「名問の森」徹底解説(40〜42問):未来の得点力へ!完全マスター講座【波動Ⅱ・電磁気・原子】

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問題40 電磁誘導 (名古屋大+静岡大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(ローレンツ力の積分)
      • 模範解答はファラデーの電磁誘導の法則(磁束の変化)を用いていますが、別解では「磁場中を運動する導体棒内の電荷が受けるローレンツ力」に着目します。
      • 回転運動では速度 \(v = r\omega\) が中心からの距離 \(r\) に比例して変化するため、微小部分の起電力 \(de = vBdr\) を積分して全体の起電力を導出します。
    • 設問(4)の別解: エネルギー保存則を用いた解法
      • 模範解答は力のモーメントのつりあいから外力を求め、移動距離を掛けて仕事を計算していますが、別解では「外力の仕事率=ジュール熱」というエネルギー保存則を用いて、力学的な計算をショートカットして仕事を求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 微積分の解法: 「磁束の変化」が見えにくい状況や、導体棒の一部のみが磁場中にあるような複雑な状況でも、ローレンツ力の積分なら確実に起電力を計算できるため、応用力が身につきます。
    • エネルギー保存則: 力の作用点やモーメントのアームの長さを考慮する必要がなく、計算ミスを減らす検算手段として極めて有効です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「一様磁場中を回転する扇形コイルの電磁誘導」です。
回転運動に伴う磁束の変化を追跡し、誘導起電力、誘導電流、そしてエネルギー収支(仕事とジュール熱)の関係を総合的に考察します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ファラデーの電磁誘導の法則: 回路を貫く磁束 \(\Phi\) の変化率が誘導起電力になります(\(V = – \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\))。
  2. レンツの法則: 誘導起電力は、磁束の変化を妨げる向きに生じます。
  3. 導体棒の回転による誘導起電力: 磁場中を回転する導体棒には、ローレンツ力により \(V = \frac{1}{2}\omega B l^2\) の起電力が生じます。
  4. 力のモーメント: 回転運動を持続させるためには、電磁力による逆向きのモーメントに抗う外力のモーメントが必要です。
  5. エネルギー保存則: 外力がした仕事は、最終的に抵抗でのジュール熱として消費されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)は、回転角 \(\theta = \omega t\) に比例して磁場中の面積が増減することに着目し、グラフを描きます。
  2. (2)は、(1)のグラフの傾きから誘導起電力を求め、オームの法則で電流を計算します。
  3. (3)は、電流が流れている時間を考慮してジュール熱を積算します。
  4. (4)は、力のモーメントのつりあいから外力を求め、移動距離との積で仕事を計算します。
  5. (Q)は、作用点の位置が変わった場合の影響をモーメントの式で考察します。

問(1)

思考の道筋とポイント
時刻 \(t=0\) において、扇形コイルは第3象限(\(x<0, y<0\))にあり、辺OPは \(y\) 軸負方向、辺OQは \(x\) 軸負方向を向いています。
ここから反時計回りに回転すると、コイルは \(x \ge 0\) の領域(第4象限および第1象限)にある磁場へ突入していきます。
回転角 \(\theta\) は角速度 \(\omega\) を用いて \(\theta = \omega t\) と表せます。
コイルが磁場領域に入っている部分の面積 \(S\) を、時間 \(t\) の関数として区間ごとに考えます。

各区間の状況分析:

  • 区間I (\(0 \le \omega t \le \frac{\pi}{2}\)):
    • コイルは第3象限から第4象限(磁場あり)へ進入します。
    • 磁場中にある部分の中心角は \(\omega t\) です。
  • 区間II (\(\frac{\pi}{2} \le \omega t \le \pi\)):
    • コイル全体が磁場中(第4象限から第1象限)にあります。
    • 磁場中の面積は扇形全体で一定です。
  • 区間III (\(\pi \le \omega t \le \frac{3\pi}{2}\)):
    • コイルは第1象限(磁場あり)から第2象限(磁場なし)へ脱出します。
    • 磁場中に残っている部分の中心角は、全体 \(90^\circ\) から脱出した分 \(\omega t – \pi\) を引いたもの、あるいは \(270^\circ – \omega t\) と考えられます。
  • 区間IV (\(\frac{3\pi}{2} \le \omega t \le 2\pi\)):
    • コイルは完全に磁場外(第2象限から第3象限)にあります。

この設問における重要なポイント

  • 扇形の面積公式: 半径 \(l\)、中心角 \(\theta\) の扇形の面積は \(S = \frac{1}{2}l^2 \theta\) です。
  • 磁束の定義: 一様磁場なので \(\Phi = BS\) です。

具体的な解説と立式
区間I (\(0 \le t \le \frac{\pi}{2\omega}\)):
磁場中に入り込んだ部分の中心角は \(\omega t\) です。
面積 \(S\) と磁束 \(\Phi\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
S &= \frac{1}{2} l^2 (\omega t) \\[2.0ex] \Phi &= BS \\[2.0ex] &= B \cdot \frac{1}{2} l^2 \omega t \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
これは原点を通る傾き一定の直線です。

区間II (\(\frac{\pi}{2\omega} \le t \le \frac{\pi}{\omega}\)):
コイル全体が磁場中にあるため、面積は一定(半径 \(l\)、中心角 \(\pi/2\) の扇形)です。
$$
\begin{aligned}
\Phi &= B \cdot \left( \frac{1}{2} l^2 \cdot \frac{\pi}{2} \right) \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$

区間III (\(\frac{\pi}{\omega} \le t \le \frac{3\pi}{2\omega}\)):
コイルが磁場から出ていく過程です。
磁場中に残っている部分の中心角は、最大角 \(\frac{\pi}{2}\) から、この区間で回転した分 \(\omega (t – \frac{\pi}{\omega})\) を引いたものです。
$$
\begin{aligned}
\Phi &= \frac{\pi B l^2}{4} – \frac{1}{2} B l^2 \omega \left( t – \frac{\pi}{\omega} \right) \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

区間IV (\(\frac{3\pi}{2\omega} \le t \le \frac{2\pi}{\omega}\)):
磁場外なので \(\Phi = 0\) です。

使用した物理公式

  • 扇形の面積: \(S = \frac{1}{2}r^2 \theta\)
  • 磁束: \(\Phi = BS\)
計算過程

式①より、\(t = \frac{\pi}{2\omega}\) のときの最大値 \(\Phi_{\text{最大}}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\Phi_{\text{最大}} &= \frac{1}{2} B l^2 \omega \cdot \frac{\pi}{2\omega} \\[2.0ex] &= \frac{\pi B l^2}{4}
\end{aligned}
$$
式②も同様に \(\frac{\pi B l^2}{4}\) となります。
式③は \(t = \frac{3\pi}{2\omega}\) で \(0\) になります。
これらに基づきグラフを描きます。

この設問の平易な説明

コイルが磁石のエリアに入っていくときは、入った分だけ磁束が増えます。回転スピードが一定なので、増え方も一定(直線)です。
すっぽり入ってしまうと、回転しても磁束の量は変わりません(一定)。
出ていくときは、入ったときと同じペースで減っていきます。
最後は磁石のないエリアを回るのでゼロのままです。

結論と吟味

グラフは \(t=0\) から直線的に増加し、\(t=\frac{\pi}{2\omega}\) で最大値 \(\frac{\pi B l^2}{4}\) に達し、\(t=\frac{\pi}{\omega}\) まで一定、その後 \(t=\frac{3\pi}{2\omega}\) まで直線的に減少し \(0\) になり、以降は \(0\) が続く形になります。これは物理的状況と完全に一致します。

解答 (1) グラフの概形は以下の通りです。
横軸: \(t\)、縦軸: \(\Phi\)
\(0 \le t \le \frac{\pi}{2\omega}\): 原点から \(\left(\frac{\pi}{2\omega}, \frac{\pi B l^2}{4}\right)\) へ向かう直線。
\(\frac{\pi}{2\omega} \le t \le \frac{\pi}{\omega}\): 高さ \(\frac{\pi B l^2}{4}\) の水平線。
\(\frac{\pi}{\omega} \le t \le \frac{3\pi}{2\omega}\): \(\left(\frac{\pi}{\omega}, \frac{\pi B l^2}{4}\right)\) から \(\left(\frac{3\pi}{2\omega}, 0\right)\) へ向かう直線。
\(\frac{3\pi}{2\omega} \le t \le \frac{2\pi}{\omega}\): \(\Phi=0\) の水平線。

問(2)

思考の道筋とポイント
誘導起電力 \(V\) は、ファラデーの電磁誘導の法則により、(1)で描いた \(\Phi-t\) グラフの「傾きの大きさ」に相当します。
$$
V = – \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}
$$
電流 \(I\) はオームの法則 \(I = V/R\) で求まります。
向きについてはレンツの法則(磁束の変化を妨げる向き)で判断します。
設問では「O \(\to\) P の向き」を正としています。

各区間の電流分析:

  • 区間I:
    • 磁束(裏向き)が増加 \(\to\) レンツの法則より「表向き」の磁場を作る向きに電流が流れる \(\to\) 反時計回り(O \(\to\) Q \(\to\) P \(\to\) O)。
    • O \(\to\) P 向きに対しては逆流なので、符号は
    • 大きさはグラフの傾き(一定)に比例。
  • 区間II:
    • 磁束一定 \(\to\) 起電力なし \(\to\) 電流 0
  • 区間III:
    • 磁束(裏向き)が減少 \(\to\) レンツの法則より「裏向き」の磁場を作る向きに電流が流れる \(\to\) 時計回り(O \(\to\) P \(\to\) Q \(\to\) O)。
    • O \(\to\) P 向きなので、符号は
  • 区間IV:
    • 磁束なし \(\to\) 電流 0

この設問における重要なポイント

  • ファラデーの法則: \(V = \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|\)
  • オームの法則: \(I = \frac{V}{R}\)
  • 符号の定義: O \(\to\) P が正。反時計回り電流(P \(\to\) O)は負、時計回り電流(O \(\to\) P)は正となります。

