問題1 (奈良女子大)
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、水面上の点波源から発生する波が鉛直な壁で反射し、直接波と干渉する現象について考察するものです。波の伝播時間、特定の点での干渉条件(強め合い・弱め合い)、線分上にできる定常波の様子、そして別の線上での合成波の性質や弱め合う点の個数を求めることが求められています。
- 波源O: 水面上の1点にあり、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の円形の波を連続的に送り出す。
- 壁: 鉛直に区切られており、波が壁で反射されるとき位相は変化しない。
- 点A: 水面と壁との境界点。線分OAは壁に垂直。
- 点B: 水面上の点。線分OBは壁と平行。
- 距離: \(OA = \frac{3}{2}\lambda\)、\(OB = 4\lambda\)。
- 波の減衰は無視する。
- (3)において、O点から出る波は振幅 \(a\) の正弦波であるとする。
- (1) 波が点Oを出てから壁で反射されB点に届くのに要する時間。
- (2) B点において、波が強め合っているか、弱め合っているか、あるいはそのいずれでもないか。
- (3) 線分OA上で見られる合成波の名称と、そのようす(ある瞬間の変位のグラフ)。
- (4) 点Oより左側の半直線OC上で見られる合成波の様子の記述。
- (5) 線分OB上(両端を含む)で、弱め合う点の個数。
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題は、波の基本的な性質である「反射」と「干渉」を組み合わせた、総合的な理解を問うものです。特に、壁による反射を鏡像波源からの波として捉えることで、2つの波源からの波の干渉問題として扱うことができる点が重要です。また、特定の条件下では定常波が形成されることも理解しておく必要があります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の基本的な関係式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v = f\lambda\) の関係があります。
- 反射の法則と鏡像波源: 壁での反射は、壁に対して対称な位置にある「鏡像の波源」から波が出ていると考えることができます。壁での反射で位相が変化しない場合、元の波源と鏡像波源は同位相であるとみなせます。
- 波の干渉の条件(同位相波源の場合): 2つの波源からの距離の差(経路差)を \(\Delta L\) とすると、
- 強め合い(振幅が最大になる点): \(\Delta L = m\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))
- 弱め合い(振幅が最小または0になる点): \(\Delta L = \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))
- 定常波: 逆向きに進む同じ種類の波が重なり合うと、波形が進まずその場で振動するように見える定常波(定在波)が生じます。定常波には、まったく振動しない「節」と、最も大きく振動する「腹」があります。
これらの原理を理解し、問題の幾何学的な配置と合わせて正確に適用していくことが求められます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) まず、壁に関する波源Oの鏡像波源O’の位置を特定します。波がOから出て壁で反射しB点に届くまでの経路長は、O’からB点までの直線距離と等しくなります。この距離を三平方の定理などを用いて求め、波の速さ \(v=f\lambda\) で割ることで所要時間を計算します。
- (2) B点における、波源Oからの直接波と鏡像波源O’からの波(反射波に相当)との経路差を計算します。壁での反射で位相が変化しないため、OとO’は同位相波源として扱えます。計算した経路差を干渉条件と比較し、強め合いか弱め合いかを判断します。
- (3) 線分OA上では、Oからの入射波と壁からの反射波(O’からの波)が正面衝突するように重なり合います。これにより定常波が形成されます。壁Aは位相が変わらない反射(自由端反射)なので、定常波の腹になります。この情報と腹(または節)の間隔が \(\lambda/2\) であることを利用して、OA上の定常波の様子(振幅の分布)を描きます。
- (4) O点の左側の半直線OC上の任意の点について、OとO’からの経路差を求めます。この経路差が常に特定の条件を満たすかどうかを調べ、合成波の性質を記述します。
- (5) 線分OB上の各点について、OとO’からの経路差を考え、それが弱め合いの条件 \(\Delta L = (m+1/2)\lambda\) を満たす点の数を数えます。経路差が取りうる値の範囲を特定し、その範囲内に弱め合いの条件を満たす \(m\) がいくつ存在するかを調べる方法や、幾何学的に弱め合いの線(双曲線)が線分OBと何回交わるかを考える方法があります。
それでは、各設問について詳しく見ていきましょう。
問(1)
思考の道筋とポイント
壁による波の反射は、壁に関して対称な位置にある鏡像波源O’から波が出ていると考えるのが定石です。波がOから出て壁上の点Dで反射しBに到達するまでの経路長 OD+DB は、鏡像波源O’からBまでの直線距離 O’B に等しくなります。このO’Bの長さを幾何学的に求め、波の速さ \(v=f\lambda\) で割ることで時間を求めます。
この設問における重要なポイント
- 鏡像波源の考え方を利用する。
- 反射経路長 OD+DB = O’B。
- 三平方の定理を用いて距離O’Bを計算する。
- 波の速さ \(v = f\lambda\) と時間 \(t = \text{距離}/v\) の関係。
具体的な解説と立式
波源Oの、壁に関する対称な点をO’とします。壁は線分OAに垂直で、OAの長さは \(\frac{3}{2}\lambda\) なので、Oから壁までの距離も \(\frac{3}{2}\lambda\) です。 したがって、OとO’の間の水平距離(壁に平行な方向の距離ではない、OとO’を結ぶ線分が壁と垂直に交わる場合、その壁までの距離の2倍)は \(2 \times \frac{3}{2}\lambda = 3\lambda\) となります。
点Bは、線分OBが壁と平行でその長さが \(4\lambda\) であることから、Oを原点 \((0,0)\) とし、壁が \(x=\frac{3}{2}\lambda\) の位置にあるとすると、Bの座標は \((0, 4\lambda)\) と考えられます。
