「物理のエッセンス(力学・波動)」徹底解説(波動46〜50問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

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波動範囲 46~50

46 レンズ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「レンズによる結像と光線束」です。レンズの一部を覆ったり、光路に障害物を置いたりしたときに、できる像がどのように変化するかを問う問題です。像が形成される原理と、光線が実際に通る範囲(光線束)を幾何学的に考察する能力が求められます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. レンズによる結像の原理: 物体の一点から出た光は、レンズの「全面」を通過し、屈折して像の一点に集まること。
  2. 像の明るさとレンズの面積: 像の明るさは、レンズを通過する光の量に比例し、光の量はレンズの有効な面積に比例すること。
  3. 光線の追跡: 光が直進することを利用し、物体、障害物、レンズ、像を結ぶ光線の経路を幾何学的に追跡できること。
  4. 三角形の相似: 光線の経路によって作られる三角形の相似関係を用いて、未知の長さを計算できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. レンズの上半分を覆う場合:
    • 像がどのように形成されるかという原理に立ち返り、レンズの半分がなくなっても、残りの半分で像が形成されるかどうかを考察します。
    • 像の明るさがどうなるかを考えます。
  2. 円形の紙で遮る場合:
    • 「像が欠け始める」とき、どの部分の光が最初に遮られるのかを考えます。これは、物体の特定の点からレンズの縁へ向かう光線が、円形の紙にちょうど接する瞬間です。
    • 「像が完全に消える」とき、どの部分の光が最後に遮られるのかを考えます。これは、物体のすべての点から出る光が、レンズの全面に到達できなくなる瞬間です。
    • これらの限界状態について、光の経路と物体、円板、レンズの位置関係から相似な三角形を見つけ出し、円板の半径を計算します。

レンズの上半分を黒い紙でさえぎると像はどうなるか。

思考の道筋とポイント
この問題を考える上で最も重要な原理は、「物体の一点から出た光は、レンズの全面に当たって屈折し、像の一点に集まる」ということです。
レンズの上半分を覆うと、物体から出てレンズの上半分に向かっていた光は遮られます。しかし、レンズの下半分に向かった光は、通常通りレンズを通過して屈折します。
残った下半分だけでもレンズとしての機能は失われないため、これらの光線は、もともと像ができていたのと同じ位置に集まり、完全な形の像を結びます。
ただし、レンズを通過する光の総量が約半分に減るため、像は暗くなります。
この設問における重要なポイント

  • 像は、物体の一点から出た「すべての」光線が集まってできる。
  • レンズの一部を覆っても、残りの部分がレンズとして機能し、完全な像を結ぶ。
  • 像の明るさは、レンズを通過する光の量(レンズの面積)に比例する。

具体的な解説
物体の一点(例えば先端)から出た光は、放射状に広がり、レンズの全面に当たります。凸レンズは、これらの光を屈折させ、再び一点(像の先端)に集める働きをします。
レンズの上半分を黒い紙で覆うと、物体から出てレンズの上半分に向かう光線は遮断されます。しかし、下半分に向かう光線はそのままレンズを通過し、屈折します。
レンズの下半分も、上半分と同様に光を屈折させて一点に集める能力を持っています。したがって、下半分を通過した光線だけでも、もともと像ができていた位置にきちんと集まり、完全な形の像を結びます。
つまり、像の形や大きさ、位置は変わりません。
ただし、レンズを通過する光の量が半分になるため、像の明るさは約半分に暗くなります。

この設問の平易な説明

大きな窓から部屋の中の景色を見ている状況を想像してください。窓の上半分をカーテンで隠しても、部屋の中の景色が半分欠けて見えることはありません。景色全体は見えたままで、ただ部屋全体が少し暗くなるだけです。
レンズもこれと同じです。レンズの一部分を隠しても、残った部分が「小さな窓」として働き、物体の全体像をきちんと映し出します。ただし、光を取り込む窓が小さくなった分、像は暗くなります。

結論と吟味

「像の長さが半分になる」「像の上半分が消える」といった答えはよくある間違いです。レンズによる結像の原理を正しく理解していれば、「形は変わらず、暗くなる」という結論に至ります。

解答 (問1) 像の形、大きさ、位置は変わらないが、明るさが暗くなる。

像が欠け始めるときの半径

思考の道筋とポイント
円形の黒い紙の半径を徐々に大きくしていくと、光源からレンズに向かう光線の一部が遮られ始めます。
「像が欠け始める」のは、物体のどこか一点から出る光が、レンズの全面に届かなくなった瞬間です。
図をよく見ると、物体の根元(光軸上の点)から出て、レンズの一番上(半径 \(6 \, \text{cm}\) の位置)に向かう光線が、最も円板に遮られやすいことがわかります。
したがって、「像が欠け始める」のは、この「物体の根元 \(\rightarrow\) レンズの上端」を結ぶ光線が、円板の縁にちょうど接するときです。
この状況を幾何学的に捉え、相似な三角形を見つけて円板の半径 \(r\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 像が欠け始めるのは、物体の根元から出る光が遮られ始めたとき。
  • 限界状態は、物体の根元、円板の縁、レンズの上端が一直線上に並ぶとき。
  • この光線と光軸によって作られる2つの三角形の相似関係を利用する。

