292 水面波の干渉
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、2つの波源から生じる波の「干渉」を扱います。波源の位相関係によって、強めあう点や弱めあう点の分布がどのように変化するかを理解することが重要です。
- 2つの波源A, Bの間隔: \(6.0 \text{ m}\)
- 波源A, Bは同じ周期・振幅で振動
- 初期状態: A, Bは同位相で振動。強めあう線が図の破線のようになる。
- 図から読み取れる情報: 線分AB上の腹と腹の間隔は \(1.0 \text{ m}\)
- 問(2)での追加条件: 波の速さ \(v = 1.0 \text{ m/s}\)
- 問(3)での条件変更: Bの振動をAより周期の半分(\(T/2\))だけ遅らせる(逆位相)
- 問(4)での条件変更: Bの振動をAより周期の \(\displaystyle\frac{1}{8}\) だけ遅らせる
- (1) 波の波長 \(\lambda\)
- (2) 波源の振動数 \(f\)
- (3) 逆位相のときの強めあう線の概略図
- (4) Bが \(\displaystyle\frac{T}{8}\) 遅れたときの、原点に最も近い強めあう点Pの位置
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(4)の別解: 干渉の条件式から直接求める解法
- 模範解答が、波源の位相の遅れを「仮想的な波源の移動」と捉えて視覚的に解くのに対し、別解では、波源の位相差を含めた干渉の一般条件式を立て、代数的に解を導出します。
- 問(4)の別解: 干渉の条件式から直接求める解法
- 上記の別解が有益である理由
- 原理からの導出: 「経路差による位相差」と「初期位相差」の和が干渉条件を決めるという、波の干渉の根本原理に立ち返って問題を解くアプローチを学べます。
- 汎用性の高いスキル: この方法は、仮想波源のような巧妙な発想が難しい、より複雑な設定の問題にも応用できる汎用的な解法です。
- 数式処理能力の向上: 物理現象を数式に落とし込み、代数的に処理して結論を導く一連の流れを体験することで、数理的な問題解決能力が養われます。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程と思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「2つの波源による波の干渉」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 干渉の条件: 2つの波が強めあうか弱めあうかは、波源からの経路差と波源の初期位相差で決まります。
- 定在波: 2つの波源を結ぶ線分上には定在波ができ、腹と腹(または節と節)の間隔は半波長 \(\lambda/2\) に等しいです。
- 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v=f\lambda\) の関係が成り立ちます。
- 位相と時間・距離の関係: 時間 \(\Delta t\) の遅れは位相 \(\Delta \phi = \omega \Delta t\) の遅れに、距離 \(\Delta x\) の隔たりは位相 \(\Delta \phi = k \Delta x\) の差に対応します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、(1)では図から線分AB上の腹の間隔を読み取り、それが半波長であることから波長を求めます。
- 次に、(2)では波の基本式 \(v=f\lambda\) を用いて振動数を計算します。
- (3)では、波源が逆位相になる場合、同位相のときと強めあう・弱めあう条件が逆転することを理解します。
- 最後に、(4)では波源の位相の遅れを、実質的な波源位置のずれ(仮想波源)と解釈し、新しい波源での同位相干渉の問題として解きます。
問(1)
思考の道筋とポイント
線分AB上には、Aからの波とBからの波が干渉して定在波が生じています。図に描かれた強めあう線(腹線)がx軸と交わる点が、この定在波の「腹」にあたります。定在波の腹と腹の間隔が、元の進行波の半波長に等しいことを利用して波長を求めます。
この設問における重要なポイント
