問題43 単振動 (東京大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(1)の別解: 接点まわりのモーメントのつりあい
- 模範解答が重心Gまわりのモーメントを考えるのに対し、別解では未知数の一つ(垂直抗力)が含まれる接点まわりのモーメントを考え、計算を簡略化します。
- 設問(2)の別解1: 力学的エネルギー保存則を用いた解法
- 最大速さを求める際、単振動の公式 \(v_{\text{最大}} = A\omega\) を用いる代わりに、振幅端と振動中心でのエネルギー保存則を用いて導出します。
- 設問(3)の別解1: 運動方程式と等加速度運動の公式を用いた解法
- 模範解答が仕事とエネルギーの関係を用いるのに対し、別解では運動方程式から加速度を求め、等加速度直線運動の公式を用いて停止距離を計算します。
- 設問(3)の別解2: 微積分を用いた体系的解法(全設問一括解説)
- 単振動の公式を前提とせず、運動方程式を微分方程式として立式し、それを数学的に解くことで変位 \(x(t)\) や速度 \(v(t)\) を導出する原理的なアプローチをとります。
- 設問(1)の別解: 接点まわりのモーメントのつりあい
- 上記の別解が有益である理由
- 接点モーメント: 連立方程式を解く手間を省き、計算ミスを減らす実戦的なテクニックです。
- エネルギー保存則: 振動の周期や角振動数を経由せずに直接速さを求められるため、手順を短縮できます。
- 運動方程式アプローチ: 現象を「力と運動」の観点から解析する視点を提供し、エネルギー保存則との等価性を確認できます。
- 微積分アプローチ: 「なぜ単振動になるのか」「公式の \(2\pi\) はどこから来るのか」という物理の本質的理解を深め、公式を忘れても答えを導ける応用力を養います。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「摩擦力が駆動する単振動と剛体のつりあい」です。一見複雑な設定ですが、剛体の力学と単振動の基礎を組み合わせることで解き明かすことができます。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 剛体のつりあい: 物体が静止しているとき、「力のベクトル和が \(0\)」かつ「任意の点まわりの力のモーメントの和が \(0\)」になります。
- 動摩擦力の性質: 動摩擦力は、接触面間での「相対運動を妨げる向き」に働き、大きさは \(\mu N\)(\(\mu\): 動摩擦係数、\(N\): 垂直抗力)です。
- 単振動の運動方程式: 物体に働く復元力が変位に比例する形(\(F = -Kx\))になるとき、物体は単振動します。このとき角振動数は \(\omega = \sqrt{K/M}\) となります。
- 仕事とエネルギーの関係: 物体の運動エネルギーの変化量は、物体に働く外力がした仕事に等しくなります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、板が静止している条件から、鉛直方向・水平方向の力のつりあいと、モーメントのつりあいを連立させて未知数を求めます。
- (2)では、糸を切った後の板の運動方程式を立て、力が変位 \(x\) に比例する復元力となることを示し、単振動の諸量を計算します。
- (3)では、ローラー停止後の摩擦力の向きと大きさを再評価し、エネルギー保存則(または等加速度運動の式)を用いて停止距離を求めます。
問(1)
思考の道筋とポイント
まずは、板(剛体)にはたらく全ての力を正確に図示することから始めます。
板は静止しているので、力はつりあっています。
鉛直方向には重力と2つの垂直抗力が、水平方向には糸の張力と2つの動摩擦力がはたらいています。
特に動摩擦力の向きに注意が必要です。ローラーは内向きに回転しているので、板との接触点において、ローラー表面は内側へ動いています。板から見るとローラーが内側へ動くため、板はローラーから「相対運動を妨げる向き」、つまりローラーの動きと同じ内向き(中心Oに向かう向き)に摩擦力を受けます。
この設問における重要なポイント
- 力の図示: 重力 \(Mg\)、左の垂直抗力 \(N_1\)、右の垂直抗力 \(N_2\)、左の動摩擦力 \(\mu N_1\)、右の動摩擦力 \(\mu N_2\)、張力 \(S\) を漏れなく描きます。
- 動摩擦力の向き: 左のローラーは時計回りなので上面は右へ動きます。よって板は右向きの力 \(\mu N_1\) を受けます。右のローラーは反時計回りなので上面は左へ動きます。よって板は左向きの力 \(\mu N_2\) を受けます。
- モーメントの基準点: 未知数を消去しやすい点を選ぶのが定石ですが、まずは重心Gまわりで立式してみます。
具体的な解説と立式
鉛直上向きを正、水平右向きを正とします。
鉛直方向の力のつりあいより、上向きの力の和と下向きの力の和は等しくなります。
$$
\begin{aligned}
N_1 + N_2 &= Mg \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
次に、板の重心Gまわりの力のモーメントのつりあいを考えます。
重心Gは中心Oから右に \(d\) の位置にあります。
左のローラー(接点)までの距離は \(l+d\)、右のローラー(接点)までの距離は \(l-d\) です。
反時計回りのモーメントの和と時計回りのモーメントの和は等しくなります。
$$
\begin{aligned}
N_1(l+d) &= N_2(l-d) \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
水平方向の力のつりあいを考えます。
左のローラーからの摩擦力 \(\mu N_1\) は右向き、右のローラーからの摩擦力 \(\mu N_2\) は左向き、張力 \(S\) は右向きです。
