問題25 直流回路 (室蘭工大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説では、模範解答で採用されている「定常状態における回路計算」を主たる解法としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(3)(イ)の別解1: テブナンの定理(等価電源)を用いた解法
- 模範解答が電位を個別に求めて差を取るのに対し、別解では回路の一部を「等価電源」とみなして計算を簡略化します。
- 設問(3)(ウ)の別解2: エネルギー保存則を用いた解法
- 模範解答が各抵抗の消費電力を個別に計算して合計するのに対し、別解では電池が供給する電力全体に着目して一発で求めます。
- 設問(3)全体の別解3: 微積分を用いた体系的解法(回路方程式の定常解)
- 「コンデンサーには電流が流れない」という性質を既知とせず、時間変化する電流と電荷に関する微分方程式(回路方程式)を立て、時間が十分に経過した極限(定常状態)として解を導きます。
- 設問(3)(イ)の別解1: テブナンの定理(等価電源)を用いた解法
- 上記の別解が有益である理由
- テブナンの定理: 複雑な回路網を単純な「電池+抵抗」の形に置き換える強力なツールであり、計算の見通しを劇的に良くします。
- エネルギー保存則: 個別の計算ミスを防ぐための検算として非常に有効であり、物理現象の全体像を把握する力を養います。
- 微積分: 「なぜ定常状態で電流が止まるのか」を数式から論理的に理解でき、過渡現象(スイッチを入れた直後の変化)を含む応用問題への対応力を高めます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「コンデンサーを含む直流回路の定常状態」です。スイッチの開閉によって回路接続が変化する中で、電位、電流、電荷がどのように決まるかを解析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 定常状態のコンデンサー: 直流回路において十分に時間が経過すると、コンデンサーの充電が完了し、電流が流れなくなります(断線とみなせる)。
- 電位の計算: 回路内の任意の点の電位は、基準点(通常は電源の負極など)からの電圧降下や起電力を足し引きすることで求められます。
- キルヒホッフの法則: 電流の保存則(第一法則)と電圧のつりあい(第二法則)は、あらゆる回路計算の基礎となります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、スイッチが全て開いている単純な直列回路として扱います。
- (2)では、一部のスイッチが閉じた状態での電流経路を見極め、オームの法則で電位を求めます。
- (3)では、ブリッジ回路全体の電流分布を計算し、電位差から電荷を、抵抗値から電力を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
スイッチ \(S_1, S_2\) が共に開いている状態です。
回路図をたどると、電流の経路は「電源 \(\rightarrow\) A \(\rightarrow\) \(R_1\) \(\rightarrow\) L \(\rightarrow\) \(C_1\) \(\rightarrow\) M \(\rightarrow\) \(C_2\) \(\rightarrow\) N \(\rightarrow\) \(R_4\) \(\rightarrow\) B \(\rightarrow\) 電源」という一本道になります。
しかし、経路中にコンデンサーが含まれているため、定常状態では電流が流れません。
この設問における重要なポイント
- 電流ゼロ: コンデンサーが直列に入っているため、回路全体に電流は流れません(\(I=0\))。
- 抵抗での電圧降下なし: 電流が流れないため、オームの法則 \(V=RI\) より、抵抗 \(R_1, R_4\) での電圧降下は \(0\) です。つまり、抵抗の両端は等電位になります。
具体的な解説と立式
電流が \(0\) なので、抵抗 \(R_1\) の両端(AとL)、および \(R_4\) の両端(NとB)の電位差は \(0\) です。
電源の負極側(B点)の電位を \(0\) と基準化すると、電源電圧 \(E=12\,\text{V}\) より、A点の電位は \(12\,\text{V}\) となります。
$$
\begin{aligned}
V_B &= 0\,\text{V} \\[2.0ex]
V_A &= 12\,\text{V}
\end{aligned}
$$
抵抗での電圧降下がないため、L点とN点の電位は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