鏡像波源O’の座標は \((3\lambda, 0)\) となります。
このとき、O’からBまでの距離 \(O’B\) は、\(\Delta x = 3\lambda\)、\(\Delta y = 4\lambda\) の直角三角形の斜辺として求められます。
$$O’B = \sqrt{(3\lambda)^2 + (4\lambda)^2} \quad \cdots ①$$
波がOから出て壁で反射しB点に届くまでの経路長 \(L_{\text{path}}\) は、この \(O’B\) に等しいので、\(L_{\text{path}} = O’B\)。
波の速さ \(v\) は、振動数 \(f\) と波長 \(\lambda\) を用いて \(v = f\lambda\) と表されます。
よって、B点に届くまでに要する時間 \(t\) は、
$$t = \frac{L_{\text{path}}}{v} = \frac{O’B}{f\lambda} \quad \cdots ②$$
使用した物理公式
- 三平方の定理
- 波の速さ: \(v = f\lambda\)
- 時間 = 距離 / 速さ
まず、式①を用いて \(O’B\) の長さを計算します。
$$O’B = \sqrt{9\lambda^2 + 16\lambda^2} = \sqrt{25\lambda^2}$$
\(\lambda > 0\) なので、
$$O’B = 5\lambda$$
次に、この結果を式②に代入して時間 \(t\) を求めます。
$$t = \frac{5\lambda}{f\lambda} = \frac{5}{f}$$
壁で反射した波は、まるで壁の向こう側にある「鏡に映った波源(鏡像波源O’)」から来たかのように進みます。Oから出て壁のどこかで反射してB点に届くまでの道のり (OD+DB) は、この鏡像波源O’からB点までまっすぐに進む道のり (O’B) と同じ長さになります。
波源Oと壁の間の距離は \(\frac{3}{2}\lambda\) なので、Oと鏡像波源O’との間の水平方向の距離は \(2 \times \frac{3}{2}\lambda = 3\lambda\) です。B点はOから \(4\lambda\) の距離(壁と平行方向)にあります。このため、O’とBの間の距離は、底辺が \(3\lambda\)、高さが \(4\lambda\) の直角三角形の斜辺の長さに相当し、計算すると \(5\lambda\) となります。
波の速さは \(v = f\lambda\) なので、この距離 \(5\lambda\) を進むのにかかる時間は、「距離 ÷ 速さ」から \(\frac{5\lambda}{f\lambda} = \frac{5}{f}\) と求められます。
波が点Oを出てから壁で反射されB点に届くのに要する時間は \(\displaystyle\frac{5}{f}\) です。3:4:5の直角三角形の関係が使われており、計算もシンプルです。模範解答とも一致しています。
問(2)
思考の道筋とポイント
B点では、波源Oから直接到達する波と、壁で反射してから到達する波(これは鏡像波源O’から到達する波とみなせる)が重なり合って干渉します。壁での反射で位相が変化しないとされているため、波源Oと鏡像波源O’は同位相の波源として扱うことができます。
B点における2つの波の経路差を求め、その経路差が波長の整数倍なら強め合い、半波長の奇数倍なら弱め合うという干渉条件と比較します。
この設問における重要なポイント
- 2つの波源(Oと鏡像O’)からの波の干渉と考える。
- 壁で位相が変化しないため、OとO’は同位相波源とみなせる。
- 経路差 \(\Delta L = |O’B – OB|\) を計算する。
- 干渉条件(同位相波源): 強め合い \(\Delta L = m\lambda\)、弱め合い \(\Delta L = (m+1/2)\lambda\)。
具体的な解説と立式
B点には、波源Oから直接届く波と、鏡像波源O’から届く波(壁からの反射波)が干渉します。
波源OからB点までの距離は、問題文より \(OB = 4\lambda\)。
鏡像波源O’からB点までの距離は、(1)で計算した通り \(O’B = 5\lambda\)。
B点における2つの波の経路差 \(\Delta L\) は、
$$\Delta L = O’B – OB \quad \cdots ③$$
(\(O’B > OB\) なので絶対値は不要です。)
壁での反射で位相は変化しないため、OとO’は同位相の波源とみなせます。 同位相の2つの波源からの波が干渉する場合、経路差が波長の整数倍(\(m\lambda\)、ここで \(m\) は整数)のときに強め合い、半波長の奇数倍(\((m+\frac{1}{2})\lambda\))のときに弱め合います。
使用した物理公式
- 波の干渉条件(同位相波源):
- 強め合い: 経路差 \( = m\lambda \)
- 弱め合い: 経路差 \( = (m+\frac{1}{2})\lambda \)
式③を用いて経路差 \(\Delta L\) を計算します。
$$\Delta L = 5\lambda – 4\lambda = \lambda$$
この経路差は \(\lambda = 1 \times \lambda\) であり、波長の整数倍(\(m=1\) の場合)となっています。
したがって、B点では波は強め合っています。
B点には、Oからまっすぐ来る波と、壁で反射してから来る波の2つが届きます。壁で反射するときに波の山谷がひっくり返らない(位相が変化しない)ので、Oともう一つの波源O’(Oの鏡像)が同じタイミングで波を送り出しているのと同じ状況と考えられます。
OからBまでの距離は \(4\lambda\)、O’からBまでの距離は(1)で求めたように \(5\lambda\) です。この2つの距離の差(経路差)は \(5\lambda – 4\lambda = \lambda\) です。
経路差がちょうど波長の1倍(一般には整数倍)になっているので、2つの波は山と山、谷と谷が重なり合うようにして強め合います。
B点では波は強め合っています。経路差が \(\lambda\) であり、これは \(m=1\) の強め合いの条件に一致します。模範解答とも一致しており、妥当です。
問(3)
思考の道筋とポイント
