「良問の風」攻略ガイド(146〜150問):重要問題の解き方と物理の核心をマスター!

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問題146 (千葉大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、ボーアの水素原子模型を題材として、原子構造と光の放出に関する基本的な理解を問うものです。与えられた条件と問われていることを整理しましょう。

与えられた条件
  • 原子核の電荷: \(+e\)
  • 電子の電荷: \(-e\)
  • 電子の質量: \(m\)
  • 電子の軌道: 半径 \(r\) の円軌道
  • 電子の速さ: \(v\)
  • プランク定数: \(h\)
  • クーロン定数: \(k\)
  • 量子数: \(n (=1, 2, 3, \dots)\)
  • \(n=1\) のエネルギー準位: \(E_1 = -13.6 \, \text{[eV]}\)
  • 物理定数: \(h = 6.63 \times 10^{-34} \, \text{[J}\cdot\text{s]}\), \(e = 1.60 \times 10^{-19} \, \text{[C]}\), \(c = 3.00 \times 10^8 \, \text{[m/s]}\)
問われていること
  1. (1) 電子の円運動の関係式。
  2. (2) 電子の全エネルギー \(E\) を \(k, e, r\) で表す。
  3. (3) 量子条件を \(m, v, r, h, n\) で表す。
  4. (4) 安定な軌道半径 \(r_n\) を \(m, e, h, k, n\) で表す。
  5. (5) エネルギー準位 \(E_n\) を \(m, e, h, k, n\) で表す。
  6. (6) \(n=3 \rightarrow n=2\) の遷移で放射される光の波長 \(\lambda\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【注記】本問については、模範解答のアプローチが最も標準的かつ効率的であるため、別解の提示は省略します。

この問題は、20世紀初頭の物理学における重要な一歩であったボーアの原子模型に関するものです。古典電磁気学では説明できなかった原子の安定性や線スペクトルの謎を解き明かすために導入された画期的なアイデアが詰まっています。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. クーロン力と円運動の運動方程式: 電子が原子核から受けるクーロン力を向心力として円運動するための力学的な条件式。
  2. エネルギーの計算: 電子の運動エネルギーと、クーロン力による位置エネルギーの和として全エネルギーを計算します。
  3. ボーアの量子条件: 電子の物質波が円軌道上で定常波を形成するという条件。これがエネルギーや軌道半径がとびとびの値になる根拠です。
  4. 振動数条件: 電子がエネルギー準位間を移る際に、そのエネルギー差に等しいエネルギーを持つ光子が放出・吸収されるという関係。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)では、電子の円運動の運動方程式を立てます。
  2. (2)では、(1)の結果を利用して、電子の全エネルギーを軌道半径で表します。
  3. (3)では、電子の物質波が定常波をなすという量子条件を立式します。
  4. (4), (5)では、(1)の運動方程式と(3)の量子条件を連立させることで、量子化された軌道半径 \(r_n\) とエネルギー準位 \(E_n\) を導出します。
  5. (6)では、エネルギー準位の差から放出される光の波長を計算します。

(1)

思考の道筋とポイント
電子は、原子核から受けるクーロン力(静電気的な引力)を向心力として、原子核の周りを円運動しています。したがって、「向心力の大きさ」と「クーロン力の大きさ」が等しいという関係が成り立ちます。
この設問における重要なポイント

  • 円運動の向心力の公式: \(F_{\text{向心力}} = m \displaystyle\frac{v^2}{r}\)
  • クーロン力の公式: \(F_{\text{クーロン}} = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\)
  • 原子核の電荷は \(+e\)、電子の電荷は \(-e\) なので、クーロン力の大きさは \(k \displaystyle\frac{e^2}{r^2}\) となります。

具体的な解説と立式
質量 \(m\) の電子が、速さ \(v\) で半径 \(r\) の円軌道上を運動しているとき、その円運動に必要な向心力の大きさ \(F_{\text{向心力}}\) は次のように表されます。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{向心力}} &= m \displaystyle\frac{v^2}{r}
\end{aligned}
$$
一方、電荷 \(+e\) の原子核と電荷 \(-e\) の電子の間には、クーロンの法則に従う静電気的な引力(クーロン力)が働きます。その大きさ \(F_{\text{クーロン}}\) は、
$$
\begin{aligned}
F_{\text{クーロン}} &= k \displaystyle\frac{e^2}{r^2}
\end{aligned}
$$
電子の円運動において、このクーロン力が向心力の役割を果たしているため、これらの力の大きさは等しくなります。
$$
\begin{aligned}
m \displaystyle\frac{v^2}{r} &= k \displaystyle\frac{e^2}{r^2} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 円運動の向心力: \(F = m \displaystyle\frac{v^2}{r}\)
  • クーロンの法則: \(F = k \displaystyle\frac{|q_1 q_2|}{r^2}\)
計算過程

上記の「具体的な解説と立式」で示した式①が、そのまま設問で要求されている関係式です。

この設問の平易な説明

電子が原子核のまわりを安定してグルグルと回り続けるためには、原子核が電子を引っ張る力(クーロン力)と、電子が円運動を続けるために必要な中心向きの力(向心力)が等しい大きさである必要があります。向心力は \(m v^2/r\)、クーロン力は \(k e^2/r^2\) で表されるので、これらを等号で結んだものが求める関係式です。

結論と吟味

電子の円運動について成り立つ関係式は \(m \displaystyle\frac{v^2}{r} = k \displaystyle\frac{e^2}{r^2}\) です。これはボーア模型の出発点となる重要な式の一つです。

解答 (1) \(m \displaystyle\frac{v^2}{r} = k \displaystyle\frac{e^2}{r^2}\)

(2)

思考の道筋とポイント
電子の全エネルギー \(E\) は、運動エネルギー \(K\) とクーロン力による位置エネルギー \(U\) の和 \(E = K + U\) で与えられます。運動エネルギー \(K\) は \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\) ですが、この \(mv^2\) の部分は、設問(1)の関係式を使って \(k, e, r\) で表すことができます。クーロン力による位置エネルギー \(U\) は、無限遠を基準とするとき、\(U = k \displaystyle\frac{(+e)(-e)}{r} = -k \displaystyle\frac{e^2}{r}\) となります。
この設問における重要なポイント

  • 運動エネルギーの定義: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
  • クーロン力による位置エネルギー(無限遠基準): \(U = k \displaystyle\frac{q_1 q_2}{r}\)
  • 全エネルギー(力学的エネルギー): \(E = K + U\)

