「名問の森」徹底解説(37〜39問):未来の得点力へ!完全マスター講座【波動Ⅱ・電磁気・原子】

当ページでは、数式をより見やすく表示するための処理に、少しお時間がかかることがございます。お手数ですが、ページを開いたまま少々お待ちください。

問題37 電磁誘導 (名城大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解: エネルギー保存則を用いた解法
      • 模範解答が力のつりあいから外力を求めるのに対し、別解では「外力が供給する仕事率=回路での消費電力」というエネルギー保存則を用いて導出します。
    • 設問(4)の別解: 微積分を用いた体系的解法(ファラデーの電磁誘導の法則)
      • 「起電力 \(V=vBl\)」や「回路方程式」を天下り的に使用せず、マクスウェル方程式の一つであるファラデーの電磁誘導の法則(積分形)から出発します。
      • 電場の周回積分と磁束の時間変化率を結びつけることで、キルヒホッフの法則が成り立つ背景を物理原理から導きます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • エネルギー保存則: 力学的な仕事と電気的なエネルギー消費が等価であることを理解でき、計算検算としても非常に有効です。
    • 微積分の解法: 電位や起電力の定義を曖昧にせず、電場と磁場の相互作用として現象を捉えることで、応用問題(磁場が時間変化する場合など)への対応力を養います。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「磁場中を移動する導体枠を含む回路の定常状態」です。導体棒が磁場を横切ることで生じる誘導起電力を電源とみなし、直流回路として解析します。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 誘導起電力(ローレンツ力による解釈): 磁束密度 \(B\) の中を速度 \(v\) で動く長さ \(l\) の導体棒には、\(V = vBl\) の誘導起電力が生じます。
  2. 定常状態のコンデンサー: 直流回路において、十分に時間が経過して定常状態になると、コンデンサーは充電が完了し、電流を通さなくなります(断線とみなせる)。
  3. キルヒホッフの法則: 閉回路内の電位の変化の総和は \(0\) になります。
  4. エネルギー保存則: 外力が系にする仕事は、ジュール熱や静電エネルギーの変化として保存されます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)〜(3)では、辺cdのみが磁場内にある状態を考えます。cdを電池とみなして等価回路を描き、キルヒホッフの法則とオームの法則を適用します。
  2. (4)では、辺beが磁場に入り、cdが磁場を出た状態を考えます。今度はbeが電池となります。同様に等価回路を描いて解析します。

問(1)

思考の道筋とポイント
まず、回路のどの部分が「電池」の役割を果たしているかを特定します。
磁場中を動いているのは辺cdです。
導体内の自由電子(キャリア)が磁場から受けるローレンツ力を考え、正電荷が移動する向き(=電流を流そうとする向き)を特定し、高電位側と低電位側を判断します。
次に、コンデンサー \(C\) の状態を考えます。問題文に「電流が一定になったとき」とあるため、定常状態です。このとき、コンデンサーへの充電は完了しており、コンデンサーを含む枝(af側)には電流が流れません。

この設問における重要なポイント

  • ローレンツ力の向き: フレミングの左手の法則、または \(\vec{F} = q(\vec{v} \times \vec{B})\) から判断します。
  • 電流の経路: コンデンサー部分は断線状態とみなせるため、電流は閉回路bcdeのみを循環します。

具体的な解説と立式
辺cd内の正電荷 \(q\) が受けるローレンツ力 \(\vec{F}\) の向きを考えます。
速度 \(\vec{v}\) は右向き、磁場 \(\vec{B}\) は紙面裏から表向きです。
ローレンツ力は下向き(c \(\to\) d)に働きます。
$$
\begin{aligned}
F &= qvB
\end{aligned}
$$
これにより、正電荷はd側に集まるため、dが高電位、cが低電位となります。
辺cdは、起電力 \(V\) の電池とみなせます。
$$
\begin{aligned}
V &= vBl \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
この起電力により、閉回路bcdeに電流 \(I\) が流れます。向きは d(高) \(\to\) e \(\to\) b \(\to\) c(低) \(\to\) d となるため、回路図上では時計回りです。
したがって、辺beを流れる電流の向きは e \(\to\) b です。