具体的な解説と立式
物体の根元(光軸上の点)をO、円板の中心をA、レンズの中心をLとします。
物体の根元Oから出て、レンズの上端P(高さ \(6 \, \text{cm}\))に向かう光線を考えます。
この光線が、点Aの位置にある円板の縁Q(高さ \(r\))にちょうど遮られ始めるとき、点O, Q, Pは一直線上にあります。
ここで、光軸を底辺とする2つの直角三角形、\(\triangle \text{OAQ}\) と \(\triangle \text{OLP}\) を考えます。(点A, LはそれぞれQ, Pの真下の光軸上の点です)
この2つの三角形は、共通の頂点Oを持ち、辺AQと辺LPが平行(どちらも光軸に垂直)なので、互いに相似です。
辺の長さは以下の通りです。

  • OA = \(5 \, \text{cm}\)
  • OL = \(10 \, \text{cm}\)
  • AQ = \(r\)
  • LP = \(6 \, \text{cm}\)

相似比から、
$$ \text{OA} : \text{OL} = \text{AQ} : \text{LP} $$
$$ 5 : 10 = r : 6 $$

使用した物理公式

  • 光の直進
  • 三角形の相似
計算過程

$$
\begin{aligned}
5 \times 6 &= 10 \times r \\[2.0ex]
30 &= 10r \\[2.0ex]
r &= 3 \, (\text{cm})
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

物体の根元からレンズの一番上に向かって飛ぶ光線が、ちょうど円板の縁をかすめるとき、像が欠け始めます。この光の通り道と、光軸とでできる三角形を考えます。円板の位置でできる小さな三角形と、レンズの位置でできる大きな三角形は、形が同じ(相似)です。
レンズまでの距離(10 cm)は円板までの距離(5 cm)のちょうど2倍なので、三角形の高さの比も2倍になります。レンズの縁の高さが 6 cm なので、円板の縁の高さ(半径)はその半分の 3 cm となります。

結論と吟味

像が欠け始めるときの円板の半径は \(3 \, \text{cm}\) となりました。これは、レンズの半径 \(6 \, \text{cm}\) よりも小さく、妥当な値です。

解答 (欠け始めるときの半径) \(3 \, \text{cm}\)

像が完全に消えるときの半径

思考の道筋とポイント
「像が完全に消える」のは、物体のすべての点から出る光が、レンズのどの部分にも全く届かなくなったときです。
これを考えるには、逆に「ギリギリ像ができる」限界の状況を考えます。
像が形成されるためには、物体上の各点から出た光が、レンズのどこか一点でも通過すればよいです。
像が「完全に」消えるのは、物体の最も見えにくくなる点(この場合は先端)から出る光さえも、レンズに全く届かなくなった瞬間です。
最も最後に遮られる光線は、物体の先端から出て、レンズの上端に向かう光線です。
したがって、「像が完全に消える」のは、この「物体の先端 \(\rightarrow\) レンズの上端」を結ぶ光線が、円板の縁にちょうど接するときです。
この設問における重要なポイント

  • 像が完全に消えるのは、物体の先端から出る光がレンズに全く当たらなくなったとき。
  • 限界状態は、物体の先端、円板の縁、レンズの上端が一直線上に並ぶとき。
  • この光線と、それらの点から光軸に平行な線で作られる図形の相似関係を利用する。

具体的な解説と立式
物体の先端をS(高さ \(2 \, \text{cm}\))、円板の縁をQ(高さ \(r\))、レンズの上端をP(高さ \(6 \, \text{cm}\))とします。
点S, Q, Pが一直線上に並ぶときを考えます。
Sを通り光軸に平行な直線を描き、円板の位置を通る垂線との交点をR、レンズの位置を通る垂線との交点をTとします。
このとき、\(\triangle \text{SRQ}\) と \(\triangle \text{STP}\) は相似な直角三角形になります。
辺の長さは以下の通りです。

  • SR = (円板の中心までの水平距離) = \(5 \, \text{cm}\)
  • ST = (レンズの中心までの水平距離) = \(10 \, \text{cm}\)
  • RQ = (円板の縁の高さ) – (物体の先端の高さ) = \(r – 2\)
  • TP = (レンズの上端の高さ) – (物体の先端の高さ) = \(6 – 2 = 4 \, \text{cm}\)

相似比から、
$$ \text{SR} : \text{ST} = \text{RQ} : \text{TP} $$
$$ 5 : 10 = (r-2) : 4 $$

