問題86 (鹿児島大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解1: 絶対屈折率を用いた解法
- 模範解答が光の逆行性を利用して相対屈折率の定義式を用いるのに対し、別解1では媒質ごとの絶対屈折率と正弦の積が一定になるという形式(\(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\))を用います。
- 設問(1)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(フェルマーの原理)
- 「光は所要時間が最小となる経路を通る」という原理から出発し、微分を用いて屈折の法則そのものを導出します。さらに、その導出した関係式を用いて具体的な数値を計算し、解答を導きます。
- 設問(2)の別解: 臨界角を用いた判定
- 模範解答が屈折の法則を適用して \(\sin \phi > 1\) となる矛盾から全反射を導くのに対し、別解ではあらかじめ全反射が起こる限界の角度(臨界角)を計算し、入射角との大小関係から判定します。
- 設問(1)の別解1: 絶対屈折率を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- 絶対屈折率の解法: どの媒質からどの媒質へ進む場合でも式の形が変わらないため、混乱が少なく、最も汎用性が高い方法です。
- 微積分の解法: 公式の暗記ではなく、物理現象の根本原理(変分原理)から法則が導かれる過程を理解できます。
- 臨界角の解法: 全反射が起こるかどうかの境界を明確に意識でき、物理的な状況判断が早くなります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「光の屈折と全反射」です。幾何学的な図形の性質を利用して光の経路を追跡し、媒質の境界での振る舞いを決定します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 屈折の法則: 屈折率の異なる媒質の境界で、光がどのように折れ曲がるかを示す基本法則です。
- 反射の法則: 光が反射するとき、入射角と反射角は等しくなります。
- 全反射: 光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むとき、入射角がある角度(臨界角)を超えると、光はすべて反射されます。
- 幾何学的考察: 三角形の内角の和や、法線との角度関係を正確に図から読み取る力が不可欠です。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、点Pから点Qへの光路を幾何学的に特定し、Qでの入射角を求めて屈折の法則を適用します。
- (2)では、Qで反射した後の光路を追跡し、次の到達点Rでの入射角を求めます。そこで屈折の法則が成立するか(全反射しないか)を確認し、最終的に空気中へ出るまでの経路を図示します。
問(1)
思考の道筋とポイント
まず、点Pでの光の入射状況を確認します。問題文に「ガラス面に垂直に入射した」とあるため、光は屈折せずに直進します。
次に、直進した光がAB面上の点Qに到達したときの「入射角」を、図形の幾何学的性質から求めます。
最後に、点Qにおいて空気中へ出る光について屈折の法則を適用し、屈折角を求めます。
この設問における重要なポイント
- 入射角の定義: 入射角とは、「光線と法線(面に垂直な線)のなす角」のことです。光線と面のなす角ではないことに注意が必要です。
- 幾何学的関係: \(\triangle \text{APQ}\) の角度関係から、正確に入射角を導き出します。
- 光の逆行性: 光の経路は逆向きに進んでも同じ経路をたどります。これを利用すると、空気からガラスへ進む場合の屈折として考えることができます。
具体的な解説と立式
1. 点Pでの通過と点Qでの入射角の特定
光はAC面に垂直に入射するため、そのまま直進してAB面上の点Qに達します。
\(\triangle \text{APQ}\) に着目します。
- \(\angle \text{A} = 30^\circ\)
- \(\angle \text{APQ} = 90^\circ\) (垂直に入射したため)
したがって、残りの角は
$$
\begin{aligned}
\angle \text{AQP} &= 180^\circ – (30^\circ + 90^\circ) \\[2.0ex]
&= 60^\circ
\end{aligned}
$$
これは「光線PQとAB面のなす角」です。
入射角 \(\theta_1\) は「光線と法線のなす角」なので、法線が面と \(90^\circ\) をなすことから、
$$
\begin{aligned}
\theta_1 &= 90^\circ – 60^\circ \\[2.0ex]
&= 30^\circ
\end{aligned}
$$
2. 屈折の法則の立式(逆行性の利用)
求める屈折角を \(\theta\) とします。
光の逆行性を利用し、空気(屈折率 \(1\))から入射角 \(\theta\) で入射し、ガラス(屈折率 \(\sqrt{3}\))へ屈折角 \(30^\circ\) で進むと考えます。
ガラスの空気に対する相対屈折率は \(\sqrt{3}\) なので、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\frac{\sin \theta}{\sin 30^\circ} &= \sqrt{3}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 屈折の法則(相対屈折率の定義): \(\displaystyle \frac{\sin i}{\sin r} = n\)
式を変形して \(\sin \theta\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\sin \theta &= \sqrt{3} \sin 30^\circ \\[2.0ex]
&= \sqrt{3} \cdot \frac{1}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{3}}{2}
\end{aligned}
$$
\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の範囲でこれを満たす \(\theta\) は、
$$
\begin{aligned}
\theta &= 60^\circ
\end{aligned}
$$
まず、光が最初の面(AC面)を垂直に通るので、そのまま真っ直ぐ進むことに注目します。次に、三角形の形から、次の面(AB面)にぶつかるときの角度を計算します。
ここで重要なのは、角度を測る基準が「面」ではなく「面に垂直な線(法線)」であることです。計算すると入射角は \(30^\circ\) になります。
最後に、「空気中での角度」と「ガラス中での角度」の関係式(屈折の法則)を使って、出ていく角度を計算しました。ガラスの方が屈折率が大きいので、空気中に出ると角度は大きくなります。
屈折角は \(60^\circ\) です。