線分OA上では、波源Oから壁Aに向かう入射波と、壁Aで反射して波源Oの方向へ戻る反射波が重なり合います。これら2つの波は、同じ振動数、同じ波長、同じ振幅(減衰しないため)で互いに逆向きに進むため、定常波(定在波)が生じます。
壁Aでの反射は位相が変化しない(問題文の条件より、自由端反射と同様)ため、壁Aは定常波の腹(振幅が極大となる点)になります。 また、波源O自身も振動しているので、O点における状況も考慮する必要があります。OとO’からの波の干渉として考えると、OA上の各点で定常波の振幅が決まります。定常波の腹と腹の間隔、節と節の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。
図2には、横軸にOからの距離、縦軸に水面の変位をとり、ある瞬間の定常波の波形(振幅の包絡線)を描きます。
この設問における重要なポイント
- 逆向きに進む同じ波の重ね合わせで「定常波(定在波)」が生じる。
- 壁Aは自由端反射なので、定常波の「腹」となる。
- 定常波の腹と腹(節と節)の間隔は \(\lambda/2\)。腹と隣の節の間隔は \(\lambda/4\)。
- O点とO’(鏡像波源)からの波の干渉として、OA上の各点の振幅を決定する。
- 腹での振幅は元の進行波の振幅の2倍(ここでは \(2a\))。節での振幅は0。
具体的な解説と立式
線分OA上で見られる波は、波源Oから右向きに進む入射波と、壁Aで反射されて左向きに進む反射波の合成波です。これら2つの波は振幅、波長、振動数が等しく進行方向が逆なので、定常波(または定在波)が形成されます。
壁A(Oからの距離 \(x = \frac{3}{2}\lambda\))は、位相が変わらない反射(自由端反射)をするため、定常波の腹になります。 この腹では、振幅が最大(元の波の振幅 \(a\) の2倍である \(2a\))となります。
定常波の腹と節の位置を特定します。
波源Oと鏡像波源O’からの距離の差を考えます。OA上の点P(Oからの距離を \(x\)、\(0 \le x \le \frac{3}{2}\lambda\))について、
\(OP = x\)。
O’はOの鏡像なので、壁までの距離はOと同じ \(\frac{3}{2}\lambda\)。よってOからO’までの水平距離は \(3\lambda\)。
OA上の点P(Oからの距離 \(x\)) について、O’Pは、壁までの距離が \(\frac{3}{2}\lambda – x\)。O’から壁までの距離が \(\frac{3}{2}\lambda\)。
点Pと鏡像O’との水平距離は \(\frac{3}{2}\lambda + (\frac{3}{2}\lambda – x) = 3\lambda – x\) ではなく、点Pから壁までの距離は \(\frac{3}{2}\lambda – x\)、O’から壁までの距離は \(\frac{3}{2}\lambda\)。よって、\(O’P = (\frac{3}{2}\lambda – x) + \frac{3}{2}\lambda = 3\lambda -x\)。これはPがOと壁の間にある場合。
正しくは、Oを原点とし、壁を \(x=\frac{3}{2}\lambda\) とすると、O’は \(x=3\lambda\) の位置。OA上の点Pの座標は \(x\) (\(0 \le x \le \frac{3}{2}\lambda\))。
\(OP = x\)。\(O’P = |3\lambda – x| = 3\lambda – x\) (\(x \le \frac{3}{2}\lambda < 3\lambda\)のため)。
経路差 \(\Delta L = |O’P – OP| = |(3\lambda – x) – x| = |3\lambda – 2x|\)。
強め合い(腹)の条件: \(|3\lambda – 2x| = m\lambda\)
弱め合い(節)の条件: \(|3\lambda – 2x| = (m+\frac{1}{2})\lambda\)
腹の位置を探します:
- \(m=0\): \(|3\lambda – 2x| = 0\)。これから \(3\lambda – 2x = 0\)、つまり \(x = \frac{3}{2}\lambda\) (点A)。振幅 \(2a\)。
- \(m=1\): \(|3\lambda – 2x| = \lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm\lambda\)。
\(3\lambda – 2x = \lambda\) のとき \(2x = 2\lambda\)、つまり \(x = \lambda\)。振幅 \(2a\)。
\(3\lambda – 2x = -\lambda\) のとき \(2x = 4\lambda\)、つまり \(x = 2\lambda\) (これは \(0 \le x \le \frac{3}{2}\lambda\) の範囲外)。 - \(m=2\): \(|3\lambda – 2x| = 2\lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm 2\lambda\)。
\(3\lambda – 2x = 2\lambda\) のとき \(2x = \lambda\)、つまり \(x = \frac{\lambda}{2}\)。振幅 \(2a\)。
\(3\lambda – 2x = -2\lambda\) のとき \(2x = 5\lambda\)、つまり \(x = \frac{5}{2}\lambda\) (範囲外)。 - \(m=3\): \(|3\lambda – 2x| = 3\lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm 3\lambda\)。
\(3\lambda – 2x = 3\lambda\) のとき \(2x = 0\)、つまり \(x = 0\) (点O)。振幅 \(2a\)。
\(3\lambda – 2x = -3\lambda\) のとき \(2x = 6\lambda\)、つまり \(x = 3\lambda\) (範囲外)。
よって、腹の位置は \(x = 0, \frac{\lambda}{2}, \lambda, \frac{3}{2}\lambda\)。
節の位置を探します:
- \(m=0\): \(|3\lambda – 2x| = \frac{1}{2}\lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm \frac{1}{2}\lambda\)。
