「センサー総合物理 3rd Edition」徹底解説!【Chapter 9】Step1 & 例題

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Step1

① 弧度法

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「度数法と弧度法の変換」です。角度の表現方法である「度(°)」と「ラジアン(rad)」を相互に変換する、円運動や単振動の学習に必須の基本計算です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 弧度法(ラジアン)の定義: 円周上で半径と等しい長さの弧に対する中心角を1ラジアンと定義する。
  2. 度数法と弧度法の関係: 円の全周が \(360^\circ\) であり、これが \(2\pi\) ラジアンに対応するという基本関係を理解していること。
  3. 比例計算: 上記の基本関係を用いて、変換計算ができること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 基本関係式 \(360^\circ = 2\pi \, \text{rad}\) 、あるいはその両辺を2で割った \(180^\circ = \pi \, \text{rad}\) を基準とする。
  2. ラジアンから度に変換する場合は、\(\pi\) を \(180^\circ\) に置き換えるか、比例式を用いる。
  3. 度からラジアンに変換する場合は、比例式を用いるか、「\(1^\circ = \displaystyle\frac{\pi}{180} \, \text{rad}\)」という関係を使って計算する。

思考の道筋とポイント
この問題は、「\(\pi \, \text{rad}\) は何度か」という問いと、「\(60^\circ\) は何ラジアンか」という2つのパートからなります。これらは度数法と弧度法の関係における最も基本的な対応関係であり、知識として覚えておくべきものです。もし忘れても、\(360^\circ = 2\pi \, \text{rad}\) という定義から簡単に導出できます。

この設問における重要なポイント

  • 基本関係式: \(180^\circ = \pi \, \text{rad}\)
  • この関係は、今後の計算の基礎となるため、暗記しておくことが望ましい。
  • 比例計算: \(180^\circ\) が \(\pi\) ならば、\(60^\circ\) はどれだけになるかを考える。

具体的な解説と立式
度数法での角度を \(\phi\)、弧度法での角度を \(\theta\) とすると、両者の関係は円の全周に対する比率が等しいことから、次のように表せます。
$$ \frac{\phi}{360^\circ} = \frac{\theta}{2\pi} $$
この関係式から、それぞれの変換式を導きます。

1. ラジアンから度への変換 (\(\pi \, \text{rad} \rightarrow \text{度}\))

ラジアンを度に変換する公式は次のようになります。
$$ \phi = 360^\circ \times \frac{\theta}{2\pi} $$
この式に \(\theta = \pi\) を代入します。

2. 度からラジアンへの変換 (\(60^\circ \rightarrow \text{rad}\))

度をラジアンに変換する公式は次のようになります。
$$ \theta = 2\pi \times \frac{\phi}{360^\circ} $$
この式に \(\phi = 60^\circ\) を代入します。

使用した物理公式

  • 度数法と弧度法の関係式: \(\displaystyle\frac{\phi}{360^\circ} = \frac{\theta}{2\pi}\) または \(180^\circ = \pi \, \text{rad}\)
計算過程

1. \(\pi \, \text{rad}\) の計算

$$
\begin{aligned}
\phi &= 360^\circ \times \frac{\pi}{2\pi} \\[2.0ex]&= 360^\circ \times \frac{1}{2} \\[2.0ex]&= 180^\circ
\end{aligned}
$$

2. \(60^\circ\) の計算

$$
\begin{aligned}
\theta &= 2\pi \times \frac{60^\circ}{360^\circ} \\[2.0ex]&= 2\pi \times \frac{1}{6} \\[2.0ex]&= \frac{\pi}{3} \, \text{[rad]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

\(\pi\) ラジアンは何度?
円1周は \(360^\circ\) です。これをラジアンで表すと \(2\pi\) になります。つまり、\(360^\circ\) と \(2\pi \, \text{rad}\) は同じ角度を表します。この両辺を2で割ると、\(180^\circ = \pi \, \text{rad}\) となります。これは最も重要な関係式です。

\(60^\circ\) は何ラジアン?
\(180^\circ\) が \(\pi\) ラジアンなので、\(1^\circ\) は \(\displaystyle\frac{\pi}{180}\) ラジアンです。では、\(60^\circ\) はどうなるかというと、これを60倍すればよいので、
$$ 60 \times \frac{\pi}{180} = \frac{60\pi}{180} = \frac{\pi}{3} \, \text{[rad]} $$
となります。あるいは、\(60^\circ\) は \(180^\circ\) の \(\displaystyle\frac{1}{3}\) なので、ラジアンも \(\pi\) の \(\displaystyle\frac{1}{3}\) になる、と考えると簡単です。

解答 \(180^\circ\), \(\displaystyle\frac{\pi}{3} \, \text{rad}\)

② 角速度

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「角速度の計算」です。回転運動の速さを表す「角速度」を、与えられた回転数と時間から計算する問題です。単位の変換(回転数→ラジアン、分→秒)が正しくできるかがポイントです。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 角速度の定義: 単位時間あたりに回転する角度。 \(\omega = \displaystyle\frac{\theta}{t}\)
  2. 回転数と角度(ラジアン)の関係: 1回転は \(2\pi\) ラジアンであること。
  3. 単位の統一: 計算に用いる物理量の単位を基本単位(この場合は秒)に合わせること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 1分間に30回転するという情報から、総回転角 \(\theta\) と総時間 \(t\) を求める。
  2. 総回転角は、回転数に \(2\pi\) を掛けてラジアンに変換する。
  3. 総時間は、分を秒に変換する。
  4. 角速度の定義式 \(\omega = \displaystyle\frac{\theta}{t}\) に代入して計算する。

思考の道筋とポイント
「角速度」とは、「1秒あたりに何ラジアン回転するか」を表す量です。問題で与えられているのは「1分間に30回転」という情報なので、これを「1秒あたり何ラジアン」という単位に変換する作業が必要になります。この単位変換を2ステップ(①回転→ラジアン、②分→秒)に分けて丁寧に行うことが、この問題を解く鍵です。

この設問における重要なポイント

  • 角速度の公式: \(\omega = \displaystyle\frac{\theta}{t}\)
    • \(\omega\): 角速度 [rad/s]
    • \(\theta\): 回転した角度 [rad]
    • \(t\): かかった時間 [s]
  • 単位変換:
    • 1回転 = \(2\pi\) [rad]
    • 1分 = 60 [s]
  • 問題文の値の特定:
    • 総回転数: 30回
    • 総時間: 1分

具体的な解説と立式
求める角速度を \(\omega\) [\(\text{rad/s}\)] とします。
まず、問題文の情報を角速度の定義式で使える単位に変換します。

1. 総回転角 \(\theta\) の計算
1回転は \(2\pi\) ラジアンなので、30回転したときの総回転角 \(\theta\) は、
$$ \theta = 30 \times 2\pi \, \text{[rad]} $$

2. 総時間 \(t\) の計算
1分は60秒なので、
$$ t = 60 \, \text{[s]} $$

3. 角速度 \(\omega\) の立式
これらの値を角速度の定義式に代入します。
$$ \omega = \frac{\theta}{t} = \frac{30 \times 2\pi}{60} $$

使用した物理公式

  • 角速度: \(\omega = \displaystyle\frac{\theta}{t}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を計算します。
$$
\begin{aligned}
\omega &= \frac{30 \times 2\pi}{60} \\[2.0ex]&= \frac{60\pi}{60} \\[2.0ex]&= \pi \, \text{[rad/s]}
\end{aligned}
$$
問題の指示に従い、\(\pi = 3.14\) を代入します。
$$ \omega \approx 3.14 \, \text{[rad/s]} $$
解答の有効数字(2桁)に合わせて、\(3.1 \, \text{rad/s}\) とします。

計算方法の平易な説明

角速度は「1秒あたりの回転角度」です。

  1. 1秒あたりの回転数を求める: 1分(60秒)で30回転するので、1秒あたりでは \(30 \div 60 = 0.5\) 回転します。
  2. 回転数を角度(ラジアン)に直す: 1回転は \(2\pi\) ラジアンです。したがって、0.5回転は \(0.5 \times 2\pi = \pi\) ラジアンとなります。
  3. 結論: 1秒あたり \(\pi\) ラジアン回転するので、角速度は \(\pi \, \text{rad/s}\) です。問題の指示で \(\pi=3.14\) とされているので、答えは約 \(3.1 \, \text{rad/s}\) となります。
解答 \(3.1 \, \text{rad/s}\)

③ 等速円運動の速さ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「等速円運動の速さ」です。角速度と円の半径から、物体の接線方向の速さを計算する問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 速さと角速度の関係式: \(v = r\omega\) を理解し、使えること。
  2. 角速度の計算: 回転数(周波数)から角速度 \(\omega\) を計算できること。
  3. 有効数字の扱い: 与えられた複数の数値の有効数字を考慮して、最終的な答えを適切な桁数に丸めること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 「毎秒1回転」という情報から、角速度 \(\omega\) を計算する。
  2. 与えられた半径 \(r\) と、(1)で計算した角速度 \(\omega\) を、公式 \(v = r\omega\) に代入する。
  3. 計算結果を、有効数字を考慮して整形する。

思考の道筋とポイント
円運動における「速さ \(v\)」と「角速度 \(\omega\)」は、半径 \(r\) を介して \(v=r\omega\) というシンプルな関係で結びついています。この問題では、まず「毎秒1回転」という情報から角速度 \(\omega\) を求め、その後にこの関係式を使って速さ \(v\) を計算するという2段階の思考が必要です。

この設問における重要なポイント

  • 速さと角速度の関係式: \(v = r\omega\)
    • \(v\): 速さ [m/s]
    • \(r\): 半径 [m]
    • \(\omega\): 角速度 [rad/s]
  • 角速度の計算:
    • 1回転は \(2\pi\) ラジアン。
    • 「毎秒1回転」は、1秒あたりに \(2\pi\) ラジアン回転することを意味するので、角速度 \(\omega = 2\pi \, \text{rad/s}\) となる。
  • 問題文の値の特定:
    • 半径: \(r = 0.20 \, \text{m}\)
    • 角速度: \(\omega = 2\pi \, \text{rad/s}\)
    • 円周率: \(\pi = 3.14\)

