無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「一様な正電荷平面が作る電場と電位」【高校物理対応】

問題の確認

electromagnetic#07

各設問の思考プロセス

この問題は、ガウスの法則、電場と電気力線の関係、そして一様な電場中における電位の考え方を用いて解くことができます。

  1. 設問(1) 電気力線の総数:
    ガウスの法則によれば、閉曲面を貫く電気力線の総数は、その閉曲面内部にある電気量に比例します。具体的には、\(N = 4 \pi k Q\) という関係があります(ただし、\(Q\) は内部の総電気量)。今回は円筒の側面からは電気力線が出ていかない(電気力線は平面\(A\)に垂直なため、円筒の側面に平行)ことに注意し、上面と下面から出ていく電気力線を考えます。
  2. 設問(2) 電場の強さ:
    電場の強さ \(E\) は、単位面積を垂直に貫く電気力線の本数として定義されます。設問(1)で求めた電気力線の総数と、電気力線が貫く面積(円筒の上面と下面の合計面積)から、電場の強さを求めます。平面\(A\)の上下で対称であることを考慮します。
  3. 設問(3) 電位:
    一様な電場 \(E\) の中で、電場の向きに沿って距離 \(d\) だけ離れた2点間の電位差は \(V = Ed\) で与えられます。電場の向きと電位の高低関係に注意して、平面\(A\)からの距離 \(d\) の点の電位を計算します。

各設問の具体的な解説と解答

(1) 円筒内部における A 上の電気量が \(Q\) (\(Q>0\)) であったとすると、円筒の上面と下面を貫いて出ていく電気力線の総数 \(N\) を求めよ。

問われている内容の明確化:
平面\(A\)上の電荷 \(Q\) から出て、円筒の上面と下面を貫通する電気力線の合計本数を求めます。

具体的な解説と計算手順:
ガウスの法則によると、電荷 \(Q\) から出る電気力線の総数は \(4 \pi k Q\) 本です。
問題文より、電気力線は平面\(A\)に垂直であるため、仮想的な円筒の側面を貫く電気力線はありません。
平面\(A\)上の正電荷から出る電気力線は、平面\(A\)の上下両方向に均等に出ていきます。
したがって、円筒の上面を貫く電気力線の本数と、下面を貫く電気力線の本数は等しくなります。

円筒内部の平面\(A\)上の電気量が \(Q\) なので、この電荷 \(Q\) から出る電気力線の総数は \(4 \pi k Q\) 本です。
これらの電気力線は、円筒の上面と下面からのみ出ていきます。

よって、円筒の上面と下面を貫いて出ていく電気力線の総数 \(N\) は、電荷 \(Q\) から出る電気力線の総数に等しく、\(N = 4 \pi k Q\) です。

使用した物理公式: ガウスの法則に基づく電気力線の本数
$$N = 4 \pi k Q_{in}$$
ここで、\(Q_{in}\) は閉曲面内部の総電荷量です。

計算方法の平易な説明:

  1. 平面\(A\)上にある電気量 \(Q\) の正電荷からは、電気力線が周囲に広がっていきます。
  2. ガウスの法則というルールがあり、電荷 \(Q\) から出る電気力線の合計本数は \(4 \pi k Q\) 本と決まっています。
  3. 問題の図では、円筒を考えていますが、電気力線は平面\(A\)に垂直(つまり上下方向)に出ているので、円筒の横(側面)からは電気力線は出入りしません。
  4. したがって、\(Q\) から出た電気力線はすべて、円筒の上の面か下の面を通り抜けていきます。
  5. よって、円筒の上面と下面を貫いて出ていく電気力線の総数 \(N\) は、まさに \(Q\) から出る全電気力線の本数なので、\(N = 4 \pi k Q\) となります。

この設問における重要なポイント:

  • ガウスの法則を理解していること。
  • 電気力線が平面\(A\)に垂直であるという条件から、円筒の側面を貫く電気力線は0であることを把握すること。
解答 (1):
\(N = 4 \pi k Q\)

(2) 円筒の上面と下面を貫く単位面積当たりの電気力線の本数, すなわち電場の強さ \(E\) は円筒の上面と下面においてどのように表されるか。

問われている内容の明確化:
円筒の上面および下面における電場の強さ \(E\) を求めます。電場の強さは、単位面積あたりの電気力線の本数です。

具体的な解説と計算手順:
設問(1)より、円筒の上面と下面を貫いて出ていく電気力線の総数 \(N\) は \(4 \pi k Q\) です。
電気力線は平面\(A\)の上下に対称的に分布します。したがって、上面から出ていく電気力線の本数と下面から出ていく電気力線の本数は等しく、それぞれ \(\displaystyle \frac{N}{2} = \frac{4 \pi k Q}{2} = 2 \pi k Q\) 本となります。

