足し算として捉え、作図と計算によって大きさと向きを正しく求めることができました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 相対速度の定義式 (\(\vec{v}_{AB} = \vec{v}_B – \vec{v}_A\))
- 核心: 「Aに対するBの相対速度」を求めるという問題文を、\(\vec{v}_{AB} = \vec{v}_B – \vec{v}_A\) という数式に正確に翻訳できることが全ての出発点です。「〜に対する」という部分が引き算の後ろに来る(引かれる側になる)と覚えるのが重要です。
- 理解のポイント:
- この式は「相手の速度から自分の速度を引く」と覚えましょう。自分が止まっていると考えると(自分の速度を0にする)、周りのものすべてから自分の速度を引いて見ることになる、というイメージです。
- この定義は、1次元(直線運動)でも2次元(平面運動)でも全く同じ形で成り立ちます。
- ベクトルの引き算の図形的意味
- 核心: 相対速度の計算は、本質的にはベクトルの引き算です。そして、ベクトルの引き算 \(\vec{v}_B – \vec{v}_A\) は、\(\vec{v}_B + (-\vec{v}_A)\) という「逆ベクトルの足し算」として考えると、作図が非常に容易になります。
- 理解のポイント:
- \(-\vec{v}_A\) は、\(\vec{v}_A\) と大きさが同じで向きが真逆のベクトルです。
- (2)のように、\(\vec{v}_C\)(北向き)と \(-\vec{v}_A\)(西向き)を合成する(足し算する)ことで、相対速度 \(\vec{v}_{AC}\) が求まります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 雨の中を走る人: 「地面に垂直に降る雨」を「走っている人」から見ると、斜め前から降ってくるように見えます。これも相対速度の問題で、「人に対する雨の相対速度」を \(\vec{v}_{\text{雨}} – \vec{v}_{\text{人}}\) で計算します。
- 動く歩道上の歩行: 「歩道に対する人の速度」と「地面に対する歩道の速度」を合成して「地面に対する人の速度」を求めるのは「速度の合成」ですが、「歩道上のAさんから見たBさん」となると「相対速度」の問題になります。
- 初見の問題での着眼点:
- 「誰から見た」「誰の」速度かを確認: 問題文の「Aに対するCの相対速度」という表現から、観測者がA、対象がCであることを特定し、\(\vec{v}_{AC} = \vec{v}_C – \vec{v}_A\) という式を立てます。主語と目的語を間違えないことが重要です。
- 1次元か2次元か判断: (1)のように運動が同一直線上なら、軸を設定して符号で計算します。(2)のように運動が平面上なら、ベクトル図を描く方針を立てます。
- ベクトル図の作成: 2次元の場合は、まず各物体の速度ベクトル \(\vec{v}_A\), \(\vec{v}_C\) を描きます。次に、引く方のベクトル(この場合は \(\vec{v}_A\))の逆ベクトル \(-\vec{v}_A\) を描き、それを \(\vec{v}_C\) と合成(ベクトルの矢印をつなげる)して相対速度 \(\vec{v}_{AC}\) を作図します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 引き算の順序を間違える:
- 誤解: 「Aに対するBの相対速度」を \(v_A – v_B\) と計算してしまう。
- 対策: 「(相手) – (自分)」という語順を徹底的に覚える。「Aに対する」とあればAが観測者(自分)なので、\(v_A\) を引きます。
- ベクトルの引き算を大きさの引き算と勘違いする:
- 誤解: (2)で、AとCの速さがどちらも \(10 \text{ m/s}\) なので、相対速度の大きさは \(10 – 10 = 0\) だと考えてしまう。
- 対策: 速度はベクトル量(向きを持つ量)であることを常に意識する。向きが異なるベクトルの足し算・引き算は、大きさの単純な足し算・引き算にはなりません。必ずベクトル図を描くか、成分で計算する習慣をつけましょう。
- 逆ベクトルを考えずに足してしまう:
- 誤解: (2)で \(\vec{v}_{AC} = \vec{v}_C – \vec{v}_A\) を計算する際に、\(\vec{v}_C\) と \(\vec{v}_A\) をそのまま足し算(合成)してしまう。
- 対策: 「相対速度は引き算」という定義を思い出し、引き算は「逆ベクトルを足す」と機械的に変換する癖をつける。\(-\vec{v}_A\) を作図する一手間を惜しまないことがミスを防ぎます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 相対速度の定義式 (\(\vec{v}_{AB} = \vec{v}_B – \vec{v}_A\)):
