「良問の風」攻略ガイド(86〜90問):重要問題の解き方と物理の核心をマスター!

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

問題86 (鹿児島大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、光が空気とガラスという異なる媒質の境界面でどのように振る舞うか、特に屈折と全反射の現象に焦点を当てた問題です。三角形のガラスプリズム内を進む光の経路を正確に追い、屈折の法則や全反射の条件を適用して問題を解いていく必要があります。

与えられた条件
  • ガラスの形状: 図のような直角三角形ABCのガラス。 \(\angle A = 30^\circ\), \(\angle B = 90^\circ\) (したがって \(\angle C = 60^\circ\))。
  • 光の入射: 空気中からAC面の点Pへ、ガラス面に垂直に入射する。
  • 点Q: 光が点Pからガラスに入った後、はじめてガラス面BCに達した点。
  • 屈折率: 空気の屈折率 \(n_{\text{空気}} = 1\)、ガラスの屈折率 \(n_{\text{ガラス}} = \sqrt{3}\)。
  • 点Pの位置: 図に示された位置。
問われていること
  1. 点Qから空気中へ出ていく光の屈折角。
  2. 点Pで入射し、点Qで反射した光が空気中へ出るまでの光の進路の図示。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くためには、以下の物理法則や概念をしっかりと理解しておく必要があります。

  • 光の直進性: 均一な媒質中では光はまっすぐ進みます。また、媒質の境界面に垂直に入射した光は、屈折せずに直進します。
  • 屈折の法則: 光がある媒質1から別の媒質2へ入射するとき、入射角を \(\theta_1\)、屈折角を \(\theta_2\)、各媒質の絶対屈折率を \(n_1, n_2\) とすると、\(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) という関係が成り立ちます。
  • 反射の法則: 光が境界面で反射するとき、入射角と反射角は等しくなります。また、入射光線、反射光線、および境界面の法線は同じ平面内にあります。
  • 全反射と臨界角: 光が屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ進むとき、入射角がある特定の角度(臨界角 \(\alpha\))よりも大きくなると、光は屈折して小さな屈折率の媒質へ進むことができず、すべて境界面で反射されます。この現象を全反射といいます。臨界角 \(\alpha\) は、屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ光が入射し、屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角で、\(n_1 \sin\alpha = n_2 \sin 90^\circ\) (ただし \(n_1 > n_2\)) から求めることができます。

各設問に対して、これらの法則を適切に適用し、幾何学的な考察を交えながら数式を立てて解いていきます。

※注意点※
以下の解説では、特に指定がない限り、設問中の角度(例:点Qでの入射角が\(30^\circ\))は、模範解答に示されている図の値や記述に従って進めます。問題の初期図からこれらの角度を厳密に導出する過程は複雑になる場合があり、模範解答が特定の角度を前提としている可能性があるためです。

問1

思考の道筋とポイント
点Pでガラスに垂直に入射した光がガラス内部を直進し、BC面上の点Qに達します。点Qでガラスから空気に光が出ようとするときの屈折角を求めます。そのためには、まず点Qでのガラスから空気への入射角を決定し、その後屈折の法則を適用します。

この設問における重要なポイント

  • 垂直入射: 光が境界面に垂直に入射する場合、入射角は \(0^\circ\) であり、屈折せずに直進します。
  • 入射角の特定: 点Qにおける入射角(光線とBC面の法線のなす角)を正しく把握することが不可欠です。ここでは模範解答の図に従い、この入射角を \(30^\circ\) とします。
  • 屈折の法則の適用: ガラスから空気へ光が進む際の屈折現象に屈折の法則を正しく用います。屈折率の大きい媒質(ガラス)から小さい媒質(空気)へ進むため、光は法線から離れる方向に屈折します。

具体的な解説と立式
1. 点Pでの光の進み方:
光は空気中からAC面に垂直に入射します。境界面に垂直に入射する光は屈折しないため、ガラス内でもAC面に垂直な方向に直進し、点Qに達します。

2. 点Qでの入射角:
模範解答の図および解説によると、点Qでの入射角(ガラス内の光線とBC面の法線とのなす角)は \(30^\circ\) です。これを \(i_Q\) とします。
$$i_Q = 30^\circ$$
3. 屈折の法則の適用:
点Qにおいて、ガラス(屈折率 \(n_{\text{ガラス}} = \sqrt{3}\))から空気(屈折率 \(n_{\text{空気}} = 1\))へ光が進みます。求める屈折角を \(r_Q\) とすると、屈折の法則は次のように表せます。
$$n_{\text{ガラス}} \sin i_Q = n_{\text{空気}} \sin r_Q$$
ここに、与えられた屈折率と上記の入射角を代入します。
$$\sqrt{3} \sin 30^\circ = 1 \cdot \sin r_Q$$

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)
計算過程

上記で立てた屈折の法則の式に、具体的な数値を代入して \(r_Q\) を求めます。
1. \(\sin 30^\circ\) の値を代入します:
\(\sin 30^\circ = \displaystyle\frac{1}{2}\) です。
$$\sqrt{3} \cdot \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right) = 1 \cdot \sin r_Q$$
2. \(\sin r_Q\) について整理します:
$$\sin r_Q = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}$$
3. \(\sin r_Q = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\) を満たす \(r_Q\) を求めます:
光が空気中へ出ていくので、屈折角 \(r_Q\) は \(0^\circ \le r_Q \le 90^\circ\) の範囲で考えます。この範囲で \(\sin r_Q = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\) を満たす角度は、
$$r_Q = 60^\circ$$

計算方法の平易な説明
  1. 光はガラスのAC面に垂直に入るので、そのまままっすぐ進んでBC面上の点Qにぶつかります。
  2. 点Qでガラスから空気に光が出ようとするときの、ガラス側の光線とBC面に立てた法線との間の角度(入射角)が \(30^\circ\) であるとします。(これは問題の図や模範解答の指示に基づきます。)
  3. 光が曲がるルールである屈折の法則 \(n_{\text{ガラス}} \sin(\text{入射角}) = n_{\text{空気}} \sin(\text{屈折角})\) を使います。
  4. ガラスの屈折率は \(\sqrt{3}\)、空気の屈折率は \(1\)、入射角は \(30^\circ\) なので、これらを公式に入れると、\(\sqrt{3} \times \sin 30^\circ = 1 \times \sin(\text{屈折角})\) となります。
  5. \(\sin 30^\circ\) は \(\frac{1}{2}\) なので、式は \(\sqrt{3} \times \frac{1}{2} = \sin(\text{屈折角})\)、つまり \(\sin(\text{屈折角}) = \frac{\sqrt{3}}{2}\) となります。
  6. 三角関数で \(\sin\) の値が \(\frac{\sqrt{3}}{2}\) になるのは、角度が \(60^\circ\) のときです。なので、求める屈折角は \(60^\circ\) です。
結論と吟味

点Qから空気中へ出ていく光の屈折角は \(60^\circ\) です。入射角 \(30^\circ\) に対して屈折角が \(60^\circ\) となり、光はガラス中よりも空気中の方が進みやすいため(屈折率が小さいため)、法線から離れる方向に屈折しており、物理的に妥当な結果です。
(もし、点Qでの入射角が問題の初期図から独自に \(60^\circ\) と求められる場合、結論は大きく異なり全反射となる可能性がありますが、ここでは模範解答の前提に従いました。)

