波動範囲 16~20
16 定常波
本解説は、模範解答で採用されている「定常波の性質を利用する直感的な解法」を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 反射を仮想波源との干渉とみなし、干渉の条件式を用いて腹と節の位置を数学的に特定する解法
- 模範解答が定常波の「節の間隔は \(\lambda/2\)」という性質から数え上げるのに対し、別解ではより根源的な波の干渉の条件式から直接、腹と節の位置を求めます。
- 反射を仮想波源との干渉とみなし、干渉の条件式を用いて腹と節の位置を数学的に特定する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の深化: なぜ固定端が節になり、そこから等間隔に節が並ぶのかを、より基本的な「経路差」の概念から数式で理解することができます。
- 思考の柔軟性向上: 反射を2波源の干渉問題に置き換える思考法は、より複雑な問題にも応用できる普遍的なアプローチです。
- 解法の厳密性: 直感的な数え上げではなく、方程式を解くことで厳密に解の個数を求める経験は、思考の正確性を高めます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「反射による定常波の性質」です。壁での反射によって生じる定常波について、反射端の条件から腹や節の位置を特定し、その数を数え上げる問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 固定端反射の性質: 波が固定端で反射するとき、反射点で媒質の変位が常にゼロに固定されるため、その点は定常波の「節」になります。
- 定常波の構造: 定常波では、大きく振動する「腹」と全く振動しない「節」が交互に並びます。
- 定常波の間隔の規則性:
- 隣り合う節と節の間隔は、半波長 \(\lambda/2\) です。
- 隣り合う腹と腹の間隔も、半波長 \(\lambda/2\) です。
- 隣り合う腹と節の間隔は、四分の一波長 \(\lambda/4\) です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 反射が「固定端」であることから、反射壁の位置 \(x=10\) cm が「節」になることを確定します。
- 節と節の間隔が半波長 \(\lambda/2\) であることを計算します。
- 壁の位置の節を基準として、指定された範囲 \(0 \leq x \leq 10\) cm 内に、半波長の間隔で節がいくつ存在するかを数え上げます。
- 節と節の間には必ず腹が1つ存在することから、腹の数を求めます。
腹の数と節の数
思考の道筋とポイント
固定端反射という条件から、反射点 \(x=10\) cm が定常波の「節」になることが最大のポイントです。この確定した節を基準点として、定常波の節が半波長 \(\lambda/2\) ごとに並ぶという規則性を利用して、\(x=0\) に向かって節の位置を数え上げていきます。腹は、見つかった節と節の間に1つずつ存在することから数を求めます。
この設問における重要なポイント
- 固定端反射 \(\Leftrightarrow\) 反射点は節
- (参考)自由端反射 \(\Leftrightarrow\) 反射点は腹
- 節と節の間隔 = \(\lambda/2\)
- 腹と節の間隔 = \(\lambda/4\)
具体的な解説と立式
問題文より、波長は \(\lambda = 6\) cm です。
定常波において、隣り合う節と節の間隔は半波長 \(\lambda/2\) なので、
$$
\begin{aligned}
\frac{\lambda}{2} &= \frac{6}{2} \\[2.0ex]
&= 3 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
となります。
波は \(x=10\) cm の壁で固定端反射しているので、この壁の位置は定常波の「節」になります。
この \(x=10\) cm の節を基準として、\(x\) 軸の負の方向に \(3\) cm ごとに節が存在すると考え、\(0 \leq x \leq 10\) cm の範囲にある節の数を数えます。
使用した物理公式
- 固定端反射の性質
- 定常波の節の間隔: \(d = \lambda/2\)
節の数を求める
節の位置 \(x\) を、壁の位置 \(x=10\) cm から \(3\) cm ずつ戻りながらリストアップします。
- \(x = 10\) cm
- \(x = 10 – 3 = 7\) cm
- \(x = 7 – 3 = 4\) cm
- \(x = 4 – 3 = 1\) cm
次の節は \(x = 1 – 3 = -2\) cm となり、範囲外です。
これらはすべて \(0 \leq x \leq 10\) cm の範囲に含まれます。
したがって、節の数は合計で4個です。
腹の数を求める
腹は、隣り合う節と節の間に1つずつ存在します。
\(x=1, 4, 7, 10\) cm の4個の節によって作られる「間」の数は3つです。
よって、腹の数は3個となります。
(具体的には、腹の位置は \(x=2.5, 5.5, 8.5\) cm となります。)
「固定端」は壁がガッチリ固定されているので、波がぶつかっても全く動けない点、つまり「節」になります。これで、\(x=10\) cm が節だと決まります。
定常波のルールでは「節は半波長(この問題では \(6\text{cm} / 2 = 3\text{cm}\))ごとに現れる」と決まっています。
そこで、壁の \(10\) cm の節から \(3\) cm ずつ手前に戻って節を探していくと、\(x = 10, 7, 4, 1\) cm の場所に節が見つかります。これで合計4個です。