具体的な解説と立式
電子の全エネルギー \(E\) は、その運動エネルギー \(K\) と、原子核との間のクーロン力による位置エネルギー \(U\) の和として定義されます。
$$
\begin{aligned}
E &= K + U
\end{aligned}
$$
電子の運動エネルギー \(K\) は、
$$
\begin{aligned}
K &= \displaystyle\frac{1}{2}mv^2
\end{aligned}
$$
です。ここで、(1)の式① \(m \displaystyle\frac{v^2}{r} = k \displaystyle\frac{e^2}{r^2}\) の両辺に \(r\) を掛けると \(mv^2 = k \displaystyle\frac{e^2}{r}\) が得られます。これを代入すると、
$$
\begin{aligned}
K &= \displaystyle\frac{1}{2} \left( k \displaystyle\frac{e^2}{r} \right) = \displaystyle\frac{ke^2}{2r}
\end{aligned}
$$
一方、クーロン力による位置エネルギー \(U\) は、
$$
\begin{aligned}
U &= k \displaystyle\frac{(+e)(-e)}{r} = -k \displaystyle\frac{e^2}{r}
\end{aligned}
$$
したがって、全エネルギー \(E\) はこれらの和となります。

使用した物理公式

  • 運動エネルギー: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
  • クーロン力による位置エネルギー (無限遠基準): \(U = k \displaystyle\frac{q_1 q_2}{r}\)
  • 全エネルギー: \(E = K + U\)
計算過程

運動エネルギー \(K = \displaystyle\frac{ke^2}{2r}\) と位置エネルギー \(U = -k \displaystyle\frac{e^2}{r}\) を足し合わせます。
$$
\begin{aligned}
E &= \displaystyle\frac{ke^2}{2r} + \left( -k \displaystyle\frac{e^2}{r} \right) \\[2.0ex]
&= \displaystyle\frac{ke^2}{2r} – \displaystyle\frac{2ke^2}{2r} \\[2.0ex]
&= \displaystyle\frac{-ke^2}{2r}
\end{aligned}
$$
よって、電子のもつ全エネルギー \(E\) は次のように表されます。
$$
\begin{aligned}
E &= -\displaystyle\frac{ke^2}{2r} \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電子が持っている総エネルギーは、「運動の勢い(運動エネルギー)」と「原子核との電気的な位置関係によるエネルギー(位置エネルギー)」の合計です。運動エネルギーは \(\frac{ke^2}{2r}\)、位置エネルギーは \(-k e^2/r\) と計算できます。これらを足し合わせると、\(E = -\frac{ke^2}{2r}\) となります。

結論と吟味

電子のもつ全エネルギーは \(E = -\displaystyle\frac{ke^2}{2r}\) と表されます。エネルギーが負の値であることは、電子が原子核に束縛されている状態を示しています。

解答 (2) \(E = -\displaystyle\frac{ke^2}{2r}\)

(3)

思考の道筋とポイント
ボーアの量子条件の一つは、電子の物質波(ド・ブロイ波)が円軌道上で定常波を形成するというものです。これは、軌道の円周の長さ \(2\pi r\) が、電子の物質波の波長 \(\lambda_{\text{物質波}}\) のちょうど整数倍になっている、という条件で表されます。電子の物質波の波長は、ド・ブロイの関係式 \(\lambda_{\text{物質波}} = \displaystyle\frac{h}{mv}\) で与えられます。
この設問における重要なポイント

  • ド・ブロイ波長(物質波の波長): \(\lambda_{\text{物質波}} = \displaystyle\frac{h}{mv}\)
  • 量子条件(定常波の条件): (円周の長さ)= \(n \times\) (物質波の波長)

具体的な解説と立式
ボーアの量子条件は、電子を波(ド・ブロイ波)として考えたとき、その波が円軌道の一周の長さとぴったり合う、つまり定常波を形成するというものです。
質量 \(m\)、速さ \(v\) で運動する電子のド・ブロイ波長 \(\lambda_{\text{ドブロイ}}\) は、
$$
\begin{aligned}
\lambda_{\text{ドブロイ}} &= \displaystyle\frac{h}{mv}
\end{aligned}
$$
円軌道の円周の長さ \(2\pi r\) が、この波長の整数 \(n\) 倍に等しいという条件から、
$$
\begin{aligned}
2\pi r &= n \lambda_{\text{ドブロイ}}
\end{aligned}
$$
したがって、求める量子条件は次のようになります。
$$
\begin{aligned}
2\pi r &= n \left( \displaystyle\frac{h}{mv} \right) \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ド・ブロイ波長: \(\lambda = \displaystyle\frac{h}{mv}\)
  • ボーアの量子条件(定常波の条件): \(2\pi r = n\lambda\)
計算過程

上記の「具体的な解説と立式」で示した式③がそのまま解答となります。

この設問の平易な説明

電子が原子核の周りを安定して回り続けるためには、電子の波が軌道を1周したときに、波の山と山、谷と谷がぴったり重なり合う必要があります。この条件は、「軌道の円周の長さ (\(2\pi r\))」が「電子の波の波長 (\(h/mv\))」のちょうど \(n\) 倍(\(n\) は整数)になっていることです。これを式にすると \(2\pi r = n \times \displaystyle\frac{h}{mv}\) となります。

結論と吟味

電子が安定な円軌道を描き続けるための量子条件は \(2\pi r = n \displaystyle\frac{h}{mv}\) です。この式は、角運動量 \(L = mvr\) を用いて書き換えると、\(mvr = n \displaystyle\frac{h}{2\pi}\) となり、角運動量が量子化されることを意味しています。

解答 (3) \(2\pi r = n \displaystyle\frac{h}{mv}\)

(4)

思考の道筋とポイント
量子数 \(n\) に対応する安定な軌道半径 \(r_n\) を求めるには、(1)で得られた「円運動の運動方程式」(式①)と(3)で得られた「量子条件」(式③)を連立させ、電子の速さ \(v\) を消去して \(r_n\) について解きます。
この設問における重要なポイント

  • 使用する式1 (円運動): \(m \displaystyle\frac{v^2}{r_n} = k \displaystyle\frac{e^2}{r_n^2}\)
  • 使用する式2 (量子条件): \(2\pi r_n = n \displaystyle\frac{h}{mv}\)
  • 上記2式から \(v\) を消去し、\(r_n\) を求める。

具体的な解説と立式
量子数 \(n\) に対応する安定な軌道の半径を \(r_n\) とします。この \(r_n\) を求めるためには、以下の2つの式を連立させます。

  1. 円運動の関係式:
    $$
    \begin{aligned}
    m \displaystyle\frac{v^2}{r_n} &= k \displaystyle\frac{e^2}{r_n^2}
    \end{aligned}
    $$
  2. 量子条件:
    $$
    \begin{aligned}
    2\pi r_n &= n \displaystyle\frac{h}{mv}
    \end{aligned}
    $$