円筒の上面の面積は \(S\) です。
上面における電場の強さ \(E_{up}\) は、上面を貫く電気力線の本数を上面の面積 \(S\) で割ったものです。
$$E_{up} = \frac{2 \pi k Q}{S}$$
同様に、円筒の下面の面積も \(S\) です。
下面における電場の強さ \(E_{down}\) は、下面を貫く電気力線の本数を下面の面積 \(S\) で割ったものです。
$$E_{down} = \frac{2 \pi k Q}{S}$$
平面\(A\)上の電荷は正なので、電気力線は平面\(A\)から離れる向き(湧き出す向き)です。
したがって、

  • 円筒の上面では、電場の向きは平面\(A\)から遠ざかる上向き。
  • 円筒の下面では、電場の向きは平面\(A\)から遠ざかる下向き。

電場の強さは上面でも下面でも等しく、\(\displaystyle E = \frac{2 \pi k Q}{S}\) です。

使用した物理公式: 電場の強さの定義
$$E = \frac{\text{電気力線の本数}}{\text{面積}}$$

計算方法の平易な説明:

  1. (1)で、円筒の上と下の面を通り抜ける電気力線の合計は \(4 \pi k Q\) 本だとわかりました。
  2. 電気力線は平面\(A\)から上下均等に出るので、上面を通る本数はその半分、つまり \(\displaystyle \frac{4 \pi k Q}{2} = 2 \pi k Q\) 本です。下面を通る本数も同じです。
  3. 電場の強さ \(E\) は、「単位面積あたり何本の電気力線が通るか」なので、上面での電場の強さは、上面を通る電気力線の本数 \(2 \pi k Q\) を上面の面積 \(S\) で割って、\(\displaystyle E = \frac{2 \pi k Q}{S}\) となります。
  4. 下面でも面積は \(S\) で、通る電気力線の本数も同じなので、電場の強さは上面と同じ \(\displaystyle E = \frac{2 \pi k Q}{S}\) です。
  5. 向きについては、正電荷からは電気力線が湧き出すので、上面では上向き、下面では下向きになります。

この設問における重要なポイント:

  • 電気力線が平面の上下に対称的に分布することを理解すること。
  • 電場の強さが単位面積当たりの電気力線の本数で定義されることを理解すること。
  • 電気力線(電場)の向きを正しく判断すること。
解答 (2):
円筒の上面と下面における電場の強さは等しく、その大きさは \(\displaystyle E = \frac{2 \pi k Q}{S}\) である。上面における電場の向きは平面\(A\)から離れる向き(上向き)、下面における電場の向きも平面\(A\)から離れる向き(下向き)である。

(3) \(A\) における電位を \(0 \text{ V}\) とすると \(A\) から距離 \(d\) の点における電位を求めよ。

問われている内容の明確化:
平面\(A\)からの距離が \(d\) である点の電位 \(V\) を求めます。平面\(A\)の電位は \(0 \text{ V}\) です。

具体的な解説と計算手順:
平面\(A\)から生じる電場は一様で、その強さは \(\displaystyle E = \frac{2 \pi k Q}{S}\) です(設問(2)より)。
電場の向きは、平面\(A\)が正に帯電しているので、平面\(A\)から離れる向きです。
電位は電場に逆らって電荷を運ぶときの仕事に関係します。電場の向きに沿って進むと電位は低くなり、電場に逆らって進むと電位は高くなります。

平面\(A\) (距離 \(0\)) の電位を \(V_A = 0 \text{ V}\) とします。
平面\(A\)から距離 \(d\) の点の電位を \(V_d\) とします。
電場の強さは \(\displaystyle E = \frac{2 \pi k Q}{S}\) です。

平面\(A\)を \(x=0\) とし、平面\(A\)の上側を \(x>0\) の領域とします。電場は \(x\) 軸の正の向きを向いており、\(\displaystyle E_x = E = \frac{2 \pi k Q}{S}\)。
電位 \(V(x)\) は、\(E_x = -\displaystyle \frac{dV}{dx}\) の関係があります。
$$V(x) = -\int E_x dx = -\int E dx = -Ex + C \quad (C \text{ は積分定数})$$
\(x=0\) (平面\(A\)) で \(V(0)=0\) なので、\(0 = -E \cdot 0 + C \Rightarrow C=0\)。
よって、\(V(x) = -Ex\)。
距離 \(d\) の点では、\(x=d\) なので、\(\displaystyle V(d) = -Ed = -\frac{2 \pi k Q d}{S}\)。

平面\(A\)の下側を \(x<0\) の領域とします。この場合、平面\(A\)からの距離は \(|x|\) です。電場の向きは \(x\) 軸の負の向きなので、\(\displaystyle E_x = -E = -\frac{2 \pi k Q}{S}\)。
$$V(x) = -\int E_x dx = -\int (-E) dx = Ex + C’ \quad (C’ \text{ は積分定数})$$
\(x=0\) (平面\(A\)) で \(V(0)=0\) なので、\(C’=0\)。
よって、\(V(x) = Ex\)。
平面\(A\)から距離 \(d\) の点とは、\(x=-d\) の点なので、\(\displaystyle V(-d) = E(-d) = -Ed = -\frac{2 \pi k Q d}{S}\)。
したがって、平面\(A\)の上側でも下側でも、平面\(A\)から距離 \(d\) の点の電位は同じ式で表されます。

