電磁気範囲 41~45
41 オームの法則
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「電流のミクロな正体と電子の平均の速さ」です。我々が日常的に扱う「電流」というマクロな現象が、導線の中の無数の自由電子の集団的な運動というミクロな現象によってどのように成り立っているのかを、具体的な計算を通して理解する問題です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 電流のミクロな表現: 電流 \(I\) が、電荷の担い手(キャリア)の電気量 \(e\)、数密度 \(n\)、平均の速さ \(v\)、導線の断面積 \(S\) を用いて \(I=envS\) と表されることを理解していること。
- 単位系の統一: 計算に使用するすべての物理量を、国際単位系(SI)の基本単位(メートル、アンペア、クーロンなど)に正しく変換できること。特に、面積の単位である平方ミリメートル (\(\text{mm}^2\)) から平方メートル (\(\text{m}^2\)) への変換がポイントです。
- 指数計算: \(10\) のべき乗を含む数値を正確に計算できること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題文で与えられた物理量のうち、SI基本単位でないもの(特に断面積)を変換します。
- 電流のミクロな表現の公式 \(I=envS\) を、求めたい「平均の速さ \(v\)」について解きます。
- 変換した単位を含むすべての数値を代入し、電子の平均の速さ \(v\) を計算します。
思考の道筋とポイント
この問題は、電流の正体が微小な電荷を持つ粒子の流れであるという物理的描像を、数式と結びつけることができるかを問うています。鍵となるのは、電流 \(I\)、電子の個数密度 \(n\)、平均の速さ \(v\)、断面積 \(S\) を結びつける公式 \(I=envS\) です。この公式さえ覚えていれば、あとは求めたい \(v\) について式を解き、与えられた数値を代入するだけです。
ただし、こうした物理量の計算では、単位の不一致が致命的なミスにつながります。特に面積の単位 \(\text{mm}^2\) を \(\text{m}^2\) に変換する際に、\(1 \, \text{mm} = 10^{-3} \, \text{m}\) であることから、\(1 \, \text{mm}^2 = (10^{-3})^2 \, \text{m}^2 = 10^{-6} \, \text{m}^2\) となる点を正確に処理できるかが重要です。
この設問における重要なポイント
- 使用する中心的な公式は \(I=envS\)。
- \(I\): 電流 [A]
- \(e\): 電気素量 \(1.6 \times 10^{-19}\) [C] (電子の電荷の大きさ)
- \(n\): 自由電子の個数密度 [\(\text{個/m}^3\)]
- \(v\): 自由電子の平均の速さ [m/s]
- \(S\): 導線の断面積 [\(\text{m}^2\)]
- 単位換算: \(2 \, \text{mm}^2 = 2 \times 10^{-6} \, \text{m}^2\)。
- 計算はすべてSI基本単位で行う。
具体的な解説と立式
電流 \(I\) は、電荷の担い手である自由電子の集団的な流れによって生じます。この関係は、以下の公式で与えられます。
$$ I = enSv $$
ここで、\(e\) は電子の電荷の大きさ(電気素量)です。問題文では電子の電荷が \(-1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\) と与えられていますが、公式中の \(e\) はその大きさ(正の値)を用いるため、\(e = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\) とします。
この問題を解くには、上記の式を求めたい平均の速さ \(v\) について変形します。
$$ v = \frac{I}{enS} $$
この式に数値を代入する前に、すべての物理量の単位をSI基本単位に統一します。
電流 \(I\)、電子数密度 \(n\)、電気素量 \(e\) はすでにSI基本単位ですが、断面積 \(S\) は \(\text{mm}^2\) で与えられているため、\(\text{m}^2\) に変換する必要があります。
\(1 \, \text{mm} = 10^{-3} \, \text{m}\) なので、両辺を2乗すると、
$$
\begin{aligned}
1 \, \text{mm}^2 &= (10^{-3} \, \text{m})^2 \\[2.0ex]
&= 10^{-6} \, \text{m}^2
\end{aligned}
$$
したがって、断面積 \(S\) は、
$$
\begin{aligned}
S &= 2 \, \text{mm}^2 \\[2.0ex]
&= 2 \times 10^{-6} \, \text{m}^2
\end{aligned}
$$
これで、計算に必要なすべての値がSI基本単位で揃いました。
使用した物理公式
- 電流のミクロな表現: \(I=envS\)
立式した \(v = \displaystyle\frac{I}{enS}\) に、与えられた数値と単位換算した値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{I}{enS} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{(1.6 \times 10^{-19}) \times (9 \times 10^{28}) \times (2 \times 10^{-6})}
\end{aligned}
$$
計算を簡単にするため、分母の係数部分と指数部分(\(10\) のべき乗)を分けて計算します。
分母の係数部分:
$$
\begin{aligned}
1.6 \times 9 \times 2 &= 1.6 \times 18 \\[2.0ex]
&= 28.8
\end{aligned}
$$
分母の指数部分:
$$
\begin{aligned}
10^{-19} \times 10^{28} \times 10^{-6} &= 10^{-19+28-6} \\[2.0ex]
&= 10^3
\end{aligned}
$$
これらをまとめると、
$$
\begin{aligned}
v &= \frac{3}{28.8 \times 10^3} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2.88 \times 10^4} \\[2.0ex]
&\approx 1.04 \times 10^{-4}
\end{aligned}
$$
問題文の数値が2桁で与えられていることを考慮し、有効数字2桁で答えると、
$$ v \approx 1.0 \times 10^{-4} \, \text{m/s} $$
電流を「高速道路を走る車の流れ」に例えてみましょう。
「電流 \(I\)」は、「料金所を1秒間に通過する車の総台数」に相当します。
この総台数は、
- 「車線の数(断面積 \(S\))」
- 「道路の混み具合(車の密度 \(n\))」
- 「車の平均の速さ \(v\)」
によって決まります。(ここでは簡単のため、各車が1つの荷物(電荷 \(e\))を運んでいるとします。)
この問題では、「料金所を通過する総台数(電流)」がわかっているので、そこから逆算して「車の平均の速さ \(v\)」を求めている、というわけです。公式 \(I=envS\) は、これらの関係を表す便利な道具なのです。
自由電子の平均の移動の速さは \(v \approx 1.0 \times 10^{-4} \, \text{m/s}\) となります。
この速さを、より日常的な単位に直してみると、\(0.10 \, \text{mm/s}\) となります。これは、1秒間にわずか \(0.1 \, \text{mm}\) しか進まない、カタツムリよりもずっと遅い驚くべき速さです。