V_L &= V_A \\[2.0ex]
&= 12\,\text{V} \\[2.0ex]
V_N &= V_B \\[2.0ex]
&= 0\,\text{V}
\end{aligned}
$$
したがって、コンデンサー直列部分(L-N間)にかかる電圧 \(V_{LN}\) は \(12\,\text{V}\) です。
この電圧が、直列接続された \(C_1, C_2\) に分圧されます。
直列コンデンサーに蓄えられる電荷 \(Q\) は共通なので、各コンデンサーの電圧 \(V_{C1}, V_{C2}\) は容量の逆比になります。
$$
\begin{aligned}
V_{C1} : V_{C2} &= \frac{1}{C_1} : \frac{1}{C_2} \\[2.0ex]
&= C_2 : C_1
\end{aligned}
$$
求めたいのは「Lに対するMの電位」つまり \(V_M – V_L\) です。
図より、\(V_L – V_M = V_{C1}\) (Lの方が電位が高い)なので、まずは \(V_{C1}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_{C1} &= \frac{C_2}{C_1 + C_2} V_{LN}
\end{aligned}
$$
求める電位差 \(\Delta V\) は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\Delta V &= V_M – V_L \\[2.0ex]
&= – V_{C1}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則: \(V = RI\)
- コンデンサーの直列分圧: \(V_1 = \frac{C_2}{C_1+C_2} V_{\text{全}}\)
\(C_1 = 20\,\mu\text{F}, C_2 = 30\,\mu\text{F}\) を代入して \(V_{C1}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_{C1} &= \frac{30}{20 + 30} \times 12 \\[2.0ex]
&= \frac{30}{50} \times 12 \\[2.0ex]
&= 0.6 \times 12 \\[2.0ex]
&= 7.2\,\text{V}
\end{aligned}
$$
L点の方がM点より電位が高いため、Lに対するMの電位(\(V_M – V_L\))は負の値になります。
$$
\begin{aligned}
\Delta V &= -7.2\,\text{V}
\end{aligned}
$$
スイッチが開いているため、電気の通り道は一本しかありませんが、途中にコンデンサーという「壁」があるため、電気の流れ(電流)は止まっています。
電流が流れていないので、抵抗はただの導線と同じになり、電圧を使いません。そのため、電池のパワー(12V)がそのまま2つのコンデンサーに直撃します。
コンデンサーは容量が小さいほど電圧を多く負担する性質があるため、計算すると上のコンデンサーには7.2Vの電圧がかかっていることがわかります。
聞かれているのは「上(L)から見た真ん中(M)の高さ」なので、7.2Vだけ「下がる」ことになり、答えはマイナスになります。
答えは \(-7.2\,\text{V}\) です。
\(C_1\) の方が \(C_2\) より容量が小さいため(\(20 < 30\))、より大きな電圧がかかるはずです。\(12\,\text{V}\) の半分(\(6\,\text{V}\))より大きい \(7.2\,\text{V}\) という結果は妥当です。また、電流方向(電位の高い方)から低い方を見るので、符号はマイナスで正解です。
問(2)
思考の道筋とポイント
\(S_1\) を閉じ、\(S_2\) を開いた状態です。
\(S_1\) が閉じたことで、電流の流れるループが形成されます。
\(S_2\) は開いているため、\(R_3\) 側には電流が流れません。また、L-N間にはコンデンサーがあるため、ここにも定常電流は流れません。
この設問における重要なポイント
- 有効な回路の特定: 電流は「電源 \(\rightarrow\) A \(\rightarrow\) \(S_1\) \(\rightarrow\) \(R_2\) \(\rightarrow\) N \(\rightarrow\) \(R_4\) \(\rightarrow\) B \(\rightarrow\) 電源」という経路でのみ流れます。
- 無電流部分: \(R_1\) の先(L点)は、\(R_3\) 側が断線、コンデンサー側も直流不通のため、行き止まりです。よって \(R_1\) に電流は流れません。
具体的な解説と立式
