無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「電気抵抗と抵抗率・オームの法則の応用」【高校物理対応】

今回の問題

electromagnetic#24

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「電気抵抗とオームの法則」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 電気抵抗の公式: 抵抗\(R\)は、抵抗率\(\rho\)、導線の長さ\(L\)、断面積\(S\)を用いて \(R = \rho \displaystyle\frac{L}{S}\) と表されます。
  • 密度・質量・体積の関係: 密度\(d\)、質量\(m\)、体積\(V\)の間には \(m = dV\) の関係があります。また、導線の体積は \(V = LS\) と表せます。
  • オームの法則: 電圧\(V\)、電流\(I\)、抵抗\(R\)の間には \(V = IR\) という関係が成り立ちます。
  • 単位の換算: 問題で与えられている単位(g, mm²など)を、計算に適したSI基本単位(kg, m²など)に正確に変換することが重要です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた「1.0 m あたりの抵抗」と断面積から、電気抵抗の公式を用いて抵抗率\(\rho\)を計算します。
  2. (2)では、まず金属の質量と密度から全体の体積を求め、断面積で割ることで金属線全体の長さ\(L\)を求めます。その後、(1)で求めた抵抗率\(\rho\)と全体の長さ\(L\)、断面積\(S\)を用いて、金属線全体の抵抗\(R_{\text{全体}}\)を計算します。
  3. (3)では、(2)で求めた金属線全体の抵抗\(R_{\text{全体}}\)と与えられた電圧から、オームの法則を用いて電流\(I\)を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
この金属の抵抗率\(\rho\)を求める問題です。電気抵抗の公式 \(R = \rho \frac{L}{S}\) を利用します。
問題文に「金属線 1.0 m 当たりの抵抗を測定したところ 1.0 \(\Omega\) であった」とあります。これは、長さ \(L=1.0\) m のときの抵抗が \(R=1.0\) \(\Omega\) であることを意味します。断面積 \(S\) は \(0.10\) mm² と与えられているので、これらの値を公式に代入すれば抵抗率\(\rho\)を求めることができます。計算の前に、断面積の単位を mm² から m² に変換する必要があります。
この設問における重要なポイント

  • 電気抵抗の公式 \(R = \rho \displaystyle\frac{L}{S}\) を \(\rho\) について解く。
  • 単位の換算: \(1\) mm² \( = (10^{-3})^2\) m² \( = 10^{-6}\) m²。

具体的な解説と立式
電気抵抗の公式は、
$$ R = \rho \frac{L}{S} \quad \cdots ① $$
です。これを抵抗率\(\rho\)について解くと、
$$ \rho = R \frac{S}{L} \quad \cdots ② $$
となります。
与えられた値を代入して計算します。

  • 長さ \(L = 1.0\) m
  • 抵抗 \(R = 1.0\) \(\Omega\)
  • 断面積 \(S = 0.10\) mm²

断面積\(S\)の単位を m² に変換します。
$$
\begin{aligned}
S &= 0.10 \text{ mm}^2 \\[2.0ex]&= 0.10 \times (10^{-3} \text{ m})^2 \\[2.0ex]&= 0.10 \times 10^{-6} \text{ m}^2 \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-7} \text{ m}^2
\end{aligned}
$$
これらの値を式②に代入します。

使用した物理公式

  • 電気抵抗の公式: \(R = \rho \displaystyle\frac{L}{S}\)
計算過程

式②に \(R=1.0\) \(\Omega\), \(S=1.0 \times 10^{-7}\) m², \(L=1.0\) m を代入します。
$$
\begin{aligned}
\rho &= 1.0 \times \frac{1.0 \times 10^{-7}}{1.0} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-7} \text{ [}\Omega \cdot \text{m]}
\end{aligned}
$$
有効数字は2桁で答える必要がありますが、計算結果がちょうど \(1.0 \times 10^{-7}\) となったため、このまま解答します。

