「物理のエッセンス(熱・電磁気・原子)」徹底解説(原子31〜35問):物理の”土台”を固める!完全マスター講座

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原子範囲 31~35

31 質量欠損と結合エネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 後半の問い(MeVを求める)の別解: 1uあたりのエネルギーを先に計算する解法
      • 模範解答が、まずジュール(J)で結合エネルギーを求め、それを最後にメガ電子ボルト(MeV)に変換するのに対し、別解では、先に「質量\(1 \, \text{u}\)が何MeVのエネルギーに相当するか」という換算係数を計算し、それに質量欠損を掛けることで答えを導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理的本質の深化: \(1 \, \text{u} \approx 931.5 \, \text{MeV}\) という、原子核物理学において非常に重要で便利な関係式を、自らの手で導出する経験ができます。これにより、質量とエネルギーの対応関係についての理解が深まります。
    • 解法の効率化: 一度「1uあたりのエネルギー(MeV)」を計算してしまえば、様々な原子核の質量欠損(\(\text{u}\)単位)から結合エネルギー(MeV単位)を求める際に、毎回ジュールを経由する必要がなくなり、計算が効率化されます。
    • 思考の柔軟性向上: 問題に応じて、ジュールで計算するルートと、uから直接MeVに変換するルートを使い分ける思考の柔軟性が養われます。
  3. 結果への影響
    • 計算の順序が異なるだけで、物理的に行っている計算は同じであるため、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「質量欠損と結合エネルギーの関係」です。問題30で計算した質量欠損が、アインシュタインの有名な関係式 \(E = \Delta m c^2\) に従って、どれだけのエネルギーに相当するのかを計算する問題です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. アインシュタインの質量とエネルギーの等価式: 質量 \(m\) とエネルギー \(E\) が \(E = mc^2\) (\(c\) は光速)という関係で結びついていることを理解していること。
  2. 単位系の統一(SI基本単位): \(E = mc^2\) の公式をジュール(J)単位で計算する際は、質量 \(m\) をキログラム(kg)、光速 \(c\) をメートル毎秒(m/s)に統一する必要があることを理解していること。
  3. 電子ボルト(eV)の定義: 原子核物理学でよく用いられるエネルギーの単位「電子ボルト(eV)」が、ジュール(J)と \(1 \, \text{eV} = e \, \text{J}\) (\(e\) は電気素量)という関係で結びれていることを知っていること。また、接頭語「メガ(M)」が \(10^6\) 倍を意味することも重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. ジュール(J)での計算: まず、与えられた質量欠損 \(\Delta m\) を原子質量単位(\(\text{u}\))からキログラム(\(\text{kg}\))に変換します。次に、その値を \(E = \Delta m c^2\) の公式に代入して、結合エネルギーをジュール(J)で求めます。
  2. メガ電子ボルト(MeV)での計算: 1で求めたジュール単位のエネルギーを、\(1 \, \text{MeV}\) が何ジュールに相当するか(\(10^6 \times e \, \text{J}\))で割ることで、単位をメガ電子ボルト(MeV)に変換します。

前半の問い:結合エネルギー(単位:J)

思考の道筋とポイント
質量欠損は「失われた質量」であり、これがエネルギーに変換されます。この質量とエネルギーの間の翻訳ルールが、アインシュタインの公式 \(E = \Delta m c^2\) です。この公式を正しく適用することが全てですが、その際に最も重要なのが「単位の統一」です。エネルギーを物理学の基本単位であるジュール(J)で求めるためには、公式に代入する全ての物理量を、キログラム(kg)、メートル(m)、秒(s)といったSI基本単位に揃える必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 結合エネルギー \(E\) は、質量欠損 \(\Delta m\) を用いて \(E = \Delta m c^2\) と表される。
  • 公式に代入する前に、質量欠損 \(\Delta m\) の単位を \(\text{u}\) から \(\text{kg}\) に変換する。

具体的な解説と立式
結合エネルギーを \(E\) とすると、アインシュタインの質量とエネルギーの等価式より、
$$
\begin{aligned}
E &= \Delta m c^2
\end{aligned}
$$
と表せます。
この式を用いてエネルギーをジュール(J)で計算するために、まず質量欠損 \(\Delta m\) をSI基本単位であるキログラム(kg)に変換します。
問題文より、\(\Delta m = 0.103 \, \text{u}\) であり、\(1 \, \text{u} = 1.7 \times 10^{-27} \, \text{kg}\) なので、
$$
\begin{aligned}
\Delta m &= 0.103 \times (1.7 \times 10^{-27}) \, \text{kg}
\end{aligned}
$$
この \(\Delta m\) と、光速 \(c = 3.0 \times 10^8 \, \text{m/s}\) を公式に代入します。

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価式: \(E = \Delta m c^2\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
E &= \Delta m c^2 \\[2.0ex]
&= (0.103 \times 1.7 \times 10^{-27}) \times (3.0 \times 10^8)^2 \\[2.0ex]
&= (0.103 \times 1.7 \times 10^{-27}) \times (9.0 \times 10^{16}) \\[2.0ex]
&= (0.103 \times 1.7 \times 9.0) \times 10^{-27+16} \\[2.0ex]
&= 1.5759 \times 10^{-11}
\end{aligned}
$$
与えられている定数の有効数字が2桁なので、答えも有効数字2桁に丸めます。
$$
\begin{aligned}
E &\approx 1.6 \times 10^{-11} \, (\text{J})
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