解答 (1) \(60^\circ\)

問2

思考の道筋とポイント
点Pから入射した光が点Qで「反射」する場合を考え、その後の光の進路を図示します。点Qで反射した後、光はガラス内部をさらに進み、別の境界面(AB面やAC面)に達します。その境界面で全反射が起こるか、それとも屈折して外部に出るかを判断し、最終的に空気中に出るまでの経路を追跡します。

この設問における重要なポイント

  • 反射の法則: 点Qで光が反射する際、入射角と反射角は等しくなります。
  • 全反射の確認: ガラスから空気へ光が進もうとする各境界面では、必ず全反射の可能性を検討します。そのためには、まずガラスから空気への臨界角を計算しておくと便利です。
  • 臨界角の計算: ガラス(屈折率 \(n_{\text{ガラス}}\))から空気(屈折率 \(n_{\text{空気}}\))への臨界角 \(\alpha\) は、\(n_{\text{ガラス}} \sin \alpha = n_{\text{空気}} \sin 90^\circ\) より \(\sin \alpha = \frac{n_{\text{空気}}}{n_{\text{ガラス}}}\) で与えられます。
  • 幾何学的な光路の追跡: 反射や屈折を繰り返す光の進路を、三角形の辺や角度の関係を利用して正確に作図・判断する必要があります。模範解答の図に示される点Rや点Sにおける入射角は、その図の指示に従います。

具体的な解説と立式
1. 臨界角の計算:
まず、ガラスから空気へ光が進む際の臨界角 \(\alpha\) を計算しておきます。
$$n_{\text{ガラス}} \sin \alpha = n_{\text{空気}} \sin 90^\circ$$
$$\sqrt{3} \sin \alpha = 1 \cdot 1$$
$$\sin \alpha = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}$$

2. 点Qでの反射:
点Qでの入射角は、問1と同様に \(i_Q = 30^\circ\) とします(模範解答の前提)。
光が点Qで反射する場合、反射の法則により、反射角も \(30^\circ\) です。光はBC面に対して入射光と対称な方向に進みます。

3. 点Qで反射した光の進路と、AB面上の点Rでの入射:
模範解答の図に従うと、点Qで反射した光はガラス内部を進み、次にAB面上の点Rに達します。
そして、点RでのAB面に対する入射角 \(i_R\) は \(60^\circ\) とされています。
$$i_R = 60^\circ$$

4. 点Rでの全反射の確認:
点Rでは、ガラスから空気へ光が進もうとします。ここで全反射が起こるかを確認します。
入射角 \(i_R = 60^\circ\) と臨界角 \(\alpha\) を比較します。それぞれの \(\sin\) の値を比較すると分かりやすいです。
\(\sin i_R = \sin 60^\circ = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)
\(\sin \alpha = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)
ここで、\(\left(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\right)^2 = \displaystyle\frac{3}{4}\) および \(\left(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\right)^2 = \displaystyle\frac{1}{3}\) です。
\(\displaystyle\frac{3}{4} > \displaystyle\frac{1}{3}\) なので、それぞれの平方根も \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2} > \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\) となります。
つまり、\(\sin i_R > \sin \alpha\) です。\(0^\circ < \alpha < 90^\circ\) および \(0^\circ < i_R < 90^\circ\) の範囲では \(\sin\) 関数は単調増加なので、\(i_R > \alpha\) が成り立ちます。
入射角 \(i_R = 60^\circ\) は臨界角 \(\alpha\) よりも大きいため、点Rでは全反射が起こります。光は屈折して空気中に出ることはできません。

(別確認)もし屈折すると仮定して屈折角を \(\phi\) とすると、屈折の法則より、
$$\sqrt{3} \sin 60^\circ = 1 \cdot \sin \phi$$
$$\sqrt{3} \cdot \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2} = \sin \phi$$
$$\sin \phi = \displaystyle\frac{3}{2}$$
\(\sin \phi\) の値は \(1\) を超えることはできないため、\(\sin \phi = \displaystyle\frac{3}{2} (>1)\) となるような実在の角度 \(\phi\) は存在しません。これは全反射が起こることを裏付けています。

5. 点Rでの反射と、AC面上の点Sでの入射:
点Rで全反射した光は、反射の法則に従い、反射角 \(60^\circ\) で反射します。
模範解答の図によると、この反射光は次にAC面上の点Sに達します。
そして、点SではAC面に垂直に入射する(つまり入射角が \(0^\circ\) になる)とされています。
入射角が \(0^\circ\) の場合、光は屈折せずに直進し、そのまま空気中へ出ていきます。

6. 光の進路の図示:
以上の考察に基づいて光の進路を図示します。

  • P \(\rightarrow\) Q: 空気中からAC面に垂直に入射し、ガラス内を直進してBC面上の点Qに達する。
  • Q \(\rightarrow\) R: 点QでBC面に対し入射角 \(30^\circ\) で反射し(反射角 \(30^\circ\))、ガラス内をAB面上の点Rに進む。
  • R \(\rightarrow\) S: 点RでAB面に対し入射角 \(60^\circ\) で全反射し(反射角 \(60^\circ\))、ガラス内をAC面上の点Sに進む。
  • S \(\rightarrow\) 空気中: 点SでAC面に垂直に入射し(入射角 \(0^\circ\))、そのまま直進して空気中へ出る。

この光路を問題の図に描き加えます。

使用した物理公式

  • 反射の法則: 入射角 = 反射角
  • 臨界角の条件: \(n_1 \sin \alpha = n_2 \sin 90^\circ\) (ただし \(n_1 > n_2\))
  • 屈折の法則 (全反射の確認のため): \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)
計算過程

1. 臨界角 \(\alpha\) の値の評価:
\(\sin \alpha = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)。\(\sqrt{3} \approx 1.732\) なので、\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}} \approx \displaystyle\frac{1}{1.732} \approx 0.577\)。
\(\sin 30^\circ = 0.5\)、\(\sin 35^\circ \approx 0.5736\)、\(\sin 36^\circ \approx 0.5878\)。
よって、臨界角 \(\alpha\) はおよそ \(35.3^\circ\) 程度です。 (\(\alpha = \arcsin(1/\sqrt{3}) \approx 35.26^\circ\))

2. 点Rでの入射角 \(i_R = 60^\circ\) との比較:
\(i_R = 60^\circ > \alpha \approx 35.3^\circ\) なので、全反射が起こります。

3. (参考)\(\sin \phi = \displaystyle\frac{3}{2}\) の確認:
\(\displaystyle\frac{3}{2} = 1.5\)。\(\sin\) の最大値は \(1\) なので、これを超えることはありえません。

計算方法の平易な説明
  1. まず、ガラスから空気に光が出るときに「全反射」が起こる角度(臨界角)の情報を計算しておきます。\(\sin(\text{臨界角}) = \frac{\text{空気の屈折率}}{\text{ガラスの屈折率}} = \frac{1}{\sqrt{3}}\) です。
  2. 光は点Qで反射します。入ってきた角度(入射角 \(30^\circ\))と同じ角度で反射して進みます。
  3. 反射した光は、ガラスの別の面AB上の点Rにぶつかります。このときの入射角は \(60^\circ\) であるとします(模範解答の図より)。
  4. この入射角 \(60^\circ\) が、ステップ1で考えた臨界角より大きいかどうかを調べます。\(\sin 60^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2}\) です。\(\frac{\sqrt{3}}{2}\)(約0.866)は \(\frac{1}{\sqrt{3}}\)(約0.577)より大きいので、入射角 \(60^\circ\) は臨界角よりも大きいです。
  5. したがって、点Rでは全反射が起こり、光は空気中に出られず、入射角と同じ \(60^\circ\) の角度で反射されます。
  6. 全反射した光は、さらにガラスの面AC上の点Sにぶつかります。模範解答の図によると、このときは面に垂直に(入射角 \(0^\circ\) で)ぶつかるため、そのまままっすぐ空気中に出ていきます。
  7. これらの光の進む道を線で結んで図に描きます。
結論と吟味