この平均の速さは「ドリフト速度」と呼ばれ、電子の集団全体が電場に引かれてゆっくりと移動する速さを表しています。一方で、個々の電子は金属内で原子の熱振動などにより、秒速数千キロメートルにも達する猛スピードでランダムに飛び回っています(熱運動)。電場がかかると、この猛スピードのランダムな動きに、ごくわずかに電場と逆向きの「偏り」が生じます。この「偏り」の速度がドリフト速度であり、非常に遅いのです。
私たちがスイッチを入れると瞬時に電気がつくのは、発電所から電子が光の速さで飛んでくるからではなく、導線内にすでに満ちている電子たちが、電場という号令によって一斉にゆっくりと動き始めるからです。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 電流のミクロな表現 (\(I=envS\)):
- 核心: この問題の根幹は、マクロな物理量である「電流 \(I\)」が、ミクロな世界の無数の電子の集団的な運動によってどのように形成されるかを記述する関係式 \(I=envS\) を理解し、使いこなすことにあります。
- 理解のポイント:
- マクロとミクロの架け橋: この公式は、我々が測定できる「電流 \(I\) [A]」や「導線の断面積 \(S\) [\(\text{m}^2\)]」と、目に見えない世界の「電子1個の電気量の大きさ \(e\) [C]」、「電子の数密度 \(n\) [\(\text{個/m}^3\)]」、「電子の集団としての平均の速さ \(v\) [m/s]」を結びつける、非常に重要な関係式です。
- 電流の正体: この式は、電流の正体が「電荷を持つ粒子の、単位時間あたりの通過量」であることを定量的に示しています。この物理的なイメージを持つことが、公式の理解と記憶に繋がります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- キャリア(電荷の担い手)が電子以外の場合: 半導体中の正孔(ホール)や、電解液中のイオンが電流を担う問題。この場合でも、\(I=qnvS\) という同じ形の式が成り立ちます。\(q\) にはそのキャリアの電気量を、\(n\) にはそのキャリアの数密度を代入すれば同様に解くことができます。
- 電流密度 \(j\) を求める問題: 電流密度 \(j\) は単位面積あたりの電流 (\(j=I/S\)) で定義されます。したがって、\(j=env\) という関係式を用いて、導線の太さによらない物質内部の電流の流れの激しさを計算する問題に応用できます。
- キャリアの数密度 \(n\) を求める問題: 逆に、電流、速さ、断面積が与えられていて、物質中のキャリアの数密度 \(n\) を計算させる問題。特に、物質の密度、モル質量、アボガドロ定数から \(n\) を自分で計算させる、より発展的な問題もあります。
- 初見の問題での着眼点:
- 登場人物の確認: 問題文に「電流」「電子の速さ」「電子の密度」といったキーワードが出てきたら、即座に \(I=envS\) の公式を連想します。
- 単位系の統一を最優先: 計算を始める前に、与えられたすべての物理量をSI基本単位(A, C, \(\text{m}^3\), m/s, \(\text{m}^2\))に変換する作業を必ず行います。特に、面積の単位(\(\text{mm}^2\), \(\text{cm}^2\))や体積の単位(\(\text{cm}^3\))は間違いやすいので、重点的にチェックします。
- 公式の変形: 求めたい物理量(この問題では \(v\))について、最初に文字式のまま公式を変形します (\(v=I/enS\))。数値を代入するのは、この変形が終わってからにすることで、計算の見通しが良くなります。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 面積の単位換算ミス:
- 誤解: \(2 \, \text{mm}^2 = 2 \times 10^{-3} \, \text{m}^2\) のように、長さの換算と同じ感覚で計算してしまう。
- 対策: 「面積は長さの2乗である」という基本に立ち返ることが重要です。\(1 \, \text{mm} = 10^{-3} \, \text{m}\) の両辺を2乗して、\((1 \, \text{mm})^2 = (10^{-3} \, \text{m})^2\) より \(1 \, \text{mm}^2 = 10^{-6} \, \text{m}^2\) と、段階的に導く癖をつけましょう。
- 電子の電荷の符号:
- 誤解: 電子の電荷は負だから、\(e\) に \(-1.6 \times 10^{-19}\) を代入してしまい、速さ \(v\) が負の値になって混乱する。
- 対策: 公式 \(I=envS\) における \(e\) は、電荷の「大きさ」である電気素量(正の値)を表すと理解することが重要です。電流の向きと電子の運動の向きは逆ですが、速さ \(v\) はスカラー量(大きさ)なので、必ず正の値になります。
- 電子の速さに対するイメージの誤解:
- 誤解: 計算結果が \(10^{-4} \, \text{m/s}\) という非常に遅い値になったため、自分の計算が間違っているのではないかと不安になる。
- 対策: この問題で計算される「平均の速さ」は、電子の集団全体が電場に引かれてゆっくりと移動する「ドリフト速度」であり、非常に遅いのが物理的に正しい結果であることを知っておくことが重要です。個々の電子自体は、金属内で猛スピードでランダムに飛び回っている(熱運動)という、2種類の速さのイメージを区別して理解しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 電流のミクロな表現 (\(I=envS\)):
- 選定理由: この問題は、「電流」というマクロな量と、「電子の平均の速さ」というミクロな量を直接結びつけることを要求しています。この二つの世界を繋ぐ「架け橋」となる公式は、物理学においてこの \(I=envS\) しかありません。したがって、この公式を選択するのは必然です。
- 適用根拠: この公式は、電流の定義である「単位時間あたりに、ある断面を通過する電気量」から直接導かれます。
- 速さ \(v\) で動く電子は、1秒間に距離 \(v\) だけ進む。
- 断面積 \(S\) の導線では、1秒間に体積 \(vS\) 分の領域が断面を通過する。
- この体積に含まれる電子の個数は、密度 \(n\) を掛けて \(n \times (vS)\) 個。
- その総電気量は、電子1個の電気量の大きさ \(e\) を掛けて \(e \times (nvS)\) となる。
これがまさに電流 \(I\) の定義そのものであるため、この公式は物理的に厳密に成り立ちます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位換算の儀式化: 計算を始める前に、問題で与えられた数値をすべてSI基本単位に変換し、ページの隅にリストアップすることを「儀式」にしましょう。この一手間が、最もありがちで致命的なミスを防ぎます。
- \(S = 2 \, \text{mm}^2 = 2 \times 10^{-6} \, \text{m}^2\)
- \(I = 3 \, \text{A}\)
- \(n = 9 \times 10^{28} \, \text{m}^{-3}\)
- \(e = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\)
- 指数計算と係数計算の分離: \(10\) のべき乗を含む複雑な割り算では、係数部分と指数部分を分けて計算するのが鉄則です。
\(v = \displaystyle\frac{3}{(1.6 \times 9 \times 2) \times (10^{-19} \times 10^{28} \times 10^{-6})}\)- 係数部分: \(\displaystyle\frac{3}{1.6 \times 9 \times 2} = \frac{3}{28.8} \approx 0.104\)
- 指数部分: \(\displaystyle\frac{1}{10^{-19+28-6}} = \frac{1}{10^3} = 10^{-3}\)
- 合体: \(0.104 \times 10^{-3} = 1.04 \times 10^{-4}\)
このように分離することで、計算の見通しが格段に良くなり、ミスを劇的に減らせます。