\(3\lambda – 2x = \frac{1}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{5}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{5}{4}\lambda\)。振幅 \(0\)。
\(3\lambda – 2x = -\frac{1}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{7}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{7}{4}\lambda\) (範囲外)。 - \(m=1\): \(|3\lambda – 2x| = \frac{3}{2}\lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm \frac{3}{2}\lambda\)。
\(3\lambda – 2x = \frac{3}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{3}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{3}{4}\lambda\)。振幅 \(0\)。
\(3\lambda – 2x = -\frac{3}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{9}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{9}{4}\lambda\) (範囲外)。 - \(m=2\): \(|3\lambda – 2x| = \frac{5}{2}\lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm \frac{5}{2}\lambda\)。
\(3\lambda – 2x = \frac{5}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{1}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{\lambda}{4}\)。振幅 \(0\)。
\(3\lambda – 2x = -\frac{5}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{11}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{11}{4}\lambda\) (範囲外)。
よって、節の位置は \(x = \frac{\lambda}{4}, \frac{3}{4}\lambda, \frac{5}{4}\lambda\)。
図2にこの定常波の様子を描くと、横軸がOからの距離、縦軸が水面の変位となります。
O (\(x=0\)) で腹(振幅\(2a\))、\(x=\lambda/4\) で節、\(x=\lambda/2\) で腹、\(x=3\lambda/4\) で節、\(x=\lambda\) で腹、\(x=5\lambda/4\) で節、A (\(x=3\lambda/2\)) で腹となります。
作図は、これらの点を通り、腹の振幅が \(2a\) (または \(-2a\))、節の振幅が0となるような滑らかな曲線で結びます。模範解答の図のスタイルに合わせ、最大振幅の包絡線とその反転した包絡線(半周期後の様子)を描きます。
使用した物理公式
- 定常波の性質(腹・節の間隔)
- 波の干渉条件(強め合い・弱め合い)
上記の「具体的な解説と立式」セクションで腹と節の位置を特定しました。
腹: \(x = 0, \frac{\lambda}{2}, \lambda, \frac{3}{2}\lambda\)
節: \(x = \frac{\lambda}{4}, \frac{3}{4}\lambda, \frac{5}{4}\lambda\)
これに基づいて図2に波形を描きます。(模範解答の図を参照し、O, \(\lambda/2\), \(\lambda\), \(3\lambda/2\) を腹とし、\(\lambda/4\), \(3\lambda/4\), \(5\lambda/4\) を節とする波形(振幅 \(2a\))を実線と点線で描く。)
線分OA上では、波源Oから壁に向かう波と、壁で反射して戻ってくる波が重なり合います。このように同じ種類の波が反対方向に進んで重なると、「定常波」という特別な波ができます。定常波は、波形が進まず、その場で振動するように見える波です。
定常波には、まったく振動しない「節」と、最も大きく振動する「腹」ができます。壁Aは自由に振動できる端(位相変化なしの反射)なので、「腹」になります。波源Oもここでは「腹」になります。腹と腹の間隔は半波長 (\(\lambda/2\))、腹と隣の節の間隔は1/4波長 (\(\lambda/4\)) です。
これをもとに、OA (\(0\) から \(\frac{3}{2}\lambda\) まで) の間にできる腹と節の位置を見つけます。腹では振幅が元の波の2倍 (\(2a\)) になり、節では振幅が0になります。これらの点を滑らかにつないで、ある瞬間の波の形(と、その半周期後の形)を図に描きます。
線分OA上で見られる波は定常波(または定在波)です。
作図は、腹が \(x=0, \lambda/2, \lambda, 3\lambda/2\) に、節が \(x=\lambda/4, 3\lambda/4, 5\lambda/4\) にくるように、振幅 \(2a\) の波形を描きます。これは模範解答の図と一致しています。
問(4)
思考の道筋とポイント
O点より左側の半直線OC上で見られる合成波を考えます。この直線上の任意の点をPとし、Oからの距離を \(x_P\) (\(x_P > 0\)) とします。この点Pには、波源Oからの直接波と、鏡像波源O’からの波が到達します。OとO’は同位相波源です。
P点における経路差 \(O’P – OP\) を計算し、その値が常にどうなるかを調べます。これにより、OC上の全ての点で強め合うか弱め合うか、あるいは場所によって異なるかが分かります。また、Oからの波もO’からの波もOC上では同じ向き(左向き)に進むため、合成波も進行波となります。
この設問における重要なポイント
- 半直線OC上の任意の点Pでの経路差 \(O’P – OP\) を考える。