点Pで入射し、点Qで反射した光は、その後AB面上の点Rで全反射し、さらにAC面上の点Sからガラス面に垂直に空気中へ出ていきます。この光路を図示することが求められています。
ここでも、点Q、R、Sにおける入射角は模範解答の図や記述に依存しており、本来は問題の初期条件と幾何学から導出すべきものです。特に、光路が複雑に入り組む場合、正確な作図と角度計算が非常に重要になります。

解答 (2) 光の進路は模範解答の図(2)(または上記説明に基づく図)のようになる。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)。異なる媒質の境界面で光が屈折する際の基本法則です。どちらの媒質の屈折率とサインを組にするかを間違えないことが重要です。
  • 反射の法則: 入射角と反射角は等しい。単純ですが、光路作図の基本です。
  • 全反射と臨界角: 光が屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ入射する際、入射角が臨界角 (\(\sin\alpha = n_2/n_1\), \(n_1>n_2\)) を超えると全反射が起こります。この条件を正しく理解し適用できるかが鍵となります。
  • 光の直進性と垂直入射: 光は均一媒質中を直進し、境界面に垂直に入射した場合は屈折せず直進します。これが光路の出発点や途中の簡単なケースで役立ちます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • プリズムによる光の分散や進路変更の問題。
    • 光ファイバー内で光が全反射を繰り返しながら進む原理の説明。
    • ダイヤモンドが高価に見える理由の一つである、大きな屈折率による強い輝き(臨界角が小さく内部で全反射しやすい)。
    • 内視鏡など、医療機器への応用。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 媒質の屈折率の関係: 光が屈折率の「大→小」へ進むのか「小→大」へ進むのかを確認します。特に「大→小」の場合は全反射の可能性があります。
    2. 境界面の法線: 各境界面で法線を正確に作図し、入射角・反射角・屈折角を法線からの角度として捉えます。
    3. 幾何学的関係: 図形(三角形の角度、平行線など)の性質を利用して、入射角や光路を正確に求めます。
    4. 臨界角の事前計算: 「大→小」の境界面が複数回現れる場合は、最初に臨界角を計算しておくと効率的です。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
    • 作図を丁寧に行うこと。フリーハンドでも良いので、角度の関係がある程度正確にわかるように描く。
    • 複数の界面がある場合、一つ一つの界面での現象を順番に落ち着いて処理していく。前の界面での結果が次の界面への入力となる。
    • 「反射した光」「屈折した光」など、問題文がどの光について尋ねているのかを正確に把握する。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 入射角・屈折角の誤認: 光線と「境界面」とのなす角ではなく、光線と「法線」とのなす角です。
    • 対策: 必ず法線を描き、角度をそこに記入する習慣をつける。
  • 屈折の法則の \(n\) と \(\sin\theta\) の組み合わせミス: \(n_1 \sin\theta_2 = n_2 \sin\theta_1\) のように間違える。
    • 対策: 「屈折率 \(\times\) その媒質での角度の\(\sin\) = 一定」と覚える。入射側と屈折側でペアを作る。
  • 全反射の条件の適用ミス: 屈折率が小→大の場合にも全反射を考えてしまう。臨界角の式の \(n_1, n_2\) の大小関係を間違う (\(\sin\alpha > 1\) になってしまう)。
    • 対策: 全反射は必ず「大→小」で起こる。臨界角の式 \(\sin\alpha = n_2/n_1\) は \(n_2 < n_1\) (小/大) と覚える。
  • 角度の幾何学的計算ミス: 三角形の内角の和、錯角・同位角などの基本的な幾何学の適用ミス。
    • 対策: 図を大きく描き、分かっている角度をすべて書き込む。補助線が必要な場合もある。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • 点P: 光がガラスにまっすぐ入っていく。
    • 点Q (問1): ガラスから空気に出ようとするとき、空気の方が進みやすいので、法線からパッと離れるように大きく曲がる。
    • 点Q (問2 反射): BC面が鏡のようになり、光が跳ね返る。
    • 点R (問2 全反射): AB面からも空気に出ようとするが、入射角が深すぎる(大きすぎる)ため、まるで鏡のように完全に跳ね返されてしまう。外に出られない。
    • 点S (問2): 最後にAC面に垂直にぶつかるので、そのままスーッと外に出ていく。
  • 図示の有効性:
    • 光の進路は目に見えないため、図に描くことで思考が整理され、次のステップが考えやすくなります。
    • 法線、入射角、反射角、屈折角を正確に図示することで、幾何学的な関係が見えやすくなります。特に複雑な経路では必須です。
    • 模範解答の図は非常に参考になりますが、自分で描く練習をすることで、角度の関係などをより深く理解できます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 屈折の法則: 光が異なる物質の境界を「通過する(屈折する)」ときに、光の進む向きがどう変わるかを記述する法則だから選択します。
  • 反射の法則: 光が物質の境界で「跳ね返る(反射する)」ときに、どの方向に跳ね返るかを記述する法則だから選択します。
  • 臨界角・全反射: 光が屈折率の「大→小」の物質へ進もうとするとき、「本当に通過できるのか、それとも全部跳ね返るのか」を判断する必要があるため、臨界角を計算し、入射角と比較します。屈折の法則で屈折角の\(\sin\)が1を超える場合は、物理的にありえないので全反射すると判断できます。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (問1) 点Qでの屈折:
    1. P→Qの光路確認(AC面垂直入射で直進)。
    2. Qでの入射角特定(模範解答より \(30^\circ\))。
    3. 媒質の屈折率確認(ガラス\(\sqrt{3}\)、空気\(1\))。
    4. 屈折の法則を適用: \(\sqrt{3} \sin 30^\circ = 1 \cdot \sin r_Q\)。
    5. 計算して \(r_Q\) を求める。
  2. (問2) 点Qで反射後の光路:
    1. 臨界角 \(\alpha\) を計算: \(\sin \alpha = 1/\sqrt{3}\)。
    2. Qでの反射: 入射角 \(30^\circ\)、反射角 \(30^\circ\)。光路QRを作図。
    3. Rでの入射角特定(模範解答より \(60^\circ\))。
    4. Rでの全反射判断: \(60^\circ > \alpha\) なので全反射。または屈折の法則で \(\sin\phi > 1\) を確認。
    5. Rでの反射: 入射角 \(60^\circ\)、反射角 \(60^\circ\)。光路RSを作図。
    6. Sでの入射角特定(模範解答より \(0^\circ\))。
    7. Sからの射出: 入射角 \(0^\circ\) なので直進して空気中へ。
    8. 全光路を図示。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 三角比の値の正確性: \(\sin 30^\circ = 1/2\), \(\cos 30^\circ = \sqrt{3}/2\), \(\sin 60^\circ = \sqrt{3}/2\), \(\cos 60^\circ = 1/2\) などを瞬時に正確に出せるようにする。
  • \(\sqrt{3}\) の扱いに慣れる: \(\sqrt{3} \times \sqrt{3} = 3\), \(\sqrt{3}/2\), \(1/\sqrt{3} = \sqrt{3}/3\) などの計算をスムーズに。
  • 不等式の比較: \(\sqrt{3}/2\) と \(1/\sqrt{3}\) の大小比較など、平方したり通分したりして正確に行う。おおよその数値 (\(\sqrt{3} \approx 1.732\)) を知っておくと検算に役立つ。
  • 式の見直し: 立式した後に、代入ミスがないか、記号の書き間違いがないかを確認する。
  • 図との整合性: 計算結果(角度など)が、描いた図と比べて明らかに不自然でないかを確認する。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な妥当性:
    • 問1: ガラス(屈折率大)から空気(屈折率小)へ抜けるので、屈折角が入射角より大きくなるはず。\(60^\circ > 30^\circ\) であり妥当。
    • 問2 点R: 計算上 \(\sin\phi = 3/2 (>1)\) となった場合、これは計算ミスではなく「全反射が起こる」という物理現象を示唆していると解釈する。入射角が臨界角を超えていることを確認することで裏付けられる。
    • 光路全体が、与えられたガラス形状の中で矛盾なく描かれているか。光がガラス内部で不自然な反射や透過をしていないか。
  • 角度の範囲: 入射角、反射角、屈折角は通常 \(0^\circ\) から \(90^\circ\) の範囲で考える。
  • 臨界角の存在条件: 臨界角が存在するのは光が屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ進むときのみ。この問題ではガラスから空気なので、常に全反射を意識する。

