「名問の森」徹底解説(1〜3問):未来の得点力へ!完全マスター講座【波動Ⅱ・電磁気・原子】

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問題1 (奈良女子大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、水面上の点波源から発生する波が鉛直な壁で反射し、直接波と干渉する現象について考察するものです。波の伝播時間、特定の点での干渉条件(強め合い・弱め合い)、線分上にできる定常波の様子、そして別の線上での合成波の性質や弱め合う点の個数を求めることが求められています。

与えられた条件
  • 波源O: 水面上の1点にあり、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の円形の波を連続的に送り出す。
  • 壁: 鉛直に区切られており、波が壁で反射されるとき位相は変化しない。
  • 点A: 水面と壁との境界点。線分OAは壁に垂直。
  • 点B: 水面上の点。線分OBは壁と平行。
  • 距離: \(OA = \frac{3}{2}\lambda\)、\(OB = 4\lambda\)。
  • 波の減衰は無視する。
  • (3)において、O点から出る波は振幅 \(a\) の正弦波であるとする。
問われていること
  • (1) 波が点Oを出てから壁で反射されB点に届くのに要する時間。
  • (2) B点において、波が強め合っているか、弱め合っているか、あるいはそのいずれでもないか。
  • (3) 線分OA上で見られる合成波の名称と、そのようす(ある瞬間の変位のグラフ)。
  • (4) 点Oより左側の半直線OC上で見られる合成波の様子の記述。
  • (5) 線分OB上(両端を含む)で、弱め合う点の個数。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、波の基本的な性質である「反射」と「干渉」を組み合わせた、総合的な理解を問うものです。特に、壁による反射を鏡像波源からの波として捉えることで、2つの波源からの波の干渉問題として扱うことができる点が重要です。また、特定の条件下では定常波が形成されることも理解しておく必要があります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の基本的な関係式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v = f\lambda\) の関係があります。
  2. 反射の法則と鏡像波源: 壁での反射は、壁に対して対称な位置にある「鏡像の波源」から波が出ていると考えることができます。壁での反射で位相が変化しない場合、元の波源と鏡像波源は同位相であるとみなせます。
  3. 波の干渉の条件(同位相波源の場合): 2つの波源からの距離の差(経路差)を \(\Delta L\) とすると、
    • 強め合い(振幅が最大になる点): \(\Delta L = m\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))
    • 弱め合い(振幅が最小または0になる点): \(\Delta L = \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda\) (\(m = 0, 1, 2, \dots\))
  4. 定常波: 逆向きに進む同じ種類の波が重なり合うと、波形が進まずその場で振動するように見える定常波(定在波)が生じます。定常波には、まったく振動しない「節」と、最も大きく振動する「腹」があります。

これらの原理を理解し、問題の幾何学的な配置と合わせて正確に適用していくことが求められます。
基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) まず、壁に関する波源Oの鏡像波源O’の位置を特定します。波がOから出て壁で反射しB点に届くまでの経路長は、O’からB点までの直線距離と等しくなります。この距離を三平方の定理などを用いて求め、波の速さ \(v=f\lambda\) で割ることで所要時間を計算します。
  2. (2) B点における、波源Oからの直接波と鏡像波源O’からの波(反射波に相当)との経路差を計算します。壁での反射で位相が変化しないため、OとO’は同位相波源として扱えます。計算した経路差を干渉条件と比較し、強め合いか弱め合いかを判断します。
  3. (3) 線分OA上では、Oからの入射波と壁からの反射波(O’からの波)が正面衝突するように重なり合います。これにより定常波が形成されます。壁Aは位相が変わらない反射(自由端反射)なので、定常波の腹になります。この情報と腹(または節)の間隔が \(\lambda/2\) であることを利用して、OA上の定常波の様子(振幅の分布)を描きます。
  4. (4) O点の左側の半直線OC上の任意の点について、OとO’からの経路差を求めます。この経路差が常に特定の条件を満たすかどうかを調べ、合成波の性質を記述します。
  5. (5) 線分OB上の各点について、OとO’からの経路差を考え、それが弱め合いの条件 \(\Delta L = (m+1/2)\lambda\) を満たす点の数を数えます。経路差が取りうる値の範囲を特定し、その範囲内に弱め合いの条件を満たす \(m\) がいくつ存在するかを調べる方法や、幾何学的に弱め合いの線(双曲線)が線分OBと何回交わるかを考える方法があります。

それでは、各設問について詳しく見ていきましょう。

問(1)

思考の道筋とポイント
壁による波の反射は、壁に関して対称な位置にある鏡像波源O’から波が出ていると考えるのが定石です。波がOから出て壁上の点Dで反射しBに到達するまでの経路長 OD+DB は、鏡像波源O’からBまでの直線距離 O’B に等しくなります。このO’Bの長さを幾何学的に求め、波の速さ \(v=f\lambda\) で割ることで時間を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 鏡像波源の考え方を利用する。
  • 反射経路長 OD+DB = O’B。
  • 三平方の定理を用いて距離O’Bを計算する。
  • 波の速さ \(v = f\lambda\) と時間 \(t = \text{距離}/v\) の関係。

具体的な解説と立式
波源Oの、壁に関する対称な点をO’とします。壁は線分OAに垂直で、OAの長さは \(\frac{3}{2}\lambda\) なので、Oから壁までの距離も \(\frac{3}{2}\lambda\) です。 したがって、OとO’の間の水平距離(壁に平行な方向の距離ではない、OとO’を結ぶ線分が壁と垂直に交わる場合、その壁までの距離の2倍)は \(2 \times \frac{3}{2}\lambda = 3\lambda\) となります。
点Bは、線分OBが壁と平行でその長さが \(4\lambda\) であることから、Oを原点 \((0,0)\) とし、壁が \(x=\frac{3}{2}\lambda\) の位置にあるとすると、Bの座標は \((0, 4\lambda)\) と考えられます。
鏡像波源O’の座標は \((3\lambda, 0)\) となります。
このとき、O’からBまでの距離 \(O’B\) は、\(\Delta x = 3\lambda\)、\(\Delta y = 4\lambda\) の直角三角形の斜辺として求められます。
$$O’B = \sqrt{(3\lambda)^2 + (4\lambda)^2} \quad \cdots ①$$
波がOから出て壁で反射しB点に届くまでの経路長 \(L_{\text{path}}\) は、この \(O’B\) に等しいので、\(L_{\text{path}} = O’B\)。
波の速さ \(v\) は、振動数 \(f\) と波長 \(\lambda\) を用いて \(v = f\lambda\) と表されます。
よって、B点に届くまでに要する時間 \(t\) は、
$$t = \frac{L_{\text{path}}}{v} = \frac{O’B}{f\lambda} \quad \cdots ②$$

使用した物理公式

  • 三平方の定理
  • 波の速さ: \(v = f\lambda\)
  • 時間 = 距離 / 速さ
計算過程

まず、式①を用いて \(O’B\) の長さを計算します。
$$O’B = \sqrt{9\lambda^2 + 16\lambda^2} = \sqrt{25\lambda^2}$$
\(\lambda > 0\) なので、
$$O’B = 5\lambda$$
次に、この結果を式②に代入して時間 \(t\) を求めます。
$$t = \frac{5\lambda}{f\lambda} = \frac{5}{f}$$

計算方法の平易な説明

壁で反射した波は、まるで壁の向こう側にある「鏡に映った波源(鏡像波源O’)」から来たかのように進みます。Oから出て壁のどこかで反射してB点に届くまでの道のり (OD+DB) は、この鏡像波源O’からB点までまっすぐに進む道のり (O’B) と同じ長さになります。
波源Oと壁の間の距離は \(\frac{3}{2}\lambda\) なので、Oと鏡像波源O’との間の水平方向の距離は \(2 \times \frac{3}{2}\lambda = 3\lambda\) です。B点はOから \(4\lambda\) の距離(壁と平行方向)にあります。このため、O’とBの間の距離は、底辺が \(3\lambda\)、高さが \(4\lambda\) の直角三角形の斜辺の長さに相当し、計算すると \(5\lambda\) となります。
波の速さは \(v = f\lambda\) なので、この距離 \(5\lambda\) を進むのにかかる時間は、「距離 ÷ 速さ」から \(\frac{5\lambda}{f\lambda} = \frac{5}{f}\) と求められます。

結論と吟味

波が点Oを出てから壁で反射されB点に届くのに要する時間は \(\displaystyle\frac{5}{f}\) です。3:4:5の直角三角形の関係が使われており、計算もシンプルです。模範解答とも一致しています。

解答 (1) \(\displaystyle\frac{5}{f}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
B点では、波源Oから直接到達する波と、壁で反射してから到達する波(これは鏡像波源O’から到達する波とみなせる)が重なり合って干渉します。壁での反射で位相が変化しないとされているため、波源Oと鏡像波源O’は同位相の波源として扱うことができます。
B点における2つの波の経路差を求め、その経路差が波長の整数倍なら強め合い、半波長の奇数倍なら弱め合うという干渉条件と比較します。

この設問における重要なポイント

  • 2つの波源(Oと鏡像O’)からの波の干渉と考える。
  • 壁で位相が変化しないため、OとO’は同位相波源とみなせる。
  • 経路差 \(\Delta L = |O’B – OB|\) を計算する。
  • 干渉条件(同位相波源): 強め合い \(\Delta L = m\lambda\)、弱め合い \(\Delta L = (m+1/2)\lambda\)。

具体的な解説と立式
B点には、波源Oから直接届く波と、鏡像波源O’から届く波(壁からの反射波)が干渉します。
波源OからB点までの距離は、問題文より \(OB = 4\lambda\)。
鏡像波源O’からB点までの距離は、(1)で計算した通り \(O’B = 5\lambda\)。
B点における2つの波の経路差 \(\Delta L\) は、
$$\Delta L = O’B – OB \quad \cdots ③$$
(\(O’B > OB\) なので絶対値は不要です。)
壁での反射で位相は変化しないため、OとO’は同位相の波源とみなせます。 同位相の2つの波源からの波が干渉する場合、経路差が波長の整数倍(\(m\lambda\)、ここで \(m\) は整数)のときに強め合い、半波長の奇数倍(\((m+\frac{1}{2})\lambda\))のときに弱め合います。

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(同位相波源):
    • 強め合い: 経路差 \( = m\lambda \)
    • 弱め合い: 経路差 \( = (m+\frac{1}{2})\lambda \)
計算過程

式③を用いて経路差 \(\Delta L\) を計算します。
$$\Delta L = 5\lambda – 4\lambda = \lambda$$
この経路差は \(\lambda = 1 \times \lambda\) であり、波長の整数倍(\(m=1\) の場合)となっています。
したがって、B点では波は強め合っています。

計算方法の平易な説明

B点には、Oからまっすぐ来る波と、壁で反射してから来る波の2つが届きます。壁で反射するときに波の山谷がひっくり返らない(位相が変化しない)ので、Oともう一つの波源O’(Oの鏡像)が同じタイミングで波を送り出しているのと同じ状況と考えられます。
OからBまでの距離は \(4\lambda\)、O’からBまでの距離は(1)で求めたように \(5\lambda\) です。この2つの距離の差(経路差)は \(5\lambda – 4\lambda = \lambda\) です。
経路差がちょうど波長の1倍(一般には整数倍)になっているので、2つの波は山と山、谷と谷が重なり合うようにして強め合います。

結論と吟味

B点では波は強め合っています。経路差が \(\lambda\) であり、これは \(m=1\) の強め合いの条件に一致します。模範解答とも一致しており、妥当です。

解答 (2) 強め合っている

問(3)

思考の道筋とポイント
線分OA上では、波源Oから壁Aに向かう入射波と、壁Aで反射して波源Oの方向へ戻る反射波が重なり合います。これら2つの波は、同じ振動数、同じ波長、同じ振幅(減衰しないため)で互いに逆向きに進むため、定常波(定在波)が生じます。
壁Aでの反射は位相が変化しない(問題文の条件より、自由端反射と同様)ため、壁Aは定常波の腹(振幅が極大となる点)になります。 また、波源O自身も振動しているので、O点における状況も考慮する必要があります。OとO’からの波の干渉として考えると、OA上の各点で定常波の振幅が決まります。定常波の腹と腹の間隔、節と節の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。
図2には、横軸にOからの距離、縦軸に水面の変位をとり、ある瞬間の定常波の波形(振幅の包絡線)を描きます。

この設問における重要なポイント

  • 逆向きに進む同じ波の重ね合わせで「定常波(定在波)」が生じる。
  • 壁Aは自由端反射なので、定常波の「腹」となる。
  • 定常波の腹と腹(節と節)の間隔は \(\lambda/2\)。腹と隣の節の間隔は \(\lambda/4\)。
  • O点とO’(鏡像波源)からの波の干渉として、OA上の各点の振幅を決定する。
  • 腹での振幅は元の進行波の振幅の2倍(ここでは \(2a\))。節での振幅は0。

具体的な解説と立式
線分OA上で見られる波は、波源Oから右向きに進む入射波と、壁Aで反射されて左向きに進む反射波の合成波です。これら2つの波は振幅、波長、振動数が等しく進行方向が逆なので、定常波(または定在波)が形成されます。

壁A(Oからの距離 \(x = \frac{3}{2}\lambda\))は、位相が変わらない反射(自由端反射)をするため、定常波のになります。 この腹では、振幅が最大(元の波の振幅 \(a\) の2倍である \(2a\))となります。
定常波の腹と節の位置を特定します。
波源Oと鏡像波源O’からの距離の差を考えます。OA上の点P(Oからの距離を \(x\)、\(0 \le x \le \frac{3}{2}\lambda\))について、
\(OP = x\)。
O’はOの鏡像なので、壁までの距離はOと同じ \(\frac{3}{2}\lambda\)。よってOからO’までの水平距離は \(3\lambda\)。
OA上の点P(Oからの距離 \(x\)) について、O’Pは、壁までの距離が \(\frac{3}{2}\lambda – x\)。O’から壁までの距離が \(\frac{3}{2}\lambda\)。
点Pと鏡像O’との水平距離は \(\frac{3}{2}\lambda + (\frac{3}{2}\lambda – x) = 3\lambda – x\) ではなく、点Pから壁までの距離は \(\frac{3}{2}\lambda – x\)、O’から壁までの距離は \(\frac{3}{2}\lambda\)。よって、\(O’P = (\frac{3}{2}\lambda – x) + \frac{3}{2}\lambda = 3\lambda -x\)。これはPがOと壁の間にある場合。
正しくは、Oを原点とし、壁を \(x=\frac{3}{2}\lambda\) とすると、O’は \(x=3\lambda\) の位置。OA上の点Pの座標は \(x\) (\(0 \le x \le \frac{3}{2}\lambda\))。
\(OP = x\)。\(O’P = |3\lambda – x| = 3\lambda – x\) (\(x \le \frac{3}{2}\lambda < 3\lambda\)のため)。
経路差 \(\Delta L = |O’P – OP| = |(3\lambda – x) – x| = |3\lambda – 2x|\)。

強め合い(腹)の条件: \(|3\lambda – 2x| = m\lambda\)
弱め合い(節)の条件: \(|3\lambda – 2x| = (m+\frac{1}{2})\lambda\)

腹の位置を探します:

  • \(m=0\): \(|3\lambda – 2x| = 0\)。これから \(3\lambda – 2x = 0\)、つまり \(x = \frac{3}{2}\lambda\) (点A)。振幅 \(2a\)。
  • \(m=1\): \(|3\lambda – 2x| = \lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm\lambda\)。
    \(3\lambda – 2x = \lambda\) のとき \(2x = 2\lambda\)、つまり \(x = \lambda\)。振幅 \(2a\)。
    \(3\lambda – 2x = -\lambda\) のとき \(2x = 4\lambda\)、つまり \(x = 2\lambda\) (これは \(0 \le x \le \frac{3}{2}\lambda\) の範囲外)。
  • \(m=2\): \(|3\lambda – 2x| = 2\lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm 2\lambda\)。
    \(3\lambda – 2x = 2\lambda\) のとき \(2x = \lambda\)、つまり \(x = \frac{\lambda}{2}\)。振幅 \(2a\)。
    \(3\lambda – 2x = -2\lambda\) のとき \(2x = 5\lambda\)、つまり \(x = \frac{5}{2}\lambda\) (範囲外)。
  • \(m=3\): \(|3\lambda – 2x| = 3\lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm 3\lambda\)。
    \(3\lambda – 2x = 3\lambda\) のとき \(2x = 0\)、つまり \(x = 0\) (点O)。振幅 \(2a\)。
    \(3\lambda – 2x = -3\lambda\) のとき \(2x = 6\lambda\)、つまり \(x = 3\lambda\) (範囲外)。