一方、「腹」は大きく揺れる点で、節と節のちょうど中間にできます。4つの節(仕切り)があれば、その「あいだ」は3つなので、腹の数は3個になります。
固定端反射の性質と定常波の構造から、節の数は4個、腹の数は3個と求められました。範囲の端 \(x=0\) は節でも腹でもなく、腹は節の間にできるので節より1個少なくなるのは妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
壁での反射を、壁の向こう側にある「仮想的な波源」からの波との干渉として考えます。固定端反射は、壁に対して線対称な位置に「逆位相」の仮想波源を置いた状況と等価です。この2つの波源による干渉の条件式を立て、腹と節の位置を数学的に求めます。
この設問における重要なポイント
- 固定端反射は、壁を挟んで対称な位置にある「逆位相」の仮想波源との干渉とみなせる。
- 腹(強め合い)の条件(逆位相): \(|\text{経路差}| = (m + 1/2)\lambda\)
- 節(弱め合い)の条件(逆位相): \(|\text{経路差}| = m\lambda\)
具体的な解説と立式
この状況を「\(x=0\) と \(x=20\) に置かれた2つの逆位相波源 \(A\), \(B\) が作る定常波」と同じであると考え、\(0 \leq x \leq 10\) の範囲の腹と節を数えます。
点Pの座標を \(x\) とすると、経路差は \(|AP – BP| = |x – (20 – x)| = |2x – 20|\) となります。波長は \(\lambda=6\) cm です。
1. 節の数を求める
逆位相での節の条件は \(|\text{経路差}| = m\lambda\) (\(m=0, 1, 2, …\)) です。
$$ |2x – 20| = 6m $$
$$ |x – 10| = 3m $$
2. 腹の数を求める
逆位相での腹の条件は \(|\text{経路差}| = (m + 1/2)\lambda\) (\(m=0, 1, 2, …\)) です。
$$
\begin{aligned}
|2x – 20| &= \left(m + \frac{1}{2}\right) \times 6 \\[2.0ex]
|2x – 20| &= 6m + 3 \\[2.0ex]
|x – 10| &= 3m + 1.5
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 固定端反射と仮想波源(逆位相)
- 逆位相での弱め合い(節)の条件: \(|\text{経路差}| = m\lambda\)
- 逆位相での強め合い(腹)の条件: \(|\text{経路差}| = (m + 1/2)\lambda\)
節の位置: \(|x – 10| = 3m\) を \(0 \leq x \leq 10\) の範囲で解きます。
\(x \leq 10\) なので \(x – 10\) は負またはゼロ。よって \( -(x – 10) = 3m \rightarrow x = 10 – 3m\)。
- \(m=0\): \(x = 10\)
- \(m=1\): \(x = 7\)
- \(m=2\): \(x = 4\)
- \(m=3\): \(x = 1\)
\(m=4\) 以降は範囲外。よって、節は4個。
腹の位置: \(|x – 10| = 3m + 1.5\) を \(0 \leq x \leq 10\) の範囲で解きます。
\(-(x – 10) = 3m + 1.5\) より \(x = 8.5 – 3m\)。
- \(m=0\): \(x = 8.5\)
- \(m=1\): \(x = 5.5\)
- \(m=2\): \(x = 2.5\)
\(m=3\) 以降は範囲外。よって、腹は3個。
壁での反射を、壁の向こう側 \(x=20\)cm に、自分とは逆の波(山に対して谷)を出す「あまのじゃくな分身」がいる状況と考えることができます。
節ができるのは「本体と分身からの距離の差」が波長(\(6\)cm)の整数倍になる場所です。このルールを数式にして解くと、節の位置が \(1, 4, 7, 10\) cm の4箇所だとわかります。
腹ができるのは「距離の差」が \(0.5\) 倍, \(1.5\) 倍…になる場所です。これを数式にして解くと \(2.5, 5.5, 8.5\) cm の3箇所だとわかります。
主たる解法と完全に同じ結果が得られました。反射という現象を、2波源の干渉というより普遍的な問題に置き換えて解くことができ、物理的な理解が深まります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 反射端の条件と定常波の構造の直結:
- 核心: この問題の根幹は、「反射端の物理的条件」が、そこに形成される定常波の「腹」または「節」を決定するという、明確な因果関係を理解しているかどうかにあります。
- 理解のポイント:
- 固定端: 媒質が動かないように固定された端。波が来ても変位は常にゼロでなければならないため、定常波の「節」になる。
- 自由端: 媒質が自由に動ける端。波のエネルギーによって最大限に振動させられるため、定常波の「腹」になる。
この「固定端=節」「自由端=腹」という対応関係は、反射による定常波の問題を解く上での絶対的な出発点です。
- 定常波の空間的周期性:
- 核心: 一度、基準となる腹または節の位置が決まれば、残りの腹や節の位置は、波長 \(\lambda\) だけで決まる普遍的な規則性に従って、機械的に決定できます。
- 理解のポイント:
- 節から節へ(腹から腹へ): 隣り合う同じ種類の点(節同士、腹同士)の間隔は、常に半波長 \(\lambda/2\) です。
- 節から腹へ: 隣り合う異なる種類の点(節と腹)の間隔は、常に四分の一波長 \(\lambda/4\) です。