使用した物理公式

  • 光の直進
  • 三角形の相似
計算過程

$$
\begin{aligned}
5 \times 4 &= 10 \times (r-2) \\[2.0ex]
20 &= 10r – 20 \\[2.0ex]
10r &= 40 \\[2.0ex]
r &= 4 \, (\text{cm})
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

像が完全に消えるのは、物体のてっぺんから出る光さえも、レンズに全く届かなくなったときです。
ギリギリの状況は、物体のてっぺん、円板の縁、レンズの一番上が一直線に並ぶときです。
この光の通り道を使って、再び相似な三角形を見つけます。今度は、物体の高さも考慮に入れる必要があります。
物体のてっぺんの高さ(2 cm)を基準線として、そこからの高さで三角形を考えると、円板の位置での三角形の高さは \(r-2\)、レンズの位置での三角形の高さは \(6-2=4\) cm となります。
距離の比が \(5:10=1:2\) なので、高さの比も \(1:2\) になります。
\(r-2\) が \(4\) の半分、つまり \(2\) になればよいので、\(r-2=2\)、よって \(r=4\) cm と計算できます。

結論と吟味

像が完全に消えるときの円板の半径は \(4 \, \text{cm}\) となりました。これは、像が欠け始めるときの半径 \(3 \, \text{cm}\) よりも大きく、レンズの半径 \(6 \, \text{cm}\) よりも小さい、妥当な値です。

解答 (完全に消えるときの半径) \(4 \, \text{cm}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • レンズによる結像と光線束の幾何学:
    • 核心: この問題の根幹は、レンズが像を結ぶという現象を、「物体上の各点からレンズの全面に向かう光線の束(光線束)」として捉え、その光線束が障害物によってどのように遮られるかを幾何学的に考察することにあります。
    • 理解のポイント:
      • 像の形成原理: 像は、物体の一点から出た無数の光線が、レンズの働きによって再び一点に集まることで形成されます。レンズの一部を覆っても、残りの部分を通過した光線だけで像は形成されますが、光量が減るため暗くなります。これが問1の答えの根拠です。
      • 光線束の限界: 物体からレンズに向かう光線束は、円錐状に広がっています。この円錐の底面がレンズの縁です。「像が欠ける・消える」という現象は、この光線束の経路の途中に置かれた障害物(円板)によって、光線がレンズに到達できなくなることで起こります。
      • 限界状態の特定: 問題を解く鍵は、「どの光線が最初に遮られ、どの光線が最後に遮られるか」という限界状態を特定することです。これは、物体の各点とレンズの縁を結ぶ多数の直線の中から、最も障害物に引っかかりやすい(あるいは、最も引っかかりにくい)直線を見つけ出す作業に相当します。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ピンホールカメラ: ピンホール(小さな穴)を通る光線束を考える問題。物体の先端と根元からそれぞれピンホールを通ってスクリーンに到達する光線を描くことで、倒立像ができることや、像の大きさが相似比で決まることを説明できます。
    • 日食・月食: 太陽、月、地球の位置関係によって、どこが本影(皆既食)になり、どこが半影(部分食)になるかを考える問題。これも、太陽の縁から出る光線が月の縁によって遮られる限界の線を幾何学的に作図することで理解できます。
    • カメラの絞り(F値): カメラのレンズの絞りは、通過する光線束の太さを変えるためのものです。絞りを絞る(円板を大きくするのに似ている)と、光量が減って画像は暗くなりますが、ピントの合う範囲(被写界深度)が深くなるという効果があります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「像が欠ける」「像が消える」の言葉に注目: これらの言葉は、光の経路が物理的に遮られていることを示唆しています。
    2. 限界となる光線を図示する:
      • 欠け始め: 「物体のどの点」から「レンズのどの点」へ向かう光が、最初に遮られるか? \(\rightarrow\) 物体の根元からレンズの上端へ向かう光。
      • 完全に消える: 「物体のどの点」から「レンズのどの点」へ向かう光が、最後に遮られるか? \(\rightarrow\) 物体の先端からレンズの上端へ向かう光。

