「セミナー物理基礎+物理2025」徹底解説!【第 Ⅲ 章 12】基本例題~基本問題291

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基本例題

基本例題38 ボイル・シャルルの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 気体の状態方程式を用いる解法
      • 模範解答が変化前後の関係式であるボイル・シャルルの法則を用いるのに対し、別解ではより根源的な気体の状態方程式 \(pV=nRT\) を用いて解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: ボイル・シャルルの法則が、気体の状態方程式において物質量 \(n\) が一定であるという条件から導かれる、という本質的な理解が深まります。
    • 思考の柔軟性向上: 状態変化の問題に対して、関係式(ボイル・シャルルの法則)で解く方法と、普遍的な法則(状態方程式)で解く方法の両方を身につけることで、応用力が養われます。
    • 解法の選択肢拡大: 状態方程式という一つの法則から様々な熱力学の問題に取り組むことができるようになり、複雑な問題に対応できる引き出しが増えます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「封入された気体の状態変化」です。気体の圧力、体積、温度の関係性を正しく理解し、計算に適用することが目的です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 圧力の定義: 圧力は単位面積あたりに働く力の大きさであり、\(p=F/S\) の関係を理解していること。
  2. ボイル・シャルルの法則: 一定量の気体の圧力 \(p\)、体積 \(V\)、絶対温度 \(T\) の間には、\(\displaystyle\frac{pV}{T} = \text{一定}\) という関係が成り立つことを理解していること。
  3. 絶対温度の理解: 気体の状態を記述する際の温度は、セルシウス温度(摂氏、\(^\circ\text{C}\))ではなく、必ず絶対温度(ケルビン、\(\text{K}\))を用いなければならないこと。変換式 \(T[\text{K}] = t[^\circ\text{C}] + 273\) を正しく使えること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、圧力の定義式 \(p=F/S\) を力の大きさ \(F\) について変形し、与えられた圧力 \(p\) と断面積 \(S\) の値を代入して計算します。
  2. (2)では、変化前の気体の状態(\(p_1, V_1, T_1\))と変化後の状態(\(p_2, V_2, T_2\))について、ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{p_1V_1}{T_1} = \frac{p_2V_2}{T_2}\) を立てます。このとき、温度は必ず絶対温度に変換してから計算し、最後に求められた絶対温度をセルシウス温度に戻します。

問(1)

思考の道筋とポイント
この問題は、圧力の基本的な定義を問うものです。圧力 \(p\) は「単位面積あたりに垂直に働く力の大きさ」と定義されます。したがって、力 \(F\) の大きさは、圧力 \(p\) にその力が働く面積 \(S\) を掛けることで求められます。
この設問における重要なポイント

  • 圧力の定義式 \(p = \displaystyle\frac{F}{S}\) を正しく理解し、変形できる。
  • 各物理量の単位を正しく扱うこと(圧力: \(\text{Pa}\)、力: \(\text{N}\)、面積: \(\text{m}^2\))。

具体的な解説と立式
求める力の大きさを \(F\,\text{[N]}\)、気体の圧力を \(p\,\text{[Pa]}\)、ピストンの断面積を \(S\,\text{[m}^2\text{]}\) とします。
圧力の定義より、これらの間には以下の関係が成り立ちます。
$$ p = \frac{F}{S} $$
この式を \(F\) について解くと、
$$ F = pS $$
となります。

使用した物理公式

  • 圧力の定義: \(p = \displaystyle\frac{F}{S}\)
計算過程

与えられた値を式に代入します。
\(p = 1.0 \times 10^5\,\text{Pa}\)、\(S = 0.25\,\text{m}^2\) なので、
$$
\begin{aligned}
F &= (1.0 \times 10^5) \times 0.25 \\[2.0ex]
&= 2.5 \times 10^4\,\text{N}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

圧力というのは、スポンジを指で押したときのように「狭い面積に力を集中させると強くなる」という性質を表す量で、「\(1\,\text{m}^2\) あたりに何ニュートンの力がかかっているか」を示します。今回は、\(1\,\text{m}^2\) あたり \(1.0 \times 10^5\,\text{N}\) の力がかかる圧力で、ピストンの面積が \(0.25\,\text{m}^2\) です。したがって、ピストン全体が受ける力は、この圧力に面積を掛けてあげれば計算できます。

結論と吟味

気体がピストンを押している力の大きさは \(2.5 \times 10^4\,\text{N}\) と求まりました。これは約 \(2500\,\text{kg}\) の物体にかかる重力に相当する大きな力であり、大気圧がいかに強いかを示唆する妥当な値です。

解答 (1) 力の大きさ: \(2.5 \times 10^4\,\text{N}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
「一定質量の気体を封入した」とあるので、気体の物質量(粒子の数)は変化しません。このような場合、気体の圧力 \(p\)、体積 \(V\)、絶対温度 \(T\) の間には「ボイル・シャルルの法則」が成り立ちます。変化前の状態と変化後の状態で \(\displaystyle\frac{pV}{T}\) の値が等しくなることを利用して、未知の温度を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 温度は必ず絶対温度 \(T\,\text{[K]}\) を用いる。セルシウス温度 \(t\,[^\circ\text{C}]\) との変換式 \(T = t + 273\) を正確に使うこと。
  • 変化前の状態を添字1、変化後の状態を添字2で区別し、ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{p_1V_1}{T_1} = \frac{p_2V_2}{T_2}\) を適用する。

具体的な解説と立式
変化前の気体の状態を \(p_1, V_1, T_1\)、変化後の状態を \(p_2, V_2, T_2\) とします。
与えられた値は以下の通りです。

  • 変化前: \(p_1 = 1.0 \times 10^5\,\text{Pa}\), \(V_1 = 2.0 \times 10^{-3}\,\text{m}^3\), \(t_1 = 27\,^\circ\text{C}\)
  • 変化後: \(p_2 = 2.2 \times 10^5\,\text{Pa}\), \(V_2 = 1.0 \times 10^{-3}\,\text{m}^3\), \(t_2 = ?\,^\circ\text{C}\)

まず、変化前の温度をセルシウス温度から絶対温度に変換します。
$$
\begin{aligned}
T_1 &= 27 + 273 \\[2.0ex]
&= 300\,\text{K}
\end{aligned}
$$
ボイル・シャルルの法則より、以下の関係式が成り立ちます。
$$ \frac{p_1V_1}{T_1} = \frac{p_2V_2}{T_2} $$

使用した物理公式

  • ボイル・シャルルの法則: \(\displaystyle\frac{pV}{T} = \text{一定}\)
  • 絶対温度とセルシウス温度の関係: \(T\,\text{[K]} = t\,[^\circ\text{C}] + 273\)
計算過程

