今回の問題
electromagnetic13【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「平行板コンデンサーの電場と電気容量の導出」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 電気力線の本数: 電荷 \(q\) から出る(または入る)総本数は \(N = 4\pi k |q|\) で定義されます。
- 電場の強さ: 電場に垂直な単位面積あたりの電気力線の本数(\(E = N/S\))として定義されます。
- 電場の重ね合わせの原理: 複数の電荷が作る電場は、各電荷が単独で作る電場のベクトル和で求められます。
- コンデンサーの基本公式: 一様な電場と電位差の関係 \(V=Ed\)、電気容量の定義 \(C=Q/V\) を用います。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- ア, イ: まず単独の金属板Aについて、電気力線の本数と電場の強さを定義に従って求めます。
- ウ, エ: 次に、AとBの2枚の板を考え、それぞれの板が作る電場を「重ね合わせ」て、コンデンサーの内と外の電場を求めます。
- オ, カ: 最後に、コンデンサー内部の電場と電位差の関係、そして電気容量の定義式を用いて、コンデンサーの電気容量を導出します。
空欄 ア〜カ を埋めよ。
思考の道筋とポイント
この問題は、電気力線という基本概念から出発し、平行板コンデンサーの電気容量の公式を導出するまでの論理的な流れを追う形式です。各空欄は、直前の文章や定義に基づいて段階的に埋めていくことができます。
この設問における重要なポイント
- 問題文で与えられた定義(電気力線の本数、電場の強さ)を正確に適用すること。
- 単独の金属板が両側に電場を作ること、そしてコンデンサー内部ではそれらが強め合い、外部では打ち消し合うことを理解すること。
- コンデンサーの基本公式 \(V=Ed\) と \(C=Q/V\) を正しく使いこなすこと。
具体的な解説と立式
ア: 片面から出る電気力線の本数
定義より、電荷 \(Q\) から出る電気力線の総本数は \(4\pi k Q\) です。「Aの両面から一様に」出るので、片面からはその半分が出ます。
$$ (\text{ア}) = \frac{1}{2} \times 4\pi k Q $$
イ: Aがつくる電場の強さ \(E_A\)
定義より、電場の強さは「単位面積あたりの電気力線の本数」です。片面から出る本数(ア)を面積 \(S\) で割ります。
$$ (\text{イ}) = E_A = \frac{(\text{ア})}{S} $$
ウ: コンデンサーの極板間の電場の強さ \(E\)
極板間では、Aが作る電場(右向き)と、B(\(-Q\))が作る電場(Bに引き寄せられるので右向き)が重なります。Bが作る電場の強さ \(E_B\) もAと同じ大きさ \(E_A\) なので、合成電場は2つの和になります。
$$ (\text{ウ}) = E = E_A + E_B $$
エ: 両極板の外の電場の強さ \(E\)
極板の外側(例えばAの左側)では、Aが作る電場(左向き)とBが作る電場(右向き)が重なります。向きが逆で大きさが等しいので、打ち消し合います。
$$ (\text{エ}) = E_A – E_B $$
オ: 極板間の電位差 \(V\)
一様な電場 \(E\) の中で、距離 \(d\) だけ離れた2点間の電位差 \(V\) は、基本公式で与えられます。
$$ (\text{オ}) = V = Ed $$
カ: コンデンサーの電気容量 \(C\)
電気容量の定義式 \(C = \frac{Q}{V}\) に、(オ)の \(V=Ed\) と(ウ)で求めた \(E\) を代入して求めます。
$$ (\text{カ}) = C = \frac{Q}{V} = \frac{Q}{Ed} $$
使用した物理公式
- 電気力線の総本数: \(N=4\pi k q\)
- 電場の強さの定義: \(E = N/S\)
- 電場の重ね合わせの原理
- 一様な電場と電位差の関係: \(V=Ed\)
- 電気容量の定義: \(C = Q/V\)
アの計算
$$
\begin{aligned}
(\text{ア}) &= \frac{1}{2} \times 4\pi k Q \\[2.0ex]&= 2\pi k Q
\end{aligned}
$$
