基礎CHECK
1 等速円運動の角速度
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「度数法と弧度法の変換、および角速度の定義」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 弧度法(ラジアン)の定義: 1周(\(360^\circ\))が \(2\pi\) rad に対応することを理解する。
- 角速度の定義: 単位時間あたりに回転する角度。
- 等速円運動: 角速度が一定である運動。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、与えられた角度(\(90^\circ\))を度数法から弧度法(rad)に変換する。
- 次に、角速度の定義式 \( \omega = \displaystyle\frac{\theta}{t} \) に、変換した角度と経過時間を代入して角速度を計算する。
思考の道筋とポイント
円運動を扱う上で、角度の単位として「度(\(^\circ\))」ではなく「ラジアン(rad)」を用いるのが基本です。なぜなら、角速度 \( \omega \) や、円運動の速度 \( v = r\omega \) といった重要な公式が、角度をラジアンで測ることを前提に作られているからです。この問題は、まずその基本となる単位変換ができるか、そして角速度の定義式を正しく使えるかを問うています。「等速」円運動なので、角速度 \( \omega \) は時間によらず一定です。そのため、単純に回転した角度を経過時間で割るだけで求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 度数法と弧度法の関係: \( 360^\circ = 2\pi \ \text{rad} \)。これを基準に、他の角度も比例計算で変換できます。例えば、\( 180^\circ = \pi \ \text{rad} \)、\( 90^\circ = \displaystyle\frac{\pi}{2} \ \text{rad} \) となります。
- 角速度 \( \omega \) の定義: \( t \) 秒間に \( \theta \) [rad] 回転したとき、角速度 \( \omega \) [rad/s] は \( \omega = \displaystyle\frac{\theta}{t} \) で与えられます。これは「単位時間あたりの回転角」を意味します。
- 円周率 \( \pi \) の近似値: 計算の最後で具体的な数値を求める際には、\( \pi \approx 3.14 \) を用います。問題の有効数字(\(0.50\)秒は2桁)に合わせて結果を丸める必要があります。
具体的な解説と立式
この問題は2つのパートに分かれています。
パート1: 角度の単位変換
物理学、特に円運動では、角度の単位として弧度法(ラジアン)を用います。度数法と弧度法の関係は、円1周が \(360^\circ\) であり、これが \(2\pi\) ラジアンに対応することから導かれます。
$$ 360^\circ = 2\pi \ \text{rad} $$
この関係を用いて、\(90^\circ\) をラジアンに変換します。\(90^\circ\) は \(360^\circ\) の \(\displaystyle\frac{90}{360} = \displaystyle\frac{1}{4}\) 倍なので、ラジアンで表した角度 \( \theta \) も \(2\pi\) の \(\displaystyle\frac{1}{4}\) 倍になります。
$$ \theta = 2\pi \times \frac{90}{360} \quad \cdots ① $$
パート2: 角速度の計算
角速度 \( \omega \) は、単位時間あたりの回転角で定義されます。時間 \( t \) の間に角度 \( \theta \) だけ回転したときの角速度 \( \omega \) は、以下の式で与えられます。
$$ \omega = \frac{\theta}{t} \quad \cdots ② $$
この問題では、\( t = 0.50 \) 秒、回転角 \( \theta \) はパート1で求めた値を用います。
使用した物理公式
- 度数法と弧度法の関係: \( 360^\circ = 2\pi \ \text{rad} \)
- 角速度の定義式: \( \omega = \displaystyle\frac{\theta}{t} \)
パート1: 角度の単位変換
式①を用いて、\(90^\circ\) をラジアンに変換します。
$$
\begin{aligned}
\theta &= 2\pi \times \frac{90}{360} \\[2.0ex]&= 2\pi \times \frac{1}{4} \\[2.0ex]&= \frac{\pi}{2} \ \text{[rad]}
\end{aligned}
$$
パート2: 角速度の計算
式②に、\( \theta = \displaystyle\frac{\pi}{2} \) [rad] と \( t = 0.50 \) [s] を代入します。
$$
\begin{aligned}
\omega &= \frac{\theta}{t} \\[2.0ex]&= \frac{\displaystyle\frac{\pi}{2}}{0.50} \\[2.0ex]&= \frac{\pi}{2 \times 0.50} \\[2.0ex]&= \frac{\pi}{1.0} \\[2.0ex]&= \pi \ \text{[rad/s]}
\end{aligned}
$$
問題では近似値を求められているので、\( \pi \approx 3.14159… \) を用いて計算し、有効数字2桁で答えます。
$$ \omega = \pi \approx 3.1 \ \text{[rad/s]} $$
まず、角度の単位を「°」から物理で使う「rad」に直します。ピザをイメージしてください。1周(360°)が \(2\pi\) rad です。90°はその1/4なので、\(2\pi\) の1/4、つまり \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) rad となります。