よって、腹の位置は \(x = 0, \frac{\lambda}{2}, \lambda, \frac{3}{2}\lambda\)。

節の位置を探します:

  • \(m=0\): \(|3\lambda – 2x| = \frac{1}{2}\lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm \frac{1}{2}\lambda\)。
    \(3\lambda – 2x = \frac{1}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{5}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{5}{4}\lambda\)。振幅 \(0\)。
    \(3\lambda – 2x = -\frac{1}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{7}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{7}{4}\lambda\) (範囲外)。
  • \(m=1\): \(|3\lambda – 2x| = \frac{3}{2}\lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm \frac{3}{2}\lambda\)。
    \(3\lambda – 2x = \frac{3}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{3}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{3}{4}\lambda\)。振幅 \(0\)。
    \(3\lambda – 2x = -\frac{3}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{9}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{9}{4}\lambda\) (範囲外)。
  • \(m=2\): \(|3\lambda – 2x| = \frac{5}{2}\lambda\)。これから \(3\lambda – 2x = \pm \frac{5}{2}\lambda\)。
    \(3\lambda – 2x = \frac{5}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{1}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{\lambda}{4}\)。振幅 \(0\)。
    \(3\lambda – 2x = -\frac{5}{2}\lambda\) のとき \(2x = \frac{11}{2}\lambda\)、つまり \(x = \frac{11}{4}\lambda\) (範囲外)。

よって、節の位置は \(x = \frac{\lambda}{4}, \frac{3}{4}\lambda, \frac{5}{4}\lambda\)。

図2にこの定常波の様子を描くと、横軸がOからの距離、縦軸が水面の変位となります。
O (\(x=0\)) で腹(振幅\(2a\))、\(x=\lambda/4\) で節、\(x=\lambda/2\) で腹、\(x=3\lambda/4\) で節、\(x=\lambda\) で腹、\(x=5\lambda/4\) で節、A (\(x=3\lambda/2\)) で腹となります。
作図は、これらの点を通り、腹の振幅が \(2a\) (または \(-2a\))、節の振幅が0となるような滑らかな曲線で結びます。模範解答の図のスタイルに合わせ、最大振幅の包絡線とその反転した包絡線(半周期後の様子)を描きます。

使用した物理公式

  • 定常波の性質(腹・節の間隔)
  • 波の干渉条件(強め合い・弱め合い)
計算過程

上記の「具体的な解説と立式」セクションで腹と節の位置を特定しました。
腹: \(x = 0, \frac{\lambda}{2}, \lambda, \frac{3}{2}\lambda\)
節: \(x = \frac{\lambda}{4}, \frac{3}{4}\lambda, \frac{5}{4}\lambda\)
これに基づいて図2に波形を描きます。(模範解答の図を参照し、O, \(\lambda/2\), \(\lambda\), \(3\lambda/2\) を腹とし、\(\lambda/4\), \(3\lambda/4\), \(5\lambda/4\) を節とする波形(振幅 \(2a\))を実線と点線で描く。)

計算方法の平易な説明

線分OA上では、波源Oから壁に向かう波と、壁で反射して戻ってくる波が重なり合います。このように同じ種類の波が反対方向に進んで重なると、「定常波」という特別な波ができます。定常波は、波形が進まず、その場で振動するように見える波です。
定常波には、まったく振動しない「節」と、最も大きく振動する「腹」ができます。壁Aは自由に振動できる端(位相変化なしの反射)なので、「腹」になります。波源Oもここでは「腹」になります。腹と腹の間隔は半波長 (\(\lambda/2\))、腹と隣の節の間隔は1/4波長 (\(\lambda/4\)) です。
これをもとに、OA (\(0\) から \(\frac{3}{2}\lambda\) まで) の間にできる腹と節の位置を見つけます。腹では振幅が元の波の2倍 (\(2a\)) になり、節では振幅が0になります。これらの点を滑らかにつないで、ある瞬間の波の形(と、その半周期後の形)を図に描きます。

結論と吟味

線分OA上で見られる波は定常波(または定在波)です。
作図は、腹が \(x=0, \lambda/2, \lambda, 3\lambda/2\) に、節が \(x=\lambda/4, 3\lambda/4, 5\lambda/4\) にくるように、振幅 \(2a\) の波形を描きます。これは模範解答の図と一致しています。

解答 (3) 定常波(または定在波)。作図は(模範解答の図を参照し、O, \(\lambda/2\), \(\lambda\), \(3\lambda/2\) を腹とし、\(\lambda/4\), \(3\lambda/4\), \(5\lambda/4\) を節とする波形(振幅 \(2a\))を実線と点線で描く。)

問(4)

思考の道筋とポイント
O点より左側の半直線OC上で見られる合成波を考えます。この直線上の任意の点をPとし、Oからの距離を \(x_P\) (\(x_P > 0\)) とします。この点Pには、波源Oからの直接波と、鏡像波源O’からの波が到達します。OとO’は同位相波源です。
P点における経路差 \(O’P – OP\) を計算し、その値が常にどうなるかを調べます。これにより、OC上の全ての点で強め合うか弱め合うか、あるいは場所によって異なるかが分かります。また、Oからの波もO’からの波もOC上では同じ向き(左向き)に進むため、合成波も進行波となります。

この設問における重要なポイント

  • 半直線OC上の任意の点Pでの経路差 \(O’P – OP\) を考える。
  • O’の位置はOから右に \(3\lambda\)。PはOから左に \(x_P\)。
  • Oからの波とO’からの波は、OC上で同方向に進む。

具体的な解説と立式
半直線OC上の任意の点をPとします。波源Oを原点 \(x=0\) とし、Cの方向を負のx軸方向とします。点Pの座標を \(-x_P\) (\(x_P \ge 0\)) とすると、\(OP = x_P\)。
鏡像波源O’は、Oから壁と反対側、つまり正のx軸方向に \(OO’ = 3\lambda\) の位置にあると考えられます。
PはOの左側にあるので、\(O’P = O’O + OP = 3\lambda + x_P\)。
P点における経路差 \(\Delta L_P\) は、
$$\Delta L_P = O’P – OP = (3\lambda + x_P) – x_P = 3\lambda \quad \cdots ④$$
この経路差 \(3\lambda\) は波長の整数倍(\(m=3\))なので、半直線OC上の全ての点で波は強め合います。
波源Oからの波と鏡像波源O’からの波(反射波)は、半直線OC上ではいずれも同じ方向(Oから遠ざかる方向、すなわち左向き)に進む進行波です。
これらの波が強め合うため、合成波は振幅が \(a+a=2a\) となり、左向きに進む進行波となります。

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(強め合い)
計算過程

上記「具体的な解説と立式」セクションで示したように、経路差は常に \(3\lambda\) です。
これは \(m=3\) の強め合いの条件を満たします。
Oからの波とO’からの波は同方向に進むため、合成波は進行波となります。
振幅は \(a+a=2a\)。

計算方法の平易な説明

O点の左側の直線OC上で波がどうなるかを考えます。この直線上のどの点Pを選んでも、波源Oから点Pまでの距離と、鏡像波源O’から点Pまでの距離の差は、常にOとO’の間の距離である \(3\lambda\) となります。
この距離の差 \(3\lambda\) は、波長のちょうど3倍なので、Oからの波とO’からの波(壁で反射した波)は常に同じタイミングで重なり合い、強め合います。
また、Oからの波もO’からの波(反射波)も、この直線OC上では同じ左向きに進んでいます。そのため、これらが合わさった波も、振幅が元の波の2倍 (\(2a\)) になった左向きに進む進行波となります。

結論と吟味

合成波は、「振幅が \(2a\) で、波源Oから遠ざかる向き(左向き)に進む進行波」となります。模範解答の記述「振幅2aで左向きに進む進行波となる」と一致しており、20字程度という指定にも概ね収まります。

解答 (4) 振幅 \(2a\) でOから遠ざかる向きに進む進行波。

問(5)

思考の道筋とポイント
線分OB上で弱め合う点の数を数えます。波源Oと鏡像波源O’からの波の干渉と考え、弱め合いの条件は経路差 \(|O’Q – OQ| = (m+1/2)\lambda\) を満たすことです。点Qを線分OB上の点とし、Oからの距離を \(x\) (\(0 \le x \le 4\lambda\)) とおきます。このとき、\(OQ = x\)、\(O’Q = \sqrt{(OO’)^2 + (OQ)^2} = \sqrt{(3\lambda)^2 + x^2}\) となります。
この経路差が弱め合いの条件を満たすような整数 \(m \ge 0\) が何個存在し、かつそのときの \(x\) が \(0 \le x \le 4\lambda\) の範囲に入るかを調べます。
模範解答の別解1のアプローチがこれに該当します。
別解2のアプローチは、経路差が取りうる値の範囲を考え、その範囲内に弱め合い条件を満たす \((m+1/2)\lambda\) がいくつあるかを数えるものです。これはより簡潔です。

この設問における重要なポイント

  • 弱め合いの干渉条件: 経路差 \( = (m+1/2)\lambda\)。
  • 線分OB上の点Qに対する経路差 \(O’Q – OQ\) を \(x = OQ\) の関数として表す。
  • \(0 \le x \le 4\lambda\) の範囲で条件を満たす整数 \(m\) の個数を数える。
  • 経路差の取りうる範囲を調べる方法も有効。

具体的な解説と立式
線分OB上の任意の点をQとします。Oを原点とし、Bの方向をy軸の正方向とすると、Qの座標は \((0, x)\) と書けます。ここで \(0 \le x \le 4\lambda\)。
波源Oの座標は \((0,0)\)。鏡像波源O’の座標は \((3\lambda, 0)\) となります。
点Qへの経路は、\(OQ = x\)、\(O’Q = \sqrt{(3\lambda-0)^2 + (0-x)^2} = \sqrt{(3\lambda)^2 + x^2}\)。
経路差 \(\Delta L_Q = O’Q – OQ = \sqrt{9\lambda^2 + x^2} – x\)。
(\(O’Q \ge OQ\) は \(x \ge 0\) で明らか)
弱め合いの条件は、
$$\sqrt{9\lambda^2 + x^2} – x = \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda \quad (m=0, 1, 2, \dots) \quad \cdots ⑤$$
この式を満たす \(x\) が \(0 \le x \le 4\lambda\) の範囲に存在するような整数 \(m \ge 0\) の個数を数えます。
式を変形して \(x\) について解くと(模範解答の別解1と同様の変形)、
$$\sqrt{9\lambda^2 + x^2} = x + \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda$$
両辺を2乗します(右辺も \(x \ge 0\) なので正としてよい)。
$$9\lambda^2 + x^2 = x^2 + 2x\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda + \left(m+\frac{1}{2}\right)^2\lambda^2$$
$$9\lambda^2 = 2x\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda + \left(m+\frac{1}{2}\right)^2\lambda^2$$
\(\lambda\) で両辺を割ります(\(\lambda \ne 0\))。
$$9\lambda = 2x\left(m+\frac{1}{2}\right) + \left(m+\frac{1}{2}\right)^2\lambda$$
$$2x\left(m+\frac{1}{2}\right) = 9\lambda – \left(m+\frac{1}{2}\right)^2\lambda = \left[9 – \left(m+\frac{1}{2}\right)^2\right]\lambda$$
$$x = \frac{9 – (m+1/2)^2}{2(m+1/2)}\lambda = \frac{9 – (m+0.5)^2}{2m+1}\lambda \quad \cdots ⑥$$
この \(x\) が \(0 \le x \le 4\lambda\) を満たす \(m\) を探します。

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(弱め合い)
  • 三平方の定理
計算過程

式⑥に整数 \(m=0, 1, 2, \dots\) を代入し、\(0 \le x \le 4\lambda\) を満たすものを探します。

  • \(m=0\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (0.5)^2}{1}\lambda = (9 – 0.25)\lambda = 8.75\lambda\)。
    \(8.75\lambda > 4\lambda\) なので、これは範囲外です。
  • \(m=1\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (1.5)^2}{2(1)+1}\lambda = \frac{9 – 2.25}{3}\lambda = \frac{6.75}{3}\lambda = 2.25\lambda = \frac{9}{4}\lambda\)。
    \(0 \le \frac{9}{4}\lambda \le 4\lambda\) (すなわち \(0 \le 2.25 \le 4\)) を満たすので、これは1つ目の条件を満たす点です。
  • \(m=2\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (2.5)^2}{2(2)+1}\lambda = \frac{9 – 6.25}{5}\lambda = \frac{2.75}{5}\lambda = 0.55\lambda = \frac{11}{20}\lambda\)。
    \(0 \le \frac{11}{20}\lambda \le 4\lambda\) (すなわち \(0 \le 0.55 \le 4\)) を満たすので、これは2つ目の条件を満たす点です。
  • \(m=3\): \(x = \displaystyle\frac{9 – (3.5)^2}{2(3)+1}\lambda = \frac{9 – 12.25}{7}\lambda = \frac{-3.25}{7}\lambda\)。
    \(x < 0\) となるため、不適です。これ以上の \(m\) でも分子が負になるため、解はありません。

したがって、条件を満たす \(m\) は \(m=1\) と \(m=2\) の2つです。よって、弱め合う点は2個あります。

計算方法の平易な説明

線分OB上の点Qで波が弱め合う条件は、波源Oと鏡像波源O’からの距離の差が、半波長の奇数倍(例えば \(0.5\lambda, 1.5\lambda, 2.5\lambda, \dots\))になるときです。
OからQまでの距離を \(x\) とすると、O’からQまでの距離はピタゴラスの定理を使って \(\sqrt{(3\lambda)^2 + x^2}\) と表せます。
これらの距離の差が \((m+0.5)\lambda\) (\(m\)は0以上の整数)となるような \(x\) が、\(0\) から \(4\lambda\) の間(線分OB上)にいくつあるかを調べます。
計算してみると、\(m=1\) のとき(距離の差が \(1.5\lambda\))と \(m=2\) のとき(距離の差が \(2.5\lambda\))に対応する \(x\) が、\(0\) から \(4\lambda\) の範囲内に見つかります。したがって、弱め合う点は2個です。

結論と吟味

線分OB上で弱め合う点は2個です。模範解答の別解1と一致する計算方法であり、結果も一致しています。

別解(5)-2: 経路差の範囲による方法
思考の道筋とポイント
線分OBの両端における経路差をまず計算します。
点O (\(x=0\)) における経路差: \(O’O – OO = 3\lambda – 0 = 3\lambda\)。
点B (\(x=4\lambda\)) における経路差: \(O’B – OB = 5\lambda – 4\lambda = \lambda\)。
点QがOからBへ移動するにつれて、経路差 \(\Delta L_Q = \sqrt{9\lambda^2+x^2}-x\) は \(3\lambda\) から \(\lambda\) へと連続的に減少します。
この \([\lambda, 3\lambda]\) の範囲内に、弱め合いの条件 \((m+1/2)\lambda\) を満たすものがいくつあるかを数えます。

この設問における重要なポイント

  • 線分OBの両端(O点とB点)での経路差を求める。
  • 経路差がその間で連続的に変化することを利用する。
  • 弱め合いの条件 \((m+1/2)\lambda\) が、計算した経路差の範囲内にいくつ入るかを数える。