ボイル・シャルルの法則の式に、与えられた値を代入して、変化後の絶対温度 \(T_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{(1.0 \times 10^5) \times (2.0 \times 10^{-3})}{300} &= \frac{(2.2 \times 10^5) \times (1.0 \times 10^{-3})}{T_2} \\[2.0ex]
\frac{2.0 \times 10^2}{300} &= \frac{2.2 \times 10^2}{T_2} \\[2.0ex]
\frac{2}{3} &= \frac{2.2 \times 10^2}{T_2}
\end{aligned}
$$
この式を \(T_2\) について解くと、
$$
\begin{aligned}
2 \times T_2 &= 3 \times (2.2 \times 10^2) \\[2.0ex]
2T_2 &= 6.6 \times 10^2 \\[2.0ex]
T_2 &= 3.3 \times 10^2 \\[2.0ex]
T_2 &= 330\,\text{K}
\end{aligned}
$$
最後に、求めた絶対温度 \(T_2\) をセルシウス温度 \(t_2\) に変換します。
$$
\begin{aligned}
t_2 &= T_2 – 273 \\[2.0ex]
&= 330 – 273 \\[2.0ex]
&= 57\,^\circ\text{C}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

閉じ込めた風船を温めると膨らみ、手で押しつぶすと中の圧力が高まります。このように、気体の「圧力」「体積」「温度」は互いに関係しあっています。その関係をまとめたのが「ボイル・シャルルの法則」です。この法則を使えば、圧力と体積が変化したとき、温度がどうなるかを計算できます。ただし、この法則で使う温度は、普段私たちが使う「摂氏(℃)」ではなく、「絶対温度(K)」という特別な目盛りで計算するのがルールです。計算が終わったら、また摂氏に戻して答えます。

結論と吟味

気体の温度は \(57\,^\circ\text{C}\) と求まりました。気体は体積が半分に圧縮され、圧力も \(2.2\) 倍に増加しています。外部から仕事をされて内部エネルギーが増加した結果、温度が上昇したと考えられ、物理的に妥当な結果です。

解答 (2) 温度: \(57\,^\circ\text{C}\)
別解: 気体の状態方程式を用いる解法

思考の道筋とポイント
気体の状態を表す最も基本的な法則である「気体の状態方程式 \(pV=nRT\)」を利用します。問題文の「一定質量の気体」という記述から、気体の物質量 \(n\) が変化の前後で一定であることを利用します。変化前と変化後のそれぞれの状態で状態方程式を立て、連立させることで未知の温度を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 「一定質量の気体」は「物質量 \(n\) が一定」と読み替える。
  • 気体定数 \(R\) は普遍的な定数である。
  • したがって、\(nR\) の値が状態変化の前後で一定であることに着目する。

具体的な解説と立式
気体の物質量を \(n\,\text{[mol]}\)、気体定数を \(R\,\text{[J/(mol}\cdot\text{K)]}\) とします。
変化前の状態(\(p_1, V_1, T_1\))について、気体の状態方程式は、
$$ p_1V_1 = nRT_1 \quad \cdots ① $$
変化後の状態(\(p_2, V_2, T_2\))について、気体の状態方程式は、
$$ p_2V_2 = nRT_2 \quad \cdots ② $$
気体の量 \(n\) は一定なので、式①と式②から \(nR\) を消去することを考えます。
式①より、
$$ nR = \frac{p_1V_1}{T_1} $$
これを式②に代入すると、
$$ p_2V_2 = \left( \frac{p_1V_1}{T_1} \right) T_2 $$
この式を整理すると、
$$ \frac{p_1V_1}{T_1} = \frac{p_2V_2}{T_2} $$
となり、ボイル・シャルルの法則と全く同じ式が得られます。

使用した物理公式

  • 気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
計算過程

導出した式は主たる解法で用いたボイル・シャルルの法則と同じなので、以降の計算過程は主たる解法と完全に同一です。
まず、変化前の温度を絶対温度に変換します。
\(T_1 = 27 + 273 = 300\,\text{K}\)
次に、値を代入して \(T_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{(1.0 \times 10^5) \times (2.0 \times 10^{-3})}{300} &= \frac{(2.2 \times 10^5) \times (1.0 \times 10^{-3})}{T_2} \\[2.0ex]
T_2 &= 330\,\text{K}
\end{aligned}
$$
最後に、絶対温度をセルシウス温度に変換します。
$$
\begin{aligned}
t_2 &= 330 – 273 \\[2.0ex]
&= 57\,^\circ\text{C}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ボイル・シャルルの法則をもし忘れてしまっても、もっと大元締めである「気体の状態方程式」という公式を使えば解くことができます。この公式は、どんな状態の気体にも使える万能な式です。変化の前と後でそれぞれこの公式を立ててあげます。気体の量は変わっていないので、2つの式を見比べて、いらない部分を消去していくと、自然と答えが求まります。

結論と吟味

主たる解法と完全に同じ結果が得られました。このことから、ボイル・シャルルの法則は、気体の状態方程式において物質量 \(n\) が一定の場合の特別な関係式であることがわかります。状態方程式という、より基本的な法則から問題を解くことで、物理現象への理解が深まります。

解答 (2) 温度: \(57\,^\circ\text{C}\)