右向きの力の和と左向きの力の和は等しくなります。
$$
\begin{aligned}
\mu N_1 + S &= \mu N_2 \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 力のつりあい: \(\sum \vec{F} = \vec{0}\)
- 力のモーメントのつりあい: \(\sum \vec{M} = \vec{0}\)
- 動摩擦力: \(f’ = \mu N\)
式②を変形して、\(N_1\) と \(N_2\) の比を求めます。
$$
\begin{aligned}
\frac{N_1}{N_2} &= \frac{l-d}{l+d}
\end{aligned}
$$
これと式① \(N_1 + N_2 = Mg\) を連立して解きます。
式②を \(N_1(l+d) – N_2(l-d) = 0\) とし、式①の \(N_1 + N_2 = Mg\) と組み合わせます。
式①より \(N_2 = Mg – N_1\) を式②に代入します。
$$
\begin{aligned}
N_1(l+d) &= (Mg – N_1)(l-d) \\[2.0ex]
N_1(l+d) &= Mg(l-d) – N_1(l-d) \\[2.0ex]
N_1(l+d) + N_1(l-d) &= Mg(l-d) \\[2.0ex]
N_1(l+d+l-d) &= Mg(l-d) \\[2.0ex]
2l N_1 &= Mg(l-d) \\[2.0ex]
N_1 &= \frac{l-d}{2l} Mg
\end{aligned}
$$
同様に \(N_2\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
N_2 &= Mg – N_1 \\[2.0ex]
&= Mg – \frac{l-d}{2l} Mg \\[2.0ex]
&= \frac{2l – (l-d)}{2l} Mg \\[2.0ex]
&= \frac{l+d}{2l} Mg
\end{aligned}
$$
求めた \(N_1, N_2\) を式③に代入して \(S\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
S &= \mu N_2 – \mu N_1 \\[2.0ex]
&= \mu (N_2 – N_1) \\[2.0ex]
&= \mu \left( \frac{l+d}{2l} Mg – \frac{l-d}{2l} Mg \right) \\[2.0ex]
&= \frac{\mu Mg}{2l} \{ (l+d) – (l-d) \} \\[2.0ex]
&= \frac{\mu Mg}{2l} (2d) \\[2.0ex]
&= \frac{\mu d}{l} Mg
\end{aligned}
$$
板が倒れずに静止しているということは、上下の力も左右の力も、そして回転させようとする力(モーメント)も全てバランスが取れているということです。
重心が真ん中より右にずれているため、右側のローラーの方がより強く板を支える必要があります(\(N_2 > N_1\))。
強く支えている右側の方が摩擦力も大きくなるため、板は全体として左に引きずられそうになります。それを壁につないだ糸が右向きに引っ張って耐えている、という状況です。
\(N_1 = \frac{l-d}{2l} Mg\)、\(N_2 = \frac{l+d}{2l} Mg\) です。
\(d=0\)(重心が中央)のとき \(N_1=N_2=Mg/2\) となり妥当です。
\(d=l\)(重心が右のローラー上)のとき \(N_1=0, N_2=Mg\) となり、これも物理的に正しい挙動です。
張力 \(S = \frac{\mu d}{l} Mg\) についても、\(d=0\) なら左右対称で摩擦力が打ち消し合い \(S=0\) となるため、妥当です。
思考の道筋とポイント
モーメントの基準点は任意の場所に設定できます。
未知数である \(N_1\) や \(N_2\) の作用点(ローラーとの接点)を基準に選ぶと、その力のモーメントが \(0\) になるため、計算が楽になります。
この設問における重要なポイント
- 基準点の選択: 左のローラーとの接点を基準点A、右のローラーとの接点を基準点Bとします。
- 距離の確認: 接点Aから重心Gまでの距離は \(l+d\)、接点Bから重心Gまでの距離は \(l-d\)、接点Aから接点Bまでの距離は \(2l\) です。
具体的な解説と立式
右の接点Bまわりのモーメントのつりあいを考えます。
\(N_2\) のモーメントは \(0\) です。
反時計回りのモーメント(\(N_1\)によるもの)と時計回りのモーメント(重力 \(Mg\) によるもの)が等しくなります。
$$
\begin{aligned}
N_1 \cdot 2l &= Mg(l-d) \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
左の接点Aまわりのモーメントのつりあいを考えます。
\(N_1\) のモーメントは \(0\) です。
反時計回りのモーメント(重力 \(Mg\) によるもの)と時計回りのモーメント(\(N_2\)によるもの)が等しくなります。
$$
\begin{aligned}
Mg(l+d) &= N_2 \cdot 2l \quad \cdots ⑤
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 力のモーメントのつりあい: \(\sum \vec{M} = \vec{0}\)
式④より直ちに \(N_1\) が求まります。
$$
\begin{aligned}
N_1 &= \frac{l-d}{2l} Mg
\end{aligned}
$$
式⑤より直ちに \(N_2\) が求まります。
