「名問の森」徹底解説(37〜39問):未来の得点力へ!完全マスター講座【波動Ⅱ・電磁気・原子】

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問題37 (名城大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、磁場中を運動する導体(回路)に生じる「電磁誘導」と、回路に接続された「コンデンサー」の振る舞いを組み合わせた、複合的な問題です。導体棒が磁場を横切ることで「電池」となり(誘導起電力)、回路に電流を流します。そして、電流が一定になった定常状態のときにコンデンサーがどのように充電されるか、また、回路全体を等速で動かし続けるために必要な外力はいくらか、といった点が問われます。時間の経過とともに、磁場の中を動く辺が入れ替わるため、2つの期間に分けて考える必要があります。

与えられた条件
  • 回路: 一辺の長さ\(l\)、各辺の抵抗Rの長方形回路(2つの正方形で構成)。
  • コンデンサー: 容量C、af間に接続。
  • 磁場: 磁束密度B、紙面の裏から表向き、幅lの領域に存在。
  • 運動: 回路全体が右向きに一定の速さvで移動。
  • 時刻: t=0で辺cdが磁場に進入開始。
問われていること
  • 期間1 (\(0<t<l/v\)): 辺cdのみが磁場内にある定常状態
    • (1) 辺beを流れる電流の向きと強さ。
    • (2) コンデンサーのa側極板の電荷。
    • (3) 回路全体の消費電力と、加えている外力の大きさ・向き。
  • 期間2 (\(l/v<t<2l/v\)): 辺beのみが磁場内にある定常状態
    • (4) コンデンサーの静電エネルギーと、加えている外力の大きさ・向き。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題を解くための鍵は、磁場中を運動する導体辺を「誘導起電力 \(V=vBl\) を生み出す電池」と見なすことです。そして、もう一つの重要なポイントは、コンデンサーの性質です。直流回路において、電流が一定になった定常状態では、コンデンサーの充電は完了しており、コンデンサーを含む部分には電流が流れない(断線しているのと同じ)と考えることができます。

この2つの基本原則に沿って、各期間で「どこが電池になっているか?」「電流はどの経路を流れるか?」を特定し、オームの法則や力のつり合い、エネルギー保存則といった物理法則を適用していきます。

問 (1)

思考の道筋とポイント
この期間では、回路の右辺cdのみが磁場の中を運動しています。

  1. まず、磁場中を動く辺cdに生じる誘導起電力の大きさと向き(どちらが正極か)を決定します。これが回路全体の「電源」となります。
  2. 次に、回路が「定常状態」にある、という条件から、電流が流れる経路を特定します。コンデンサー部分は電流が流れないため、電流は右側のループのみを流れます。
  3. 最後に、特定したループに対してオームの法則を適用し、電流の大きさを計算します。

具体的な解説と立式
1. 誘導起電力の発生:
辺cdが速さvで磁場Bを横切るため、誘導起電力Vが生じます。その大きさは、
$$V = vBl \quad \cdots ①$$
向きは、フレミングの右手の法則(運動v:右、磁場B:表向き)より、電流はd→cの向きに流そうとされます。つまり、c側が高電位(正極)、d側が低電位(負極)の電池と見なせます。
2. 電流の経路と大きさ:
定常状態ではコンデンサーCは充電を完了しており、電流を流しません。したがって、電流Iはコンデンサーを含まない右側のループ `b-c-d-e-b` のみを流れます。
電流は電源(辺cd)の正極cから流れ出し、b→eを通って負極dに戻ります。したがって、辺beを流れる電流の向きは eからbの向き です。
このループは、辺bc, cd, de, ebの4つの抵抗Rが直列に接続された回路と見なせるので、全体の抵抗は \(4R\) です。オームの法則を適用すると、
$$V = (4R)I \quad \cdots ②$$

使用した物理公式

  • 誘導起電力: \(V = vBl\)
  • 定常状態のコンデンサー(電流0)
  • オームの法則: \(V = IR\)
計算過程

式②に式①を代入して、電流Iを求めます。
$$vBl = 4RI$$
Iについて解くと、
$$I = \frac{vBl}{4R}$$

計算方法の平易な説明

まず、動いている辺cdが \(V=vBl\) の電圧を持つ電池に変身します。定常状態ではコンデンサーに電流は流れないので、左の正方形は無視できます。すると、問題は「電圧Vの電池に、4つの抵抗Rが直列につながっている回路」と同じになります。全体の抵抗は4Rなので、オームの法則 \(I=V/(\text{全抵抗})\) を使って電流を計算します。

