無料でしっかり基礎固め!物理基礎 問題演習「熱量の保存と比熱の計算(熱量計)」【高校物理対応】

今回の問題

thermodynamicsall#02

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「熱量保存則」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 熱量保存則: 外部と熱のやりとりがない場合、高温の物体が失った熱量と、低温の物体が得た熱量の総和は等しくなります。
  • 熱量の計算式: 物体の熱量の変化は、比熱\(c\)を用いる場合は \(Q=mc\Delta T\)、熱容量\(C\)を用いる場合は \(Q=C\Delta T\) で計算されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、熱量保存則に基づき、「金属球が放出した熱量」は「熱量計と水が得た熱量の合計」に等しいと考えます。まず、低温側である熱量計と水が得た熱量をそれぞれ計算し、足し合わせます。
  2. (2)では、(1)で求めた熱量を用いて、金属球についての熱量の公式 \(Q=mc\Delta T\) を変形し、金属の比熱\(c\)を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
金属球が放出した熱量を直接計算するには、まだ未知数である金属の比熱が必要なため、計算できません。そこで、熱量保存則を利用します。金属球が放出した熱はすべて、熱量計と水によって吸収されたと考えます。したがって、「熱量計が得た熱量」と「水が得た熱量」をそれぞれ計算し、それらを合計することで、間接的に金属球が放出した熱量を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 熱量保存則「高温物体が失った熱量 = 低温物体が得た熱量」を正しく立式できる。
  • 熱量計が得た熱量は \(Q=C\Delta T\)、水が得た熱量は \(Q=mc\Delta T\) と、状況に応じて公式を使い分けられる。
  • 温度変化 \(\Delta T\) は、摂氏(\(^\circ\text{C}\))の差とケルビン(\(\text{K}\))の差で値が同じになることを理解している。

具体的な解説と立式
熱量計と水が得た熱量をそれぞれ \(Q_{\text{計}}\)、\(Q_{\text{水}}\) とします。
熱量計と水の温度は、ともに \(25^\circ\text{C}\) から \(38^\circ\text{C}\) に上昇したので、温度変化 \(\Delta T\) は共通です。
$$ \Delta T = 38^\circ\text{C} – 25^\circ\text{C} = 13^\circ\text{C} = 13 \text{ K} $$
熱量計が得た熱量 \(Q_{\text{計}}\) は、熱容量 \(C_{\text{計}}\) を用いて、
$$ Q_{\text{計}} = C_{\text{計}} \Delta T \quad \cdots ① $$
水が得た熱量 \(Q_{\text{水}}\) は、質量 \(m_{\text{水}}\) と比熱 \(c_{\text{水}}\) を用いて、
$$ Q_{\text{水}} = m_{\text{水}} c_{\text{水}} \Delta T \quad \cdots ② $$
熱量保存則より、金属球が放出した熱量 \(Q_{\text{放出}}\) は、これらが得た熱量の和に等しくなります。
$$ Q_{\text{放出}} = Q_{\text{計}} + Q_{\text{水}} \quad \cdots ③ $$

使用した物理公式

  • 熱量(熱容量を用いる場合): \(Q = C\Delta T\)
  • 熱量(比熱を用いる場合): \(Q = mc\Delta T\)
  • 熱量保存則: \(Q_{\text{失った熱量}} = Q_{\text{得た熱量}}\)
計算過程

まず、式①、②に数値を代入して、\(Q_{\text{計}}\) と \(Q_{\text{水}}\) を計算します。
$$ Q_{\text{計}} = (1.3 \times 10^2) \times 13 = 1690 \text{ [J]} $$
$$ Q_{\text{水}} = (1.0 \times 10^2) \times 4.2 \times 13 = 5460 \text{ [J]} $$
次に、式③を用いて、これらの和を計算します。
$$ Q_{\text{放出}} = 1690 + 5460 = 7150 \text{ [J]} $$
問題文で与えられている数値はすべて有効数字2桁なので、計算結果も有効数字2桁に丸めます。
$$ Q_{\text{放出}} \approx 7.2 \times 10^3 \text{ [J]} $$

計算方法の平易な説明

金属球が放出した熱は、すべて「熱量計」と「水」に吸収されます。まず、熱量計がもらった熱は「熱容量 × 温度上昇」で \(1.3 \times 10^2 \times 13 = 1690\) J。次に、水がもらった熱は「質量 × 比熱 × 温度上昇」で \(1.0 \times 10^2 \times 4.2 \times 13 = 5460\) J。この2つを合計した \(1690 + 5460 = 7150\) J が、金属球が放出した熱量になります。最後に有効数字を2桁にそろえて、\(7.2 \times 10^3\) J とします。

