基礎CHECK
1 自由落下
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「自由落下運動」です。物体が重力のみを受けて落下する、最も基本的な運動の性質を理解することが目的です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 自由落下の定義:初速度がゼロで、重力加速度のみで落下する運動。
- 重力加速度:自由落下する物体の加速度。向きは常に鉛直下向きで、大きさは一定(この問題では \(9.8 \, \text{m/s}^2\))。
- 等加速度直線運動の公式:特に速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\)。
- 有効数字の考え方。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) 自由落下運動における加速度の定義を思い出し、時間によらず一定であることを確認します。
- (2) 等加速度直線運動の公式を自由落下の場合に適用し、与えられた数値を代入して速さを計算します。最後に有効数字を考慮して解答をまとめます。
問(1)
思考の道筋とポイント
設問(1)は、自由落下運動の最も基本的な性質である「加速度」について問うています。「自由落下」という言葉が物理的に何を意味するかを正確に理解することが鍵となります。自由落下とは、物体が空気抵抗などを無視して、純粋に地球の重力だけを受けて落下する運動です。このとき、物体の加速度は常に「重力加速度」と呼ばれる一定の値になります。したがって、落下を始めてから何秒経っても、その加速度は変わりません。
この設問における重要なポイント
- 自由落下運動では、物体の加速度は時間や速さに関係なく、常に一定です。
- 加速度の向きは、常に地球の中心方向、すなわち「鉛直下向き」です。
- 加速度の大きさは「重力加速度の大きさ \(g\)」に等しく、この問題では \(g = 9.8 \, \text{m/s}^2\) と与えられています。
具体的な解説と立式
この問題は、物理法則の定義に関する理解を問うもので、計算式を立てる必要はありません。
- 問題文から、小球は「自由落下」していることがわかります。
- 自由落下運動をする物体の加速度 \(a\) は、定義により、常に重力加速度 \(g\) に等しくなります。
- 重力加速度 \(g\) は、向きが鉛直下向きで、大きさが \(9.8 \, \text{m/s}^2\) のベクトル量です。
- この値は、運動の途中である \(2.0\) 秒後においても変化しません。
したがって、求める加速度は「鉛直下向きに \(9.8 \, \text{m/s}^2\)」となります。
使用した物理公式
- 自由落下運動の加速度: \(a = g\) (\(g\) は重力加速度で一定)
この設問には計算過程はありません。自由落下の定義そのものが答えの根拠となります。
地球上で物を手から離すと、地球が物体を引っ張る力(重力)によって、だんだん速くなりながら落ちていきます。この「速さが変化するペース」のことを物理では「加速度」と呼びます。自由落下の場合、この加速度は物体の重さや形に関係なく、常に一定です。その向きはいつも「真下」で、大きさは \(9.8 \, \text{m/s}^2\) です。これは、ボールが落ち始めてすぐでも、\(2.0\) 秒後でも、地面にぶつかる直前でも、ずっと変わりません。
問(2)
思考の道筋とポイント
設問(2)では、特定の時間における物体の「速さ」を計算します。自由落下は「初速度 \(v_0 = 0\)、加速度 \(a = g\)」の等加速度直線運動と見なすことができます。したがって、等加速度直線運動の公式を適用することで、速さを求めることができます。どの公式を使うかを選び、与えられた数値を代入し、最後に有効数字に注意して計算を完了させます。
この設問における重要なポイント
- 自由落下は、等加速度直線運動の一種です。
- 等加速度直線運動の速度の公式は \(v = v_0 + at\) です。
- 自由落下では、初速度 \(v_0 = 0\)、加速度を \(a = g\) として、\(v = gt\) というシンプルな式で計算できます。
- 計算結果は、問題で与えられた数値の有効数字(この場合は2桁)に合わせる必要があります。
具体的な解説と立式
自由落下運動は、初速度 \(v_0 = 0\)、一定の加速度 \(a\) で進む「等加速度直線運動」として扱うことができます。
まず、運動の向きを決めます。鉛直下向きを正の向きとすると、初速度 \(v_0 = 0\)、加速度は \(a = +g = +9.8 \, \text{m/s}^2\) となります。
等加速度直線運動の時刻 \(t\) における速度 \(v\) を表す公式は、