- 概算による検算: 厳密な計算の前に、大まかな桁数を見積もる癖をつけましょう。
\(v \approx \displaystyle\frac{3}{(1.5 \times 10^{-19}) \times (10 \times 10^{28}) \times (2 \times 10^{-6})} = \frac{3}{3 \times 10^{-19+29-6}} = \frac{1}{10^4} = 10^{-4}\)
このように、計算結果が \(10^{-4}\) のオーダーになることが予測できます。もし自分の計算結果が \(10^{-2}\) や \(10^{-6}\) のようになったら、どこかで桁を間違えた可能性が高いと気づくことができます。
42 直列と並列
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(1), (2), (3)の電流を求める別解: 各部分の電圧を計算し、オームの法則を適用する解法
- 模範解答が「分流の公式」を用いて直接電流を求めるのに対し、別解ではまず並列部分にかかる電圧を計算し、その電圧と抵抗値からオームの法則 \(I=V/R\) を用いて電流を導出します。
- 設問(1), (2), (3)の電流を求める別解: 各部分の電圧を計算し、オームの法則を適用する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の深化: 電圧(電位差)が電流を駆動する原因であるという、オームの法則の根本的な理解が深まります。
- 思考の柔軟性向上: 分流公式という「テクニック」に頼らず、より基本的な法則(合成抵抗とオームの法則)の組み合わせで解く経験は、応用力を高めます。
- 解法の確実性: 分流公式は覚え間違いやすいですが、電圧を一段階経由する方法は、より手順が明確でミスをしにくいです。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「抵抗の直列・並列接続の基本」です。複雑に見える回路も、基本的な「直列」と「並列」の組み合わせで構成されていることを見抜き、段階的に回路を単純化していく能力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 直列接続の合成抵抗: 抵抗を直列につなぐと、全体の抵抗は各抵抗の和になる (\(R = R_1 + R_2 + \dots\))。
- 並列接続の合成抵抗: 抵抗を並列につなぐと、全体の抵抗の逆数は、各抵抗の逆数の和になる (\(\displaystyle\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2} + \dots\))。
- オームの法則: 回路のある部分にかかる電圧 \(V\)、流れる電流 \(I\)、その部分の抵抗 \(R\) の間には \(V=IR\) の関係が成り立つ。
- 分流の法則: 並列に接続された抵抗では、各抵抗に流れる電流の大きさは、その抵抗値の大きさに反比例する。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、回路全体を「直列」と「並列」のブロックに分解し、回路の末端(電源から最も遠い部分)から順に合成抵抗を計算して、回路全体を一つの抵抗とみなせるまで単純化します。
- 次に、回路全体の合成抵抗と電源電圧から、回路全体を流れる電流(主電流)をオームの法則で求めます。
- 最後に、求めた主電流が並列部分でどのように分かれるかを「分流の法則」を用いて計算し、目的のab間を流れる電流を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
この回路は、\(40 \, \Omega\) の抵抗と、「\(20 \, \Omega\) と \(30 \, \Omega\) の並列部分」が直列に接続された形をしています。まずは、この並列部分を一つの合成抵抗にまとめることから始めます。その後、回路全体を一本の道とみなし、全体の抵抗と電流を計算します。最後に、並列部分で電流がどのように分かれるかを考えます。
この設問における重要なポイント
- 回路の構造: \(40 \, \Omega\) と「\(20 \, \Omega\) || \(30 \, \Omega\)」の直列接続。(|| は並列を表す)
- 計算手順:
- 並列部分の合成抵抗 \(r\) を求める。
- 回路全体の合成抵抗 \(R\) を求める。
- 回路全体の電流 \(I\) を求める。
- 分流の法則でab間の電流 \(I_{ab}\) を求める。
具体的な解説と立式
1. 合成抵抗 \(R\) の計算
まず、\(20 \, \Omega\) と \(30 \, \Omega\) の抵抗が並列に接続されている部分の合成抵抗を \(r\) とします。並列接続の公式より、
$$ \frac{1}{r} = \frac{1}{20} + \frac{1}{30} $$
次に、この合成抵抗 \(r\) と \(40 \, \Omega\) の抵抗が直列に接続されているので、回路全体の合成抵抗 \(R\) は、
$$ R = 40 + r $$
2. ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算
まず、回路全体を流れる電流 \(I\) をオームの法則で求めます。電源電圧は \(26 \, \text{V}\) です。
$$ I = \frac{26}{R} $$
この電流 \(I\) が、\(20 \, \Omega\) と \(30 \, \Omega\) の並列部分に流れ込みます。電流は抵抗の逆比に分配されるので、\(20 \, \Omega\) の抵抗(ab間)に流れる電流 \(I_{ab}\) は、
$$ I_{ab} = I \times \frac{30}{20+30} $$
使用した物理公式
- 並列接続の合成抵抗: \(\displaystyle\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
- 直列接続の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2\)
- オームの法則: \(I = V/R\)
- 分流の法則: \(I_1 = I \times \displaystyle\frac{R_2}{R_1+R_2}\)
合成抵抗 \(R\) の計算:
並列部分の合成抵抗 \(r\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{r} &= \frac{1}{20} + \frac{1}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{3+2}{60} \\[2.0ex]
&= \frac{5}{60} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{12}
\end{aligned}
$$
よって、\(r = 12 \, \Omega\) となります。
回路全体の合成抵抗 \(R\) は、
$$
\begin{aligned}
R &= 40 + r \\[2.0ex]
&= 40 + 12 \\[2.0ex]
&= 52 \, \Omega
\end{aligned}
$$
ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算:
回路全体を流れる電流 \(I\) は、
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{26}{R} \\[2.0ex]
&= \frac{26}{52} \\[2.0ex]
&= 0.5 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
ab間(\(20 \, \Omega\) の抵抗)を流れる電流 \(I_{ab}\) は、
$$
\begin{aligned}
I_{ab} &= I \times \frac{30}{20+30} \\[2.0ex]
&= 0.5 \times \frac{30}{50} \\[2.0ex]
&= 0.5 \times 0.6 \\[2.0ex]
&= 0.3 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
