「名問の森」徹底解説(1〜3問):未来の得点力へ!完全マスター講座【波動Ⅱ・電磁気・原子】

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問題1 (奈良女子大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、水面上の点波源から発生する波が鉛直な壁で反射し、直接波と干渉する現象について考察するものです。波の伝播時間、特定の点での干渉条件(強め合い・弱め合い)、線分上にできる定常波の様子、そして別の線上での合成波の性質や弱め合う点の個数を求めることが求められています。

与えられた条件
  • 波源O: 水面上の1点にあり、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の円形の波を連続的に送り出す。
  • 壁: 鉛直に区切られており、波が壁で反射されるとき位相は変化しない。
  • 点A: 水面と壁との境界点。線分OAは壁に垂直。
  • 点B: 水面上の点。線分OBは壁と平行。
  • 距離: \(OA = \frac{3}{2}\lambda\)、\(OB = 4\lambda\)。
  • 波の減衰は無視する。
  • (3)において、O点から出る波は振幅 \(a\) の正弦波であるとする。
問われていること
  • (1) 波が点Oを出てから壁で反射されB点に届くのに要する時間。
  • (2) B点において、波が強め合っているか、弱め合っているか、あるいはそのいずれでもないか。
  • (3) 線分OA上で見られる合成波の名称と、そのようす(ある瞬間の変位のグラフ)。
  • (4) 点Oより左側の半直線OC上で見られる合成波の様子の記述。
  • (5) 線分OB上(両端を含む)で、弱め合う点の個数。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 問(3) 定常波の別解: 入射波と反射波の数式的な合成による解法
      • 主たる解法が干渉条件から腹と節の位置を求めるのに対し、別解では入射波と反射波の変位を表す式を立て、三角関数の和積の公式を用いて合成し、定常波の式を直接導出します。
    • 問(4) 合成波の別解: 入射波と反射波の数式的な合成による解法
      • 主たる解法が経路差の一定性から結論を導くのに対し、別解ではOC上を進む入射波と反射波の式を立てて合成し、合成波の振幅と進行方向を数式から直接求めます。
    • 問(5) 弱め合う点の個数の別解1: 経路差の取りうる値の範囲から求める解法
      • 主たる解法が方程式を解くのに対し、この別解では線分の両端における経路差を求め、その範囲に含まれる弱め合いの条件を数える、より概念的なアプローチを取ります。
    • 問(5) 弱め合う点の個数の別解2: 干渉縞(双曲線)を利用する幾何学的解法
      • 他の解法が代数的な計算に主眼を置くのに対し、この別解では弱め合いの線(節線)が双曲線を描くことを利用し、その双曲線が線分OBと何回交わるかを幾何学的に考察します。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理モデルの深化: 「定常波が数式でどう表現されるか」「干渉縞がなぜ双曲線になるのか」といった、現象の背後にある数理的な構造への理解が深まります。
    • 多角的な視点の獲得: 同じ問題に対して、代数的な解法、概念的な解法、幾何学的な解法を学ぶことで、思考の柔軟性が養われ、より複雑な問題への応用力が身につきます。
    • 計算の効率化: 特に問(5)の別解1は、複雑な計算を避け、迅速に答えを導き出す強力な手法です。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題は、波の基本的な性質である「反射」と「干渉」を組み合わせた、総合的な理解を問うものです。特に、壁による反射を鏡像波源からの波として捉えることで、2つの波源からの波の干渉問題として扱うことができる点が重要です。また、特定の条件下では定常波が形成されることも理解しておく必要があります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本的な関係式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v = f\lambda\) の関係があります。
  2. 反射の法則と鏡像波源: 壁での反射は、壁に対して対称な位置にある「鏡像の波源」から波が出ていると考えることができます。壁での反射で位相が変化しない場合、元の波源と鏡像波源は同位相であるとみなせます。
  3. 波の干渉の条件(同位相波源の場合): 2つの波源からの距離の差(経路差)を \(\Delta L\) とすると、
    • 強め合い(振幅が最大になる点): \(\Delta L = m\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))
    • 弱め合い(振幅が最小または0になる点): \(\Delta L = \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))
  4. 定常波: 逆向きに進む同じ種類の波が重なり合うと、波形が進まずその場で振動するように見える定常波(定在波)が生じます。定常波には、まったく振動しない「節」と、最も大きく振動する「腹」があります。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) まず、壁に関する波源Oの鏡像波源O’の位置を特定します。波がOから出て壁で反射しB点に届くまでの経路長は、O’からB点までの直線距離と等しくなります。この距離を三平方の定理などを用いて求め、波の速さ \(v=f\lambda\) で割ることで所要時間を計算します。
  2. (2) B点における、波源Oからの直接波と鏡像波源O’からの波(反射波に相当)との経路差を計算します。壁での反射で位相が変化しないため、OとO’は同位相波源として扱えます。計算した経路差を干渉条件と比較し、強め合いか弱め合いかを判断します。
  3. (3) 線分OA上では、Oからの入射波と壁からの反射波(O’からの波)が正面衝突するように重なり合います。これにより定常波が形成されます。壁Aは位相が変わらない反射(自由端反射)なので、定常波の腹になります。この情報と腹(または節)の間隔が \(\lambda/2\) であることを利用して、OA上の定常波の様子(振幅の分布)を描きます。
  4. (4) O点の左側の半直線OC上の任意の点について、OとO’からの経路差を求めます。この経路差が常に特定の条件を満たすかどうかを調べ、合成波の性質を記述します。
  5. (5) 線分OB上の各点について、OとO’からの経路差を考え、それが弱め合いの条件 \(\Delta L = (m+1/2)\lambda\) を満たす点の数を数えます。経路差が取りうる値の範囲を特定し、その範囲内に弱め合いの条件を満たす \(m\) がいくつ存在するかを調べる方法や、幾何学的に弱め合いの線(双曲線)が線分OBと何回交わるかを考える方法があります。

問(1)

思考の道筋とポイント
壁による波の反射は、壁に関して対称な位置にある鏡像波源O’から波が出ていると考えるのが定石です。波がOから出て壁上の点Dで反射しBに到達するまでの経路長 OD+DB は、鏡像波源O’からBまでの直線距離 O’B に等しくなります。このO’Bの長さを幾何学的に求め、波の速さ \(v=f\lambda\) で割ることで時間を求めます。
この設問における重要なポイント

  • 鏡像波源の考え方を利用する。
  • 反射経路長 OD+DB = O’B。
  • 三平方の定理を用いて距離O’Bを計算する。
  • 波の速さ \(v = f\lambda\) と時間 \(t = \text{距離}/v\) の関係。

