問題22 コンデンサー (東京大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問IIの別解1: 電荷の移動量に着目した解法
- 模範解答の別解にあるように、各コンデンサーの電荷 \(Q_1, Q_2\) と電圧 \(V_1, V_2\) を個別に定義し、キルヒホッフの法則(電圧の関係)と電荷保存則を連立させて解く、よりプリミティブなアプローチです。
- 設問Vの別解1: 定常状態(平衡状態)に着目した解法
- 漸化式を解くのではなく、「操作を繰り返して状態が変化しなくなったとき、何が起きているか」という物理的平衡状態に着目し、計算なしで極限値を導きます。
- 設問Vの別解2: 微積分を用いた体系的解法(ガウスの法則)
- コンデンサーの公式 \(Q=CV\) を天下り的に使わず、ガウスの法則から電場を導出し、電位の定義(積分)に基づいて保存則を立式します。
- 設問IIの別解1: 電荷の移動量に着目した解法
- 上記の別解が有益である理由
- 電荷移動の解法: 電位の概念が苦手な場合でも、電荷の収支と電圧の足し算だけで解けるため、基礎的な理解を深めるのに役立ちます。
- 定常状態の解法: 複雑な漸化式を立てて計算する手間を省き、物理的直感で瞬時に答えを出す強力なツールとなります。
- 微積分の解法: 公式の背景にある物理原理(電場と電荷の関係)を理解することで、応用問題への適応力を高めます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「スイッチ切り替えによる電荷の再配分と昇圧回路(チャージポンプ)」です。
コンデンサーを組み合わせて電荷を「汲み上げる」ことで、電源電圧以上の高い電圧を作り出す仕組みを数理的に解析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 電気量保存則: スイッチの切り替えによって回路の一部が孤立したとき、その孤立部分(島)の総電荷量は変化しません。
- キルヒホッフの第2法則(電位の周回): 閉回路において、電位の上昇と降下の総和は \(0\) になります。
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\) の関係が常に成り立ちます。
- 定常状態の概念: 操作を無限に繰り返すと、回路の状態はある一定の値に収束し、それ以上変化しなくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (I)〜(IV)では、各操作ごとの接続状態を正確に図示し、孤立部分の電荷保存則を立式して順次電位を求めます。
- (V)では、\(n\) 回目の状態と \(n+1\) 回目の状態の関係(漸化式)を立式し、その極限値を求めます。
問I
思考の道筋とポイント
まず、スイッチの接続と回路の状態を正確に把握します。
問題文と図より、スイッチ \(S_1, S_2\) が左側接点 \(l_1, l_2\) に接続された状態を考えます。
- 電源の極性: 図の電池記号(上が長く下が短い、あるいは模範解答の図aの帯電状況)から、上側が正極、下側が負極であると判断します。
- 接続:
- 電源の正極 \(\to\) \(S_2\) \(\to\) \(l_2\) \(\to\) \(C_1\) の上側極板(共通ライン)。
- 電源の負極 \(\to\) \(S_1\) \(\to\) \(l_1\) \(\to\) \(C_1\) の下側極板。
- \(C_2\) の下側極板(\(r_1\) に接続される端子)はどこにもつながっていません(開放)。
この設問における重要なポイント
- 充電回路: \(C_1\) は電源 \(V_0\) に直接接続され、充電されます。
- 未接続のコンデンサー: \(C_2\) は回路から切り離されており、初期電荷も \(0\) なので、帯電しません。
具体的な解説と立式
\(C_1\) について考えます。
上側極板と下側極板の間に電源電圧 \(V_0\) がかかります。
上側が正極につながっているため、上側極板の電荷 \(Q_{1\text{上}}\) と下側極板の電荷 \(Q_{1\text{下}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Q_{1\text{上}} &= +CV_0 \\
Q_{1\text{下}} &= -CV_0
\end{aligned}
$$
\(C_2\) について考えます。
スイッチが左側にあるため、\(C_2\) は電源とも \(C_1\) とも閉回路を作りません。
初期状態で帯電していないため、電荷は \(0\) のままです。
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= 0
\end{aligned}
$$