問題87 (センター試験+東京理科大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、屈折率の異なるガラスを組み合わせた構造体(光ファイバーのモデル)の内部を光が全反射を繰り返しながら進むための条件を、幾何学的な考察と物理法則(屈折の法則、全反射)に基づいて段階的に明らかにしていくものです。

与えられた条件
  • 媒質の構造:
    • 中央のガラス直方体(コア): 屈折率 \(n_1\)
    • 上下のガラス板(クラッド): 屈折率 \(n_2\)、中央のガラスに密着
    • 周囲: 空気(屈折率 \(1\))
  • 光の入射:
    • 側面ABから空気中を角度 \(\theta\) で入射。
    • ガラス直方体内部に入り、上面AC(または下面)との境界面で角度 \(\alpha\) で入射し、全反射を繰り返す。
問われていること
  • (1) 全反射が起こるための \(n_1\) と \(n_2\) の大小関係。
  • (2) 上面AC(\(n_1\) と \(n_2\) の境界面)での臨界角 \(\alpha_0\) に対する \(\sin\alpha_0\)。
  • (3) 上面ACへの入射角 \(\alpha\) について、\(\cos\alpha\) を側面ABへの入射角 \(\theta\) と \(n_1\) を用いた表現。
  • (4) 全反射を続けるための \(\sin\theta\) の条件式(\(n_1, n_2\) を用いる)。
  • (5) \(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の全範囲で全反射するための \(n_1, n_2\) の条件。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 問(4)の別解: \(\cos\) を用いて全反射条件を立式する解法
      • 主たる解法が全反射の条件を \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\) として立式するのに対し、別解では鋭角において \(\cos\) が減少関数であることを利用し、\(\alpha > \alpha_0 \iff \cos\alpha < \cos\alpha_0\) という条件から出発して解きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 三角関数の性質の活用: \(\sin\) と \(\cos\) の増減性の違いを物理問題に応用する良い練習となり、数学的な知識と物理的な洞察を結びつける力を養います。
    • 計算の効率化: このアプローチでは、\(\sin\alpha\) を求めるために平方根を計算するステップを回避し、(3)で求めた \(\cos\alpha\) を直接利用できるため、計算の見通しが良くなる場合があります。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「光ファイバーにおける全反射の原理」です。光が異なる媒質の境界面でどのように振る舞うかを、屈折の法則と全反射の条件を駆使して解き明かしていきます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 屈折の法則: 異なる媒質の境界面で光が屈折する際の、入射角・屈折角と両媒質の屈折率との関係を示す \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)。
  2. 全反射: 光が屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ、臨界角以上の入射角で入射したときに、光が屈折せずに全て境界面で反射される現象。
  3. 臨界角: 全反射が起こり始める入射角のことで、屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角 \(\alpha_0\) を指す。屈折の法則から \(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\)(\(n_1 > n_2\) の場合)。
  4. 光路の幾何学: 光線の進む道筋と、境界面や法線がなす角度の関係を正しく把握すること。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、全反射が起こるための基本的な物理条件(屈折率の大小関係)を確認します。
  2. 次に、全反射の境界となる臨界角を、屈折の法則を用いて定義します。
  3. 外部からの入射角 \(\theta\) と、内部の全反射面への入射角 \(\alpha\) の関係を、屈折の法則と幾何学を用いて導出します。
  4. 最後に、これらの関係式を組み合わせて、任意の入射角 \(\theta\) で光を閉じ込めるための条件を導き出します。

問(1)

思考の道筋とポイント
全反射という現象がどのような条件下で発生するのか、基本的な物理知識を問うています。光がどの媒質からどの媒質へ進むときに全反射が起こりうるのかを考えれば、屈折率の大小関係がわかります。
この設問における重要なポイント

  • 全反射は、光が屈折率の大きい媒質から屈折率の小さい媒質へ進む際にのみ起こりうる現象であること。
  • 問題の状況では、屈折率 \(n_1\) の媒質から屈折率 \(n_2\) の媒質へ進む光が全反射するとされている。

具体的な解説と立式
全反射は、光が屈折率の大きな媒質(光が相対的に進みにくい媒質)から、屈折率の小さな媒質(光が相対的に進みやすい媒質)へと入射するときに、入射角がある一定の角度(臨界角)より大きい場合に起こります。

この問題では、屈折率 \(n_1\) のガラス直方体の内部を進む光が、屈折率 \(n_2\) のガラス板との境界面(上面ACなど)で全反射を繰り返すと記述されています。これは、光が \(n_1\) の媒質から \(n_2\) の媒質へ向かう際に全反射が起こることを意味します。

したがって、光が進んでいる元の媒質の屈折率 \(n_1\) が、進もうとしている先の媒質の屈折率 \(n_2\) よりも大きくなければならないという物理的な考察から、次の関係が導かれます。
$$
\begin{aligned}
n_1 &> n_2
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 全反射が起こるための屈折率の大小関係の条件
計算過程

この設問は物理法則の理解に基づくものであり、上記の考察から直接結論が得られるため、計算過程はありません。

この設問の平易な説明

全反射という特別な反射は、光が「進みにくい場所(屈折率が大きい場所)」から「進みやすい場所(屈折率が小さい場所)」へ向かうときにだけ起こる可能性があります。問題では、真ん中のガラス(屈折率 \(n_1\))の中で光が全反射するので、この真ん中のガラスが「進みにくく」、上下のガラス(屈折率 \(n_2\))が「進みやすい」という関係になっている必要があります。したがって、\(n_1\) の方が \(n_2\) よりも大きい、つまり \(n_1 > n_2\) となります。