具体的な解説と立式
波源Oの、壁に関する対称な点をO’とします。Oから壁までの距離は \(\frac{3}{2}\lambda\) なので、OとO’の間の水平距離は \(2 \times \frac{3}{2}\lambda = 3\lambda\) となります。
点Bは、Oから壁と平行に \(4\lambda\) の距離にあります。
したがって、O’からBまでの距離 \(O’B\) は、底辺が \(3\lambda\)、高さが \(4\lambda\) の直角三角形の斜辺の長さとして求められます。
$$
\begin{aligned}
O’B &= \sqrt{(3\lambda)^2 + (4\lambda)^2}
\end{aligned}
$$
波がOから出て壁で反射しB点に届くまでの経路長 \(L_{\text{経路}}\) は、この \(O’B\) に等しいので、\(L_{\text{経路}} = O’B\) です。
波の速さ \(v\) は、振動数 \(f\) と波長 \(\lambda\) を用いて \(v = f\lambda\) と表されます。
よって、B点に届くまでに要する時間 \(t\) は、
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{L_{\text{経路}}}{v} \\[2.0ex]
&= \frac{O’B}{f\lambda}
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 三平方の定理
  • 波の速さ: \(v = f\lambda\)
  • 時間 = 距離 / 速さ
計算過程

$$
\begin{aligned}
O’B &= \sqrt{(3\lambda)^2 + (4\lambda)^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{9\lambda^2 + 16\lambda^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{25\lambda^2} \\[2.0ex]
&= 5\lambda
\end{aligned}
$$
この結果を用いて時間 \(t\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{5\lambda}{f\lambda} \\[2.0ex]
&= \frac{5}{f}
\end{aligned}
$$

この設問の平易な説明

壁で反射した波は、まるで壁の向こう側にある「鏡に映った波源(鏡像波源O’)」から来たかのように進みます。Oから出て壁のどこかで反射してB点に届くまでの道のりは、この鏡像波源O’からB点までまっすぐに進む道のりと同じ長さになります。Oと壁の間の距離は \(\frac{3}{2}\lambda\) なので、Oと鏡像波源O’との間の水平方向の距離は \(3\lambda\) です。B点はOから \(4\lambda\) の距離にあるので、O’とBの間の距離は、底辺が \(3\lambda\)、高さが \(4\lambda\) の直角三角形の斜辺の長さに相当し、計算すると \(5\lambda\) となります。波の速さは \(v = f\lambda\) なので、この距離 \(5\lambda\) を進むのにかかる時間は、「距離 ÷ 速さ」から \(\frac{5\lambda}{f\lambda} = \frac{5}{f}\) と求められます。

結論と吟味

波が点Oを出てから壁で反射されB点に届くのに要する時間は \(\displaystyle\frac{5}{f}\) です。\(3:4:5\)の直角三角形の関係が使われており、計算もシンプルです。物理的に妥当な結果です。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{5}{f}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
B点では、波源Oから直接到達する波と、壁で反射してから到達する波(これは鏡像波源O’から到達する波とみなせる)が重なり合って干渉します。壁での反射で位相が変化しないとされているため、波源Oと鏡像波源O’は同位相の波源として扱うことができます。B点における2つの波の経路差を求め、その経路差が波長の整数倍なら強め合い、半波長の奇数倍なら弱め合うという干渉条件と比較します。
この設問における重要なポイント

  • 2つの波源(Oと鏡像O’)からの波の干渉と考える。
  • 壁で位相が変化しないため、OとO’は同位相波源とみなせる。
  • 経路差 \(\Delta L = |O’B – OB|\) を計算する。
  • 干渉条件(同位相波源): 強め合い \(\Delta L = m\lambda\)、弱め合い \(\Delta L = (m+1/2)\lambda\)。

具体的な解説と立式
B点には、波源Oから直接届く波と、鏡像波源O’から届く波(壁からの反射波)が干渉します。
波源OからB点までの距離は、問題文より \(OB = 4\lambda\)。
鏡像波源O’からB点までの距離は、(1)で計算した通り \(O’B = 5\lambda\)。
B点における2つの波の経路差 \(\Delta L\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= O’B – OB
\end{aligned}
$$
壁での反射で位相は変化しないため、OとO’は同位相の波源とみなせます。 同位相の2つの波源からの波が干渉する場合、経路差が波長の整数倍(\(m\lambda\)、ここで \(m\) は整数)のときに強め合い、半波長の奇数倍(\((m+\frac{1}{2})\lambda\))のときに弱め合います。

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(同位相波源):
    • 強め合い: 経路差 \( = m\lambda \)
    • 弱め合い: 経路差 \( = (m+\frac{1}{2})\lambda \)
計算過程

$$
\begin{aligned}
\Delta L &= 5\lambda – 4\lambda \\[2.0ex]
&= \lambda
\end{aligned}
$$
この経路差は \(\lambda = 1 \times \lambda\) であり、波長の整数倍(\(m=1\) の場合)となっています。
したがって、B点では波は強め合っています。

この設問の平易な説明

B点には、Oからまっすぐ来る波と、壁で反射してから来る波の2つが届きます。壁で反射するときに波の山谷がひっくり返らない(位相が変化しない)ので、Oともう一つの波源O’(Oの鏡像)が同じタイミングで波を送り出しているのと同じ状況と考えられます。OからBまでの距離は \(4\lambda\)、O’からBまでの距離は(1)で求めたように \(5\lambda\) です。この2つの距離の差(経路差)は \(5\lambda – 4\lambda = \lambda\) です。経路差がちょうど波長の1倍(一般には整数倍)になっているので、2つの波は山と山、谷と谷が重なり合うようにして強め合います。

結論と吟味

B点では波は強め合っています。経路差が \(\lambda\) であり、これは \(m=1\) の強め合いの条件に一致します。妥当な結果です。

解答 (2) 強め合っている

問(3)

思考の道筋とポイント
線分OA上では、波源Oから壁Aに向かう入射波と、壁Aで反射して波源Oの方向へ戻る反射波が重なり合います。これら2つの波は、同じ振動数、同じ波長、同じ振幅(減衰しないため)で互いに逆向きに進むため、定常波(定在波)が生じます。壁Aでの反射は位相が変化しない(問題文の条件より、自由端反射と同様)ため、壁Aは定常波の腹(振幅が極大となる点)になります。定常波の腹と腹の間隔、節と節の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。図2には、横軸にOからの距離、縦軸に水面の変位をとり、ある瞬間の定常波の波形を描きます。
この設問における重要なポイント