$$ v = v_0 + at $$
です。ここに自由落下の条件を代入すると、
$$ v = 0 + gt $$
となり、次の関係式が得られます。
$$ v = gt \quad \cdots ① $$
この式に、問題で与えられている \(g = 9.8 \, \text{m/s}^2\) と \(t = 2.0 \, \text{s}\) を代入すれば、速さ \(v\) が求まります。
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度の公式: \(v = v_0 + at\)
- 自由落下の速度の公式: \(v = gt\)
「具体的な解説と立式」で導出した式①に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= g \times t \\[2.0ex]&= 9.8 \times 2.0 \\[2.0ex]&= 19.6
\end{aligned}
$$
ここで、計算に用いた数値の有効数字を確認します。重力加速度の大きさ \(9.8 \, \text{m/s}^2\) は有効数字2桁、時間 \(2.0 \, \text{s}\) も有効数字2桁です。
したがって、計算結果も有効数字2桁で答えるのが適切です。
\(19.6\) を上から3桁目で四捨五入して有効数字2桁にすると、\(20\) となります。
よって、求める速さは \(v = 20 \, \text{m/s}\) です。
自由落下では、物体の速さは1秒間に \(9.8 \, \text{m/s}\) ずつ増えていきます。
今回は、落下し始めてから \(2.0\) 秒後の速さを知りたいので、単純な掛け算で計算できます。
求める速さ = (1秒あたりに増える速さ) × (かかった時間)
つまり、\(9.8 \times 2.0 = 19.6 \, \text{m/s}\) となります。
ここで、問題で使われている数字が「\(9.8\)」と「\(2.0\)」で、どちらも2桁の数字です。物理の計算では、答えの桁数をこれらの桁数にそろえるというルールがあります。\(19.6\) を2桁の数字にするため、小数点以下を四捨五入すると「\(20\)」になります。なので、答えは \(20 \, \text{m/s}\) です。
2 鉛直投げ下ろし
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「鉛直投げ下ろし運動」です。初速度を持って鉛直下向きに物体を投げる場合の運動を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 鉛直投げ下ろしの定義:初速度を持って鉛直下向きに運動を開始し、その後は重力加速度で運動すること。
- 重力加速度:地球上で運動する物体の加速度。初速度の有無にかかわらず、常に鉛直下向きで大きさ \(g\) で一定です。
- 等加速度直線運動の公式:初速度がある場合の速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) を利用します。
- 有効数字の考え方。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) 地球上で運動する物体の加速度は、初速度がどうであれ、常に重力加速度に等しいという基本ルールを思い出します。
- (2) 等加速度直線運動の公式に、与えられた初速度、重力加速度、時間を代入して速さを計算し、最後に有効数字を考慮して解答をまとめます。
問(1)
思考の道筋とポイント
設問(1)は、鉛直投げ下ろし運動における「加速度」について問うています。この運動は、初速度がゼロではない点が自由落下と異なりますが、運動が始まってからの加速度は自由落下の場合と全く同じです。物理の基本的なルールとして、地球上で運動する物体の加速度は、その物体が最初にどんな速さを持っていたかに関わらず、常に一定の値「重力加速度 \(g\)」となります。
この設問における重要なポイント
- 地球上で運動する物体の加速度は、その物体が持つ速さや運動の向き、また経過時間にも関係なく、常に一定です。
- この一定の加速度を「重力加速度」と呼び、その向きは常に「鉛直下向き」、大きさは \(g\)(この問題では \(9.8 \, \text{m/s}^2\))です。
- したがって、初速度 \(10 \, \text{m/s}\) で投げ下ろされたとしても、加速度は自由落下のときと全く同じです。
具体的な解説と立式
この問題は、物理の基本法則に関する理解を問うもので、計算は不要です。
- 物理の基本ルールとして、一度手を離れた物体の加速度は、常に重力加速度 \(g\) になります。