イの計算
$$
\begin{aligned}
(\text{イ}) &= \frac{2\pi k Q}{S}
\end{aligned}
$$
ウの計算
$$
\begin{aligned}
(\text{ウ}) &= E_A + E_B \\[2.0ex]&= \frac{2\pi k Q}{S} + \frac{2\pi k Q}{S} \\[2.0ex]&= \frac{4\pi k Q}{S}
\end{aligned}
$$
エの計算
$$
\begin{aligned}
(\text{エ}) &= E_A – E_B \\[2.0ex]&= \frac{2\pi k Q}{S} – \frac{2\pi k Q}{S} \\[2.0ex]&= 0
\end{aligned}
$$
オの計算
$$
\begin{aligned}
(\text{オ}) &= Ed
\end{aligned}
$$
カの計算
$$
\begin{aligned}
(\text{カ}) &= \frac{Q}{Ed} \\[2.0ex]&= \frac{Q}{\left(\frac{4\pi k Q}{S}\right)d} \\[2.0ex]&= \frac{Q \cdot S}{4\pi k Q d} \\[2.0ex]&= \frac{S}{4\pi k d}
\end{aligned}
$$
この問題は、パズルのように順番に空欄を埋めていくことで、コンデンサーの重要な公式を自分で導き出す体験をするものです。
(ア)→(イ)→(ウ)→(エ)→(オ)→(カ)の順に、前の答えを使いながら、問題文で与えられた定義や公式に当てはめていくだけで、自然と答えが導かれます。
各空欄を埋めることで、平行板コンデンサーの電気容量が \(C = \frac{S}{4\pi k d}\) となることが、基本法則から論理的に導出できました。
ア: \(2\pi k Q\)
イ: \(\displaystyle\frac{2\pi k Q}{S}\)
ウ: \(\displaystyle\frac{4\pi k Q}{S}\)
エ: 0
オ: \(Ed\)
カ: \(\displaystyle\frac{S}{4\pi k d}\)
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 電気力線から電場、電位、電気容量への展開:
- 核心: この問題は、電場の視覚的モデルである「電気力線」という基本概念から出発し、電場の強さ(\(E\))、電位差(\(V\))、そしてコンデンサーの性能を表す電気容量(\(C\))へと、物理概念が論理的に積み上げられていく過程そのものを示しています。この一連の導出フローを理解することが核心です。
- 理解のポイント:
- 電荷 \(Q\) が電気力線 \(N\) を生む (\(N=4\pi k Q\))。
- 電気力線 \(N\) の密度が電場 \(E\) を決める (\(E=N/S\))。
- 電場 \(E\) が空間に電位差 \(V\) を作る (\(V=Ed\))。
- 電荷 \(Q\) と電位差 \(V\) の比が電気容量 \(C\) を決める (\(C=Q/V\))。
この流れをストーリーとして理解することが、コンデンサー分野の深い理解につながります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 誘電体を挿入した場合: コンデンサーの極板間に比誘電率 \(\epsilon_r\) の誘電体を挿入すると、誘電分極によって電場が \(1/\epsilon_r\) 倍に弱められます。その結果、電気容量は \(\epsilon_r\) 倍になります。\(C = \epsilon_r \frac{S}{4\pi k d}\) となります。
- 真空の誘電率 \(\epsilon_0\) を用いた表現: クーロン定数 \(k\) は \(k = \frac{1}{4\pi \epsilon_0}\) と表せます。これを(カ)の答えに代入すると、\(C = \frac{S}{4\pi (\frac{1}{4\pi \epsilon_0}) d} = \epsilon_0 \frac{S}{d}\) となり、より一般的なコンデンサーの公式が得られます。
- 初見の問題での着眼点:
- 誘導形式を最大限に活用する: このような穴埋め問題は、前の答えが次のヒントになっています。順番に、定義に従って忠実に計算・変形していくことが最も確実な解法です。