次に、電流の大きさを求めます。
閉回路bcdeに含まれる抵抗は、辺bc, cd, de, ebの4つで、すべて抵抗値 \(R\) です。これらは直列に接続されています。
キルヒホッフの第2法則(電圧則)より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
(\text{起電力の和}) &= (\text{電圧降下の和}) \\[2.0ex]
V &= R_{\text{合成}} I \\[2.0ex]
vBl &= (R + R + R + R) I
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 誘導起電力: \(V = vBl\)
  • オームの法則(回路全体): \(V = RI\)
計算過程

上の式を \(I\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
vBl &= 4R I \\[2.0ex]
I &= \frac{vBl}{4R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

右端の棒cdが磁場の中を動くことで発電機(電池)になります。
この発電機は、正の電気をd側に押し込むポンプのような働きをするので、電流はdから出発して回路をぐるっと回り、cに戻ってきます。
左側のコンデンサーがあるルートは行き止まり(満車状態)なので、電流は右側の四角いルート(bcde)だけを流れます。
抵抗が4つあるので、合計の抵抗値で電圧を割れば電流が求まります。

結論と吟味

向きは e \(\to\) b、大きさは \(\displaystyle \frac{vBl}{4R}\) です。
速度 \(v\) や磁場 \(B\) が大きいほど電流が増え、抵抗 \(R\) が大きいほど減るため、物理的に妥当です。

解答 (1) 向き: e \(\to\) b, 強さ: \(\displaystyle \frac{vBl}{4R}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
コンデンサーの極板間の電位差(電圧) \(V_C\) を求めます。
回路図を見ると、コンデンサーの極板aとfは、それぞれ点bと点eに導線でつながっています(間の抵抗には電流が流れていないため電圧降下なし)。
つまり、コンデンサーの電圧 \(V_C\) は、辺be間の電位差 \(V_{be}\) に等しいことになります。

この設問における重要なポイント

  • 電流が流れない抵抗: コンデンサーにつながる辺abとefには電流が流れないため、オームの法則 \(V=RI\) より電圧降下は \(0\) です。よって \(V_a = V_b\)、\(V_f = V_e\) です。
  • 電位の大小関係: 電流は e \(\to\) b に流れています。抵抗を流れる電流は高電位から低電位へ流れるため、eが高電位、bが低電位です。

具体的な解説と立式
コンデンサーの電圧 \(V_C\) は、点eと点bの電位差に等しくなります。
辺beには抵抗 \(R\) があり、電流 \(I\) が e \(\to\) b に流れています。
オームの法則より、be間の電圧 \(V_{eb}\)(e基準のbの電位降下、あるいはその逆)を考えます。
$$
\begin{aligned}
V_C &= R I \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
極板の電荷 \(Q\) は、電気容量 \(C\) と電圧 \(V_C\) を用いて求められます。
$$
\begin{aligned}
|Q| &= C V_C \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
符号については電位の低い方に負電荷が蓄えられます。
電流は e \(\to\) b に流れているため、上流のeが高電位、下流のbが低電位です。
\(V_f = V_e\)、\(V_a = V_b\) より、\(V_f > V_a\) となります。
したがって、a側の極板は低電位側であり、負の電荷 \(-Q\) が帯電します。

使用した物理公式

  • オームの法則: \(V = RI\)
  • コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
計算過程

式②に(1)で求めた \(I\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_C &= R \cdot \frac{vBl}{4R} \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4} vBl
\end{aligned}
$$
式③より電荷の大きさは
$$
\begin{aligned}
|Q| &= C \cdot \frac{1}{4} vBl \\[2.0ex]
&= \frac{1}{4} CvBl
\end{aligned}
$$
a側は負に帯電しているため、求める電荷は
$$
\begin{aligned}
Q_a &= – \frac{1}{4} CvBl
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

