問題の確認
dynamics#08各設問の思考プロセス
この問題は、v-tグラフの読み取りと、グラフから加速度や移動距離を求める基本的な問題です。
- 加速度: v-tグラフの傾きは加速度を表します。傾き = (縦軸の変化量) / (横軸の変化量) = \(\displaystyle \frac{\Delta v}{\Delta t}\) で計算できます。
- 速さ: v-tグラフの縦軸の値がその時刻の速さを表します。
- 移動距離: v-tグラフと時間軸で囲まれた面積は移動距離を表します。各区間の面積を計算し、それらを合計することで総移動距離を求めます。
各設問に対して、上記の方針で情報を読み取り、計算を行います。
各設問の具体的な解説と解答
(1) \(t=0\) sから \(t=20\) sまでの間の電車の加速度は何 m/s² か。
問われている内容の明確化:
\(t=0\) s から \(t=20\) s の区間における電車の加速度 \(a_1\) [m/s²] を、v-tグラフから求めます。
具体的な解説と計算手順:
グラフより、
- \(t_0 = 0\) s のとき、\(v_0 = 0\) m/s
- \(t_1 = 20\) s のとき、\(v_1 = 16\) m/s
加速度 \(a_1\) は、v-tグラフの傾きなので、
$$a = \frac{\Delta v}{\Delta t}$$
値を代入すると、
$$a_1 = \frac{v_1 – v_0}{t_1 – t_0} = \frac{16 \text{ [m/s]} – 0 \text{ [m/s]}}{20 \text{ [s]} – 0 \text{ [s]}} = \frac{16}{20} \text{ [m/s}^2\text{]} = 0.80 \text{ [m/s}^2\text{]}$$
計算方法の平易な説明:
最初の20秒間で、電車の速さが \(0\) m/s から \(16\) m/s まで変化しています。
加速度は、「1秒あたりにどれだけ速さが変化するか」なので、
変化した速さ \( = 16 \text{ m/s} – 0 \text{ m/s} = 16 \text{ m/s} \)
かかった時間 \( = 20 \text{ s} – 0 \text{ s} = 20 \text{ s} \)
加速度 \( = \text{(変化した速さ)} \div \text{(かかった時間)} = 16 \text{ m/s} \div 20 \text{ s} = 0.8 \text{ m/s}^2 \)
となります。
この設問における重要なポイント:
- v-tグラフの傾きが加速度を表すことを理解しているか。
- グラフから正確に時刻と速さの値を読み取れるか。
\(0.80 \text{ m/s}^2\)
(2) \(t=20\) sから \(t=100\) sまで電車の速さは何m/sか。
問われている内容の明確化:
\(t=20\) s から \(t=100\) s の区間における電車の速さ \(v_c\) [m/s] を、v-tグラフから読み取ります。
具体的な解説と計算手順:
グラフより、\(t=20\) s から \(t=100\) s の間、速さ \(v\) は一定の値を示しています。
その値は \(16\) m/s です。
計算方法の平易な説明:
グラフの \(t=20\) 秒から \(t=100\) 秒のところを見ると、速さの線が真横にまっすぐになっています。これは速さが変わっていない(一定である)ことを意味します。その時の速さの目盛りを読むと \(16\) m/s です。
この設問における重要なポイント:
- v-tグラフで水平な直線は等速直線運動を表し、その縦軸の値が速さを示すことを理解しているか。
\(16 \text{ m/s}\)
(3) \(t=100\) sから \(t=140\) sまでの間の電車の加速度は何 m/s² か。
問われている内容の明確化:
\(t=100\) s から \(t=140\) s の区間における電車の加速度 \(a_2\) [m/s²] を、v-tグラフから求めます。
具体的な解説と計算手順:
グラフより、
- \(t_2 = 100\) s のとき、\(v_2 = 16\) m/s
- \(t_3 = 140\) s のとき、\(v_3 = 0\) m/s
加速度 \(a_2\) は、v-tグラフの傾きなので、
$$a = \frac{\Delta v}{\Delta t}$$
値を代入します。
$$a_2 = \frac{v_3 – v_2}{t_3 – t_2} = \frac{0 \text{ [m/s]} – 16 \text{ [m/s]}}{140 \text{ [s]} – 100 \text{ [s]}} = \frac{-16}{40} \text{ [m/s}^2\text{]} = -0.40 \text{ [m/s}^2\text{]}$$
計算方法の平易な説明:
\(t=100\) 秒から \(t=140\) 秒の40秒間で、電車の速さが \(16\) m/s から \(0\) m/s まで変化しています(減速)。
変化した速さ \( = 0 \text{ m/s} – 16 \text{ m/s} = -16 \text{ m/s} \)
かかった時間 \( = 140 \text{ s} – 100 \text{ s} = 40 \text{ s} \)
加速度 \( = \text{(変化した速さ)} \div \text{(かかった時間)} = -16 \text{ m/s} \div 40 \text{ s} = -0.4 \text{ m/s}^2 \)
マイナスの符号は、速さが減少していること(減速)を表します。
この設問における重要なポイント:
- v-tグラフの傾きが加速度を表すこと。
- 減速の場合、加速度は負の値になることを理解しているか。
- グラフから正確に時刻と速さの値を読み取れるか。
\(-0.40 \text{ m/s}^2\)
(4) A駅とB駅の間の距離はいくらか。
問われている内容の明確化:
A駅を出発してからB駅に到着するまで(\(t=0\) s から \(t=140\) s)の電車の総移動距離 \(L\) [m] を、v-tグラフから求めます。
具体的な解説と計算手順:
移動距離 \(L\) は、v-tグラフ全体と時間軸で囲まれた台形の面積に等しい。