- O’の位置はOから右に \(3\lambda\)。PはOから左に \(x_P\)。
- Oからの波とO’からの波は、OC上で同方向に進む。
具体的な解説と立式
半直線OC上の任意の点をPとします。波源Oを原点 \(x=0\) とし、Cの方向を負のx軸方向とします。点Pの座標を \(-x_P\) (\(x_P \ge 0\)) とすると、\(OP = x_P\)。
鏡像波源O’は、Oから壁と反対側、つまり正のx軸方向に \(OO’ = 3\lambda\) の位置にあると考えられます。
PはOの左側にあるので、\(O’P = O’O + OP = 3\lambda + x_P\)。
P点における経路差 \(\Delta L_P\) は、
$$\Delta L_P = O’P – OP = (3\lambda + x_P) – x_P = 3\lambda \quad \cdots ④$$
この経路差 \(3\lambda\) は波長の整数倍(\(m=3\))なので、半直線OC上の全ての点で波は強め合います。
波源Oからの波と鏡像波源O’からの波(反射波)は、半直線OC上ではいずれも同じ方向(Oから遠ざかる方向、すなわち左向き)に進む進行波です。
これらの波が強め合うため、合成波は振幅が \(a+a=2a\) となり、左向きに進む進行波となります。
使用した物理公式
- 波の干渉条件(強め合い)
上記「具体的な解説と立式」セクションで示したように、経路差は常に \(3\lambda\) です。
これは \(m=3\) の強め合いの条件を満たします。
Oからの波とO’からの波は同方向に進むため、合成波は進行波となります。
振幅は \(a+a=2a\)。
O点の左側の直線OC上で波がどうなるかを考えます。この直線上のどの点Pを選んでも、波源Oから点Pまでの距離と、鏡像波源O’から点Pまでの距離の差は、常にOとO’の間の距離である \(3\lambda\) となります。
この距離の差 \(3\lambda\) は、波長のちょうど3倍なので、Oからの波とO’からの波(壁で反射した波)は常に同じタイミングで重なり合い、強め合います。
また、Oからの波もO’からの波(反射波)も、この直線OC上では同じ左向きに進んでいます。そのため、これらが合わさった波も、振幅が元の波の2倍 (\(2a\)) になった左向きに進む進行波となります。
合成波は、「振幅が \(2a\) で、波源Oから遠ざかる向き(左向き)に進む進行波」となります。模範解答の記述「振幅2aで左向きに進む進行波となる」と一致しており、20字程度という指定にも概ね収まります。
問(5)
思考の道筋とポイント
線分OB上で弱め合う点の数を数えます。波源Oと鏡像波源O’からの波の干渉と考え、弱め合いの条件は経路差 \(|O’Q – OQ| = (m+1/2)\lambda\) を満たすことです。点Qを線分OB上の点とし、Oからの距離を \(x\) (\(0 \le x \le 4\lambda\)) とおきます。このとき、\(OQ = x\)、\(O’Q = \sqrt{(OO’)^2 + (OQ)^2} = \sqrt{(3\lambda)^2 + x^2}\) となります。
この経路差が弱め合いの条件を満たすような整数 \(m \ge 0\) が何個存在し、かつそのときの \(x\) が \(0 \le x \le 4\lambda\) の範囲に入るかを調べます。
模範解答の別解1のアプローチがこれに該当します。
別解2のアプローチは、経路差が取りうる値の範囲を考え、その範囲内に弱め合い条件を満たす \((m+1/2)\lambda\) がいくつあるかを数えるものです。これはより簡潔です。
この設問における重要なポイント
- 弱め合いの干渉条件: 経路差 \( = (m+1/2)\lambda\)。
- 線分OB上の点Qに対する経路差 \(O’Q – OQ\) を \(x = OQ\) の関数として表す。
- \(0 \le x \le 4\lambda\) の範囲で条件を満たす整数 \(m\) の個数を数える。
- 経路差の取りうる範囲を調べる方法も有効。
具体的な解説と立式
線分OB上の任意の点をQとします。Oを原点とし、Bの方向をy軸の正方向とすると、Qの座標は \((0, x)\) と書けます。ここで \(0 \le x \le 4\lambda\)。
波源Oの座標は \((0,0)\)。鏡像波源O’の座標は \((3\lambda, 0)\) となります。
点Qへの経路は、\(OQ = x\)、\(O’Q = \sqrt{(3\lambda-0)^2 + (0-x)^2} = \sqrt{(3\lambda)^2 + x^2}\)。
経路差 \(\Delta L_Q = O’Q – OQ = \sqrt{9\lambda^2 + x^2} – x\)。
(\(O’Q \ge OQ\) は \(x \ge 0\) で明らか)
弱め合いの条件は、
$$\sqrt{9\lambda^2 + x^2} – x = \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda \quad (m=0, 1, 2, \dots) \quad \cdots ⑤$$
この式を満たす \(x\) が \(0 \le x \le 4\lambda\) の範囲に存在するような整数 \(m \ge 0\) の個数を数えます。
式を変形して \(x\) について解くと(模範解答の別解1と同様の変形)、
$$\sqrt{9\lambda^2 + x^2} = x + \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda$$
両辺を2乗します(右辺も \(x \ge 0\) なので正としてよい)。
$$9\lambda^2 + x^2 = x^2 + 2x\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda + \left(m+\frac{1}{2}\right)^2\lambda^2$$
$$9\lambda^2 = 2x\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda + \left(m+\frac{1}{2}\right)^2\lambda^2$$
\(\lambda\) で両辺を割ります(\(\lambda \ne 0\))。
$$9\lambda = 2x\left(m+\frac{1}{2}\right) + \left(m+\frac{1}{2}\right)^2\lambda$$
