未来の得点力へ!高校物理 問題演習「平行金属板間の電場・力・仕事」【高校物理対応】

今回の問題

electromagnetic12

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「一様な電場における基本計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  • 一様な電場と電位差の関係: 平行金属板間のような一様な電場 \(E\) では、電位差 \(V\) と距離 \(d\) の間に \(V = Ed\) の関係が成り立ちます。
  • 電場から受ける力: 電場 \(E\) の中に電荷 \(q\) を置くと、その電荷は \(F = qE\) の力を受けます。
  • 静電気力がする仕事: 電荷 \(q\) が電位差 \(V\) の2点間を移動するとき、静電気力がする仕事 \(W\) は \(W = qV\) で与えられます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、与えられた電位差 \(V\) と距離 \(d\) を \(E = V/d\) の式に代入し、電場の強さ \(E\) を計算します。
  2. (2)では、(1)で求めた電場の強さ \(E\) と、与えられた電荷 \(q\) を \(F = qE\) の式に代入し、力の大きさ \(F\) を計算します。
  3. (3)では、与えられた電荷 \(q\) と電位差 \(V\) を \(W = qV\) の式に代入して、仕事 \(W\) を計算します。

問(1)

思考の道筋とポイント
平行金属板間の電場の強さ \(E\) を求めます。平行金属板間には一様な電場ができるため、電場の強さ \(E\)、電位差 \(V\)、極板間の距離 \(d\) の間には \(V=Ed\) というシンプルな関係式が成り立ちます。この公式を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 一様な電場における電場の強さ \(E\)、電位差 \(V\)、距離 \(d\) の関係式 \(E=V/d\) を正しく使うこと。
  • 科学記数法(指数)の割り算を正確に行うこと。

具体的な解説と立式
一様な電場 \(E\) と、電場の方向への距離 \(d\) だけ離れた2点間の電位差 \(V\) の間には、次の関係が成り立ちます。
$$V = Ed$$
この式を電場の強さ \(E\) について解くと、
$$E = \frac{V}{d} \quad \cdots ①$$
となります。

使用した物理公式

  • 一様な電場と電位差の関係: \(E = \displaystyle\frac{V}{d}\)
計算過程

式①に、問題で与えられた値を代入します。

  • 電位差 \(V = 5.0 \times 10^2 \, \text{V}\)
  • 距離 \(d = 1.0 \times 10^{-2} \, \text{m}\)

$$
\begin{aligned}
E &= \frac{5.0 \times 10^2}{1.0 \times 10^{-2}} \\[2.0ex]&= \frac{5.0}{1.0} \times 10^{2 – (-2)} \\[2.0ex]&= 5.0 \times 10^4 \, \text{V/m}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

電場の強さは、電圧(電位差)を金属板の間の距離で割ることで求められます。\(5.0 \times 10^2\) V を \(1.0 \times 10^{-2}\) m で割ると、\(5.0 \times 10^4\) V/m となります。

結論と吟味

電場の強さは \(5.0 \times 10^4\) V/m です。単位も問題の指定通りであり、計算も妥当です。

解答 (1) \(5.0 \times 10^4\) V/m

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)で求めた電場の中に、\(q = 2.0 \times 10^{-8}\) C の正電荷を置いたとき、この電荷が受ける静電気力の大きさ \(F\) を求めます。電場と、そこにある電荷が受ける力の関係式 \(F=qE\) を用います。
この設問における重要なポイント

  • 電場と力の関係式 \(F=qE\) を正しく使うこと。
  • (1)で求めた値を正しく代入すること。
  • 有効数字と科学記数法の扱いに注意して計算すること。

具体的な解説と立式
電場の強さ \(E\) がわかっているとき、その電場内に置かれた電荷 \(q\) が受ける力の大きさ \(F\) は、以下の式で与えられます。
$$F = qE \quad \cdots ②$$

使用した物理公式

  • 電場から受ける力: \(F = qE\)
計算過程

式②に、各値を代入します。

  • 電荷 \(q = 2.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\)
  • 電場の強さ \(E = 5.0 \times 10^4 \, \text{V/m}\) ((1)の答え)

$$
\begin{aligned}
F &= (2.0 \times 10^{-8}) \times (5.0 \times 10^4) \\[2.0ex]&= (2.0 \times 5.0) \times (10^{-8} \times 10^4) \\[2.0ex]&= 10 \times 10^{-4} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^1 \times 10^{-4} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-3} \, \text{N}
\end{aligned}
$$