- このルールは、物体が最初に持っていた速度(初速度)が \(0\) の場合(自由落下)でも、\(10 \, \text{m/s}\) の場合(鉛直投げ下ろし)でも、全く同じように適用されます。
- 重力加速度 \(g\) は、向きが鉛直下向きで、大きさが \(9.8 \, \text{m/s}^2\) のベクトル量です。
- したがって、\(3.0\) 秒後であっても、小球の加速度は変わらず、鉛直下向きに \(9.8 \, \text{m/s}^2\) です。
使用した物理公式
- 重力下での運動の加速度: \(a = g\) (\(g\) は重力加速度で一定)
この設問には計算過程はありません。鉛直投げ下ろし運動における加速度の定義そのものが答えの根拠となります。
地球上では、落ちていく物体の速さは、決まったペースで変化します。この「速さの変化のペース」が「加速度」です。このペースは、物体をそっと離しても(自由落下)、勢いよく投げ下ろしても(投げ下ろし)、全く変わりません。運動中の加速度は、常に「真下向きに \(9.8 \, \text{m/s}^2\)」です。
問(2)
思考の道筋とポイント
設問(2)では、投げ下ろしてから特定の時間が経過した後の「速さ」を計算します。この運動は、初速度 \(v_0\) がゼロではない等加速度直線運動です。したがって、等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を用いて計算します。鉛直下向きを正の向きと定め、各物理量に正しい値を代入することが重要です。
この設問における重要なポイント
- 鉛直投げ下ろしは、初速度 \(v_0 > 0\) の等加速度直線運動とみなせます(鉛直下向きを正とした場合)。
- 速度を求める公式 \(v = v_0 + at\) を正しく適用します。
- 問題文で与えられた数値(\(10 \, \text{m/s}\), \(9.8 \, \text{m/s}^2\), \(3.0 \, \text{s}\))の有効数字はすべて2桁なので、計算結果も有効数字2桁に揃える必要があります。
具体的な解説と立式
鉛直投げ下ろし運動は、初速度 \(v_0\) を持つ等加速度直線運動として扱います。
まず、運動の向きである鉛直下向きを正の向きとします。
このとき、各物理量は次のように表せます。
- 初速度: \(v_0 = +10 \, \text{m/s}\)
- 加速度: \(a = +g = +9.8 \, \text{m/s}^2\)
- 時間: \(t = 3.0 \, \text{s}\)
時刻 \(t\) における速度 \(v\) を求める等加速度直線運動の公式は、
$$ v = v_0 + at \quad \cdots ① $$
です。この式に上記の値を代入することで、\(3.0\) 秒後の速さ \(v\) を求めることができます。
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度の公式: \(v = v_0 + at\)
「具体的な解説と立式」で立てた式①に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v &= v_0 + gt \\[2.0ex]&= 10 + 9.8 \times 3.0 \\[2.0ex]&= 10 + 29.4 \\[2.0ex]&= 39.4
\end{aligned}
$$
ここで、計算に用いた数値の有効数字を考えます。初速度 \(10 \, \text{m/s}\)、重力加速度の大きさ \(9.8 \, \text{m/s}^2\)、時間 \(3.0 \, \text{s}\) は、いずれも有効数字2桁です。
したがって、計算結果も有効数字2桁で答えるのが適切です。
\(39.4\) を上から3桁目(小数第1位の4)で四捨五入して有効数字2桁にすると、\(39\) となります。
よって、求める速さは \(v = 39 \, \text{m/s}\) です。
この運動は、スタート時点ですでに \(10 \, \text{m/s}\) の速さを持っています。それに加えて、地球上では物体の速さが1秒間に \(9.8 \, \text{m/s}\) ずつ増えていきます。
\(3.0\) 秒間では、加速度によって増える速さは \(9.8 \times 3.0 = 29.4 \, \text{m/s}\) です。
したがって、\(3.0\) 秒後の最終的な速さは、もともとの速さと、加速度によって増えた速さを足し合わせることで求められます。
最終的な速さ = (最初の速さ) + (増えた速さ) = \(10 + 29.4 = 39.4 \, \text{m/s}\)。
問題で使われている数字が「\(10\)」「\(9.8\)」「\(3.0\)」と、2桁の精度で与えられているので、答えもこれに合わせて2桁の精度にします。\(39.4\) を四捨五入して、\(39 \, \text{m/s}\) とします。