次に角速度を計算します。角速度は「1秒あたりにどれだけ回転するか」です。問題では「0.50秒で \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) rad 回転した」と分かっているので、1秒あたりではその2倍回転することになります。
計算式で言うと、(\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) rad) ÷ (0.50 秒) = \( \pi \) rad/s となります。
最後に、\( \pi \) はおよそ \(3.14\) なので、答えは約 \(3.1\) rad/s となります。
2 等速円運動の周期,回転数
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「等速円運動における角速度、周期、回転数の関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 周期 \(T\) の定義: 物体が1周するのにかかる時間。
- 回転数 \(n\) の定義: 1秒あたりに物体が回転する回数。
- 角速度 \( \omega \)、周期 \(T\)、回転数 \(n\) の関係式を理解し、正しく用いること。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 設問(1)では、与えられた角速度 \( \omega \) を用いて、周期 \(T\) を計算する公式を適用する。
- 設問(2)では、設問(1)で求めた周期 \(T\) を用いて、回転数 \(n\) を計算する。
問(1)
思考の道筋とポイント
周期 \(T\) とは「1周するのにかかる時間」のことです。一方、角速度 \( \omega \) は「1秒あたりに進む角度」です。円運動の1周は \(2\pi\) [rad] なので、「1周の角度 \(2\pi\) を、1秒あたりに進む角度 \( \omega \) で割れば、1周にかかる時間 \(T\) が求まる」と考えられます。この関係を式で表したものが \( T = \displaystyle\frac{2\pi}{\omega} \) です。この公式の意味を理解して適用することがポイントです。
この設問における重要なポイント
- 周期と角速度の関係式: \( T = \displaystyle\frac{2\pi}{\omega} \)。この式は、角速度の定義 \( \omega = \displaystyle\frac{2\pi}{T} \)(1周 \(2\pi\) rad を周期 \(T\) 秒で割ったもの)を変形したものです。
- 単位の確認: 周期 \(T\) の単位は秒 [s] です。
- 有効数字: 問題で与えられている角速度 \(2.0\) rad/s は有効数字が2桁です。したがって、計算結果も有効数字2桁で答える必要があります。
具体的な解説と立式
周期 \(T\) [s] は、物体が円周を1周、すなわち \(2\pi\) [rad] 回転するのに要する時間です。
角速度が \( \omega \) [rad/s] なので、物体は \(T\) 秒間に \( \omega T \) [rad] だけ回転します。
これが1周分の角度 \(2\pi\) [rad] に等しくなるので、以下の関係式が成り立ちます。
$$ \omega T = 2\pi $$
この式を周期 \(T\) について解くと、次のようになります。
$$ T = \frac{2\pi}{\omega} \quad \cdots ① $$
使用した物理公式
- 周期と角速度の関係: \( T = \displaystyle\frac{2\pi}{\omega} \)
式①に、問題で与えられた角速度 \( \omega = 2.0 \) rad/s を代入します。
$$
\begin{aligned}
T &= \frac{2\pi}{2.0} \\[2.0ex]&= \pi \\[2.0ex]&\approx 3.14159…
\end{aligned}
$$
有効数字は2桁なので、小数第2位を四捨五入します。
$$ T \approx 3.1 \ \text{[s]} $$
角速度が \(2.0\) rad/s というのは、「1秒間に \(2.0\) rad の角度だけ回転する」という意味です。
周期は「1周(\(2\pi\) rad)するのに何秒かかりますか?」という問いです。
\(2\pi\) はおよそ \(2 \times 3.14 = 6.28\) です。
「1秒で \(2.0\) 進む速さで \(6.28\) の距離を進むには何秒かかるか」を計算すればよいので、\(6.28 \div 2.0 = 3.14\) 秒となります。
答えは有効数字2桁にするので、\(3.1\) 秒となります。
問(2)
思考の道筋とポイント
回転数 \(n\) とは「1秒あたりに何回転するか」を表す量です。一方、周期 \(T\) は「1回転するのに何秒かかるか」を表します。この2つの量は、互いに逆数の関係にあることを理解するのが最も重要です。例えば、1回転に \(0.5\) 秒かかる(\(T=0.5\) s)なら、1秒間には \(1 \div 0.5 = 2\) 回転(\(n=2\) Hz)できます。この \( n = \displaystyle\frac{1}{T} \) という関係を使って計算します。
この設問における重要なポイント
- 回転数と周期の関係: \( n = \displaystyle\frac{1}{T} \)。両者は互いに逆数の関係です。
- 単位の確認: 回転数 \(n\) の単位はヘルツ [Hz] です。\(1\) Hz は、1秒間に1回の回転(または振動)を意味します。
- 計算の精度: (1)で求めた周期 \(T\) の値を使って計算しますが、このとき、丸める前の値(\(T=\pi\))を用いると、より正確な計算結果が得られます。
具体的な解説と立式
回転数 \(n\) [Hz] は、単位時間(1秒)あたりの回転回数として定義されます。
周期 \(T\) [s] は、1回転するのにかかる時間です。