求める電圧 \(V_{\text{AB}}\) は、端子AとBの間の電位差です。
図より、端子Aは \(C_2\) の上側極板に、端子Bは \(C_2\) の下側極板につながっています。
したがって、\(V_{\text{AB}}\) は \(C_2\) の極板間電圧そのものです。
\(Q_2 = C V_{\text{AB}}\) より、\(Q_2=0\) なので電圧も \(0\) です。
$$
\begin{aligned}
V_{\text{AB}} &= 0
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
$$
\begin{aligned}
V_{\text{AB}} &= \frac{Q_2}{C} \\[2.0ex]
&= \frac{0}{C} \\[2.0ex]
&= 0
\end{aligned}
$$
スイッチを左に入れると、左側のコンデンサー \(C_1\) だけが電池につながり、電気を溜めます。
右側のコンデンサー \(C_2\) は、片足(下側の線)がどこにもつながっていないため、電気が流れ込むことができません。
電気が溜まっていないコンデンサーには電圧が発生しないので、A-B間の電圧はゼロです。
初期状態から \(C_2\) には何も操作をしていないため、電圧が \(0\) であることは明らかです。
問II
思考の道筋とポイント
次に、スイッチ \(S_1, S_2\) を右側接点 \(r_1, r_2\) に切り替えます。
このときの接続状態を慎重にトレースします(ここが最難関です)。
- 接続の解析:
- \(S_2\)(電源正極) \(\to\) \(r_2\) \(\to\) \(C_1\) の下側極板(図の配線を追うと、\(r_2\) は \(C_1\) の下側極板につながる線と接続されています)。
- \(S_1\)(電源負極) \(\to\) \(r_1\) \(\to\) \(C_2\) の下側極板。
- \(C_1\) の上側極板と \(C_2\) の上側極板は、上部の共通ラインで常につながっています。
- 回路の再構成:
- 電源の正極(電位 \(V_0\))が \(C_1\) の下側に接続。
- 電源の負極(電位 \(0\))が \(C_2\) の下側に接続。
- \(C_1\) の上側と \(C_2\) の上側が接続され、ここが「孤立部分(島)」となります。
この設問における重要なポイント
- 孤立部分の電荷保存: \(C_1\) の上側極板と \(C_2\) の上側極板の合計電荷は、スイッチ切り替え前後で保存されます。
- 電位の定義: 電源の負極(\(C_2\) の下側)を電位 \(0\) とすると、電源の正極(\(C_1\) の下側)は電位 \(V_0\) となります。
具体的な解説と立式
孤立部分(\(C_1\) の上側 + \(C_2\) の上側)の電位を \(x_1\) と置きます。
\(C_2\) の下側(端子B)の電位は \(0\) なので、求める \(V_{\text{AB}}\) は \(x_1 – 0 = x_1\) です。
操作前の電荷(操作I終了時):
- \(C_1\) 上側: \(+CV_0\)
- \(C_2\) 上側: \(0\)
- 合計電荷 \(Q_{\text{前}} = +CV_0\)
操作後の電荷(電位 \(x_1\) を用いて表現):
- \(C_1\) 上側: 相手(下側)の電位が \(V_0\) なので、電荷は \(C(x_1 – V_0)\)。
- \(C_2\) 上側: 相手(下側)の電位が \(0\) なので、電荷は \(C(x_1 – 0)\)。
- 合計電荷 \(Q_{\text{後}} = C(x_1 – V_0) + Cx_1\)
電気量保存則の立式:
$$
\begin{aligned}
(\text{後の全電荷}) &= (\text{前の全電荷}) \\[2.0ex]
C(x_1 – V_0) + Cx_1 &= +CV_0 \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- コンデンサーの電荷: \(Q = C(V_{\text{自分}} – V_{\text{相手}})\)
- 電気量保存則
式①を解いて \(x_1\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
C(x_1 – V_0) + Cx_1 &= CV_0 \\[2.0ex]
Cx_1 – CV_0 + Cx_1 &= CV_0 \\[2.0ex]
2Cx_1 &= 2CV_0 \\[2.0ex]
x_1 &= V_0
\end{aligned}
$$
よって、\(V_{\text{AB}} = x_1 = V_0\)。
スイッチを右に切り替えると、\(C_1\) の下側が持ち上げられて電圧 \(V_0\) になり、\(C_2\) の下側は \(0\) になります。