      これらの「限界光線」を直線で描くことが、問題解決の第一歩です。

    3. 相似な三角形を探す: 描いた限界光線と、光軸や垂線などを使って、相似な三角形のペアを見つけ出します。
    4. 相似比で立式する: 見つけた相似な三角形の辺の長さの比が等しいことを利用して、方程式を立て、未知の半径 \(r\) を求めます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • レンズの上半分を覆うと像も半分になるという誤解:
    • 誤解: レンズの上半分を覆うと、像の上半分が消えたり、像の長さが半分になったりすると考えてしまう。
    • 対策: 「物体の一点から出た光は、レンズの全面を通って像の一点に集まる」という結像の基本原理を正しく理解することが不可欠です。レンズは単なる素通しの窓ではなく、光を集める機能を持った装置であることを思い出しましょう。
  • 「欠け始め」と「完全に消える」の状況の混同:
    • 誤解: 像が欠け始めるのが物体の先端から、完全に消えるのが物体の根元から、のように、考えるべき物体の点を逆にしてしまう。
    • 対策: 図を丁寧に描いてみれば明らかです。光軸に近い物体の根元から出る光線の方が、光軸から離れた先端から出る光線よりも、光軸中心にある障害物に遮られやすいです。したがって、像は根元(光軸に近い部分)から欠け始めます。
  • 相似な三角形の辺の長さを間違える:
    • 誤解: 「完全に消える」ときの計算で、物体の高さを考慮に入れ忘れて、\(r/6 = 5/10\) のように立式してしまう。
    • 対策: 相似な三角形を作図する際に、その頂点がどこにあるかを正確に把握することが重要です。「完全に消える」場合は、物体の先端(高さ2cm)が基準となるため、三角形の高さは、この基準線からの距離で測る必要があります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 三角形の相似:
    • 選定理由: この問題は、光の直進性を利用して、物体、障害物、レンズの縁が一直線に並ぶ状況を幾何学的に解く問題です。このような、直線と平行線によって構成される図形問題において、辺の長さの比を求める最も強力な数学的ツールが「三角形の相似」です。
    • 適用根拠: 光が直進するという物理法則により、物体の点、障害物の縁、レンズの縁は一直線上に並びます。この直線と、光軸(またはそれに平行な線)によって、相似な三角形が形成されます。相似な図形では対応する辺の比が等しいという数学的な定理を適用することで、未知の長さを計算することが正当化されます。この問題は、物理法則(光の直進)を数学(幾何学)の土俵に乗せて解く典型例です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 図を大きく丁寧に描く: 幾何学的な問題を解く際は、図を大きく、かつできるだけ正確に描くことが、関係性を見抜く上で非常に重要です。相似な三角形や、各部分の長さの関係が視覚的に理解しやすくなります。
  • 比の計算を確実に行う: \(5:10 = r:6\) のような比例式では、「内項の積=外項の積」(\(10 \times r = 5 \times 6\)) を使って計算するのが基本です。あるいは、\(5:10 = 1:2\) なので、\(r\) は \(6\) の \(1/2\) 倍である、と考えて \(r=3\) と計算することもできます。
  • 座標を設定して解く(別法): もし相似な三角形を見つけるのが苦手な場合、物体のある位置を原点 \((0,0)\) や \((0,2)\) とし、光軸をx軸として、限界光線が通る直線の式を求める方法もあります。例えば、「完全に消える」場合は、点 \((0,2)\) と点 \((10,6)\) を通る直線の式を求め、その直線が \(x=5\) のときに取るy座標の値が半径 \(r\) になります。これは代数的なアプローチであり、検算にも使えます。

47 レンズ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法(像の種類から向きを判断し、倍率は絶対値で計算する解法)を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 符号付きの倍率 \(m = -b/a\) を用いる解法
      • 主たる解法が、像の種類(実像/虚像)から向き(倒立/正立)を判断し、倍率の大きさは絶対値 \(|b/a|\) で計算するのに対し、別解では、倍率を符号付きの量 \(m = -b/a\) として定義し、その符号から直接、像の向きを判断します(\(m>0\) なら正立、\(m<0\) なら倒立)。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 思考の統一化: 像の種類、位置、向き、大きさといった複数の情報を、\(b\) と \(m\) という2つの量の符号と大きさだけで、機械的かつ統一的に扱うことができます。
    • ミスの軽減: 「実像は倒立、虚像は正立」というルールを暗記していなくても、倍率の符号を計算するだけで向きが自動的に決まるため、判断ミスを減らすことができます。
    • より高度な内容への橋渡し: この「符号付きの倍率」の考え方は、大学レベルの光学や、複数のレンズを組み合わせた複雑な系の解析で標準的に用いられるアプローチであり、より進んだ学習への良い橋渡しとなります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「レンズの公式と倍率の計算」です。凸レンズと凹レンズについて、物体の位置から像の位置、種類(実像か虚像か)、向き(正立か倒立か)、大きさを、レンズの公式を用いて定量的に計算する基本的な問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. レンズの公式(写像公式): 物体とレンズの距離を \(a\)、レンズと像の距離を \(b\)、焦点距離を \(f\) とすると、\(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) という関係が成り立つこと。
  2. 焦点距離の符号: 凸レンズでは \(f > 0\)、凹レンズでは \(f < 0\) として扱うこと。
  3. 像の位置の符号: 計算の結果、\(b > 0\) ならばレンズの後方に「実像」ができ、\(b < 0\) ならばレンズの前方に「虚像」ができること。
  4. 倍率の公式: 倍率 \(m\) は \(m = \displaystyle\left|\frac{b}{a}\right|\) で与えられ、像の大きさは「(物体の大きさ)\(\times m\)」で計算できること。
  5. 像の向き: 実像は「倒立」、虚像は「正立」であること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 凸レンズの場合:
    • レンズの公式に、\(a=15 \, \text{cm}\)、\(f=+10 \, \text{cm}\) を代入し、像の位置 \(b\) を求めます。
    • \(b\) の符号から、像の種類(実像/虚像)と位置を判断します。
    • 倍率の公式を用いて像の大きさを計算し、実像であることから倒立であると判断します。
  2. 凹レンズの場合:
    • レンズの公式に、\(a=15 \, \text{cm}\)、\(f=-10 \, \text{cm}\) を代入し、像の位置 \(b\) を求めます。
    • \(b\) の符号から、像の種類(実像/虚像)と位置を判断します。
    • 倍率の公式を用いて像の大きさを計算し、虚像であることから正立であると判断します。