まず、AB間を流れる電流 \(I\) を求めます。
有効な回路は \(R_2\) と \(R_4\) の直列回路です。
オームの法則より、回路全体の電圧と抵抗の関係式を立てます。
$$
\begin{aligned}
E &= (R_2 + R_4) I
\end{aligned}
$$
次に、LとNの電位を比較します。
B点の電位を \(0\,\text{V}\) とすると、A点の電位は \(12\,\text{V}\) です。
\(R_1\) には電流が流れないため、電圧降下は \(0\) です。よってL点の電位はA点と等しくなります。
$$
\begin{aligned}
V_L &= V_A \\[2.0ex]
&= 12\,\text{V}
\end{aligned}
$$
N点の電位は、A点から \(R_2\) での電圧降下を引くか、B点から \(R_4\) での電圧上昇を足すことで求められます。ここではB点基準で考えます。
$$
\begin{aligned}
V_N &= V_B + R_4 I \\[2.0ex]
&= 0 + R_4 I
\end{aligned}
$$
最後に、LN間の電位差 \(V_{LN} = |V_L – V_N|\) を計算します。
使用した物理公式
- オームの法則: \(V = RI\)
- 直列回路の合成抵抗: \(R = R_1 + R_2\)
まず電流 \(I\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
I &= \frac{E}{R_2 + R_4} \\[2.0ex]
&= \frac{12}{20 + 30} \\[2.0ex]
&= \frac{12}{50} \\[2.0ex]
&= 0.24\,\text{A}
\end{aligned}
$$
次に \(V_N\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
V_N &= 30 \times 0.24 \\[2.0ex]
&= 7.2\,\text{V}
\end{aligned}
$$
\(V_L = 12\,\text{V}\) と \(V_N = 7.2\,\text{V}\) を比較すると、\(12 > 7.2\) なので **Lの方が電位が高い** です。
その電位差は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
V_{LN} &= V_L – V_N \\[2.0ex]
&= 12 – 7.2 \\[2.0ex]
&= 4.8\,\text{V}
\end{aligned}
$$
スイッチ \(S_1\) だけを入れると、電気は下のルート(\(R_2\) と \(R_4\))を通って流れます。上のルート(\(R_1\))は行き止まりなので電気は流れません。
電気が流れない \(R_1\) では電圧が下がらないので、L点の高さ(電位)は電池のプラス側と同じ12Vのままです。
一方、電気が流れている下のルートでは、抵抗を通るたびに電圧が下がっていきます。計算すると、N点の高さは7.2Vになります。
12Vと7.2Vを比べると、当然12V(L点)の方が高いです。その差は4.8Vとなります。
電流 \(0.24\,\text{A}\)、Lの方が高い、電位差 \(4.8\,\text{V}\)。
\(R_2\) での電圧降下は \(20 \times 0.24 = 4.8\,\text{V}\) なので、A点(\(12\,\text{V}\))から \(4.8\,\text{V}\) 下がって \(V_N = 7.2\,\text{V}\) となり、計算の整合性が取れています。
問(3)
思考の道筋とポイント
\(S_1, S_2\) を共に閉じると、回路は典型的なブリッジ回路の形になります。
中央のL-N間にはコンデンサーがあるため、定常状態ではここには電流が流れません。
つまり、回路は「上側の抵抗直列回路(\(R_1+R_3\))」と「下側の抵抗直列回路(\(R_2+R_4\))」が並列に接続された状態とみなせます。
この設問における重要なポイント
- 回路の分離: コンデンサーに電流が流れないため、上側の電流 \(i\) と下側の電流 \(I\) は独立して計算できます。
- 電位差と電荷: コンデンサーに蓄えられる電荷は、その両端の電位差 \(V_{LN}\) によって決まります。
- 消費電力: 全抵抗での消費電力の和、または電池の供給電力として求められます。
具体的な解説と立式
(ア) AB間を流れる電流
上側経路(\(R_1, R_3\))の合成抵抗を \(R_{\text{上}}\)、下側経路(\(R_2, R_4\))の合成抵抗を \(R_{\text{下}}\) とします。
それぞれの経路を流れる電流 \(i, I\) はオームの法則より求まります。