前の問題で計算した「減ってしまった質量(質量欠損)」が、どれだけのエネルギーに変わったのかを計算します。そのための魔法の呪文が、アインシュタインの「\(E=mc^2\)」です。
ただし、この呪文を正しく使うには、お作法として単位を揃える必要があります。まず、質量欠損の単位「\(\text{u}\)」を、普段使う重さの単位「\(\text{kg}\)」に直します。
あとは、その\(\text{kg}\)の質量と、光の速さ \(c\) を公式に当てはめて計算すれば、エネルギーが「ジュール(J)」という単位で求まります。

結論と吟味

\({}_{6}^{12}\text{C}\) 原子核の結合エネルギーは、約 \(1.6 \times 10^{-11} \, \text{J}\) となります。非常に小さな値に見えますが、これは原子核たった1個あたりのエネルギーであり、\(1 \, \text{mol}\) (\(6.02 \times 10^{23}\)個)あたりで考えると莫大なエネルギーになることがわかります。

解答 (前半) \(1.6 \times 10^{-11} \, \text{J}\)

後半の問い:結合エネルギー(単位:MeV)

思考の道筋とポイント
ジュール(J)は、私たちの日常生活では標準的なエネルギー単位ですが、原子核のようなミクロな世界を扱うには大きすぎます。そのため、原子核物理学では「電子ボルト(eV)」やその100万倍である「メガ電子ボルト(MeV)」がよく用いられます。
ここでは、前半で求めたジュール単位のエネルギーを、MeVに正しく単位換算できるかが問われます。ジュールと電子ボルトを結びつける鍵が、電気素量 \(e\) です。
この設問における重要なポイント

  • エネルギー単位の換算関係を理解する。
    • \(1 \, \text{eV} = e \, \text{J} \approx 1.6 \times 10^{-19} \, \text{J}\)
    • \(1 \, \text{MeV} = 10^6 \, \text{eV}\)
  • したがって、ジュール(J)からメガ電子ボルト(MeV)に変換するには、\(10^6 \times e\) で割る。

具体的な解説と立式
エネルギーの単位であるジュール(J)と電子ボルト(eV)の間には、電気素量 \(e = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{C}\) を用いて、次の関係があります。
$$
\begin{aligned}
1 \, \text{eV} &= 1.6 \times 10^{-19} \, \text{J}
\end{aligned}
$$
また、メガ電子ボルト(MeV)は電子ボルト(eV)の \(10^6\) 倍なので、
$$
\begin{aligned}
1 \, \text{MeV} &= 10^6 \, \text{eV} \\[2.0ex]
&= 10^6 \times (1.6 \times 10^{-19}) \, \text{J} \\[2.0ex]
&= 1.6 \times 10^{-13} \, \text{J}
\end{aligned}
$$
となります。
したがって、ジュール単位のエネルギー \(E_{\text{J}}\) をメガ電子ボルト単位のエネルギー \(E_{\text{MeV}}\) に変換するには、\(1 \, \text{MeV}\) あたりのジュール数で割ればよいので、
$$
\begin{aligned}
E_{\text{MeV}} &= \frac{E_{\text{J}}}{1.6 \times 10^{-13}}
\end{aligned}
$$
となります。

使用した物理公式

  • 電子ボルトとジュールの関係: \(1 \, \text{eV} = e \, \text{J}\)
  • メガ電子ボルトの定義: \(1 \, \text{MeV} = 10^6 \, \text{eV}\)
計算過程

前半で求めた \(E = 1.5759 \times 10^{-11} \, \text{J}\) (丸める前の値を用いるとより正確)を、\(1 \, \text{MeV}\) あたりのジュール数で割ります。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{MeV}} &= \frac{1.5759 \times 10^{-11}}{1.6 \times 10^{-13}} \\[2.0ex]
&= \frac{1.5759}{1.6} \times 10^{-11 – (-13)} \\[2.0ex]
&= \frac{1.5759}{1.6} \times 10^{2} \\[2.0ex]
&\approx 0.9849 \times 100 \\[2.0ex]
&= 98.49
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えると、\(98 \, \text{MeV}\) となります。

この設問の平易な説明

前半で求めたエネルギーの単位「ジュール」は、原子核の世界では大きすぎて不便なので、もっと小さな専用の単位「メガ電子ボルト(MeV)」に翻訳(単位換算)します。
そのための翻訳ルールが「\(1 \, \text{MeV}\) は \(1.6 \times 10^{-13} \, \text{J}\) ですよ」というものです。
したがって、ジュールで表された値を、この \(1.6 \times 10^{-13}\) で割り算してあげれば、MeV単位に変換することができます。

結論と吟味

\({}_{6}^{12}\text{C}\) 原子核の結合エネルギーは、約 \(98 \, \text{MeV}\) となります。これは、炭素原子核1個をバラバラの陽子6個と中性子6個に分解するために、\(98 \, \text{MeV}\) ものエネルギーが必要であることを意味しており、原子核が非常に強い力で結びついていることを示しています。

