「良問の風」攻略ガイド(86〜90問):重要問題の解き方と物理の核心をマスター!

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

問題86 (鹿児島大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、光が空気とガラスという異なる媒質の境界面でどのように振る舞うか、特に屈折と全反射の現象に焦点を当てた問題です。三角形のガラスプリズム内を進む光の経路を正確に追い、屈折の法則や全反射の条件を適用して問題を解いていく必要があります。

与えられた条件
  • ガラスの形状: 図のような直角三角形ABCのガラス。 \(\angle A = 30^\circ\), \(\angle B = 90^\circ\) (したがって \(\angle C = 60^\circ\))。
  • 光の入射: 空気中からAC面の点Pへ、ガラス面に垂直に入射する。
  • 点Q: 光が点Pからガラスに入った後、はじめてガラス面BCに達した点。
  • 屈折率: 空気の屈折率 \(n_{\text{空気}} = 1\)、ガラスの屈折率 \(n_{\text{ガラス}} = \sqrt{3}\)。
  • 点Pの位置: 図に示された位置。
問われていること
  1. 点Qから空気中へ出ていく光の屈折角。
  2. 点Pで入射し、点Qで反射した光が空気中へ出るまでの光の進路の図示。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くためには、以下の物理法則や概念をしっかりと理解しておく必要があります。

  • 光の直進性: 均一な媒質中では光はまっすぐ進みます。また、媒質の境界面に垂直に入射した光は、屈折せずに直進します。
  • 屈折の法則: 光がある媒質1から別の媒質2へ入射するとき、入射角を \(\theta_1\)、屈折角を \(\theta_2\)、各媒質の絶対屈折率を \(n_1, n_2\) とすると、\(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\) という関係が成り立ちます。
  • 反射の法則: 光が境界面で反射するとき、入射角と反射角は等しくなります。また、入射光線、反射光線、および境界面の法線は同じ平面内にあります。
  • 全反射と臨界角: 光が屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ進むとき、入射角がある特定の角度(臨界角 \(\alpha\))よりも大きくなると、光は屈折して小さな屈折率の媒質へ進むことができず、すべて境界面で反射されます。この現象を全反射といいます。臨界角 \(\alpha\) は、屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ光が入射し、屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角で、\(n_1 \sin\alpha = n_2 \sin 90^\circ\) (ただし \(n_1 > n_2\)) から求めることができます。

各設問に対して、これらの法則を適切に適用し、幾何学的な考察を交えながら数式を立てて解いていきます。

※注意点※
以下の解説では、特に指定がない限り、設問中の角度(例:点Qでの入射角が\(30^\circ\))は、模範解答に示されている図の値や記述に従って進めます。問題の初期図からこれらの角度を厳密に導出する過程は複雑になる場合があり、模範解答が特定の角度を前提としている可能性があるためです。

問1

思考の道筋とポイント
点Pでガラスに垂直に入射した光がガラス内部を直進し、BC面上の点Qに達します。点Qでガラスから空気に光が出ようとするときの屈折角を求めます。そのためには、まず点Qでのガラスから空気への入射角を決定し、その後屈折の法則を適用します。

この設問における重要なポイント

  • 垂直入射: 光が境界面に垂直に入射する場合、入射角は \(0^\circ\) であり、屈折せずに直進します。
  • 入射角の特定: 点Qにおける入射角(光線とBC面の法線のなす角)を正しく把握することが不可欠です。ここでは模範解答の図に従い、この入射角を \(30^\circ\) とします。
  • 屈折の法則の適用: ガラスから空気へ光が進む際の屈折現象に屈折の法則を正しく用います。屈折率の大きい媒質(ガラス)から小さい媒質(空気)へ進むため、光は法線から離れる方向に屈折します。

具体的な解説と立式
1. 点Pでの光の進み方:
光は空気中からAC面に垂直に入射します。境界面に垂直に入射する光は屈折しないため、ガラス内でもAC面に垂直な方向に直進し、点Qに達します。

2. 点Qでの入射角:
模範解答の図および解説によると、点Qでの入射角(ガラス内の光線とBC面の法線とのなす角)は \(30^\circ\) です。これを \(i_Q\) とします。
$$i_Q = 30^\circ$$
3. 屈折の法則の適用:
点Qにおいて、ガラス(屈折率 \(n_{\text{ガラス}} = \sqrt{3}\))から空気(屈折率 \(n_{\text{空気}} = 1\))へ光が進みます。求める屈折角を \(r_Q\) とすると、屈折の法則は次のように表せます。
$$n_{\text{ガラス}} \sin i_Q = n_{\text{空気}} \sin r_Q$$
ここに、与えられた屈折率と上記の入射角を代入します。
$$\sqrt{3} \sin 30^\circ = 1 \cdot \sin r_Q$$

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)
計算過程

上記で立てた屈折の法則の式に、具体的な数値を代入して \(r_Q\) を求めます。
1. \(\sin 30^\circ\) の値を代入します:
\(\sin 30^\circ = \displaystyle\frac{1}{2}\) です。
$$\sqrt{3} \cdot \left(\displaystyle\frac{1}{2}\right) = 1 \cdot \sin r_Q$$
2. \(\sin r_Q\) について整理します:
$$\sin r_Q = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}$$
3. \(\sin r_Q = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\) を満たす \(r_Q\) を求めます:
光が空気中へ出ていくので、屈折角 \(r_Q\) は \(0^\circ \le r_Q \le 90^\circ\) の範囲で考えます。この範囲で \(\sin r_Q = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\) を満たす角度は、
$$r_Q = 60^\circ$$

計算方法の平易な説明
  1. 光はガラスのAC面に垂直に入るので、そのまままっすぐ進んでBC面上の点Qにぶつかります。
  2. 点Qでガラスから空気に光が出ようとするときの、ガラス側の光線とBC面に立てた法線との間の角度(入射角)が \(30^\circ\) であるとします。(これは問題の図や模範解答の指示に基づきます。)
  3. 光が曲がるルールである屈折の法則 \(n_{\text{ガラス}} \sin(\text{入射角}) = n_{\text{空気}} \sin(\text{屈折角})\) を使います。
  4. ガラスの屈折率は \(\sqrt{3}\)、空気の屈折率は \(1\)、入射角は \(30^\circ\) なので、これらを公式に入れると、\(\sqrt{3} \times \sin 30^\circ = 1 \times \sin(\text{屈折角})\) となります。
  5. \(\sin 30^\circ\) は \(\frac{1}{2}\) なので、式は \(\sqrt{3} \times \frac{1}{2} = \sin(\text{屈折角})\)、つまり \(\sin(\text{屈折角}) = \frac{\sqrt{3}}{2}\) となります。
  6. 三角関数で \(\sin\) の値が \(\frac{\sqrt{3}}{2}\) になるのは、角度が \(60^\circ\) のときです。なので、求める屈折角は \(60^\circ\) です。
結論と吟味

点Qから空気中へ出ていく光の屈折角は \(60^\circ\) です。入射角 \(30^\circ\) に対して屈折角が \(60^\circ\) となり、光はガラス中よりも空気中の方が進みやすいため(屈折率が小さいため)、法線から離れる方向に屈折しており、物理的に妥当な結果です。
(もし、点Qでの入射角が問題の初期図から独自に \(60^\circ\) と求められる場合、結論は大きく異なり全反射となる可能性がありますが、ここでは模範解答の前提に従いました。)

解答 (1) \(60^\circ\)

問2

思考の道筋とポイント
点Pから入射した光が点Qで「反射」する場合を考え、その後の光の進路を図示します。点Qで反射した後、光はガラス内部をさらに進み、別の境界面(AB面やAC面)に達します。その境界面で全反射が起こるか、それとも屈折して外部に出るかを判断し、最終的に空気中に出るまでの経路を追跡します。

この設問における重要なポイント

  • 反射の法則: 点Qで光が反射する際、入射角と反射角は等しくなります。
  • 全反射の確認: ガラスから空気へ光が進もうとする各境界面では、必ず全反射の可能性を検討します。そのためには、まずガラスから空気への臨界角を計算しておくと便利です。
  • 臨界角の計算: ガラス(屈折率 \(n_{\text{ガラス}}\))から空気(屈折率 \(n_{\text{空気}}\))への臨界角 \(\alpha\) は、\(n_{\text{ガラス}} \sin \alpha = n_{\text{空気}} \sin 90^\circ\) より \(\sin \alpha = \frac{n_{\text{空気}}}{n_{\text{ガラス}}}\) で与えられます。
  • 幾何学的な光路の追跡: 反射や屈折を繰り返す光の進路を、三角形の辺や角度の関係を利用して正確に作図・判断する必要があります。模範解答の図に示される点Rや点Sにおける入射角は、その図の指示に従います。

具体的な解説と立式
1. 臨界角の計算:
まず、ガラスから空気へ光が進む際の臨界角 \(\alpha\) を計算しておきます。
$$n_{\text{ガラス}} \sin \alpha = n_{\text{空気}} \sin 90^\circ$$
$$\sqrt{3} \sin \alpha = 1 \cdot 1$$
$$\sin \alpha = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}$$

2. 点Qでの反射:
点Qでの入射角は、問1と同様に \(i_Q = 30^\circ\) とします(模範解答の前提)。
光が点Qで反射する場合、反射の法則により、反射角も \(30^\circ\) です。光はBC面に対して入射光と対称な方向に進みます。

3. 点Qで反射した光の進路と、AB面上の点Rでの入射:
模範解答の図に従うと、点Qで反射した光はガラス内部を進み、次にAB面上の点Rに達します。
そして、点RでのAB面に対する入射角 \(i_R\) は \(60^\circ\) とされています。
$$i_R = 60^\circ$$

4. 点Rでの全反射の確認:
点Rでは、ガラスから空気へ光が進もうとします。ここで全反射が起こるかを確認します。
入射角 \(i_R = 60^\circ\) と臨界角 \(\alpha\) を比較します。それぞれの \(\sin\) の値を比較すると分かりやすいです。
\(\sin i_R = \sin 60^\circ = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)
\(\sin \alpha = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)
ここで、\(\left(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\right)^2 = \displaystyle\frac{3}{4}\) および \(\left(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\right)^2 = \displaystyle\frac{1}{3}\) です。
\(\displaystyle\frac{3}{4} > \displaystyle\frac{1}{3}\) なので、それぞれの平方根も \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2} > \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\) となります。
つまり、\(\sin i_R > \sin \alpha\) です。\(0^\circ < \alpha < 90^\circ\) および \(0^\circ < i_R < 90^\circ\) の範囲では \(\sin\) 関数は単調増加なので、\(i_R > \alpha\) が成り立ちます。
入射角 \(i_R = 60^\circ\) は臨界角 \(\alpha\) よりも大きいため、点Rでは全反射が起こります。光は屈折して空気中に出ることはできません。

(別確認)もし屈折すると仮定して屈折角を \(\phi\) とすると、屈折の法則より、
$$\sqrt{3} \sin 60^\circ = 1 \cdot \sin \phi$$
$$\sqrt{3} \cdot \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2} = \sin \phi$$
$$\sin \phi = \displaystyle\frac{3}{2}$$
\(\sin \phi\) の値は \(1\) を超えることはできないため、\(\sin \phi = \displaystyle\frac{3}{2} (>1)\) となるような実在の角度 \(\phi\) は存在しません。これは全反射が起こることを裏付けています。

5. 点Rでの反射と、AC面上の点Sでの入射:
点Rで全反射した光は、反射の法則に従い、反射角 \(60^\circ\) で反射します。
模範解答の図によると、この反射光は次にAC面上の点Sに達します。
そして、点SではAC面に垂直に入射する(つまり入射角が \(0^\circ\) になる)とされています。
入射角が \(0^\circ\) の場合、光は屈折せずに直進し、そのまま空気中へ出ていきます。

6. 光の進路の図示:
以上の考察に基づいて光の進路を図示します。

  • P \(\rightarrow\) Q: 空気中からAC面に垂直に入射し、ガラス内を直進してBC面上の点Qに達する。
  • Q \(\rightarrow\) R: 点QでBC面に対し入射角 \(30^\circ\) で反射し(反射角 \(30^\circ\))、ガラス内をAB面上の点Rに進む。
  • R \(\rightarrow\) S: 点RでAB面に対し入射角 \(60^\circ\) で全反射し(反射角 \(60^\circ\))、ガラス内をAC面上の点Sに進む。
  • S \(\rightarrow\) 空気中: 点SでAC面に垂直に入射し(入射角 \(0^\circ\))、そのまま直進して空気中へ出る。

この光路を問題の図に描き加えます。

使用した物理公式

  • 反射の法則: 入射角 = 反射角
  • 臨界角の条件: \(n_1 \sin \alpha = n_2 \sin 90^\circ\) (ただし \(n_1 > n_2\))
  • 屈折の法則 (全反射の確認のため): \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)
計算過程

1. 臨界角 \(\alpha\) の値の評価:
\(\sin \alpha = \displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}}\)。\(\sqrt{3} \approx 1.732\) なので、\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}} \approx \displaystyle\frac{1}{1.732} \approx 0.577\)。
\(\sin 30^\circ = 0.5\)、\(\sin 35^\circ \approx 0.5736\)、\(\sin 36^\circ \approx 0.5878\)。
よって、臨界角 \(\alpha\) はおよそ \(35.3^\circ\) 程度です。 (\(\alpha = \arcsin(1/\sqrt{3}) \approx 35.26^\circ\))

2. 点Rでの入射角 \(i_R = 60^\circ\) との比較:
\(i_R = 60^\circ > \alpha \approx 35.3^\circ\) なので、全反射が起こります。

3. (参考)\(\sin \phi = \displaystyle\frac{3}{2}\) の確認:
\(\displaystyle\frac{3}{2} = 1.5\)。\(\sin\) の最大値は \(1\) なので、これを超えることはありえません。

計算方法の平易な説明
  1. まず、ガラスから空気に光が出るときに「全反射」が起こる角度(臨界角)の情報を計算しておきます。\(\sin(\text{臨界角}) = \frac{\text{空気の屈折率}}{\text{ガラスの屈折率}} = \frac{1}{\sqrt{3}}\) です。
  2. 光は点Qで反射します。入ってきた角度(入射角 \(30^\circ\))と同じ角度で反射して進みます。
  3. 反射した光は、ガラスの別の面AB上の点Rにぶつかります。このときの入射角は \(60^\circ\) であるとします(模範解答の図より)。
  4. この入射角 \(60^\circ\) が、ステップ1で考えた臨界角より大きいかどうかを調べます。\(\sin 60^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2}\) です。\(\frac{\sqrt{3}}{2}\)(約0.866)は \(\frac{1}{\sqrt{3}}\)(約0.577)より大きいので、入射角 \(60^\circ\) は臨界角よりも大きいです。
  5. したがって、点Rでは全反射が起こり、光は空気中に出られず、入射角と同じ \(60^\circ\) の角度で反射されます。
  6. 全反射した光は、さらにガラスの面AC上の点Sにぶつかります。模範解答の図によると、このときは面に垂直に(入射角 \(0^\circ\) で)ぶつかるため、そのまままっすぐ空気中に出ていきます。
  7. これらの光の進む道を線で結んで図に描きます。
結論と吟味

点Pで入射し、点Qで反射した光は、その後AB面上の点Rで全反射し、さらにAC面上の点Sからガラス面に垂直に空気中へ出ていきます。この光路を図示することが求められています。
ここでも、点Q、R、Sにおける入射角は模範解答の図や記述に依存しており、本来は問題の初期条件と幾何学から導出すべきものです。特に、光路が複雑に入り組む場合、正確な作図と角度計算が非常に重要になります。