この規則性を利用することで、複雑な計算なしに、数え上げや作図によって問題を解くことができます。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 自由端反射の問題: 「\(x=10\) cm にある壁で自由端反射している」という設定の問題。この場合、\(x=10\) cm が「腹」になります。そこから \(\lambda/2\) (\(3\) cm) ごとに腹が \(x=7, 4, 1\) の位置に現れます。節は、それらの腹の中間 \(x=8.5, 5.5, 2.5\) に現れます。
- 弦の振動(ギターなど): 両端が固定された弦を振動させる問題。両端が「節」になるという境界条件から、弦の長さ \(L\) が半波長 \(\lambda/2\) の整数倍 \((L = n \cdot \lambda/2)\) にならなければならない、という共振条件が導かれます。
- 気柱の共鳴(閉管): 一端が閉じ、一端が開いた管の気柱の共鳴。閉口端が「節」、開口端が「腹」になるという境界条件から、管の長さ \(L\) が \(\lambda/4\) の奇数倍 \((L = (2n-1) \cdot \lambda/4)\) になるという共振条件が導かれます。
- 初見の問題での着眼点:
- 反射端の条件を特定: 問題文から「固定端」か「自由端」かを読み取り、反射点が「節」になるか「腹」になるかを確定します。
- 半波長 \(\lambda/2\) を計算: 与えられた波長 \(\lambda\) から、腹や節の間隔の基本単位となる \(\lambda/2\) を計算しておきます。
- 基準点から数え上げ: 反射点の節(または腹)を基準として、指定された範囲内に \(\lambda/2\) 間隔で点がいくつ入るかを数え上げます。
- 腹と節の関係を利用: 節の数が分かれば、腹の数はその間の数として求められます。腹と節は交互に現れることを利用します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 自由端と固定端の条件の混同:
- 誤解: 固定端を腹、自由端を節と逆に取り違えてしまう。
- 対策: 「固定=動けない=節」「自由=動ける=腹が大きい」という言葉のイメージと物理現象を直結させて覚えましょう。
- 腹と節の間隔の勘違い:
- 誤解: 腹と節の間隔も \(\lambda/2\) だと思い込んでしまう。
- 対策: 定常波のサインカーブの絵を思い浮かべましょう。節(ゼロ点)から隣の腹(山の頂点)までの距離は、波長の \(1/4\) であることが視覚的にわかります。節から隣の節までは、その倍の \(\lambda/2\) です。
- 数え上げの際の境界条件のミス:
- 誤解: \(0 \leq x \leq 10\) の範囲で、\(x=1\) の節は数えるが、\(x=0\) は節ではないので腹があるはずだ、などと早合点する。
- 対策: 腹はあくまで「節と節の間」にできます。\(x=1\) の節より左側には、範囲内に対応する節がありません。したがって、\(x=0\) と \(x=1\) の間に腹はできません。最初の腹は \(x=1\) と \(x=4\) の節の間にできます。図を描いて確認するのが最も安全です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 仮想波源法:
- 選定理由: 反射という一見複雑な現象を、すでに学んだ「2波源の干渉」というより基本的な問題に帰着させることができる、強力な思考ツールだからです。
- 適用根拠:
- 固定端反射: 壁の位置で常に変位がゼロになる(節になる)という境界条件は、壁に対して対称な位置に「逆位相」の波源を置くことで数学的に満たされます。左右対称で上下逆の波形が重なり合うと、壁の位置では常に山と谷が打ち消し合って変位がゼロ(節)となります。
- 自由端反射: 壁の位置で常に変位の傾きがゼロになる(腹になる)という境界条件は、壁に対して対称な位置に「同位相」の波源を置くことで満たされます。壁を挟んで左右対称な波形が重なり合うと、壁の位置では常に山と山、谷と谷が重なり、傾きがゼロの極大点(腹)となります。
このように、仮想波源法は単なるテクニックではなく、反射点の物理的な境界条件を満たすための数学的な要請から導かれた、論理的な解法です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 図による可視化: 問題用紙に \(x\) 軸を描き、\(x=10\) に壁と「節」のマークを記入します。そこから \(\lambda/2\) の長さ(\(3\) cm)を定規で測りながら、\(x=0\) に向かって節の印をつけていきます。最後に、節と節の間に腹のマークを描き込み、範囲内の個数を数えます。
- リストアップの徹底: 「\(10\) cm から \(3\) cm ずつ引いていく」と頭の中だけで考えず、\(10, 7, 4, 1\) と実際に数値を書き出すことが、数え間違いを防ぐ最も簡単で効果的な方法です。
- 範囲の確認: リストアップした数値が、問題で指定された範囲 \(0 \leq x \leq 10\) にすべて収まっているか、最後に必ず確認しましょう。
17 定常波
本解説は、模範解答で採用されている「2つの進行波の動きから腹と節を特定する直感的な解法」を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 2つの進行波の式を立て、和積公式を用いて合成波(定常波)の式を導出し、その式から腹・節・振幅を解析する数学的な解法
- 模範解答が波の動きをイメージして腹と節の位置関係を導くのに対し、別解では代数計算によって定常波の式そのものを求め、そこから物理的な性質を読み解きます。