ガラス(屈折率大)から空気(屈折率小)へ進む場合、光線は法線から遠ざかる方向に折れ曲がります。入射角 \(30^\circ\) に対して屈折角 \(60^\circ\) となり、角度が大きくなっているため、物理的に妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
「\(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)」という形式の屈折の法則を用います。
この形式は、どちらが媒質1でどちらが媒質2かを気にする必要がなく、「(その場所の屈折率)\(\times\) \(\sin\)(その場所の角度)」が一定であると覚えられるため、ミスが少なく非常に強力です。
この設問における重要なポイント
- 媒質の対応: ガラス側(屈折率 \(\sqrt{3}\)、角度 \(30^\circ\))と空気側(屈折率 \(1\)、角度 \(\theta\))を対応させます。
具体的な解説と立式
ガラスの屈折率を \(n_g = \sqrt{3}\)、入射角を \(\theta_g = 30^\circ\) とします。
空気の屈折率を \(n_a = 1\)、屈折角を \(\theta_a = \theta\) とします。
絶対屈折率を用いた屈折の法則より、
$$
\begin{aligned}
n_g \sin \theta_g &= n_a \sin \theta_a \\[2.0ex]
\sqrt{3} \sin 30^\circ &= 1 \cdot \sin \theta
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 屈折の法則(絶対屈折率形式): \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)
$$
\begin{aligned}
\sqrt{3} \cdot \frac{1}{2} &= \sin \theta \\[2.0ex]
\sin \theta &= \frac{\sqrt{3}}{2}
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
\theta &= 60^\circ
\end{aligned}
$$
「屈折率と角度のサインを掛けた値」は、境界を越えても変わらないというルールを使いました。
ガラス側での値(\(\sqrt{3} \times \sin 30^\circ\))と、空気側での値(\(1 \times \sin \theta\))をイコールで結ぶだけで、簡単に式が立てられます。
メインの解法と全く同じ結果 \(60^\circ\) が得られました。
思考の道筋とポイント
物理学の根本原理の一つである「フェルマーの原理(最小時間の原理)」から出発します。
これは「光は2点間を進む際、所要時間が最小(極小)となる経路を選ぶ」というものです。
境界上の通過点を変数とし、所要時間をその変数の関数として表します。これを微分して \(0\) となる条件を求めることで、屈折の法則を導出し、値を計算します。
この設問における重要なポイント
- 座標設定: 境界面を \(x\) 軸とし、光が通過する点の座標を変数 \(x\) とします。
- 時間の関数化: 距離を速さ(\(v = c/n\))で割ることで時間を表します。
- 微分の実行: 合成関数の微分を用いて、\(dt/dx = 0\) を解きます。
具体的な解説と立式
図のように座標を設定します。
- ガラス中の点A \((0, a)\) から、\(x\) 軸上の点P \((x, 0)\) を通り、空気中の点B \((L, -b)\) へ進む光を考えます。
- ガラスの屈折率を \(n_1\)、空気の屈折率を \(n_2\) とします。光速を \(c\) とすると、それぞれの媒質中の光の速さは \(v_1 = c/n_1\)、\(v_2 = c/n_2\) です。
点Aから点Pまでの距離は \(\sqrt{x^2 + a^2}\)、点Pから点Bまでの距離は \(\sqrt{(L-x)^2 + b^2}\) です。
所要時間 \(T(x)\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
T(x) &= \frac{\sqrt{x^2 + a^2}}{v_1} + \frac{\sqrt{(L-x)^2 + b^2}}{v_2} \\[2.0ex]
&= \frac{n_1}{c}\sqrt{x^2 + a^2} + \frac{n_2}{c}\sqrt{(L-x)^2 + b^2}
\end{aligned}
$$
フェルマーの原理より、\(T(x)\) が最小となる \(x\) において微分係数は \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
\frac{dT}{dx} &= \frac{n_1}{c} \cdot \frac{1}{2}(x^2 + a^2)^{-\frac{1}{2}} \cdot 2x + \frac{n_2}{c} \cdot \frac{1}{2}((L-x)^2 + b^2)^{-\frac{1}{2}} \cdot 2(L-x) \cdot (-1) \\[2.0ex]
&= \frac{n_1}{c} \frac{x}{\sqrt{x^2 + a^2}} – \frac{n_2}{c} \frac{L-x}{\sqrt{(L-x)^2 + b^2}} = 0
\end{aligned}
$$
ここで、図形的な意味を考えると、\(\frac{x}{\sqrt{x^2 + a^2}}\) は入射角 \(\theta_1\) のサイン(\(\sin \theta_1\))、\(\frac{L-x}{\sqrt{(L-x)^2 + b^2}}\) は屈折角 \(\theta_2\) のサイン(\(\sin \theta_2\))に対応します。
したがって、
$$
\begin{aligned}
\frac{n_1}{c} \sin \theta_1 – \frac{n_2}{c} \sin \theta_2 &= 0 \\[2.0ex]
n_1 \sin \theta_1 &= n_2 \sin \theta_2
\end{aligned}
$$
これにより、屈折の法則が導かれました。
使用した物理公式
- フェルマーの原理: \(\displaystyle \frac{dT}{dx} = 0\)
- 微分公式: \(\displaystyle \frac{d}{dx}\sqrt{f(x)} = \frac{f'(x)}{2\sqrt{f(x)}}\)
導出した式 \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\) に、問題の値を代入します。
\(n_1 = \sqrt{3}\)(ガラス)、\(\theta_1 = 30^\circ\)(入射角)、\(n_2 = 1\)(空気)、\(\theta_2 = \theta\)(屈折角)
$$
\begin{aligned}
\sqrt{3} \sin 30^\circ &= 1 \cdot \sin \theta \\[2.0ex]
\sqrt{3} \cdot \frac{1}{2} &= \sin \theta \\[2.0ex]
\sin \theta &= \frac{\sqrt{3}}{2}
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
