問題1 波の干渉 (奈良女子大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている「経路差の範囲を考察する幾何学的解法」を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 設問(5)の別解1: 座標設定による代数的解法
- 模範解答の別解1に対応します。点Qの位置を変数 \(x\) で置き、経路差の方程式を厳密に解くことで、条件を満たす解の個数と位置を特定します。
- 設問(5)の別解2: 三角不等式を用いた範囲評価
- 模範解答の別解2に対応します。三角形の成立条件(2辺の和は他の一辺より長い)を利用して、計算することなく経路差の上限を瞬時に導きます。
- 設問(5)の後の体系的別解: 波動関数を用いた干渉条件の一括導出
- 波の式(正弦波) \(y = A \sin(\omega t – kx)\) を設定し、重ね合わせの原理(加法定理)を用いて合成波の式を導出します。これにより、定常波の形成(問3)、進行波の増幅(問4)、干渉条件(問5)を統一的な視点から一括して説明します。
- 設問(5)の別解1: 座標設定による代数的解法
- 上記の別解が有益である理由
- 代数的解法: 幾何学的な直感が働きにくい場合でも、計算力だけで確実に正解に到達できる汎用性の高い方法です。
- 三角不等式: 計算量を大幅に削減でき、検算やマーク式試験での時短テクニックとして極めて有効です。
- 波動関数: 「強め合い=経路差が波長の整数倍」という公式の起源を数式から理解することで、位相のずれがある場合などの応用問題に対応できる基礎力を養います。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「壁による波の反射と干渉」です。
波源から直接届く波と、壁で反射してから届く波が重なり合い、場所によって強め合ったり弱め合ったりする現象を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 鏡像法(虚波源): 壁での反射波は、壁の向こう側にある「虚波源」から出た波とみなすことができます。
- 自由端反射: 波が壁で反射する際、位相が変化しない(山が山のまま反射する)場合、波源と虚波源は「同位相」になります。
- 波の干渉条件: 2つの同位相波源からの距離の差(経路差)が、波長 \(\lambda\) の整数倍なら強め合い、半波長の奇数倍なら弱め合います。
- 定常波: 逆向きに進む同振幅・同波長の波が重なると、進まない波(定常波)ができます。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、鏡像法を用いて反射波の経路長を直線の距離として計算します。
- (2)では、直接波と反射波の経路差を求め、干渉条件に当てはめます。
- (3)では、入射波と反射波が作る定常波の腹と節の位置を作図します。
- (4)では、波源の反対側(壁と逆側)での波の重なり方を考察します。
- (5)では、線分OB上で経路差がどのように変化するかを調べ、弱め合いの条件を満たす点の個数を数えます。
問(1)
思考の道筋とポイント
波が壁で反射して点Bに届くまでの時間は、波の速さが一定なので、波が進んだ距離(経路長)を求めれば計算できます。
反射の法則により、入射角と反射角は等しくなります。この性質を利用すると、壁の向こう側に点Oと対称な点(虚波源 \(\text{O}’\))を取ることで、折れ線経路 \(\text{O} \to \text{壁} \to \text{B}\) の長さを、直線 \(\text{O}’\text{B}\) の長さに置き換えることができます(鏡像法)。
この設問における重要なポイント
- 虚波源の設定: 壁に関して点Oと対称な点 \(\text{O}’\) を取ります。
- 距離の等価性: \((\text{Oから壁までの距離}) + (\text{壁からBまでの距離}) = \text{O}’\text{B}\) です。
具体的な解説と立式
壁に関して点Oと対称な点 \(\text{O}’\) を取ります。
線分OAは壁に垂直で長さ \(\frac{3}{2}\lambda\) なので、\(\text{O}’\text{A}\) も \(\frac{3}{2}\lambda\) です。
したがって、\(\text{OO}’\) の長さは以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\text{OO}’ &= \text{OA} + \text{O}’\text{A}
\end{aligned}
$$
求める経路長 \(L\) は線分 \(\text{O}’\text{B}\) の長さです。
直角三角形 \(\text{OO}’\text{B}\) に着目すると、底辺は \(\text{OO}’\)、高さは \(\text{OB} = 4\lambda\) です。
三平方の定理より、\(L\) を求める式を立てます。
$$
\begin{aligned}
L &= \sqrt{(\text{OO}’)^2 + (\text{OB})^2}
\end{aligned}
$$
波の速さ \(v\) は、振動数 \(f\) と波長 \(\lambda\) を用いて表されます。