解答 (後半) \(98 \, \text{MeV}\)
別解: 1uあたりのエネルギーを先に計算する解法

思考の道筋とポイント
原子核物理の問題では、質量が原子質量単位(\(\text{u}\))で与えられ、エネルギーをメガ電子ボルト(MeV)で問われることが頻繁にあります。そこで、毎回ジュール(J)を経由するのではなく、あらかじめ「質量 \(1 \, \text{u}\) が何MeVのエネルギーに相当するのか」という換算レートを計算しておき、それを質量欠損(\(\text{u}\)単位)に掛ける、という効率的なアプローチです。
この設問における重要なポイント

  • まず、基準となる \(1 \, \text{u}\) の質量をエネルギー(MeV)に変換する。
  • その換算レートに、今回の質量欠損 \(0.103 \, \text{u}\) を掛ける。

具体的な解説と立式
まず、質量 \(m = 1 \, \text{u}\) が持つエネルギー \(E_{1\text{u}}\) を計算します。

  1. \(1 \, \text{u}\) をキログラム(kg)に変換します。
    $$
    \begin{aligned}
    m_{1\text{u}} &= 1.7 \times 10^{-27} \, \text{kg}
    \end{aligned}
    $$
  2. \(E = mc^2\) を用いて、エネルギーをジュール(J)で求めます。
    $$
    \begin{aligned}
    E_{1\text{u}, \text{J}} &= (1.7 \times 10^{-27}) \times (3.0 \times 10^8)^2
    \end{aligned}
    $$
  3. ジュール(J)をメガ電子ボルト(MeV)に変換します。
    $$
    \begin{aligned}
    E_{1\text{u}, \text{MeV}} &= \frac{E_{1\text{u}, \text{J}}}{1.6 \times 10^{-13}}
    \end{aligned}
    $$

この \(E_{1\text{u}, \text{MeV}}\) が、\(\text{u}\) と MeV を結ぶ換算レートになります。
最後に、\({}_{6}^{12}\text{C}\) の結合エネルギー \(E_{\text{結合}}\) を、質量欠損 \(\Delta m = 0.103 \, \text{u}\) を用いて計算します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{結合}} &= \Delta m \times E_{1\text{u}, \text{MeV}}
\end{aligned}
$$

計算過程

1. \(1 \, \text{u}\) あたりのエネルギー(J)を計算します。
$$
\begin{aligned}
E_{1\text{u}, \text{J}} &= (1.7 \times 10^{-27}) \times (9.0 \times 10^{16}) \\[2.0ex]
&= 15.3 \times 10^{-11} \, \text{J}
\end{aligned}
$$
2. \(1 \, \text{u}\) あたりのエネルギー(MeV)を計算します。
$$
\begin{aligned}
E_{1\text{u}, \text{MeV}} &= \frac{15.3 \times 10^{-11}}{1.6 \times 10^{-13}} \\[2.0ex]
&= \frac{15.3}{1.6} \times 10^2 \\[2.0ex]
&\approx 9.56 \times 100 \\[2.0ex]
&= 956 \, (\text{MeV})
\end{aligned}
$$
これで、\(1 \, \text{u} \approx 956 \, \text{MeV}\) という換算レートが求まりました。(注:より精密な値を用いると \(1 \, \text{u} \approx 931.5 \, \text{MeV}\) となりますが、ここでは問題の定数に従います。)
3. \({}_{6}^{12}\text{C}\) の結合エネルギーを計算します。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{結合}} &= 0.103 \, [\text{u}] \times 956 \, [\text{MeV/u}] \\[2.0ex]
&\approx 98.468 \, (\text{MeV})
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えると、\(98 \, \text{MeV}\) となります。

この設問の平易な説明

毎回、ジュールを経由してMeVに変換するのは少し手間がかかります。そこで、先に「1uという重さは、エネルギーに換算すると何MeVになるのか?」という対応表を作ってしまう、という賢い方法です。
計算してみると、この問題の定数では「\(1 \, \text{u}\) は約 \(956 \, \text{MeV}\)」という換算レートが求まります。
あとは簡単で、今回の質量欠損である \(0.103 \, \text{u}\) に、この換算レート \(956\) を掛けてあげるだけで、一気に答えの \(98 \, \text{MeV}\) が求まります。

結論と吟味

主たる解法と完全に同じ \(98 \, \text{MeV}\) という結果が得られました。この別解は、原子核物理の問題を解く上で非常に実用的なテクニックであり、\(1 \, \text{u}\) と \(931.5 \, \text{MeV}\) の対応関係の重要性を理解する上で役立ちます。