コンデンサーは、回路の真ん中の棒(be)と並列につながっているような状態です。
真ん中の棒には電流が流れているので、抵抗によって電圧が発生しています。この電圧がそのままコンデンサーにかかります。
電流は下から上(eからb)へ流れているので、下のe地点の方が水圧(電位)が高く、上のb地点の方が低いです。
コンデンサーのa側は低い方のbにつながっているので、マイナスの電気が溜まります。

結論と吟味

答えは \(\displaystyle -\frac{1}{4} CvBl\) です。
単位を確認すると、\(C[\text{F}] \cdot v[\text{m}/\text{s}] \cdot B[\text{T}] \cdot l[\text{m}] = (C/V) \cdot V = C\)(クーロン)となり正しいです。

解答 (2) \(\displaystyle -\frac{1}{4} CvBl\)

問(3)

思考の道筋とポイント
消費電力は、回路全体の抵抗で発生するジュール熱の総和です。
外力については、導体棒cdが「一定の速さ」で動いていることに着目します。これは力がつりあっていることを意味します。
磁場中の電流が受ける力(電磁力)と外力がつりあっています。

この設問における重要なポイント

  • 消費電力: \(P = I^2 R_{\text{全}}\) または \(P = IV\) で計算します。
  • 電磁力: 磁場中の電流 \(I\) は、磁場から力 \(F_B = IBl\) を受けます。向きはフレミングの左手の法則で決まります。
  • 力のつりあい: 等速度運動 \(\iff\) 合力は \(0\) です。

具体的な解説と立式
消費電力 \(P\)
回路全体の合成抵抗は \(4R\) です。電流 \(I\) が流れているので、消費電力 \(P\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
P &= (4R) I^2 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$

外力 \(F\)
辺cdを流れる電流は c \(\to\) d(下向き)です。
この電流が磁場(表向き)から受ける電磁力 \(F_B\) の向きは、フレミングの左手の法則より「左向き」です。
大きさは以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
F_B &= IBl \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
導体棒cdは等速度運動をしているため、水平方向の力はつりあっています。
外力 \(F\)(右向きと仮定)と電磁力 \(F_B\)(左向き)のつりあいの式を立てます。
$$
\begin{aligned}
(\text{右向きの力}) &= (\text{左向きの力}) \\[2.0ex]
F &= F_B \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 電力: \(P = I^2 R\)
  • 電磁力: \(F = IBl\)
  • 力のつりあい: \(\vec{F}_{\text{合力}} = 0\)
計算過程

消費電力
式④に \(I = \frac{vBl}{4R}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
P &= 4R \left( \frac{vBl}{4R} \right)^2 \\[2.0ex]
&= 4R \cdot \frac{(vBl)^2}{16R^2} \\[2.0ex]
&= \frac{(vBl)^2}{4R}
\end{aligned}
$$

外力
式⑤、⑥より
$$
\begin{aligned}
F &= \left( \frac{vBl}{4R} \right) Bl \\[2.0ex]
&= \frac{vB^2l^2}{4R}
\end{aligned}
$$
向きは電磁力(左向き)に逆らう方向なので、右向きです。

この設問の平易な説明

回路全体で電気エネルギーが熱として消費されています。その量は \((\text{電流})^2 \times (\text{抵抗})\) で計算できます。
また、磁場の中で電流が流れると、導体棒にはブレーキをかける方向(左向き)に力が働きます。
それでも一定の速さで動かし続けるには、このブレーキと同じ大きさの力で右向きに引っ張り続ける必要があります。

結論と吟味

消費電力 \(P = \frac{(vBl)^2}{4R}\)、外力 \(F = \frac{vB^2l^2}{4R}\)(右向き)。
\(P = Fv\) の関係(仕事率=消費電力)が成り立っているか確認すると、\(F \times v = \frac{vB^2l^2}{4R} \times v = \frac{(vBl)^2}{4R} = P\) となり、エネルギー保存則とも整合します。