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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • ボイル・シャルルの法則の適用
    • 核心: この問題の根幹は、閉じ込められた一定量の気体の状態変化を記述する法則を正しく理解し、適用することです。具体的には、気体の3つの状態量である圧力 \(p\)、体積 \(V\)、絶対温度 \(T\) の間に \(\displaystyle\frac{pV}{T} = \text{一定}\) という関係が成り立つことを利用して、未知の状態量を計算する能力が問われます。
    • 理解のポイント:
      • 法則の適用条件: ボイル・シャルルの法則は、「気体の物質量 \(n\)(粒子の数)が一定」という条件下でのみ成り立ちます。問題文の「一定質量の気体を封入した」という記述が、この法則を使うための合図となります。
      • 絶対温度の使用: 気体の状態を扱う法則では、温度は必ず絶対温度 \(T\,\text{[K]}\) を用いなければなりません。セルシウス温度 \(t\,[^\circ\text{C}]\) をそのまま使うと、正しい計算結果が得られません。\(T = t + 273\) の変換を忘れないことが極めて重要です。
  • 圧力の基本定義
    • 核心: 設問(1)は、圧力という物理量の最も基本的な定義 \(p=F/S\) を理解しているかを問うものです。
    • 理解のポイント:
      • 定義の理解: 圧力は「単位面積あたりの力」です。したがって、ある面積 \(S\) が受ける全体の力 \(F\) は、圧力 \(p\) に面積 \(S\) を掛けることで計算できます(\(F=pS\))。この関係を直感的に理解しておくことが大切です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ピストンとシリンダーの問題: 容器に閉じ込めた気体を加熱したり、ピストンにおもりを乗せて圧力を加えたりする問題。これらはすべて、気体の状態変化としてボイル・シャルルの法則や状態方程式で解析できます。
    • 連結された容器の問題: コックで仕切られた2つの容器があり、コックを開いて気体を混合させる問題。この場合、混合前後の気体の物質量の和が保存されること(\(n_{\text{全体}} = n_1 + n_2\))と、最終的な圧力と温度が均一になることを利用して、状態方程式を立てて解きます。
    • 水没したシャボン玉や気泡の問題: 水中で気泡が上昇するにつれて、水圧が下がるため気泡の体積が膨張する問題。水深 \(h\) での水圧 \(p = p_0 + \rho gh\) を考慮して、各深度での気体の状態をボイル・シャルルの法則で結びつけます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 気体の量は一定か?: まず問題文を読み、「気体を封入した」「ピストンで閉じ込めた」など、気体の出入りがない(物質量 \(n\) が一定)ことを確認します。もしそうであれば、ボイル・シャルルの法則が適用の第一候補となります。
    2. どの状態量が変化し、どれが一定か?: 圧力、体積、温度のうち、どの量が変化し、どの量が一定に保たれているか(あるいは未知数か)を整理します。
      • 温度が一定なら「ボイルの法則」(\(pV = \text{一定}\))
      • 圧力が一定なら「シャルルの法則」(\(\displaystyle\frac{V}{T} = \text{一定}\))
      • 全てが変化するなら「ボイル・シャルルの法則」(\(\displaystyle\frac{pV}{T} = \text{一定}\))
    3. 温度の単位は何か?: 問題文で与えられている温度がセルシウス温度(\(^\circ\text{C}\))であれば、計算を始める前に必ず絶対温度(\(\text{K}\))に変換します。これは熱力学の問題を解く上での鉄則です。
    4. 状態方程式は使えないか?: ボイル・シャルルの法則は便利ですが、気体の状態方程式 \(pV=nRT\) の特別な場合に過ぎません。物質量 \(n\) が関わる問題や、法則を忘れてしまった場合には、より根源的な状態方程式から考えるのが確実なアプローチです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • セルシウス温度をそのまま使ってしまう:
    • 誤解: 温度の計算で、与えられた \(27\,^\circ\text{C}\) をそのまま式の \(T\) に代入してしまう。
    • 対策: 「気体の法則では、温度は必ず絶対温度(ケルビン)を使う」と強く意識しましょう。問題文に \(^\circ\text{C}\) が出てきたら、すぐに \(+273\) して \(\text{K}\) に変換する癖をつけることが最も効果的です。なぜなら、気体の圧力や体積は、分子の熱運動の激しさ(絶対温度)に比例するからです。セルシウス温度は \(0\) 度やマイナスの値をとりますが、熱運動が \(0\) になるわけではないため、物理的な基準点として不適切なのです。
  • ボイルの法則とシャルルの法則の混同:
    • 誤解: 圧力が一定のときに \(pV=\text{一定}\) を使ったり、温度が一定のときに \(\displaystyle\frac{V}{T}=\text{一定}\) を使ったりする。
    • 対策: 法則を丸暗記するのではなく、物理的なイメージと結びつけましょう。
      • ボイルの法則 (\(T\) 一定): 温度が同じなら、気体を押し縮める(\(V\) を小さくする)と、分子が壁に衝突する頻度が増えるので圧力 \(p\) は大きくなる。→ \(p\) と \(V\) は反比例の関係。
      • シャルルの法則 (\(p\) 一定): 圧力を同じに保つなら、気体を温める(\(T\) を大きくする)と、分子の運動が激しくなり体積 \(V\) は膨張する。→ \(V\) と \(T\) は比例の関係。
      • この2つを組み合わせたものがボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{pV}{T}=\text{一定}\) であると理解すれば、混同しにくくなります。
  • 圧力の単位換算ミス:
    • 誤解: 問題によっては、圧力が \(\text{atm}\)(気圧)や \(\text{mmHg}\) で与えられることがあります。これを \(\text{Pa}\)(パスカル)に変換せずに計算してしまう。
    • 対策: 物理計算の基本単位(SI単位系)は、力は \(\text{N}\)、面積は \(\text{m}^2\)、圧力は \(\text{Pa}\) です。設問(1)のように力を求める場合は、必ず圧力の単位を \(\text{Pa}\) に揃えてから計算する必要があります。ただし、設問(2)のように比の関係式(ボイル・シャルルの法則)を使う場合は、\(p_1\) と \(p_2\) の単位が同じであれば、単位換算しなくても結果的に約分されるため計算は可能です。しかし、常にSI単位系に統一する癖をつけておくのが最も安全です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • (1)での公式選択(圧力の定義式):
    • 選定理由: 求めたいのは「力 \(F\)」であり、与えられているのは「圧力 \(p\)」と「面積 \(S\)」です。これら3つの物理量を直接結びつける関係式は、圧力の定義式 \(p=F/S\) しかありません。したがって、この公式を選択するのは必然です。
    • 適用根拠: 圧力は単位面積あたりの力として定義される普遍的な物理法則であり、この問題の状況にそのまま適用できます。
  • (2)での公式選択(ボイル・シャルルの法則):
    • 選定理由: 問題は「一定量の気体」の状態が「変化前」から「変化後」へと変わる状況を扱っています。求めたいのは変化後の「温度」で、変化前後の「圧力」と「体積」は与えられています。このように、状態変化の前後をつなぐ関係式として、ボイル・シャルルの法則 \(\displaystyle\frac{p_1V_1}{T_1} = \frac{p_2V_2}{T_2}\) は最も直接的で効率的な選択肢です。
    • 適用根拠: 問題文に「一定質量の気体を封入した」と明記されており、気体の出入りがないことが保証されています。これはボイル・シャルルの法則が適用できる十分な根拠となります。
  • (2)別解でのアプローチ選択(気体の状態方程式):
    • 選定理由: ボイル・シャルルの法則は、より普遍的な気体の状態方程式 \(pV=nRT\) から導かれるものです。したがって、状態方程式は常に適用可能な、より根源的なアプローチと言えます。特に、法則を忘れた場合や、物質量 \(n\) が関係する複雑な問題に対応する際には、この基本法則に立ち返ることが有効です。
    • 適用根拠: 気体の状態方程式は、理想気体の状態を記述する最も基本的な法則です。この問題では、変化の前後で物質量 \(n\) と気体定数 \(R\) が不変であるため、\(nR = \displaystyle\frac{pV}{T}\) という関係が成り立ちます。この \(nR\) が一定であることを利用して、変化前後の状態を結びつけることができます。これは、ボイル・シャルルの法則をその場で導出しているのと同じ思考プロセスです。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 単位を意識した立式:
    • 式を立てる際に、各物理量の単位が基本単位(\(\text{m}\), \(\text{kg}\), \(\text{s}\), \(\text{K}\), \(\text{Pa}\) など)に揃っているかを確認しましょう。特に温度は \(^\circ\text{C}\) → \(\text{K}\) の変換を計算の第一歩として習慣づけることが重要です。
  • 指数計算のルールを徹底する:
    • \(10^5\) や \(10^{-3}\) といった指数(べき乗)の計算は、熱力学や電磁気学で頻出します。\(10^a \times 10^b = 10^{a+b}\)、\(\displaystyle\frac{10^a}{10^b} = 10^{a-b}\) といった基本ルールを確実にマスターし、計算ミスを防ぎましょう。
    • (2)の計算では、\((1.0 \times 10^5) \times (2.0 \times 10^{-3}) = (1.0 \times 2.0) \times 10^{5-3} = 2.0 \times 10^2\) のように、係数部分と指数部分を分けて計算するとミスが減ります。
  • 分数の式変形を丁寧に行う:
    • ボイル・シャルルの法則の式 \(\displaystyle\frac{p_1V_1}{T_1} = \frac{p_2V_2}{T_2}\) を未知数(例えば \(T_2\))について解く際に、焦って移項ミスをしないように注意しましょう。
    • まずは両辺に \(T_1 T_2\) を掛けて分母を払う(\(p_1V_1T_2 = p_2V_2T_1\))など、一手間かけて単純な形にしてから解くと、計算の確実性が増します。
  • 概算による検算:
    • (2)で、体積が半分(\(1/2\))になり、圧力が約2倍(\(2.2\)倍)になっています。もし温度が変わらない(等温変化)なら、ボイルの法則により圧力はちょうど2倍になるはずです。今回は \(2.2\) 倍とそれより少し大きくなっているので、温度は上昇しているはずだと予測できます。計算結果が \(27\,^\circ\text{C}\) より高くなっているかを確認するだけでも、大きなミスに気づくことができます。
  • 最終的な答えの形式を確認する:
    • 問題で問われている温度がセルシウス温度(\(^\circ\text{C}\))なのか、絶対温度(\(\text{K}\))なのかを最後に必ず確認しましょう。この問題では「温度は何℃か」と聞かれているため、計算で求めた絶対温度 \(330\,\text{K}\) を、最後にセルシウス温度 \(57\,^\circ\text{C}\) に変換し直す必要があります。この最後の変換を忘れるのは非常にもったいないミスです。