この回路を水の流れに例えてみましょう。
1. 合流地点の計算: ポンプ(電池)から出た水が、まず幅 \(40\) の水路(\(40 \, \Omega\) 抵抗)を通ります。その先で、水路は幅 \(20\) と幅 \(30\) の2つに分岐します。この分岐した水路を一つの大きな水路とみなすと、どれくらいの幅になるか(合成抵抗)を計算します。水路が2つに分かれると流れやすくなるので、合成した幅は元のどちらよりも広くなります(抵抗は小さくなる)。計算すると、幅 \(12\) の水路と同じ流れにくさだとわかります。
2. 全体の流れにくさ: したがって、この回路全体は、幅 \(40\) の水路と幅 \(12\) の水路をまっすぐつないだものと同じです。全体の流れにくさ(合成抵抗)は \(40+12=52\) となります。
3. 全体の流量: \(26\) の力で水を流すと、全体の流量(電流)は \(26 \div 52 = 0.5\) となります。
4. 分岐点での流量: 流量 \(0.5\) の水が、幅 \(20\) と幅 \(30\) の水路に分かれます。幅が広い(抵抗が小さい)方に多くの水が流れます。計算すると、幅 \(20\) の水路(ab間)には \(0.3\)、幅 \(30\) の水路には \(0.2\) の流量で水が流れることがわかります。
合成抵抗は \(52 \, \Omega\)、ab間を流れる電流は \(0.3 \, \text{A}\) となります。並列部分の合成抵抗 \(12 \, \Omega\) は、元の \(20 \, \Omega\) や \(30 \, \Omega\) より小さくなっており、並列接続で電流が流れやすくなるという性質と一致しています。また、分流した電流の和(\(0.3 \, \text{A} + 0.2 \, \text{A}\))は元の電流 \(0.5 \, \text{A}\) と一致しており、計算は妥当であると考えられます。
思考の道筋とポイント
分流の公式というテクニックに頼らず、より基本的なオームの法則 \(I=V/R\) だけで電流を求める別解です。まず回路全体の電流を求め、次にその電流が各抵抗を流れることで生じる電圧降下を計算します。これにより、求めたい電流が流れる部分(並列部分)にかかる電圧を特定し、最後にその部分に対してオームの法則を適用します。この方法は、電圧(電位差)が電流の原因であるという物理の基本に忠実なアプローチです。
この設問における重要なポイント
- 並列に接続された抵抗には、同じ電圧がかかる。
- 回路のある部分にかかる電圧は、その部分を流れる電流と、その部分の合成抵抗の積で計算できる (\(V=IR\))。
- 計算手順:
- 全体の合成抵抗 \(R\) と全電流 \(I\) を求める(主たる解法と同じ)。
- 並列部分の合成抵抗 \(r\) を用いて、並列部分にかかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) を計算する。
- \(V_{\text{並列}}\) とab間の抵抗値から、オームの法則で \(I_{ab}\) を求める。
具体的な解説と立式
1. 並列部分にかかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) の計算
主たる解法と同様に、まず回路全体の合成抵抗 \(R=52 \, \Omega\) と、回路全体を流れる電流 \(I=0.5 \, \text{A}\) を求めます。
次に、\(20 \, \Omega\) と \(30 \, \Omega\) の並列部分に注目します。この部分の合成抵抗は \(r=12 \, \Omega\) でした。この部分には、回路全体を流れる電流 \(I\) がそのまま流れ込むので、この並列部分全体にかかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) は、オームの法則より、
$$ V_{\text{並列}} = I \times r $$
2. ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算
並列接続では、各枝にかかる電圧は等しくなります。したがって、ab間(\(20 \, \Omega\) の抵抗)にかかる電圧も \(V_{\text{並列}}\) です。
よって、ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) は、\(20 \, \Omega\) の抵抗に対してオームの法則を適用することで求められます。
$$ I_{ab} = \frac{V_{\text{並列}}}{20} $$
使用した物理公式
- 合成抵抗の公式(主たる解法と同じ)
- オームの法則: \(V=IR\), \(I=V/R\)
並列部分にかかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) の計算:
回路全体の電流 \(I=0.5 \, \text{A}\) と、並列部分の合成抵抗 \(r=12 \, \Omega\) を用いて、
$$
\begin{aligned}
V_{\text{並列}} &= I \times r \\[2.0ex]
&= 0.5 \times 12 \\[2.0ex]
&= 6 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算:
ab間の抵抗は \(20 \, \Omega\) で、そこにかかる電圧は \(V_{\text{並列}} = 6 \, \text{V}\) なので、
$$
\begin{aligned}
I_{ab} &= \frac{V_{\text{並列}}}{20} \\[2.0ex]
&= \frac{6}{20} \\[2.0ex]
&= 0.3 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
水の流れの例えで、この別解を説明します。
1. 全体の流量を計算: 主たる解法と同じく、全体の流れにくさ(\(52\))とポンプの力(\(26\))から、全体の流量が \(0.5\) であることを計算します。
2. 分岐部分の水位差を計算: 流量 \(0.5\) の水が、流れにくさ \(12\) の分岐部分(並列部分をまとめたもの)を通過するとき、どれくらいの水位差(電圧)が生じるかを計算します。水位差は「流量 \(\times\) 流れにくさ」なので、\(0.5 \times 12 = 6\) となります。
3. 各水路の流量を計算: この水位差 \(6\) は、幅 \(20\) の水路と幅 \(30\) の水路の両方に同じようにかかっています。したがって、幅 \(20\) の水路(ab間)を流れる水の量は、「水位差 \(\div\) 流れにくさ」で \(6 \div 20 = 0.3\) と計算できます。
主たる解法と全く同じく、ab間の電流は \(0.3 \, \text{A}\) という結果が得られました。この別解は、分流の公式を暗記していなくても、オームの法則という基本に立ち返れば問題を解くことができることを示しています。回路の各部分における「電圧」を意識するこの方法は、より複雑な回路を解く上での基礎となる重要な考え方です。
問(2)
思考の道筋とポイント
この回路は、(1)と構成が似ていますが、抵抗の配置が異なります。「\(20 \, \Omega\) と \(60 \, \Omega\) の並列部分」と、\(25 \, \Omega\) の抵抗が直列に接続され、そこに \(32 \, \text{V}\) の電池がつながっています。基本的な解法は(1)と全く同じです。並列部分を合成し、全体の抵抗と電流を求め、分流を計算します。
この設問における重要なポイント
- 回路の構造: 「\(20 \, \Omega\) || \(60 \, \Omega\)」と \(25 \, \Omega\) の直列接続。
- ab間は \(60 \, \Omega\) の抵抗に対応する。
- 計算手順は(1)と同一。
具体的な解説と立式
1. 合成抵抗 \(R\) の計算
まず、\(20 \, \Omega\) と \(60 \, \Omega\) の並列部分の合成抵抗を \(r\) とします。
$$ \frac{1}{r} = \frac{1}{20} + \frac{1}{60} $$