- 定在波の腹と腹の間隔: 2つの波が重なってできる定在波において、腹と隣の腹との間隔は、元の進行波の波長の半分、すなわち \(\lambda/2\) となります。
具体的な解説と立式
2つの波源A, Bが同位相で振動しているため、それらを結ぶ線分AB間には定在波が生じます。図の破線は強めあう線(腹線)であり、x軸との交点が定在波の腹の位置を示しています。
図aより、原点(\(x=0\))にある腹と、その隣の腹(\(x=1.0 \text{ m}\))の間隔は \(1.0 \text{ m}\) であることが読み取れます。この間隔は、元の波の半波長 \(\lambda/2\) に等しくなります。
したがって、次の関係式が成り立ちます。
$$ \frac{\lambda}{2} = 1.0 \quad \cdots ① $$
使用した物理公式
- 定在波の腹々間の距離: \(d = \displaystyle\frac{\lambda}{2}\)
①式を変形して、波長 \(\lambda\) を求めます。
$$
\lambda = 1.0 \times 2 = 2.0 \text{ [m]}
$$
2つの波がぶつかり合う真ん中の線(x軸)上では、波が大きく揺れる場所(腹)と、ほとんど揺れない場所(節)が交互に並びます。これは縄跳びの縄を両端から揺らしたときの定在波と同じです。図を見ると、大きく揺れる「腹」と次の「腹」の間が1.0mだとわかります。この「腹」から「腹」までの距離は、元の波の波長のちょうど半分になる、というルールがあります。なので、波長はその2倍の2.0mになります。
波の波長は \(2.0 \text{ m}\) です。波源A(\(x=3.0\))とB(\(x=-3.0\))の間隔は6.0mなので、その間にちょうど3波長分の波が含まれることになり、スケールとして妥当な値です。
問(2)
思考の道筋とポイント
波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には、\(v=f\lambda\) という基本的な関係式が成り立ちます。この問題では、(1)で求めた波長 \(\lambda\) と、問題文で与えられた速さ \(v\) をこの式に代入することで、未知の振動数 \(f\) を計算します。
この設問における重要なポイント
- 波の基本式: 媒質によらず、あらゆる波において、その伝わる速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v=f\lambda\) という関係が成り立ちます。
具体的な解説と立式
波の基本式 \(v=f\lambda\) を、求めたい振動数 \(f\) について解きます。
$$ f = \frac{v}{\lambda} \quad \cdots ① $$
使用した物理公式
- 波の基本式: \(v = f\lambda\)
(1)で求めた波長 \(\lambda = 2.0 \text{ m}\) と、問題で与えられた速さ \(v = 1.0 \text{ m/s}\) を①式に代入します。
$$
\begin{aligned}
f &= \frac{1.0}{2.0} \\[2.0ex]
&= 0.50 \text{ [Hz]}
\end{aligned}
$$
波の「速さ」は、「1秒間に何回振動するか(振動数)」と「1回の振動で進む距離(波長)」を掛け合わせたもの、という関係があります。今回は速さと波長が分かっているので、速さを波長で割り算することで、振動数を求めることができます。
波源の振動数は \(0.50 \text{ Hz}\) です。これは、波源が1秒間に0.5回、すなわち2秒間に1回のペースで振動していることを意味します。
問(3)
思考の道筋とポイント
波源Bの振動を周期の半分(\(T/2\))だけ遅らせるということは、波源AとBが「逆位相」で振動することを意味します。波源の位相関係が「同位相」から「逆位相」に変わると、干渉の条件が正反対になります。つまり、もともと強めあっていた点が弱めあう点に、弱めあっていた点が強めあう点へと入れ替わります。
この設問における重要なポイント
- 位相関係の逆転: 波源が同位相から逆位相に変わると、干渉における強めあう条件と弱めあう条件が完全に入れ替わります。
具体的な解説と立式
初期状態では、波源AとBは同位相で振動しています。このとき、2つの波源からの距離の差(経路差)が波長の整数倍 (\(m\lambda\)) となる点で波は強めあい(図の破線)、半整数倍 (\((m+1/2)\lambda\)) となる点で弱めあいます(図の実線)。