結論と吟味

全反射が \(n_1\) の媒質と \(n_2\) の媒質の境界面で \(n_1 \rightarrow n_2\) の方向に起こるためには、\(n_1 > n_2\) であることが必要です。これは全反射の基本条件です。

解答 (1) \(n_1 > n_2\)

問(2)

思考の道筋とポイント
臨界角の定義に基づいて、屈折の法則を適用します。臨界角で入射したとき、屈折角は \(90^\circ\) になります。
この設問における重要なポイント

  • 臨界角 \(\alpha_0\) とは、屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角であること。
  • 光は屈折率 \(n_1\) の媒質から屈折率 \(n_2\) の媒質へ進む。
  • 屈折の法則を正しく立式し、\(\sin\alpha_0\) について解く。

具体的な解説と立式
AC面(屈折率 \(n_1\) のガラス直方体と屈折率 \(n_2\) のガラス板の境界面)における臨界角を \(\alpha_0\) とします。

臨界角の定義は、光が屈折率 \(n_1\) の媒質から屈折率 \(n_2\) の媒質へ入射する際に、屈折角が \(90^\circ\) となるときの入射角です。この条件を屈折の法則に適用します。

入射側の媒質の屈折率は \(n_1\)、入射角は \(\alpha_0\)。

屈折側の媒質の屈折率は \(n_2\)、屈折角は \(90^\circ\)。

したがって、以下の式が立てられます。
$$
\begin{aligned}
n_1 \sin \alpha_0 &= n_2 \sin 90^\circ
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)
  • 臨界角の定義(屈折角が \(90^\circ\))
計算過程

上記で立てた式を \(\sin \alpha_0\) について解きます。

\(\sin 90^\circ = 1\) なので、
$$
\begin{aligned}
n_1 \sin \alpha_0 &= n_2 \cdot 1 \\[2.0ex]
n_1 \sin \alpha_0 &= n_2
\end{aligned}
$$
両辺を \(n_1\) で割ると、
$$
\begin{aligned}
\sin \alpha_0 &= \frac{n_2}{n_1}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

臨界角というのは、光が「かろうじて」外側の媒質へ出ていくことができる(具体的には、境界面すれすれに、つまり屈折角 \(90^\circ\) で出ていく)ときの、内側からの入射角度のことです。

この状況に屈折の法則を使います。入射する側の媒質の屈折率は \(n_1\)、入射角は \(\alpha_0\)。出ていく側の媒質の屈折率は \(n_2\)、屈折角は \(90^\circ\)。

屈折の法則は \((\text{入射側屈折率}) \times \sin(\text{入射角}) = (\text{屈折側屈折率}) \times \sin(\text{屈折角})\) なので、
\(n_1 \sin \alpha_0 = n_2 \sin 90^\circ\)
となります。\(\sin 90^\circ\) は \(1\) なので、式は \(n_1 \sin \alpha_0 = n_2\) と簡単になります。

これを \(\sin \alpha_0\) について解けば、\(\sin \alpha_0 = \frac{n_2}{n_1}\) が得られます。

結論と吟味

AC面での臨界角 \(\alpha_0\) のサインは \(\sin \alpha_0 = \displaystyle\frac{n_2}{n_1}\) です。

(1)で \(n_1 > n_2\) という条件があったので、\(n_2/n_1 < 1\) となり、\(\sin\alpha_0\) が \(1\) より小さい正の値としてきちんと定義されることがわかります。これは物理的に妥当です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{n_2}{n_1}\)

問(3)

思考の道筋とポイント
光が側面ABで空気から屈折率 \(n_1\) のガラスに入射する際の屈折の法則と、図中の角度の幾何学的な関係(特にAB面での屈折角とAC面への入射角 \(\alpha\) の関係)を結びつけて \(\cos\alpha\) を導出します。
この設問における重要なポイント

  • AB面における屈折の法則(空気 \(\rightarrow\) \(n_1\))。
  • 図から読み取れる、AB面での屈折角とAC面への入射角 \(\alpha\) の間の幾何学的な関係。図より、AB面での屈折角は \(90^\circ – \alpha\) となる。
  • 三角関数の性質 \(\sin(90^\circ – \phi) = \cos\phi\) の利用。

具体的な解説と立式
側面ABにおいて、空気(屈折率 \(1\))から屈折率 \(n_1\) のガラス直方体へ光が入射します。このときの入射角は \(\theta\) です。AB面での屈折角を \(r\) とします。

屈折の法則をAB面での屈折に適用すると、
$$
\begin{aligned}
1 \cdot \sin\theta &= n_1 \sin r
\end{aligned}
$$
次に、図の幾何学的関係を考察します。AB面の法線とAC面の法線は直交しています。図から、AB面での屈折角 \(r\) とAC面への入射角 \(\alpha\) の間には、
$$
\begin{aligned}
r &= 90^\circ – \alpha
\end{aligned}
$$
という関係が成り立ちます。この関係を屈折の法則の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
\sin\theta &= n_1 \sin(90^\circ – \alpha)
\end{aligned}
$$
三角関数の性質から \(\sin(90^\circ – \alpha) = \cos\alpha\) ですので、
$$
\begin{aligned}
\sin\theta &= n_1 \cos\alpha
\end{aligned}
$$
この式を \(\cos\alpha\) について解きます。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_a \sin\theta_a = n_b \sin\theta_b\)
  • 幾何学的な角度の関係
  • 三角関数の性質: \(\sin(90^\circ – \phi) = \cos\phi\)
計算過程

上記で立てた式 \(\sin\theta = n_1 \cos\alpha\) を \(\cos\alpha\) について解くと、
$$
\begin{aligned}
\cos\alpha &= \frac{\sin\theta}{n_1}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明
  1. 光が空気中からAB面を通って真ん中のガラス(屈折率 \(n_1\))に入るときのことを考えます。空気の屈折率は \(1\)、入射角は \(\theta\)。ガラスに入ったときの屈折角を \(r\) とすると、屈折の法則から \(1 \times \sin\theta = n_1 \times \sin r\) という式が成り立ちます。
  2. 次に、図をよく見ると、この屈折角 \(r\) と、光がAC面にぶつかる角度 \(\alpha\) の間には、\(r = 90^\circ – \alpha\) という関係があることがわかります。
  3. この \(r = 90^\circ – \alpha\) を最初の式に代入すると、\(\sin\theta = n_1 \sin(90^\circ – \alpha)\) となります。
  4. 三角関数の便利な公式 \(\sin(90^\circ – \text{角度}) = \cos(\text{角度})\) を使うと、\(\sin(90^\circ – \alpha)\) は \(\cos\alpha\) と同じになります。
  5. したがって、式は \(\sin\theta = n_1 \cos\alpha\) と書き換えられます。
  6. 最後に、この式から \(\cos\alpha\) を求めると、\(\cos\alpha = \frac{\sin\theta}{n_1}\) となります。
結論と吟味

\(\cos\alpha\) を \(\theta\) と \(n_1\) を用いて表すと、\(\cos\alpha = \displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}\) となります。

入射角 \(\theta\) は \(0^\circ < \theta < 90^\circ\) なので \(\sin\theta > 0\)。また \(n_1 > 0\)。よって \(\cos\alpha > 0\) となり、\(\alpha\) が鋭角(\(0^\circ < \alpha < 90^\circ\))であるという図の状況と矛盾しません。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
AC面(\(n_1\) と \(n_2\) の境界面)で全反射が起こる条件 (\(\alpha > \alpha_0\)) と、これまでの設問で得られた関係式(\(\sin\alpha_0\) の式、\(\cos\alpha\) と \(\theta\) の関係式)を組み合わせて、\(\sin\theta\) に関する条件式を導きます。
この設問における重要なポイント