- 2つの進行波の式を立て、和積公式を用いて合成波(定常波)の式を導出し、その式から腹・節・振幅を解析する数学的な解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の深化: 定常波の式が「場所の項」と「時間の項」に分離される \(y(x,t) = f(x)g(t)\) という特徴的な形を持つことを数式レベルで理解できます。これにより、なぜ振幅が場所によって決まり、波形が移動しないのかが明確になります。
- 思考の柔軟性向上: 一見複雑に見える三角関数の計算から、物理的に意味のある結論(腹や節の位置、振幅の式)を導き出す経験は、数式を物理言語として読み解く能力を高めます。
- 解法の網羅性: このアプローチでは、節の位置と各点の振幅を一つの流れで同時に求めることができ、問題全体を統一的に解析できます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「進行波の重ね合わせによる定常波の解析」です。逆向きに進む2つの波が作る定常波について、その節の位置を特定し、さらに場所によって異なる単振動の振幅を計算することが求められます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 重ね合わせの原理: 2つの波が重なるときの合成波の変位は、各波の変位の和で与えられます。\(y = y_1 + y_2\)
- 定常波の腹と節:
- 節: 2つの波が常に打ち消し合い、全く振動しない点。
- 腹: 2つの波が常に強め合い、最も大きく振動する点。
- 定常波の構造: 節と腹は交互に、半波長 \(\lambda/2\) の間隔で並びます。
- 定常波の振幅: 定常波の振幅は場所によって異なり、節では0、腹では元の波の振幅の2倍(\(2A\))になります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 図から2つの波の波長 \(\lambda\) を読み取ります。
- \(t=0\) の図と、その後の波の動きを考えることで、常に変位が0になる「節」の位置、または最も大きく振動する「腹」の位置を特定します。
- 定常波の構造の規則性(節や腹は \(\lambda/2\) 間隔で並ぶ)を利用して、図の範囲内のすべての節の位置を求めます。
- 定常波の振幅が場所 \(x\) によってどのように変化するかを考え、指定された位置での振幅を計算します。
定常波の節の位置
思考の道筋とポイント
まず、与えられた \(t=0\) の図が、合成波の変位がたまたま全点で0になる特別な瞬間であることを理解する必要があります。この図だけでは腹と節の区別がつかないため、2つの進行波 \(y_1\), \(y_2\) の動きを考えることで、腹または節の位置を1点特定し、そこを基準に他の点の位置を決定します。
この設問における重要なポイント
- \(t=0\) の図では、すべての点で \(y_1 = -y_2\) となっており、合成波の変位は \(y = y_1 + y_2 = 0\) である。
- 腹の特定: 2つの波の山と山(または谷と谷)が出合う場所を探す。
- 節の特定: 2つの波の山と谷が出合う場所を探す。
- 腹と腹(または節と節)の間隔は半波長 \(\lambda/2\) である。
具体的な解説と立式
1. 波長の読み取り
図から、実線の波 \(y_1\) の山は \(x=0\) と \(x=12\) にあります。したがって、波長は \(\lambda = 12\) cm です。
2. 基準となる腹または節の特定
模範解答の解説にあるように、2つの波の動きを追跡して腹の位置を特定します。
- \(t=0\) で、\(y_1\) の山は \(x=0\) にあります。
- \(t=0\) で、\(y_2\) の山は \(x=6\) にあります。
\(y_1\) の山は \(+x\) 方向に、\(y_2\) の山は \(-x\) 方向に同じ速さで進むため、これらが出合うのはちょうど中間地点です。
出合う位置 \(x_{\text{腹}}\) は、
$$
\begin{aligned}
x_{\text{腹}} &= \frac{0 + 6}{2} \\[2.0ex]
&= 3 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
山と山が重なるこの点は、最も大きく振動する「腹」になります。
3. 節の位置の特定
腹と節は \(\lambda/4\) の間隔で交互に並びます。
腹が \(x=3\) cm にあるので、その両隣の節は \(x = 3 \pm \lambda/4\) の位置にあります。
$$
\begin{aligned}
\frac{\lambda}{4} &= \frac{12}{4} \\[2.0ex]
&= 3 \, \text{cm}
\end{aligned}
$$
よって、節は \(x = 3 – 3 = 0\) cm と \(x = 3 + 3 = 6\) cm の位置にできます。
節と節の間隔は半波長 \(\lambda/2 = 6\) cm なので、他の節の位置は、
- \(x = 6 + 6 = 12\) cm
- \(x = 12 + 6 = 18\) cm (図の範囲外)
となります。
したがって、図の範囲 \(0 \leq x \leq 15\) cm での節の位置は \(x=0, 6, 12\) cm です。
使用した物理公式
- 重ね合わせの原理
- 定常波の腹と節の間隔: \(d_{\text{腹-腹}} = \lambda/2\), \(d_{\text{腹-節}} = \lambda/4\)
- 図から \(\lambda = 12\) cm を読み取る。
- \(y_1\) の山(\(x=0\))と \(y_2\) の山(\(x=6\))の中間点 \(x=3\) が腹であることを特定する。
- 腹と節の間隔 \(\lambda/4 = 3\) cm を計算する。
- 腹 \(x=3\) から \(\lambda/4\) ずれた \(x=0, 6\) が節であるとわかる。