解答 (2) 光の進路は模範解答の図(2)(または上記説明に基づく図)のようになる。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)。異なる媒質の境界面で光が屈折する際の基本法則です。どちらの媒質の屈折率とサインを組にするかを間違えないことが重要です。
  • 反射の法則: 入射角と反射角は等しい。単純ですが、光路作図の基本です。
  • 全反射と臨界角: 光が屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ入射する際、入射角が臨界角 (\(\sin\alpha = n_2/n_1\), \(n_1>n_2\)) を超えると全反射が起こります。この条件を正しく理解し適用できるかが鍵となります。
  • 光の直進性と垂直入射: 光は均一媒質中を直進し、境界面に垂直に入射した場合は屈折せず直進します。これが光路の出発点や途中の簡単なケースで役立ちます。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • プリズムによる光の分散や進路変更の問題。
    • 光ファイバー内で光が全反射を繰り返しながら進む原理の説明。
    • ダイヤモンドが高価に見える理由の一つである、大きな屈折率による強い輝き(臨界角が小さく内部で全反射しやすい)。
    • 内視鏡など、医療機器への応用。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 媒質の屈折率の関係: 光が屈折率の「大→小」へ進むのか「小→大」へ進むのかを確認します。特に「大→小」の場合は全反射の可能性があります。
    2. 境界面の法線: 各境界面で法線を正確に作図し、入射角・反射角・屈折角を法線からの角度として捉えます。
    3. 幾何学的関係: 図形(三角形の角度、平行線など)の性質を利用して、入射角や光路を正確に求めます。
    4. 臨界角の事前計算: 「大→小」の境界面が複数回現れる場合は、最初に臨界角を計算しておくと効率的です。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
    • 作図を丁寧に行うこと。フリーハンドでも良いので、角度の関係がある程度正確にわかるように描く。
    • 複数の界面がある場合、一つ一つの界面での現象を順番に落ち着いて処理していく。前の界面での結果が次の界面への入力となる。
    • 「反射した光」「屈折した光」など、問題文がどの光について尋ねているのかを正確に把握する。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 入射角・屈折角の誤認: 光線と「境界面」とのなす角ではなく、光線と「法線」とのなす角です。
    • 対策: 必ず法線を描き、角度をそこに記入する習慣をつける。
  • 屈折の法則の \(n\) と \(\sin\theta\) の組み合わせミス: \(n_1 \sin\theta_2 = n_2 \sin\theta_1\) のように間違える。
    • 対策: 「屈折率 \(\times\) その媒質での角度の\(\sin\) = 一定」と覚える。入射側と屈折側でペアを作る。
  • 全反射の条件の適用ミス: 屈折率が小→大の場合にも全反射を考えてしまう。臨界角の式の \(n_1, n_2\) の大小関係を間違う (\(\sin\alpha > 1\) になってしまう)。
    • 対策: 全反射は必ず「大→小」で起こる。臨界角の式 \(\sin\alpha = n_2/n_1\) は \(n_2 < n_1\) (小/大) と覚える。
  • 角度の幾何学的計算ミス: 三角形の内角の和、錯角・同位角などの基本的な幾何学の適用ミス。
    • 対策: 図を大きく描き、分かっている角度をすべて書き込む。補助線が必要な場合もある。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • 点P: 光がガラスにまっすぐ入っていく。
    • 点Q (問1): ガラスから空気に出ようとするとき、空気の方が進みやすいので、法線からパッと離れるように大きく曲がる。
    • 点Q (問2 反射): BC面が鏡のようになり、光が跳ね返る。
    • 点R (問2 全反射): AB面からも空気に出ようとするが、入射角が深すぎる(大きすぎる)ため、まるで鏡のように完全に跳ね返されてしまう。外に出られない。
    • 点S (問2): 最後にAC面に垂直にぶつかるので、そのままスーッと外に出ていく。
  • 図示の有効性:
    • 光の進路は目に見えないため、図に描くことで思考が整理され、次のステップが考えやすくなります。
    • 法線、入射角、反射角、屈折角を正確に図示することで、幾何学的な関係が見えやすくなります。特に複雑な経路では必須です。
    • 模範解答の図は非常に参考になりますが、自分で描く練習をすることで、角度の関係などをより深く理解できます。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 屈折の法則: 光が異なる物質の境界を「通過する(屈折する)」ときに、光の進む向きがどう変わるかを記述する法則だから選択します。
  • 反射の法則: 光が物質の境界で「跳ね返る(反射する)」ときに、どの方向に跳ね返るかを記述する法則だから選択します。
  • 臨界角・全反射: 光が屈折率の「大→小」の物質へ進もうとするとき、「本当に通過できるのか、それとも全部跳ね返るのか」を判断する必要があるため、臨界角を計算し、入射角と比較します。屈折の法則で屈折角の\(\sin\)が1を超える場合は、物理的にありえないので全反射すると判断できます。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (問1) 点Qでの屈折:
    1. P→Qの光路確認(AC面垂直入射で直進)。
    2. Qでの入射角特定(模範解答より \(30^\circ\))。
    3. 媒質の屈折率確認(ガラス\(\sqrt{3}\)、空気\(1\))。
    4. 屈折の法則を適用: \(\sqrt{3} \sin 30^\circ = 1 \cdot \sin r_Q\)。
    5. 計算して \(r_Q\) を求める。
  2. (問2) 点Qで反射後の光路:
    1. 臨界角 \(\alpha\) を計算: \(\sin \alpha = 1/\sqrt{3}\)。
    2. Qでの反射: 入射角 \(30^\circ\)、反射角 \(30^\circ\)。光路QRを作図。
    3. Rでの入射角特定(模範解答より \(60^\circ\))。
    4. Rでの全反射判断: \(60^\circ > \alpha\) なので全反射。または屈折の法則で \(\sin\phi > 1\) を確認。
    5. Rでの反射: 入射角 \(60^\circ\)、反射角 \(60^\circ\)。光路RSを作図。
    6. Sでの入射角特定(模範解答より \(0^\circ\))。
    7. Sからの射出: 入射角 \(0^\circ\) なので直進して空気中へ。
    8. 全光路を図示。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 三角比の値の正確性: \(\sin 30^\circ = 1/2\), \(\cos 30^\circ = \sqrt{3}/2\), \(\sin 60^\circ = \sqrt{3}/2\), \(\cos 60^\circ = 1/2\) などを瞬時に正確に出せるようにする。
  • \(\sqrt{3}\) の扱いに慣れる: \(\sqrt{3} \times \sqrt{3} = 3\), \(\sqrt{3}/2\), \(1/\sqrt{3} = \sqrt{3}/3\) などの計算をスムーズに。
  • 不等式の比較: \(\sqrt{3}/2\) と \(1/\sqrt{3}\) の大小比較など、平方したり通分したりして正確に行う。おおよその数値 (\(\sqrt{3} \approx 1.732\)) を知っておくと検算に役立つ。
  • 式の見直し: 立式した後に、代入ミスがないか、記号の書き間違いがないかを確認する。
  • 図との整合性: 計算結果(角度など)が、描いた図と比べて明らかに不自然でないかを確認する。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な妥当性:
    • 問1: ガラス(屈折率大)から空気(屈折率小)へ抜けるので、屈折角が入射角より大きくなるはず。\(60^\circ > 30^\circ\) であり妥当。
    • 問2 点R: 計算上 \(\sin\phi = 3/2 (>1)\) となった場合、これは計算ミスではなく「全反射が起こる」という物理現象を示唆していると解釈する。入射角が臨界角を超えていることを確認することで裏付けられる。
    • 光路全体が、与えられたガラス形状の中で矛盾なく描かれているか。光がガラス内部で不自然な反射や透過をしていないか。
  • 角度の範囲: 入射角、反射角、屈折角は通常 \(0^\circ\) から \(90^\circ\) の範囲で考える。
  • 臨界角の存在条件: 臨界角が存在するのは光が屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ進むときのみ。この問題ではガラスから空気なので、常に全反射を意識する。

問題87 (センター試験+東京理科大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、屈折率の異なるガラスを組み合わせた構造体(光ファイバーのモデル)の内部を光が全反射を繰り返しながら進むための条件を、幾何学的な考察と物理法則(屈折の法則、全反射)に基づいて段階的に明らかにしていくものです。

与えられた条件
  • 媒質の構造:
    • 中央のガラス直方体: 屈折率 \(n_1\)
    • 上下のガラス板(クラッドに相当): 屈折率 \(n_2\)、中央のガラスに密着
    • 周囲: 空気(屈折率 \(1\))
  • 光の入射:
    • 側面ABから空気中を角度 \(\theta\) で入射。
    • ガラス直方体内部に入り、上面AC(または下面)との境界面で角度 \(\alpha\) で入射し、全反射を繰り返す。
問われていること
  1. 全反射が起こるための \(n_1\) と \(n_2\) の大小関係。
  2. 上面AC(\(n_1\) と \(n_2\) の境界面)での臨界角 \(\alpha_0\) に対する \(\sin\alpha_0\)。
  3. 上面ACへの入射角 \(\alpha\) について、\(\cos\alpha\) を側面ABへの入射角 \(\theta\) と \(n_1\) を用いた表現。
  4. 全反射を続けるための \(\sin\theta\) の条件式(\(n_1, n_2\) を用いる)。
  5. \(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の全範囲で全反射するための \(n_1, n_2\) の条件。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くためには、以下の物理法則や概念をしっかりと理解しておく必要があります。

  • 屈折の法則: 異なる媒質の境界面で光が屈折する際の、入射角・屈折角と両媒質の屈折率との関係を示す \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)。
  • 全反射: 光が屈折率の大きな媒質から小さな媒質へ、臨界角以上の入射角で入射したときに、光が屈折せずに全て境界面で反射される現象。
  • 臨界角: 全反射が起こり始める入射角のことで、屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角 \(\alpha_0\) を指す。屈折の法則から \(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\)(\(n_1 > n_2\) の場合)。
  • 光路の幾何学: 光線の進む道筋と、境界面や法線がなす角度の関係を正しく把握すること。

問1

思考の道筋とポイント
全反射という現象がどのような条件下で発生するのか、基本的な物理知識を問うています。光がどの媒質からどの媒質へ進むときに全反射が起こりうるのかを考えれば、屈折率の大小関係がわかります。

この設問における重要なポイント

  • 全反射は、光が屈折率の大きい媒質から屈折率の小さい媒質へ進む際にのみ起こりうる現象であること。
  • 問題の状況では、屈折率 \(n_1\) の媒質から屈折率 \(n_2\) の媒質へ進む光が全反射するとされている。

具体的な解説と立式
全反射は、光が屈折率の大きな媒質(光が相対的に進みにくい媒質)から、屈折率の小さな媒質(光が相対的に進みやすい媒質)へと入射するときに、入射角がある一定の角度(臨界角)より大きい場合に起こります。
この問題では、屈折率 \(n_1\) のガラス直方体の内部を進む光が、屈折率 \(n_2\) のガラス板との境界面(上面ACなど)で全反射を繰り返すと記述されています。これは、光が \(n_1\) の媒質から \(n_2\) の媒質へ向かう際に全反射が起こることを意味します。
したがって、光が進んでいる元の媒質の屈折率 \(n_1\) が、進もうとしている先の媒質の屈折率 \(n_2\) よりも大きくなければならないという物理的な考察から、次の関係が導かれます。
$$n_1 > n_2$$
模範解答 では、光の速さが屈折率 \(n\) に反比例すること (\(v=c/n\)) に触れ、全反射が起こるのは波の速さがより速い媒質(つまり屈折率が小さい媒質)に出会ったときである、と説明しています。この観点からも、\(n_1\) の媒質中の光速 \(v_1\) より \(n_2\) の媒質中の光速 \(v_2\) が速い (\(v_2 > v_1\))、すなわち \(n_2 < n_1\) という条件が導かれます。

使用した物理公式

  • 全反射が起こるための屈折率の大小関係の条件
計算過程

この設問は物理法則の理解に基づくものであり、ここでの解説において、上記の考察から直接結論が得られるため、追加の計算ステップはありません。

計算方法の平易な説明

全反射という特別な反射は、光が「進みにくい場所(屈折率が大きい場所)」から「進みやすい場所(屈折率が小さい場所)」へ向かうときにだけ起こる可能性があります。問題では、真ん中のガラス(屈折率 \(n_1\))の中で光が全反射するので、この真ん中のガラスが「進みにくく」、上下のガラス(屈折率 \(n_2\))が「進みやすい」という関係になっている必要があります。したがって、\(n_1\) の方が \(n_2\) よりも大きい、つまり \(n_1 > n_2\) となります。

結論と吟味

全反射が \(n_1\) の媒質と \(n_2\) の媒質の境界面で \(n_1 \rightarrow n_2\) の方向に起こるためには、\(n_1 > n_2\) であることが必要です。これは全反射の基本条件です。

解答 (1) \(n_1 > n_2\)

問2

思考の道筋とポイント
臨界角の定義に基づいて、屈折の法則を適用します。臨界角で入射したとき、屈折角は \(90^\circ\) になります。

この設問における重要なポイント

  • 臨界角 \(\alpha_0\) とは、屈折角が \(90^\circ\) になるときの入射角であること。
  • 光は屈折率 \(n_1\) の媒質から屈折率 \(n_2\) の媒質へ進む。
  • 屈折の法則を正しく立式し、\(\sin\alpha_0\) について解く。

具体的な解説と立式
AC面(屈折率 \(n_1\) のガラス直方体と屈折率 \(n_2\) のガラス板の境界面)における臨界角を \(\alpha_0\) とします。
臨界角の定義は、光が屈折率 \(n_1\) の媒質から屈折率 \(n_2\) の媒質へ入射する際に、屈折角が \(90^\circ\) となるときの入射角です。この条件を屈折の法則 \(n_a \sin\theta_a = n_b \sin\theta_b\) に適用します。
入射側の媒質の屈折率は \(n_1\)、入射角は \(\alpha_0\)。
屈折側の媒質の屈折率は \(n_2\)、屈折角は \(90^\circ\)。
したがって、以下の式が立てられます。
$$n_1 \sin \alpha_0 = n_2 \sin 90^\circ$$

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2\)
  • 臨界角の定義(屈折角が \(90^\circ\))
計算過程

上記「具体的な解説と立式」で立てた式 \(n_1 \sin \alpha_0 = n_2 \sin 90^\circ\) を \(\sin \alpha_0\) について解きます。
1. まず、\(\sin 90^\circ\) の値を代入します。
$$\sin 90^\circ = 1$$
2. これを元の式に代入すると、次のようになります。
$$n_1 \sin \alpha_0 = n_2 \cdot 1$$
$$n_1 \sin \alpha_0 = n_2$$
3. 両辺を \(n_1\) で割って \(\sin \alpha_0\) を求めます(ここで \(n_1 \neq 0\) です)。
$$\sin \alpha_0 = \displaystyle\frac{n_2}{n_1}$$

計算方法の平易な説明

臨界角というのは、光が「かろうじて」外側の媒質へ出ていくことができる(具体的には、境界面すれすれに、つまり屈折角 \(90^\circ\) で出ていく)ときの、内側からの入射角度のことです。
この状況に屈折の法則を使います。入射する側の媒質の屈折率は \(n_1\)、入射角は \(\alpha_0\)。出ていく側の媒質の屈折率は \(n_2\)、屈折角は \(90^\circ\)。
屈折の法則は \((\text{入射側屈折率}) \times \sin(\text{入射角}) = (\text{屈折側屈折率}) \times \sin(\text{屈折角})\) なので、
\(n_1 \sin \alpha_0 = n_2 \sin 90^\circ\)
となります。\(\sin 90^\circ\) は \(1\) なので、式は \(n_1 \sin \alpha_0 = n_2\) と簡単になります。
これを \(\sin \alpha_0\) について解けば、\(\sin \alpha_0 = \frac{n_2}{n_1}\) が得られます。

結論と吟味

AC面での臨界角 \(\alpha_0\) のサインは \(\sin \alpha_0 = \displaystyle\frac{n_2}{n_1}\) です。
(1)で \(n_1 > n_2\) という条件があったので、\(n_2/n_1 < 1\) となり、\(\sin\alpha_0\) が \(1\) より小さい正の値としてきちんと定義されることがわかります。これは物理的に妥当です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{n_2}{n_1}\)

問3

思考の道筋とポイント
光が側面ABで空気から屈折率 \(n_1\) のガラスに入射する際の屈折の法則と、図中の角度の幾何学的な関係(特にAB面での屈折角とAC面への入射角 \(\alpha\) の関係)を結びつけて \(\cos\alpha\) を導出します。

この設問における重要なポイント

  • AB面における屈折の法則(空気 \(\rightarrow\) \(n_1\))。
  • 図から読み取れる、AB面での屈折角とAC面への入射角 \(\alpha\) の間の幾何学的な関係。模範解答の図では、AB面での屈折角が \(90^\circ – \alpha\) と示されています。
  • 三角関数の性質 \(\sin(90^\circ – \phi) = \cos\phi\) の利用。

具体的な解説と立式
側面ABにおいて、空気(屈折率 \(1\))から屈折率 \(n_1\) のガラス直方体へ光が入射します。このときの入射角は \(\theta\) です。AB面での屈折角を \(r\) とします。
屈折の法則をAB面での屈折に適用すると、空気の屈折率が \(1\) であることから、
$$1 \cdot \sin\theta = n_1 \sin r$$
次に、図の幾何学的関係を考察します。AB面の法線とAC面の法線は直交しています。AB面で屈折した光線がAC面に入射する角が \(\alpha\) です。図から、AB面での屈折角 \(r\) とAC面への入射角 \(\alpha\) の間には、
$$r = 90^\circ – \alpha$$
という関係が成り立ちます(これは、AB面の法線と屈折光線のなす角が \(r\)、AC面の法線と屈折光線のなす角が \(\alpha\) であり、これらの法線が直交しているため、図中の直角三角形を考えることで導かれます)。
この \(r = 90^\circ – \alpha\) の関係を屈折の法則の式に代入する準備をします。まず、屈折の法則の式を \(\sin r\) について整理すると、
$$\sin r = \displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}$$
ここで \(r = 90^\circ – \alpha\) なので、\(\sin r = \sin(90^\circ – \alpha)\) となります。三角関数の性質から \(\sin(90^\circ – \alpha) = \cos\alpha\) です。
したがって、
$$\cos\alpha = \displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}$$
これが求める関係式です。

使用した物理公式

  • 屈折の法則: \(n_a \sin\theta_a = n_b \sin\theta_b\)
  • 幾何学的な角度の関係
  • 三角関数の性質: \(\sin(90^\circ – \phi) = \cos\phi\)
計算過程

1. AB面(空気から \(n_1\) へ)での屈折の法則を立てます:
$$1 \cdot \sin\theta = n_1 \sin r \quad (\text{ここで } r \text{ はAB面での屈折角})$$
2. 図の幾何学的関係から、AB面での屈折角 \(r\) とAC面への入射角 \(\alpha\) の間には \(r = 90^\circ – \alpha\) の関係があります。
3. この関係 \(r = 90^\circ – \alpha\) を用いて、ステップ1の式の \(\sin r\) を変形します。
\(\sin r = \sin(90^\circ – \alpha)\)
4. 三角関数の公式 \(\sin(90^\circ – \alpha) = \cos\alpha\) を適用します:
\(\sin r = \cos\alpha\)
5. これをステップ1の式に代入します:
$$\sin\theta = n_1 \cos\alpha$$
6. この式を \(\cos\alpha\) について整理します:
$$\cos\alpha = \displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}$$

計算方法の平易な説明
  1. 光が空気中からAB面を通って真ん中のガラス(屈折率 \(n_1\))に入るときのことを考えます。空気の屈折率は \(1\)、入射角は \(\theta\)。ガラスに入ったときの屈折角を \(r\) とすると、屈折の法則から \(1 \times \sin\theta = n_1 \times \sin r\) という式が成り立ちます。
  2. 次に、図をよく見ると、この屈折角 \(r\) と、光がAC面にぶつかる角度 \(\alpha\) の間には、\(r = 90^\circ – \alpha\) という関係があることがわかります(直角三角形を考えると良いでしょう)。
  3. この \(r = 90^\circ – \alpha\) を最初の式に代入すると、\(\sin\theta = n_1 \sin(90^\circ – \alpha)\) となります。
  4. 三角関数の便利な公式 \(\sin(90^\circ – \text{角度}) = \cos(\text{角度})\) を使うと、\(\sin(90^\circ – \alpha)\) は \(\cos\alpha\) と同じになります。
  5. したがって、式は \(\sin\theta = n_1 \cos\alpha\) と書き換えられます。
  6. 最後に、この式から \(\cos\alpha\) を求めると、\(\cos\alpha = \frac{\sin\theta}{n_1}\) となります。
結論と吟味

\(\cos\alpha\) を \(\theta\) と \(n_1\) を用いて表すと、\(\cos\alpha = \displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}\) となります。
入射角 \(\theta\) は \(0^\circ < \theta < 90^\circ\) なので \(\sin\theta > 0\)。また \(n_1 > 0\)。よって \(\cos\alpha > 0\) となり、\(\alpha\) が鋭角(\(0^\circ < \alpha < 90^\circ\))であるという図の状況と矛盾しません。また、\(\sin\theta \le 1\) であることから、\(\cos\alpha \le 1/n_1\) となります。ガラスの屈折率 \(n_1\) は通常 \(1\) より大きいので、\(1/n_1 < 1\) となり、\(\cos\alpha < 1\) も満たされ、妥当と言えます。