\theta &= 60^\circ
\end{aligned}
$$
「光は一番早く着くルートを選ぶ」という単純なルールから計算を始めました。
時間を距離と速さで表して、その時間が最小になる条件(微分してゼロ)を探ると、自動的に「屈折の法則」の式が出てきます。
この原理から導かれた式に、今回の数値を当てはめて計算すると、やはり同じ答えが得られます。
原理から導出した結果も \(60^\circ\) となり、他の解法と一致しました。これは屈折の法則がフェルマーの原理というより深い原理に基づいていることを示しています。
問(2)
思考の道筋とポイント
問(1)の続きとして、点Qで反射した光を追跡します。
まず、反射の法則を用いてQでの反射角を求め、次に幾何学的な関係から次の到達点Rでの入射角を特定します。
点Rにおいて、光が空気中へ出る(屈折する)か、出られない(全反射する)かを判定します。
最後に、その後の光路も含めて図示します。
この設問における重要なポイント
- 全反射の条件: 屈折の法則を適用して \(\sin \theta > 1\) となる場合、あるいは入射角が臨界角より大きい場合、光は屈折せず全て反射します。
- 幾何学的追跡: \(\triangle \text{QBR}\) などの図形に着目し、角度を次々と求めていく正確さが求められます。
具体的な解説と立式
1. 点Qでの反射と点Rへの到達
点Qでの入射角は \(30^\circ\) でした。反射の法則より、反射角も \(30^\circ\) です。
光線QRがBC面上の点Rに到達したと考えます。
点Qでの法線とBC面(垂直な壁)の関係、および幾何学的配置を考えます。
図において、点Qでの法線はAB面に垂直、点Rでの法線はBC面に垂直です。AB面とBC面は直交しているため、それぞれの法線も直交します。
\(\triangle \text{QBR}\) (Bは直角の頂点)を考えるのが分かりやすいでしょう。
\(\angle \text{BQR}\) は、\(90^\circ – (\text{反射角}) = 90^\circ – 30^\circ = 60^\circ\) です。
\(\triangle \text{QBR}\) の内角の和より、
$$
\begin{aligned}
\angle \text{BRQ} &= 180^\circ – (90^\circ + 60^\circ) \\[2.0ex]
&= 30^\circ
\end{aligned}
$$
これは光線QRと面BCのなす角です。
したがって、点Rでの入射角 \(\theta_R\) (法線との角)は、
$$
\begin{aligned}
\theta_R &= 90^\circ – 30^\circ \\[2.0ex]
&= 60^\circ
\end{aligned}
$$
2. 点Rでの挙動の判定(屈折の法則の適用)
点Rでの屈折角を \(\phi\) とし、屈折の法則(絶対屈折率形式)を立ててみます。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{3} \sin 60^\circ &= 1 \cdot \sin \phi
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 反射の法則: \((\text{入射角}) = (\text{反射角})\)
- 屈折の法則: \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)
$$
\begin{aligned}
\sin \phi &= \sqrt{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{3}{2} \\[2.0ex]
&= 1.5
\end{aligned}
$$
\(\sin \phi\) の値は必ず \(1\) 以下でなければなりませんが、\(1.5\) となってしまいました。
これは、屈折して空気中に出る光が存在しない、つまり全反射が起こることを意味します。
3. 全反射後の光路
点Rで全反射するため、反射角は入射角と同じ \(60^\circ\) です。
反射光RSがAC面に到達する点Sでの入射角を考えます。
幾何学的に追跡すると、点Rでの法線は水平方向、点Sでの法線はAC面に垂直(水平から \(30^\circ\) 傾いている)など複雑ですが、四角形CQRSや三角形の角度を利用します。
\(\angle \text{BRQ} = 30^\circ\) でした。反射角 \(60^\circ\) より、反射光と面のなす角も \(30^\circ\) です。つまり \(\angle \text{CRS} = 30^\circ\) です。
\(\triangle \text{CRS}\) において、\(\angle \text{C} = 60^\circ\) (\(\triangle \text{ABC}\) より)、\(\angle \text{CRS} = 30^\circ\) なので、
$$
\begin{aligned}
\angle \text{CSR} &= 180^\circ – (60^\circ + 30^\circ) \\[2.0ex]
&= 90^\circ
\end{aligned}
$$
光線RSはAC面に垂直に入射します。
垂直入射(入射角 \(0^\circ\))なので、光は屈折せずに直進して空気中へ出ます。
Qで跳ね返った光が次にどこにぶつかるかを計算しました。
BC面の点Rにぶつかったとき、入射角は \(60^\circ\) でした。
「外に出られるかな?」と計算してみると、サインの値が \(1.5\) というあり得ない数字になりました。これは「外には出られない=全反射する」という合図です。
そこで、鏡のように反射させて次の進路を追うと、今度はAC面に垂直(\(90^\circ\))にぶつかることが分かりました。垂直ならそのまま真っ直ぐ外に出られます。
光路は P \(\rightarrow\) Q(反射) \(\rightarrow\) R(全反射) \(\rightarrow\) S(直進して脱出)となります。
全反射の判定も数式上の矛盾から明確に導かれ、最終的に垂直入射で抜けるというきれいな幾何学的帰結が得られました。
思考の道筋とポイント
計算の途中で矛盾を見つけるのではなく、あらかじめ「何度以上なら全反射するか」という境界線(臨界角)を求めておき、それと入射角を比較して判定する方法です。
この設問における重要なポイント
- 臨界角 \(\alpha\) の定義: 屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角です。これを超えると光は外に出られません。
具体的な解説と立式
ガラスから空気へ出る際の臨界角を \(\alpha\) とします。
屈折角が \(90^\circ\) となる条件より、
$$
\begin{aligned}
\sqrt{3} \sin \alpha &= 1 \cdot \sin 90^\circ
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 臨界角の条件: \(n_1 \sin \alpha = n_2 \sin 90^\circ\)
$$
\begin{aligned}