$$
\begin{aligned}
N_2 &= \frac{l+d}{2l} Mg
\end{aligned}
$$
これらを用いて張力 \(S\) を求める手順はメイン解法と同じです。
$$
\begin{aligned}
S &= \mu N_2 – \mu N_1 \\[2.0ex]
&= \frac{\mu d}{l} Mg
\end{aligned}
$$
「ある点を支点にして回転しない」という条件を使うとき、支点をどこにするかは自由です。
計算したい力が消えないように、かつ不要な力が消えるように支点を選ぶと、連立方程式を解く手間が省けます。
今回は、片方のローラーの位置を支点にすることで、もう片方のローラーが支える力を一発で計算しました。
メイン解法と全く同じ結果が、より少ない計算ステップで得られました。
問(2)
思考の道筋とポイント
糸を切ると、張力 \(S\) がなくなります。
板は左右の摩擦力の差によって水平方向に力を受け、運動を始めます。
重心の位置が \(x\) にあるときの垂直抗力 \(N_1, N_2\) を求め、それによる摩擦力の合力を計算し、運動方程式を立てます。
合力が \(-Kx\) の形になれば、板は単振動します。
この設問における重要なポイント
- 変数の置き換え: 重心の位置が \(d\) から任意の \(x\) に変わったと考えます。(1)の結果の \(d\) を \(x\) に置き換えるだけで、その瞬間の垂直抗力が求まります。
- 復元力の確認: 重心が右(\(x>0\))にあるとき、右の垂直抗力 \(N_2\) が大きく、左向きの摩擦力 \(\mu N_2\) が大きくなるため、板を原点に戻そうとする力(復元力)が働きます。
具体的な解説と立式
重心が位置 \(x\) にあるとき、(1)と同様にモーメントのつりあいを考えると、垂直抗力は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
N_1 &= \frac{l-x}{2l} Mg \\[2.0ex]
N_2 &= \frac{l+x}{2l} Mg
\end{aligned}
$$
水平方向の運動方程式を立てます。板の質量は \(M\)、加速度を \(a\) とします。
運動方向(右向き)を正とします。
右向きの力は \(\mu N_1\)、左向きの力は \(\mu N_2\) です。
$$
\begin{aligned}
Ma &= (\text{右向きの力}) – (\text{左向きの力}) \\[2.0ex]
Ma &= \mu N_1 – \mu N_2 \quad \cdots ⑥
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(Ma = F\)
- 単振動の角振動数: \(\omega = \sqrt{\frac{K}{M}}\)
- 単振動の周期: \(T = \frac{2\pi}{\omega}\)
- 単振動の最大速さ: \(v_{\text{最大}} = A\omega\) (\(A\)は振幅)
式⑥に \(N_1, N_2\) を代入して整理します。
$$
\begin{aligned}
Ma &= \mu \left( \frac{l-x}{2l} Mg \right) – \mu \left( \frac{l+x}{2l} Mg \right) \\[2.0ex]
&= \frac{\mu Mg}{2l} \{ (l-x) – (l+x) \} \\[2.0ex]
&= \frac{\mu Mg}{2l} (-2x) \\[2.0ex]
&= – \frac{\mu Mg}{l} x
\end{aligned}
$$
よって、加速度 \(a\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
a &= – \frac{\mu g}{l} x
\end{aligned}
$$
これは単振動の加速度の式 \(a = -\omega^2 x\) と同じ形です。
係数を比較して角振動数 \(\omega\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
\omega^2 &= \frac{\mu g}{l} \\[2.0ex]
\omega &= \sqrt{\frac{\mu g}{l}}
\end{aligned}
$$
周期 \(T\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi}{\omega} \\[2.0ex]
&= 2\pi \sqrt{\frac{l}{\mu g}}
\end{aligned}
$$
次に速さの最大値 \(v_{\text{最大}}\) を求めます。
初期位置は \(x=d\) で初速度 \(0\) なので、振幅 \(A\) は \(d\) となります。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{最大}} &= A \omega \\[2.0ex]
&= d \sqrt{\frac{\mu g}{l}}
\end{aligned}
$$
糸を切ると、板は左右の摩擦力のバランスが崩れて動き出します。
計算してみると、板を動かす力は「中心から離れるほど強くなり、常に中心へ引き戻そうとする力(復元力)」であることがわかります。
このような力が働くと、物体はバネにつるされた重りのように、一定のリズムで行ったり来たりする運動(単振動)をします。
最初に手を離した場所(\(x=d\))が一番端っこになるので、振幅は \(d\) です。真ん中(\(x=0\))を通るときに一番速くなります。
周期 \(T = 2\pi \sqrt{\frac{l}{\mu g}}\)、最大速さ \(v_{\text{最大}} = d \sqrt{\frac{\mu g}{l}}\) です。