解答 (後半) \(98 \, \text{MeV}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • 質量とエネルギーの等価性(\(E=mc^2\)):
    • 核心: この問題の根幹は、アルベルト・アインシュタインによって導かれた「質量とエネルギーは本質的に同じものであり、互いに変換しうる」という20世紀物理学の最も重要な発見の一つを、具体的な計算に応用することです。質量欠損という「失われた質量」が、無から消え去ったのではなく、「結合エネルギー」という別の形態に姿を変えたのだと理解することが核心です。
    • 理解のポイント:
      • \(E=mc^2\)の強力さ: この式は、ほんのわずかな質量 \(m\) が、光速 \(c\) (約 \(3 \times 10^8 \, \text{m/s}\) という非常に大きな値)の2乗を乗じた莫大なエネルギー \(E\) に相当することを示しています。原子力発電や核兵器が、ごく少量の燃料から巨大なエネルギーを取り出せるのは、この法則に基づいています。
      • 単位系の重要性: この公式を正しく使うためには、単位をSI基本単位系(質量はkg, 速さはm/s)に統一することが絶対的なルールです。単位の異なる量をそのまま代入すると、全く意味のない結果になってしまいます。物理計算における単位の統一は、公式を正しく適用するための大前提です。
      • 原子核物理学のエネルギー単位: ジュール(J)は我々の世界では標準ですが、原子核の世界では大きすぎるため、電子ボルト(eV)やメガ電子ボルト(MeV)が用いられます。\(1 \, \text{eV}\) は「電子1個が \(1 \, \text{V}\) の電位差で加速されるエネルギー」という物理的な意味を持つ単位であり、ミクロな世界の現象を記述するのに適しています。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 核分裂・核融合反応のエネルギー計算: 「ウラン235が中性子を吸収して核分裂を起こす反応で、反応前後の質量差が \(\Delta m\) であった。この核分裂で放出されるエネルギーは何MeVか?」といった問題。本問と全く同じ計算手順で解くことができます。
    • 対消滅・対生成: 「電子と陽電子が衝突して消滅し、2本のガンマ線(光子)が発生した。放出されるエネルギーの合計はいくらか?」という問題。この場合、電子と陽電子の質量の合計が全てエネルギーに変換されるため、\(\Delta m = m_e + m_e\) として \(E=\Delta m c^2\) を計算します。
    • \(1 \, \text{u}\) とMeVの関係式を使う問題: 問題によっては、\(E=mc^2\) の計算に必要な定数(\(c, e\) など)が与えられず、代わりに「\(1 \, \text{u} = 931.5 \, \text{MeV}\)」という換算式だけが与えられる場合があります。この場合は、ジュールを経由せず、質量欠損(\(\text{u}\))にこの値を直接掛けるだけで答えが求まります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 何を問われているか確認: エネルギーを「ジュール(J)」で問われているのか、「メガ電子ボルト(MeV)」で問われているのかを最初に確認します。
    2. 与えられた定数の確認: 問題文に与えられている定数をリストアップします。\(c\) や \(e\) があれば、\(E=mc^2\) からジュールを計算し、それをMeVに変換するルートだと推測できます。もし「\(1 \, \text{u} = 931.5 \, \text{MeV}\)」のような換算式があれば、より簡単な計算ルートが使えると判断します。
    3. 単位変換の計画: 計算を始める前に、単位変換の計画を立てます。「\(\text{u} \rightarrow \text{kg} \rightarrow \text{J} \rightarrow \text{MeV}\)」という流れを頭の中で組み立ててから、計算に着手します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 単位変換のミス:
    • 誤解: 質量欠損の \(0.103 \, \text{u}\) を、kgに変換せずにそのまま \(E=mc^2\) に代入してしまう。
    • 対策: \(E=mc^2\) を使うときは、「\(m\)はkg, \(c\)はm/s」と機械的に覚えることが重要です。計算を始める前に、全ての物理量をSI基本単位に直すという「儀式」を必ず行いましょう。
  • 光速cの2乗忘れ:
    • 誤解: \(E=mc\) として計算してしまう。
    • 対策: 公式は \(E=mc^2\) です。\(c\) の「2乗」は非常に大きな数(\(9 \times 10^{16}\))を生み出す、エネルギーの莫大さの根源です。公式を正確に記憶し、計算の際に \(c\) を2乗することを絶対に忘れないようにしましょう。
  • JからMeVへの換算ミス:
    • 誤解: JからMeVに変換する際に、\(1.6 \times 10^{-19}\) (eVの場合)や \(1.6 \times 10^{-13}\) (MeVの場合)を、掛けるべきところで割ったり、その逆をしてしまう。
    • 対策: 「Jは大きな単位、MeVは小さな単位」という大小関係をイメージしましょう。大きな単位から小さな単位に変換するときは、数値は大きくなるはずなので「割り算」になります(例:1mをcmに直すには100で割るのではなく掛けるが、1Jが何MeVかを考えるときは、1MeVあたりのJで割る)。具体的には「\(E_{\text{MeV}} = E_{\text{J}} / (1.6 \times 10^{-13})\)」という形を覚えてしまうのが確実です。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 質量とエネルギーの等価式 \(E = \Delta m c^2\):
    • 選定理由: 問題が「質量欠損」から「結合エネルギー」を求めることを要求しているため、質量とエネルギーを結びつける唯一の物理法則であるこの公式を選択します。
    • 適用根拠: この公式は特殊相対性理論から導かれる、自然界の普遍的な法則です。質量を持つ全ての物体は、その質量自体がエネルギーの塊であることを示しています。原子核の結合エネルギーは、この法則が顕著に現れる典型的な例であり、この公式を適用することが物理的に完全に正当化されます。
  • 電子ボルトの定義 \(1 \, \text{eV} = e \, \text{J}\):
    • 選定理由: ジュール(J)からメガ電子ボルト(MeV)へ単位を変換するために、両者をつなぐ定義式としてこれを選択します。
    • 適用根拠: 電子ボルトは、電磁気学における仕事(エネルギー)の定義 \(W=qV\) に基づいて定義された単位です。電荷 \(q\) として電気素量 \(e\)、電位差 \(V\) として \(1 \, \text{V}\) を用いたときのエネルギーが \(1 \, \text{eV}\) です。この定義に基づいて、SI単位系のジュールと関係づけられています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 指数計算と係数計算の分離: 模範解答のように、\( (0.103 \times 1.7 \times 9.0) \times 10^{-27+16} \) のように、まずは数値の部分(係数)と \(10\) のべき乗の部分(指数)を分けて計算する癖をつけましょう。これにより、複雑な計算が整理され、桁間違いなどのミスを大幅に減らすことができます。
  • 有効数字の扱いに注意: 計算の途中では、有効数字より1桁多く残して計算を進め、最後に指定された有効数字(この問題では2桁)に四捨五入するのが基本です。最初から丸めてしまうと、誤差が大きくなる可能性があります。
  • 換算係数の暗記: 物理が得意な人は、「\(1 \, \text{u} \approx 931.5 \, \text{MeV}\)」という換算係数を覚えてしまっています。これを覚えておけば、検算に使えるだけでなく、問題によっては大幅な時間短縮につながります。余裕があれば覚えておくと良いでしょう。