具体的な解説と立式
線分OB上で、点QがOにあるときの経路差 \(\Delta L_O\) は、
$$\Delta L_O = O’O – OO = 3\lambda – 0 = 3\lambda$$点QがBにあるときの経路差 \(\Delta L_B\) は、(2)より、$$\Delta L_B = O’B – OB = 5\lambda – 4\lambda = \lambda$$
点QがOからBへ移動する間、経路差 \(\Delta L_Q\) は \(3\lambda\) から \(\lambda\) まで連続的に減少します。
弱め合いの条件は、経路差が \(\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda\) (\(m=0, 1, 2, \dots\))となることです。
したがって、次の不等式を満たす整数 \(m\) の個数を探します。
$$\lambda \le \left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda \le 3\lambda$$
(点Oと点Bは強め合いの点なので、厳密には \(\lambda < (m+1/2)\lambda < 3\lambda\) の範囲で考えますが、結果的に \(m+1/2\) が整数になることはないので、等号を含めても問題ありません。) 不等式の各項を \(\lambda\) (\(\lambda > 0\)) で割ると、
$$1 \le m+\frac{1}{2} \le 3$$各項から \(\frac{1}{2}\) を引くと、$$1 – \frac{1}{2} \le m \le 3 – \frac{1}{2}$$
$$0.5 \le m \le 2.5$$

使用した物理公式

  • 波の干渉条件(弱め合い)
計算過程

上記「具体的な解説と立式」で示した不等式 \(0.5 \le m \le 2.5\) を満たす整数 \(m\) は、
$$m = 1, 2$$
したがって、該当する \(m\) の値は2つです。
これは、弱め合う点が2個存在することを意味します。
\(m=1\) のとき、経路差は \(1.5\lambda\)。
\(m=2\) のとき、経路差は \(2.5\lambda\)。
これらは両方とも \([\lambda, 3\lambda]\) の範囲内にあります。

計算方法の平易な説明

線分OB上で、波源Oと鏡像波源O’からの波が干渉して弱め合う点の数を考えます。
まず、線分の端であるO点でのOとO’からの距離の差は \(3\lambda\) です。もう一方の端であるB点での距離の差は \(\lambda\) です。
OB上の点をOからBへ動かしていくと、この「距離の差」は \(3\lambda\) から \(\lambda\) まで連続的に変化します。
波が弱め合うのは、距離の差が「半波長の奇数倍」、つまり \(0.5\lambda, 1.5\lambda, 2.5\lambda, 3.5\lambda, \dots\) となるときです。
このうち、\(3\lambda\) から \(\lambda\) の範囲に含まれるものを探すと、\(2.5\lambda\) と \(1.5\lambda\) の2つが見つかります。したがって、弱め合う点は2個あります。

結論と吟味

線分OB上で弱め合う点は2個です。これは模範解答の別解2と一致しており、より簡潔な方法で同じ結論に至ります。

解答 (5) 2個

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 波の反射と鏡像波源: 壁のような障害物による波の反射は、壁の向こう側に対称な位置にある「鏡像の波源」から波がきていると等価に扱える場合が多いです。特に平面での反射ではこの考え方が有効です。壁での反射で位相が変化するかしないか(固定端反射か自由端反射か)が、鏡像波源の位相をどう考えるかに影響します(本問では位相変化なし)。
  • 波の干渉条件: 複数の波源からの波が重なるとき、各波源からの距離の差(経路差)によって強め合ったり弱め合ったりします。同位相の波源の場合、経路差が波長の整数倍なら強め合い、半波長の奇数倍なら弱め合います。この条件式を正確に覚えていることが基本です。
  • 定常波(定在波): 同じ振幅・波長・振動数の波が互いに逆向きに進んで重なると、波形が進まずその場で振動するように見える定常波ができます。定常波には振幅が常に0の「節」と振幅が最大の「腹」が交互に現れ、腹と腹(または節と節)の間隔は \(\lambda/2\) です。自由端反射では反射点が腹になり、固定端反射では節になります。
  • 波の基本的なパラメータ: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の関係 \(v=f\lambda\) は常に基本となります。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • ヤングの実験のような、2つのスリットからの光の干渉。
    • 薄膜による光の干渉(ただし、こちらは経路差だけでなく位相変化も重要になる)。
    • 水面波だけでなく、音波や光波の干渉問題全般。
    • マイクやスピーカーを複数設置したときの音の干渉。
    • 直線状のアンテナから出る電波の干渉。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 波源の特定: 干渉を考える場合、いくつの波源が関わっているのか、それらは実在の波源か、反射による鏡像波源かを見極める。
    2. 波源の位相関係: 各波源が同位相で振動しているのか、逆位相なのか、あるいは一定の位相差があるのかを確認する(反射で位相が反転するかどうかも含む)。これが干渉条件の式に影響する。
    3. 経路差の計算: 干渉を調べる点において、各波源からの距離を正確に計算し、その差(経路差)を求める。幾何学的な知識(三平方の定理など)が必要になることが多い。
    4. 条件式の適用: 計算した経路差と波長 \(\lambda\) を用いて、強め合い・弱め合いの条件式に当てはめる。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
    • 「位相が変化しない反射」は自由端反射と同じで、鏡像波源は元の波源と同位相。「位相が反転する反射」は固定端反射と同じで、鏡像波源は元の波源と逆位相と考える。
    • 干渉縞や定常波の節・腹の間隔は波長 \(\lambda\) の半分(\(\lambda/2\))が基本単位となることが多い。
    • 対称性を利用できる場合は積極的に利用する(例:鏡像波源)。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 経路差と光路差の混同(光の場合): この問題は水面波なので屈折率を考慮した光路差は出てきませんが、光の干渉では媒質が絡むと光路差(距離×屈折率)で考える必要があります。
  • 干渉条件の式の混同: 同位相波源と逆位相波源で強め合い・弱め合いの条件式が入れ替わるので注意が必要です。本問は同位相として扱います。
  • \(m\) の値の範囲: 干渉条件の \(m\) は通常 \(0, 1, 2, \dots\) という非負の整数ですが、問題によっては負の整数を含む場合や、\(m=0\) が特別な意味を持つ場合(例:中央の明線)があるので、定義をしっかり確認する。
  • 定常波の腹と節の位置の誤解: 自由端は腹、固定端は節という基本を間違えないこと。また、波源自身が腹や節になるとは限らない(波源の扱いによる)。本問(3)ではO点も腹として扱って良いケースです。
  • 問(5)での数え上げミス: 範囲(線分OB上)を考慮せず、条件を満たす \(m\) を全て挙げてしまったり、逆に範囲の境界条件を見誤って少なく数えたりするミス。経路差の最大値・最小値を把握することが有効。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 鏡像波源の作図: 壁による反射を考える際に、まず鏡像波源O’を図に描き込むことで、問題が2点波源の干渉としてシンプルに捉えられます(図1の右側のLECTURE図が参考になる)。
    • 波面の広がりと重なり: OとO’から同心円状に広がる波の山と谷が、空間の各点でどのように重なるかをイメージする。強め合いの線(腹線)や弱め合いの線(節線)が双曲線状に形成される様子を大まかにでも掴むと良い(LECTURE(5)の図)。
    • 定常波の波形: 問(3)では、入射波と反射波が重なってできる定常波の、ある瞬間の形とその振幅の包絡線を図示することが求められました。腹と節の位置を正確にプロットし、滑らかな曲線で結ぶことが重要です。
  • 図を描く際に注意すべき点は何か:
    • 座標軸の設定: 距離や位置関係を明確にするために、適切に原点や軸を設定する。
    • 長さのスケール感: 波長 \(\lambda\) を基準として、与えられた距離(\(OA=\frac{3}{2}\lambda, OB=4\lambda\) など)を比較的正確に図に反映させることで、幾何学的な関係が見えやすくなる。
    • 干渉縞や定常波の節・腹の位置を、波長との関係(例:\(\lambda/2\) ごと)を意識して描く。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • \(v = f\lambda\):
    • 選定理由: 波の速さ、振動数、波長の関係を表す最も基本的な式だから。
    • 適用根拠: 問(1)で時間と距離から振動数(またはその逆数)を求める際に使用。
  • 経路差に基づく干渉条件:
    • 選定理由: 複数の波源からの波が重なる点の振動の様子(強め合い/弱め合い)を決定するため。
    • 適用根拠: 問(2), (4), (5)で、点B、OC上の点、OB上の点における干渉状態を判断するために使用。波源が同位相(反射で位相変化なし)であることを確認した上で適用。
  • 定常波の概念と性質:
    • 選定理由: 逆向きに進む同じ波の重ね合わせによって特有の波形が生じるため。
    • 適用根拠: 問(3)の線分OA上での波の様子を記述・図示するために使用。自由端反射が腹になるという知識も重要。
  • 公式をただ暗記するのではなく、それがどのような物理現象や条件下で成り立つのかを理解した上で、問題の状況に合わせて正しく選択・適用する訓練が重要です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 時間の計算: 鏡像波源O’を設定 \(\rightarrow\) O’Bの距離を三平方で計算 \(\rightarrow\) \(t = \text{距離}/(f\lambda)\) で時間を求める。
  2. (2) B点の干渉: OB, O’Bの距離を計算 \(\rightarrow\) 経路差 \(\Delta L = O’B – OB\) を計算 \(\rightarrow\) \(\Delta L\) と \(m\lambda\) の関係から強め合い/弱め合いを判断。
  3. (3) OA上の定常波: 定常波であることを認識 \(\rightarrow\) 壁Aが腹、Oも腹と判断 \(\rightarrow\) 腹と節の位置を \(\lambda/4, \lambda/2\) の間隔で決定 \(\rightarrow\) 振幅 \(2a\) で波形を作図。
  4. (4) OC上の合成波: OC上の任意の点Pで経路差 \(O’P-OP\) を計算 \(\rightarrow\) 経路差が常に \(3\lambda\) であることを確認 \(\rightarrow\) 常に強め合い、かつ同方向の進行波なので振幅 \(2a\) の進行波と結論。
  5. (5) OB上の弱め合う点:
    • (方法1) OB上の点Q(\(OQ=x\))で経路差 \(\Delta L_Q = \sqrt{(3\lambda)^2+x^2}-x\) を計算 \(\rightarrow\) \(\Delta L_Q = (m+1/2)\lambda\) を \(x\) について解き、\(0 \le x \le 4\lambda\) を満たす整数 \(m\) の個数を数える。
    • (方法2) OBの両端O, Bでの経路差を求める (\(3\lambda\) と \(\lambda\)) \(\rightarrow\) 経路差が \([\lambda, 3\lambda]\) の範囲で変化することを確認 \(\rightarrow\) この範囲に入る \((m+1/2)\lambda\) の値を数える。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 平方根の計算: 三平方の定理を使う際の計算(特に \(\lambda^2\) の扱い)を正確に。\( \sqrt{25\lambda^2} = 5\lambda \) であり、\(25\lambda\) ではない。
  • 経路差の引き算の順序: 絶対値を取るか、常に大きい方から小さい方を引くように意識する。
  • \(m\) の取り扱い: \(m\) が0から始まる整数であることを意識し、条件を満たす \(m\) を丁寧に数え上げる。
  • 範囲の確認: 問(5)のように特定の線分上で点を考える場合、得られた解(\(x\) の値など)がその範囲内にあるかしっかり確認する。範囲外のものは解として不適切。
  • 図の活用: 複雑な幾何学的配置では、図に補助線を入れたり、数値を書き込んだりすることで、計算の助けとなり、ミスを減らせる。

解の吟味の習慣化

  • 物理的な妥当性:
    • 問(1)の時間は正の値か。
    • 問(2)で強め合い/弱め合いの判断は、経路差が波長の何倍になっているかという具体的な数値と整合しているか。
    • 問(3)の定常波の腹と節の配置は、自由端(腹)の条件や \(\lambda/2\) の間隔と矛盾しないか。O点も腹になるのは妥当か。
    • 問(5)で得られた弱め合う点の個数が、極端に多すぎたり少なすぎたりしないか。例えば、経路差の最大と最小の間に、半波長の奇数倍がいくつ入るかという感覚と合うか。
  • 特殊なケースでの確認:
    • もし \(OA=0\)(波源が壁際)なら、OとO’が重なり、OA上は常に強め合う(振幅2aの定常波)。
    • もし壁が非常に遠く (\(OA \to \infty\)) にあれば、反射波の影響は小さくなり、ほぼOからの進行波のみになるはず。
  • 単位の一貫性: 時間、距離、速さ、波長、振動数の単位が物理法則の式の中で正しく対応しているか。

問題2 (宇都宮大+宮崎大+慶應大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、一様な媒質中を平面波が反射面に向かって斜めに入射し、固定端反射する状況を扱っています。入射波の性質、反射波の作図、そして入射波と反射波の干渉によって生じる強め合いのパターンについて考察します。

与えられた条件
  • 一様な媒質中を進む平面波。
  • 反射面に向かって入射角 \(\theta\) で入射。
  • 図は入射波の山(実線)と谷(点線)の様子を示す。
  • 波の波長は \(\lambda\)、周期は \(T\)。
  • 座標軸: 原点Oを反射面上の点とし、反射面に沿ってx軸、反射面に垂直に入射側へy軸をとる。
  • (2)において、入射波は反射面で固定端反射をする。
問われていること
  • (1) x軸にそって伝わる波(x軸上での見かけの波)の波長 \(\lambda_x\) と速さ \(v_x\)。および、y軸にそって伝わる波(y軸上での見かけの波)の波長 \(\lambda_y\) と速さ \(v_y\)。
  • (2) 与えられた図の状況における、反射波の山(実線)と谷(点線)の作図。
  • (3) 入射波と反射波が干渉してできる強め合いの線(強め合う点を連ねた線)の作図。
  • (4) (3)で描いた強め合いの線の間隔 \(d\)。
  • Q. (コラム) 波を光波とし、反射面をスクリーンに変えた場合に、2つの光線を特定の角度で入射させたときの干渉縞の間隔。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、平面波の基本的な性質(波長、周期、速さ)の理解を前提として、波の反射(特に固定端反射)と、それによって生じる入射波と反射波の干渉について深く掘り下げるものです。「見かけの波長・速さ」という概念や、干渉による定常波の形成、強め合いの条件などがポイントとなります。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 波の進行と波面: 波の進行方向(射線)と波面は常に垂直です。波長 \(\lambda\) は射線方向での山と山(または谷と谷)の間隔です。
  2. 見かけの波長と速さ: ある軸に沿って波の様子を観測すると、その軸上での波のパターンから「見かけの波長」や「見かけの速さ」が定義できます。これらは波の進行方向と軸のなす角度に依存します。
  3. 反射の法則: 入射角と反射角は等しい。
  4. 固定端反射: 波が固定端で反射する際には、位相が \(\pi\)(180°)反転します。つまり、山として入射した波は谷として反射され、谷として入射した波は山として反射されます。反射面は常に変位が0の節となります。
  5. 波の干渉と定常波: 入射波と反射波が重なり合う領域では干渉が起こります。特に、同じ振幅と波長を持つ波が互いに逆向きに進んで重なると定常波が形成され、振幅が極大となる「腹」と常に振幅が0の「節」が空間に固定されて現れます。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. (1) まず、入射波の波面とx軸、y軸がなす幾何学的な関係から、各軸上での見かけの波長 \(\lambda_x, \lambda_y\) を \(\lambda\) と \(\theta\) を用いて表します。速さは、これらの見かけの波長を周期 \(T\) で割ることで求めます。
  2. (2) 固定端反射の条件(反射面で山と谷が反転する)と反射の法則(入射角と反射角が等しい)を考慮して、反射波の波面(山と谷)を作図します。
  3. (3) (2)で描いた反射波と元の入射波の図を重ね合わせ、入射波の山と反射波の山が重なる点、および入射波の谷と反射波の谷が重なる点を見つけ出し、それらを結んで強め合いの線を描きます。
  4. (4) (3)で描いた強め合いの線は等間隔に並ぶはずです。この間隔 \(d\) を、幾何学的な考察や、y軸方向の定常波の腹の間隔として求めます。
  5. コラムQ: 光の干渉における明線(強め合い)の間隔を、与えられた2つのケースについて、波の重ね合わせの原理や見かけの波長の考え方を用いて計算します。

それでは、各設問について詳しく見ていきましょう。

問(1)