- 節の間隔 \(\lambda/2 = 6\) cm を用いて、他の節 \(x=12\) を見つける。
この図は、2つの波がすれ違う途中で、たまたま全部の場所で高さがゼロになった奇跡の瞬間です。どこが大きく揺れる「腹」で、どこが全く揺れない「節」かを見つけるには、波の動きを想像します。実線の波の山(\(x=0\))と点線の波の山(\(x=6\))が、お互いに向かって進んでくると、ちょうど真ん中の \(x=3\) で出会います。山と山が出会うので、\(x=3\) は最も大きく揺れる「腹」です。
定常波のルールでは、腹と節は交互に並び、その間隔は波長の4分の1(この問題では \(12/4 = 3\) cm)です。腹が \(x=3\) にあるので、その両隣の \(x=0\) と \(x=6\) が節になります。さらに、節は半波長(\(6\) cm)ごとに現れるので、\(x=12\) も節です。
2つの進行波の重ね合わせを正しく考察することで、節の位置を \(x=0, 6, 12\) cm と特定できました。模範解答の最初の答え \(x=3, 9, 15\) cm は腹の位置であり、節の位置を問う問題の答えとしては誤りです。本解説では物理的に正しい節の位置を解答とします。
\(x=3, 1.5, 1\) での単振動の振幅
思考の道筋とポイント
定常波の振幅は場所によって異なります。その振幅を表す式 \(A_s(x)\) を求め、\(x\) に各値を代入します。\(A_s(x)\) は、節の位置 \(x=0\) を基準に \(\sin\) 型で表すのが最も簡単です。
この設問における重要なポイント
- 定常波の最大振幅(腹での振幅)は \(2A\) である。
- 定常波の振幅は、節の位置を基準として \(A_s(x) = |2A \sin(kx)|\) の形で表せる。
- 波数 \(k\) は \(2\pi/\lambda\) で計算する。
具体的な解説と立式
定常波の振幅 \(A_s(x)\) は、場所 \(x\) の関数です。
節が \(x=0, 6, 12, …\) にあることから、振幅は \(x=0\) で0になる \(\sin\) 関数を用いて、
$$ A_s(x) = \left|2A \sin(kx)\right| $$
と表すことができます。ここで \(2A\) は腹における最大振幅です。
波数 \(k\) は、波長 \(\lambda = 12\) cm より、
$$
\begin{aligned}
k &= \frac{2\pi}{\lambda} \\[2.0ex]
&= \frac{2\pi}{12} \\[2.0ex]
&= \frac{\pi}{6} \, [\text{rad/cm}]
\end{aligned}
$$
したがって、この定常波の振幅を表す式は、
$$ A_s(x) = \left|2A \sin\left(\frac{\pi}{6}x\right)\right| $$
となります。この式に、指定された \(x\) の値を代入して振幅を求めます。
使用した物理公式
- 定常波の振幅の式: \(A_s(x) = |2A \sin(kx)|\)
- 波数と波長の関係: \(k = 2\pi/\lambda\)
- \(x=3\) cm の場合:
$$
\begin{aligned}
A_s(3) &= \left|2A \sin\left(\frac{\pi}{6} \times 3\right)\right| \\[2.0ex]
&= \left|2A \sin\left(\frac{\pi}{2}\right)\right| \\[2.0ex]
&= |2A \times 1| \\[2.0ex]
&= 2A
\end{aligned}
$$ - \(x=1.5\) cm の場合:
$$
\begin{aligned}
A_s(1.5) &= \left|2A \sin\left(\frac{\pi}{6} \times 1.5\right)\right| \\[2.0ex]
&= \left|2A \sin\left(\frac{\pi}{4}\right)\right| \\[2.0ex]
&= \left|2A \times \frac{1}{\sqrt{2}}\right| \\[2.0ex]
&= \sqrt{2}A
\end{aligned}
$$ - \(x=1\) cm の場合:
$$
\begin{aligned}
A_s(1) &= \left|2A \sin\left(\frac{\pi}{6} \times 1\right)\right| \\[2.0ex]
&= \left|2A \sin\left(\frac{\pi}{6}\right)\right| \\[2.0ex]
&= \left|2A \times \frac{1}{2}\right| \\[2.0ex]
&= A
\end{aligned}
$$
定常波の揺れの大きさ(振幅)は場所によって違います。節(\(x=0, 6, 12\))では振幅\(0\)、腹(\(x=3, 9, 15\))では最大の\(2A\)になります。その間の場所の振幅は、きれいなサインカーブ \(A_s(x) = 2A \sin(\pi x/6)\) に従って変化します。この式に \(x=3, 1.5, 1\) を代入して計算すれば、それぞれの場所の揺れの大きさがわかります。
\(x=3\) は腹の位置であるため、振幅が最大の \(2A\) となるのは妥当です。\(x=0\)(節)と \(x=3\)(腹)の間の点の振幅が \(0\) と \(2A\) の間の値をとるのも物理的に正しい結果です。
思考の道筋とポイント
2つの進行波 \(y_1\), \(y_2\) の式をそれぞれ立て、重ね合わせの原理 \(y = y_1 + y_2\) に従って合成します。三角関数の和積公式を用いることで、得られる合成波の式(定常波の式)から、振幅が場所 \(x\) に依存する項を抜き出し、節の位置と各点の振幅を解析します。
