無料でしっかり基礎固め!物理基礎 問題演習「氷の浮力:水面上の体積は何パーセント?」【高校物理対応】

問題の確認

dynamics#19

各設問の思考プロセス

この問題は、物体が液体に浮いている状況、すなわち「浮力」が関わる典型的な問題です。氷が水に浮いているとき、氷には下向きの「重力」と上向きの「浮力」がはたらき、これら二つの力がつり合っているため静止しています。

この問題を解く上で中心となる物理法則は以下の通りです。

  • 力のつりあい: 浮いている物体にはたらく重力と浮力の大きさは等しい。
  • アルキメデスの原理: 物体が受ける浮力の大きさは、その物体が押しのけた流体(この場合は水)の重さに等しい。
  • 質量・密度・体積の関係: 物体の質量は「密度 × 体積」で計算でき、重力は「質量 × 重力加速度」で計算できる。

この問題を解くための手順は以下の通りです。

  1. 氷全体の体積と水中の体積を設定する:
    氷全体の体積を \(V_{\text{氷}}\)、氷が水中に沈んでいる部分の体積を \(V_{\text{水中}}\) とします。
  2. 氷にはたらく重力を立式する:
    氷の密度 \(\rho_{\text{氷}}\) と全体の体積 \(V_{\text{氷}}\) を用いて、氷にはたらく重力 \(W_{\text{氷}}\) を表します (\(W_{\text{氷}} = \rho_{\text{氷}} V_{\text{氷}} g\))。
  3. 氷にはたらく浮力を立式する:
    水の密度 \(\rho_{\text{水}}\) と水中の氷の体積 \(V_{\text{水中}}\) を用いて、アルキメデスの原理から浮力 \(F_{\text{浮力}}\) を表します (\(F_{\text{浮力}} = \rho_{\text{水}} V_{\text{水中}} g\))。
  4. 力のつり合いの式を立てる:
    重力と浮力がつり合っている (\(W_{\text{氷}} = F_{\text{浮力}}\)) ことから、\(\rho_{\text{氷}} V_{\text{氷}} g = \rho_{\text{水}} V_{\text{水中}} g\) という関係式を導きます。
  5. 水中の体積の割合を求める:
    つり合いの式から、氷全体の体積 \(V_{\text{氷}}\) に対する水中の体積 \(V_{\text{水中}}\) の割合 (\(\displaystyle\frac{V_{\text{水中}}}{V_{\text{氷}}}\)) を、氷と水の密度の比で表します。
  6. 水上の体積の割合を計算する:
    水面より上の部分の氷の体積 \(V_{\text{水上}}\) は \(V_{\text{氷}} – V_{\text{水中}}\) です。これを用いて、氷全体の体積に対する水上の体積の割合 (\(\displaystyle\frac{V_{\text{水上}}}{V_{\text{氷}}} = 1 – \displaystyle\frac{V_{\text{水中}}}{V_{\text{氷}}}\)) を計算します。
  7. パーセントで表示する:
    得られた水上の体積の割合を100倍して、パーセントで表します。

思考プロセスとしては、まず物体にはたらく力を特定し、それらの力の関係性(この場合はつり合い)を考えることが基本です。浮力の問題では、アルキメデスの原理を正しく適用することが鍵となります。特に、浮力の計算に用いる体積は「物体が押しのけた流体の体積(=物体が流体中に沈んでいる部分の体積)」であり、流体の密度を用いることを混同しないように注意が必要です。

各設問の具体的な解説と解答

水面より上の部分の氷の体積は氷全体の何%か

問われている内容の明確化
この問題で問われているのは、「水面より上の部分の氷の体積」が「氷全体の体積」の何パーセントを占めるか、ということです。これを数式で表現すると、\(\displaystyle\frac{V_{\text{水上}}}{V_{\text{氷}}} \times 100\%\) を求めることになります。

具体的な解説と立式
まず、氷全体の体積を \(V_{\text{氷}}\) とします。
氷の密度を \(\rho_{\text{氷}}\)、重力加速度の大きさを \(g\) とすると、氷にはたらく重力の大きさ \(W_{\text{氷}}\) は、質量が \(\rho_{\text{氷}} V_{\text{氷}}\) であることから、
$$W_{\text{氷}} = \rho_{\text{氷}} V_{\text{氷}} g \quad \cdots ①$$
と表せます。

次に、氷が水に浮いているとき、水中に沈んでいる氷の体積を \(V_{\text{水中}}\) とします。水の密度を \(\rho_{\text{水}}\) とすると、アルキメデスの原理により、氷が受ける浮力の大きさ \(F_{\text{浮力}}\) は、押しのけた水の重さに等しく、
$$F_{\text{浮力}} = \rho_{\text{水}} V_{\text{水中}} g \quad \cdots ②$$
と表せます。