解答 (3) 消費電力 \(P\): \(\displaystyle \frac{(vBl)^2}{4R}\), 外力の大きさ: \(\displaystyle \frac{vB^2l^2}{4R}\), 外力の向き: 右向き
別解: エネルギー保存則を用いた解法

思考の道筋とポイント
力学的な仕事と電気的なエネルギー消費の等価性に着目します。
外力が導体棒にする仕事率(1秒あたりの仕事)は、回路全体で消費される電力(ジュール熱)と等しくなるはずです。

この設問における重要なポイント

  • エネルギー保存則: \((\text{外力の仕事率}) = (\text{回路の消費電力})\)
  • 仕事率の公式: \(P_{\text{仕事率}} = Fv\)

具体的な解説と立式
外力の大きさを \(F\) とします。棒は速さ \(v\) で動いているので、外力の仕事率は \(Fv\) です。
これが回路の消費電力 \(P\) と等しくなります。
$$
\begin{aligned}
Fv &= P \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 仕事率: \(P = Fv\)
  • エネルギー保存則
計算過程

式⑦に先ほど求めた \(P = \frac{(vBl)^2}{4R}\) を代入して \(F\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
Fv &= \frac{(vBl)^2}{4R} \\[2.0ex]
F &= \frac{1}{v} \cdot \frac{v^2 B^2 l^2}{4R} \\[2.0ex]
&= \frac{vB^2l^2}{4R}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

「人間が棒を引っ張ってした仕事」が、そのまま「電気エネルギー」に変わって熱になったと考えます。
「入ったエネルギー=出たエネルギー」という単純な収支計算だけで、力の大きさを逆算できます。

結論と吟味

力のつりあいから求めた結果と完全に一致します。検算としても非常に有効な手段です。

解答 (3) \(\displaystyle \frac{vB^2l^2}{4R}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
時間が経過し、導体棒cdは磁場領域を抜け、代わりに辺beが磁場領域に入っています。
今度は 辺beが電池 となります。
回路構造が変わるため、電流の流れる経路や向き、コンデンサーにかかる電圧を慎重に再評価する必要があります。

この設問における重要なポイント

  • 起電力の発生場所: 辺beのみが磁場を横切っています。\(V = vBl\)。
  • 起電力の向き: 辺be内の正電荷は、\(v\)(右)と \(B\)(表)により下向き(b \(\to\) e)のローレンツ力を受けます。よってeが高電位、bが低電位です。
  • 電流の経路: コンデンサー側(左半分)は定常状態で電流が流れません。電流は右側の閉回路bcdeを循環します。
  • コンデンサーの電圧: 今度はコンデンサーが接続されている点a, f間の電位差が、回路のどの部分の電圧に対応するかを見極めます。

具体的な解説と立式
1. 電流の計算
辺beが電池となります。起電力は \(V = vBl\) で、向きは b \(\to\) e(eが高電位)です。
閉回路bcdeにおいて、電流 \(I\) は e(高) \(\to\) d \(\to\) c \(\to\) b(低) \(\to\) e と流れます。つまり 反時計回り です。
回路の総抵抗は変わらず \(4R\) なので、電流の大きさは(1)と同じです。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{vBl}{4R} \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$

2. コンデンサーの電圧 \(V_C’\)
コンデンサーの電圧 \(V_C’\) は、点fと点aの電位差 \(V_f – V_a\) です。
\(V_f = V_e\)、\(V_a = V_b\) なので、\(V_C’ = V_e – V_b\) となります。
ここで、辺beに注目します。
辺beは「起電力 \(V\) の電池」であり、かつ「内部抵抗 \(R\)」を持っています。
電流 \(I\) は、この電池の中を b \(\to\) e の向き(負極から正極へ)に流れています。
したがって、端子電圧(eとbの電位差)は、起電力から内部抵抗での電圧降下を引いたものになります。
$$
\begin{aligned}
V_C’ &= V_e – V_b \\[2.0ex]
&= V – RI \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$