計算方法の平易な説明

抵抗率\(\rho\)を求めるには、公式 \(R = \rho \frac{L}{S}\) を変形して \(\rho = R \frac{S}{L}\) とします。問題文から、長さ \(L=1.0\) m のときの抵抗は \(R=1.0\) \(\Omega\) です。断面積 \(S\) は \(0.10\) mm² ですが、単位を m² に直す必要があります。1 m = 1000 mm なので、1 m² = \(1000 \times 1000\) mm² = \(10^6\) mm² です。つまり、1 mm² = \(10^{-6}\) m² です。よって、\(S = 0.10 \times 10^{-6}\) m² \( = 1.0 \times 10^{-7}\) m² となります。これらの値を式に代入して計算すると、抵抗率が求まります。

結論と吟味

この金属の抵抗率は \(1.0 \times 10^{-7}\) \(\Omega \cdot\)m です。単位も正しく、計算も問題ありません。

解答 (1) \(1.0 \times 10^{-7}\) \(\Omega \cdot\)m

問(2)

思考の道筋とポイント
金属線「全体」の抵抗を求める問題です。全体の抵抗を求めるには、金属線「全体」の長さが必要です。
全体の長さは、金属の質量と密度から求めることができます。
まず、質量 \(m\) と密度 \(d_{\text{密度}}\) から金属全体の体積 \(V\) を求めます (\(m = d_{\text{密度}}V\))。
次に、体積 \(V\) と断面積 \(S\) から、金属線全体の長さ \(L_{\text{全体}}\) を求めます (\(V = L_{\text{全体}}S\))。
最後に、(1)で求めた抵抗率\(\rho\)、全体の長さ\(L_{\text{全体}}\)、断面積\(S\)を電気抵抗の公式 \(R = \rho \frac{L}{S}\) に代入して、全体の抵抗 \(R_{\text{全体}}\) を計算します。
この設問における重要なポイント

  • 質量と密度から体積を求める: \(V = \displaystyle\frac{m}{d_{\text{密度}}}\)
  • 体積と断面積から長さを求める: \(L = \displaystyle\frac{V}{S}\)
  • 抵抗の計算では、すべての物理量をSI基本単位に揃える。

具体的な解説と立式
与えられた値は、

  • 密度 \(d_{\text{密度}} = 7.5 \times 10^3\) kg/m³
  • 質量 \(m = 15\) g \( = 1.5 \times 10^{-2}\) kg
  • 断面積 \(S = 1.0 \times 10^{-7}\) m² (問(1)で計算済み)
  • 抵抗率 \(\rho = 1.0 \times 10^{-7}\) \(\Omega \cdot\)m (問(1)で計算済み)

まず、金属線全体の体積 \(V\) を求めます。
$$ V = \frac{m}{d_{\text{密度}}} \quad \cdots ③ $$
次に、金属線全体の長さ \(L_{\text{全体}}\) を求めます。
$$ L_{\text{全体}} = \frac{V}{S} \quad \cdots ④ $$
最後に、金属線全体の抵抗 \(R_{\text{全体}}\) を求めます。
$$ R_{\text{全体}} = \rho \frac{L_{\text{全体}}}{S} \quad \cdots ⑤ $$

使用した物理公式

  • 密度・質量・体積の関係: \(m = d_{\text{密度}}V\)
  • 体積・長さ・断面積の関係: \(V = LS\)
  • 電気抵抗の公式: \(R = \rho \displaystyle\frac{L}{S}\)
計算過程

式③に数値を代入して、体積 \(V\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{1.5 \times 10^{-2}}{7.5 \times 10^3} \\[2.0ex]&= \frac{1.5}{7.5} \times 10^{-2-3} \\[2.0ex]&= 0.20 \times 10^{-5} \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^{-6} \text{ [m}^3\text{]}
\end{aligned}
$$
式④に数値を代入して、全体の長さ \(L_{\text{全体}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
L_{\text{全体}} &= \frac{2.0 \times 10^{-6}}{1.0 \times 10^{-7}} \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^{-6-(-7)} \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^1 \\[2.0ex]&= 20 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
式⑤に数値を代入して、全体の抵抗 \(R_{\text{全体}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
R_{\text{全体}} &= (1.0 \times 10^{-7}) \times \frac{20}{1.0 \times 10^{-7}} \\[2.0ex]&= 20 \text{ [}\Omega\text{]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるので、20 \(\Omega\) となります。