次に、この合成抵抗 \(r\) と \(25 \, \Omega\) の抵抗が直列接続なので、回路全体の合成抵抗 \(R\) は、
$$ R = r + 25 $$
2. ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算
回路全体を流れる電流 \(I\) を、電源電圧 \(32 \, \text{V}\) を用いてオームの法則で求めます。
$$ I = \frac{32}{R} $$
この電流 \(I\) が並列部分に流れ込みます。ab間は \(60 \, \Omega\) の抵抗なので、そこに流れる電流 \(I_{ab}\) は、分流の法則より、
$$ I_{ab} = I \times \frac{20}{20+60} $$
使用した物理公式
- 並列接続の合成抵抗: \(\displaystyle\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
- 直列接続の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2\)
- オームの法則: \(I = V/R\)
- 分流の法則: \(I_2 = I \times \displaystyle\frac{R_1}{R_1+R_2}\)
合成抵抗 \(R\) の計算:
並列部分の合成抵抗 \(r\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{r} &= \frac{1}{20} + \frac{1}{60} \\[2.0ex]
&= \frac{3+1}{60} \\[2.0ex]
&= \frac{4}{60} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{15}
\end{aligned}
$$
よって、\(r = 15 \, \Omega\) となります。
回路全体の合成抵抗 \(R\) は、
$$
\begin{aligned}
R &= r + 25 \\[2.0ex]
&= 15 + 25 \\[2.0ex]
&= 40 \, \Omega
\end{aligned}
$$
ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算:
回路全体を流れる電流 \(I\) は、
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{32}{R} \\[2.0ex]
&= \frac{32}{40} \\[2.0ex]
&= 0.8 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
ab間(\(60 \, \Omega\) の抵抗)を流れる電流 \(I_{ab}\) は、
$$
\begin{aligned}
I_{ab} &= I \times \frac{20}{20+60} \\[2.0ex]
&= 0.8 \times \frac{20}{80} \\[2.0ex]
&= 0.8 \times \frac{1}{4} \\[2.0ex]
&= 0.2 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
(1)と同様に、水の流れで考えます。この回路は、まず水路が幅 \(20\) と幅 \(60\) の2つに分岐し、その先で再び合流して幅 \(25\) の一本の水路になる、という構造です。
1. 分岐部分の計算: 幅 \(20\) と \(60\) の分岐を一つの水路とみなすと、幅 \(15\) の水路と同じ流れにくさになります。
2. 全体の流れにくさ: この回路全体は、幅 \(15\) の水路と幅 \(25\) の水路をまっすぐつないだものと同じなので、全体の流れにくさは \(15+25=40\) です。
3. 全体の流量: \(32\) の力で水を流すと、全体の流量は \(32 \div 40 = 0.8\) となります。
4. 分岐点での流量: 流量 \(0.8\) の水が、幅 \(20\) と幅 \(60\) の水路に分かれます。ab間は幅が狭い \(60\) の水路なので、流れる水の量は少なくなります。計算すると、流量は \(0.2\) となります。(残りの \(0.6\) は幅 \(20\) の水路を流れます。)
合成抵抗は \(40 \, \Omega\)、ab間を流れる電流は \(0.2 \, \text{A}\) となります。並列に接続された \(20 \, \Omega\) と \(60 \, \Omega\) の抵抗では、抵抗値が3倍大きい \(60 \, \Omega\) の方に、\(1/3\) の電流が流れるはずです。実際に、\(20 \, \Omega\) 側には \(0.8 – 0.2 = 0.6 \, \text{A}\) の電流が流れ、\(0.2 \, \text{A}\) は \(0.6 \, \text{A}\) の \(1/3\) となっており、計算結果は妥当です。
思考の道筋とポイント
(1)の別解と同様に、分流の公式を使わず、並列部分にかかる電圧を計算してからオームの法則を適用します。このアプローチは、回路のどの部分にどれだけの電圧がかかっているかを明確に意識する練習になります。
この設問における重要なポイント
- 並列部分にかかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) を求めることが中間目標。
- ab間(\(60 \, \Omega\))にかかる電圧は \(V_{\text{並列}}\) に等しい。
- 最終的には \(I_{ab} = V_{\text{並列}} / 60\) で計算する。
具体的な解説と立式
1. 並列部分にかかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) の計算
主たる解法と同様に、回路全体の合成抵抗 \(R=40 \, \Omega\) と、全電流 \(I=0.8 \, \text{A}\) を求めます。
次に、\(20 \, \Omega\) と \(60 \, \Omega\) の並列部分に注目します。この部分の合成抵抗は \(r=15 \, \Omega\) でした。この部分には全電流 \(I\) が流れるので、かかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) は、
$$ V_{\text{並列}} = I \times r $$
2. ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算
ab間(\(60 \, \Omega\) の抵抗)には、この電圧 \(V_{\text{並列}}\) がそのままかかります。したがって、ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) は、オームの法則より、
$$ I_{ab} = \frac{V_{\text{並列}}}{60} $$
使用した物理公式
- 合成抵抗の公式(主たる解法と同じ)
- オームの法則: \(V=IR\), \(I=V/R\)
並列部分にかかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) の計算:
回路全体の電流 \(I=0.8 \, \text{A}\) と、並列部分の合成抵抗 \(r=15 \, \Omega\) を用いて、
$$
\begin{aligned}
V_{\text{並列}} &= I \times r \\[2.0ex]
&= 0.8 \times 15 \\[2.0ex]
&= 12 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算:
ab間の抵抗は \(60 \, \Omega\) で、そこにかかる電圧は \(V_{\text{並列}} = 12 \, \text{V}\) なので、
$$
\begin{aligned}
I_{ab} &= \frac{V_{\text{並列}}}{60} \\[2.0ex]
&= \frac{12}{60} \\[2.0ex]
&= 0.2 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