\(C_1\) と \(C_2\) の上側同士はつながっていて、電気の逃げ場がありません。
元々 \(C_1\) にあった電気 \(+CV_0\) が、\(C_1\) と \(C_2\) の2つの部屋に再配分されます。
計算の結果、上側の電位はちょうど \(V_0\) になりました。これは、\(C_1\) の上下の電位差が \(0\)(電荷なし)になり、\(C_2\) に全ての電荷が移動したことを意味します(\(C_1\)の下が \(V_0\)、上が \(V_0\) なので)。
\(V_{\text{AB}} = V_0\) となりました。
これは、電源電圧 \(V_0\) がそのまま出力に現れた形です。
思考の道筋とポイント
電位 \(x_1\) を置く代わりに、各コンデンサーの電荷 \(Q_1, Q_2\) と電圧 \(V_1, V_2\) を個別に定義し、キルヒホッフの法則と電荷保存則を連立させて解きます。
この設問における重要なポイント
- キルヒホッフの第2法則: 閉回路を一周したときの電位変化の総和は \(0\) です。
- 電荷保存則: 孤立部分の電荷の総和は保存されます。
具体的な解説と立式
操作後の \(C_1\) の電荷を \(Q_1\)、電圧を \(V_1\) とします(上側が正)。
操作後の \(C_2\) の電荷を \(Q_2\)、電圧を \(V_2\) とします(上側が正)。
基本式より以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
Q_1 &= CV_1 \quad \cdots ② \\[2.0ex]
Q_2 &= CV_2 \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
孤立部分(上側極板)の電荷保存則より、以下の式が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
Q_1 + Q_2 &= +CV_0 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
回路の電位関係を考えます。
電源の負極(\(0\))からスタートし、\(C_2\) を上がって \(C_1\) を下がり、電源の正極(\(V_0\))に戻るルートを考えます。
\(C_2\) の下側は \(0\)、上側は \(V_2\) です。
\(C_1\) の上側は \(V_2\)、下側は \(V_0\) です。
\(C_1\) の電圧 \(V_1\) は(上側 – 下側)なので、\(V_1 = V_2 – V_0\) となります。
これを変形すると、以下の関係が得られます。
$$
\begin{aligned}
V_0 + V_1 &= V_2 \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
(あるいは、図cのように閉回路を一周して \(+V_0 + V_1 – V_2 = 0\) と立式しても同じです。ただし図cの \(V_1\) の向きに注意)
使用した物理公式
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
- キルヒホッフの第2法則
- 電気量保存則
式②、③を式④に代入します。
$$
\begin{aligned}
CV_1 + CV_2 &= CV_0 \\[2.0ex]
V_1 + V_2 &= V_0 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
式⑤と式⑥を連立します。
式⑤より \(V_1 = V_2 – V_0\) を式⑥に代入します。
$$
\begin{aligned}
(V_2 – V_0) + V_2 &= V_0 \\[2.0ex]
2V_2 &= 2V_0 \\[2.0ex]
V_2 &= V_0
\end{aligned}
$$
求める \(V_{\text{AB}}\) は \(V_2\) なので、\(V_{\text{AB}} = V_0\)。
「電圧の足し算」と「電気の足し算」の2つのルールを使って解きました。
電圧のルール:\(C_1\) と \(C_2\) の電圧の関係は、電池の電圧 \(V_0\) によって決まります。
電気のルール:\(C_1\) と \(C_2\) に溜まっている電気の合計は、最初にあった電気と同じです。
この2つを組み合わせると、それぞれの電圧が決まります。
メイン解法と同じ結果が得られました。
問III
思考の道筋とポイント
操作IIIは「一旦左側接点に接続してから、右側接点に接続する」という手順です。
- 左側接続(再充電):
- \(C_1\) は再び電源 \(V_0\) に接続され、充電されます。\(C_1\) の電荷はリセットされます。