32 質量欠損と結合エネルギー

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、太陽定数という観測可能な量から、太陽全体の活動(全放射エネルギーと質量減少)を推定する壮大なスケールの問題です。物理的に異なるアプローチの別解は存在しないため、「相違点に関する注記」は省略します。

この問題のテーマは「太陽定数と質量・エネルギー等価則の応用」です。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. エネルギーの放射と球面での広がり: 点状の線源から放射されたエネルギーは、距離が離れると、その距離を半径とする球の表面全体に広がっていくという概念を理解していること。
  2. 太陽定数の物理的意味: 太陽定数が、地球の位置における単位面積あたりのエネルギー流量(仕事率)であることを理解していること。
  3. アインシュタインの質量とエネルギーの等価式: 放射されたエネルギーが、太陽の質量の一部が変換されたものであることを、\(E=mc^2\) の関係式を用いて計算できること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 前半の問い(全放射エネルギー): 太陽から放射されたエネルギーが、地球の公転軌道を半径とする巨大な球の表面全体に均等に広がると考えます。この球の全表面積を計算し、それに単位面積あたりのエネルギーである太陽定数を掛けることで、太陽が放射する全エネルギーを求めます。
  2. 後半の問い(質量減少): 前半で求めた全放射エネルギーを、アインシュタインの質量とエネルギーの等価式 \(E=mc^2\) に代入します。この式を質量 \(m\) について解くことで、エネルギーに相当する質量、すなわち太陽が1秒間に失う質量を計算します。

前半の問い:太陽が1秒間に放射するエネルギー

思考の道筋とポイント
太陽から放出されたエネルギーは、宇宙空間のあらゆる方向(四方八方)に均等に広がっていきます。地球の位置まで来ると、そのエネルギーは、太陽を中心とし、地球の公転軌道を半径 \(r\) とする非常に大きな仮想的な球の表面に分布していると考えることができます。
問題で与えられている「太陽定数」は、この巨大な球の表面の、わずか \(1 \, \text{m}^2\) の面積を \(1\) 秒間に通過するエネルギー量を表しています。
したがって、太陽が放出した全エネルギーを知るには、この巨大な球全体の表面積を計算し、それに \(1 \, \text{m}^2\) あたりのエネルギーである太陽定数を掛けてあげればよい、という発想に至ることが重要です。計算にあたっては、単位をSI基本単位(m, W)に変換することを忘れないようにしましょう。
この設問における重要なポイント

  • 太陽が \(1\) 秒間に放射する全エネルギーを \(L\) [J] とする。(仕事率としては [W])
  • このエネルギーは、距離 \(r\) 離れた点では、表面積 \(A = 4\pi r^2\) の球面全体に広がっている。
  • 太陽定数 \(S\) [\(\text{W/m}^2\)] は、その球面上の単位面積あたりのエネルギー流量なので、\(L = S \times A = S \times 4\pi r^2\) という関係が成り立つ。

具体的な解説と立式
太陽が \(1\) 秒間に放射する全エネルギーを \(L\) [J] とします。
このエネルギーは、太陽を中心とし、地球までの距離 \(r\) を半径とする球の表面全体を通過します。この球の表面積 \(A\) は、
$$
\begin{aligned}
A &= 4\pi r^2
\end{aligned}
$$
で与えられます。
太陽定数 \(S\) は、この球面上の単位面積 (\(1 \, \text{m}^2\)) を単位時間 (\(1 \, \text{s}\)) に通過するエネルギーなので、球面全体を通過する全エネルギー \(L\) は、表面積 \(A\) と太陽定数 \(S\) の積で表すことができます。
$$
\begin{aligned}
L &= S \times A
\end{aligned}
$$
したがって、求めるエネルギー \(L\) は次の式で計算できます。
$$
\begin{aligned}
L &= S \times 4\pi r^2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 球の表面積の公式: \(A = 4\pi r^2\)
  • エネルギーフラックスと全放射エネルギーの関係: \(L = S \times A\)
計算過程