3. 静電エネルギー \(U\)
コンデンサーに蓄えられるエネルギー \(U\) は以下の式で求まります。
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{1}{2} C (V_C’)^2 \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$

4. 外力 \(F\)
辺beを流れる電流 \(I\)(下向き:b \(\to\) e)が磁場から受ける力 \(F_B\) を考えます。
電流は下向き、磁場は表向きなので、フレミングの左手の法則より、力は 左向き です。
等速度運動を維持するための外力 \(F\) は、これとつりあう 右向き の力です。
$$
\begin{aligned}
F &= IBl \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 端子電圧: \(V_{\text{端子}} = E – rI\)
  • コンデンサーのエネルギー: \(U = \frac{1}{2}CV^2\)
  • 電磁力: \(F = IBl\)
計算過程

コンデンサーの電圧
式⑨に \(V=vBl\) と \(I = \frac{vBl}{4R}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_C’ &= vBl – R \left( \frac{vBl}{4R} \right) \\[2.0ex]
&= vBl – \frac{1}{4} vBl \\[2.0ex]
&= \frac{3}{4} vBl
\end{aligned}
$$

静電エネルギー
式⑩に代入します。
$$
\begin{aligned}
U &= \frac{1}{2} C \left( \frac{3}{4} vBl \right)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{1}{2} C \cdot \frac{9}{16} (vBl)^2 \\[2.0ex]
&= \frac{9}{32} C (vBl)^2
\end{aligned}
$$

外力
式⑪に代入します。
$$
\begin{aligned}
F &= \left( \frac{vBl}{4R} \right) Bl \\[2.0ex]
&= \frac{vB^2l^2}{4R}
\end{aligned}
$$
向きは 右向き です。

この設問の平易な説明

今度は真ん中の棒(be)が発電機になります。
この発電機で作られた電気は、自分自身の抵抗(内部抵抗)で少し電圧をロスしてしまいます。
コンデンサーには、発電した電圧からロスを引いた残りの電圧(端子電圧)がかかります。
計算すると、元の電圧の \(3/4\) 倍になることがわかります。これを使ってエネルギーを計算します。
外力については、発電している場所が変わっても、流れる電流の大きさや向き(磁場に対して垂直)の関係は変わらないため、必要な力はさっきと同じです。

結論と吟味

エネルギーは \(\frac{9}{32} C (vBl)^2\)、外力は \(\frac{vB^2l^2}{4R}\)(右向き)。
電圧が \(3/4\) 倍になったため、エネルギー(電圧の2乗に比例)は \((3/4)^2 = 9/16\) 倍になるはずですが、基準となる電圧が(2)の \(1/4\) 倍のときとは異なるため単純比較はできません。
しかし、起電力 \(V\) の大部分が端子電圧として出力されているため、妥当な結果です。

解答 (4) エネルギー: \(\displaystyle \frac{9}{32} C (vBl)^2\), 外力: \(\displaystyle \frac{vB^2l^2}{4R}\) (右向き)
別解: 微積分を用いた体系的解法(ファラデーの電磁誘導の法則)

思考の道筋とポイント
「起電力」や「電位」という概念を一旦忘れ、電磁気学の基本原理であるファラデーの電磁誘導の法則(積分形)から回路方程式を導きます。
これにより、電池の起電力と抵抗での電圧降下が、実は一つの式の左辺と右辺に対応していることが明確になります。

この設問における重要なポイント

  • ファラデーの法則: \(\displaystyle \oint \vec{E} \cdot d\vec{r} = – \frac{d\Phi}{dt}\)
  • オームの法則(微分形): 導体内部では \(\vec{E} = \rho \vec{j}\)(\(\rho\)は抵抗率)。これを線積分すると \(RI\) になります。