\sqrt{3} \sin \alpha &= 1 \\[2.0ex]
\sin \alpha &= \frac{1}{\sqrt{3}}
\end{aligned}
$$
一方、点Rでの入射角は \(60^\circ\) でした。これのサインの値は、
$$
\begin{aligned}
\sin 60^\circ &= \frac{\sqrt{3}}{2}
\end{aligned}
$$
両者を比較します。2乗して比べると分かりやすいです。
$$
\begin{aligned}
(\sin \alpha)^2 &= \frac{1}{3} \approx 0.33 \\[2.0ex]
(\sin 60^\circ)^2 &= \frac{3}{4} = 0.75
\end{aligned}
$$
\(\sin 60^\circ > \sin \alpha\) なので、入射角 \(60^\circ\) は臨界角 \(\alpha\) よりも大きいです。
したがって、全反射が起こります。
「ここまでは通れるけど、これ以上斜めに入ると通れない」という限界の角度(臨界角)を先に計算しました。
今回の入射角 \(60^\circ\) はその限界を超えていたため、計算するまでもなく「全反射する」と即座に判断できます。
メインの解法と同じく全反射という結論に至りました。
\(\sin \alpha = 1/\sqrt{3}\) は約 \(35^\circ\) 程度なので、\(60^\circ\) は余裕を持って全反射条件を満たしています。
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最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 屈折の法則(スネルの法則)の絶対屈折率形式
- 核心: 異なる媒質間を光が進むとき、「\(n \sin \theta = \text{一定}\)」という保存量のような関係が成り立ちます。
- 理解のポイント: 相対屈折率 \(n_{12}\) を使うよりも、それぞれの媒質固有の絶対屈折率 \(n\) と、その媒質中での角度 \(\theta\) をペアにして考える方が、式の対称性が良く、ミスを防げます。
- 全反射のメカニズムと判定
- 核心: 屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進む際、光が「外に出られなくなる」現象です。
- 理解のポイント: 数式的には \(\sin \theta > 1\) という解なしの状態として現れ、物理的には臨界角を超えた入射として理解されます。計算結果が異常値(1を超えるサイン)になったら、それは計算ミスではなく全反射の合図です。
- 幾何学的追跡能力
- 核心: 物理法則を適用する前提として、入射角や反射角を正しく特定するための図形的な読み取り能力が不可欠です。
- 理解のポイント: 「光線と面のなす角」と「入射角(法線とのなす角)」を取り違えないこと。常に法線を補助線として引く習慣が重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 光ファイバー: 全反射を繰り返して光を伝送する仕組みは、本問の(2)と同じ原理です。
- プリズムや水滴(虹): 複数回の屈折と反射を経て光路が変わる問題では、各境界面ごとに丁寧に法線を引き、角度を計算していく手順は全く同じです。
- 蜃気楼: 屈折率が連続的に変化する場合も、微小な層ごとの屈折の法則(またはフェルマーの原理)の積み重ねで理解できます。
- 初見の問題での着眼点:
- 垂直入射を探す: 屈折せずに直進できるボーナスポイントです。ここを起点に角度計算を始めましょう。
- 法線を必ず描く: 境界面にぶつかったら、まずその点に垂直な線(法線)を引きます。すべての角度はここ基準です。
- 「\(n \sin \theta\)」を書き込む: 図のそれぞれの領域に、屈折率と角度のペアをメモしておくと、式を立てるのが一瞬で終わります。
- 全反射を疑う: 「屈折率 大 \(\rightarrow\) 小」の移動では、常に全反射の可能性を頭の片隅に置いておきましょう。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 入射角の定義ミス:
- 誤解: 面と光線のなす角(今回の \(60^\circ\))をそのまま公式の \(\theta\) に代入してしまう。
- 対策: 「法線(Normal)」の “N” を意識しましょう。公式を使う前に、必ず \(90^\circ\) から引く必要があるか確認する癖をつけます。
- 相対屈折率の定義の逆転:
- 誤解: \(n_{12}\) が \(n_1/n_2\) なのか \(n_2/n_1\) なのか、どっちが分母か分からなくなる。
- 対策: 別解で示した「\(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)」の形式を使いましょう。これなら分数の向きで迷うことは永遠になくなります。
- 全反射の判定見落とし:
- 誤解: \(\sin \phi = 1.5\) となったとき、「計算間違いだ」と思って無理やり \(1\) 以下になるように式をいじってしまう。
- 対策: \(\sin > 1\) はエラーではなく「全反射」という物理的メッセージです。自信を持って「解なし \(\rightarrow\) 全反射」と結論づけましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(1)での公式選択(屈折の法則):
- 選定理由: 異なる媒質の境界での光の折れ曲がりを定量的に扱う唯一の法則だからです。
- 適用根拠: 入射角が \(0^\circ\) でない場合、光は必ず屈折します。絶対屈折率形式を選べば、媒質の順序を気にする必要がありません。
- 問(2)での公式選択(全反射の判定):
- 選定理由: 屈折角を求めようとして屈折の法則を立てた結果、数学的な矛盾(\(\sin \theta > 1\))が生じたため、物理現象として全反射を選択します。
- 適用根拠: 臨界角との比較(別解)も有効ですが、とりあえず屈折の法則を立ててみて、解ければ屈折、解けなければ全反射、というフローチャート的な思考が実戦的です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 三角関数の値の確認:
- \(\sin 30^\circ = 1/2\)、\(\sin 60^\circ = \sqrt{3}/2\) など、基本的な値は瞬時に出せるようにしておきましょう。図を描いて \(1:2:\sqrt{3}\) を確認するのも有効です。
- \(\sqrt{3} \approx 1.73\) なので、\(\sqrt{3}/2 \approx 0.866\) です。これが \(1\) を超えていないかなどの感覚を持っておくと、全反射の判定ミスを防げます。
- 図への書き込み:
- 計算用紙の余白に計算式だけを書くのではなく、大きく描いた図の中に、分かった角度を次々と書き込んでいきましょう。視覚的に情報を整理することで、幾何学的な勘違い(足すべきか引くべきか)が激減します。
- 次元と値の範囲チェック:
- 角度 \(\theta\) は \(0^\circ\) から \(90^\circ\) の間か?