  • 全反射の条件: 入射角 \(\alpha\) が臨界角 \(\alpha_0\) より大きいこと (\(\alpha > \alpha_0\))。これは \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\) と同値(鋭角の範囲では \(\sin\) は単調増加のため)。
  • (2)の結果 \(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\) を利用する。
  • (3)の結果 \(\cos\alpha = \sin\theta/n_1\) と三角関数の基本公式 \(\sin^2\alpha + \cos^2\alpha = 1\) を用いて \(\sin\alpha\) を \(\theta\) と \(n_1\) で表す。
  • 得られた不等式を \(\sin\theta\) について解く。

具体的な解説と立式
AC面で全反射が起こるための条件は、AC面への入射角 \(\alpha\) が臨界角 \(\alpha_0\) よりも大きいことです。角度 \(\alpha\) と \(\alpha_0\) がともに鋭角であるため、サインをとっても大小関係が保存され、次のように書けます。
$$
\begin{aligned}
\sin\alpha &> \sin\alpha_0
\end{aligned}
$$
(2)の結果 \(\sin\alpha_0 = \displaystyle\frac{n_2}{n_1}\) を右辺に代入します。

次に、左辺の \(\sin\alpha\) を \(\theta\) を使って表します。(3)の結果 \(\cos\alpha = \displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}\) と、三角関数の基本公式 \(\sin^2\alpha + \cos^2\alpha = 1\) を利用します。\(\alpha\) は鋭角なので \(\sin\alpha > 0\) ですから、
$$
\begin{aligned}
\sin\alpha &= \sqrt{1 – \cos^2\alpha}
\end{aligned}
$$
この式に (3) の結果を代入すると、
$$
\begin{aligned}
\sin\alpha &= \sqrt{1 – \left(\frac{\sin\theta}{n_1}\right)^2}
\end{aligned}
$$
これらを全反射の条件式に代入すると、
$$
\begin{aligned}
\sqrt{1 – \left(\frac{\sin\theta}{n_1}\right)^2} &> \frac{n_2}{n_1}
\end{aligned}
$$
この不等式を \(\sin\theta\) について解きます。

使用した物理公式

  • 全反射の条件: \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\)
  • 三角関数の関係式: \(\sin^2\phi + \cos^2\phi = 1\)
  • 設問(2)および(3)の結果
計算過程

上記で立てた不等式を \(\sin\theta\) について解きます。

両辺は正なので、2乗しても大小関係は変わりません。
$$
\begin{aligned}
1 – \left(\frac{\sin\theta}{n_1}\right)^2 &> \left(\frac{n_2}{n_1}\right)^2 \\[2.0ex]
1 – \frac{\sin^2\theta}{n_1^2} &> \frac{n_2^2}{n_1^2}
\end{aligned}
$$
両辺に \(n_1^2\) を掛けます(\(n_1^2 > 0\) なので不等号の向きは変わりません)。
$$
\begin{aligned}
n_1^2 – \sin^2\theta &> n_2^2
\end{aligned}
$$
不等式を \(\sin^2\theta\) について整理します。
$$
\begin{aligned}
n_1^2 – n_2^2 &> \sin^2\theta
\end{aligned}
$$
これは、次のように書くのと同じです。
$$
\begin{aligned}
\sin^2\theta &< n_1^2 – n_2^2 \end{aligned} $$ \(\sin\theta > 0\) なので、平方根を取ると、
$$
\begin{aligned}
\sin\theta &< \sqrt{n_1^2 – n_2^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明
  1. AC面で全反射し続けるためには、AC面への光の入射角 \(\alpha\) が、(2)で考えた臨界角 \(\alpha_0\) よりも大きくなければなりません。数式で書くと \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\) です。
  2. (2)で \(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\) とわかっているので、条件は \(\sin\alpha > n_2/n_1\) となります。
  3. 次に、\(\sin\alpha\) を、(3)で見つけた \(\cos\alpha = \sin\theta/n_1\) を使って表します。三角関数の公式 \(\sin^2\alpha + \cos^2\alpha = 1\) を使うと、\(\sin\alpha = \sqrt{1 – (\sin\theta/n_1)^2}\) となります。
  4. この \(\sin\alpha\) の式を、ステップ2の不等式に代入し、\(\sin\theta\) について整理していくと、最終的に \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) という条件が得られます。
結論と吟味

図のように全反射するための \(\sin\theta\) に対する条件は \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) です。

この条件式の右辺 \(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) は、光ファイバーの開口数(NA)として知られる量です。入射角 \(\theta\) がこの条件を満たす範囲にあれば、光はコア(屈折率 \(n_1\))内に閉じ込められて伝播します。

別解: \(\cos\) を用いて全反射条件を立式する解法

思考の道筋とポイント
全反射の条件 \(\alpha > \alpha_0\) は、\(\alpha, \alpha_0\) が鋭角であることから \(\cos\alpha < \cos\alpha_0\) と同値です(\(\cos\) は減少関数)。この関係式に、(3)の結果と、(2)の結果から導かれる \(\cos\alpha_0\) を代入します。
この設問における重要なポイント

  • \(\cos\) が鋭角の範囲で減少関数であること。
  • \(\cos\alpha_0 = \sqrt{1-\sin^2\alpha_0}\) の関係を用いる。

具体的な解説と立式
全反射の条件 \(\alpha > \alpha_0\) より、
$$
\begin{aligned}
\cos\alpha &< \cos\alpha_0
\end{aligned}
$$
(3)より \(\cos\alpha = \displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}\)。

また、(2)より \(\sin\alpha_0 = \displaystyle\frac{n_2}{n_1}\) なので、
$$
\begin{aligned}
\cos\alpha_0 &= \sqrt{1 – \sin^2\alpha_0} \\[2.0ex]
&= \sqrt{1 – \left(\frac{n_2}{n_1}\right)^2} \\[2.0ex]
&= \frac{\sqrt{n_1^2 – n_2^2}}{n_1}
\end{aligned}
$$
これらを \(\cos\alpha < \cos\alpha_0\) に代入すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{\sin\theta}{n_1} &< \frac{\sqrt{n_1^2 – n_2^2}}{n_1}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 全反射の条件: \(\alpha > \alpha_0\)
  • 三角関数の性質: \(\cos\) の減少性、\(\sin^2\phi + \cos^2\phi = 1\)
  • 設問(2)および(3)の結果
計算過程

上記で立てた不等式の両辺に \(n_1\) を掛けると(\(n_1 > 0\))、
$$
\begin{aligned}
\sin\theta &< \sqrt{n_1^2 – n_2^2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

全反射の条件 \(\alpha > \alpha_0\) は、\(\cos\) で考えると不等号が逆になり \(\cos\alpha < \cos\alpha_0\) となります。(3)で求めた \(\cos\alpha\) の式と、(2)の結果から計算できる \(\cos\alpha_0\) の式をこの不等式に入れると、主たる解法よりも少ない計算で同じ答えにたどり着けます。