計算方法の平易な説明

まず、金属線全体の長さを求めます。金属の体積は「質量 ÷ 密度」で \( (1.5 \times 10^{-2}) \div (7.5 \times 10^3) = 2.0 \times 10^{-6} \) m³ です。金属線の長さは「体積 ÷ 断面積」で \( (2.0 \times 10^{-6}) \div (1.0 \times 10^{-7}) = 20 \) m となります。
(1)で「1.0 m あたり 1.0 \(\Omega\)」とわかっているので、長さが20 m ならば、抵抗はその20倍の \(1.0 \times 20 = 20\) \(\Omega\) となります。

結論と吟味

金属線全体の抵抗は 20 \(\Omega\) です。計算過程も論理的で、妥当な結果です。

解答 (2) 20 \(\Omega\)

問(3)

思考の道筋とポイント
金属線の両端に電圧を加えたときに流れる電流を求める問題です。これはオームの法則 \(V=IR\) を用いる典型的な問題です。
電圧 \(V\) は 1.0 V、抵抗 \(R\) は(2)で求めた金属線全体の抵抗 \(R_{\text{全体}} = 20\) \(\Omega\) を使います。
この設問における重要なポイント

  • オームの法則 \(V=IR\) を適用する。
  • (2)で求めた抵抗値を用いる。

具体的な解説と立式
オームの法則は、
$$ V = IR \quad \cdots ⑥ $$
です。これを電流 \(I\) について解くと、
$$ I = \frac{V}{R} $$
となります。
ここに、電圧 \(V = 1.0\) V、抵抗 \(R = R_{\text{全体}} = 20\) \(\Omega\) を代入して、電流 \(I\) を計算します。

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V = IR\)
計算過程

式⑥を \(I\) について解いた式に数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{1.0}{20} \\[2.0ex]&= 0.050 \text{ [A]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるので、0.050 A となります。

計算方法の平易な説明

オームの法則「電流 = 電圧 ÷ 抵抗」を使います。電圧は 1.0 V、抵抗は(2)で求めた 20 \(\Omega\) なので、電流は \(1.0 \div 20 = 0.050\) A となります。