- \(\sin \theta\) は \(0\) から \(1\) の間か?
- 屈折率 \(n\) は通常 \(1\) 以上か?(真空が \(1\))
- これらの基本的な範囲を逸脱していたら、即座に立ち止まって見直しましょう。
問題87 (センター試験+東京理科大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(フェルマーの原理)
- 模範解答が屈折の法則を既知の公式として適用しているのに対し、別解では「光は所要時間が最小となる経路を通る」というフェルマーの原理から出発し、微分を用いて屈折の法則そのものを導出します。その上で、臨界角の条件式を導きます。
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(フェルマーの原理)
- 上記の別解が有益である理由
- 原理からの理解: 公式の暗記ではなく、物理現象の根本原理(変分原理)から法則が導かれる過程を理解できます。
- 数学的必然性: なぜ光が屈折するのか、なぜ臨界角が存在するのかを、関数の極値問題として捉えることができます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「光ファイバーの原理と全反射」です。光が屈折率の異なる媒質を進む際の振る舞いを、幾何学的な考察と屈折の法則を組み合わせて解き明かします。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 屈折の法則(スネルの法則): \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\) の形で理解しておくと、媒質の順序を問わず適用でき便利です。
- 全反射: 光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むとき、入射角がある角度(臨界角)を超えると、光がすべて反射される現象です。
- 幾何学的関係: 直方体や三角形の角度の関係(余角、補角など)を正確に把握する必要があります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、全反射の基本的条件(屈折率の大小)を確認します。
- (2)では、臨界角の定義に基づいて屈折の法則を適用します。
- (3)〜(5)では、光の入射から全反射に至るまでのプロセスを数式化し、条件式を導いていきます。特に三角関数の相互関係(\(\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1\))が鍵となります。
問(1)
思考の道筋とポイント
全反射がどのような条件で起こるか、物理的なイメージまたは光速との関係から判断します。
全反射は、光が「進みにくい(屈折率が大きい)場所」から「進みやすい(屈折率が小さい)場所」へ出ようとするときに、出られずに閉じ込められる現象です。
この設問における重要なポイント
- 屈折率と光速の関係: 屈折率 \(n\) の媒質中の光速 \(v\) は、真空中の光速を \(c\) として \(v = c/n\) で表されます。屈折率が大きいほど光速は遅くなります。
- 全反射の条件: 屈折率が大きい媒質(密)から小さい媒質(疎)へ入射する場合にのみ起こります。
具体的な解説と立式
全反射が起こるためには、入射側の媒質の屈折率 \(n_1\) が、透過側の媒質の屈折率 \(n_2\) よりも大きくなければなりません。
したがって、求める大小関係は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
n_1 &> n_2
\end{aligned}
$$
計算は不要です。大小関係のみを答えます。
光が水の中から空気中に出ようとするときのように、光にとって「窮屈な場所(屈折率大)」から「自由な場所(屈折率小)」へ出ようとするときだけ、全反射は起こります。逆に、空気から水へ入るときは全反射は絶対に起こりません。
今回はガラス直方体(\(n_1\))の中に光を閉じ込めたいので、外側のガラス板(\(n_2\))よりも中の屈折率が高い必要があります。
\(n_1 > n_2\) です。これは光ファイバーのコア(中身)とクラッド(外側)の関係そのものであり、物理的に妥当です。
問(2)
思考の道筋とポイント
臨界角 \(\alpha_0\) とは、屈折角がちょうど \(90^\circ\) になるときの入射角のことです。
AC面(屈折率 \(n_1\) と \(n_2\) の境界面)において、屈折の法則を適用します。
この設問における重要なポイント
- 臨界角の定義: 屈折角が \(90^\circ\) となる瞬間の入射角。これより入射角が大きいと全反射します。
- 屈折の法則の適用: \(n_1 \sin (\text{入射角}) = n_2 \sin (\text{屈折角})\) の形を用います。
具体的な解説と立式
AC面において、ガラス直方体側(屈折率 \(n_1\))からの入射角が \(\alpha_0\) のとき、ガラス板側(屈折率 \(n_2\))への屈折角は \(90^\circ\) となります。
屈折の法則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
n_1 \sin \alpha_0 &= n_2 \sin 90^\circ
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)
\(\sin 90^\circ = 1\) を代入して \(\sin \alpha_0\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
n_1 \sin \alpha_0 &= n_2 \cdot 1 \\[2.0ex]
\sin \alpha_0 &= \frac{n_2}{n_1}
\end{aligned}
$$
光が外に出られるギリギリの角度を計算しています。
入射角をどんどん大きくしていくと、屈折して出ていく光はどんどん水面(境界面)に近づいていきます。そして、屈折した光が真横(\(90^\circ\))を向いてしまった瞬間、それ以上傾けると光は外に出られなくなります。このときの入射角が臨界角です。
\(\sin \alpha_0 = \frac{n_2}{n_1}\) です。(1)より \(n_1 > n_2\) なので、\(\frac{n_2}{n_1} < 1\) となり、\(\sin\) の値として適切です。
思考の道筋とポイント
物理学の根本原理である「フェルマーの原理(最小時間の原理)」から出発します。
「光は2点間を進む際、所要時間が最小となる経路を選ぶ」という原理を数式化し、微分することで屈折の法則を導きます。
そして、その法則を臨界角の条件に適用します。
この設問における重要なポイント
- 時間の関数化: 経路の長さを光速 \(v = c/n\) で割ることで、所要時間を位置の関数として表します。
- 微分の実行: 変数(境界上の通過点)で微分して \(0\) と置くことで、最適な経路(実際の光路)を決定します。
具体的な解説と立式
1. 屈折の法則の導出
図のように座標を設定します。