摩擦係数 \(\mu\) が大きいほど、復元力が強くなり、動きが素早くなる(周期が短く、速さが大きくなる)ため、物理的直感と一致します。
また、\(l\) が大きいほど復元力が弱まり、ゆっくりとした動きになるのも妥当です。
思考の道筋とポイント
単振動において、力学的エネルギーは保存されます。
運動の端(振幅の最大点)では運動エネルギーが \(0\) で位置エネルギーが最大、振動の中心では位置エネルギーが \(0\) で運動エネルギーが最大になります。
このエネルギーの変換に着目して最大速さを求めます。
この設問における重要なポイント
- 単振動のエネルギー: 復元力 \(F = -Kx\) による位置エネルギーは \(U = \frac{1}{2}Kx^2\) です。
- 定数 \(K\) の特定: 先ほどの運動方程式 \(Ma = – \frac{\mu Mg}{l} x\) より、復元力の定数 \(K\) は \(K = \frac{\mu Mg}{l}\) です。
具体的な解説と立式
振動の端(\(x=d\))での全エネルギー \(E_{\text{端}}\) は、運動エネルギーが \(0\) なので位置エネルギーのみです。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{端}} &= \frac{1}{2} K d^2 \quad \cdots ⑦
\end{aligned}
$$
振動の中心(\(x=0\))での全エネルギー \(E_{\text{中心}}\) は、位置エネルギーが \(0\) なので運動エネルギーのみです。最大速さを \(v_{\text{最大}}\) とします。
$$
\begin{aligned}
E_{\text{中心}} &= \frac{1}{2} M v_{\text{最大}}^2 \quad \cdots ⑧
\end{aligned}
$$
エネルギー保存則より、これらは等しくなります。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} M v_{\text{最大}}^2 &= \frac{1}{2} K d^2 \quad \cdots ⑨
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 単振動のエネルギー保存則: \(\frac{1}{2}Mv^2 + \frac{1}{2}Kx^2 = \text{一定}\)
式⑨に \(K = \frac{\mu Mg}{l}\) を代入して \(v_{\text{最大}}\) を解きます。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} M v_{\text{最大}}^2 &= \frac{1}{2} \left( \frac{\mu Mg}{l} \right) d^2 \\[2.0ex]
v_{\text{最大}}^2 &= \frac{\mu g}{l} d^2 \\[2.0ex]
v_{\text{最大}} &= d \sqrt{\frac{\mu g}{l}}
\end{aligned}
$$
バネのエネルギーと同じように考えます。
一番端っこで溜まっていた「位置エネルギー」が、真ん中で全て「運動エネルギー(スピード)」に変わったと考えます。
このエネルギーの受け渡しを計算することで、一番速いときのスピードを直接求めることができます。
メイン解法と同じ結果が得られました。角振動数 \(\omega\) を経由せずに速さを求められるため、計算が少し早くなります。
問(3)
思考の道筋とポイント
重心Gが点Oを通過する瞬間、つまり \(x=0\) の瞬間にローラーを止めます。
このとき板は左向きに最大速さ \(v_{\text{最大}}\) で動いています。
ローラーが止まると、板は静止したローラーの上を左へ滑っていくことになります。
このとき働く動摩擦力の向きと大きさを正しく把握し、仕事とエネルギーの関係を用いて停止距離 \(D\) を求めます。
この設問における重要なポイント
- 摩擦力の変化: ローラーが回転しているときは、相対速度の向きが左右で異なっていましたが、ローラーが止まると、板は左へ動くので、左右どちらのローラーからも「右向き(運動を妨げる向き)」の動摩擦力を受けます。
- 垂直抗力の和: 重心がどこにあっても、鉛直方向のつりあい \(N_1 + N_2 = Mg\) は常に成り立ちます。
- 摩擦力の仕事: 摩擦力は運動方向と逆向きに働くため、負の仕事をします。
具体的な解説と立式
ローラー停止後、板は左へ動いています。
したがって、左のローラーからも右のローラーからも、右向きの動摩擦力 \(\mu N_1, \mu N_2\) を受けます。
合力 \(F_{\text{摩擦}}\) は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
F_{\text{摩擦}} &= \mu N_1 + \mu N_2 \\[2.0ex]
&= \mu (N_1 + N_2)
\end{aligned}
$$
鉛直方向のつりあい \(N_1 + N_2 = Mg\) より、
$$
\begin{aligned}
F_{\text{摩擦}} &= \mu Mg
\end{aligned}
$$
この一定の摩擦力が、距離 \(D\) だけ滑る間にする仕事 \(W\) は、
$$
\begin{aligned}
W &= – F_{\text{摩擦}} D \\[2.0ex]
&= – \mu Mg D \quad \cdots ⑩
\end{aligned}
$$
運動エネルギーの変化量と仕事の関係式を立てます。
停止時の速さは \(0\)、初速は \(v_{\text{最大}}\) です。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{2} M \cdot 0^2 – \frac{1}{2} M v_{\text{最大}}^2 &= W \quad \cdots ⑪
