今回の問題
wave#03【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「波のグラフの解釈と基本公式」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- \(y-x\)グラフと\(y-t\)グラフの区別: 左図(\(y-x\)グラフ)は波の空間的な形を、右図(\(y-t\)グラフ)は媒質の一点の時間的な振動を表します。それぞれから読み取れる情報が異なることを理解することが重要です。
- 波の基本公式: 波の速さ\(v\)、振動数\(f\)、周期\(T\)、波長\(\lambda\)の間の関係式 (\(v=f\lambda\), \(T=1/f\)) を用いて、グラフから読み取った情報から未知の物理量を計算します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、まず右図の\(y-t\)グラフから周期\(T\)を直接読み取ります。次に、周期と振動数の関係式 \(f=1/T\) を用いて振動数\(f\)を計算します。
- (2)では、左図の\(y-x\)グラフから波長\(\lambda\)を読み取ります。最後に、(1)で求めた周期\(T\)(または振動数\(f\))と波長\(\lambda\)を波の基本公式 \(v=\lambda/T\)(または\(v=f\lambda\))に代入して、波の速さ\(v\)を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
この波の周期\(T\)と振動数\(f\)を求める問題です。周期と振動数は波の時間的な性質を表す量なので、横軸が時間(\(t\))である右図の\(y-t\)グラフに着目します。グラフから1回の振動にかかる時間(周期)を読み取り、その逆数を計算して振動数を求めます。
この設問における重要なポイント
- 周期\(T\)は、\(y-t\)グラフ(右図)から読み取る。
- 振動数\(f\)は、周期\(T\)の逆数として \(f = 1/T\) で計算する。
- グラフの横軸が時間\(t\)であることを確認する。
具体的な解説と立式
周期 \(T\) の読み取り:
右図は、位置\(x=0\)における媒質の変位の時間変化を表す\(y-t\)グラフです。
グラフから、媒質が1回振動して元の状態に戻るのにかかる時間、すなわち周期\(T\)を読み取ります。
$$ T = 0.5 \text{ [s]} $$
振動数 \(f\) の計算:
振動数\(f\)は周期\(T\)の逆数で与えられます。
$$ f = \frac{1}{T} \quad \cdots ① $$
使用した物理公式
- 周期と振動数の関係: \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\)
式①に \(T=0.5\) s を代入します。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1}{0.5} \\[2.0ex]&= 2.0 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
周期は、波が1回ブルンと揺れるのにかかる時間のことです。右側のグラフ(時間のグラフ)を見ると、1回の揺れが0.5秒で終わっているのがわかります。なので周期は0.5秒です。振動数は、1秒間に何回揺れるかを表すので、周期の逆数になります。1 ÷ 0.5 = 2 なので、振動数は2.0 Hzです。
この波の周期は \(0.5\) s、振動数は \(2.0\) Hz です。グラフの読み取りと基本公式の適用により、正しく求められました。
問(2)
思考の道筋とポイント
この波の速さ\(v\)を求める問題です。波の速さは、基本公式 \(v = f\lambda\) または \(v = \lambda/T\) で計算できます。振動数\(f\)と周期\(T\)は(1)で求めたので、あとは波長\(\lambda\)が必要です。波長は波の空間的な性質なので、横軸が位置(\(x\))である左図の\(y-x\)グラフから読み取ります。
この設問における重要なポイント
- 波長\(\lambda\)は、\(y-x\)グラフ(左図)から読み取る。
- 波の基本公式 \(v = f\lambda\) または \(v = \lambda/T\) を用いて速さを計算する。
- グラフの横軸が位置\(x\)であることを確認する。
具体的な解説と立式
波長 \(\lambda\) の読み取り:
左図は、時刻\(t=0\)における波の形を表す\(y-x\)グラフです。
グラフから、1つの波の繰り返しの長さ、すなわち波長\(\lambda\)を読み取ります。
$$ \lambda = 2.0 \text{ [m]} $$
波の速さ \(v\) の計算:
波の基本公式に、(1)で求めた \(f=2.0\) Hz と、読み取った \(\lambda=2.0\) m を代入します。
$$ v = f\lambda \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- 波の基本公式: \(v = f\lambda\)
式②に数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= 2.0 \text{ [Hz]} \times 2.0 \text{ [m]} \\[2.0ex]&= 4.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
(別解)周期 \(T=0.5\) s を用いる場合:
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{\lambda}{T} \\[2.0ex]&= \frac{2.0 \text{ [m]}}{0.5 \text{ [s]}} \\[2.0ex]&= 4.0 \text{ [m/s]}
\end{aligned}
$$
波の速さは「振動数 × 波長」で計算できます。振動数は(1)で 2.0 Hz と求めました。波長は、波1個の長さのことで、左側のグラフ(場所のグラフ)を見ると、2.0 m であることがわかります。したがって、速さは \(2.0 \times 2.0 = 4.0\) m/s となります。