  • 逆向きに進む同じ波の重ね合わせで「定常波(定在波)」が生じる。
  • 壁Aは自由端反射なので、定常波の「腹」となる。
  • 定常波の腹と腹(節と節)の間隔は \(\lambda/2\)。腹と隣の節の間隔は \(\lambda/4\)。
  • 腹での振幅は元の進行波の振幅の2倍(ここでは \(2a\))。節での振幅は0。

具体的な解説と立式
線分OA上で見られる波は、波源Oから右向きに進む入射波と、壁Aで反射されて左向きに進む反射波の合成波です。これら2つの波は振幅、波長、振動数が等しく進行方向が逆なので、定常波(または定在波)が形成されます。

壁A(Oからの距離 \(x = \frac{3}{2}\lambda\))は、位相が変わらない反射(自由端反射)をするため、定常波のになります。 この腹では、振幅が最大(元の波の振幅 \(a\) の2倍である \(2a\))となります。
定常波の腹と節の位置を特定します。OA上の点P(Oからの距離を \(x\)、\(0 \le x \le \frac{3}{2}\lambda\))について、鏡像波源O’(Oから右に \(3\lambda\) の位置)との経路差 \(\Delta L = |(3\lambda – x) – x| = |3\lambda – 2x|\) を考えます。

強め合い(腹)の条件: \(|3\lambda – 2x| = m\lambda\)
弱め合い(節)の条件: \(|3\lambda – 2x| = (m+\frac{1}{2})\lambda\)

腹の位置を探します:
\(m=0\) で \(x = \frac{3}{2}\lambda\) (点A)。
\(m=1\) で \(x = \lambda\)。
\(m=2\) で \(x = \frac{\lambda}{2}\)。
\(m=3\) で \(x = 0\) (点O)。
よって、腹の位置は \(x = 0, \frac{\lambda}{2}, \lambda, \frac{3}{2}\lambda\)。

節の位置を探します:
\(m=0\) で \(x = \frac{5}{4}\lambda\)。
\(m=1\) で \(x = \frac{3}{4}\lambda\)。
\(m=2\) で \(x = \frac{\lambda}{4}\)。
よって、節の位置は \(x = \frac{\lambda}{4}, \frac{3}{4}\lambda, \frac{5}{4}\lambda\)。

図2にこの定常波の様子を描くと、横軸がOからの距離、縦軸が水面の変位となります。O (\(x=0\)) で腹(振幅\(2a\))、\(x=\lambda/4\) で節、\(x=\lambda/2\) で腹、\(x=3\lambda/4\) で節、\(x=\lambda\) で腹、\(x=5\lambda/4\) で節、A (\(x=3\lambda/2\)) で腹となります。

使用した物理公式

  • 定常波の性質(腹・節の間隔)
  • 波の干渉条件(強め合い・弱め合い)
計算過程

上記の「具体的な解説と立式」セクションで腹と節の位置を特定しました。
腹: \(x = 0, \frac{\lambda}{2}, \lambda, \frac{3}{2}\lambda\)
節: \(x = \frac{\lambda}{4}, \frac{3}{4}\lambda, \frac{5}{4}\lambda\)
これに基づいて図2に波形を描きます。

この設問の平易な説明

線分OA上では、波源Oから壁に向かう波と、壁で反射して戻ってくる波が重なり合います。このように同じ種類の波が反対方向に進んで重なると、「定常波」という特別な波ができます。定常波は、波形が進まず、その場で振動するように見える波です。定常波には、まったく振動しない「節」と、最も大きく振動する「腹」ができます。壁Aは自由に振動できる端(位相変化なしの反射)なので、「腹」になります。波源Oもここでは「腹」になります。腹と腹の間隔は半波長 (\(\lambda/2\))、腹と隣の節の間隔は1/4波長 (\(\lambda/4\)) です。これをもとに、OA (\(0\) から \(\frac{3}{2}\lambda\) まで) の間にできる腹と節の位置を見つけ、図に描きます。

結論と吟味

線分OA上で見られる波は定常波(または定在波)です。作図は、腹が \(x=0, \lambda/2, \lambda, 3\lambda/2\) に、節が \(x=\lambda/4, 3\lambda/4, 5\lambda/4\) にくるように、振幅 \(2a\) の波形を描きます。これは物理的に妥当です。

別解: 入射波と反射波の数式的な合成による解法

思考の道筋とポイント
Oを原点とし、壁Aの方向をx軸正方向とします。Oから出る右向きの波(入射波)と、壁Aで反射して左向きに進む波(反射波)の変位をそれぞれ数式で表し、重ね合わせの原理によって合成します。三角関数の和積の公式を用いると、合成波が定常波の式で表されることがわかります。
この設問における重要なポイント

  • 進行波の式 \(y(x,t) = A \sin 2\pi \left(\frac{t}{T} – \frac{x}{\lambda}\right)\) を利用する。
  • 反射波は、進行方向が逆で、壁での反射条件(位相変化なし)を満たすように式を立てる。
  • 三角関数の和積の公式: \(\sin A + \sin B = 2 \cos\frac{A-B}{2} \sin\frac{A+B}{2}\)。

具体的な解説と立式
Oを原点(\(x=0\))とし、時刻\(t\)における位置\(x\)の変位を\(y(x,t)\)とします。角振動数を\(\omega=2\pi f\)、波数を\(k=2\pi/\lambda\)とします。
Oから右向きに進む入射波\(y_1\)は、
$$
\begin{aligned}
y_1(x,t) &= a \sin(\omega t – kx)
\end{aligned}
$$
壁A(\(x=3\lambda/2\))で反射した波(反射波\(y_2\))は、左向きに進みます。位相変化がない自由端反射なので、もし壁がなければ鏡像波源O'(\(x=3\lambda\))から左向きに進む波と考えることができます。O’から見た位置座標を\(x’ = 3\lambda – x\)とすると、O’からの距離は\(x’\)なので、
$$
\begin{aligned}
y_2(x,t) &= a \sin(\omega t – k(3\lambda-x))
\end{aligned}
$$
合成波\(y(x,t)\)は、\(y = y_1 + y_2\)で与えられます。
$$
\begin{aligned}
y(x,t) &= a \sin(\omega t – kx) + a \sin(\omega t – k(3\lambda-x))
\end{aligned}
$$
ここで和積の公式を適用します。\(A = \omega t – kx\), \(B = \omega t – k(3\lambda-x)\)とすると、
\(\frac{A+B}{2} = \omega t – \frac{k(3\lambda)}{2} = \omega t – 3\pi\)
\(\frac{A-B}{2} = \frac{k(3\lambda-2x)}{2} = \frac{2\pi}{\lambda}\frac{3\lambda-2x}{2} = \pi(3 – \frac{2x}{\lambda})\)
$$
\begin{aligned}
y(x,t) &= 2a \cos\left(\pi(3 – \frac{2x}{\lambda})\right) \sin(\omega t – 3\pi) \\[2.0ex]
&= \left[ -2a \cos\left(\frac{2\pi}{\lambda}x\right) \right] \sin(\omega t)
\end{aligned}
$$
(\(\cos(3\pi – \theta) = -\cos\theta\), \(\sin(\omega t – 3\pi) = -\sin(\omega t)\) を利用)
この式は、振幅が位置\(x\)の関数 \(A(x) = \left| -2a \cos\left(\frac{2\pi}{\lambda}x\right) \right|\) で与えられる定常波を表します。