これらの式から速さ \(v\) を消去することで、\(r_n\) が求まります。

使用した物理公式

  • 円運動の関係式
  • 量子条件
計算過程

まず、量子条件の式を \(v\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
v &= \displaystyle\frac{nh}{2\pi m r_n}
\end{aligned}
$$
次に、この \(v\) を円運動の関係式に代入します。
$$
\begin{aligned}
m \displaystyle\frac{1}{r_n} \left( \displaystyle\frac{nh}{2\pi m r_n} \right)^2 &= k \displaystyle\frac{e^2}{r_n^2} \\[2.0ex]
m \displaystyle\frac{1}{r_n} \left( \displaystyle\frac{n^2h^2}{4\pi^2 m^2 r_n^2} \right) &= k \displaystyle\frac{e^2}{r_n^2} \\[2.0ex]
\displaystyle\frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m r_n^3} &= k \displaystyle\frac{e^2}{r_n^2}
\end{aligned}
$$
この式を \(r_n\) について解きます。両辺に \(\frac{r_n^3}{ke^2}\) を掛けると、
$$
\begin{aligned}
\displaystyle\frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m k e^2} &= r_n
\end{aligned}
$$
よって、
$$
\begin{aligned}
r_n &= \displaystyle\frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m k e^2} \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電子が入れる特別な軌道の半径 \(r_n\) を計算します。(1)の「力のつり合いの式」と(3)の「波の条件の式」の2つを使います。これらの式から、未知数である電子の速さ \(v\) を消去します。(3)の式から \(v\) を表す式を作り、それを(1)の式に代入します。残った式を \(r_n\) について整理して解くと、答えが得られます。

結論と吟味

軌道半径 \(r_n\) は量子数 \(n\) の2乗に比例します (\(r_n \propto n^2\))。つまり、電子は連続的な任意の半径の軌道をとるのではなく、特定のとびとびの値の半径の軌道しかとれない(量子化されている)ことが示されています。

解答 (4) \(r_n = \displaystyle\frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m k e^2}\)

(5)

思考の道筋とポイント
量子数 \(n\) に対応するエネルギー準位 \(E_n\) を求めるには、(2)で得られた全エネルギーの一般式 \(E = -\displaystyle\frac{ke^2}{2r}\) (式②) に、(4)で求めた量子数 \(n\) に対応する安定な軌道半径 \(r_n\) (式④) を代入します。
この設問における重要なポイント

  • 使用する式1 (全エネルギー): \(E_n = -\displaystyle\frac{ke^2}{2r_n}\)
  • 使用する式2 (安定な軌道半径): \(r_n = \displaystyle\frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m k e^2}\)
  • 上記 \(r_n\) を \(E_n\) の式の \(r_n\) に代入する。

具体的な解説と立式
量子数 \(n\) に対応する電子のエネルギー準位を \(E_n\) とします。これは、(2)で導出した全エネルギーの表現 \(E = -\frac{ke^2}{2r}\) の軌道半径 \(r\) に、(4)で求めた量子化された軌道半径 \(r_n\) を代入することで得られます。
$$
\begin{aligned}
E_n &= -\displaystyle\frac{ke^2}{2 r_n}
\end{aligned}
$$
この \(r_n\) に式④を代入します。

使用した物理公式

  • 全エネルギーの式
  • 安定な軌道半径の式
計算過程

$$
\begin{aligned}
E_n &= -\displaystyle\frac{ke^2}{2 \left( \displaystyle\frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m k e^2} \right)} \\[2.0ex]
&= -\displaystyle\frac{ke^2}{2} \cdot \displaystyle\frac{4\pi^2 m k e^2}{n^2 h^2} \\[2.0ex]
&= -\displaystyle\frac{4\pi^2 m k^2 e^4}{2n^2 h^2} \\[2.0ex]
&= -\displaystyle\frac{2\pi^2 m k^2 e^4}{n^2 h^2} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電子が特定の軌道 \(r_n\) にいるときのエネルギー \(E_n\) を求めます。(2)で、エネルギーは \(E = -\frac{ke^2}{2r}\) と表されることを見つけました。(4)で、軌道の半径は \(r_n = \frac{n^2 h^2}{4\pi^2 m k e^2}\) と表されることを見つけました。エネルギーの式の \(r\) の部分に、この \(r_n\) の式を代入して整理すると、答えが得られます。

結論と吟味

エネルギー準位 \(E_n\) は量子数 \(n\) の2乗に反比例します (\(E_n \propto 1/n^2\))。エネルギー準位もまた、特定のとびとびの値しかとれない(量子化されている)ことが示されています。

解答 (5) \(E_n = -\displaystyle\frac{2\pi^2 m k^2 e^4}{n^2 h^2}\)

(6)

思考の道筋とポイント
電子が高いエネルギー準位 \(E_3\) から低いエネルギー準位 \(E_2\) に遷移するとき、そのエネルギー差に等しいエネルギーを持つ光子が放出されます。光子のエネルギーは \(E_{\text{光子}} = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\) と表されます。エネルギー準位は \(E_n = \displaystyle\frac{E_1}{n^2}\) と書けるので、これを利用してエネルギー差を計算します。エネルギー \(E_1\) の単位が eV (電子ボルト) で与えられているため、計算の際には J (ジュール) に換算する必要があります。
この設問における重要なポイント

  • ボーアの振動数条件: \(E_{\text{光子}} = E_{\text{初}} – E_{\text{後}}\)
  • 光子のエネルギー: \(E_{\text{光子}} = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\)
  • エネルギー準位の \(n\) 依存性: \(E_n = \displaystyle\frac{E_1}{n^2}\)
  • 単位の換算: eV から J へ。 (\(1 \, \text{eV} = 1.60 \times 10^{-19} \, \text{J}\))

具体的な解説と立式
電子が量子数 \(n=3\) のエネルギー準位 \(E_3\) から \(n=2\) のエネルギー準位 \(E_2\) へ遷移するとき、放出される光子のエネルギー \(E_{\text{光子}}\) は、
$$
\begin{aligned}
E_{\text{光子}} &= E_3 – E_2
\end{aligned}
$$
放出される光の波長を \(\lambda\) とすると、\(E_{\text{光子}} = \displaystyle\frac{hc}{\lambda}\) なので、
$$
\begin{aligned}
\displaystyle\frac{hc}{\lambda} &= E_3 – E_2
\end{aligned}
$$
エネルギー準位は \(E_n = \displaystyle\frac{E_1}{n^2}\) と書けるので、
$$
\begin{aligned}
\displaystyle\frac{hc}{\lambda} &= \displaystyle\frac{E_1}{3^2} – \displaystyle\frac{E_1}{2^2} \\[2.0ex]
&= E_1 \left( \displaystyle\frac{1}{9} – \displaystyle\frac{1}{4} \right)
\end{aligned}
$$
この方程式を波長 \(\lambda\) について解きます。