解答 (3) \(\displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}\)

問4

思考の道筋とポイント
AC面(\(n_1\) と \(n_2\) の境界面)で全反射が起こる条件 (\(\alpha > \alpha_0\)) と、これまでの設問で得られた関係式(\(\sin\alpha_0\) の式、\(\cos\alpha\) と \(\theta\) の関係式)を組み合わせて、\(\sin\theta\) に関する条件式を導きます。

この設問における重要なポイント

  • 全反射の条件: 入射角 \(\alpha\) が臨界角 \(\alpha_0\) より大きいこと (\(\alpha > \alpha_0\))。これは \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\) と同値(鋭角の範囲では \(\sin\) は単調増加のため)。
  • (2)の結果 \(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\) を利用する。
  • (3)の結果 \(\cos\alpha = \sin\theta/n_1\) と三角関数の基本公式 \(\sin^2\alpha + \cos^2\alpha = 1\) を用いて \(\sin\alpha\) を \(\theta\) と \(n_1\) で表す。
  • 得られた不等式を \(\sin\theta\) について解く。

具体的な解説と立式
AC面で全反射が起こるための条件は、AC面への入射角 \(\alpha\) が臨界角 \(\alpha_0\) よりも大きいことです。これは、角度 \(\alpha\) と \(\alpha_0\) がともに鋭角であるため、サインをとっても大小関係が保存され、次のように書けます。
$$\sin\alpha > \sin\alpha_0$$
ここで、(2)の結果 \(\sin\alpha_0 = \displaystyle\frac{n_2}{n_1}\) を用います。
次に、\(\sin\alpha\) を \(\theta\) を使って表す必要があります。(3)の結果 \(\cos\alpha = \displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}\) と、三角関数の基本公式 \(\sin^2\alpha + \cos^2\alpha = 1\) を利用します。\(\alpha\) は光線の入射角なので \(0 < \alpha < \pi/2\) であり \(\sin\alpha > 0\) ですから、
$$\sin\alpha = \sqrt{1 – \cos^2\alpha}$$
この式に (3) の結果を代入すると、
$$\sin\alpha = \sqrt{1 – \left(\displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}\right)^2}$$
これで全反射の条件式 \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\) に、これまでに求めた具体的な表現を代入する準備が整いました。
$$\sqrt{1 – \left(\displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}\right)^2} > \displaystyle\frac{n_2}{n_1}$$
これが \(\sin\theta\) を含む条件式を立てるための中間的な形です。

使用した物理公式

  • 全反射の条件: \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\)
  • 三角関数の関係式: \(\sin^2\phi + \cos^2\phi = 1\)
  • 設問(2)および(3)の結果
計算過程

上記「具体的な解説と立式」で立てた不等式 \(\sqrt{1 – \left(\displaystyle\frac{\sin\theta}{n_1}\right)^2} > \displaystyle\frac{n_2}{n_1}\) を \(\sin\theta\) について解きます。
1. まず、左辺の根号の中を整理します。
$$\sqrt{\displaystyle\frac{n_1^2 – \sin^2\theta}{n_1^2}} > \displaystyle\frac{n_2}{n_1}$$
2. 左辺の分母 \(n_1^2\) を根号の外に出します(\(n_1 > 0\) なので \(\sqrt{n_1^2} = n_1\))。
$$\displaystyle\frac{\sqrt{n_1^2 – \sin^2\theta}}{n_1} > \displaystyle\frac{n_2}{n_1}$$
(このステップは「具体的な解説と立式」で示した \(\sin\alpha = \displaystyle\frac{\sqrt{n_1^2 – \sin^2\theta}}{n_1}\) の導出に含まれています。)
3. 両辺に \(n_1\) を掛けます(\(n_1 > 0\) なので不等号の向きは変わりません)。
$$\sqrt{n_1^2 – \sin^2\theta} > n_2$$
4. 両辺を2乗します。この操作は両辺が0以上の場合に大小関係が保存されます。\(n_2 > 0\) であり、左辺の平方根も \(n_2\) より大きいためには正でなければなりません(つまり \(n_1^2 – \sin^2\theta > 0\))。この条件は全反射が起こる物理的な状況から期待されます。
$$n_1^2 – \sin^2\theta > n_2^2$$
5. 不等式を \(\sin^2\theta\) について整理します。まず \(- \sin^2\theta\) を右辺に、\(n_2^2\) を左辺に移項(符号を変えて)します。
$$n_1^2 – n_2^2 > \sin^2\theta$$
これは、次のように書くのと同じです。
$$\sin^2\theta < n_1^2 – n_2^2$$
6. \(\sin\theta\) について解きます。AB面への入射角 \(\theta\) は \(0^\circ < \theta < 90^\circ\) なので \(\sin\theta > 0\) です。したがって、平方根を取る際に正の根のみを考えます。
$$\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}$$ このとき、根号内が正であること、つまり \(n_1^2 – n_2^2 > 0\) (すなわち \(n_1 > n_2\))が条件として必要ですが、これは問1で確認した全反射が起こるための前提条件と一致しています。

計算方法の平易な説明
  1. AC面で全反射し続けるためには、AC面への光の入射角 \(\alpha\) が、(2)で考えた臨界角 \(\alpha_0\) よりも大きくなければなりません。数式で書くと \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\) です。
  2. (2)で \(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\) とわかっているので、条件は \(\sin\alpha > n_2/n_1\) となります。
  3. 次に、\(\sin\alpha\) を、私たちが操作できるAB面への入射角 \(\theta\) を使った式で表したいと考えます。(3)で \(\cos\alpha = \sin\theta/n_1\) という関係を見つけました。三角関数の大切な公式 \(\sin^2\alpha + \cos^2\alpha = 1\) を使うと、\(\sin\alpha\) は \(\cos\alpha\) から計算できます。具体的には \(\sin\alpha = \sqrt{1 – \cos^2\alpha}\) です。これに(3)の \(\cos\alpha\) を代入すると、\(\sin\alpha = \sqrt{1 – (\sin\theta/n_1)^2}\) となります。
  4. この \(\sin\alpha\) の式を、ステップ2の不等式 \(\sin\alpha > n_2/n_1\) に入れます。すると、\(\sqrt{1 – (\sin\theta/n_1)^2} > n_2/n_1\) という、\(\theta\) と屈折率だけの式になります。
  5. この不等式を \(\sin\theta\) について解いていきます。分母を払ったり、両辺を2乗したり(両方がプラスの値なので2乗しても大小関係は変わりません)、式を整理していくと、最終的に \(\sin^2\theta < n_1^2 – n_2^2\) という形になります。
  6. \(\sin\theta\) は \(0^\circ\) から \(90^\circ\) の角度のサインなので必ず正です。なので、平方根を取ると \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) という条件が得られます。これが答えです。
結論と吟味

図のように全反射するための \(\sin\theta\) に対する条件は \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) です。
この条件式の右辺 \(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) は、光ファイバーの開口数(NA)に関連する量です。入射角 \(\theta\) がこの条件を満たす範囲にあれば、光はコア(屈折率 \(n_1\))内に閉じ込められ、クラッド(屈折率 \(n_2\))へ漏れ出すことなく全反射を繰り返して伝播します。
条件が成り立つためには \(n_1^2 – n_2^2 > 0\)、すなわち \(n_1 > n_2\) が必要であり、これは(1)で得られた全反射の基本的な要請と一致しています。

解答 (4) \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\)

問5

思考の道筋とポイント
(4)で得られた \(\sin\theta\) に対する条件が、\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の範囲の「すべての」\(\theta\) について成り立つための条件を考えます。これは、\(\sin\theta\) が取りうる値の範囲を考慮し、その範囲全体で不等式が成立するように、\(n_1\) と \(n_2\) の関係を定める問題です。

この設問における重要なポイント

  • (4)で導出した条件式 \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) を利用する。
  • \(0^\circ < \theta < 90^\circ\) のとき、\(\sin\theta\) の値域は \(0 < \sin\theta < 1\) であること(\(\theta \rightarrow 90^\circ\) で \(\sin\theta \rightarrow 1\)、\(\theta \rightarrow 0^\circ\) で \(\sin\theta \rightarrow 0\)。ただし問題文の図から \(\theta=0\) は光が入射しないため除外、\(\theta=90^\circ\) はAB面に平行なため除外)。
  • 不等式がある範囲の全ての変数に対して成り立つための条件設定の考え方。具体的には、\(\sin\theta\) の最大値(上限)を考慮する。

具体的な解説と立式
(4)で求めた、全反射が起こるための条件は
$$\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}$$
です。
この条件が、\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の範囲のすべての \(\theta\) に対して成り立つようにするためには、\(\sin\theta\) が取りうる値の範囲を考える必要があります。\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) のとき、\(\sin\theta\) は \(0 < \sin\theta < 1\) の範囲の値を取ります(\(\theta\) が \(90^\circ\) に近づくとき、\(\sin\theta\) は \(1\) に近づきます)。
このすべての \(\sin\theta\) (つまり \(0 < \sin\theta < 1\) の範囲のすべての値)に対して \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) が成立するためには、不等式の右辺 \(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) が、\(\sin\theta\) の取りうる最大の値(ここでは上限である \(1\))以上であればよいことになります。
もし \(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) が \(1\) より小さい値、例えば \(0.8\) だとすると、\(\sin\theta = 0.9\)(これは \(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の範囲で取りうる)のときに \(0.9 < 0.8\) となってしまい、条件を満たしません。
したがって、\(\sin\theta\) の上限である \(1\) を含めて、それ以下の全ての \(\sin\theta\) で条件が満たされるようにするには、次の不等式が成り立つ必要があります。
$$1 \le \sqrt{n_1^2 – n_2^2}$$
これが \(n_1\) と \(n_2\) だけを用いた条件を導くための立式となります。

使用した物理公式

  • 設問(4)の結果
  • 三角関数 \(\sin\theta\) の値域に関する考察
  • 不等式の恒等成立条件
計算過程

上記「具体的な解説と立式」で立てた不等式 \(1 \le \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) を変形します。
1. この不等式の両辺は正(または0以上)です(平方根は常に0以上、\(1\) も正)。したがって、両辺を2乗しても大小関係は変わりません。
$$1^2 \le \left(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\right)^2$$
2. 2乗を計算すると、
$$1 \le n_1^2 – n_2^2$$
これが、\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) のすべての \(\theta\) に対して全反射を起こさせるための、\(n_1\) と \(n_2\) だけを用いた条件です。
この条件が成り立つためには、まず \(n_1^2 – n_2^2 > 0\)(つまり \(n_1 > n_2\))であることが暗に要求されますが、\(1 \le n_1^2 – n_2^2\) という条件は \(n_1^2 – n_2^2\) が正であることを含んでいるため、矛盾はありません。

計算方法の平易な説明

(4)で「\(\sin\theta\) が \(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) という値より小さければ全反射する」ということがわかりました。
(5)では、「どんな角度 \(\theta\)(\(0^\circ\) から \(90^\circ\) の間)で光を入れても、必ず全反射してほしい」と言っています。
\(\sin\theta\) というのは、角度 \(\theta\) が \(0^\circ\) から \(90^\circ\) まで変わるとき、\(0\) から \(1\) までの値をとります(\(0\) より大きく \(1\) より小さい)。
この全ての \(\sin\theta\) の値が、常に \(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) より小さくなるようにするには、\(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) という値自体が、\(\sin\theta\) が取りうる一番大きな値(ほぼ \(1\) ですね)よりも大きいか、少なくとも等しくなっていればよいわけです。
もし \(\sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) が \(1\) 以上であれば、\(\sin\theta\) は \(1\) を超えられないので、必ず \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) という条件が満たされます(\(\sin\theta=1\) の場合も含めて \(1 \le \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) とします)。
この \(1 \le \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) という式の両辺を2乗すると(両方プラスなので2乗してもOK)、\(1 \le n_1^2 – n_2^2\) という、\(n_1\) と \(n_2\) だけの条件が出てきます。

結論と吟味

\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) のすべての \(\theta\) に対して全反射を起こさせるための条件は \(1 \le n_1^2 – n_2^2\) です。
これは、コアの屈折率 \(n_1\) とクラッドの屈折率 \(n_2\) の差が特定の閾値以上であることを意味し、これにより入射角 \(\theta\) に依らずに光を効率よく閉じ込めることができる光ファイバーの設計指針となります。この条件は、光ファイバーの開口数(NA)が \(1\) 以上(実際には \(\sin\theta_{\text{max}}=NA \le 1\) なので、NAが最大値を取りうる)という状況に対応します。

解答 (5) \(1 \le n_1^2 – n_2^2\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 屈折の法則: \(n_1 \sin \theta_1 = n_2 \sin \theta_2\)。光が異なる媒質の境界面を通過する際の基本的な法則。空気の屈折率を1とすることも忘れずに。
  • 全反射の条件:
    • 屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ光が進むこと (\(n_1 > n_2\))。
    • 入射角 \(\alpha\) が臨界角 \(\alpha_0\) より大きいこと (\(\alpha > \alpha_0\))。これは \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\) と同値。
  • 臨界角の導出: 屈折の法則で屈折角を \(90^\circ\) とおくことで \(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\) が導かれる。
  • 光路の幾何学: 図から角度の関係(特に(3)でのAB面屈折角とAC面入射角の関係 \(r=90^\circ-\alpha\))を正確に読み取り、数式に反映させること。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • 光ファイバーの特性(開口数NA、許容入射角など)を求める問題。
    • プリズムを用いた光の進路制御や全反射を利用した光学機器(例:双眼鏡のポロプリズム、カメラのペンタプリズム)。
    • 薄膜や多層膜構造における光の伝播。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 光の経路の図示と角度設定: まず光がどの界面でどのように反射・屈折するかを追い、各界面での法線、入射角、屈折角(反射角)を正確に図示し、文字で定義する。
    2. 各界面での物理法則の適用:
      • 屈折が起こる界面では、屈折の法則を適用。
      • 全反射が期待される界面(屈折率 大→小)では、臨界角の条件と比較。
    3. 幾何学的拘束条件の利用: 図形的な性質から角度間の関係式を導き、連立方程式や代入によって未知数を消去していく。
    4. 条件の翻訳:「~するための条件を求めよ」という問いに対し、それを数式(等式または不等式)で表現し、最終的に指定された変数で表すことを目指す。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
    • 複数のステップからなる問題では、前の設問の結果を次の設問で使うことが多いので、各設問を丁寧かつ正確に解く。
    • 文字計算が複雑になりがちなので、計算ミスを減らす工夫(途中式を丁寧に書く、検算するなど)が必要。
    • (5)のように「全ての○○に対して成り立つ条件」を問われた場合、変数の取りうる範囲(定義域・値域)を考慮し、その範囲で不等式が常に成立するための条件を考える(例:最大値や最小値を考慮する)。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 臨界角の式の混同: \(\sin\alpha_0 = n_1/n_2\) と誤る(正しくは \(n_2/n_1\)、ただし \(n_1>n_2\))。
    • 対策: \(\sin\) の値は1を超えないので、必ず(小屈折率)/(大屈折率)になると覚える。
  • 全反射の条件の誤り: 入射角が臨界角「以下」で全反射すると誤解する。
    • 対策: 入射角が臨界角「より大きい」ときに全反射と正しく記憶する。
  • 幾何学的関係の見落としや誤り: (3)における \(r=90^\circ-\alpha\) のような角度関係の特定ミス。
    • 対策: 大きく正確な図を描き、法線や平行線、直角三角形などに注目して慎重に角度を追う。
  • 不等式の変形ミス: 特に2乗する際に、両辺が正であることの確認を怠る、または不等号の向きを誤る。
    • 対策: 不等式の両辺に同じ操作をする際は、その操作が不等号の向きにどう影響するかを常に意識する。
  • 三角関数の公式の誤用・失念: \(\sin(90^\circ-\alpha)=\cos\alpha\)、\(\sin^2\alpha+\cos^2\alpha=1\) など。
    • 対策: 基本的な三角関数の公式は確実に覚えておく。必要に応じて単位円などで確認する。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • 光が空気から屈折率の高いガラスに入るとき、光は遅くなるため法線側に引き寄せられるように曲がる(AB面での屈折)。
    • ガラス内部で、より屈折率の低い別のガラスとの境界面に達したとき、光は外に出ようとするが、入射角度が浅い(法線との角度が大きい)と、まるで鏡のように完全に跳ね返される(AC面での全反射)。
    • (5)の条件は、入射口からどんな角度で光を入れても、この「内部での全反射」が保証されるような、非常に高性能な光のパイプを作るための条件を考えているイメージ。
  • 図示の有効性:
    • 問題文の図は光路の概略を示しているが、自分で法線や角度(\(\theta, r, \alpha, \alpha_0\)など)を正確に描き込むことが、問題を解く上での第一歩。
    • 特に(3)のような角度の関係性は、正確な図と補助線(例えば、AB面の法線とAC面の法線が直交することを示す線)によって視覚的に理解しやすくなる。模範解答の補助図も参考になる。
    • 光がどの媒質からどの媒質へ進んでいるのか、その境界面はどこかを常に図で確認しながら考える。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 屈折の法則: 光が「異なる屈折率の媒質の境界面を通過する」という状況で、入射角と屈折角の関係を知りたい場合に常に基本となる法則。本問題ではAB面(空気\(\rightarrow n_1\))とAC面(\(n_1 \rightarrow n_2\)、臨界角導出時)で使用。
  • 臨界角 (\(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\)): 「全反射が起こるか否かの境界」となる入射角を知りたい場合に、屈折の法則から導かれる専用の公式として使用。
  • 全反射の条件 (\(\alpha > \alpha_0\) or \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\)): 実際に「全反射が起こっている」という状況を数式で表現する場合に用いる。
  • 三角関数の公式 (\(\sin(90^\circ-\phi)=\cos\phi\), \(\sin^2\phi+\cos^2\phi=1\)): 角度間の関係や、ある角度の\(\sin\)から\(\cos\)(またはその逆)を求めるなど、幾何学的な問題を代数的に解くための道具として不可欠。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 前提確認 (問1): 全反射が起こるための媒質の屈折率の基本的な大小関係 (\(n_1 > n_2\)) を押さえる。
  2. 基準となる角度の定義 (問2): 全反射の境界となる臨界角 \(\alpha_0\) を、屈折の法則を用いて \(n_1, n_2\) で表す (\(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\))。
  3. 外部入射角と内部入射角の関係付け (問3): 外部からの入射角 \(\theta\) と、内部の全反射面への入射角 \(\alpha\) との間の関係を、AB面での屈折と幾何学を使って導く (\(\cos\alpha = \sin\theta/n_1\))。
  4. 全反射条件の具体化 (問4): 全反射の条件 \(\sin\alpha > \sin\alpha_0\) に、(2)と(3)(および三角関数の公式)から得られた具体的な表現を代入し、\(\theta\) に関する不等式 \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2 – n_2^2}\) を導く。
  5. 普遍的条件への展開 (問5): (4)で得た \(\theta\) に関する条件が、\(\theta\) の取りうる全範囲で成り立つための \(n_1, n_2\) の間の条件 \(1 \le n_1^2 – n_2^2\) を、不等式の性質から導く。