思考の道筋とポイント
平面波の波長 \(\lambda\) は、波の進行方向(射線)に沿った距離です。x軸やy軸に沿って波のパターンを見るときの「見かけの波長」は、この \(\lambda\) と入射角 \(\theta\)(波の進行方向とy軸のなす角)を用いて三角法で求めることができます。速さは、求めた見かけの波長を波の周期 \(T\) で割れば得られます。

この設問における重要なポイント

  • 波長 \(\lambda\) は波の進行方向(射線)に沿った山と山の間隔。
  • 見かけの波長 \(\lambda_x, \lambda_y\) を図と三角比を用いて \(\lambda, \theta\) で表す。
  • 波の周期 \(T\) は観測方向によらず一定。
  • 速さ = 見かけの波長 / 周期。

具体的な解説と立式
入射波は、その進行方向(射線)がy軸(反射面の法線)となす角が \(\theta\) です。波面は射線と垂直です。

x軸にそって伝わる波(x軸上の見かけの波):
x軸上で隣り合う同位相の点(例えば、入射波の山を示す実線がx軸と交わる点同士)の間隔が、x軸にそった波長 \(\lambda_x\) です。
図より、波面(山線)とx軸のなす角は \(\theta\) です(平行線の錯角、または波面と射線の垂直関係から)。
直角三角形を考えると、\(\lambda = \lambda_x \sin\theta\) という関係が見いだせます。
よって、x軸にそった波長 \(\lambda_x\) は、
$$\lambda_x = \frac{\lambda}{\sin\theta} \quad \cdots ①$$x軸にそった波の速さ \(v_x\) は、この \(\lambda_x\) を周期 \(T\) で割ったものなので、$$v_x = \frac{\lambda_x}{T} = \frac{\lambda}{T\sin\theta} \quad \cdots ②$$

y軸にそって伝わる波(y軸上の見かけの波):
同様に、y軸上で隣り合う同位相の点の間隔が、y軸にそった波長 \(\lambda_y\) です。
図より、波面(山線)とy軸のなす角は \(90^\circ – \theta\) です。
あるいは、射線(波の進行方向)とy軸のなす角が \(\theta\) であることから、直角三角形を考えると \(\lambda = \lambda_y \cos\theta\) という関係が見いだせます。
よって、y軸にそった波長 \(\lambda_y\) は、
$$\lambda_y = \frac{\lambda}{\cos\theta} \quad \cdots ③$$y軸にそった波の速さ \(v_y\) は、この \(\lambda_y\) を周期 \(T\) で割ったものなので、$$v_y = \frac{\lambda_y}{T} = \frac{\lambda}{T\cos\theta} \quad \cdots ④$$

使用した物理公式

  • 三角比の定義
  • 波の速さ・波長・周期の関係: \(v = \lambda/T\)
計算過程

上記「具体的な解説と立式」で各式が導出されています。
\(\lambda_x = \displaystyle\frac{\lambda}{\sin\theta}\)
\(v_x = \displaystyle\frac{\lambda}{T\sin\theta}\)
\(\lambda_y = \displaystyle\frac{\lambda}{\cos\theta}\)
\(v_y = \displaystyle\frac{\lambda}{T\cos\theta}\)

計算方法の平易な説明

平面波が斜めに進んでいるとき、x軸やy軸に沿ってその波の形だけを見ると、波の山から次の山までの間隔(見かけの波長)や、そのパターンが進む速さ(見かけの速さ)は、波が実際に進む方向での波長や速さとは異なります。
x軸方向では、図から幾何学的な関係(三角比)を考えると、見かけの波長 \(\lambda_x\) は \(\lambda/\sin\theta\) となります。この見かけの波長を周期 \(T\) で割ると、見かけの速さ \(v_x\) が得られます。
同様にy軸方向では、見かけの波長 \(\lambda_y\) は \(\lambda/\cos\theta\) となり、見かけの速さ \(v_y\) は \(\lambda_y/T\) で計算できます。

結論と吟味

x軸にそって伝わる波の波長は \(\lambda_x = \displaystyle\frac{\lambda}{\sin\theta}\)、速さは \(v_x = \displaystyle\frac{\lambda}{T\sin\theta}\)。
y軸にそって伝わる波の波長は \(\lambda_y = \displaystyle\frac{\lambda}{\cos\theta}\)、速さは \(v_y = \displaystyle\frac{\lambda}{T\cos\theta}\)。
\(\sin\theta \le 1\) および \(\cos\theta \le 1\) なので、\(\lambda_x \ge \lambda\)、\(\lambda_y \ge \lambda\) となり、見かけの波長は実際の波長以上になります。また、速さについても、実際の波の速さ \(v = \lambda/T\) と比較すると \(v_x = v/\sin\theta \ge v\)、\(v_y = v/\cos\theta \ge v\) となり、見かけの速さは実際の波の速さ以上になります。これは物理的に妥当な結果です。模範解答とも一致しています。

解答 (1) \(\lambda_x = \displaystyle\frac{\lambda}{\sin\theta}\), \(v_x = \displaystyle\frac{\lambda}{T\sin\theta}\), \(\lambda_y = \displaystyle\frac{\lambda}{\cos\theta}\), \(v_y = \displaystyle\frac{\lambda}{T\cos\theta}\)

問(2)

思考の道筋とポイント
固定端反射では、反射面(この場合はx軸)において入射波の位相が \(\pi\)(180°)反転します。つまり、入射波の山が反射面に到達した瞬間、反射波はその点で谷として生成され、入射波の谷が到達した瞬間は反射波が山として生成されます。
また、反射の法則により、反射角は入射角に等しく \(\theta\) です。これは、反射波の進行方向(射線)がy軸(反射面の法線)となす角も \(\theta\) であり、反射波の波面はx軸に対して入射波の波面と対称な傾きを持つことを意味します(ただし山谷は反転)。これらをもとに、反射波の山(実線)と谷(点線)を作図します。

この設問における重要なポイント

  • 固定端反射:反射面で位相が \(\pi\) 反転(山は谷に、谷は山になる)。
  • 反射の法則:入射角=反射角 (\(\theta\))。
  • 反射波の波面の傾きは、入射波の波面をx軸で折り返し、さらにy軸に対しても折り返したような形になるが、山谷の反転を考慮する。

具体的な解説と立式
(これは作図問題なので、立式の代わりに作図の手順を説明します。)
1. 反射面での位相の反転の確認: 反射面(x軸)は固定端です。したがって、入射波が山(実線)でx軸に到達する点では、反射波は谷(点線)として始まります。逆に入射波が谷(点線)でx軸に到達する点では、反射波は山(実線)として始まります。
2. 反射波の進行方向の決定: 反射の法則により、反射角は入射角 \(\theta\) と等しくなります。入射波の射線がy軸となす角が \(\theta\) であったので、反射波の射線もy軸となす角が \(\theta\) となり、入射波とはy軸に対して対称な方向に進みます。
3. 反射波の波面の作図:

  • 入射波の山(実線)がx軸と交わる各点から、反射波の進行方向に垂直に、かつ谷を示す点線を描き始めます。
  • 入射波の谷(点線)がx軸と交わる各点から、反射波の進行方向に垂直に、かつ山を示す実線を描き始めます。
  • これらの線分を、入射波の波面間隔(つまり波長 \(\lambda\) に関連する間隔)を保ちながら平行に描いていくと、反射波全体の波面が作図できます。結果として、反射波の波面群は、入射波の波面群をx軸で折り返し、さらに山と谷を入れ替えた形になります。

使用した物理公式

  • 固定端反射の性質(位相\(\pi\)反転)
  • 反射の法則
計算過程

(作図問題のため、計算過程は省略)

計算方法の平易な説明

波が「固定端」と呼ばれる種類の壁で反射するとき、波の形は上下ひっくり返って(山は谷に、谷は山になって)跳ね返ります。また、光が鏡で反射するように、波が進む向きも入射角と同じ角度(反射角)で反射します。
これらのルールに従って、問題の図に描かれている入射波(実線が山、点線が谷)に対して、反射面(x軸)で山と谷が入れ替わり、かつ進行方向が反射の法則に従うように、反射波の山(新しい実線)と谷(新しい点線)を描き込みます。

結論と吟味

作図結果は、入射波の波面をx軸で反転させ(鏡像のように)、さらに山と谷を入れ替えたものになります。模範解答の図cに示されている細い赤線(反射波)と同様の図が描ければ正解です。

解答 (2) (模範解答の図cの細い赤線を参照し、入射波の山が反射面で谷に、谷が山になるように、反射角\(\theta\)で進む波面を作図する。)

問(3)

思考の道筋とポイント
入射波と反射波が干渉し、強め合う点を連ねた線を描きます。強め合いが起こるのは、入射波の山と反射波の山が重なる点、または入射波の谷と反射波の谷が重なる点です。これらの点は、合成波の振幅が最大となる「腹」の連なり(腹線)に相当します。
(2)で描いた反射波の図と、元の入射波の図を重ね合わせ、入射波の実線と反射波の実線が交わる点(山と山の重なり)、および入射波の点線と反射波の点線が交わる点(谷と谷の重なり)を見つけ出し、それらの点を滑らかに結びます。
固定端反射の場合、反射面(x軸)は常に変位が0の「節」となる線になります。強め合いの線(腹線)は、この節線と平行に、一定の間隔で現れるはずです。

この設問における重要なポイント

  • 干渉による強め合い:山と山、または谷と谷が重なる。
  • 固定端反射面は定常波の節となる。
  • 強め合いの線は、定常波の腹線に相当する。

具体的な解説と立式
(作図問題なので、立式の代わりに作図の手順を説明します。)
1. 重ね合わせの原理の適用: 入射波と(2)で描いた反射波を同時に考えます。
2. 強め合う点の特定:

  • 入射波の山(実線)と反射波の山((2)で作図した実線)が交差する点を探します。これらの点では、波の変位が正の方向に大きく重なり合います。
  • 入射波の谷(点線)と反射波の谷((2)で作図した点線)が交差する点を探します。これらの点では、波の変位が負の方向に大きく重なり合います。

3. 強め合いの線の作図: 上記で特定した点群を滑らかに結びます。これらの線は、x軸(反射面)に平行な直線群として現れるはずです。これらの線上が、常に大きく振動する「腹線」となります。
固定端反射であるため、反射面 \(y=0\)(x軸)は定常波の節となります。最初の腹線(強め合いの線)は \(y = \lambda_y/4\) の位置に現れ、その後 \(\lambda_y/2\) の間隔で腹線が続きます。

使用した物理公式

  • 波の重ね合わせの原理
  • 干渉による強め合いの条件
  • 定常波の腹の位置
計算過程

(作図問題のため、計算過程は省略)

計算方法の平易な説明

入射してくる波と反射してくる波が重なると、場所によって波が強め合ったり弱め合ったりします。「強め合いの線」とは、波が最も大きく振動する場所を結んだ線のことです。これは、入射波の「山」と反射波の「山」が同時に来る場所、または入射波の「谷」と反射波の「谷」が同時に来る場所を結ぶことで見つかります。
元の図の入射波(実線が山、点線が谷)と、(2)で描いた反射波(実線が山、点線が谷)を重ねて、実線同士が交わる点や点線同士が交わる点を探します。これらの点を結ぶと、x軸に平行ないくつかの太線が描けます。これが強め合いの線です。

結論と吟味

作図結果は、x軸に平行な複数の直線となります。これらは定常波の腹の位置を結んだ線(腹線)です。模範解答の図cに示されている太い赤線と同様の図が描ければ正解です。

解答 (3) (模範解答の図cの太い赤線を参照し、入射波の山(谷)と反射波の山(谷)が重なる点を連ねた、x軸に平行な複数の直線を描く。)

問(4)

思考の道筋とポイント
(3)で描いた強め合いの線(腹線)は、x軸に平行に等間隔で並んでいます。この間隔 \(d\) を求めます。
y軸方向に見ると、入射波と反射波によって定常波ができています。反射面(x軸)は固定端なので節になります。定常波の腹と腹の間隔は、y軸方向の波長 \(\lambda_y\) の半分 (\(\lambda_y/2\)) です。この腹と腹の間隔が、求める強め合いの線の間隔 \(d\) に相当します。
(1)で求めた \(\lambda_y = \lambda/\cos\theta\) の関係を利用します。
あるいは、模範解答の本文のように、図形的に隣り合う強め合いの線と波面との関係から求めることもできます。

この設問における重要なポイント

  • 強め合いの線は定常波の腹線である。
  • 固定端反射面(x軸)は定常波の節である。
  • 定常波の腹と腹の間隔は、その方向の波長の半分。
  • (1)で求めたy軸方向の波長 \(\lambda_y\) を利用する。

具体的な解説と立式
y軸方向には、入射波(y軸負方向に進む成分を持つ)と反射波(y軸正方向に進む成分を持つ)が干渉して定常波が形成されます。
反射面(x軸、すなわち \(y=0\))は固定端反射なので、定常波の節になります。
定常波の腹は、節から \(\lambda_y/4\) の距離に最初に現れ、その後は \(\lambda_y/2\) の間隔で交互に腹と節が現れます。
したがって、強め合いの線(腹線)の間隔 \(d\) は、隣り合う腹の間の距離に等しく、これはy軸方向の波長 \(\lambda_y\) の半分です。
$$d = \frac{\lambda_y}{2} \quad \cdots ⑤$$
(1)で求めたように、y軸にそった波長 \(\lambda_y\) は \(\lambda_y = \displaystyle\frac{\lambda}{\cos\theta}\) でした。これを式⑤に代入すると、
$$d = \frac{1}{2} \cdot \frac{\lambda}{\cos\theta} = \frac{\lambda}{2\cos\theta} \quad \cdots ⑥$$

使用した物理公式

  • 定常波の腹と腹の間隔: \(\lambda_{\text{その方向}}/2\)
  • y軸方向の波長(問(1)の結果): \(\lambda_y = \lambda/\cos\theta\)
計算過程

上記の「具体的な解説と立式」で式⑥が導出されています。
$$d = \frac{\lambda}{2\cos\theta}$$

計算方法の平易な説明

(3)で描いた強め合いの線は、x軸に平行で等間隔に並んでいます。この間隔 \(d\) を求めるには、y軸方向にできる定常波を考えます。
反射面(x軸)は固定端なので、定常波の「節」(まったく振動しない点)になります。強め合いの線は定常波の「腹」(最も大きく振動する点)の位置を結んだものです。節と隣の腹の間隔は、y軸方向の波長の1/4 (\(\lambda_y/4\)) で、腹と次の腹の間隔はy軸方向の波長の半分 (\(\lambda_y/2\)) です。
したがって、強め合いの線の間隔 \(d\) は \(\lambda_y/2\) です。
(1)で求めた \(\lambda_y = \lambda/\cos\theta\) を使うと、\(d = (\lambda/\cos\theta)/2 = \lambda/(2\cos\theta)\) となります。

結論と吟味

強め合いの線の間隔 \(d\) は \(\displaystyle\frac{\lambda}{2\cos\theta}\) です。これは模範解答(別解を含む)と一致しています。

解答 (4) \(d = \displaystyle\frac{\lambda}{2\cos\theta}\)

【コラム】Q. 波は光波とし、反射面のかわりにスクリーンを置く。波長\(\lambda\)の平行光線、光1と光2を次図(i)や(ii)のように当てると、スクリーン上には縞模様が現れる。それぞれの場合の縞の間隔を求めよ。

思考の道筋とポイント
これは光の干渉による縞模様(干渉縞)の間隔を求める問題です。スクリーン上で2つの光波がどのように重なり合うかを考えます。

具体的な解説と立式
(i) 光1が斜め入射(\(\theta\))、光2がスクリーンに垂直入射の場合
光2はスクリーンに垂直に入射するため、スクリーン上のどの点でも位相がそろっている(同じ波面が到達している)と考えることができます。
光1は入射角 \(\theta\) でスクリーンに入射します。光1の波面はスクリーンに対して傾いています。
スクリーン上のx軸方向で、光1の位相が \(2\pi\) ずれる距離が、縞の間隔(光1のx軸方向の波長 \(\lambda_x\))となる、と考えられます。
(1)で求めたように、入射角 \(\theta\) (波の進行方向と法線のなす角) の場合、スクリーン(x軸に平行)上での波長 \(\lambda_x\) は、
$$\lambda_x = \frac{\lambda}{\sin\theta}$$
これが縞の間隔となります。