したがって、\(n\) と \(T\) の間には逆数の関係が成り立ちます。
$$ n = \frac{1}{T} \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- 回転数と周期の関係: \( n = \displaystyle\frac{1}{T} \)
式②に、(1)で求めた \( T = \pi \) [s] を代入します。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{1}{\pi} \\[2.0ex]&\approx \frac{1}{3.14} \\[2.0ex]&\approx 0.3184…
\end{aligned}
$$
有効数字は2桁なので、小数第3位を四捨五入します。
$$ n \approx 0.32 \ \text{[Hz]} $$
(1)で、この物体は1周するのに約 \(3.14\) 秒かかることがわかりました。
回転数は「では、1秒間では何周できますか?」という問いです。
これは、\(1\) 秒を「1周にかかる時間」で割れば求まります。
\(1 \div 3.14\) を計算すると、およそ \(0.318…\) となります。
答えは有効数字2桁にするので、\(0.32\) Hz となります。
思考の道筋とポイント
角速度 \( \omega \) と回転数 \(n\) の間には直接的な関係式があります。角速度 \( \omega \) は「1秒あたりの回転角[rad]」、回転数 \(n\) は「1秒あたりの回転数[回]」です。1回転は \(2\pi\) rad なので、1秒間に \(n\) 回転するということは、角度で言えば \(2\pi \times n\) [rad] だけ回転することになります。これが角速度 \( \omega \) の定義そのものですから、\( \omega = 2\pi n \) という関係が成り立ちます。これを使えば、周期 \(T\) を経由せずに直接回転数 \(n\) を求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 角速度と回転数の関係式: \( \omega = 2\pi n \)。これは円運動や単振動で頻出する非常に重要な公式です。
- この方法を使えば、(1)の計算結果に依存せずに(2)を解くことができます。
具体的な解説と立式
角速度 \( \omega \) は単位時間あたりの回転角、回転数 \(n\) は単位時間あたりの回転回数です。1回転が \(2\pi\) [rad] であることから、これらの間には以下の関係が成り立ちます。
$$ \omega = 2\pi n \quad \cdots ③ $$
この式を回転数 \(n\) について解くと、次のようになります。
$$ n = \frac{\omega}{2\pi} \quad \cdots ④ $$
使用した物理公式
- 角速度と回転数の関係: \( \omega = 2\pi n \)
式④に、問題で与えられた角速度 \( \omega = 2.0 \) rad/s を代入します。
$$
\begin{aligned}
n &= \frac{2.0}{2\pi} \\[2.0ex]&= \frac{1}{\pi} \\[2.0ex]&\approx \frac{1}{3.14} \\[2.0ex]&\approx 0.3184…
\end{aligned}
$$
有効数字は2桁なので、小数第3位を四捨五入します。
$$ n \approx 0.32 \ \text{[Hz]} $$
これは、周期 \(T\) を用いた計算結果と一致します。
角速度 \( \omega = 2.0 \) rad/s は「1秒で \(2.0\) rad 進む」という意味です。
回転数 \(n\) は「1秒で何回転するか」です。
1回転は \(2\pi\) rad (約 \(6.28\) rad) なので、「\(2.0\) rad は、1回転の何倍か?」を計算すればよいことになります。
\(2.0 \div (2\pi) = 2.0 \div 6.28 \approx 0.318…\) となり、1秒間に約 \(0.32\) 回転することがわかります。
3 円運動の速度・加速度の向き, 力
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「等速円運動における速度、加速度、力の向き」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 速度、加速度、力がベクトル量であることの理解:大きさと向きを持つ量として捉える。
- 「速さ」と「速度」の違い: 速さはスカラー(大きさのみ)、速度はベクトル(大きさと向き)である。
- 加速度の定義: 加速度は「速度の変化」によって生じる。速度の大きさが変わらなくても、向きが変われば加速度は存在する。
- 運動の法則(運動方程式): 力の向きと加速度の向きは常に一致する(\( \vec{F} = m\vec{a} \))。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 等速円運動の各瞬間における物体の進行方向を考え、速度の向きを特定する。
- 速度ベクトルの向きが変化していることから、加速度の存在を認識し、その変化の向き(加速度の向き)を図的に考える。
- 運動の法則に基づき、加速度の向きから力の向きと名称を特定する。
思考の道筋とポイント
この問題の最大のポイントは、「一定の速さ」という言葉に惑わされず、「速度は変化している」と見抜くことです。日常生活では「速さ」と「速度」を区別しませんが、物理では厳密に区別します。等速円運動は、速さ(スカラー)は一定ですが、進行方向が絶えず変わるため、速度(ベクトル)は常に変化しています。
速度が変化しているということは、必ず加速度が生じています。そして、ニュートンの運動の法則によれば、加速度があるところには必ず力が働いています。これらのベクトル量(速度、加速度、力)の向きの関係を正しく理解することが、円運動を学ぶ上での第一歩となります。
この設問における重要なポイント
- 速度の向き: 常に円軌道の接線方向を向きます。もし円運動をさせている力が突然なくなれば、物体はその瞬間の接線方向にまっすぐ飛んでいきます。