3 鉛直投げ上げ
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「鉛直投げ上げ運動」です。物体を鉛直上向きに投げたときの、上昇中、最高点、下降中における運動の性質を理解します。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 鉛直投げ上げの定義:初速度を持って鉛直上向きに運動を開始し、その後は重力加速度のみを受ける運動。
- 運動中の加速度:運動のどの瞬間(上昇中、最高点、下降中)でも、加速度は常に鉛直下向きで大きさ \(g\) で一定です。
- 最高点の物理的意味:速度が一時的にゼロになる点。
- 等加速度直線運動の公式:速度と時間の関係式 \(v = v_0 + at\) を利用します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) 投げ上げ運動中の加速度は、どの地点でも変わらず一定であるという基本ルールを適用します。
- (2) 「最高点」という言葉の物理的な意味(速度が0になる)を考えます。
- (3) 等加速度直線運動の公式に、初速度、最高点での速度、加速度の値を代入して、最高点に達するまでの時間を計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
設問(1)は、鉛直投げ上げ運動の「最高点」における加速度を問うています。これは多くの人が「最高点では一瞬止まるから、加速度も0になるのでは?」と誤解しやすい重要なポイントです。加速度とは「速度の変化のペース」を表す量です。最高点では、速度は上向きから下向きへと変化しています。このように速度が変化している瞬間であるため、加速度は決して0にはなりません。運動が始まってから地面に戻るまで、物体には常に下向きの重力加速度が働き続けています。
この設問における重要なポイント
- 鉛直投げ上げ運動では、加速度は運動の全区間(上昇中、最高点、下降中)で常に一定です。
- 加速度の向きは常に鉛直下向き、大きさは重力加速度の大きさ \(g\) です。
- 最高点は、速度の向きが「上向き」から「下向き」に切り替わる瞬間であり、速度が変化している最中なので、加速度は0ではありません。
具体的な解説と立式
この問題は、物理法則の定義に関する理解を問うもので、計算式を立てる必要はありません。
- 物体が手を離れてから、その運動を支配しているのは重力加速度のみです。
- この重力加速度は、物体の速度の大きさや向きに関係なく、常に鉛直下向きに \(9.8 \, \text{m/s}^2\) の大きさで働き続けます。
- 小球が最高点に達して一瞬速度が0になったとしても、重力加速度がなくなるわけではありません。むしろ、この加速度が働くからこそ、小球は再び下向きに加速し始めます。
- したがって、最高点での加速度も、他のどの瞬間とも同じく「鉛直下向きに \(9.8 \, \text{m/s}^2\)」となります。
使用した物理公式
- 重力下での運動の加速度: \(a = g\) (\(g\) は重力加速度で一定)
この設問には計算過程はありません。鉛直投げ上げ運動の定義そのものが答えの根拠となります。
ボールを真上に投げても、地球は常にボールを真下に引っ張り続けています。この「引っ張る働き」が加速度を生み出します。ボールが一番高いところに達して一瞬止まったとしても、地球が引っ張るのをやめるわけではありません。その瞬間も変わらず下向きに引っ張っている(=加速度が働いている)からこそ、ボールはすぐに下向きに動き出すことができるのです。
問(2)
思考の道筋とポイント
設問(2)は、最高点での小球の「速さ」を問うています。「最高点」という言葉の物理的な意味を正しく理解することが鍵です。上に投げ上げられた物体は、重力加速度によってだんだんと速度が遅くなっていきます。そして、ついに速度がゼロになった瞬間、それ以上は上に進めなくなります。この点が最高点であり、ここを境に物体は下向きの運動(落下)に転じます。
この設問における重要なポイント
- 最高点の物理的な定義は、物体の速度が一時的に \(0\) になる点です。
- 物体は最高点を境に、上昇運動から下降運動へと切り替わります。
具体的な解説と立式
この問題は、最高点の定義を問うものであり、計算は不要です。
鉛直上向きに投げ上げられた小球は、上向きの速度が徐々に減少し、やがて一瞬だけ速度が \(0 \, \text{m/s}\) になります。この瞬間が最も高い位置、すなわち「最高点」です。したがって、最高点での小球の速さ \(v\) は \(0 \, \text{m/s}\) です。
使用した物理公式
- 最高点の定義: \(v = 0\)
この設問には計算過程はありません。