$$
\begin{aligned}
i &= \frac{E}{R_1 + R_3} \\[2.0ex]
I &= \frac{E}{R_2 + R_4}
\end{aligned}
$$
AB間を流れる全電流 \(I_{\text{全}}\) はこれらの和です。
$$
\begin{aligned}
I_{\text{全}} &= i + I
\end{aligned}
$$
(イ) \(C_1\) のL側の極板に蓄えられた電荷
まず、L点とN点の電位を求めます(B点を \(0\,\text{V}\) 基準)。
$$
\begin{aligned}
V_L &= V_B + R_3 i \\[2.0ex]
&= R_3 i \\[2.0ex]
V_N &= V_B + R_4 I \\[2.0ex]
&= R_4 I
\end{aligned}
$$
電位差 \(V_{NL} = V_N – V_L\) を求め、合成容量 \(C_{\text{合成}}\) を用いて蓄えられる電荷 \(Q\) を計算します。
\(C_1, C_2\) は直列なので、蓄えられる電荷の大きさは等しくなります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C_{\text{合成}}} &= \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} \\[2.0ex]
Q &= C_{\text{合成}} (V_N – V_L)
\end{aligned}
$$
\(V_N > V_L\) ならばN側が正、L側が負に帯電します。問われているのは「L側の極板」なので符号に注意が必要です。
(ウ) 回路全体での消費電力
各抵抗での消費電力 \(P = I^2 R\) の総和を計算します。
$$
\begin{aligned}
P_{\text{全}} &= i^2 R_1 + i^2 R_3 + I^2 R_2 + I^2 R_4
\end{aligned}
$$
(エ) 電荷が蓄えられない条件
電荷が \(0\) になるには、コンデンサーにかかる電圧が \(0\)、つまり \(V_L = V_N\) であればよいです。これはホイートストンブリッジの平衡条件と同じです。
$$
\begin{aligned}
R_1 R_4 &= R_2 R_3
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- オームの法則: \(I = V/R\)
- コンデンサーの合成容量(直列): \(\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\)
- 電荷の式: \(Q = CV\)
- 電力の式: \(P = IV = I^2 R\)
- ホイートストンブリッジの平衡条件: \(R_1 R_4 = R_2 R_3\)
(ア)
$$
\begin{aligned}
i &= \frac{12}{30 + 10} \\[2.0ex]
&= \frac{12}{40} \\[2.0ex]
&= 0.30\,\text{A} \\[2.0ex]
I &= \frac{12}{20 + 30} \\[2.0ex]
&= \frac{12}{50} \\[2.0ex]
&= 0.24\,\text{A} \\[2.0ex]
I_{\text{全}} &= 0.30 + 0.24 \\[2.0ex]
&= 0.54\,\text{A}
\end{aligned}
$$
(イ)
$$
\begin{aligned}
V_L &= 10 \times 0.30 \\[2.0ex]
&= 3.0\,\text{V} \\[2.0ex]
V_N &= 30 \times 0.24 \\[2.0ex]
&= 7.2\,\text{V}
\end{aligned}
$$
\(V_N > V_L\) なので、N側が高電位です。電位差は \(7.2 – 3.0 = 4.2\,\text{V}\)。
合成容量 \(C_{\text{合成}}\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
C_{\text{合成}} &= \frac{C_1 C_2}{C_1 + C_2} \\[2.0ex]
&= \frac{20 \times 30}{20 + 30} \\[2.0ex]
&= \frac{600}{50} \\[2.0ex]
&= 12\,\mu\text{F}
\end{aligned}
$$
蓄えられる電荷の大きさ \(|Q|\) は、
$$
\begin{aligned}
|Q| &= 12\,\mu\text{F} \times 4.2\,\text{V} \\[2.0ex]
&= 50.4\,\mu\text{C}
\end{aligned}