$$
\begin{aligned}
v &= f\lambda
\end{aligned}
$$
求める時間 \(t\) は、距離を速さで割ったものです。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{L}{v}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 三平方の定理: \(c = \sqrt{a^2 + b^2}\)
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)
- 等速運動: \(t = \frac{x}{v}\)
まず \(\text{OO}’\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\text{OO}’ &= \frac{3}{2}\lambda + \frac{3}{2}\lambda \\[2.0ex]
&= 3\lambda
\end{aligned}
$$
次に経路長 \(L\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
L &= \sqrt{(3\lambda)^2 + (4\lambda)^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{9\lambda^2 + 16\lambda^2} \\[2.0ex]
&= \sqrt{25\lambda^2} \\[2.0ex]
&= 5\lambda
\end{aligned}
$$
これを時間の式に代入します。
$$
\begin{aligned}
t &= \frac{5\lambda}{f\lambda} \\[2.0ex]
&= \frac{5}{f}
\end{aligned}
$$
波が壁に当たって跳ね返る様子は、鏡に映った光と同じように考えられます。
壁の奥に「もう一つの波源(虚波源)」があると想像すると、波はそこからまっすぐB点に向かってくるとみなせます。
この「まっすぐな距離」を三平方の定理(3:4:5の直角三角形)で計算すると、波長5つ分(\(5\lambda\))の距離だと分かりました。
波は1秒間に \(f\) 回振動し、1回で \(\lambda\) 進むので、速さは \(f\lambda\) です。
距離 \(5\lambda\) を速さ \(f\lambda\) で進むので、かかる時間は \(5/f\) 秒となります。
答えは \(\frac{5}{f}\) です。
単位を確認すると、\([1/\text{Hz}] = [\text{s}]\) となり、時間の次元を持っています。
また、距離 \(5\lambda\) は波長5つ分であり、振動数 \(f\) (1秒あたりの波の数)で割ることで、波5つが進むのにかかる時間が求まるという物理的意味とも合致します。
問(2)
思考の道筋とポイント
点Bには、Oから直接来る波と、壁で反射して来る波の2つが届きます。
この2つの波が強め合うか弱め合うかは、波源からの距離の差(経路差)で決まります。
反射波は虚波源 \(\text{O}’\) から出た波とみなせるため、経路差は \(\text{O}’\text{B} – \text{OB}\) となります。
また、問題文に「反射されるとき位相は変化しない」とあるため、Oと \(\text{O}’\) は同位相の波源として扱えます。
この設問における重要なポイント
- 経路差: \(\Delta L = |(\text{反射波の距離}) – (\text{直接波の距離})|\)
- 干渉条件(同位相):
- 強め合い: \(\Delta L = m\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))
- 弱め合い: \(\Delta L = (m + \frac{1}{2})\lambda\)
具体的な解説と立式
反射波の経路長は(1)で求めた \(\text{O}’\text{B} = 5\lambda\) です。
直接波の経路長は \(\text{OB} = 4\lambda\) です。
経路差 \(\Delta L\) を立式します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= \text{O}’\text{B} – \text{OB}
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 波の干渉条件(同位相): \(|l_1 – l_2| = m\lambda\) なら強め合い
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= 5\lambda – 4\lambda \\[2.0ex]
&= \lambda
\end{aligned}
$$
これは波長 \(\lambda\) の整数倍(\(m=1\))です。
したがって、波は強め合います。
B点には、「4歩(\(4\lambda\))で来た波」と、「5歩(\(5\lambda\))で来た波」が同時に届きます。
その差はちょうど1歩分(\(1\lambda\))です。