(ii) 光1と光2がスクリーンに対して対称に、それぞれ角度 \(\theta\) で入射する場合
スクリーン上で、2つの光波が干渉します。それぞれの光のスクリーン(x軸)方向の成分を考えると、見かけの波長 \(\lambda_x = \lambda/\sin\theta\) を持つ波が、x軸に沿って互いに逆向きに進んで重なり合う状況とみなせます。
これは定常波を形成し、定常波の腹と腹の間隔が強め合いの縞(明線)の間隔となります。
定常波の腹と腹の間隔は、その定常波の波長(この場合はスクリーン上の見かけの波長 \(\lambda_x\))の半分です。
したがって、縞の間隔 \(d_{\text{縞}}\) は、
$$d_{\text{縞}} = \frac{\lambda_x}{2} = \frac{1}{2} \cdot \frac{\lambda}{\sin\theta} = \frac{\lambda}{2\sin\theta}$$

使用した物理公式

  • (i) 見かけの波長: \(\lambda_x = \lambda/\sin\theta\)
  • (ii) 定常波の腹の間隔: (見かけの波長)/2
計算過程

(i)
縞の間隔 = \(\lambda_x = \displaystyle\frac{\lambda}{\sin\theta}\)

(ii)
縞の間隔 = \(\displaystyle\frac{\lambda_x}{2} = \frac{\lambda}{2\sin\theta}\)

計算方法の平易な説明

(i) 光2はスクリーンにまっすぐ当たるので、スクリーン上ではどこも同じタイミングで波が来ます。光1は斜めに当たるので、スクリーン上で波の山が続く間隔は、もとの波長 \(\lambda\) を \(\sin\theta\) で割ったものになります。これがそのまま干渉縞の間隔です。
(ii) 2つの光がスクリーンに同じ角度で、左右対称に入る場合、スクリーン上では2つの波が反対方向からやってきて重なり合い、「定常波」という波の形ができます。この定常波の、最も明るくなる部分(腹)と次の最も明るくなる部分(腹)の間隔が干渉縞の間隔になります。これは、スクリーン上での波の山から山までの間隔(見かけの波長 \(\lambda/\sin\theta\))のちょうど半分になります。

結論と吟味

(i) の場合の縞の間隔は \(\displaystyle\frac{\lambda}{\sin\theta}\)。
(ii) の場合の縞の間隔は \(\displaystyle\frac{\lambda}{2\sin\theta}\)。
これらはQの解答PDFに記載されている結果と一致しています。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • 平面波の表現と見かけの波長・速さ:波の進行方向(射線)と波面は垂直であり、波長 \(\lambda\) は射線方向のものです。観測する軸が射線と角度を持つ場合、その軸上での波のパターンは「見かけの波長」と「見かけの速さ」を持ち、これらは三角比を用いて元の波長・速さと関連付けられます。
  • 反射の法則と固定端反射:波が境界面で反射する際、入射角と反射角は等しくなります。固定端反射では、反射時に位相が \(\pi\) (180°)反転し、反射面は定常波の節となります。
  • 波の干渉と重ね合わせの原理:複数の波が同じ場所に来ると、それらの変位が足し合わされます(重ね合わせの原理)。これにより、特定の場所では波が強め合ったり弱め合ったりします(干渉)。
  • 定常波の形成:同じ振幅、同じ波長の波が互いに逆向きに進んで重なると定常波ができます。定常波には、振幅が常に0の「節」と、振幅が最大の「腹」が交互に現れます。腹と腹(または節と節)の間隔は、その方向での波長の半分です。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • 薄膜干渉やニュートンリングなど、光が反射を繰り返して干渉する問題の基礎。
    • 音波の反射と定常波(気柱の共鳴など)。
    • ドップラー効果で、波源や観測者が運動する際に観測方向によって波長や振動数がどう変わるかを考える問題の、幾何学的な側面の理解。
    • X線の結晶回折(ブラッグ反射)など、周期構造による波の干渉・回折現象。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 波面の形状と進行方向:まず、入射する波が平面波か球面波かなどを把握し、その進行方向(射線)と波面(同位相の点を結んだ線や面)の関係を明確にする。
    2. 反射の条件:反射が自由端反射か固定端反射かを確認する。これにより反射波の位相が決まる。
    3. 幾何学的関係:入射角、反射角、波面と各軸のなす角など、図形的な情報を正確に読み取り、三角比などを活用して必要な長さや角度を求める。
    4. 干渉の基本条件:強め合いは「山と山」または「谷と谷」の重なり、弱め合いは「山と谷」の重なりであるという基本に立ち返る。定常波の場合、腹が強め合い、節が弱め合い(または常に変位0)に対応する。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
    • 「見かけの波長」や「見かけの速さ」は、あくまで特定の軸上で観測した場合の波のパターンであり、波が実際にその速さでエネルギーを運んでいるわけではないことに注意(位相速度の成分)。
    • 固定端反射の場合、反射面が節になるという事実は、定常波のパターンを決定する上で非常に強力な手がかりとなる。
    • 作図問題では、波長や角度の関係をできるだけ正確に図に反映させることが、正しい結論を導くために重要。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 見かけの波長計算での三角比の誤用:
    • 現象: \(\sin\theta\) と \(\cos\theta\) を取り違えたり、角度 \(\theta\) の取り方を間違えたりする。
    • 対策: 必ず図を描き、どの辺が \(\lambda\) で、どの辺が \(\lambda_x\) や \(\lambda_y\) に対応し、それらがどの角度と関係しているかを正確に把握する。直角三角形を見つけて定義通りに三角比を適用する。
  • 固定端反射と自由端反射の混同:
    • 現象: 反射条件を間違え、位相の反転の有無や反射面が節になるか腹になるかを誤る。
    • 対策: 「固定端=位相\(\pi\)反転=節」、「自由端=位相反転なし=腹」という対応をしっかり覚える。
  • 定常波の腹と節の間隔の誤解:
    • 現象: 腹と腹(または節と節)の間隔を \(\lambda\) としたり、腹と節の間隔を \(\lambda/2\) としたりする。
    • 対策: 腹と腹(節と節)の間隔は \(\lambda/2\)、腹と隣の節の間隔は \(\lambda/4\) であることを正確に記憶する。ここでいう \(\lambda\) は、その定常波が形成されている方向での波長(問(4)なら \(\lambda_y\))。
  • 強め合いの線の作図ミス:
    • 現象: 山と谷の重なりを強め合いとしてしまったり、線の引き方が不正確だったりする。
    • 対策: 強め合いは「山と山」または「谷と谷」の重なりであることを再確認し、作図した入射波と反射波の対応する波面(実線同士、点線同士)の交点を丁寧に拾って結ぶ。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • 波面の進行の図示:問題に与えられている図は、まさに波面が時間とともにどう見えるかを示している。これを理解することが第一歩。実線が山、点線が谷という対応を明確にする。
    • 反射波の作図((2)):入射波の波面を基準に、反射の法則(角度)と固定端反射(山谷反転)を適用して、反射波の波面を正確に描くことが、後の干渉を考える上での基礎となる。
    • 干渉パターンの可視化((3)):入射波と反射波の波面図を重ね合わせ、山同士・谷同士が重なる点をプロットしていくことで、強め合いの線(定常波の腹線)が自然と浮かび上がってくる。
    • 幾何学的関係の抽出((1),(4)):波長 \(\lambda\) と見かけの波長 \(\lambda_x, \lambda_y\)、あるいは強め合いの線の間隔 \(d\) を求める際に、図中に適切な直角三角形を見つけ出し、辺の長さと角度の関係を三角比で表現することが有効だった。
  • 図を描く際に注意すべき点は何か:
    • 波面と射線(進行方向)は常に垂直であることを意識する。
    • 角度 \(\theta\) がどの部分の角度を指しているのかを正確に把握する(法線となす角か、面となす角かなど)。
    • 固定端反射では、反射面上で入射波と反射波が常に打ち消し合う(節になる)ように描く。
    • 定常波の腹と節は、波長の \(1/4\) の間隔で交互に現れることを意識して、位置関係を正確に描く。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 見かけの波長(\(\lambda_x = \lambda/\sin\theta\), \(\lambda_y = \lambda/\cos\theta\)):
    • 選定理由: これは公式として暗記するものではなく、その都度、図と三角法の定義から導出するもの。
    • 適用根拠: 平面波の波面と座標軸がなす幾何学的関係から、座標軸上での波の繰り返しパターン(見かけの波長)を求めるために、三角比の関係を適用した。
  • 定常波の腹(強め合いの線)の間隔(\(d = \lambda_{\text{その方向}}/2\)):
    • 選定理由: 定常波が形成される際の、腹と腹(または節と節)の間の距離は、その定常波の波長の半分であるという普遍的な性質だから。
    • 適用根拠: 問(4)で、y軸方向に形成される定常波の腹線の間隔を求める際に、y軸方向の見かけの波長 \(\lambda_y\) を用いて適用した。
  • 公式の丸暗記ではなく、なぜその関係が成り立つのか(多くは幾何学的な考察や波の基本的な定義から導かれる)を理解することが、応用力を高める上で重要です。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) 見かけの波長・速さ:
    • x軸方向:図から \(\lambda = \lambda_x \sin\theta\) の関係を見出し \(\lambda_x\) を求める。\(\rightarrow v_x = \lambda_x/T\)。
    • y軸方向:図から \(\lambda = \lambda_y \cos\theta\) の関係を見出し \(\lambda_y\) を求める。\(\rightarrow v_y = \lambda_y/T\)。
  2. (2) 反射波の作図:反射面で位相が\(\pi\)反転(山⇔谷)し、反射角=入射角となるように波面を描く。
  3. (3) 強め合いの線の作図:入射波と(2)の反射波を重ね、山と山、谷と谷が重なる点を連ねて線を描く。
  4. (4) 強め合いの線の間隔:y軸方向の定常波を考える \(\rightarrow\) 反射面が節なので、腹の間隔は \(\lambda_y/2\) \(\rightarrow\) (1)の \(\lambda_y\) を代入して \(d = \lambda/(2\cos\theta)\) を得る。
  5. (Q) 干渉縞の間隔:
    • (i) 光1のスクリーン上での見かけの波長 \(\lambda_x = \lambda/\sin\theta\) が縞間隔となる。
    • (ii) スクリーン上で波長 \(\lambda_x = \lambda/\sin\theta\) の定常波ができると考え、腹の間隔 \(\lambda_x/2 = \lambda/(2\sin\theta)\) が縞間隔となる。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 三角比の正確な適用:図から直角三角形を見つけ、どの辺が斜辺・対辺・隣辺にあたるかを正確に把握し、\(\sin, \cos, \tan\) を正しく使い分ける。特に \(\theta\) の位置に注意。
  • 作図の丁寧さ:(2), (3)のような作図問題では、線の傾きや間隔をできるだけ正確に描くことが、正しいパターンを認識する上で重要。フリーハンドでも、平行性や垂直性、対称性などを意識する。
  • 固定端・自由端の区別:反射の種類によって位相変化や定常波の節・腹の位置が変わるため、問題文の条件をしっかり確認する。
  • 波長と半波長:強め合い・弱め合いの条件や、定常波の腹・節の間隔で、波長 \(\lambda\) そのものを使うのか、半波長 \(\lambda/2\) を使うのか、1/4波長 \(\lambda/4\) を使うのかを混同しないように注意する。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理量のオーダーと単位:波長や間隔は長さの単位、速さは長さ/時間の単位、周期は時間の単位であることを常に意識する。
  • 角度 \(\theta\) の極端なケースでの振る舞い:
    • 例えば、\(\theta \to 0\)(垂直入射に近い)の場合、\(\sin\theta \to 0\), \(\cos\theta \to 1\)。
      このとき \(\lambda_x \to \infty\)(x軸方向には波のパターンが見えにくくなる)、\(\lambda_y \to \lambda\)(y軸方向が波の進行方向そのものになる)。
      \(d = \lambda/(2\cos\theta) \to \lambda/2\)。これは垂直入射でできる定常波の腹の間隔と一致。
    • \(\theta \to 90^\circ\)(反射面にほぼ平行に入射)の場合、\(\sin\theta \to 1\), \(\cos\theta \to 0\)。
      このとき \(\lambda_x \to \lambda\)、\(\lambda_y \to \infty\)。
      \(d = \lambda/(2\cos\theta) \to \infty\)。これは強め合いの線が非常に離れることを意味し、直感的にも妥当。
  • 作図結果との整合性:計算で求めた間隔 \(d\) や見かけの波長が、作図した波面の様子と矛盾していないか視覚的に確認する。

問題3 (新潟大+名古屋大+金沢大)

【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう

この問題は、ヤングの干渉実験を題材に、光の波動性(干渉、回折)に関する理解を問うものです。単スリットの役割、複スリットからの光の経路差の導出、明線の間隔、明るさの変化、さらには光源の位置変化や薄膜の挿入が干渉縞に与える影響など、多角的な設問が含まれています。

与えられた条件
  • 光源ランプQ: 波長 \(\lambda\) の単色光を出す。
  • 複スリットA, B: 間隔 \(d\)。スリットSから等距離にある。
  • スクリーンX: スリットA, Bに平行で、距離 \(l\) だけ離れている。
  • 点O: スリットSと複スリットABの中点を結んだ直線がスクリーンXと交わる点。Oを原点として、スクリーン上でOから上向きにx軸をとる。
  • 近似式: \(|y| \ll 1\) のとき \((1+y)^\alpha \approx 1+\alpha y\) を用いる。
  • 条件(2): \(d, x\) は \(l\) に比べて十分小さい。
  • 条件(5): スリットSと複スリット板との距離を \(L\) とし、\(L\) は \(d\) に比べて十分大きい。スリットSをABに平行に上へ \(a\) だけ移動する。
  • 条件(6): スリットSを図の位置に戻し、スリットBだけを屈折率 \(n\)、厚さ \(\delta\) の透明な薄膜で覆う。
問われていること
  • (1) スリットSの役割(30字程度)。
  • (2) スクリーンX上の点P(座標 \(x\))における、スリットAからの光とスリットBからの光の距離差(経路差)AP-BPを \(l, d, x\) を用いて表す(計算過程も示す)。
  • (3) 明線の間隔 \(\Delta x\) を \(l, d, \lambda\) を用いて表す。
  • (4) スリットBだけを閉じた場合、点Oでの明るさは、両方のスリットが開いているときと比べて何倍になるか。
  • (5) スリットSを移動させた場合、スクリーンX上の明線はどちらへどれだけ移動するか。
  • (6) スリットBを薄膜で覆った場合、スクリーンX上の明線はどちらへどれだけ移動するか。
  • Q. (コラム) 複スリット板を取り除き、スリットS(スリット幅 \(\Delta\))だけにした場合の、Oに最も近い弱め合いの位置Rに対応する角度 \(\theta_R\) の条件式。

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題は、ヤングの実験を基本としつつ、光源のコヒーレンス、経路差の精密な計算、干渉条件、明るさと振幅の関係、そして外部条件の変化(光源の移動、薄膜の挿入)が干渉パターンに及ぼす影響を考察する、光の波動光学における重要なテーマを網羅しています。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 光の干渉と可干渉性(コヒーレンス): 干渉縞が観測されるためには、複数の光源(ここではスリットA、B)から出る光が互いに可干渉(コヒーレント)である必要があります。つまり、位相関係が時間的に安定していることが求められます。
  2. 経路差と光路差: 波の干渉では、2つの経路の長さの差である「経路差」が重要です。媒質が異なる場合は、屈折率を考慮した「光路差」(=屈折率 × 距離)で考えます。
  3. ヤングの実験における経路差の近似式: スリット間隔 \(d\) やスクリーン上の座標 \(x\) がスリットースクリーン間距離 \(l\) に比べて十分小さい場合、経路差は \(\frac{dx}{l}\) と近似できます。
  4. 干渉条件(明暗):
    • 明線(強め合い): (光路差) = \(m\lambda\) (\(m\) は整数)
    • 暗線(弱め合い): (光路差) = \((m+\frac{1}{2})\lambda\) (\(m\) は整数)