基本例題39 連結された容器内の気体

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「連結された容器内での気体の状態変化と物質移動」です。複数の部分からなる系で、内部で物質の移動が起こる場合の状態変化を扱う典型問題であり、状態方程式と保存則を組み合わせて解く能力を養います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 気体の状態方程式: 各容器内の気体の状態(圧力、体積、温度、物質量)の関係を表す \(pV=nRT\) を正しく適用できること。
  2. 物質量保存の法則: 容器間で気体の移動はあっても、系全体(AとBの合計)としては気体の出入りがないため、全体の物質量の和は変化の前後で一定に保たれることを理解していること。
  3. 圧力の均一化: 変化後、十分に時間が経って平衡状態に達したとき、連結された容器内の圧力は場所によらず一様になること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、変化前の容器AとB、それぞれについて状態方程式を立て、初期状態の物質量を求めます。
  2. 次に、変化後の容器AとB、それぞれについて状態方程式を立てます。このとき、変化後の圧力はAとBで共通の \(p’\) となります。
  3. 「変化前の物質量の合計」と「変化後の物質量の合計」が等しい、という物質量保存の式を立てます。
  4. 立てた式を連立させて、未知数である変化後の圧力 \(p’\) を求めます。
  5. 最後に、変化前と変化後の容器A(またはB)の物質量を比較することで、容器間を移動した気体の物質量を計算します。

圧力と移動した物質量

思考の道筋とポイント
この問題の最大のポイントは、容器Bの温度を上げたことにより、気体がBからAへ移動する点です。つまり、容器AとBそれぞれの物質量 \(n_A, n_B\) は変化しますが、系全体の物質量の合計 \(n_A + n_B\) は一定に保たれます。この「物質量保存則」を立式の中心に据えることが鍵となります。変化前と変化後のそれぞれの状態について状態方程式を立て、物質量を求め、それらの合計が等しいという式から未知数を解き明かしていきます。
この設問における重要なポイント

  • 変化前と変化後で、系全体の物質量の合計は保存される。
  • 変化後、容器AとBは繋がっているので、圧力は \(p’\) で等しくなる。
  • 容器AとBそれぞれについて、変化前と変化後の状態方程式を立てる。

具体的な解説と立式
まず、各状態における物質量を状態方程式 \(pV=nRT\) を変形した \(n = \displaystyle\frac{pV}{RT}\) を用いて表します。

【変化前】

圧力は \(p\)、温度は \(T\) で共通です。

  • 容器Aの物質量 \(n_A\):
    $$ n_A = \frac{p V}{R T} \quad \cdots ① $$
  • 容器Bの物質量 \(n_B\):
    $$ n_B = \frac{p (3V)}{R T} \quad \cdots ② $$

よって、変化前の全物質量 \(n_{\text{全}}\) は、
$$
\begin{aligned}
n_{\text{全}} &= n_A + n_B \\[2.0ex]
&= \frac{pV}{RT} + \frac{3pV}{RT} \\[2.0ex]
&= \frac{4pV}{RT}
\end{aligned}
$$

【変化後】

圧力を \(p’\) とします。容器Aの温度は \(T\)、容器Bの温度は \(3T\) になります。

  • 容器Aの物質量 \(n_A’\):
    $$ n_A’ = \frac{p’ V}{R T} \quad \cdots ③ $$
  • 容器Bの物質量 \(n_B’\):
    $$
    \begin{aligned}
    n_B’ &= \frac{p’ (3V)}{R (3T)} \\[2.0ex]
    &= \frac{p’V}{RT} \quad \cdots ④
    \end{aligned}
    $$

よって、変化後の全物質量 \(n_{\text{全}}’\) は、
$$
\begin{aligned}
n_{\text{全}}’ &= n_A’ + n_B’ \\[2.0ex]
&= \frac{p’V}{RT} + \frac{p’V}{RT} \\[2.0ex]
&= \frac{2p’V}{RT}
\end{aligned}
$$

【物質量保存則】

変化の前後で全物質量は保存されるので、\(n_{\text{全}} = n_{\text{全}}’\) が成り立ちます。
$$ \frac{4pV}{RT} = \frac{2p’V}{RT} $$
この式を解くことで、変化後の圧力 \(p’\) が求まります。

次に、移動した水素の物質量 \(\Delta n\) を求めます。これは、容器Aの物質量の変化量 \(n_A’ – n_A\) に等しいです(BからAへ移動した分だけAの物質量が増えるため)。
$$ \Delta n = n_A’ – n_A $$

使用した物理公式

  • 気体の状態方程式: \(pV=nRT\)
  • 物質量保存の法則: \(n_A + n_B = n_A’ + n_B’\)
計算過程

まず、変化後の圧力 \(p’\) を求めます。
物質量保存の式から、
$$
\begin{aligned}
\frac{4pV}{RT} &= \frac{2p’V}{RT}
\end{aligned}
$$
両辺の \(\displaystyle\frac{V}{RT}\) を消去すると、
$$
\begin{aligned}
4p &= 2p’ \\[2.0ex]
p’ &= 2p
\end{aligned}
$$
したがって、容器中の圧力は \(2p\,\text{[Pa]}\) となります。