使用した物理公式

  • ボーアの振動数条件
  • 光子のエネルギー
  • ボーア模型のエネルギー準位の \(n\) 依存性
計算過程

$$
\begin{aligned}
\displaystyle\frac{hc}{\lambda} &= E_1 \left( \displaystyle\frac{4-9}{36} \right) \\[2.0ex]
&= -\displaystyle\frac{5}{36}E_1
\end{aligned}
$$
この式を波長 \(\lambda\) について解くと、
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \displaystyle\frac{hc}{-\frac{5}{36}E_1} \\[2.0ex]
&= -\displaystyle\frac{36hc}{5E_1}
\end{aligned}
$$
与えられた値を代入します。\(E_1 = -13.6 \, \text{eV} = -13.6 \times 1.60 \times 10^{-19} \, \text{J}\)。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= -\displaystyle\frac{36 \times (6.63 \times 10^{-34}) \times (3.00 \times 10^8)}{5 \times (-13.6 \times 1.60 \times 10^{-19})}
\end{aligned}
$$
指数部分をまとめると、\(10^{-34} \times 10^8 \times 10^{19} = 10^{-7}\)。
係数部分を計算します。
$$
\begin{aligned}
\lambda &= \displaystyle\frac{36 \times 6.63 \times 3.00}{5 \times 13.6 \times 1.60} \times 10^{-7} \\[2.0ex]
&= \displaystyle\frac{716.04}{108.8} \times 10^{-7} \\[2.0ex]
&\approx 6.581… \times 10^{-7} \, \text{m}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるため、\(\lambda \approx 6.6 \times 10^{-7} \, \text{m}\) となります。

この設問の平易な説明

電子が \(n=3\) の軌道から \(n=2\) の軌道に移るとき、その差額のエネルギーを光として放出します。その光の波長 \(\lambda\) を求めます。放出される光のエネルギーは \(E_3 – E_2\) です。エネルギー準位は \(E_n = E_1/n^2\) という関係があるので、エネルギーの差は \((-5/36)E_1\) と計算できます。これが光のエネルギー \(hc/\lambda\) に等しいので、\(\lambda = -36hc / (5E_1)\) となります。ここに与えられた数値を代入して計算すると、約 \(6.6 \times 10^{-7} \, \text{m}\) となります。

結論と吟味

\(n=3\) から \(n=2\) の状態に移るときに放射される光の波長は、約 \(6.6 \times 10^{-7} \, \text{m}\) (660 nm) と計算されました。この波長は、可視光線の赤色領域に属し、水素原子のスペクトル線の中で有名なバルマー系列の \(H_{\alpha}\) 線に対応します。