- \(C_2\) は切り離されるため、操作IIで蓄えられた電荷を保持します。
- 右側接続(電荷の再配分):
- 再び \(C_1\) と \(C_2\) が直列的な回路(図bの状態)になり、電荷を分け合います。
この設問における重要なポイント
- 電荷の蓄積: \(C_2\) の電荷はリセットされず、前の操作の結果を引き継ぎます。これが昇圧の原理です。
- \(C_1\) のリセット: \(C_1\) は毎回 \(+CV_0\) の電荷を汲み上げてきます。
具体的な解説と立式
ステップ1: 左側接続
- \(C_1\) 上側電荷: \(+CV_0\) (再充電)
- \(C_2\) 上側電荷: \(+CV_0\) (操作IIの結果 \(x_1=V_0\) だったので \(Q_2 = CV_0\)。これを保持)
- この時点での孤立部分(上側極板群)の合計電荷 \(Q_{\text{前}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{前}} &= (+CV_0) + (+CV_0) \\[2.0ex]
&= +2CV_0
\end{aligned}
$$
ステップ2: 右側接続
孤立部分の電位を \(x_2\) と置きます。
回路の接続状態は操作IIと同じ(\(C_1\)下側が \(V_0\)、\(C_2\)下側が \(0\))です。
保存則を立式します。
$$
\begin{aligned}
C(x_2 – V_0) + Cx_2 &= +2CV_0 \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 電気量保存則
式⑦を解きます。
$$
\begin{aligned}
Cx_2 – CV_0 + Cx_2 &= 2CV_0 \\[2.0ex]
2Cx_2 &= 3CV_0 \\[2.0ex]
x_2 &= \frac{3}{2}V_0
\end{aligned}
$$
よって、\(V_{\text{AB}} = x_2 = \frac{3}{2}V_0\)。
\(C_1\) は「バケツ」のような役割をしています。左につなぐとバケツ一杯に電気(\(CV_0\))を汲みます。
右につなぐと、その電気を \(C_2\)(水槽)に流し込みます。
\(C_2\) には既に前回の電気が溜まっているので、そこにさらに新しい電気が追加されます。
その結果、水位(電圧)は \(V_0\) から \(1.5V_0\) に上昇しました。電源電圧よりも高くなっています!
電圧が \(1.5V_0\) となり、電源電圧を超えました。昇圧回路として機能しています。
問IV
思考の道筋とポイント
操作IIIをもう一度繰り返します。手順は全く同じです。
- 左側接続: \(C_1\) は \(+CV_0\) に再充電。\(C_2\) は前回の電荷(電位 \(1.5V_0\) 分)を保持。
- 右側接続: 合計電荷を再配分。
具体的な解説と立式
ステップ1: 左側接続
- \(C_1\) 上側電荷: \(+CV_0\)
- \(C_2\) 上側電荷: \(C \times (\frac{3}{2}V_0) = +\frac{3}{2}CV_0\) (保持)
- 合計電荷 \(Q_{\text{前}}\):
$$
\begin{aligned}
Q_{\text{前}} &= CV_0 + \frac{3}{2}CV_0 \\[2.0ex]
&= \frac{5}{2}CV_0
\end{aligned}
$$
ステップ2: 右側接続
新しい電位を \(x_3\) と置きます。
保存則を立式します。
$$
\begin{aligned}
C(x_3 – V_0) + Cx_3 &= \frac{5}{2}CV_0 \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
式⑧を解きます。
$$
\begin{aligned}
2Cx_3 – CV_0 &= \frac{5}{2}CV_0 \\[2.0ex]
2Cx_3 &= \frac{7}{2}CV_0 \\[2.0ex]
x_3 &= \frac{7}{4}V_0
\end{aligned}
$$
よって、\(V_{\text{AB}} = \frac{7}{4}V_0\)。
電圧は \(1.75V_0\) になりました。上昇していますが、上昇幅は \(0.5 \to 0.25\) と減っています。
問V
思考の道筋とポイント
操作を多数回繰り返したときの極限値を求めます。
これまでの流れから、\(n\) 回目の操作終了時の電位 \(x_n\) と、\(n+1\) 回目の電位 \(x_{n+1}\) の関係(漸化式)を作ればよいことが分かります。
具体的な解説と立式
\(n\) 回目の操作終了時の電位を \(x_n\) とします。
このとき、\(C_2\) に蓄えられている電荷は \(Cx_n\) です。