次に、BからAへ移動した水素の物質量 \(\Delta n\) を求めます。
まず、変化前の容器Aの物質量 \(n_A\) は式①より、
$$ n_A = \frac{pV}{RT} $$
変化後の容器Aの物質量 \(n_A’\) は、式③に求めた \(p’=2p\) を代入して、
$$
\begin{aligned}
n_A’ &= \frac{(2p)V}{RT} \\[2.0ex]
&= \frac{2pV}{RT}
\end{aligned}
$$
よって、移動した物質量 \(\Delta n\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta n &= n_A’ – n_A \\[2.0ex]
&= \frac{2pV}{RT} – \frac{pV}{RT} \\[2.0ex]
&= \frac{pV}{RT}\,\text{[mol]}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

2つの風船(AとB)が細い管でつながっている状況を想像してください。最初、両方とも同じ温度、同じ圧力です。ここで、大きい風船Bだけを温めると、Bの中の空気の粒が激しく動き回り、BからAへと逃げ出します。その結果、両方の風船の圧力が再び同じになるまで空気の移動が続きます。この問題では、「空気の粒の総数は変わらない」というルール(物質量保存)を使って、移動が終わった後の最終的な圧力がどうなるか、そして、どれくらいの量の空気がBからAに引っ越したのかを計算します。

結論と吟味

変化後の圧力は \(p’=2p\)、移動した物質量は \(\displaystyle\frac{pV}{RT}\,\text{mol}\) と求まりました。
容器Bの温度を \(3\) 倍にしたことで、B内部の気体は膨張しようとします。しかし体積は一定なので、圧力を高めようとする効果と、Aに気体を押し出す効果が生じます。結果として、系全体の圧力が上昇し、BからAへ気体が移動します。
興味深いことに、変化後の物質量は \(n_A’ = \displaystyle\frac{2pV}{RT}\)、\(n_B’ = \frac{p’V}{RT} = \frac{2pV}{RT}\) となり、AとBで等しくなります。これは、Bの温度がAの \(3\) 倍、体積もAの \(3\) 倍であるため、状態方程式 \(n = pV/RT\) において \(V/T\) の比がAとBで等しくなったためです (\(V/T = 3V/3T\))。

解答 圧力: \(2p\,\text{[Pa]}\), 移動した物質量: \(\displaystyle\frac{pV}{RT}\,\text{[mol]}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 気体の状態方程式と物質量保存則の組み合わせ
    • 核心: この問題の根幹は、単一の容器内での状態変化ではなく、連結された複数の容器間で気体の移動が起こる複雑な状況を、基本法則を組み合わせて解析する能力です。具体的には、以下の2つの法則を柱として立式します。
      1. 気体の状態方程式 (\(pV=nRT\)): 各容器(部分系)の状態を記述するための基本ツール。
      2. 物質量保存の法則: 容器間で気体の移動があっても、系全体(AとBの合計)の物質量は一定に保たれるという、全体を貫く法則。
    • 理解のポイント:
      • 適用範囲の区別: 状態方程式は、それぞれの容器の、それぞれの時点(変化前・変化後)という「点的」な状態を記述します。一方、物質量保存則は、変化の「前後」という時間的な変化をつなぐ関係式です。
      • 平衡条件の理解: 連結された容器では、最終的に力学的な平衡に達し、内部の圧力はどこでも均一になります。これも問題を解く上で重要な前提条件です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • コックで連結された容器の混合気体: 異なる温度・圧力の気体が入った2つの容器を、コックを開いて混合させる問題。これも、混合前後の「物質量の和の保存」(\(n_1+n_2 = n_{\text{最終}}\))と、最終状態での「圧力と温度の均一化」を用いて、状態方程式から解きます。
    • U字管内の気体と液柱: U字管の一方に気体を封入し、もう一方の気体を加熱するなどして、液面の高さが変化する問題。気体部分には状態方程式を、液柱には力のつりあい(圧力の関係式)を適用し、連立させて解きます。
    • 化学反応を伴う気体の状態変化: 容器内で気体が化学反応を起こし、物質量が変化する問題。化学反応式から物質量の変化量を計算し、それを状態方程式に組み込んで圧力や温度の変化を解析します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「系」を明確に定義する: まず、どこからどこまでを一つの閉じた系とみなすかを考えます。この問題では、容器AとB、そして連結管を合わせた全体が「系」となります。
    2. 「保存量」は何かを見抜く: 次に、その系で何が保存されるかを探します。外部との物質の出入りがなければ「物質量」が保存されます。断熱されていれば「エネルギー」が保存されることもあります。この問題の鍵は「物質量保存」です。
    3. 状態変数を整理する: 変化の前と後で、各部分(容器A, B)の圧力\(p\)、体積\(V\)、物質量\(n\)、温度\(T\)がどうなっているかを表にまとめると、思考が整理されます。未知数も明確になります。
    4. 平衡条件は何かを確認する: 変化後に十分に時間が経ったとき、何が均一になるかを考えます。連結されている場合は「圧力」が均一になります。熱的に接触していれば「温度」も均一になります(この問題では温度は保たれる設定)。
    5. 方程式を立てる: 各部分の状態に「状態方程式」を、系全体の変化に「保存則」を適用して、未知数の数だけ方程式を立てて連立させます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • ボイル・シャルルの法則を誤って適用してしまう:
    • 誤解: 容器Aまたは容器Bのそれぞれについて、物質量が変化しているにもかかわらず、\(\displaystyle\frac{p_A V_A}{T_A} = \frac{p_A’ V_A}{T_A’}\) のようなボイル・シャルルの法則の式を立ててしまう。
    • 対策: ボイル・シャルルの法則が使えるのは「物質量 \(n\) が一定」という大前提があるときだけです。この問題のように、容器間で気体の移動があり、各容器の物質量が変化する場合には、個別の容器にボイル・シャルルの法則は絶対に使えません。必ず、物質量 \(n\) を変数として含む「気体の状態方程式 \(pV=nRT\)」に立ち返る必要があります。
  • 変化後の圧力がAとBで異なると考えてしまう:
    • 誤解: 容器AとBで温度が違うのだから、圧力も違うのではないかと考えてしまう。
    • 対策: 容器は細い管で「連結」されています。これは、気体分子が両容器間を自由に行き来できることを意味します。もし圧力に差があれば、圧力の高い方から低い方へ気体が流れ込み、最終的には必ず圧力は均一になります。これは、系が力学的な平衡状態に達するための自然なプロセスです。
  • 移動した物質量の計算ミス:
    • 誤解: 変化後の物質量 \(n_A’\) や \(n_B’\) をそのまま答えとしてしまったり、\(n_B’ – n_B\) を計算して符号を間違えたりする。
    • 対策: 「BからAへ移動した量」が問われているので、これは「Aの物質量の増加分」(\(n_A’ – n_A\))に等しいです。あるいは、「Bの物質量の減少分」(\(n_B – n_B’\))としても計算できます。両方計算してみて、絶対値が等しくなることを確認すれば、良い検算になります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 状態方程式 (\(pV=nRT\)) の選択:
    • 選定理由: この問題は、気体の状態量である圧力\(p\)、体積\(V\)、温度\(T\)に加えて、容器間の移動によって変化する「物質量\(n\)」を扱っています。これら4つの物理量を結びつける唯一の基本法則が気体の状態方程式であるため、この公式の選択は必然です。物質量が変化する状況では、ボイル・シャルルの法則は無力であり、状態方程式こそが最も根源的で強力なツールとなります。
    • 適用根拠: 理想気体として扱える限り、状態方程式はどんな状況の気体にも適用できる普遍的な法則です。変化前のAとB、変化後のAとBという、合計4つの異なる状態をそれぞれ数式で記述するために用います。
  • 物質量保存則 (\(n_A + n_B = n_A’ + n_B’\)) の選択:
    • 選定理由: 状態方程式を4つの状態について立てても、未知数(\(p’, n_A’, n_B’\))の数に対して方程式の数が足りません。この状況を打開するには、変化の前後を貫く「不変量(保存量)」を見つけ出し、新たな関係式を立てる必要があります。問題の状況から、容器AとBを合わせた系は外部に対して閉じており、気体の出入りはありません。したがって、「系全体の物質量は保存される」という法則が、不足している方程式を補う決定的な鍵となります。
    • 適用根拠: 問題の設定上、容器AとBを合わせた系は外部から隔離された閉鎖系です。また、気体分子が生成したり消滅したりする化学反応も起こりません。この物理的な事実が、系全体の物質量は不変であるという法則を適用する根拠となります。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 文字式のまま計算を進める:
    • この問題のように、具体的な数値が与えられていない場合は、最後まで文字式のまま計算を進めるのが鉄則です。これにより、物理的な意味合いを保ったまま式変形ができ、途中の計算もシンプルになります。最終的に多くの文字が約分され、綺麗な結果が得られることがほとんどです。
  • 変数を明確に定義し、整理する:
    • 変化前のAの物質量を \(n_A\)、変化後を \(n_A’\) のように、プライム(’)を用いるなどして変数を明確に区別しましょう。立式の際に、どの状態のどの物理量かを混同するミスを防げます。
  • 分数の整理を丁寧に行う:
    • 物質量を \(n = \displaystyle\frac{pV}{RT}\) の形で扱うため、物質量保存の式は分数の足し算になります。通分や分母を払う操作を慎重に行いましょう。例えば、\(\displaystyle\frac{p_1V_1}{RT_1} + \frac{p_2V_2}{RT_2} = \dots\) のような式では、共通因数 \(\displaystyle\frac{V}{R}\) などでくくると、見通しが良くなる場合があります。
  • 多角的な検算を行う:
    • 合計値の確認: 計算で求めた最終圧力 \(p’\) を使って、変化後の物質量 \(n_A’\) と \(n_B’\) をそれぞれ計算し、その和 \(n_A’ + n_B’\) が、変化前の物質量の和 \(n_A + n_B\) と一致するかを確認します。これは非常に強力な検算方法です。
    • 移動量の確認: BからAへの移動量は、「Aの増加量 (\(n_A’ – n_A\))」と「Bの減少量 (\(n_B – n_B’\))」の2通りで計算できます。この2つの結果が一致することを確認しましょう。
    • 物理的な妥当性の吟味: Bを加熱したのだから、BからAへ気体が移動するはずです。したがって、計算結果が \(n_A’ > n_A\) かつ \(n_B’ < n_B\) となっているかを確認します。また、系全体の圧力が初期圧力 \(p\) より高くなっているか(この問題では \(2p > p\))も、直感と合うかどうかのチェックポイントです。