解答 (6) \(\lambda \approx 6.6 \times 10^{-7} \, \text{m}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • クーロン力と円運動の動力学:
    • 核心: 原子核が電子に及ぼすクーロン力が向心力となって円運動を引き起こすという、古典力学の基本法則の適用 (\(m v^2/r = k e^2/r^2\))。これが全ての力学的考察の基礎となります。
    • 理解のポイント:
      1. 力の同定: 電子に働く中心力がクーロン力であることを特定します。
      2. 運動形態の特定: 電子の運動が円運動であることから、向心力が必要であると判断します。
      3. 立式: これら2つの力が等しいとして運動方程式を立てます。
  • ボーアの量子条件(物質波の定常波条件):
    • 核心: 電子の物質波の波長 \(\lambda_{\text{ドブロイ}} = h/mv\) が、円軌道 \(2\pi r\) の整数分の1になる (\(2\pi r = n\lambda_{\text{ドブロイ}}\)) という画期的な仮説。これが軌道半径やエネルギーの量子化(とびとびの値をとること)を直接的に導きます。
    • 理解のポイント:
      1. 電子の波動性: 電子を単なる粒子ではなく、波長を持つ波として捉えます。
      2. 定常波の条件: 波が自己干渉で消えずに安定して存在するためには、円周の長さが波長の整数倍でなければならない、という条件を適用します。
  • エネルギー準位間の遷移と光子の放出(ボーアの振動数条件):
    • 核心: 電子がエネルギーの高い準位 \(E_{\text{初}}\) から低い準位 \(E_{\text{後}}\) へ遷移する際に、そのエネルギー差に等しいエネルギー (\(E_{\text{光子}} = E_{\text{初}} – E_{\text{後}}\)) を持つ光子が放出されるという現象。光子のエネルギーは \(hc/\lambda\) で与えられます。
    • 理解のポイント:
      1. エネルギーの量子化: 電子が存在できるエネルギー状態はとびとびの値(エネルギー準位)に限られることを理解します。
      2. エネルギー保存則: 原子が失ったエネルギーが、そのまま光子1個のエネルギーに変換されるというエネルギー保存則を適用します。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 水素原子以外の1電子原子・イオン: \(\text{He}^+\)、\(\text{Li}^{2+}\) など、原子核の電荷が \(+Ze\) となる場合。この場合、クーロン力の式中の \(e^2\) が \((Ze)e = Ze^2\) に置き換わる点に注意すれば、同様の計算で軌道半径やエネルギー準位が求められます(\(r_n \propto 1/Z\), \(E_n \propto Z^2\))。
    • リュードベリ定数 \(R\) を用いたスペクトル線の波長計算: \(1/\lambda = R(1/n_f^2 – 1/n_i^2)\) の公式を導出、または利用する問題。今回の問題(6)はその具体的な一例です。
    • 量子条件の別表現: 量子条件を角運動量の量子化 \(L = mvr = n\hbar\) (\(\hbar = h/2\pi\)) の形で与えられる問題。本質的には同じ条件です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 基本相互作用の特定: まず、系内で働いている主要な力は何か(この場合はクーロン力)を把握します。
    2. 運動形態の分析: 粒子がどのような運動をしているか(この場合は円運動)を見極め、適切な運動方程式を立てます。
    3. 量子化の条件の探索: 「安定な軌道」「特定の波長・振動数」「離散的な値」といったキーワードがあれば、何らかの量子条件が関わっている可能性が高いです。ボーア模型では物質波の定常波条件がそれにあたります。
    4. 与えられた定数と求めるものの関連付け: 設問で与えられている定数(\(h, e, m, k, c\) など)と、最終的に求めたい物理量(\(r, E, \lambda\) など)を意識し、それらを結びつける法則や定義式を想起します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 位置エネルギーの符号:
    • 誤解: クーロン力による位置エネルギー \(U = -ke^2/r\) のマイナス符号を忘れてしまう。
    • 対策: 引力による束縛状態のポテンシャルエネルギーは、無限遠を基準にすると負の値をとることを理解しておきます。原子核に近づくほど、より強く束縛され、エネルギーは低く(より負に大きく)なるとイメージします。
  • 全エネルギーの符号:
    • 誤解: 束縛状態の電子の全エネルギー \(E_n\) が正だと勘違いする。
    • 対策: 運動エネルギーは常に正ですが、位置エネルギーが負でその絶対値が運動エネルギーより大きいため、全エネルギーも負になることを理解します。\(E = -K\) の関係も重要です。
  • エネルギー準位の大小関係:
    • 誤解: 量子数 \(n\) が大きいほどエネルギー準位が「低い」と勘違いする。
    • 対策: エネルギー準位図を正しく描き、\(n\) が大きくなるにつれてエネルギーの値は 0 に近づく(=エネルギー準位は高くなる)様子を視覚的に捉えます。\(n=1\) が最もエネルギーが「低い」(負で絶対値が最大)基底状態です。
  • 光子のエネルギー計算:
    • 誤解: \(E_{\text{光子}} = E_{\text{終状態}} – E_{\text{始状態}}\) のように、エネルギーの差の取り方を間違え、結果が負になってしまう。
    • 対策: 放出される光子のエネルギーは必ず正の値です。したがって、\(E_{\text{光子}} = E_{\text{高い準位}} – E_{\text{低い準位}}\) と計算することを徹底します。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(m v^2/r = k e^2/r^2\):
    • 選定理由: 電子の力学的な運動状態を記述するため。
    • 適用根拠: 問題文に「電子が半径\(r\)の円軌道上を速さ\(v\)で運動している」とあり、その運動を支配しているのが原子核との間の「クーロン力」であるという物理的状況。クーロン力が向心力の役割を果たしているため、この運動方程式が成立します。
  • \(E = K + U\) (ここで \(U = -k e^2/r\)):
    • 選定理由: 電子が持つエネルギーを問われているため。
    • 適用根拠: 全エネルギー(力学的エネルギー)は運動エネルギーと位置エネルギーの和であるという物理学の基本定義。クーロン力が保存力であるため、位置エネルギーを定義でき、力学的エネルギーが意味を持ちます。
  • \(2\pi r = n (h/mv)\):
    • 選定理由: 古典力学だけでは説明できない「安定な軌道」の条件を記述するため。
    • 適用根拠: 問題文に「電子が安定な円軌道を描き続けるための、波長に関する条件(量子条件)」と明記されており、ボーア模型の根幹をなすこの仮説を適用する必要があります。これは電子の波動性を考慮したものです。
  • \(hc/\lambda = E_3 – E_2\):
    • 選定理由: エネルギー準位の「遷移」によって「放射される光の波長」を計算するため。
    • 適用根拠: 電子が高いエネルギー状態から低い状態へ移る際に、そのエネルギー差が光子1個のエネルギーとして放出されるという、ボーアの振動数条件に基づいています。これは原子の線スペクトルを説明する基本原理です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 文字式の丁寧な扱い:
    • 特に注意すべき点: 多くの定数記号や量子数 \(n\) が登場するため、式の変形は一段階ずつ慎重に行う。特に、分数の中の分数や、指数の計算(例:\(e^2 \times e^2 = e^4\))は間違いやすいです。
    • 日頃の練習: 複雑な文字式ほど、どの文字が定数でどの文字が変数(あるいは量子数 \(n\) に依存する量)なのかを常に意識しながら、丁寧に計算を進める練習をします。
  • 単位の確認:
    • 特に注意すべき点: 常に単位を意識する。各物理量の単位をSI基本単位系で考えると間違いが少ないです。特に(6)では、エネルギーを eV から J に換算するのを忘れないようにします。
    • 日頃の練習: 計算の最終段階で、得られた式の単位が求めるべき物理量の単位と一致するかを確認する(次元解析)習慣をつけます。
  • 符号のチェック:
    • 特に注意すべき点: エネルギー \(E_n\) や位置エネルギー \(U\) は負の値をとります。放出される光子のエネルギーや波長は正の値になります。計算途中で符号が不自然でないか常に意識することが重要です。
    • 日頃の練習: 式を立てるたびに、各項の符号が物理的に正しい意味を持っているか(引力なら負のポテンシャル、束縛状態なら負の全エネルギーなど)を確認する癖をつけます。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • \(r_n \propto n^2\): 量子数 \(n\) が大きくなるほど軌道半径は広がる。これは、より外側の軌道を電子が回ることを意味し、直感的に理解しやすいです。
    • \(E_n \propto -1/n^2\): 量子数 \(n\) が大きくなるほどエネルギーは 0 に近づき高くなる(束縛が緩くなる)。これも、原子核からの束縛が弱まる外側の軌道ほどエネルギーが高い(ただし0以下)という事実に合致しています。
    • (6)の波長: 得られた波長 \(6.6 \times 10^{-7} \, \text{m} = 660 \, \text{nm}\) は、可視光の赤色に相当します。水素原子のバルマー系列 (\(n \rightarrow 2\) の遷移) は可視光領域にいくつかの線スペクトルを持つことが知られており、\(n=3 \rightarrow n=2\) はその中でも最も波長の長い \(H\alpha\) 線です。この知識があれば、結果の妥当性を判断する強力な手がかりになります。
  • 極端な場合や既知の状況との比較:
    • \(n \rightarrow \infty\) の場合: \(r_n \rightarrow \infty\), \(E_n \rightarrow 0\) となります。これは、電子が原子核の束縛から完全に解放された状態(イオン化)を表しており、エネルギーが0(無限遠での位置エネルギーの基準値)になるのは物理的に妥当です。
  • 次元解析(単位の整合性チェック):
    • 得られた式の両辺の次元(単位)が一致しているかを確認します。例えば、(4)で求めた \(r_n\) の式が最終的に長さの次元 [L] になっているか、(5)で求めた \(E_n\) の式がエネルギーの次元 [ML\(^2\)T\(^{-2}\)] になっているかなどを確認できます。

問題147 (金沢大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、光子が原子に吸収される際に、原子の内部エネルギー(電子のエネルギー準位)が変化すると同時に、原子自身も運動状態を変えるという現象を扱っています。この現象を理解するためには、光子の持つエネルギーと運動量、そしてエネルギー保存則と運動量保存則という物理学の基本的な二つの柱を適用する必要があります。

与えられた条件
  • 吸収前の原子の状態:
    • 電子のエネルギー準位: \(E_1\)
    • 原子全体の速さ: \(0\) (静止)
    • 水素原子の質量: \(M\)
  • 吸収した光:
    • 振動数: \(\nu\)
    • 光は光子として振る舞う。
  • 吸収後の原子の状態:
    • 電子のエネルギー準位: \(E_2\)
    • 原子全体の速さ: \(V\) (光の進行方向)
  • 普遍定数:
    • 光速: \(c\)
    • プランク定数: \(h\)
問われていること
  1. (1) 原子運動の速さ \(V\) と、吸収した光の振動数 \(\nu\) の間に成り立つ関係式。
  2. (2) \(E_1\), \(E_2\) および \(\nu\), \(V\) の間に成り立つ関係式。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【注記】本問については、模範解答のアプローチが最も標準的かつ効率的であるため、別解の提示は省略します。