まず、与えられた値をSI基本単位に変換します。

  • 太陽定数: \(S = 1.4 \, \text{kW/m}^2 = 1.4 \times 10^3 \, \text{W/m}^2\) (\(\text{W} = \text{J/s}\) なので、これは \(1.4 \times 10^3 \, \text{J/(s}\cdot\text{m}^2)\) に等しい)
  • 太陽までの距離: \(r = 1.5 \times 10^8 \, \text{km} = 1.5 \times 10^8 \times 10^3 \, \text{m} = 1.5 \times 10^{11} \, \text{m}\)

これらの値を公式に代入します。円周率 \(\pi\) は \(3.14\) として計算します。
$$
\begin{aligned}
L &= (1.4 \times 10^3) \times 4 \times 3.14 \times (1.5 \times 10^{11})^2 \\[2.0ex]
&= (1.4 \times 10^3) \times 4 \times 3.14 \times (2.25 \times 10^{22}) \\[2.0ex]
&= (1.4 \times 4 \times 3.14 \times 2.25) \times (10^3 \times 10^{22}) \\[2.0ex]
&= 39.564 \times 10^{25} \\[2.0ex]
&= 3.9564 \times 10^{26}
\end{aligned}
$$
問題文の定数の有効数字が2桁なので、答えも有効数字2桁に丸めます。
$$
\begin{aligned}
L &\approx 4.0 \times 10^{26} \, (\text{J})
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

太陽を、四方八方に光を放つ巨大な裸電球だと想像してみてください。そして、その電球から \(1.5 \times 10^8 \, \text{km}\) 離れた場所に、電球をすっぽり覆うような巨大な風船を置きます。
「太陽定数」というのは、その風船の表面の \(1 \, \text{m}^2\) の面積に、\(1\) 秒間にどれだけの光エネルギーが届くか、という値です。
今知りたいのは、電球自身が \(1\) 秒間に放出する光の全エネルギーです。それには、風船全体の表面積を計算して、それに \(1 \, \text{m}^2\) あたりのエネルギー(太陽定数)を掛けてあげれば、合計のエネルギーがわかる、というわけです。

結論と吟味

太陽は \(1\) 秒間に約 \(4.0 \times 10^{26} \, \text{J}\) という、想像を絶するほどの莫大なエネルギーを放射していることがわかります。この計算は、点光源から出るエネルギーが距離の2乗に反比例して(単位面積あたりでは)弱まっていくという「逆2乗の法則」を応用したものです。

解答 (前半) \(4.0 \times 10^{26} \, \text{J}\)

後半の問い:太陽が1秒間に減少する質量

思考の道筋とポイント
前半で計算した莫大なエネルギーは、何もないところから生まれているわけではありません。太陽の中心部で起きている核融合反応によって、太陽自身の質量の一部がエネルギーに変換されているのです。この「質量」と「エネルギー」を繋ぐのが、アインシュタインの有名な公式 \(E=mc^2\) です。
前半で求めた \(1\) 秒あたりのエネルギー \(L\) を \(E\) に代入し、このエネルギーを生み出すために必要な質量 \(\Delta M\) を \(m\) として計算することで、太陽が \(1\) 秒間にどれだけ軽くなっているのかを求めることができます。
この設問における重要なポイント

  • 質量とエネルギーの等価式 \(E=mc^2\) を適用する。
  • \(E\) には \(1\) 秒間に放射されるエネルギー \(L\) を、\(m\) には \(1\) 秒間に減少する質量 \(\Delta M\) を対応させる。
  • 式を質量 \(\Delta M\) について解くと、\(\Delta M = \frac{L}{c^2}\) となる。

具体的な解説と立式
アインシュタインの質量とエネルギーの等価式 \(E=mc^2\) を用います。
\(1\) 秒間に放射されるエネルギー \(L\) は、\(1\) 秒間に太陽の質量が減少する量 \(\Delta M\) がエネルギーに変換されたものと考えられます。
したがって、エネルギー \(E\) を \(L\)、質量 \(m\) を \(\Delta M\) と置き換えると、次の関係式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
L &= \Delta M c^2
\end{aligned}
$$
この式を、求める質量減少 \(\Delta M\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\Delta M &= \frac{L}{c^2}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 質量とエネルギーの等価式: \(E = mc^2\)
計算過程

前半で求めたエネルギー \(L = 3.9564 \times 10^{26} \, \text{J}\) (丸める前の値)と、光速 \(c = 3.0 \times 10^8 \, \text{m/s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta M &= \frac{3.9564 \times 10^{26}}{(3.0 \times 10^8)^2} \\[2.0ex]
&= \frac{3.9564 \times 10^{26}}{9.0 \times 10^{16}} \\[2.0ex]
&= \left(\frac{3.9564}{9.0}\right) \times \left(\frac{10^{26}}{10^{16}}\right) \\[2.0ex]
&\approx 0.4396 \times 10^{10} \\[2.0ex]
&= 4.396 \times 10^9
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えると、
$$
\begin{aligned}
\Delta M &\approx 4.4 \times 10^9 \, (\text{kg})
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