このように、基本的な法則から出発し、各設問で得られた結果を積み重ねてより複雑な条件を導いていく流れになっています。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字の区別を明確に: \(n_1, n_2, \alpha, \alpha_0, \theta\) など、多くの記号が登場するので、それぞれが何を表すのかを常に意識し、混同しないようにする。
  • 平方根の取り扱い: \(\sqrt{A}\) の中身 \(A\) は必ず \(A \ge 0\) であることを意識する。不等式で両辺を2乗する際は、両辺が0以上であることを確認する。
  • 三角関数の変形は慎重に: \(\sin\alpha\) から \(\cos\alpha\) を求める際(またはその逆)、\(\sin^2\alpha+\cos^2\alpha=1\) を使い、必要に応じて角度の範囲から符号を判断する(本問では \(\alpha\) が鋭角なので \(\sin\alpha, \cos\alpha\) ともに正)。
  • 不等式の移項や両辺への操作: 負の数を掛けたり割ったりすると不等号の向きが変わることに注意。本問では主に正の数を扱うが、一般的に注意が必要。
  • 式の整理整頓: 複雑な分数や根号を含む式は、段階を踏んで丁寧に整理する。模範解答 のように、途中で分母を払うなどの工夫も有効。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な意味の確認:
    • (1) \(n_1 > n_2\): 全反射の基本条件であり妥当。
    • (2) \(\sin\alpha_0 = n_2/n_1\): \(n_1 > n_2 > 0\) であれば \(0 < \sin\alpha_0 < 1\) となり、実在する臨界角に対応し妥当。
    • (3) \(\cos\alpha = \sin\theta/n_1\): \(\sin\theta \le 1\) であり、通常 \(n_1 > 1\) なので \(\cos\alpha < 1\) となりうる。また \(\theta\) が小さいと \(\alpha\) は \(90^\circ\) に近づき (\(\cos\alpha\) は0に近づく)、\(\theta\) が大きいと \(\alpha\) は小さくなる(\(\cos\alpha\) は大きくなる)という関係も図と整合。
    • (4) \(\sin\theta < \sqrt{n_1^2-n_2^2}\): \(n_1\) と \(n_2\) の差が大きいほど右辺は大きくなり、許容される \(\theta\) の範囲が広がる。これは物理的に、より光を閉じ込めやすいことを意味し妥当。
    • (5) \(1 \le n_1^2-n_2^2\): \(n_1\) と \(n_2\) の屈折率の差がかなり大きくないと、どんな入射角 \(\theta\) でも全反射するわけではない、という直感とも合う。
  • 単位(次元)の確認: 屈折率は無次元量なので、\(\sin\theta\) や \(\sin\alpha_0\) も無次元で、式の両辺で次元が一致している。
  • 極端なケースの考察:
    • もし \(n_2 \rightarrow n_1\) (屈折率差なし) なら、\(\sin\alpha_0 \rightarrow 1\) (\(\alpha_0 \rightarrow 90^\circ\))。全反射は起こらない。(4)で右辺が0になり \(\sin\theta < 0\) となり不適。(5)も \(1 \le 0\) で不適。
    • もし \(n_2 \rightarrow 0\) (クラッドが真空に近い) なら、\(\sin\alpha_0 \rightarrow 0\) (\(\alpha_0 \rightarrow 0^\circ\))。わずかな角度でも全反射。(4)で \(\sin\theta < n_1\)。(5)で \(1 \le n_1^2\)。これらは \(n_1 \ge 1\) なら意味を持つ。
    • もし \(\theta \rightarrow 0\) (AB面に垂直入射に近い) なら \(\sin\theta \rightarrow 0\)。(3)から \(\cos\alpha \rightarrow 0\) で \(\alpha \rightarrow 90^\circ\)。これはAC面にほぼ平行に入射することを意味し、全反射しやすい。(4)の条件 \(0 < \sqrt{n_1^2-n_2^2}\) は \(n_1>n_2\) なら満たされる。

問題88 (共通テスト+センター試験)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、凸レンズによる実像の形成、レンズの公式を用いた計算、そしてレンズの一部を覆った場合の像の変化について問う、レンズの基本的な性質を総合的に理解しているかを確認する問題です。

与えられた条件
  • 光学系: 矢印を組み合わせた形の光源、凸レンズ、スクリーンが光軸上に配置。
  • 焦点: F, F’ はレンズの焦点。
  • 座標系: スクリーンと光軸の交点を原点Oとし、水平方向右向きにx軸正、鉛直方向上向きにy軸正。
  • 光源の向き:
    • 太い矢印: y軸の正の向き。
    • 細い矢印: x軸の正の向き。
  • (2)の追加条件: 光源とスクリーンの距離が \(100 \text{ cm}\)、実像の倍率が \(1\)。
  • (3)の操作: レンズの中心より上半分に黒い紙を貼る。
問われていること
  1. (1) スクリーン上にできる実像の向き(レンズ側から見た場合)。
  2. (2) 特定条件下でのレンズの焦点距離。
  3. (3) レンズの上半分を覆った場合にスクリーン上の像がどうなるか。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くためには、以下の物理法則や概念をしっかりと理解しておく必要があります。

  • 凸レンズによる実像の性質: 焦点より外側に物体を置いた場合、凸レンズは倒立した実像を作ります。この「倒立」は上下だけでなく左右も反転することを意味します。
  • レンズの公式: 物体距離を \(a\)、像距離を \(b\)、焦点距離を \(f\) とすると、薄いレンズにおいては \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\) という関係が成り立ちます。
  • 倍率の式: 像の大きさが物体の大きさの何倍になるかを示す倍率 \(m\) は、\(m = \displaystyle\frac{b}{a}\) で与えられます。
  • レンズの像形成における光の経路: 物体の一点から出た光は、レンズの各部分を通過し、屈折して像の一点に集まります。

問1

思考の道筋とポイント
凸レンズが作る実像は「倒立」するという基本的な性質を理解しているかが問われます。「倒立」がX軸方向、Y軸方向それぞれにどのように影響するかを考え、光源の矢印がスクリーン上でどのように映るかを判断します。

この設問における重要なポイント

  • 凸レンズが焦点の外側にある物体に対して作る実像は、上下左右が反転した倒立像であること。
  • これは、物体をレンズの中心(光軸上の点)に関して点対称移動させた像ができると考えると理解しやすいです。
  • 観測者が「レンズ側から見る」という点に注意し、スクリーンに映った像そのものの向きを答える。

具体的な解説と立式
凸レンズによってスクリーン上にできる実像は、物体に対して倒立します。この「倒立」とは、レンズの光軸上の点を中心として、物体を\(180^\circ\)回転させたような形になることを意味します。具体的には、上下が反転し、かつ左右も反転します。

光源の各矢印の向きについて考察しましょう。

  • 太い矢印 (光源ではy軸正方向、つまり上向き): スクリーン上にできる実像では、上下が反転するため、y軸の負の向き (下向き) になります。
  • 細い矢印 (光源ではx軸正方向、つまりレンズ側から見て右向き): スクリーン上にできる実像では、左右が反転するため、x軸の負の向き (レンズ側から見て左向き) になります。

観測者はレンズ側からスクリーン上の像を見ますので、スクリーンに投影されたこの像の向きがそのまま観測される像の向きとなります。
したがって、スクリーン上の像は、太い矢印が下向き、細い矢印が左向きとなります。
選択肢①~④の中で、この条件に合致するのは③です。
模範解答の図解にあるように、物体上の一点Aからレンズの中心Oを通る光線は直進し、像の対応する点A’に至ります。この光線の直進性から、像が物体に対して光軸上のレンズ中心Oに関して点対称な位置にできることが分かります。この点対称性により、y方向の成分もx方向の成分も向きが反転します。

使用した物理公式

  • 凸レンズによる実像の性質(倒立像:上下左右反転)
計算過程

この設問は、凸レンズによる像の向きという定性的な性質を理解しているかを問うものであり、具体的な数値計算は伴いません。上記の物理的な考察によって解答が導かれます。

計算方法の平易な説明

凸レンズを使ってスクリーンに物体のくっきりとした絵(実像)を映すと、その絵は元の物体を上下さかさまにし、さらに左右も反対にした形になります。これを「倒立像」と呼びます。
問題の光源には、上向きの太い矢印と、(レンズ側から見て)右向きの細い矢印がありますね。

  • 上向きの太い矢印は、スクリーン上ではひっくり返って下向きになります。
  • 右向きの細い矢印は、スクリーン上ではひっくり返って左向きになります。

この両方の条件に合う図を選ぶと、正解は③です。

結論と吟味

スクリーン上にできる実像は、光源の矢印に対して上下および左右が反転したものになります。したがって、太い矢印は下向き(y軸負方向)、細い矢印は左向き(x軸負方向)を向くため、選択肢③が正解です。これは凸レンズによる実像形成の基本的な特徴です。

解答 (1)

問2

思考の道筋とポイント
与えられた条件「光源とスクリーンの距離」と「実像の倍率」から、物体距離 \(a\) と像距離 \(b\) を特定し、それらの値をレンズの公式に代入して焦点距離 \(f\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\) を正しく適用すること。ここで \(a\) はレンズから光源までの距離、\(b\) はレンズからスクリーン(実像)までの距離、\(f\) は焦点距離です。
  • 倍率の式: \(m = \displaystyle\frac{b}{a}\) (実像の場合、\(a, b\) は正の値)。
  • 問題文の条件を的確に数式に変換すること。例えば、「光源とスクリーンの距離」は \(a+b\) に相当します。

具体的な解説と立式
レンズから光源までの距離を \(a\)、レンズからスクリーン(実像)までの距離を \(b\) とおきます。
問題文の条件から、以下の2つの関係式を立てることができます。

  1. 「光源とスクリーンの距離が \(100 \text{ cm}\)」であることから、光源、レンズ、スクリーンがこの順で光軸上に配置され、スクリーン上に実像ができているため、物体距離 \(a\) と像距離 \(b\) の和が \(100 \text{ cm}\) となります。
    $$a + b = 100 \quad (\text{単位: cm})$$
  2. 「実像の倍率が \(1\)」であることから、倍率 \(m = \displaystyle\frac{b}{a}\) を用いて、
    $$\displaystyle\frac{b}{a} = 1$$

これらの2つの式から \(a\) と \(b\) の値を求め、その後にレンズの公式を用いて焦点距離 \(f\) を算出します。レンズの公式は次の通りです。
$$\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}$$

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)
  • 倍率の式: \(m = \displaystyle\frac{b}{a}\)
計算過程

「具体的な解説と立式」で立てた連立方程式を解き、焦点距離 \(f\) を求めます。
1. 倍率の式 \(\displaystyle\frac{b}{a} = 1\) から、\(b\) を \(a\) で表します。
$$b = a$$
2. この \(b=a\) を、光源とスクリーンの距離の式 \(a+b=100\) に代入します。
$$a + a = 100$$
3. \(a\) についての方程式を解きます。
$$2a = 100$$
両辺を \(2\) で割ると、
$$a = \displaystyle\frac{100}{2}$$
$$a = 50 \quad (\text{cm})$$
4. \(b=a\) なので、\(b\) の値も求まります。
$$b = 50 \quad (\text{cm})$$
5. 求まった \(a=50 \text{ cm}\) と \(b=50 \text{ cm}\) をレンズの公式 \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\) に代入します。
$$\displaystyle\frac{1}{50} + \displaystyle\frac{1}{50} = \displaystyle\frac{1}{f}$$
6. 左辺の和を計算します。
$$\displaystyle\frac{1+1}{50} = \displaystyle\frac{1}{f}$$
$$\displaystyle\frac{2}{50} = \displaystyle\frac{1}{f}$$
7. 左辺を約分します。
$$\displaystyle\frac{1}{25} = \displaystyle\frac{1}{f}$$
8. この式から \(f\) を求めます。両辺の逆数をとると、
$$f = 25 \quad (\text{cm})$$

計算方法の平易な説明
  1. まず、問題文から情報を整理します。「光源とスクリーンの距離が \(100 \text{ cm}\)」と「倍率が \(1\)」です。光源からレンズまでの長さを \(a\)、レンズからスクリーンまでの長さを \(b\) としましょう。
  2. 「光源とスクリーンの距離が \(100 \text{ cm}\)」なので、これは \(a+b=100\) という式になります。
  3. 「倍率が \(1\)」ということは、スクリーンに映る像の大きさが元の光源の大きさと同じだということです。レンズの場合、倍率が \(1\) になるのは、レンズから光源までの距離 \(a\) と、レンズからスクリーンまでの距離 \(b\) が等しいとき、つまり \(a=b\) のときです。
  4. \(a=b\) という関係を \(a+b=100\) の式に入れると、\(a+a=100\)、つまり \(2a=100\) となります。これを解くと \(a=50 \text{ cm}\) です。\(b\) も \(a\) と同じなので \(50 \text{ cm}\) です。
  5. これで \(a\) と \(b\) がわかったので、レンズの公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を使って焦点距離 \(f\) を求めます。
    \(\frac{1}{50} + \frac{1}{50} = \frac{1}{f}\)
  6. 左側を計算すると \(\frac{2}{50}\) となり、これは約分すると \(\frac{1}{25}\) です。
  7. なので、\(\frac{1}{25} = \frac{1}{f}\) となり、これから \(f=25 \text{ cm}\) とわかります。
結論と吟味

レンズの焦点距離は \(25 \text{ cm}\) です。この結果は、物体が焦点距離の2倍の位置 (\(2f = 50 \text{ cm}\)) にあるとき、同じく焦点距離の2倍の位置に、同じ大きさの倒立実像ができるという凸レンズの性質と一致しており、物理的に妥当です。

解答 (2) \(25\)

問3

思考の道筋とポイント
レンズの一部を覆ったときに、スクリーン上の像がどのように変化するかを考察します。レンズは物体の一点から出た光を像の一点に集める働きをしますが、その光が通る経路の一部が遮られた場合の影響を考えます。

この設問における重要なポイント

  • レンズの各部分は、物体全体の像を作るのに寄与しているということ。
  • レンズの一部を覆うと、像を形成するために集まる光の総量が減少するが、像そのものが欠けるわけではない(レンズの残り部分が機能する限り)。
  • 像の明るさは、レンズを通過して像点に集まる光の量に比例する。

具体的な解説と立式
凸レンズは、光源の各点から出た光線を屈折させ、スクリーン上の対応する各点に集めることで像を形成します。重要なのは、光源のある一点から出た光は、レンズの広がり全体(この場合は遮られていない部分全体)を通って、スクリーン上の一点に集まるということです。

レンズの中心より上半分に黒い紙を貼ると、光源の各点から出てレンズの上半分を通過しようとした光線は遮られてしまいます。しかし、光源の各点から出てレンズの下半分を通過する光線は、依然として屈折し、スクリーン上の対応する点に集まって像を形成します。
この結果、以下のようになると考えられます。

  • 像の形や見える範囲: 光源の全ての点からの光が、レンズの下半分を通してそれぞれの像点を作ることができます。したがって、スクリーン上には光源全体の像が形成されます。像の一部(例えば \(y>0\) の部分や \(y<0\) の部分)が見えなくなるということはありません。
  • 像の明るさ: レンズを通過して像の各点に集まる光線の数が、レンズの上半分が遮られたことにより減少します(おおよそ半分になります)。像の明るさは集まる光の量に比例するため、像全体が暗くなります。

以上の考察から、正しい選択肢は「② 全体が暗くなった。」であると判断できます。

使用した物理公式

  • レンズによる像形成の原理(物体の一点から出た光がレンズの有効な部分を通って像の一点に集まる)
  • 像の明るさとレンズを通過する光量の関係
計算過程

この設問は、レンズによる像形成の原理と光量に関する定性的な理解を問うものであり、数値計算は伴いません。上記の物理的な考察によって解答が導かれます。

計算方法の平易な説明

レンズは、虫めがねのように、物の一点から出たたくさんの光を集めて、スクリーン上の一点に像を作ります。
レンズの半分を黒い紙で隠しても、残りの半分がまだレンズとして働きます。つまり、物の一点から出た光のうち、隠されていないレンズの半分を通る光は、ちゃんとスクリーン上の対応する点に集まります。
ですから、像が欠けたり、一部が見えなくなったりすることはありません。スクリーンには、ちゃんと全体の像が映ります。
ただし、光が通れるレンズの面積が半分になってしまったので、スクリーンに集まる光全体の量が減ってしまいます。その結果、像全体が以前より暗くなります。
よって、②「全体が暗くなった」が正解です。

結論と吟味

レンズの中心より上半分を黒い紙で覆っても、レンズの下半分を通過する光によって光源全体の倒立実像がスクリーン上に形成されます。像が欠けることはありません。ただし、像を形成する光の総量が減少するため、像は全体的に暗くなります。よって、選択肢②が正しいです。