波は1歩ごとに山と谷を繰り返すので、1歩分のズレなら「山と山」「谷と谷」がぴったり重なります。
だから、波は協力して大きくなり、強め合います。
経路差が \(1\lambda\) なので強め合います。
もし経路差が \(0.5\lambda\) であれば、山と谷が重なって打ち消し合いますが、今回は整数倍なので位相が揃い、振幅が最大になる条件を満たしています。
問(3)
思考の道筋とポイント
線分OA上では、Oから壁に向かう入射波(右向き)と、壁で反射した反射波(左向き)が重なり合い、定常波が形成されます。
壁(点A)での反射は「位相が変化しない(自由端反射)」なので、壁の位置は定常波の「腹」になります。
腹と腹(または節と節)の間隔は半波長 \(\lambda/2\) であることを利用して、A点からO点に向かって腹と節の位置を特定していきます。
この設問における重要なポイント
- 自由端反射: 反射点は定常波の「腹」になります。
- 定常波の間隔: 隣り合う腹と腹、節と節の間隔は \(\lambda/2\) です。腹と節の間隔は \(\lambda/4\) です。
- 振幅: 入射波の振幅が \(a\) なので、定常波(腹)の振幅は \(2a\) になります。
具体的な解説と立式
点Aは腹です。
OAの長さは \(\frac{3}{2}\lambda = 1.5\lambda\) です。
AからOに向かって、\(\lambda/2\) ごとに腹ができます。
腹の位置をAからの距離 \(x\) で表すと、以下の位置になります。
$$
\begin{aligned}
x &= 0 \quad (\text{点A: 腹}) \\[2.0ex]
x &= \frac{\lambda}{2} \quad (\text{腹}) \\[2.0ex]
x &= \lambda \quad (\text{腹}) \\[2.0ex]
x &= \frac{3}{2}\lambda \quad (\text{点O: 腹})
\end{aligned}
$$
節の位置は、腹と腹の中間(Aから \(\lambda/4, 3\lambda/4, 5\lambda/4\))になります。
点Oも腹になることに注意して図を描きます。
使用した物理公式
- 定常波の腹の間隔: \(\frac{\lambda}{2}\)
(計算は上記の位置特定に含まれます)
図を描く際は以下の点に注意します。
1. 点Aでの変位が最大(振幅 \(2a\))になるように描く。
2. 点Oでの変位も最大(振幅 \(2a\))になるように描く。
3. その間に2つの腹と3つの節を描く。
4. 包絡線(振幅の最大値をつないだ線)を描くのが一般的です。
壁で波が自由にはね返る場合、壁の場所では波が一番大きく揺れます(腹)。
そこから半波長(\(0.5\lambda\))離れるごとに、また大きく揺れる場所(腹)が現れます。
壁から \(1.5\lambda\) 離れた波源Oまでの間に、\(0.5\lambda\) はちょうど3つ入ります。
つまり、壁(A)、0.5\(\lambda\)地点、1.0\(\lambda\)地点、1.5\(\lambda\)地点(O)のすべてが「腹」になります。
その間には全く揺れない「節」があります。
これを図にすると、ラグビーボールが3つ並んだような形になります。
点Aと点Oが共に腹となり、その間に腹が2つ、節が3つある定常波の図になります。振幅は \(2a\) です。
両端(OとA)が腹になることは、OA間の距離 \(1.5\lambda\) が半波長 \(0.5\lambda\) の整数倍(3倍)であることと整合しており、物理的に正しい定常波のパターンです。
線分OA上で定常波と呼ばれる。
問(4)
思考の道筋とポイント
Oより左側の領域(OC上)を考えます。
ここには、Oから左へ進む直接波と、壁で反射して左へ進む反射波(虚波源 \(\text{O}’\) から出た波)が存在します。
この2つの波は「同じ向き(左向き)」に進みます。
任意の点Pにおける2つの波源からの距離差(経路差)を考え、干渉の状態を判断します。
この設問における重要なポイント
- 進行方向: 2つの波は共に左へ進むため、定常波ではなく「進行波」になります。
- 経路差の恒等性: OC上の任意の点Pについて、\(\text{O}’\text{P} – \text{OP}\) は常に一定です。
具体的な解説と立式
OC上の任意の点Pをとります。
PはOの左側にあるので、O、P、A、\(\text{O}’\) は一直線上にこの順(あるいはP, O, A, O’)で並んでいます。
虚波源 \(\text{O}’\) からPまでの距離 \(\text{O}’\text{P}\) と、実波源OからPまでの距離 \(\text{OP}\) の差(経路差 \(\Delta L\))を考えます。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= \text{O}’\text{P} – \text{OP}
\end{aligned}
$$
図より、\(\text{O}’\text{P} = \text{O}’\text{O} + \text{OP}\) なので、これを代入します。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= (\text{O}’\text{O} + \text{OP}) – \text{OP} \\[2.0ex]