結論と吟味

辺beを流れる電流の向きは eからb で、その強さは \(\displaystyle\frac{vBl}{4R}\) です。

解答 (1) 向き: eからb、強さ: \(\displaystyle\frac{vBl}{4R}\)

問 (2)

思考の道筋とポイント
コンデンサーに蓄えられる電荷Qは、公式 \(Q=CV_c\) で計算できます。ここで \(V_c\) はコンデンサーにかかる電圧です。この電圧は、コンデンサーが接続されているa点とf点の間の電位差 \(V_{af}\) に等しくなります。左側のループには電流が流れていないので、途中の抵抗による電圧降下はなく、\(V_{af}\) は向かい合う辺be間の電位差 \(V_{be}\) と等しくなります。したがって、\(V_{be}\) を計算することが目標となります。

具体的な解説と立式
1. コンデンサーの電圧:
定常状態では、左側のループ `a-b-e-f-a` には電流が流れません。したがって、抵抗abとfeでの電圧降下はゼロです。このことから、コンデンサーの電圧 \(V_c = V_{af}\) は、辺be間の電位差 \(V_{be}\) に等しくなります。
$$V_c = V_{be} \quad \cdots ①$$
2. 辺be間の電位差:
辺beには抵抗Rがあり、(1)で求めた電流Iがe→bの向きに流れています。したがって、オームの法則より、辺be間の電位差は、
$$V_{be} = R I \quad \cdots ②$$
3. 電荷の計算:
コンデンサーに蓄えられる電荷の大きさQは、
$$Q = C V_c \quad \cdots ③$$
4. 電荷の符号:
電流がe→bに流れるため、eの方がbよりも電位が高くなります。したがって、\(V_{fe} = V_{be}\) であり、f点の電位はa点よりも高くなります。コンデンサーでは、電位の高い方の極板に正の電荷が、低い方の極板に負の電荷が蓄えられます。よって、a側の極板には負の電荷が蓄えられます。

計算過程

まず、(1)で求めた \(I = \displaystyle\frac{vBl}{4R}\) を式②に代入して \(V_{be}\) を求めます。
$$V_{be} = R \left( \frac{vBl}{4R} \right) = \frac{vBl}{4}$$
式①より \(V_c = V_{be}\) なので、これを式③に代入して電荷の大きさQを求めます。
$$Q = C \left( \frac{vBl}{4} \right) = \frac{1}{4}CvBl$$
a側の極板の電荷は負なので、求める答えは、
$$Q_a = -\frac{1}{4}CvBl$$

計算方法の平易な説明

コンデンサーの電圧は、その向かいにある辺beにかかる電圧と全く同じになります。辺beには抵抗Rがあり、ここに(1)で求めた電流Iが流れているので、その電圧はオームの法則で \(V_{be} = RI\) と計算できます。この電圧を使って、公式 \(Q=CV\) からコンデンサーにたまる電気の量を求めます。最後に、電流の向きからa点とf点のどちらの電圧が高いかを判断し、a側はマイナスの電気を帯びていると結論づけます。

結論と吟味

コンデンサーのa側の極板の電荷は \(-\displaystyle\frac{1}{4}CvBl\) です。

解答 (2) \(-\displaystyle\frac{1}{4}CvBl\)

問 (3)

思考の道筋とポイント
消費電力と外力は、どちらも(1)で求めた電流Iが基本になります。

  • 消費電力P: 電気エネルギーが熱に変わる量です。電流が流れているのは右側のループにある4つの抵抗だけなので、これらの抵抗でジュール熱として消費される電力が、回路全体での消費電力となります。
  • 外力F: 回路が等速で動いているため、力はつり合っています。加えている外力Fは、電流が磁場から受ける電磁力(ローレンツ力)\(F_B\) と大きさが同じで、向きが逆になるはずです。