使用した物理公式

  • 進行波の式
  • 重ね合わせの原理
  • 三角関数の和積の公式
計算過程

振幅が最大(\(2a\)、腹)になるのは \(|\cos(\frac{2\pi}{\lambda}x)|=1\) のとき。
\(\frac{2\pi}{\lambda}x = n\pi\) (\(n\)は整数) \(\Rightarrow\) \(x = \frac{n}{2}\lambda\)。
\(0 \le x \le \frac{3}{2}\lambda\) の範囲では \(n=0, 1, 2, 3\) が対応し、\(x=0, \frac{\lambda}{2}, \lambda, \frac{3}{2}\lambda\)。
振幅が0(節)になるのは \(\cos(\frac{2\pi}{\lambda}x)=0\) のとき。
\(\frac{2\pi}{\lambda}x = (n+\frac{1}{2})\pi\) \(\Rightarrow\) \(x = (n+\frac{1}{2})\frac{\lambda}{2} = \frac{2n+1}{4}\lambda\)。
\(0 \le x \le \frac{3}{2}\lambda\) の範囲では \(n=0, 1, 2\) が対応し、\(x=\frac{\lambda}{4}, \frac{3}{4}\lambda, \frac{5}{4}\lambda\)。
これは主たる解法の結果と完全に一致します。

この設問の平易な説明

波の動きを数学の式で表す方法もあります。Oから壁に向かう波と、壁から跳ね返ってくる波の式をそれぞれ作り、それらを足し合わせます。すると、数学の公式(和積の公式)を使うことで、最終的な式が「場所によって揺れの大きさが決まっていて、時間と共に振動する」という形に変形できます。これが定常波の数式的な姿です。この式から、揺れが最大になる場所(腹)と全く揺れない場所(節)を計算すると、最初の解き方と全く同じ結果が得られます。

結論と吟味

数式的なアプローチからも、合成波が定常波となり、その腹と節の位置が主たる解法と一致することが確認できました。この解法は、定常波の物理的描像を数式で裏付けるものであり、理解を深める上で有益です。

解答 (3) 定常波(または定在波)。作図は、O, \(\lambda/2\), \(\lambda\), \(3\lambda/2\) を腹とし、\(\lambda/4\), \(3\lambda/4\), \(5\lambda/4\) を節とする振幅 \(2a\) の波形を描く。

問(4)

思考の道筋とポイント
O点より左側の半直線OC上で見られる合成波を考えます。この直線上の任意の点をPとし、Oからの距離を \(x_P\) (\(x_P > 0\)) とします。この点Pには、波源Oからの直接波と、鏡像波源O’からの波が到達します。OとO’は同位相波源です。P点における経路差 \(O’P – OP\) を計算し、その値が常にどうなるかを調べます。また、Oからの波もO’からの波もOC上では同じ向き(左向き)に進むため、合成波も進行波となります。
この設問における重要なポイント

  • 半直線OC上の任意の点Pでの経路差 \(O’P – OP\) を考える。
  • O’の位置はOから右に \(3\lambda\)。PはOから左に \(x_P\)。
  • Oからの波とO’からの波は、OC上で同方向に進む。

具体的な解説と立式
半直線OC上の任意の点をPとします。波源Oを原点 \(x=0\) とし、Cの方向を負のx軸方向とします。点Pの座標を \(-x_P\) (\(x_P \ge 0\)) とすると、\(OP = x_P\)。
鏡像波源O’は、Oから正のx軸方向に \(OO’ = 3\lambda\) の位置にあります。
PはOの左側にあるので、\(O’P = O’O + OP = 3\lambda + x_P\)。
P点における経路差 \(\Delta L_P\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta L_P &= O’P – OP \\[2.0ex]
&= (3\lambda + x_P) – x_P \\[2.0ex]
&= 3\lambda
\end{aligned}
$$
この経路差 \(3\lambda\) は波長の整数倍(\(m=3\))なので、半直線OC上の全ての点で波は強め合います。
波源Oからの波と鏡像波源O’からの波(反射波)は、半直線OC上ではいずれも同じ方向(左向き)に進む進行波です。
これらの波が強め合うため、合成波は振幅が \(a+a=2a\) となり、左向きに進む進行波となります。

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(強め合い)
計算過程

経路差は常に \(3\lambda\) です。これは \(m=3\) の強め合いの条件を満します。Oからの波とO’からの波は同方向に進むため、合成波は振幅が \(a+a=2a\) の進行波となります。

この設問の平易な説明

O点の左側の直線OC上で波がどうなるかを考えます。この直線上のどの点Pを選んでも、波源Oから点Pまでの距離と、鏡像波源O’から点Pまでの距離の差は、常にOとO’の間の距離である \(3\lambda\) となります。この距離の差 \(3\lambda\) は、波長のちょうど3倍なので、Oからの波とO’からの波(壁で反射した波)は常に同じタイミングで重なり合い、強め合います。また、Oからの波もO’からの波(反射波)も、この直線OC上では同じ左向きに進んでいるため、これらが合わさった波も、振幅が元の波の2倍 (\(2a\)) になった左向きに進む進行波となります。

結論と吟味

合成波は、「振幅が \(2a\) で、波源Oから遠ざかる向き(左向き)に進む進行波」となります。20字程度という指定にも概ね収まります。

別解: 入射波と反射波の数式的な合成による解法

思考の道筋とポイント
問(3)の別解と同様に、Oを原点とし、OC方向をx軸負方向として、入射波と反射波の式を立てて合成します。合成波の式が進行波の形になることを確認します。
この設問における重要なポイント