基本例題40 気体の分子運動と圧力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「気体分子運動論の基礎」です。目には見えない無数の気体分子の運動というミクロな現象が、どのようにして私たちが測定できる圧力というマクロな物理量を生み出すのか、その基本的なメカニズムを運動量と力積の関係から解き明かします。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 運動量と力積の関係: 物体の運動量の変化は、その物体が受けた力積に等しい (\(m\Delta v = F\Delta t\)) という関係を正しく理解していること。
  2. 作用・反作用の法則: 分子が壁から受ける力と、壁が分子から受ける力は、大きさが等しく向きが逆であること。力積についても同様の関係が成り立ちます。
  3. 弾性衝突: 衝突の前後で運動エネルギーが保存される衝突のこと。この問題では、分子の速さが衝突の前後で変わらないことを意味します。
  4. 圧力の定義: 圧力は、単位面積あたりに垂直に働く力の大きさである (\(p = F/S\)) ことを理解していること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (ア), (イ)では、まず1個の分子が壁との1回の衝突で、どれだけ運動量が変化したかを計算します。運動量はベクトルなので、向きを考慮することが重要です。この運動量の変化が、分子が壁から受けた力積に等しくなります。そして、作用・反作用の法則を用いて、壁が分子から受けた力積を求めます。
  2. (ウ)では、(イ)で求めた1個あたりの力積を、時間 \(t\) の間に衝突する分子の総数だけ足し合わせることで、壁が受ける力積の総量を計算します。
  3. (エ)では、(ウ)で求めた力積の総量を時間 \(t\) で割ることで、壁が受ける平均的な力の大きさを求めます。最後に、その力を壁の面積で割ることで、圧力を導出します。

気体分子運動と圧力

思考の道筋とポイント
この問題は、気体分子運動論の最も基本的な考え方を、段階を追って理解させる構成になっています。核心となるのは「圧力の正体は、無数の分子が壁に衝突することで及ぼす力の平均である」という点です。その力を直接計算するのは困難なため、「運動量の変化 = 力積」という関係を経由して、まず力積を求め、そこから平均の力を逆算するという手順を取ります。
この設問における重要なポイント

  • 運動量はベクトル量であり、向きを正負の符号で区別して計算する必要がある。
  • 「分子が壁から受けた力積」と「壁が分子から受けた力積」は、作用・反作用の関係にある。
  • 圧力は、個々の衝突による瞬間的な力ではなく、多数の衝突による平均的な力を面積で割ったものである。

具体的な解説と立式
(ア), (イ) 1回の衝突で壁が受ける力積

右向きを正の向きとします。質量 \(m\) の分子が速さ \(v\) で壁に衝突し、弾性衝突ではねかえるので、衝突後の速度は \(-v\) となります。

  • 衝突前の分子の運動量 \(p_{\text{前}}\) は、
    $$ p_{\text{前}} = mv $$
  • 衝突後の分子の運動量 \(p_{\text{後}}\) は、
    $$
    \begin{aligned}
    p_{\text{後}} &= m(-v) \\[2.0ex]
    &= -mv
    \end{aligned}
    $$