解答 (3)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 凸レンズによる像形成: 焦点より外側にある物体に対して倒立実像を作ること。像の向き(上下左右の反転)の理解。
  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)。物体距離 \(a\)、像距離 \(b\)、焦点距離 \(f\) の関係を表す基本式。符号の規約(実像・虚像、凸レンズ・凹レンズで異なる場合もあるが、本問では実像なので \(a,b,f\) ともに正として扱える)。
  • 倍率: \(m = \displaystyle\frac{b}{a}\)。像の大きさが物体の大きさの何倍になるか、また像の向き(倒立・正立)の情報も含む(符号の定義による)。本問では大きさの比として \(b/a=1\) を使用。
  • レンズの働きと光量: レンズは物体上の各点から出た光を対応する像点に集める。レンズを通過する光の断面積(有効径)が像の明るさに影響する。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • 凹レンズによる像(虚像)の作図や性質の問題。
    • 複数のレンズを組み合わせた光学系(望遠鏡、顕微鏡など)の問題。
    • レンズの公式や倍率の式を用いて、未知の量(物体距離、像距離、焦点距離、倍率など)を計算する問題。
    • 絞りやレンズの口径が像の明るさや被写界深度に与える影響(より発展的な内容)。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. レンズの種類と物体の位置: 凸レンズか凹レンズか。物体が焦点の内側か外側か。これにより、できる像の種類(実像/虚像、正立/倒立、拡大/縮小)がおおよそ予測できる。
    2. 与えられた情報: 問題文で何が与えられ(物体距離、像距離、焦点距離、倍率、光源とスクリーンの距離など)、何を問われているのかを明確にする。
    3. 作図の活用: 光の経路を模式的に作図することで、像の位置や向きを視覚的に理解する助けになる。特に、①レンズの中心を通る光線、②光軸に平行に入射する光線、③焦点を通って入射する光線の3本(のうち2本)を描くと像の位置が決まる。
    4. レンズの公式と倍率の式の適用: 定量的な計算が必要な場合は、これらの公式を正しく適用する。
    5. レンズの一部を覆う問題: 像の明るさと光量の関係を思い出す。像の形自体は変わらないことが多い。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 倒立像の向き: 「倒立」を単に上下反転とだけ捉え、左右反転を見落とす。光軸中心の\(180^\circ\)回転と理解するのが確実。
  • レンズの公式の符号: 特に虚像や凹レンズが絡む場合、\(a, b, f\) の符号の取り扱いに注意が必要(本問では実像なので比較的シンプル)。
  • 倍率の式の混同: \(a/b\) と \(b/a\) を間違える。像の距離/物体の距離と覚える。
  • レンズの一部を覆った場合の影響: 像が欠ける、あるいは半分になると誤解しやすい。正しくは、像全体が形成されるが暗くなる。
    • 対策: 物体の一点から出た光はレンズの様々な場所を通って像の一点に集まる、という基本原理を理解する。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • (1) 光源の十字矢印が、レンズを通してスクリーン上でひっくり返って映る様子を頭の中で描く。
    • (2) 光源をレンズに近づけたり遠ざけたりすると、スクリーン上の像の位置や大きさがどう変わるか(レンズの公式がそれを記述している)。
    • (3) レンズを通る光の「束」をイメージし、その束の一部が遮られるが、残りの光で像が作られる様子を想像する。
  • 図示の有効性:
    • (1)の像の向きは、代表的な光線(レンズの中心を通る光、光軸に平行な光、焦点を通る光)を作図することで明確に確認できる。
    • (2)の状況も、簡単な光路図を描くことで \(a\) と \(b\) の関係を視覚的に捉えられる。
    • (3)では、物体の一点からレンズの異なる部分(上半分、下半分)を通る光線が、同じ像点に集まる様子を図示すると理解が深まる。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • レンズの公式 (\(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)): 物体距離、像距離、焦点距離の間の関係を定量的に扱うための基本式。薄いレンズで近軸光線という近似の下で成り立つ。
  • 倍率の式 (\(m=b/a\)): 像の大きさが物体の大きさの何倍になるか、また像の向き(倒立・正立)の情報も与える(符号の定義による)。幾何光学的な光線の追跡から導かれる。
  • 凸レンズの実像は倒立: 焦点の外側の物体に対し、光線が実際に集まってできる実像は、必ず物体に対して倒立する。これは多数の光線の作図から経験的に、また理論的に示される。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 像の向きの判断:
    • 凸レンズ + 実像 \(\rightarrow\) 倒立像 (上下左右反転)
    • 光源の各矢印の向きを特定し、反転後の向きを判断。
  2. (2) 焦点距離の計算:
    • 条件1を数式化: \(a+b=100\)
    • 条件2を数式化: \(b/a=1\) つまり \(b=a\)
    • これらを連立して \(a,b\) を解く: \(a=50, b=50\)。
    • レンズの公式に \(a,b\) の値を代入: \(1/50 + 1/50 = 1/f\)。
    • \(f\) を計算。
  3. (3) レンズを覆った場合:
    • レンズの基本的な働き(物体の一点からの光を像の一点に集める)を想起。
    • 光量と像の明るさの関係を考慮。
    • レンズの一部が遮られても、残りの部分で像が形成されるかを考察。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • (2)の計算における注意点:
    • 連立方程式の処理: \(a+b=100\) と \(b=a\) から、\(a, b\) の値を正確に求める。
    • 分数の計算: \(1/50 + 1/50 = 2/50\)。その後の約分 (\(1/25\)) も忘れずに。
    • 逆数計算: \(1/f = 1/25\) から \(f=25\) を導く際に、逆数を取る操作を間違えないようにする。
    • 単位の確認: 最終的な答えに単位 (\(\text{cm}\)) をつけるのを忘れない(問題が単位を要求している場合)。
  • 問題文の条件の正確な数式化: 例えば、「光源とスクリーンの距離」が \(a+b\) であること、「倍率が1」が \(b/a=1\) であることなど、言葉を正確に数式に置き換える。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • (1)の像の向きの妥当性:
    • 凸レンズによる実像は倒立するという一般的な知識と一致するか。
    • 簡単な光線作図(レンズの中心を通る光、光軸に平行な光など)で確認できるか。
  • (2)の焦点距離の妥当性:
    • \(f=25 \text{ cm}\) が得られた。このとき、物体距離 \(a=50 \text{ cm}\) は \(2f\) に相当する。物体が焦点距離の2倍 (\(2f\)) の位置にあるとき、像も同じく焦点距離の2倍 (\(2f\)) の位置に、物体と同じ大きさの倒立実像ができる、という既知の性質と整合するかどうかを確認する(この場合、\(a=2f, b=2f, m=1\) となり、整合性が取れている)。
    • 計算結果が物理的にありえない値(例えば負の焦点距離など)になっていないか。
  • (3)の結果の妥当性:
    • レンズを一部覆っても像が欠けないのはなぜか、その理由(物体の一点からの光がレンズの様々な部分を通る)を再確認する。
    • 明るさが暗くなるのは、通過する光の総量が減るためであり、直感的にも理解しやすい。
    • 極端な場合として、もしレンズを完全に覆ったら像はできなくなる(明るさゼロ)、ピンホールカメラの穴を大きくしたり小さくしたりした場合の明るさの変化などと比較してみる。

問題89 (電気通信大+明治大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、凸レンズと凹レンズそれぞれによる像の性質、およびそれらを組み合わせた場合の像の作られ方について問うています。レンズの公式や倍率の計算、実像と虚像の区別、像の向き(正立・倒立)の理解が重要となります。

与えられた条件
  • 物体: 高さ \(8 \text{ cm}\) のろうそく。
  • レンズL1: 焦点距離 \(10 \text{ cm}\) の凸レンズ。
  • レンズL2: 焦点距離 \(10 \text{ cm}\) の凹レンズ。
  • レンズの厚さ: 考えなくてよい。
  • (1) 凸レンズL1 の前方 \(30 \text{ cm}\) の位置にろうそくを設置。
  • (2) L1 により倍率1の実像ができる条件。
  • (3) 凹レンズL2 の前方 \(30 \text{ cm}\) の位置にろうそくを設置。
  • (4) L1 と L2 を \(30 \text{ cm}\) 離し、光軸を合わせる。L1 の前方(L2 とは反対方向)\(5 \text{ cm}\) の位置にろうそくを設置。
問われていること
  1. (1) L1 による像の位置、像の大きさ、実像か虚像か、正立か倒立か。
  2. (2) L1 により倍率1の実像ができるときの、ろうそくからL1までの距離。
  3. (3) L2 による像の位置、像の大きさ、実像か虚像か、正立か倒立か。
  4. (4) まずL1だけによる像の位置。次に、L1, L2 全体による像の位置と像の大きさ。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くためには、以下の物理法則や概念をしっかりと理解しておく必要があります。

  • レンズの公式: 物体距離を \(a\)、像距離を \(b\)、焦点距離を \(f\) とすると、\(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\) が成り立ちます。
    • 凸レンズでは \(f > 0\)、凹レンズでは \(f < 0\) として扱います。
    • 物体がレンズの前方にあるとき \(a > 0\)。
    • 実像は \(b > 0\)(レンズの後方にできる)、虚像は \(b < 0\)(レンズの前方にできる)として扱います。
  • 倍率 (\(m\)): 像の大きさが物体の大きさの何倍になるかを示し、\(m = \displaystyle\frac{|b|}{a}\) で計算されます。像の向きも考慮する場合は \(m = -\displaystyle\frac{b}{a}\) とし、\(m > 0\) なら正立、\(m < 0\) なら倒立となります。
  • 複合レンズの考え方: 複数のレンズがある場合、最初のレンズによってできる像を、次のレンズにとっての新たな物体(中間像)として考えます。

問1

思考の道筋とポイント
凸レンズL1について、物体距離と焦点距離が与えられているので、レンズの公式を用いて像距離を求めます。その後、倍率を計算し、像の大きさと種類(実像/虚像、正立/倒立)を判断します。

この設問における重要なポイント

  • 凸レンズの焦点距離は正 (\(f > 0\))。
  • 物体距離 \(a\) が焦点距離 \(f\) より大きい場合、凸レンズは倒立実像をレンズの後方に作ります。
  • 像距離 \(b\) が正なら実像、負なら虚像。
  • 倍率 \(m = -b/a\) を計算し、\(m < 0\) なら倒立、\(m > 0\) なら正立。像の大きさは \(|\text{物体の高さ}| \times |m|\)。

具体的な解説と立式
凸レンズL1 の焦点距離は \(f_1 = 10 \text{ cm}\) です。ろうそくはL1 の前方 \(a_1 = 30 \text{ cm}\) の位置に置かれます。
L1 による像の位置 \(b_1\) を求めるために、レンズの公式 \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\) を用います。各記号に添え字をつけて区別すると、次の式が立てられます。
$$\displaystyle\frac{1}{a_1} + \displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{1}{f_1}$$
像の大きさ(高さ)\(h_{\text{像1}}\) は、ろうそくの高さ \(h_{\text{物}} = 8 \text{ cm}\) と倍率 \(m_1\) を用いて \(h_{\text{像1}} = |m_1| h_{\text{物}}\) で計算できます。倍率 \(m_1\) は、像の向きも考慮すると \(m_1 = -\displaystyle\frac{b_1}{a_1}\) で与えられます。

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)
  • 倍率: \(m = -\displaystyle\frac{b}{a}\)
  • 像の高さ: \(h_{\text{像}} = |m| h_{\text{物}}\)
計算過程

1. 「具体的な解説と立式」で立てたレンズの公式に、\(a_1 = 30 \text{ cm}\) と \(f_1 = 10 \text{ cm}\) を代入して \(b_1\) を求めます。
$$\displaystyle\frac{1}{30} + \displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{1}{10}$$
2. \(\displaystyle\frac{1}{b_1}\) について整理します。\(\displaystyle\frac{1}{30}\)を右辺に移項すると、
$$\displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{1}{10} – \displaystyle\frac{1}{30}$$
3. 右辺を通分して計算します。共通の分母は \(30\) です。
$$\displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{3 \times 1}{3 \times 10} – \displaystyle\frac{1}{30} = \displaystyle\frac{3}{30} – \displaystyle\frac{1}{30}$$
$$\displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{3-1}{30} = \displaystyle\frac{2}{30}$$
約分すると、
$$\displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{1}{15}$$
4. したがって、\(b_1\) は両辺の逆数をとることで求められます。
$$b_1 = 15 \quad (\text{cm})$$
像の位置は、レンズL1 の後方 \(15 \text{ cm}\) です。

5. 次に、倍率 \(m_1\) を計算します。物体距離 \(a_1 = 30 \text{ cm}\)、像距離 \(b_1 = 15 \text{ cm}\) を用いて、
$$m_1 = -\displaystyle\frac{b_1}{a_1} = -\displaystyle\frac{15}{30} = -\displaystyle\frac{1}{2}$$
6. 像の大きさを計算します。ろうそくの高さは \(h_{\text{物}} = 8 \text{ cm}\) です。
$$h_{\text{像1}} = |m_1| \times h_{\text{物}} = \left|-\displaystyle\frac{1}{2}\right| \times 8 \text{ cm} = \displaystyle\frac{1}{2} \times 8 \text{ cm} = 4 \text{ cm}$$
像の大きさは \(4 \text{ cm}\) です。

7. 像の種類(実像か虚像か、正立か倒立か)を判断します。

  • 像距離 \(b_1 = 15 \text{ cm}\) であり、\(b_1 > 0\) なので、レンズの後方にできる実像です。
  • 倍率 \(m_1 = -1/2\) であり、\(m_1 < 0\) なので、倒立像です。
計算方法の平易な説明
  1. レンズの働きを表す「レンズの公式」 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を使います。ここで、\(a\) はろうそくからレンズまでの距離 (\(30 \text{ cm}\))、\(f\) はレンズの焦点距離 (\(10 \text{ cm}\)) です。\(b\) が求めたい像の位置(レンズからの距離)です。
  2. 公式に数字を当てはめると、\(\frac{1}{30} + \frac{1}{b} = \frac{1}{10}\) となります。
  3. この式を \(b\) について解きます。「\(\frac{1}{b}\) はいくつか」という形に直すと、\(\frac{1}{b} = \frac{1}{10} – \frac{1}{30}\) です。分数の引き算をするために通分すると、\(\frac{1}{b} = \frac{3}{30} – \frac{1}{30} = \frac{2}{30} = \frac{1}{15}\) となります。
  4. \(\frac{1}{b} = \frac{1}{15}\) なので、\(b = 15 \text{ cm}\) とわかります。これは、像がレンズの後ろ \(15 \text{ cm}\) のところにできることを意味します。
  5. 次に、像の大きさを調べます。倍率 \(m = -\frac{b}{a}\) という式を使います。\(a=30, b=15\) なので、\(m = -\frac{15}{30} = -\frac{1}{2}\) です。
  6. 像の実際の大きさは、元のろうそくの高さ \(8 \text{ cm}\) に倍率の絶対値 \(|\frac{1}{2}|\) を掛けて、\(8 \text{ cm} \times \frac{1}{2} = 4 \text{ cm}\) となります。
  7. 最後に、像が実像か虚像か、正立か倒立かです。\(b\) がプラスの値 (\(15 \text{ cm}\)) なので「実像」です。倍率 \(m\) がマイナスの値 (\(-\frac{1}{2}\)) なので「倒立像」です。
結論と吟味

L1 によって作られる像は、レンズの後方 \(15 \text{ cm}\) の位置にできる、大きさ \(4 \text{ cm}\) の倒立した実像です。
物体が凸レンズの焦点距離の2倍 (\(2f = 20 \text{ cm}\)) より遠く (\(a_1=30 \text{ cm}\)) にあるので、レンズの後方に縮小された倒立実像ができるという一般的な性質と一致しています。

解答 (1) 位置: レンズL1の後方 \(15 \text{ cm}\)、大きさ: \(4 \text{ cm}\)、実像、倒立

問2

思考の道筋とポイント
凸レンズL1によって倍率1の実像ができる条件を考えます。倍率が1であることと、実像であることから、物体距離 \(a\) と像距離 \(b\) の関係が定まります。これをレンズの公式と組み合わせて物体距離 \(a\) を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 実像で倍率が1のとき、物体距離 \(a\) と像距離 \(b\) は等しくなります (\(a=b\))。
  • また、このとき物体も像も焦点距離の2倍の位置にあります (\(a=b=2f\))。
  • レンズの公式と倍率の式を適切に使う。

具体的な解説と立式
凸レンズL1(焦点距離 \(f_1 = 10 \text{ cm}\))により、倍率1の実像ができるときの、ろうそくからL1までの距離(物体距離 \(a_1\))を求めます。
実像の倍率 \(m_1\) が1であるということは、像の大きさが物体の大きさと等しいことを意味します。倍率の定義 \(m_1 = -b_1/a_1\) において、大きさの比が1なので \(|m_1|=1\)、つまり \(|b_1/a_1|=1\)。実像 (\(b_1>0\)) で物体がレンズの前方 (\(a_1>0\)) にある場合、これは \(b_1=a_1\) を意味します。(倒立実像なので \(m_1=-1\) となりますが、\(b_1=a_1\) の関係は同じです。)
この \(b_1 = a_1\) の関係をレンズの公式 \(\displaystyle\frac{1}{a_1} + \displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{1}{f_1}\) に代入して \(a_1\) を求めるための方程式を立てます。
$$\displaystyle\frac{1}{a_1} + \displaystyle\frac{1}{a_1} = \displaystyle\frac{1}{f_1}$$

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)
  • 倍率の条件: \(b/a = 1\) (倍率1の実像)
計算過程

1. 「具体的な解説と立式」で立てた式 \(\displaystyle\frac{1}{a_1} + \displaystyle\frac{1}{a_1} = \displaystyle\frac{1}{f_1}\) を計算します。まず左辺をまとめます。
$$\displaystyle\frac{2}{a_1} = \displaystyle\frac{1}{f_1}$$
2. レンズL1 の焦点距離 \(f_1 = 10 \text{ cm}\) を代入します。
$$\displaystyle\frac{2}{a_1} = \displaystyle\frac{1}{10}$$
3. この式を \(a_1\) について解きます。両辺に \(10 a_1\) を掛けて分母を払うと、
$$2 \times 10 = a_1 \times 1$$
$$20 = a_1$$
したがって、
$$a_1 = 20 \quad (\text{cm})$$
ろうそくからL1までの距離は \(20 \text{ cm}\) です。

計算方法の平易な説明
  1. 凸レンズで、実像の大きさが元の物体の大きさとちょうど同じ(倍率1)になるのは、特別な場合です。このとき、物体からレンズまでの距離 (\(a\)) と、レンズから像までの距離 (\(b\)) は等しくなります。つまり \(a=b\) です。
  2. この \(a=b\) の関係をレンズの公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) に入れると、\(\frac{1}{a} + \frac{1}{a} = \frac{1}{f}\) となります。
  3. 左側を計算すると \(\frac{2}{a}\) なので、式は \(\frac{2}{a} = \frac{1}{f}\) となります。
  4. レンズL1 の焦点距離 \(f\) は \(10 \text{ cm}\) なので、\(\frac{2}{a} = \frac{1}{10}\) です。
  5. これを \(a\) について解くと、\(a = 2 \times 10 = 20 \text{ cm}\) となります。つまり、ろうそくをレンズの前方 \(20 \text{ cm}\) の位置に置けばよいことがわかります。
結論と吟味

L1 により倍率1の実像ができるとき、ろうそくからL1までの距離は \(20 \text{ cm}\) です。 これは焦点距離の2倍の位置 (\(2f\)) に物体を置いた場合に相当し、このとき像も反対側の \(2f\) の位置に同じ大きさの倒立実像ができるという凸レンズの性質と一致しています。