$$
N側が高電位なので、N側に \(+Q\)、L側に \(-Q\) が蓄えられます。
\(C_1\) のL側の極板の電荷は負なので、\(-50.4\,\mu\text{C}\)。
(ウ)
$$
\begin{aligned}
P_{\text{全}} &= (0.30)^2 \times (30+10) + (0.24)^2 \times (20+30) \\[2.0ex]
&= 0.09 \times 40 + 0.0576 \times 50 \\[2.0ex]
&= 3.6 + 2.88 \\[2.0ex]
&= 6.48\,\text{W}
\end{aligned}
$$
(エ)
平衡条件 \(R_1 R_4 = R_2 R_3\) に値を代入して \(R_3\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
30 \times 30 &= 20 \times R_3 \\[2.0ex]
900 &= 20 R_3 \\[2.0ex]
R_3 &= \frac{900}{20} \\[2.0ex]
&= 45\,\Omega
\end{aligned}
$$
(ア) 上の道と下の道、それぞれ独立した回路として電流を計算し、最後に合流させればOKです。
(イ) 上の道の途中(L点)と下の道の途中(N点)の高さを計算して比べます。N点の方が高いので、電気はN側からコンデンサーを押そうとします。その圧力差(電圧)を使って溜まる電気量を計算します。L側は低い方(マイナス側)につながるので、電荷はマイナスになります。
(ウ) 全部の抵抗が発する熱(電力)を足し算します。
(エ) L点とN点の高さが同じになれば、コンデンサーに圧力差がかからず、電気は溜まりません。これは「向かい合う抵抗の掛け算が等しい」というバランス条件(ホイートストンブリッジ)で求められます。
(ア) \(0.54\,\text{A}\)。妥当な値です。
(イ) \(-50.4\,\mu\text{C}\)。有効数字を考慮すると \(-5.0 \times 10^{-5}\,\text{C}\) と表記しても良いでしょう。
(ウ) \(6.48\,\text{W}\)。
(エ) \(45\,\Omega\)。元の \(10\,\Omega\) より大きくすることで、L点の電位を下げ(\(R_3\)での電圧降下を大きくし)、N点に合わせる方向なので物理的に正しいです。
思考の道筋とポイント
L-N間のコンデンサー回路を切り離し、残りの回路を「1つの電池(等価電圧 \(V_0\))」と「1つの抵抗(等価抵抗 \(r_0\))」に置き換えて考えます。
これにより、複雑なブリッジ回路が単純な直列回路に見えるようになります。
この設問における重要なポイント
- 等価電圧: 開放端子間の電位差。
- 等価抵抗: 電源を短絡した状態で端子から見た合成抵抗。
具体的な解説と立式
L-N間を開放したときの電位差(開放電圧)を \(V_0\) とします。
これは先ほど求めた \(V_N – V_L\) そのものです。
$$
\begin{aligned}
V_0 &= V_N – V_L
\end{aligned}
$$
次に、電源 \(E\) を短絡(導線でつなぐ)したとみなして、L-N端子から見た合成抵抗(等価抵抗)\(r_0\) を求めます。
L側は \(R_1\) と \(R_3\) の並列、N側は \(R_2\) と \(R_4\) の並列に見えます。
$$
\begin{aligned}
r_0 &= \frac{R_1 R_3}{R_1 + R_3} + \frac{R_2 R_4}{R_2 + R_4}
\end{aligned}
$$
この等価電源 \(V_0\) にコンデンサー \(C_{\text{合成}}\) が接続されると考えます。
定常状態では電流が流れないため、抵抗 \(r_0\) での電圧降下はなく、コンデンサーには \(V_0\) がそのままかかります。
$$
\begin{aligned}
Q &= C_{\text{合成}} V_0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- テブナンの定理
- 並列抵抗の合成: \(R = \frac{R_a R_b}{R_a + R_b}\)
$$
\begin{aligned}
V_0 &= 4.2\,\text{V} \\[2.0ex]
Q &= 12\,\mu\text{F} \times 4.2\,\text{V} \\[2.0ex]
&= 50.4\,\mu\text{C}
\end{aligned}
$$
N側が高電位なので、L側の電荷は \(-50.4\,\mu\text{C}\)。
複雑な回路を「1個の電池と1個の抵抗」という一番シンプルな形に書き換えてしまう魔法のような方法(テブナンの定理)を使いました。