ボールを真上に投げると、だんだんスピードが落ちていきますよね。そして、一番高いところで「一瞬だけピタッと止まり」、そこから今度は下に向かって落ちてきます。この「一瞬ピタッと止まる」瞬間が最高点なので、そのときの速さは \(0 \, \text{m/s}\) です。
問(3)
思考の道筋とポイント
設問(3)では、最高点に達するまでの時間を計算します。これは、初速度 \(v_0\) で始まった運動の速度 \(v\) が \(0\) になるまでの時間を求める問題です。等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を利用します。このとき、速度や加速度の「向き」を正しく扱うために、座標軸を設定することが重要です。
この設問における重要なポイント
- 座標軸の設定が重要です。一般的に、初速度の向きである鉛直上向きを正の向きとします。
- 鉛直上向きを正とすると、初速度 \(v_0\) は正の値、重力加速度 \(g\) は負の値(\(a = -g\))として扱います。
- 最高点での速度は \(v=0\) です。
- これらの値を等加速度直線運動の公式に代入して方程式を解きます。
具体的な解説と立式
まず、座標軸を設定します。初速度の向きである鉛直上方を正の向きとします。
すると、各物理量は次のように表せます。
- 初速度: \(v_0 = +9.8 \, \text{m/s}\)
- 加速度: \(a = -g = -9.8 \, \text{m/s}^2\) (負の向きであることに注意)
- 最高点での速度: \(v = 0 \, \text{m/s}\)
これらの値を、等加速度直線運動の速度の公式に代入します。
$$ v = v_0 + at \quad \cdots ① $$
ここに、\(v=0\), \(v_0 = 9.8\), \(a = -9.8\) を代入すると、時間 \(t\) に関する次の方程式が立てられます。
$$ 0 = 9.8 + (-9.8) \times t $$
使用した物理公式
- 等加速度直線運動の速度の公式: \(v = v_0 + at\)
「具体的な解説と立式」で立てた方程式を \(t\) について解きます。
$$
\begin{aligned}
0 &= 9.8 – 9.8t \\[2.0ex]9.8t &= 9.8 \\[2.0ex]t &= \frac{9.8}{9.8} \\[2.0ex]t &= 1.0
\end{aligned}
$$
計算に用いた数値(\(9.8 \, \text{m/s}\), \(9.8 \, \text{m/s}^2\))の有効数字は2桁なので、答えも有効数字2桁で \(1.0 \, \text{s}\) とします。
ボールは最初、上向きに \(9.8 \, \text{m/s}\) の速さで出発します。
一方、重力加速度のせいで、この速さは1秒間に \(9.8 \, \text{m/s}\) のペースでどんどん遅くなっていきます(ブレーキがかかります)。
もともと持っていた \(9.8 \, \text{m/s}\) の速さが、ちょうど \(1.0\) 秒で \(9.8 \, \text{m/s}\) だけ減速されて、速さが \(0\) になります。
したがって、最高点に達するまでの時間は \(1.0\) 秒です。
4 水平投射
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「水平投射」です。物体を水平方向に投げ出したときの、放物運動を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動の分解:水平投射のような平面内の運動は、「水平方向」と「鉛直方向」の2つの独立した直線運動に分解して考えることができます。
- 水平方向の運動:力を受けないため(空気抵抗は無視)、初速度のまま進み続ける「等速直線運動」となります。
- 鉛直方向の運動:初速度が0で、重力加速度 \(g\) のみを受ける「自由落下運動」となります。
- 各方向の運動は、同じ時間(この問題では \(0.50 \, \text{s}\))だけ同時に起こります。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) 水平方向の運動は等速直線運動である、という法則を適用します。
- (2) 鉛直方向の運動は自由落下運動である、という法則を適用し、公式を使って速さを計算します。
問(1)
思考の道筋とポイント
設問(1)では、落下点での「水平方向」の速さを問われています。水平投射の最も重要な考え方は、運動を水平方向と鉛直方向に「分解」して考えることです。水平方向には、運動の様子を変化させるような力(=加速度)が働きません(空気抵抗は無視)。そのため、最初に与えられた水平方向の速さは、地面に落ちるまでずっと変わらない、と考えるのがポイントです。