- 媒質1(屈折率 \(n_1\))中の点A \((0, a)\) から、\(x\) 軸上の点P \((x, 0)\) を通り、媒質2(屈折率 \(n_2\))中の点B \((L, -b)\) へ進む光を考えます。
- 光速はそれぞれ \(v_1 = c/n_1\)、\(v_2 = c/n_2\) です。
所要時間 \(T(x)\) は、距離を速さで割ったものの和です。
$$
\begin{aligned}
T(x) &= \frac{\sqrt{x^2 + a^2}}{v_1} + \frac{\sqrt{(L-x)^2 + b^2}}{v_2} \\[2.0ex]
&= \frac{n_1}{c}\sqrt{x^2 + a^2} + \frac{n_2}{c}\sqrt{(L-x)^2 + b^2}
\end{aligned}
$$
フェルマーの原理より、\(T(x)\) が最小となる \(x\) において微分係数は \(0\) になります。
$$
\begin{aligned}
\frac{dT}{dx} &= \frac{n_1}{c} \cdot \frac{x}{\sqrt{x^2 + a^2}} + \frac{n_2}{c} \cdot \frac{-(L-x)}{\sqrt{(L-x)^2 + b^2}} = 0
\end{aligned}
$$
ここで、図形的に \(\frac{x}{\sqrt{x^2 + a^2}} = \sin \theta_1\)(入射角のサイン)、\(\frac{L-x}{\sqrt{(L-x)^2 + b^2}} = \sin \theta_2\)(屈折角のサイン)です。
したがって、
$$
\begin{aligned}
\frac{n_1}{c} \sin \theta_1 – \frac{n_2}{c} \sin \theta_2 &= 0 \\[2.0ex]
n_1 \sin \theta_1 &= n_2 \sin \theta_2
\end{aligned}
$$
これが屈折の法則です。
2. 臨界角の計算
導出した法則を本問の状況に適用します。
入射角 \(\theta_1 = \alpha_0\)、屈折角 \(\theta_2 = 90^\circ\) とすると、
$$
\begin{aligned}
n_1 \sin \alpha_0 &= n_2 \sin 90^\circ
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- フェルマーの原理: \(\displaystyle \frac{dT}{dx} = 0\)
- 微分公式: \(\displaystyle \frac{d}{dx}\sqrt{f(x)} = \frac{f'(x)}{2\sqrt{f(x)}}\)
$$
\begin{aligned}
n_1 \sin \alpha_0 &= n_2 \cdot 1 \\[2.0ex]
\sin \alpha_0 &= \frac{n_2}{n_1}
\end{aligned}
$$
「光は一番早いルートを通る」というルールに従って計算すると、自然と「屈折の法則」の式が出てきます。
この式を使って、「光がギリギリ外に出られる角度(屈折角が90度)」を計算すると、模範解答と同じ結果が得られます。
原理から導出した結果も \(\sin \alpha_0 = \frac{n_2}{n_1}\) となり、一致しました。
問(3)
思考の道筋とポイント
AB面(側面)での屈折を考えます。
空気中から入射角 \(\theta\) で入った光が、ガラス中でどのように進むかを幾何学的に追跡し、AC面への入射角 \(\alpha\) との関係を導きます。
この設問における重要なポイント
- 幾何学的関係: 直方体の角が \(90^\circ\) であることを利用し、AB面での屈折角とAC面への入射角 \(\alpha\) の関係を見抜きます。
- 屈折の法則: 空気(\(n=1\))からガラス(\(n=n_1\))への屈折式を立てます。
具体的な解説と立式
1. 角度の関係
図より、AB面での屈折角を \(\phi\) とすると、\(\triangle\)(屈折点・直角の頂点・AC面への入射点)は直角三角形をなします。
したがって、\(\phi\) と \(\alpha\) の和は \(90^\circ\) です。
$$
\begin{aligned}
\phi &= 90^\circ – \alpha
\end{aligned}
$$
2. 屈折の法則の立式
AB面において、空気(屈折率 \(1\))から入射角 \(\theta\)、ガラス(屈折率 \(n_1\))へ屈折角 \(\phi = 90^\circ – \alpha\) で進むので、
$$
\begin{aligned}
1 \cdot \sin \theta &= n_1 \sin(90^\circ – \alpha)
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 屈折の法則: \(n_A \sin \theta_A = n_B \sin \theta_B\)
- 三角関数の公式: \(\sin(90^\circ – \alpha) = \cos \alpha\)
上の式を変形します。
$$
\begin{aligned}
\sin \theta &= n_1 \cos \alpha \\[2.0ex]
\cos \alpha &= \frac{\sin \theta}{n_1}
\end{aligned}
$$
まず、光が横から入ってくるとき、中でどれくらい折れ曲がるかを考えます。
図を見ると、横の面での「折れ曲がり角(屈折角)」と、上の面への「入射角 \(\alpha\)」を足すとちょうど90度になることが分かります。
これと屈折の法則を組み合わせることで、\(\cos \alpha\) を \(\theta\) を使って表すことができます。
\(\cos \alpha = \frac{\sin \theta}{n_1}\) です。\(n_1 > 1\)、\(0 \le \sin \theta \le 1\) なので、右辺は \(1\) 以下となり、コサインの値として妥当です。
問(4)
思考の道筋とポイント
AC面で全反射が起こるための条件を数式化します。
「入射角 \(\alpha\) が臨界角 \(\alpha_0\) より大きい」という条件を、問(2)と問(3)の結果を使って \(\sin \theta\) の不等式に変換します。
この設問における重要なポイント
- 全反射の条件: \(\alpha > \alpha_0\) です。\(0^\circ < \alpha < 90^\circ\) の範囲では \(\sin \alpha > \sin \alpha_0\) と同値です。
- 三角関数の相互関係: \(\sin^2 \alpha + \cos^2 \alpha = 1\) を用いて、\(\cos \alpha\) の情報(問3)を \(\sin \alpha\) の情報に変換します。
具体的な解説と立式
全反射が起こる条件は、AC面への入射角 \(\alpha\) が臨界角 \(\alpha_0\) より大きいことです。
$$
\begin{aligned}
\alpha &> \alpha_0
\end{aligned}
$$
サインをとると、
$$
\begin{aligned}
\sin \alpha &> \sin \alpha_0