解答 (2) \(20 \text{ cm}\)

問3

思考の道筋とポイント
凹レンズL2について、物体距離と焦点距離(凹レンズなので負の値)が与えられているので、レンズの公式を用いて像距離を求めます。その後、倍率を計算し、像の大きさと種類(実像/虚像、正立/倒立)を判断します。

この設問における重要なポイント

  • 凹レンズの焦点距離は負 (\(f < 0\)) として扱う。
  • 凹レンズは通常、物体の位置に関わらず、正立した縮小虚像をレンズの前方(物体側)に作ります。
  • 像距離 \(b\) が負なら虚像、正なら実像。
  • 倍率 \(m = -b/a\) を計算し、\(m > 0\) なら正立、\(m < 0\) なら倒立。

具体的な解説と立式
凹レンズL2 の焦点距離は \(f_2 = -10 \text{ cm}\) です(凹レンズなので負の値として扱います)。 ろうそくはL2 の前方 \(a_2 = 30 \text{ cm}\) の位置に置かれます。
L2 による像の位置 \(b_2\) を求めるために、レンズの公式 \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\) を用います。
$$\displaystyle\frac{1}{a_2} + \displaystyle\frac{1}{b_2} = \displaystyle\frac{1}{f_2}$$
像の大きさ(高さ)\(h_{\text{像2}}\) は、ろうそくの高さ \(h_{\text{物}} = 8 \text{ cm}\) と倍率 \(m_2\) を用いて \(h_{\text{像2}} = |m_2| h_{\text{物}}\) で計算できます。倍率 \(m_2\) は \(m_2 = -\displaystyle\frac{b_2}{a_2}\) で与えられます。

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)
  • 倍率: \(m = -\displaystyle\frac{b}{a}\)
  • 像の高さ: \(h_{\text{像}} = |m| h_{\text{物}}\)
計算過程

1. 「具体的な解説と立式」で立てたレンズの公式に、\(a_2 = 30 \text{ cm}\) と \(f_2 = -10 \text{ cm}\) を代入して \(b_2\) を求めます。
$$\displaystyle\frac{1}{30} + \displaystyle\frac{1}{b_2} = \displaystyle\frac{1}{-10}$$
2. \(\displaystyle\frac{1}{b_2}\) について整理します。\(\displaystyle\frac{1}{30}\)を右辺に移項すると、
$$\displaystyle\frac{1}{b_2} = -\displaystyle\frac{1}{10} – \displaystyle\frac{1}{30}$$
3. 右辺を通分して計算します。共通の分母は \(30\) です。
$$\displaystyle\frac{1}{b_2} = -\displaystyle\frac{3 \times 1}{3 \times 10} – \displaystyle\frac{1}{30} = -\displaystyle\frac{3}{30} – \displaystyle\frac{1}{30}$$
$$\displaystyle\frac{1}{b_2} = \displaystyle\frac{-3-1}{30} = \displaystyle\frac{-4}{30}$$
約分すると、
$$\displaystyle\frac{1}{b_2} = -\displaystyle\frac{2}{15}$$
4. したがって、\(b_2\) は両辺の逆数をとることで求められます。
$$b_2 = -\displaystyle\frac{15}{2} = -7.5 \quad (\text{cm})$$
像の位置は、レンズL2 の前方 \(7.5 \text{ cm}\) です。

5. 次に、倍率 \(m_2\) を計算します。物体距離 \(a_2 = 30 \text{ cm}\)、像距離 \(b_2 = -7.5 \text{ cm}\) を用いて、
$$m_2 = -\displaystyle\frac{b_2}{a_2} = -\displaystyle\frac{-7.5}{30} = \displaystyle\frac{7.5}{30}$$
小数を分数に直すと \(7.5 = 15/2\) なので、
$$m_2 = \displaystyle\frac{15/2}{30} = \displaystyle\frac{15}{2 \times 30} = \displaystyle\frac{15}{60} = \displaystyle\frac{1}{4} = 0.25$$
6. 像の大きさを計算します。ろうそくの高さは \(h_{\text{物}} = 8 \text{ cm}\) です。
$$h_{\text{像2}} = |m_2| \times h_{\text{物}} = \left|\displaystyle\frac{1}{4}\right| \times 8 \text{ cm} = \displaystyle\frac{1}{4} \times 8 \text{ cm} = 2 \text{ cm}$$
像の大きさは \(2 \text{ cm}\) です。

7. 像の種類(実像か虚像か、正立か倒立か)を判断します。

  • 像距離 \(b_2 = -7.5 \text{ cm}\) であり、\(b_2 < 0\) なので、レンズの前方にできる虚像です。
  • 倍率 \(m_2 = 1/4\) であり、\(m_2 > 0\) なので、正立像です。
計算方法の平易な説明
  1. 今度は凹レンズL2です。凹レンズの焦点距離はマイナスで考え、\(f = -10 \text{ cm}\) とします。ろうそくまでの距離 \(a\) は \(30 \text{ cm}\) です。
  2. レンズの公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) に値を入れます: \(\frac{1}{30} + \frac{1}{b} = \frac{1}{-10}\)。
  3. \(\frac{1}{b}\) について解くと、\(\frac{1}{b} = -\frac{1}{10} – \frac{1}{30}\) となります。通分すると、\(\frac{1}{b} = -\frac{3}{30} – \frac{1}{30} = -\frac{4}{30} = -\frac{2}{15}\) です。
  4. これから \(b = -\frac{15}{2} = -7.5 \text{ cm}\) とわかります。\(b\) がマイナスなので、これは虚像で、レンズの前方(ろうそく側)\(7.5 \text{ cm}\) の位置にできることを意味します。
  5. 倍率 \(m = -\frac{b}{a}\) を計算すると、\(m = -\frac{-7.5}{30} = \frac{7.5}{30} = \frac{1}{4}\) です。
  6. 像の実際の大きさは、\(8 \text{ cm} \times \frac{1}{4} = 2 \text{ cm}\) となります。
  7. \(b\) がマイナスだったので「虚像」、倍率 \(m\) がプラスだったので「正立像」です。つまり、元のろうそくと同じ向きの、小さな虚像ができます。
結論と吟味

L2 によって作られる像は、レンズの前方 \(7.5 \text{ cm}\) の位置にできる、大きさ \(2 \text{ cm}\) の正立した虚像です。
凹レンズは常に正立縮小虚像を物体の前方(同じ側)に作るという一般的な性質と一致しています。

解答 (3) 位置: レンズL2の前方 \(7.5 \text{ cm}\)、大きさ: \(2 \text{ cm}\)、虚像、正立

問4

思考の道筋とポイント
2枚のレンズを組み合わせた複合レンズ系です。まず、1枚目のレンズL1による像の位置を求めます。次に、L1による像を2枚目のレンズL2にとっての「物体」(中間像)として扱い、L2による最終的な像の位置と大きさを求めます。

この設問における重要なポイント

  • 複合レンズでは、前のレンズが作る像が、次のレンズの物体となる。
  • 物体距離、像距離、レンズ間の距離を正確に把握し、符号に注意して計算する。
    • L1による像がL2の前方にあれば、L2にとっての物体距離は正。
    • L1による像がL2の後方にあれば、L2にとっての物体距離は負(虚光源)。
  • 総合倍率は、各レンズの倍率の積で与えられる (\(m_{\text{全体}} = m_1 \times m_2\))。

具体的な解説と立式
まず、凸レンズL1(焦点距離 \(f_1 = 10 \text{ cm}\))だけによる像(中間像)の位置を求めます。ろうそくはL1の前方 \(a_1 = 5 \text{ cm}\) の位置に置かれます。このときの像距離を \(b_1\) とすると、レンズの公式は次のようになります。
$$\displaystyle\frac{1}{a_1} + \displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{1}{f_1}$$
次に、L1とL2全体による像の位置と大きさを求めます。L1とL2は \(d = 30 \text{ cm}\) 離れており、L2は凹レンズ(焦点距離 \(f_2 = -10 \text{ cm}\))です。
L1によってできた中間像が、L2にとっての物体となります。L2からこの中間像までの距離を \(a_2\) とし、L2による最終的な像の位置を \(b_2\)(L2からの距離)とすると、レンズの公式は次のようになります。
$$\displaystyle\frac{1}{a_2} + \displaystyle\frac{1}{b_2} = \displaystyle\frac{1}{f_2}$$
全体の像の大きさは、ろうそくの高さ \(h_{\text{物}} = 8 \text{ cm}\) と、L1による倍率 \(m_1 = -b_1/a_1\)、L2による倍率 \(m_2 = -b_2/a_2\) を用いて、最終的な像の高さ \(h_{\text{最終像}} = |m_1 \times m_2| h_{\text{物}}\) で計算できます。

使用した物理公式

  • レンズの公式: \(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)
  • 倍率: \(m = -\displaystyle\frac{b}{a}\)
  • 総合倍率: \(m_{\text{全体}} = m_1 \times m_2\)
  • 像の高さ: \(h_{\text{像}} = |m_{\text{全体}}| h_{\text{物}}\)
計算過程

L1だけによる像の位置:
1. 「具体的な解説と立式」で立てたL1についてのレンズの公式に、\(a_1 = 5 \text{ cm}\) と \(f_1 = 10 \text{ cm}\) を代入します。
$$\displaystyle\frac{1}{5} + \displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{1}{10}$$
2. \(\displaystyle\frac{1}{b_1}\) について整理します。\(\displaystyle\frac{1}{5}\)を右辺に移項すると、
$$\displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{1}{10} – \displaystyle\frac{1}{5}$$
3. 右辺を通分して計算します。共通の分母は \(10\) です。
$$\displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{1}{10} – \displaystyle\frac{2 \times 1}{2 \times 5} = \displaystyle\frac{1}{10} – \displaystyle\frac{2}{10}$$
$$\displaystyle\frac{1}{b_1} = \displaystyle\frac{1-2}{10} = -\displaystyle\frac{1}{10}$$
4. したがって、\(b_1\) は両辺の逆数をとることで求められます。
$$b_1 = -10 \quad (\text{cm})$$
L1だけによる像は、L1の前方 \(10 \text{ cm}\) の位置にできる虚像です。(このとき、倍率 \(m_1 = -b_1/a_1 = -(-10)/5 = 2\) なので、正立2倍の虚像です。)

L1, L2全体による像の位置と像の大きさ:
1. L1による中間像はL1の前方 \(10 \text{ cm}\) の位置にあります。L1とL2は \(d = 30 \text{ cm}\) 離れており、L2はL1の右側にあります(問題文の「L1の前方(L2とは反対方向)\(5 \text{cm}\)の位置にろうそく」という記述と、一般的なレンズの配置からL1が左、L2が右と解釈)。
L1の前方 \(10 \text{ cm}\) ということは、L1の左側 \(10 \text{ cm}\) の点です。
L2から見ると、この中間像は、L2からL1までの距離 \(30 \text{ cm}\) に加え、さらにL1から左へ \(10 \text{ cm}\) の位置にあります。
したがって、L2にとっての物体距離 \(a_2\) は、これらの和となります。中間像はL2の前方(左側)にあるため、\(a_2\) は正の値です。
$$a_2 = d + |b_1| = 30 \text{ cm} + 10 \text{ cm} = 40 \text{ cm}$$
(模範解答の図もこの解釈に一致しています。)

2. 凹レンズL2(焦点距離 \(f_2 = -10 \text{ cm}\))について、物体距離 \(a_2 = 40 \text{ cm}\) として、最終的な像の位置 \(b_2\) をレンズの公式で求めます。
$$\displaystyle\frac{1}{a_2} + \displaystyle\frac{1}{b_2} = \displaystyle\frac{1}{f_2}$$
$$\displaystyle\frac{1}{40} + \displaystyle\frac{1}{b_2} = \displaystyle\frac{1}{-10}$$
3. \(\displaystyle\frac{1}{b_2}\) について整理します。\(\displaystyle\frac{1}{40}\)を右辺に移項すると、
$$\displaystyle\frac{1}{b_2} = -\displaystyle\frac{1}{10} – \displaystyle\frac{1}{40}$$
4. 右辺を通分して計算します。共通の分母は \(40\) です。
$$\displaystyle\frac{1}{b_2} = -\displaystyle\frac{4 \times 1}{4 \times 10} – \displaystyle\frac{1}{40} = -\displaystyle\frac{4}{40} – \displaystyle\frac{1}{40}$$
$$\displaystyle\frac{1}{b_2} = \displaystyle\frac{-4-1}{40} = -\displaystyle\frac{5}{40}$$
約分すると、
$$\displaystyle\frac{1}{b_2} = -\displaystyle\frac{1}{8}$$
5. したがって、\(b_2\) は両辺の逆数をとることで求められます。
$$b_2 = -8 \quad (\text{cm})$$
最終的な像は、L2の前方 \(8 \text{ cm}\) の位置にできる虚像です。

6. 次に、全体の像の大きさを求めます。
まず、L1による倍率 \(m_1\) を計算します。
$$m_1 = -\displaystyle\frac{b_1}{a_1} = -\displaystyle\frac{-10}{5} = 2$$
次に、L2による倍率 \(m_2\) を計算します。
$$m_2 = -\displaystyle\frac{b_2}{a_2} = -\displaystyle\frac{-8}{40} = \displaystyle\frac{8}{40} = \displaystyle\frac{1}{5}$$
全体の倍率 \(m_{\text{全体}}\) は、各レンズの倍率の積で与えられます。
$$m_{\text{全体}} = m_1 \times m_2 = 2 \times \displaystyle\frac{1}{5} = \displaystyle\frac{2}{5}$$
ろうそくの高さは \(h_{\text{物}} = 8 \text{ cm}\) なので、最終的な像の大きさ \(h_{\text{最終像}}\) は、
$$h_{\text{最終像}} = |m_{\text{全体}}| \times h_{\text{物}} = \left|\displaystyle\frac{2}{5}\right| \times 8 \text{ cm} = \displaystyle\frac{2}{5} \times 8 \text{ cm} = \displaystyle\frac{16}{5} \text{ cm} = 3.2 \text{ cm}$$
最終的な像の大きさは \(3.2 \text{ cm}\) です。
また、全体の倍率 \(m_{\text{全体}} = 2/5\) は正なので、最終的な像は元の物体に対して正立像です。

計算方法の平易な説明
  1. ステップ1: L1だけの像
    • ろうそくはL1(凸レンズ、焦点距離 \(10 \text{ cm}\))の前 \(5 \text{ cm}\) にあります。これは焦点の内側です。
    • レンズの公式 \(\frac{1}{5} + \frac{1}{b_1} = \frac{1}{10}\) を解くと、\(b_1 = -10 \text{ cm}\) となります。
    • これは、L1の前方 \(10 \text{ cm}\) の位置に虚像ができることを意味します。
  2. ステップ2: L1とL2全体の像
    • L1が作った虚像が、今度はL2(凹レンズ、焦点距離 \(-10 \text{ cm}\))にとっての「物体」になります。
    • この「物体」はL1の前方 \(10 \text{ cm}\) にあります。L1とL2の間は \(30 \text{ cm}\) なので、L2から見ると、この「物体」はL2の前方 \(10 \text{ cm} + 30 \text{ cm} = 40 \text{ cm}\) の位置にあることになります。なので、L2にとっての物体距離 \(a_2\) は \(40 \text{ cm}\) です。
    • L2についてレンズの公式 \(\frac{1}{40} + \frac{1}{b_2} = \frac{1}{-10}\) を解くと、\(b_2 = -8 \text{ cm}\) となります。
    • これは、最終的な像がL2の前方 \(8 \text{ cm}\) の位置にできる虚像であることを意味します。
  3. ステップ3: 最終的な像の大きさ
    • L1による倍率は \(m_1 = -b_1/a_1 = -(-10)/5 = 2\) 倍。
    • L2による倍率は \(m_2 = -b_2/a_2 = -(-8)/40 = 8/40 = 1/5\) 倍。
    • 全体の倍率は、これらの掛け算で \(m_{\text{全体}} = m_1 \times m_2 = 2 \times \frac{1}{5} = \frac{2}{5}\) 倍。
    • 元のろうそくの高さが \(8 \text{ cm}\) なので、最終的な像の大きさは \(8 \text{ cm} \times \frac{2}{5} = \frac{16}{5} \text{ cm} = 3.2 \text{ cm}\) です。
結論と吟味

L1だけによる像は、L1の前方 \(10 \text{ cm}\) の位置にできる虚像です。
L1、L2全体による像は、L2の前方 \(8 \text{ cm}\) の位置にできる虚像で、その大きさは \(3.2 \text{ cm}\) です。
L1が作る正立の拡大虚像を、L2がさらに縮小して正立の虚像を作っているという流れになります。全体の倍率が \(2/5\) で正なので、最終像は元のろうそくに対して正立です。