具体的な解説と立式
区間I (\(0 \le t \le \frac{\pi}{2\omega}\)):
(1)の式①より、磁束の変化率(グラフの傾き)は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\frac{\Delta \Phi}{\Delta t} &= \frac{1}{2} B l^2 \omega
\end{aligned}
$$
誘導起電力の大きさ \(V_I\) は、
$$
\begin{aligned}
V_I &= \frac{1}{2} B l^2 \omega
\end{aligned}
$$
電流の大きさ \(|I_I|\) は、
$$
\begin{aligned}
|I_I| &= \frac{V_I}{R}
\end{aligned}
$$
向きは反時計回り(P \(\to\) O)なので、符号は負です。
$$
\begin{aligned}
I_I &= – |I_I| \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

区間III (\(\frac{\pi}{\omega} \le t \le \frac{3\pi}{2\omega}\)):
グラフの傾きは区間Iと符号が逆で大きさは同じです。
誘導起電力の大きさ \(V_{III}\) は区間Iと同じです。
向きは時計回り(O \(\to\) P)なので、符号は正です。
$$
\begin{aligned}
I_{III} &= |I_I| \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$

区間II, IV:
磁束の変化がないため、電流は \(0\) です。

使用した物理公式

  • ファラデーの法則: \(V = – \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\)
  • オームの法則: \(I = \frac{V}{R}\)
計算過程

式④を計算します。
$$
\begin{aligned}
I_I &= – \frac{1}{R} \cdot \frac{1}{2} B l^2 \omega \\[2.0ex] &= – \frac{B l^2 \omega}{2R}
\end{aligned}
$$
式⑤を計算します。
$$
\begin{aligned}
I_{III} &= \frac{B l^2 \omega}{2R}
\end{aligned}
$$
これらに基づきグラフを描きます。

この設問の平易な説明

磁束のグラフの「坂の急さ」が電圧になります。
最初は一定のペースで登り坂なので、一定のマイナス電圧(逆向き電流)が発生します。
頂上の平らなところでは電圧ゼロ。
下り坂では、登りと同じペースなので、一定のプラス電圧(正向き電流)が発生します。

結論と吟味

区間Iで負の定電流、区間IIで0、区間IIIで正の定電流、区間IVで0となります。
磁束の増減とレンツの法則による向きの予測と一致します。

解答 (2) グラフの概形は以下の通りです。
横軸: \(t\)、縦軸: \(I\)
\(0 < t < \frac{\pi}{2\omega}\): \(I = – \frac{B l^2 \omega}{2R}\) (一定)
\(\frac{\pi}{2\omega} < t < \frac{\pi}{\omega}\): \(I = 0\)
\(\frac{\pi}{\omega} < t < \frac{3\pi}{2\omega}\): \(I = \frac{B l^2 \omega}{2R}\) (一定)
\(\frac{3\pi}{2\omega} < t < \frac{2\pi}{\omega}\): \(I = 0\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(ローレンツ力の積分)

思考の道筋とポイント
ファラデーの法則(磁束変化)ではなく、導体棒OPが磁場中を横切る際に受ける「ローレンツ力」から起電力を直接導出します。
回転運動では、中心Oからの距離 \(r\) によって速度 \(v = r\omega\) が異なるため、微小部分の起電力を積分して全体を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 回転する導体棒の速度: 中心から距離 \(r\) の点の速度は \(v = r\omega\) です。
  • 微小誘導起電力: 微小長さ \(dr\) の部分に生じる起電力は \(de = vBdr = (r\omega)Bdr\) です。

具体的な解説と立式
区間Iにおいて、辺OPは磁場中を速度 \(v\) で横切っています。
中心Oから距離 \(r\) の位置にある微小部分 \(dr\) を考えます。
この部分の速度は \(v = r\omega\) です。
生じる微小な誘導起電力 \(dV\) は、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
dV &= v B \, dr \\[2.0ex] &= (r\omega) B \, dr
\end{aligned}
$$
これを棒の全長 \(0\) から \(l\) まで積分して、辺OP全体の起電力 \(V_{OP}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_{OP} &= \int_0^l \omega B r \, dr
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ローレンツ力による起電力(微分形): \(dV = vBdr\)
  • 回転速度: \(v = r\omega\)
計算過程

積分を実行します。
$$
\begin{aligned}
V_{OP} &= \omega B \left[ \frac{1}{2}r^2 \right]_0^l \\[2.0ex] &= \omega B \cdot \frac{1}{2} l^2 \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} B l^2 \omega
\end{aligned}
$$
これはファラデーの法則から求めた結果と完全に一致します。
向きについては、ローレンツ力 \(q\vec{v} \times \vec{B}\) の向き(フレミング左手の法則の逆)で判断します。
速度 \(v\) は回転方向、磁場 \(B\) は裏向きなので、正電荷には中心O向きの力が働きます。
よって P \(\to\) O 向きとなり、符号は負です。

この設問の平易な説明

回転する棒の先端は速く、根元は遅いので、場所によって発電する強さが違います。
そこで、棒を細かく刻んで、それぞれの場所での発電量を計算し、最後に全部足し合わせる(積分する)ことで、棒全体の電圧を正確に求めました。

結論と吟味

結果は \(V = \frac{1}{2} B l^2 \omega\) となり、磁束変化から求めた値と一致します。

解答 (別解) 上記参照

問(3)

思考の道筋とポイント
ジュール熱 \(Q\) は、消費電力 \(P = I^2 R\) と時間 \(t\) の積で求まります。
電流が流れているのは、区間Iと区間IIIのみです。
それぞれの区間の継続時間は、\(90^\circ\) 回転する時間なので \(T/4\) です。
周期 \(T = \frac{2\pi}{\omega}\) なので、各区間の時間は \(\frac{\pi}{2\omega}\) です。

この設問における重要なポイント

  • ジュール熱の公式: \(Q = I^2 R t\) (電流一定の場合)
  • 対称性: 区間Iと区間IIIでは電流の向きは逆ですが、大きさは同じなので、発生する熱量は同じです。

具体的な解説と立式
区間Iでの電流の大きさは \(|I| = \frac{B l^2 \omega}{2R}\) です。
この区間の時間 \(\Delta t\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta t &= \frac{\pi/2}{\omega} \\[2.0ex] &= \frac{\pi}{2\omega}
\end{aligned}
$$
区間Iで発生するジュール熱 \(Q_I\) は、
$$
\begin{aligned}
Q_I &= |I|^2 R \Delta t \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
区間IIIでも全く同じ熱量 \(Q_{III}\) が発生します。
1回転全体のジュール熱 \(Q_{\text{総}}\) はこれらの和です。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{総}} &= Q_I + Q_{III} \\[2.0ex] &= 2 \times Q_I \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ジュール熱: \(Q = I^2 R t\)
計算過程

式⑥を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q_I &= \left( \frac{B l^2 \omega}{2R} \right)^2 R \cdot \frac{\pi}{2\omega} \\[2.0ex] &= \frac{B^2 l^4 \omega^2}{4R^2} \cdot R \cdot \frac{\pi}{2\omega} \\[2.0ex] &= \frac{\pi B^2 l^4 \omega}{8R}
\end{aligned}
$$
式⑦より合計を求めます。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{総}} &= 2 \times \frac{\pi B^2 l^4 \omega}{8R} \\[2.0ex] &= \frac{\pi B^2 l^4 \omega}{4R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電流が流れている間だけ、抵抗が熱を出します。
電流が流れるのは、磁石に入るときと出るときだけです。
その2回のタイミングで発生する熱を計算して合計しました。

結論と吟味

単位を確認すると、\([\text{J}]\) になっています。
\(\frac{[B]^2 [L]^4 [\omega]}{[R]} = \frac{(\text{V}\cdot\text{s}/\text{m}^2)^2 \cdot \text{m}^4 \cdot (1/\text{s})}{\text{V}/\text{A}} = \text{V}\cdot\text{A}\cdot\text{s} = \text{J}\)。正しいです。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{\pi B^2 l^4 \omega}{4R}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
コイルを一定の角速度 \(\omega\) で回転させるためには、電磁力による「回転を止める向きのモーメント」に打ち勝つ外力が必要です。
外力 \(f\) は点P(中心から距離 \(l\))に、円弧の接線方向に加えられます。
力のモーメントのつりあいを考えます。

区間Iの力の分析:

  • 電流は P \(\to\) O 向き。磁場は裏向き。
  • 電磁力 \(F\) の向き:フレミング左手の法則より、電流(上)、磁場(奥) \(\to\) 左向き
  • これは回転(反時計回り)を妨げる向きです。
  • 電磁力 \(F\) の大きさは \(F = IBl\) です。
  • 電磁力の作用点は、導体棒OPの中点(\(l/2\))と考えられます(一様磁場中の直線電流なので)。
  • 外力 \(f\) は点P(距離 \(l\))に働き、回転方向(反時計回り)を正とします。

モーメントのつりあい式:
$$
(\text{反時計回りのモーメント}) = (\text{時計回りのモーメント})
$$
$$
f \cdot l = F \cdot \frac{l}{2}
$$

この設問における重要なポイント

  • 電磁力: \(F = IBl\)
  • 力のモーメント: \(M = (\text{力}) \times (\text{腕の長さ})\)
  • 作用点: 一様磁場中の直線電流が受ける力の作用点は、その導線の中点です。

具体的な解説と立式
区間I (\(0 \le t \le \frac{\pi}{2\omega}\)):
電流の大きさは \(I = \frac{B l^2 \omega}{2R}\) です。
電磁力の大きさ \(F\) は、
$$
\begin{aligned}
F &= I B l \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
点O周りの力のモーメントのつりあいより、
$$
\begin{aligned}
f \cdot l &= F \cdot \frac{l}{2} \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$

区間III (\(\frac{\pi}{\omega} \le t \le \frac{3\pi}{2\omega}\)):
電流は O \(\to\) P 向き(下向き)。磁場は裏向き。
電磁力 \(F\) の向き:電流(下)、磁場(奥) \(\to\) 右向き
これも回転(反時計回り)を妨げる向きです。
電流の大きさは区間Iと同じなので、必要な外力 \(f\) も区間Iと同じ大きさ、同じ向き(正)になります。