凸レンズの場合

思考の道筋とポイント
凸レンズの焦点距離は正の値として扱います。レンズの公式に与えられた数値を代入し、像の位置 \(b\) を求めます。計算結果の \(b\) の符号が、像の性質を決定する重要な情報となります。
この設問における重要なポイント

  • 凸レンズなので、焦点距離 \(f\) は正の値: \(f = +10 \, \text{cm}\)。
  • 物体の位置 \(a = 15 \, \text{cm}\)。
  • レンズの公式 \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を用いる。
  • 計算結果の \(b\) が正なら実像、負なら虚像。

具体的な解説と立式
レンズの公式に、物体の距離 \(a=15 \, \text{cm}\) と焦点距離 \(f=10 \, \text{cm}\) を代入します。
$$ \frac{1}{15} + \frac{1}{b} = \frac{1}{10} $$
この方程式を \(b\) について解きます。
次に、倍率 \(m\) を計算し、像の長さを求めます。
$$ m = \left|\frac{b}{a}\right| $$
像の長さ \(L’\) は、元の棒の長さ \(L=3 \, \text{cm}\) に倍率 \(m\) を掛けて求めます。
$$ L’ = L \times m $$

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率の公式: \(m = \displaystyle\left|\frac{b}{a}\right|\)
計算過程

像の位置 \(b\)
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{b} &= \frac{1}{10} – \frac{1}{15} \\[2.0ex]
&= \frac{3 – 2}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{30}
\end{aligned}
$$
よって、\(b = 30 \, (\text{cm})\)。
\(b\) が正の値なので、レンズの後方 \(30 \, \text{cm}\) の位置に実像ができます。

像の長さ \(L’\)
$$
\begin{aligned}
m &= \left|\frac{30}{15}\right| \\[2.0ex]
&= 2
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
L’ &= 3 \times 2 \\[2.0ex]
&= 6 \, (\text{cm})
\end{aligned}
$$
実像なので、向きは倒立です。

この設問の平易な説明

虫眼鏡(凸レンズ)で、焦点より少し外側に物体を置いたときの像を計算します。レンズの公式という便利な式に、物体までの距離(15 cm)と焦点距離(10 cm)を入れると、像ができる位置が計算できます。結果がプラスの値(30 cm)だったので、レンズの後ろにスクリーンを置くと実際に映る「実像」ができることがわかります。
また、倍率を計算すると2倍になったので、3 cmの棒は6 cmの像になります。実像は上下さかさま(倒立)に映るのがルールです。

結論と吟味

レンズの後方 \(30 \, \text{cm}\) の位置に、長さ \(6 \, \text{cm}\) の倒立実像ができる、という結果が得られました。
物体の位置 \(a=15 \, \text{cm}\) は、焦点距離 \(f=10 \, \text{cm}\) と \(2f=20 \, \text{cm}\) の間にあります。このとき、\(2f\) の外側に拡大された倒立実像ができるという性質と、計算結果(\(b=30 \, \text{cm}\)、倍率2倍)は一致しており、妥当です。

解答 (凸レンズ) レンズの後方 \(30 \, \text{cm}\) に、長さ \(6 \, \text{cm}\) の倒立した実像ができる。

凹レンズの場合

思考の道筋とポイント
凹レンズの焦点距離は負の値として扱います。これが凸レンズの場合との唯一の違いです。レンズの公式に \(f=-10 \, \text{cm}\) を代入して、像の位置 \(b\) を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 凹レンズなので、焦点距離 \(f\) は負の値: \(f = -10 \, \text{cm}\)。
  • 物体の位置 \(a = 15 \, \text{cm}\)。
  • 計算結果の \(b\) が負になるはずで、これは虚像を意味する。

具体的な解説と立式
レンズの公式に、物体の距離 \(a=15 \, \text{cm}\) と焦点距離 \(f=-10 \, \text{cm}\) を代入します。
$$ \frac{1}{15} + \frac{1}{b} = \frac{1}{-10} $$
この方程式を \(b\) について解きます。
次に、倍率 \(m\) を計算し、像の長さを求めます。
$$ m = \left|\frac{b}{a}\right| $$
像の長さ \(L’\) は、元の棒の長さ \(L=3 \, \text{cm}\) に倍率 \(m\) を掛けて求めます。
$$ L’ = L \times m $$