結論と吟味

金属球が放出した熱量は \(7.2 \times 10^3\) J です。熱量計と水が得た熱量をそれぞれ計算し、それらを足し合わせることで、熱量保存則に基づいて妥当な値が求められました。

解答 (1) \(7.2 \times 10^3\) J

問(2)

思考の道筋とポイント
金属の比熱を求める問題です。(1)で計算した「金属球が放出した熱量」を使います。金属球自身について熱量の公式 \(Q=mc\Delta T\) を立て、この式を比熱 \(c\) について解くことで値を求めます。このとき、金属球の質量と温度変化を正しく式に代入することが重要です。
この設問における重要なポイント

  • (1)で求めた熱量の値を利用する。
  • 熱量の公式 \(Q=mc\Delta T\) を、比熱 \(c\) を求める形 (\(c = \displaystyle\frac{Q}{m\Delta T}\)) に変形できる。
  • 金属球の温度変化 \(\Delta T\) を正しく計算できる。

具体的な解説と立式
金属球が放出した熱量 \(Q_{\text{放出}}\) は、その質量 \(m_{\text{金}}\)、比熱 \(c_{\text{金}}\)、温度変化 \(\Delta T_{\text{金}}\) を用いて次のように表せます。
$$ Q_{\text{放出}} = m_{\text{金}} c_{\text{金}} \Delta T_{\text{金}} \quad \cdots ④ $$
ここで、金属球の温度変化 \(\Delta T_{\text{金}}\) は、
$$ \Delta T_{\text{金}} = 80^\circ\text{C} – 38^\circ\text{C} = 42^\circ\text{C} = 42 \text{ K} $$
式④を比熱 \(c_{\text{金}}\) について解くと、
$$ c_{\text{金}} = \frac{Q_{\text{放出}}}{m_{\text{金}} \Delta T_{\text{金}}} \quad \cdots ⑤ $$

使用した物理公式

  • 比熱: \(c = \displaystyle\frac{Q}{m\Delta T}\)
計算過程

式⑤に、(1)で求めた \(Q_{\text{放出}} = 7.2 \times 10^3\) J と、問題文で与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
c_{\text{金}} &= \frac{7.2 \times 10^3}{ (2.0 \times 10^2) \times 42 } \\[2.0ex]&= \frac{7200}{200 \times 42} \\[2.0ex]&= \frac{7200}{8400} \\[2.0ex]&= \frac{72}{84} = \frac{6}{7} \approx 0.857… \text{ [J/(g}\cdot\text{K)]}
\end{aligned}
$$
計算結果を有効数字2桁に丸めます。
$$ c_{\text{金}} \approx 0.86 \text{ [J/(g}\cdot\text{K)]} $$

計算方法の平易な説明

(1)で、金属球が \(7.2 \times 10^3\) J の熱を放出したことがわかりました。この熱は、質量 \(2.0 \times 10^2\) g の金属球の温度が \(42\) K 下がったことによるものです。公式「熱量 = 質量 × 比熱 × 温度変化」に当てはめると、\(7.2 \times 10^3 = (2.0 \times 10^2) \times c_{\text{金}} \times 42\) となります。この式を \(c_{\text{金}}\) について解くと、答えが求まります。

結論と吟味

この金属の比熱は \(0.86 \text{ J/(g}\cdot\text{K)}\) です。計算過程は熱量の公式を変形したものであり、論理的に妥当です。

解答 (2) \(0.86\) J/(g・K)