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sin \alpha = \sqrt{1 – \cos^2 \alpha}\) です(\(\alpha\) は鋭角なので正)。
問(3)より \(\cos \alpha = \frac{\sin \theta}{n_1}\)、問(2)より \(\sin \alpha_0 = \frac{n_2}{n_1}\) なので、これらを代入します。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{1 – \left( \frac{\sin \theta}{n_1} \right)^2} &> \frac{n_2}{n_1}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 全反射条件: \(\sin \alpha > \sin \alpha_0\)
- 三角関数の相互関係: \(\sin^2 \alpha + \cos^2 \alpha = 1\)
両辺とも正なので、2乗してルートを外します。
$$
\begin{aligned}
1 – \frac{\sin^2 \theta}{n_1^2} &> \frac{n_2^2}{n_1^2}
\end{aligned}
$$
両辺に \(n_1^2\) を掛けます(\(n_1 > 0\) なので不等号の向きは変わりません)。
$$
\begin{aligned}
n_1^2 – \sin^2 \theta &> n_2^2 \\[2.0ex]
\sin^2 \theta &< n_1^2 – n_2^2
\end{aligned}
$$
図より \(\theta\) は \(0^\circ\) から \(90^\circ\) の範囲にあるため、\(\sin \theta > 0\) です。
したがって、平方根をとって、
$$
\begin{aligned}
\sin \theta &< \sqrt{n_1^2 – n_2^2}
\end{aligned}
$$
「上の面で全反射してほしい」という条件は、「上の面への入射角 \(\alpha\) がある程度大きくないといけない」ということです。
\(\alpha\) が大きいということは、逆に言うと最初の入射角 \(\theta\) は小さくないといけません(\(\theta\) が大きいと、光は深く入り込んでしまい、上の面には浅い角度で当たってしまうからです)。
この関係を数式で計算していくと、「\(\sin \theta\) がある値より小さければOK」という条件が出てきます。
\(\sin \theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) です。
この式は、\(n_1\) と \(n_2\) の差が大きいほど(右辺が大きくなる)、許容される \(\theta\) の範囲が広がることを意味しています。これは「屈折率の差が大きいほど全反射しやすい」という直感と一致します。
問(5)
思考の道筋とポイント
「すべての \(\theta\) に対して全反射を起こさせる」とは、どのような角度で光が入ってきても、必ず全反射して閉じ込められる(光が漏れない)状態を指します。
問(4)で求めた不等式が、\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) のあらゆる \(\theta\) で常に成り立つための条件を考えます。
この設問における重要なポイント
- 最悪ケースの想定: 条件が最も破られやすいのは、左辺の \(\sin \theta\) が最大になるときです。
- 不等式の成立条件: \(A < B\) が常に成り立つためには、\((\text{Aの最大値}) \le B\) であれば十分です。
具体的な解説と立式
問(4)の条件式 \(\sin \theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) が、\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) のすべての \(\theta\) で成り立つ必要があります。
左辺の \(\sin \theta\) は、\(\theta\) が \(90^\circ\) に近づくにつれて \(1\) に近づきます(最大値 \(1\))。
したがって、右辺の定数が \(1\) 以上であれば、どんな \(\sin \theta\) よりも必ず大きくなります。
求める条件は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
1 &\le \sqrt{n_1^2 – n_2^2}
\end{aligned}
$$
(※等号を含めるかどうかは微妙ですが、\(\theta < 90^\circ\) なので \(\sin \theta\) は厳密には \(1\) 未満です。しかし、極限として \(1\) まで考慮し、かつ境界条件を含めるのが一般的です。模範解答に従い等号を含めます。)
このままでも正解ですが、2乗してルートを外した形も一般的です。
$$
\begin{aligned}
1 &\le n_1^2 – n_2^2
\end{aligned}
$$
どんな角度で光を入れても全反射させたいなら、一番厳しい条件(\(\theta\) が \(90^\circ\) ギリギリで入ってきたとき)でも全反射するように設計すればよいわけです。
\(\sin \theta\) は最大で \(1\) になるので、条件式の右側の壁(\(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\))が \(1\) よりも高ければ、絶対に壁を越えられることはありません。
\(1 \le \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) です。
これは \(n_1^2 \ge n_2^2 + 1\) を意味し、コアの屈折率 \(n_1\) がクラッドの屈折率 \(n_2\) に比べて十分に大きければ、どんな光でも閉じ込められることを示しています。高性能な光ファイバーの設計条件と言えます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 屈折の法則と全反射の連動
- 核心: 光ファイバーの原理は、「入射面での屈折」と「側面での全反射」という2つの現象が連動しています。
- 理解のポイント: 最初の屈折で光の角度が変わり、その角度が次の面での入射角を決定します。この「角度のバトンリレー」を数式(\(\phi = 90^\circ – \alpha\))で正確につなぐことが解法の鍵です。
- 臨界角の物理的意味
- 核心: 臨界角は「光が外に出られる限界の角度」です。
- 理解のポイント: \(\sin \alpha_0 = n_2/n_1\) という式を暗記するだけでなく、「屈折角が \(90^\circ\) になる瞬間」という定義からいつでも導けるようにしておくことが重要です。
- 三角関数の相互関係の活用
- 核心: 物理の問題では、\(\sin\) と \(\cos\) が混在する場面が多々あります。