具体的な解説と立式
求める物体の速さを \(v\) [\(\text{m/s}\)] とします。

1. 角速度 \(\omega\) の特定
物体は毎秒1回転しています。1回転は \(2\pi\) ラジアンなので、1秒あたりに回転する角度、すなわち角速度 \(\omega\) は、
$$ \omega = 2\pi \, \text{[rad/s]} $$

2. 速さ \(v\) の立式
速さ \(v\)、半径 \(r\)、角速度 \(\omega\) の関係式に、与えられた値と上で求めた \(\omega\) を代入します。
$$ v = r\omega $$
$$ v = 0.20 \times 2\pi $$

使用した物理公式

  • 速さと角速度の関係: \(v = r\omega\)
  • 角速度の定義: \(\omega = 2\pi f\) (\(f\)は回転数[Hz])
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式を計算します。
$$
\begin{aligned}
v &= 0.20 \times 2\pi \\[2.0ex]&= 0.40 \times \pi
\end{aligned}
$$
問題の指示に従い、\(\pi = 3.14\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= 0.40 \times 3.14 \\[2.0ex]&= 1.256 \, \text{[m/s]}
\end{aligned}
$$
計算に用いた数値のうち、半径 \(0.20\)m の有効数字が2桁です。したがって、計算結果も有効数字2桁に丸めます。
$$ v \approx 1.3 \, \text{[m/s]} $$

計算方法の平易な説明

この問題は2つの考え方で解けます。

方法1:公式を使う

  1. まず、回転の速さ(角速度)を求めます。「毎秒1回転」は、角速度でいうと \(2\pi\) です。
  2. 次に、速さの公式 \(v = r\omega\)(速さ = 半径 × 角速度)を使います。
  3. \(v = 0.20 \times 2\pi = 0.40\pi\) となります。
  4. \(\pi\) に3.14を代入して計算すると、\(0.40 \times 3.14 = 1.256\)。これを四捨五入して \(1.3 \, \text{m/s}\) となります。

方法2:円周の長さから考える

  1. 「毎秒1回転」するということは、1秒間で円周の長さと同じ距離を進むということです。
  2. まず、円周の長さを計算します。公式は「直径 × 円周率」なので、\((0.20 \times 2) \times 3.14 = 0.40 \times 3.14 = 1.256\)m。
  3. 1秒間で1.256m進むので、速さは \(1.256 \, \text{m/s}\) です。これを四捨五入して \(1.3 \, \text{m/s}\) となります。
解答 \(1.3 \, \text{m/s}\)

④ 周期と回転数

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「周期、角速度、回転数の関係」です。円運動を表す基本的な3つの物理量、周期(\(T\))、角速度(\(\omega\))、回転数(\(n\))の相互変換を行う問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 周期(\(T\))の定義: 1回転するのにかかる時間。
  2. 角速度(\(\omega\))の定義: 1秒あたりに回転する角度(ラジアン)。
  3. 回転数(\(n\))の定義: 1秒あたりに回転する回数。
  4. これらの量の関係式を理解していること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 与えられた周期 \(T\) から、角速度 \(\omega\) を計算する。
  2. 与えられた周期 \(T\) から、回転数 \(n\) を計算する。
  3. それぞれの計算結果を、有効数字を考慮して整形する。

角速度の計算

思考の道筋とポイント
周期 \(T\) が与えられている状況で、角速度 \(\omega\) を求めます。周期 \(T\) は「1回転にかかる時間」であり、1回転は \(2\pi\) ラジアンです。したがって、「\(T\)秒で\(2\pi\)ラジアン回転する」という関係から、1秒あたりの回転角である角速度を計算できます。

この設問における重要なポイント

  • 周期と角速度の関係式: \(T = \displaystyle\frac{2\pi}{\omega}\) または \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)
  • 問題文の値の特定:
    • 周期: \(T = 4.0 \, \text{s}\)
    • 円周率: \(\pi = 3.14\)

具体的な解説と立式
求める角速度を \(\omega\) [\(\text{rad/s}\)] とします。
周期 \(T\) は、1回転(\(2\pi\)ラジアン)するのにかかる時間なので、角速度 \(\omega\) との間には次の関係があります。
$$ \omega = \frac{2\pi}{T} $$
この式に、与えられた周期 \(T=4.0\)s を代入します。

使用した物理公式

  • 周期と角速度の関係: \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\omega &= \frac{2\pi}{4.0} \\[2.0ex]&= \frac{\pi}{2.0}
\end{aligned}
$$
問題の指示に従い、\(\pi = 3.14\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\omega &= \frac{3.14}{2.0} \\[2.0ex]&= 1.57 \, \text{[rad/s]}
\end{aligned}
$$
計算に用いた周期 \(4.0\)s の有効数字が2桁なので、計算結果も有効数字2桁に丸めます。
$$ \omega \approx 1.6 \, \text{[rad/s]} $$

計算方法の平易な説明

角速度は「1秒あたりの回転角度」です。

  1. この物体は、1周(\(2\pi\)ラジアン)するのに4.0秒かかります。
  2. では、1秒あたりではどれだけ回転するかというと、全体の角度を時間で割ればよいので、\(2\pi \div 4.0 = \frac{\pi}{2.0}\) ラジアンです。
  3. \(\pi=3.14\) を代入すると、\(3.14 \div 2.0 = 1.57\)。これを四捨五入して、角速度は約 \(1.6 \, \text{rad/s}\) となります。

回転数の計算

思考の道筋とポイント
周期 \(T\) が与えられている状況で、回転数 \(n\) を求めます。回転数 \(n\) は「1秒あたりの回転回数」であり、周期 \(T\) は「1回転あたりの秒数」です。この2つは互いに逆数の関係にあることを利用します。

この設問における重要なポイント

  • 周期と回転数の関係式: \(n = \displaystyle\frac{1}{T}\)
  • 問題文の値の特定:
    • 周期: \(T = 4.0 \, \text{s}\)

具体的な解説と立式
求める回転数を \(n\) [回/s] とします。
回転数 \(n\) と周期 \(T\) は互いに逆数の関係にあります。
$$ n = \frac{1}{T} $$
この式に、与えられた周期 \(T=4.0\)s を代入します。

使用した物理公式

  • 周期と回転数の関係: \(n = \displaystyle\frac{1}{T}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
n &= \frac{1}{4.0} \\[2.0ex]&= 0.25 \, \text{[回/s]}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

回転数は「1秒あたりに何回まわるか」です。

  1. この物体は、1回まわるのに4.0秒かかります。
  2. では、1秒あたりでは何回まわるかというと、\(1 \div 4.0 = 0.25\) 回となります。

したがって、回転数は \(0.25 \, \text{回/s}\) です。

解答 \(1.6 \, \text{rad/s}\), \(0.25 \, \text{回/s}\)

⑤ 向心加速度

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「等速円運動の速さと加速度」です。半径と回転数が与えられた状況から、物体の速さ \(v\) と向心加速度の大きさ \(a\) を計算する、円運動の総合的な問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 円運動の基本量(回転数、角速度、速さ)の関係を理解していること。
  2. 向心加速度の公式(\(a = \displaystyle\frac{v^2}{r}\) または \(a = r\omega^2\))を理解し、使えること。
  3. 問題の状況に応じて、複数の公式を段階的に適用して解を導く能力。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 与えられた回転数 \(n\) から、まず角速度 \(\omega\) を計算する。
  2. 半径 \(r\) と角速度 \(\omega\) を用いて、速さ \(v\) を計算する。
  3. 半径 \(r\) と速さ \(v\) を用いて、向心加速度 \(a\) を計算する。

速さの計算

思考の道筋とポイント
速さ \(v\) を求めるには、公式 \(v=r\omega\) を使います。しかし、角速度 \(\omega\) が直接与えられていないため、まず回転数 \(n\) から \(\omega\) を求める必要があります。

この設問における重要なポイント

  • 回転数と角速度の関係: \(\omega = 2\pi n\)
  • 速さと角速度の関係: \(v = r\omega\)
  • これらを組み合わせると、\(v = r(2\pi n) = 2\pi rn\) という公式も導ける。
  • 問題文の値の特定:
    • 半径: \(r = 0.25 \, \text{m}\)
    • 回転数: \(n = 2.0 \, \text{回/s}\)
    • 円周率: \(\pi = 3.14\)

具体的な解説と立式
求める速さを \(v\) [\(\text{m/s}\)] とします。
まず、回転数 \(n\) から角速度 \(\omega\) を求めます。
$$ \omega = 2\pi n $$
次に、この \(\omega\) を使って速さ \(v\) を求めます。
$$ v = r\omega = r(2\pi n) $$
この式に、与えられた値を代入します。

使用した物理公式

  • \(v = r\omega\)
  • \(\omega = 2\pi n\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
v &= 2\pi rn \\[2.0ex]&= 2 \times 3.14 \times 0.25 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 2 \times 3.14 \times 0.50 \\[2.0ex]&= 3.14 \, \text{[m/s]}
\end{aligned}
$$
有効数字を考慮すると、半径 \(0.25\)m、回転数 \(2.0\)回/s が2桁なので、答えも2桁に丸めて \(3.1 \, \text{m/s}\) となります。

計算方法の平易な説明

速さを求めるには、「1秒間に進む距離」を計算します。

  1. まず、円1周の長さを求めます。円周は「直径 × 円周率」なので、\((0.25 \times 2) \times 3.14 = 1.57\)m です。
  2. この物体は「1秒間に2.0回」回転します。
  3. したがって、1秒間に進む距離は、円周の長さの2.0倍なので、\(1.57 \times 2.0 = 3.14\)m。
  4. よって、速さは \(3.14 \, \text{m/s}\) となり、これを四捨五入して \(3.1 \, \text{m/s}\) となります。

加速度の大きさの計算

思考の道筋とポイント
等速円運動の加速度(向心加速度)の大きさを求める問題です。加速度の公式は \(a = \displaystyle\frac{v^2}{r}\) と \(a = r\omega^2\) の2つの形がありますが、前の設問で速さ \(v\) を計算しているため、\(a = \displaystyle\frac{v^2}{r}\) を使うのが効率的です。

この設問における重要なポイント

  • 向心加速度の公式: \(a = \displaystyle\frac{v^2}{r}\)
  • 問題文と前の設問からの値の特定:
    • 速さ: \(v = 3.14 \, \text{m/s}\) (丸める前の値を使うとより正確)
    • 半径: \(r = 0.25 \, \text{m}\)