計算方法の平易な説明

電場から受ける力は、「電気量 × 電場の強さ」で計算できます。\(2.0 \times 10^{-8}\) C に、(1)で求めた \(5.0 \times 10^4\) V/m を掛け合わせると、\(1.0 \times 10^{-3}\) N となります。

結論と吟味

電荷が受ける力は \(1.0 \times 10^{-3}\) N です。単位も正しく、計算も妥当です。

解答 (2) \(1.0 \times 10^{-3}\) N

問(3)

思考の道筋とポイント
正電荷を平行金属板間で運ぶときに、静電気力(電場からの力)がする仕事 \(W\) を求めます。仕事の定義には \(W=Fd\) と \(W=qV\) の2つの主要な公式があり、この問題ではどちらを使っても解くことができます。与えられている情報から、より直接的に計算できる \(W=qV\) を使うのが効率的です。
この設問における重要なポイント

  • 仕事、電荷、電位差の関係式 \(W=qV\) を正しく使うこと。
  • (1), (2)の結果を使わなくても、問題の初期条件だけで解けることに気づくと計算が速い。
  • 別解として \(W=Fd\) を用いて検算ができる。

具体的な解説と立式
電荷 \(q\) が電位差 \(V\) のある2点間を移動するとき、静電気力がする仕事 \(W\) は、電荷と電位差の積で与えられます。
$$W = qV \quad \cdots ③$$

使用した物理公式

  • 静電気力がする仕事: \(W = qV\)
計算過程

式③に、与えられた値を代入します。

  • 電荷 \(q = 2.0 \times 10^{-8} \, \text{C}\)
  • 電位差 \(V = 5.0 \times 10^2 \, \text{V}\)

$$
\begin{aligned}
W &= (2.0 \times 10^{-8}) \times (5.0 \times 10^2) \\[2.0ex]&= (2.0 \times 5.0) \times (10^{-8} \times 10^2) \\[2.0ex]&= 10 \times 10^{-6} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^1 \times 10^{-6} \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-5} \, \text{J}
\end{aligned}
$$
【別解による検算】
仕事は \(W=Fd\) でも計算できます。(2)で求めた力 \(F=1.0 \times 10^{-3}\) N と、距離 \(d=1.0 \times 10^{-2}\) m を使います。
$$
\begin{aligned}
W &= (1.0 \times 10^{-3}) \times (1.0 \times 10^{-2}) \\[2.0ex]&= 1.0 \times 10^{-5} \, \text{J}
\end{aligned}
$$
となり、同じ結果が得られます。

計算方法の平易な説明

静電気力がする仕事は、「電気量 × 電圧(電位差)」で計算できます。\(2.0 \times 10^{-8}\) C に、\(5.0 \times 10^2\) V を掛け合わせると、\(1.0 \times 10^{-5}\) J となります。