波源Bの振動を周期の半分(\(T/2\))だけ遅らせると、Bから出る波の位相が常に \(\pi\) だけずれることになります。これを「逆位相」と呼びます。
この場合、干渉の条件は逆転します。
- 新しい強めあう条件: 経路差が \((m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) となる点
- 新しい弱めあう条件: 経路差が \(m\lambda\) となる点
したがって、もともと弱めあう線(節線)であった図aの実線の場所が、新たに強めあう線(腹線)となります。
使用した物理公式
- 干渉条件(同位相): 経路差 \(|L_A – L_B| = m\lambda\) で強めあう
- 干渉条件(逆位相): 経路差 \(|L_A – L_B| = (m + \displaystyle\frac{1}{2})\lambda\) で強めあう
この設問は定性的な理解を問うものであり、具体的な計算は不要です。
最初はAとBが「せーの」で同時に山(または谷)を作っていました(同位相)。このとき強めあうのが破線でした。次に、BがAより半テンポ遅れて振動するようになります(逆位相)。これは、Aが山を作るとき、Bは谷を作る、という関係です。すると、波の打ち消しあう場所と強めあう場所がそっくり入れ替わります。つまり、今まで弱かった場所(図の実線)が、今度は一番強く振動する場所になります。
強めあう線は、図aの実線で示される位置に移動します。これは、同位相のときの節線(弱めあう線)に相当し、物理的に妥当な結果です。
問(4)
思考の道筋とポイント
「波源BがAより \(T/8\) だけ振動が遅れる」という条件をどう解釈するかが鍵です。ある点Pで2つの波が強めあう(例えば山と山が重なる)状況を考えます。Bから山が出る時刻には、Aから出た山はすでに \(T/8\) の時間だけ進んでいます。この時間で波が進む距離の分だけ、波源Aが実質的にBに近づいたと見なせます。この「仮想的な波源A’」を考え、A’とBが同位相で干渉する問題として解くのが見通しの良いアプローチです。
この設問における重要なポイント
- 仮想波源の考え方: 波源間の時間の遅れ \(\Delta t\) は、波がその時間に進む距離 \(\Delta x = v \Delta t\) に換算できます。この考え方を用いると、位相差の問題を、より直感的な波源位置のずれの問題に置き換えることができます。
具体的な解説と立式
波源Bの振動がAより周期の \(\displaystyle\frac{1}{8}\) (\(T/8\)) だけ遅れるとします。これは、ある点Pで2つの波が強めあう(山と山が重なる)とき、Aから出た山はBから出た山より \(T/8\) だけ早く出発していることを意味します。
この時間差でAの波が進む距離 \(\Delta L\) は、
$$ \Delta L = v \times \frac{T}{8} \quad \cdots ① $$
ここで、波の基本式 \(v=f\lambda\) と周期と振動数の関係 \(T=1/f\) より、\(vT = \lambda\) が成り立ちます。これを①式に用いると、
$$ \Delta L = \frac{\lambda}{8} \quad \cdots ② $$
この状況は、あたかも波源Aが元の位置(\(x_A=3.0 \text{ m}\))からBの方向に \(\lambda/8\) だけ移動した点A’から、波源Bと同時に(同位相で)波を送り出したのと同じと見なすことができます。この仮想的な波源A’のx座標 \(x_{A’}\) は、
$$ x_{A’} = x_A – \Delta L = 3.0 – \Delta L \quad \cdots ③ $$
この仮想波源A’と元の波源B(\(x_B = -3.0 \text{ m}\))との間で同位相の干渉が起こると考えます。x軸上で強めあう点は、線分A’Bの中点、およびそこから半波長(\(\lambda/2\))ずつ離れた点に現れます。問題では原点に最も近い強めあう点Pを問われているので、これは線分A’Bの中点そのものになります。点Pのx座標 \(x_P\) は、
$$ x_P = \frac{x_{A’} + x_B}{2} \quad \cdots ④ $$
使用した物理公式