- 加速度の向き: 等速円運動の場合、加速度は常に円の中心方向を向きます。この加速度は、速度の「向き」だけを変える役割を果たします。このため、「向心加速度」とも呼ばれます。
- 力の名称と向き: 運動方程式 \( \vec{F}=m\vec{a} \) から、力の向きは加速度の向きと常に同じです。したがって、力も常に円の中心を向きます。円運動を引き起こすこの中心向きの力を「向心力」と呼びます。
具体的な解説と立式
この問題は、物理法則の概念的な理解を問うものであり、計算式を立てる必要はありません。
- 速度の向き
物体は円軌道に沿って運動します。ある瞬間に物体がいる点での進行方向は、その点における円の接線方向です。ハンマー投げの選手がハンマーを回し、手を離した瞬間にハンマーが接線方向に飛んでいくのをイメージすると分かりやすいでしょう。 - 加速度の向き
「速さ」は一定ですが、「速度」の向きは刻一刻と変化しています。速度はベクトルなので、向きが変わるだけでも「速度が変化した」ことになり、加速度が生じます。
ある瞬間の速度ベクトルを \( \vec{v} \)、その少し後の速度ベクトルを \( \vec{v}’ \) とします。速さは同じなので、\( |\vec{v}| = |\vec{v}’| \) です。速度の変化 \( \Delta \vec{v} \) は \( \vec{v}’ – \vec{v} \) で表されます。この \( \Delta \vec{v} \) の向きを考えると、常に円の中心を向くことがわかります。加速度 \( \vec{a} \) は速度変化 \( \Delta \vec{v} \) を時間で割ったものなので、加速度の向きも円の中心方向となります。 - 力の名称と向き
運動の法則 \( \vec{F} = m\vec{a} \) によれば、質量 \(m\) の物体に加速度 \( \vec{a} \) が生じているとき、物体には加速度と同じ向きに力 \( \vec{F} \) が働いています。
等速円運動では加速度が常に円の中心を向いているため、働く力も常に円の中心を向いています。このように、物体を円軌道上で運動させ続けるために、常に中心方向へ働く力のことを向心力と呼びます。
使用した物理公式
- 加速度の定義: 速度の時間変化率
- 運動方程式: \( \vec{F} = m\vec{a} \)
- 向心力の概念: 円運動を維持するために、常に軌道の中心に向かって働く力。
この問題に計算過程はありません。上記の概念的な説明が解答の根拠となります。
- 速度の向き: 紐のついたボールをぐるぐる回しているのを想像してください。もし途中で紐がプツンと切れたら、ボールはまっすぐ飛んでいきますね。その「まっすぐ飛んでいく方向」が、その瞬間の速度の向きです。これは円の接線方向です。
- 加速度の向き: ボールは本当はまっすぐ進みたいのに、紐が常に内側(中心)に引っ張り続けているから、カーブして円を描くことができます。この「進行方向を無理やり曲げている働き」が加速度です。なので、加速度の向きは紐が引っ張る向き、つまり「円の中心に向かう向き」になります。
- 力の名称と向き: 上で考えた「紐がボールを引っ張る力」のように、円運動をさせるために中心に向かって働く力を、物理では「向心力」という名前で呼びます。その向きはもちろん「円の中心に向かう向き」です。
4 円運動と半径
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「剛体の回転における、角速度、速さ、加速度と半径の関係」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 剛体の回転: 円板のような形を変えない物体が一体となって回転する場合、すべての点の角速度が等しいことを理解する。
- 速さと角速度の関係式: \(v=r\omega\)。
- 向心加速度の大きさと角速度の関係式: \(a=r\omega^2\)。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 設問ごとに、対応する物理量の公式(\(v=r\omega\), \(a=r\omega^2\)など)を思い出す。
- 点Pと点Qで、公式に含まれる各変数(半径\(r\)、角速度\(\omega\))がどう違うか(または同じか)を比較する。
- それぞれの物理量を式で表し、比を計算して、点Qでの値が点Pでの値の何倍になるかを求める。
問(1) 角速度
思考の道筋とポイント
この問題の「円板」のように、形や大きさが変わらない物体(物理では「剛体」と呼びます)が一体となって回転している状況を考えます。このとき、円板上のどの点も、同じ時間で同じ角度だけ回転します。例えば、円板が30°回転すれば、中心に近い点Pも外側にある点Qも、同じく30°回転します。
「単位時間あたりに回転する角度」が角速度の定義なので、どの点でも角速度は同じになります。これがこの設問の最も重要なポイントです。
この設問における重要なポイント
- 剛体の回転: 形や大きさが変わらない物体が一体となって回転するとき、中心からの距離に関わらず、すべての点の角速度は等しい。
- 角速度 \( \omega \) の共通性: 角速度は回転運動そのものの「ペース」を表す量であり、円板全体で一つの値を共有します。
具体的な解説と立式
円板は剛体であるため、回転中に変形しません。円板が時間 \( \Delta t \) の間に角度 \( \Delta \theta \) だけ回転したとします。このとき、円板上のすべての点(点Pも点Qも)は、同じ時間 \( \Delta t \) で同じ角度 \( \Delta \theta \) だけ回転します。
角速度の定義は \( \omega = \displaystyle\frac{\Delta \theta}{\Delta t} \) です。
点Pの角速度を \( \omega_{\text{P}} \)、点Qの角速度を \( \omega_{\text{Q}} \) とすると、
$$ \omega_{\text{P}} = \frac{\Delta \theta}{\Delta t} $$
$$ \omega_{\text{Q}} = \frac{\Delta \theta}{\Delta t} $$