結論と吟味

静電気力がする仕事は \(1.0 \times 10^{-5}\) J です。単位も正しく、別解での検算結果とも一致するため、妥当な答えです。

解答 (3) \(1.0 \times 10^{-5}\) J

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【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 一様な電場における3つの基本関係式:
    • 核心: この問題は、一様な電場における最も基本的な3つの物理量、電場の強さ(\(E\))、力(\(F\))、仕事(\(W\))の関係性を問うています。以下の3つの公式を自在に使いこなせることが核心です。
      1. \(V = Ed\) (電位差と電場の関係)
      2. \(F = qE\) (力と電場の関係)
      3. \(W = qV\) (仕事と電位差の関係)
    • 理解のポイント: これら3つの式は互いに関連しています。例えば、\(W=qV\) に \(V=Ed\) を代入すると \(W=qEd\) となり、さらに \(F=qE\) を代入すると \(W=Fd\) という力学でおなじみの仕事の定義式が得られます。この相互関係を理解しておくと、どの公式を使えばよいか迷わなくなります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 荷電粒子の加速: この問題の状況で、正電荷を静かに放すと、静電気力 \(F\) によって加速されます。その際の加速度 \(a\) は運動方程式 \(ma=F=qE\) から \(a=qE/m\) と求められます。また、極板間を通過した後の速さ \(v\) は、仕事とエネルギーの関係 \(W = \frac{1}{2}mv^2\) から \(v=\sqrt{2W/m} = \sqrt{2qV/m}\) と計算できます。
    • ミリカンの油滴実験: 油滴にはたらく重力と、電場から受ける静電気力がつり合う条件を考える問題です。力のつり合いの式 \(mg = qE = qV/d\) から、油滴の電気量 \(q\) などを求めます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 与えられている量を確認: 問題文でどの物理量(\(V, d, q, E, F, W\)など)が与えられているかをリストアップします。
    2. 求めたい量を確認: どの物理量を求めるべきかを確認します。
    3. 適切な公式を選択: 与えられている量と求めたい量を結びつける、最もシンプルな公式を選択します。例えば、\(V\) と \(d\) から \(E\) を求めるなら \(E=V/d\)、\(q\) と \(V\) から \(W\) を求めるなら \(W=qV\) が最適です。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 指数の計算ミス:
    • 誤解: \(10^2 \div 10^{-2} = 10^{2-2}=10^0=1\) のように、負の指数の引き算を間違える。
    • 対策: 指数法則 \(10^a \div 10^b = 10^{a-b}\) を正確に適用しましょう。\(2 – (-2) = 2+2 = 4\) です。計算に自信がない場合は、\(\frac{10^2}{10^{-2}} = 10^2 \times 10^2 = 10^4\) のように、分母の指数を分子に移動させて符号を反転させる方法も有効です。
  • 公式の混同:
    • 誤解: \(E, F, W\) の関係式をごちゃ混ぜにしてしまう。例えば、\(F=qV\) や \(W=qE\) のように間違える。
    • 対策: 各物理量の単位を意識すると、間違いを防ぎやすくなります。
      • \(F[\text{N}] = q[\text{C}] \times E[\text{N/C}]\)
      • \(W[\text{J}] = q[\text{C}] \times V[\text{J/C}]\)

      このように、単位のつじつまが合うように公式を組み立てる癖をつけましょう。

  • 有効数字の扱い:
    • 誤解: \(2.0 \times 5.0 = 10\) と計算し、有効数字1桁にしてしまう。
    • 対策: 有効数字2桁同士の計算なので、結果も2桁で表現する必要があります。\(10\) は \(1.0 \times 10^1\) と書くことで、有効数字が2桁であることを明確に示します。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • なぜ \(E=V/d\) なのか?:
    • 選定理由: これは一様な電場における電位と電場の関係を最もシンプルに表す式だからです。
    • 適用根拠: 電位の定義は「+1Cの電荷を運ぶ仕事」であり、仕事は「力×距離」です。+1Cの電荷が受ける力は \(E\) なので、距離 \(d\) を運ぶ仕事は \(Ed\) となります。この仕事が電位差 \(V\) に等しいので、\(V=Ed\) という関係が成り立ちます。
  • なぜ \(W=qV\) で仕事が求まるのか?:
    • 選定理由: 電位差 \(V\) の定義そのものから導かれる、最も直接的な仕事の計算式だからです。
    • 適用根拠: 電位差 \(V\) は「+1Cの電荷を運ぶのに必要な仕事」と定義されています。したがって、\(q\) Cの電荷を運ぶのに必要な仕事は、その \(q\) 倍である \(qV\) となります。これは、1個100円のリンゴを \(q\) 個買うときの代金が \(100 \times q\) 円になるのと同じ、非常に基本的な比例関係です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位を書きながら計算する: \(E = \frac{5.0 \times 10^2 \, \text{V}}{1.0 \times 10^{-2} \, \text{m}}\) のように、計算過程で単位も一緒に書くことで、最終的な答えの単位が V/m になることを確認でき、公式の適用ミスにも気づきやすくなります。
  • 検算の習慣をつける: (3)は \(W=qV\) と \(W=Fd\) の2通りで計算できます。このように複数のアプローチが可能な場合は、両方で計算して結果が一致するか確認することで、計算の信頼性が格段に向上します。
  • 科学記数法の扱いに習熟する: \(10.0 \times 10^{-4}\) を \(1.0 \times 10^{-3}\) に直すような、科学記数法の標準的な表記(係数部分を1以上10未満にする)に素早く変換できるように練習しておきましょう。

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