- 選定理由: これは物理法則というより「相対速度」という物理量の定義そのものです。この定義に基づいて現象を記述するために使います。
- 適用根拠: 地面(静止系)から見た速度 \(\vec{v}_A\), \(\vec{v}_B\) が与えられているとき、Aから見たBの速度(Aを基準とする座標系でのBの速度)に変換するためにこの式を用います。これは座標変換の一種(ガリレイ変換)と見なすことができます。
- 三平方の定理:
- 選定理由: (2)で、合成する2つのベクトル(\(\vec{v}_C\) と \(-\vec{v}_A\))が直角をなしているため、合成後のベクトルの大きさ(直角三角形の斜辺の長さ)を計算するのに最も簡単で直接的な方法だからです。
- 適用根拠: ベクトル図を描いた結果、直角三角形が現れたため、その辺の長さの関係式として適用が可能です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 符号の取り扱い: (1)のような1次元の問題では、最初に「どちらの向きを正とするか」を自分で宣言し、それに従って各速度に符号(+, -)を付ける。計算結果の符号が最終的な向きを示すので、最後まで符号を意識することが重要です。
- ベクトル図の活用: (2)のような2次元の問題では、計算を始める前に必ずベクトル図を描く。図を描くことで、大きさの関係(三平方の定理など)や向き(北西など)が直感的に把握でき、計算ミスや解釈ミスを防げます。
- 平方根の近似値: \(\sqrt{2} \approx 1.41\), \(\sqrt{3} \approx 1.73\) は頻出なので覚えておくと計算が速くなります。問題で特に指定がなければ、有効数字を考慮して答えを丸めることを忘れないようにしましょう。
基本例題4 等加速度直線運動
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「等加速度直線運動」です。一定の加速度で運動する物体の速度や移動距離を、公式を用いて計算する基本的な問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 等加速度直線運動の3公式: 運動を記述する3つの基本公式を理解し、問題の条件に応じて適切に使い分けることが求められます。
- 物理量の定義: 初速度 \(v_0\)、後の速度 \(v\)、加速度 \(a\)、時間 \(t\)、変位 \(x\) がそれぞれ何を意味するのかを正確に把握する必要があります。
- 向きと符号: 直線運動では、一方の向きを「正」と定めることで、速度や加速度の向きを正負の符号で扱うことができます。
- 公式の選択: 問題で与えられている物理量と、求めたい物理量に応じて、3つの公式の中から最も適したものを選ぶ判断力が重要です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、初速度、加速度、時間が与えられていて、後の速度を求めるので、\(v = v_0 + at\) を用います。
- (2)では、初速度、加速度、時間が与えられていて、進んだ距離を求めるので、\(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) を用います。
- (3)では、初速度、後の速度、進んだ距離が与えられていて、加速度を求めます。時間が関係しないため、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を用いるのが最も効率的です。
問(1)
思考の道筋とポイント
「加速し始めてから \(3.0\) 秒後の速度」を求める問題です。初速度 \(v_0\)、加速度 \(a\)、時間 \(t\) が分かっており、\(t\) 秒後の速度 \(v\) を求めたいので、これらの4つの量を含む公式 \(v = v_0 + at\) を使用します。
この設問における重要なポイント
- 等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を適用する。
- 運動の向き(東向き)を正として、各物理量を符号付きで扱う。
具体的な解説と立式
まず、運動の向きである東向きを正の向きと定めます。
問題文から、各物理量を整理します。
- 初速度: \(v_0 = +8.0 \text{ m/s}\)
- 加速度: \(a = +2.0 \text{ m/s}^2\)
- 時間: \(t = 3.0 \text{ s}\)
求める \(3.0\) 秒後の速度を \(v\) とすると、公式 \(v = v_0 + at\) が適用できます。
$$ v = v_0 + at $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と時間の関係式: \(v = v_0 + at\)