具体的な解説と立式
閉回路bcde(経路 \(C\))に沿って、反時計回りを正としてファラデーの法則を適用します。

左辺(電場の周回積分)
導体内部の電場 \(\vec{E}\) を経路に沿って積分します。
各辺の抵抗を \(R\) とすると、オームの法則より各部分での積分値は \(RI\) となります。
$$
\begin{aligned}
\oint_C \vec{E} \cdot d\vec{r} &= (R+R+R+R) I \\[2.0ex]
&= 4RI
\end{aligned}
$$

右辺(磁束の時間変化)
回路bcdeを貫く磁束 \(\Phi\) を考えます。
磁場 \(B\) は領域L-L’(幅 \(l\))にのみ存在します。
時刻 \(t\) における辺beの位置を \(x\)(右向き正)とします。
\(l/v < t < 2l/v\) の間、辺beは磁場内にあり、辺cdは磁場外にあります。
回路内の磁場領域の面積 \(S\) は、辺beが右へ進むにつれて減少します。
磁場領域の左端を原点とすると、回路内の磁場領域の幅は \(l – x\) のような形で減少していきます(正確には、beが磁場領域を掃引して減らしていく)。
磁束 \(\Phi\) は「裏から表」向きを正とすると、
$$
\begin{aligned}
\Phi &= B \times (\text{回路内の磁場のある面積})
\end{aligned}
$$
面積の時間変化率は、辺beが速度 \(v\) で磁場領域を削っていくため、\(-lv\) です。
$$
\begin{aligned}
\frac{d\Phi}{dt} &= B \cdot (-lv) \\[2.0ex]
&= -vBl
\end{aligned}
$$

法則への適用
$$
\begin{aligned}
\oint \vec{E} \cdot d\vec{r} &= – \frac{d\Phi}{dt} \\[2.0ex]
4RI &= – (-vBl) \\[2.0ex]
4RI &= vBl
\end{aligned}
$$
これにより、\(I = \frac{vBl}{4R}\) が導かれます。

コンデンサーの電圧
次に、経路 a \(\to\) b \(\to\) e \(\to\) f \(\to\) a の閉回路を考えます。この領域には磁束の変化はありません(常に磁場外、あるいは変化なし)。
$$
\begin{aligned}
\oint \vec{E} \cdot d\vec{r} &= 0
\end{aligned}
$$
経路を分割して積分します。
$$
\begin{aligned}
\int_a^b \vec{E} \cdot d\vec{r} + \int_b^e \vec{E} \cdot d\vec{r} + \int_e^f \vec{E} \cdot d\vec{r} + \int_f^a \vec{E} \cdot d\vec{r} &= 0
\end{aligned}
$$
ab, efは導線(抵抗0)かつ電流なしなので電場 \(0\) です。
b \(\to\) e の積分は、オームの法則(微分形)\(\vec{E} = \rho \vec{j} – \vec{v} \times \vec{B}\) を用いて計算します。
電流 \(\vec{j}\) は b \(\to\) e 向き、\(\vec{v} \times \vec{B}\) も b \(\to\) e 向きです。
$$
\begin{aligned}
\int_b^e \vec{E} \cdot d\vec{r} &= \int_b^e (\rho \vec{j} – \vec{v} \times \vec{B}) \cdot d\vec{r} \\[2.0ex]
&= RI – vBl
\end{aligned}
$$
f \(\to\) a の積分は、電位差 \(V_a – V_f = -V_C’\) です。
これらを周回積分の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
0 + (RI – vBl) + 0 + (-V_C’) &= 0 \\[2.0ex]
V_C’ &= RI – vBl
\end{aligned}
$$
大きさとしては \(|vBl – RI|\) となり、符号を整理すると \(V_C’ = vBl – RI\)(起電力方向と逆行するため)となります。
結果、\(V_C’ = vBl – R(vBl/4R) = \frac{3}{4} vBl\) が導かれます。