したがって、\( \omega_{\text{P}} = \omega_{\text{Q}} \) となります。
使用した物理公式
- 角速度の定義: \( \omega = \displaystyle\frac{\Delta \theta}{\Delta t} \)
- 剛体の回転の性質: 円板上のすべての点で角速度は等しい。
点Pの角速度を \( \omega_{\text{P}} \)、点Qの角速度を \( \omega_{\text{Q}} \) とします。
上記の解説より、\( \omega_{\text{Q}} = \omega_{\text{P}} \) です。
したがって、点Qでの角速度は点Pでの値の \(1\) 倍となります。
レコード盤やメリーゴーランドを想像してみてください。それらが1回転するとき、中心近くに乗っている人も、外側に乗っている人も、同じタイミングで出発点に戻ってきます。これは、どちらの人も「角度で見たときの回転の速さ(角速度)」が同じだからです。したがって、点Qの角速度は点Pの角速度と同じで「1倍」です。
問(2) 速さ
思考の道筋とポイント
速さ \(v\) は、角速度 \( \omega \) と回転半径 \(r\) を使って \(v=r\omega\) と表されます。(1)で確認したように、角速度 \( \omega \) は点Pと点Qで共通です。しかし、回転の中心からの距離(半径)は、点Pが \(r\)、点Qが \(3r\) と異なっています。
この公式 \(v=r\omega\) から、速さ \(v\) は半径 \(r\) に比例することがわかります。半径が3倍になれば、速さも3倍になると予測できます。
この設問における重要なポイント
- 速さと角速度の関係式: \(v=r\omega\)。速さは回転半径 \(r\) に比例します。
- 物理的なイメージ: 同じ角速度で回転していても、中心から遠い点ほど、同じ時間でより長い距離を移動する必要があるため、速くなります。
具体的な解説と立式
速さ \(v\)、半径 \(r\)、角速度 \( \omega \) の間には、\( v = r\omega \) という関係式が成り立ちます。
点Pの半径を \( r_{\text{P}} = r \)、速さを \( v_{\text{P}} \) とします。
点Qの半径を \( r_{\text{Q}} = 3r \)、速さを \( v_{\text{Q}} \) とします。
(1)より、角速度は両点で共通なので、これを \( \omega \) とおきます。
それぞれの点での速さは、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
v_{\text{P}} &= r_{\text{P}} \omega \\[2.0ex]&= r\omega \quad \cdots ①
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
v_{\text{Q}} &= r_{\text{Q}} \omega \\[2.0ex]&= (3r)\omega \\[2.0ex]&= 3r\omega \quad \cdots ②
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 速さと角速度の関係: \( v = r\omega \)
点Qの速さが点Pの速さの何倍かを求めるには、比 \( \displaystyle\frac{v_{\text{Q}}}{v_{\text{P}}} \) を計算します。
式①と式②を用いて、
$$
\begin{aligned}
\frac{v_{\text{Q}}}{v_{\text{P}}} &= \frac{3r\omega}{r\omega} \\[2.0ex]&= 3
\end{aligned}
$$
よって、点Qでの速さは点Pでの値の \(3\) 倍となります。
再びメリーゴーランドの例です。1周にかかる時間は同じでも、外側にいる人の方が内側にいる人よりずっと長い距離を移動します。同じ時間で長い距離を進むのですから、外側にいる人の方が速いということになります。点Qは点Pよりも中心からの距離が3倍なので、移動する円周の長さも3倍になり、結果として速さも3倍になります。
問(3) 加速度の大きさ
思考の道筋とポイント
等速円運動の加速度(向心加速度)の大きさ \(a\) は、\(a = r\omega^2\) という公式で表されます。この問題では、(1)で角速度 \( \omega \) が共通であることがわかっているので、この公式を使うのが最も簡単です。
速さのときと同様に、角速度 \( \omega \) は一定で、半径 \(r\) が点Qでは点Pの3倍になることを考えます。公式から、加速度の大きさ \(a\) は半径 \(r\) に比例することがわかるので、速さと同じく3倍になると考えられます。
この設問における重要なポイント
- 加速度の大きさと角速度の関係式: \(a = r\omega^2\)。加速度の大きさは回転半径 \(r\) に比例します。
- 物理的なイメージ: 加速度は速度の向きを変える働きをします。中心から遠い点ほど速さが速いため、その速い物体の進行方向を同じペース(角速度)で曲げ続けるには、より大きな力、すなわちより大きな加速度が必要になります。
具体的な解説と立式
等速円運動における加速度の大きさ \(a\) は、半径 \(r\) と角速度 \( \omega \) を用いて \( a = r\omega^2 \) と表されます。
点Pの半径を \( r_{\text{P}} = r \)、加速度の大きさを \( a_{\text{P}} \) とします。
点Qの半径を \( r_{\text{Q}} = 3r \)、加速度の大きさを \( a_{\text{Q}} \) とします。
角速度は共通で \( \omega \) です。
それぞれの点での加速度の大きさは、以下のようになります。
$$
\begin{aligned}
a_{\text{P}} &= r_{\text{P}} \omega^2 \\[2.0ex]&= r\omega^2 \quad \cdots ③
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