立式した式に、各値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= 8.0 + 2.0 \times 3.0 \\[2.0ex]
&= 8.0 + 6.0 \\[2.0ex]
&= 14.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
計算結果が正の値なので、向きは東向きです。
自動車は最初、東向きに \(8.0 \text{ m/s}\) の速さで走っています。そこに、東向きに \(2.0 \text{ m/s}^2\) の加速度が加わります。これは「1秒あたり \(2.0 \text{ m/s}\) ずつ速くなる」という意味です。\(3.0\) 秒間加速するので、速度は合計で \(2.0 \times 3.0 = 6.0 \text{ m/s}\) だけ増加します。したがって、\(3.0\) 秒後の速度は、元の速さに増加分を足して \(8.0 + 6.0 = 14.0 \text{ m/s}\) となります。
加速し始めてから \(3.0\) 秒後の自動車の速度は、東向きに \(14.0 \text{ m/s}\) です。東向きに加速しているので、初速度より速くなるという結果は物理的に妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
「加速し始めてから \(3.0\) 秒間に進んだ距離」を求める問題です。初速度 \(v_0\)、加速度 \(a\)、時間 \(t\) が分かっており、その間の距離(変位) \(x\) を求めたいので、これらの4つの量を含む公式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) を使用します。
この設問における重要なポイント
- 等加速度直線運動の公式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) を適用する。
- 各物理量を正しく代入して計算する。
具体的な解説と立式
問(1)と同様に、東向きを正とします。
- 初速度: \(v_0 = +8.0 \text{ m/s}\)
- 加速度: \(a = +2.0 \text{ m/s}^2\)
- 時間: \(t = 3.0 \text{ s}\)
求める距離を \(x\) とすると、公式 \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) が適用できます。
$$ x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2 $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の変位と時間の関係式: \(x = v_0 t + \displaystyle\frac{1}{2} a t^2\)
立式した式に、各値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
x &= 8.0 \times 3.0 + \frac{1}{2} \times 2.0 \times (3.0)^2 \\[2.0ex]
&= 24 + 1.0 \times 9.0 \\[2.0ex]
&= 24 + 9 \\[2.0ex]
&= 33 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
もし自動車が加速せず、初めの速さ \(8.0 \text{ m/s}\) のままで \(3.0\) 秒間進んだとしたら、進む距離は \(8.0 \times 3.0 = 24 \text{ m}\) です。しかし、実際には加速しているため、その分だけ余計に進みます。加速によって進む距離は、公式の後半部分 \(\frac{1}{2}at^2\) で計算でき、\(\frac{1}{2} \times 2.0 \times (3.0)^2 = 9 \text{ m}\) となります。したがって、合計で進んだ距離は \(24 + 9 = 33 \text{ m}\) となります。
加速し始めてから \(3.0\) 秒間に自動車が進んだ距離は \(33 \text{ m}\) です。計算は公式に正しく値を代入したものであり、妥当な結果です。
問(3)
思考の道筋とポイント
「一定の加速度で減速」したときの加速度を求める問題です。この減速運動の「初めの速度」「終わりの速度」「進んだ距離」が分かっています。一方で、「かかった時間」は分かっていません。このように、時間が関係しない状況では、時間 \(t\) を含まない公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を使うと効率的に解くことができます。
この設問における重要なポイント
