「リードα 物理基礎・物理 改訂版」徹底解説!【第3章】基礎CHECK

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基礎CHECK

1 物体にはたらく力

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「物体にはたらく力の見つけ方と作図」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 重力(万有引力): 質量を持つ物体は必ず地球から引かれる。
  2. 接触力: 物体が何かに「触れている」部分から受ける力(垂直抗力、張力、摩擦力など)。
  3. 力の見つけ方の手順: まず重力を描き、次に物体が触れているものを探して接触力を描く。
  4. 運動の状態と力の関係: 力は運動の「原因」であり、運動の向きと必ずしも一致しない。

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各設問で、まず物体にはたらく重力を描く。
  2. 次に、物体が何と接しているかを確認し、そこから受ける力(垂直抗力や張力)を描く。
  3. 運動の状態に惑わされず、その瞬間に物体にはたらいている力だけを考える。
  4. 摩擦力や空気抵抗は、問題文に指示がない限り無視する。

問(1) 机の上のボール

思考の道筋とポイント
静止している机の上のボールにはたらく力を考えます。力を見つける基本的な手順は「まず重力、次に接触力」です。この手順に従って、ボールにはたらく力を漏れなく見つけ出します。ボールは静止しているので、はたらく力はつり合っているはずです。

この設問における重要なポイント

  • 重力: 地球が物体を引く力。物体の中心(重心)から鉛直下向きにはたらきます。
  • 垂直抗力: 面が物体を押す力。物体が面にめり込むのを防ぐ力で、接触面に垂直な向きにはたらきます。
  • 力のつり合い: 物体が静止している、または等速直線運動をしているとき、物体にはたらく力の合力はゼロになります。この問題では、重力と垂直抗力が同じ大きさで逆向きになり、つり合っています。

具体的な解説と立式
この問題は、力の概念的な理解と作図を問うもので、計算式は不要です。

  1. まず、ボールには地球が引く力、重力(地球がボールを引く力) がはたらきます。これは常に鉛直下向きです。
  2. 次に、ボールが何かに触れているかを探します。ボールは机の面に触れています。
  3. 触れている面からは力がはたらきます。机がボールを押し返す力、垂直抗力(机がボールを押す力) です。この力は接触面に垂直な、上向きにはたらきます。
  4. ボールはこれら以外のものには触れていないため、ボールにはたらく力はこの2つだけです。
使用した物理公式
この問題では、数式ではなく物理用語の定義を用います。

  • 重力の定義
  • 垂直抗力の定義
計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

ボールにはたらく力を探すゲームだと考えてみましょう。

  1. まず、どんな物にもはたらく「重力」を探します。地球がボールを真下に引っ張っています。これが1つ目の力です。
  2. 次に、ボールが何かに「触れている」場所を探します。ボールは「机」に触れていますね。
  3. 触れている場所からは、必ず力がはたらきます。机はボールがめり込まないように、真上に押し返しています。この力を「垂直抗力」と呼びます。これが2つ目の力です。
  4. 他にボールに触れているものはないので、ボールにはたらく力はこの2つで全てです。
解答 (1) 図:重力(鉛直下向き)、垂直抗力(鉛直上向き)。言葉:重力(地球がボールを引く力)、垂直抗力(机がボールを押す力)。

問(2) 糸につるされた小球

思考の道筋とポイント
静止している小球にはたらく力を考えます。(1)と考え方は同じで、「まず重力、次に接触力」の手順で力を探します。接触している相手が「面」から「糸」に変わっただけです。

この設問における重要なポイント

  • 重力: (1)と同様に、地球が小球を引く力で、鉛直下向きにはたらきます。
  • 張力: 糸が物体を引く力。常に糸がぴんと張っている向き(この場合は上向き)にはたらきます。「張力」という言葉は「引っ張る力」にしか使わず、「押す力」には使いません。
  • 力のつり合い: (1)と同様、小球は静止しているので、重力と張力はつり合っています。

具体的な解説と立式

  1. まず、小球には地球が引く力、重力(地球が小球を引く力) が鉛直下向きにはたらきます。
  2. 次に、小球が触れているものを探します。小球は「糸」に触れています。
  3. 糸からは、小球を引っ張り上げる力がはたらきます。これを張力(糸が小球を引く力) といいます。この力は糸に沿って上向きにはたらきます。
  4. 小球にはたらく力はこの2つだけです。
使用した物理公式
この問題では、数式ではなく物理用語の定義を用います。