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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 熱量保存則:
    • 核心: この問題は、外部に熱が逃げない限り「高温物体が失った熱量 = 低温物体が得た熱量」が成り立つという「熱量保存則」を適用できるかが全てです。これは、エネルギー保存則が熱という形で現れたものです。
    • 理解のポイント: どの物体が熱を「失い」(温度が下がる)、どの物体が熱を「得る」(温度が上がる)のかを正確に把握することが第一歩です。この問題では、金属球が失い、熱量計と水が得る側になります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 状態変化を含む問題: 熱量計に水ではなく氷が入っている場合。この場合、低温側が得る熱量は「氷の温度上昇の熱量」「氷の融解熱(状態変化の熱量)」「融けた水の温度上昇の熱量」の3段階で計算する必要があります。
    • 複数の物体を混ぜる問題: 異なる温度の液体を混ぜ合わせる問題など。基本的な考え方は同じで、失った熱量の合計と得た熱量の合計が等しくなります。
    • 熱平衡温度を求める問題: 今回は最終温度が与えられていましたが、逆に比熱が既知で最終的な平衡温度 \(T\) を求める問題も頻出です。その場合は \(T\) を未知数として熱量保存の式を立て、\(T\) についての方程式を解きます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 登場人物の整理: 問題に出てくる物体(熱量計、水、金属球など)をリストアップし、それぞれの初期状態(質量、比熱/熱容量、温度)を整理します。
    2. 熱の移動方向の確認: どの物体が高温で、どの物体が低温かを確認し、熱がどちらからどちらへ移動するかを矢印などで図示します。
    3. 熱量保存の式を立てる: 「失う側の熱量の合計 = 得る側の熱量の合計」という等式を立てます。各項は \(mc\Delta T\) または \(C\Delta T\) の形になります。
    4. 温度変化 \(\Delta T\) の設定: 各項の \(\Delta T\) は、必ず正の値になるように「高温 – 低温」で計算すると、符号ミスが防げます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 比熱と熱容量の混同:
    • 誤解: 熱量計のように物体全体で熱を考える場合は「熱容量 \(C\)」、水のように物質として考える場合は「比熱 \(c\)」を使います。\(Q=C\Delta T\) と \(Q=mc\Delta T\) の使い分けを間違える。
    • 対策: 単位を確認しましょう。熱容量の単位は [J/K]、比熱の単位は [J/(g・K)] です。単位に質量([g])が含まれているかどうかで見分けられます。
  • 熱量保存の式の項の漏れ:
    • 誤解: 熱量計の存在を忘れて、水が得た熱量だけを考えてしまう。
    • 対策: 問題文を注意深く読み、熱をやりとりする「登場人物」をすべてリストアップする癖をつけましょう。この問題では「金属球」「水」「熱量計」の3者です。
  • 計算途中の丸めによる誤差:
    • 誤解: (1)で求めた熱量を有効数字で丸めた値 \(7.2 \times 10^3\) J を(2)の計算に使うと、最終的な答えに微妙なズレが生じることがあります。
    • 対策: (1)の計算で出た丸める前の値(この問題では \(7150\) J)を(2)の計算に使うのが最も正確です。高校のテストでは、途中で丸めた値を使っても許容されることが多いですが、より厳密な計算を心がけましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(Q_{\text{放出}} = Q_{\text{計}} + Q_{\text{水}}\) (熱量保存則):
    • 選定理由: 未知数(金属の比熱)を含む側の熱量が直接計算できないため、間接的に求める唯一の方法だからです。物理現象の根幹であるエネルギー保存則に基づいているため、最も信頼できるアプローチです。
    • 適用根拠: 「断熱された系(外部との熱のやりとりがない系)では、内部での熱の移動の総和はゼロになる」という物理法則に基づいています。これを変形すると「失った熱量=得た熱量」となります。
  • \(Q=C\Delta T\) vs \(Q=mc\Delta T\):
    • 選定理由: 問題文で与えられている物理量によって使い分けます。
    • 適用根拠:
      • 熱量計のように、物体の材質や質量が複雑でも「全体として温度を1K上げるのに何J必要か」という「熱容量 \(C\)」が与えられている場合は、\(Q=C\Delta T\) を使います。
      • 水のように、物質の種類(比熱 \(c\))と質量 \(m\) が明確に与えられている場合は、\(Q=mc\Delta T\) を使います。本質的には、\(C=mc\) の関係で繋がっています。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 温度変化を図にする: 数直線のような図を描き、各物体の初期温度と最終温度をプロットすると、どの温度差を計算すればよいか(\(\Delta T\))が一目瞭然になります。
    • 低温側(水+計): \(25^\circ\text{C}\) → \(38^\circ\text{C}\) (\(\Delta T = 13 \text{ K}\))
    • 高温側(金属球): \(80^\circ\text{C}\) → \(38^\circ\text{C}\) (\(\Delta T = 42 \text{ K}\))
  • 立式を丁寧に行う: 焦って数値を代入せず、まずは \(Q_{\text{放出}} = Q_{\text{計}} + Q_{\text{水}}\) や \(m_{\text{金}}c_{\text{金}}\Delta T_{\text{金}} = C_{\text{計}}\Delta T_{\text{計}} + m_{\text{水}}c_{\text{水}}\Delta T_{\text{水}}\) のように、記号で式を完全に立ててから数値を代入すると、ケアレスミスが減ります。
  • 大きな数は指数表記で扱う: \(1.3 \times 10^2\) や \(7.2 \times 10^3\) のように、指数表記を使いこなすことで、0の数を間違えるといったミスを防げます。
  • 検算の習慣: (2)で求めた比熱 \(c_{\text{金}} \approx 0.86\) を使って、金属球が失った熱量を再計算してみる。\(Q = 200 \times 0.86 \times 42 = 7224 \approx 7.2 \times 10^3\) J。これは(1)の答えとほぼ一致するので、計算が正しい可能性が高いと判断できます。

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