この問題のテーマは、光子の吸収に伴う原子の励起と反跳です。原子物理学の分野に属し、特に光と物質の相互作用の基本的な側面を扱います。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 光子のエネルギー: 振動数 \(\nu\) の光子は \(E = h\nu\) のエネルギーを持ちます。
  2. 光子の運動量: 光子は質量を持ちませんが、運動量も持ちます。その大きさは \(p = \displaystyle\frac{E}{c} = \frac{h\nu}{c}\) で与えられ、向きは光の進行方向です。
  3. 運動量保存則: 外力が作用しない孤立した系では、相互作用の前後で系全体の全運動量は保存されます。
  4. エネルギー保存則: 同様に、孤立した系では、相互作用の前後で系全体の全エネルギーも保存されます。ここでいうエネルギーには、原子の内部エネルギーと原子全体の運動エネルギー、そして光子のエネルギーが含まれます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 設問(1)について: 光子が原子に吸収される前後での運動量保存則を考えます。吸収前の系(原子+光子)の全運動量と、吸収後の系(運動する原子)の全運動量が等しいという式を立てます。
  2. 設問(2)について: 同様に、光子が原子に吸収される前後でのエネルギー保存則を考えます。吸収前の系(原子の内部エネルギー+光子のエネルギー)の全エネルギーと、吸収後の系(励起された原子の内部エネルギー+原子の運動エネルギー)の全エネルギーが等しいという式を立てます。

(1)

思考の道筋とポイント
この設問では、光子の吸収という現象を、光子と原子の「衝突・合体」のようなものと捉え、その前後での運動量の変化に着目します。光子が持つ運動量が、吸収後に原子の運動量へと移行すると考え、系全体に外力が働かない限り、全運動量は保存されるという法則を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 光子はエネルギーだけでなく運動量も持つことを理解しているか。
  • 運動量保存則を正しく適用できるか。
  • 吸収前と吸収後で、系を構成する要素(粒子)とその運動状態を正確に把握する。

具体的な解説と立式
光子が水素原子に吸収される前後で、光子と水素原子からなる系全体の運動量は保存されると考えます。光の進行方向を正の向きとします。

吸収前の系の全運動量 \(P_{\text{全,初}}\) を考えます。

  • 水素原子(質量 \(M\))は静止しているので、その運動量は \(0\) です。
  • 光子(振動数 \(\nu\))は、運動量の大きさ \(p_{\text{光子}} = \displaystyle\frac{h\nu}{c}\) を持ちます。

したがって、吸収前の系の全運動量は、
$$
\begin{aligned}
P_{\text{全,初}} &= 0 + \displaystyle\frac{h\nu}{c} \\[2.0ex]
&= \displaystyle\frac{h\nu}{c}
\end{aligned}
$$
次に、吸収後の系の全運動量 \(P_{\text{全,後}}\) を考えます。

  • 光子は原子に吸収されて消滅します。
  • 水素原子(質量 \(M\))は、速さ \(V\) で運動を始めたので、その運動量は \(MV\) です。

したがって、吸収後の系の全運動量は、
$$
\begin{aligned}
P_{\text{全,後}} &= MV
\end{aligned}
$$
運動量保存則により、\(P_{\text{全,初}} = P_{\text{全,後}}\) なので、以下の関係式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\displaystyle\frac{h\nu}{c} &= MV \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 光子の運動量: \(p = \displaystyle\frac{h\nu}{c}\)
  • 物体の運動量: \(p = mv\)
  • 運動量保存則
計算過程

「具体的な解説と立式」で導出した式①が、そのまま原子運動の速さ \(V\) と吸収した光の振動数 \(\nu\) の間に成り立つ関係式です。

この設問の平易な説明

光のつぶ(光子)が止まっている水素原子にぶつかって吸収されるとき、運動量という「勢い」が保存されると考えます。吸収前は、光子だけが \(h\nu/c\) という勢いを持っています。吸収後は、光子の勢いを全て受け取った水素原子が \(MV\) という勢いで動き出します。これらの勢いが等しいので、\(h\nu/c = MV\) という式が成り立ちます。

結論と吟味

原子運動の速さ \(V\) と吸収した光の振動数 \(\nu\) の間に成り立つ関係式は \(\displaystyle\frac{h\nu}{c} = MV\) です。この式は、光子が持つ運動量が、吸収後にそっくりそのまま原子の運動量に変換されたと解釈できます。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{h\nu}{c} = MV\)

(2)

思考の道筋とポイント
この設問では、光子の吸収という現象の前後でのエネルギーの変化に着目します。光子が持つエネルギーが、原子の内部エネルギーの変化(電子の準位の上昇)と、原子全体の運動エネルギーの増加に使われると考え、系全体のエネルギー保存則を適用します。
この設問における重要なポイント

  • 光子のエネルギーは \(h\nu\)。
  • 原子自身のエネルギーは、内部エネルギー(電子のエネルギー準位 \(E_1\) または \(E_2\))と、原子全体の運動エネルギー(吸収前は \(0\)、吸収後は \(\displaystyle\frac{1}{2}MV^2\))の和で考える。
  • エネルギー保存則を正しく適用できるか。

具体的な解説と立式
光子が水素原子に吸収される前後で、光子と水素原子からなる系全体のエネルギーは保存されると考えます。

吸収前の系の全エネルギー \(\mathcal{E}_{\text{全,初}}\) を考えます。

  • 水素原子の内部エネルギーは \(E_1\) です。原子全体は静止しているので、運動エネルギーは \(0\) です。
  • 光子のエネルギーは \(h\nu\) です。

したがって、吸収前の系の全エネルギーは、
$$
\begin{aligned}
\mathcal{E}_{\text{全,初}} &= E_1 + h\nu
\end{aligned}
$$
次に、吸収後の系の全エネルギー \(\mathcal{E}_{\text{全,後}}\) を考えます。

  • 光子は原子に吸収されて消滅します。
  • 水素原子の内部エネルギーは \(E_2\) に変化しました。
  • 水素原子は、速さ \(V\) で運動を始めたので、その運動エネルギーは \(\displaystyle\frac{1}{2}MV^2\) です。

したがって、吸収後の系の全エネルギーは、
$$
\begin{aligned}
\mathcal{E}_{\text{全,後}} &= E_2 + \displaystyle\frac{1}{2}MV^2
\end{aligned}
$$
エネルギー保存則により、\(\mathcal{E}_{\text{全,初}} = \mathcal{E}_{\text{全,後}}\) なので、以下の関係式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
E_1 + h\nu &= E_2 + \displaystyle\frac{1}{2}MV^2 \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 光子のエネルギー: \(E = h\nu\)
  • 物体の運動エネルギー: \(K = \displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)
  • エネルギー保存則
計算過程