a_{\text{Q}} &= r_{\text{Q}} \omega^2 \\[2.0ex]&= (3r)\omega^2 \\[2.0ex]&= 3r\omega^2 \quad \cdots ④
\end{aligned}
$$
使用した物理公式
- 加速度の大きさと角速度の関係: \( a = r\omega^2 \)
点Qの加速度の大きさが点Pの何倍かを求めるには、比 \( \displaystyle\frac{a_{\text{Q}}}{a_{\text{P}}} \) を計算します。
式③と式④を用いて、
$$
\begin{aligned}
\frac{a_{\text{Q}}}{a_{\text{P}}} &= \frac{3r\omega^2}{r\omega^2} \\[2.0ex]&= 3
\end{aligned}
$$
よって、点Qでの加速度の大きさは点Pでの値の \(3\) 倍となります。
加速度は、物体の進行方向を曲げるための「働きの強さ」のようなものです。中心から遠い点Qは、点Pより速さが3倍も速いです((2)で確認しました)。猛スピードで動いているものを、内側のゆっくりなものと同じペースでカーブさせるには、より強く内側に引っ張る必要があります。この「引っ張る強さ」が加速度に対応します。公式 \(a = r\omega^2\) を見ても、半径 \(r\) が3倍になれば、加速度 \(a\) も3倍になることがわかります。
思考の道筋とポイント
加速度の大きさを表すもう一つの重要な公式 \(a = \displaystyle\frac{v^2}{r}\) を使って解くこともできます。この方法では、(2)で求めた速さの関係(\(v_{\text{Q}} = 3v_{\text{P}}\))と、問題で与えられた半径の関係(\(r_{\text{Q}} = 3r_{\text{P}}\))を利用します。速さ \(v\) は2乗で、半径 \(r\) は1乗で効いてくる点に注意して計算します。
この設問における重要なポイント
- 加速度の大きさと速さの関係式: \(a = \displaystyle\frac{v^2}{r}\)。
- この公式を使うと、(2)の計算結果を利用して(3)を解くことになり、設問間のつながりを意識できます。
具体的な解説と立式
加速度の大きさ \(a\) は、速さ \(v\) と半径 \(r\) を用いて \( a = \displaystyle\frac{v^2}{r} \) とも表されます。
点Pでの値を \(v_{\text{P}}\), \(r_{\text{P}}\), \(a_{\text{P}}\) とし、点Qでの値を \(v_{\text{Q}}\), \(r_{\text{Q}}\), \(a_{\text{Q}}\) とします。
$$ a_{\text{P}} = \frac{v_{\text{P}}^2}{r_{\text{P}}} \quad \cdots ⑤ $$
(2)の結果より \( v_{\text{Q}} = 3v_{\text{P}} \)、また問題の図より \( r_{\text{Q}} = 3r_{\text{P}} \) です。これらを点Qの加速度の式に代入します。
$$ a_{\text{Q}} = \frac{v_{\text{Q}}^2}{r_{\text{Q}}} \quad \cdots ⑥ $$
使用した物理公式
- 加速度の大きさと速さの関係: \( a = \displaystyle\frac{v^2}{r} \)
式⑥に \( v_{\text{Q}} = 3v_{\text{P}} \) と \( r_{\text{Q}} = 3r_{\text{P}} \) を代入します。
$$
\begin{aligned}
a_{\text{Q}} &= \frac{(3v_{\text{P}})^2}{3r_{\text{P}}} \\[2.0ex]&= \frac{9v_{\text{P}}^2}{3r_{\text{P}}} \\[2.0ex]&= 3 \left( \frac{v_{\text{P}}^2}{r_{\text{P}}} \right)
\end{aligned}
$$
式⑤より \( \displaystyle\frac{v_{\text{P}}^2}{r_{\text{P}}} = a_{\text{P}} \) なので、
$$ a_{\text{Q}} = 3a_{\text{P}} $$
よって、点Qでの加速度の大きさは点Pでの値の \(3\) 倍となり、同じ結果が得られます。
加速度を求める別の公式 \(a = \displaystyle\frac{v^2}{r}\) を使ってみます。点Qは点Pに比べて、速さ \(v\) が3倍、半径 \(r\) も3倍です。公式の分子にある \(v^2\) は、\(3^2=9\) 倍になります。一方、分母の \(r\) は \(3\) 倍になります。全体としては、\(9 \div 3 = 3\) 倍になります。
5 水平面上を回転する物体
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「等速円運動の運動量(速さ、加速度、向心力)の具体的な計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 速さと角速度の関係式: \(v=r\omega\)。
- 向心加速度の大きさの公式: \(a=r\omega^2\) または \(a=\displaystyle\frac{v^2}{r}\)。
- 円運動の運動方程式: \(ma=F\)。円運動では、この力 \(F\) が向心力となる。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 設問(1)では、与えられた半径 \(r\) と角速度 \( \omega \) から、公式を用いて速さ \(v\) を計算する。
- 設問(2)では、同様に公式を用いて加速度の大きさ \(a\) を計算する。
- 設問(3)では、求めた加速度 \(a\) と与えられた質量 \(m\) を運動方程式に代入し、向心力 \(F\) を計算する。
問(1) 速さ v
思考の道筋とポイント