結論と吟味

流れる電流は 0.050 A です。オームの法則を正しく適用した結果であり、妥当な値です。

解答 (3) 0.050 A

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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電気抵抗の幾何学的依存性:
    • 核心: 導体の電気抵抗は、物質の種類(抵抗率\(\rho\))だけで決まるのではなく、その形状(長さ\(L\)、断面積\(S\))にも依存するという点です。公式 \(R = \rho \frac{L}{S}\) は、この関係を定量的に示しています。
    • 理解のポイント: 抵抗は電流の流れにくさを表します。導線が「長いほど(\(L\)大)」電子はたくさん衝突するので流れにくく(\(R\)大)、「太いほど(\(S\)大)」電子が通る道が広くなるので流れやすく(\(R\)小)なるとイメージすると、公式の形を直感的に理解できます。
  • 物理量の多角的な関係性の利用:
    • 核心: この問題は、電気の知識(抵抗、オームの法則)だけでなく、力学の知識(質量、密度、体積)も組み合わせて解く必要があります。
    • 理解のポイント: 一見関係なさそうな「質量」や「密度」が、導線の「長さ」を決定するための重要な情報になっています。このように、異なる分野の物理法則が結びついて一つの問題を構成することはよくあります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 抵抗の比を求める問題: 同じ材質で長さや断面積(または半径)が異なる2本の導線の抵抗の比を求める問題。\(R_1 : R_2 = \rho \frac{L_1}{S_1} : \rho \frac{L_2}{S_2}\) のように、比を計算することで抵抗率\(\rho\)を消去できます。
    • 体積一定で変形する問題: 1本の導線を引っ張って長さを2倍にした場合、体積は一定なので断面積は1/2になります。このとき抵抗は \(R’ = \rho \frac{2L}{S/2} = 4 \rho \frac{L}{S} = 4R\) となり、元の4倍になります。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 単位のチェックと統一: まず、問題文中のすべての物理量の単位を確認し、計算を始める前にSI単位系(m, kg, s, A, V, \(\Omega\))に変換します。特に、mm² → m² の変換は頻出です。
    2. 求めるものと与えられているものの整理: 何を求めたいのかを明確にし、それに関係する公式をリストアップします。
    3. 未知数を消去する道筋を立てる: (2)では、抵抗を求めるためにまず「全体の長さ」という未知数が必要でした。その「長さ」を求めるために、「質量と密度」という別の情報を使う、というように、ゴールから逆算して必要なステップを考えることが有効です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 単位変換のミス:
    • 誤解: \(0.10\) mm² を \(0.10 \times 10^{-3}\) m² や \(1.0 \times 10^{-4}\) m² などと間違えてしまう。
    • 対策: \(1 \text{ mm} = 10^{-3} \text{ m}\) なので、両辺を2乗して \(1 \text{ mm}^2 = (10^{-3})^2 \text{ m}^2 = 10^{-6} \text{ m}^2\) と、定義から毎回導出する癖をつけると確実です。
  • 公式の分母分子の混同:
    • 誤解: \(R = \rho \frac{S}{L}\) のように、公式の長さ\(L\)と断面積\(S\)の位置を間違えて覚えてしまう。
    • 対策: 「長いほど抵抗大」「太いほど抵抗小」という直感的なイメージと公式を結びつけましょう。抵抗\(R\)は\(L\)に比例し、\(S\)に反比例する形になっていることを確認します。
  • 有効数字の扱い:
    • 誤解: 計算の途中で四捨五入してしまい、最終的な答えに誤差が生じる。また、最後の答えの桁数を間違える。
    • 対策: 計算はできるだけ多くの桁数を保ったまま進め、最終的な答えを出す段階で、問題文の指示(この場合は2桁)に合わせて四捨五入します。\(0.050\) のように、末尾の0も有効数字として重要であることを忘れないようにしましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 公式 \(R = \rho \frac{L}{S}\):
    • 選定理由: 物質の固有の性質である「抵抗率\(\rho\)」と、導体の巨視的な形状(\(L, S\))と、実際に測定される電気的性質(抵抗\(R\))を結びつける、唯一の基本的な関係式だからです。
    • 適用根拠: この公式は実験的に見出された法則です。抵抗が長さに比例し、断面積に反比例するという実験事実を、比例定数\(\rho\)(抵抗率)を用いて数式化したものです。抵抗率は、その物質中での電子の運動のしにくさを表す指標と解釈できます。
  • 公式 \(V=IR\)** (オームの法則):
    • 選定理由: 回路における最も基本的な3つの量(電圧、電流、抵抗)の関係を示す、電気回路の根幹をなす法則だからです。
    • 適用根拠: 多くの導体において、流れる電流の大きさは、加えられた電圧に比例するという実験事実に基づいています。その比例定数として抵抗\(R\)が定義されます。この法則は、ある抵抗に電圧をかけたときにどれくらいの電流が流れるかを予測するための、非常に強力なツールです。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位換算を最初に済ませる:
    • 問題文を読んだら、まず与えられている数値をすべてSI基本単位に直してリストアップする習慣をつけましょう。
      • \(m = 15 \text{ g} = 1.5 \times 10^{-2} \text{ kg}\)
      • \(S = 0.10 \text{ mm}^2 = 1.0 \times 10^{-7} \text{ m}^2\)
    • こうすることで、計算の途中で単位のことを気にする必要がなくなり、計算自体に集中できます。
  • 計算のショートカットを見つける:
    • (2)の計算では、\(L_{\text{全体}}\)を求めてから\(R_{\text{全体}}\)を計算しました。別解として、\(R_{\text{全体}} = (\text{1mあたりの抵抗}) \times L_{\text{全体}}\) という比例関係を使うと、\(R_{\text{全体}} = 1.0 \times 20 = 20\) \(\Omega\) と、より直感的に計算できます。
  • 有効数字を意識した表記:
    • \(0.05\) ではなく \(0.050\) と書くことの重要性を理解しましょう。\(0.05\) は有効数字1桁を意味し、真の値が0.045から0.054の間にあることを示唆します。一方、\(0.050\) は有効数字2桁であり、真の値が0.0495から0.0504の間にあることを示し、より高い精度を表します。問題の指示に正確に従うことが科学的な記述の基本です。

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