氷は水に浮いて静止しているので、氷にはたらく重力 \(W_{\text{氷}}\) と浮力 \(F_{\text{浮力}}\) はつり合っています。したがって、
$$W_{\text{氷}} = F_{\text{浮力}}$$
が成り立ちます。式①と式②を代入すると、次の方程式が得られます。
$$\rho_{\text{氷}} V_{\text{氷}} g = \rho_{\text{水}} V_{\text{水中}} g \quad \cdots ③$$

私たちが求めたいのは、水面より上の部分の氷の体積 \(V_{\text{水上}}\) の、氷全体の体積 \(V_{\text{氷}}\) に対する割合です。
水面より上の部分の氷の体積 \(V_{\text{水上}}\) は、氷全体の体積 \(V_{\text{氷}}\) から水中に沈んでいる氷の体積 \(V_{\text{水中}}\) を引いたものです。
$$V_{\text{水上}} = V_{\text{氷}} – V_{\text{水中}}$$
よって、求める割合は、
$$\frac{V_{\text{水上}}}{V_{\text{氷}}} = \frac{V_{\text{氷}} – V_{\text{水中}}}{V_{\text{氷}}} = 1 – \frac{V_{\text{水中}}}{V_{\text{氷}}} \quad \cdots ④$$
となります。この式を計算するためには、まず \(\displaystyle\frac{V_{\text{水中}}}{V_{\text{氷}}}\) の値を式③から求める必要があります。

使用した物理公式:

  1. 力のつりあい: \(W_{\text{氷}} = F_{\text{浮力}}\) (浮いている物体に対して)
  2. 重力の大きさ: \(W = mg\)。密度 \(\rho\)、体積 \(V\) を用いると \(W = \rho V g\)
  3. アルキメデスの原理: \(F_{\text{浮力}} = \rho_{\text{流体}} V_{\text{水中部分}} g\)

計算過程
まず、式③ \( \rho_{\text{氷}} V_{\text{氷}} g = \rho_{\text{水}} V_{\text{水中}} g \) の両辺を重力加速度 \(g\) で割ります。\(g\) は0ではないので、割ることができます。
$$\rho_{\text{氷}} V_{\text{氷}} = \rho_{\text{水}} V_{\text{水中}}$$
この式から、氷全体の体積 \(V_{\text{氷}}\) に対する水中に沈んでいる氷の体積 \(V_{\text{水中}}\) の割合 \(\displaystyle\frac{V_{\text{水中}}}{V_{\text{氷}}}\) を求めます。
式を変形すると、
$$\frac{V_{\text{水中}}}{V_{\text{氷}}} = \frac{\rho_{\text{氷}}}{\rho_{\text{水}}} \quad \cdots ⑤$$
となります。

次に、与えられた数値を式⑤に代入します。
水の密度: \(\rho_{\text{水}} = 1.0 \times 10^3 \, \text{kg/m}^3\)
氷の密度: \(\rho_{\text{氷}} = 9.2 \times 10^2 \, \text{kg/m}^3\)
$$\frac{V_{\text{水中}}}{V_{\text{氷}}} = \frac{9.2 \times 10^2 \, \text{kg/m}^3}{1.0 \times 10^3 \, \text{kg/m}^3}$$
単位 \(\text{kg/m}^3\) は分子と分母で共通なので約分され、数値部分を計算します。
$$\frac{V_{\text{水中}}}{V_{\text{氷}}} = \frac{9.2 \times 100}{1.0 \times 1000} = \frac{920}{1000} = \frac{92}{100} = 0.92$$
これは、氷の体積の92%が水中に沈んでいることを意味します。

次に、式④ \( \displaystyle\frac{V_{\text{水上}}}{V_{\text{氷}}} = 1 – \displaystyle\frac{V_{\text{水中}}}{V_{\text{氷}}} \) を用いて、水面より上の部分の氷の体積の割合を求めます。
式⑤で求めた \(\displaystyle\frac{V_{\text{水中}}}{V_{\text{氷}}} = 0.92\) を代入すると、
$$\frac{V_{\text{水上}}}{V_{\text{氷}}} = 1 – 0.92 = 0.08$$
最後に、この割合をパーセントで表すために100を掛けます。
$$0.08 \times 100\% = 8\%$$