- 時間 \(t\) が与えられていない、または問われていない問題では、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) の公式が非常に有効。
- この設問の「初速度」は、(1)で求めた \(14.0 \text{ m/s}\) であることを正しく認識する。
具体的な解説と立式
引き続き、東向きを正とします。
この減速運動について、問題文から物理量を整理します。
- 初速度 \(v_0\): (1)で求めた速度なので、\(v_0 = +14.0 \text{ m/s}\)
- 後の速度 \(v\): \(v = +6.0 \text{ m/s}\)
- 変位 \(x\): \(x = +20 \text{ m}\)
求める加速度を \(a\) とすると、公式 \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) が適用できます。
$$ v^2 – v_0^2 = 2ax $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度と変位の関係式: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
立式した式に、各値を代入して \(a\) についての方程式を解きます。
$$
\begin{aligned}
(6.0)^2 – (14.0)^2 &= 2 \times a \times 20 \\[2.0ex]
36 – 196 &= 40a \\[2.0ex]
-160 &= 40a \\[2.0ex]
a &= \frac{-160}{40} \\[2.0ex]
a &= -4.0 \text{ [m/s}^2]
\end{aligned}
$$
計算結果の符号が負なので、加速度の向きは負の向き、すなわち西向きです。
この問題では「何秒かけて減速したか」が分かりません。こういう時間不明の問題を解くのに便利なのが、\(v^2 – v_0^2 = 2ax\) という公式です。これは「(後の速度の2乗)-(初めの速度の2乗)= 2 × 加速度 × 距離」という関係を表します。この式に、後の速度 \(6.0\)、初めの速度 \(14.0\)、距離 \(20\) を当てはめて、加速度 \(a\) を求める方程式を解きます。計算すると \(a = -4.0\) となり、マイナスは東向きと逆の「西向き」を意味します。
加速度は西向きに \(4.0 \text{ m/s}^2\) です。自動車は東向きに減速しているため、運動の向きとは逆向き(西向き)に加速度が生じているはずです。計算結果の符号と向きが物理的な状況と一致しており、妥当な結果です。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 等加速度直線運動の3公式
- 核心: 一定の加速度で運動する物体の振る舞いは、以下の3つの公式で完全に記述できます。これらの公式を暗記し、それぞれの文字が何を表すかを正確に理解することが絶対条件です。
- \(v = v_0 + at\) (速度と時間の関係)
- \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) (位置と時間の関係)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) (速度と位置の関係、時間を含まない)
- 核心: 一定の加速度で運動する物体の振る舞いは、以下の3つの公式で完全に記述できます。これらの公式を暗記し、それぞれの文字が何を表すかを正確に理解することが絶対条件です。
- 適切な公式の選択能力
- 核心: 問題で与えられている物理量(既知)と、求めたい物理量(未知)を整理し、それらの量を含む最適な公式を1つ選ぶ能力が問われます。
- 理解のポイント:
- 時間 \(t\) が関係する問題(与えられている、または求める) → ①か②
- 時間 \(t\) が関係しない問題 → ③
- ①と②の使い分け: 速度 \(v\) が関係すれば①、位置 \(x\) が関係すれば②
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 鉛直投げ上げ・投げ下ろし: 地球の重力による運動は、加速度が重力加速度 \(g\) で一定の等加速度直線運動です。鉛直上向きを正とすれば、加速度 \(a = -g\) として、全く同じ公式が適用できます。
- 斜方投射: 斜めに投げ上げられた物体の運動も、水平方向(等速直線運動)と鉛直方向(等加速度直線運動)に分解して考えることができます。鉛直方向の運動にはこの問題の考え方がそのまま使えます。
- ブレーキをかけてから止まるまでの距離(制動距離): (3)のように、初速度が与えられていて、最終的な速度が \(0\) になるまでの距離や時間を求める問題。
- 初見の問題での着眼点:
- 運動の種類を判断: 問題文から「一定の加速度で」「重力によって」などのキーワードを探し、等加速度直線運動の問題であることを確認します。