上底 \( = (100-20) = 80\) s、下底 \( = 140\) s、高さ \( = 16\) m/s
$$\text{台形の面積} = \frac{1}{2} \times (\text{上底} + \text{下底}) \times \text{高さ}$$
$$L = \frac{1}{2} \times ( (100-20) + 140 ) \times 16$$
$$L = \frac{1}{2} \times (80 + 140) \times 16$$
$$L = \frac{1}{2} \times 220 \times 16$$
$$L = 110 \times 16 = 1760 \text{ [m]}$$
または、3つの区間に分けて計算する場合:
区間1 (\(0 \le t \le 20\) s): 三角形の面積 \(S_1\)
$$S_1 = \frac{1}{2} \times 20 \text{ [s]} \times 16 \text{ [m/s]} = 160 \text{ [m]}$$
区間2 (\(20 \le t \le 100\) s): 長方形の面積 \(S_2\)
$$S_2 = (100 \text{ [s]} – 20 \text{ [s]}) \times 16 \text{ [m/s]} = 80 \text{ [s]} \times 16 \text{ [m/s]} = 1280 \text{ [m]}$$
区間3 (\(100 \le t \le 140\) s): 三角形の面積 \(S_3\)
$$S_3 = \frac{1}{2} \times (140 \text{ [s]} – 100 \text{ [s]}) \times 16 \text{ [m/s]} = \frac{1}{2} \times 40 \text{ [s]} \times 16 \text{ [m/s]} = 320 \text{ [m]}$$
総移動距離 \(L = S_1 + S_2 + S_3 = 160 \text{ [m]} + 1280 \text{ [m]} + 320 \text{ [m]} = 1760 \text{ [m]}\)
計算方法の平易な説明:
電車が進んだ距離は、v-tグラフの線と時間軸(横軸)で囲まれた部分の面積になります。
この形は台形なので、台形の面積の公式「(上底+下底)× 高さ ÷ 2」で求められます。
- 上底(速さが一定だった時間): \(100 \text{ s} – 20 \text{ s} = 80 \text{ s}\)
- 下底(動き始めてから止まるまでの総時間): \(140 \text{ s}\)
- 高さ(もっとも速かった時の速さ): \(16 \text{ m/s}\)
距離 \( = (80 \text{ s} + 140 \text{ s}) \times 16 \text{ m/s} \div 2 = 220 \text{ s} \times 16 \text{ m/s} \div 2 = 1760 \text{ m} \)
または、3つの部分に分けても計算できます。
- 最初の20秒(加速): 三角形なので、底辺20秒、高さ16m/s \(\Rightarrow 20 \times 16 \div 2 = 160 \text{ m}\)
- 次の80秒(20秒から100秒まで、一定速度): 長方形なので、横80秒、縦16m/s \(\Rightarrow 80 \times 16 = 1280 \text{ m}\)
- 最後の40秒(100秒から140秒まで、減速): 三角形なので、底辺40秒、高さ16m/s \(\Rightarrow 40 \times 16 \div 2 = 320 \text{ m}\)
合計すると、\(160 + 1280 + 320 = 1760 \text{ m}\)
この設問における重要なポイント:
- v-tグラフの面積が移動距離を表すことを理解しているか。
- 台形、三角形、長方形の面積を正しく計算できるか。
- グラフから面積計算に必要な値を正確に読み取れるか。
\(1760 \text{ m}\) (ここでは有効数字を気にせず答えました)
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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則
- v-tグラフの解釈:
- グラフの縦軸は各時刻の速さを表す。
- グラフの傾きはその区間の加速度を表す。傾きが正なら加速、負なら減速、0なら等速。
- グラフと時間軸で囲まれた面積はその間の移動距離を表す。
- 加速度: 単位時間あたりの速度の変化量。\( \displaystyle a = \frac{\Delta v}{\Delta t} \)。
- 等速直線運動: 速度が一定の運動。v-tグラフでは水平な直線となる。加速度は0。
- 等加速度直線運動: 加速度が一定の運動。v-tグラフでは傾きが一定の直線(右上がりまたは右下がり)となる。
類似の問題を解く上でのヒントや注意点
- グラフの軸の単位を確認する: 縦軸が速さ[m/s]、横軸が時間[s]であることをしっかり確認する。
- 区間ごとに分けて考える: 運動の様子が変化する点(グラフの傾きが変わる点)で区切り、それぞれの区間について加速度や移動距離を考えると分かりやすい。
- 面積計算の図形を正確に把握する: 三角形なのか、長方形なのか、台形なのかを正しく認識し、対応する面積公式を用いる。
- 負の加速度: 減速している場合、加速度は負の値になる。計算結果が負になった場合に、それが物理的に何を意味するのかを理解しておく。
よくある誤解や間違いやすいポイント
- 傾きと面積の混同: 加速度を求めるべきところで面積を計算したり、逆に移動距離を求めるべきところで傾きを計算したりしないように注意する。
- 時間間隔の計算ミス: 例えば、\(t=20\) sから \(t=100\) sまでの時間は、\(100-20=80\) s であるが、これを誤って \(100\) s や \(20\) s としてしまう。
- 台形の面積公式の誤用: 上底と下底を正しく識別し、高さを掛けて2で割る計算を正確に行う。
- 単位の付け忘れや間違い: 計算結果には必ず適切な単位を付ける。加速度は m/s²、速さは m/s、距離は m。
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