書き換えてしまえば、あとは単純な計算だけで答えが出ます。
メインの解法と同じ結果が得られました。この方法は、コンデンサーと並列に抵抗が入るなど、回路がさらに複雑になった場合に威力を発揮します。
思考の道筋とポイント
回路全体で消費されるエネルギー(電力)は、電源が供給するエネルギー(電力)と等しくなります。
個々の抵抗計算をスキップして、全体電流から一発で求めます。
この設問における重要なポイント
- エネルギー保存則: 供給電力 \(=\) 消費電力の総和。
具体的な解説と立式
電源電圧を \(E\)、回路全体を流れる電流を \(I_{\text{全}}\) とすると、供給電力 \(P\) は以下の式で表されます。
$$
\begin{aligned}
P &= E I_{\text{全}}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 電力の式: \(P = IV\)
(ア)で求めた \(I_{\text{全}} = 0.54\,\text{A}\) を用います。
$$
\begin{aligned}
P &= 12 \times 0.54 \\[2.0ex]
&= 6.48\,\text{W}
\end{aligned}
$$
抵抗一つ一つでどれだけ熱が出ているかを計算して足す代わりに、「大元の電池がどれだけエネルギーを出しているか」を計算しました。
出たエネルギーは必ずどこかで使われるので、この2つは同じ値になります。
個別に計算して足し合わせた結果と完全に一致しました。検算用として非常に便利です。
思考の道筋とポイント
「コンデンサーは直流を通さない」という性質を暗記に頼らず、回路方程式(微分方程式)から導き出します。
スイッチを閉じた瞬間から時間が経つにつれて、電流や電荷がどのように変化し、最終的にどうなるかを数式で追跡します。
この設問における重要なポイント
- 回路方程式: キルヒホッフの法則を、時間変化する電流 \(i(t)\) と電荷 \(q(t)\) を用いて立式します。
- 定常状態の定義: 時間が十分に経過した状態(\(t \to \infty\))では、物理量の時間変化がなくなります(\(\frac{d}{dt} = 0\))。
具体的な解説と立式
上側の抵抗 \(R_1\) を流れる電流を \(i_1(t)\)、\(R_3\) を流れる電流を \(i_3(t)\)、
下側の抵抗 \(R_2\) を流れる電流を \(i_2(t)\)、\(R_4\) を流れる電流を \(i_4(t)\)、
そして、LからNへコンデンサーを通って流れる電流を \(i_c(t)\) とします。
コンデンサー \(C_1, C_2\) に蓄えられる電荷を \(q(t)\) とすると、電流と電荷の関係は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
i_c(t) &= \frac{dq}{dt} \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
キルヒホッフの第一法則(電流保存)より、L点とN点での関係式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
i_1 &= i_3 + i_c \quad \cdots ② \\[2.0ex]
i_4 &= i_2 + i_c \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
キルヒホッフの第二法則(電圧則)より、2つの閉回路について立式します。
$$
\begin{aligned}
E &= R_1 i_1 + R_3 i_3 \quad \cdots ④ \\[2.0ex]
E &= R_2 i_2 + R_4 i_4 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
また、L-N間の電位差に関する式も立てます。
$$
\begin{aligned}
V_L – V_N &= R_3 i_3 – R_4 i_4 \\[2.0ex]
&= – \left( \frac{q}{C_1} + \frac{q}{C_2} \right) \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
(※コンデンサーの電圧降下の向きに注意。電流 \(i_c\) がL\(\to\)NならL側が正に帯電し電圧降下となるが、ここでは一般的に立式)
使用した物理公式
- 電流の定義: \(i = \frac{dq}{dt}\)
- キルヒホッフの法則
定常状態では、あらゆる物理量の時間変化が停止します。
$$
\begin{aligned}
\frac{dq}{dt} &= 0
\end{aligned}
$$