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 倍率の公式: \(m = \displaystyle\left|\frac{b}{a}\right|\)
計算過程

像の位置 \(b\)
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{b} &= -\frac{1}{10} – \frac{1}{15} \\[2.0ex]
&= \frac{-3 – 2}{30} \\[2.0ex]
&= -\frac{5}{30} \\[2.0ex]
&= -\frac{1}{6}
\end{aligned}
$$
よって、\(b = -6 \, (\text{cm})\)。
\(b\) が負の値なので、レンズの前方 \(6 \, \text{cm}\) の位置に虚像ができます。

像の長さ \(L’\)
$$
\begin{aligned}
m &= \left|\frac{-6}{15}\right| \\[2.0ex]
&= \frac{6}{15} \\[2.0ex]
&= \frac{2}{5} \\[2.0ex]
&= 0.4
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
L’ &= 3 \times 0.4 \\[2.0ex]
&= 1.2 \, (\text{cm})
\end{aligned}
$$
虚像なので、向きは正立です。

この設問の平易な説明

近視用のメガネなどに使われる凹レンズの場合を計算します。凹レンズの焦点距離はマイナスの値として扱います。
レンズの公式に物体までの距離(15 cm)と焦点距離(-10 cm)を入れると、像ができる位置が計算できます。結果がマイナスの値(-6 cm)だったので、これはレンズを覗き込んだときに見える「虚像」が、レンズの手前側にできることを意味します。
また、倍率を計算すると0.4倍になったので、3 cmの棒は1.2 cmの縮んだ像になります。虚像は見たままの向き(正立)で見えるのがルールです。

結論と吟味

レンズの前方 \(6 \, \text{cm}\) の位置に、長さ \(1.2 \, \text{cm}\) の正立虚像ができる、という結果が得られました。
凹レンズは、物体の位置にかかわらず、常にレンズの前方(物体側)の焦点より内側に、縮小された正立虚像を作ります。計算結果(\(b=-6 \, \text{cm}\) は焦点の内側、倍率0.4倍)はこの性質と一致しており、妥当です。

解答 (凹レンズ) レンズの前方 \(6 \, \text{cm}\) に、長さ \(1.2 \, \text{cm}\) の正立した虚像ができる。
別解: 符号付きの倍率 \(m = -b/a\) を用いる解法

思考の道筋とポイント
この解法では、倍率を \(m = -b/a\) と符号を含めて定義します。この定義を用いると、倍率の「大きさ」が像の拡大・縮小率を、倍率の「符号」が像の向き(正立・倒立)を一度に教えてくれます。

  • \(|m| > 1\): 拡大像
  • \(|m| < 1\): 縮小像
  • \(m > 0\): 正立像
  • \(m < 0\): 倒立像

この方法を使えば、「実像だから倒立」「虚像だから正立」というルールを覚えなくても、計算結果から機械的に向きを判断できます。
この設問における重要なポイント

  • 符号付き倍率の定義: \(m = -b/a\)。
  • \(m\) の符号が正なら正立、負なら倒立。
  • 像の大きさは、物体の大きさに \(|m|\) を掛けて求める。

具体的な解説と立式
凸レンズの場合
レンズの公式から、\(a=15\), \(f=10\) より \(b=30\) であることは主たる解法と同じです。
この \(a\) と \(b\) の値を、符号付き倍率の公式に代入します。
$$ m = -\frac{b}{a} $$
像の長さ \(L’\) は \(L’ = L \times |m|\) で計算します。

凹レンズの場合
レンズの公式から、\(a=15\), \(f=-10\) より \(b=-6\) であることは主たる解法と同じです。
この \(a\) と \(b\) の値を、符号付き倍率の公式に代入します。
$$ m = -\frac{b}{a} $$

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)
  • 符号付き倍率の公式: \(m = -b/a\)
計算過程

凸レンズの場合
$$
\begin{aligned}
m &= -\frac{30}{15} \\[2.0ex]
&= -2
\end{aligned}
$$

  • \(m=-2\) なので、符号が負であることから「倒立像」であるとわかります。
  • 大きさは \(|m|=2\) なので2倍に拡大されます。像の長さは \(3 \times 2 = 6 \, \text{cm}\)。
  • \(b=30\) なので、レンズの後方 \(30 \, \text{cm}\) の実像です。

これらをまとめると、「レンズの後方 \(30 \, \text{cm}\) に、長さ \(6 \, \text{cm}\) の倒立した実像ができる」となります。

凹レンズの場合
$$
\begin{aligned}
m &= -\frac{-6}{15} \\[2.0ex]
&= \frac{6}{15} \\[2.0ex]
&= 0.4
\end{aligned}
$$