この設問における重要なポイント
- 水平投射は、水平方向の「等速直線運動」と鉛直方向の「自由落下運動」が同時に起こっている運動です。
- 水平方向には加速度が \(0\) です。
- したがって、水平方向の速さ \(v_x\) は、運動のどの瞬間においても、投げ出した瞬間の速さ \(6.0 \, \text{m/s}\) と等しくなります。
具体的な解説と立式
この問題は、水平投射の基本法則を理解しているかを問うもので、複雑な計算は不要です。
- 水平投射された物体の運動を、水平方向と鉛直方向に分けて考えます。
- 水平方向には、空気抵抗を無視すると、何も力が働いていません。したがって、加速度は \(0\) です。
- 加速度が \(0\) の運動とは、速度が変化しない「等速直線運動」のことです。
- よって、落下点での水平方向の速さ \(v_x\) は、投げ出した瞬間の水平方向の速さと同じです。
$$ v_x = 6.0 \, \text{m/s} $$
使用した物理公式
- 等速直線運動の速度: \(v = \text{一定}\)
この設問には計算過程はありません。水平方向の運動が等速直線運動であることから、速さは常に一定となります。
横向きに投げたボールの運動を、「横の動き」と「縦の動き」に分けて考えてみましょう。
(1)で聞かれているのは「横の動き」の速さです。ボールが飛んでいる間、横方向には(空気抵抗を無視すれば)スピードを速くしたり遅くしたりするような力は何も働きません。そのため、最初に持っていた横向きの速さ \(6.0 \, \text{m/s}\) のまま、地面に着くまでずっと同じ速さで進み続けます。
問(2)
思考の道筋とポイント
設問(2)では、落下点での「鉛直方向」の速さを問われています。運動を分解して考えると、鉛直方向の運動は、水平方向の動きとは全く無関係に、ただ重力に引かれて落ちていくだけです。投げ出した瞬間、小球は水平に動いているので、鉛直方向の初速度は \(0\) です。そこから重力加速度 \(g\) で加速していくので、これはまさに「自由落下運動」そのものです。
この設問における重要なポイント
- 水平投射の鉛直方向の運動は、初速度 \(0\) の自由落下運動と全く同じです。
- 自由落下運動の速度公式 \(v = gt\) を使って計算します。
- 時間 \(t\) には、地面に達するまでの時間 \(0.50 \, \text{s}\) を代入します。
具体的な解説と立式
鉛直方向の運動に着目します。
- 投げ出した瞬間の速度は水平方向のみなので、鉛直方向の初速度 \(v_{0y}\) は \(0\) です。
- その後、物体は重力加速度 \(g\) で鉛直下向きに加速されます。
- これは初速度 \(0\)、加速度 \(g\) の等加速度直線運動、すなわち「自由落下運動」です。
- 時刻 \(t\) における自由落下の速さ \(v_y\) を求める公式は、
$$ v_y = gt \quad \cdots ① $$
です。この式に、\(g = 9.8 \, \text{m/s}^2\) と、地面に達するまでの時間 \(t = 0.50 \, \text{s}\) を代入すれば、落下点での鉛直方向の速さが求まります。
使用した物理公式
- 自由落下運動の速度公式: \(v = gt\)
「具体的な解説と立式」で立てた式①に、与えられた値を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_y &= 9.8 \times 0.50 \\[2.0ex]&= 4.9
\end{aligned}
$$
計算に用いた数値 \(9.8 \, \text{m/s}^2\) と \(0.50 \, \text{s}\) は、どちらも有効数字2桁です。したがって、計算結果である \(4.9\) も有効数字2桁であり、このまま解答となります。
よって、求める速さは \(v_y = 4.9 \, \text{m/s}\) です。
(2)で聞かれているのは「縦の動き」の速さです。ボールの縦の動きだけを見ると、これは真横にある別のボールを静かに手から離して落とした場合(自由落下)と全く同じ動きをします。
自由落下では、速さは1秒間に \(9.8 \, \text{m/s}\) ずつ増えていきます。今回は \(0.50\) 秒間(つまり、ちょうど半分の時間)だけ落下したので、速さの増加分も半分になります。
地面に着く瞬間の縦の速さ = \(9.8 \, \text{m/s} \times 0.50 \, \text{s} = 4.9 \, \text{m/s}\) となります。
5 斜方投射
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