具体的な解説と立式
求める加速度の大きさを \(a\) [\(\text{m/s}^2\)] とします。
向心加速度の公式に、上で求めた速さ \(v\) と与えられた半径 \(r\) を代入します。
$$ a = \frac{v^2}{r} $$

使用した物理公式

  • 向心加速度: \(a = \displaystyle\frac{v^2}{r}\)
計算過程

計算には、丸める前の \(v = \pi = 3.14\) を使うとより正確な値が得られます。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{(3.14)^2}{0.25} \\[2.0ex]&= \frac{9.8596}{0.25} \\[2.0ex]&= 39.4384 \, \text{[m/s}^2\text{]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁に丸めると、\(39 \, \text{m/s}^2\) となります。
(別解として、\(v=\pi\) を代入すると \(a = \frac{\pi^2}{0.25} = 4\pi^2\) となり、\(4 \times (3.14)^2 = 39.4384\) と計算することもできます。)

計算方法の平易な説明

円運動の加速度は、速さと半径がわかっていれば \(a = \frac{v^2}{r}\) という公式で計算できます。

  1. 前の計算で、速さ \(v\) は \(3.14 \, \text{m/s}\) だとわかりました。
  2. これを公式に当てはめると、\(a = \frac{3.14^2}{0.25}\) となります。
  3. これを計算すると約 \(39.4\) となるので、四捨五入して \(39 \, \text{m/s}^2\) が答えです。
解答 \(3.1 \, \text{m/s}\), \(39 \, \text{m/s}^2\)

⑥ 向心力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「等速円運動における向心力」です。円運動を維持するために必要な向心力の正体を特定し、その大きさを計算する問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 向心力の概念: 円運動をしている物体には、常に円の中心に向かって力が働いている。この力を向心力と呼ぶ。
  2. 運動方程式(円運動): 物体の運動方程式 \(ma=F\) において、円運動の場合は加速度 \(a\) が向心加速度、力 \(F\) が向心力に対応する。
  3. 向心力の公式: \(F = m\displaystyle\frac{v^2}{r} = mr\omega^2\)
  4. 周期と角速度の関係: \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、問題の状況で、物体に働いている力のうち、円の中心方向を向いている力(向心力の役割を担う力)を特定する。
  2. 次に、与えられた周期 \(T\) から角速度 \(\omega\) を計算する。
  3. 最後に、質量 \(m\)、半径 \(r\)、角速度 \(\omega\) を用いて、向心力の公式 \(F=mr\omega^2\) からその大きさを計算する。

向心力として働く力

思考の道筋とポイント
円運動をしている物体には、必ずその軌道の中心に向かう力(向心力)が働いています。この問題では、その力の「正体」が何であるかを考えます。物体は糸につながれて回転しているため、糸が物体を中心に向かって引き続けることで、物体は円軌道から外れずに運動できます。

この設問における重要なポイント

  • 向心力は、重力や張力のような「力の種類」の名前ではなく、円運動を実現させるために中心向きに働く「合力」の呼び名です。
  • この問題では、なめらかな水平面上で運動しているため、重力と垂直抗力はつり合っています。円運動の軌道に影響を与え、中心向きに働いている力は「糸の張力」のみです。

具体的な解説と立式
物体は糸によって中心に引かれながら運動しています。この糸が物体を引く力、すなわち「張力」が、物体の進行方向を常に内側(中心向き)に曲げ続け、円運動をさせる原因となっています。したがって、向心力の働きをする力は張力です。

使用した物理公式

  • 向心力の概念
計算過程

この問いには計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

ボールを紐につけて頭上で振り回すときを想像してください。ボールが遠くに飛んでいかないように、手は常に紐を引っ張り続けています。この「紐がボールを引く力」こそが、ボールを円軌道に留めている力、すなわち「向心力」の正体です。


向心力の大きさの計算

思考の道筋とポイント
向心力の大きさを計算します。公式はいくつかありますが、この問題では質量 \(m\)、半径 \(r\)、周期 \(T\) が与えられているため、角速度 \(\omega\) を経由して計算するのが最も効率的です。具体的には、まず周期 \(T\) から角速度 \(\omega = \frac{2\pi}{T}\) を求め、それを使って向心力 \(F = mr\omega^2\) を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 向心力の公式: \(F = mr\omega^2\)
  • 周期と角速度の関係: \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)
  • 問題文の値の特定:
    • 質量: \(m = 0.15 \, \text{kg}\)
    • 半径: \(r = 0.20 \, \text{m}\)
    • 周期: \(T = 0.50 \, \text{s}\)
    • 円周率: \(\pi = 3.14\)

具体的な解説と立式
求める向心力の大きさを \(F\) [N] とします。
まず、周期 \(T\) から角速度 \(\omega\) を求めます。
$$ \omega = \frac{2\pi}{T} $$
次に、この \(\omega\) を向心力の公式 \(F = mr\omega^2\) に代入します。
$$ F = mr\left(\frac{2\pi}{T}\right)^2 $$
この式に、与えられた値を代入して計算します。

使用した物理公式

  • 向心力: \(F = mr\omega^2\)
  • 周期と角速度の関係: \(\omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
F &= 0.15 \times 0.20 \times \left(\frac{2 \times 3.14}{0.50}\right)^2 \\[2.0ex]&= 0.030 \times (4 \times 3.14)^2 \\[2.0ex]&= 0.030 \times (12.56)^2 \\[2.0ex]&= 0.030 \times 157.7536 \\[2.0ex]&= 4.7326… \, \text{[N]}
\end{aligned}
$$
計算に用いた数値(0.15, 0.20, 0.50)の有効数字は2桁なので、答えも有効数字2桁に丸めます。
$$ F \approx 4.7 \, \text{[N]} $$

計算方法の平易な説明
  1. まず、回転のペース(角速度\(\omega\))を計算します。1周(\(2\pi\)ラジアン)するのに0.50秒かかるので、\(\omega = \frac{2\pi}{0.50} = 4\pi\)。
  2. 次に向心力の公式 \(F=mr\omega^2\) に、わかっている数字(質量0.15kg, 半径0.20m, 角速度\(4\pi\))を当てはめます。
  3. \(F = 0.15 \times 0.20 \times (4\pi)^2 = 0.030 \times 16\pi^2 = 0.48\pi^2\)。
  4. \(\pi=3.14\) を代入して計算すると、\(0.48 \times (3.14)^2 \approx 4.73\)。これを四捨五入して \(4.7 \, \text{N}\) となります。
解答 張力(糸が物体を引く力), \(4.7 \, \text{N}\)

⑦ 慣性力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「慣性力」です。加速する乗り物に乗っている人が受ける「見かけの力」である慣性力の大きさを、定義式に基づいて計算する基本的な問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 慣性力の定義: 加速する座標系において、物体に働いているように見える見かけの力。
  2. 慣性力の公式: 慣性力 \(\vec{f}\) は、物体の質量を \(m\)、座標系の加速度を \(\vec{a}\) として、\(\vec{f} = -m\vec{a}\) と表される。
  3. 慣性力の向きと大きさ: 向きは座標系の加速度と逆向き、大きさは \(f = ma\) となる。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から、人の質量 \(m\) と、人が乗っているスポーツカーの加速度 \(a\) を特定する。
  2. 慣性力の大きさを求める公式 \(f = ma\) に、これらの値を代入する。
  3. 計算を実行し、有効数字を考慮して答えを求める。

思考の道筋とポイント
慣性力は、バスや電車が急発進・急ブレーキをかけたときに体感する力です。この問題では、スポーツカーが前方に加速するため、乗っている人はまるで後ろ向きに押されるような力を感じます。この力が慣性力です。その大きさは、運動方程式 \(F=ma\) と同じ形で、シンプルに「質量 × 加速度」で計算できます。

この設問における重要なポイント

  • 慣性力の公式: \(\vec{f} = -m\vec{a}\)
    • 大きさの計算式: \(f = ma\)
  • 問題文の値の特定:
    • 人の質量: \(m = 50 \, \text{kg}\)
    • スポーツカーの加速度: \(a = 4.0 \, \text{m/s}^2\)

具体的な解説と立式
求める慣性力の大きさを \(f\) [N] とします。
慣性力の大きさは、人の質量 \(m\) と、その人が乗っているスポーツカーの加速度 \(a\) の積で与えられます。
$$ f = ma $$

使用した物理公式

  • 慣性力の大きさ: \(f = ma\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
f &= 50 \times 4.0 \\[2.0ex]&= 200 \, \text{[N]}
\end{aligned}
$$
与えられた数値(50kg, 4.0m/s²)はどちらも有効数字2桁なので、答えも有効数字2桁で表現します。
$$ f = 2.0 \times 10^2 \, \text{[N]} $$

計算方法の平易な説明

電車が急発進したときに、体が後ろにグッと押される感覚が慣性力です。この力の大きさは、とてもシンプルに「自分の質量 × 電車の加速度」で計算できます。
この問題では、人の質量が50kg、車の加速度が4.0m/s²なので、この2つを掛け算するだけです。
\(50 \times 4.0 = 200\)。
したがって、慣性力の大きさは200Nです。物理のルールに従って有効数字2桁で書くと、\(2.0 \times 10^2\)Nとなります。

解答 \(2.0 \times 10^2 \, \text{N}\)

⑧ 慣性系と非慣性系

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「慣性系と非慣性系の区別」です。物理法則、特に運動の法則が成り立つ基準となる座標系(慣性系)と、そうでない座標系(非慣性系)を、観測者の運動状態から判断する概念整理の問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 慣性の法則: 物体に力が働かなければ、静止している物体は静止し続け、運動している物体は等速直線運動を続ける。
  2. 慣性系の定義: 慣性の法則が成り立つ座標系。静止しているか、等速直線運動をしている座標系がこれにあたる。
  3. 非慣性系の定義: 慣性の法則が成り立たない座標系。加速度運動をしている座標系がこれにあたる。非慣性系では、見かけの力である「慣性力」を導入することで、運動の法則を適用できるようになる。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各設問の観測者がどのような運動をしているかを確認する。
  2. その運動が「加速度運動」であるかどうかを判断する。
  3. 加速度がゼロ(静止または等速直線運動)であれば「慣性系」、加速度がゼロでなければ「非慣性系」と分類する。

① 等速度運動をしている観測者

思考の道筋とポイント
「等速度運動」がどのような運動かを定義に立ち返って考えます。「等速度」とは、速度が一定、つまり速さも向きも変わらない運動を意味します。これは「等速直線運動」と全く同じです。