&= \text{O}’\text{O}
\end{aligned}
$$
(1)より \(\text{O}’\text{O} = 3\lambda\) です。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= 3\lambda
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 干渉条件: 経路差 \(m\lambda\) なら強め合い
経路差は場所によらず常に \(3\lambda\) (整数倍)です。
したがって、OC上のどこでも波は常に強め合います。
振幅 \(a\) の波が2つ重なって強め合うので、合成波の振幅は \(2a\) になります。
また、逆向きの波ではないので定常波にはならず、左向きに進む進行波になります。
Oの左側では、Oから出た波と、壁から跳ね返ってきた波が、仲良く並んで左へ進んでいきます。
壁から跳ね返ってきた波は、Oから出た波より常に \(3\lambda\) だけ遅れてついてきます。
遅れがちょうど波長3つ分なので、波の形(山と谷)はぴったり重なります。
その結果、常に高さが2倍(振幅 \(2a\))になった大きな波が、左へ向かって進んでいきます。
振幅 \(2a\) の左向きに進む進行波となります。
経路差が一定であるため、干渉の状態(強め合い)は場所によって変化せず、常に振幅最大の波が伝わっていくという結果は物理的に妥当です。
問(5)
思考の道筋とポイント
線分OB上で、強め合い・弱め合いがどのように分布するかを調べます。
干渉の状態は経路差 \(\Delta L = \text{O}’\text{Q} – \text{OQ}\) で決まります。
点QがOからBまで移動するとき、この経路差がどのような値を取り、その中に「弱め合いの条件(半波長の奇数倍)」を満たすものがいくつあるかを数えます。
この設問における重要なポイント
- 経路差の変化: 点Oでの経路差と、点Bでの経路差を計算し、その間の変化(単調減少)を考えます。
- 弱め合いの条件: \(\Delta L = 0.5\lambda, 1.5\lambda, 2.5\lambda, \dots\)
具体的な解説と立式
線分OB上の点Qにおける経路差 \(\Delta L\) を考えます。
1. 点O(始点)の場合:
直接波の距離は \(0\)、反射波の距離は \(\text{O}’\text{O} = 3\lambda\) です。
$$
\begin{aligned}
\Delta L_{\text{O}} &= 3\lambda – 0 \\[2.0ex]
&= 3\lambda
\end{aligned}
$$
2. 点B(終点)の場合:
(2)で求めた通り、経路差は \(\lambda\) です。
$$
\begin{aligned}
\Delta L_{\text{B}} &= \lambda
\end{aligned}
$$
点QがOからBへ移動すると、三角形 \(\text{OO}’\text{Q}\) の形状変化から、経路差 \(\text{O}’\text{Q} – \text{OQ}\) は連続的かつ単調に減少することが分かります(幾何学的に、\(\text{O}’\text{Q}\) と \(\text{OQ}\) の差は、Qが \(\text{O}’\text{O}\) の延長線上にあるとき最大で、離れるほど小さくなります)。
したがって、経路差 \(\Delta L\) の取りうる値の範囲は以下の通りです。
$$
\begin{aligned}
\lambda \le \Delta L \le 3\lambda
\end{aligned}
$$
この範囲内で、弱め合いの条件 \(\Delta L = (m + \frac{1}{2})\lambda\) を満たすものを探します。
使用した物理公式
- 弱め合いの条件: \(\Delta L = (m + 0.5)\lambda\)
範囲 \(1.0\lambda \le \Delta L \le 3.0\lambda\) に含まれる \(X.5\lambda\) の形の値を列挙します。
- \(1.5\lambda\) (\(m=1\))
- \(2.5\lambda\) (\(m=2\))
の2つが存在します。
\(0.5\lambda\) は範囲外、\(3.5\lambda\) も範囲外です。
O点では、反射波は直接波より \(3\lambda\) 遅れています(強め合い)。
B点では、反射波は直接波より \(1\lambda\) 遅れています(強め合い)。
OからBへ移動するにつれて、遅れ(経路差)は \(3\lambda\) から \(1\lambda\) へとスムーズに減っていきます。
この途中には、遅れが \(2.5\lambda\) になる場所と、\(1.5\lambda\) になる場所が必ず1回ずつあります。
遅れが「整数+0.5」倍になる場所では波が打ち消し合うので、この2箇所が弱め合う点になります。
弱め合う点は2つです。
経路差が \(3\lambda\) から \(1\lambda\) まで変化する間に、半波長の奇数倍(\(2.5\lambda, 1.5\lambda\))を2回通過することは数値的に明らかであり、物理的にも妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