この設問における重要なポイント
- \(y_1\), \(y_2\) の波の式を、\(t=0\) のグラフと進行方向から正しく立てる。
- 三角関数の和積公式 \(\cos\alpha – \cos\beta = -2\sin((\alpha+\beta)/2)\sin((\alpha-\beta)/2)\) を用いて合成する。
- 得られた定常波の式 \(y(x,t) = (\text{場所の項}) \times (\text{時間の項})\) から、振幅を表す「場所の項」を特定する。
具体的な解説と立式
1. \(y_1\), \(y_2\) の式を立てる
- \(y_1\): \(+x\) 方向に進む波。\(t=0\) で \(x=0\) は山(\(y=A\))。これは \(\cos\) 型の波形。
波の式は \(y_1 = A \cos(kx – \omega t)\) と書ける。 - \(y_2\): \(-x\) 方向に進む波。\(t=0\) で \(x=0\) は谷(\(y=-A\))。これは \(-\cos\) 型の波形。
波の式は \(y_2 = -A \cos(kx + \omega t)\) と書ける。
ここで、\(k = 2\pi/\lambda = \pi/6\)。\(\omega\) は \(2\pi/T\)。
2. 合成波 \(y = y_1 + y_2\) を計算する
$$
\begin{aligned}
y &= A \cos(kx – \omega t) – A \cos(kx + \omega t)
\end{aligned}
$$
\(A\) でくくり、和積公式 \(\cos\alpha – \cos\beta = -2\sin((\alpha+\beta)/2)\sin((\alpha-\beta)/2)\) を適用する。
ここで \(\alpha = kx – \omega t\), \(\beta = kx + \omega t\) とすると、
- \((\alpha+\beta)/2 = kx\)
- \((\alpha-\beta)/2 = -\omega t\)
$$
\begin{aligned}
y &= A \left[ -2 \sin(kx) \sin(-\omega t) \right] \\[2.0ex]
&= A \left[ -2 \sin(kx) (-\sin(\omega t)) \right] \\[2.0ex]
&= 2A \sin(kx) \sin(\omega t)
\end{aligned}
$$
これが定常波の式です。
3. 節の位置と振幅を解析する
この式は \(y = (2A \sin(kx)) \sin(\omega t)\) と見なせます。
\(\sin(\omega t)\) は時間とともに \(-1\) から \(1\) に振動する項なので、振幅 \(A_s(x)\) はその前の係数部分になります。
$$ A_s(x) = |2A \sin(kx)| = \left|2A \sin\left(\frac{\pi}{6}x\right)\right| $$
- 節の位置: 振幅が0になる点。\(A_s(x) = 0\)\(\sin(\pi x/6) = 0\) より \(\pi x/6 = n\pi\) (\(n\)は整数)。\(x = 6n\)。図の範囲では \(x=0, 6, 12\) cm。
- 各点の振幅: この式に \(x=3, 1.5, 1\) を代入すると、主たる解法と全く同じ計算になり、同じ結果が得られます。
使用した物理公式
- 波の式: \(y = A \cos(kx \mp \omega t)\)
- 三角関数の和積公式: \(\cos\alpha – \cos\beta = -2\sin\frac{\alpha+\beta}{2}\sin\frac{\alpha-\beta}{2}\)
- 重ね合わせの原理: \(y = y_1 + y_2\)
定常波の式の導出:
$$
\begin{aligned}
y &= y_1 + y_2 \\[2.0ex]
&= A \cos(kx – \omega t) – A \cos(kx + \omega t) \\[2.0ex]
&= A \left\{ \cos(kx – \omega t) – \cos(kx + \omega t) \right\} \\[2.0ex]
&= A \left\{ -2 \sin\left(\frac{(kx-\omega t)+(kx+\omega t)}{2}\right) \sin\left(\frac{(kx-\omega t)-(kx+\omega t)}{2}\right) \right\} \\[2.0ex]
&= -2A \sin(kx) \sin(-\omega t) \\[2.0ex]
&= 2A \sin(kx) \sin(\omega t)
\end{aligned}
$$
節の位置の計算:
振幅項 \(2A \sin(kx)\) が \(0\) になる条件を求めます。
\(\sin(kx) = 0\) より \(kx = n\pi\) (\(n\)は整数)。
\(k = \pi/6\) を代入し、\((\pi/6)x = n\pi\)。よって \(x = 6n\)。
\(0 \leq x \leq 15\) の範囲で \(n=0, 1, 2\) が該当し、\(x=0, 6, 12\)。
各点の振幅の計算:
振幅の式 \(A_s(x) = |2A \sin(\pi x/6)|\) に各値を代入します。
- \(x=3\): \(A_s(3) = |2A \sin(\pi/2)| = 2A\)
- \(x=1.5\): \(A_s(1.5) = |2A \sin(\pi/4)| = \sqrt{2}A\)
- \(x=1\): \(A_s(1) = |2A \sin(\pi/6)| = A\)