この設問の平易な説明

「電圧」や「起電力」という言葉を使わずに、「磁石の力が電気の粒をどう動かすか」という根本的なルール(ファラデーの法則)から計算しました。
回路を一周する間に、磁石の動きによって生み出されるエネルギーと、抵抗で熱として失われるエネルギーがバランスすることを示しました。
また、コンデンサーにかかる電圧が、発電された分から抵抗で失われた分を引いた残りであることも、数式から自然に導かれます。

結論と吟味

通常の回路方程式を用いた解法と全く同じ結果が得られました。
この方法は、回路が変形したり磁場が時間変化したりするような、より複雑な状況でも迷わず使える強力な武器になります。

解答 (4) エネルギー: \(\displaystyle \frac{9}{32} C (vBl)^2\), 外力: \(\displaystyle \frac{vB^2l^2}{4R}\) (右向き)

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 電磁誘導とローレンツ力
    • 核心: 磁場中を動く導体内の自由電子がローレンツ力を受けることで、導体棒が「電池(起電力源)」として振る舞う現象です。
    • 理解のポイント:
      • 起電力の大きさは \(V = vBl\) です。
      • 起電力の向き(高電位側)は、正電荷が受けるローレンツ力の向き(\(q\vec{v} \times \vec{B}\))で決まります。
      • フレミングの左手の法則を用いても判断できます。
  • 定常状態におけるコンデンサーの振る舞い
    • 核心: 直流回路において十分時間が経過すると、コンデンサーは充電完了状態となり、電流を通さない「断線」と同じ扱いになります。
    • 理解のポイント:
      • コンデンサーを含む枝には電流が流れません(\(I=0\))。
      • その枝にある抵抗での電圧降下も \(0\) になるため、コンデンサーの極板間電圧は、並列に接続された回路部分の電位差と等しくなります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • レール上を動く導体棒: 今回のように枠ごと動くのではなく、コの字型のレール上を棒が滑るタイプ。閉回路の面積変化 \(\Delta S/\Delta t\) から \(V = -d\Phi/dt\) を使うアプローチも有効です。
    • 斜面を滑り落ちる導体棒: 重力と電磁力が関わる力学との融合問題。運動方程式と回路方程式を連立させて解きます。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 「電池」の特定: どの導体が磁場を横切っているかを探し、そこを電池記号に書き換えた「等価回路図」を必ず描きます。
    2. 電位の追跡: 電流の向きを仮定し、抵抗を通るたびに電位が下がる(\(V_{\text{降下}} = RI\))ことを図に書き込みます。特に接地(アース)がある場合はそこを \(0\,\text{V}\) とします。
    3. 力の作図: 導体棒には必ず「運動を妨げる向き」に電磁力が働きます。これと外力や重力がつりあっているか(等速)、加速しているか(運動方程式)を見極めます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 起電力の向きの判定ミス:
    • 誤解: 「右に動くから電流も右」や「なんとなく時計回り」と直感で決めてしまう。
    • 対策: 必ず「ローレンツ力 \(F = qvB\)」の向きを確認するか、レンツの法則(磁束の変化を妨げる向きに磁場を作るような電流)を使って論理的に決定する癖をつけます。
  • コンデンサー電圧の計算ミス:
    • 誤解: コンデンサーがつながっている抵抗(今回の図でいうabやef)でも電圧降下が起きると思い込み、\(V – RI\) を計算してしまう。
    • 対策: 「電流が流れていない抵抗はただの導線」と割り切ります。コンデンサーの足元が、回路のどの点と等電位なのかを色ペンでなぞって確認しましょう。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 外力を求める際の「力のつりあい」:
    • 選定理由: 問題文に「一定の速さで」とあるため、加速度 \(a=0\) です。運動方程式 \(ma=F\) よりも、単に力の和がゼロと考える方が直感的で計算ミスも減ります。
    • 適用根拠: 慣性の法則(第1法則)より、等速運動する物体に働く合力はゼロでなければなりません。
  • 別解での「エネルギー保存則」:
    • 選定理由: 力の向きや電磁力の公式が不安な場合でも、スカラー量(向きを持たない量)であるエネルギーだけで計算できるため、検算として最強のツールです。
    • 適用根拠: ジュール熱の発生源が外力の仕事以外にない(電池などが他にない)場合、供給された仕事率はすべて消費電力に変換されます。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 次元解析(単位チェック):
    • 意識: 文字式の計算では、最後に単位が合っているか確認します。
    • 実践: 例えば電流 \(I\) の答えが \(\frac{vBl}{R}\) なら、単位は \(\frac{[\text{V}]}{[\Omega]} = [\text{A}]\) で正しいと判断できます。もし \(B\) が2乗になっていたら間違いです。
  • 回路図の書き直し:
    • 意識: 問題用紙の図に直接書き込むとごちゃごちゃしてミスのもとになります。
    • 実践: 必ず余白に、電池と抵抗、コンデンサーを整理したシンプルな「等価回路図」を書き直します。特に電位の高低(+とー)を明記することが重要です。
関連記事