- 波の基本式: \(v=f\lambda\)
- 周期と振動数の関係: \(T=1/f\)
- 同位相干渉の条件(中心が中点となること)
(1)より \(\lambda = 2.0 \text{ m}\) なので、②式よりAの波が先行する距離 \(\Delta L\) は、
$$ \Delta L = \frac{2.0}{8} = 0.25 \text{ [m]} $$
これを③式に代入して、仮想波源A’の座標を求めます。
$$ x_{A’} = 3.0 – 0.25 = 2.75 \text{ [m]} $$
④式に \(x_{A’} = 2.75 \text{ m}\) と \(x_B = -3.0 \text{ m}\) を代入して、点Pの座標 \(x_P\) を求めます。
$$
\begin{aligned}
x_P &= \frac{2.75 + (-3.0)}{2} \\[2.0ex]
&= \frac{-0.25}{2} \\[2.0ex]
&= -0.125 \text{ [m]}
\end{aligned}
$$
有効数字2桁で答えるので、\(x_P \approx -0.13 \text{ m}\) となります。
もともとPは原点(\(x=0\))にあったので、B側(負の向き)に \(0.13 \text{ m}\) 動いたことになります。
BがAより少し遅れてスタートする状況です。AとBから出た波の「山」がどこかで出会って強めあう場所を探します。Bから「山」が出発する瞬間、Aから出た「山」はフライングスタートしているので、すでに少し進んでいます。この「フライングした距離」の分だけ、Aのスタート位置がBに近づいたと考えてみましょう。この「見かけ上のAのスタート位置(A’)」とBのちょうど真ん中が、新しい強めあう中心点Pになります。あとは計算でその真ん中の座標を求めます。
原点に最も近い強めあう点Pは、B側(負の向き)に \(0.13 \text{ m}\) 動きます。もともと同位相のときは原点(\(x=0\))が強めあう中心点でした。Aの波が実質的に先行するため、2つの波が出会う中心点がB側にずれるのは物理的に妥当な結果です。
思考の道筋とポイント
任意の点での干渉は、2つの波の「位相差」によって決まります。この位相差は「経路差による位相差」と「波源の初期位相差」の和で与えられます。この総和が \(2\pi\) の整数倍になる点が強めあう点です。この原理に基づいて立式し、解を代数的に求めます。
この設問における重要なポイント
- 干渉の一般条件: 強めあう条件は、全位相差 \(\Delta \phi_{\text{全}} = 2m\pi\)(\(m\)は整数)で与えられます。
- 位相差の内訳: 全位相差は、経路差による位相差 \(\Delta \phi_{\text{経路}}\) と波源の初期位相差 \(\Delta \phi_{\text{初期}}\) の和、\(\Delta \phi_{\text{全}} = \Delta \phi_{\text{経路}} + \Delta \phi_{\text{初期}}\) で計算されます。
具体的な解説と立式
x軸上の点P(\(x\), 0)を考えます。波源A(\(x_A=3.0\))、B(\(x_B=-3.0\))からPまでの距離は、それぞれ \(L_A = |x-3.0|\), \(L_B = |x+3.0|\) です。原点付近の点を考えるので、\(-3.0 < x < 3.0\) としてよく、このとき \(L_A = 3.0-x\), \(L_B = 3.0+x\) となります。
A波に対するB波の位相の遅れを考えます。経路差による位相の遅れは \(k(L_B – L_A)\) です。波源BはAより \(T/8\) だけ振動が遅れるので、初期位相が \(\omega (T/8) = (2\pi/T)(T/8) = \pi/4\) だけ遅れます。
点PでAからの波とBからの波が強めあう条件は、2つの波の位相差が \(2\pi\) の整数倍(\(2m\pi\))になることです。
$$ k(L_B – L_A) – \frac{\pi}{4} = 2m\pi \quad \cdots ① $$
ここで \(k = 2\pi/\lambda\) であり、経路差は \(L_B – L_A = (3.0+x) – (3.0-x) = 2x\) です。