分子の運動量の変化 \(\Delta p\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta p &= p_{\text{後}} – p_{\text{前}} \\[2.0ex]
&= (-mv) – (mv) \\[2.0ex]
&= -2mv
\end{aligned}
$$
運動量と力積の関係より、この運動量の変化 \(\Delta p\) は、分子が壁から受けた力積 \(I_{\text{分子}}\) に等しいです。
$$ I_{\text{分子}} = -2mv $$
負の符号は、分子が左向きに力積を受けたことを意味します。
ここで求めたいのは「壁が分子から受ける力積 \(I_{\text{壁}}\)」です。作用・反作用の法則により、\(I_{\text{壁}}\) は \(I_{\text{分子}}\) と大きさが等しく、向きが逆になります。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{壁}} &= -I_{\text{分子}} \\[2.0ex]
&= -(-2mv) \\[2.0ex]
&= 2mv
\end{aligned}
$$
この結果は正の値なので、力積の向きは正の向き、すなわち(ア)右向きであり、その大きさは(イ)\(2mv\) となります。

(ウ) 時間 \(t\) の間に壁が受ける力積の総量

単位時間(\(1\)秒間)あたりに \(N\) 個の気体分子が壁に衝突するので、時間 \(t\) の間には \(N \times t = Nt\) 個の分子が衝突します。
壁が受ける力積の総量 \(I_{\text{総}}\) は、1回の衝突で受ける力積の大きさ \(2mv\) に、衝突回数 \(Nt\) を掛けることで求められます。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{総}} &= (1\text{回あたりの力積}) \times (\text{衝突回数}) \\[2.0ex]
&= (2mv) \times (Nt) \\[2.0ex]
&= 2Ntmv
\end{aligned}
$$
よって、(ウ)は \(2Ntmv\) となります。

(エ) 壁が受ける圧力

壁が受ける平均的な力の大きさを \(F\) とすると、力積の総量 \(I_{\text{総}}\) は \(F \times t\) とも表せます。
$$ I_{\text{総}} = Ft $$
(ウ)の結果と合わせると、
$$ Ft = 2Ntmv $$
この式から、平均の力 \(F\) は、
$$ F = 2Nmv $$
圧力 \(p\) は、この力 \(F\) を力が働く面積 \(S\) で割ったものです。壁は一辺の長さが \(L\) の正方形なので、その面積は \(S = L^2\) です。
$$
\begin{aligned}
p &= \frac{F}{S} \\[2.0ex]
&= \frac{2Nmv}{L^2}
\end{aligned}
$$
よって、(エ)は \(\displaystyle\frac{2Nmv}{L^2}\) となります。

使用した物理公式

  • 運動量: \(p=mv\)
  • 運動量と力積の関係: \(\Delta p = F\Delta t\)
  • 作用・反作用の法則
  • 圧力の定義: \(p = F/S\)
計算過程
  • (ア) 向き: 上記の立式より、壁が受ける力積は正の値 \(2mv\) となった。最初に右向きを正と定義したので、力積の向きは 向きである。
  • (イ) 大きさ: 上記の立式より、\(2mv\) である。
  • (ウ) 大きさ: 上記の立式より、\(2Ntmv\) である。
  • (エ) 圧力: 上記の立式より、\(\displaystyle\frac{2Nmv}{L^2}\) である。
この設問の平易な説明

キャッチボールでボールを受けると手に衝撃を感じるように、気体の壁も、飛んでくる分子から常に衝撃を受けています。
(ア)(イ)では、まず分子1粒が壁に当たって跳ね返るときの「1回分の衝撃(力積)」を計算します。これは、分子の勢い(運動量)がどれだけ変化したかを調べることでわかります。
(ウ)では、その1回分の衝撃が、時間 \(t\) の間に何回も(\(Nt\) 回)起こるので、衝撃の合計を計算します。
(エ)では、その合計の衝撃を時間で割り算して「平均的な力」を求め、さらに壁の面積で割り算することで「圧力(面積あたりの力)」を求めています。つまり、たくさんの分子のミクロな衝突が、マクロな圧力という現象を生み出しているのです。

結論と吟味

一連の計算により、分子の質量 \(m\)、速さ \(v\)、単位時間あたりの衝突数 \(N\) から、壁が受ける圧力 \(p\) を導出することができました。この結果は、分子が重いほど、速いほど、そして頻繁に衝突するほど、圧力が大きくなるという物理的な直感と一致しています。これは、気体分子運動論の初歩的なモデルですが、圧力の本質をうまく説明しています。