\(n+1\) 回目の操作:
- 左側接続: \(C_1\) は \(+CV_0\) を補充。\(C_2\) は \(Cx_n\) を保持。
- 合計電荷: \(Q_{\text{前}} = CV_0 + Cx_n\)
- 右側接続: 電位が \(x_{n+1}\) になる。
- 合計電荷: \(Q_{\text{後}} = C(x_{n+1} – V_0) + Cx_{n+1}\)
漸化式の立式:
$$
\begin{aligned}
C(x_{n+1} – V_0) + Cx_{n+1} &= CV_0 + Cx_n \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
式⑨を整理します。
$$
\begin{aligned}
2Cx_{n+1} – CV_0 &= CV_0 + Cx_n \\[2.0ex]
2Cx_{n+1} &= 2CV_0 + Cx_n \\[2.0ex]
x_{n+1} &= \frac{1}{2}x_n + V_0
\end{aligned}
$$
多数回繰り返したとき、電位は一定値 \(x_\infty\) に収束します。
このとき \(x_{n+1} \approx x_n \approx x_\infty\) とみなせます。
$$
\begin{aligned}
x_\infty &= \frac{1}{2}x_\infty + V_0 \\[2.0ex]
\frac{1}{2}x_\infty &= V_0 \\[2.0ex]
x_\infty &= 2V_0
\end{aligned}
$$
毎回、\(C_1\) が \(V_0\) 分の電気を運んできて、\(C_2\) と分け合います。
\(C_2\) の電圧が低いうちはどんどん電圧が上がりますが、\(C_2\) の電圧が高くなると、\(C_1\) から移せる電気が減っていきます。
最終的に、\(C_1\) が運んでくる電気の圧力と、\(C_2\) が押し返す圧力が釣り合うところで電圧の上昇が止まります。それが \(2V_0\) です。
最終的に電源電圧の2倍の電圧が得られます。
思考の道筋とポイント
漸化式を立てずに、最終的な「定常状態」では何が起きているかを考えます。
定常状態とは、「操作をしても状態が変わらない」状態のことです。
この設問における重要なポイント
- 電荷移動の停止: 定常状態では、左接続から右接続に切り替えても、電荷の移動が起こりません(あるいは移動しても元の状態に戻ります)。
- 電位のバランス: 右接続時に \(C_1\) から \(C_2\) へ電荷が流れない条件を考えます。
具体的な解説と立式
定常状態における \(V_{\text{AB}}\) を \(V\) とします。
左接続時、\(C_1\) は電圧 \(V_0\) で充電されます。このとき \(C_1\) の上側極板の電位は(下側を基準にすると)\(V_0\) ですが、回路全体の電位基準(\(C_2\)の下側 \(G=0\))で考えるとどうなるでしょうか。
もっと単純に考えます。
右接続時、\(C_1\) の下側は \(V_0\) に接続されます。
もし、このとき \(C_1\) の上側の電位が \(V\) であり、かつ \(C_1\) の極板間電圧が \(V_0\)(左接続で充電されたまま)であれば、電荷の移動は起こりません。
つまり、右接続時の回路において、以下の関係が成り立てば、\(C_1\) は電荷を放出も吸収もしません。
$$
\begin{aligned}
(\text{上側の電位}) – (\text{下側の電位}) &= (\text{充電電圧}) \\[2.0ex]
V – V_0 &= V_0 \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 電位差の定義
式⑩を解きます。
$$
\begin{aligned}
V &= 2V_0
\end{aligned}
$$
\(C_1\) は常に \(V_0\) の電圧を持った「電池」のような状態で右側の回路に参加します。
右側の回路では、\(C_1\) の下側が \(V_0\) に持ち上げられます。
その上に \(C_1\)(電圧 \(V_0\))が乗っかっているので、\(C_1\) の上側の高さは \(V_0 + V_0 = 2V_0\) になります。
\(C_2\) はこの高さまで充電されるので、最終的に \(2V_0\) になります。
計算なしで直感的に答えが出せる強力な方法です。
思考の道筋とポイント
ガウスの法則を用いて、孤立部分の電荷保存則を電場の言葉で記述します。
この設問における重要なポイント
- ガウスの法則: 閉曲面から出る電束の総和は内部電荷に比例します。
- 電位と電場: \(V = Ed\) の関係を用います。
具体的な解説と立式