太陽が光や熱のエネルギーを放出しているのは、実は自分自身の「重さ(質量)」を燃やしてエネルギーに変えているからです。
「質量がどれだけエネルギーに変わるか」を計算するルールが、アインシュタインの有名な公式 \(E=mc^2\) です。
今回は逆に、「放出したエネルギーは、どれだけの質量が燃えた結果なのか」を知りたいので、式を「質量 \(m = E \div c^2\)」の形に変形します。
この式の \(E\) に、前半で計算した \(1\) 秒あたりのエネルギーを代入すれば、太陽が \(1\) 秒間にどれだけ軽くなっているかが計算できます。

結論と吟味

太陽は \(1\) 秒間に約 \(4.4 \times 10^9 \, \text{kg}\) もの質量を失っていることがわかります。これは、重さに換算すると約440万トンに相当する、とてつもない量です。しかし、太陽全体の質量(約 \(2 \times 10^{30} \, \text{kg}\))から見ればごくわずかな量であるため、太陽が何十億年もの長期間にわたって輝き続けることができるのです。

解答 (後半) \(4.4 \times 10^9 \, \text{kg}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
  • エネルギー保存則の宇宙規模での応用:
    • 核心: この問題の根幹は、2つの巨大な物理法則、「エネルギーの放射(逆2乗の法則)」と「質量とエネルギーの等価性(\(E=mc^2\))」を組み合わせて、手の届かない天体である太陽の物理量を推定することにあります。地球で観測されるわずかなエネルギーを手がかりに、エネルギー保存則を宇宙規模で適用する壮大な思考実験です。
    • 理解のポイント:
      • エネルギーの広がり(幾何学): 太陽から放出されたエネルギーは、失われることなく(エネルギー保存則)、宇宙空間を球状に広がっていきます。距離\(r\)でのエネルギー密度(単位面積あたりのエネルギー)は、全エネルギーを球の表面積\(4\pi r^2\)で割ったものになります。これは、エネルギーが幾何学的に希釈されていく様子を示しており、「逆2乗の法則」として知られています。太陽定数は、この法則の地球軌道における現れです。
      • エネルギーの源泉(原子核物理学): 太陽が放出する莫大なエネルギーは、太陽自身の質量をエネルギーに変換することで生み出されています(これもエネルギー保存則の一形態)。その変換ルールを記述するのが、アインシュタインの質量とエネルギーの等価式\(E=mc^2\)です。太陽は、核融合反応によって質量をエネルギーに変え、光や熱として放射しているのです。
      • 2つの法則の連結: この問題は、地球で観測されるエネルギー密度(太陽定数)から、まず逆2乗の法則を使って太陽の全放射エネルギーを求め、次にその全エネルギーがどれだけの質量に相当するのかを\(E=mc^2\)で逆算する、という2段階の論理構造になっています。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 他の天体の光度を求める問題: 「ある恒星までの距離は\(d\)で、その星からの光の強さ(単位面積あたりのエネルギー)は\(I\)であった。この恒星が1秒間に放射する全エネルギー(光度)はいくらか?」という問題。本問の前半と全く同じ考え方で、\(L = I \times 4\pi d^2\)として計算できます。
    • 電球の明るさの問題: 「\(100 \, \text{W}\)の電球から\(2 \, \text{m}\)離れた場所で、単位面積あたりに毎秒届くエネルギーはいくらか?」という逆算問題。\(I = L / (4\pi r^2) = 100 / (4\pi \times 2^2)\)として計算できます。
    • 原子力発電所の燃料消費量: 「出力\(100\)万kW(\(10^9 \, \text{W}\))の原子力発電所が1年間に消費するウランの質量は何kgか?」という問題。まず1年間の総エネルギー\(E\)を計算し(\(E = 10^9 \times (\text{1年間の秒数})\))、それを\(m=E/c^2\)で質量に変換します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. エネルギーの流れをイメージする: 「点源(太陽)からエネルギーが球状に広がり、観測点(地球)に届く」という物理的なイメージをまず描きます。
    2. 与えられた量の意味を特定する: 「太陽定数」が「単位面積あたりのエネルギー流量(\(\text{W/m}^2\))」であることを確認します。これが局所的な情報です。
    3. 全体量を求める方針を立てる: 局所的な情報から全体量(太陽の全放射エネルギー)を求めるには、「局所的な値 \(\times\) 全体の面積」という計算が必要になると方針を立てます。
    4. 単位の統一: 計算を始める前に、全ての単位をSI基本単位(km→m, kW→W)に変換することを徹底します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
  • 球の表面積の公式の誤り:
    • 誤解: 球の表面積を\(4\pi r^3 / 3\)(体積の公式)や\(\pi r^2\)(円の面積)と間違えてしまう。
    • 対策: 球の表面積の公式\(A=4\pi r^2\)は、この種の問題の必須知識です。確実に暗記しましょう。「地球の表面積は、地球を真っぷたつに切った断面(円)の面積のちょうど4倍」というイメージで覚えると忘れにくいです。
  • 半径rの単位変換ミス:
    • 誤解: 距離\(r\)がkm単位で与えられているのに、mに変換せずそのまま計算してしまう。
    • 対策: 太陽定数の単位が\(\text{W/m}^2\)とメートル基準になっていることから、距離もメートルに合わせる必要があることに気づくべきです。計算前に単位をチェックする習慣をつけましょう。\(1 \, \text{km} = 10^3 \, \text{m}\)です。
  • \(E=mc^2\)の変形ミス:
    • 誤解: 質量を求める際に、\(m = Ec^2\)や\(m=E/c\)のように、式を間違って変形してしまう。
    • 対策: 基本の形\(E=mc^2\)をしっかり覚え、そこから落ち着いて移項しましょう。「\(c^2\)が邪魔だから、両辺を\(c^2\)で割る」と考えれば、\(m=E/c^2\)という正しい形が導けます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
  • 全放射エネルギーの式 \(L = S \times 4\pi r^2\):
    • 選定理由: 地球という一点で観測された局所的なエネルギー密度(\(S\))から、エネルギー源である太陽全体の活動(\(L\))を推定するために、この式を選択します。これは、局所と全体を結びつける唯一の関係式です。
    • 適用根拠: この式は、エネルギーが空間に均等に放射され、途中で吸収されたり消えたりしない、というエネルギー保存則の仮定に基づいています。太陽から距離\(r\)の球面を通過するエネルギーの総量は、どこで測っても(球の大きさを変えても)一定である、という物理的な状況を数式で表現したものです。
  • 質量とエネルギーの等価式 \(\Delta M = L/c^2\):
    • 選定理由: 「放射されたエネルギー」と「減少した質量」という、一見すると異なる物理量を結びつけるために、この公式を選択します。
    • 適用根拠: この公式は、特殊相対性理論の帰結であり、エネルギー保存則を質量まで含めて拡張したものです。「質量エネルギー保存則」とも呼ばれ、核反応や天体物理学のような極限的な状況を記述する上で不可欠な法則です。太陽が輝くためのエネルギー源が質量そのものである、という物理的現実を適用しています。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
  • 巨大な数の計算戦略: この問題のように桁数が非常に大きい計算では、係数部分と指数部分を分けて計算するのが鉄則です。
    • \(L = (1.4 \times 4 \times 3.14 \times 1.5^2) \times (10^3 \times (10^{11})^2)\) のように、まず式を係数と指数に分離します。
    • 係数部分 \((1.4 \times 4 \times 3.14 \times 2.25)\) と指数部分 \((10^3 \times 10^{22} = 10^{25})\) をそれぞれ計算し、最後に合体させます。
  • 概算で検算する:
    • \(L\)の計算: \(\pi \approx 3\)とすると、
      $$
      \begin{aligned}
      L &\approx (1.4 \times 10^3) \times 4 \times 3 \times (1.5 \times 10^{11})^2 \\[2.0ex]
      &= 12 \times 1.4 \times 2.25 \times 10^{25} \\[2.0ex]
      &\approx 17 \times 2.25 \times 10^{25} \\[2.0ex]
      &\approx 38 \times 10^{25} \\[2.0ex]
      &= 3.8 \times 10^{26}
      \end{aligned}
      $$
      計算結果の\(4.0 \times 10^{26}\)とオーダー(桁数)も値も近いので、大きな間違いはなさそうだと確認できます。
    • \(\Delta M\)の計算: \(L \approx 4 \times 10^{26}\), \(c^2 \approx 9 \times 10^{16}\)なので、\(\Delta M \approx (4/9) \times 10^{10} \approx 0.44 \times 10^{10} = 4.4 \times 10^9\)。計算結果と一致します。
  • 単位から意味を読み取る: 太陽定数の単位\(\text{W/m}^2\)は、\(\text{J/s/m}^2\)と同じ意味です。これは「1秒あたり、1平方メートルあたりに、何ジュールのエネルギーが届くか」を表しており、単位自体が物理的な意味を教えてくれます。この意味を理解していれば、全体のエネルギーを求めるには全体の面積を掛ければよい、という発想に自然と至ります。
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33 原子核反応