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 仕事とエネルギーの関係: \(\Delta K = W\)
- 摩擦力の仕事: \(W = -f’x\)
式⑪に式⑩と、(2)で求めた \(v_{\text{最大}} = d \sqrt{\frac{\mu g}{l}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
– \frac{1}{2} M \left( d \sqrt{\frac{\mu g}{l}} \right)^2 &= – \mu Mg D \\[2.0ex]
\frac{1}{2} M \frac{\mu g d^2}{l} &= \mu Mg D
\end{aligned}
$$
両辺を \(\mu Mg\) で割って \(D\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
D &= \frac{1}{2} M \frac{\mu g d^2}{l} \cdot \frac{1}{\mu Mg} \\[2.0ex]
&= \frac{d^2}{2l}
\end{aligned}
$$
ローラーが止まると、板は単なる「ザラザラした床の上を滑る板」と同じ状態になります。
板は左に滑っているので、床(ローラー)からは右向きにブレーキをかける力を受けます。
このブレーキの力がした「邪魔する仕事」の分だけ、板の持っていた運動エネルギーが削り取られ、最終的にゼロになって止まります。
エネルギーの収支計算をすることで、止まるまでの距離を求めました。
答えは \(D = \frac{d^2}{2l}\) です。
摩擦係数 \(\mu\) が消えているのが興味深い点です。これは、初速度の2乗が \(\mu\) に比例し、ブレーキの強さ(摩擦力)も \(\mu\) に比例するため、割り算で相殺されたからです。
また、\(d\) が大きいほど初速度が速くなるため停止距離が伸び、\(l\) が大きいほど初速度が遅くなる(復元力が弱い)ため停止距離が短くなるという傾向も妥当です。
思考の道筋とポイント
エネルギー保存則を使わず、力と運動の法則から直接解きます。
一定の摩擦力が働くため、板は等加速度運動(減速)をします。
運動方程式から加速度を求め、等加速度直線運動の公式を用いて停止距離を計算します。
この設問における重要なポイント
- 一定の加速度: 摩擦力 \(\mu Mg\) が一定なので、加速度も一定になります。
- 運動の向き: 左向きを正として立式すると符号のミスを防ぎやすいです。
具体的な解説と立式
板の運動方程式(左向きを正)を立てます。加速度を \(a’\) とします。
働く力は右向きの摩擦力 \(\mu Mg\) なので、左向き正の座標系では負の力となります。
$$
\begin{aligned}
Ma’ &= – \mu Mg \quad \cdots ⑫
\end{aligned}
$$
これより加速度 \(a’\) は一定であることがわかります。
$$
\begin{aligned}
a’ &= – \mu g
\end{aligned}
$$
初速度 \(v_0 = v_{\text{最大}}\)、加速度 \(-\mu g\)、変位 \(D\) で停止(速度 \(0\))する等加速度直線運動の公式を立てます。
$$
\begin{aligned}
0^2 – v_{\text{最大}}^2 &= 2 a’ D \quad \cdots ⑬
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 運動方程式: \(Ma = F\)
- 等加速度直線運動: \(v^2 – v_0^2 = 2ax\)
式⑬に \(a’ = -\mu g\) と \(v_{\text{最大}} = d \sqrt{\frac{\mu g}{l}}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
– \left( d \sqrt{\frac{\mu g}{l}} \right)^2 &= 2 (-\mu g) D \\[2.0ex]
– \frac{\mu g d^2}{l} &= – 2 \mu g D
\end{aligned}
$$
両辺を \(-2\mu g\) で割って \(D\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
D &= \frac{\mu g d^2}{l} \cdot \frac{1}{2 \mu g} \\[2.0ex]
&= \frac{d^2}{2l}
\end{aligned}
$$
板にかかるブレーキの強さ(加速度)を計算し、「このスピードからこのブレーキで止まるには何メートル必要か?」という計算を行いました。
エネルギーの考え方を使わなくても、運動の様子を時間の経過とともに追うことで同じ答えにたどり着けます。
メイン解法と全く同じ結果が得られました。
思考の道筋とポイント
問(2)の単振動から問(3)の停止までを、運動方程式という一つの原理から出発して、微積分を用いて一貫して解きます。
公式を暗記するのではなく、運動方程式 \(Ma = F\) を微分方程式 \(M \frac{d^2x}{dt^2} = F(x)\) と捉え、それを解くことで位置 \(x(t)\) と速度 \(v(t)\) を導出します。
この設問における重要なポイント
- 微分方程式の立式: 力 \(F\) を位置 \(x\) の関数として正確に記述します。
- 単振動の解: \(\frac{d^2x}{dt^2} = -\omega^2 x\) 型の方程式の一般解は \(x(t) = A \sin(\omega t + \phi)\) です。