幾何学的な考察(単調減少など)に頼らず、数式だけで解く方法です。
OB上に座標 \(x\) を設定し、経路差を \(x\) の関数として表します。
そして、弱め合いの条件式を \(x\) について解き、\(0 \le x \le 4\lambda\) の範囲にある解の個数を調べます。
この設問における重要なポイント
- 座標設定: Oを原点とし、Bの方向を \(x\) 軸とします。点Qの座標は \(x\) です。
- 距離の式: \(\text{OQ} = x\)、\(\text{O}’\text{Q} = \sqrt{(3\lambda)^2 + x^2}\)
具体的な解説と立式
点QのOからの距離を \(x\) とします(\(0 \le x \le 4\lambda\))。
経路差 \(\Delta L\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\Delta L &= \sqrt{(3\lambda)^2 + x^2} – x
\end{aligned}
$$
弱め合いの条件は \(\Delta L = (m + 0.5)\lambda\) です。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{9\lambda^2 + x^2} – x &= \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda
\end{aligned}
$$
右辺を \(K\lambda\) (\(K = m + 0.5\))と置いて、\(x\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
\sqrt{9\lambda^2 + x^2} &= x + K\lambda
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 三平方の定理
- 干渉条件
両辺を2乗します。
$$
\begin{aligned}
9\lambda^2 + x^2 &= x^2 + 2K\lambda x + K^2\lambda^2 \\[2.0ex]
9\lambda^2 &= 2K\lambda x + K^2\lambda^2 \\[2.0ex]
2K\lambda x &= (9 – K^2)\lambda^2 \\[2.0ex]
x &= \frac{9 – K^2}{2K}\lambda
\end{aligned}
$$
ここで \(K = m + 0.5\) を代入し、\(m\) に整数を入れて \(x\) が \(0 \le x \le 4\lambda\) になるか確認します。
1. \(m=0 \to K=0.5\):
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{9 – 0.25}{1}\lambda \\[2.0ex]
&= 8.75\lambda \quad (\text{不適: } > 4\lambda)
\end{aligned}
$$
2. \(m=1 \to K=1.5\):
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{9 – 2.25}{3}\lambda \\[2.0ex]
&= \frac{6.75}{3}\lambda \\[2.0ex]
&= 2.25\lambda \quad (\text{適})
\end{aligned}
$$
3. \(m=2 \to K=2.5\):
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{9 – 6.25}{5}\lambda \\[2.0ex]
&= \frac{2.75}{5}\lambda \\[2.0ex]
&= 0.55\lambda \quad (\text{適})
\end{aligned}
$$
4. \(m=3 \to K=3.5\):
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{9 – 12.25}{7}\lambda \\[2.0ex]
&< 0 \quad (\text{不適})
\end{aligned}
$$
条件を満たすのは \(m=1, 2\) の2つの場合のみです。
「弱め合う場所はどこか?」という方程式を作って解きました。
\(m\) という整数をいろいろ変えて計算してみると、\(m=1\) のときと \(m=2\) のときだけ、線分OBの上(0から \(4\lambda\) の間)に答えが見つかりました。
それ以外の \(m\) では、OBからはみ出した場所になってしまいます。
解は2個です。
数式から導かれた位置 \(x = 2.25\lambda, 0.55\lambda\) は、いずれも \(0 \le x \le 4\lambda\) の範囲内にあり、物理的に存在する点であることが確認できました。
思考の道筋とポイント
三角形の2辺の長さの和は、残りの1辺の長さより必ず長い(三角不等式)という性質を利用します。