区間II, IV:
電流が流れないため電磁力はなく、外力 \(f = 0\) です。

仕事 \(W\):
外力 \(f\) が働いている区間はIとIIIです。
点Pの移動距離 \(s\) は、それぞれの区間で \(90^\circ\) 分の円弧の長さです。
$$
\begin{aligned}
s &= l \cdot \frac{\pi}{2}
\end{aligned}
$$
合計の仕事 \(W\) は、(力) \(\times\) (合計距離) です。
$$
\begin{aligned}
W &= f \times (s + s) \\[2.0ex] &= f \times l\pi \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電磁力: \(F = IBl\)
  • モーメントのつりあい: \(f l = F \frac{l}{2}\)
  • 仕事: \(W = Fs\)
計算過程

式⑧を計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= \frac{B l^2 \omega}{2R} \cdot B l \\[2.0ex] &= \frac{B^2 l^3 \omega}{2R}
\end{aligned}
$$
式⑨より外力 \(f\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
f &= F \cdot \frac{1}{2} \\[2.0ex] &= \frac{B^2 l^3 \omega}{2R} \cdot \frac{1}{2} \\[2.0ex] &= \frac{B^2 l^3 \omega}{4R}
\end{aligned}
$$
式⑩より仕事を求めます。
$$
\begin{aligned}
W &= \frac{B^2 l^3 \omega}{4R} \cdot l\pi \\[2.0ex] &= \frac{\pi B^2 l^4 \omega}{4R}
\end{aligned}
$$
これは問(3)のジュール熱と一致します。

この設問の平易な説明

コイルが磁石の間を通るとき、発電ブレーキ(電磁力)がかかります。
このブレーキに逆らって一定のスピードで回し続けるには、手で力を加えて押してやる必要があります。
「てこの原理」を使って、中心に近いブレーキ力と、端っこを押す手の力のバランスを計算しました。
また、手が押して動かしたエネルギー(仕事)は、すべて電気の熱に変わったことが確認できました。

結論と吟味

外力 \(f\) のグラフは、区間IとIIIで正の定数 \(\frac{B^2 l^3 \omega}{4R}\)、それ以外で0となります。
仕事 \(W\) はジュール熱と一致し、エネルギー保存則を満たしています。

解答 (4) グラフの概形は以下の通りです。
横軸: \(t\)、縦軸: \(f\)
\(0 < t < \frac{\pi}{2\omega}\): \(f = \frac{B^2 l^3 \omega}{4R}\) (一定)
\(\frac{\pi}{2\omega} < t < \frac{\pi}{\omega}\): \(f = 0\)
\(\frac{\pi}{\omega} < t < \frac{3\pi}{2\omega}\): \(f = \frac{B^2 l^3 \omega}{4R}\) (一定)
\(\frac{3\pi}{2\omega} < t < \frac{2\pi}{\omega}\): \(f = 0\)
仕事 \(W\): \(\displaystyle \frac{\pi B^2 l^4 \omega}{4R}\)
別解: エネルギー保存則を用いた解法

思考の道筋とポイント
外力がする仕事率 \(P_{\text{外}}\) は、回路で消費される電力(ジュール熱の発生率) \(P_{\text{J}}\) と等しくなります。
これを利用すれば、力のモーメントを考えずに仕事を直接求めることができます。

この設問における重要なポイント

  • 仕事率と電力の関係: \(f v = I^2 R\)
  • 回転速度: 点Pの速度は \(v = l\omega\) です。

具体的な解説と立式
外力 \(f\) の作用点Pの速度は \(v = l\omega\) です。
外力の仕事率 \(P_{\text{外}}\) は \(f v\) です。
これが消費電力 \(I^2 R\) と等しいので、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
f (l\omega) &= I^2 R \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
また、1回転の仕事 \(W\) は、発生した総ジュール熱と等しいので、問(3)の答えがそのまま \(W\) になります。
$$
\begin{aligned}
W &= Q_{\text{総}} \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 仕事率: \(P = Fv\)
  • 消費電力: \(P = I^2 R\)
  • エネルギー保存則: \(W = Q\)
計算過程

式⑪より \(f\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{I^2 R}{l\omega} \\[2.0ex] &= \frac{1}{l\omega} \cdot \left( \frac{B l^2 \omega}{2R} \right)^2 R \\[2.0ex] &= \frac{1}{l\omega} \cdot \frac{B^2 l^4 \omega^2}{4R^2} \cdot R \\[2.0ex] &= \frac{B^2 l^3 \omega}{4R}
\end{aligned}
$$
式⑫より仕事を求めます。
$$
\begin{aligned}
W &= \frac{\pi B^2 l^4 \omega}{4R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「手がした仕事」=「発生した熱」です。
これを使えば、力の計算を飛ばして、いきなり答え(仕事)を出すことができます。

結論と吟味

計算量が大幅に減り、検算としても有効です。

解答 (別解) 上記参照

問(Q)

思考の道筋とポイント
外力を加える位置を、点P(距離 \(l\))から点A(距離 \(r\))に変更します。
必要な外力を \(f_r\) とします。
コイルを回転させるために必要な「力のモーメント」は変わりません(電磁力 \(F\) は変わらないため)。
したがって、外力のモーメント \(f_r \times r\) が、元のモーメント \(f \times l\) と等しくなるはずです。

この設問における重要なポイント

  • モーメントの保存: 作用点が変わっても、回転軸周りに必要なトルク(回転力)は一定です。
  • 仕事の不変性: 必要なエネルギー(ジュール熱)は変わらないため、仕事 \(W_r\) も変わりません。

具体的な解説と立式
モーメントのつりあいの式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
f_r \cdot r &= F \cdot \frac{l}{2}
\end{aligned}
$$
問(4)の式⑨ \(f \cdot l = F \cdot \frac{l}{2}\) と比較すると、
$$
\begin{aligned}
f_r \cdot r &= f \cdot l \quad \cdots ⑬
\end{aligned}
$$
仕事 \(W_r\) については、エネルギー保存則より、発生するジュール熱が変わらない以上、外部から供給すべきエネルギーも変わりません。
$$
\begin{aligned}
W_r &= W \quad \cdots ⑭
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • モーメントのつりあい: \(f_r r = \text{const}\)
計算過程

式⑬より \(f_r\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
f_r &= \frac{l}{r} f \\[2.0ex] &= \frac{l}{r} \cdot \frac{B^2 l^3 \omega}{4R} \\[2.0ex] &= \frac{B^2 l^4 \omega}{4Rr}
\end{aligned}
$$
式⑭より \(W_r\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
W_r &= \frac{\pi B^2 l^4 \omega}{4R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

ドアを押し開けるとき、取っ手(遠く)を押すより、蝶番の近くを押すほうが強い力がいります。
作用点 \(r\) が小さくなると、必要な力 \(f_r\) は大きくなります(反比例)。
しかし、動かす距離は短くなるので、トータルの仕事(力×距離)は変わりません。