  • \(m=0.4\) なので、符号が正であることから「正立像」であるとわかります。
  • 大きさは \(|m|=0.4\) なので0.4倍に縮小されます。像の長さは \(3 \times 0.4 = 1.2 \, \text{cm}\)。
  • \(b=-6\) なので、レンズの前方 \(6 \, \text{cm}\) の虚像です。

これらをまとめると、「レンズの前方 \(6 \, \text{cm}\) に、長さ \(1.2 \, \text{cm}\) の正立した虚像ができる」となります。

この設問の平易な説明

倍率を計算するときに、マイナス符号をつけた公式 \(m = -b/a\) を使うと、もっと便利になります。
計算結果の \(m\) がマイナスになれば「倒立」、プラスになれば「正立」と、向きが自動的にわかります。
像の大きさは、この \(m\) のプラス・マイナスを無視した「大きさ」だけを使って計算します。
この方法なら、「実像は倒立で…」といちいち思い出さなくても、計算だけで像のすべての情報が手に入ります。

結論と吟味

主たる解法と完全に同じ結果が得られました。符号付きの倍率を用いることで、像の向きの判断を計算に含めることができ、よりシステマティックに問題を解くことができます。

解答
(凸レンズ) レンズの後方 \(30 \, \text{cm}\) に、長さ \(6 \, \text{cm}\) の倒立した実像ができる。
(凹レンズ) レンズの前方 \(6 \, \text{cm}\) に、長さ \(1.2 \, \text{cm}\) の正立した虚像ができる。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • レンズの公式と符号のルール:
    • 核心: この問題の根幹は、レンズによる結像を定量的に扱うための「レンズの公式」\(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) と、それに伴う「符号のルール」を正確に理解し、適用することにあります。
    • 理解のポイント:
      • レンズの公式の普遍性: このシンプルな数式一つで、凸レンズ・凹レンズ、実像・虚像といった、あらゆる状況の結像関係を統一的に記述できます。
      • 符号に込められた物理的意味: この公式が強力なのは、各文字(\(a, b, f\))の正負の符号に物理的な意味が込められているからです。
        • \(f\) の符号: レンズの種類(光を集めるか、発散させるか)を示す。\(\rightarrow\) 凸レンズ: \(+\), 凹レンズ: \(-\)
        • \(b\) の符号: 像のできる位置と種類を示す。\(\rightarrow\) 実像(レンズ後方): \(+\), 虚像(レンズ前方): \(-\)
      • 倍率: 像の大きさは倍率 \(m = |b/a|\) で決まります。さらに、別解で示したように、符号付きの倍率 \(m=-b/a\) を考えれば、\(m\) の符号が像の向き(正立/倒立)まで教えてくれます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 球面鏡の公式: 凹面鏡や凸面鏡にも、レンズの公式と全く同じ形の公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) が成り立ちます。焦点距離の符号(凹面鏡: \(+\), 凸面鏡: \(-\))や、像の位置・種類の符号ルールもレンズと共通しているため、同じ考え方で解くことができます。
    • 組み合わせレンズ: 2枚以上のレンズを組み合わせた光学系(顕微鏡、望遠鏡など)。1枚目のレンズによって作られた像を、2枚目のレンズの「物体」とみなして、レンズの公式を繰り返し適用することで、最終的な像の位置や大きさを求めることができます。
    • 作図問題との連携: レンズの公式で計算した結果が、作図によって得られる結果と一致することを確認する問題。計算と作図の両方からアプローチすることで、理解を深めることができます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. レンズの種類を特定し、\(f\) の符号を決める: まず問題文から「凸レンズ」か「凹レンズ」かを読み取り、焦点距離 \(f\) に正しい符号(\(+\) or \(-\))をつけます。これが最も重要な第一歩です。
    2. 物体と像の位置関係を整理する: 物体の位置 \(a\) は、通常レンズの前方にあるので正です。求めたい像の位置を \(b\) とおきます。
    3. レンズの公式に代入する: \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) に、符号をつけた \(a\) と \(f\) の値を代入し、\(\frac{1}{b}\) について解きます。
    4. 計算結果 \(b\) の符号を解釈する:
      • \(b>0\) \(\rightarrow\) レンズ後方、実像、倒立
      • \(b<0\) \(\rightarrow\) レンズ前方、虚像、正立