$$ \frac{2\pi}{\lambda}(2x) – \frac{\pi}{4} = 2m\pi \quad \cdots ② $$
使用した物理公式
- 干渉の条件: \(\Delta \phi_{\text{全}} = 2m\pi\)
- 位相差の式: \(\Delta \phi = k \Delta L\), \(\Delta \phi = \omega \Delta t\)
②式を \(x\) について解きます。まず両辺を \(\pi\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{4x}{\lambda} – \frac{1}{4} &= 2m \\[2.0ex]
\frac{4x}{\lambda} &= 2m + \frac{1}{4} \\[2.0ex]
x &= \frac{\lambda}{4} \left( 2m + \frac{1}{4} \right) \\[2.0ex]
x &= \frac{m\lambda}{2} + \frac{\lambda}{16}
\end{aligned}
$$
(1)より \(\lambda = 2.0 \text{ m}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
x &= \frac{m \times 2.0}{2} + \frac{2.0}{16} \\[2.0ex]
&= m + 0.125
\end{aligned}
$$
おっと、計算が合わない。立式を再検討します。
A波の位相を基準に、B波の位相の遅れを考えます。経路差によるB波の遅れは \(k(L_B-L_A)\)、初期位相による遅れは \(\pi/4\)。合計の位相差が \(2m\pi\) となれば強めあいます。
$$ k(L_B – L_A) + \frac{\pi}{4} = 2m\pi $$
$$ \frac{2\pi}{\lambda}(2x) + \frac{\pi}{4} = 2m\pi $$
両辺を \(\pi\) で割ります。
$$
\begin{aligned}
\frac{4x}{\lambda} + \frac{1}{4} &= 2m \\[2.0ex]
\frac{4x}{\lambda} &= 2m – \frac{1}{4} \\[2.0ex]
x &= \frac{\lambda}{4}\left(2m – \frac{1}{4}\right) \\[2.0ex]
&= \frac{m\lambda}{2} – \frac{\lambda}{16}
\end{aligned}
$$
\(\lambda=2.0\)を代入します。
$$
\begin{aligned}
x &= m – \frac{2.0}{16} \\[2.0ex]
&= m – 0.125
\end{aligned}
$$
原点(\(x=0\))に最も近い強めあう点は、\(x\) の絶対値が最小になる \(m=0\) のときです。
$$ x = 0 – 0.125 = -0.125 \text{ [m]} $$
有効数字2桁で答えると、\(x \approx -0.13 \text{ m}\)。これはx軸上のB側(負の向き)に \(0.13 \text{ m}\) の位置です。
波が強めあうかどうかは「2つの波のタイミングがどれだけズレているか」で決まります。この「タイミングのズレ(位相差)」には2つの原因があります。一つは「スタート地点からの距離の違い(経路差)」、もう一つは「スタートする瞬間のズレ(初期位相差)」です。この問題ではBのスタートが少し遅れるので、両方を考慮する必要があります。この2つのズレを足し合わせた結果、ちょうど波の山と山が重なる条件を数式で表し、それを解くことで、強めあう点の位置を直接計算します。
答えは \(x \approx -0.13 \text{ m}\) となり、主たる解法と完全に一致しました。干渉の基本原理から出発して同じ結論が得られたことで、解の正しさがより確かなものとなりました。
【総まとめ】この一問を未来の得点力へ!完全マスター講座
最重要ポイント:この問題の核心となる物理法則は?
- 干渉の条件と位相差:
- 核心: 2つの波が干渉して強めあうか弱めあうかは、ある点における2つの波の「位相差」のみによって決まります。この位相差は、(1)波源からその点までの「経路差」によって生じる位相差と、(2)波源自体の「初期位相差」の2つの要因の和で決まります。