結論と吟味

\(f_r\) は \(r\) に反比例し、\(W_r\) は \(r\) に依存しません。物理的に妥当です。

解答 (Q) 外力 \(f_r\): \(\displaystyle \frac{B^2 l^4 \omega}{4Rr}\), 仕事 \(W_r\): \(\displaystyle \frac{\pi B^2 l^4 \omega}{4R}\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • ファラデーの電磁誘導の法則とローレンツ力の等価性
    • 核心: 「磁束の変化」というマクロな視点と、「電荷が受けるローレンツ力」というミクロな視点は、数学的に完全に等価であり、同じ現象の異なる側面に過ぎません。
    • 理解のポイント:
      • 導体棒が動く問題では \(V=vBl\)(ローレンツ力)が直感的ですが、回路の形状が変わる場合や磁場が時間変化する場合は \(V=-d\Phi/dt\)(ファラデー)が強力です。
      • 本問のように両方のアプローチで解くことで、物理法則の整合性を深く理解できます。
  • エネルギー保存則(仕事とジュール熱)
    • 核心: 電磁誘導現象において、外力がした仕事は、最終的に抵抗で発生するジュール熱として消費されます。
    • 理解のポイント:
      • 力学的な仕事 \(W\) と電気的な熱量 \(Q\) が等しい(\(W=Q\))という関係は、計算のショートカットや検算に非常に有効です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • コイルが回転する問題: 面積 \(S\) が時間変化する場合(\(S = S_0 \cos \omega t\) など)、磁束 \(\Phi = BS\) を時間微分することで交流電圧の式が導けます。
    • 相互誘導の問題: 一方のコイルの電流変化が他方のコイルに起電力を生む現象も、本問と同様に「磁場を作る \(\to\) 磁束を計算する \(\to\) 時間微分する」という手順で解析できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 磁場の分布を確認する: 磁場が一様か、場所によって変わるか? 直線電流なら \(1/r\)、ソレノイドなら一様です。
    2. 「力」か「エネルギー」か: 外力を問われた際、力のつりあいが複雑そうなら、迷わず「仕事率=ジュール熱」のエネルギー保存則を試してください。計算量が激減することが多いです。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 誘導起電力の向きの判定ミス:
    • 誤解: 「磁場が裏向きだから、電流も裏向き(右ねじ)?」と混同したり、レンツの法則の「変化を妨げる」を「磁場を打ち消す」と短絡的に捉えてしまう。
    • 対策: 必ず2ステップで考えます。①「磁束が増えているか減っているか?」②「増えているなら減らす向き、減っているなら増やす向きに磁場を作る」。本問では「裏向きが増える」\(\to\)「裏向きを減らす(表向きを作る)」\(\to\)「反時計回り」です。
  • 力のモーメントの計算ミス:
    • 誤解: 電磁力の作用点を「先端」や「根元」と勘違いしてしまう。
    • 対策: 一様磁場中の直線電流が受ける力の作用点は、その導線の「中点」です。これを図に描き込んでからモーメントの式を立てましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(2)での微積分アプローチ(別解):
    • 選定理由: 回転運動では速度が場所によって異なるため、単純な \(V=vBl\) が使えません。積分を用いることで、公式の適用範囲外の状況でも原理から正解を導けます。
    • 適用根拠: 導体棒上の各点における速度 \(v=r\omega\) が連続的に変化しているため、積分計算が有効です。
  • 問(4)でのエネルギー保存則(別解):
    • 選定理由: 力のベクトル合成やモーメント計算は符号ミスや係数ミスが起きやすいため、スカラー量であるエネルギーで計算する方が安全かつ高速だからです。
    • 適用根拠: コイルが等速回転しており、運動エネルギーの変化がない(仕事がすべて熱になる)定常状態であるため適用可能です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: 答えの式の単位が正しいか常に疑う。
    • 実践: 例えば仕事 \(W\) の単位は \(\text{J}\)。答えの式 \(\frac{\pi B^2 l^4 \omega}{4R}\) の次元を確認し、エネルギーの次元になっているかチェックします。
  • 極限の確認:
    • 意識: 「もし \(R\) がすごく大きかったら?」
    • 実践: \(R \to \infty\) のとき、電流は \(0\) になり、力も仕事も \(0\) になるはず。答えの式で分母に \(R\) があれば \(0\) に収束するので、定性的に正しいと判断できます。
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問題41 電磁誘導 (センター試験)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(1)の別解: ファラデーの電磁誘導の法則を用いた解法
      • 模範解答はローレンツ力による起電力 \(V=vBl\) を用いていますが、別解では回路を貫く磁束の変化率 \(V = -\Delta\Phi/\Delta t\) から起電力を導出します。
    • 設問(3)の別解: エネルギー保存則を用いた解法
      • 模範解答は力のつりあいから外力を求めていますが、別解では「外力の仕事率=ジュール熱」というエネルギー保存則を用いて導出します。
    • 設問(4)の別解: 微積分を用いた体系的解法(ファラデーの法則の微分形)
      • 磁束密度 \(B\) が時間変化する場合の誘導起電力を、磁束 \(\Phi\) の時間微分 \(V = -d\Phi/dt\) として厳密に定義し、計算します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • ファラデーの法則: 導体棒が動く場合だけでなく、磁場が変化する場合にも適用できる普遍的な法則であり、現象の本質的な理解につながります。
    • エネルギー保存則: 力の向きや大きさを個別に計算する手間を省き、スカラー量の収支だけで解けるため、計算ミスを防ぐ検算として有効です。
    • 微積分の解法: 「単位時間あたりの変化」という物理的意味を数学的に明確に記述することで、公式の暗記ではなく原理からの導出能力を養います。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「磁場中を運動する導体棒と、時間変化する磁場による電磁誘導」です。
前半(I)では導体棒が動くことによる誘導起電力(動生起電力)、後半(II, III)では磁場自体が時間変化することによる誘導起電力(誘導電場による起電力)を扱います。
これら2つの異なるメカニズムによる電磁誘導を、統一的な視点(ファラデーの法則)や回路方程式(キルヒホッフの法則)を用いて解析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ローレンツ力による誘導起電力: 磁束密度 \(B\) 中を速度 \(v\) で動く長さ \(l\) の導体棒には \(V = vBl\) の起電力が生じます。
  2. ファラデーの電磁誘導の法則: 回路を貫く磁束 \(\Phi\) の変化率が誘導起電力になります(\(V = – \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\))。
  3. レンツの法則: 誘導起電力は、磁束の変化を妨げる向きに生じます。
  4. キルヒホッフの法則: 閉回路内の電位差の総和は \(0\) です。
  5. エネルギー保存則: 外力がした仕事は、回路で発生するジュール熱と等しくなります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)〜(3)は、導体棒Mを電池とみなし、直流回路の問題として電流や電力を計算します。
  2. (4)は、磁場が変化する場合の誘導起電力をファラデーの法則から求め、回路方程式を立てて電流を求めます。
  3. (5)〜(6)は、2つの閉回路が結合した複雑な回路において、それぞれのループでファラデーの法則とキルヒホッフの法則を適用します。
  4. (Q)は、誘導起電力が打ち消し合う条件を探ります。

I 問(1)

思考の道筋とポイント
導体棒Mが磁場中を右へ速度 \(v\) で動いています。
このとき、導体棒Mにはローレンツ力による誘導起電力が生じます。
導体棒Mを起電力 \(V\) の電池に置き換えて、回路図を描き直すと分かりやすくなります。
回路は、起電力 \(V\) の電池(導体棒M)に対して、抵抗 \(R\) と抵抗 \(r\) が並列に接続された構造になっています。

この設問における重要なポイント

  • 誘導起電力の大きさ: \(V = vBb\) (導体棒の長さは \(b\))
  • 誘導起電力の向き: フレミングの左手の法則(またはローレンツ力 \(q\vec{v} \times \vec{B}\))で判断します。
    • 磁場: 表向き(\(\odot\))
    • 速度: 右向き
    • 正電荷が受ける力: 下向き(S \(\to\) T)
    • よって、Mは上が負極、下が正極の電池となります。電流はMの中を S \(\to\) T に流れます。
  • 並列回路の電流: キルヒホッフの法則(またはオームの法則)を用いて、各抵抗を流れる電流を求め、それらの和がMを流れる電流となります。

具体的な解説と立式
導体棒Mに生じる誘導起電力 \(V\) は、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V &= v B b \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
この起電力により、抵抗 \(R\) に流れる電流 \(I_R\) と、抵抗 \(r\) に流れる電流 \(I_r\) は、オームの法則より以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
I_R &= \frac{V}{R} \quad \cdots ② \\[2.0ex] I_r &= \frac{V}{r} \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
導体棒Mを流れる電流 \(I_M\) は、キルヒホッフの第1法則(電流保存則)より、これら2つの電流の和になります。
$$
\begin{aligned}
I_M &= I_R + I_r \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
向きは、起電力の向き(S \(\to\) T)に従います。

使用した物理公式

  • 誘導起電力: \(V = vBl\)
  • オームの法則: \(I = V/R\)
  • キルヒホッフの第1法則: \(I_{\text{入}} = I_{\text{出}}\)
計算過程

式①を式②、③に代入し、それらを式④に代入します。
$$
\begin{aligned}
I_M &= \frac{vBb}{R} + \frac{vBb}{r} \\[2.0ex] &= \left( \frac{1}{R} + \frac{1}{r} \right) vBb \\[2.0ex] &= \frac{R+r}{Rr} vBb
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

磁石の中で棒を動かすと、棒が電池になります。
この「棒電池」に、左側の抵抗 \(R\) と右側の抵抗 \(r\) が並列につながっています。
それぞれの抵抗に流れる電流を計算して足し合わせれば、棒電池全体から流れ出る電流が分かります。

結論と吟味

向き: SからTの向き
大きさ: \(\displaystyle \frac{R+r}{Rr} vBb\)

解答 (1) 向き: SからTの向き, 大きさ: \(\displaystyle \frac{R+r}{Rr} vBb\)
別解: ファラデーの電磁誘導の法則を用いた解法

思考の道筋とポイント
回路を貫く磁束の変化に着目します。
左側の閉回路 \(\text{P}_1\text{STQ}_1\) と右側の閉回路 \(\text{P}_2\text{STQ}_2\) のそれぞれについて、ファラデーの法則を適用します。

この設問における重要なポイント

  • 磁束の変化: 棒が右へ動くと、左側の回路の面積は増え(磁束増加)、右側の回路の面積は減ります(磁束減少)。
  • レンツの法則: 左側は「増える磁束を減らす(裏向き磁場を作る)」向き、つまり時計回りに起電力が生じます。右側は「減る磁束を増やす(表向き磁場を作る)」向き、つまり反時計回りに起電力が生じます。

具体的な解説と立式
微小時間 \(\Delta t\) の間に棒は \(\Delta x = v \Delta t\) だけ右へ動きます。
左側の回路の面積増加分は \(b \Delta x\) なので、磁束の増加 \(\Delta \Phi_L\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta \Phi_L &= B (b \Delta x) \\[2.0ex] &= B b v \Delta t
\end{aligned}
$$
ファラデーの法則より、左側回路の起電力 \(V_L\) の大きさは、
$$
\begin{aligned}
V_L &= \left| \frac{\Delta \Phi_L}{\Delta t} \right| \\[2.0ex] &= vBb
\end{aligned}
$$
向きは時計回りなので、Mにおいては S \(\to\) T です。
右側回路も同様に、磁束が減少するため、それを補う反時計回りの起電力 \(V_R = vBb\) が生じます。Mにおいてはやはり S \(\to\) T です。
これらはMを共通の電源とする並列回路とみなせるため、Mを流れる電流は両方の電流の和となります。
$$
\begin{aligned}
I_M &= \frac{V_L}{R} + \frac{V_R}{r}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ファラデーの法則: \(V = – \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\)
計算過程

$$
\begin{aligned}
I_M &= \frac{vBb}{R} + \frac{vBb}{r} \\[2.0ex] &= \frac{R+r}{Rr} vBb
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

左の部屋は広くなるので磁石が増え、右の部屋は狭くなるので磁石が減ります。
自然界は変化を嫌うので、左は減らそうとして、右は増やそうとして、それぞれ電気が流れます。
棒の部分では、両方の部屋からの電気が合流して流れます。

結論と吟味

ローレンツ力を用いた場合と同じ結果が得られました。

解答 (別解) 上記参照

I 問(2)

思考の道筋とポイント
回路全体で発生するジュール熱 \(Q\) を求めます。
ジュール熱が発生するのは抵抗 \(R\) と抵抗 \(r\) です。
それぞれの抵抗での消費電力を計算し、合計します。

この設問における重要なポイント

  • ジュール熱(消費電力)の公式: \(P = IV = I^2 R = \frac{V^2}{R}\)
  • 並列回路の電圧: 抵抗 \(R\) と \(r\) には、共に同じ電圧 \(V = vBb\) がかかっています。

具体的な解説と立式
抵抗 \(R\) での消費電力 \(P_R\) は、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
P_R &= \frac{V^2}{R} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
抵抗 \(r\) での消費電力 \(P_r\) は、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
P_r &= \frac{V^2}{r} \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
回路全体のジュール熱 \(Q\) はこれらの和です。
$$
\begin{aligned}
Q &= P_R + P_r \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 消費電力: \(P = \frac{V^2}{R}\)
計算過程