この設問における重要なポイント

  • 等速度運動 = 等速直線運動
  • 加速度の有無: 速度が変化しないので、加速度はゼロです。
  • 慣性系の定義: 加速度がゼロの座標系は慣性系です。

具体的な解説と立式
この問題は概念の理解を問うもので、計算式は不要です。
観測者は等速度運動をしています。等速度運動とは、速度(大きさと向き)が一定の運動、すなわち等速直線運動のことです。
加速度は速度の時間変化率なので、速度が一定ならば加速度はゼロです。
慣性系とは、慣性の法則が成り立つ系のことであり、静止または等速直線運動をしている系が該当します。
したがって、この観測者の立場は慣性系です。

解答 ① 慣性系

② 等加速度運動をしている観測者

思考の道筋とポイント
「等加速度運動」とは、加速度が一定でゼロではない運動です。加速度運動をしている観測者の立場がどちらに分類されるかを考えます。

この設問における重要なポイント

  • 加速度の有無: 加速度がゼロではありません。
  • 非慣性系の定義: 加速度運動をしている座標系は非慣性系です。

具体的な解説と立式
観測者は等加速度運動をしています。これは、速度が一定の割合で変化し続けている状態であり、加速度はゼロではありません。
加速度を持つ座標系では、力が働いていない物体も(観測者から見ると)加速して見えるなど、慣性の法則がそのままでは成り立ちません。このような系を非慣性系と呼びます。
したがって、この観測者の立場は非慣性系です。

解答 ② 非慣性系

③ 等速円運動をしている観測者

思考の道筋とポイント
「等速円運動」が加速度運動であるかどうかを判断することが核心です。「等速」という言葉に惑わされず、速度がベクトル量であることを思い出す必要があります。

この設問における重要なポイント

  • 等速円運動の速度と加速度:
    • 「速さ」は一定ですが、運動の「向き」が常に変化し続けています。
    • 速度(ベクトル)が変化しているので、加速度が存在します。この加速度は向心加速度と呼ばれ、常に円の中心を向いています。
  • 加速度の有無: 加速度はゼロではありません(向心加速度が存在する)。
  • 非慣性系の定義: 加速度運動をしている座標系は非慣性系です。

具体的な解説と立式
観測者は等速円運動をしています。等速円運動は、速さこそ一定ですが、運動の向きは刻一刻と変化しています。
速度は向きと大きさを持つベクトル量なので、向きが変わるだけでも「速度が変化した」ことになり、加速度が存在します。この加速度は向心加速度と呼ばれ、常に円の中心方向を向いています。
加速度が存在するということは、この観測者の立場は非慣性系であることを意味します。メリーゴーラウンドに乗っている人が、外の景色が回って見えるだけでなく、遠心力という慣性力を感じるのはこのためです。

解答 ③ 非慣性系

⑨ 遠心力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「遠心力」です。等速円運動をしている観測者(車の中の人)が受ける見かけの力である遠心力の向きと大きさを、定義と公式に基づいて求める問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 遠心力の概念: 円運動する座標系(観測者)から見たときに、物体に働いているように見える見かけの力。
  2. 遠心力の向き: 常に円の中心から遠ざかる向き。
  3. 遠心力の大きさの公式: \(F = m\displaystyle\frac{v^2}{r}\) または \(F = mr\omega^2\)。向心力と大きさが等しい。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 遠心力の向きを定義から特定する。
  2. 問題文から、人の質量 \(m\)、車の速さ \(v\)、円運動の半径 \(r\) を特定する。
  3. 遠心力の大きさを求める公式 \(F = m\displaystyle\frac{v^2}{r}\) に、これらの値を代入して計算する。

思考の道筋とポイント
遠心力は、回転する乗り物に乗っているときに感じる、外側に押し出されるような力です。これは物理学的には「見かけの力」と呼ばれ、乗り物と一緒に円運動している観測者の立場で物体の運動を考えるときに導入されます。遠心力の向きは常に円の中心から遠ざかる向き、大きさは向心力と同じ \(m\frac{v^2}{r}\) で計算できます。

この設問における重要なポイント

  • 遠心力の向き: 円の中心から遠ざかる向き。
  • 遠心力の大きさの公式: \(F = m\displaystyle\frac{v^2}{r}\)
  • 問題文の値の特定:
    • 人の質量: \(m = 50 \, \text{kg}\)
    • 車の速さ: \(v = 10 \, \text{m/s}\)
    • 円運動の半径: \(r = 20 \, \text{m}\)

具体的な解説と立式

遠心力の向き
遠心力は、定義により、円運動の中心から遠ざかる向きに働きます。

遠心力の大きさ
求める遠心力の大きさを \(F\) [N] とします。
遠心力の大きさは、人の質量 \(m\)、車の速さ \(v\)、円運動の半径 \(r\) を用いて、次の公式で与えられます。
$$ F = m\frac{v^2}{r} $$

使用した物理公式

  • 遠心力の大きさ: \(F = m\displaystyle\frac{v^2}{r}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた式に、与えられた値を代入して計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= 50 \times \frac{10^2}{20} \\[2.0ex]&= 50 \times \frac{100}{20} \\[2.0ex]&= 50 \times 5 \\[2.0ex]&= 250 \, \text{[N]}
\end{aligned}
$$
与えられた数値(半径20m, 速さ10m/s, 質量50kg)の有効数字は2桁なので、答えも有効数字2桁で表現します。
$$ F = 2.5 \times 10^2 \, \text{[N]} $$

計算方法の平易な説明

車でカーブを曲がるとき、体がドアなどに押し付けられるように感じる力が遠心力です。

向きは?
カーブの外側、つまり「円の中心から遠ざかる向き」です。

大きさは?
大きさは公式 \(F = m\frac{v^2}{r}\) で計算できます。
質量50kg、速さ10m/s、半径20mをこの式に当てはめて、
$$ F = 50 \times \frac{10 \times 10}{20} = 250 \, \text{N} $$
と計算できます。有効数字を整えて、\(2.5 \times 10^2 \, \text{N}\) となります。

解答 円の中心から遠ざかる向き, \(2.5 \times 10^2 \, \text{N}\)

例題

例題31 等速円運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「円錐振り子」です。等速円運動を、静止系(地上)と回転系(おもり)のそれぞれの立場から考察し、向心力と遠心力の関係を理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 静止系での考え方(慣性系): 物体にはたらく力をすべて描き出し、その合力が円運動の中心を向く「向心力」の役割を果たしていると考えます。運動方程式 \(ma=F\) を立てて解析します。
  2. 回転系での考え方(非慣性系): 運動している物体と一緒に回転する観測者から見ると、物体は静止しているように見えます。このとき、実際にはたらく力(重力、張力など)に加えて、見かけの力である「遠心力」を導入することで、力のつりあいを考えられるようになります。
  3. 向心力と遠心力: 向心力は、円運動を維持するために必要な中心向きの力であり、実在する力の合力です。遠心力は、回転系で考えるときに導入される見かけの力で、大きさは向心力と同じ \(mr\omega^2\) で、向きは中心から遠ざかる向きです。
  4. 力の分解: 力を水平成分と鉛直成分に分解し、それぞれの方向で力のつりあいや運動方程式を立てることが解析の基本です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1), (3)は静止系(地上から見る立場)で考えます。おもりにはたらく重力と張力を描き、その合力が向心力となることを利用して運動方程式を立てます。
  2. (2), (4)は回転系(おもりから見る立場)で考えます。重力、張力に加えて、見かけの力である遠心力を描き、力のつりあいの式を立てます。

問(1)

思考の道筋とポイント
静止した地上から見たときに、おもりにはたらいている「実際の力」をすべて挙げる問題です。円運動特有の力(向心力)は、これらの実際の力の合力によって生み出されるものであり、独立した力として存在しているわけではない点に注意が必要です。
この設問における重要なポイント

  • 物体に実際に触れているものから受ける力(接触力)と、離れていてもはたらく力(非接触力、この場合は重力)をリストアップする。
  • 向心力は、これらの力の合力であり、個別の力ではない。

具体的な解説と立式
おもりにはたらく力を考えます。

  1. 地球がおもりを引く力:重力
  2. 糸がおもりを引く力:張力

これ以外に、おもりにはたらいている力はありません。したがって、地上から見たときにはたらく力は重力と張力の2つです。

使用した物理公式

  • 力の種類に関する基本的な知識
計算過程

この設問は知識を問うものであり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

おもりの周りを見渡して、何がおもりに力を及ぼしているかを考えます。まず、地球が常に下向きに引っ張っています(重力)。次に、糸がおもりを斜め上に引っ張っています(張力)。空気抵抗は無視できるとすれば、これ以外におもりにはたらく力はありません。

結論と吟味

地上から見たとき、おもりにはたらく力は「重力」と「張力」です。

解答 (1) 重力, 張力

問(2)

思考の道筋とポイント
おもりと一緒に回転する観測者から見たときに、おもりにはたらいている力をすべて挙げる問題です。回転する座標系(非慣性系)で物体の運動(この場合は静止)を考えるためには、実際にはたらく力に加えて、見かけの力である「遠心力」を導入する必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 回転系(非慣性系)で考える場合、実在の力(重力、張力など)に加えて、見かけの力である「遠心力」を考慮に入れる。
  • 遠心力は、円運動の中心から遠ざかる向きにはたらく。

具体的な解説と立式
おもりと一緒に回転する観測者から見ると、おもりは静止して見えます。この立場では、(1)で挙げた実在の力に加えて、見かけの力である「遠心力」がはたらいていると考えます。

  1. 地球がおもりを引く力:重力
  2. 糸がおもりを引く力:張力
  3. 回転系にいるために現れる見かけの力:遠心力

したがって、おもりから見たときにはたらく力は、重力、張力、遠心力の3つです。

使用した物理公式

  • 慣性力(遠心力)の概念
計算過程

この設問は知識を問うものであり、計算は不要です。

計算方法の平易な説明

メリーゴーラウンドに乗っている自分を想像してください。外側に振り飛ばされそうな力を感じます。これが「遠心力」です。おもりも同様に、回転しているので中心から外向きに遠心力を感じています。したがって、おもり自身の視点に立つと、もともとはたらいている「重力」と「張力」に加えて、この「遠心力」もはたらいているように感じます。