(1)の別解と同様に、水位差(電圧)を計算する方法で考えます。
1. 全体の流量を計算: 全体の流れにくさ(\(40\))とポンプの力(\(32\))から、全体の流量が \(0.8\) であることを計算します。
2. 分岐部分の水位差を計算: 流量 \(0.8\) の水が、流れにくさ \(15\) の分岐部分を通過するとき、生じる水位差は \(0.8 \times 15 = 12\) となります。
3. 各水路の流量を計算: この水位差 \(12\) が、幅 \(60\) の水路(ab間)にかかっています。したがって、この水路を流れる水の量は、\(12 \div 60 = 0.2\) と計算できます。
主たる解法と全く同じく、ab間の電流は \(0.2 \, \text{A}\) という結果が得られました。この方法では、回路の各部分の電圧が具体的にわかるという利点があります。例えば、\(25 \, \Omega\) の抵抗にかかる電圧は \(0.8 \, \text{A} \times 25 \, \Omega = 20 \, \text{V}\) であり、並列部分の \(12 \, \text{V}\) と合わせると、電源電圧 \(20+12=32 \, \text{V}\) と一致し、計算の正しさを検証できます。
問(3)
思考の道筋とポイント
この回路は一見複雑に見えますが、これも直列と並列の組み合わせです。回路を単純化する際は、最も内側の部分から外側に向かって計算を進めるのがセオリーです。
まず、上側の枝にある \(10 \, \Omega, 30 \, \Omega, 20 \, \Omega\) の3つの抵抗は直列です。この直列部分と、中央の \(30 \, \Omega\) の抵抗が並列になっています。さらに、その並列部分と、回路の両端にある \(20 \, \Omega\) と \(10 \, \Omega\) の抵抗が直列になっています。この手順で合成抵抗を求め、(1)(2)と同様に全体の電流、分流を計算します。
この設問における重要なポイント
- 回路の構造: \(20 \, \Omega\) と「(\(10 \, \Omega\) + \(30 \, \Omega\) + \(20 \, \Omega\)) || \(30 \, \Omega\)」と \(10 \, \Omega\) の直列接続。
- ab間は、上側の直列部分の一部である。したがって、上側の直列部分全体を流れる電流を求めればよい。
具体的な解説と立式
1. 合成抵抗 \(R\) の計算
まず、回路中央上部の3つの抵抗(\(10 \, \Omega, 30 \, \Omega, 20 \, \Omega\))は直列なので、その合成抵抗を \(r_1\) とします。
$$ r_1 = 10 + 30 + 20 $$
次に、この \(r_1\) と中央下部の \(30 \, \Omega\) の抵抗が並列になっているので、その合成抵抗を \(r_2\) とします。
$$ \frac{1}{r_2} = \frac{1}{r_1} + \frac{1}{30} $$
最後に、この \(r_2\) と、回路の左右にある \(20 \, \Omega\) と \(10 \, \Omega\) の抵抗が直列なので、回路全体の合成抵抗 \(R\) は、
$$ R = 20 + r_2 + 10 $$
2. ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算
回路全体を流れる電流 \(I\) を、電源電圧 \(60 \, \text{V}\) を用いてオームの法則で求めます。
$$ I = \frac{60}{R} $$
この電流 \(I\) が、中央の並列部分(合成抵抗 \(r_2\))に流れ込みます。ab間は、合成抵抗 \(r_1\) の枝の一部です。したがって、\(r_1\) の枝全体を流れる電流を求めれば、それが \(I_{ab}\) となります。分流の法則より、
$$ I_{ab} = I \times \frac{30}{r_1+30} $$
使用した物理公式
- 直列接続の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2 + R_3\)
- 並列接続の合成抵抗: \(\displaystyle\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
- オームの法則: \(I = V/R\)
- 分流の法則
合成抵抗 \(R\) の計算:
中央上部の直列部分の合成抵抗 \(r_1\) は、
$$
\begin{aligned}
r_1 &= 10 + 30 + 20 \\[2.0ex]
&= 60 \, \Omega
\end{aligned}
$$
中央の並列部分の合成抵抗 \(r_2\) は、
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{r_2} &= \frac{1}{r_1} + \frac{1}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{60} + \frac{1}{30} \\[2.0ex]
&= \frac{1+2}{60} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{60} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{20}
\end{aligned}
$$
よって、\(r_2 = 20 \, \Omega\) となります。
回路全体の合成抵抗 \(R\) は、
$$
\begin{aligned}
R &= 20 + r_2 + 10 \\[2.0ex]
&= 20 + 20 + 10 \\[2.0ex]
&= 50 \, \Omega
\end{aligned}
$$
ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算:
回路全体を流れる電流 \(I\) は、
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{60}{R} \\[2.0ex]
&= \frac{60}{50} \\[2.0ex]
&= 1.2 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) は、\(r_1 = 60 \, \Omega\) の枝を流れる電流なので、
$$
\begin{aligned}
I_{ab} &= I \times \frac{30}{r_1+30} \\[2.0ex]
&= 1.2 \times \frac{30}{60+30} \\[2.0ex]
&= 1.2 \times \frac{30}{90} \\[2.0ex]
&= 1.2 \times \frac{1}{3} \\[2.0ex]
&= 0.4 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
この複雑な水路も、内側から順に単純化していきます。
1. 内側の計算: まず、中央部分に注目します。上側の水路は、幅 \(10, 30, 20\) の3つの狭い水路が直列につながっているので、合計の「流れにくさ」は \(10+30+20=60\) です。この「流れにくさ \(60\) の上側水路」と、その下にある「流れにくさ \(30\) の下側水路」が並列になっています。この2つの水路を合成すると、流れにくさ \(20\) の一つの水路とみなせます。
2. 全体の流れにくさ: これで回路全体は、幅 \(20\)、幅 \(20\)、幅 \(10\) の3つの水路がまっすぐつながった単純な形になりました。全体の流れにくさは \(20+20+10=50\) です。
3. 全体の流量: \(60\) の力で水を流すと、全体の流量は \(60 \div 50 = 1.2\) となります。
4. 分岐点での流量: 流量 \(1.2\) の水が、中央の分岐点にやってきます。流れにくさ \(60\) の上側水路と、流れにくさ \(30\) の下側水路に分かれます。ab間は上側の水路の一部なので、上側水路に流れる水の量を計算します。計算すると、流量は \(0.4\) となります。(残りの \(0.8\) は下側水路を流れます。)