この問題のテーマは「斜方投射」です。物体を斜め上方に投げ出したときの放物運動を扱います。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 運動の分解:斜方投射は、水平方向の「等速直線運動」と、鉛直方向の「鉛直投げ上げ運動」という2つの単純な運動の組み合わせとして考えることができます。
- ベクトルの分解:初速度という斜め向きのベクトルを、三角比(\(\sin\), \(\cos\))を用いて水平成分と鉛直成分に分解する技術。
- 水平方向と鉛直方向の運動の独立性:水平方向の運動と鉛直方向の運動は、互いに影響を与えず、同じ時間だけ同時に進行します。
- 等加速度直線運動の公式の適用。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- (1) まず、与えられた初速度のベクトルを、三角比を使って水平成分(x成分)と鉛直成分(y成分)に分解します。
- (2) 分解した各方向の運動について、経過時間後の速度を計算します。水平方向は速度が一定、鉛直方向は等加速度直線運動の公式を適用します。
問(1)
思考の道筋とポイント
設問(1)は、斜方投射を分析するための第一歩である「初速度の分解」です。斜め向きの速度 \(v_0\) を、水平方向の速度成分 \(v_{0x}\) と鉛直方向の速度成分 \(v_{0y}\) に分けることが目的です。この分解には、速度ベクトルと座標軸が作る直角三角形に対して、三角比(\(\cos\), \(\sin\))を適用します。また、今回は角度が \(60^\circ\) なので、特別な直角三角形の辺の比(\(1:2:\sqrt{3}\))を利用する別解も有効です。
この設問における重要なポイント
- ベクトルの分解:大きさ \(V\)、角度 \(\theta\) のベクトルを分解すると、x成分は \(V\cos\theta\)、y成分は \(V\sin\theta\) となります。
- 角度と辺の対応:水平成分(x成分)は角度を「挟む」辺なので \(\cos\) を、鉛直成分(y成分)は角度の「対辺」なので \(\sin\) を使います。
- 有効数字:計算結果は、問題で与えられた数値の有効数字(この場合は2桁)に合わせます。
具体的な解説と立式
初速度 \(v_0 = 20 \, \text{m/s}\)、角度 \(\theta = 60^\circ\) を、水平方向(x軸)と鉛直方向(y軸)に分解します。
図で示されているように、初速度ベクトルを斜辺とする直角三角形を考えると、
水平成分 \(v_{0x}\) は底辺にあたり、
$$ v_{0x} = v_0 \cos 60^\circ \quad \cdots ① $$
鉛直成分 \(v_{0y}\) は高さにあたり、
$$ v_{0y} = v_0 \sin 60^\circ \quad \cdots ② $$
という関係が成り立ちます。
使用した物理公式
- ベクトルの成分分解: \(v_x = v \cos\theta\), \(v_y = v \sin\theta\)
式①、②に \(v_0 = 20 \, \text{m/s}\) を代入して計算します。
- 水平成分 \(v_{0x}\):
$$
\begin{aligned}
v_{0x} &= 20 \times \cos 60^\circ \\[2.0ex]&= 20 \times \displaystyle\frac{1}{2} \\[2.0ex]&= 10 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$ - 鉛直成分 \(v_{0y}\):
$$
\begin{aligned}
v_{0y} &= 20 \times \sin 60^\circ \\[2.0ex]&= 20 \times \displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2} \\[2.0ex]&= 10\sqrt{3}
\end{aligned}
$$
ここで、\(\sqrt{3} \approx 1.73\) として計算し、有効数字2桁に丸めます。
$$
\begin{aligned}
v_{0y} &= 10 \times 1.73 \\[2.0ex]&= 17.3 \approx 17 \, \text{m/s}
\end{aligned}
$$
したがって、初速度の水平成分は \(10 \, \text{m/s}\)、鉛直成分は \(17 \, \text{m/s}\) となります。
斜め \(60^\circ\) に飛んでいく速さ \(20 \, \text{m/s}\) を、「横方向の速さ」と「縦方向の速さ」に分解します。
これは、三角定規(辺の比が \(1:2:\sqrt{3}\) のもの)を思い浮かべると簡単です。