\(C_1\) の上側極板と \(C_2\) の上側極板を囲む閉曲面 \(S\) を考えます。
極板面積を \(A\)、間隔を \(d\) とすると、\(C = \varepsilon_0 A / d\) です。
\(n\) 回目の操作後の電位を \(x_n\) とします。
\(n+1\) 回目の右接続時、\(C_1\) 内の電場 \(E_1\) と \(C_2\) 内の電場 \(E_2\) は、上向きを正として以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
E_1 &= \frac{x_{n+1} – V_0}{d} \\[2.0ex]
E_2 &= \frac{x_{n+1} – 0}{d}
\end{aligned}
$$
ガウスの法則 \(\varepsilon_0 \oint E \cdot dS = Q_{\text{内}}\) より、極板から出る電束を考えます(極板間のみ電場があると仮定)。
$$
\begin{aligned}
\varepsilon_0 A E_1 + \varepsilon_0 A E_2 &= Q_{\text{total}}
\end{aligned}
$$
ここで \(Q_{\text{total}}\) は左接続直後の総電荷 \(CV_0 + Cx_n\) です。
$$
\begin{aligned}
\varepsilon_0 A \frac{x_{n+1} – V_0}{d} + \varepsilon_0 A \frac{x_{n+1}}{d} &= CV_0 + Cx_n \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- ガウスの法則: \(\oint \vec{E} \cdot d\vec{S} = \frac{Q}{\varepsilon_0}\)
\(\frac{\varepsilon_0 A}{d} = C\) を式⑪に代入します。
$$
\begin{aligned}
C(x_{n+1} – V_0) + Cx_{n+1} &= CV_0 + Cx_n
\end{aligned}
$$
これはメイン解法の漸化式 ④ と全く同じになります。
よって、極限値は \(2V_0\) です。
コンデンサーの公式を使わずに、電場の法則からスタートしました。
電場の強さと電荷の関係式を作ると、自然と電圧の式と同じ形が現れます。
原理的なアプローチからも同じ結果が得られました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 孤立部分の電荷保存則
- 核心: スイッチを切り替えた瞬間、どこにもつながらない「島」となった導体部分(今回は \(C_1\) 上側と \(C_2\) 上側)の電荷の総和は不変です。
- 理解のポイント:
- 島の特定: 回路図上で、他の部分と切断されている箇所を指で囲んで確認します。
- 電荷の合流: 毎回 \(C_1\) が新しい電荷を運び込み、その島に合流することで総電荷が増えていく(電圧が上がる)様子をイメージしましょう。
- 電位による回路解析
- 核心: 複雑な回路でも、各点の「高さ(電位)」を未知数として置けば、必ず方程式が立ちます。
- 理解のポイント:
- 基準点の設定: 電源の負極を \(0\) と基準化し、他の点の電位をそこからの差として記述する手法をマスターしましょう。
- 相対電位: コンデンサーの電圧は常に「自分の電位 – 相手の電位」で決まります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- コッククロフト・ウォルトン回路: 今回のようなコンデンサーとダイオード(またはスイッチ)を用いた昇圧回路は、粒子加速器などで使われる実用的な技術の基礎です。
- 無限回操作の問題: 「十分時間が経過した」「多数回繰り返した」という文言があれば、漸化式を立てて \(x_{n+1} = x_n\) と置くか、物理的な定常状態を考察するかの二択です。
- 初見の問題での着眼点:
- 接続のトレース: スイッチがどこにつながり、どの極板がどの電位になるかを、指でなぞって確認します。特に「共通ライン」や「アース」を見落とさないように。
- リセットされる素子の特定: 今回の \(C_1\) のように、毎回特定の状態に戻される素子が「ポンプ」の役割を果たします。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 電荷の符号ミス:
- 誤解: 電源につないだとき、どちらがプラスになるかを勘違いする。
- 対策: 電池の記号(長い方がプラス)を確実に確認し、図に \(+\)、\(-\) を書き込む習慣をつけましょう。
- 漸化式の計算ミス:
- 誤解: \(Q_{\text{前}}\) の計算で、\(C_2\) の電荷を忘れたり、\(C_1\) の電荷を \(0\) にしてしまったりする。