  • 重力の定義
  • 張力の定義
計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

(1)のボールとほとんど同じです。

  1. まず、地球が小球を真下に引っ張っています。「重力」。
  2. 次に、小球が触れているものを探します。今度は「糸」に触れています。
  3. 糸は小球が落ちないように、真上に引っ張っています。この、糸が引っ張る力を「張力」と呼びます。
  4. 小球にはたらく力はこの2つで全てです。
解答 (2) 図:重力(鉛直下向き)、張力(鉛直上向き)。言葉:重力(地球が小球を引く力)、張力(糸が小球を引く力)。

問(3) 斜めに投げられた小球

思考の道筋とポイント
空中を運動している小球にはたらく力を考えます。ここでの最大のポイントは、「運動の向きの力」というものを安易に描かないことです。力は運動そのものではなく、運動を変化させる原因です。
手を離れた後の物体には、もはや手から押される力ははたらいていません。空中では何にも触れていない(空気抵抗は無視する)ので、接触力もありません。

この設問における重要なポイント

  • 放物運動中の力: 空気抵抗を無視する場合、投げ上げられた物体にはたらく力は、運動のどの瞬間においても重力のみです。
  • 上昇中、小球の速度がだんだん遅くなるのは、運動方向(斜め上向き)と逆向きの成分を持つ重力がはたらき続けるからです。
  • 最高点では一瞬速度が水平になりますが、やはり重力は鉛直下向きにはたらき続けているため、小球は下降に転じます。

具体的な解説と立式

  1. まず、小球には地球が引く力、重力(地球が小球を引く力) が鉛直下向きにはたらきます。
  2. 次に、小球が触れているものを探します。投げ上げられて空中を飛んでいる小球は、何にも触れていません(空気は非常に軽いので、空気からの力は無視します)。
  3. したがって、小球にはたらく力は重力のみです。
  4. この事実は、小球が上昇している最中でも、軌道の最高点に達した瞬間でも、あるいは落下している最中でも全く同じです。
使用した物理公式
この問題では、数式ではなく物理用語の定義を用います。

  • 重力の定義
計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

ボールを投げた後、空中を飛んでいるボールを想像してください。

  1. まず「重力」。地球は、ボールがどこにあっても常に真下に引っ張っています。
  2. 次に「触れているもの」。空中を飛んでいるボールには、何かが触れていますか?手はもう離れていますし、地面にも糸にも触れていません。つまり、触れているものはありません。(空気はありますが、今は無視します)
  3. 触れているものがなければ、垂直抗力や張力のような接触力は一切はたらきません。
  4. ということは、空中を飛んでいるボールにはたらく力は、なんと「重力」だけなのです。ボールが上がっていく勢いがだんだんなくなって、やがて落ちてくるのは、この下向きの重力がずっとはたらき続けているからです。
解答 (3) 図:重力(鉛直下向き)のみ。言葉:重力(地球が小球を引く力)。

問(4) 床の上をすべる箱

思考の道筋とポイント
なめらかな床の上をすべる箱にはたらく力を考えます。鉛直方向(上下方向)については(1)の机の上のボールと全く同じです。水平方向(左右方向)の力がポイントになります。
「なめらかな床」という言葉は、「摩擦がない」と読み替えるのが物理のルールです。また、(3)と同様に、すべっている最中には、最初に押した力などはもうはたらいていないと考えます。

この設問における重要なポイント

  • なめらかな面: 物理で「なめらか」と出てきたら、それは「摩擦力がゼロである」という意味のキーワードです。
  • 運動と力: 物体が運動しているからといって、その運動方向に必ず力がはたらいているとは限りません。この箱の場合、水平方向には力がはたらいていないので、もし初速があれば等速直線運動を続けます。

具体的な解説と立式

  1. まず、箱には地球が引く力、重力(地球が箱を引く力) が鉛直下向きにはたらきます。
  2. 次に、箱が触れているものを探します。箱は「床」に触れています。
  3. 床からは、箱を押し返す力、垂直抗力(床が箱を押す力) が接触面に垂直な上向きにはたらきます。
  4. 水平方向の力も考えます。問題文に「なめらかな床」とあるため、運動を妨げる向きにはたらく摩擦力はありません。また、箱をすべらせるために最初に押した力は、すべっている最中にはもうはたらいていません。
  5. したがって、この箱にはたらく力は、重力と垂直抗力の2つだけです。
使用した物理公式
この問題では、数式ではなく物理用語の定義を用います。