まず、実線の波と点線の波の数式をそれぞれ作ります。次に、この2つの式を足し算します。すると、三角関数の公式(和積公式)を使って、\(y = (\text{場所だけで決まる部分}) \times (\text{時間だけで決まる部分})\) というきれいな形に変形できます。この「場所だけで決まる部分」が、その場所の揺れの大きさ(振幅)を表しています。この振幅の式が \(0\) になる場所を探すと、それが「節」の位置になります。また、この振幅の式に \(x=3, 1.5, 1\) を代入すれば、それぞれの場所での揺れの大きさが計算できます。
進行波の式から出発して定常波の式を導出し、その式を解析することで、節の位置と各点の振幅を矛盾なく求めることができました。主たる解法で直感的に導いた結果が、数式によって厳密に裏付けられることがわかります。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 定常波の正体(重ね合わせの結果):
- 核心: この問題の根幹は、定常波が独立した一つの波ではなく、逆向きに進む2つの進行波が「重ね合わせの原理」に従って干渉した結果として現れる現象であることを理解することです。
- 理解のポイント:
- 腹: 常に山と山、谷と谷が重なり強め合う点。振幅は \(2A\)。
- 節: 常に山と谷が重なり打ち消し合う点。振幅は \(0\)。
- \(t=0\) の図の解釈: 問題の図は、たまたま \(y_1 = -y_2\) となり、合成波の変位が全点でゼロになる瞬間を切り取ったものです。この「静止した」図から、波の動きを想像して腹や節を見つけ出す思考力が問われます。
- 定常波の振幅の空間依存性:
- 核心: 進行波の振幅は一定ですが、定常波の振幅は場所 \(x\) によって変化します。この振幅 \(A_s(x)\) が \(|2A \sin(kx)|\) や \(|2A \cos(kx)|\) のように、場所 \(x\) の三角関数で表されることが定常波の最大の特徴です。
- 理解のポイント:
- 振幅の式: \(A_s(x) = |2A \sin(kx)|\) は、\(x=0\) が節となる定常波の振幅を表します。
- 位相 \(kx\): \(kx\) は、最寄りの節からの「位相的な距離」を表します。\(x\) が \(\lambda/4\)(腹の位置)のとき \(kx = (2\pi/\lambda) \cdot (\lambda/4) = \pi/2\) となり、\(\sin(\pi/2)=1\) で振幅は最大 \(2A\) となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- \(t=0\) で波が重なっている図: \(t=0\) で2つの波が完全に重なり、合成波の振幅が最大になっている図から腹や節を求める問題。この場合、図の山の位置が腹、ゼロ点が節となり、より直感的に解くことができます。
- 反射による定常波: 弦の端や管の端で波が反射して定常波ができる問題。入射波と反射波の重ね合わせとして、本質的にこの問題と同じ考え方で解くことができます。
- ビート(うなり): 振動数がわずかに異なる2つの波を重ね合わせると、振幅が周期的に変化する「うなり」が生じます。これも重ね合わせの原理の応用ですが、定常波が「空間的」な振幅の変化であるのに対し、うなりは「時間的」な振幅の変化という違いがあります。
- 初見の問題での着眼点:
- 波長 \(\lambda\) の読み取り: まず、グラフから進行波の波長 \(\lambda\) を正確に読み取ります。これがすべての計算の基礎となります。
- 基準点の特定: 腹か節のどちらか一方を、確実に特定できる場所を1点見つけます。
- 方法A(動きを追う): \(y_1\) の山と \(y_2\) の山(または谷)がどこで出会うかを考える。
- 方法B(\(t=0\) の図で判断): \(y_1\) と \(y_2\) が \(x\) 軸と交わる点(変位ゼロ)で、傾きが逆向きなら腹、同じ向きなら節になる、という性質を利用する。(例: \(x=3\) では \(y_1\) は下り坂、\(y_2\) は上り坂なので、速度が逆向きで大きく振動する→腹)
- 周期性の利用: 特定した基準点から、\(\lambda/2\) 間隔で他の腹(または節)を配置していきます。
- 振幅の式の立式: 節の位置がわかれば、そこを基準に \(A_s(x) = |2A \sin(k(x-x_0))|\) (\(x_0\) は節の位置)のように振幅の式を立てることができます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- \(t=0\) の合成波が定常波の全体像だと誤解する:
- 誤解: \(t=0\) の図では合成波の変位が \(y=0\) なので、振幅が常にゼロだと勘違いしてしまう。
- 対策: 定常波は「その場で振動する」波であることを常に意識します。\(t=0\) はあくまで動画の一コマに過ぎません。腹の位置では、この後 \(y=2A\) まで変位が大きくなります。
- 振幅 \(A\) と \(2A\) の混同:
- 誤解: 定常波の腹での振幅を、元の波の振幅 \(A\) と勘違いしてしまう。
- 対策: 腹は2つの波が強め合った結果なので、振幅は \(A+A=2A\) になる、と原理から理解しましょう。問題で問われているのが「元の波の振幅」なのか「定常波の腹での振幅」なのかを明確に区別することが重要です。
- 振幅の計算で絶対値を忘れる:
- 誤解: \(A_s(x) = 2A \sin(kx)\) として計算し、\(\sin\) が負になる範囲で振幅が負になると答えてしまう。
- 対策: 振幅は常に「揺れの大きさ」を表す正の値です。\(\sin\) や \(\cos\) の値が負になる可能性があるので、必ず絶対値 \(|…|\) をつけて計算する癖をつけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 和積公式による定常波の導出:
- 選定理由: 2つの進行波の重ね合わせという物理現象を、数学的に厳密に解析し、定常波の本質的な数式表現を導き出すための最も基本的な方法だからです。
- 適用根拠: 重ね合わせの原理 \(y = y_1 + y_2\) は、波の線形性から保証される普遍的な法則です。三角関数の和積公式は、この重ね合わせの結果を、「場所の関数」と「時間の関数」の積の形に分離するために用いられます。\(y(x,t) = (2A \sin(kx)) \sin(\omega t)\) という形が導かれることで、「各点 \(x\) が、それぞれ固有の振幅 \(2A \sin(kx)\) を持って、\(\sin(\omega t)\) という形で一斉に単振動する」という定常波の物理的描像が、数式として明確に表現されます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 波長・半波長・四分の一波長の計算: 問題を解き始める前に、\(\lambda\), \(\lambda/2\), \(\lambda/4\) の値を計算して余白にメモしておくと、その後の数え上げや計算がスムーズになり、ミスが減ります。
- 単位円の活用: \(x=1.5\) での振幅を求める際、\(\sin(\pi/4)\) の値を計算する必要があります。\(\pi/4\) (=45°) や \(\pi/6\) (=30°) といった有名な角度が出てきたら、すぐに単位円を描いて \(\sin\), \(\cos\) の値を視覚的に確認する癖をつけると、\(1/2\) や \(1/\sqrt{2}\) のような値を間違えにくくなります。
- 式の構造に着目する: 別解のように定常波の式 \(y = 2A \sin(kx) \sin(\omega t)\) を導出したら、どこが振幅を表す部分で、どこが振動を表す部分かを明確に区別しましょう。これにより、「節はどこか?」→「振幅部分が0になる \(x\)」、「腹はどこか?」→「振幅部分が最大になる \(x\)」といった問いに、式から直接答えることができます。
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18 弦の振動
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 弦の固有振動数の公式 \(f_n = n \cdot (v / 2L)\) を用いて、各設問を統一的に解く解法
- 模範解答が各設問で \(v=f\lambda\) や \(L=n(\lambda/2)\) をその都度立式するのに対し、別解ではこれらの関係をまとめた固有振動数の公式から出発し、より体系的に問題を解きます。
- 弦の固有振動数の公式 \(f_n = n \cdot (v / 2L)\) を用いて、各設問を統一的に解く解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の深化: 弦の振動数が、腹の数 \(n\) に比例し、弦の長さ \(L\) に反比例し、波の速さ \(v\) に比例するという関係性を一つの式で俯瞰でき、理解が深まります。
- 思考の柔軟性向上: 固有振動数の公式は、弦楽器や気柱の共鳴など、幅広い問題に応用できる強力なツールです。この公式を使いこなすことで、問題解決の選択肢が広がります。
- 解法の効率化: 特に(3)のように振動数の比を問う問題では、この公式を用いることで、より少ない計算ステップで簡潔に解に至ることができます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「弦の振動と共振(定常波)」です。弦に定常波が生じる条件と、そのときの振動数、弦の長さ、張力(おもりの質量)などの物理量の関係を正しく理解しているかが問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 弦の定常波の共振条件: 長さ \(L\) の弦の両端が固定端とみなせる場合、定常波ができるのは、弦の長さが半波長 \(\lambda/2\) の整数倍になるときです。\(L = n \cdot (\lambda/2)\) (\(n\) は腹の数で、\(n=1, 2, 3, …\))
- 弦を伝わる波の速さ: 弦を伝わる波の速さ \(v\) は、弦の張力 \(S\) と線密度 \(\rho\) によって決まります。\(v = \sqrt{S/\rho}\)。この問題では、張力 \(S\) はおもりの重力 \(Mg\) に等しいです。
- 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、常に \(v = f\lambda\) の関係が成り立ちます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、音叉とおもりが同じなので振動数 \(f\) と速さ \(v\) が一定です。したがって波長 \(\lambda\) も一定。この条件で、腹の数 \(n\) と弦の長さ \(l\) の関係 \(l = n \cdot (\lambda/2)\) を比較します。
- (2)では、音叉と弦の長さ \(l\) が同じなので振動数 \(f\) と長さ \(l\) が一定です。腹の数が変わることで波長 \(\lambda\) が変わり、それに伴い速さ \(v\) とおもりの質量 \(M\) がどう変わるかを追跡します。
- (3)では、弦の長さ \(l\) とおもりの質量 \(M\) が同じなので速さ \(v\) が一定です。振動数 \(f\) を変えたときに、次に共振する(定常波ができる)腹の数 \(n\) を考え、そのときの振動数を求めます。