- 理解のポイント: \(\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1\) は、単なる数学の公式ではなく、物理変数を変換するための強力なツールです。本問では、\(\cos \alpha\)(幾何学的関係)を \(\sin \alpha\)(全反射条件)に変換するために不可欠でした。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 光ファイバーの曲げ: ファイバーが曲がっている場合、幾何学的関係が複雑になりますが、「法線との角度」を追う基本は変わりません。
- 水中からの光の脱出: 水中の光源から出た光が水面で全反射して円形の窓(スネルの窓)を作る問題も、臨界角の理解が問われます。
- プリズム内の光路: 直角プリズムなどで光が \(90^\circ\) や \(180^\circ\) 曲がる仕組みも、本問と同じ全反射の原理です。
- 初見の問題での着眼点:
- 屈折率の大小チェック: どっちが \(n_1\) でどっちが \(n_2\) か? 全反射は必ず「大 \(\to\) 小」でしか起きません。
- 直角三角形を探す: 境界面が直交している場合(直方体など)、入射角と屈折角の関係には必ず「足して \(90^\circ\)」などの単純な関係が隠れています。
- 最悪ケースを考える: 「すべての角度で〜」と問われたら、変数が最大(または最小)になる極限の状況を想定しましょう。本問では \(\sin \theta \to 1\) がその鍵でした。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 角度の取り違え:
- 誤解: 図の \(\alpha\) や \(\theta\) が「面との角度」なのか「法線との角度」なのかを混同する。
- 対策: 常に「法線」を基準に考える癖をつけましょう。特に \(\cos \alpha\) が出てくる場面では、\(\sin(90^\circ – \alpha)\) からの変換であることを意識するとミスが減ります。
- 不等号の向きの逆転:
- 誤解: 全反射の条件を \(\sin \alpha < \sin \alpha_0\) としてしまう。
- 対策: 「角度が浅い(寝ている)と反射しやすい」という直感と結びつけましょう。全反射するには、臨界角よりも「大きく(深く)」傾いている必要があります。
- 条件式の変数:
- 誤解: 答えに \(\alpha\) や \(\phi\) を残してしまう。
- 対策: 問題文で与えられた変数(\(n_1, n_2, \theta\))だけで答えが構成されているか、最後に必ず確認しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(2)での公式選択(屈折の法則):
- 選定理由: 臨界角は屈折現象の特異点(屈折角 \(90^\circ\))として定義されるため、屈折の法則そのものを適用するのが最も原理的です。
- 適用根拠: \(n_1 \sin \alpha_0 = n_2 \sin 90^\circ\) と置くことで、定義から直接導出できます。
- 問(4)での公式選択(三角関数の合成):
- 選定理由: 全反射条件 \(\sin \alpha > n_2/n_1\) と、幾何学的条件 \(\cos \alpha = \sin \theta / n_1\) を結びつけるには、\(\sin\) と \(\cos\) をつなぐ恒等式が必要です。
- 適用根拠: \(\sin \alpha = \sqrt{1-\cos^2 \alpha}\) を使うことで、2つの式を1つの不等式に統合できます。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 次元(単位)の確認:
- \(\sin \theta\) や屈折率 \(n\) は無次元量です。計算結果が長さや時間の次元になっていないか確認しましょう。
- 値の範囲チェック:
- \(\sin \theta\) や \(\cos \alpha\) は必ず \(1\) 以下になります。計算途中で \(n_1/n_2\)(\(>1\))のような値が \(\sin\) になっていたら、分母分子が逆になっている可能性があります。
- 極限での検算:
- もし \(n_1 = n_2\) だったら? 全反射は起きないはずです。問(4)の式で \(n_1=n_2\) とすると右辺が \(0\) になり、\(\sin \theta < 0\) となって解なし(全反射しない)となるため、整合しています。
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問題88 (共通テスト+センター試験)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)〜(3)の別解: フェルマーの原理(最短時間の原理)と微積分を用いた体系的解法
- 模範解答が幾何光学的な作図や公式の適用で解くのに対し、別解では「光は所要時間が停留値をとる経路を進む」というフェルマーの原理を出発点とします。
- 光路長を位置の関数として表し、それを微分して極値を求めることで、レンズの公式や結像の条件を数学的に導出します。
- 設問(1)〜(3)の別解: フェルマーの原理(最短時間の原理)と微積分を用いた体系的解法
- 上記の別解が有益である理由
- 幾何光学の公式(写像公式)が、実は「光の干渉」や「位相」という波動光学的な原理に基づいていることを理解できます。
- 「なぜレンズの一部を隠しても像が欠けないのか」という設問(3)の疑問に対し、「結像点ではあらゆる経路の光路長が等しくなる(位相が揃う)」という根本原理から明確な答えを与えます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「凸レンズによる結像と実像の性質」です。幾何光学の基本法則を用いて、像の向き、位置、明るさの変化を論理的に導く力が問われます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 実像の生成: 凸レンズによって光が集まり、スクリーン上に像を結ぶ現象です。
- 倒立実像: 実像は、元の物体に対して上下左右が逆転(点対称)した向きになります。
- レンズの公式: 物体までの距離 \(a\)、像までの距離 \(b\)、焦点距離 \(f\) の間に成り立つ関係式 \(\displaystyle \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) です。
- 結像の原理: 物体の一点から出た無数の光線が、レンズの様々な場所を通った後、再び一点に集まることで像が形成されます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、実像の幾何学的な性質(倒立)に基づいて、像の向きを判断します。
- (2)では、与えられた条件(距離と倍率)をレンズの公式と倍率の式に代入して計算します。
- (3)では、結像のメカニズム(光線の集合)に立ち返り、光の一部が遮られたときの影響を考察します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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