    (ただし、反射などで初期位相差が生じない場合)

  5. 波の明るさ(強度)と振幅: 光の明るさ(強度)は、光波の振幅の2乗に比例します。
  6. 単スリットによる回折(フラウンホーファー回折): スリットの幅がある程度大きい場合、スリット自身を多数の点光源の集まりと見なすことで、回折現象(光が回り込む現象と、それによる干渉)が起こります。

これらの原理を各設問の状況に合わせて適用し、計算や考察を進めていきます。

問(1)

思考の道筋とポイント
ヤングの実験において、光源の前に単スリットSを置く目的は、複スリットA、Bに到達する光の位相をそろえる(または位相差を一定に保つ)ことです。これにより、AとBがあたかもコヒーレントな(可干渉な)2つの波源のように振る舞い、スクリーン上に安定した干渉縞を形成できるようになります。

この設問における重要なポイント

  • 単スリットSの役割は、光の可干渉性(コヒーレンス)を高めること。
  • スリットSを通過した光は回折し、球面波(または円筒波)として広がる。
  • SがA,Bから等距離にあるため、A,Bに到達する波は同位相となる。

具体的な解説と立式
(記述問題のため立式はありません。)
スリットSの主な役割は、光源からの光を回折させることにより、その先の複スリットAおよびBに到達する光の位相をそろえることです。光源ランプの光は通常、多数の独立した原子からの発光の集まりであり、そのままでは位相がバラバラです。スリットSを通過した光は、Sを新たな波源とする回折波として広がり、スリットAとBにはSからの距離が等しいため、同位相の波として到達します。これにより、AとBがコヒーレントな(可干渉な)波源として働き、スクリーンX上に鮮明で安定した干渉縞を形成することが可能になります。

使用した物理公式

  • (該当する直接的な公式はありませんが、光の回折と可干渉性の概念に基づきます。)
計算過程

(記述問題のため計算過程はありません。)

計算方法の平易な説明

ヤングの実験で最初にあるスリットSは、いわば「光のお行儀を良くする」役割をしています。普通の光源から出る光は、波のタイミング(位相)がバラバラなのですが、Sを通ることで波のタイミングがある程度そろい、その先の二つのスリットAとBに同じタイミングで光が届くようになります。AとBからタイミングのそろった光が出ることで、スクリーン上できれいな干渉の縞模様が見えるようになるのです。

結論と吟味

スリットSの役割は、「光を回折させ、スリットAとBを同位相の波源とすること。」(28字)などで表現できます。模範解答「Sの役割は、光を回折させ、スリットAとBでの位相を等しくすることにある。」も同様の趣旨です。

解答 (1) 光を回折させ、スリットA、Bに同位相の光を到達させるため。

問(2)

思考の道筋とポイント
スクリーンX上の点P(座標 \(x\))とスリットA、Bとの距離AP、BPをそれぞれ三平方の定理を用いて表します。スリットABの中点からスクリーンへの垂線の足をO(原点)とし、スリットAはOから見て \(x\) 軸負の方向に \(d/2\)、スリットBは正の方向に \(d/2\) の位置にあると考えます(図の座標設定に注意。図ではAが下、Bが上)。点PはOから \(x\) の位置です。
得られたAP、BPの式について、\(l\) に比べて \(x\) や \(d\) が十分小さいという条件と、与えられた近似式 \((1+y)^\alpha \approx 1+\alpha y\) (ここで \(\alpha=1/2\))を用いて、経路差 AP-BP を \(l, d, x\) で表します。

この設問における重要なポイント

  • 三平方の定理による距離の表現。
  • 与えられた近似式の正しい適用 (\(\alpha=1/2\) として用いる)。
  • \(d, x \ll l\) の条件下での近似計算。

具体的な解説と立式
図に従い、複スリットABの中点からスクリーンXへの垂線の足をO(原点)とします。スクリーンXは複スリットから距離 \(l\) の位置にあります。
スリットAの位置を \(x_A = -d/2\)、スリットBの位置を \(x_B = d/2\) とします(x軸の原点Oに対して)。点Pのx座標を \(x\) とします。
このとき、APとBPの長さは三平方の定理より、
$$AP = \sqrt{l^2 + \left(x – (-\frac{d}{2})\right)^2} = \sqrt{l^2 + \left(x+\frac{d}{2}\right)^2}$$
$$BP = \sqrt{l^2 + \left(x – \frac{d}{2}\right)^2}$$
これらの式を \(l\) でくくりだし、近似式を適用できる形にします。
$$AP = l \sqrt{1 + \left(\frac{x+d/2}{l}\right)^2}$$
ここで、\(y_A = \left(\frac{x+d/2}{l}\right)^2\) とおくと、\(d, x \ll l\) の条件から \(|y_A| \ll 1\) と考えられます。
近似式 \((1+y)^{1/2} \approx 1 + \frac{1}{2}y\) を用いると、
$$AP \approx l \left\{1 + \frac{1}{2}\left(\frac{x+d/2}{l}\right)^2\right\} \quad \cdots ①$$
同様に、
$$BP = l \sqrt{1 + \left(\frac{x-d/2}{l}\right)^2}$$
\(y_B = \left(\frac{x-d/2}{l}\right)^2\) とおくと、\(|y_B| \ll 1\) なので、
$$BP \approx l \left\{1 + \frac{1}{2}\left(\frac{x-d/2}{l}\right)^2\right\} \quad \cdots ②$$
したがって、距離差 \(AP-BP\) は、
$$AP-BP \approx l \left\{1 + \frac{1}{2}\left(\frac{x+d/2}{l}\right)^2\right\} – l \left\{1 + \frac{1}{2}\left(\frac{x-d/2}{l}\right)^2\right\} \quad \cdots ③$$

使用した物理公式

  • 三平方の定理
  • 近似式: \(|y|\ll1\) のとき \((1+y)^\alpha \approx 1+\alpha y\)
計算過程

式③を展開し、整理します。
$$AP-BP \approx \left\{l + \frac{1}{2l}\left(x+\frac{d}{2}\right)^2\right\} – \left\{l + \frac{1}{2l}\left(x-\frac{d}{2}\right)^2\right\}$$
$$AP-BP \approx \frac{1}{2l} \left\{ \left(x+\frac{d}{2}\right)^2 – \left(x-\frac{d}{2}\right)^2 \right\}$$
ここで、中括弧 \(\{\}\) の中は \((A+B)^2 – (A-B)^2 = 4AB\) の形をしています。\(A=x\)、\(B=d/2\) とすると、
$$\left(x+\frac{d}{2}\right)^2 – \left(x-\frac{d}{2}\right)^2 = 4 \cdot x \cdot \frac{d}{2} = 2xd$$
これを代入すると、
$$AP-BP \approx \frac{1}{2l} (2xd) = \frac{xd}{l}$$
模範解答に合わせて \(dx/l\) と表記します。
$$AP-BP \approx \frac{dx}{l}$$

計算方法の平易な説明

スクリーン上の点Pと、2つのスリットA、Bとの間の距離APとBPをそれぞれ計算します。これには、直角三角形を考えて三平方の定理を使います。その際、スリットからスクリーンまでの距離 \(l\) が、スリットの間隔 \(d\) やスクリーン上のPの位置 \(x\) に比べて非常に大きいという条件を利用して、計算を簡単にするための近似式(問題文に与えられているもの)を使います。APとBPをそれぞれ近似式で表した後、その差 AP-BP を計算すると、\(\frac{dx}{l}\) という簡単な形になります。

結論と吟味

距離差 AP-BP は \(\displaystyle\frac{dx}{l}\) と表されます。これはヤングの実験における経路差の基本となる近似式であり、\(d \ll l\) および \(x \ll l\) の条件下で有効です。模範解答と一致しています。

別解1: \(AP^2-BP^2\) を利用する方法
思考の道筋とポイント
経路差を直接求める代わりに、距離の2乗の差 \(AP^2 – BP^2\) を利用し、それを因数分解 \( (AP-BP)(AP+BP) \) して経路差 \(AP-BP\) を求める方法です。\(AP+BP \approx 2l\) という近似を用います。

この設問における重要なポイント

  • 三平方の定理から \(AP^2\) と \(BP^2\) を求める。
  • \(AP^2 – BP^2 = (AP-BP)(AP+BP)\) の関係を利用する。
  • \(AP+BP \approx 2l\) の近似を用いる。

具体的な解説と立式
三平方の定理より、
$$AP^2 = l^2 + \left(x+\frac{d}{2}\right)^2$$
$$BP^2 = l^2 + \left(x-\frac{d}{2}\right)^2$$
これらの差をとると、
$$AP^2 – BP^2 = \left(l^2 + \left(x+\frac{d}{2}\right)^2\right) – \left(l^2 + \left(x-\frac{d}{2}\right)^2\right)$$$$AP^2 – BP^2 = \left(x+\frac{d}{2}\right)^2 – \left(x-\frac{d}{2}\right)^2 \quad \cdots ④$$
一方、因数分解の公式より、
$$AP^2 – BP^2 = (AP-BP)(AP+BP)$$
ここで、\(d, x \ll l\) という条件から、\(AP \approx l\) および \(BP \approx l\) とみなせるため、
$$AP+BP \approx l+l = 2l$$
と近似できます。したがって、
$$(AP-BP)(AP+BP) \approx (AP-BP) \cdot 2l \quad \cdots ⑤$$
式④と⑤より、
$$(AP-BP) \cdot 2l \approx \left(x+\frac{d}{2}\right)^2 – \left(x-\frac{d}{2}\right)^2$$

使用した物理公式

  • 三平方の定理
  • 因数分解: \(A^2-B^2=(A-B)(A+B)\)
  • 近似: \(AP+BP \approx 2l\)
計算過程

右辺の \(\left(x+\frac{d}{2}\right)^2 – \left(x-\frac{d}{2}\right)^2\) を計算します。これは \((X+Y)^2 – (X-Y)^2 = 4XY\) の形なので、\(X=x, Y=d/2\) とすると、
$$\left(x+\frac{d}{2}\right)^2 – \left(x-\frac{d}{2}\right)^2 = 4 \cdot x \cdot \frac{d}{2} = 2xd$$
よって、
$$(AP-BP) \cdot 2l \approx 2xd$$
これを \(AP-BP\) について解くと、
$$AP-BP \approx \frac{2xd}{2l} = \frac{xd}{l}$$
模範解答に合わせて \(dx/l\) と表記します。
$$AP-BP \approx \frac{dx}{l}$$

計算方法の平易な説明

別の計算方法として、まずAPの2乗とBPの2乗を三平方の定理で表し、その差 \(AP^2 – BP^2\) を計算します。この差は \(2xd\) となります。
一方、\(AP^2 – BP^2\) は \((AP-BP)(AP+BP)\) と因数分解できます。ここで、APもBPもほぼ \(l\) に等しいので、\(AP+BP\) はおよそ \(2l\) と近似できます。
したがって、\((AP-BP) \times 2l \approx 2xd\) という関係が得られ、これを解くと経路差 \(AP-BP\) は \(\frac{dx}{l}\) となります。

結論と吟味

この別解によっても、同じ経路差 \(\displaystyle\frac{dx}{l}\) が得られました。近似の仕方が異なりますが、結果は一致します。

別解2: 幾何学的近似による方法
思考の道筋とポイント
\(d, x \ll l\) という条件は、スリットからスクリーンまでの距離 \(l\) が非常に長いことを意味し、このときスリットA, Bから点Pへ向かう光線 AP と BP はほぼ平行とみなせます。この近似のもとで、経路差を幾何学的に求める方法です。

この設問における重要なポイント

  • \(d, x \ll l\) のとき、AP と BP はほぼ平行と近似できる。
  • 経路差は、一方の光路からもう一方の光路へ下ろした垂線の長さで近似できる。
  • 微小角の近似 \(\sin\theta \approx \tan\theta \approx \theta\) (ラジアン単位)。

具体的な解説と立式
\(l\) が \(d\) や \(x\) に比べて非常に大きいとき、2つのスリットA、Bから点Pへ向かう光線APとBPはほぼ平行とみなすことができます。
スリットBからAPに対して垂線BC’を下ろすと、経路差は \(AC’\) の長さにほぼ等しくなります(模範解答の図ではAからBPに垂線ACを下ろし、経路差をBCとしている。ここでは模範解答の図の記号に合わせて説明します)。
図において、ABの中点をM、スクリーンX上の原点をOとし、点Pの座標を \(x\) とします。線分MPがMOとなす角を \(\theta\) とすると、\(x \ll l\) のため \(\theta\) は微小角であり、\(\tan\theta = \frac{x}{l}\) となります。
また、スリットからの光線がほぼ平行であるとみなすと、\(\angle BAC \approx \theta\) と考えられます(\(\triangle ABC\) は \(C\) が直角の直角三角形)。
このとき、経路差は \(BC = AB \sin\theta = d \sin\theta\) となります。
\(\theta\) が微小角なので、\(\sin\theta \approx \tan\theta\) と近似できます。
したがって、経路差は、
$$AP-BP \approx d \sin\theta \approx d \tan\theta = d \frac{x}{l} = \frac{dx}{l}$$

使用した物理公式

  • 三角比の定義
  • 微小角の近似: \(\sin\theta \approx \tan\theta\) (\(\theta \ll 1\) のとき)
計算過程

上記の「具体的な解説と立式」で経路差が導出されています。
経路差 \(\approx d \sin\theta\)。
\(\sin\theta \approx \tan\theta = \frac{x}{l}\) を用いて、
経路差 \(\approx d \cdot \frac{x}{l} = \frac{dx}{l}\)。

計算方法の平易な説明

スリットからスクリーンまでの距離 \(l\) が非常に長い場合、2つのスリットA, Bから点Pへ向かう光はほとんど平行に進んでいると考えることができます。このとき、一方のスリット(例えばA)からもう一方の光線(BP)に垂線を下ろし、その垂線の足とスリットBとの間の短い部分の長さが、おおよその経路差になります。
図形的に考えると、この経路差は \(d \sin\theta\) と表せます。ここで \(\theta\) は、スリットの中点から点Pを見込む角度です。\(\theta\) が非常に小さい角度の場合、\(\sin\theta\) は \(\tan\theta\) とほぼ等しく、\(\tan\theta\) は図から \(x/l\) と表せるので、経路差は \(d \cdot (x/l) = \frac{dx}{l}\) となります。

結論と吟味

この幾何学的な近似によっても、同じ経路差 \(\displaystyle\frac{dx}{l}\) が得られました。この方法は、特に回折格子など、多数のスリットからの光の干渉を考える際にも応用される考え方です。

解答 (2) \(\displaystyle\frac{dx}{l}\) (計算過程は上記の通り)

問(3)

思考の道筋とポイント
スクリーン上で明るい線(明線)ができる条件は、2つのスリットA、Bから点Pまでの光の経路差が、波長 \(\lambda\) の整数倍になるときです(スリットSがA、Bから等距離にあるため、AとBは同位相の波源とみなせる)。
(2)で求めた経路差の近似式を用いて、\(m\)番目の明線の位置 \(x_m\) を求め、隣り合う明線(例えば \(m\)番目と \(m+1\)番目)の位置の差 \(\Delta x\) を計算することで、明線の間隔を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 明線の条件(強め合い): 経路差 \( = m\lambda \) (\(m\) は整数)。
  • (2)で求めた経路差の近似式を利用する。
  • 明線の間隔 \(\Delta x\) は、隣り合う明線の位置の差。