結論と吟味

おもりから見たとき、おもりにはたらく力は「重力」、「張力」、「遠心力」です。

解答 (2) 重力, 張力, 遠心力

問(3)

思考の道筋とポイント
おもりにはたらく向心力の大きさを求める問題です。向心力は、(1)で考えた実在の力(重力と張力)の合力によって作られます。力のつりあいの図を描き、幾何学的な関係から求める方法と、円運動の運動方程式から求める方法の2通りで表現します。
この設問における重要なポイント

  • 向心力は、実在する力の合力である。
  • 力を水平成分と鉛直成分に分解して考える。
  • 鉛直方向:力がつりあっている。
  • 水平方向:力の合力が向心力となり、運動方程式を立てる。
  • 円運動の半径 \(r\) は \(L\sin\theta\) となる。

具体的な解説と立式
静止系(地上から見る立場)で考えます。おもりにはたらく力は重力 \(mg\) と張力 \(T\) です。
これらの力を鉛直方向と水平方向に分解して考えます。

鉛直方向の力のつりあい:
張力 \(T\) の鉛直成分 \(T\cos\theta\) と重力 \(mg\) がつりあっています。
$$ T\cos\theta = mg \quad \cdots ① $$

水平方向の運動方程式:
張力 \(T\) の水平成分 \(T\sin\theta\) が、円運動の中心Oを向く向心力 \(F\) の役割を果たしています。
$$ F = T\sin\theta \quad \cdots ② $$

\(m, g, \theta\) を用いた表現:
①式から \(T = \displaystyle\frac{mg}{\cos\theta}\) を求め、これを②式に代入します。
$$ F = \left( \frac{mg}{\cos\theta} \right) \sin\theta $$

\(m, L, \theta, \omega\) を用いた表現:
円運動の運動方程式は \(ma = F\) で、加速度 \(a\) は向心加速度 \(a = r\omega^2\) で与えられます。
円運動の半径 \(r\) は、図より \(r = L\sin\theta\) です。
したがって、向心力 \(F\) は、
$$ F = m(r\omega^2) = m(L\sin\theta)\omega^2 $$

使用した物理公式

  • 力のつりあい: \(\sum \vec{F} = 0\)
  • 運動方程式: \(ma = F\)
  • 向心力: \(F = mr\omega^2\)
計算過程

\(m, g, \theta\) を用いた表現の計算:
$$
\begin{aligned}
F &= mg \frac{\sin\theta}{\cos\theta} \\[2.0ex]&= mg\tan\theta
\end{aligned}
$$
\(m, L, \theta, \omega\) を用いた表現の計算:
$$
\begin{aligned}
F &= m(L\sin\theta)\omega^2 \\[2.0ex]&= mL\omega^2\sin\theta
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

向心力は、おもりを円の内側に引っ張り続けている力の正体です。この問題では、糸の張力の「水平成分」がその役割を担っています。まず、力のつりあい(上下方向)から張力の大きさを求め、それを使って水平成分を計算すると \(mg\tan\theta\) が得られます。また、向心力は「質量×半径×(角速度)\(^2\)」という公式でも計算できるので、これに半径 \(r=L\sin\theta\) を代入すると \(mL\omega^2\sin\theta\) という別の表現も得られます。

結論と吟味

向心力の大きさは \(mg\tan\theta\) と表すことも、\(mL\omega^2\sin\theta\) と表すこともできます。これら2つの表現は等しい(\(mg\tan\theta = mL\omega^2\sin\theta\))はずで、この関係式から角速度 \(\omega\) や角度 \(\theta\) の間の関係を導くことができます。

解答 (3) \(mg\tan\theta\), \(mL\omega^2\sin\theta\)

問(4)

思考の道筋とポイント
遠心力の大きさと向きを求める問題です。遠心力は回転系で導入される見かけの力で、その大きさは向心力と等しく、向きは逆(中心から遠ざかる向き)です。
この設問における重要なポイント

  • 遠心力の大きさ = 向心力の大きさ (\(f = F\))
  • 遠心力の公式: \(f = mr\omega^2\)
  • 遠心力の向き: 円運動の中心から遠ざかる向き。

具体的な解説と立式
遠心力の大きさ \(f\) は、向心力の大きさと等しく、公式 \(f=mr\omega^2\) で与えられます。
(3)で求めた向心力の \(m, L, \theta, \omega\) を用いた表現が、そのまま遠心力の大きさの計算に使えます。
円運動の半径 \(r\) は \(r = L\sin\theta\) なので、
$$ f = m(L\sin\theta)\omega^2 $$
遠心力の向きは、定義により、円運動の中心Oから遠ざかる向き(半径方向外向き)です。

使用した物理公式

  • 遠心力: \(f = mr\omega^2\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
f &= m(L\sin\theta)\omega^2 \\[2.0ex]&= mL\omega^2\sin\theta
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

「遠心力」は、(3)で求めた「向心力」と、大きさが同じで向きが正反対の、双子のような力です。したがって、(3)で求めた \(mL\omega^2\sin\theta\) という式がそのまま使えます。向きは、向心力が中心に「向かう」のに対し、遠心力は中心から「遠ざかる」向きです。

結論と吟味

遠心力の大きさは \(mL\omega^2\sin\theta\) で、向きは円運動の中心Oから遠ざかる向きです。この力は、(2)で考えた回転系での力のつりあい(張力の水平成分と遠心力がつりあう)を考える際に用いられます。結果は定義通りで妥当です。

解答 (4) \(mL\omega^2\sin\theta\), 円運動の中心Oから遠ざかる向き

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 円運動の2つの視点(静止系と回転系):
    • 核心: 同じ円運動という現象を、「静止した外部観測者(地上)」の視点と、「運動している当事者(おもり)」の視点という、2つの異なる立場で記述できることを理解するのが最も重要です。
    • 理解のポイント:
      • 静止系(慣性系): ニュートンの運動方程式 \(ma=F\) がそのまま成り立つ。円運動では、加速度 \(a\) が向心加速度 \(a=r\omega^2\) であり、力 \(F\) は中心向きの合力(向心力)である。
      • 回転系(非慣性系): 観測者自身が加速しているため、ニュートンの法則を適用するには「見かけの力(慣性力)」を導入する必要がある。円運動の場合、それが「遠心力」であり、導入することで力のつりあい \(\sum \vec{F} = 0\) として扱える。
  • 向心力と遠心力の関係:
    • 核心: 向心力は「実在する力の合力」であり、遠心力は「回転系で導入される見かけの力」であるという本質的な違いを理解すること。
    • 理解のポイント: 両者は表裏一体の関係にあり、大きさは常に等しく (\(mr\omega^2\))、向きは正反対。どちらの概念を使うかは、どの視点(静止系か回転系か)で問題を解くかによって決まる。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 回転する円盤上の物体: 円盤と一緒に回転する物体にはたらく静止摩擦力が向心力の役割を果たす。角速度を上げていくと、最大静止摩擦力を超えた瞬間に滑り出す、という問題。
    • 水平面内でのばね付き円運動: ばねの弾性力が向心力の役割を果たす。ばねの自然長からの伸びと角速度の関係を問う問題。
    • 最速のカーブ: 自動車がカーブを曲がる際の向心力は、タイヤと路面の間の静止摩擦力。安全に曲がれる最大の速さを求める問題。バンク角のあるカーブでは、重力と垂直抗力の合力も向心力の一部を担う。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 視点を決める: まず、静止系で解くか、回転系で解くかの方針を決める。問題が「力のつりあい」を問いかけているように見えれば回転系、「運動方程式」を立てるのが自然なら静止系が考えやすい。両方の視点で解けるように練習するのが理想。
    2. 力をすべてリストアップする: 決めた視点に従って、物体にはたらく力をすべて描き出す。静止系なら実在の力のみ、回転系なら実在の力+遠心力。
    3. 座標軸を設定し、力を分解する: 円運動の中心を通る水平方向と、それに垂直な鉛直方向に軸を設定し、斜めを向いた力をすべて成分分解する。これが解析の定石。
    4. 各軸で式を立てる: 鉛直方向は力のつりあい、水平方向は(静止系なら)運動方程式 \(ma_{\text{向心}}=F_{\text{向心}}\)、(回転系なら)力のつりあい \(F_{\text{水平}} = f_{\text{遠心}}\) を立てる。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 向心力と遠心力の混同:
    • 誤解: 静止系で考えるべき場面で、実在の力に加えて向心力や遠心力を余計に描き込んでしまう。
    • 対策: 「向心力」は力の“愛称”あるいは“役割名”であり、力の種類ではないと理解する。「重力」「張力」「摩擦力」などが力の種類であり、それらの合力がたまたま「向心力」という役割を果たしている、と考える。遠心力は回転系で考えるときだけ登場する特別な力、と区別する。
  • 円運動の半径 \(r\) の間違い:
    • 誤解: (3)や(4)で、向心力や遠心力の公式 \(mr\omega^2\) の \(r\) に、糸の長さ \(L\) をそのまま代入してしまう。
    • 対策: \(r\) は常に「円運動の回転半径」であると強く意識する。問題の図をよく見て、物体がどの平面で、中心がどこで、半径がいくらの円を描いているかを正確に把握する。この問題では、水平面内での運動なので、半径は \(L\sin\theta\) となる。
  • 力の分解ミス:
    • 誤解: 張力 \(T\) を分解する際に、水平成分を \(T\cos\theta\)、鉛直成分を \(T\sin\theta\) と、\(\sin\) と \(\cos\) を逆にしてしまう。
    • 対策: 角度 \(\theta\) がどちらの軸となす角かを図でしっかり確認する。「\(\theta\) を挟む辺が \(\cos\theta\)」と覚えておくとミスが減る。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 運動方程式 (\(ma=F\)):
    • 選定理由: (3)で静止系の立場から向心力を求めるため。物理現象を力の原因と結果(加速度)で結びつける、力学の基本法則。
    • 適用根拠: 静止系(慣性系)では、この法則が普遍的に成り立つ。向心加速度 \(a=r\omega^2\) を代入することで、円運動に特化した形 \(mr\omega^2=F\) となる。
  • 力のつりあいの式 (\(\sum \vec{F}=0\)):
    • 選定理由: (3)の鉛直方向の力の関係や、(2),(4)の回転系の立場での解析に用いる。
    • 適用根拠: 物体が静止している、あるいは等速直線運動している場合(慣性系)、または見かけの力(慣性力)を導入して静止しているとみなせる場合(非慣性系)に適用できる。
  • 遠心力の公式 (\(f=mr\omega^2\)):
    • 選定理由: (4)で遠心力の大きさを計算するため。また、(2)の回転系での思考に必要。
    • 適用根拠: これは定義式。回転系という特殊な状況で運動を記述するために、数学的に導入された「見かけの力」の大きさを表す。その大きさは、静止系で考えたときの向心力と一致するように定義されている。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式のまま計算を進める: この問題のように、具体的な数値が与えられていない場合は、最後まで文字式のまま計算を進める。途中で値を代入する必要がないため、計算ミスが起こりにくい。
  • 三角関数の関係式を使いこなす: (3)で \(F=T\sin\theta\) と \(T\cos\theta=mg\) から \(T\) を消去して \(F=mg\tan\theta\) を導くなど、三角関数の基本的な関係(\(\tan\theta = \sin\theta/\cos\theta\))をスムーズに使えるようにしておく。
  • 次元(単位)の確認: 例えば(3)で求めた \(mg\tan\theta\) と \(mL\omega^2\sin\theta\) は、どちらも力の次元(\([\text{M}][\text{L}][\text{T}]^{-2}\))を持っているはず。\(mg\) は力、\(\tan\theta\) は無次元。\(m\) は質量、\(L\) は長さ、\(\omega\) は \(1/\text{時間}\) なので、\(mL\omega^2\) は \(m \cdot L \cdot (1/T)^2\) となり、力の次元と一致する。このように次元を確認することで、大きな間違いを防げる。