$$2x\left(m+\frac{1}{2}\right) = 9\lambda – \left(m+\frac{1}{2}\right)^2\lambda = \left[9 – \left(m+\frac{1}{2}\right)^2\right]\lambda$$
$$x = \frac{9 – (m+1/2)^2}{2(m+1/2)}\lambda = \frac{9 – (m+0.5)^2}{2m+1}\lambda \quad \cdots ⑥$$
この \(x\) が \(0 \le x \le 4\lambda\) を満たす \(m\) を探します。
使用した物理公式
- 波の干渉条件(弱め合い)
- 三平方の定理
式⑥に整数 \(m=0, 1, 2, \dots\) を代入し、\(0 \le x \le 4\lambda\) を満たすものを探します。
- \(m=0\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (0.5)^2}{1}\lambda = (9 – 0.25)\lambda = 8.75\lambda\)。
\(8.75\lambda > 4\lambda\) なので、これは範囲外です。 - \(m=1\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (1.5)^2}{2(1)+1}\lambda = \frac{9 – 2.25}{3}\lambda = \frac{6.75}{3}\lambda = 2.25\lambda = \frac{9}{4}\lambda\)。
\(0 \le \frac{9}{4}\lambda \le 4\lambda\) (すなわち \(0 \le 2.25 \le 4\)) を満たすので、これは1つ目の条件を満たす点です。 - \(m=2\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (2.5)^2}{2(2)+1}\lambda = \frac{9 – 6.25}{5}\lambda = \frac{2.75}{5}\lambda = 0.55\lambda = \frac{11}{20}\lambda\)。
\(0 \le \frac{11}{20}\lambda \le 4\lambda\) (すなわち \(0 \le 0.55 \le 4\)) を満たすので、これは2つ目の条件を満たす点です。 - \(m=3\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (3.5)^2}{2(3)+1}\lambda = \frac{9 – 12.25}{7}\lambda = \frac{-3.25}{7}\lambda\)。
\(x < 0\) となるため、不適です。これ以上の \(m\) でも分子が負になるため、解はありません。
したがって、条件を満たす \(m\) は \(m=1\) と \(m=2\) の2つです。よって、弱め合う点は2個あります。
線分OB上の点Qで波が弱め合う条件は、波源Oと鏡像波源O’からの距離の差が、半波長の奇数倍(例えば \(0.5\lambda, 1.5\lambda, 2.5\lambda, \dots\))になるときです。
OからQまでの距離を \(x\) とすると、O’からQまでの距離はピタゴラスの定理を使って \(\sqrt{(3\lambda)^2 + x^2}\) と表せます。
これらの距離の差が \((m+0.5)\lambda\) (\(m\)は0以上の整数)となるような \(x\) が、\(0\) から \(4\lambda\) の間(線分OB上)にいくつあるかを調べます。
計算してみると、\(m=1\) のとき(距離の差が \(1.5\lambda\))と \(m=2\) のとき(距離の差が \(2.5\lambda\))に対応する \(x\) が、\(0\) から \(4\lambda\) の範囲内に見つかります。したがって、弱め合う点は2個です。
線分OB上で弱め合う点は2個です。模範解答の別解1と一致する計算方法であり、結果も一致しています。
別解(5)-2: 経路差の範囲による方法
思考の道筋とポイント
線分OBの両端における経路差をまず計算します。
点O (\(x=0\)) における経路差: \(O’O – OO = 3\lambda – 0 = 3\lambda\)。
点B (\(x=4\lambda\)) における経路差: \(O’B – OB = 5\lambda – 4\lambda = \lambda\)。
点QがOからBへ移動するにつれて、経路差 \(\Delta L_Q = \sqrt{9\lambda^2+x^2}-x\) は \(3\lambda\) から \(\lambda\) へと連続的に減少します。
この \([\lambda, 3\lambda]\) の範囲内に、弱め合いの条件 \((m+1/2)\lambda\) を満たすものがいくつあるかを数えます。
この設問における重要なポイント
- 線分OBの両端(O点とB点)での経路差を求める。
- 経路差がその間で連続的に変化することを利用する。
- 弱め合いの条件 \((m+1/2)\lambda\) が、計算した経路差の範囲内にいくつ入るかを数える。
具体的な解説と立式
線分OB上で、点QがOにあるときの経路差 \(\Delta L_O\) は、
$$\Delta L_O = O’O – OO = 3\lambda – 0 = 3\lambda$$点QがBにあるときの経路差 \(\Delta L_B\) は、(2)より、$$\Delta L_B = O’B – OB = 5\lambda – 4\lambda = \lambda$$
点QがOからBへ移動する間、経路差 \(\Delta L_Q\) は \(3\lambda\) から \(\lambda\) まで連続的に減少します。
弱め合いの条件は、経路差が \(\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))となることです。
したがって、次の不等式を満たす整数 \(m\) の個数を探します。
$$\lambda \le \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda \le 3\lambda$$
(点Oと点Bは強め合いの点なので、厳密には \(\lambda < (m+1/2)\lambda < 3\lambda\) の範囲で考えますが、結果的に \(m+1/2\) が整数になることはないので、等号を含めても問題ありません。) 不等式の各項を \(\lambda\) (\(\lambda > 0\)) で割ると、