- 対策: 「前の操作で何が残っているか」と「今回の操作で何が追加されたか」を分けて書き出しましょう。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 電位法(\(Q=C(V_1-V_2)\))の選択:
- 選定理由: 直列・並列が複雑に切り替わる回路では、合成容量を考えるよりも、各点の電位を未知数とする方が機械的に解けるため、ミスが少なくなります。
- 適用根拠: 孤立部分が存在し、電荷保存則が使えることが明確であるため。
- 定常状態法の選択(別解):
- 選定理由: 漸化式を解く時間を短縮し、検算としても非常に有効だからです。
- 適用根拠: 「多数回繰り返した」という条件が、物理的な平衡状態への収束を保証しているため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 図の描き直し:
- 意識: スイッチを切り替えるたびに、頭の中だけでなく紙に新しい回路図を描く。
- 実践: 電位が確定している部分(電源につながっている線など)を色ペンでなぞると、未知の部分が浮き彫りになります。
- 極限のチェック:
- 意識: 求めた漸化式が正しいか、\(n=1\) や \(n=2\) の値を代入して確認する。
- 実践: \(x_1 = V_0\), \(x_2 = 1.5V_0\) が漸化式 \(x_{n+1} = 0.5x_n + V_0\) を満たすかチェックします。
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問題23 コンデンサー (早稲田大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(4)の別解: 微積分を用いた体系的解法(微分方程式による厳密解)
- 模範解答がグラフの幾何学的特徴(面積や切片)から定性的に判断しているのに対し、別解では回路方程式を微分方程式として解き、電流 \(I(t)\) の時間変化を厳密な数式で導出します。これにより、時定数 \(\tau = RC\) の意味が明確になり、グラフの変化を定量的に説明できます。
- 設問(4)の別解: 微積分を用いた体系的解法(微分方程式による厳密解)
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分の解法: 「なぜグラフが指数関数的に減衰するのか」「なぜ時定数が \(RC\) なのか」という物理的背景を深く理解でき、グラフの形状変化を論理的に予測できるようになります。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「RC回路の過渡現象」です。
コンデンサーの充電過程において、電流や電圧が時間とともにどのように変化するかを、グラフや数式を用いて解析します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- キルヒホッフの第2法則: 閉回路を一巡したときの電位変化の総和は \(0\) です。
- オームの法則: 抵抗 \(R\) を流れる電流 \(I\) による電圧降下は \(V = RI\) です。
- コンデンサーの基本式: 電荷 \(Q\)、電気容量 \(C\)、電圧 \(V\) の関係は \(Q = CV\) です。
- 電流と電荷の関係: 電流 \(I\) は単位時間あたりに流れる電荷量であり、\(I = \Delta Q / \Delta t\)(微小時間なら \(I = dQ/dt\))です。グラフ上では、\(I-t\) グラフの面積が移動した電荷量 \(Q\) に相当します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、任意の時刻 \(t\) における回路方程式を立て、電流 \(I(t)\) を電圧 \(V(t)\) で表します。
- (2)では、初期状態(\(t=0\))の電流値を基準に、電流が半分になる時刻でのコンデンサーの電荷を求めます。
- (3)では、与えられたグラフから具体的な数値(抵抗値、電荷量、電気容量)を読み取ります。特に「面積=電荷量」の関係が重要です。
- (4)では、グラフの変化(初期値と面積)から、回路定数 \(R, C\) の変化を逆算します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
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なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
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