例題32 慣性力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「慣性力」です。加速度運動する台の上にある物体が、台から見て静止している状況を扱います。この現象は、静止系(地上)と加速系(台)のどちらの視点からも解析できますが、模範解答では加速系(台の上)の視点から、見かけの力である「慣性力」を用いて解いています。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 慣性力: 加速度 \(a\) で運動する観測者(非慣性系)から物体を見ると、物体には実際にはたらく力に加えて、加速度と逆向きに大きさ \(ma\) の「慣性力」がはたらいているように見える。
  2. 非慣性系での力のつりあい: 慣性力を導入することで、非慣性系にいる観測者から見て静止している物体については、力のつりあいの式を立てることができる。
  3. 力の分解: 力を適切な方向に分解することが解析の鍵となる。この問題では、水平・鉛直方向に分解する方法が有効です。
  4. 作用・反作用の法則: (2)で問われている「BがAから受ける力」は、AがBから受ける力(垂直抗力)の反作用ですが、大きさは等しくなります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 台Aとともに運動する観測者の視点に立つ。
  2. 小物体Bにはたらく力(重力、垂直抗力)と、見かけの力(慣性力)を描き出す。
  3. Bは斜面上で静止しているので、これらの力がつりあっているとして、水平方向と鉛直方向の力のつりあいの式を立てる。
  4. 連立方程式を解いて、(1)加速度 \(a\) と (2)垂直抗力 \(N\) を求める。

問(1)

思考の道筋とポイント
台Aが加速度 \(a\) で運動することで、小物体Bが斜面を滑り落ちずに静止する、そのときの加速度 \(a\) を求める問題です。台Aと一緒に運動する観測者の立場(加速系)で考えると、Bは静止しているので「力のつりあい」の問題として扱えます。このとき、見かけの力である「慣性力」を忘れずに加えることが重要です。
この設問における重要なポイント

  • 観測者を台Aの上(加速系)に置く。
  • 小物体Bにはたらく力は「重力」「垂直抗力」「慣性力」の3つ。
  • 慣性力の向きは台の加速度と逆向き(右向き)、大きさは \(ma\)。
  • Bは静止しているので、この3つの力がつりあっている。
  • 力を水平・鉛直方向に分解し、それぞれの方向でつりあいの式を立てる。

具体的な解説と立式
台Aとともに運動する観測者から見ると、小物体Bは静止しています。Bにはたらく力は以下の3つです。

  1. 重力: 鉛直下向きに大きさ \(mg\)。
  2. 垂直抗力: 斜面に垂直な向きに大きさ \(N\)。
  3. 慣性力: 台の加速度(左向き)と逆向き、つまり水平右向きに大きさ \(ma\)。

これらの3力がつりあっているので、合力は0です。力を水平方向と鉛直方向に分解して、つりあいの式を立てます。

鉛直方向の力のつりあい:
垂直抗力 \(N\) の鉛直成分 \(N\cos\theta\) が、重力 \(mg\) とつりあっています。
$$ N\cos\theta – mg = 0 \quad \cdots ① $$

水平方向の力のつりあい:
垂直抗力 \(N\) の水平成分 \(N\sin\theta\) が、慣性力 \(ma\) とつりあっています。
$$ N\sin\theta – ma = 0 \quad \cdots ② $$

この2つの式を連立して \(a\) を求めます。

使用した物理公式

  • 慣性力: \(F_{\text{慣性}} = ma\)
  • 力のつりあい: \(\sum \vec{F} = 0\)
計算過程

①式より、\(N\) を求めます。
$$ N = \frac{mg}{\cos\theta} $$
これを②式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\left( \frac{mg}{\cos\theta} \right) \sin\theta – ma &= 0 \\[2.0ex]mg \frac{\sin\theta}{\cos\theta} &= ma \\[2.0ex]mg\tan\theta &= ma
\end{aligned}
$$
両辺の \(m\) を消去して、\(a\) について解きます。
$$ a = g\tan\theta $$

計算方法の平易な説明

電車が急発進すると、乗客は進行方向と逆向きに押されるような力を感じます。これが慣性力です。この問題でも、台Aが左に加速するので、小物体Bは右向きに慣性力を受けます。この慣性力による「右向きに押す効果」と、重力による「斜面を滑り落ちようとする効果」が、垂直抗力によってうまくバランスされると、Bは斜面上で静止できます。この力のバランスを数式(つりあいの式)にして解くことで、ちょうどよくバランスが取れる加速度の大きさがわかります。

結論と吟味

加速度の大きさは \(a = g\tan\theta\) です。この結果は、\(\theta\) が大きい(傾斜が急な)ほど、Bを静止させるためにより大きな加速度 \(a\) が必要になることを示しており、直感と一致します。

解答 (1) \(g\tan\theta\)

問(2)

思考の道筋とポイント
小物体Bが台Aから受ける力の大きさを求める問題です。この力は、Bにはたらく「垂直抗力」 \(N\) のことです。(厳密には、BがAから受ける力は垂直抗力であり、AがBから受ける力はその反作用ですが、作用・反作用の法則により大きさは等しいです。)(1)で立てた力のつりあいの式を使えば、簡単に求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • BがAから受ける力は、垂直抗力 \(N\) である。
  • (1)で立てた力のつりあいの式①(鉛直方向)を利用するのが最も簡単。

具体的な解説と立式
(1)で立てた鉛直方向の力のつりあいの式を再掲します。
$$ N\cos\theta – mg = 0 \quad \cdots ① $$
この式を \(N\) について解くことで、BがAから受ける力(垂直抗力)の大きさが求まります。

使用した物理公式

  • 力のつりあい: \(\sum \vec{F} = 0\)
計算過程

①式を \(N\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
N\cos\theta &= mg \\[2.0ex]N &= \frac{mg}{\cos\theta}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(1)で力のバランスを考えるときに、「上下方向の力のつりあい」と「左右方向の力のつりあい」の2つの式を立てました。そのうち、「上下方向のつりあい」の式(\(N\cos\theta = mg\))を見ると、求めたい垂直抗力 \(N\) が含まれています。この式を \(N\) について変形するだけで、答えが求まります。

結論と吟味

BがAから受ける力の大きさは \(\displaystyle\frac{mg}{\cos\theta}\) です。\(N\) は斜面に垂直な力なので、その鉛直成分 \(N\cos\theta\) が重力 \(mg\) を支えている、という物理的な意味が式から読み取れます。\(\theta=0\) のときは \(N=mg\) となり、水平な面での垂直抗力と一致するため、結果は妥当です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{mg}{\cos\theta}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 慣性力:
    • 核心: 加速している座標系(非慣性系)で物体の運動を記述するための架空の力、「慣性力」の概念を正しく理解し、適用できることがこの問題の全てです。
    • 理解のポイント: 慣性力は、観測者が乗っている座標系の加速度 \(\vec{a}\) とは「逆向き」に、大きさ \(m|\vec{a}|\) で作用すると考えます。これを導入することで、加速系の中での現象を、力の「つりあい」という静力学的な問題として単純化して扱うことができます。
  • 2つの座標系(静止系と加速系)の選択:
    • 核心: 一つの物理現象を、静止した地面から見る「静止系(慣性系)」の立場と、加速する台と一緒に動く「加速系(非慣性系)」の立場の両方から分析できる能力。
    • 理解のポイント:
      • 加速系(台の上)から見る: 物体Bは静止して見える。→「重力」「垂直抗力」「慣性力」の3つの力のつりあいを考える。(模範解答のアプローチ)
      • 静止系(地上)から見る: 物体Bは台Aと同じ加速度 \(\vec{a}\) で水平に運動している。→「重力」「垂直抗力」の2つの力の合力が、水平方向に大きさ \(ma\) の力を生み出している、として運動方程式 \(m\vec{a}_{\text{B}} = \vec{F}_{\text{合力}}\) を立てる。

      どちらの視点でも同じ結論に至ることを理解するのが理想的です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 電車内の振り子: 加速する電車内で、振り子が鉛直方向からある角度だけ傾いて静止する問題。慣性力と重力の合力が、張力とつりあうと考えます。
    • エレベーター内の物体: 上下方向に加速するエレベーター内で、体重計が示す値(=垂直抗力)がどう変化するかを問う問題。上昇加速度なら慣性力は下向き、下降加速度なら上向きにはたらきます。
    • 回転する液体: 回転するバケツの中の水面が、中心がへこんだ放物面になる問題。水の一部分に着目すると、重力、圧力、そして遠心力(回転による慣性力)がつりあって、その点での水面の傾きが決まります。
  • 初見の問題での着眼点:
      1. 非慣性系を見抜く: 問題設定に「加速する電車」「エレベーター」「回転する円盤」など、観測者が乗ると慣性力がはたらくであろう「加速する乗り物」が登場したら、慣性力の利用を考えます。
      2. 視点を明確にする: 「〜から見て静止した」という記述があれば、その「〜」の視点(非慣性系)で考えるのが素直な解法です。まず、その視点に立って物体にはたらく力をすべて(慣性力も含めて)描き出します。