- 理解のポイント:
- 同位相の波源 (\(\Delta \phi_{\text{初期}}=0\)): 経路差が波長の整数倍 (\(m\lambda\)) で強めあい、半整数倍 (\((m+1/2)\lambda\)) で弱めあいます。
- 逆位相の波源 (\(\Delta \phi_{\text{初期}}=\pi\)): 条件が逆転し、経路差が半整数倍で強めあい、整数倍で弱めあいます。
- 一般的な位相差: 問(4)のように、位相差を一般的に扱い、全位相差が \(2\pi\) の整数倍になる点が強めあう点である、と理解することが最も本質的です。
- 定在波と進行波の関係:
- 核心: 2つの波源を結ぶ線分上では、逆向きに進む2つの波が重なり「定在波」が形成されます。定在波の腹と腹(または節と節)の間隔は、元の進行波の波長の半分 (\(\lambda/2\)) になります。
- 理解のポイント: この関係を知っていると、干渉縞の間隔から元の波の波長を簡単に求めることができます。これは干渉問題を解く上での非常に強力なツールです。
応用テクニック:似た問題が出たらココを見る!解法の鍵と着眼点
- 応用できる類似問題のパターン:
- ヤングの実験(光の干渉): 2つのスリットを通過した光がスクリーン上で干渉縞を作ります。水面波の干渉と全く同じ原理で、明線(強めあい)と暗線(弱めあい)の間隔を計算します。
- 薄膜による光の干渉: シャボン玉や水に浮いた油膜が色づいて見える現象です。膜の表面で反射する光と裏面で反射する光の経路差と位相のずれによって干渉が起こります。
- ニュートンリング: 平面ガラスの上に凸レンズを置いたときに見える同心円状の干渉縞です。空気層の厚さ(経路差)によって干渉条件が決まります。
- 初見の問題での着眼点:
- 波源の位相関係を確認する: まず最初に、2つの波源が「同位相」か「逆位相」か、あるいは問(4)のような「特定の位相差」を持つのかを把握します。これが干渉条件を決定する最も重要な要素です。
- 対称性を見つける: 波源が同位相または逆位相の場合、強めあう線や弱めあう線は、波源を結ぶ線分の垂直二等分線に対して対称になります。この対称性を利用すると、計算を簡略化できます。
- 時間の遅れを距離に換算する: 問(4)のように波源に時間の遅れがある場合、それを波が進む距離 (\(\Delta x = v \Delta t\)) に換算し、「仮想的な波源」を考えるアプローチが有効かどうかを検討します。この方法は直感的で計算が楽になることが多いです。
要注意!ありがちなミス・誤解とその対策
- 腹と節の間隔の混同:
- 誤解: 定在波の腹と腹の間隔を波長 \(\lambda\) だと勘違いしてしまう。
- 対策: 「腹-腹」または「節-節」の間隔は半波長 \(\lambda/2\)、「腹-節」の間隔は1/4波長 \(\lambda/4\) であることを明確に区別して覚えましょう。図を描いて確認する習慣をつけると間違いが減ります。
- 同位相と逆位相の条件の混同:
- 誤解: 波源が逆位相なのに、同位相の干渉条件式(経路差 \( = m\lambda\) で強めあう)を適用してしまう。
- 対策: 問題を解き始める前に、必ず「同位相か、逆位相か」をメモし、それに対応する正しい条件式を書き出してから計算を始めるようにしましょう。
- 仮想波源の移動方向の間違い:
- 誤解: 問(4)で、Bが遅れているのに、Bが先行したと考えて仮想波源をBから遠ざけてしまう。
- 対策: 「AとBの山がどこかで出会う」という状況をイメージします。「Bが遅れて出発する」ということは、「その分Aが先に進んでいる」ということなので、「Aのスタート位置がBに近づく」と論理的に考えましょう。
物理の眼を養う:現象のイメージ化と図解の極意
- この問題での有効なイメージ化と図示:
- 波紋の広がりをイメージする: 2つの波源から同心円状に波紋が広がっていく様子を頭に描きます。山(実線)と谷(破線)の波面が交差する点で、山と山、谷と谷が重なれば強めあい、山と谷が重なれば弱めあう、という干渉の基本イメージを持つことが重要です。
- 仮想波源の図解: 問(4)では、模範解答の図bのように、元の波源A, Bと仮想波源A’の位置関係をx軸上に明確に図示することが極めて有効です。AがA’に移動したことで、新しい干渉の中心点がどこにずれるのかを視覚的に捉えることができます。
- 図を描く際に注意すべき点:
- 位相を揃える: 仮想波源を考える際は、「A’とBが同位相で同時にスタートする」という状況を描きます。これにより、問題が単純な同位相干渉に帰着され、中点が強めあう中心になるというシンプルな考え方が適用できます。
- 距離関係を正確に: 波源の位置(\(x=\pm 3.0\))、波長(\(\lambda=2.0\))、仮想波源の移動距離(\(\Delta L=0.25\))といった数値を、おおよそのスケール感で図に書き込むと、計算結果の妥当性を直感的に判断しやすくなります。
なぜその公式?論理的な公式選択と適用の思考法
- 定在波の腹間隔 \(\lambda/2\):
- 選定理由: 線分AB上の干渉を考える問題で、図から腹の間隔が読み取れるため、波長を求める最も直接的で簡単な方法だからです。
- 適用根拠: これは、逆向きに進行する同じ波が重なるときに普遍的に成立する関係です。
- 波の基本式 \(v=f\lambda\):
- 選定理由: 波の3つの基本量(速さ、振動数、波長)のうち2つが分かっていて、残りの1つを求めたい場合に用いる、最も基本的な関係式だからです。
- 適用根拠: この式は波の種類や媒質によらず、あらゆる波に適用できる普遍的な法則です。
- 干渉の条件式(経路差と位相差):
- 選定理由: 問(4)の別解のように、波源に複雑な位相差がある場合や、より一般的に干渉を議論したい場合に用いる、最も本質的な公式だからです。
- 適用根拠: 波の重ね合わせの原理に基づき、2つの波の変位の和が最大・最小になる条件を数学的に表現したもので、あらゆる干渉現象の基礎となります。
思考を整理する:立式から計算までのロジカルフロー
- (1) 波長の計算:
- 戦略: 図から定在波の腹の間隔を読み取り、半波長の公式を適用する。
- フロー: ①図から腹の間隔 \(d=1.0 \text{ m}\) を読み取る → ②\(d = \lambda/2\) の関係式を立てる → ③\(\lambda\) を計算。
- (2) 振動数の計算:
- 戦略: 波の基本式に既知の値を代入する。
- フロー: ①波の基本式 \(v=f\lambda\) を \(f\) について解く (\(f=v/\lambda\)) → ②\(v=1.0\), \(\lambda=2.0\) を代入して \(f\) を計算。
- (3) 逆位相の干渉:
- 戦略: 位相が反転すると、強めあう条件と弱めあう条件が入れ替わることを理解する。
- フロー: ①同位相のときの弱めあう線(図の実線)が、逆位相では強めあう線になる、と結論づける。
- (4) 位相差がある干渉(仮想波源アプローチ):
- 戦略: 時間の遅れを距離に換算し、仮想波源を設定して同位相干渉の問題に置き換える。
- フロー: ①時間の遅れ \(T/8\) を波が進む距離 \(\Delta L = \lambda/8\) に換算 → ②波源AをB側に \(\Delta L\) だけ移動させた仮想波源A’を設定 → ③A’とBの中点の座標を計算し、それが新しい強めあう中心点Pの座標となる。
計算ミスをなくす!日頃の意識と実践テクニック
- 単位の確認: 計算の各段階で、m, m/s, Hzなどの単位が正しく扱えているかを確認する習慣をつけましょう。
- 座標の正負に注意: x軸上の位置を扱う際は、正負の符号に細心の注意を払いましょう。特に、中点を求める計算 \((x_1+x_2)/2\) では、座標の符号を間違えやすいです。
- 分数の計算を丁寧に: 問(4)の計算では、\(-0.25/2 = -0.125\) のような小数や分数の計算が出てきます。暗算に頼らず、一度筆算するなどして慎重に計算しましょう。
- 有効数字の処理: 問題で「有効数字2桁」と指定されている場合、計算途中では3桁か4桁程度まで保持し、最後の答えを出す段階で四捨五入します。\( -0.125 \approx -0.13 \) のように、最後の処理を忘れないようにしましょう。
解きっぱなしはNG!解答の妥当性を吟味する習慣をつけよう
- 得られた答えの物理的妥当性の検討:
- (1) 波長: 波源間距離が6.0mで波長が2.0m。間に3波長分入るというのは、図の腹の数(中心に1つ、左右に2つずつで計5つ)とも整合性が取れており、妥当です。
- (3) 逆位相: 同位相と逆位相で強弱が反転するのは干渉の基本。図の実線が答えになるのは妥当です。