具体的な解説と立式
明線は、スリットA、Bからの光が強め合う点にできます。スリットSがA、Bから等距離にあるため、AとBは同位相の波源とみなせます。このとき、強め合いの条件は経路差が波長 \(\lambda\) の整数倍となることです。
$$(AP-BP) = m\lambda \quad (m = 0, \pm 1, \pm 2, \dots) \quad \cdots ⑥$$(2)で求めた経路差 \(AP-BP \approx \displaystyle\frac{dx}{l}\) を代入すると、$$\frac{dx_m}{l} = m\lambda$$ここで \(x_m\) は \(m\) 番目の明線の位置(Oからの距離)を表します。
これを \(x_m\) について解くと、$$x_m = \frac{m\lambda l}{d} \quad \cdots ⑦$$
明線の間隔 \(\Delta x\) は、隣り合う明線(例えば \(m\) 番目と \(m+1\) 番目)の位置の差なので、
$$\Delta x = x_{m+1} – x_m \quad \cdots ⑧$$

使用した物理公式

  • 強め合いの条件(同位相波源): 経路差 \( = m\lambda \)
  • 経路差の近似式(問(2)の結果)
計算過程

式⑦を用いて \(x_{m+1}\) と \(x_m\) を式⑧に代入します。
$$x_{m+1} = \frac{(m+1)\lambda l}{d}$$$$\Delta x = x_{m+1} – x_m = \frac{(m+1)\lambda l}{d} – \frac{m\lambda l}{d}$$$$\Delta x = \frac{\lambda l}{d} ((m+1) – m) = \frac{\lambda l}{d} \cdot 1$$
$$\Delta x = \frac{\lambda l}{d}$$

計算方法の平易な説明

明るい線(明線)ができるのは、2つのスリットAとBから来る光の道のりの差(経路差)が、波長のちょうど整数倍 (\(0\lambda, 1\lambda, 2\lambda, \dots\)) になるときです。(2)でこの経路差は \(\frac{dx}{l}\) と求められたので、これを \(m\lambda\) (\(m\) は整数) と等しいとおきます。この式から、\(m\) 番目の明かりの位置 \(x_m\) は \(\frac{m\lambda l}{d}\) と表せます。
隣り合う明線の間隔は、例えば (\(m+1\)) 番目の明線の位置から \(m\) 番目の明線の位置を引けば求まります。計算すると、\(\frac{\lambda l}{d}\) となります。この間隔は \(m\) によらないので、明線は等間隔に並びます。

結論と吟味

明線の間隔 \(\Delta x\) は \(\displaystyle\frac{\lambda l}{d}\) です。これはヤングの実験における明線(または暗線)の間隔の基本公式であり、\(m\) に依存しないため、明線は等間隔に並ぶことがわかります。模範解答とも一致しています。

解答 (3) \(\Delta x = \displaystyle\frac{\lambda l}{d}\)

問(4)

思考の道筋とポイント
点O (\(x=0\)) は、経路差が0となるため、常に強め合って中央の明線ができます。このときの明るさを基準に考えます。光の明るさ(一般に波の強度)は、波の振幅の2乗に比例します。
スリットA、Bの両方が開いているとき、点Oでは2つのスリットからの光が同位相で重なり、振幅は各スリットからの光の振幅の和になります。
スリットBだけを閉じると、点OにはスリットAからの光だけが到達します。そのときの振幅と、両スリットが開いているときの合成振幅を比較し、明るさの比を求めます。

この設問における重要なポイント

  • 光の明るさ(強度)は振幅の2乗に比例する。
  • 点O (\(x=0\)) では、スリットA、Bからの光は同位相で強め合う。
  • 各スリットからの光の振幅を仮定して比較する。

具体的な解説と立式
点O (\(x=0\)) では、経路差は \(AP-BP = \frac{d \cdot 0}{l} = 0\) です。これは \(m=0\) の強め合いの条件を満たし、中央の明線となります。
スリットAから点Oに到達する光波の振幅を \(A_0\) とします。スリットBからも同様に振幅 \(A_0\) の光波が点Oに到達し、これらは同位相で重なり合います。
したがって、スリットAとBの両方が開いているとき、点Oでの合成波の振幅 \(A_{\text{両方}}\) は、
$$A_{\text{両方}} = A_0 + A_0 = 2A_0$$
光の明るさ(強度) \(I\) は振幅の2乗に比例するので、このときの明るさ \(I_{\text{両方}}\) は、
$$I_{\text{両方}} \propto (A_{\text{両方}})^2 = (2A_0)^2 = 4A_0^2 \quad \cdots ⑨$$
次に、スリットBだけを閉じると、点OにはスリットAからの光だけが到達します。このときの光波の振幅 \(A_{\text{片方}}\) は \(A_0\) です。
このときの明るさ \(I_{\text{片方}}\) は、
$$I_{\text{片方}} \propto (A_{\text{片方}})^2 = A_0^2 \quad \cdots ⑩$$
したがって、スリットBだけを閉じたときの点Oでの明るさが、両方のスリットが開いているときの明るさの何倍になるかを求めると、
$$\frac{I_{\text{片方}}}{I_{\text{両方}}} = \frac{k \cdot A_0^2}{k \cdot 4A_0^2} = \frac{1}{4}$$
(\(k\) は比例定数)

使用した物理公式

  • 波の重ね合わせの原理(振幅の足し算)
  • 明るさ(強度) \(\propto\) 振幅\(^2\)
計算過程

上記の「具体的な解説と立式」の通り、
スリットA, B両方の場合の明るさ \(I_{\text{両方}}\) は \(4A_0^2\) に比例。
スリットAのみの場合の明るさ \(I_{\text{片方}}\) は \(A_0^2\) に比例。
よって、その比は、
$$\frac{I_{\text{片方}}}{I_{\text{両方}}} = \frac{A_0^2}{4A_0^2} = \frac{1}{4}$$

計算方法の平易な説明

光の明るさは、波の揺れの大きさ(振幅)の2乗に比例します。
点Oでは、スリットAからの光とスリットBからの光が強め合っています。仮に、スリットAから来る光の振幅を1とすると、スリットBから来る光の振幅も1です。強め合うと、点Oでの振幅は \(1+1=2\) になります。このときの明るさは、振幅の2乗である \(2^2=4\) に比例します。
もしスリットBを閉じると、点OにはスリットAからの光しか来ません。その振幅は1なので、明るさは \(1^2=1\) に比例します。
したがって、スリットBを閉じたときの明るさは、両方開いていたときの \(1/4\) 倍になります。

結論と吟味

点Oでの明るさは \(\displaystyle\frac{1}{4}\) 倍になります。
スリットを1つ閉じると光のエネルギー量は半分になるように思えますが、干渉による強め合いの効果がなくなるため、振幅が半分になり、明るさ(振幅の2乗に比例)は1/4になります。これはよくある誤解しやすいポイントですが、干渉の結果としてエネルギーが再配分されることを理解していれば妥当な結果です。模範解答とも一致しています。

解答 (4) \(\displaystyle\frac{1}{4}\) 倍

問(5)

思考の道筋とポイント
スリットSをABに平行に上へ \(a\) だけ移動させると、SからAまでの光路長とSからBまでの光路長に差が生じます。この差を \(\Delta L_S = SA – SB\) とします(模範解答では \(SA-SB = da/L\) としている)。この \(\Delta L_S\) が、元々の経路差 \(AP-BP\) に加算(または減算)され、新しい干渉条件を決定します。
新しい明線の位置を \(x’\) とすると、全体の光路差が \(m\lambda\) となる条件から \(x’\) を求め、元の明線の位置からの移動量と方向を判断します。

この設問における重要なポイント

  • スリットSの移動により、スリットAとBに到達する光に初期光路差が生じる。
  • この初期光路差は、(2)で用いた経路差の近似式を応用して \(\frac{da}{L}\) の形で表せる(光源SとスリットA,Bの位置関係から)。
  • 全体の光路差 = (SからA,Bへの光路差) + (A,BからPへの経路差)。
  • 同じ次数 \(m\) の明線がどこへ移動するかを調べる。

具体的な解説と立式
スリットSをABに平行に上へ \(a\) だけ移動させます。Sと複スリット板との距離を \(L\) とします。
この移動により、SからAまでの光路長 \(L_{SA}\) とSからBまでの光路長 \(L_{SB}\) に差が生じます。
複スリットABの中点をMとすると、移動前のSはMの延長線上にありました。移動後のSは、この延長線から \(a\) だけ上方にずれます。
AはMから \(d/2\) 下方、BはMから \(d/2\) 上方にあると考えると、SとAの間の「高さ」の差は \(a+d/2\)、SとBの間の「高さ」の差は \(|a-d/2|\) となります。
経路差の近似式 \(\frac{dx}{l}\) を参考にすると、光源Sの位置がずれ、スリットA, Bが観測点のような役割をすると考え、\(L\) をスクリーンまでの距離、\(d\) をスリット間隔、\(a\) を光源のずれとみなすと、光路差 \(SA-SB\) は、およそ \(\displaystyle\frac{d \cdot a}{L}\) と表せます(符号はS,A,Bの上下関係による)。
模範解答に従い、\(SA-SB = \displaystyle\frac{da}{L}\) とします(Sが上にずれると、上のスリットBへの方が距離が短くなり、下のスリットAへの方が距離が長くなるため、\(SA > SB\)。よって \(SA-SB > 0\))。

スクリーン上の新しい明線の位置を \(x’\) とすると、点Pでの全体の光路差は \((SA – SB) + (AP’-BP’)\) ではなく、\( (SA+AP’) – (SB+BP’) = (SA-SB) + (AP’-BP’) \) となります。
ここで \(AP’-BP’ \approx \displaystyle\frac{dx’}{l}\)。
したがって、新しい明線の条件は、
$$(SA-SB) + (AP’-BP’) = m\lambda$$
$$\frac{da}{L} + \frac{dx’}{l} = m\lambda \quad \cdots ⑪$$
これを新しい明線の位置 \(x’\)(\(m\) 番目の明線の位置なので \(x’_m\) とする)について解きます。
$$x’_m = \frac{m\lambda l}{d} – \frac{al}{L} \quad \cdots ⑫$$
元の \(m\) 番目の明線の位置は \(x_m = \displaystyle\frac{m\lambda l}{d}\) でした。
したがって、明線の移動量 \(\Delta x_S\) は、
$$\Delta x_S = x’_m – x_m = \left(\frac{m\lambda l}{d} – \frac{al}{L}\right) – \frac{m\lambda l}{d} = -\frac{al}{L}$$

使用した物理公式

  • 経路差の近似式(ヤングの実験の応用)
  • 干渉の強め合い条件
計算過程

上記「具体的な解説と立式」で式⑫が導出され、移動量 \(\Delta x_S\) が計算されています。
$$x’_m = x_m – \frac{al}{L}$$
移動量は \(-\displaystyle\frac{al}{L}\) です。
負号はx軸の負の向き(下方)への移動を意味します。
したがって、明線は下方へ \(\displaystyle\frac{al}{L}\) だけ移動します。

計算方法の平易な説明

単スリットSを上に \(a\) だけずらすと、Sから複スリットAまでの距離とSから複スリットBまでの距離に差ができます。この差は、ヤングの実験の経路差の式を応用すると、およそ \(\frac{da}{L}\) と表せます(SがAに近いかBに近いかで符号が変わります)。
この「最初の光路のズレ」と、複スリットA,Bからスクリーン上の点Pまでの光路のズレ \(\frac{dx’}{l}\) を合わせたものが、波長の整数倍になるときに新しい明線ができます。
元の明線の位置からどれだけずれるかを計算すると、\(\frac{al}{L}\) だけ下方向に移動することが分かります。つまり、光源側のスリットSを上にずらすと、スクリーン上の縞模様は下にずれます。

結論と吟味

明線は下方へ \(\displaystyle\frac{al}{L}\) だけ移動します。この移動量は \(m\) によらないため、明線全体のパターンが平行移動することになり、明線の間隔 \(\Delta x = \frac{\lambda l}{d}\) は変化しません。模範解答とも一致しています。

解答 (5) 下方へ \(\displaystyle\frac{al}{L}\)

問(6)

思考の道筋とポイント
スリットSを元の位置に戻し、スリットBだけを屈折率 \(n\)、厚さ \(\delta\) の透明な薄膜で覆います。光が薄膜を通過すると、空気中を進む場合に比べて光路長が長くなります。空気中での距離 \(\delta\) に対する光路長は \(\delta\) ですが、屈折率 \(n\) の薄膜中での距離 \(\delta\) に対する光路長は \(n\delta\) となります。したがって、スリットBを通過する光は、スリットAを通過する光に比べて、光路長が \(n\delta – \delta = (n-1)\delta\) だけ余分に長くなります。
この追加の光路差が、元々の経路差 \(AP-BP\) に影響を与えます。新しい明線の位置を \(x”\) とすると、全体の光路差が \(m\lambda\) となる条件から \(x”\) を求め、元の明線の位置からの移動量と方向を判断します。

この設問における重要なポイント

  • 薄膜による光路長の変化: 厚さ \(\delta\)、屈折率 \(n\) の薄膜を通過すると、空気中を進む場合に比べて光路長が \((n-1)\delta\) だけ変化する。
  • 全体の光路差 = (A,BからPへの経路差) + (薄膜による光路差の補正)。
  • 同じ次数 \(m\) の明線がどこへ移動するかを調べる。

具体的な解説と立式
スリットBを厚さ \(\delta\)、屈折率 \(n\) の薄膜で覆うと、Bを通過する光の光路長が変化します。
空気中(屈折率を1とする)を距離 \(\delta\) 進むときの光路長は \(1 \cdot \delta = \delta\)。
屈折率 \(n\) の薄膜中を距離 \(\delta\) 進むときの光路長は \(n \cdot \delta\)。
したがって、スリットBを通過する光は、薄膜がない場合に比べて光路長が \(n\delta – \delta = (n-1)\delta\) だけ長くなります。
スクリーン上の点P(座標 \(x”\))における、スリットAからの光とスリットB(薄膜あり)からの光の光路差を考えます。
幾何学的な経路差は \(AP – BP \approx \displaystyle\frac{dx”}{l}\) です。
B側の光路が \((n-1)\delta\) だけ長くなるので、実効的な光路差は、
$$(\text{光路長 } AP) – (\text{光路長 } BP_{\text{薄膜あり}}) = AP – (BP_{\text{空気}} + (n-1)\delta)$$
$$= (AP – BP_{\text{空気}}) – (n-1)\delta = \frac{dx”}{l} – (n-1)\delta$$
明線の条件は、この全体の光路差が波長 \(\lambda\) の整数倍となるときなので、
$$\frac{dx”}{l} – (n-1)\delta = m\lambda \quad \cdots ⑬$$
この式を新しい明線の位置 \(x”\)(\(m\) 番目の明線の位置なので \(x”_m\) とする)について解きます。
$$x”_m = \frac{m\lambda l}{d} + \frac{(n-1)\delta l}{d} \quad \cdots ⑭$$
元の \(m\) 番目の明線の位置は \(x_m = \displaystyle\frac{m\lambda l}{d}\) でした。
したがって、明線の移動量 \(\Delta x_B\) は、
$$\Delta x_B = x”_m – x_m = \left(\frac{m\lambda l}{d} + \frac{(n-1)\delta l}{d}\right) – \frac{m\lambda l}{d} = \frac{(n-1)\delta l}{d}$$

使用した物理公式

  • 光路長 = 屈折率 × 距離
  • 干渉の強め合い条件
計算過程

上記「具体的な解説と立式」で式⑭が導出され、移動量 \(\Delta x_B\) が計算されています。
$$\Delta x_B = \frac{(n-1)\delta l}{d}$$
ここで \(n>1\)(通常、物質の屈折率は空気より大きい)とすると、\((n-1)\delta > 0\) なので、\(\Delta x_B > 0\)。
これはx軸の正の向き(上方)への移動を意味します。
したがって、明線は上方へ \(\displaystyle\frac{(n-1)\delta l}{d}\) だけ移動します。