    1. 座標軸の選択: 力を分解する際の座標軸は、必ずしも斜面に平行・垂直である必要はありません。この問題のように、水平・鉛直方向に軸をとった方が、重力や慣性力の分解が不要になり、計算が楽になる場合が多いです。どちらの軸が有利かを見極めるのがポイントです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 慣性力の向きの間違い:
    • 誤解: 慣性力の向きを、台の加速度と同じ向き(左向き)にしてしまう。
    • 対策: 慣性力は「加速度とは必ず逆向き」と徹底して覚える。電車が右に発進すれば体は左に、右にカーブすれば体は左に、という日常体験と結びつけると忘れにくくなります。
  • 力の描き忘れ・余計な力の追加:
    • 誤解: 非慣性系で考えているのに慣性力を描き忘れる。あるいは、静止系で考えているのに慣性力を描き込んでしまう。
    • 対策: 最初に「どの視点で解くか」を宣言し、自分の中で明確にすること。
      • 「台の上から見る!」と決めたら→「実在の力+慣性力でつりあい」
      • 「地上から見る!」と決めたら→「実在の力のみで運動方程式」

      という思考の型を確立する。

  • 力の分解のミス:
    • 誤解: 垂直抗力 \(N\) を水平・鉛直に分解する際、角度 \(\theta\) の位置を取り違えて \(\sin\) と \(\cos\) を逆にする。
    • 対策: 図の中に錯角や同位角を使って角度 \(\theta\) を書き込み、「\(\theta\) を挟む辺が \(\cos\theta\)」のルールを適用する。この問題では、垂直抗力と鉛直線のなす角が \(\theta\) になることを図から正確に読み取ることが重要。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 慣性力の公式 (\(F_{\text{慣性}} = ma\)):
    • 選定理由: 加速系という特殊な状況で、力のつりあいを成り立たせるために導入された「見かけの力」の大きさを計算するため。
    • 適用根拠: これは慣性力の定義そのものです。この力を導入することによってのみ、非慣性系でニュートンの法則に似た形式(力のつりあい)が適用可能になります。
  • 力のつりあいの式 (\(\sum \vec{F} = 0\)):
    • 選定理由: 非慣性系(台の上)から見ると、物体Bは「静止」しているから。
    • 適用根拠: 物体が静止しているように見える系では、慣性力を含めたすべての力のベクトル和は0になる、という法則に基づきます。これにより、動的な問題(加速度運動)を静的な問題(力のつりあい)に変換して解くことができます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 連立方程式の解法: (1)では、①式 \(N\cos\theta = mg\) と ②式 \(N\sin\theta = ma\) を解きます。模範解答のように①から \(N\) を求めて②に代入する方法の他に、「②式 ÷ ①式」を実行する方法もあります。
    $$
    \begin{aligned}
    \frac{N\sin\theta}{N\cos\theta} &= \frac{ma}{mg} \\[2.0ex]\tan\theta &= \frac{a}{g} \\[2.0ex]a &= g\tan\theta
    \end{aligned}
    $$
    この方法だと、\(N\) を経由せずに直接 \(a\) が求まり、計算が速く、ミスも減らせます。
  • 文字の確認: \(m, g, \theta, a, N\) など、多くの文字が登場します。どの文字が既知で、どの文字を求めたいのかを常に意識する。特に、(1)では \(a\) を \(g, \theta\) で、(2)では \(N\) を \(m, g, \theta\) で表すよう指示されているので、答えに不要な文字(例えば(1)の答えに \(N\))が含まれていないかを確認する。

例題33 鉛直面内での円運動

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「鉛直面内での円運動」です。重力の影響を受けながら円運動する物体の速さと、面から受ける垂直抗力を求める問題で、力学的エネルギー保存則と円運動の運動方程式(または力のつりあい)を組み合わせて解くのが定石です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力学的エネルギー保存則: 動摩擦力や空気抵抗など、非保存力が仕事をしない場合、運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定に保たれます。この問題では、なめらかな面を運動するため、力学的エネルギーは保存されます。
  2. 円運動の運動方程式(静止系): 物体にはたらく力の合力が、円運動の中心を向く向心力の役割を果たします。運動方程式 \(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\) を立てます。
  3. 円運動の力のつりあい(回転系): 物体と一緒に回転する観測者から見ると、物体にはたらく実在の力と、見かけの力である遠心力の合力が0になります(力のつりあい)。
  4. 円運動を続ける条件: 物体が円軌道から離れないためには、常に軌道に押し付けられる力、すなわち垂直抗力(または糸の張力)が0以上である必要があります (\(N \ge 0\))。最高点Bを通過するためには、この条件が最高点で満たされる必要があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、まず最下点Aと点Cの間で力学的エネルギー保存則を立てて、点Cでの速さ \(v\) を求めます。次に、点Cにおいて円運動の運動方程式を立て、求めた速さ \(v\) を用いて垂直抗力 \(N\) を計算します。
  2. (2)では、(1)で求めた垂直抗力 \(N\) の式に、最高点Bの条件(\(\theta=0\))を代入し、\(N \ge 0\) となる \(v_0\) の条件を求めます。

問(1)

思考の道筋とポイント
小物体が点Cを通過するときの「速さ」と「垂直抗力」を求めます。速さはエネルギー保存則から、垂直抗力は運動方程式から求めるのが典型的な流れです。

  1. 速さの計算: なめらかな面を運動するので、力学的エネルギーは保存されます。最下点Aを位置エネルギーの基準とし、点Aと点Cでの力学的エネルギーが等しいという式を立てます。
  2. 垂直抗力の計算: 点Cで小物体にはたらく力を考え、円運動の中心方向について運動方程式を立てます。このとき、重力を円の半径方向と接線方向に分解することがポイントです。

この設問における重要なポイント

  • エネルギー保存則: \((\text{運動エネルギー}) + (\text{位置エネルギー}) = \text{一定}\)。
  • 位置エネルギーの計算: 点Cの高さは、最下点Aを基準として \(h = r + r\cos\theta = r(1+\cos\theta)\) となる。
  • 運動方程式: \(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\)。向心力 \(F_{\text{向心}}\) は、この場合「垂直抗力」と「重力の半径方向成分」の合力である。

具体的な解説と立式

速さ \(v\) の導出(力学的エネルギー保存則)
最下点Aを位置エネルギーの基準(高さ0)とします。
点Aでの力学的エネルギー \(E_{\text{A}}\) は、
$$ E_{\text{A}} = \frac{1}{2}mv_0^2 + 0 $$
点Cの高さ \(h_{\text{C}}\) は \(r+r\cos\theta\) なので、点Cでの力学的エネルギー \(E_{\text{C}}\) は、
$$ E_{\text{C}} = \frac{1}{2}mv^2 + mg(r+r\cos\theta) $$
\(E_{\text{A}} = E_{\text{C}}\) より、
$$ \frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}mv^2 + mg(r+r\cos\theta) $$
この式を \(v\) について解きます。

垂直抗力 \(N\) の導出(運動方程式)
点Cにおいて、小物体にはたらく力は重力 \(mg\) と垂直抗力 \(N\) です。円の中心方向を正として、半径方向の運動方程式を立てます。
中心方向にはたらく力は、垂直抗力 \(N\) と、重力の半径方向成分 \(mg\cos\theta\) です。これらが向心力となります。
$$ m\frac{v^2}{r} = N + mg\cos\theta $$
この式を \(N\) について解き、先ほど求めた \(v^2\) の関係式を代入します。

別解: 回転系での力のつりあい

思考の道筋とポイント
小物体と一緒に円運動する観測者の視点(回転系)で考えます。この観測者から見ると、小物体にはたらく半径方向の力はつりあっています。このとき、見かけの力である「遠心力」を考慮します。
具体的な解説と立式
小物体にはたらく半径方向の力は、中心向きに「垂直抗力 \(N\)」と「重力の成分 \(mg\cos\theta\)」、中心から遠ざかる向きに「遠心力 \(m\frac{v^2}{r}\)」です。これらの力がつりあっているので、
$$ N + mg\cos\theta – m\frac{v^2}{r} = 0 $$
この式は、静止系で立てた運動方程式と全く同じ形であり、以降の計算も同じになります。

使用した物理公式

  • 力学的エネルギー保存則: \(\frac{1}{2}mv_1^2 + mgh_1 = \frac{1}{2}mv_2^2 + mgh_2\)
  • 円運動の運動方程式: \(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\)
  • 遠心力: \(f = m\frac{v^2}{r}\)
計算過程

速さ \(v\) の計算:
エネルギー保存則の式を2倍して \(m\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
v_0^2 &= v^2 + 2g(r+r\cos\theta) \\[2.0ex]v^2 &= v_0^2 – 2gr(1+\cos\theta) \\[2.0ex]v &= \sqrt{v_0^2 – 2gr(1+\cos\theta)}
\end{aligned}
$$

垂直抗力 \(N\) の計算:
運動方程式 \(m\frac{v^2}{r} = N + mg\cos\theta\) を \(N\) について解きます。
$$ N = m\frac{v^2}{r} – mg\cos\theta $$
この式に、上で求めた \(v^2 = v_0^2 – 2gr(1+\cos\theta)\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
N &= m\frac{v_0^2 – 2gr(1+\cos\theta)}{r} – mg\cos\theta \\[2.0ex]&= \frac{mv_0^2}{r} – \frac{m}{r} \cdot 2gr(1+\cos\theta) – mg\cos\theta \\[2.0ex]&= \frac{mv_0^2}{r} – 2mg(1+\cos\theta) – mg\cos\theta \\[2.0ex]&= \frac{mv_0^2}{r} – 2mg – 2mg\cos\theta – mg\cos\theta \\[2.0ex]&= \frac{mv_0^2}{r} – mg(2 + 3\cos\theta)
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

(1)は2段階で考えます。まず、速さを求めます。物体は位置が高くなるほど位置エネルギーが増え、その分だけ運動エネルギー(速さ)が減ります。このエネルギーのやり取りを計算するのが「力学的エネルギー保存則」です。次に、垂直抗力を求めます。円運動をするためには、物体を円の中心に引き留めておく「向心力」が必要です。この向心力は、この場所では「垂直抗力」と「重力の一部」が協力して作っています。この関係を「運動方程式」という形で書き、先ほど求めた速さを使って計算すると、垂直抗力の大きさがわかります。