  • 重力の定義
  • 垂直抗力の定義
計算過程

この問題に計算過程はありません。

計算方法の平易な説明

スケートリンクの上をすべるスケート選手をイメージすると分かりやすいかもしれません。

  1. まず「重力」。地球が箱を下に引っ張っています。
  2. 次に「触れているもの」。箱は「床」に触れています。
  3. 床は箱を上に押し返しています。「垂直抗力」。
  4. 「なめらかな床」とは、ツルツルの氷のように摩擦がない、という意味です。だから、箱の動きを邪魔する力はありません。
  5. 箱は右に動いていますが、それは最初に誰かが押したからです。今、すーっとすべっている瞬間には、誰も箱を押していません。
  6. したがって、この箱にはたらいている力は、上下方向の「重力」と「垂直抗力」の2つだけです。
解答 (4) 図:重力(鉛直下向き)、垂直抗力(鉛直上向き)。言葉:重力(地球が箱を引く力)、垂直抗力(床が箱を押す力)。

2 重力の計算

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「重力の大きさの計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 重力の公式 \(W=mg\)
  2. 質量と重さ(重力)の違いの理解
  3. 物理量の単位(kg, m/s², N)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文で与えられた質量 \(m\) と重力加速度 \(g\) の値を確認する。
  2. 重力の大きさを求める公式 \(W=mg\) に値を代入する。
  3. 計算を実行し、単位を付けて答える。

思考の道筋とポイント
この問題は、物理の基本である「重さ」の計算方法を問うています。「重さ」とは、物理用語では「重力の大きさ」のことを指し、物体の「質量」にその場所の「重力加速度」を掛けることで求められます。公式 \(W=mg\) を正しく適用することができれば、簡単に解くことができます。日常生活で使う「重さ」と物理で定義される「質量」は異なる概念である、という点をしっかり意識することが重要です。

この設問における重要なポイント

  • 重力の公式: \(W = mg\)
  • 各文字の意味:
    • \(W\): 重力の大きさ(重さ)[N]
    • \(m\): 質量 [kg]
    • \(g\): 重力加速度 [m/s²]
  • 質量と重さの違い:
    • 質量 \(m\): 物体が持つ、動かしにくさや物質そのものの量を表す。単位はkg。場所によって変化しない固有の量。
    • 重さ \(W\): その物体にはたらく重力という「力」の大きさ。単位はN。重力加速度 \(g\) が変われば、同じ質量の物体でも重さは変わる(例:月面上では重さは約1/6になる)。

具体的な解説と立式
まず、問題で与えられている値を整理します。

  • 質量: \(m = 5.0 \, \text{kg}\)
  • 重力加速度: \(g = 9.8 \, \text{m/s}^2\)

求めたいのは、物体にはたらく重力の大きさ \(W\) です。
重力の大きさを求める公式は \(W=mg\) です。この式に、与えられた値を代入して立式します。
$$ W = 5.0 \times 9.8 \quad \cdots ① $$

使用した物理公式

  • 重力の公式: \(W = mg\)
計算過程

式①を計算します。
$$
\begin{aligned}
W &= 5.0 \times 9.8 \\[2.0ex]&= 49
\end{aligned}
$$
したがって、重力の大きさは \(49 \, \text{N}\) となります。
(有効数字について:\(5.0\)が2桁、\(9.8\)が2桁なので、計算結果も2桁で\(49\)とするのが適切です。)

計算方法の平易な説明

物理でいう「重さ(重力)」を計算するのはとても簡単です。体重計で体重を測るのと似たようなものです。

  1. 「重さ = 質量 × 重力加速度」という公式を使います。
  2. 問題文から、質量は \(5.0 \, \text{kg}\)、重力加速度は \(9.8 \, \text{m/s}^2\) です。
  3. この2つの数字を単純に掛け算します。
    \(5.0 \times 9.8 = 49\)
  4. したがって、答えは \(49 \, \text{N}\)(ニュートン)となります。
解答 \(49 \, \text{N}\)

3 フックの法則

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「フックの法則を用いたばねの伸びの計算」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. フックの法則 \(F=kx\)
  2. 弾性力と外力の関係
  3. 物理量の単位(N, N/m, m)

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 問題文から、ばね定数 \(k\) と加えた力 \(F\) の値を読み取る。
  2. フックの法則 \(F=kx\) に値を代入する。
  3. 方程式を解いて、ばねの伸び \(x\) を求める。