- 物理量をリストアップ: 問題文を読み、初速度 \(v_0\)、後の速度 \(v\)、加速度 \(a\)、時間 \(t\)、変位 \(x\) のうち、分かっている量と求めたい量を書き出します。
- 軸と正の向きを設定: 運動方向のどちらかを正と決め、各物理量の符号(プラスかマイナスか)を確定させます。特に加速度が運動方向と逆向きの場合(減速)は、負の符号を付け忘れないように注意します。
- 公式を選択して立式: リストアップした物理量をもとに、3つの公式から最適なものを選んで式を立てます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 符号のミス:
- 誤解: (3)で減速しているのに、加速度 \(a\) を正の量として計算を進めてしまう。
- 対策: 最初に「東向きを正」と決めたら、それを最後まで貫く。減速は「運動と逆向きの加速度」なので、東向きに進みながら減速する場合、加速度は西向き(負)になるはずだと常に意識する。計算結果の符号が物理的な状況と合っているかを確認する癖をつける。
- 公式の混同・記憶違い:
- 誤解: \(x = v_0 t + at^2\) のように、\(\frac{1}{2}\) を忘れる。\(v^2 + v_0^2 = 2ax\) のように、符号を間違える。
- 対策: 公式は一字一句正確に覚えるしかありません。導出過程を一度自分でやってみると、式の形を忘れにくくなります。また、問題を解くたびに公式を確認する習慣も有効です。
- 初速度 \(v_0\) の取り違え:
- 誤解: (3)の計算で、問題全体の最初の速度である \(8.0 \text{ m/s}\) を初速度 \(v_0\) として使ってしまう。
- 対策: 等加速度直線運動の公式は、あくまで「ある一定の加速度での運動区間」にのみ適用できます。(3)は(1)(2)とは別の運動区間なので、その区間の始まりの速度((1)の答えである \(14.0 \text{ m/s}\))を初速度として正しく設定する必要があります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 3公式の役割分担:
- 選定理由: 3つの公式は、5つの物理量(\(v_0, v, a, t, x\))のうち、それぞれ異なる4つの量を含んでいます。つまり、どの公式も1つだけ物理量が欠けています。
- \(v = v_0 + at\) (\(x\) がない)
- \(x = v_0 t + \frac{1}{2} a t^2\) (\(v\) がない)
- \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) (\(t\) がない)
- 適用根拠: この「欠けている物理量」に着目するのが、公式選択の最も論理的な方法です。(3)では時間 \(t\) が全く登場しないので、\(t\) を含まない \(v^2 – v_0^2 = 2ax\) を選ぶのが最適解となります。もし他の公式を使うと、未知数が2つになり連立方程式を解く必要が出てきてしまいます。
- 選定理由: 3つの公式は、5つの物理量(\(v_0, v, a, t, x\))のうち、それぞれ異なる4つの量を含んでいます。つまり、どの公式も1つだけ物理量が欠けています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の確認: 計算に代入する値の単位が、m, s, m/s, m/s² に揃っているかを確認する。
- 2乗の計算: (3)の \(14.0^2 = 196\) のような計算は、焦ると間違いやすい。筆算などで慎重に行う。
- 移項と割り算: \( -160 = 40a \) から \(a\) を求める際に、符号の付け忘れや割り算のミスに注意する。簡単な計算ほど油断しないことが大切です。
- 問題文の数値を正確に写す: \(8.0\), \(2.0\), \(3.0\) などの数値を、式に書き写す際に間違えないように、指で押さえながら確認する。
基本例題5 等加速度直線運動のグラフ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「v-tグラフの物理的解釈」です。与えられた速度と時間の関係を示すグラフから、加速度や移動距離といった他の物理量を読み取る能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- v-tグラフと加速度の関係: v-tグラフの「傾き」は、物体の加速度を表します。傾きが正なら加速、負なら減速、0なら等速運動です。
- v-tグラフと移動距離の関係: v-tグラフと時間軸(横軸)で囲まれた部分の「面積」は、物体の移動距離を表します。