これを式①に適用すると、コンデンサーを流れる電流がゼロになることが導かれます。
$$
\begin{aligned}
i_c &= 0
\end{aligned}
$$
これより、式②、③は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
i_1 &= i_3 \quad (= i \text{ と置く}) \\[2.0ex]
i_4 &= i_2 \quad (= I \text{ と置く})
\end{aligned}
$$
これは、上側の抵抗列と下側の抵抗列で、それぞれ電流が途切れずに流れることを意味します。
式④、⑤に代入すると、
$$
\begin{aligned}
E &= (R_1 + R_3) i \\[2.0ex]
E &= (R_2 + R_4) I
\end{aligned}
$$
となり、メイン解法で使用したオームの法則の式が自然に導出されました。
ここから \(i, I\) を求め、式⑥を用いて電荷 \(q\) を決定すれば、全ての答えが得られます。
難しい微分方程式を立てましたが、最終的に「時間が経って変化が止まった(微分の値がゼロになった)」と考えると、コンデンサーを流れる電流 \(i_c\) がゼロになることが数学的に証明されました。
つまり、「コンデンサーは直流を通さない」というルールは、勝手に決めたものではなく、電気の基本的な法則から必然的に導かれる結果なのです。
微積分を用いることで、定常状態の条件を厳密に定義し、そこから初等的な回路計算の式を導くことができました。物理現象の背景にある原理を理解する上で非常に重要なアプローチです。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 定常状態におけるコンデンサーの振る舞い
- 核心: 直流回路において十分に時間が経過すると、コンデンサーへの充電が完了し、電流が流れなくなる(断線状態と等価になる)。
- 理解のポイント:
- 電流 \(I=0\) なので、直列に接続された抵抗での電圧降下 \(RI\) も \(0\) になる。
- その結果、抵抗の両端は等電位になり、導線でつながっているのと同じ状態になる。
- 電位による回路解析(電位法)
- 核心: 回路内の各点の「高さ(電位)」を特定することで、任意の2点間の電圧や、コンデンサーに蓄えられる電荷を自在に計算できる。
- 理解のポイント:
- 基準点(アースや電源の負極)を \(0\,\text{V}\) と決めることから始める。
- 「電流の向きにたどると電位は下がる」「電池のプラス側に行くと上がる」というルールを徹底する。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- スイッチ切り替え問題: 「S1だけ閉じる」「S2も閉じる」といった操作ごとに、有効な回路図を書き直す(無効な部分は消しゴムで消すイメージ)。
- ホイートストンブリッジの変形: 形が崩れていても、回路のトポロジー(つながり方)を整理すればブリッジ回路であることに気づけるようにする。
- コンデンサーを含む複雑な回路: テブナンの定理を用いて、コンデンサー以外の部分を単純化する。
- 初見の問題での着眼点:
- 電流の有無を判定: コンデンサーがある枝、スイッチが開いている枝など、電流が流れない場所を最初に見つけ、×印をつける。
- 等電位点の特定: 電流が流れていない抵抗の両端は同じ電位になるので、同じ色で塗るなどして視覚化する。
- 基準点の設定: 計算しやすい場所(通常は電源のマイナス側)を \(0\,\text{V}\) と置き、そこから順に各点の電位を書き込んでいく。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電位差の符号ミス:
- 誤解: \(V_L – V_N\) を求めるべきところで、逆の \(V_N – V_L\) を答えてしまったり、電荷の正負を逆にしてしまう。
- 対策: 必ず「どちらが高いか」を大小関係(例: \(12 > 7.2\))で確認し、図に矢印(高\(\to\)低)を書き込む癖をつける。
- コンデンサー直列回路の分圧ミス:
- 誤解: 抵抗の分圧(抵抗値に比例)と混同して、容量に比例させて電圧を配分してしまう。
- 対策: コンデンサーの電圧は容量に「反比例」する(\(V=Q/C\))。「小さい容量ほど電圧を食う」と覚える。
- スイッチ操作後の状態混同:
- 誤解: (2)の状態を引きずったまま(3)を解いてしまう。
- 対策: 設問ごとに回路図をラフに書き直し、リセットして考える。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(3)(イ)での解法選択(電位法 vs 合成容量):