思考の道筋とポイント
この問題は、ばねの伸びと力の関係を表す最も基本的な法則である「フックの法則」を用いて、ばねの伸びを計算する問題です。公式 \(F=kx\) に与えられた数値を代入するだけで解けるため、公式の意味を正しく理解しているかどうかが問われます。ばねに加えた力と、ばねが元に戻ろうとする弾性力は、大きさが等しく向きが逆の関係にあります。この問題では、加えた力 \(F\) がそのまま弾性力の大きさとして公式に適用できます。

この設問における重要なポイント

  • フックの法則: ばねの弾性力の大きさ \(F\) は、ばねの自然長からの伸び(または縮み)\(x\) に比例します。この関係は \(F=kx\) と表されます。
  • 各文字の意味:
    • \(F\): ばねにはたらく弾性力の大きさ [N]。ばねが静止して伸びている場合、これは加えた力の大きさに等しいです。
    • \(k\): ばね定数 [N/m]。ばねの硬さを表す指標で、「1m伸ばすのに何Nの力が必要か」を示します。
    • \(x\): ばねの自然長からの伸びまたは縮み [m]。
  • 単位の確認: 問題で与えられている物理量の単位がすべて国際単位系(N, N/m)であるため、答えもmで求まり、単位換算は不要です。

具体的な解説と立式
まず、問題で与えられている値を整理します。

  • ばね定数: \(k = 10 \, \text{N/m}\)
  • 加えた力(これは弾性力の大きさに等しい): \(F = 2.0 \, \text{N}\)

求めたいのは、ばねの伸び \(x\) [\(\text{m}\)] です。
フックの法則 \(F=kx\) に、これらの値を代入して式を立てます。
$$ 2.0 = 10 \times x \quad \cdots ① $$

使用した物理公式

  • フックの法則: \(F=kx\)
計算過程

式①を \(x\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
10x &= 2.0 \\[2.0ex]x &= \frac{2.0}{10} \\[2.0ex]&= 0.20 \, \text{m}
\end{aligned}
$$
したがって、ばねの伸びは \(0.20 \, \text{m}\) です。

計算方法の平易な説明

ばねの伸びを計算するには、「フックの法則」という便利な公式 \(F=kx\) を使います。これは「力=ばねの硬さ×伸び」という意味です。

  1. 問題文から、加えた力 \(F\) は \(2.0 \, \text{N}\)、ばねの硬さ(ばね定数)\(k\) は \(10 \, \text{N/m}\) であることがわかります。
  2. これを公式に当てはめると、\(2.0 = 10 \times x\) という簡単な方程式ができます。
  3. この方程式を \(x\) について解くと、\(x = 2.0 \div 10 = 0.20\) となります。
  4. したがって、ばねの伸びは \(0.20 \, \text{m}\)(つまり20cm)です。
解答 \(0.20 \, \text{m}\)

4 力の合成

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「力の合成」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. ベクトルとしての力の合成(平行四辺形の法則)
  2. 力の作図方法
  3. 三角比を用いたベクトルの大きさの計算
  4. 三平方の定理

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. 各設問について、与えられた2つの力ベクトルを2辺とする平行四辺形を描く。
  2. 始点を共通にして描いた対角線が、求める合力ベクトルとなる。
  3. 作図した図形の幾何学的な性質(三角形の辺の比など)を利用して、合力の大きさを計算する。

問(1) なす角が0°の場合

思考の道筋とポイント
2つの力が同じ向きにはたらいている最も単純なケースです。ベクトルは向きを持つ量ですが、向きが同じであれば、その大きさは単純な足し算で求めることができます。

この設問における重要なポイント

  • 作図: 2つの力 \(\vec{F_1}\) と \(\vec{F_2}\) を、向きを揃えて一直線上につなぎます。始点から終点までを結んだベクトルが合力 \(\vec{F}\) となります。
  • 大きさの計算: 向きが同じなので、合力の大きさ \(F\) は、それぞれの力の大きさ \(F_1\) と \(F_2\) の単純な和になります。

具体的な解説と立式
与えられた力の大きさは \(F_1 = 10 \, \text{N}\), \(F_2 = 10 \, \text{N}\) です。
2つの力のなす角が \(0^\circ\) なので、同じ向きを向いています。
合力の大きさ \(F\) は、2つの力の大きさの和で求められます。
$$ F = F_1 + F_2 \quad \cdots ① $$