使用した物理公式: 一様な電場と電位の関係
$$V = -Ed + V_0 \quad (\text{電場の向きに \(d\) 進んだ場合})$$
または
$$E = -\frac{dV}{dx}$$
ここで、\(V_0\) は始点の電位。

計算方法の平易な説明:

  1. 平面\(A\)には正の電荷があり、そこから上下に電場 \(E\) が出ています。強さは \(\displaystyle E = \frac{2 \pi k Q}{S}\) でした。
  2. 電位の基準は平面\(A\)で \(0 \text{ V}\) です。
  3. 電場は、電位が高い方から低い方へ向かいます。正電荷の作る電場は、電荷から遠ざかる向きです。
  4. つまり、平面\(A\)から離れると、電場の向きに進むことになるので、電位は低くなります。
  5. どれくらい低くなるかというと、距離 \(d\) だけ離れると \(Ed\) だけ低くなります。
  6. 基準が \(0 \text{ V}\) なので、そこから \(Ed\) 低くなると、電位は \(0 – Ed = -Ed\) となります。
  7. 値を代入すると、\(\displaystyle V = -\left(\frac{2 \pi k Q}{S}\right) d = -\frac{2 \pi k Q d}{S}\) です。
  8. これは平面\(A\)の上側でも下側でも同じです。

この設問における重要なポイント:

  • 電場と電位の関係 (\(E = -\Delta V / \Delta x\) または \(V = -Ed\)) を理解すること。
  • 電位の基準点がどこに設定されているかを確認すること。
  • 電場の向きと電位の増減の関係を正しく把握すること(電場の向きに進むと電位は下がる)。
解答 (3):
\(\displaystyle V = -\frac{2 \pi k Q d}{S}\)

 


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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • ガウスの法則: 閉曲面を貫く電気力線の総数は、内部の電荷に比例するという法則 (\(N = 4 \pi k Q_{in}\))。電荷の分布が対称的な場合に電場を求めるのに非常に有効です。
  • 電気力線: 電場の様子を視覚的に表す線。向きは電場の向き、密度は電場の強さを表します。正電荷から出て負電荷に入ります。
  • 電場の強さ (\(E\)): 単位正電荷が受ける静電気力のことであり、また、単位面積を垂直に貫く電気力線の本数でもあります。
  • 電位 (\(V\)): 単位正電荷が持つ静電気力による位置エネルギー。電場に逆らって電荷を運ぶのに必要な仕事と関連します。電場は電位の高い方から低い方へ向かいます (\(E = -\nabla V\))。
  • 一様な電場中の電位差: 一様な電場 \(E\) の中で、電場の向きに沿って距離 \(d\) だけ離れた2点間の電位差は \(Ed\) です。
  • 電荷の面密度 (\(\sigma\)): 単位面積当たりの電荷量。\(\sigma = Q/S\)。無限に広い帯電平面が作る電場の強さは \(\displaystyle E = 2 \pi k \sigma = \frac{\sigma}{2 \epsilon_0}\)。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 対称性の利用: 電荷分布に対称性がある場合、電気力線や電場の様子も対称的になります。ガウスの法則を適用する際には、この対称性をうまく利用できるようなガウス面(閉曲面)を選ぶことが重要です。
  • ガウス面の選び方:
    • 電場が一定で、かつ面に垂直な部分。
    • 電場が面に平行な部分(貫く電気力線が0)。
  • 電気力線の向きと本数: 電気力線は正電荷から湧き出し、負電荷に吸い込まれます。その本数は電荷の大きさに比例します。
  • 電場の向きと電位の関係: 電場は電位が減少する向きを指します。この関係を常に意識することが大切です。
  • 電位の基準点: 電位を考える際には、どこを基準 (通常 \(0 \text{ V}\)) としているかを明確にすることが重要です。問題で指定されている場合もあれば、無限遠点を基準とすることもあります。基準の取り方によって電位の値は変わりますが、電位差は変わりません。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • (1) 電気力線の本数: ガウスの法則 \(N=4 \pi k Q\) の \(Q\) は「閉曲面内部の」電荷である点を忘れる。側面を貫く電気力線を考慮してしまう(本問では電気力線が\(A\)に垂直なので側面は貫かない)。
  • (2) 電場の強さ: 上面と下面の「合計」の面積で割ってしまう、あるいは片面だけの電気力線を全体の面積で割るなど、電気力線の本数と面積の対応を誤る。上下対称であることを見落とし、片側だけを考えてしまう。
  • (3) 電位:
    • 電場の向きと電位の増減関係の混同。正電荷から離れると電位は「下がる」という基本を忘れる、または基準点の扱いを誤る。
    • \(V=Ed\) の公式の符号の解釈。電場の向きに \(d\) 進むと電位は \(Ed\)「下がる」ので、変化量は \(-Ed\) です。
    • 与えられた電位の基準 (\(V_A=0\)) を正しく使わない。

 


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