解答 (ア) 右, (イ) \(2mv\), (ウ) \(2Ntmv\), (エ) \(\displaystyle\frac{2Nmv}{L^2}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 運動量と力積の関係を起点とした圧力の導出
    • 核心: この問題の根幹は、目に見えない分子1個の衝突というミクロな現象を「運動量と力積の関係」で捉え、その効果を無数に足し合わせることで、圧力というマクロな物理量を理論的に導き出す、気体分子運動論の思考プロセスそのものです。
    • 理解のポイント:
      • 運動量変化から力積へ: 分子が壁と衝突してはね返る際、その運動量は変化します。この「運動量の変化」が、分子が壁から受けた「力積」に等しい、というのが第一のステップです。
      • 作用・反作用による視点の転換: 次に、「分子が壁から受けた力積」の反作用として、「壁が分子から受けた力積」を求めます。これにより、主語が「分子」から「壁」へと移ります。
      • 力積から平均の力、そして圧力へ: 最後に、多数の分子が及ぼす力積の総和を時間で割ることで「壁が受ける平均的な力」を算出し、それを壁の面積で割ることで「圧力」を定義します。この一連の流れを理解することが最も重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 3次元空間での気体分子運動: より現実的なモデルとして、分子が立方体の容器内を3次元的に運動する場合。壁に垂直な速度成分(例: \(v_x\))のみが運動量変化に関与します。多数の分子の速度の2乗平均の関係式 \(\overline{v^2} = \overline{v_x^2} + \overline{v_y^2} + \overline{v_z^2}\) と、等方性から \(\overline{v_x^2} = \frac{1}{3}\overline{v^2}\) となることを利用して、圧力を \(p = \frac{1}{3}\frac{Nm\overline{v^2}}{V}\) のように導出する問題。
    • 分子の斜め衝突: 分子が壁に対して斜めに角度 \(\theta\) で衝突する場合。壁に垂直な速度成分 \(v\cos\theta\) のみが衝突によって符号を反転させ、運動量変化に寄与します。壁に平行な成分 \(v\sin\theta\) は変化しません。
    • 非弾性衝突・吸収: 分子が壁に衝突してはね返らない(吸収される)場合。衝突後の運動量は \(0\) になるため、分子の運動量変化は \(0 – mv = -mv\) となります。したがって、壁が受ける力積の大きさは \(mv\) となり、弾性衝突の場合の半分になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 衝突の様子を分析する: まず、衝突が「弾性」か「非弾性」か、また「垂直」か「斜め」かを確認します。これにより、運動量変化の計算方法が決まります。
    2. 誰が受けた力積を問われているか?: 問題が「分子が受けた力積」を問うているのか、「壁が受けた力積」を問うているのかを明確に区別します。両者は作用・反作用の関係にあり、符号が逆転します。
    3. 1回の衝突か、多数の衝突の平均か?: 1個の分子の1回の衝突について問われているなら「力積」を答えます。多数の分子が長時間にわたって及ぼす影響を問われているなら、「平均の力」や「圧力」を計算する必要があります。
    4. 力か圧力か?: 最終的に求められているのが「力」なのか「圧力」なのかを確認します。圧力を求める場合は、最後に必ず面積で割る操作が必要です。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 運動量の変化の計算で符号を間違える:
    • 誤解: はね返りの運動量の変化を、単純に \(mv – mv = 0\) としたり、大きさだけを見て \(mv\) と計算してしまったりする。
    • 対策: 運動量がベクトル量であることを常に意識しましょう。計算を始める前に、必ず「右向きを正」のように座標軸を設定する癖をつけます。すると、衝突前の速度は \(+v\)、衝突後の速度は \(-v\) となり、運動量の変化は「(後) – (前)」なので \((-mv) – (+mv) = -2mv\) と機械的に正しく計算できます。
  • 作用・反作用の法則の適用ミス:
    • 誤解: 分子の運動量変化(分子が壁から受けた力積)である \(-2mv\) を、そのまま壁が受けた力積だと考えてしまう。
    • 対策: 「AがBから受ける力」と「BがAから受ける力」のように、主語と目的語を明確にして考える習慣をつけましょう。「分子が壁から受けた力積」の反作用が「壁が分子から受けた力積」です。作用・反作用の法則により、向きが逆になるため、符号が反転して \(-(-2mv) = +2mv\) となります。
  • 力と力積を混同する:
    • 誤解: 1回の衝突で分子が壁に及ぼす力積の大きさ \(2mv\) を、「力」そのものだと勘違いしてしまう。
    • 対策: 力積はあくまで「力と時間の積」(\(\text{N}\cdot\text{s}\))であり、力(\(\text{N}\))とは次元が異なる物理量です。多数の衝突による力積の「合計」を、かかった「時間」で割ることで、初めて「平均の力」が求められる、という関係性を正確に理解しておくことが重要です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • (ア)(イ)での公式選択(運動量と力積の関係):
    • 選定理由: 求めたいのは衝突によって生じる「力積」です。一方、分かっているのは衝突前後の「速度」の変化です。物体の運動状態の変化(速度の変化=運動量の変化)と、その原因である力(力積)を結びつける物理法則は、「運動量と力積の関係 (\(\Delta p = I\))」以外にありません。したがって、この公式を選択するのは必然です。
    • 適用根拠: この関係式は、ニュートンの運動方程式 \(F=ma\) を変形したものであり、特に衝突のように短時間で力が作用する現象を解析する際に非常に有効な基本法則です。
  • (ウ)での考え方(総和の計算):
    • 選定理由: (イ)で求めたのは、あくまで分子1個の1回の衝突という単発の事象です。(ウ)では、時間 \(t\) の間に起こる多数の事象の「総量」を求めています。これは物理公式というよりは、単発の効果を全体に拡張するための論理的な手順です。
    • 適用根拠: 個々の分子の衝突は互いに独立した事象とみなせるため、全体の効果(総力積)は、単発の効果(1回あたりの力積)を単純に足し合わせる(回数倍する)ことで求められる、という考え方に基づいています。
  • (エ)での公式選択(力積と力の関係、圧力の定義):
    • 選定理由: 最終的に求めたいのは「圧力」です。圧力の定義は \(p = F/S\) なので、まず「平均の力 \(F\)」を求める必要があります。(ウ)で求めたのは「力積の総量 \(I_{\text{総}}\)」です。力積と力の関係式 \(I = Ft\) を \(F\) について解けば、力積から力を逆算できます。
    • 適用根拠: 「平均の力 \(F\) が時間 \(t\) の間、継続的に作用したときの力積が \(Ft\) である」という力積の定義そのものを利用しています。そして、圧力が単位面積あたりの力であるという \(p=F/S\) も、圧力という物理量の普遍的な定義です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 座標軸の設定を計算の第一歩とする:
    • 運動量、力積、力といったベクトル量を扱う問題では、計算用紙の最初に「右向きを正とする」などと図と式を対応させるためのルールを自分で書き込みましょう。この一手間が、符号に関するミスを劇的に減らします。
  • 言葉の主語を明確にする:
    • 「分子の運動量」「壁が受けた力積」「分子にはたらく力」など、誰(何)についての物理量なのかを常に意識しながら式を立てましょう。特に作用・反作用を考える場面で混乱を防げます。
  • 思考のステップを分割する:
    • この問題は、ミクロからマクロへと至る論理の連鎖で成り立っています。焦らず、以下のステップを一つずつクリアしていく意識で解き進めましょう。
      1. 【1個・1回】分子の運動量変化 \(\Delta p\) を計算する。
      2. 【1個・1回】作用・反作用で、壁が受ける力積 \(I_1\) に変換する。
      3. 【多数・長時間】総衝突回数を掛けて、壁が受ける全力積 \(I_{\text{総}}\) を求める。
      4. 【多数・長時間】全力積を時間で割り、壁が受ける平均の力 \(F\) を求める。
      5. 【多数・長時間】力を面積で割り、壁が受ける圧力 \(p\) を求める。
  • 物理的な直感による検算:
    • 最終的に得られた式が、物理的な感覚と合っているかを確認しましょう。例えば、圧力の式 \(p = \displaystyle\frac{2Nmv}{L^2}\) は、分子が重い(\(m\))ほど、速い(\(v\))ほど、数が多い(\(N\))ほど、圧力が大きくなることを示しており、直感と一致します。もし、これらの変数が式の分母に来ていたら、計算過程のどこかで間違いを犯している可能性が高いと判断できます。
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基本問題

286 気体の圧力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「ピストンにはたらく力のつりあいと圧力の計算」です。静止しているピストンを介して、内部の気体と外部の大気が力を及しあっている状況を、力学の基本法則である力のつりあいを用いて解析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のつりあい: 静止している物体にはたらく力の合力はゼロであること。特にこの問題では、鉛直上向きの力と鉛直下向きの力が等しいという関係式を立てられること。
  2. 圧力と力の関係: 圧力は単位面積あたりの力であり、逆に力は圧力に面積を掛けることで求められる (\(F=pS\))。この関係を使って、圧力による力を計算できること。
  3. ピストンにはたらく力の図示: ピストンという物体に着目し、それに作用するすべての力(重力、大気圧による力、内部気体による力)を漏れなく見つけ出し、その向きを正しく図示できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、ピストンという物体に着目し、それにはたらく力をすべて見つけ出します。
  2. 次に、鉛直方向の力のつりあいの式を立てます。具体的には、「上向きの力の和」=「下向きの力の和」という関係式を作ります。
  3. 圧力による力は \(F=pS\) の形で式に代入し、未知数である内部気体の圧力 \(p\) について解きます。

気体の圧力

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