使用した物理公式

  • 力の合成(同一直線上、同方向の場合): \(F = F_1 + F_2\)
計算過程

式①に数値を代入します。
$$
\begin{aligned}
F &= 10 + 10 \\[2.0ex]&= 20 \, \text{N}
\end{aligned}
$$
合力の大きさは \(20 \, \text{N}\) です。

計算方法の平易な説明

右向きに10の力で引っ張っているところに、さらに右向きに10の力で引っ張るのを手伝ってあげるイメージです。合計の力は単純に \(10 + 10 = 20\) となります。

解答 (1) 20 N, 作図は解説図参照

問(2) なす角が60°の場合

思考の道筋とポイント
2つの力が \(60^\circ\) の角度をなしている場合です。この場合、力の合成は「平行四辺形の法則」に従います。作図によってできた図形がどのような特徴を持つかを考えることが計算の鍵となります。

この設問における重要なポイント

  • 作図: \(\vec{F_1}\) と \(\vec{F_2}\) を2辺とする平行四辺形を描きます。このとき、\(\vec{F_1}\) と \(\vec{F_2}\) の大きさが等しい(ともに10N)ので、この平行四辺形は「ひし形」になります。
  • 大きさの計算: ひし形の対角線は、角を二等分します。したがって、合力 \(\vec{F}\) は \(\vec{F_1}\), \(\vec{F_2}\) のそれぞれと \(30^\circ\) の角をなします。合力 \(\vec{F}\) の大きさを求めるには、\(\vec{F_1}\) を合力の方向とそれに垂直な方向に分解するか、または作図した三角形の三角比を利用します。
    \(\vec{F_2}\) の先端から \(\vec{F}\) に垂線を下ろすと、直角三角形ができます。この三角形は辺の比が \(1:2:\sqrt{3}\) の有名な形になります。

具体的な解説と立式
合力 \(\vec{F}\) は、\(\vec{F_1}\) と \(\vec{F_2}\) を2辺とする平行四辺形(この場合はひし形)の対角線として描かれます。
合力の大きさ \(F\) を求めるために、\(\vec{F_1}\) と \(\vec{F_2}\) を、\(\vec{F_2}\) の向きを基準として成分分解して足し合わせる方法も考えられますが、ここでは図形的に解きます。
ひし形の対角線は角を二等分するため、合力 \(\vec{F}\) と力 \(\vec{F_2}\) のなす角は \(30^\circ\) です。
合力 \(\vec{F}\) の大きさは、\(\vec{F_1}\) と \(\vec{F_2}\) の、\(\vec{F}\) 方向の成分の和に等しくなります。
\(\vec{F_1}\) の \(\vec{F}\) 方向の成分は \(F_1 \cos 30^\circ\)、\(\vec{F_2}\) の \(\vec{F}\) 方向の成分は \(F_2 \cos 30^\circ\) です。
したがって、合力の大きさ \(F\) は、
$$ F = F_1 \cos 30^\circ + F_2 \cos 30^\circ \quad \cdots ② $$
\(\cos 30^\circ = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\) を用いて計算します。

使用した物理公式

  • 力の合成(平行四辺形の法則)
  • 三角比: \(\cos 30^\circ = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)
計算過程

式②に数値を代入します。\(F_1 = 10\), \(F_2 = 10\) なので、
$$
\begin{aligned}
F &= 10 \times \frac{\sqrt{3}}{2} + 10 \times \frac{\sqrt{3}}{2} \\[2.0ex]&= 2 \times \left( 10 \times \frac{\sqrt{3}}{2} \right) \\[2.0ex]&= 10\sqrt{3}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{3} \approx 1.73\) を用いて近似値を計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= 10 \times 1.73 \\[2.0ex]&= 17.3 \approx 17 \, \text{N}
\end{aligned}
$$
合力の大きさは約 \(17 \, \text{N}\) です。

計算方法の平易な説明

2つの力を矢印で描いて、それらを2辺とする平行四辺形を描きます。その対角線が合体した力になります。
今回は2つの力の大きさが同じなので、できた平行四辺形は「ひし形」です。ひし形の対角線は角度をちょうど半分にするので、合体した力はそれぞれの力と \(30^\circ\) の角度をなします。
図形をよく見ると、有名な「\(1:2:\sqrt{3}\)」の直角三角形が2つくっついた形になっています。これを利用すると、合体した力の大きさは \(10 \times \sqrt{3}\) と計算できます。\(\sqrt{3}\) はおよそ \(1.73\) なので、\(10 \times 1.73 = 17.3\)。四捨五入して約 \(17 \, \text{N}\) となります。