- グラフの区間分割: 電車の運動は「加速」「等速」「減速」の3つの区間に分かれているため、それぞれの区間に分けて考える必要があります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、v-tグラフを3つの区間に分け、それぞれの区間でのグラフの傾きを計算して加速度を求め、a-tグラフを作成します。
- (2)では、v-tグラフの0秒から40秒の区間で、グラフと時間軸が囲む面積(三角形の面積)を計算して移動距離を求めます。
- (3)では、A駅からB駅までの全移動距離を求めるため、v-tグラフの0秒から150秒までの全区間で、グラフと時間軸が囲む面積(台形の面積)を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
与えられたv-tグラフから、加速度と時間の関係を示すa-tグラフを作成する問題です。v-tグラフの「傾き」が加速度に相当するという基本関係を理解しているかが鍵となります。グラフは明らかに3つの異なる傾きを持つ区間(0-40s, 40-100s, 100-150s)に分かれているため、区間ごとに傾きを計算します。
この設問における重要なポイント
- v-tグラフの傾きは加速度を表す。(\(a = \frac{\Delta v}{\Delta t}\))
- 傾きが正の値なら正の加速度、負の値なら負の加速度、傾きが0(水平)なら加速度は0。
具体的な解説と立式
各区間の加速度を、グラフの傾きとして計算します。
区間1 (0 s 〜 40 s)
原点 (0 s, 0 m/s) と点 (40 s, 20 m/s) を通る直線の傾き \(a_1\) を求めます。
$$ a_1 = \frac{20 – 0}{40 – 0} $$
区間2 (40 s 〜 100 s)
グラフは水平な直線であり、速度が \(20 \text{ m/s}\) で一定です。これは等速直線運動なので、加速度 \(a_2\) は0です。
$$ a_2 = 0 $$
区間3 (100 s 〜 150 s)
点 (100 s, 20 m/s) と点 (150 s, 0 m/s) を通る直線の傾き \(a_3\) を求めます。
$$ a_3 = \frac{0 – 20}{150 – 100} $$
使用した物理公式
- 加速度の定義: \(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\) (v-tグラフの傾き)
区間1の加速度:
$$ a_1 = \frac{20}{40} = 0.50 \text{ [m/s}^2] $$
区間2の加速度:
$$ a_2 = 0 \text{ [m/s}^2] $$
区間3の加速度:
$$ a_3 = \frac{-20}{50} = -0.40 \text{ [m/s}^2] $$
これらの結果を元に、縦軸を加速度 \(a\)、横軸を時間 \(t\) とするa-tグラフを作成します。
v-tグラフという坂道の「傾き」が「加速度」になります。
・最初の40秒間は、40秒かけて速さが20m/s増える上り坂なので、傾きは \(20 \div 40 = 0.50\)。
・次の40秒から100秒までは、道が平坦なので傾きは \(0\)。
・最後の100秒から150秒までは、50秒かけて速さが20m/s減る下り坂なので、傾きは \(-20 \div 50 = -0.40\)。
この3つの値を、それぞれの時間区間に対応させてグラフに描けば完成です。
0-40sは加速度 \(0.50 \text{ m/s}^2\)、40-100sは加速度 \(0 \text{ m/s}^2\)、100-150sは加速度 \(-0.40 \text{ m/s}^2\) となります。これをグラフで表現します。加速→等速→減速という運動の様子と、加速度が正→0→負という計算結果が正しく対応しています。
問(2)
思考の道筋とポイント
「A駅を出てから40秒間に進んだ距離」を求める問題です。v-tグラフにおいて、グラフと時間軸で囲まれた「面積」が移動距離を表す、という重要な関係を利用します。0秒から40秒の区間のグラフの下の面積を求めます。
この設問における重要なポイント
- v-tグラフと時間軸で囲まれた面積は、移動距離を表す。
- 対象となる図形の面積を、図形の公式(この場合は三角形)を用いて計算する。
具体的な解説と立式
0秒から40秒の区間において、v-tグラフと時間軸が囲む図形は、底辺が \(40 \text{ s}\)、高さが \(20 \text{ m/s}\) の直角三角形です。
この三角形の面積が、40秒間に進んだ距離 \(x_{40}\) に等しくなります。
$$ x_{40} = \frac{1}{2} \times (\text{底辺}) \times (\text{高さ}) $$
使用した物理公式
- v-tグラフの面積と移動距離の関係
三角形の面積の公式に、値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
x_{40} &= \frac{1}{2} \times 40 \times 20 \\[2.0ex]