速さ \(v\)、半径 \(r\)、角速度 \( \omega \) の間には、\(v=r\omega\) という基本的な関係式があります。この問題では、半径 \(r=2.0\) m と角速度 \( \omega=3.0 \) rad/s が与えられているため、この公式に値を代入するだけで速さ \(v\) を求めることができます。
この設問における重要なポイント
- 速さと角速度の関係式: \(v=r\omega\) を正しく適用する。
- 単位の確認: 半径が [m]、角速度が [rad/s] のとき、速さは [m/s] となります。ラジアン(rad)は無次元量として扱われます。
- 有効数字: 問題で与えられている数値(\(0.50\) kg, \(2.0\) m, \(3.0\) rad/s)はすべて有効数字2桁なので、計算結果も2桁で答えます。
具体的な解説と立式
速さ \(v\) は、回転半径 \(r\) と角速度 \( \omega \) の積で表されます。
$$ v = r\omega \quad \cdots ① $$
問題で与えられた値は、\(r = 2.0\) m、\( \omega = 3.0 \) rad/s です。
使用した物理公式
- 速さと角速度の関係: \( v = r\omega \)
式①に与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= 2.0 \times 3.0 \\[2.0ex]&= 6.0 \ \text{[m/s]}
\end{aligned}
$$
角速度が \(3.0\) rad/s というのは、「1秒間に \(3.0\) ラジアンの角度だけ回転する」という意味です。速さは「1秒間に何メートル進むか」です。円弧の長さは(半径)×(中心角[rad])で計算できるので、1秒間に進む距離(速さ)は、(半径)×(1秒間に回転する角度)で計算できます。つまり、\(v = r\omega\) という式が成り立ちます。ここに \(r=2.0\) m, \( \omega=3.0 \) rad/s を入れると、\(2.0 \times 3.0 = 6.0\) m/s となります。
問(2) 加速度の大きさ a
思考の道筋とポイント
等速円運動の加速度(向心加速度)の大きさ \(a\) を求める公式は \(a=r\omega^2\) と \(a=\displaystyle\frac{v^2}{r}\) の2つがあります。この問題では、角速度 \( \omega \) が直接与えられているので、\(a=r\omega^2\) を使うのが最も直接的で計算も簡単です。
この設問における重要なポイント
- 加速度の公式の選択: \(a=r\omega^2\) を用いるのが効率的です。
- 計算ミス注意: 角速度 \( \omega \) を2乗することを忘れないように注意が必要です。
具体的な解説と立式
加速度の大きさ \(a\) は、半径 \(r\) と角速度 \( \omega \) を用いて次のように表されます。
$$ a = r\omega^2 \quad \cdots ② $$
問題で与えられた値は、\(r = 2.0\) m、\( \omega = 3.0 \) rad/s です。
使用した物理公式
- 加速度の大きさと角速度の関係: \( a = r\omega^2 \)
式②に与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
a &= 2.0 \times (3.0)^2 \\[2.0ex]&= 2.0 \times 9.0 \\[2.0ex]&= 18 \ \text{[m/s$^2$]}
\end{aligned}
$$
加速度は、物体の進行方向を曲げるために必要な「働きの強さ」を表します。角速度が速いほど、また半径が大きいほど、向きを大きく変える必要があり、加速度は大きくなります。公式 \(a=r\omega^2\) に値を代入すると、\(a = 2.0 \times 3.0^2 = 18\) m/s² と計算できます。
具体的な解説と立式
加速度の大きさのもう一つの公式 \(a = \displaystyle\frac{v^2}{r}\) を用いることもできます。
$$ a = \frac{v^2}{r} \quad \cdots ③ $$
(1)で求めた速さ \(v = 6.0\) m/s と、与えられた半径 \(r = 2.0\) m を使います。
使用した物理公式
- 加速度の大きさと速さの関係: \( a = \displaystyle\frac{v^2}{r} \)
式③に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
a &= \frac{(6.0)^2}{2.0} \\[2.0ex]&= \frac{36}{2.0} \\[2.0ex]&= 18 \ \text{[m/s$^2$]}
\end{aligned}
$$
同じ結果が得られます。
問(3) 円運動を続けるのに必要な力の大きさ F
思考の道筋とポイント
円運動を続けるために必要な力(向心力)の大きさ \(F\) は、運動方程式 \(F=ma\) から求めることができます。質量 \(m\) は問題で与えられており、加速度の大きさ \(a\) は(2)で求めた値を使います。この力が、この問題では「糸の張力」に相当します。
この設問における重要なポイント
- 円運動の運動方程式: \(F=ma\)。向心力 \(F\)、質量 \(m\)、向心加速度 \(a\) の関係を正しく理解する。
- 力の正体: この問題では、向心力 \(F\) の役割を糸が小球を引く張力が担っています。
具体的な解説と立式
円運動の運動方程式は、向心力の大きさ \(F\)、質量 \(m\)、加速度の大きさ \(a\) を用いて次のように表されます。
$$ F = ma \quad \cdots ④ $$
問題で与えられた質量は \(m = 0.50\) kg、(2)で求めた加速度は \(a = 18\) m/s² です。
使用した物理公式
- 運動方程式: \( F = ma \)
式④に値を代入します。
$$
\begin{aligned}
F &= 0.50 \times 18 \\[2.0ex]&= 9.0 \ \text{[N]}
\end{aligned}