$$1 \le m+\frac{1}{2} \le 3$$各項から \(\frac{1}{2}\) を引くと、$$1 – \frac{1}{2} \le m \le 3 – \frac{1}{2}$$
$$0.5 \le m \le 2.5$$
使用した物理公式
- 波の干渉条件(弱め合い)
上記「具体的な解説と立式」で示した不等式 \(0.5 \le m \le 2.5\) を満たす整数 \(m\) は、
$$m = 1, 2$$
したがって、該当する \(m\) の値は2つです。
これは、弱め合う点が2個存在することを意味します。
\(m=1\) のとき、経路差は \(1.5\lambda\)。
\(m=2\) のとき、経路差は \(2.5\lambda\)。
これらは両方とも \([\lambda, 3\lambda]\) の範囲内にあります。
線分OB上で、波源Oと鏡像波源O’からの波が干渉して弱め合う点の数を考えます。
まず、線分の端であるO点でのOとO’からの距離の差は \(3\lambda\) です。もう一方の端であるB点での距離の差は \(\lambda\) です。
OB上の点をOからBへ動かしていくと、この「距離の差」は \(3\lambda\) から \(\lambda\) まで連続的に変化します。
波が弱め合うのは、距離の差が「半波長の奇数倍」、つまり \(0.5\lambda, 1.5\lambda, 2.5\lambda, 3.5\lambda, \dots\) となるときです。
このうち、\(3\lambda\) から \(\lambda\) の範囲に含まれるものを探すと、\(2.5\lambda\) と \(1.5\lambda\) の2つが見つかります。したがって、弱め合う点は2個あります。
線分OB上で弱め合う点は2個です。これは模範解答の別解2と一致しており、より簡潔な方法で同じ結論に至ります。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 波の反射と鏡像波源: 壁のような障害物による波の反射は、壁の向こう側に対称な位置にある「鏡像の波源」から波がきていると等価に扱える場合が多いです。特に平面での反射ではこの考え方が有効です。壁での反射で位相が変化するかしないか(固定端反射か自由端反射か)が、鏡像波源の位相をどう考えるかに影響します(本問では位相変化なし)。
- 波の干渉条件: 複数の波源からの波が重なるとき、各波源からの距離の差(経路差)によって強め合ったり弱め合ったりします。同位相の波源の場合、経路差が波長の整数倍なら強め合い、半波長の奇数倍なら弱め合います。この条件式を正確に覚えていることが基本です。
- 定常波(定在波): 同じ振幅・波長・振動数の波が互いに逆向きに進んで重なると、波形が進まずその場で振動するように見える定常波ができます。定常波には振幅が常に0の「節」と振幅が最大の「腹」が交互に現れ、腹と腹(または節と節)の間隔は \(\lambda/2\) です。自由端反射では反射点が腹になり、固定端反射では節になります。
- 波の基本的なパラメータ: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の関係 \(v=f\lambda\) は常に基本となります。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
- ヤングの実験のような、2つのスリットからの光の干渉。
- 薄膜による光の干渉(ただし、こちらは経路差だけでなく位相変化も重要になる)。
- 水面波だけでなく、音波や光波の干渉問題全般。
- マイクやスピーカーを複数設置したときの音の干渉。
- 直線状のアンテナから出る電波の干渉。
- 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
- 波源の特定: 干渉を考える場合、いくつの波源が関わっているのか、それらは実在の波源か、反射による鏡像波源かを見極める。
- 波源の位相関係: 各波源が同位相で振動しているのか、逆位相なのか、あるいは一定の位相差があるのかを確認する(反射で位相が反転するかどうかも含む)。これが干渉条件の式に影響する。
- 経路差の計算: 干渉を調べる点において、各波源からの距離を正確に計算し、その差(経路差)を求める。幾何学的な知識(三平方の定理など)が必要になることが多い。
- 条件式の適用: 計算した経路差と波長 \(\lambda\) を用いて、強め合い・弱め合いの条件式に当てはめる。
- 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
- 「位相が変化しない反射」は自由端反射と同じで、鏡像波源は元の波源と同位相。「位相が反転する反射」は固定端反射と同じで、鏡像波源は元の波源と逆位相と考える。
- 干渉縞や定常波の節・腹の間隔は波長 \(\lambda\) の半分(\(\lambda/2\))が基本単位となることが多い。
- 対称性を利用できる場合は積極的に利用する(例:鏡像波源)。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 経路差と光路差の混同(光の場合): この問題は水面波なので屈折率を考慮した光路差は出てきませんが、光の干渉では媒質が絡むと光路差(距離×屈折率)で考える必要があります。
- 干渉条件の式の混同: 同位相波源と逆位相波源で強め合い・弱め合いの条件式が入れ替わるので注意が必要です。本問は同位相として扱います。
- \(m\) の値の範囲: 干渉条件の \(m\) は通常 \(0, 1, 2, \dots\) という非負の整数ですが、問題によっては負の整数を含む場合や、\(m=0\) が特別な意味を持つ場合(例:中央の明線)があるので、定義をしっかり確認する。
- 定常波の腹と節の位置の誤解: 自由端は腹、固定端は節という基本を間違えないこと。また、波源自身が腹や節になるとは限らない(波源の扱いによる)。本問(3)ではO点も腹として扱って良いケースです。
- 問(5)での数え上げミス: 範囲(線分OB上)を考慮せず、条件を満たす \(m\) を全て挙げてしまったり、逆に範囲の境界条件を見誤って少なく数えたりするミス。経路差の最大値・最小値を把握することが有効。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