解答 (4) L1だけによる像の位置: L1の前方 \(10 \text{ cm}\)。L1, L2全体による像の位置: L2の前方 \(8 \text{ cm}\)、像の大きさ: \(3.2 \text{ cm}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • レンズの公式 (\(\displaystyle\frac{1}{a} + \displaystyle\frac{1}{b} = \displaystyle\frac{1}{f}\)): あらゆる単レンズの問題の基本。物体距離 \(a\)、像距離 \(b\)、焦点距離 \(f\) の関係を正しく理解し、特に凸レンズ (\(f>0\)) と凹レンズ (\(f<0\)) での焦点距離の符号の扱いに注意する。
  • 倍率 (\(m = -b/a\)): 像の大きさと向きを決定する。\(|m|\)が大きさの比、\(m\)の符号が向き(正なら正立、負なら倒立)を表す。
  • 実像と虚像の区別: 像距離\(b\)の符号で判断 (\(b>0\)なら実像、\(b<0\)なら虚像)。実像はスクリーンに映るが、虚像はスクリーンに映らない。
  • 複合レンズの処理: 最初のレンズによる像を、次のレンズの物体(中間像)と見なして順に計算する。中間像の位置に応じて、次のレンズへの物体距離の符号が変わる可能性に注意(本問ではL1の虚像がL2の実物体として扱えるケース)。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • 望遠鏡や顕微鏡など、複数のレンズを組み合わせた光学機器の原理や総合倍率の計算。
    • 人間の眼のモデル(水晶体がレンズ、網膜がスクリーン)と視力矯正(メガネやコンタクトレンズ)の問題。
    • カメラのピント合わせや絞り、焦点深度など、より実践的な光学現象の理解。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. レンズの種類と焦点距離の符号: 凸レンズなら\(f>0\)、凹レンズなら\(f<0\)を最初に確定させる。
    2. 物体の位置と焦点距離の関係:
      • 凸レンズ: 物体が\(f\)より遠いか近いか(\(a>f, a=f, a<f\))、\(2f\)より遠いか近いか(\(a>2f, a=2f, f<a<2f\))で像の性質(実像/虚像、倒立/正立、拡大/縮小、位置)が大きく変わる。
      • 凹レンズ: 通常、正立縮小虚像。
    3. 複合レンズの場合の「中間像」: 1枚目のレンズが作る像の位置を正確に把握し、それが2枚目のレンズにとってどのような物体(実物体か虚物体か、物体距離はいくつか)になるかを慎重に判断する。レンズ間の距離が重要。
    4. 問われている量: 像の位置か、大きさか、種類か、向きか。それぞれどの公式や符号から判断できるかを整理しておく。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
    • 符号の取り扱いを間違うと全ての結果が狂うので、レンズの公式や倍率の式における各量の符号の定義(\(a, b, f, m\))を正確に運用する。
    • 複合レンズでは、図を丁寧に描き、各レンズの位置関係、中間像の位置、最終像の位置を視覚的に追いながら計算を進めると間違いが減る。
    • 特に中間像が次のレンズの後方(光の進行方向)にできる場合(虚物体)、その物体距離は負として扱う必要があるが、本問(4)ではL1による虚像がL2の前方に実物体として扱える比較的素直なケース。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 焦点距離の符号ミス: 凹レンズの焦点距離を正として計算してしまう。
    • 対策: 問題文で「凹レンズ」とあれば、焦点距離は必ず負の値で扱うことを徹底する。
  • レンズの公式の逆数計算ミス: \(\frac{1}{b} = \text{値}\) から \(b\) を求める際に、単に値をひっくり返すのを忘れたり、計算を間違えたりする。
    • 対策: 丁寧に途中式を書き、最後に必ず逆数を取ることを意識する。
  • 倍率の式の符号と向きの解釈ミス: \(m=-b/a\) のマイナスを忘れたり、その結果の正負と正立・倒立の関係を誤解したりする。
    • 対策: 公式を正確に覚え、\(m>0\)で正立、\(m<0\)で倒立と機械的に判断できるようにする。あるいは、大きさは\(|b/a|\)で計算し、向きはレンズの種類と物体の位置関係から別途判断する習慣をつける。
  • 複合レンズでの物体距離の誤認: 1枚目の像の位置をそのまま2枚目の物体距離としてしまう(レンズ間距離を考慮しない)。
    • 対策: 必ず図を描き、2枚目のレンズから見た1枚目の像(中間像)までの距離を正しく計算する。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • (1) ろうそくから出た光が凸レンズで集められ、反対側にひっくり返った実像ができる様子。
    • (2) ろうそくを凸レンズの焦点距離の2倍の位置に置くと、レンズの反対側の同じ距離に同じ大きさのさかさまの像ができるという特別な配置。
    • (3) ろうそくから出た光が凹レンズで広げられ、実際には集まらないが、レンズの手前に小さく同じ向きの虚像が見える様子。
    • (4) L1(凸、物体が焦点内)がまず拡大された正立虚像を作り、その虚像をL2(凹)がさらに縮小して正立虚像にするというリレー。
  • 図示の有効性:
    • レンズの問題では、光軸、レンズの位置、焦点、物体、像を模式的に描くことが非常に有効。
    • 代表的な光線(①中心を通る光、②光軸に平行な光、③焦点を通る光)を作図することで、像の位置や種類(実像/虚像、正立/倒立)を視覚的に確認でき、計算結果の検証にもなる。
    • 複合レンズの場合、各レンズによる像形成のステップを別々の図で描いたり、一枚の図に重ねて描いたりすることで、中間像の役割が明確になる。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • レンズの公式: 物体とレンズと像の位置関係を定量的に結びつける唯一の基本法則(薄レンズ近似の範囲で)。位置を問われたらまずこの公式を想起する。
  • 倍率の式: 像の「大きさ」や「向き」について問われた場合に用いる。レンズの公式とセットで使われることが多い。
  • 符号のルール: これらの公式を正しく機能させるための約束事。凸/凹、実/虚、物体の前後、像の前後などに応じて各パラメータの符号を使い分けることで、一つの公式で多様な状況に対応できる。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 単レンズの場合 (問1,2,3):
    1. レンズの種類を確認し、焦点距離 \(f\) の符号を決定する。
    2. 物体距離 \(a\) を設定(または求める)。
    3. レンズの公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) を用いて像距離 \(b\) を計算。
    4. \(b\) の符号から実像/虚像を判断。
    5. 倍率 \(m = -b/a\) を計算。
    6. \(m\) の符号から正立/倒立を判断。\(|m|\) から像の大きさを計算。
  2. 複合レンズの場合 (問4):
    1. 1枚目のレンズ(L1)について、上記単レンズの手順で像(中間像)の位置 \(b_1\) と倍率 \(m_1\) を求める。
    2. L1とL2の位置関係(距離 \(d\))から、L1による中間像がL2にとってどの位置に物体として見えるか(L2への物体距離 \(a_2\))を計算する。符号に注意。
      • \(a_2 = d – b_1\) (L1の実像がL2の前にある場合など。状況に応じて適切に計算)
    3. 2枚目のレンズ(L2)について、\(a_2\) と L2の焦点距離 \(f_2\) を用いて、単レンズの手順で最終像の位置 \(b_2\) と倍率 \(m_2\) を求める。
    4. 全体の倍率は \(m_{\text{全体}} = m_1 \times m_2\)。最終的な像の大きさは \(h_{\text{物}} \times |m_{\text{全体}}|\)。最終的な像の向きは \(m_{\text{全体}}\) の符号で判断。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 符号の確認の徹底: 焦点距離 \(f\)、像距離 \(b\) の符号は特に間違えやすい。凸レンズは \(f>0\)、凹レンズは \(f<0\)。実像は \(b>0\)、虚像は \(b<0\)。計算結果の符号が物理的状況と合っているか常に意識する。
  • 分数の計算: レンズの公式は逆数の和なので、通分や最後の逆数計算を正確に行う。
    • 例: \(\frac{1}{b} = \frac{A}{B}\) なら \(b = \frac{B}{A}\)。
  • 単位の一貫性: 距離の単位 (cm, m) が混在していないか確認する(本問はcmで統一)。
  • 途中計算のメモ: 特に複合レンズでは、各ステップの \(a, b, f, m\) の値をきちんと記録しながら進める。
  • 概算や作図での検算: 大まかな像の位置や大きさが、作図やレンズの性質から予測される範囲と大きくずれていないか確認する。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な状況との照らし合わせ:
    • (1) \(a_1=30\text{cm}, f_1=10\text{cm}\)。\(a_1 > 2f_1\) なので、縮小された倒立実像が \(f_1 < b_1 < 2f_1\) の範囲にできるはず。計算結果 \(b_1=15\text{cm}\) (\(f_1 < 15\text{cm} < 2f_1\))、倍率 \(-1/2\) (縮小・倒立) はこれと整合する。
    • (2) 倍率1の実像は \(a=b=2f\)。計算結果 \(a=20\text{cm}\) は \(2f_1 = 2 \times 10 = 20\text{cm}\) と一致。
    • (3) 凹レンズ (\(f_2=-10\text{cm}\))。物体距離 \(a_2=30\text{cm}\)。必ず正立縮小虚像が \(|b_2|<|f_2|\) かつ \(|b_2|<a_2\) の範囲(レンズと焦点の間、かつレンズと物体の間)にできる。計算結果 \(b_2=-7.5\text{cm}\)、倍率 \(1/4\) (縮小・正立) はこれと整合する。
    • (4) L1: \(a_1=5\text{cm} < f_1=10\text{cm}\) (焦点の内側)。正立拡大虚像ができるはず。計算結果 \(b_1=-10\text{cm}\)、\(m_1=2\) は整合。
      L2: この虚像を物体 (\(a_2=40\text{cm}\)) として凹レンズで見る。正立縮小虚像ができるはず。計算結果 \(b_2=-8\text{cm}\)、\(m_2=1/5\)。全体の像は正立で、大きさは \(8 \times 2 \times (1/5) = 3.2\text{cm}\) となり、計算と合う。
  • 数値のオーダー: 極端に大きすぎる、または小さすぎる値が出ていないか。
  • 作図との比較: 大まかな光線作図を行い、計算結果と矛盾がないか確認する。

問題90 (東京理科大+センター試験)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、2つの同位相音源から出る音波が干渉し、特定の場所で音が強め合ったり弱め合ったりする現象を扱っています。また、観測者が移動することによって、その強め合い・弱め合いの聞こえ方がどのように変化するかについても考察します。

与えられた条件
  • 2つの音源SおよびTが異なる位置にある。観測者はSとTを結ぶ直線上にいる。
  • 音源S、Tから出る音の振動数: \(f = 200 \text{ Hz}\)
  • 音速: \(V = 340 \text{ m/s}\)
  • 音源S、Tは疎密で同位相の音を左右に送り出す。
  • 音は減衰しない。
  • (b) 音源Sと音源Tとの間隔: \(L = 5.6 \text{ m}\)
  • (b) 観測者がSに向かって歩く速さ: \(v_{\text{観測者}} = 1.7 \text{ m/s}\)
問われていること
  1. (a) 音源SおよびTの右側にいた観測者が音が強め合っていると観測できた場合、2つの音源の最短距離 (1)。
  2. (b)
    • SとTの間に観測者がいて音が強め合っている場合、そのような位置の間隔 (2)。
    • 観測者がTに最も近い強め合う位置にいた場合の、Tまでの距離 (3)。
    • 観測者がSに向かって \(1.7 \text{ m/s}\) で歩くとき、1秒あたりに音が強め合っていると観測する回数 (4)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くためには、以下の物理法則や概念をしっかりと理解しておく必要があります。

  • 波の基本式: 音速 \(V\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(V = f\lambda\) の関係があります。
  • 音波の干渉: 2つの波が重なり合うとき、位相が一致する点では振幅が大きくなり(強め合い)、位相が逆になる点では振幅が小さくなります(弱め合い)。
  • 同位相音源からの波の干渉条件:
    • 強め合い: 2つの音源からの経路差が波長の整数倍になるとき。経路差 \(= m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)\)
    • 弱め合い: 経路差が波長の半整数倍 (\(m+1/2\))\(\lambda\) になるとき。経路差 \(= (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)\)
  • 定常波(参考): 特定の条件下では、逆向きに進む同じ波長の波が重なり合って定常波ができます。強め合う点は定常波の腹に、弱め合う点は節に相当します。

まず、問題全体で共通して使用する音の波長 \(\lambda\) を計算しておきましょう。
振動数 \(f = 200 \text{ Hz}\)、音速 \(V = 340 \text{ m/s}\) なので、
\(\lambda = \displaystyle\frac{V}{f} = \displaystyle\frac{340 \text{ m/s}}{200 \text{ Hz}} = 1.7 \text{ m}\)

問 (a)

思考の道筋とポイント
音源S、Tの右側にいる観測者が音の強め合いを観測する状況を考えます。S、Tが同位相であるため、観測点までの経路差が波長の整数倍であれば強め合います。2つの音源の距離が「最短で」という条件から、この整数 \(m\) の値を適切に選ぶ必要があります。

この設問における重要なポイント

  • 観測者が2つの音源を結ぶ直線の延長線上にいる場合、2つの音源からの経路差は、音源間の距離そのものになります。
  • 同位相の音源が強め合う条件は、経路差 \(= m\lambda\) (\(m\) は0以上の整数)。
  • 「異なる位置にある2つの音源」という条件から、音源間距離は0より大きい必要があります。

具体的な解説と立式
音源SとTは同位相です。SとTの間の距離を \(d\) とします。
観測者がSとTの右側にいるとし、S、T、観測者がこの順に一直線上に並んでいると考えます。
観測点Pにおいて、Sからの距離を \(L_S\)、Tからの距離を \(L_T\) とすると、観測点はSとTの右側にあるため、SからTまでの距離を \(d\) とすれば、\(L_S = d + L_T\) となります。
このとき、2つの音源から観測点Pまでの経路差 \(\Delta L\) は、
$$\Delta L = L_S – L_T = (d + L_T) – L_T = d$$
となります。
音が強め合う条件は、この経路差 \(d\) が波長の整数倍 (\(m = 0, 1, 2, \dots\)) になるときです。
$$d = m\lambda$$
音源SとTは「異なる位置にある」ため、\(d > 0\) でなければなりません。したがって、\(m\) は \(1, 2, 3, \dots\) のいずれかの正の整数となります(\(m=0\) の場合は \(d=0\) となり、SとTが同じ位置にあることになってしまうため不適です)。
2つの音源の距離 \(d\) が「最短で」強め合うのは、\(m\) が最小の正の整数、すなわち \(m=1\) のときです。
したがって、求める最短距離は、
$$d_{\text{最短}} = 1 \cdot \lambda$$
この式を解くことで、具体的な距離が求められます。

使用した物理公式

  • 波の基本式: \(V = f\lambda\)
  • 同位相音源の強め合いの条件: 経路差 \(\Delta L = m\lambda \quad (m=0, 1, 2, \dots)\)
計算過程

1. まず、音の波長 \(\lambda\) を計算します(導入部で計算済み)。
$$\lambda = \displaystyle\frac{V}{f} = \displaystyle\frac{340 \text{ m/s}}{200 \text{ Hz}} = 1.7 \text{ m}$$
2. 「具体的な解説と立式」で導いたように、観測者がSとTの右側で音が強め合うための2つの音源の最短距離 \(d_{\text{最短}}\) は \(1 \cdot \lambda\) です。
$$d_{\text{最短}} = 1 \times 1.7 \text{ m}$$
3. したがって、
$$d_{\text{最短}} = 1.7 \text{ m}$$

計算方法の平易な説明
  1. まず、音の「波の1つ分の長さ」(波長)を計算します。音の速さ (\(340 \text{ m/s}\)) を音の高さ(振動数 \(200 \text{ Hz}\))で割ると、波長は \(1.7 \text{ m}\) になります。
  2. 二つのスピーカーSとTから同じタイミングで音が出ていて(同位相)、あなたがSとTの右側に並んで立っているとします。SとTからの音が強め合って大きく聞こえるのは、Sからの距離とTからの距離の「差」が、ちょうど波長の \(0\) 倍、\(1\) 倍、\(2\) 倍、…になるときです。
  3. あなたがSとTを結ぶ直線の延長線上にいる場合、この「距離の差」は、SとTの間の距離そのものになります。
  4. SとTは違う場所にあるので、間の距離は \(0\) ではありません。なので、「距離の差」が波長の \(1\) 倍になるときが、SとTの間の距離が一番短い場合で音が強め合うときです。
  5. したがって、SとTの最短距離は、波長と同じ \(1.7 \text{ m}\) になります。
結論と吟味

音源SおよびTの右側にいた観測者が音が強め合っていると観測できる場合、2つの音源の距離は最短で \(1.7 \text{ m}\) です。このとき、2つの音源からの経路差がちょうど1波長分となり、強め合いの条件を満たします。

解答 (1) \(1.7\)

問 (b)

音源Sと音源Tとの間隔は \(L = 5.6 \text{ m}\) です。波長は \(\lambda = 1.7 \text{ m}\) です。

(2) SとTの間にいた観測者が音が強め合っていると観測できたとする。そのような位置は間隔 (2) [m] をなしていくつかあるが、

思考の道筋とポイント
観測者がSとTの間にいる場合、Sからの距離とTからの距離の和はSとTの間隔 \(L\) になります。強め合う条件である経路差が \(m\lambda\) となる位置を特定し、それらの位置がどのような間隔で並んでいるかを調べます。

この設問における重要なポイント

  • 観測者が2つの音源S、Tの間にいるときの経路差の表現。
  • 強め合いの条件 \(\Delta L = m\lambda\) を適用して、強め合う点の位置を求める。
  • 隣り合う強め合う点の間隔は、波長の半分 (\(\lambda/2\)) になる。これは定常波の腹の間隔と同じ。

具体的な解説と立式
音源SとTの間の距離を \(L = 5.6 \text{ m}\) とします。観測者がSとTの間にいるとし、音源Sからの距離を \(x\) とします。すると、音源Tからの距離は \(L-x\) となります(ただし、\(0 \le x \le L\))。
観測点における2つの音源からの経路差 \(\Delta L\) は、
$$\Delta L = |x – (L-x)| = |2x – L|$$
音が強め合う条件は、この経路差が波長の整数倍 (\(m = 0, 1, 2, \dots\)) になるときなので、
$$|2x – L| = m\lambda$$
この式を満たす \(x\) の値が強め合う点の位置です。
この関係は、\(2x – L = m\lambda\) または \(2x – L = -m\lambda\) と書き換えられます。
すなわち、\(2x = L + m\lambda\) または \(2x = L – m\lambda\)。
したがって、強め合う点の位置 \(x\) は、
$$x = \displaystyle\frac{L \pm m\lambda}{2}$$
で与えられます。
隣り合う強め合う点の位置を考えるとき、例えば \(x_m = \displaystyle\frac{L + m\lambda}{2}\) と \(x_{m+1} = \displaystyle\frac{L + (m+1)\lambda}{2}\) の差(絶対値)を考えると、
$$|x_{m+1} – x_m| = \left|\displaystyle\frac{L + (m+1)\lambda}{2} – \displaystyle\frac{L + m\lambda}{2}\right| = \left|\displaystyle\frac{(L + m\lambda + \lambda) – (L + m\lambda)}{2}\right| = \left|\displaystyle\frac{\lambda}{2}\right| = \displaystyle\frac{\lambda}{2}$$
同様に、\(x’_m = \displaystyle\frac{L – m\lambda}{2}\) と \(x’_{m+1} = \displaystyle\frac{L – (m+1)\lambda}{2}\) の差も \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) となります。
したがって、音が強め合っている位置の間隔は \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) です。

使用した物理公式

  • 同位相音源の強め合いの条件: 経路差 \(\Delta L = m\lambda \quad (m=0, 1, 2, \dots)\)
計算過程

1. 「具体的な解説と立式」で示したように、音が強め合っている位置の間隔は \(\displaystyle\frac{\lambda}{2}\) です。
2. 波長 \(\lambda = 1.7 \text{ m}\) を代入します。
$$\text{間隔} = \displaystyle\frac{1.7 \text{ m}}{2} = 0.85 \text{ m}$$