  • 進行波の式を利用する。
  • 重ね合わせの原理で2つの波の式を足し合わせる。

具体的な解説と立式
Oを原点(\(x=0\))とし、OC方向をx軸正方向とします(計算の便宜上)。
Oから右向き(C方向)に進む波\(y_1\)は、
$$
\begin{aligned}
y_1(x,t) &= a \sin(\omega t – kx)
\end{aligned}
$$
反射波は、鏡像波源O'(\(x=-3\lambda\))から右向きに進む波とみなせるので、
$$
\begin{aligned}
y_2(x,t) &= a \sin(\omega t – k(x+3\lambda))
\end{aligned}
$$
合成波\(y(x,t)\)は、\(y = y_1 + y_2\)で与えられます。
$$
\begin{aligned}
y(x,t) &= a \sin(\omega t – kx) + a \sin(\omega t – kx – 6\pi)
\end{aligned}
$$
\(\sin(\theta – 6\pi) = \sin\theta\) なので、
$$
\begin{aligned}
y(x,t) &= a \sin(\omega t – kx) + a \sin(\omega t – kx) \\[2.0ex]
&= 2a \sin(\omega t – kx)
\end{aligned}
$$
この式は、振幅が\(2a\)で、x軸正方向(C方向、すなわちOから遠ざかる向き)に進む進行波を表しています。

使用した物理公式

  • 進行波の式
  • 重ね合わせの原理
計算過程

上記の通り、2つの波の式を足し合わせることで、合成波の式が \(y(x,t) = 2a \sin(\omega t – kx)\) となります。

この設問の平易な説明

問(3)の別解と同じように、数学の式を使って波の重なりを考えます。Oから左に進む波と、鏡像O’から左に進む波の式を立てて足し算します。すると、驚くほどきれいな形にまとまり、「振幅が\(2a\)で左向きに進む波」の式そのものが出てきます。これにより、経路差を使った考え方が正しかったことを数式で確認できます。

結論と吟味

数式的なアプローチからも、合成波が振幅\(2a\)の進行波となることが確認できました。主たる解法の結果と一致します。

解答 (4) 振幅 \(2a\) でOから遠ざかる向きに進む進行波。

問(5)

思考の道筋とポイント
線分OB上で弱め合う点の数を数えます。波源Oと鏡像波源O’からの波の干渉と考え、弱め合いの条件は経路差 \(|O’Q – OQ| = (m+1/2)\lambda\) を満たすことです。点Qを線分OB上の点とし、Oからの距離を \(x\) (\(0 \le x \le 4\lambda\)) とおきます。このとき、\(OQ = x\)、\(O’Q = \sqrt{(3\lambda)^2 + x^2}\) となります。この経路差が弱め合いの条件を満たすような整数 \(m \ge 0\) が何個存在し、かつそのときの \(x\) が \(0 \le x \le 4\lambda\) の範囲に入るかを調べます。
この設問における重要なポイント

  • 弱め合いの干渉条件: 経路差 \( = (m+1/2)\lambda\)。
  • 線分OB上の点Qに対する経路差 \(O’Q – OQ\) を \(x = OQ\) の関数として表す。
  • \(0 \le x \le 4\lambda\) の範囲で条件を満たす整数 \(m\) の個数を数える。

具体的な解説と立式
線分OB上の任意の点をQとし、\(OQ=x\) とします (\(0 \le x \le 4\lambda\))。
経路差 \(\Delta L_Q = O’Q – OQ = \sqrt{(3\lambda)^2 + x^2} – x\)。
弱め合いの条件は、
$$
\begin{aligned}
\sqrt{9\lambda^2 + x^2} – x = \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda \quad (m=0, 1, 2, \dots)
\end{aligned}
$$
この式を \(x\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{9\lambda^2 + x^2} &= x + \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda
\end{aligned}
$$
両辺を2乗します。
$$
\begin{aligned}
9\lambda^2 + x^2 &= x^2 + 2x\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda + \left(m+\frac{1}{2}\right)^2\lambda^2
\end{aligned}
$$
整理して \(x\) を求めると、
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{9 – (m+1/2)^2}{2(m+1/2)}\lambda
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(弱め合い)
  • 三平方の定理
計算過程

求めた \(x\) の式に整数 \(m=0, 1, 2, \dots\) を代入し、\(0 \le x \le 4\lambda\) を満たすものを探します。

  • \(m=0\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (0.5)^2}{1}\lambda = 8.75\lambda\)。範囲外。
  • \(m=1\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (1.5)^2}{3}\lambda = \frac{6.75}{3}\lambda = 2.25\lambda = \frac{9}{4}\lambda\)。範囲内。
  • \(m=2\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (2.5)^2}{5}\lambda = \frac{2.75}{5}\lambda = 0.55\lambda = \frac{11}{20}\lambda\)。範囲内。
  • \(m=3\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (3.5)^2}{7}\lambda = \frac{-3.25}{7}\lambda\)。\(x < 0\) となり不適。

したがって、条件を満たす \(m\) は \(m=1\) と \(m=2\) の2つです。よって、弱め合う点は2個あります。

この設問の平易な説明

線分OB上の点Qで波が弱め合う条件は、波源Oと鏡像波源O’からの距離の差が、半波長の奇数倍(例えば \(0.5\lambda, 1.5\lambda, 2.5\lambda, \dots\))になるときです。OからQまでの距離を \(x\) とすると、O’からQまでの距離はピタゴラスの定理を使って計算できます。これらの距離の差が \((m+0.5)\lambda\) となるような \(x\) が、\(0\) から \(4\lambda\) の間(線分OB上)にいくつあるかを調べます。計算してみると、\(m=1\) のとき(距離の差が \(1.5\lambda\))と \(m=2\) のとき(距離の差が \(2.5\lambda\))に対応する \(x\) が、\(0\) から \(4\lambda\) の範囲内に見つかります。したがって、弱め合う点は2個です。

結論と吟味

線分OB上で弱め合う点は2個です。計算結果も妥当です。

別解1: 経路差の取りうる値の範囲から求める解法

思考の道筋とポイント
線分OBの両端における経路差をまず計算します。点O (\(x=0\)) における経路差は \(3\lambda\)。点B (\(x=4\lambda\)) における経路差は \(\lambda\)。点QがOからBへ移動するにつれて、経路差は \(3\lambda\) から \(\lambda\) へと連続的に減少します。この \([\lambda, 3\lambda]\) の範囲内に、弱め合いの条件 \((m+1/2)\lambda\) を満たすものがいくつあるかを数えます。
この設問における重要なポイント