「具体的な解説と立式」で導出したエネルギー保存則の式②は、問題の要求に応じて \(E_1, E_2, \nu, V\) の間の関係式として整理することができます。例えば、吸収された光子のエネルギー \(h\nu\) が何に使われたかという視点から整理するために、\(E_1\) を右辺に移項します。
$$
\begin{aligned}
h\nu &= E_2 – E_1 + \displaystyle\frac{1}{2}MV^2
\end{aligned}
$$
これが求める関係式です。

この設問の平易な説明

光子が原子に吸収されるとき、エネルギーも保存されます。吸収前は、原子が持つ内部エネルギー \(E_1\) と光子のエネルギー \(h\nu\) の合計が全体のエネルギーです。吸収後は、原子の内部エネルギーが \(E_2\) に変わり、さらに原子全体が速さ \(V\) で動き出すので運動エネルギー \(\frac{1}{2}MV^2\) も持ちます。これらの合計が吸収後の全体のエネルギーです。吸収前と後で全体のエネルギーは等しいので、\(E_1 + h\nu = E_2 + \frac{1}{2}MV^2\) という式が成り立ちます。

結論と吟味

\(E_1\), \(E_2\) および \(\nu\), \(V\) の間に成り立つ関係式は \(h\nu = E_2 – E_1 + \displaystyle\frac{1}{2}MV^2\) です。この式は、吸収された光子の全エネルギー \(h\nu\) が、原子の内部エネルギーを増加させる分 (\(E_2 – E_1\)) と、原子全体を動かす運動エネルギー \(\displaystyle\frac{1}{2}MV^2\) に分配されたことを示しています。

解答 (2) \(h\nu = E_2 – E_1 + \displaystyle\frac{1}{2}MV^2\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 運動量保存則:
    • 核心: 光子と原子の相互作用において、系全体の運動量は保存されます。特に、光子が \(p=h\nu/c\) という運動量を持つという点が重要です。この法則の適用が設問(1)の鍵でした。
    • 理解のポイント:
      1. 光子の運動量: 光はエネルギーだけでなく運動量も運ぶ粒子であることを理解します。
      2. 系の定義: 相互作用の前後で「光子+原子」という系を考え、その系全体の運動量の総和が一定に保たれると考えます。
  • エネルギー保存則:
    • 核心: 同様に、光子と原子の相互作用において、系全体のエネルギーは保存されます。光子のエネルギー \(E=h\nu\) が、原子の内部エネルギーの変化と原子の運動エネルギーに変換されるというエネルギーの流れを理解することが設問(2)の鍵でした。
    • 理解のポイント:
      1. エネルギーの種類: この問題で考慮すべきエネルギーは「光子のエネルギー」「原子の内部エネルギー(電子のエネルギー準位)」「原子全体の運動エネルギー」の3種類です。
      2. エネルギーの収支: 吸収された光子のエネルギーが、他の2つのエネルギーの増加分に等しいという、エネルギーの収支関係を正しく立式します。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • 原子からの光子の放出(発光): この場合は、原子が高いエネルギー準位から低いエネルギー準位に移る際に光子を放出します。運動量保存則とエネルギー保存則は同様に成り立ちますが、光子が放出されるため、原子は光子と反対向きに反跳します。
    • コンプトン効果: X線などの高エネルギー光子が電子によって散乱される現象です。ここでも、光子と電子の系で運動量保存則とエネルギー保存則が用いられ、散乱後の光子の波長変化などを議論します。
    • 原子核反応: 原子核が粒子を吸収したり放出したりする反応でも、反応の前後でエネルギー(質量エネルギーを含む)と運動量が保存されるという、全く同じ考え方を適用します。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「衝突」「吸収」「放出」「散乱」などのキーワード: これらは粒子間の相互作用を示唆しており、運動量保存則やエネルギー保存則の適用の可能性が高いです。
    2. 系の定義: どの範囲を一つの「系」として考えるか(例:光子のみか、原子のみか、光子+原子か)。保存則は定義された系に対して適用されます。
    3. 相互作用前後の状態の明確化: 各粒子(または物体)の質量、速度(運動量)、エネルギー(内部エネルギー、運動エネルギーなど)を、相互作用が起こる直前と直後でそれぞれリストアップします。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 光子の運動量の無視または誤解:
    • 誤解: 光子は質量ゼロなので運動量もゼロだと考えてしまう。
    • 対策: 光子の運動量は \(p=h\nu/c\) または \(p=h/\lambda\) という、質量に依存しない特別な式で与えられることを徹底して覚えます。
  • 原子の反跳エネルギーの無視:
    • 誤解: 光の吸収・放出は原子の内部エネルギーの変化(電子の励起・失活)のみで完結すると考え、原子全体の運動エネルギーの変化を見落としてしまう。
    • 対策: 問題文に「原子は…速さVの運動を始めた」のように、原子全体の運動状態の変化が明記されている場合は、必ずその運動エネルギーをエネルギー保存則の式に含めます。
  • エネルギー準位の差 \(E_2 – E_1\) の符号の扱い:
    • 誤解: エネルギー保存則の式を立てる際に、\(E_1\) と \(E_2\) の項の符号を間違える。
    • 対策: \(E_1\) は吸収前の内部エネルギー、\(E_2\) は吸収後の内部エネルギーです。エネルギー保存則の基本に立ち返り、「(吸収前の全エネルギー)=(吸収後の全エネルギー)」という形(\(E_1 + h\nu = E_2 + \frac{1}{2}MV^2\))で立式すれば、符号ミスを防ぎやすくなります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 運動量保存則 (\(P_{\text{前総和}} = P_{\text{後総和}}\)):
    • 選定理由: 粒子の「衝突」や「合体・分裂」といった相互作用を扱うため。
    • 適用根拠: 光子と原子の吸収現象は、短時間に行われる「内力」による相互作用であり、この間、系(光子+原子)に働く「外力」は無視できるため、系の全運動量は保存されると考えるのが物理的に最も妥当だからです。
  • エネルギー保存則 (\(E_{\text{前総和}} = E_{\text{後総和}}\)):
    • 選定理由: 相互作用におけるエネルギーの出入りや変換を記述するため。
    • 適用根拠: 相互作用の前後で、エネルギーが他の形態(例えば熱エネルギーなど)に散逸したり、外部からエネルギーが供給されたりしない限り、系全体のエネルギー総量は保存されるという物理学の大原則だからです。
  • 光子のエネルギー \(h\nu\) と運動量 \(h\nu/c\):
    • 選定理由: 光が関わる相互作用を、粒子として定量的に扱うため。
    • 適用根拠: これらは、光の粒子性(光量子仮説)に基づく、光子の基本的な物理量を表す定義式だからです。これらを用いなければ、光を含む系の保存則を議論できません。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 記号の明確な区別:
    • 特に注意すべき点: \(\nu\) (ニュー、振動数) と \(V\) (ブイ、速さ) は形が似ているため、丁寧に書き分け、読み間違えないように注意します。
    • 日頃の練習: 自分でノートに解く際に、意識して形を変えて書く(例:\(\nu\)は筆記体にするなど)習慣をつけると良いでしょう。
  • 物理量の単位:
    • 特に注意すべき点: この問題では具体的な数値計算はありませんが、各項がエネルギーの次元なのか運動量の次元なのかを常に意識することで、立式の誤りを減らせます。
    • 日頃の練習: 新しい公式を学ぶたびに、その式の両辺の単位(次元)が一致しているかを確認する癖をつけましょう。
  • 式の整理と移項:
    • 特に注意すべき点: エネルギー保存則の式を \(h\nu = \dots\) の形に整理する際など、移項時の符号ミスに気をつけます。
    • 日頃の練習: 式を立てた後、問題で問われている形に合わせて変形する練習を積むことが重要です。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的意味の再確認:
    • (1)の式 \(MV = h\nu/c\): これは、光子が持つ運動量がすべて原子に伝わったことを意味し、運動量保存の観点から自然な結果です。
    • (2)の式 \(h\nu = (E_2 – E_1) + \frac{1}{2}MV^2\): これは、吸収された光子のエネルギーが、原子の内部状態を変化させるエネルギーと原子全体を動かすエネルギーに分配されたことを示しており、エネルギー保存の観点から妥当です。
  • 極端なケースや単純なケースとの比較:
    • もし原子が非常に重い (\(M \rightarrow \infty\)) と仮定した場合:
      • (1)の式から、同じ運動量 \(h\nu/c\) を受け取っても、速さ \(V = (h\nu/c)/M\) は \(0\) に近づきます。
      • (2)の式で、運動エネルギー \(\frac{1}{2}MV^2 = \frac{1}{2M}(h\nu/c)^2\) も \(0\) に近づきます。
      • その結果、エネルギー保存の式は \(h\nu \approx E_2 – E_1\) となり、原子の反跳を無視した場合のボーアの振動数条件に一致します。これは、重い物体は動かしにくいという直感とも合致します。
  • 他の法則との整合性:
    • 導かれた二つの式は、運動量保存則とエネルギー保存則という、物理学の根幹をなす法則に基づいているため、それらと矛盾しない形で導出されているかを確認することが重要です。
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問題148 (岡山大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、X線の発生(連続X線と特性X線)およびX線の回折(ブラッグ反射)という、X線に関する二つの主要なテーマを扱っています。前半では、X線管内で電子が加速されてターゲットに衝突しX線を発生させる過程を、エネルギー保存則の観点から考察します。後半では、発生したX線が結晶格子によって特定の方向に強く反射される現象(ブラッグ反射)を、波の干渉条件として考察します。これらの現象を理解するためには、電子のエネルギー、光子のエネルギー、そして波の干渉条件に関する知識が必要です。