- 初期条件の適用: \(t=0\) での位置と速度から、積分定数(振幅 \(A\) と初期位相 \(\phi\))を決定します。
具体的な解説と立式
【問(2)の解析】
水平方向の運動方程式は以下の通りでした。
$$
\begin{aligned}
M \frac{d^2x}{dt^2} &= – \frac{\mu Mg}{l} x
\end{aligned}
$$
整理すると、
$$
\begin{aligned}
\frac{d^2x}{dt^2} &= – \frac{\mu g}{l} x \quad \cdots ⑭
\end{aligned}
$$
ここで \(\omega^2 = \frac{\mu g}{l}\) (\(\omega > 0\))とおくと、式⑭は単振動の微分方程式 \(\frac{d^2x}{dt^2} = -\omega^2 x\) となります。
この一般解は以下のように書けます。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= A \cos(\omega t + \phi) \quad \cdots ⑮ \\[2.0ex]
v(t) &= \frac{dx}{dt} = -A\omega \sin(\omega t + \phi) \quad \cdots ⑯
\end{aligned}
$$
初期条件として、\(t=0\) で \(x=d\)、\(v=0\)(静かに放した)を適用します。
式⑮より \(d = A \cos \phi\)、式⑯より \(0 = -A\omega \sin \phi\) です。
これより \(\phi = 0\)、\(A = d\) と定まります。
よって、変位と速度の式は以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
x(t) &= d \cos \omega t \\[2.0ex]
v(t) &= -d\omega \sin \omega t
\end{aligned}
$$
周期 \(T\) は位相が \(2\pi\) 進む時間なので、
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi}{\omega} = 2\pi \sqrt{\frac{l}{\mu g}}
\end{aligned}
$$
速さの最大値 \(v_{\text{最大}}\) は \(v(t)\) の振幅部分なので、
$$
\begin{aligned}
v_{\text{最大}} &= d\omega = d \sqrt{\frac{\mu g}{l}}
\end{aligned}
$$
【問(3)の解析】
重心が点Oを通過する時刻を \(t_1\) とします。\(x(t_1) = 0\) より \(\cos \omega t_1 = 0\)、つまり \(\omega t_1 = \frac{\pi}{2}\) です。
このときの速度は、
$$
\begin{aligned}
v(t_1) &= -d\omega \sin \frac{\pi}{2} = -d\omega
\end{aligned}
$$
つまり、左向きに速さ \(v_{\text{最大}} = d\omega\) を持ちます。
ここからローラーが停止し、一定の動摩擦力 \(-\mu Mg\)(左向き正なら \(+\mu Mg\))が働きます。
この区間の運動方程式(左向き正の座標 \(X\) をとる)は、
$$
\begin{aligned}
M \frac{d^2X}{dt^2} &= -\mu Mg \\[2.0ex]
\frac{d^2X}{dt^2} &= -\mu g
\end{aligned}
$$
これを \(t\) で積分して速度 \(V(t)\) を求めます(\(t_1\) を新たな時刻 \(0\) とします)。
$$
\begin{aligned}
V(t) &= \int (-\mu g) dt = -\mu g t + C_1
\end{aligned}
$$
初期速度 \(V(0) = d\omega\) より \(C_1 = d\omega\)。
$$
\begin{aligned}
V(t) &= -\mu g t + d\omega
\end{aligned}
$$
停止する時刻 \(t_{\text{停止}}\) は \(V(t_{\text{停止}}) = 0\) より、
$$
\begin{aligned}
0 &= -\mu g t_{\text{停止}} + d\omega \\[2.0ex]
t_{\text{停止}} &= \frac{d\omega}{\mu g}
\end{aligned}
$$
停止距離 \(D\) は、速度を \(0\) から \(t_{\text{停止}}\) まで積分したものです。
$$
\begin{aligned}
D &= \int_{0}^{t_{\text{停止}}} V(t) dt \\[2.0ex]
&= \int_{0}^{t_{\text{停止}}} (-\mu g t + d\omega) dt \\[2.0ex]
&= \left[ -\frac{1}{2}\mu g t^2 + d\omega t \right]_{0}^{t_{\text{停止}}}
\end{aligned}
$$
使用した数学公式
- 微分の定義: \(v = \frac{dx}{dt}, a = \frac{dv}{dt}\)
- 積分の基本: \(\int x^n dx = \frac{1}{n+1}x^{n+1}\)
- 三角関数の微分: \((\cos ax)’ = -a \sin ax\)
$$
\begin{aligned}