  • 線分OBの両端(O点とB点)での経路差を求める。
  • 経路差がその間で連続的に変化することを利用する。
  • 弱め合いの条件 \((m+1/2)\lambda\) が、計算した経路差の範囲内にいくつ入るかを数える。

具体的な解説と立式
線分OB上で、点QがOにあるときの経路差 \(\Delta L_O\) は、
$$
\begin{aligned}
\Delta L_O &= O’O – OO = 3\lambda
\end{aligned}
$$
点QがBにあるときの経路差 \(\Delta L_B\) は、(2)より、
$$
\begin{aligned}
\Delta L_B &= O’B – OB = \lambda
\end{aligned}
$$
点QがOからBへ移動する間、経路差 \(\Delta L_Q\) は \(3\lambda\) から \(\lambda\) まで連続的に減少します。
弱め合いの条件は、経路差が \(\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))となることです。
したがって、次の不等式を満たす整数 \(m\) の個数を探します。
$$
\begin{aligned}
\lambda \le \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda \le 3\lambda
\end{aligned}
$$

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(弱め合い)
計算過程

不等式の各項を \(\lambda\) (\(\lambda > 0\)) で割ると、
$$
\begin{aligned}
1 \le m+\frac{1}{2} \le 3
\end{aligned}
$$
各項から \(\frac{1}{2}\) を引くと、
$$
\begin{aligned}
1 – \frac{1}{2} &\le m \le 3 – \frac{1}{2} \\[2.0ex]
0.5 &\le m \le 2.5
\end{aligned}
$$
この不等式を満たす整数 \(m\) は、\(m = 1, 2\) の2つです。
したがって、弱め合う点は2個存在します。

この設問の平易な説明

線分OB上で弱め合う点の数を数える、もっと簡単な方法があります。まず、線分の端っこであるO点とB点での「距離の差」を計算します。O点では\(3\lambda\)、B点では\(\lambda\)です。OB上の点をOからBへ動かすと、この「距離の差」は\(3\lambda\)から\(\lambda\)まで連続的に変化します。波が弱まるのは、距離の差が\(0.5\lambda, 1.5\lambda, 2.5\lambda, \dots\)となるときです。このうち、\(3\lambda\)から\(\lambda\)の範囲に含まれるのは\(2.5\lambda\)と\(1.5\lambda\)の2つだけです。だから、弱め合う点は2個あると分かります。

結論と吟味

線分OB上で弱め合う点は2個です。これは主たる解法と一致しており、より簡潔な方法で同じ結論に至ります。

別解2: 干渉縞(双曲線)を利用する幾何学的解法

思考の道筋とポイント
2つの点波源O, O’からの波が干渉するとき、経路差が一定となる点の集まりは、OとO’を焦点とする双曲線を描きます。弱め合いの線(節線)は、経路差が \((m+1/2)\lambda\) となる双曲線群です。これらの双曲線が線分OBと何回交わるかを考えます。
この設問における重要なポイント

  • 干渉縞(強め合いの線、弱め合いの線)は双曲線を描く。
  • 弱め合いの線に対応する経路差は \((m+1/2)\lambda\)。
  • 線分OBがこれらの双曲線と何回交わるかを幾何学的に考察する。

具体的な解説と立式
波源Oと鏡像波源O’を焦点とし、経路差が \(\Delta L = (m+1/2)\lambda\) となる点の軌跡は双曲線です。
弱め合いの線(節線)は、この条件を満たす双曲線の集まりです。
線分OBは、O(\(x=0\))からB(\(x=4\lambda\))までの線分です。
別解1で確認したように、線分OB上での経路差は \(\lambda\) から \(3\lambda\) までの値をとります。
したがって、線分OBと交わる可能性がある節線は、その経路差が \(\lambda\) と \(3\lambda\) の間にあるものだけです。
弱め合いの経路差は \((m+1/2)\lambda\) なので、
$$
\begin{aligned}
\lambda \le (m+1/2)\lambda \le 3\lambda
\end{aligned}
$$
これを満たす整数 \(m\) を探します。これは別解1と全く同じ不等式であり、解は \(m=1, 2\) となります。
よって、\(m=1\) に対応する節線(経路差 \(1.5\lambda\) の双曲線)と、\(m=2\) に対応する節線(経路差 \(2.5\lambda\) の双曲線)の2本が、線分OBと交わることがわかります。

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(弱め合い)
  • 干渉縞の幾何学的性質(双曲線)
計算過程

別解1と同様の不等式 \(0.5 \le m \le 2.5\) を解くことで、条件を満たす整数 \(m\) は \(1\) と \(2\) の2つであることがわかります。

この設問の平易な説明

水面にできる波の干渉模様を思い浮かべてみましょう。強め合う線と弱め合う線が、波源Oと鏡像O’を中心にきれいな曲線(双曲線)を描きます。この問題は、その弱め合いの線が、線分OBと何回交差するかを数える問題と考えることができます。別解1で調べたように、OB上では経路差が\(\lambda\)から\(3\lambda\)まで変化します。この範囲に収まる弱め合いの条件(経路差\(1.5\lambda\)と\(2.5\lambda\))は2つなので、OBと交差する弱め合いの線も2本ということになります。