計算方法の平易な説明

  • 氷が水に浮いているとき、氷の「重さ」と水が氷を押し上げる「浮力」が等しくなっています。
  • 氷の重さは「氷の密度 × 氷全体の体積 × 重力加速度」で、浮力は「水の密度 × 氷の水に沈んでいる部分の体積 × 重力加速度」で表せます。
  • これらの式を「重さ=浮力」として結びつけると、「氷の水中部分の体積 ÷ 氷全体の体積」は「氷の密度 ÷ 水の密度」に等しいことがわかります。
  • 氷の密度は \(9.2 \times 10^2\)、水の密度は \(1.0 \times 10^3\) なので、代入して計算すると、水中に沈んでいる部分の割合は \(0.92\) (つまり92%) となります。
  • 全体を1 (または100%) と考えると、水面から出ている部分の割合は \(1 – 0.92 = 0.08\) (つまり \(100\% – 92\% = 8\%\)) と計算できます。

結論と吟味
水面より上の部分の氷の体積は、氷全体の体積の8%です。

この結果は直感的にも理解しやすいでしょう。氷の密度 (\(0.92 \times 10^3 \, \text{kg/m}^3\)) は水の密度 (\(1.0 \times 10^3 \, \text{kg/m}^3\)) に近いですが、わずかに小さいです。そのため、氷は水に浮き、その体積の大部分(この計算では92%)は水面下にあり、残りのわずかな部分(8%)が水面上に出ることになります。もし氷の密度がもっと小さければ、水面上の部分はより大きくなるはずです。この結果は物理的に妥当であると言えます。

この設問における重要なポイント

  • 物体が浮いている条件(重力と浮力のつりあい)を正しく理解し、立式すること。
  • アルキメデスの原理 (\(F_{\text{浮力}} = \rho_{\text{流体}} V_{\text{水中部分}} g\)) を正確に適用すること。特に、浮力の計算に用いるのは「流体の密度」と「物体が流体中に沈んでいる部分の体積」であることを忘れない。
  • 問題で問われているのが「水面より上の部分」の割合であるため、計算の最後に \(1 – (\text{水中部分の割合})\) というステップが必要になることを見落とさない。
  • 密度の単位や \(10^n\) の計算を正確に行うこと。
  • 最終的な答えをパーセントで示すこと。
解答:
水面より上の部分の氷の体積は氷全体の8%である。

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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 浮力: 流体がその中の物体を押し上げる力。物体の下面が受ける流体からの圧力と上面が受ける流体からの圧力の差によって生じる。鉛直上向きにはたらく。
  • アルキメデスの原理: 浮力の大きさを定量的に示す法則。「流体中の物体は、その物体が押しのけた流体の重さに等しい大きさの浮力を受ける」。数式では \(F_{\text{浮力}} = \rho_{\text{流体}} V_{\text{物体水中部分}} g\) と表される。
  • 力のつりあい: 物体が静止している場合、物体にはたらく力の合力はゼロである。この問題では、氷にはたらく重力と浮力がつり合っている。
  • 密度: 物質の単位体積あたりの質量 (\(\rho = \displaystyle\frac{m}{V}\))。物質の種類によって固有の値を持ち、物体の浮き沈みを考える上で重要な物理量。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 物体にはたらく力を図示する: 問題の状況を図で描き、物体にはたらく重力と浮力を矢印で示すと、力のつりあいの関係を理解しやすくなる。
  • 記号の定義を明確にする: 問題文で与えられていない記号(例えば \(V_{\text{氷}}\) や \(V_{\text{水中}}\) など)を自分で設定する場合は、それが何を表しているのかを解答のはじめに明記するとよい。
  • 求めるものを常に意識する: この問題では「水面上の部分の割合(%)」を問われている。途中で水中の部分の割合を計算しても、それで終わりではないことを意識する。
  • 密度の値の扱いに注意: 特に指数 (\(10^n\)) が含まれる場合、計算ミスが起こりやすい。慎重に計算を進めること。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • 浮力の計算で使う体積の誤り: アルキメデスの原理における \(V_{\text{物体水中部分}}\) は、文字通り「物体が流体中に沈んでいる部分の体積」であり、物体全体の体積ではない場合がある(この問題では \(V_{\text{氷}}\) ではなく \(V_{\text{水中}}\))。
  • 浮力の計算で使う密度の誤り: 浮力の計算で使う密度は、物体の密度ではなく「流体の密度」(この問題では水の密度 \(\rho_{\text{水}}\))である。
  • 割合の計算の誤解: 水中部分の体積の割合を求めたところで満足してしまい、問題が要求している水上部分の体積の割合を計算し忘れることがある。
  • パーセントへの換算忘れ: 割合を小数や分数で求めた後、100を掛けてパーセント表示にするのを忘れることがある。

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