- 鏡像波源の作図: 壁による反射を考える際に、まず鏡像波源O’を図に描き込むことで、問題が2点波源の干渉としてシンプルに捉えられます(図1の右側のLECTURE図が参考になる)。
- 波面の広がりと重なり: OとO’から同心円状に広がる波の山と谷が、空間の各点でどのように重なるかをイメージする。強め合いの線(腹線)や弱め合いの線(節線)が双曲線状に形成される様子を大まかにでも掴むと良い(LECTURE(5)の図)。
- 定常波の波形: 問(3)では、入射波と反射波が重なってできる定常波の、ある瞬間の形とその振幅の包絡線を図示することが求められました。腹と節の位置を正確にプロットし、滑らかな曲線で結ぶことが重要です。
- 図を描く際に注意すべき点は何か:
- 座標軸の設定: 距離や位置関係を明確にするために、適切に原点や軸を設定する。
- 長さのスケール感: 波長 \(\lambda\) を基準として、与えられた距離(\(OA=\frac{3}{2}\lambda, OB=4\lambda\) など)を比較的正確に図に反映させることで、幾何学的な関係が見えやすくなる。
- 干渉縞や定常波の節・腹の位置を、波長との関係(例:\(\lambda/2\) ごと)を意識して描く。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- \(v = f\lambda\):
- 選定理由: 波の速さ、振動数、波長の関係を表す最も基本的な式だから。
- 適用根拠: 問(1)で時間と距離から振動数(またはその逆数)を求める際に使用。
- 経路差に基づく干渉条件:
- 選定理由: 複数の波源からの波が重なる点の振動の様子(強め合い/弱め合い)を決定するため。
- 適用根拠: 問(2), (4), (5)で、点B、OC上の点、OB上の点における干渉状態を判断するために使用。波源が同位相(反射で位相変化なし)であることを確認した上で適用。
- 定常波の概念と性質:
- 選定理由: 逆向きに進む同じ波の重ね合わせによって特有の波形が生じるため。
- 適用根拠: 問(3)の線分OA上での波の様子を記述・図示するために使用。自由端反射が腹になるという知識も重要。
- 公式をただ暗記するのではなく、それがどのような物理現象や条件下で成り立つのかを理解した上で、問題の状況に合わせて正しく選択・適用する訓練が重要です。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 時間の計算: 鏡像波源O’を設定 \(\rightarrow\) O’Bの距離を三平方で計算 \(\rightarrow\) \(t = \text{距離}/(f\lambda)\) で時間を求める。
- (2) B点の干渉: OB, O’Bの距離を計算 \(\rightarrow\) 経路差 \(\Delta L = O’B – OB\) を計算 \(\rightarrow\) \(\Delta L\) と \(m\lambda\) の関係から強め合い/弱め合いを判断。
- (3) OA上の定常波: 定常波であることを認識 \(\rightarrow\) 壁Aが腹、Oも腹と判断 \(\rightarrow\) 腹と節の位置を \(\lambda/4, \lambda/2\) の間隔で決定 \(\rightarrow\) 振幅 \(2a\) で波形を作図。
- (4) OC上の合成波: OC上の任意の点Pで経路差 \(O’P-OP\) を計算 \(\rightarrow\) 経路差が常に \(3\lambda\) であることを確認 \(\rightarrow\) 常に強め合い、かつ同方向の進行波なので振幅 \(2a\) の進行波と結論。
- (5) OB上の弱め合う点:
- (方法1) OB上の点Q(\(OQ=x\))で経路差 \(\Delta L_Q = \sqrt{(3\lambda)^2+x^2}-x\) を計算 \(\rightarrow\) \(\Delta L_Q = (m+1/2)\lambda\) を \(x\) について解き、\(0 \le x \le 4\lambda\) を満たす整数 \(m\) の個数を数える。
- (方法2) OBの両端O, Bでの経路差を求める (\(3\lambda\) と \(\lambda\)) \(\rightarrow\) 経路差が \([\lambda, 3\lambda]\) の範囲で変化することを確認 \(\rightarrow\) この範囲に入る \((m+1/2)\lambda\) の値を数える。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 平方根の計算: 三平方の定理を使う際の計算(特に \(\lambda^2\) の扱い)を正確に。\( \sqrt{25\lambda^2} = 5\lambda \) であり、\(25\lambda\) ではない。
- 経路差の引き算の順序: 絶対値を取るか、常に大きい方から小さい方を引くように意識する。
- \(m\) の取り扱い: \(m\) が0から始まる整数であることを意識し、条件を満たす \(m\) を丁寧に数え上げる。
- 範囲の確認: 問(5)のように特定の線分上で点を考える場合、得られた解(\(x\) の値など)がその範囲内にあるかしっかり確認する。範囲外のものは解として不適切。
- 図の活用: 複雑な幾何学的配置では、図に補助線を入れたり、数値を書き込んだりすることで、計算の助けとなり、ミスを減らせる。
解の吟味の習慣化
- 物理的な妥当性:
- 問(1)の時間は正の値か。
- 問(2)で強め合い/弱め合いの判断は、経路差が波長の何倍になっているかという具体的な数値と整合しているか。
- 問(3)の定常波の腹と節の配置は、自由端(腹)の条件や \(\lambda/2\) の間隔と矛盾しないか。O点も腹になるのは妥当か。
- 問(5)で得られた弱め合う点の個数が、極端に多すぎたり少なすぎたりしないか。例えば、経路差の最大と最小の間に、半波長の奇数倍がいくつ入るかという感覚と合うか。
- 特殊なケースでの確認:
- もし \(OA=0\)(波源が壁際)なら、OとO’が重なり、OA上は常に強め合う(振幅2aの定常波)。
- もし壁が非常に遠く (\(OA \to \infty\)) にあれば、反射波の影響は小さくなり、ほぼOからの進行波のみになるはず。
- 単位の一貫性: 時間、距離、速さ、波長、振動数の単位が物理法則の式の中で正しく対応しているか。
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