三角形 \(\text{OO}’\text{Q}\) において、この性質を経路差 \(\text{O}’\text{Q} – \text{OQ}\) の評価に適用します。
この設問における重要なポイント
- 三角不等式: 三角形ABCにおいて \(|AB – AC| < BC\) が成り立ちます。
- 適用: \(\Delta \text{OO}’\text{Q}\) において \(\text{O}’\text{Q} – \text{OQ} < \text{O}’\text{O}\) です。
具体的な解説と立式
三角形 \(\text{OO}’\text{Q}\) において、三角不等式より以下の関係が成り立ちます。
$$
\begin{aligned}
\text{O}’\text{Q} &< \text{OQ} + \text{O}’\text{O}
\end{aligned}
$$
これを変形すると、経路差の上限が得られます。
$$
\begin{aligned}
\text{O}’\text{Q} – \text{OQ} &< \text{O}’\text{O} \\[2.0ex]
&= 3\lambda
\end{aligned}
$$
また、点QがBにあるとき、経路差は最小値 \(\lambda\) をとります(点BはOから最も遠く、\(\text{O}’\text{Q}\) と \(\text{OQ}\) の角度差が最も小さくなるため)。
よって、経路差 \(\Delta L\) の範囲は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
\lambda \le \Delta L < 3\lambda
\end{aligned}
$$
(※点Oでは三角形がつぶれるため等号が成立し \(3\lambda\) になりますが、Qが少しでもずれると \(3\lambda\) 未満になります)
使用した物理公式
- 三角不等式
範囲 \(1.0\lambda \le \Delta L \le 3.0\lambda\) に含まれる弱め合いの条件(\(X.5\lambda\))は、\(1.5\lambda\) と \(2.5\lambda\) の2つです。
三角形の性質「遠回りすると距離は長くなる」を使います。
\(\text{O}’\) からQへ行くのに、まっすぐ行く(\(\text{O}’\text{Q}\))よりも、Oを経由して行く(\(\text{O}’\text{O} + \text{OQ}\))ほうが必ず長くなります。
つまり \(\text{O}’\text{Q} < 3\lambda + \text{OQ}\) です。
これを移項すると \(\text{O}’\text{Q} – \text{OQ} < 3\lambda\) となり、経路差は必ず \(3\lambda\) より小さいことが計算なしで分かります。
下限はB点の \(1\lambda\) なので、その間にある弱め合いポイントを探せば終わりです。
2個です。
三角不等式という幾何学の基本原理を用いることで、計算を省略しつつも厳密に範囲を限定できました。
思考の道筋とポイント
波の干渉を、数式(波動関数)の足し算として厳密に扱います。
波源Oからの距離を \(r_1\)、虚波源 \(\text{O}’\) からの距離を \(r_2\) とし、それぞれの波を正弦波の式で表して合成します。
和積の公式を用いることで、合成波の振幅が \(r_1, r_2\) にどう依存するかを導き出し、問(2)〜(5)の現象を統一的に説明します。
この設問における重要なポイント
- 波動関数: \(y = A \sin(\omega t – kr)\) (\(k = 2\pi/\lambda\) は波数)
- 重ね合わせ: \(y_{\text{合成}} = y_1 + y_2\)
- 和積の公式: \(\sin A + \sin B = 2 \sin \frac{A+B}{2} \cos \frac{A-B}{2}\)
具体的な解説と立式
波源Oからの波 \(y_1\) と、虚波源 \(\text{O}’\) からの波 \(y_2\) を以下のように置きます(振幅 \(a\)、角振動数 \(\omega\)、波数 \(k\))。
$$
\begin{aligned}
y_1 &= a \sin(\omega t – kr_1) \\[2.0ex]
y_2 &= a \sin(\omega t – kr_2)
\end{aligned}
$$
合成波 \(Y\) はこれらの和です。
$$
\begin{aligned}
Y &= y_1 + y_2 \\[2.0ex]
&= a \{ \sin(\omega t – kr_1) + \sin(\omega t – kr_2) \}
\end{aligned}
$$
和積の公式を適用します。
$$
\begin{aligned}
Y &= 2a \cos \left( \frac{(\omega t – kr_1) – (\omega t – kr_2)}{2} \right) \sin \left( \frac{(\omega t – kr_1) + (\omega t – kr_2)}{2} \right) \\[2.0ex]