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、様々な原子核反応式の空欄を、質量数と原子番号の保存則に基づいて埋めていく基本的な問題です。物理的に異なるアプローチの別解は存在しないため、「相違点に関する注記」は省略します。

この問題のテーマは「原子核反応式の保存則」です。核反応、核融合、核分裂、放射性崩壊など、様々な原子核の反応において、共通して成り立つ普遍的なルールを適用できるかが問われます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 質量数保存則: 原子核反応の前後で、質量数(陽子と中性子の数の合計)の総和は変化しません。
  2. 原子番号(電荷数)保存則: 原子核反応の前後で、原子番号(陽子の数、すなわち電荷数)の総和は変化しません。
  3. 各種粒子・原子核の記号表現: 陽子(\(\text{p}\))、中性子(\(\text{n}\))、電子(\(\text{e}^-\))、陽電子(\(\text{e}^+\))、α粒子(\(\alpha\))などを、質量数と原子番号を用いて \({}_{Z}^{A}\text{X}\) の形で正しく表現できることが重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、反応式に登場するすべての粒子や原子核を、\({}_{Z}^{A}\text{X}\) の形(左下に原子番号\(Z\)、左上に質量数\(A\))で書き表します。
  2. 次に、空欄に入る未知の粒子(または数)を文字で置き、反応式の左辺(反応前)と右辺(反応後)で「質量数の総和が等しい」という方程式を立てます。
  3. 同様に、「原子番号の総和が等しい」という方程式を立てます。
  4. これら2つの方程式を解くことで、未知の粒子の質量数と原子番号(または未知の数)を決定し、空欄を埋めます。

問(1)

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