- 選定理由: 回路が複雑で直列・並列が見えにくい場合でも、各点の電位さえ分かれば確実に解けるため、最も汎用性が高い「電位法」をメイン解法に採用しました。
- 適用根拠: キルヒホッフの法則に基づくため、どんな回路でも成立する絶対的な方法です。
- 問(3)(ウ)での解法選択(個別の和 vs 全体供給):
- 選定理由: 模範解答は個別の和を採用していますが、別解の「全体供給電力」の方が計算量が圧倒的に少なく、ミスも減らせます。
- 適用根拠: エネルギー保存則により、回路内で消費される全エネルギーは電源が供給するエネルギーと必ず等しくなるため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の次元確認:
- 意識: 電荷 \(Q\) の単位は \([\text{C}]\)、容量 \(C\) は \([\text{F}]\)、電圧 \(V\) は \([\text{V}]\) 。\(Q=CV\) の計算で単位が合っているか常に意識する。
- 実践: \(\mu\)(マイクロ、\(10^{-6}\))などの接頭辞を計算の最後まで残し、最後に数字と合わせることで桁ミスを防ぐ。
- 極端な例での検算:
- 意識: もし \(R_3\) が \(0\) だったら? もし \(C_1\) が無限大だったら?
- 実践: \(R_3=0\) なら \(V_L=12\,\text{V}\) になるはず。式がそうなっているか確認する。
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問題26 直流回路 (慶應大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説では、模範解答で採用されている「電位法と電荷保存則」を主たる解法としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(1)イの別解1: 電位降下の積み上げによる解法
- 模範解答が各点の電位を個別に求めて差を取るのに対し、別解では経路に沿って電位の上がり下がりを追跡し、直接電位差を求めます。
- 設問(3)キの別解2: 未知数を用いた代数的解法
- 電荷の移動後の極板の正負を仮定せず、未知の電位を \(x\) と置いて保存則を立式することで、符号ミスを自動的に防ぐ手法です。
- 設問Qの別解3: 微積分を用いた体系的解法(過渡現象とエネルギー収支)
- エネルギー保存則を前提とせず、放電過程の回路方程式(微分方程式)を立式して電流の時間変化を求め、それを積分してジュール熱を直接計算することで、エネルギー保存則が成立することを数学的に証明します。
- 設問(1)イの別解1: 電位降下の積み上げによる解法
- 上記の別解が有益である理由
- 電位降下法: 回路を一周する視点を持つことで、キルヒホッフの第二法則の感覚を養い、計算ミスを減らせます。
- 未知数法: 複雑な回路で電荷の正負が直感的に分からない場合に、機械的に正しい答えを導ける強力なツールです。
- 微積分: 「エネルギーが保存されるのはなぜか?」という根本的な問いに対し、物理法則(回路方程式)から論理的に答えを導く深い理解を促します。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「スイッチ操作を含むコンデンサー回路の電位と電荷の移動」です。
複数のスイッチが開閉される過程で、回路の接続状態が変化し、それに伴い電荷が再配分される様子を追跡します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 定常状態のコンデンサー: 十分に時間が経過すると電流が止まり、コンデンサーは断線とみなせます。このとき、抵抗での電圧降下はゼロになります。
- 電位法: 回路内の任意の点を基準(\(0\,\text{V}\))とし、各点の電位を特定することで、電圧や電荷を計算します。
- 電気量保存則: 孤立した導体部分(島)において、電荷の総和は変化しません。
- エネルギー保存則: 電池がした仕事、静電エネルギーの変化、ジュール熱の関係式を用います。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、\(K_1\) のみを閉じた単純な回路で、分圧と電位を計算します。
- (2)では、\(K_2\) も閉じて短絡箇所ができた状態での新しい電位分布と電荷を求めます。
- (3)では、スイッチを開いて回路の一部が孤立した際の電荷保存則を用いて、最終的な電位を求めます。
- (Q)では、エネルギー保存則を用いて、抵抗で発生するジュール熱を計算します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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