&= 400 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
解答の形式に合わせて有効数字2桁で表すと、\(4.0 \times 10^2 \text{ m}\) となります。
v-tグラフで「進んだ距離」を知りたいときは、グラフの下の部分の「面積」を計算します。0秒から40秒までの部分は、底辺が40、高さが20の三角形になっています。三角形の面積は「底辺 × 高さ ÷ 2」で計算できるので、\(40 \times 20 \div 2 = 400 \text{ m}\) となります。
A駅を出てから40秒間に進んだ距離は \(4.0 \times 10^2 \text{ m}\) です。v-tグラフの面積が移動距離を表すという基本法則に則った正しい計算です。
問(3)
思考の道筋とポイント
「A駅とB駅の距離」を求める問題です。これは、電車がA駅を出てからB駅に着くまでの全時間(0秒から150秒)に進んだ総移動距離を意味します。問(2)と同様に、v-tグラフと時間軸が囲む面積を計算しますが、今回は全区間が対象となります。
この設問における重要なポイント
- v-tグラフの面積 = 総移動距離
- 全体の図形は台形なので、台形の面積公式を使うと一度に計算できて効率的。
具体的な解説と立式
0秒から150秒までの全区間において、v-tグラフと時間軸が囲む図形は台形です。
この台形の各辺の長さをグラフから読み取ります。
- 上底(速度が一定だった区間の時間): \(100 – 40 = 60 \text{ s}\)
- 下底(全運動時間): \(150 \text{ s}\)
- 高さ(最高速度): \(20 \text{ m/s}\)
A駅とB駅の距離 \(x_{\text{全}}\) は、この台形の面積に等しくなります。
$$ x_{\text{全}} = \frac{1}{2} \times (\text{上底} + \text{下底}) \times (\text{高さ}) $$
使用した物理公式
- v-tグラフの面積と移動距離の関係
台形の面積の公式に、値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
x_{\text{全}} &= \frac{1}{2} \times (60 + 150) \times 20 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} \times 210 \times 20 \\[2.0ex]
&= 2100 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
解答の形式に合わせて有効数字2桁で表すと、\(2.1 \times 10^3 \text{ m}\) となります。
A駅からB駅までの全距離は、グラフ全体の面積を求めれば分かります。この全体の形は「台形」です。台形の面積は「(上側の辺+下側の辺)× 高さ ÷ 2」で計算できます。グラフから、上側の辺の長さは \(100 – 40 = 60\)、下側の辺の長さは \(150\)、高さは \(20\) です。これを公式にあてはめると、\((60 + 150) \times 20 \div 2 = 2100 \text{ m}\) となります。
A駅とB駅の距離は \(2.1 \times 10^3 \text{ m}\) です。グラフ全体の面積を台形の公式を用いて一度に計算することができ、妥当な結果が得られました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- v-tグラフの2大性質
- 核心: v-tグラフを読み解く上で、以下の2つの物理的な意味を理解していることが全てです。この2つをマスターすれば、v-tグラフに関する問題のほとんどは解くことができます。
- グラフの傾き = 加速度 (\(a\)): グラフがどれだけ急か(あるいは緩やかか)が、速度の変化の度合い(加速度)を表します。
- グラフと軸が囲む面積 = 移動距離 (\(x\)): グラフの下の部分の面積が、その時間内にどれだけ進んだかを表します。
- 核心: v-tグラフを読み解く上で、以下の2つの物理的な意味を理解していることが全てです。この2つをマスターすれば、v-tグラフに関する問題のほとんどは解くことができます。
- 運動の種類のグラフ表現
- 核心: v-tグラフの形状から、物体がどのような運動をしているかを瞬時に判断できる能力。
- 理解のポイント:
- 右上がりの直線: 傾きが正で一定 → 正の等加速度運動(加速)
- 水平な直線: 傾きが0 → 等速直線運動(加速度0)
- 右下がりの直線: 傾きが負で一定 → 負の等加速度運動(減速)