結論と吟味

主たる解法と完全に同じ結果が得られました。このアプローチは、\(\sin\alpha\) を求めるための平方根の計算を回避し、(3)の結果を直接利用できるため、計算の見通しが良い場合があります。

解答 (4) \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\)

問(5)

思考の道筋とポイント
(4)で得られた \(\sin\theta\) に対する条件が、\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の範囲の「すべての」\(\theta\) について成り立つための条件を考えます。これは、\(\sin\theta\) が取りうる値の範囲を考慮し、その範囲全体で不等式が成立するように、\(n_1\) と \(n_2\) の関係を定める問題です。
この設問における重要なポイント

  • (4)で導出した条件式 \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) を利用する。
  • \(0^\circ < \theta < 90^\circ\) のとき、\(\sin\theta\) の値域は \(0 < \sin\theta < 1\) であること。
  • 不等式がある範囲の全ての変数に対して成り立つための条件設定の考え方。具体的には、\(\sin\theta\) の最大値(上限)を考慮する。

具体的な解説と立式
(4)で求めた、全反射が起こるための条件は
$$
\begin{aligned}
\sin\theta &< \sqrt{n_1^2 – n_2^2}
\end{aligned}
$$
です。

この条件が、\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の範囲のすべての \(\theta\) に対して成り立つようにするためには、不等式の右辺 \(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) が、\(\sin\theta\) の取りうる最大の値(ここでは上限である \(1\))以上であればよいことになります。

したがって、次の不等式が成り立つ必要があります。
$$
\begin{aligned}
1 &\le \sqrt{n_1^2 – n_2^2}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 設問(4)の結果
  • 三角関数 \(\sin\theta\) の値域に関する考察
  • 不等式の恒等成立条件
計算過程

上記で立てた不等式 \(1 \le \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) を変形します。

両辺は正なので、2乗しても大小関係は変わりません。
$$
\begin{aligned}
1^2 &\le \left(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\right)^2 \\[2.0ex]
1 &\le n_1^2 – n_2^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

(4)で「\(\sin\theta\) が \(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) という値より小さければ全反射する」ということがわかりました。

(5)では、「どんな角度 \(\theta\)(\(0^\circ\) から \(90^\circ\) の間)で光を入れても、必ず全反射してほしい」と言っています。

\(\sin\theta\) は、角度 \(\theta\) が \(0^\circ\) から \(90^\circ\) まで変わるとき、\(0\) より大きく \(1\) より小さい値をとります。

この全ての \(\sin\theta\) の値が、常に \(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) より小さくなるようにするには、\(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) という値自体が、\(\sin\theta\) が取りうる一番大きな値(ほぼ \(1\) です)以上であればよいわけです。

この条件 \(1 \le \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) の両辺を2乗すると、\(1 \le n_1^2 – n_2^2\) という、\(n_1\) と \(n_2\) だけの条件が出てきます。

結論と吟味

\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) のすべての \(\theta\) に対して全反射を起こさせるための条件は \(1 \le n_1^2 – n_2^2\) です。

これは、コアの屈折率 \(n_1\) とクラッドの屈折率 \(n_2\) の差が特定の閾値以上であることを意味し、これにより入射角 \(\theta\) に依らずに光を効率よく閉じ込めることができる光ファイバーの設計指針となります。