この波の速さは \(4.0\) m/s です。\(y-x\)グラフと\(y-t\)グラフからそれぞれ波長と周期を読み取り、基本公式に適用することで正しく計算できました。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- \(y-x\)グラフと\(y-t\)グラフの解釈:
- 核心: この問題は、波の異なる側面を表す2種類のグラフ、\(y-x\)グラフ(波形)と\(y-t\)グラフ(単振動)を正しく区別し、それぞれから適切な物理量(波長\(\lambda\)、周期\(T\))を読み取れるかが核心です。
- 理解のポイント:
- \(y-x\)グラフは、ある瞬間の波の「写真」であり、空間的な広がり(波長)を示します。
- \(y-t\)グラフは、ある一点の媒質の揺れを追った「ビデオ」であり、時間的な繰り返し(周期)を示します。
この2つの情報を組み合わせることで、波の速さなど、波の全体像が明らかになります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 波の式を立てる問題: この問題で求めた\(\lambda=2.0\)m, \(T=0.5\)sと、グラフから読み取れる振幅\(A=1.0\)mを使って、この波の式 \(y(x, t) = A \sin 2\pi \left( \frac{t}{T} – \frac{x}{\lambda} \right)\) を具体的に立てることができます。(ただし、初期位相の考慮が必要です。)
- 媒質の速度を問う問題: 「\(x=0\)の媒質の速度が最大になる時刻は?」といった問題。\(y-t\)グラフ(右図)を見ると、媒質は単振動しており、変位が0の点(\(t=0, 0.25, 0.5, \dots\)s)で速さが最大になります。
- 負の向きに進む波: もし波が\(x\)軸の負の向きに進む場合、\(x=0\)の媒質は\(t=0\)の直後に負の向きに動くはずです。その場合、\(y-t\)グラフは上下反転した形になります。
- 初見の問題での着眼点:
- グラフの軸を最優先で確認: 横軸が\(x\)か\(t\)かを見ることで、そのグラフが波形なのか単振動なのかを即座に判断します。
- 読み取れる情報を確定させる:
- \(y-x\)グラフ \(\to\) \(\lambda\) を読み取る。
- \(y-t\)グラフ \(\to\) \(T\) を読み取る。
- 両方から \(A\) が読み取れることを確認する。
- 基本公式でつなぐ: 読み取った\(\lambda\)と\(T\)を、波の基本公式 \(v=\lambda/T\) や \(f=1/T\) に代入して、残りの物理量を計算します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- \(y-x\)グラフから周期を、\(y-t\)グラフから波長を読み取ろうとする:
- 誤解: 最も典型的なミスです。グラフの形が似ているため、横軸の意味を混同してしまいます。
- 対策: グラフを見たら、まず「横軸は\(x\)(場所)、だから波長がわかる」「横軸は\(t\)(時間)、だから周期がわかる」と声に出して確認するくらいの習慣をつけましょう。
- 振幅を2倍で答える:
- 誤解: グラフの山の頂点から谷の底までの長さ(この問題では2.0m)を振幅と勘違いする。
- 対策: 振幅は「振動の中心から」の最大の変位です。必ず\(y=0\)の線からの高さを読み取りましょう。
- 周期と半周期の混同:
- 誤解: \(y-t\)グラフで、山から谷まで、あるいは原点から次のゼロ点までを1周期と勘違いする。
- 対策: 周期は「1回完全に振動して、元の状態(変位と速度)に戻るまで」の時間です。グラフでは、山から次の山、谷から次の谷、あるいはS字カーブ1個分と覚えましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(v = \displaystyle\frac{\lambda}{T}\) (波の速さ):
- 選定理由: 波の空間的な性質(波長\(\lambda\))と時間的な性質(周期\(T\))を結びつけ、速さ\(v\)を定義するための最も基本的な関係式だからです。
- 適用根拠: この式は、等速直線運動の基本式「速さ = 距離 ÷ 時間」を、波という現象に適用したものです。波が「1波長(\(\lambda\))という距離」を進むのにかかる時間が「1周期(\(T\))」である、と解釈できます。この物理的イメージを理解していれば、公式を丸暗記する必要はありません。
- \(f = \displaystyle\frac{1}{T}\) (振動数と周期の関係):
- 選定理由: 振動数と周期という、時間に関する2つの異なる表現を結びつける定義式だからです。
- 適用根拠: 周期\(T\)は「1回の振動にかかる時間[s/回]」、振動数\(f\)は「1秒あたりの振動回数[回/s]」です。両者が互いに逆数の関係にあることは、その定義から明らかです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- グラフに直接書き込む: グラフから読み取った\(\lambda\)や\(T\)の値を、問題用紙のグラフ上に直接書き込むと、情報が整理され、計算に使う値を間違えにくくなります。
- 単位を付けて計算する: \(v = \frac{2.0 \text{ [m]}}{0.5 \text{ [s]}} = 4.0 \text{ [m/s]}\) のように、計算過程で単位を書き込むことで、立式の誤りや単位の間違いに気づきやすくなります。
- 複数の公式で検算する: (2)で\(v=\lambda/T\)で速さを計算した後、(1)で求めた\(f\)を使って\(v=f\lambda\)でも計算してみる(\(4.0 = 2.0 \times 2.0\))。同じ答えになれば、計算が正しい可能性が高いです。
- 有効数字を意識する: グラフの目盛りから読み取れる有効数字を考慮して、答えを記述しましょう。この問題では、2.0 m, 0.5 s などから、答えも有効数字2桁で \(4.0\) m/s のように記述するのが適切です。
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