式⑤、⑥を式⑦に代入し、\(V = vBb\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
Q &= \frac{(vBb)^2}{R} + \frac{(vBb)^2}{r} \\[2.0ex] &= \left( \frac{1}{R} + \frac{1}{r} \right) (vBb)^2 \\[2.0ex] &= \frac{R+r}{Rr} (vBb)^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

2つの抵抗それぞれにかかる電圧は分かっているので、それぞれの発熱量を計算して足し算するだけです。

結論と吟味

単位を確認すると、\([\text{W}] = [\text{V}]^2 / [\Omega]\) で正しいです。

解答 (2) \(\displaystyle \frac{R+r}{Rr} (vBb)^2\)

I 問(3)

思考の道筋とポイント
導体棒Mを一定の速さ \(v\) で動かし続けるために必要な外力 \(F\) を求めます。
導体棒Mは等速運動をしているので、力のつりあいが成り立っています。
Mには、磁場から受ける電磁力(アンペール力)と、外力 \(F\) が働いています。

この設問における重要なポイント

  • 電磁力の大きさ: \(f = I_M B b\)
  • 電磁力の向き: フレミングの左手の法則より、電流(下向き S \(\to\) T)、磁場(表向き) \(\to\) 左向き
  • 力のつりあい: 外力 \(F\)(右向き)と電磁力 \(f\)(左向き)がつりあっています。

具体的な解説と立式
導体棒Mを流れる電流は \(I_M\) です。
Mが磁場から受ける電磁力 \(f\) の大きさは、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
f &= I_M B b \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
力のつりあいより、外力 \(F\) の大きさは電磁力と等しくなります。
$$
\begin{aligned}
F &= f \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電磁力: \(F = IBl\)
  • 力のつりあい: \(F_{\text{右}} = F_{\text{左}}\)
計算過程

式⑧を式⑨に代入し、(1)で求めた \(I_M\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
F &= \left( \frac{R+r}{Rr} vBb \right) B b \\[2.0ex] &= \frac{R+r}{Rr} v B^2 b^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

棒に電気が流れると、磁石から力を受けます(左向き)。
この力に逆らって棒を右に動かし続けるには、同じ強さで右に引っ張る必要があります。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle \frac{R+r}{Rr} v B^2 b^2\) です。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{R+r}{Rr} v B^2 b^2\)
別解: エネルギー保存則を用いた解法

思考の道筋とポイント
外力がする仕事率 \(P_{\text{外}}\) は、回路全体で消費されるジュール熱 \(Q\) と等しくなります。
これを利用すれば、力の詳細を考えずに外力を求められます。

この設問における重要なポイント

  • 仕事率: \(P_{\text{外}} = F v\)
  • エネルギー保存則: \(F v = Q\)

具体的な解説と立式
外力 \(F\) がする仕事率は \(Fv\) です。
これが問(2)で求めたジュール熱 \(Q\) と等しいので、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
F v &= Q \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 仕事率: \(P = Fv\)
  • エネルギー保存則: \(W = Q\)
計算過程

式⑩より \(F\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
F &= \frac{Q}{v} \\[2.0ex] &= \frac{1}{v} \cdot \frac{R+r}{Rr} (vBb)^2 \\[2.0ex] &= \frac{R+r}{Rr} v B^2 b^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「人間が引っ張ってした仕事」が、すべて「電気の熱」に変わったと考えます。
エネルギーの収支計算だけで、必要な力の大きさが求まります。

結論と吟味

力のつりあいから求めた結果と完全に一致します。

解答 (別解) 上記参照

II 問(4)

思考の道筋とポイント
今度は導体棒Mを取り除き、磁束密度 \(B\) を時間変化させます。
\(B = kt\) (\(k\) は正の定数)なので、磁場は一定の割合で増加します。
この変化する磁場により、閉回路 \(\text{P}_1\text{P}_2\text{Q}_2\text{Q}_1\) に誘導起電力が生じます。
この回路は、抵抗 \(R\) と抵抗 \(r\) が直列に接続されたものになります。

この設問における重要なポイント

  • 磁束の変化: 回路の面積 \(S = ab\) は一定ですが、磁束密度 \(B\) が変化するため、磁束 \(\Phi = BS\) も変化します。
  • ファラデーの法則: \(V = \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right|\)
  • レンツの法則: 表向きの磁束が増加しているので、それを打ち消す「裏向き」の磁場を作る方向、つまり 時計回り に誘導電流が流れます。

具体的な解説と立式
回路の面積は \(S = ab\) です。
時刻 \(t\) における磁束 \(\Phi(t)\) は、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\Phi(t) &= B(t) S \\[2.0ex] &= (kt) ab \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
微小時間 \(\Delta t\) での磁束の変化 \(\Delta \Phi\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta \Phi &= k(t+\Delta t)ab – ktab \\[2.0ex] &= kab \Delta t
\end{aligned}
$$
誘導起電力の大きさ \(V\) は、ファラデーの法則より、
$$
\begin{aligned}
V &= \left| \frac{\Delta \Phi}{\Delta t} \right| \\[2.0ex] &= kab \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$
回路全体を流れる電流 \(I\) は、オームの法則(合成抵抗 \(R+r\))より、
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{V}{R+r} \quad \cdots ⑬
\end{aligned}
$$
向きはレンツの法則より時計回りなので、\(\text{P}_1\text{Q}_1\) では \(\text{Q}_1 \to \text{P}_1\) の向きです。

使用した物理公式

  • 磁束: \(\Phi = BS\)
  • ファラデーの法則: \(V = – \frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\)
  • オームの法則: \(I = V/R\)
計算過程

式⑫を式⑬に代入します。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{kab}{R+r}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

磁石の力がどんどん強くなっているので、コイルの中を通る磁束が増えています。
コイルは変化を嫌うので、増えた分を打ち消そうとして、反対向きの磁石を作ろうと電気を流します。
その電気の強さを計算しました。

結論と吟味

誘導起電力の大きさ: \(kab\)
電流の向き: \(\text{Q}_1\) から \(\text{P}_1\) の向き
電流の大きさ: \(\displaystyle \frac{kab}{R+r}\)

解答 (4) 誘導起電力: \(kab\), 電流の向き: \(\text{Q}_1\) から \(\text{P}_1\) の向き, 電流の大きさ: \(\displaystyle \frac{kab}{R+r}\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(ファラデーの法則の微分形)

思考の道筋とポイント
磁束 \(\Phi\) を時間の関数として定義し、その時間微分から誘導起電力を求めます。
「微小変化」の近似を使わず、数学的に厳密な導出を行います。

この設問における重要なポイント

  • 磁束の定義: \(\Phi(t) = B(t) S\)
  • ファラデーの法則(微分形): \(V = – \frac{d\Phi}{dt}\)

具体的な解説と立式
回路の面積 \(S = ab\) は定数です。
磁束密度 \(B(t) = kt\) です。
磁束 \(\Phi(t)\) は、
$$
\begin{aligned}
\Phi(t) &= abkt
\end{aligned}
$$
誘導起電力 \(V\) は、磁束の時間微分(の絶対値)です。
$$
\begin{aligned}
V &= \left| \frac{d\Phi}{dt} \right| \\[2.0ex] &= \left| \frac{d}{dt} (abkt) \right|
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ファラデーの法則(微分形): \(V = – \frac{d\Phi}{dt}\)
計算過程

微分を実行します。
$$
\begin{aligned}
V &= abk
\end{aligned}
$$
これは微小変化を用いた場合と同じ結果です。

この設問の平易な説明

磁束の式を時間 \(t\) で微分するだけで、一瞬で電圧が求まります。
変化率が一定(\(B=kt\))なので、電圧も一定になります。

結論と吟味

厳密な計算からも同じ結果が得られました。

解答 (別解) 上記参照

III 問(5)

思考の道筋とポイント
導体棒Mを固定し、磁場を \(B=kt\) で変化させます。
このとき、左側の閉回路 \(\text{P}_1\text{STQ}_1\) と、右側の閉回路 \(\text{P}_2\text{STQ}_2\) の両方に誘導起電力が生じます。
問われるのは、左側の回路 \(\text{P}_1\text{STQ}_1\) に生じる誘導起電力の大きさです。

この設問における重要なポイント

  • 回路の面積: Mは \(\text{P}_1\text{Q}_1\) と \(\text{P}_2\text{Q}_2\) から等距離にあるので、左側回路の横幅は \(a/2\) です。面積は \(S_L = \frac{a}{2} \cdot b\) です。
  • ファラデーの法則: 左側回路を貫く磁束の変化率を計算します。

具体的な解説と立式
左側回路の面積 \(S_L\) は、
$$
\begin{aligned}
S_L &= \frac{ab}{2}
\end{aligned}
$$
磁束 \(\Phi_L(t)\) は、
$$
\begin{aligned}
\Phi_L(t) &= B(t) S_L \\[2.0ex] &= kt \cdot \frac{ab}{2} \quad \cdots ⑭
\end{aligned}
$$
誘導起電力の大きさ \(V_L\) は、ファラデーの法則(微分形)より、
$$
\begin{aligned}
V_L &= \left| \frac{d\Phi_L}{dt} \right| \quad \cdots ⑮
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ファラデーの法則: \(V = – \frac{d\Phi}{dt}\)
計算過程

式⑭を式⑮に代入して微分します。
$$
\begin{aligned}
V_L &= \frac{kab}{2}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

左半分の回路だけを見ればよいです。
面積が全体の半分なので、貫く磁束も半分、変化量も半分、したがって発生する電圧も半分になります。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle \frac{kab}{2}\) です。

解答 (5) \(\displaystyle \frac{kab}{2}\)

III 問(6)

思考の道筋とポイント
導体棒Mを流れる電流の向きと大きさを求めます。
この回路は、左側のループと右側のループがM(抵抗なし)を共有している構造です。
それぞれのループで誘導起電力が発生しています。
キルヒホッフの法則を用いて解析するのが確実です。

回路の分析:

  • 左ループ: 面積 \(ab/2\)。起電力 \(V_L = kab/2\)。レンツの法則より時計回り(\(\text{P}_1 \to \text{S} \to \text{T} \to \text{Q}_1\))。
  • 右ループ: 面積 \(ab/2\)。起電力 \(V_R = kab/2\)。レンツの法則より時計回り(\(\text{S} \to \text{P}_2 \to \text{Q}_2 \to \text{T}\))。
  • 導体棒M: 左ループの電流 \(I_L\) は S \(\to\) T に流れ、右ループの電流 \(I_R\) は T \(\to\) S に流れます。Mを流れる正味の電流 \(I_M\) はこれらの差になります。

この設問における重要なポイント

  • 電流の重ね合わせ: Mには、左ループからの電流と右ループからの電流が逆向きに流れ込みます。
  • キルヒホッフの法則: 各ループについて方程式を立てます。

具体的な解説と立式
左ループの抵抗は \(R\) のみです。左ループを流れる電流 \(I_L\)(時計回り)は、
$$
\begin{aligned}
I_L &= \frac{V_L}{R} \\[2.0ex] &= \frac{kab}{2R} \quad \cdots ⑯
\end{aligned}
$$
右ループの抵抗は \(r\) のみです。右ループを流れる電流 \(I_R\)(時計回り)は、
$$
\begin{aligned}
I_R &= \frac{V_R}{r} \\[2.0ex] &= \frac{kab}{2r} \quad \cdots ⑰
\end{aligned}
$$
導体棒Mにおいて、\(I_L\) は下向き(S \(\to\) T)、\(I_R\) は上向き(T \(\to\) S)に流れます。
\(R > r\) という条件より、分母が小さい \(I_R\) の方が大きくなります(\(I_R > I_L\))。
よって、正味の電流 \(I_M\) は上向き(T \(\to\) S)となり、その大きさは差になります。
$$
\begin{aligned}
I_M &= I_R – I_L \quad \cdots ⑱
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(I = V/R\)
  • キルヒホッフの第1法則
計算過程

式⑯、⑰を式⑱に代入します。
$$
\begin{aligned}
I_M &= \frac{kab}{2r} – \frac{kab}{2R} \\[2.0ex] &= \frac{kab}{2} \left( \frac{1}{r} – \frac{1}{R} \right) \\[2.0ex] &= \frac{kab}{2} \frac{R-r}{Rr}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

左の回路は時計回りに電気を流そうとし、右の回路も時計回りに電気を流そうとします。
真ん中の棒では、左からの電気(下向き)と右からの電気(上向き)がぶつかります。
右側の抵抗 \(r\) の方が小さいので、右からの電気の方が強く、結果として上向きに電気が流れます。

結論と吟味

向き: TからSの向き
大きさ: \(\displaystyle \frac{kab(R-r)}{2Rr}\)

解答 (6) 向き: TからSの向き, 大きさ: \(\displaystyle \frac{kab(R-r)}{2Rr}\)

問(Q)

思考の道筋とポイント
Mを固定し、磁場を \(B=kt\) で変化させると、Mには T \(\to\) S 向きの電流が流れます(問6の結果)。
この状態で、Mを固定せずに動かすとどうなるでしょうか?
Mが動くと、問(1)のように動生起電力(S \(\to\) T 向きの電池)が生じます。
この動生起電力が、磁場変化による電流(T \(\to\) S)をちょうど打ち消せば、Mを流れる電流は \(0\) になります。
そのときのMの位置 \(x\)(\(\text{P}_1\text{Q}_1\) からの距離)を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 誘導起電力の合成:
    • 磁場変化による起電力(変圧器起電力): 左ループ \(V_L = kbx\)、右ループ \(V_R = kb(a-x)\)。
    • 運動による起電力(動生起電力): \(V_v = vBb\) ではなく、ここではMは固定されている前提で「ある位置 \(x\) で固定したときに電流が0になる条件」を探すのか、あるいは「動いているMの電流が0になる瞬間」なのか?
    • 問題文「Mを \(\text{P}_1\text{Q}_1\) からある距離だけ離して固定し」とあるので、Mは動きません。速度 \(v=0\) です。
    • しかし、電流が0になるということは、左ループからの電流と右ループからの電流が釣り合っているということです。

具体的な解説と立式
Mの位置を左端から \(x\) とします。
左ループの面積は \(bx\)、右ループの面積は \(b(a-x)\) です。
磁場変化 \(B=kt\) による左ループの起電力 \(V_L\) は、
$$
\begin{aligned}
V_L &= \frac{d}{dt}(bx \cdot kt) \\[2.0ex] &= kbx
\end{aligned}
$$
左ループからの電流 \(I_L\)(下向き)は、
$$
\begin{aligned}
I_L &= \frac{V_L}{R} \\[2.0ex] &= \frac{kbx}{R} \quad \cdots ⑲
\end{aligned}
$$
右ループの起電力 \(V_R\) は、
$$
\begin{aligned}
V_R &= \frac{d}{dt}(b(a-x) \cdot kt) \\[2.0ex] &= kb(a-x)
\end{aligned}
$$
右ループからの電流 \(I_R\)(上向き)は、
$$
\begin{aligned}
I_R &= \frac{V_R}{r} \\[2.0ex] &= \frac{kb(a-x)}{r} \quad \cdots ⑳
\end{aligned}
$$
Mを流れる電流が \(0\) になる条件は \(I_L = I_R\) です。
$$
\begin{aligned}
\frac{kbx}{R} &= \frac{kb(a-x)}{r} \quad \cdots ㉑
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ファラデーの法則
  • オームの法則
  • キルヒホッフの法則
計算過程

式㉑を解いて \(x\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{x}{R} &= \frac{a-x}{r} \\[2.0ex] rx &= R(a-x) \\[2.0ex] rx &= Ra – Rx \\[2.0ex] (R+r)x &= Ra \\[2.0ex] x &= \frac{R}{R+r} a
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

左の部屋と右の部屋の広さのバランスを調整して、左からの電気と右からの電気がちょうど同じ強さになる場所を探しました。
抵抗が大きい方(\(R\))の部屋を広くして、電圧を高くしないと、抵抗が小さい方(\(r\))の電流と釣り合わないため、真ん中より右側(\(x > a/2\))になります。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle \frac{R}{R+r} a\) です。
\(R>r\) なので \(x > a/2\) となり、物理的直感と一致します。

解答 (Q) \(\displaystyle \frac{R}{R+r} a\)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 動生起電力と誘導電場の違いと統一
    • 核心: 導体棒が動く場合(\(V=vBl\))と、磁場が時間変化する場合(\(V=-d\Phi/dt\))は、現象のメカニズムは異なりますが、ファラデーの電磁誘導の法則という一つの枠組みで統一的に理解できます。
    • 理解のポイント:
      • 動生起電力はローレンツ力が原因。
      • 磁場変化による起電力は、変化する磁場が作る渦電流(誘導電場)が原因。
      • どちらも「磁束の変化率」として計算できる点が強力です。
  • キルヒホッフの法則による回路解析
    • 核心: 複数の閉回路が結合した複雑な回路でも、各ループごとの起電力と電圧降下の関係(キルヒホッフの法則)を連立させることで、必ず解くことができます。
    • 理解のポイント:
      • 共通部分(導体棒M)を流れる電流は、各ループの電流の重ね合わせ(代数和)として扱います。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • レール上を棒が動く問題: 摩擦がある場合や、棒に質量がある場合(運動方程式との連立)など、力学との融合問題が頻出です。「エネルギー保存則」が最強の武器になります。
    • コイルの変形問題: 面積 \(S\) が時間変化する場合も、\(V = -d(BS)/dt\) で処理できます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 起電力の源を特定する: 「棒が動いているのか?」「磁場が変化しているのか?」あるいは「両方か?」を見極めます。
    2. 等価回路を描く: 導体棒を電池に置き換え、抵抗との接続関係(直列・並列)を明確にした回路図を描き直すと、ミスが激減します。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 電流の向きの判定ミス:
    • 誤解: 「磁場が増えるから電流も増える向き?」と直感で判断してしまう。
    • 対策: レンツの法則を徹底します。「磁束が増える \(\to\) 減らす向きに磁場を作る \(\to\) 右ねじの法則で電流の向き決定」という3ステップを省略しないこと。
  • 合成抵抗の計算ミス:
    • 誤解: 並列回路の合成抵抗を \(R+r\) と足してしまう。
    • 対策: 並列は「逆数の和の逆数」\(\frac{Rr}{R+r}\)、直列は「和」\(R+r\) です。回路図を描いて接続を確認する癖をつけましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(1)でのファラデーの法則(別解):
    • 選定理由: ローレンツ力の公式 \(V=vBl\) を忘れても、磁束変化の基本原理から導けることを示すため。また、後半の磁場変化の問題との整合性を取るため。
    • 適用根拠: 導体棒の移動により閉回路の面積が変化し、磁束が変化しているため適用可能です。
  • 問(3)でのエネルギー保存則(別解):
    • 選定理由: 力のつりあいを立てて計算するよりも、スカラー量であるエネルギー(仕事率=消費電力)で計算する方が、符号ミスなどのリスクが低く、計算も速いからです。
    • 適用根拠: 導体棒が等速運動しており、運動エネルギーの変化がない定常状態であるため適用可能です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: 答えの式の単位が正しいか常に疑う。
    • 実践: 例えば電流 \(I\) の単位は \(\text{A}\)。答えの式 \(\frac{vBb}{R}\) の次元を確認します。\([\text{V}]/[\Omega] = \text{A}\) なのでOK。もし \(vBbR\) なら \([\text{V}]\cdot[\Omega]\) となり間違いと気づけます。
  • 極限の確認:
    • 意識: 「もし \(R\) が無限大(断線)だったら?」
    • 実践: \(R \to \infty\) のとき、\(R\) 側の電流は \(0\) になるはず。答えの式で確認し、物理的直感と一致するかチェックします。