解答 (2) 17 N, 作図は解説図参照

問(3) なす角が90°の場合

思考の道筋とポイント
2つの力が直角(\(90^\circ\))をなしている場合です。この場合も「平行四辺形の法則」に従って合成しますが、できた平行四辺形は「長方形」(この問題では力の大きさが等しいので「正方形」)になります。

この設問における重要なポイント

  • 作図: \(\vec{F_1}\) と \(\vec{F_2}\) を2辺とする平行四辺形(この場合は正方形)を描きます。合力 \(\vec{F}\) はその対角線となります。
  • 大きさの計算: 合力の大きさは、直角三角形の斜辺の長さを求めることに相当します。したがって、「三平方の定理」を用いることができます。

具体的な解説と立式
合力 \(\vec{F}\) は、\(\vec{F_1}\) と \(\vec{F_2}\) を2辺とする正方形の対角線として描かれます。
この対角線の長さ \(F\) は、三平方の定理を用いて計算できます。
$$ F^2 = F_1^2 + F_2^2 \quad \cdots ③ $$
また、辺の長さが等しい直角二等辺三角形の辺の比が \(1:1:\sqrt{2}\) であることを利用しても良いです。
$$ F = \sqrt{2} \times F_1 = \sqrt{2} \times F_2 \quad \cdots ④ $$

使用した物理公式

  • 力の合成(平行四辺形の法則)
  • 三平方の定理
計算過程

式④に \(F_1 = 10\) を代入します。
$$ F = 10\sqrt{2} $$
ここで、\(\sqrt{2} \approx 1.41\) を用いて近似値を計算します。
$$
\begin{aligned}
F &= 10 \times 1.41 \\[2.0ex]&= 14.1 \approx 14 \, \text{N}
\end{aligned}
$$
合力の大きさは約 \(14 \, \text{N}\) です。

計算方法の平易な説明

(2)と同じように、2つの力を辺とする平行四辺形を描きます。今回は角度が \(90^\circ\) なので、できる図形は正方形です。
合体した力は、この正方形の対角線の長さになります。
正方形の対角線の長さは、1辺の長さの \(\sqrt{2}\) 倍になる、という性質があります。(三平方の定理)
1辺の長さが10なので、対角線の長さは \(10 \times \sqrt{2}\) となります。\(\sqrt{2}\) はおよそ \(1.41\) なので、\(10 \times 1.41 = 14.1\)。四捨五入して約 \(14 \, \text{N}\) となります。

解答 (3) 14 N, 作図は解説図参照

5 力の分解

【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド

この問題のテーマは「力の分解」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。

  1. 力のベクトルとしての性質
  2. 三角比(\(\sin\), \(\cos\))を用いた成分分解
  3. 斜面上の問題における座標軸の設定
  4. 図形の相似を利用した角度の特定

基本的なアプローチは以下の通りです。

  1. まず、物体にはたらく重力 \(W=mg\) を鉛直下向きに描く。
  2. 次に、斜面に平行な方向(x軸)と垂直な方向(y軸)に座標軸を設定する。
  3. 重力ベクトルを対角線とし、x軸とy軸に平行な辺を持つ長方形を描く。
  4. 作図した直角三角形の角度と三角比を用いて、重力のx成分 \(W_x\) とy成分 \(W_y\) を計算する。

思考の道筋とポイント
斜面上の物体の運動を考えるとき、力は「斜面に平行な方向」と「斜面に垂直な方向」に分けて考えると非常に便利です。なぜなら、物体の運動(すべり落ちるかどうか)は主に平行方向の力で決まり、垂直抗力などは垂直方向の力のつり合いで決まるからです。
この問題は、その第一歩として、鉛直下向きにはたらく重力を、この2つの方向に「分解」する操作を問うています。力の分解は、力の合成(平行四辺形の法則)の逆の操作です。分解したい力(今回は重力)を対角線とし、分解したい2つの方向(斜面に平行・垂直)を辺とするような平行四辺形(今回は長方形)を描くことで、分力を作図できます。
計算には三角比を用いますが、どの角度に \(\sin\) を使い、どの角度に \(\cos\) を使うのかを正確に判断することが重要です。図を丁寧に描き、直角三角形のどの辺がどの成分に対応するのかを視覚的に捉えることがミスを防ぐ鍵となります。