具体的な解説と立式
1. 消費電力P:
電流Iが流れる4つの抵抗Rでの消費電力の合計を求めます。全体の抵抗は \(4R\) なので、公式 \(P = (\text{全抵抗}) \times I^2\) より、
$$P = (4R)I^2 \quad \cdots ①$$
2. 電磁力\(F_B\)と外力F:
磁場中で電流が流れているのは辺cdだけです。辺cdには、(1)の起電力の向きから判断してd→cの向きに電流Iが流れています。磁場Bは表向きです。フレミングの左手の法則(電流:上、磁場:表)を適用すると、電磁力\(F_B\)は左向きに働きます。
等速運動を続けるためには、この左向きの電磁力\(F_B\)とつり合う、右向きの外力Fを加える必要があります。その大きさは、
$$F = F_B = IBl \quad \cdots ②$$

計算過程

(1)で求めた \(I = \displaystyle\frac{vBl}{4R}\) を使います。

  • 消費電力の計算: 式①にIを代入します。
    $$P = 4R \left( \frac{vBl}{4R} \right)^2 = 4R \cdot \frac{v^2 B^2 l^2}{16R^2} = \frac{v^2 B^2 l^2}{4R}$$
  • 外力の計算: 式②にIを代入します。
    $$F = \left( \frac{vBl}{4R} \right) Bl = \frac{vB^2l^2}{4R}$$

別解: エネルギー保存則による外力の計算
思考の道筋とポイント
等速運動なので、運動エネルギーは変化しません。このとき、エネルギー保存の観点から、「外部から加えた仕事(率)」は、すべて「回路で消費される電力(ジュール熱)」に変換されているはずです。この関係から外力を求めることもできます。
具体的な解説と立式

  • 外力が単位時間あたりにする仕事(仕事率): \(P_{F} = Fv\)
  • 単位時間あたりに消費される電力: \(P = \displaystyle\frac{v^2 B^2 l^2}{4R}\)

エネルギー保存則より \(P_{F} = P\) なので、
$$Fv = \frac{v^2 B^2 l^2}{4R}$$
両辺をvで割ることで、Fが求まります。
$$F = \frac{vB^2l^2}{4R}$$
これはメインの解法の結果と一致します。

結論と吟味

消費電力は \(\displaystyle\frac{v^2 B^2 l^2}{4R}\)、外力の大きさは \(\displaystyle\frac{vB^2l^2}{4R}\) で、向きは右向きです。

解答 (3) 消費電力: \(\displaystyle\frac{v^2 B^2 l^2}{4R}\)、外力: 大きさ \(\displaystyle\frac{vB^2l^2}{4R}\) で右向き

問 (4)

思考の道筋とポイント
状況は期間1と似ていますが、「電池」となる辺がcdからbeに変わります。

  1. 電源の特定: 今度は辺beが磁場中を動くので、ここに誘導起電力Vが生じます。その向きと大きさを決定します。
  2. コンデンサーのエネルギー計算: エネルギーの公式 \(U = \frac{1}{2}CV_c^2\) を使うために、まずコンデンサーの電圧\(V_c\)(=辺be間の電位差 \(V_{be}\))を求めます。今回は、辺be自身が電池でありかつ抵抗でもあるので、その「端子電圧」を考える必要があります。
  3. 外力の計算: 磁場中で電流が流れる辺beにはたらく電磁力とつりあう力を考えます。

具体的な解説と立式
1. 誘導起電力:
辺beが速さvで右に動きます。フレミングの右手の法則(運動v:右、磁場B:表)より、電流はb→eの向きに流そうとされます。つまり、e側が高電位(正極)、b側が低電位(負極)の電池になります。大きさは変わらず、
$$V = vBl \quad \cdots ①$$
2. 電流:
電源は辺be、電流が流れるループは `b-c-d-e-b`(抵抗4R)で、期間1と全く同じ構成です。したがって、電流の大きさIも期間1と同じになります。
$$I = \frac{V}{4R} = \frac{vBl}{4R} \quad \cdots ②$$
電流の向きは、電源eから出て、d→c→bへと流れます。
3. コンデンサーの静電エネルギー:
エネルギーは \(U = \frac{1}{2}C(V_c’)^2\) で計算できます。コンデンサーの電圧 \(V_c’\) は、辺be間の電位差 \(V_{be}\) に等しくなります。
辺beは、起電力Vと内部抵抗Rを持つ電池と見なせます。この電池から電流Iが流れ出ているので、その端子電圧 \(V_{be}\) は、起電力から内部抵抗による電圧降下を引いたものになります。
$$V_c’ = V_{be} = (\text{起電力}) – (\text{内部抵抗での電圧降下}) = V – IR \quad \cdots ③$$
4. 外力:
磁場中で電流が流れるのは辺beです。電流はb→eの向き(下向き)に流れています。フレミングの左手の法則(電流:下、磁場:表)より、電磁力\(F_B\)は左向きに働きます。
等速運動なので、外力Fはこれとつりあう右向きで、大きさは、
$$F = F_B = IBl \quad \cdots ④$$