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- a-tグラフからv-tグラフを作成する問題: この問題とは逆の操作です。a-tグラフの面積が「速度の変化量 \(\Delta v\)」を表すことを利用します。各時刻の速度を計算し、それらを結んでv-tグラフを作成します。
- 2物体の追い越し・出会いの問題: 2つの物体のv-tグラフを同じ座標軸に描き、その差を考える問題。例えば、「2つのグラフの面積の差」が「2物体間の距離」に対応することを利用します。
- x-tグラフへの変換: v-tグラフから、各時刻の位置を計算してx-tグラフを作成する問題。v-tグラフの傾きが変化する点(加速から等速へ、など)で、x-tグラフの傾きの増減が変わる(直線から曲線へ、など)ことに注意が必要です。
- 初見の問題での着眼点:
- グラフの軸を確認: まず、縦軸が速度\(v\)なのか、加速度\(a\)なのか、位置\(x\)なのかを絶対に確認します。
- グラフの形状を区間に分ける: グラフの傾きが変化している点で区切り、それぞれの区間がどのような運動(加速、等速、減速)に対応しているかを把握します。
- 「傾き」と「面積」のどちらを問われているか判断: 問題文が「加速度は?」と問えば傾きを、「距離は?」と問えば面積を計算する方針を立てます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 傾きの計算ミス:
- 誤解: (1)の減速区間(100s〜150s)の傾きを計算する際に、\(x\)の増加量と\(y\)の増加量の符号を間違える。例えば \(\frac{20-0}{150-100}\) のように、分子の引き算の順序を逆にしてしまう。
- 対策: 傾きの計算は常に「(\(y\)の終点 – \(y\)の始点) / (\(x\)の終点 – \(x\)の始点)」の順序を徹底する。右下がりのグラフでは傾きは必ず負になる、という感覚も持っておくと検算に役立ちます。
- 面積計算の図形選択ミス:
- 誤解: (3)でA駅とB駅の距離を求める際に、三角形や長方形に分割して計算するのは良いが、その際に一部の面積を足し忘れたり、重複して計算したりする。
- 対策: 全体の図形が台形であることに気づけば、台形の面積公式 \(\frac{1}{2} \times (\text{上底} + \text{下底}) \times \text{高さ}\) を使うのが最も簡単でミスが少ないです。分割して計算する場合は、どの部分を計算したかを図に書き込みながら進めると良いでしょう。
- \(x-t\)グラフとの混同:
- 誤解: v-tグラフが水平な部分(40s〜100s)を「静止している」と勘違いする。(x-tグラフなら静止)
- 対策: 「v-tグラフの水平は等速運動」と機械的に覚える。常に「このグラフの縦軸は何だっけ?」と自問自答する癖をつけることが、グラフの種類の混同を防ぐ最善策です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 加速度の定義式 (\(a = \displaystyle\frac{\Delta v}{\Delta t}\)):
- 選定理由: (1)で加速度を求めるために使用します。これは加速度の定義そのものであり、v-tグラフの傾きが加速度であることの根拠となる式です。
- 適用根拠: グラフから、ある時間変化 \(\Delta t\) の間に速度がどれだけ変化したか \(\Delta v\) を読み取ることができるため、この定義式を直接適用して傾き(加速度)を計算します。
- 移動距離と面積の関係 (\(x = \int v(t) dt\)):
- 選定理由: (2), (3)で移動距離を求めるために使用します。これは、微小時間に進む距離 \(v \Delta t\) を足し合わせる(積分する)と総移動距離になるという考え方に基づいています。
- 適用根拠: 高校物理では、積分計算の代わりに、グラフと軸で囲まれた図形の「面積計算」としてこれを実行します。グラフが直線で囲まれた図形(三角形や台形)になるため、簡単な面積公式で移動距離を求めることができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 座標の読み取り: グラフから座標を読み取る際は、必ず縦軸と横軸の目盛りを確認する。特に、1目盛りが1や10でない場合に注意が必要です。
- 台形の面積公式の確認: 上底と下底を正しく特定する。この問題では、上底は等速運動をしていた時間幅(\(100-40=60\)s)、下底は全運動時間(150s)です。
- 有効数字の扱い: 問題で与えられている数値の桁数(この問題では2桁または3桁)に合わせ、最終的な答えを適切な有効数字で表現する。\(400\) を \(4.0 \times 10^2\) としたり、\(2100\) を \(2.1 \times 10^3\) としたりする処理を忘れないようにする。
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