結論と吟味

点Cでの速さは \(\sqrt{v_0^2 – 2gr(1+\cos\theta)}\)、垂直抗力の大きさは \(\frac{mv_0^2}{r} – mg(2 + 3\cos\theta)\) です。速さは高さが増すにつれて減少し、垂直抗力は速さと位置の両方に依存することがわかります。

解答 (1) 速さ: \(\sqrt{v_0^2 – 2gr(1+\cos\theta)}\) [m/s], 垂直抗力: \(\displaystyle\frac{mv_0^2}{r} – mg(2 + 3\cos\theta)\) [N]

問(2)

思考の道筋とポイント
小物体が円筒面の最高点Bを通過するための、初速度 \(v_0\) の条件を求める問題です。物体が円軌道から離れずに最高点まで到達するためには、最高点Bで面から離れていない、すなわち「垂直抗力 \(N\) が0以上」である必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 物体が面から離れない条件は、垂直抗力 \(N \ge 0\)。
  • 最高点Bを通過するためには、最高点Bにおいて \(N \ge 0\) が成り立てばよい。
  • 最高点Bは、角度 \(\theta\) での位置表現では \(\theta=0\) に相当する。

具体的な解説と立式
小物体が最高点Bを通過するための条件は、点Bにおいて垂直抗力 \(N_{\text{B}}\) が0以上であることです。
$$ N_{\text{B}} \ge 0 $$
(1)で求めた垂直抗力 \(N\) の式に、点Bの条件である \(\theta=0\) を代入します。
\(\cos0 = 1\) なので、
$$ N_{\text{B}} = \frac{mv_0^2}{r} – mg(2 + 3\cos0) = \frac{mv_0^2}{r} – mg(2 + 3) = \frac{mv_0^2}{r} – 5mg $$
したがって、求める条件は、
$$ \frac{mv_0^2}{r} – 5mg \ge 0 $$
この不等式を \(v_0\) について解きます。

(補足)
模範解答では、点Bでの速さ \(v_{\text{B}} > 0\) という条件も考慮していますが、\(N_{\text{B}} \ge 0\) の条件が満たされれば、エネルギー保存則から \(v_{\text{B}}^2 = v_0^2 – 4gr \ge gr > 0\) となり、速さが0より大きい条件は自動的に満たされます。したがって、\(N_{\text{B}} \ge 0\) のみが本質的な条件となります。

使用した物理公式

  • 垂直抗力の式((1)の結果を利用)
  • 面から離れない条件: \(N \ge 0\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\frac{mv_0^2}{r} – 5mg &\ge 0 \\[2.0ex]\frac{mv_0^2}{r} &\ge 5mg \\[2.0ex]v_0^2 &\ge 5gr \\[2.0ex]v_0 &\ge \sqrt{5gr}
\end{aligned}
$$
(\(v_0 > 0\) なので、2乗を外す際に不等号の向きはそのままです。)

計算方法の平易な説明

ジェットコースターがループの頂点で逆さまになっても落ちないための条件を考えるのと同じです。頂点で、遠心力が重力に打ち勝つ(あるいはちょうどつりあう)必要があります。この「遠心力が重力に勝つ」という条件が、物理的には「垂直抗力が0以上」という条件に対応します。(1)で求めた垂直抗力の式に、頂点での条件を入れて、この不等式を解くことで、頂点を無事に通過できるための最低限の初速がわかります。

結論と吟味

小物体が点Bを通過するための条件は \(v_0 \ge \sqrt{5gr}\) です。これは鉛直面内の円運動で最高点を通過するための条件としてよく知られた結果であり、妥当です。このときの \(v_0 = \sqrt{5gr}\) を与えると、最高点Bでの速さは \(v_{\text{B}} = \sqrt{gr}\)、垂直抗力は \(N_{\text{B}}=0\) となります。

解答 (2) \(v_0 \ge \sqrt{5gr}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 力学的エネルギー保存則と運動方程式の連携:
    • 核心: 鉛直面内の円運動のように、速さと位置が変化する運動を解くための王道パターンは、「①エネルギー保存則で任意の点での速さを求める」→「②運動方程式でその点での力を求める」という2段階のプロセスです。この連携をスムーズに行えることが最重要です。
    • 理解のポイント: エネルギー保存則は運動の「途中経過」を飛ばして2点間の速さと高さの関係を与えてくれます。一方、運動方程式はその「瞬間」における力の関係を記述します。この2つは役割が異なり、両方を組み合わせることで問題の全体像が解明されます。
  • 円運動を継続する条件:
    • 核心: 物体が円軌道から離れずに運動を続けるためには、常に円の中心方向に押し付けられる力、すなわち「向心力の一部を担う接触力(この問題では垂直抗力、糸の場合は張力)が0以上である」という条件 (\(N \ge 0\) または \(T \ge 0\)) を理解し、適用できること。
    • 理解のポイント: 垂直抗力や張力が負になることは物理的にありえません。もし計算上、\(N<0\) となる状況があれば、それは「物体はすでに面から離れて放物運動に移っている」ことを意味します。したがって、\(N=0\) となる瞬間が、面から離れるか離れないかの境界点となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 糸で吊るされたおもりの鉛直円運動: 基本的な考え方は全く同じ。垂直抗力 \(N\) が糸の張力 \(T\) に置き換わるだけです。最高点を通過する条件は \(T \ge 0\)。
    • 半円筒面を滑り落ちる物体: 最高点からスタートし、どの角度で面から離れるかを問う問題。面から離れる瞬間は \(N=0\) なので、(1)で求めた \(N\) の式に \(N=0\) を代入し、そのときの角度 \(\theta\) を求めます。
    • ジェットコースターのループ: この問題と全く同じモデルです。乗客が座席から浮き上がらない条件は、座席からの垂直抗力が0以上であることです。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. エネルギー保存則が使えるか判断: まず「仕事をする非保存力(摩擦力、空気抵抗など)」がないかを確認します。なければ、力学的エネルギー保存則が強力な武器になります。
    2. 位置エネルギーの基準点を決める: 計算が最も楽になるように、運動の最下点などを基準(高さ0)に設定します。
    3. 任意の点での力の作図と運動方程式: 円運動上の任意の点(角度 \(\theta\) の位置)で、物体にはたらく力をすべて描き、円の半径方向と接線方向に分解します。半径方向について運動方程式(または遠心力を含めた力のつりあい)を立てるのが定石です。
    4. 「面から離れる」「糸がたるむ」条件: これらのキーワードが出てきたら、即座に「\(N=0\)」「\(T=0\)」の条件式を立てる準備をします。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 位置エネルギーの高さの計算ミス:
    • 誤解: (1)で点Cの高さを \(r\cos\theta\) や \(r-r\cos\theta\) などと間違えてしまう。
    • 対策: 必ず図を描き、基準点(最下点A)からどれだけの高さにあるかを幾何学的に正確に求める。この問題では、中心Oまでの高さ \(r\) と、中心Oから点Cまでの鉛直距離 \(r\cos\theta\) の和になることを確認する。
  • 向心力の式の誤り:
    • 誤解: 運動方程式を立てる際に、向心力 \(F_{\text{向心}}\) を \(N\) だけであったり、\(mg\cos\theta\) だけであったりと、一部の力しか考慮しない。
    • 対策: 向心力は「半径方向の力の“合力”」であると常に意識する。中心向きの力を正、遠ざかる向きの力を負として、半径方向の力をすべて足し合わせたものが向心力になります。(\(F_{\text{向心}} = N + mg\cos\theta\))
  • 最高点を通過する条件の誤解:
    • 誤解: (2)で、最高点を通過する条件を「最高点での速さが0以上 (\(v_{\text{B}} \ge 0\))」としてしまう。
    • 対策: 速さが0になる前に面から離れてしまう(\(N=0\) になる)可能性があることを理解する。円運動を続けるためのより厳しい条件は \(N \ge 0\) であることを覚える。糸の場合も同様で、\(T \ge 0\) が条件です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 力学的エネルギー保存則:
    • 選定理由: (1)で、異なる2点(AとC)での速さの関係を求めるため。重力という保存力のみが仕事をする状況で、速さと高さの関係を知るのに最も効率的な法則だから。
    • 適用根拠: 垂直抗力は常に運動方向と垂直なので仕事をせず、面はなめらかなので摩擦力も仕事をしない。したがって、保存力である重力のみが仕事をするため、力学的エネルギーは保存される。
  • 円運動の運動方程式 (\(m\frac{v^2}{r} = F_{\text{向心}}\)):
    • 選定理由: (1)で、ある点での力の状態(特に垂直抗力)を、その点での速さを使って解析するため。
    • 適用根拠: 物体は円運動という加速度運動をしているため、その運動を引き起こしている力の合力(向心力)との関係を記述する運動方程式が必要となる。
  • \(N \ge 0\) (面から離れない条件):
    • 選定理由: (2)で、円運動が継続できる限界の条件を求めるため。
    • 適用根拠: 垂直抗力は面が物体を押す力であり、引くことはできないという物理的な制約から来ています。この力が0になったときが、物体が面から離れる瞬間に対応します。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • \(v^2\) のまま代入する: (1)の垂直抗力を求める計算で、\(v = \sqrt{\dots}\) の形ではなく、\(v^2 = \dots\) の形のまま運動方程式に代入すると、平方根の計算が不要になり、計算が大幅に楽になる。
  • 分配法則の徹底: \(N\) の計算過程で、\( -2mg(1+\cos\theta) \) のような項を展開する際に、符号ミスや分配漏れがないように注意する。\( -2mg – 2mg\cos\theta \) と、丁寧に展開する癖をつける。
  • 条件の吟味: (2)で \(v_0 \ge \sqrt{5gr}\) という条件を求めたが、模範解答の補足にあるように、\(v_0 > 2\sqrt{gr}\) という条件も同時に満たしているかを確認する習慣をつけると、理解が深まる。\((\sqrt{5gr})^2 = 5gr\) と \((2\sqrt{gr})^2 = 4gr\) を比較すれば、\(v_0 \ge \sqrt{5gr}\) ならば \(v_0 > 2\sqrt{gr}\) は自動的に満たされることがわかり、解答の妥当性が確認できる。
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