与えられた条件
  • 電気素量: \(e = 1.6 \times 10^{-19} \, \text{[C]}\)
  • 光速: \(c = 3.0 \times 10^8 \, \text{[m/s]}\)
  • プランク定数: \(h = 6.6 \times 10^{-34} \, \text{[J}\cdot\text{s]}\)
  • X線管の加速電圧: \(V\) [V] (設問(2)で求める)
  • 図1: X線スペクトル(横軸: 波長 \(\lambda \, [\times 10^{-10} \, \text{m}]\)、縦軸: X線強度)
    • 最短波長 \(\lambda_{\text{min}} \approx 0.60 \times 10^{-10} \, \text{m}\) (図から読み取り)
    • \(K_\alpha\) 線の波長 \(\lambda_{K\alpha} \approx 1.5 \times 10^{-10} \, \text{m}\) (図から読み取り)
  • 図2: ブラッグ反射の模式図
  • 結晶の格子面間隔: \(d = 8.0 \times 10^{-11} \, \text{[m]}\) (設問(5)で使用)
  • X線の入射角(格子面となす角): \(\theta = 45^\circ\) (設問(5)で使用)
  • 反射の次数: \(n = 1, 2, 3, \dots\)
問われていること
  1. (1) 電子の運動エネルギーがすべてX線光子のエネルギーに変わるときのX線の波長(\(e, V, c, h\) を用いて表す)。
  2. (2) 図1のスペクトルを得るための加速電圧 \(V\) [V]。
  3. (3) 図1の \(K_\alpha\) 特性X線が発生する際のエネルギー準位間のエネルギー差 \(\Delta E\) [eV]。
  4. (4) 散乱X線が強め合うための条件(ブラッグの条件)。
  5. (5) 特定の条件で強く散乱されるX線の波長 [m]。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【注記】本問については、模範解答のアプローチが最も標準的かつ効率的であるため、別解の提示は省略します。

この問題は、X線の物理学における基本的な二つの側面、すなわちX線の発生機構X線の回折現象について深く掘り下げています。X線は、その高いエネルギーと短い波長のために、物質の内部構造を調べる手段や医療診断など、多岐にわたる応用があります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電子の加速とエネルギー: 電子が電位差 \(V\) で加速されるとき、得る運動エネルギーは \(eV\) です。
  2. 光子のエネルギー: 波長 \(\lambda\) の光子(X線も光子の一種)が持つエネルギーは \(E = hc/\lambda\) です。
  3. X線の発生: 電子の運動エネルギーが光子のエネルギーに変換されることでX線が発生します。運動エネルギーがすべて1個の光子に変換されるとき、波長は最短になります。特性X線は、原子内のエネルギー準位の差に等しいエネルギーを持ちます。
  4. ブラッグの条件: 結晶によるX線の回折で、特定の方向に強い反射が起こる条件は \(2d\sin\theta = n\lambda\) です。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 設問(1)と(2)は連続X線の発生に関連しています。まず、電子の運動エネルギーとX線光子のエネルギーの関係から最短波長を理論的に導き(設問1)、次に実験データ(図1のスペクトル)から実際の最短波長を読み取って、それに対応する加速電圧を求めます(設問2)。
  2. 設問(3)は特性X線の発生に関連しています。図1のスペクトルから特定の特性X線(\(K_\alpha\)線)の波長を読み取り、そのX線光子が持つエネルギー(これは原子内のエネルギー準位差に相当)を計算します。
  3. 設問(4)と(5)はX線の回折(ブラッグ反射)に関連しています。まず、ブラッグ反射が起こるための一般条件式を記述し(設問4)、次に与えられた具体的な条件(格子面間隔、入射角)と図1のスペクトル情報を組み合わせて、実際に強く散乱されるX線の波長を決定します(設問5)。

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