[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。 【引用】https://makoto-physics-school.com […]

問題38 電磁誘導 (東京大)

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】
  1. 提示する別解
    • 設問(3)の別解1: エネルギー保存則を用いた解法
      • 模範解答は力のつりあいから終端速度を求めていますが、別解では「重力の仕事率=ジュール熱+摩擦熱」というエネルギー保存則(設問Qの内容)を先に立式し、そこから速度を逆算します。
    • 設問(3)(Q)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式とエネルギー収支)
      • 運動方程式を立式し、それが定常状態(加速度 \(0\))において力のつりあいの式になることを示します。
      • さらに、運動方程式の両辺に速度 \(u\) を掛けて積分することで、エネルギー保存則(設問Qの式)が数学的に導かれることを示します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • エネルギー保存則: 複雑な力の分解や垂直抗力の変化を計算ミスしやすい場合でも、エネルギーの収支だけで簡潔に速度を求められるため、検算として極めて有効です。
    • 微積分の解法: 力学的な運動方程式と電気的なエネルギー保存則が、実は数学的に等価であることを理解でき、物理現象の深い洞察力を養います。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題のテーマは「磁場中の斜面を運動する導体棒の力学と電磁誘導」です。
一見すると典型的なレール問題ですが、磁場が鉛直上向きであるため、電磁力が水平方向に働き、その分力が垂直抗力を変化させるという点が最大の難所であり、合否を分けるポイントです。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 電流が磁場から受ける力(電磁力): 水平方向の力 \(F = IBl\) を、斜面方向と斜面に垂直な方向に正しく分解する必要があります。
  2. 誘導起電力: 磁場を斜めに横切る場合、磁場に垂直な速度成分 \(u \cos\theta\) が起電力を生み出します。
  3. 摩擦力と垂直抗力: 垂直抗力 \(N\) は単なる \(Mg \cos\theta\) ではなく、電磁力の成分が加わることで変化します。これに伴い摩擦力 \(\mu N\) も変化します。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1)は純粋な静力学の問題として、力のつりあいから摩擦係数を求めます。
  2. (2)は電源をつないだ場合の静力学です。電磁力の向きを特定し、垂直抗力の変化を考慮して力のつりあいを立てます。
  3. (3)は電磁誘導を含む動力学です。終端速度(力がつりあった状態)を求めます。
  4. (Q)はエネルギーの観点から現象を整理します。

問(1)

ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。

「解法に至る思考プロセス」
全て言語化した、超詳細解説。

なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
まずは2週間、無料でこの続きを読んでみませんか?

1週間無料で続きを読む

(※無料期間中に解約すれば0円です)

既に会員の方はこちら

PVアクセスランキング にほんブログ村