問題42 電磁誘導 (防衛大+名古屋大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(4)の別解: 微積分を用いた体系的解法(ローレンツ力の積分)
      • 模範解答は電場 \(E\) のグラフの面積から電位差を求めていますが、別解では「磁場中を運動する導体棒内の電荷が受けるローレンツ力」に着目します。
      • 回転運動では速度 \(v = r\omega\) が中心からの距離 \(r\) に比例して変化するため、微小部分の起電力 \(de = vBdr\) を積分して全体の起電力を導出します。
    • 設問(5)の別解: 力のモーメントを用いた解法
      • 模範解答はエネルギー保存則(仕事率=ジュール熱)を用いていますが、別解では電磁力による逆トルクを積分で求め、それとつりあう外力のモーメントから仕事率を導出します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 微積分の解法: 「磁束の変化」が見えにくい状況や、導体棒の一部のみが磁場中にあるような複雑な状況でも、ローレンツ力の積分なら確実に起電力を計算できるため、応用力が身につきます。
    • 力のモーメント: 回転運動の力学的な側面(トルクのつりあい)を理解することで、エネルギー保存則の背景にあるメカニズムを深く理解できます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「一様磁場中を回転する円板(ファラデー円板)の電磁誘導」です。
回転する導体円板に生じる誘導起電力、誘導電流、そして回転を持続させるために必要な外力の仕事率について考察します。
円板を「無数の導体棒の集まり」とみなす視点や、ローレンツ力による電荷の移動というミクロな視点が重要になります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ローレンツ力: 磁場中を運動する荷電粒子は \(f = qvB\) の力を受けます。
  2. 誘導起電力: 磁場中を運動する導体には、ローレンツ力により起電力が生じます。
  3. 静電気力とローレンツ力のつりあい: 導体内部の電荷移動が止まるとき、電場による力とローレンツ力がつりあっています。
  4. エネルギー保存則: 外力がした仕事は、回路で発生するジュール熱と等しくなります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)〜(3)は、ローレンツ力による電子の移動と、それに伴う電場の発生をミクロな視点で解析します。
  2. (4)は、円板の中心と縁の間の電位差(誘導起電力)を求めます。
  3. (5)は、電流が流れることで発生するジュール熱と、外力の仕事率の関係を考察します。
  4. (Q)は、外力の作用点が変わった場合の影響をモーメントの式で考察します。

問(1)

思考の道筋とポイント
円板と共に回転する自由電子(負電荷 \(-e\))が受けるローレンツ力の向きを考えます。
円板は反時計回りに回転しており、磁場は上向きです。
フレミングの左手の法則(またはローレンツ力 \(\vec{f} = q\vec{v} \times \vec{B}\))を適用します。

この設問における重要なポイント

  • ローレンツ力の向き: 正電荷なら \(v \to B\) の回転方向、負電荷ならその逆です。
  • 速度の向き: 円板上の点の速度は接線方向(図の奥から手前、あるいは左から右)です。

具体的な解説と立式
図の右側(手前側)にある電子に着目します。
速度 \(\vec{v}\) は右向き(接線方向)です。
磁場 \(\vec{B}\) は上向きです。
もし正電荷なら、フレミング左手の法則より、力は手前(中心から外向き)に働きます。
しかし、電子は負電荷なので、力は逆向き、つまり 中心向き に働きます。

使用した物理公式

  • ローレンツ力: \(\vec{f} = q\vec{v} \times \vec{B}\)
計算過程

計算は不要です。向きの判断のみです。

この設問の平易な説明

磁石の中で動く電気の粒は力を受けます。
円盤と一緒に回っている電子は、磁石の力によって円盤の中心の方へ押しやられます。

結論と吟味

電子は中心に向かって力を受けるため、中心向きに移動しようとします。

解答 (1) 中心向き

問(2)

思考の道筋とポイント
(1)の結果より、自由電子(負電荷)は中心に集まります。
その結果、中心は負に帯電し、逆に電子が不足した縁(外周)は正に帯電します。
この電荷の偏りによって、円板内部に電場が生じます。
電場は正電荷から負電荷へ向かう向きです。

この設問における重要なポイント

  • 電荷の分布: 電子が移動した先が負、移動元の場所が正になります。
  • 電場の向き: 電位の高い方(正)から低い方(負)へ向かいます。

具体的な解説と立式
電子が中心に集まるため、中心には負電荷縁には正電荷が現れます。
電場は正電荷(縁)から負電荷(中心)へ向かうため、縁から中心の向きとなります。

使用した物理公式

  • 電場の定義: 正電荷から負電荷へ向かう。
計算過程

計算は不要です。

この設問の平易な説明

電子(マイナス)が真ん中に集まるので、真ん中はマイナスになります。
逆に、端っこは電子がいなくなるのでプラスになります。
電気の世界では、プラスからマイナスに向かって「電場」という流れができると決まっているので、端から真ん中に向かう電場ができます。

結論と吟味

中心:負電荷、縁:正電荷。
電場の向き:縁から中心向き。

解答 (2) 中心: 負電荷, 縁: 正電荷, 電場の向き: 縁から中心の向き

問(3)

思考の道筋とポイント
電子の移動は、発生した電場による静電気力(外向き)と、ローレンツ力(内向き)がつりあうまで続きます。
つりあいの状態での電場の強さ \(E\) を求め、グラフを描きます。
中心からの距離 \(r\) の位置での電子の速度は \(v = r\omega\) です。

この設問における重要なポイント

  • 力のつりあい: \(|qE| = |qvB|\)
  • 回転速度: \(v = r\omega\)

具体的な解説と立式
中心から距離 \(r\) の位置にある電子(電荷 \(-e\))を考えます。
電子が受けるローレンツ力の大きさ \(f_L\) は、
$$
\begin{aligned}
f_L &= e v B \\[2.0ex] &= e (r\omega) B \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
向きは中心向きです。
一方、電場 \(E\)(中心向き)から受ける静電気力の大きさ \(f_E\) は、
$$
\begin{aligned}
f_E &= e E \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
電子は負電荷なので、電場(中心向き)と逆向き、つまり外向きに力を受けます。
平衡状態ではこれらがつりあうので、
$$
\begin{aligned}
f_E &= f_L \\[2.0ex] e E &= e r \omega B \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ローレンツ力: \(f = qvB\)
  • 静電気力: \(f = qE\)
  • 円運動の速度: \(v = r\omega\)
計算過程

式③より \(E\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
E &= \omega B r
\end{aligned}
$$
これは \(r\) に比例する関数です。
横軸 \(r\)、縦軸 \(E\) のグラフは、原点を通り傾き \(\omega B\) の直線になります。
定義域は \(0 \le r \le a\) です。

この設問の平易な説明

電子を真ん中に押しやる「磁石の力」と、電子が偏ったことで生まれた「電気の反発力」が喧嘩して、ちょうど引き分けになる状態を考えます。
外側に行くほどスピードが速いので「磁石の力」が強くなり、それに対抗するために「電気の力(電場)」も強くなります。
距離に比例して強くなるので、グラフは直線になります。

結論と吟味

\(E = \omega B r\)。\(r=0\) で \(E=0\)、\(r=a\) で \(E=\omega B a\)。
物理的に妥当な結果です。

解答 (3) \(E = \omega B r\), グラフ: 原点と点 \((a, \omega B a)\) を結ぶ直線。

問(4)

思考の道筋とポイント
中心と縁の間の電位差(電圧)\(V\) を求めます。
電位差は、電場 \(E\) を距離で積分(または \(E-r\) グラフの面積)することで求まります。
ここでは、(3)で描いたグラフの面積を利用して求めます。

この設問における重要なポイント

  • 電位差と電場の関係: \(V = \int E \, dr\)
  • グラフの面積: \(E-r\) グラフの下側の面積が電位差になります。

具体的な解説と立式
中心(\(r=0\))と縁(\(r=a\))の間の電位差 \(V\) は、\(E-r\) グラフの面積に相当します。
グラフは原点を通る直線なので、面積は三角形の面積として計算できます。
底辺の長さは \(a\)、高さは \(r=a\) のときの電場 \(E(a) = \omega B a\) です。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{1}{2} \times (\text{底辺}) \times (\text{高さ}) \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電位差: \(V = Ed\) (一様電場の場合) \(\to\) グラフの面積
計算過程

式④に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
V &= \frac{1}{2} \times a \times (\omega B a) \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} \omega B a^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電場の強さが場所によって違うので、単純な掛け算ではなく、「グラフの面積」で電圧を計算します。
三角形の面積の公式を使えば一発です。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle \frac{1}{2} \omega B a^2\) です。

解答 (4) \(\displaystyle \frac{1}{2} \omega B a^2\)
別解: 微積分を用いた体系的解法(ローレンツ力の積分)

思考の道筋とポイント
電場を経由せず、導体内の電荷が受けるローレンツ力から直接起電力を導出します。
円板を、中心から放射状に伸びる無数の導体棒の集まりと考え、その1本に生じる誘導起電力を計算します。

この設問における重要なポイント

  • 微小誘導起電力: 半径 \(r\) の位置にある微小長さ \(dr\) の部分に生じる起電力は \(dV = v B dr\) です。
  • 速度分布: \(v = r\omega\)

具体的な解説と立式
中心から距離 \(r\) の位置にある微小部分 \(dr\) を考えます。
この部分の速度は \(v = r\omega\) です。
この微小部分が磁場を横切ることで生じる微小な誘導起電力 \(dV\) は、
$$
\begin{aligned}
dV &= v B \, dr \\[2.0ex] &= (r\omega) B \, dr
\end{aligned}
$$
これを中心 \(0\) から縁 \(a\) まで積分して、全体の起電力 \(V\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V &= \int_0^a \omega B r \, dr
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • ローレンツ力による起電力(微分形): \(dV = vBdr\)
計算過程

積分を実行します。
$$
\begin{aligned}
V &= \omega B \left[ \frac{1}{2} r^2 \right]_0^a \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} \omega B a^2
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

円板を「細い棒」とみなして計算しました。
棒の場所によって速さが違うので、細かく分けて足し合わせる(積分する)ことで正確な電圧が出ます。

結論と吟味

電場から求めた結果と完全に一致します。

解答 (別解) 上記参照

問(5)

思考の道筋とポイント
スイッチSを閉じると、円板(電池)、抵抗 \(R\)、導線からなる閉回路に電流 \(I\) が流れます。
電流 \(I\) はオームの法則で求まります。
次に、外力の仕事率 \(P\) を求めます。
円板を一定の角速度で回転させ続けるには、電流が磁場から受ける電磁力(回転を止める向きの力)に逆らって仕事をする必要があります。
エネルギー保存則より、外力の仕事率は回路で消費されるジュール熱と等しくなります。