計算過程
  • 静電エネルギーの計算:
    まず、式③に①と②を代入して、コンデンサーの電圧 \(V_c’\) を求めます。
    $$V_c’ = vBl – \left(\frac{vBl}{4R}\right)R = vBl – \frac{vBl}{4} = \frac{3}{4}vBl$$
    これをエネルギーの公式に代入します。
    $$U = \frac{1}{2}C(V_c’)^2 = \frac{1}{2}C \left( \frac{3}{4}vBl \right)^2 = \frac{1}{2}C \cdot \frac{9}{16}(vBl)^2 = \frac{9}{32}C(vBl)^2$$
  • 外力の計算:
    式④に電流Iの値を代入します。
    $$F = \left(\frac{vBl}{4R}\right)Bl = \frac{vB^2l^2}{4R}$$
結論と吟味

コンデンサーに蓄えられているエネルギーは \(\displaystyle\frac{9}{32}C(vBl)^2\) です。外力の大きさは \(\displaystyle\frac{vB^2l^2}{4R}\) で、向きは右向きです。興味深いことに、回路を動かし続けるために必要な外力の大きさは、期間1と全く同じになりました。これは、回路を流れる電流の大きさが変わらなかったためです。しかし、コンデンサーの電圧とエネルギーは期間1とは異なる値になっています。

解答 (4) エネルギー: \(\displaystyle\frac{9}{32}C(vBl)^2\)、外力: 大きさ \(\displaystyle\frac{vB^2l^2}{4R}\) で右向き