D &= -\frac{1}{2}\mu g \left( \frac{d\omega}{\mu g} \right)^2 + d\omega \left( \frac{d\omega}{\mu g} \right) \\[2.0ex]
&= -\frac{d^2 \omega^2}{2\mu g} + \frac{d^2 \omega^2}{\mu g} \\[2.0ex]
&= \frac{d^2 \omega^2}{2\mu g}
\end{aligned}
$$
ここで \(\omega^2 = \frac{\mu g}{l}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
D &= \frac{d^2}{2\mu g} \cdot \frac{\mu g}{l} \\[2.0ex]
&= \frac{d^2}{2l}
\end{aligned}
$$
物理現象を「運動方程式」という一つのルールで記述し、それを数学の力(微積分)を使って解き進めました。
前半は「バネのような力」なのでサイン・コサインの動きになり、後半は「一定のブレーキ」なので放物線の動きになります。
これらを時間の流れに沿ってつなぎ合わせることで、最終的な停止距離までを一貫して計算しました。
全ての設問において、メイン解法と同じ結果が導かれました。
微積分を使うことで、公式の暗記に頼らず、運動の様子を時間の関数として完全に記述できることが確認できました。
解答 (3) \(\displaystyle \frac{d^2}{2l}\)
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 剛体のつりあいにおける「支点の自由度」
- 核心: 剛体が静止しているとき、力のモーメントのつりあいの式 \(\sum \vec{M} = \vec{0}\) は、任意の点を基準(支点)としても成立します。
- 理解のポイント:
- 重心まわり: 重力のモーメントが \(0\) になるため、重力以外の力のバランスを見るのに適しています(模範解答のアプローチ)。
- 接点まわり: 未知の力(垂直抗力など)が作用する点を支点に選ぶと、その力のモーメントが \(0\) になり、連立方程式の変数を減らせます(別解のアプローチ)。この「計算を楽にするための支点選び」が剛体の問題の最大のコツです。
- 摩擦力が生み出す復元力と単振動
- 核心: 左右の垂直抗力の差によって生じる摩擦力の差が、変位 \(x\) に比例する復元力 \(F = -Kx\) となり、これが単振動の駆動力となります。
- 理解のポイント:
- 垂直抗力の非対称性: 重心がずれることで、近い方のローラーが強く板を支えます。
- 摩擦力の向き: ローラーの回転方向と板の相対運動を正しく把握し、摩擦力が常に「中心へ戻そうとする向き」に働くことを確認するのが重要です。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- 浮力による単振動: 水に浮かべた円柱を少し沈めて放すと、浮力の変化分が復元力となり単振動します。これも「つりあいの位置からのずれ」が力になるパターンです。
- バネで連結された剛体の振動: 剛体のつりあいとバネの弾性力を組み合わせた問題でも、今回のように「微小変位させたときの力の変化」を追うことで周期を求められます。
- 動く台の上での物体の運動: 慣性力が働く場合でも、運動方程式を立てて \(a = -\omega^2 x\) の形になれば単振動です。
- 初見の問題での着眼点:
- 「振動」という言葉を見たら: まず「復元力 \(F = -Kx\)」を探します。力が変位に比例することを示せれば、勝ったも同然です。
- 剛体の力が複雑なとき: 未知の力が集中している点を探し、そこをモーメントの支点に設定して、計算量を減らせないか検討します。
- 運動が切り替わるとき: 今回の問(3)のように「糸を切る」「回転を止める」などのイベント前後で、何が保存され(エネルギー、運動量)、何が変わるのか(力の種類、向き)を整理します。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 動摩擦力の向きの誤認:
- 誤解: 「板が右に動いているから摩擦は左」と単純に考えてしまう。
- 対策: 動摩擦力は「接触面同士の相対速度」と逆向きです。ローラーが高速回転している場合、板の速度よりもローラー表面の速度の方が支配的になることがあります。必ず「板から見てローラー表面がどっちに動いているか」を確認しましょう。
- モーメントの腕の長さの計算ミス:
- 誤解: 重心からの距離 \(x\) と、ローラー間隔 \(l\) を混同したり、\(l+x\) なのか \(l-x\) なのか図を見ずに式を立ててしまう。
- 対策: 必ず図を描き、支点から力の作用点までの距離を矢印で書き込みましょう。「左側は長くなるからプラス」「右側は短くなるからマイナス」といった定性的なチェックも有効です。
- 単振動の初期位相のズレ:
- 誤解: 常に \(x = A \sin \omega t\) だと思い込む。
- 対策: \(t=0\) でどこにいるかを確認します。端からスタートなら \(\cos\) 型、中心からスタートなら \(\sin\) 型です。微分方程式から解く別解のアプローチなら、このミスを根本的に防げます。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 問(2)での公式選択(エネルギー保存則 vs 単振動の公式):
- 選定理由: 最大速さだけを求めたい場合、エネルギー保存則(別解1)の方が、周期や角振動数を経由しない分、計算ステップが少なく済みます。一方、時間変化や周期も問われている場合は、単振動の公式(メイン解法)や微分方程式(別解2)の方が情報を網羅できます。
- 適用根拠: 摩擦力以外の非保存力が仕事をしない(あるいは摩擦力が保存力のようなポテンシャルを持つとみなせる)系では、力学的エネルギー保存則が成立します。