この設問における重要なポイント

  • オームの法則: \(I = V/R\)
  • エネルギー保存則: \(P = I^2 R\) (外力の仕事率=ジュール熱)

具体的な解説と立式
まず、電流 \(I\) を求めます。
円板の起電力は \(V = \frac{1}{2} \omega B a^2\) です。
オームの法則より、
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{V}{R} \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
次に、外力の仕事率 \(P\) を求めます。
エネルギー保存則より、外力が供給するエネルギーはすべて抵抗でのジュール熱として消費されます。
$$
\begin{aligned}
P &= R I^2 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • オームの法則: \(I = V/R\)
  • ジュール熱(仕事率): \(P = RI^2\)
計算過程

式⑤を計算します。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{\omega B a^2}{2R}
\end{aligned}
$$
式⑥に \(I\) を代入して \(P\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
P &= R \left( \frac{\omega B a^2}{2R} \right)^2 \\[2.0ex] &= R \cdot \frac{\omega^2 B^2 a^4}{4R^2} \\[2.0ex] &= \frac{\omega^2 B^2 a^4}{4R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

発電した電気を抵抗に流すと、熱が発生します。
この熱エネルギーの元をたどれば、円板を回している「外力」がした仕事です。
だから、発生した熱を計算すれば、それがそのまま外力の仕事率になります。

結論と吟味

電流 \(I\): \(\displaystyle \frac{\omega B a^2}{2R}\)
仕事率 \(P\): \(\displaystyle \frac{\omega^2 B^2 a^4}{4R}\)

解答 (5) 電流 \(I\): \(\displaystyle \frac{\omega B a^2}{2R}\), 仕事率 \(P\): \(\displaystyle \frac{\omega^2 B^2 a^4}{4R}\)
別解: 力のモーメントを用いた解法

思考の道筋とポイント
電流が磁場から受ける電磁力(アンペール力)のモーメントを計算し、それとつりあう外力のモーメントから仕事率を導出します。
電流は中心から縁へ(またはその逆へ)放射状に流れています。

この設問における重要なポイント

  • 微小電磁力: \(dF = I B dr\)
  • 微小モーメント: \(dM = r \cdot dF\)
  • 仕事率とモーメント: \(P = N \omega\) (\(N\) は全モーメント)

具体的な解説と立式
中心から距離 \(r\) の位置にある微小部分 \(dr\) を流れる電流 \(I\) が受ける力 \(dF\) は、
$$
\begin{aligned}
dF &= I B \, dr
\end{aligned}
$$
この力が回転軸周りに及ぼす微小モーメント \(dN\) は、
$$
\begin{aligned}
dN &= r \cdot dF \\[2.0ex] &= I B r \, dr
\end{aligned}
$$
円板全体での電磁力のモーメント \(N\) は、これを積分して求めます。
$$
\begin{aligned}
N &= \int_0^a I B r \, dr
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電磁力: \(F = IBl\)
  • モーメント: \(N = rF\)
  • 回転の仕事率: \(P = N\omega\)
計算過程

積分を実行します。
$$
\begin{aligned}
N &= I B \left[ \frac{1}{2} r^2 \right]_0^a \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} I B a^2
\end{aligned}
$$
外力の仕事率 \(P\) は、この逆向きのモーメントに逆らって角速度 \(\omega\) で回転させる仕事率なので、
$$
\begin{aligned}
P &= N \omega \\[2.0ex] &= \frac{1}{2} I B a^2 \omega
\end{aligned}
$$
これに \(I = \frac{\omega B a^2}{2R}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
P &= \frac{1}{2} \cdot \frac{\omega B a^2}{2R} \cdot B a^2 \omega \\[2.0ex] &= \frac{\omega^2 B^2 a^4}{4R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

電流が流れると、円板にはブレーキがかかるような力が働きます。
そのブレーキの強さ(トルク)を計算し、それに逆らって回し続けるためのパワー(仕事率)を求めました。

結論と吟味

エネルギー保存則から求めた結果と一致します。

解答 (別解) 上記参照

問(Q)

思考の道筋とポイント
外力を加える位置を、中心から距離 \(r\) の位置に変更します。
必要な外力の大きさ \(F\) を求めます。
また、その仕事率 \(P_r\) が \(r\) に依存するかどうかを確認します。
回転を持続させるために必要な「力のモーメント(トルク)」は、電磁力による逆トルク \(N\) とつりあう必要があります。この \(N\) は作用点によらず一定です。

この設問における重要なポイント

  • モーメントのつりあい: \(F \cdot r = N\) (\(N\) は電磁力の全モーメント)
  • 仕事率の定義: \(P = F v = F (r\omega)\)

具体的な解説と立式
電磁力による全モーメント \(N\) は、問(5)の別解で求めた通りです。
$$
\begin{aligned}
N &= \frac{1}{2} I B a^2 \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
距離 \(r\) の位置に加える外力 \(F\) によるモーメントは \(F \cdot r\) です。
これが \(N\) とつりあうので、
$$
\begin{aligned}
F \cdot r &= N \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • モーメントのつりあい: \(Fr = N\)
  • 仕事率: \(P = Fv\)
計算過程

式⑧より外力 \(F\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
F &= \frac{N}{r} \\[2.0ex] &= \frac{I B a^2}{2r}
\end{aligned}
$$
これに \(I = \frac{\omega B a^2}{2R}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
F &= \frac{B a^2}{2r} \cdot \frac{\omega B a^2}{2R} \\[2.0ex] &= \frac{\omega B^2 a^4}{4Rr}
\end{aligned}
$$
次に、仕事率 \(P_r\) を計算します。作用点の速度は \(v = r\omega\) です。
$$
\begin{aligned}
P_r &= F \cdot v \\[2.0ex] &= F \cdot (r\omega) \\[2.0ex] &= \left( \frac{N}{r} \right) \cdot r\omega \\[2.0ex] &= N \omega
\end{aligned}
$$
これは問(5)で求めた仕事率 \(P\) と全く同じ式になります。

この設問の平易な説明

中心に近いところを押すときは、強い力が必要です(てこの原理)。
でも、中心に近いところは動くスピードが遅いです。
「力 \(\times\) スピード」で計算する仕事率は、力が大きくなってもスピードが遅くなるので相殺されて、結局どこを押しても変わりません。

結論と吟味

外力 \(F\): \(\displaystyle \frac{\omega B^2 a^4}{4Rr}\)
仕事率 \(P_r\) は \(r\) を含まず、一定となります。

解答 (Q) 外力 \(F\): \(\displaystyle \frac{\omega B^2 a^4}{4Rr}\), 仕事率: \(r\) によらない(一定である)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • ローレンツ力による電荷の移動と電場の発生
    • 核心: 磁場中を運動する導体内部では、自由電子がローレンツ力を受けて移動し、その結果生じた電荷の偏りが電場を作り出します。
    • 理解のポイント:
      • 最終的に「ローレンツ力」と「電場による静電気力」がつりあう状態で電荷の移動が止まり、定常的な電位差(誘導起電力)が生じます。
      • このミクロな力のつりあいが、マクロな誘導起電力 \(V\) の正体です。
  • エネルギー保存則(仕事率とジュール熱)
    • 核心: 電磁誘導現象において、外力がした仕事は、最終的に抵抗で発生するジュール熱として消費されます。
    • 理解のポイント:
      • 回転を持続させるために必要な外力の仕事率 \(P\) は、回路で消費される電力 \(IV\) と等しくなります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ファラデー円板: 本問そのものです。円板を「中心から放射状に伸びる無数の導体棒」とみなす視点が鍵です。
    • 車輪のスポーク: 自転車の車輪などが磁場中を回転する場合も、スポーク1本1本が導体棒として機能し、並列電池として振る舞います。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 電荷の正負を確認する: 動いているのが電子(負電荷)なのか正孔(正電荷)なのかで、ローレンツ力の向き、ひいては電位の高低が逆転します。
    2. 速度分布に注目する: 回転運動では場所によって速度 \(v=r\omega\) が異なるため、単純な \(V=vBl\) は使えません。積分するか、平均速度を使うか、電場から攻めるか、戦略を選びましょう。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • ローレンツ力の向きの判定ミス:
    • 誤解: 「フレミング左手の法則」をそのまま適用して、電子(負電荷)の受ける力を逆向きにし忘れる。
    • 対策: 「電流の向き=正電荷の移動向き=負電荷の移動と逆向き」を徹底します。電子が右へ動くなら、電流は左へ流れているとみなしてフレミングを適用しましょう。
  • 電位差の計算ミス:
    • 誤解: \(V = vBl\) の公式に、先端の速度 \(v=a\omega\) をそのまま代入してしまう。
    • 対策: 速度が場所によって変わる場合は、積分 \(\int vB dr\) が原則です。あるいは「平均の速度(中点の速度)」を使っても良いですが、積分の方が汎用性が高いです。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 問(4)での電場積分アプローチ(メイン解法):
    • 選定理由: 前問(3)で電場 \(E\) の分布を求めているため、その流れで自然に電位差 \(V = \int E dr\) を計算するのが最も論理的です。
    • 適用根拠: 静電場における電位差の定義そのものです。
  • 問(5)でのエネルギー保存則(メイン解法):
    • 選定理由: 力のモーメントを計算して積分するよりも、スカラー量であるエネルギー(仕事率=消費電力)で計算する方が、計算量が圧倒的に少なく、ミスも防げるからです。
    • 適用根拠: 円板が等速回転しており、運動エネルギーの変化がない定常状態であるため適用可能です。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: 答えの式の単位が正しいか常に疑う。
    • 実践: 例えば起電力 \(V\) の単位は \(\text{V}\)。答えの式 \(\omega B a^2\) の次元を確認します。\([1/\text{s}] \cdot [\text{V}\cdot\text{s}/\text{m}^2] \cdot [\text{m}^2] = \text{V}\) なのでOK。
  • 極限の確認:
    • 意識: 「もし回転が止まっていたら?」
    • 実践: \(\omega \to 0\) のとき、起電力 \(V\) も \(0\) になるはず。答えの式で \(\omega\) が分子にあれば \(0\) になるので、定性的に正しいと判断できます。
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