      これらの対応関係を思い出して、像の性質を記述します。

    5. 倍率と像の大きさを計算する: \(m = |b/a|\) を計算し、物体の大きさに掛けて像の大きさを求めます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 焦点距離 \(f\) の符号ミス:
    • 誤解: 凹レンズの場合でも、焦点距離を正の値のまま公式に代入してしまう。
    • 対策: 「凹レンズ \(\rightarrow f\) は負」というルールを徹底的に覚えましょう。凹レンズは光を発散させるため、実像の焦点を持たない(虚焦点)とイメージすると、負の符号と結びつきやすくなります。
  • 分数の計算ミス:
    • 誤解: \(\frac{1}{b} = \frac{1}{10} – \frac{1}{15}\) のような分数の引き算で、通分を間違えたり、分子の計算を間違えたりする。
    • 対策: 焦らずに最小公倍数(この場合は30)を見つけて通分します。\(\frac{3}{30} – \frac{2}{30} = \frac{1}{30}\)。特に、凹レンズの計算で \(\frac{1}{b} = -\frac{1}{10} – \frac{1}{15}\) のように負の数が出てくるときは、符号の扱いに細心の注意を払います。
  • 倍率の計算で符号を無視する:
    • 誤解: 凹レンズで \(b=-6\) となった場合に、倍率を \(m = |-6/15|\) と絶対値で計算すべきところを、\(m=-6/15\) としてしまい、像の長さが負になるなどと混乱する。
    • 対策: 倍率の大きさ(拡大・縮小率)を求める公式は \(m=|b/a|\) であり、常に正の値をとることを明確に意識します。別解で用いた符号付きの倍率 \(m=-b/a\) は、あくまで向きを判断するための道具であり、像の「長さ」を計算する際は、その絶対値 \(|m|\) を使うことを忘れないようにします。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • レンズの公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\):
    • 選定理由: この問題は、物体の位置、像の位置、焦点距離という3つの量の関係を問う、レンズの最も基本的な計算問題です。これらの3者を直接結びつける関係式がレンズの公式であり、これを選択するのは必然です。
    • 適用根拠: この公式は、レンズの作図法における相似な三角形の関係から導出されます。物体とその像、光軸、そしてレンズの中心を通る光線によって作られる2つの相似な三角形と、焦点を通る光線によって作られる別の2つの相似な三角形の関係式を連立させることで、この美しい逆数和の式が導かれます。つまり、この公式は幾何光学的な光線の追跡の結果を、代数的に表現したものと言えます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 逆数で計算を進める: レンズの公式では、まず \(\frac{1}{b}\) の値を求め、最後にその逆数をとって \(b\) を求める、という手順を踏みます。途中で分数のまま計算を進め、最後の最後まで逆数をとるのを忘れないように注意しましょう。
  • 単位を確認する: 問題で与えられている長さの単位(cm)で計算を進めれば、答えの単位も cm となります。もしメートル(m)で答えを要求された場合は、最後に単位換算が必要です。
  • 作図による検算: 計算で求めた結果が妥当かどうかを、簡単な作図で確認する習慣をつけると非常に有効です。
    • 凸レンズの場合:\(a=15, f=10\) なので、物体は \(f\) と \(2f\) の間にあります。作図すれば、\(2f\) の外側に倒立の拡大実像ができることがすぐにわかり、計算結果 \(b=30\), 像の長さ \(6 \, \text{cm}\), 倒立実像と一致することを確認できます。
    • 凹レンズの場合:作図すれば、必ず焦点の内側に正立の縮小虚像ができることがわかります。計算結果 \(b=-6\), 像の長さ \(1.2 \, \text{cm}\), 正立虚像と一致することを確認できます。
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48 レンズ

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「組み合わせレンズ」です。2枚のレンズを組み合わせた光学系において、最終的にどこにどのような像ができるかを、レンズの公式を段階的に適用して解く問題です。1枚目のレンズが作る像が、2枚目のレンズにとっての「物体」として機能する、という考え方を理解することが核心となります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を正しく使えること。
  2. 符号のルール: 凸レンズの焦点距離は正、凹レンズは負。実像の位置は正、虚像の位置は負。
  3. 組み合わせレンズの原理: 1枚目のレンズL\(_1\)が作る像を、2枚目のレンズL\(_2\)の「物体」とみなして計算を進めること。
  4. 虚光源(虚物体): 1枚目のレンズが作る像が、2枚目のレンズの後方にできる場合、それは2枚目のレンズにとって「虚光源(虚物体)」として扱われること。この場合、物体距離 \(a\) を負の値として公式に代入する。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. L\(_1\)による像:
    • まず、レンズL\(_1\)のみを考え、光源の位置からレンズの公式を用いて、L\(_1\)が作る像の位置と種類を求めます。
  2. L\(_2\)の種類の判断と焦点距離の計算:
    • 次に、L\(_1\)が作った像を、L\(_2\)にとっての「物体」とみなします。この「物体」からL\(_2\)までの距離 \(a_2\) を計算します。
    • 問題文で与えられた最終的な像の位置(L\(_2\)の後方 \(30 \, \text{cm}\))を \(b_2\) とします。
    • レンズの公式 \(\displaystyle\frac{1}{a_2} + \frac{1}{b_2} = \frac{1}{f}\) に \(a_2\) と \(b_2\) を代入し、L\(_2\)の焦点距離 \(f\) を求めます。
    • 計算された \(f\) の符号(正か負か)から、L\(_2\)が凸レンズか凹レンズかを判断します。

L\(_1\)による像はどこにできるか。

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