$$
ニュートンの運動の法則「力 = 質量 × 加速度」を使います。小球の質量は \(0.50\) kg、加速度の大きさは(2)で求めた \(18\) m/s² なので、この2つを掛け合わせるだけで力が出てきます。\(0.50 \times 18 = 9.0\) N となります。この力が、糸が切れないように小球を引っ張り続けている力の大きさです。
具体的な解説と立式
運動方程式 \(F=ma\) に、加速度の公式 \(a=r\omega^2\) や \(a=\displaystyle\frac{v^2}{r}\) を直接代入した、向心力の公式を使って計算することもできます。
- 角速度 \( \omega \) を使う場合
$$ F = mr\omega^2 \quad \cdots ⑤ $$ - 速さ \(v\) を使う場合
$$ F = m\frac{v^2}{r} \quad \cdots ⑥ $$
使用した物理公式
- 向心力の公式: \( F = mr\omega^2 \) または \( F = m\displaystyle\frac{v^2}{r} \)
- 式⑤の計算
$$
\begin{aligned}
F &= 0.50 \times 2.0 \times (3.0)^2 \\[2.0ex]&= 1.0 \times 9.0 \\[2.0ex]&= 9.0 \ \text{[N]}
\end{aligned}
$$ - 式⑥の計算
$$
\begin{aligned}
F &= 0.50 \times \frac{(6.0)^2}{2.0} \\[2.0ex]&= 0.50 \times \frac{36}{2.0} \\[2.0ex]&= 0.50 \times 18 \\[2.0ex]&= 9.0 \ \text{[N]}
\end{aligned}
$$
どちらの方法でも同じ結果が得られます。
6 慣性力
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「加速度運動する座標系(非慣性系)で考える『見かけの力』、慣性力」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 非慣性系: エレベーターのように、加速度運動している観測者がいる座標系。
- 慣性力: 非慣性系において、物体に働く見かけの力。運動方程式を成り立たせるために導入される。
- 慣性力の向き: 観測者(座標系)の加速度の向きと常に逆向き。
- 慣性力の大きさ: \(f=ma\)。\(m\)は物体の質量、\(a\)は観測者の加速度の大きさ。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- 問題の状況(加速しながら下降するエレベーター)が非慣性系であることを理解する。
- 慣性力の向きを、エレベーターの加速度(下向き)と逆の向き(上向き)と判断する。
- 慣性力の大きさの公式 \(f=ma\) に、人の質量とエレベーターの加速度の大きさを代入して計算する。
思考の道筋とポイント
普段私たちが使っている運動方程式 \(ma=F\) は、静止しているか、等速直線運動している場所(慣性系)でしか成り立ちません。エレベーターのように加速度運動している場所(非慣性系)から物体を見ると、この法則がそのままでは成り立たなくなります。そこで、非慣性系でも運動方程式が使えるように、仮想的な力である「慣性力」を導入します。
慣性力は、電車が発車するときに後ろに押されたり、エレベーターが下降するときに体がフワッと浮いたりするように感じる、あの「力」の正体です。実際に誰かが押したり引いたりしているわけではない「見かけの力」である点がポイントです。この問題では、エレベーターが下向きに加速することで、人は上向きの慣性力を感じます。
この設問における重要なポイント
- 慣性力の向き: 観測者(エレベーター)の加速度 \( \vec{a} \) とは必ず逆向きになります。エレベーターが下向きに加速するので、慣性力は上向きです。
- 慣性力の大きさ: \( f = ma \) で計算します。ここで \(m\) は力を受ける物体(人)の質量、\(a\) は観測者(エレベーター)の加速度の大きさです。
- 有効数字: 問題文の数値が \(50\) kg、\(2.0\) m/s² ともに有効数字2桁なので、答えも有効数字2桁で表す必要があります。
具体的な解説と立式
この問題は、加速度 \(a = 2.0\) m/s² で下向きに運動するエレベーター(非慣性系)に乗っている質量 \(m = 50\) kg の人が受ける慣性力を求めるものです。
- 慣性力の向き
慣性力の向きは、観測者であるエレベーターの加速度の向きと逆向きです。エレベーターは下向きに加速しているため、人が受ける慣性力の向きは上向きとなります。 - 慣性力の大きさ
慣性力の大きさ \(f\) は、人の質量 \(m\) とエレベーターの加速度の大きさ \(a\) の積で与えられます。
$$ f = ma \quad \cdots ① $$
- 慣性力の大きさ: \( f = ma \)
式①に、\(m = 50\) kg、\(a = 2.0\) m/s² を代入します。
$$
\begin{aligned}
f &= 50 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 100
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で表すため、指数表記を用います。
$$ f = 1.0 \times 10^2 \ \text{[N]} $$
エレベーターが急に下がり始めると、体がフワッと浮くような感じがしますよね。この、自分を上に持ち上げようとする見かけの力が「慣性力」です。
向きは、エレベーターの加速度(下向き)と反対の「上向き」です。
大きさは、人の質量(\(50\) kg)とエレベーターの加速度の大きさ(\(2.0\) m/s²)を単純に掛け算するだけでOKです。
\(50 \times 2.0 = 100\) となります。答えは有効数字2桁で \(1.0 \times 10^2\) N と書きます。
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