合成抵抗は \(50 \, \Omega\)、ab間を流れる電流は \(0.4 \, \text{A}\) となります。中央の並列部分では、抵抗値が \(60 \, \Omega\) と \(30 \, \Omega\) なので、電流は \(1:2\) の比で分配されます。主電流 \(1.2 \, \text{A}\) を \(1:2\) に分けると、\(0.4 \, \text{A}\) と \(0.8 \, \text{A}\) になり、計算結果と一致します。
思考の道筋とポイント
(1)(2)の別解と同様に、分流の公式を使わず、電圧計算を経由するアプローチを取ります。複雑な回路ほど、各ブロックにかかる電圧を一つずつ確定させていくこの方法は、確実性が高く、物理的な理解を助けます。
この設問における重要なポイント
- 中間目標は、中央の並列ブロック(合成抵抗 \(r_2\))にかかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) を求めること。
- ab間を含む上側の枝(合成抵抗 \(r_1\))には、この電圧 \(V_{\text{並列}}\) がまるごとかかる。
- 最終的には \(I_{ab} = V_{\text{並列}} / r_1\) で計算する。
具体的な解説と立式
1. 並列部分にかかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) の計算
主たる解法と同様に、回路全体の合成抵抗 \(R=50 \, \Omega\) と、全電流 \(I=1.2 \, \text{A}\) を求めます。
次に、中央の並列ブロックに注目します。この部分の合成抵抗は \(r_2=20 \, \Omega\) でした。このブロックには全電流 \(I\) が流れるので、かかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) は、
$$ V_{\text{並列}} = I \times r_2 $$
2. ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算
ab間を含む上側の枝は、3つの抵抗の直列接続で、その合成抵抗は \(r_1=60 \, \Omega\) でした。この枝全体には、並列部分の電圧 \(V_{\text{並列}}\) がかかります。
したがって、この上側の枝を流れる電流 \(I_{\text{上}}\) は、オームの法則より、
$$ I_{\text{上}} = \frac{V_{\text{並列}}}{r_1} $$
ab間は、この上側の枝の途中にあるため、そこを流れる電流 \(I_{ab}\) は \(I_{\text{上}}\) と等しくなります。
使用した物理公式
- 合成抵抗の公式(主たる解法と同じ)
- オームの法則: \(V=IR\), \(I=V/R\)
並列部分にかかる電圧 \(V_{\text{並列}}\) の計算:
回路全体の電流 \(I=1.2 \, \text{A}\) と、中央の並列ブロックの合成抵抗 \(r_2=20 \, \Omega\) を用いて、
$$
\begin{aligned}
V_{\text{並列}} &= I \times r_2 \\[2.0ex]
&= 1.2 \times 20 \\[2.0ex]
&= 24 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
ab間を流れる電流 \(I_{ab}\) の計算:
ab間を含む上側の枝の合成抵抗は \(r_1=60 \, \Omega\) で、そこにかかる電圧は \(V_{\text{並列}} = 24 \, \text{V}\) なので、
$$
\begin{aligned}
I_{ab} &= \frac{V_{\text{並列}}}{r_1} \\[2.0ex]
&= \frac{24}{60} \\[2.0ex]
&= 0.4 \, \text{A}
\end{aligned}
$$
水位差(電圧)を計算する方法で、この複雑な水路を解いてみましょう。
1. 全体の流量を計算: 全体の流れにくさ(\(50\))とポンプの力(\(60\))から、全体の流量が \(1.2\) であることを計算します。
2. 中央部分の水位差を計算: 流量 \(1.2\) の水が、流れにくさ \(20\) の中央ブロック(分岐部分をまとめたもの)を通過するとき、生じる水位差は \(1.2 \times 20 = 24\) となります。
3. 上側水路の流量を計算: この水位差 \(24\) が、流れにくさ \(60\) の上側水路全体にかかっています。したがって、この上側水路を流れる水の量は、「水位差 \(\div\) 流れにくさ」で \(24 \div 60 = 0.4\) と計算できます。ab間はこの上側水路の一部なので、ここを流れる流量も \(0.4\) です。
主たる解法と全く同じく、ab間の電流は \(0.4 \, \text{A}\) という結果が得られました。この別解のアプローチは、回路の各ブロックに分配される電圧を明確にしながら解き進めるため、物理的な状況をより深く理解しながら計算を進めることができます。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 回路の等価変換(合成抵抗):
- 核心: この問題の根幹は、複雑に見える抵抗の組み合わせを、より単純な「等価回路」に置き換えていく思考プロセスにあります。特に、「直列接続」と「並列接続」の合成抵抗の計算方法を正確に理解し、適用できるかが全てです。
- 理解のポイント:
- 直列接続: 電流の流れる道が一本道。全体の抵抗は単純な足し算 (\(R = R_1 + R_2\)) で増加します。
- 並列接続: 電流の流れる道が複数に分岐。電流が流れやすくなるため、全体の抵抗は元のどの抵抗よりも小さくなります (\(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\))。
- 単純化のプロセス: 回路の末端(電源から最も遠い部分)から、これらの基本法則を使って抵抗を一つずつまとめていき、最終的に回路全体を「電源と一つの合成抵抗」という最も単純な形に変換することが目標です。
- オームの法則の多段階適用:
- 核心: オームの法則 (\(V=IR\)) は、回路全体だけでなく、回路の任意の部分に対しても成り立ちます。
- 理解のポイント:
- まず、回路全体に対してオームの法則を適用し、全体の電流を求めます。(\(I_{\text{全体}} = V_{\text{電源}} / R_{\text{全体}}\))
- 次に、回路の一部分(例えば並列ブロック全体)に対してオームの法則を適用し、その部分にかかる電圧を求めます。(\(V_{\text{部分}} = I_{\text{全体}} \times R_{\text{部分}}\))
- 最後に、個別の抵抗に対してオームの法則を適用し、そこを流れる電流を求めます。(\(I_{\text{個別}} = V_{\text{部分}} / R_{\text{個別}}\))
この多段階の適用を使いこなすことが、回路問題を解く上での鍵となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ブリッジ回路: 抵抗がひし形に配置された回路。対称性がある場合は、中心の抵抗に電流が流れないことなどを利用して、合成抵抗の考え方で解くことができます。対称性がない場合は、キルヒホッフの法則が必要になります。
- コンデンサーやコイルの合成: 回路素子がコンデンサーやコイルに変わっても、回路を単純化していく考え方は全く同じです。ただし、合成の公式が抵抗とは異なる(特にコンデンサーの直列・並列は抵抗と逆の形)ので注意が必要です。
- 内部抵抗を持つ電池: 電池自身が内部抵抗を持つ場合、それを電池と直列に接続された抵抗とみなすことで、本問と同様の考え方で回路全体を解くことができます。
- 初見の問題での着眼点:
- 電流の経路を追う: まず、電源の正極から出発した電流が、どこで分岐し、どこで合流して負極に戻るのか、その流れを指でなぞって確認します。
- 単純化の開始点を探す: 回路図の中で、最も単純な直列または並列の組み合わせになっている部分(通常は電源から最も遠い末端)を見つけ、そこから合成を始めます。