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 誘導起電力 \(V=vBl\): 磁場を導体が横切るとき、その導体は電池になる、という電磁誘導の現象が全ての起点です。起電力の大きさと向き(極性)を正しく求められることが大前提となります。
  • コンデンサーの定常状態: 直流回路において、十分に時間が経過した定常状態では、コンデンサーは充電を完了し、その部分には電流が流れなくなる(断線とみなせる)という性質が、回路の電流経路を特定する上で決定的に重要でした。
  • 力のつり合いとエネルギー保存: 等速運動という条件から、「力のつり合い(外力=電磁力)」または「エネルギー保存(外力の仕事率=消費電力)」の関係式を立てることが、未知数を求める鍵となりました。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • RC回路と電磁誘導の組み合わせ: コンデンサーと抵抗を含む回路に誘導起電力が加わる問題全般に応用できます。特に「定常状態」というキーワードに注目することが重要です。
    • エネルギー変換効率: 発電機やモーターのように、力学的な仕事と電気エネルギーが相互に変換される問題で、エネルギーの収支や効率を考える際にも同じ考え方が使えます。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 「動く導体」を探す: 回路図の中に磁場を横切る導体があれば、そこを「電池」マークに置き換えて考えることから始めます。
    2. 「コンデンサー」と「定常状態」のキーワード: これらがあれば、コンデンサーの枝は「断線」として扱い、電流経路を単純化します。
    3. 「等速運動」のキーワード: 「力のつり合い」または「エネルギー保存」のどちらかの式を立てるチャンスだと考えます。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 誘導起電力の向きのミス:
    • 現象: フレミングの右手の法則を使い慣れていなかったり、左右の手を混同したりして、起電力の極性を逆にしてしまう。
    • 対策: 「導体内の正電荷がローレンツ力 \(q(\vec{v}\times\vec{B})\) でどちらに寄せられるか」という原理に立ち返ると、間違いが減ります。
  • コンデンサーの電圧の計算ミス:
    • 現象: 問(4)のように、起電力を生む導体自身に抵抗がある場合に、コンデンサーの電圧を起電力Vと勘違いしてしまう。
    • 対策: 常に「コンデンサーの電圧=接続された2点間の電位差」と考える。起電力を生む導体の場合は「端子電圧」を求める必要があり、「端子電圧=起電力-内部抵抗での電圧降下」という関係を思い出す。
  • 電磁力の向きのミス:
    • 現象: 電磁力(\(F=IBl\))の向きをフレミングの左手の法則で決めるときに、電流の向きを間違えて判断してしまう。
    • 対策: 回路をしっかり解いて電流の向きを確定させてから、落ち着いて左手の法則を適用する。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 導体棒を「電池マーク」に置き換える: 電磁誘導の問題では、起電力が生じている導体棒を、回路図上で電池の記号に書き換えてしまうのが最も有効です。極性(+,-)と起電力の大きさ(\(V=vBl\))を書き込めば、問題はただの直流回路に見えてきて、思考が整理されます。
    • 電流経路を色分けする: 定常状態で電流が流れない部分(コンデンサーの枝)と、流れる部分(右のループ)を、マーカーなどで色分けすると、回路の構造が視覚的に明確になります。
    • 力のベクトル図を描く: 外力と電磁力を考える際には、導体棒に働く力を矢印で図示する(フリーボディダイアグラム)ことで、力のつり合いの関係が一目瞭然になります。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(V=vBl\):
    • 選定理由: 導体が磁場を「横切って」運動し、電圧が発生する、という「電磁誘導」の現象そのものを数式化したものだから。
    • 適用根拠: ファラデーの電磁誘導の法則 \(\left(V = -N\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\right)\) を、導体棒が動くケースに適用した結果。
  • \(Q=CV\):
    • 選定理由: コンデンサーに蓄えられる電荷を問われているから。コンデンサーの基本定義式。
    • 適用根拠: コンデンサーの極板間の電位差と蓄えられる電荷が比例関係にあるという実験事実。
  • \(P = RI^2\) と \(Fv=P\):
    • 選定理由: 消費「電力」や、外力の「仕事率」といった、エネルギーの時間変化率が問われているから。
    • 適用根拠: エネルギー保存則。外部から供給されたエネルギー(仕事)は、形を変えても(熱エネルギーなど)その総量は変わらないという物理学の大原則。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. 状況の特定: まず、どの辺が磁場中を動いているかを確認し、「電源」となる辺を特定する。
  2. 起電力の計算: \(V=vBl\) で起電力の大きさを計算し、フレミングの右手の法則で極性を決定する。
  3. 回路の単純化: 「定常状態」と「コンデンサー」のキーワードから、電流が流れない枝を特定し、実際の電流経路を見極める。
  4. 電気量の計算: オームの法則やキルヒホッフの法則を使い、回路を流れる電流Iや、各部の電位差を計算する。コンデンサーの電荷やエネルギーは、電位差が分かってから計算する。
  5. 力学量の計算: 電流Iが分かったら、電磁力 \(F_B=IBl\) を計算する。「等速運動」の条件から、力のつり合い(\(F_{外力}=F_B\))を考え、外力を求める。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 場合分けの意識: この問題のように、時間や場所によって状況が変わる問題では、それぞれの期間で何が起きているかを混同しないように、図や思考を明確に分ける。
  • 文字式の整理: \(B, l, v, R, C\)など多くの文字が出てくるため、式変形の際に混乱しないよう、丁寧に整理する。特に分数の計算は慎重に行う。
  • 単位を意識する: 最終的な答えの単位が、求められている物理量の単位(電荷なら[C]、エネルギーなら[J])と一致するかを最後に確認する。次元のチェックは有効な検算方法です。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 定性的な予測との一致確認:
    • 問(4)で、コンデンサーの電圧が起電力 \(vBl\) よりも小さくなった(\(\frac{3}{4}vBl\))。これは、起電力を生む導体自身が抵抗として働き、電流を流すことで「内部で電圧降下」が起きたため、と物理的に解釈できる。
  • 別解による検算:
    • 問(3)で示したように、「力のつり合い」から求めた外力と、「エネルギー保存」から求めた外力が一致することを確認する作業は、非常に良い検算になる。
  • 極端な条件での検討:
    • もし抵抗Rがゼロだったら、電流Iが無限大に発散してしまう。これは、ブレーキとなる電磁力を発生させるためのジュール熱消費が起こらないため、等速運動が実現できないことを示唆しており、物理的に妥当な発散と言える。
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問題38 (東京大)

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