解答 (5) \(1 \le n_1^2 – n_2^2\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 屈折の法則:
    • 核心: 光が異なる媒質の境界面を通過する際に進行方向を変える現象を記述する最も重要な法則です。\(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) という形で表され、どちらの媒質の屈折率とサインを組にするかを間違えないことが重要です。
    • 理解のポイント:
      1. 式の意味: 「屈折率 \(\times\) その媒質での角度の\(\sin\) = 一定」と覚えることで、媒質が3つ以上になっても対応できます。
      2. 角度の基準: 入射角・屈折角は、必ず境界面の「法線」を基準とした角度であることを徹底します。
  • 全反射と臨界角:
    • 核心: 光が屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ入射する際、入射角が臨界角 (\(\sin\alpha = n_2/n_1\), \(n_1>n_2\)) を超えると、光は屈折せずに100%反射されます。この現象の有無を判断できるかが、光路作図問題の鍵となります。
    • 理解のポイント:
      1. 発生条件: 全反射は必ず「大→小」の経路で起こる可能性があり、「小→大」では起こりません。
      2. 判断方法: (A) 入射角が臨界角より大きいか比較する、(B) 屈折の法則を立てて \(\sin(\text{屈折角}) > 1\) となるか確認する、の2つの方法があります。
  • 光路の幾何学:
    • 核心: 光の問題は、物理法則の適用と同時に、図形的な考察が不可欠です。特に、法線や光線がなす角度の関係を、三角形の性質などを用いて正確に導き出す能力が問われます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 光ファイバーの特性(開口数NA、許容入射角など)を求める問題: 本問はまさに光ファイバーの原理そのものです。
    • プリズムを用いた光学機器(例:双眼鏡のポロプリズム、カメラのペンタプリズム): 全反射を利用して光の向きを90°や180°変える装置の原理を問う問題。
    • 薄膜や多層膜構造における光の伝播: より複雑な構造での光の振る舞いを考える問題。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 光の経路の図示と角度設定: まず光がどの界面でどのように反射・屈折するかを追い、各界面での法線、入射角、屈折角(反射角)を正確に図示し、文字で定義します。
    2. 各界面での物理法則の適用: 屈折が起こる界面では屈折の法則を、全反射が期待される界面(屈折率 大→小)では臨界角の条件と比較します。
    3. 幾何学的拘束条件の利用: 図形的な性質から角度間の関係式を導き、連立方程式や代入によって未知数を消去していきます。本問の(3)が典型例です。
    4. 「~するための条件を求めよ」という問いの数式化: 問題文の要求を数式(等式または不等式)で表現し、最終的に指定された変数で表すことを目指します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 臨界角の式の混同:
    • 誤解: \(\sin\alpha_0 = n_1/n_2\) と誤る(正しくは \(n_2/n_1\)、ただし \(n_1>n_2\))。
    • 対策: \(\sin\) の値は1を超えないので、必ず(小屈折率)/(大屈折率)になると覚える。
  • 全反射の条件の誤り:
    • 誤解: 入射角が臨界角「以下」で全反射すると誤解する。
    • 対策: 入射角が臨界角「より大きい」ときに全反射と正しく記憶します。
  • 幾何学的関係の見落としや誤り:
    • 誤解: (3)における \(r=90^\circ-\alpha\) のような、図から読み取るべき角度関係の特定を間違える。
    • 対策: 大きく正確な図を描き、法線や平行線、直角三角形などに注目して慎重に角度を追います。
  • 不等式の変形ミス:
    • 誤解: 特に2乗する際に、両辺が正であることの確認を怠る、または不等号の向きを誤る。
    • 対策: 不等式の両辺に同じ操作をする際は、その操作が不等号の向きにどう影響するかを常に意識します。
  • 三角関数の公式の誤用・失念:
    • 誤解: \(\sin(90^\circ-\alpha)=\cos\alpha\)、\(\sin^2\alpha+\cos^2\alpha=1\) などの基本的な三角関数の公式を忘れてしまい、式変形ができない。
    • 対策: 基本的な三角関数の公式は確実に覚えておきます。必要に応じて単位円などで確認します。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 屈折の法則:
    • 選定理由: 光が「異なる屈折率の媒質の境界面を通過する」という状況で、入射角と屈折角の関係を知りたい場合に常に基本となる法則です。本問題ではAB面(空気\(\rightarrow n_1\))とAC面(\(n_1 \rightarrow n_2\)、臨界角導出時)で使用します。
    • 適用根拠: これは実験的に見出された法則であり、光が境界面を通過する際の振る舞いを記述する基本法則です。
  • 臨界角 (\(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\)):
    • 選定理由: 「全反射が起こるか否かの境界」となる入射角を知りたい場合に、屈折の法則から導かれる専用の公式として使用します。
    • 適用根拠: 屈折角が\(90^\circ\)という物理的に限界の状況を、屈折の法則に代入して得られる関係式です。
  • 全反射の条件 (\(\alpha > \alpha_0\) or \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\)):
    • 選定理由: 実際に「全反射が起こっている」という状況を数式で表現する場合に用います。
    • 適用根拠: 臨界角の定義から直接導かれる、全反射が成立するための数学的な条件です。
  • 三角関数の公式 (\(\sin(90^\circ-\phi)=\cos\phi\), \(\sin^2\phi+\cos^2\phi=1\)):
    • 選定理由: 角度間の関係や、ある角度の\(\sin\)から\(\cos\)(またはその逆)を求めるなど、幾何学的な問題を代数的に解くための数学的な道具として不可欠です。
    • 適用根拠: これらは数学的な恒等式であり、物理法則と組み合わせて問題を解くために利用します。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字の区別を明確に:
    • 特に注意すべき点: \(n_1, n_2, \alpha, \alpha_0, \theta\) など、多くの記号が登場するので、それぞれが何を表すのかを常に意識し、混同しないようにします。
    • 日頃の練習: 問題を解き始める前に、各記号がどの物理量に対応するかをメモする習慣をつける。
  • 平方根の取り扱い:
    • 特に注意すべき点: \(\sqrt{A}\) の中身 \(A\) は必ず \(A \ge 0\) であることを意識します。不等式で両辺を2乗する際は、両辺が0以上であることを確認します。
    • 日頃の練習: ルートを含む計算に慣れ、特に不等式での扱いに注意する練習を積む。
  • 三角関数の変形は慎重に:
    • 特に注意すべき点: \(\sin\alpha\) から \(\cos\alpha\) を求める際(またはその逆)、\(\sin^2\alpha+\cos^2\alpha=1\) を使い、必要に応じて角度の範囲から符号を判断します(本問では \(\alpha\) が鋭角なので \(\sin\alpha, \cos\alpha\) ともに正)。
    • 日頃の練習: 三角関数の公式を使った式変形を、物理の問題を通じて繰り返し練習する。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (1) \(n_1 > n_2\): 全反射の基本条件であり妥当。
    • (2) \(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\): \(n_1 > n_2 > 0\) であれば \(0 < \sin\alpha_0 < 1\) となり、実在する臨界角に対応し妥当。
    • (3) \(\cos\alpha = \sin\theta/n_1\): \(\sin\theta \le 1\) であり、通常 \(n_1 > 1\) なので \(\cos\alpha < 1\) となりうる。また \(\theta\) が小さいと \(\alpha\) は \(90^\circ\) に近づき (\(\cos\alpha\) は0に近づく)、\(\theta\) が大きいと \(\alpha\) は小さくなる(\(\cos\alpha\) は大きくなる)という関係も図と整合。
    • (4) \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2-n_2^2}\): \(n_1\) と \(n_2\) の差が大きいほど右辺は大きくなり、許容される \(\theta\) の範囲が広がる。これは物理的に、より光を閉じ込めやすいことを意味し妥当。
    • (5) \(1 \le n_1^2-n_2^2\): \(n_1\) と \(n_2\) の屈折率の差がかなり大きくないと、どんな入射角 \(\theta\) でも全反射するわけではない、という直感とも合う。
  • 極端なケースの考察:
    • もし \(n_2 \rightarrow n_1\) (屈折率差なし) なら、\(\sin\alpha_0 \rightarrow 1\) (\(\alpha_0 \rightarrow 90^\circ\))。全反射は起こりにくくなります。このとき(4)の右辺は0に近づき、光を入射できなくなることを示唆します。
    • もし \(\theta \rightarrow 0\) (AB面に垂直入射に近い) なら \(\sin\theta \rightarrow 0\)。(3)から \(\cos\alpha \rightarrow 0\) で \(\alpha \rightarrow 90^\circ\)。これはAC面にほぼ平行に入射することを意味し、全反射しやすい状況です。(4)の条件 \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2-n_2^2}\) は、\(n_1>n_2\) であれば \(\theta\) が小さいときには満たされやすいことを示しています。
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問題88 (共通テスト+センター試験)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、凸レンズによる実像の形成、レンズの公式を用いた計算、そしてレンズの一部を覆った場合の像の変化について問う、レンズの基本的な性質を総合的に理解しているかを確認する問題です。

与えられた条件
  • 光学系: 矢印を組み合わせた形の光源、凸レンズ、スクリーンが光軸上に配置。
  • 焦点: F, F’ はレンズの焦点。
  • 座標系: スクリーンと光軸の交点を原点Oとし、水平方向右向きにx軸正、鉛直方向上向きにy軸正。
  • 光源の向き:
    • 太い矢印: y軸の正の向き。
    • 細い矢印: x軸の正の向き。
  • (2)の追加条件: 光源とスクリーンの距離が \(100 \text{ cm}\)、実像の倍率が \(1\)。
  • (3)の操作: レンズの中心より上半分に黒い紙を貼る。
問われていること
  • (1) スクリーン上にできる実像の向き(レンズ側から見た場合)。
  • (2) 特定条件下でのレンズの焦点距離。
  • (3) レンズの上半分を覆った場合にスクリーン上の像がどうなるか。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【注記】

本問については、模範解答のアプローチが最も標準的かつ効率的であるため、別解の提示は省略します。

この問題のテーマは「凸レンズによる実像」です。像の向き、レンズの公式、像の明るさという3つの異なる側面から、レンズの性質を総合的に理解しているかが試されます。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 凸レンズによる実像の性質: 焦点より外側に物体を置いた場合、凸レンズは倒立した実像を作ります。この「倒立」は上下だけでなく左右も反転することを意味します。
  2. レンズの公式: 物体距離を \(a\)、像距離を \(b\)、焦点距離を \(f\) とすると、薄いレンズにおいては \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\) という関係が成り立ちます。
  3. 倍率の式: 像の大きさが物体の大きさの何倍になるかを示す倍率 \(m\) は、\(m = \displaystyle\frac{b}{a}\) で与えられます。
  4. レンズの像形成における光の経路: 物体の一点から出た光は、レンズの各部分を通過し、屈折して像の一点に集まります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問(1)では、凸レンズが作る実像が「倒立像」であるという性質を理解し、それが上下左右の反転を意味することから、スクリーン上の像の向きを判断します。
  2. 問(2)では、与えられた「光源とスクリーンの距離」と「倍率」の条件を、物体距離 \(a\) と像距離 \(b\) を用いて数式化し、連立方程式を解いて \(a, b\) を求めます。その後、レンズの公式に代入して焦点距離 \(f\) を計算します。
  3. 問(3)では、レンズの像形成の原理に立ち返り、レンズの一部を覆うことが、像を形成する光の総量にどう影響するかを考え、像の形と明るさの変化を予測します。

問(1)

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