- 段階的に図を描き直す: 一つのブロックを合成抵抗にまとめたら、その部分を一つの抵抗に置き換えた新しい回路図(等価回路)を横に描きます。この一手間が、複雑な回路での混乱を防ぎ、次のステップを明確にします。これを繰り返し、最終的に一本道の回路になるまで続けます。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 直列と並列の判断ミス:
- 誤解: 回路図で隣り合って描かれているから直列、平行に描かれているから並列、というように見た目で判断してしまう。
- 対策: 必ず「電流の道筋」で判断する癖をつけましょう。「途中で分岐せず、同じ電流が流れるなら直列」「途中で分岐し、後で合流するなら並列」という定義に立ち返ります。
- 並列合成の計算ミス(逆数を忘れる):
- 誤解: \(\displaystyle\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\) を計算した後、得られた値(例えば \(\frac{1}{12}\))をそのまま合成抵抗の値だと勘違いしてしまう。
- 対策: 計算の最後に「逆数を取る!」と指差し確認する習慣をつけましょう。特に2つの抵抗の並列の場合は、計算ミスを防ぐために「和分の積」の公式 (\(R = \displaystyle\frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2}\)) を積極的に使うのが有効です。
- 分流の公式の分子の選択ミス:
- 誤解: \(R_1\) に流れる電流を求めたいのに、分子に \(R_1\) を乗せてしまう (\(I_1 = I \times \displaystyle\frac{R_1}{R_1+R_2}\))。
- 対策: 「電流は抵抗が小さい(流れやすい)方に多く流れる」という物理的なイメージを持ちます。したがって、\(R_1\) に流れる電流を計算する際は、分母は抵抗の和、分子には相手側の抵抗 \(R_2\) を乗せると覚えましょう。自信がなければ、別解で示したように「並列部分の電圧を計算してからオームの法則」という、より基本的で確実な方法を選択するのが賢明です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 合成抵抗の公式:
- 選定理由: 複雑な回路を、オームの法則が適用できる「一つの抵抗とみなせる単純な回路」に変換するため。回路全体の挙動(主電流など)を把握するための必須のステップです。
- 適用根拠: これらの公式は、キルヒホッフの法則(電流則と電圧則)を、直列・並列という特定の接続形態に適用して簡略化したものです。
- 直列 (\(R = R_1 + R_2\)): 電流が一定 (\(I\)) なので、全体の電圧降下は各部分の和 (\(V = V_1 + V_2\))。オームの法則を代入すると \(IR = IR_1 + IR_2\) となり、この公式が導かれます。
- 並列 (\(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)): 電圧が一定 (\(V\)) なので、全体の電流は各部分の和 (\(I = I_1 + I_2\))。オームの法則を代入すると \(\frac{V}{R} = \frac{V}{R_1} + \frac{V}{R_2}\) となり、この公式が導かれます。
- 分流の法則:
- 選定理由: 回路の主電流がわかっている場合に、並列部分で各枝に分かれる電流を効率的に計算するためのテクニックとして選択します。
- 適用根拠: この法則もキルヒホッフの法則から導かれます。並列部分では電圧が等しい (\(V_{\text{並列}} = I_1 R_1 = I_2 R_2\)) ことと、電流の和が主電流に等しい (\(I = I_1 + I_2\)) ことを連立方程式として解くことで、この公式が得られます。つまり、基本的な法則に基づいたショートカットと言えます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 等価回路を描く習慣: 計算を一段階進めるごとに、簡略化した回路図を余白に描きましょう。視覚的に確認することで、次に何をすべきかが明確になり、ケアレスミスを防ぎます。
- 「和分の積」を使いこなす: 2つの抵抗の並列接続が出てきたら、条件反射で「和分の積」(\(R = \displaystyle\frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2}\)) を使うようにしましょう。
- (1)の並列部分: \(\displaystyle\frac{20 \times 30}{20+30} = \frac{600}{50} = 12 \, \Omega\)
- (2)の並列部分: \(\displaystyle\frac{20 \times 60}{20+60} = \frac{1200}{80} = 15 \, \Omega\)
- (3)の中央部分: \(\displaystyle\frac{60 \times 30}{60+30} = \frac{1800}{90} = 20 \, \Omega\)
このように、計算が速く、正確になります。
- 計算の自己検証: (1)の別解の結論で示したように、各部分の電圧降下の和が電源電圧と一致するか、あるいは分岐点での電流の流入量と流出量の和が等しいかなど、キルヒホッフの法則を用いて簡単な検算をする癖をつけると、計算の信頼性が格段に向上します。
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43 電位降下と等電位の判定
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 点bの電位の別解: キルヒホッフの法則で電流を求め、電位降下を計算する解法
- 模範解答の主解法が「分圧の公式」という結果を用いて直接電位を求めるのに対し、別解ではまず回路を流れる電流を求め、その電流による抵抗での「電位降下」を計算するという、より根源的なプロセスを追って電位を導出します。
- 点bの電位の別解: キルヒホッフの法則で電流を求め、電位降下を計算する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的本質の深化: 分圧の公式が、キルヒホッフの法則とオームの法則から導かれるものであることを理解でき、公式の丸暗記から脱却できます。
- 思考の汎用性向上: 電流を求めてから各点の電位を順に計算していくアプローチは、分圧の公式が使えないような、より複雑な回路にも適用できる汎用性の高い思考法です。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「開放端を含む回路の電位計算」です。回路図中のアース(接地)を基準として、各点の電位を求める基本的な問題です。電流が流れる部分(閉回路)と流れない部分(開回路)を正しく見分けることが鍵となります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- アース(接地)の理解: アース記号がある点は、電位の基準点であり、その電位は \(0 \, \text{V}\) である。
- 閉回路と開回路の判別: 電流が流れるためには、電源を含んでループが閉じていなければならない。回路の途中で途切れている部分(開放端)には電流は流れない。
- オームの法則と電位降下: 抵抗 \(R\) に電流 \(I\) が流れるとき、電流の向きに \(V=IR\) だけ電位が下がる(電位降下)。電流が \(0\) ならば、電位降下も \(0\) である。
- 電池の役割: 電池は、起電力 \(V\) に等しい電位差を作り出す装置である。負極から正極へ向かうと電位は \(V\) だけ上がる。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、回路図を見て、電流が流れる閉じたループと、電流が流れない開放部分を特定します。
- アースされている点の電位を \(0 \, \text{V}\) と定めます。
- アースを基準として、電池をまたぐ際の電位の変化や、抵抗での電位降下を順に計算していくことで、各点の電位を求めます。