計算方法の平易な説明

SとTの間で音が強め合う場所は、1か所だけではありません。これらの「音が大きく聞こえる場所」は、SとTの間に等間隔でいくつも並びます。その間隔は、実は音の波長のちょうど半分 (\(\lambda/2\)) になります。
波長は (a) で \(1.7 \text{ m}\) と計算したので、その半分は \(1.7 \text{ m} \div 2 = 0.85 \text{ m}\) です。これが強め合う場所どうしの間隔になります。

結論と吟味

音が強め合っている位置は、間隔 \(0.85 \text{ m}\) をなしていくつかあります。これは、2つの同位相音源の間にできる定常波の腹の間隔に相当します。

解答 (2) \(0.85\)

(3) 観測者がTに最も近い位置にいたとすれば、Tまでの距離は (3) [m] である。

思考の道筋とポイント
強め合いの条件式 \(|L – 2x_T| = m\lambda\) (ここで \(x_T\) はTからの距離)を満たす \(x_T\) のうち、\(0 < x_T < L\) の範囲で最も小さい正の値を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 強め合いの条件式を正しく使うこと。
  • \(m\) に具体的な整数値を代入し、条件を満たす \(x_T\) を列挙して最小値を見つける。
  • \(x_T\) がSとTの間 (\(0 < x_T < L\)) にあるという制約条件を考慮する。

具体的な解説と立式
音源SとTの間隔は \(L = 5.6 \text{ m}\)、波長は \(\lambda = 1.7 \text{ m}\) です。観測者がTからの距離 \(x_T\) の位置にいるとき、音が強め合う条件は、
$$|L – 2x_T| = m\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \dots)$$
です。この式を満たし、かつ \(0 < x_T < L\) であるような \(x_T\) の中で、最も小さい正の値を求めることが目的です。
値を代入すると、
$$|5.6 – 2x_T| = 1.7m$$
この方程式を各 \(m\) の値について解き、条件を満たす \(x_T\) を探します。

使用した物理公式

  • 同位相音源の強め合いの条件: 経路差 \(\Delta L = m\lambda \quad (m=0, 1, 2, \dots)\)
計算過程

方程式 \(|5.6 – 2x_T| = 1.7m\) を \(m=0, 1, 2, \dots\) について解き、\(0 < x_T < 5.6\) を満たす最小の \(x_T\) を求めます。
1. \(m=0\) の場合:
$$|5.6 – 2x_T| = 0$$
このとき \(5.6 – 2x_T = 0\)。
これを解くと \(2x_T = 5.6\)、よって \(x_T = \displaystyle\frac{5.6}{2} = 2.8 \text{ m}\)。
この値は \(0 < 2.8 < 5.6\) を満たします。

2. \(m=1\) の場合:
$$|5.6 – 2x_T| = 1.7 \times 1 = 1.7$$
これより \(5.6 – 2x_T = 1.7\) または \(5.6 – 2x_T = -1.7\)。

  • \(5.6 – 2x_T = 1.7\) を解くと、\(2x_T = 5.6 – 1.7 = 3.9\)、よって \(x_T = \displaystyle\frac{3.9}{2} = 1.95 \text{ m}\)。これは \(0 < 1.95 < 5.6\) を満たします。
  • \(5.6 – 2x_T = -1.7\) を解くと、\(2x_T = 5.6 + 1.7 = 7.3\)、よって \(x_T = \displaystyle\frac{7.3}{2} = 3.65 \text{ m}\)。これは \(0 < 3.65 < 5.6\) を満たします。

3. \(m=2\) の場合:
$$|5.6 – 2x_T| = 1.7 \times 2 = 3.4$$
これより \(5.6 – 2x_T = 3.4\) または \(5.6 – 2x_T = -3.4\)。

  • \(5.6 – 2x_T = 3.4\) を解くと、\(2x_T = 5.6 – 3.4 = 2.2\)、よって \(x_T = \displaystyle\frac{2.2}{2} = 1.1 \text{ m}\)。これは \(0 < 1.1 < 5.6\) を満たします。
  • \(5.6 – 2x_T = -3.4\) を解くと、\(2x_T = 5.6 + 3.4 = 9.0\)、よって \(x_T = \displaystyle\frac{9.0}{2} = 4.5 \text{ m}\)。これは \(0 < 4.5 < 5.6\) を満たします。

4. \(m=3\) の場合:
$$|5.6 – 2x_T| = 1.7 \times 3 = 5.1$$
これより \(5.6 – 2x_T = 5.1\) または \(5.6 – 2x_T = -5.1\)。

  • \(5.6 – 2x_T = 5.1\) を解くと、\(2x_T = 5.6 – 5.1 = 0.5\)、よって \(x_T = \displaystyle\frac{0.5}{2} = 0.25 \text{ m}\)。これは \(0 < 0.25 < 5.6\) を満たします。
  • \(5.6 – 2x_T = -5.1\) を解くと、\(2x_T = 5.6 + 5.1 = 10.7\)、よって \(x_T = \displaystyle\frac{10.7}{2} = 5.35 \text{ m}\)。これは \(0 < 5.35 < 5.6\) を満たします。

5. \(m=4\) の場合:
$$|5.6 – 2x_T| = 1.7 \times 4 = 6.8$$
これより \(5.6 – 2x_T = 6.8\) または \(5.6 – 2x_T = -6.8\)。

  • \(5.6 – 2x_T = 6.8\) を解くと、\(2x_T = 5.6 – 6.8 = -1.2\)、よって \(x_T = -0.6 \text{ m}\)。これは \(x_T > 0\) を満たさないため不適。
  • \(5.6 – 2x_T = -6.8\) を解くと、\(2x_T = 5.6 + 6.8 = 12.4\)、よって \(x_T = 6.2 \text{ m}\)。これは \(x_T < 5.6\) を満たさないため不適。

SとTの間 (\(0 < x_T < 5.6\)) で強め合うTからの距離 \(x_T\) は、小さい順に \(0.25 \text{ m}, 1.1 \text{ m}, 1.95 \text{ m}, 2.8 \text{ m}, 3.65 \text{ m}, 4.5 \text{ m}, 5.35 \text{ m}\) です。
この中で、Tに最も近い(つまり \(x_T\) が最も小さい正の値)のは \(0.25 \text{ m}\) です。

計算方法の平易な説明

SとTの間で音が強め合う場所は、(2)で \(0.85 \text{ m}\) ごとにあることがわかりました。SとTの間隔は \(5.6 \text{ m}\) です。
Tから一番近い「強め合う場所」を見つけるには、TのすぐそばからSに向かって \(0.85 \text{ m}\) ごとに点を打っていくイメージです。
ただし、SとTの中心(Tから \(5.6 \text{ m} / 2 = 2.8 \text{ m}\) の位置)では必ず強め合います(経路差が0なので)。
ここからTに向かって \(0.85 \text{ m}\) ごとに強め合う場所を考えると、

  • \(2.8 \text{ m}\) (中心)
  • \(2.8 – 0.85 = 1.95 \text{ m}\)
  • \(1.95 – 0.85 = 1.1 \text{ m}\)
  • \(1.1 – 0.85 = 0.25 \text{ m}\)
  • \(0.25 – 0.85 = -0.6 \text{ m}\) (これはTを通り過ぎてしまうので範囲外)

したがって、Tから最も近い強め合う場所は、Tから \(0.25 \text{ m}\) の位置です。

結論と吟味

観測者がTに最も近い位置で音が強め合っている場合、Tまでの距離は \(0.25 \text{ m}\) です。

解答 (3) \(0.25\)

(4) そして、観測者がSに向かって \(1.7 \text{ m/s}\) の速さで歩くと、音の大きさが繰り返し変化して聞こえる。音が強め合っていると観測する回数は1秒あたり (4) [回/s] である。

思考の道筋とポイント
観測者が移動することで、固定された空間に存在する強め合う点を次々と通過します。1秒間に何個の強め合う点を通過するかが、求める回数となります。強め合う点の間隔は(2)で求めています。

この設問における重要なポイント

  • 強め合う点は空間に \(\lambda/2\) の間隔で固定されている。
  • 観測者が速さ \(v_{\text{観測者}}\) でこの点を横切る。
  • 1秒あたりに通過する点の数は、観測者の速さを点の間隔で割ることで求められる。これは「うなり」の現象とは異なります。

具体的な解説と立式
観測者は音源Sに向かって速さ \(v_{\text{観測者}} = 1.7 \text{ m/s}\) で歩きます。
(2)で求めたように、音が強め合っている位置は空間に \(\Delta x = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) の間隔で存在します。
観測者がこれらの強め合いの点を1秒間に何回通過するかを求めます。
1秒間に観測者が進む距離は \(v_{\text{観測者}}\) です。この距離の中に、間隔 \(\Delta x\) の点がいくつ含まれるかを考えます。
したがって、1秒あたりに観測する強め合いの回数 \(N\) は、
$$N = \displaystyle\frac{v_{\text{観測者}}}{\Delta x}$$
ここで、\(\Delta x = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\) なので、
$$N = \displaystyle\frac{v_{\text{観測者}}}{\lambda/2} = \displaystyle\frac{2 v_{\text{観測者}}}{\lambda}$$
この式を使って回数 \(N\) を計算します。

使用した物理公式

  • (間接的に)波の基本式: \(V = f\lambda\)
  • (間接的に)同位相音源の強め合いの条件から導かれる強め合う点の間隔
計算過程

1. 「具体的な解説と立式」で立てた式 \(N = \displaystyle\frac{2 v_{\text{観測者}}}{\lambda}\) に値を代入します。
2. 観測者の速さ \(v_{\text{観測者}} = 1.7 \text{ m/s}\)。
3. 波長 \(\lambda = 1.7 \text{ m}\)。
$$N = \displaystyle\frac{2 \times 1.7 \text{ m/s}}{1.7 \text{ m}}$$
4. 計算を実行します。\(\lambda = 1.7 \text{ m}\) が分子と分母で約分されます。
$$N = 2 \quad (\text{回/s})$$

計算方法の平易な説明

(2)で、音が強め合う場所は \(0.85 \text{ m}\) ごとにあることがわかりました。
観測者は、この \(0.85 \text{ m}\) おきにある「音が大きく聞こえる場所」を、\(1.7 \text{ m/s}\) の速さで通り過ぎていきます。
1秒間に \(1.7 \text{ m}\) 進むので、その間に何回 \(0.85 \text{ m}\) ごとの地点を通過するかを計算します。
これは、\(1.7 \text{ m} \div 0.85 \text{ m/回} = 2\) 回となります。
つまり、1秒間に2回、音が強め合って聞こえることになります。

結論と吟味

観測者がSに向かって \(1.7 \text{ m/s}\) の速さで歩くと、音が強め合っていると観測する回数は1秒あたり \(2\) 回です。これは、観測者が固定された干渉縞を横切る速さに対応しており、ドップラー効果によるうなりとは異なる現象として正しく計算できています。

解答 (4) \(2.0\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 波の基本式 (\(V=f\lambda\)): 音速、振動数、波長の関係は音波の問題の出発点。
  • 音波の干渉条件(同位相音源の場合):
    • 強め合い: 経路差 \(|L_1 – L_2| = m\lambda \quad (m=0, 1, 2, \dots)\)
    • この経路差の条件を、観測者の位置に応じて正しく立式できるかが重要。
  • 干渉縞の間隔: 2つの同位相音源間にできる(またはその延長線上にできる)強め合い(弱め合い)の点は、基本的に \(\lambda/2\) の間隔で並ぶ。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 類似問題への応用:
    • 光の干渉(ヤングの実験、薄膜、回折格子など)でも、経路差と位相差に基づく強め合い・弱め合いの条件は同様の考え方。
    • 水面波の干渉。
    • 電波の干渉(アンテナからの電波など)。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 音源の位相関係: 同位相か逆位相かを確認する(干渉条件が変わる)。本問は同位相。
    2. 観測者の位置: 音源を結ぶ直線上か、それ以外の場所か。それによって経路差の計算方法が変わる。
    3. 波長 \(\lambda\) の計算: \(f\) と \(V\) が与えられていれば、まず \(\lambda\) を計算しておく。
    4. 経路差の正確な把握: 図を描いて、各音源から観測点までの距離を文字で置き、その差を計算する。
    5. 「強め合い」「弱め合い」の条件式の適用: 整数 \(m\) の取り扱いに注意する(\(m=0\) を含むか、最小の正の整数は何かなど)。
    6. 観測者が移動する場合: 干渉縞自体は空間に固定されていると考え、観測者がその縞をどれくらいの速さで横切るかを考える。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 経路差の計算ミス: 特に観測者が音源間にいない場合や、直線上にない場合に複雑になりやすい。
    • 対策: 必ず図を描き、幾何学的な関係を正確に把握する。
  • 強め合い・弱め合いの条件式の混同: \(m\lambda\) と \((m+1/2)\lambda\) を取り違える。同位相か逆位相かで条件が変わることも注意。
    • 対策: 条件式を正確に覚え、音源の位相関係も確認する。
  • 整数 \(m\) の取り扱い: \(m\) が取りうる値の範囲(\(0\) を含むか、正の整数かなど)や、それによって得られる解が物理的な範囲内(例えば \(0 < x < L\))にあるかを丁寧に確認する。
    • 対策: \(m\) が小さい方から順に具体的に値を当てはめて状況を確認する。
  • (b)(4)のような問題とうなりの混同: 観測者が動くことによる「強弱の周期的な変化」は、ドップラー効果による「うなり」とはメカニズムが異なる。
    • 対策: 何が原因で音の大きさが変化しているのか(干渉縞の通過なのか、振動数のわずかな差によるものか)を区別する。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題における物理現象のイメージ化:
    • 2つの石を同時に水面に落とした時に広がる波紋が重なり合う様子を想像する。山と山(谷と谷)が重なれば大きな波(強め合い)、山と谷が重なれば打ち消しあう(弱め合い)。
    • SとTの間には、音が大きく聞こえる場所と小さく聞こえる場所が交互に縞模様のようにできている(干渉縞、あるいは定常波の腹と節)。
    • (b)(4)は、その縞模様の中を観測者が横切っていくことで、周期的に大きな音を聞くイメージ。
  • 図示の有効性:
    • 音源S, Tと観測者Pの位置関係を直線上にプロットし、距離 \(L_S, L_T\) を明記することで、経路差が視覚的にわかりやすくなる。
    • SとTの間にできる強め合いの点をプロットしていくと、それらが等間隔 (\(\lambda/2\)) に並ぶ様子が確認できる。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(V=f\lambda\): 波の最も基本的な関係式。振動数と音速が与えられていれば、干渉を考える上で不可欠な「波長」を求めるために使う。
  • 経路差 \(= m\lambda\) (強め合い): 同位相の波が強め合うのは、波の山と山(または谷と谷)が一致するとき。そのためには、2つの波が進んできた道のりの差が、ちょうど波長1つ分、2つ分…(あるいは0)ずれている必要がある、という物理的意味から導かれる。
  • (b)(4)の \(N = v_{\text{観測者}} / (\lambda/2)\): これは公式というより、状況判断からの立式。「単位時間あたりの回数」=「単位時間に進む距離」÷「1回あたりの距離(事象が起こる間隔)」。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 基本量の算出: まず波長 \(\lambda = V/f\) を計算。
  2. 設問(a):
    1. 観測者の位置関係から経路差 \(\Delta L\) を音源間距離 \(d\) で表す (\(\Delta L = d\))。
    2. 強め合いの条件 \(\Delta L = m\lambda\) と \(d>0\) から、最短の \(d\) は \(m=1\) のときで \(d=\lambda\)。
  3. 設問(b)-(2):
    1. 観測者の位置 \(x\) (Sから) に対する経路差 \(\Delta L = |2x-L|\) を設定。
    2. 強め合いの条件 \(|2x-L|=m\lambda\) から、\(x = (L \pm m\lambda)/2\)。
    3. 隣り合う \(x\) の差から間隔 \(\lambda/2\) を求める。
  4. 設問(b)-(3):
    1. Tからの距離 \(x_T\) で経路差 \(\Delta L = |L-2x_T|\) を設定。
    2. 強め合いの条件 \(|L-2x_T|=m\lambda\) を満たす \(x_T\) (\(0 < x_T < L\)) を小さい \(m\) から列挙し、最小の正の値を選ぶ。
  5. 設問(b)-(4):
    1. 強め合う点の間隔 \(d’ = \lambda/2\)。
    2. 観測者の速さ \(v_{\text{観測者}}\)。
    3. 単位時間あたりに通過する点の数 \(N = v_{\text{観測者}}/d’\)。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 単位の確認: 距離(m)、速さ(m/s)、振動数(Hz)、波長(m)、回数/秒(Hzまたは回/s)など、単位が一貫しているか、最終的な答えの単位は適切かを確認する。
  • 小数と分数の変換: \(1.7 = 17/10\), \(0.85 = 17/20\), \(0.25 = 1/4\) など、計算しやすい方で扱う。
  • 整数 \(m\) の吟味: \(m\) が取りうる値の範囲(\(0\) を含むか、正の整数かなど)や、それによって得られる解が物理的な範囲内(例えば \(0 < x < L\))にあるかを丁寧に確認する。
  • 単純な割り算・掛け算ミス: 特に(b)(4)のような最後の計算でケアレスミスをしないように。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理的な状況との整合性:
    • (a) 最短距離が波長 \(\lambda\) となるのは、経路差が \(m=1\) の場合であり、\(m=0\)(経路差0)だと \(d=0\) で音源が一致してしまうため、妥当。
    • (b)(2) 強め合う点の間隔が \(\lambda/2\) となるのは、定常波の腹の間隔と同じであり、干渉の基本的な性質として妥当。
    • (b)(3) Tに最も近い点が \(0.25\text{m}\)。SとTの中点 (\(2.8\text{m}\)) は必ず強め合う (\(m=0\))。そこから \(\lambda/2 = 0.85\text{m}\) ごとに強め合うので、\(2.8 \rightarrow 2.8-0.85=1.95 \rightarrow 1.95-0.85=1.1 \rightarrow 1.1-0.85=0.25\)。確かにTに近い方から順に存在する。
    • (b)(4) 観測者の速さがちょうど波長と同じ \(1.7\text{m/s}\) で、強め合う間隔が \(\lambda/2 = 0.85\text{m}\)。1秒間に \(1.7\text{m}\) 進むなら、\(0.85\text{m}\) ごとの点を2回通過するのは直感的にも妥当。
  • 数値のオーダー感: 波長 \(1.7\text{m}\) に対して、音源間距離 \(5.6\text{m}\) は波長の約3.3倍。この間に複数の強め合う点が存在するのは自然。
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