- 電場の重ね合わせを図示する: (ウ)や(エ)を考える際は、必ず図を描きましょう。Aが作る電場の矢印と、Bが作る電場の矢印を、極板間と極板外のそれぞれの領域に描き込み、向きが同じか逆かを確認することで、足し算・引き算の間違いを防げます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 単独極板の電場とコンデンサーの電場の混同:
- 誤解: 単独の極板が作る電場(イ)を \(E_A = \frac{4\pi k Q}{S}\) としたり、コンデンサー内部の電場(ウ)を \(E = \frac{2\pi k Q}{S}\) としたりする。
- 対策: 「単独の板は両面に電気力線を出すので、片側の電場は \(2\pi k \sigma\) (\(\sigma=Q/S\))」「コンデンサー内部では、2枚の板の電場が強め合うので、\(2\pi k \sigma + 2\pi k \sigma = 4\pi k \sigma\)」と、理由とセットで覚えましょう。
- 重ね合わせの際の向きの判断ミス:
- 誤解: 極板Bの電荷が\(-Q\)なので、Bが作る電場も逆向きだと考えて、極板間で引き算をしてしまう。
- 対策: 電場の向きは「+1Cの電荷が受ける力の向き」です。極板間に+1Cの電荷を置くと、Aからは右向きに押され、Bからは右向きに引かれます。したがって、両方の電場は同じ右向きであり、足し合わせるのが正しいと判断できます。
- 文字式の計算ミス:
- 誤解: (カ)の計算で、\(C = \frac{Q}{Ed}\) に \(E\) を代入する際に、分数の計算を間違える。
- 対策: \(\frac{A}{(\frac{B}{C})}\) のような繁分数は、\(\frac{A \cdot C}{B}\) となることを落ち着いて計算しましょう。焦らず、一段階ずつ丁寧に式を変形することが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- なぜコンデンサー外部の電場は0になるのか?:
- 選定理由: 電場の重ね合わせの原理の直接的な帰結です。
- 適用根拠: 理想的な無限に広い平行板コンデンサーでは、正極板が作る右向きの電場と、負極板が作る左向きの電場が、外部空間のどこでも大きさが等しく、向きが真逆になります。その結果、ベクトル和が常に0となり、電場は完全に打ち消し合います。現実のコンデンサーでも、端の部分を除けば、外部の電場はほぼ0と見なせます。
- なぜ電気容量は \(Q\) や \(V\) に依存しないのか?:
- 選定理由: 電気容量 \(C\) は、コンデンサーの「形や構造」だけで決まる、いわば「器の大きさ」を表す固有の性能値だからです。
- 適用根拠: (カ)で導出した \(C = \frac{S}{4\pi k d}\) という式には、電荷 \(Q\) や電位差 \(V\) が含まれていません。これは、\(V\) が \(Q\) に比例するため(\(V=Ed = \frac{4\pi k d}{S}Q\))、その比である \(C=Q/V\) を計算すると \(Q\) が約分されて消えるためです。電気容量は、面積 \(S\) が広く、極板間距離 \(d\) が狭いほど大きくなります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 定義に忠実になる: この問題は、物理法則の定義を正確に適用できるかを試しています。例えば、「電場の強さとは何か?」と問われたら、「単位面積あたりの電気力線の本数」という定義に立ち返り、その通りに計算を進めることが、正解への最も確実な道です。
- 文字の役割を明確にする: \(Q, S, d, k\) など、多くの文字が登場します。それぞれの文字が何を意味する物理量なのかを常に意識しながら式を扱うことで、混乱を防ぎ、立式のミスを減らすことができます。
- 導出の流れを記憶する: コンデンサーの電気容量の公式は、ただ暗記するだけでなく、この問題のように「電気力線 \(\rightarrow\) 電場 \(\rightarrow\) 電位差 \(\rightarrow\) 電気容量」という導出の流れを一度自分で経験し、理解しておくことが応用力を高める上で非常に重要です。
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