この設問における重要なポイント

  • 重力の大きさ: まず、分解する元の力である重力の大きさ \(W\) を \(W=mg\) と表します。
  • 角度の特定: 重力ベクトル(鉛直下向き)と、斜面に垂直な方向のなす角は、斜面の傾斜角(この問題では\(30^\circ\))に等しくなります。これは、図形の相似から導かれます。
  • 成分分解の公式:
    • 斜面に平行な成分 \(W_x\): \(W_x = W \sin 30^\circ\)。物体を斜面下向きに滑らせようとする力です。
    • 斜面に垂直な成分 \(W_y\): \(W_y = W \cos 30^\circ\)。物体を斜面に押し付ける力です。
  • 三角比の値: \( \sin 30^\circ = \displaystyle\frac{1}{2} \), \( \cos 30^\circ = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2} \)

具体的な解説と立式
まず、物体にはたらく重力の大きさ \(W\) は、質量 \(m\) と重力加速度 \(g\) を用いて次のように表せます。
$$ W = mg $$
この重力 \(W\) を、斜面に平行な成分 \(W_x\) と、斜面に垂直な成分 \(W_y\) に分解します。
作図をすると、\(W\) を斜辺とし、\(W_x\) と \(W_y\) を他の2辺とする直角三角形ができます。
このとき、重力 \(W\) のベクトルと、斜面に垂直な成分 \(W_y\) のベクトルのなす角は、斜面の傾斜角 \(30^\circ\) と等しくなります。
この直角三角形において、三角比の定義から、

  • \(W_x\) は角度 \(30^\circ\) の対辺(向かい合う辺)にあたるため、\(\sin\) を用いて表せます。
    $$ W_x = W \sin 30^\circ \quad \cdots ① $$
  • \(W_y\) は角度 \(30^\circ\) の隣辺(接する辺)にあたるため、\(\cos\) を用いて表せます。
    $$ W_y = W \cos 30^\circ \quad \cdots ② $$

これらの式に \(W=mg\) を代入し、三角比の値を計算することで、各成分が求まります。

使用した物理公式

  • 重力の公式: \(W = mg\)
  • 力の成分分解: \(F_x = F \sin\theta\), \(F_y = F \cos\theta\) (角度\(\theta\)の取り方による)
計算過程

まず、斜面に平行な成分 \(W_x\) を計算します。式①に \(W=mg\) と \(\sin 30^\circ = \displaystyle\frac{1}{2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
W_x &= mg \sin 30^\circ \\[2.0ex]&= mg \times \frac{1}{2} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2}mg
\end{aligned}
$$
次に、斜面に垂直な成分 \(W_y\) を計算します。式②に \(W=mg\) と \(\cos 30^\circ = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
W_y &= mg \cos 30^\circ \\[2.0ex]&= mg \times \frac{\sqrt{3}}{2} \\[2.0ex]&= \frac{\sqrt{3}}{2}mg
\end{aligned}
$$
したがって、斜面に平行な成分は \(\displaystyle\frac{1}{2}mg \, [\text{N}]\)、垂直な成分は \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}mg \, [\text{N}]\) です。

計算方法の平易な説明

斜めになっていると力が考えにくいので、斜面に沿った方向と、斜面に垂直な方向に「分解」して考えます。

  1. まず、物体にはたらく重力は、真下に向かって \(mg\) という大きさです。
  2. この真下向きの力を、斜めに沿った方向と、斜めに垂直な方向に分けます。重力の矢印を対角線とする長方形を描くイメージです。
  3. 図をよく見ると、そこに直角三角形ができます。この三角形の角度は、もとの斜面の角度と同じ \(30^\circ\) になります。
  4. 三角比(サイン、コサイン)を使って、それぞれの辺の長さを計算します。
    • 斜面に平行な力(物体を滑らせる力)は、\(mg \times \sin 30^\circ = mg \times \frac{1}{2}\)。
    • 斜面に垂直な力(物体を押し付ける力)は、\(mg \times \cos 30^\circ = mg \times \frac{\sqrt{3}}{2}\)。

これがそれぞれの方向の力の成分になります。

解答 \(W_x = \displaystyle\frac{1}{2}mg \, [\text{N}]\), \(W_y = \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}mg \, [\text{N}]\)
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