一番長い斜めの辺が「2」の比率で、これが \(20 \, \text{m/s}\) にあたります。
- 横方向の速さは、比率が「1」なので、\(20 \, \text{m/s}\) の半分、つまり \(10 \, \text{m/s}\) です。
- 縦方向の速さは、比率が「\(\sqrt{3}\)」(約1.73)なので、横方向の速さ \(10 \, \text{m/s}\) の \(\sqrt{3}\) 倍、つまり \(10 \times 1.73 = 17.3 \, \text{m/s}\) となります。答えは有効数字2桁なので、\(17 \, \text{m/s}\) とします。
問(2)
思考の道筋とポイント
設問(2)では、\(0.50\) 秒後の速度の各成分を求めます。ここでも運動の分解が役立ちます。
- 水平方向:(1)で求めた初速度の水平成分 \(v_{0x}\) のまま、速度は変化しません(等速直線運動)。
- 鉛直方向:(1)で求めた初速度の鉛直成分 \(v_{0y}\) で上向きにスタートし、重力加速度 \(g\) によって減速される運動(鉛直投げ上げ運動)を考えます。等加速度直線運動の公式 \(v = v_0 + at\) を適用します。
この設問における重要なポイント
- 水平方向の速度は常に一定: \(v_x = v_{0x}\)。
- 鉛直方向の運動は、鉛直上向きを正とすると、加速度は \(a = -g\)。
- 鉛直方向の速度公式は \(v_y = v_{0y} – gt\)。
- 途中計算では、丸める前の値を使う:\(v_{0y}\) の計算には、(1)で求めた \(17 \, \text{m/s}\) ではなく、より正確な \(17.3 \, \text{m/s}\)(または \(10\sqrt{3}\))を用いることで、計算の精度を保ちます。
具体的な解説と立式
- 水平方向の運動:
水平方向には力が働かないため、速度は一定です。したがって、\(0.50\) 秒後の水平方向の速度 \(v_x\) は、初速度の水平成分 \(v_{0x}\) と等しくなります。
$$ v_x = v_{0x} \quad \cdots ③ $$ - 鉛直方向の運動:
鉛直方向は、初速度 \(v_{0y}\) の鉛直投げ上げ運動です。鉛直上向きを正の向きとすると、加速度は \(-g\) となります。等加速度直線運動の公式より、\(0.50\) 秒後の鉛直方向の速度 \(v_y\) は、
$$ v_y = v_{0y} – gt \quad \cdots ④ $$
で計算できます。
使用した物理公式
- 等速直線運動の速度: \(v_x = v_{0x}\) (一定)
- 等加速度直線運動の速度: \(v_y = v_{0y} + at\) (ここで \(a=-g\))
- 水平成分 \(v_x\):
式③と設問(1)の結果より、
$$ v_x = 10 \, \text{m/s} $$ - 鉛直成分 \(v_y\):
式④に、\(v_{0y} = 17.3 \, \text{m/s}\)(丸める前の値)、\(g=9.8 \, \text{m/s}^2\)、\(t=0.50 \, \text{s}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
v_y &= 17.3 – 9.8 \times 0.50 \\[2.0ex]&= 17.3 – 4.9 \\[2.0ex]&= 12.4
\end{aligned}
$$
結果を有効数字2桁に丸めると、\(12 \, \text{m/s}\) となります。
したがって、\(0.50\) 秒後の速度は、水平成分が \(10 \, \text{m/s}\)、鉛直成分が \(12 \, \text{m/s}\) です。
\(0.50\) 秒後の速さも、「横」と「縦」に分けて考えます。
- 横の速さ:横方向にはスピードを変える力は働かないので、最初の \(10 \, \text{m/s}\) のままです。
- 縦の速さ:最初は上向きに \(17.3 \, \text{m/s}\) でした。重力によって、この上向きの速さは1秒間に \(9.8 \, \text{m/s}\) のペースで減っていきます。\(0.50\) 秒後には、\(9.8 \times 0.50 = 4.9 \, \text{m/s}\) だけ速さが減少します。
よって、\(0.50\) 秒後の縦の速さは、\(17.3 – 4.9 = 12.4 \, \text{m/s}\) となります。答えを2桁の数字にするため、\(12 \, \text{m/s}\) とします。(まだプラスの値なので、上向きに動いていることがわかります。)
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