計算方法の平易な説明

スリットBの前に薄い膜を置くと、Bを通る光は膜の中を進むため、空気中を進むよりも時間がかかります(光路長が長くなります)。この光路長の増加分は \((n-1)\delta\) です(\(n\) は膜の屈折率、\(\delta\) は膜の厚さ)。
このため、スリットAからの光とBからの光の間の「実質的な」道のりの差が変わります。
新しい明るい線ができる位置 \(x”\) では、元々の道のりの差 \(\frac{dx”}{l}\) から、B側の光路長増加分 \((n-1)\delta\) を引いたものが、波長の整数倍になる必要があります。
この条件から \(x”\) を求め、元の明線の位置からのずれを計算すると、\(\frac{(n-1)\delta l}{d}\) だけ上方向に移動することが分かります。つまり、光路長が長くなったBスリット側の光が遅れる分、同じ干渉条件を満たすためにはスクリーン上で上方にずれ込むということです。

結論と吟味

明線は上方へ \(\displaystyle\frac{(n-1)\delta l}{d}\) だけ移動します。\(n>1\) のとき、移動量は正となり、x軸の正の向き(上方)への移動を示します。これは、B側の光路長が増加したため、同じ干渉条件を満たすにはP点がB側に近づく(x座標が増加する)方向へ移動すると解釈でき、物理的に妥当です。模範解答とも一致しています。

解答 (6) 上方へ \(\displaystyle\frac{(n-1)\delta l}{d}\)

【コラム】Q. 複スリット板を取り除き、スリットSだけにしてもスクリーンX上には図bのような干渉模様が現れる。これはSのスリット幅 \(\Delta\) を通る無数の光線の干渉による。Oに最も近い弱め合いの位置Rに対応する図aの角度 \(\theta_R\) に対する条件式を記せ。

思考の道筋とポイント
これは単スリットによる回折(フラウンホーファー回折)の問題です。スリットの幅 \(\Delta\) が波長 \(\lambda\) と同程度の場合、スリットを通過した光は単に直進するだけでなく、回折現象により広がります。そして、スリット自身を無数の二次的な点波源の集まりと考えると、これらの二次波源からの光がスクリーン上で干渉し、明暗のパターン(回折縞)を作ります。
スクリーン中央(\(\theta=0\))は最も明るい中央の明線となります。Oに最も近い弱め合いの位置(最初の暗線)ができる条件は、スリットの上端から出る光とスリットの下端から出る光の経路差 \(\Delta \sin\theta_R\) が、ちょうど波長 \(\lambda\) の整数倍(ただし \(m=0\) を除く最初のものなので \(m=1\))になるときです。

具体的な解説と立式
単スリットSの幅を \(\Delta\) とします。このスリットを通過する光が回折し、角度 \(\theta_R\) の方向に進んでスクリーン上の点Rで弱め合う(暗線となる)条件を考えます。
ホイヘンスの原理によれば、スリットの開口部にある各点を新たな波源(素元波)と考えることができます。これらの素元波がスクリーン上で干渉します。
最初の暗線(Oに最も近い弱め合い)ができる条件は、スリットの両端(幅 \(\Delta\) の上端と下端)から角度 \(\theta_R\) の方向に進む光の経路差が、ちょうど1波長 \(\lambda\) になるときです。
このとき、スリットを上下2つの半分の領域(それぞれ幅 \(\Delta/2\))に分けると、上半分の領域のある点から出る光と、それに対応する下半分の領域の点(上半分の点から \(\Delta/2\) だけ離れた点)から出る光との経路差が \(\lambda/2\) となり、これらが互いに打ち消し合います。これがスリット全体で起こるため、結果としてその方向は暗くなります。
したがって、Oに最も近い弱め合いの位置Rに対応する角度 \(\theta_R\) に対する条件式は、スリットの両端からの光の経路差が \(\lambda\) となることなので、
$$\Delta \sin\theta_R = \lambda \quad \cdots ⑮$$
(一般に、単スリット回折で暗線ができる条件は \(\Delta \sin\theta = m\lambda\)、ただし \(m = \pm 1, \pm 2, \pm 3, \dots\) です。\(\theta_R\) はOに最も近いので \(|m|=1\) に対応します。)

使用した物理公式

  • 単スリットによる回折の暗線条件: \(\Delta \sin\theta = m\lambda\) (\(m = \pm 1, \pm 2, \dots\))
計算過程

上記「具体的な解説と立式」で式⑮が導出されています。
$$\Delta \sin\theta_R = \lambda$$

計算方法の平易な説明

1つのスリット(幅\(\Delta\))だけでも、光が回折(広がる現象)して干渉し、スクリーン上に明暗の縞模様ができます。真ん中(\(\theta=0\) の方向)は明るくなります。
スクリーン中央Oから少しずれた角度 \(\theta_R\) の方向で、最初に暗くなる(弱め合う)条件は、スリットの幅 \(\Delta\) と角度 \(\theta_R\) を使って、\(\Delta \sin\theta_R = \lambda\)(波長)と表されます。これは、スリットの上端を通る光と下端を通る光の道のりの差がちょうど1波長分になると、スリット全体からの光がうまく打ち消し合って暗くなる、という考え方に基づいています。

結論と吟味

Oに最も近い弱め合いの位置Rに対応する角度 \(\theta_R\) の条件式は \(\Delta \sin\theta_R = \lambda\) です。これは単スリットによる回折の最初の暗線の条件として標準的なものであり、Qの解答PDFとも一致しています。

【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座

最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?

  • ヤングの実験における経路差と干渉条件:複スリットからスクリーン上の点までの経路差を正しく近似計算 (\(\frac{dx}{l}\)) し、それが波長の整数倍で明線(強め合い)、半波長の奇数倍で暗線(弱め合い)となる条件を適用すること。
  • 光路長の変化と干渉縞の移動:媒質の違い(屈折率)や挿入物の厚さによって光路長が変化すると、干渉条件を満たす位置がずれ、干渉縞全体が移動する。変化した光路差を考慮して新しい干渉条件を立てる。
  • 波の重ね合わせと明るさ:複数の波が重なるとき、その点での振幅は各波の振幅の代数和(位相を考慮)で決まり、明るさ(強度)は合成振幅の2乗に比例する。
  • 光源のコヒーレンス(可干渉性):ヤングの実験で鮮明な干渉縞を得るためには、複スリットに到達する光がコヒーレント(位相がそろっているか、一定の位相差を保つ)である必要があり、単スリットSがその役割を果たす。
  • 単スリットによる回折:スリットの幅が無視できない場合、スリット自身が回折現象を引き起こし、特有の干渉パターン(中央が最も明るく、両側に強度の小さな明暗の縞が広がる)を生じる。暗線の条件は \(\Delta \sin\theta = m\lambda\)。

応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点

  • この問題の考え方や解法は、どのようなパターンの類似問題に応用できるか:
    • 回折格子のように多数のスリットがある場合の干渉。
    • 薄膜干渉(シャボン玉の色、レンズの反射防止膜など)で、膜の厚さや屈折率、入射角によって干渉条件が変わる問題。
    • 音波や水面波など、他の波でも同様の干渉・回折現象を扱う問題。
    • 光源やスリット、スクリーンが移動する場合の干渉縞の変化を追う問題。
  • 初見の問題で、どこに着目すればこの問題と同じように解き進められるか:
    1. 干渉の源泉の特定:どの波とどの波が干渉しているのか(例:2つのスリットからの波、入射波と反射波など)を明確にする。
    2. 経路差(または光路差)の計算:干渉する点に至るまでの各波の経路長を正確に計算し、その差を求める。近似計算が必要な場合は、条件(例:\(d \ll l\))を確認する。
    3. 初期位相差の有無:波源が同位相か、反射で位相が反転するか、薄膜で位相がずれるかなど、初期位相差の有無や大きさを確認し、干渉条件に反映させる。
    4. 問われている物理量:明線の位置か、間隔か、明るさか、移動量かなどを正確に把握し、それに応じた式変形や考察を行う。
  • 問題解決のヒントや、特に注意すべき点は何か:
    • 近似計算の適用条件を忘れないこと。条件を満たさない場合は、より厳密な計算が必要になる。
    • 「光路長」は「屈折率 × 幾何学的距離」で定義される。媒質が空気(または真空)でない場合は常に意識する。
    • 明るさを比較する際は、振幅の2乗で比較する。
    • 「移動する」という場合、どの基準点(例えば\(m=0\)の明線)がどれだけ動くのか、あるいは明線間隔自体は変わらないのか、といった点を区別して考える。

要注意!ありがちなミス・誤解とその対策

  • 経路差の近似式の導出ミス、または誤用:
    • 現象: 三平方の定理からの展開や近似の適用を誤る。あるいは条件を満たさないのに近似式を適用してしまう。
    • 対策: (2)の導出過程をしっかり理解し、自分で再現できるようにする。近似が使える条件(\(d,x \ll l\))を常に意識する。
  • 光路長の計算ミス(特に薄膜):
    • 現象: 薄膜による光路長の「変化分」を正しく計算できない(例:単純に \(n\delta\) を経路差に加えてしまうなど)。
    • 対策: 光路長は「屈折率×距離」。薄膜がある場合とない場合で、その部分の光路長をそれぞれ計算し、その差 \((n-1)\delta\) を経路差の補正項として加える(または引く)と理解する。
  • 明るさと振幅の関係の誤解:
    • 現象: 明るさが振幅に比例すると誤解し、(4)で1/2倍と答えてしまう。
    • 対策: 波のエネルギーや強度(明るさ)は振幅の2乗に比例するという基本原理をしっかり覚えておく。
  • 移動方向の判断ミス:
    • 現象: (5)や(6)で、計算結果の符号と実際の移動方向(上方/下方)の対応を誤る。
    • 対策: 座標軸の取り方と、計算で得られた移動量の符号の意味(正ならx軸の正方向へ、負なら負方向へ)を常に照らし合わせて判断する。物理的にどちらへ動くのが自然か(例:Sを上にずらすとO点はどちらへ動くか)を考えてみるのも有効。

物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意

  • この問題では、物理現象をどのようにイメージし、図にどのように表現することが有効だったか:
    • ヤングの実験の標準的な光路図:複スリットからスクリーン上の点Pへ向かう2つの光路を描き、経路差が生じる部分を幾何学的に示す図(模範解答の図aや、教科書でよく見る図)は、経路差の近似式を理解する上で非常に重要。
    • 光路長変化の図示(薄膜):薄膜を挿入した場合、その部分だけ光路長が変化する様子を図でイメージする(模範解答の(6)の図)。
    • 単スリット回折の概念図(Q):スリット幅を複数の素元波源に分割し、それらが特定の方向でどう干渉するかを図で考える(Qの解答PDFの図①、②、③)。特に、スリットの上下端からの経路差が \(\lambda\) のときに暗くなるという説明は、図と対応させることで理解が深まる。
  • 図を描く際に注意すべき点は何か:
    • 近似を用いる場合は、どの部分が微小量であるかを意識して描く(例:\(x, d\) が \(l\) に比べて非常に小さいことを示すなど)。
    • 光路差が生じる部分を明確に図示する。垂線を下ろしたり、補助線を引いたりすることが有効。
    • 薄膜を挿入する場合は、その厚さ \(\delta\) と屈折率 \(n\) を明記し、光がそこを通過する様子を示す。
    • 回折を考える場合は、スリット幅 \(\Delta\) と回折角 \(\theta\) を図中に示す。

なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法

  • 経路差の近似式 \(\frac{dx}{l}\):
    • 選定理由: ヤングの実験でスクリーン上の干渉を考える際の基本となる式。三平方の定理と二項近似から導かれる。
    • 適用根拠: \(d \ll l\) かつ \(x \ll l\) という条件が満たされている場合に、経路差を簡単に表すために用いる。
  • 干渉の条件式(明線 \(m\lambda\), 暗線 \((m+1/2)\lambda\)):
    • 選定理由: 2つのコヒーレントな波が干渉するときの、波長と経路差(または光路差)の関係から強め合い・弱め合いを判断するための普遍的な法則だから。
    • 適用根拠: スクリーン上の各点での干渉の様子を調べるために、計算した経路差(または光路差)に適用する。
  • 光路長 \((n-1)\delta\) の変化:
    • 選定理由: 媒質中を進む光の位相の遅れを、真空(または空気)中を進む場合と比較して定量的に表すため。
    • 適用根拠: スリットの一方に薄膜を挿入した場合、そこを通過する光だけ光路長が変化し、それが干渉条件に影響を与えるため、その変化分を計算する必要がある。
  • 単スリット回折の暗線条件 \(\Delta \sin\theta = m\lambda\):
    • 選定理由: スリットの幅が無視できない場合の回折現象による干渉パターン(暗線の位置)を記述する基本的な式だから。
    • 適用根拠: Qで問われている単スリットによる干渉模様の弱め合いの位置を特定するために用いる。

思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー

  1. (1) Sの役割:コヒーレンスというキーワードを元に説明。
  2. (2) 経路差:AP, BPを三平方で表す \(\rightarrow\) \(l\) で括り出し \((1+y)^{1/2}\) の形にする \(\rightarrow\) 二項近似を適用 \(\rightarrow\) AP-BP を計算。
  3. (3) 明線間隔:(2)の経路差 = \(m\lambda\) から \(x_m\) を求める \(\rightarrow\) \(\Delta x = x_{m+1} – x_m\) を計算。
  4. (4) 明るさ:両スリットの場合の振幅 \(2A_0\)、片スリットの場合の振幅 \(A_0\) \(\rightarrow\) 明るさは振幅の2乗に比例することから比を求める。
  5. (5) Sの移動:Sの移動によるSAとSBの光路差 \(\Delta L_S \approx da/L\) を求める \(\rightarrow\) 全光路差 \(\Delta L_S + dx’/l = m\lambda\) から新しい明線の位置 \(x’\) を求める \(\rightarrow\) 元の位置からの移動量 \(x’-x_m\) と方向を求める。
  6. (6) 薄膜挿入:薄膜による追加の光路長 \((n-1)\delta\) を求める \(\rightarrow\) 全光路差 \(dx”/l – (n-1)\delta = m\lambda\) (B側が長くなるので引く) から新しい明線の位置 \(x”\) を求める \(\rightarrow\) 元の位置からの移動量 \(x”-x_m\) と方向を求める。
  7. (Q) 単スリット:スリット幅 \(\Delta\) の両端からの光の経路差 \(\Delta \sin\theta_R\) が \(\lambda\) (最初の暗線) となる条件を立てる。

計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック

  • 近似計算の精度:二項近似 \((1+y)^\alpha \approx 1+\alpha y\) を使う際、どの項まで残すか、微小量は何かを正確に把握する。高次の項を無視することの妥当性を常に意識する。
  • 符号の取り扱い:経路差、光路差、座標、移動方向など、符号が物理的な意味を持つ量が多い。定義を一貫させ、計算途中で符号ミスをしないように慎重に扱う。
  • 文字式の整理:\(l, d, x, \lambda, m, a, L, n, \delta\) など多くの文字が登場する。式変形の際に混乱しないよう、丁寧に整理し、各文字が何を表すかを常に意識する。
  • 分数の計算:特に光路差の式や明線の間隔の式は分数の形をしているため、通分や約分、逆数の扱いなどを慎重に行う。

解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう

  • 物理量のオーダー:\(l\) はm単位、\(d, x, \lambda, \delta, a\) はmmやμm単位など、実際の実験でのスケール感を想像し、計算結果が極端に変な値になっていないか確認する。
  • 極端な条件での振る舞い:
    • 例えば、\(d \to 0\)(複スリットが1つのスリットになる)とすると、干渉縞は現れなくなるはず (\(\Delta x \to \infty\))。
    • \(\lambda \to 0\)(波長が非常に短い)とすると、干渉縞の間隔も非常に狭くなり、幾何光学的な影に近づくはず (\(\Delta x \to 0\))。
    • 薄膜の屈折率 \(n \to 1\)(空気と同じ)なら、移動量は0になるはず。
  • 各パラメータへの依存性:明線の間隔 \(\Delta x = \lambda l/d\) が、波長 \(\lambda\) やスクリーン距離 \(l\) に比例し、スリット間隔 \(d\) に反比例するという関係は直感的にも理解できるか。同様に、縞の移動量についても、各パラメータへの依存性が物理的に妥当か考える。
  • 対称性の確認:例えば、中央の明線(\(m=0\))は、装置に対称性があればO点にできるはず。条件を変えたときに、その対称性がどう変化するかを考える。
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