- (4) Pの移動: Aの波が先行する(Bが遅れる)ので、波が出会う中心点はB側にずれるはずです。計算結果が \(x=-0.13 \text{ m}\) と負の値になったことは、この物理的直感と一致しており、妥当です。
- 別解との比較:
- 問(4)では、「仮想波源」という直感的なモデルと、「干渉の条件式」という数理的なモデルの2つのアプローチを取りました。全く異なる考え方から出発して、最終的に \(x=-0.125 \text{ m}\) という同じ答えにたどり着いたことは、両方の解法の正しさと計算の正確性を強く裏付けています。
[mathjax] SNSでのシェアはご自由にどうぞ。(上のボタンをクリック) ブログで引用する際には、こちらのリンクを添えてください。【引用】https://makoto-physics-school.com[…]
293 水面波の干渉
【問題の確認】まずは問題文をしっかり読み解こう
この問題は、2つの波源から生じる波の「干渉」を扱います。様々な点や線分上での干渉の条件を、波源からの距離(経路差)を正確に計算して判定する総合的な問題です。
- 2つの波源 S₁, S₂ の間隔: \(30 \text{ cm}\)
- 振動数: \(f = 5.0 \text{ Hz}\)
- 位相: 同位相で振動
- 波長: \(\lambda = 10 \text{ cm}\)
- Mは線分S₁S₂の中点
- (1) S₁から出た波が点Aに到達する時間
- (2) 点Aと点Bが強めあうか、弱めあうか
- (3) 波源で山が発生した瞬間の、点Cでの波の状態(山か谷か)
- (4) 点Cの波が0.30秒後に移動する点Dの、S₁とS₂からの距離
- (5) 線分S₁S₂間にできる節の数
- (6) 線分S₂B間にできる振動しない点の数
【設問別解説】考え方から計算プロセスまで徹底ガイド
本解説は、模範解答で採用されている解法を主たる解説としつつ、以下の別解を提示します。
- 提示する別解
- 問(5)の別解: 定在波の腹と節の間隔を利用する解法
- 模範解答が、線分S₁S₂上の任意の点を文字で置き、弱めあう条件式を立てて代数的に解くのに対し、別解では、線分S₁S₂上にできる定在波の腹と節の配置を直接図示し、視覚的に節の数を数え上げます。
- 問(5)の別解: 定在波の腹と節の間隔を利用する解法
- 上記の別解が有益である理由
- 物理的イメージの強化: 線分上に腹と節が半波長ごとに交互に並ぶという定在波の物理的イメージを直接的に利用するため、現象の理解が深まります。
- 計算の簡略化: 代数的な方程式を解く必要がなく、腹と節の間隔(\(\lambda/4\))を足し引きしていくだけで答えにたどり着けるため、計算が簡単でミスが起こりにくいです。
- 検算としての有効性: 代数的な解法の結果が正しいかどうかを、視覚的なアプローチで確認する(検算する)手段としても非常に有効です。
- 結果への影響
- いずれのアプローチを用いても、計算過程や思考の出発点が異なるだけで、最終的に得られる答えは模範解答と完全に一致します。
この問題のテーマは「2つの波源による波の干渉」です。
問題を解く上で鍵となる物理法則や概念は以下の通りです。
- 波の基本式: 波の速さ \(v\)、振動数 \(f\)、波長 \(\lambda\) の間には \(v=f\lambda\) の関係が成り立ちます。
- 干渉の条件(同位相): 2つの波源が同位相で振動する場合、波源からの距離の差(経路差)が波長の整数倍 (\(m\lambda\)) となる点で波は強めあい(腹)、半整数倍 (\((m+1/2)\lambda\)) となる点で弱めあいます(節)。
- 波の位相と伝播: 波源で山(または谷)が発生したとき、そこから距離 \(L\) だけ離れた点での波の状態(山か谷か)は、距離 \(L\) が波長 \(\lambda\) の整数倍か半整数倍かによって決まります。
- 三平方の定理: 図形的に波源からの距離を求める際に利用します。
基本的なアプローチは以下の通りです。
- まず、与えられた振動数と波長から、波の速さを計算します。
- 各設問で指定された点(A, B, Cなど)について、2つの波源 S₁, S₂ からの距離を三平方の定理などを用いて求めます。
- 求めた距離の差(経路差)を計算し、それが波長の整数倍か半整数倍かを調べることで、強めあうか弱めあうかを判定します。
- 線分上の節の数を数えるには、弱めあう条件式を立てて解くか、定在波の腹と節の配置を考えます。