&= 2a \cos \left( \frac{k(r_2 – r_1)}{2} \right) \sin \left( \omega t – k \frac{r_1 + r_2}{2} \right)
\end{aligned}
$$
この式は、振幅が \(A(r_1, r_2) = 2a \left| \cos \left( \frac{k(r_2 – r_1)}{2} \right) \right|\) で、位相が平均距離に従って進む波を表しています。
使用した物理公式
- 和積の公式
- 波数: \(k = \frac{2\pi}{\lambda}\)
1. 干渉条件(問2, 問5)
振幅が最大(\(2a\))になる条件(強め合い)は、コサインの中身が \(\pi\) の整数倍になるときです。
$$
\begin{aligned}
\frac{k(r_2 – r_1)}{2} &= m\pi \\[2.0ex]
\frac{2\pi}{\lambda} \cdot \frac{r_2 – r_1}{2} &= m\pi \\[2.0ex]
r_2 – r_1 &= m\lambda
\end{aligned}
$$
振幅が \(0\) になる条件(弱め合い)は、コサインの中身が \(\pi/2\) の奇数倍になるときです。
$$
\begin{aligned}
\frac{k(r_2 – r_1)}{2} &= \left(m + \frac{1}{2}\right)\pi \\[2.0ex]
r_2 – r_1 &= \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda
\end{aligned}
$$
これにより、問(2)や問(5)の干渉条件が導かれました。
2. 定常波(問3)
線分OA上では、波は逆向きに進みます。Oを原点、Aを \(x=L\) とすると、\(r_1 = x\)、\(r_2 = 2L – x\) (反射波の経路)となります。
これを代入すると、位置 \(x\) に依存する振幅項と、時間に依存する振動項に分離され、定常波の式が得られます。
3. 進行波(問4)
線分OC上では、\(r_2 – r_1 = \text{一定}\) (\(3\lambda\))です。
振幅項 \(2a \cos(\dots)\) は定数(最大値 \(2a\))となり、時間項 \(\sin(\omega t – \dots)\) だけが変化するため、振幅の変わらない進行波になることが説明できます。
波を \(\sin\) の式で書いて足し算すると、
「振幅を決める部分(\(\cos\))」と「振動する部分(\(\sin\))」にきれいに分かれます。
振幅を決める部分には「距離の差(\(r_2 – r_1\))」が入っています。
この式を見れば、距離の差が波長の整数倍のときに振幅が最大になり、半分ずれるとゼロになることが、数学的に当たり前のこととして理解できます。
波動関数の重ね合わせから、干渉条件、定常波、進行波の性質がすべて統一的に導かれました。
これにより、個別の現象として暗記していた事柄が、一つの数式から導かれる必然的な結果であることが確認できます。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 鏡像法(虚波源)の原理
- 核心: 波の反射現象を、壁の向こう側にある「虚波源」からの直接波として扱うことで、折れ線経路を直線経路に変換して考える手法。
- 理解のポイント:
- 対称性: 虚波源 \(\text{O}’\) は、壁(反射面)に対して実波源Oと対称な位置にあります。
- 位相: 自由端反射なら同位相、固定端反射なら逆位相(\(\pi\) ずれる)として扱います。
- 波の干渉条件と経路差
- 核心: 2つの波の強め合い・弱め合いは、波源からの距離の差(経路差)が波長の何倍かによって決定される。
- 理解のポイント:
- 同位相波源: 経路差 \(m\lambda\) で強め合い、\((m+0.5)\lambda\) で弱め合い。
- 逆位相波源: 条件が逆転します(\(m\lambda\) で弱め合い)。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 鏡による光の干渉(ロイド鏡): 光も波の一種なので、鏡による反射は全く同じ鏡像法で解けます。ただし、光の反射は通常「固定端反射(位相 \(\pi\) ずれ)」として扱う点に注意が必要です。
- 2つのスピーカーによる音の干渉: 虚波源ではなく実波源が2つある場合も、経路差の考え方は同じです。
- 薄膜干渉: 膜の上面と下面での反射波の干渉も、経路差と位相変化(屈折率による)の組み合わせで解きます。
- 初見の問題での着眼点:
- 反射の種類の確認: 壁や端が「自由端」か「固定端」かを確認し、反射波の位相変化(0か \(\pi\) か)を最初に決定します。
- 幾何学的配置の把握: 波源、反射面、観測点の位置関係を図に描き、鏡像法が使えるか(対称性が利用できるか)を判断します。
- 経路差の範囲評価: 観測点が移動する場合、経路差が最大・最小となる点(端点や対称軸上)をまず計算し、その範囲内で解を探します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 反射による位相変化の見落とし:
- 誤解: 「反射=位相が反転」と機械的に覚えてしまい、自由端反射(位相変化なし)の場合でも条件式を逆にしてしまう。
- 対策: 問題文の「位相は変化しない」や「固定端」「自由端」の記述にアンダーラインを引き、同位相波源か逆位相波源かを明記してから立式します。
- 経路差の計算ミス:
- 誤解: 経路差を単に座標の差 \(x_2 – x_1\) と思い込み、斜めの距離(三平方の定理)を考慮し忘れる。
- 対策: 必ず図を描き、直角三角形を見つけて斜辺の長さを計算する習慣をつけます。
- 定常波と進行波の混同:
- 誤解: 波が重なれば必ず定常波ができると思い込む。
- 対策: 「逆向きに進む波」が重なると定常波、「同じ向きに進む波」が重なると振幅が変わるだけの進行波になる、と区別して理解します。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 鏡像法(虚波源):
- 選定理由: 反射波の経路長を直接計算するのは面倒(入射角=反射角の条件から反射点を求める必要がある)ですが、鏡像法なら直線の長さとして一発で求まるため、計算量が劇的に減ります。
- 適用根拠: 波の反射の法則(入射角=反射角)は、幾何学的には最短経路(直線)の性質と等価であるため(フェルマーの原理)。
- 三角不等式(別解アプローチ):
- 選定理由: 方程式を解くよりも圧倒的に速く、計算ミスのリスクも少ないため、個数問題や範囲問題では最強のツールです。
- 適用根拠: 空間上の3点(2つの波源と観測点)が三角形を作る場合、必ず辺の長さの関係式(三角不等式)が成立するため。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 比の利用:
- 意識: \(3\lambda, 4\lambda\) のような係数が出てきたら、\(\lambda\) をくくり出して係数だけの計算(3:4:5など)に持ち込みます。
- 実践: \(\sqrt{(3\lambda)^2 + (4\lambda)^2} = \lambda \sqrt{3^2+4^2} = 5\lambda\) のように、文字式を最後まで残さず、係数計算を優先します。
- 端点チェック:
- 意識: 範囲を求める問題では、端点(OやB)が含まれるかどうか(等号の有無)で答えが変わることがあります。
- 実践: 計算で求めた範囲 \(\lambda \le \Delta L \le 3\lambda\) の端の値(\(\lambda\) と \(3\lambda\))を実際に代入し、条件を満たすか個別に確認します。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。 【引用】https://makoto-physics-school.com […]
問題2 波の干渉 (宇都宮大+宮崎大+慶應大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(4)の別解1: 定常波の性質を用いた解法(模範解答の別解)
- 模範解答が幾何学的な作図から縞の間隔を求めるのに対し、別解1では \(y\) 軸方向に形成される定常波に着目し、その「腹」の間隔として計算します。
- 設問(4)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(波動関数の重ね合わせ)
- 波の式(波動関数)を設定し、入射波と反射波を数学的に重ね合わせることで、設問(1)から(4)までの全ての結果を一括して導出します。
- 設問(4)の別解1: 定常波の性質を用いた解法(模範解答の別解)
- 上記の別解が有益である理由
- 定常波の解法: 作図の手間を省き、計算だけで素早く答えにたどり着けるため、試験時間の短縮に繋がります。
- 微積分の解法: 「波の干渉」という現象を、数式操作のみで機械的に処理できるため、複雑な設定(斜め入射や異なる振幅など)にも対応できる応用力が身につきます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「平面波の斜め入射による反射と干渉」です。
波の性質(波長、速さ)が見かけ上どう変化するか、そして反射波との干渉によってどのような縞模様ができるかを考察します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の幾何学: 波面と射線(進行方向)は常に直交します。
- 見かけの波長と速さ: 軸に沿って観測すると、波長や速さは本来の値とは異なって見えます。
- 固定端反射: 反射面で媒質が固定されている場合、位相が \(\pi\)(半波長分)ずれます。つまり、山は谷として反射されます。
- 波の干渉: 2つの波が重なるとき、同位相なら強め合い、逆位相なら弱め合います。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、波面と軸が作る直角三角形に着目し、幾何学的に長さを求めます。
- (2)(3)では、反射の法則と固定端反射の条件に従って丁寧に作図します。
- (4)では、作図した図形の幾何学的性質、または定常波の理論を用いて間隔を計算します。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
まずは2週間、無料でこの続きを読んでみませんか?