- 問(3)での公式選択(等加速度運動 vs エネルギー保存則):
- 選定理由: 模範解答(エネルギー保存則)は「仕事=エネルギー変化」というスカラー量の関係だけで解けるため、符号ミスが起きにくい利点があります。一方、別解(運動方程式+等加速度運動)は、時間の経過や速度の変化も詳細に追えるため、現象の理解が深まります。
- 適用根拠: 力が一定(\(\mu Mg\))であるため、等加速度運動の公式が適用可能です。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 文字式の次元確認(ディメンションチェック):
- 答えが出たら単位を確認します。例えば周期 \(T\) の答えが \(2\pi \sqrt{\frac{l}{\mu g}}\) なら、ルートの中身は \([\text{L}] / ([\text{L}]/[\text{T}]^2) = [\text{T}]^2\) となり、ルートをとると時間の次元 \([\text{T}]\) になるので正しいです。もし \(g/l\) になっていたら間違いだと気づけます。
- 極限的なケースでの検算:
- もし \(\mu=0\) (ツルツル)だったら? 復元力がなくなり周期は無限大(帰ってこない)になるはずです。式でも \(T \to \infty\) となり一致します。
- もし \(d=0\) (最初から真ん中)だったら? 振幅がなくなりずっと静止するはずです。式でも \(v_{\text{最大}} = 0\) となり一致します。
- 対称性の利用:
- \(N_1\) と \(N_2\) の式は、\(d\) の符号を反転させれば入れ替わるはずです(左右対称性)。計算結果がこの対称性を満たしているか確認することで、計算ミスを早期発見できます。
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問題44 万有引力 (東京大+名古屋市立大)
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
- 提示する別解
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式と万有引力ポテンシャル)
- 万有引力の位置エネルギーの公式 \(U = -G\frac{Mm}{r}\) を既知とせず、万有引力による仕事の積分から導出する原理的なアプローチをとります。
- 設問(5)の別解: 面積速度一定の法則を用いた解法
- ケプラーの第3法則を用いず、楕円の面積と面積速度の関係から周期を導出します。
- 設問Qの別解: 極座標表示の運動方程式を用いた解法
- 面積速度一定の法則やエネルギー保存則を前提とせず、極座標系における運動方程式からこれらを導出し、衝突条件を解析します。
- 設問(2)の別解: 微積分を用いた体系的解法(運動方程式と万有引力ポテンシャル)
- 上記の別解が有益である理由
- 微積分アプローチ: 「位置エネルギーの基準点が無限遠である理由」や「保存力がする仕事とポテンシャルの関係」を数学的に理解でき、公式の暗記に頼らない応用力を養います。
- 面積速度アプローチ: ケプラーの法則の幾何学的な意味(面積速度一定×周期=全周面積)を直感的に理解できます。
- 極座標アプローチ: 中心力場における運動の一般論を学ぶことで、円や楕円以外の軌道(放物線、双曲線)への応用視野を広げます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「万有引力場における宇宙船の軌道変更と分離」です。円軌道から楕円軌道への遷移、脱出速度、そして物体の分離に伴う運動量保存則など、宇宙工学の基礎となる力学を総合的に扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 万有引力の法則: 質量 \(M, m\) の2物体間には、距離 \(r\) の2乗に反比例する引力 \(F = G\frac{Mm}{r^2}\) が働きます。
- 万有引力による位置エネルギー: 無限遠を基準(\(0\))とすると、距離 \(r\) での位置エネルギーは \(U = -G\frac{Mm}{r}\) です。
- 力学的エネルギー保存則: 万有引力のみを受けて運動する場合、運動エネルギーと位置エネルギーの和は保存されます。
- 面積速度一定の法則(ケプラーの第2法則): 中心力場(万有引力など)では、動径ベクトルが単位時間に掃く面積は一定です。
- ケプラーの第3法則: 惑星の公転周期の2乗は、楕円軌道の半長軸の3乗に比例します(\(\frac{T^2}{a^3} = \text{一定}\))。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1)では、円運動の運動方程式(向心力=万有引力)から速さと周期を求めます。
- (2)では、無限遠まで到達するためのエネルギー条件(全エネルギー \(\ge 0\))から脱出速度を求めます。
- (3)では、楕円軌道の近地点と遠地点における「面積速度一定の法則」と「エネルギー保存則」を連立させて速さを求めます。
- (4)では、分離前後の運動量保存則を用いて質量比を決定します。
- (5)では、ケプラーの第3法則を用いて楕円軌道の周期を求め、飛行時間を計算します。
- Qでは、幾何学的な条件(衝突角度)を面積速度の式に反映させ、エネルギー保存則と連立して初速度を求めます。
問(1)
ここから先が、他の受験生と差がつく重要パートです。
「解法に至る思考プロセス」を
全て言語化した、超詳細解説。
なぜその公式を使うのか?どうしてその着眼点を持てるのか?
市販の解説では省略されてしまう「行間の思考」を、泥臭く解説しています。
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