結論と吟味

干渉縞が双曲線を描くという幾何学的な視点から、代数計算なしに結論を導くことができました。これは物理現象の全体像を視覚的に捉える上で非常に有益な考え方です。

解答 (5) 2個

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 波の反射と鏡像波源:
    • 核心: 壁のような障害物による波の反射は、壁の向こう側に対称な位置にある「鏡像の波源」から波がきていると等価に扱えます。この考え方を用いることで、複雑な反射の問題を、2つの点波源からの干渉という基本的な問題に置き換えることができます。
    • 理解のポイント:
      1. 鏡像の位置: 鏡像波源は、壁(反射面)に対して、元の波源と対称な位置にあります。
      2. 位相の関係: 壁での反射で位相が変化するかしないかが、鏡像波源の位相を決定します。本問のように「位相が変化しない」場合は自由端反射に相当し、鏡像波源は元の波源と同位相とみなせます。「位相が\(\pi\)ずれる(反転する)」場合は固定端反射に相当し、鏡像波源は逆位相とみなします。
      3. 等価な経路: Oから壁上の点Dで反射して点Pに至る経路長(OD+DP)は、鏡像波源O’から点Pへの直線距離(O’P)と等しくなります。これにより、経路や経路差の計算が劇的に簡単になります。
  • 波の干渉条件:
    • 核心: 複数の波源からの波が重なるとき、各波源からの距離の差(経路差)によって強め合ったり弱め合ったりします。この条件式を正確に理解し、適用することが干渉問題を解く鍵となります。
    • 理解のポイント:
      1. 経路差の計算: 干渉を調べる点において、各波源からの距離を正確に計算し、その差(経路差)を求めます。三平方の定理など、幾何学的な知識が頻繁に用いられます。
      2. 同位相の場合(本問):
        • 強め合い(腹): 経路差 \( = m\lambda \) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
        • 弱め合い(節): 経路差 \( = (m+\frac{1}{2})\lambda \) (\(m=0, 1, 2, \dots\))
      3. 逆位相の場合: 上記の強め合いと弱め合いの条件式が入れ替わります。
  • 定常波(定在波):
    • 核心: 同じ振幅・波長・振動数の波が互いに逆向きに進んで重なると、波形が進まずその場で振動するように見える定常波ができます。
    • 理解のポイント:
      1. 腹と節: 定常波には振幅が常に0の「節」と振幅が最大の「腹」が交互に現れます。
      2. 間隔: 腹と腹(または節と節)の間隔は半波長\(\lambda/2\)、腹と隣の節の間隔は1/4波長\(\lambda/4\)です。
      3. 反射端: 自由端反射では反射点が腹になり、固定端反射では節になります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • 応用できる類似問題のパターン:
    • ヤングの実験: 2つのスリットからの光の干渉問題。本問のOとO’を2つのスリットと見なせば、全く同じ考え方で解けます。
    • 薄膜による光の干渉: 膜の表面で反射する光と裏面で反射する光の干渉。経路差に加え、屈折や反射時の位相変化を考慮する必要があります。
    • 音波の干渉: 2つのスピーカーからの音の干渉や、壁で反射した音との干渉(うなりや定常波)。
    • くさび形空気層: ガラス板の間に挟まれた空気層での光の干渉。これも鏡像の考え方が有効です。
  • 初見の問題での着眼点:
    1. 波源の特定: まず、干渉に関わる波源がいくつあるかを見極めます。「反射」という言葉があれば、鏡像波源を考えることで波源が2つになる可能性を疑います。
    2. 位相関係の確認: 波源同士が同位相か逆位相か、あるいは反射で位相が変化するかどうかを問題文から正確に読み取ります。これが干渉条件の式を決定します。
    3. 経路差の立式: 干渉を考える点と各波源との距離を、図形と三平方の定理などを使って文字で表し、経路差の式を立てます。
    4. 範囲の確認: 問(5)のように、特定の線分上や領域内で干渉点を数える問題では、経路差が取りうる値の範囲を最初に調べるのが有効なテクニックです。これにより、複雑な方程式を解かずに済む場合があります。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 干渉条件の式の混同:
    • 誤解: 同位相の条件と逆位相の条件を混同してしまう。
    • 対策: 「同位相なら、経路差0で強め合うはずだから、\(m\lambda\)が強め合い」というように、\(m=0\)の最も簡単な場合を基準に思い出す習慣をつける。
  • 鏡像波源の位相の誤り:
    • 誤解: 反射があれば常に逆位相(固定端反射)だと勘違いする。
    • 対策: 問題文の「位相は変化しない」「位相が\(\pi\)ずれる」といった記述を絶対に見逃さない。物理的な状況(例:空気中の弦の端は自由端、壁に固定された端は固定端)から判断する場合もあります。
  • \(m\) の値の範囲:
    • 誤解: 経路差の式から\(m\)を計算した際に、\(m\)が非負の整数(\(0, 1, 2, \dots\))でなければならないことを見落とす。
    • 対策: 干渉条件の式を覚える際に、必ず「\(m=0, 1, 2, \dots\)」という条件もセットで覚える。計算結果が分数や負になった場合は、その条件を満たす点が存在しないことを意味します。
  • 定常波の腹と節の位置の誤解:
    • 誤解: 波源が常に腹や節になるとは限らないのに、そう思い込んでしまう。
    • 対策: 波源の位置での干渉条件をきちんと調べる。本問(3)では、O点での経路差が\(3\lambda\)(\(m=3\)の強め合い)なので、結果的に腹になりましたが、常にそうとは限りません。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 鏡像波源の考え方:
    • 選定理由: 問題に「壁での反射」があり、干渉を考えるため。反射波を扱う最も簡単なモデルだからです。
    • 適用根拠: 反射面が平面であるため、幾何学的な対称性が利用でき、鏡像波源を明確に設定できます。
  • 経路差に基づく干渉条件 (\(\Delta L = m\lambda\) など):
    • 選定理由: 「強め合うか、弱め合うか」「干渉する点の位置や個数」を問われているため。これは干渉現象を定量的に扱うための基本法則です。
    • 適用根拠: 2つの波源(OとO’)が特定でき、それらの位相関係(同位相)も分かっている状況。
  • 定常波の概念と性質 (\(腹-腹間隔 = \lambda/2\) など):
    • 選定理由: 「線分OA上で見られる波」のように、逆向きに進む波が重なり合う状況が明確だからです。
    • 適用根拠: Oからの入射波と壁からの反射波が、振幅・波長・振動数が等しく、進行方向が真逆であるという条件を満たしています。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 平方根の計算:
    • 特に注意すべき点: 三平方の定理を使う際の計算、特に \(\lambda^2\) の扱いを正確に行うこと。\(\sqrt{(3\lambda)^2 + (4\lambda)^2} = \sqrt{9\lambda^2 + 16\lambda^2} = \sqrt{25\lambda^2}\) であり、ここから \(\sqrt{25}\lambda\) ではなく、\(\sqrt{25}\sqrt{\lambda^2} = 5\lambda\) と正しく計算する。
    • 日頃の練習: 文字を含む平方根の計算に慣れておく。特に、ルートの中から共通因数を外に出す練習を繰り返す。
  • 文字式の整理:
    • 特に注意すべき点: 問(5)のように、経路差の式を立ててから\(x\)について解く場面では、移項や2乗の展開で計算ミスが起こりやすい。
    • 日頃の練習: 途中式を省略せず、一行一行、何をしているのかを意識しながら丁寧に書く癖をつける。特に、\((A+B)^2\) のような展開は慎重に行う。
  • 範囲の確認:
    • 特に注意すべき点: 問(5)で、計算して出てきた\(x\)の値や、条件を満たす\(m\)の値が、問題で指定された物理的な範囲(\(0 \le x \le 4\lambda\) や \(m \ge 0\))に収まっているかを確認する作業を怠らないこと。
    • 日頃の練習: 問題を解き終えたら、答えが「線分OB上にある」「非負の整数である」といった条件を満たしているか、必ず見直す習慣をつける。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 得られた答えの物理的妥当性の検討:
    • (1) 時間: 計算結果は正の値か? (\(\frac{5}{f}\) は正でOK)
    • (2) 干渉: 経路差が\(\lambda\)というキリの良い値になった。これは強め合いの条件\(m\lambda\)にぴったり当てはまる。妥当。
    • (3) 定常波: 壁A(\(x=3\lambda/2\))での経路差は0なので強め合い(腹)。O(\(x=0\))での経路差は\(3\lambda\)なので強め合い(腹)。両端が腹になるという結果は、自由端反射の状況と矛盾しない。
    • (5) 個数: 経路差が\(\lambda\)から\(3\lambda\)まで変化する間に、弱め合いの条件\((m+0.5)\lambda\)は\(1.5\lambda, 2.5\lambda\)の2回現れる。個数が2個という結果は直感的にも正しい。
  • 極端な場合や既知の状況との比較:
    • もしB点が壁のすぐ近く(\(OB \to 0\))にあったらどうなるか? このとき経路差は\(O’O – OO = 3\lambda\)に近づく。これは強め合いの点。
    • もしB点が無限に遠く(\(OB \to \infty\))にあったらどうなるか? このときO’BとOBはほぼ平行になり、経路差はO’からOBに下ろした垂線の長さに近づき、最終的に\(3\lambda \cos 90^\circ = 0\)に近づく。これは強め合いの点。
    • これらの極端な場合を考えると、経路差は\(3\lambda\)から減少し、一度\(\lambda\)まで下がった後、遠方では0に近づいていくことがわかる(ただし問題は線分OB上)。経路差が単調に減少しないことがわかり、より深い理解につながる。
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問題2 (宇都宮大+宮崎大+慶應大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、一様な媒質中を平面波が反射面に向かって斜めに入射し、固定端反射する状況を扱っています。入射波の性質、反射波の作図、そして入射波と反射波の干渉によって生じる強め合いのパターンについて考察します。

与えられた条件
  • 一様な媒質中を進む平面波。
  • 反射面に向かって入射角 \(\theta\) で入射。
  • 図は入射波の山(実線)と谷(点線)の様子を示す。
  • 波の波長は \(\lambda\)、周期は \(T\)。
  • 座標軸: 原点Oを反射面上の点とし、反射面に沿ってx軸、反射面に垂直に入射側へy軸をとる。
  • (2)において、入射波は反射面で固定端反射をする。
問われていること
  • (1) x軸にそって伝わる波(x軸上での見かけの波)の波長 \(\lambda_x\) と速さ \(v_x\)。および、y軸にそって伝わる波(y軸上での見かけの波)の波長 \(\lambda_y\) と速さ \(v_y\)。
  • (2) 与えられた図の状況における、反射波の山(実線)と谷(点線)の作図。
  • (3) 入射波と反射波が干渉してできる強め合いの線(強め合う点を連ねた線)の作図。
  • (4) (3)で描いた強め合いの線の間隔 \(d\)。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

【相違点に関する注記】

本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。

  1. 提示する別解
    • 問(3) 強め合いの線の作図の別解: 位相差に基づく作図法
      • 主たる解法が波面図の交点(山と山、谷と谷)を直接探すのに対し、別解では任意の点(x, y)における入射波と反射波の位相を数式で表し、その差が強め合いの条件(\(2m\pi\))を満たす点の軌跡を求める、より解析的なアプローチを取ります。
    • 問(4) 強め合いの線の間隔の別解: y軸方向の定常波に着目する解法
      • 主たる解法が、作図した干渉パターンから幾何学的に間隔を求めるのに対し、別解ではy軸方向の波の成分(入射波と反射波)が干渉して定常波を形成すると考え、その腹の間隔として間隔dを求めます。
  2. 上記の別解が有益である理由
    • 物理モデルの深化: 「干渉が位相差によって決まる」という波の最も基本的な性質や、「空間に定常波が形成される」という物理描像への理解が深まります。
    • 解析的な手法の学習: 図形的な直感だけでなく、数式を用いて物理現象を解析する能力が養われます。
    • 計算の効率化: 特に問(4)の別解は、(1)の結果を巧みに利用することで、複雑な作図や幾何学的考察を省略し、より直接的に計算で答えを導き出せます。
  3. 結果への影響
    • いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。

この問題は、平面波の基本的な性質(波長、周期、速さ)の理解を前提として、波の反射(特に固定端反射)と、それによって生じる入射波と反射波の干渉について深く掘り下げたものです。「見かけの波長・速さ」という概念や、干渉による定常波の形成、強め合いの条件などがポイントとなります。

問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の進行と波面: 波の進行方向(射線)と波面は常に垂直です。波長 \(\lambda\) は射線方向での山と山(または谷と谷)の間隔です。
  2. 見かけの波長と速さ: ある軸に沿って波の様子を観測すると、その軸上での波のパターンから「見かけの波長」や「見かけの速さ」が定義できます。これらは波の進行方向と軸のなす角度に依存します。
  3. 反射の法則: 入射角と反射角は等しい。
  4. 固定端反射: 波が固定端で反射する際には、位相が \(\pi\)(180°)反転します。つまり、山として入射した波は谷として反射され、谷として入射した波は山として反射されます。反射面は常に変位が0の節となります。
  5. 波の干渉と定常波: 入射波と反射波が重なり合う領域では干渉が起こります。特に、同じ振幅と波長を持つ波が互いに逆向きに進んで重なると定常波が形成され、振幅が極大となる「腹」と常に振幅が0の「節」が空間に固定されて現れます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) まず、入射波の波面とx軸、y軸がなす幾何学的な関係から、各軸上での見かけの波長 \(\lambda_x, \lambda_y\) を \(\lambda\) と \(\theta\) を用いて表します。速さは、これらの見かけの波長を周期 \(T\) で割ることで求めます。
  2. (2) 固定端反射の条件(反射面で山と谷が反転する)と反射の法則(入射角と反射角が等しい)を考慮して、反射波の波面(山と谷)を作図します。
  3. (3) (2)で描いた反射波と元の入射波の図を重ね合わせ、入射波の山と反射波の山が重なる点、および入射波の谷と反射波の谷が重なる点を見つけ出し、それらを結んで強め合いの線を描きます。
  4. (4) (3)で描いた強め合いの線は等間隔に並ぶはずです。この間隔 \(d\) を、幾何学的な考察や、y軸方向の定常波の腹の間隔として求めます。

問(1)

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